(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058270
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】架橋蛍光ラテックス
(51)【国際特許分類】
C08F 2/22 20060101AFI20220404BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20220404BHJP
C08J 3/03 20060101ALI20220404BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220404BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20220404BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20220404BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C08F2/22
G03G9/08 381
G03G9/08 391
C08J3/03
C08F2/44 B
G03G9/097 365
G03G9/087 331
G03G9/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159770
(22)【出願日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】17/038,092
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】チュンリアン・ル
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ヴィ.・グエン
【テーマコード(参考)】
2H500
4F070
4J011
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA06
2H500AA08
2H500AA14
2H500BA12
2H500BA21
2H500BA32
2H500CA06
2H500CA24
2H500CA29
2H500EA39B
4F070AA49
4F070AC50
4F070AE04
4F070AE08
4F070CA01
4F070CB01
4F070CB13
4J011AA05
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4J011KB29
4J011PA43
4J011PB25
4J011PC02
4J011PC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高度に架橋された、非常に明るい蛍光ラテックス、及び印刷中に定着機ロール部材を汚さない、電子写真式印刷システムで使用するためのトナー、並びにそれらを製造する方法を提供する。
【解決手段】架橋蛍光ラテックスを作製する方法は、水と、不飽和樹脂及び組み込まれた蛍光剤を含む未架橋樹脂粒子と、を含む未架橋蛍光ラテックスに水溶性開始剤を添加することと、水溶性開始剤を活性化させ、活性化した水溶性開始剤と不飽和樹脂との間での架橋反応を誘発し、それによって架橋樹脂及び組み込まれた蛍光剤を含む架橋蛍光樹脂粒子を含む、架橋蛍光ラテックスを形成する条件に水溶性開始剤を曝露することと、を含む。架橋蛍光ラテックス、それから作製された蛍光トナーも提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋蛍光ラテックスを作製する方法であって、前記方法は、
水と、不飽和樹脂及び組み込まれた蛍光剤を含む未架橋樹脂粒子と、を含む未架橋蛍光ラテックスに水溶性開始剤を添加することと、
前記水溶性開始剤を活性化させ、活性化した前記水溶性開始剤と前記不飽和樹脂との間での架橋反応を誘発し、それによって架橋樹脂及び組み込まれた前記蛍光剤を含む架橋蛍光樹脂粒子を含む、架橋蛍光ラテックスを形成する条件に前記水溶性開始剤を曝露することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記架橋蛍光ラテックスは、120℃でのレオロジー掃引試験により測定したとき、0.100~1.000rad/sの周波数の範囲にわたって0.50以下である架橋度nによって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋度nは0.10以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記架橋蛍光ラテックスは、前記未架橋蛍光ラテックスのピーク反射率値の±2%以内であるピーク反射率値によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記不飽和樹脂は、不飽和非晶質ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性開始剤は、25℃の水中で0.5g/100mL超の溶解度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶性開始剤は過硫酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
蛍光トナーを作製する方法であって、
請求項1に記載の方法を用いて架橋蛍光ラテックスを形成することと、
前記架橋蛍光ラテックスと、樹脂エマルションと、任意選択的に、ワックス分散液及び着色剤分散液の一方又は両方と、を含む混合物を形成することと、
前記混合物を凝集させて、所定のサイズの粒子を形成することと、
前記粒子を合体させて、蛍光トナーを形成することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記樹脂エマルションは未架橋樹脂を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水と、架橋樹脂及び組み込まれた蛍光剤を含む架橋蛍光樹脂粒子と、を含む架橋蛍光ラテックスであって、前記架橋蛍光ラテックスは、120℃でのレオロジー掃引試験により測定したとき、0.100~1.000rad/sの周波数の範囲にわたって0.50以下である架橋度nによって特徴付けられる、架橋蛍光ラテックス。
【請求項11】
前記架橋度nは0.10以下である、請求項10に記載の架橋蛍光ラテックス。
【請求項12】
前記架橋蛍光ラテックスは、水と、不飽和樹脂及び組み込まれた前記蛍光剤を含む未架橋樹脂粒子と、を含む比較未架橋蛍光ラテックスのピーク反射率値の±2%以内であるピーク反射率値を特徴とする、請求項10に記載の架橋蛍光ラテックス。
【請求項13】
前記架橋樹脂は非晶質ポリエステル樹脂である、請求項10に記載の架橋蛍光ラテックス。
【請求項14】
未架橋樹脂と、架橋樹脂及び組み込まれた蛍光剤を含む架橋蛍光樹脂粒子と、を含む粒子を含む蛍光トナーであって、前記架橋蛍光樹脂粒子は、120℃でのレオロジー掃引試験により測定したとき、0.100~1.000rad/sの周波数の範囲にわたって0.50以下である架橋度nによって特徴付けられる、蛍光トナー。
【請求項15】
請求項14に記載の蛍光トナーを使用する方法であって、前記方法は、
電子写真式プリンタを使用して、前記蛍光トナーを含む画像を形成することと、
前記蛍光トナーを含む前記画像を画像受容媒体に転写することと、
前記蛍光トナーを前記画像受容媒体に融合させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0001】
シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック(CMYK)トナーステーションに基づいて、既存の電子写真式印刷システムの性能を拡張するために、蛍光トナーが開発されてきた。しかしながら、蛍光トナーを使用して印刷することは、CMYKトナーと比較して困難である。例えば、電子写真式印刷システムの定着機ロール部材を通過するとき、蛍光剤は、定着機ロールに接触することがあり、これは、許容できない、長期にわたって残存する汚れをもたらす。
【0002】
本開示は、架橋蛍光ラテックス、並びに、トナー及びインクジェット印刷組成物など、架橋蛍光ラテックスから形成される組成物を提供する。関連する方法もまた、提供される。
【0003】
架橋蛍光ラテックスを作製する方法が提供される。一実施形態において、かかる方法は、水と、不飽和樹脂及び組み込まれた蛍光剤を含む未架橋樹脂粒子と、を含む未架橋蛍光ラテックスに水溶性開始剤を添加することと、水溶性開始剤を活性化させ、活性化した水溶性開始剤と不飽和樹脂との間での架橋反応を誘発し、それによって架橋樹脂及び組み込まれた蛍光剤を含む架橋蛍光樹脂粒子を含む、架橋蛍光ラテックスを形成する条件に水溶性開始剤を曝露することと、を含む。
【0004】
架橋蛍光ラテックスも提供される。一実施形態では、かかるラテックスは、水と、架橋樹脂及び組み込まれた蛍光剤を含む架橋蛍光樹脂粒子と、を含み、架橋蛍光ラテックスは、120℃でのレオロジー掃引試験により測定したとき、0.100~1.000rad/sの周波数の範囲にわたって0.50以下である架橋度nによって特徴付けられる。
【0005】
蛍光トナーも提供される。一実施形態では、かかるトナーは、未架橋樹脂と、架橋樹脂及び組み込まれた蛍光剤を含む架橋蛍光樹脂粒子と、を含む粒子を含み、架橋蛍光樹脂粒子は、120℃でのレオロジー掃引試験により測定したとき、0.100~1.000rad/sの周波数の範囲にわたって0.50以下である架橋度nによって特徴付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、架橋蛍光ラテックス、並びに、トナー及びインクジェット印刷組成物など、架橋蛍光ラテックスから形成される組成物を提供する。関連する方法もまた、提供される。
【0007】
本架橋蛍光ラテックスは、蛍光剤を組み込んだ架橋樹脂粒子を含む。トナーのためにいくつかの架橋蛍光ラテックスが開発されてきたが、光学特性(例えば、輝度)に悪影響を及ぼすことなく高度の架橋を達成することは困難であった。本開示は、少なくとも部分的に、架橋を誘発する水溶性開始剤及び架橋蛍光ラテックスを形成するための改善されたプロセスを使用することに基づいている。この結果は、高度に架橋された、非常に明るい蛍光ラテックスである。これらのラテックスは、印刷中に定着機ロール部材を汚さない、電子写真式印刷システムで使用するためのトナーを形成するために使用されてよい。これは、未架橋又は更には軽度に架橋された蛍光ラテックスと比較して、定着機ロール部材の使用期間を大幅に延長する。
【0008】
蛍光剤
【0009】
上記のように、本架橋蛍光ラテックスは、蛍光剤を含む。蛍光剤としては、蛍光増白剤及び蛍光染料が挙げられる。例示的な蛍光増白剤としては、蛍光増白剤184、蛍光増白剤1(蛍光増白剤393)、光学増白剤2、光学増白剤3、光学増白剤C、光学増白剤OB、光学増白剤Tinopal CBS-X、378、367、368、185、199、199:1、199:2、光学増白剤ER-IV、蛍光増白剤ER-V、蛍光増白剤369OBが挙げられる。実施形態では、蛍光増白剤は蛍光増白剤184である。例示的な蛍光染料としては、ソルベントイエロー160:1、ソルベントイエロー98、ソルベントイエロー43、ベーシックイエロー40、ソルベントイエロー3G、ソルベントグリーン5、D&Cレッド#21、D&Cオレンジ#5、Pylam Oil FL Red、Pylam Oil FL Purple、ソルベントレッド#49(ローダミンBベース)、ソルベントレッド149、ソルベントレッド196、ソルベントレッド197、ソルベントオレンジ115、ソルベントオレンジ63、Pylam Green LX11862、Pylam Lime Green 1211141、ベーシックバイオレット11:1、ベーシックレッド1、ローダミンB、D&Cレッド#27が挙げられる。いくつかの実施形態では、蛍光染料は、ソルベントイエロー160:1、ソルベントイエロー98、ソルベントイエロー43、ベーシックイエロー40、ソルベントレッド49、又はこれらの組み合わせである。異なる種類の蛍光増白剤及び異なる種類の蛍光染料の組み合わせが使用されてよい。
【0010】
蛍光剤の総量は、架橋蛍光ラテックス中に、例えば、架橋蛍光ラテックスの0.1重量%~-10重量%の量で存在してよい。これは、0.1重量%~8重量%、0.2重量%~6重量%、0.5重量%~5重量%、及び1重量%~2重量%の総量を含む。
【0011】
樹脂
【0012】
本架橋蛍光ラテックスの樹脂粒子は、蛍光剤を含有するポリマーマトリックスを提供する。「樹脂」という用語は、重合して樹脂を形成する分子成分である、「モノマー」という用語と区別される。樹脂粒子は、2つ以上の異なる種類の樹脂を含んでもよい。樹脂は、非晶性樹脂、結晶性樹脂、非晶性樹脂の混合物、又は結晶性及び非晶性樹脂の混合物であってもよい。樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂の混合物、又は結晶性及び非晶性ポリエステル樹脂の混合物を含むポリエステル樹脂であってもよい。架橋を可能にするために、樹脂のうちの少なくとも1つは不飽和樹脂である。このセクションはまた、本蛍光ラテックスから形成される組成物、例えば、トナーに含まれ得る樹脂も説明することに留意する。
【0013】
結晶性樹脂
【0014】
本明細書における樹脂は、任意選択的な触媒の存在下でジオールと二酸とを反応させることによって形成されるポリエステル樹脂であってもよい。結晶性ポリエステルを形成するための好適な有機ジオールとしては、それらの構造異性体を含め、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、これらの組み合わせなどの、約2~約36個の炭素原子を有する脂肪族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールは、例えば、樹脂の約40~約60モルパーセント、樹脂の約42~約55モルパーセント、又は樹脂の約45~約53モルパーセントの量で選択され得、第2のジオールは、樹脂の約0~約10モルパーセント、又は樹脂の約1~約4モルパーセントの量で選択され得る。
【0015】
結晶性樹脂の調製のために選択されるビニル二酸又はビニルジエステルを含む有機二酸又はジエステルの例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、ジメチルフマラート、ジメチルイタコネート、シス,1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、ジエチルフマラート、ジエチルマレエート、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸及びメサコン酸、これらのジエステル又は無水物が挙げられる。有機二酸は、例えば、樹脂の約40~約60モルパーセント、樹脂の約42~約52モルパーセント、又は樹脂の約45~約50モルパーセントの量で選択され得、第2の二酸は、樹脂の約0~約10モルパーセントの量で選択され得る。
【0016】
結晶性(並びに非結晶性)ポリエステルを形成するのに利用され得る重縮合触媒としては、テトラアルキルチタネート、ジブチルスズオキシドなどのジアルキルスズオキシド、ジブチルスズジラウレートなどのテトラアルキルスズ、及びブチルスズオキシド水酸化物などのジアルキルスズオキシド水酸化物、アルミニウムアルコキシド、アルキル亜鉛、ジアルキル亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一スズ、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。このような触媒は、例えば、ポリエステル樹脂を生成するために使用される出発二酸又はジエステルに基づいて、約0.01モルパーセント~約5モルパーセントの量で利用されてもよい。
【0017】
結晶性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、これらの混合物などが挙げられる。特定の結晶性樹脂は、ポリ(エチレン-アジペート)、ポリ(プロピレン-アジペート)、ポリ(ブチレン-アジペート)、ポリ(ペンチレン-アジペート)、ポリ(ヘキシレン-アジペート)、ポリ(オクチレン-アジペート)、ポリ(エチレン-サクシネート)、ポリ(プロピレン-サクシネート)、ポリ(ブチレン-サクシネート)、ポリ(ペンチレン-サクシネート)、ポリ(ヘキシレン-サクシネート)、ポリ(オクチレン-サクシネート)、ポリ(エチレン-セバケート)、ポリ(プロピレン-セバケート)、ポリ(ブチレン-セバケート)、ポリ(ペンチレン-セバケート)、ポリ(ヘキシレン-セバケート)、ポリ(オクチレン-セバケート)、ポリ(デシレン-セバケート)、ポリ(デシレン-デカノエート)、ポリ(エチレン-デカノエート)、ポリ(エチレン-ドデカノエート)、ポリ(ノニレン-セバケート)、ポリ(ノニレン-デカノエート)、コポリ(エチレン-フマレート)-コポリ(エチレン-セバケート)、コポリ(エチレン-フマレート)-コポリ(エチレン-デカノエート)、コポリ(エチレン-フマレート)-コポリ(エチレン-ドデカノエート)、コポリ(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール-デカノエート)-コポリ(ノニレン-デカノエート)、ポリ(オクチレン-アジペート)、及びこれらの混合物などの、ポリエステル系であってもよい。ポリアミドの例としては、ポリ(エチレン-アジパミド)、ポリ(プロピレン-アジパミド)、ポリ(ブチレン-アジパミド)、ポリ(ペンチレン-アジパミド)、ポリ(ヘキシレン-アジパミド)、ポリ(オクチレン-アジパミド)、ポリ(エチレン-スクシンイミド)、ポリ(プロピレン-セバカミド)、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリイミドの例としては、ポリ(エチレン-アジピミド)、ポリ(プロピレン-アジピミド)、ポリ(ブチレン-アジピミド)、ポリ(ペンチレン-アジピミド)、ポリ(ヘキシレン-アジピミド)、ポリ(オクチレン-アジピミド)、ポリ(エチレン-スクシンイミド)、ポリ(プロピレン-スクシンイミド)、ポリ(ブチレンス-クシンイミド)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂は、以下の式(I)を有する。
【化1】
a及びbの各々は、1~12、2~12、又は4~12の範囲としてよく、更に、pは、10~100、20~80、又は30~60の範囲としてもよい。実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂は、ポリ(1,6-ヘキシレン-1,12-ドデカノエート)であり、ドデカン二酸と1,6-ヘキサンジオールとの反応によって生成され得る。
【0019】
上記のように、開示された結晶性ポリエステル樹脂は、重縮合触媒の存在下で、好適な有機ジオールと好適な有機二酸とを反応させることによる重縮合プロセスによって調製され得る。有機ジオールと有機二酸との化学量論的等モル比を利用し得るが、有機ジオールの沸点が約180℃~約230℃である場合には、約0.2~1モル当量のエチレングリコール又はプロピレングリコールなどの過剰量のジオールを利用し、蒸留によって重縮合プロセス中に除去することができる。利用される触媒の量は様々であってもよく、例えば、結晶性ポリエステル樹脂の約0.01~約1又は約0.1~約0.75モルパーセントなどの量で選択することができる。
【0020】
結晶性樹脂は、種々の融点を有してよく、例えば、約30℃~約120℃、約50℃~約90℃、約60℃~約80℃とすることができる。結晶性樹脂は、ゲル透過クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)によって測定される際、例えば、約1,000~約50,000、約2,000~約25,000、又は約5,000~約20,000の数平均分子量(number average molecular weight、Mn)、及びGPCによって決定される際、約2,000~約100,000、約3,000~約80,000、又は約10,000~約30,000の重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)を有し得る。結晶性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、約2~約6、約3~約5、又は約2~約4であってもよい。
【0021】
非結晶性樹脂
【0022】
樹脂を、任意選択的な触媒の存在下でジオールと二塩基酸とを反応させることによって形成される非結晶性ポリエステル樹脂であってもよい。非晶性ポリエステルの調製のために利用されるビニル二酸又はビニルジエステルを含む二酸又はジエステルの例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、トリメリト酸、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート、シス、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、コハク酸、無水コハク酸、ドデシルコハク酸、無水ドデシルコハク酸、グルタル酸、無水グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカンジ二酸、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジエチルイソフタレート、ジメチルフタレート、無水フタル酸、ジエチルフタレート、ジメチルサクシネート、ジメチルフマレート、ジメチルマレエート、ジメチルグルタレート、ジメチルアジペート、ジメチルドデシルサクシネート、及びこれらの組み合わせなどの、ジカルボン酸又はジエステルが挙げられる。有機二塩基酸又はジエステルは、例えば、樹脂の約40~約60モルパーセント、樹脂の約42~約52モルパーセント、樹脂の約45~約50モルパーセントの量で存在してもよい。
【0023】
非結晶性ポリエステルの生成に利用され得るジオールの例としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2,2-ジメチルプロパンジオール、2,2,3-トリメチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ドデカンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)-ビスフェノールA、ビス(2-ヒドロキシプロピル)-ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、キシレンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ビス(2-ヒドロキシエチル)オキシド、ジプロピレングリコール、ジブチレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。選択される有機ジオールの量は様々であってもよく、有機ジオールは、例えば、樹脂の約40~約60モルパーセント、樹脂の約42~約55モルパーセント、又は樹脂の約45~約53モルパーセントの量で存在してもよい。
【0024】
好適な非結晶性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、ポリプロピレンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
不飽和非晶性ポリエステル樹脂が樹脂として利用されてよい。このような樹脂の例としては、米国特許第6,063,827号に開示されるものが挙げられ、その開示の全容が、参照により本明細書に組み込まれる。例示的な不飽和非晶質ポリエステル樹脂としては、限定するものではないが、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールコフマレート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノールコフマレート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノールコフマレート)、ポリ(コプロポキシル化ビスフェノールコエトキシル化ビスフェノールコフマレート)、ポリ(1,2-プロピレンフマレート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールコマレエート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノールコマレエート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノールコマレエート)、ポリ(コプロポキシル化ビスフェノールコエトキシル化ビスフェノールコマレエート)、ポリ(1,2-プロピレンマレエート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノールコイタコネート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノールコイタコネート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノールコイタコネート)、ポリ(コプロポキシル化ビスフェノールコエトキシル化ビスフェノールコイタコネート)、ポリ(1,2-プロピレンイタコネート)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
好適なポリエステル樹脂は、ポリ(プロポキシ化ビスフェノールAコフマラート)樹脂などの非晶性ポリエステルであってもよい。そのような樹脂及びそれらの製造のためのプロセスの例としては、米国特許第6,063,827号に開示されるものが挙げられ、その開示の全容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
好適なポリエステル樹脂としては、非結晶性酸性ポリエステル樹脂が挙げられる。非結晶性酸ポリエステル樹脂は、プロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化ビスフェノールA、テレフタル酸、フマル酸、及びドデセニルコハク酸無水物の任意の組み合わせ、例えばポリ(プロポキシル化ビスフェノール-コ-テレフタレート-フマラート-ドデセニルスクシネート)の系統としてもよい。使用し得る別の非結晶性酸ポリエステル樹脂は、ポリ(プロポキシレート-エトキシル化ビスフェノール-コ-テレフタレート-ドデセニルコハク酸-トリメリト酸無水物)である。
【0028】
樹脂として利用され得る直鎖状プロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂の例は、Resana S/A Industrias Quimicas,Sao Paulo,Brazilから商品名SPAMIIで入手可能である。利用され得る、市販されている、他のプロポキシル化ビスフェノールAフマラート樹脂としては、Kao Corporation,JapanからのGTUF及びFPESL-2、並びにReichhold,Research Triangle Park,N.C.からのEM181635などが挙げられる。
【0029】
非結晶性樹脂又は非結晶性樹脂の組み合わせは、約30℃~約80℃、約35℃~約70℃、又は約40℃~約65℃のガラス転移温度を有し得る。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定され得る。非結晶性樹脂は、GPCによって測定するとき、例えば、約1,000~約50,000、約2,000~約25,000、又は約1,000~約10,000のMn、GPCによって測定するとき、例えば、約2,000~約100,000、約5,000~約90,000、約10,000~約90,000、約10,000~約30,000、又は約70,000~約100,000のMwを有し得る。
【0030】
本トナー中の樹脂(複数可)は、樹脂の末端に存在し得る酸基を有し得る。存在し得る酸基としては、カルボン酸基等が挙げられる。カルボン酸基の数は、樹脂を形成するために利用される材料及び反応条件を調整することによって制御してもよい。実施形態では、樹脂は、約2mgのKOH/gの樹脂~約200mgのKOH/g、約5mgのKOH/gの樹脂~約50mgのKOH/gの樹脂、又は約5mgのKOH/gの樹脂~約15mgのKOH/gの樹脂の酸価を有するポリエステル樹脂であってもよい。酸含有樹脂は、テトラヒドロフラン溶液中に溶解してもよい。酸価は、指示薬としてフェノールフタレインを含有するKOH/メタノール溶液で滴定することによって検出してもよい。酸価は、次に、滴定の終点として同定された樹脂上の全ての酸基を中和するのに必要なKOH/メタノールの相当量に基づいて計算してもよい。
【0031】
本架橋蛍光ラテックスは、単一種類の樹脂、例えば、単一種類の非晶性ポリエステル樹脂、又は複数種類の樹脂、例えば、2つの異なる種類の非晶性ポリエステル樹脂を含んでよい。このような実施形態では、非晶性ポリエステル樹脂のうちの1つは、他方よりも大きいMn又はMwを有する。2つの異なる種類の非晶性ポリエステル樹脂が使用される実施形態では、2つの種類の重量比は2:3~3:2であってもよい。これは、1:1の重量比を含む。代替的に、異なる種類の非晶性ポリエステル樹脂をそれぞれ含む、2つの別個の架橋蛍光ラテックスが使用されてよい。しかしながら、共に、架橋蛍光ラテックスは、この重量比の範囲内で、2つの異なる種類の非晶性ポリエステル樹脂を提供する。
【0032】
樹脂の総量は、架橋蛍光ラテックス中に、例えば、架橋蛍光ラテックスの1重量%~60重量%の量で存在してよい。これは、5重量%~50重量%、及び10重量%~40重量%の範囲の樹脂の総量を含む。
【0033】
上記のように、蛍光剤組み込み架橋樹脂の形態は、粒子の形態である。粒子は、動的光散乱によって測定されるように、20nm~1000nmの範囲の平均サイズを有してもよい。
【0034】
他の成分
【0035】
本架橋蛍光ラテックスは、一般に、1つ以上の溶媒を更に含むが、それらは乾燥形態で用いられてよい。水が、典型的には溶媒として使用されるが、有機溶媒(複数可)が含まれてもよい。他の成分、例えば、1つ以上の種類の消泡剤、1つ以上の種類の界面活性剤、1つ以上の種類の殺生物剤を含んでもよい。界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、Calfax/Dowfax、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。殺生物剤としては、Proxel GXL、Kathon殺生物剤、Bioban防腐剤、Rocima 586マイクロブレード、Ucarcide抗菌剤、Dowicide抗菌剤などが挙げられる。
【0036】
架橋蛍光ラテックスの調製
【0037】
蛍光剤組み込み架橋樹脂粒子及びその粒子を含む架橋蛍光ラテックスは、以下のように調製されてよい。混合物は、所望の蛍光剤、所望の樹脂、及び溶媒を組み合わせることによって形成されてもよい。溶媒は、1つ以上の種類の有機溶媒(アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、塩化メチレン、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、並びに水を含む溶媒系であってもよい。他の添加剤は、例えば、1つ以上の種類の界面活性剤(上記「他の成分」を参照)及び1つ以上の種類の塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、重炭酸ナトリウムなど)が混合物に含まれてよい。上記のように、所望の蛍光剤としては、1つ以上の種類の蛍光増白剤及び1つ以上の種類の蛍光染料が挙げられ得、所望の樹脂としては、2つ以上の種類の樹脂が挙げられ得る。2つ以上の種類の蛍光剤が使用される場合、これらは同じ蛍光ラテックスに含まれてよい。しかしながら、別個の蛍光ラテックス、例えば、1つの種類の蛍光剤を含む一方の蛍光ラテックスと、別の種類の蛍光剤を含む他方の蛍光ラテックスが調製され、使用されてよい。得られた蛍光剤/樹脂/溶媒混合物は、混合物が均質になるように混合中に、ある温度(例えば、30℃~80℃、40℃~75℃、45℃~70℃)まである時間(例えば、20分~5時間、30分~2時間、1時間)加熱される。混合中に樹脂を中和するために、追加の塩基が添加されてもよい。均質化を確実にし、所望のサイズを有する蛍光剤組み込み樹脂粒子を提供するために、混合が行われる。(混合及び均質化は、トナーに関して以下に更に説明される。)界面活性剤の量、及び/又は殺生物剤が添加されてもよい。最後に、有機溶媒が蒸留により除去されてもよい。このプロセス中に水が添加されて、所望の固形分を維持してもよい。
【0038】
上記のプロセスによって提供される、得られた蛍光ラテックスは、未架橋である。蛍光剤組み込み樹脂粒子を架橋するために、水溶性開始剤を未架橋蛍光ラテックスに添加する。過硫酸塩など様々な種類の水溶性開始剤が使用されてよい。好適な過硫酸塩としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムが挙げられる。水溶性開始剤の量は、未架橋蛍光ラテックス中の樹脂の0.2重量%~3重量%の範囲であってよい。これは、未架橋蛍光ラテックス中の樹脂の0.5重量%~2重量%、及び1重量%~1.5重量%を含む。次に、開始剤を活性化させ、活性化した開始剤と未架橋蛍光ラテックスの不飽和樹脂との間での架橋反応を誘発する条件に、この混合物を曝露する。これらの条件は、使用される開始剤の種類によって異なる。これらは、混合中に、ある温度(例えば、60℃~-98℃、65℃~95℃、70℃~80℃)に、ある時間(例えば、20分~5時間、30分~3時間、1~2時間)にわたって加熱することを含んでよい。加熱/混合は、不活性ガス(例えばN2)下で行われてよい。架橋中、pH制御剤を添加して、中性又は塩基性条件(例えば、pH6超)を維持してよい。あるいは、追加の界面活性剤を添加してよい。どちらも、樹脂粒子の凝集を最小限に抑える/防止するのに有用である。この結果は、架橋蛍光ラテックスである。
【0039】
水に可溶性である(例えば、25℃の水中で0.5g/100mL超の溶解度を有する)水溶性開始剤は、有機溶媒に可溶性であり、非常に限定的な水溶性(例えば、25℃の水中で0.1g/100mL未満の溶解度を有する)を有する、油溶性開始剤と区別される。油溶性開始剤としては、例えば、アゾ開始剤及び過酸化物開始剤が挙げられる。
【0040】
(モノマーとは対照的に)既に重合された(ただし不飽和である)樹脂及び(油溶性開始剤とは対照的に)水溶性開始剤を含む上記のプロセスを使用することにより、高度な架橋が達成され得ることが見出された。架橋度は、以下の実施例に記載するレオロジー周波数掃引試験によって測定され得る。かかる試験は、貯蔵弾性率G’を周波数ωの関数として測定する。低周波数ではG’∝ωnであり、指数nは、架橋度を表す。直鎖ポリマーはn~2を有し、軽度に架橋されたポリマーはn~1を有し、完全に架橋されたポリマーはn~0を有する。高度に架橋されたポリマーは、0~0.5の範囲のnを有する。いくつかの実施形態では、本架橋蛍光ラテックスは、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、0.15以下、0.05以下、又は0~0.5の範囲のnによって特徴付けられる。これらの値は、特定の温度、例えば120℃、及び周波数の範囲、例えば、0.100~1.000rad/sを指し得る。以下の実施例に記載するように、これらの値は、油溶性開始剤によって誘発される架橋と比較して予想外に低い(すなわち、架橋は予想外に高い)。
【0041】
同時に、本架橋蛍光ラテックスは、高蛍光性である。架橋蛍光ラテックスの蛍光性は、製造元の指示に従って操作される分光濃度計(Hunter、X-Riteなど)又は蛍光分光計を使用して確認され、定量化されてよい。これらのシステムはまた、反射スペクトル(反射率対波長)を測定するために使用されてよい。架橋蛍光ラテックスは、ピーク反射率値(すなわち、反射スペクトルのピークにおける反射率値)によって特徴付けられてよい。このピーク反射率値は、同一の蛍光剤を有し、架橋を伴わないことを除いて同一のプロセスで作製された比較未架橋蛍光ラテックスと比較して、同一(すなわち、±5%以内、±2%以内、±1%以内)であってよい。この結果は、架橋プロセスが架橋蛍光ラテックスの光学特性に悪影響を及ぼさないことを示す。
【0042】
本架橋蛍光ラテックスが使用されて、蛍光性が所望される任意の種類の組成物を形成してよい。例示的な組成物としては、トナー及びインクジェット印刷組成物が挙げられ、それによって、このような組成物の蛍光をレンダリングする。これらの例示的な組成物は、以下に更に説明される。
【0043】
トナー
【0044】
本発明のトナーを形成するために、上述した樹脂のいずれも、例えば、溶媒系転相乳化プロセスを使用することによって、エマルション(複数可)として提供されてもよい。次いで、エマルションは、例えば、エマルション凝集及び合体(EA)プロセスを使用することによって、トナーを形成するために原材料として利用され得る。しかしながら、トナーは、他のプロセスを用いて調製されてもよい。上記のように、上述した架橋蛍光ラテックスのうちのいずれかがトナー調製プロセスで使用されて、蛍光トナーを形成してよい。
【0045】
トナーはまた、ワックスを含んでもよく、ワックスは、水中のワックスの別個の分散体としてトナーに組み込まれてもよい。架橋蛍光ラテックスによって提供される蛍光剤に加えて、トナーはまた、非蛍光性着色剤、例えば顔料を含んでよい。
【0046】
ワックス
【0047】
任意選択的に、ワックスが、本トナーに含まれてもよい。1種類のワックス又は2つ以上の異なるワックスの混合物が使用されてもよい。例えば、トナー粒子の形状、トナー粒子表面上のワックスの存在及び量、帯電及び/又は融着特性、光沢、ストリッピング、オフセット特性などの特定のトナー特性を改善するために、単一のワックスを添加してもよい。代替的に、ワックスの組み合わせを添加して、複数の特性をトナー組成物に提供することができる。
【0048】
ワックスが含まれる場合、ワックスは、例えば、トナーの1重量%~25重量%、又はトナー粒子の5重量%~20重量%の量で存在してよい。
【0049】
ワックスが使用される場合、ワックスは、エマルション凝集トナーに従来使用されている様々なワックスのいずれかを含んでもよい。選択され得るワックスとしては、例えば、約500~約20000、又は約1,000~約10,000の平均分子量を有するワックスが挙げられる。使用され得るワックスとしては、例えば、Allied Chemical and Petrolite Corporationから市販されているような、直鎖状ポリエチレンワックスと分枝状ポリエチレンワックスを含むポリエチレン、直鎖状ポリプロピレンワックスと分枝状ポリプロピレンワックスを含むポリプロピレン、ポリメチレンワックス、ポリエチレン/アミド、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン/アミド、及びポリブテンワックスなどのポリオレフィン、例えば、Baker Petroliteから市販されているようなPOLYWAX(商標)ポリエチレンワックス、Michaelman,Inc.及びDaniels Products Companyから入手可能なワックスエマルション、Eastman Chemical Products,Inc.から市販されているEPOLENE N-15(商標)、並びにSanyo Kasei K.K.から入手可能な低重量平均分子量ポリプロピレンのVISCOL 550-P(商標)、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ウルシワックス、及びホホバオイルなどの植物系ワックス、蜜蝋などの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレジン、パラフィンワックス、粗油の蒸留に由来するワックスなどの微結晶ワックス、シリコーンワックス、メルカプトワックス、ポリエステルワックス、ウレタンワックス、などのミネラル系ワックス及び石油系ワックス、変性ポリオレフィンワックス(カルボン酸末端ポリエチレンワックス又はカルボン酸末端ポリプロピレンワックスなど)、Fischer-Tropschワックス、ステアリルステアレート及びベヘニルベヘネートなどの高級脂肪酸及び高級アルコールから得られるエステルワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、グリセリドモノステアレート、グリセリドジステアレート、及びペンタエリスリトールテトラベヘネートなどの高級脂肪酸及び一価又は多価低級アルコールから得られるエステルワックス、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジグリセリルジステアレート、及びトリグリセリルテトラステアレートなどの高級脂肪酸及び多価アルコールマルチマーから得られるエステルワックス、ソルビタンモノステアレートなどのソルビタン高級脂肪酸エステルワックス、並びにコレステリルステアレートなどのコレステロール高級脂肪酸エステルワックスが挙げられる。使用し得る官能化ワックスの例としては、例えば、アミン、アミド、例えば、Micro Powder Inc.から入手可能なAQUA SUPERSLIP 6550(商標)、SUPERSLIP 6530(商標)、フッ素化ワックス、例えば、Micro Powder Inc.から入手可能なPOLYFLUO 190(商標)、POLYFLUO 200(商標)、POLYSILK 19(商標)、POLYSILK 14(商標)、脂肪族極性アミド官能化ワックスなどの混合フッ素化アミドワックス、ヒドロキシル化不飽和脂肪酸のエステル、例えば、これもまたMicro Powder Inc.から入手可能なMICROSPERSION 19(商標)、イミド、エステル、第四級アミン、カルボン酸又はアクリルポリマーエマルション、例えば、いずれもSC Johnson waxから入手可能なJONCRYL 74(商標)、89(商標)、130(商標)、537(商標)、及び538(商標)、並びにAllied Chemical and Petrolite CorporationとSC Johnson Waxから入手可能な塩素化ポリプロピレン及びポリエチレンが挙げられる。前述のワックスの混合物及び組み合わせもまた、実施形態で使用されてもよい。ワックスは、例えば、定着機ロール剥離剤として含まれてもよい。実施形態では、ワックスは、結晶性又は非結晶性であってもよい。
【0050】
着色剤
【0051】
任意選択的に、(開示した蛍光剤以外の)着色剤が、本発明のトナーに含まれてよい。着色剤は、例えば、トナーの0重量%~25重量%、トナーの1重量%~20重量%、又はトナーの2重量%~15重量%の量で存在してよい。
【0052】
ファーネスブラック、サーマルブラックなどの形態で入手可能であるカーボンブラックは、好適な着色剤である。カーボンブラックは、シアン着色剤など1つ以上の他の着色剤と共に使用されてよい。
【0053】
シアン顔料の例としては、銅テトラ(オクタデシルスルホンアミド)フタロシアニン、CI74160としてカラーインデックスに記載されている銅フタロシアニン着色剤、HELIOGEN BLUE L6900(商標)、D6840(商標)、D7080(商標)、D7020(商標)、Paul Uhlich & Co.,Inc.から入手可能なPYLAM OIL BLUE(商標)、PYLAM OIL YELLOW(商標)及びPIGMENT BLUE(商標)、CIピグメントブルー(PB)、PB15:3、PB15:4、CI69810として識別されるAnthrazine Blue X-2137、これらの混合物などが挙げられる。
【0054】
マゼンタ顔料の例としては、C.I.26050として識別されるジアゾ染料、2,9-ジメチル置換キナクリドン、C.I.60710として識別されるアントラキノン染料、C.I.ディスパースレッド15、E.I.DuPont de Nemours & Co.から入手可能なCINQUASIA MAGENTATM(商標)、C.I.ソルベントレッド19、ピグメントレッド(PR)122、PR269、PR185、これらの混合物などが挙げられる。
【0055】
黄色着色剤の例としては、ジアリールイリドイエロー、3,3-ジクロロベンジジンアニリドアセトアセトアニリド(3,3-dichlorobenzidene acetoacetanilide)、カラーインデックスでC.I.12700として識別されるモノアゾ顔料、C.I.ソルベントイエロー16、カラーインデックスでForon Yellow SE/GLNとして識別されるニトロフェニルアミンスルホンアミド、sanofiからのLEMON CHROME YELLOW DCC 1026(商標)CI、NOVAPERM YELLOW FGL(商標)、Paliogen Yellow 152、1560(BASF)、Lithol Fast Yellow 0991K(BASF)、Paliotol Yellow 1840(BASF)、Neopen Yellow(BASF)、Novoperm Yellow FG 1(sanofi)、パーマネントイエローYE 0305(Paul Uhlich)、ピグメントイエロー74、Lumogen Yellow D0790(BASF)、サンスパースイエローYHD 6001(Sun Chemicals)、SUCD-Yellow D1355(BASF)、パーマネントイエローFGL、ディスパースイエロー、3,2,5-ジメトキシ-4-スルホンアニリドフェニルアゾ-4’-クロロ-2,5-ジメトキシアセトアニリド、これらの混合物などが挙げられる。
【0056】
実施形態では、トナーは、樹脂を含むエマルションと、蛍光剤(1つ以上の架橋蛍光ラテックスとして提供される)と、任意選択的に、ワックス(別個の分散体として提供される)と、任意選択的に、着色剤(別個の分散体として提供される)との混合物を凝集させ、次いで混合物を合体させるなどEAプロセスによって調製される。樹脂を含むエマルションは、1つ以上の樹脂を含んでもよく、又は異なる樹脂は、異なるエマルションとして提供されてもよい。樹脂を含むエマルション(複数可)は、一般に、蛍光剤を含まず、したがって蛍光剤がない。加えて、この樹脂は、一般に未架橋である。EAプロセスでは、蛍光剤は、混合物の他の成分とは別個の1つ以上の架橋蛍光ラテックスとして提供され、蛍光剤自体を混合物に単に添加するのとは対照的である。
【0057】
次に、混合物が均質化されてよく、毎分約600~約6,000回転(rpm)で混合することによって達成されてよい。均質化は、例えば、IKA ULTRA TURRAX T50プローブホモジナイザを含む任意の好適な手段によって達成してもよい。凝集剤は、混合物に添加されてもよい。任意の好適な凝集剤を利用してもよい。好適な凝集剤としては、例えば、二価カチオン又は多価カチオン材料の水溶液が挙げられる。凝集剤は、例えば、ポリ塩化アルミニウム(polyaluminum chloride、PAC)などのポリアルミニウムハライド、又は対応する臭化物、フッ化物、若しくはヨウ化物などの無機カチオン性凝集剤、ポリアルミニウムスルホシリケート(polyaluminum sulfosilicate、PASS)などのポリアルミニウムシリケート、又は塩化アルミニウム、亜硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、オキシ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、臭化マグネシウム、塩化銅、及び硫酸銅を含む水溶性金属塩、又はこれらの組み合わせであってもよい。凝集剤は、樹脂(複数可)のガラス転移温度(glass-transition temperature、Tg)未満の温度で混合物に添加されてもよい。凝集剤は、均質化下で混合物に添加されてもよい。
【0058】
凝集剤は、樹脂の総量の0重量%~10重量%、樹脂の総量の0.2重量%~8重量%、又は樹脂の総量の0.5重量%~5重量%の量で混合物に添加されてよい。
【0059】
混合物の粒子を、所定の所望の粒径が得られるまで凝集してもよい。所定の所望のサイズとは、形成前に決定される際に得られる所望の粒径を指し、粒径は、そのような粒径に達するまで成長プロセス中に監視される。サンプルは、成長プロセス中に採取され、体積平均粒径について、例えば、Coulter Counterで分析してもよい。したがって、凝集は、高温を維持すること、又は温度を、例えば、いくつかの実施形態では約30℃~約100℃、いくつかの実施形態では約30℃~約80℃、又はいくつかの実施形態では約30℃~約50℃に維持することによって進行してよい。温度は、凝集粒子を提供するために、撹拌しながら、約0.5時間~約6時間、又は実施形態では約1~約5時間の期間保持されてもよい。所定の所望の粒径に達すると、(シェルは必要ではないが)シェルが添加されてもよい。シェルの適用前の粒子の体積平均粒径は、例えば、約3マイクロメートル(μm)~約10μm、実施形態では約4μm~約9μm、又は約6μm~約8μmであってもよい。
【0060】
シェル樹脂
【0061】
実施形態では、凝集後であるが合体前に、凝集粒子に樹脂コーティングを適用して、その上にシェルを形成し得る。上述した任意の樹脂をシェルに利用してもよい。実施形態では、非晶性ポリエステル樹脂がシェルに利用される。実施形態では、(異なる種類の)2つの非晶性ポリエステル樹脂がシェルに利用される。実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂及び2つの異なる種類の非晶性ポリエステル樹脂がコアに利用され、2つの異なる種類の非晶性ポリエステル樹脂がシェルに利用される。シェル樹脂は、一般に、蛍光剤を含まず、したがって蛍光剤を含まない。加えて、このシェル樹脂は、一般に未架橋である。
【0062】
シェルは、上述したようにエマルション(複数可)の形態でシェル樹脂を使用することによって、凝集粒子に適用され得る。このようなエマルションは、凝集粒子上にコーティングを形成するのに十分な条件下で凝集粒子と組み合わされてもよい。例えば、凝集粒子上のシェルの形成は、約30℃~約80℃、又は約35℃~約70℃の温度まで加熱しながら生じてもよい。シェルの形成は、約5分~約10時間、又は約10分~約5時間の期間にわたって行われてもよい。
【0063】
トナー粒子の所望のサイズが達成されると、混合物のpHは、pH制御剤、例えば、塩基を用いて、約3~約10、又は実施形態では約5~約9の値に調整されてもよい。pHの調整は、トナー成長を停止させる凍結に利用されてもよい。トナー成長を停止するために利用される塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、これらの組み合わせなどのアルカリ金属水酸化物などの任意の好適な塩基を挙げることができる。実施形態では、上記の所望の値にpHを調整するのを助けるために、エチレンジアミン四酢酸(ethylene diamine tetraacetic acid、EDTA)などのキレート剤を添加してもよい。他のキレート剤が使用されてもよい。
【0064】
実施形態では、コアシェルトナー粒子のサイズ(合体前)は、約3μm~約10μm、約4μm~約10μm、又は約6μm~約9μmであってもよい。
【0065】
合体
【0066】
所望の粒径への凝集及びシェルの適用(ある場合)に続いて、粒子は次いで、所望の最終形状に合体されてもよく、その合体は、例えば、約45℃~約150℃、約55℃~約99℃、又は約60℃~約90℃の温度に混合物を加熱する(この温度は、トナー粒子を形成するために利用される樹脂のガラス転移温度以上であってもよい)。加熱は継続してもよく、又は混合物のpHは、所望の円形度に達するように一定時間にわたって調節(例えば、低減)されてもよい。その時間は、約1時間~約5時間、又は約2時間~約4時間であってもよい。合体中に様々な緩衝剤を使用し得る。合体の総期間は、約1~約9時間、約1~約8時間、又は約1~約5時間としてもよい。攪拌は、合体中において、例えば、約20rpm~約1000rpm、又は約30rpm~約800rpmが利用され得る。
【0067】
凝集及び/又は合体後、混合物を室温まで冷却してもよい。冷却は、所望に応じて急速であっても遅くてもよい。好適な冷却プロセスは、反応器の周囲のジャケットに冷水を導入することを含んでもよい。冷却後、所望のサイズのふるいでトナー粒子を篩分けし、濾過し、水で洗浄し、次いで乾燥させてもよい。乾燥は、例えば凍結乾燥を含む任意の好適な乾燥プロセスによって達成されてもよい。
【0068】
トナーでは、蛍光剤の総量は、例えば、トナーの0.1重量%~10重量%の量で存在してもよい。これは、トナーの0.1重量%~8重量%、トナーの0.2重量%~6重量%、トナーの0.5重量%~5重量%、及びトナーの1重量%~2重量%の総量を含む。
【0069】
トナーでは、結晶性樹脂は、例えば、トナーの1重量%~85重量%、トナーの5重量%~50重量%、又はトナーの10重量%~35重量%の量で存在してよい。非晶性樹脂又は非晶性樹脂の組み合わせは、例えば、トナーの5重量%~約95重量%、トナーの30重量%~90重量%、又はトナーの35重量%~85重量%の量で存在してよい。いくつかの実施形態では、結晶性及び非晶性樹脂が使用され、樹脂の重量比は、80重量%~60重量%の非晶性樹脂、20重量%~40重量%の結晶性樹脂である。このような実施形態では、非結晶性樹脂は、異なる種類の非結晶性樹の組み合わせ、例えば、2つの異なる種類の非結晶性樹脂の組み合わせであってもよい。実施形態では、非晶性樹脂のうちの一方は、他方よりも大きいMn又はMwを有する。
【0070】
他の添加剤
【0071】
実施形態では、トナーはまた、他の任意選択的な添加剤を含有し得る。例えば、トナーは、正電荷又は負電荷制御剤を含んでもよい。表面添加剤も使用されてもよい。表面添加剤の例としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、これらの混合物などの金属酸化物と、AEROSIL(登録商標)、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸マグネシウム、これらの混合物などの脂肪酸の金属塩及び金属塩、UNILIN700などの長鎖アルコール、並びにこれらの混合物が挙げられる。これらの各表面添加剤は、トナーの0.1%重量%~5重量%、又はトナーの0.25%重量%~3重量%の量で存在してよい。
【0072】
現像剤及び担体
【0073】
トナーは、現像剤組成物に配合されてもよい。現像剤組成物は、トナーを、鋼、フェライトなどのコーティングされた担体を含む既知の担体粒子と混合することによって調製することができる。このような担体としては、米国特許第4,937,166号及び同第4,935,326号に開示されているものが挙げられ、これらのそれぞれの開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。トナーは、1重量%~15%重量%、2重量%~8重量%、又は4重量%~6重量%の量で担体に存在してよい。担体粒子はまた、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)などのポリマーコーティングを有するコアも含むことができ、その中に導電性カーボンブラックのような導電性成分が分散されている。担体コーティングとしては、メチルシルセスキオキサンなどのシリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフルオロポリマー、ポリフッ化ビニリデン及びアクリルなどの摩擦電気系列表(triboelectric series)で近接していない樹脂の混合物、アクリルなどの熱硬化性樹脂、これらの組み合わせ、及び他の既知成分が挙げられる。
【0074】
用途
【0075】
本発明のトナーは、様々な電子写真式プロセスで、様々な電子写真式プリンタと共に使用し得る。電子写真式イメージングプロセスには、例えば、帯電構成要素、イメージング構成要素、光導電性構成要素、現像構成要素、転写構成要素、及び定着構成要素を含む電子写真式プリンタで画像を調製することが含まれる。実施形態では、現像構成要素は、担体を本明細書に記載のいずれかのトナーと混合することによって調製される現像剤を含んでもよい。電子写真式プリンタは、高速プリンタ、白黒高速プリンタ、カラープリンタなどを含んでもよい。画像がトナー/現像剤で形成されると、画像はその後、紙などの画像受容媒体に転写され得る。定着機ロール部材は、熱及び圧力を使用することによって、トナーを画像受容媒体に定着させるために使用され得る。上記のように、架橋蛍光樹脂から形成される本トナーの利点は、かかる定着機ロールの汚れを防止/最小化することである。
【0076】
インクジェット印刷組成物
【0077】
本架橋蛍光ラテックスから形成され得る別の例示的な組成物は、インクジェット印刷組成物である。このような組成物は、インクジェット印刷システムを介して射出可能であるように構成されている。かかる組成物は、開示した架橋蛍光ラテックス、溶媒(水など)、任意選択的に、共溶媒(水溶性又は水混和性有機溶媒など)、及び任意選択的に、界面活性剤、インクジェット印刷組成物の粘度を調整するための粘度調整剤、又はインクジェット印刷組成物の表面張力を調整するための表面レベリング剤など添加剤のうちのいずれかを含んでよい。所望の成分を所望の量で組み合わせるか、又は混合してもよい。インクジェット印刷組成物は、市販のインクジェット印刷システムと共に使用されてもよい。例示的な溶媒、共溶媒、添加剤、例示的な量、及び例示的なインクジェット印刷システムとしては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20190367753号に記載されているものが挙げられる。このようなインクジェット印刷組成物を使用して画像を形成する際、インクジェット印刷組成物は、インクジェット印刷システムを介して所望の基材上に堆積されてもよい。次いで、溶媒(複数可)が、堆積されたままのインクジェット印刷組成物から蒸発させられてもよい。
【実施例0078】
以下の実施例は、本開示の実施形態を説明するために提出される。これらの実施例は例示的なものにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。また、別途記載のない限り、割合及び百分率は重量による。本明細書全体を通して使用されるとき、「室温」は、20℃~25℃の温度を指す。
【0079】
架橋蛍光ラテックスを以下のように調製した。まず、未架橋蛍光ラテックスを調製した。つまり、200gの不飽和非晶質ポリエステル樹脂と、4gの蛍光剤との混合物を、55℃の2L反応器中のメチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、水、及びアンモニア水溶液の混合物に溶解させた。蛍光増白剤184及びソルベントイエロー160:1をそれぞれ使用して、個々の未架橋蛍光ラテックスを調製した。全ての場合において、混合物に追加の塩基溶液(アンモニア水溶液)を添加して、ポリエステル樹脂を完全に中和した。1時間後、脱イオン水を各混合物に添加した。このプロセス中に、真空を適用することによって有機溶媒を除去し、水を添加して、所望の水の量を維持した。最後に、得られたエマルションを25μmのふるいを通して濾過した。エマルションの平均粒径は約250nmであり、固形分含量は約30%であった。各エマルション中の総蛍光剤含量は、約1%であった。界面活性剤(Calfax)及び殺生物剤(Proxel GXL)を添加して、未架橋蛍光ラテックスを安定化させ、生物成長を防止した。
【0080】
蛍光剤組み込み樹脂粒子を架橋し、架橋蛍光ラテックスを形成するために、各未架橋蛍光ラテックスに、未架橋蛍光ラテックス中の樹脂の重量と比較して、1重量%の量で過硫酸アンモニウム(APS)溶液(APS水溶液)を添加した。混合物を約90℃の温度に約1.5時間加熱した。加熱は、不活性ガス下で行った。これらの条件を使用して、開始剤を活性化させ、架橋反応を誘発した。
【0081】
蛍光剤としてソルベントレッド49を、また、油溶性開始剤(アゾ開始剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))を用いて、比較架橋蛍光ラテックスを調製した。まず、有機溶媒を除去する前に油溶性開始剤を添加する変性によって、上記のように未架橋蛍光ラテックスを調製した。次に、同様の条件を使用して開始剤を活性化させ、架橋反応を誘発し、続いて有機溶媒を除去し、水を添加し、濾過し、界面活性剤/殺生物剤を添加した。
【0082】
開始剤を添加しなかった/架橋が誘発されなかった変性によって、他の比較未架橋蛍光ラテックスを上記のように調製した。
【0083】
TA instruments製のARES-G2レオメーターを使用して、架橋蛍光ラテックスでレオロジー周波数掃引試験を実施した。温度は120℃であり、約0.001~約1000.000rad/秒で周波数を掃引した。上記のように、G’∝ωnであった。3つの架橋蛍光ラテックスのn値を以下の表1に示す。これらは、周波数掃引の線形部分について、0.100~1.000rad/秒にわたって得た。
【0084】
【0085】
この結果は、水溶性開始剤を使用すると、油溶性開始剤を使用するよりも7~55倍大きい架橋度をもたらすことを示す。また、サンプル1及びサンプル2のn値は、架橋樹脂粒子が高度に架橋されていることを示す。
【0086】
分光濃度計を使用して蛍光性を定量化し、反射スペクトルを得た。この結果は、表1のサンプル1及びサンプル2のピーク反射率値は、未架橋蛍光ラテックスを使用した各比較サンプル(すなわち、同一蛍光ラテックスであるが未架橋である)のピーク反射率値の約±1%以内であることを示した。これは、架橋プロセスが蛍光特性に影響しなかったことを確認する。
【0087】
最後に、サンプル1及びサンプル2から蛍光トナーを調製し、電子写真式印刷試験を実施した。この結果は、未架橋蛍光ラテックスから調製した蛍光トナーと比較して、電子写真式印刷システムの定着機ローラ部材の使用期間を少なくとも20%延長させたことを示した。これは、蛍光剤に起因する定着機ロールの汚れの著しい低減を反映する。
【0088】
上記で開示されたものの変形例、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることが理解されるであろう。様々な現在予期されない、又は先行例のない代替物、修正、変形、又は改善が、当業者によって後に行われてもよく、これらはまた、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。