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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058276
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20220404BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 8/45 20060101ALI20220404BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/06
A61K8/55
A61K8/34
A61K8/73
A61K8/37
A61K8/45
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160190
(22)【出願日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2020166565
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000166959
【氏名又は名称】御木本製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(72)【発明者】
【氏名】山邉 幸久
(72)【発明者】
【氏名】泉 智子
(72)【発明者】
【氏名】服部 文弘
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD211
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB04
4C083BB12
4C083CC02
4C083DD33
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】ニコチン酸アミドを含有し、かつ、肌のハリ・弾力付与効果に優れ、べたつきの少ない優れた使用感を有し、乳化安定性に優れた水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】水中油型乳化組成物は、以下の成分を含有する。
(A)ニコチン酸アミド 1~10質量%
(B)水素添加リン脂質 0.001~1.5質量%
(C)非イオン性界面活性剤 0.1~3.5質量%
(D)水溶性高分子 0.02~0.5質量%
(E)25℃でペースト状である油性成分
(F)多価アルコール 5~25質量%
(G)水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
(A)ニコチン酸アミド 1~10質量%
(B)水素添加リン脂質 0.001~1.5質量%
(C)非イオン性界面活性剤 0.1~3.5質量%
(D)水溶性高分子 0.02~0.5質量%
(E)25℃でペースト状である油性成分
(F)多価アルコール 5~25質量%
(G)水
【請求項2】
前記成分(D)が、ヒアルロン酸又はその塩と、シロキクラゲ多糖体とを含有することを特徴とする請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
前記成分(F)の含有量が5~20質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
前記成分(E)がジペンタエリトリット脂肪酸エステルを含有し、該ジペンタエリトリット脂肪酸エステルの含有量が0.5~2.0質量%であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
前記成分(C)が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が10~15であり、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が1.2~2.0質量%であることを特徴とする請求項5記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
前記ショ糖脂肪酸エステルのHLB値が5~9であり、前記ショ糖脂肪酸エステルの含有量が0.5~1.5質量%であることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の水中油型乳化組成物。
【請求項8】
さらに、成分(H)として高級アルコール及びアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化組成物に関し、特に、ニコチン酸アミドを含有する水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の美的外観を大きく左右する要素として、シワ、たるみ、しみ、色素沈着などが挙げられる。これらシワやたるみを予防・改善する薬剤として多くが提案されているが、その中でビタミン類であるニコチン酸アミドは安全性が高く、皮膚老化防止効果を有することが知られている(特許文献1、2)。しかしながらニコチン酸アミドを多量に含有するとべたつきなど、望ましくない使用感触があることが知られている(特許文献3)。
【0003】
特に、化粧品においては医薬品と異なり、官能面や安定性が重要な因子である。このため、従来では種々検討がなされているが、ニコチン酸アミドを含有し、安定性がよく、官能面でも十分なエマルションが得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-130135号公報
【特許文献2】特開平10-001414号公報
【特許文献3】特表2003-502435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ニコチン酸アミドを含有し、かつ、肌のハリ・弾力付与効果に優れ、べたつきの少ない優れた使用感を有し、乳化安定性に優れた水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水中油型乳化組成物は、以下の成分を含有することを特徴とする。
(A)ニコチン酸アミド 1~10質量%
(B)水素添加リン脂質 0.001~1.5質量%
(C)非イオン性界面活性剤 0.1~3.5質量%
(D)水溶性高分子 0.02~0.5質量%
(E)25℃でペースト状である油性成分
(F)多価アルコール 5~25質量%
(G)水
【0007】
上記成分(D)が、ヒアルロン酸又はその塩と、シロキクラゲ多糖体とを含有することを特徴とする。
【0008】
上記成分(F)の含有量が5~20質量%であることを特徴とする。
【0009】
上記成分(E)がジペンタエリトリット脂肪酸エステルを含有し、該ジペンタエリトリット脂肪酸エステルの含有量が0.5~2.0質量%であることを特徴とする。
【0010】
上記成分(C)が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とする。
【0011】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が10~15であり、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が1.2~2.0質量%であることを特徴とする。
【0012】
上記ショ糖脂肪酸エステルのHLB値が5~9であり、上記ショ糖脂肪酸エステルの含有量が0.5~1.5質量%であることを特徴とする。
【0013】
さらに、成分(H)として高級アルコール及びアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水中油型乳化組成物は、上記成分(A)~(G)を含有するので、肌のハリ・弾力付与効果に優れ、べたつきの少ない優れた使用感を有し、乳化安定性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0016】
<1>成分(A):ニコチン酸アミド
本発明における成分(A)は、ニコチン酸(ビタミンB3/ナイアシン)のアミド化合物であり、水溶性ビタミンである。ニコチン酸アミドは、天然物(米ぬかなど)からの抽出物由来のものでもよく、公知の方法によって合成したものでもよい。具体的には、日本薬局方に収載されているものを用いることができる。ニコチン酸アミドは、肌荒れ改善作用や、メラニン生成抑制作用、美白効果などが知られている。
【0017】
本発明において成分(A)の含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して1~10質量%である。これにより、肌のハリ・弾力を向上させるとともに、べたつきを抑えることができる。本発明では、ニコチン酸アミドを高濃度含有しても、優れた乳化安定性を発揮することから、成分(A)の含有量は3~10質量%が好ましく、4~7質量%がより好ましい。
【0018】
<2>成分(B):水素添加リン脂質
本発明における成分(B)は、リン脂質の不飽和炭素鎖を水素添加により飽和させたものである。水素添加リン脂質として、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールなどの水素添加物や、天然の大豆や卵黄から抽出した大豆レシチン、卵黄レシチンなどの水素添加レシチンが挙げられる。また、本発明における成分(B)には、リン脂質から脂肪酸基が一つ外れたリゾリン脂質の水素添加物も含まれる。成分(B)として、上記の水素添加物の中から1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
乳化安定性の点から、成分(B)は水素添加レシチンを含有することが好ましい。水素添加レシチンのPC含量は、例えば10~70質量%である。市販品として、例えば、日光ケミカルズ社のレシノールS-10(水素添加大豆リン脂質:PC含量25~30質量%)、同社レシノールS-10M(水素添加大豆リン脂質:PC含量55~65質量%)を使用することができる。
【0020】
本発明において、成分(B)の含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して0.001~1.5質量%である。さらにべたつき改善、乳化安定性の向上の点から、成分(B)の含有量は0.05~1.0質量%が好ましく、0.1~0.5質量%がより好ましい。
【0021】
<3>成分(C):非イオン性界面活性剤
本発明における成分(C)は、水に溶解させた場合にイオンにならない界面活性剤であり、エーテル型、エステル型、エーテルエステル型などがある。非イオン性界面活性剤として、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグリコシドなどが挙げられる。成分(C)として、これらの中から1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
また、上記で例示した脂肪酸エステルを含む非イオン性界面活性剤を構成する脂肪酸には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸などを用いることができる。また、結合する脂肪酸の数は1~3個が好ましい。
【0023】
本発明において、成分(C)の含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して0.1~3.5質量%である。さらにべたつき改善、乳化安定性の点から、成分(C)の含有量は、好ましくは1.0~3.5質量%であり、より好ましくは2.0~3.5質量%である。
【0024】
乳化安定性の点から、成分(C)はポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを含有することが好ましい。この場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が、ショ糖脂肪酸エステルのHLB値よりも高いことが好ましい。具体的には、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が10~15であり、ショ糖脂肪酸エステルのHLB値が5~9であることが好ましい。これら脂肪酸エステルにおける脂肪酸の数及び脂肪酸の炭素数は、HLB値が各範囲になるように調整される。例えば、HLB値10~15のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノステアリン酸ポリグリセリル(HLB値12)などが挙げられる。また、HLB値5~9のショ糖脂肪酸エステルとしては、ジステアリン酸スクロース(HLB値7)などが挙げられる。
【0025】
上記の2つの脂肪酸エステルを含有する構成において、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して0.5~2.0質量%が好ましく、1.2~2.0質量%がより好ましい。また、ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して0.5~2.0質量%が好ましく、0.5~1.5質量%がより好ましい。さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量とショ糖脂肪酸エステルの含有量との比は(1:1)~(2:1)が好ましく、(1.2:1)~(1.5:1)がより好ましい。
【0026】
HLB値の異なる2種の非イオン性界面活性剤を組み合わせることで、乳化安定性に一層優れた水中油型乳化組成物になる。なお、上述の2種の非イオン性界面活性剤に加えて、さらに他の非イオン性界面活性剤を配合してもよい。
【0027】
なお、本発明において、HLB値は、有機概念図におけるIOB×10で示される。有機概念図におけるIOBとは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、即ち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。有機概念図とは、藤田穆により提案されたものであり、その詳細は、“Pharmaceutical Bulletin”,1954,vol.2,2,p.163-173;「化学の領域」,1957,vol.11,10,p.719-725;「フレグランスジャーナル」,1981,vol.50,p.79-82などで説明されている。即ち、全ての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物は全てメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環などにそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値及び無機性値を求める。この値を、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。この有機概念図は、「有機概念図-基礎と応用-」(甲田善生著、三共出版、1984)などにも示されている。
【0028】
<4>成分(D):水溶性高分子
本発明における成分(D)は、水溶液にし、必要に応じpHを調整した際に増粘効果を得られる高分子の総称である。例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン/アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化ガーガムなどのカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸メタクリル酸アクリル共重合体、ポリオキシエチレン(POE)/ポリオキシプロピレン(POP)共重合体、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩、シロキクラゲ多糖体、コラーゲン、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、ガーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸塩、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、高重合度ポリエチレングリコール、カチオン化シリコーン重合体などが挙げられる。成分(D)として、これらの中から1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
本発明において、成分(D)の含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して0.02~0.5質量%であり、好ましくは0.02~0.3質量%であり、より好ましくは0.02~0.1質量%である。
【0030】
特に、乳化安定性の点から、成分(D)は、ヒアルロン酸又はその塩と、シロキクラゲ多糖体とを含有することが好ましい。ヒアルロン酸は、一般に保水成分として知られる多糖類である。ヒアルロン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。シロキクラゲ多糖体は、シロキクラゲ科に属するキノコから得られる水溶性多糖類である。ヒアルロン酸又はその塩の含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して0.001~0.1質量%が好ましく、0.005~0.01質量%がより好ましい。また、シロキクラゲ多糖体の含有量は0.00005~0.001質量%が好ましく、0.0001~0.001質量%がより好ましい。
【0031】
また、成分(D)は、ヒアルロン酸又はその塩とシロキクラゲ多糖体に加えて、さらに他の水溶性高分子を含有してもよい。他の水溶性高分子としては、カルボキシビニルポリマー、コンドロイチン硫酸又はその塩、キサンタンガム、ポリエチレングリコールから選ばれる1種以上であることが好ましい。カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸重合体を主とする酸性ポリマーであり、市販のものを用いることができる。また、キサンタンガムは、Xanthomonas campestris菌の発酵作用により得られる多糖類である。成分(D)は、他の水溶性高分子として、少なくともカルボキシビニルポリマーを含有することが好ましく、その含有量は、例えば0.01~0.1質量%である。
【0032】
<5>成分(E):25℃でペースト状である油性成分
本発明における成分(E)は、25℃で高い粘性を示す半固形の成分であり、融点が25℃よりも高い油剤である。なお、ここでいう「融点」は、医薬部外品規格一般試験法、融点測定法に記載の方法に基づき測定されるものである。本発明における成分(E)としては、例えば、ワセリン、ラノリン、シア脂、水添パーム油、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルなどが挙げられる。成分(E)として、これらの中から1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
本発明において、成分(E)の含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して0.5~5質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。
【0034】
特に、乳化安定性の点から、成分(E)は、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルを含有することが好ましい。ジペンタエリトリット脂肪酸エステルとしては、例えばヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット、ロジン酸ジペンタエリトリットなどが挙げられる。また、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルは、水中油型乳化組成物全量に対して0.5~2.0質量%含まれることがより好ましい。さらに、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルの含有量と上述した成分(C)の含有量との比は(1:1.5)~(1:3)が好ましく、(1:2)~(1:3)がより好ましい。
【0035】
<6>成分(F):多価アルコール
本発明における成分(F)は、一般に化粧品、医薬品などの分野において使用されるものであれば特に制限なく使用できる。例えば、1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、ソルビトール、ラクチトール、マルチトールなどが挙げられる。成分(F)として、これらの中から1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
上記の多価アルコールの中でも、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及びグリセリンから選ばれる1種以上を用いることが好ましく、1,3-ブチレングリコールとグリセリンを組み合わせて使用することがより好ましい。後者の場合、成分(F)は、1,3-ブチレングリコールを多価アルコール全量に対して60質量%以上含有することが好ましく、65質量%以上含有することがより好ましい。
【0037】
本発明において、成分(F)の含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して5~25質量%であり、好ましくは5~20質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。
【0038】
<7>成分(G):水
本発明における成分(G)は、一般に化粧品、医薬品などの分野において使用されるものであれば特に制限なく使用できる。水の他に、精製水、温泉水、深層水などを使用でき、これらの中から1種又は2種以上を適宜用いることができる。成分(G)の含有量は、特に限定されないが、30~70質量%が好ましい。
【0039】
本発明の水中油型乳化組成物には、成分(A)から成分(G)以外の成分も適宜配合できる。例えば、水中油型乳化組成物の油性成分として、下記の成分(H)を配合することが好ましい。
【0040】
<8>成分(H):高級アルコール及びアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上
本発明における成分(H)の高級アルコールは、炭素原子数6以上の一価アルコールの総称である。高級アルコールには、ロウ類を加水分解(けん化解)して得た分解アルコールの他、脂肪酸の高圧水素還元によって得られる還元アルコール、及び石油資源から得られる合成アルコールも用いることができる。
【0041】
上記高級アルコールは、一価アルコールで炭素原子数6以上のアルコールのうち、炭素原子数14~22で直鎖の飽和アルキル基を有するアルコールが好ましい。この高級アルコールは、25℃で固形であり、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。
【0042】
また、本発明における成分(H)のアルキルグリセリルエーテルは、グリセロールのヒドロキシル基とアルコールがエーテル結合を作った化合物のうち、アルキル基を有するものの総称である。
【0043】
上記アルキルグリセリルエーテルは、モノアルキルグリセリルエーテル、ジアルキルグリセリルエーテル、トリアルキルグリセリルエーテルのいずれでもよく、又はこれらの混合物でもよい。上記の中でもモノアルキルグリセリルエーテルが好ましく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有し、アルキル基の炭素原子数14~22のものがより好ましい。このアルキルグリセリルエーテルは、25℃で固形であり、例えば、バチルアルコール、キミルアルコールなどが挙げられる。
【0044】
本発明において、成分(H)の含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して2~10質量%が好ましく、4~8質量%がより好ましい。また、成分(H)は、高級アルコール及びアルキルグリセリルエーテルを含有することが好ましい。
【0045】
本発明の水中油型乳化組成物は、上記成分(H)以外の他の油性成分を含むことが好ましい。例えば、25℃よりも低い融点を有し、25℃で液状の油性成分を配合することが好ましい。25℃で液状の油性成分としては、例えば、流動パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワランなどの炭化水素油や、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピルなどのエステル油、大豆油、ヌカ油、ホホバ油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、マカデミアナッツ油などの植物油、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサンなどのシリコーン油、オレイン酸などの高級脂肪酸などが挙げられる。
【0046】
本発明の水中油型乳化組成物は、油性成分として、成分(E)、成分(H)、及び25℃で液状の油性成分を含むことがさらに好ましい。この構成において、全体の油性成分は、水中油型乳化組成物全量に対して10~35質量%含まれることが好ましく、20~35質量%含まれることがより好ましい。また、25℃で液状の油性成分は、油性成分全量に対して、例えば40~70質量%含まれる。なお、界面活性剤については、油性成分に溶解する部分は油性成分として、水性成分に溶解する部分は水性成分として扱う。
【0047】
また、本発明の水中油型乳化組成物には、その他に、水溶性ビタミン類や、アミノ酸誘導体、無機塩類、キレート剤、防腐剤、pH調整剤、色素、水溶性薬剤なども必要に応じて適宜配合される。また、本発明の水中油型乳化組成物には、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤は含まないことが好ましい。
【0048】
本発明の水中油型乳化組成物の製造方法は特に限定はなく、通常の乳化のほかに、多段階乳化、D相乳化、転相乳化、液晶乳化、PIT乳化、ゲル乳化、膜乳化などが選択でき、乳化装置も特に限定はなく、スターラー、インペラー攪拌、ホモミキサーなどの通常の乳化装置のほかに、マントン-ゴーリン型高圧ホモジナイザー、ジェット水流反転型高圧乳化機、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、スターバーストなどの高圧乳化機も使用でき、これら1つ又は2つ以上を組み合わせて必要な粒子径を得ることができる。
【0049】
本発明の水中油型乳化組成物は、他の成分との併用により種々の剤型とすることもできる。具体的には、ゲル状、ペースト状、液状、クリーム状、固形状などの剤型にできる。
【実施例0050】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
表1に実施例及び比較例の組成と結果を示す。製法は、A相、B相をそれぞれ80℃まで加温し、ホモミキサーで攪拌しつつA相にB相を徐々に加えたのち、冷却した。その後、C相を加えた。
【0052】
【表1】
【0053】
注1)日本サーファクタント工業社 ニッコール デカグリン 1-SV(HLB値:12)
注2)日光ケミカルズ社 レシノール S-10
注3)日光ケミカルズ社 レシノール S-10M
注4)日清オイリオグループ社 コスモール168M
注5)三菱化学フーズ社 サーフホープSE COSME C-1807(HLB値:7)
注6)日本サーファクタント工業社 ニッコール MGS-F75V(HLB値:1.5)
【0054】
表1の「乳化安定性」は以下のように判定した。
製剤を透明なガラス瓶に充填し、40℃75%RH条件で6か月保管した。これの乳化状態を目視で確認した。
〇:分離、凝集などの状態変化は認められない。
△:分離、凝集などの状態変化がわずかに認められる。
×:分離、凝集などの状態変化が明らかに認められる。
また、比較例5(※印)では作成直後において目的とする乳化状態が得られなかった。
【0055】
実施例1~7はいずれも肌のハリ・弾力付与効果に優れ、べたつきの少ない優れた使用感を有し、乳化安定性に優れた水中油型乳化組成物を提供できた。