(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058311
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】鉛フリーはんだ合金及びはんだ接合部
(51)【国際特許分類】
B23K 35/26 20060101AFI20220404BHJP
C22C 13/02 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B23K35/26 310A
C22C13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162331
(22)【出願日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2020164354
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592025786
【氏名又は名称】株式会社日本スペリア社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】Sn-Bi系はんだ合金の融点の低さを維持し、且つ、従来よりも良好な物理的特性を有し、更には延性や歪み特性等が向上した従来よりも信頼性の高い接合部を形成可能な鉛フリーはんだ合金を提供すること。
【解決手段】Biを32質量%以上40質量%以下、Sbを0.1質量%以上1.0質量%以下、Cuを0.1質量%以上1.0質量%以下、Niを0.001質量部以上0.1質量部以下含有し、更に、Si、As及びPtの群から選ばれる1種以上の元素を0.0005~0.1質量%を含有し、残部がSn及び不可避不純物からなる、鉛フリーはんだ合金。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Biを32質量%以上40質量%以下、Sbを0.1質量%以上1.0質量%以下、Cuを0.1質量%以上1.0質量%以下、Niを0.001質量部以上0.1質量部以下含有し、更に、Si、As及びPtの群から選ばれる1種以上の元素を0.0005~0.1質量%を含有し、残部がSn及び不可避不純物からなる、鉛フリーはんだ合金。
【請求項2】
請求項1記載の鉛フリーはんだ合金を用いて形成されたはんだ接合部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛フリーはんだ合金及びはんだ接合部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球環境負荷軽減のため、電子部品の接合材料として鉛フリーはんだが普及している。鉛フリーはんだの代表的な組成として、Snを主成分としたSn-Ag-Cu系はんだ合金、Sn-Cu-Ni系はんだ合金が知られている。しかし、Sn-Ag-Cu系はんだ合金は融点が217℃、Sn-Cu-Ni系はんだ合金は融点が227℃であることが知られており、従来用いられていたSn-Pb共晶組成物の融点である183℃より高い。そのため、例えば、耐熱性の低い電子部品の接合を必要とするパーソナルコンピュータ等の基板には、BiやInを所定量含有させることで融点を低くしたSn-Bi系、Sn-In系の鉛フリーはんだ合金が適用されている。
【0003】
ところで、Biを用いてSn-Bi系はんだ合金にBiを多く配合させると、はんだ合金が脆くなり、機械的強度が低下する。また、電子部品や基板が熱による膨張・収縮を繰り返すことではんだ接合部に繰り返し応力が発生するため熱疲労によりクラックが発生し易く、長期信頼性が低い。Inは高価であるため、コストの面で不利である。
【0004】
そこで、Sn-Bi系はんだ合金の特性を改善するために、検討が行われている(特許文献1~4)。
【0005】
特許文献1には、Sn-57又は45質量%Bi-x質量%M(但し、Mは、銅、銀、ニッケル、ゲルマニウム、アンチモン、及びインジウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属であり、xは4.0質量%以下である)で表されるはんだ合金、及び該はんだ合金に対し、任意の含量又は5ないし20質量%の熱硬化性接着剤を含有することを特徴とするはんだ接合材料が開示されている。そして、このような構成により、リフロー温度を十分に低くすることができ、Sn-Pbはんだ合金の代替えとして十分な特性を有する鉛フリーはんだ合金接合が得られるとされている。
【0006】
特許文献2には、Bi20~57重量%、Sb0.2~5重量%、Ga0.01~1重量%、残部Snからなることを特徴とする無鉛はんだ合金が開示されている。そして、このような構成により、Sn-Pbはんだ合金(共晶組成物)と同等以下の低温ではんだ付けが可能であるため熱に弱い電子部品の接合でも作業性を向上でき、かつ、はんだ合金としての物理的特性も良好な状態を確保できるとされている。
【0007】
特許文献3には、質量%で、Bi:31~59%、Sb:0.15~0.75%、さらにCu:0.3~1.0%およびP:0.002~0.055%からなる群から選択される1種または2種を含有し、残部Snからなる合金組成を有する鉛フリーはんだ合金が開示されている。そして、このような構成により、はんだ接合時の基板の熱歪みを抑制するのに十分な低融点を有し、延性に優れ引張強度が高く、かつ無電解Niめっきにより処理された電極へのはんだ付け中に接合界面におけるPリッチ層の生成を抑制して、はんだ接合部のせん断強度を向上させることができる、また、当該はんだ合金によるはんだ継手は、従来よりも薄い基板を使用したとした場合でも優れた接続信頼性を確保することができるとされている。
【0008】
特許文献4には、Biが20~60質量%添加され、Cu、Ni及びPから1つ以上の元素が選択され、選択された前記Cuは、0~3質量%、選択された前記Niは、0.005~0.5質量%、選択された前記Pは、0.005~0.05質量%で添加され、残部がSn及び不可避不純物からなる、無鉛はんだが開示されている。そして、このような構成により、Ag、In及びSbを用いなくても、有鉛はんだよりも低融点で、耐疲労特性に優れる無鉛はんだを提供することができるとされている。
【0009】
特許文献5は、本発明者が前述の従来技術のSn-Bi系はんだ合金の課題を改善した技術を記載したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-90407号公報
【特許文献2】特開平7-40079号公報
【特許文献3】特許第5679094号公報
【特許文献4】特開2014-140865号公報
【特許文献5】PCT/JP2020/16201
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のような特許文献1~4の先行技術により、Sn-Bi系はんだ合金の融点の低さを維持しつつ、物理的特性はある程度改善されるものの、改善の余地があるのが現状である。また、特許文献5の技術により、前述の従来技術のSn-Bi系はんだ合金の課題を改善することが可能であり、良好な特性を有しているが、接合対象によっては、更なる優れた接合特性を必要とする場合も生じ、延性や歪み特性等が向上した接合が可能な鉛フリーはんだ合金が求められている。そこで、本発明の目的は、Sn-Bi系はんだ合金の融点の低さを維持し、且つ、従来よりも良好な物理的特性を有し、更には延性や歪み特性等が向上した従来よりも信頼性の高い接合部を形成可能な鉛フリーはんだ合金を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前述の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、Sn-Biはんだ合金に特定の成分を特定量含有させることで、前述の課題が解決可能であることを見出した。
【0013】
本発明の第一は、Biを32質量%以上40質量%以下、Sbを0.1質量%以上1.0質量%以下、Cuを0.1質量%以上1.0質量%以下、Niを0.001質量部以上0.1質量部以下含有し、更に、Si、As及びPtの群から選ばれる1種以上の元素を0.0005~0.1質量%を含有し、残部がSn及び不可避不純物からなる、鉛フリーはんだ合金に関する。
【0014】
本発明の第二は、前述の鉛フリーはんだ合金を用いて形成されたはんだ接合部に関する。
【0015】
ここで、不可避不純物とは、はんだの原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入したりするものをいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、Sn-Bi系はんだ合金の融点の低さを維持し、且つ、従来よりも良好な物理的特性を有し、更には、延性や歪み特性等が向上し、従来よりも信頼性の高い接合部を形成可能な鉛フリーはんだ合金を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例及び比較例において用いた引張強度試験測定サンプルの形状を示した図である。
【
図2】本発明の実施例と比較例の引張強度測定値を比較したグラフである。
【
図3】本発明の実施例の伸び率を、比較例を100とした場合の変化率を示したグラフである。
【
図4】実施例1~16及び比較例1、3、4のはんだ合金を用いたインパクトシェア試験を行った時の、エージング前後のシェア強度および吸収エネルギーの変化率を示した図である。
【
図5】実施例1~16及び比較例1、3、4のはんだ合金を用いたインパクトシェア試験を行った時の、エージング前後のシェア強度及び吸収エネルギーの変化率の比較例1に対する相対変化率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
本発明の実施形態に係る鉛フリーはんだ合金(以下、単に「はんだ合金」と称する場合がある。)は、Biを32質量%以上40質量%以下、Sbを0.1質量%以上1.0質量%以下、Cuを0.1質量%以上1.0質量%以下、Niを0.001質量部以上0.1質量部以下含有し、更に、Si、As及びPtの群から選ばれる1種以上の元素をそれぞれ0.0005~0.1質量%含有し、残部がSn及び不可避不純物からなる。
【0020】
このように、Snを母相とし、Bi、Sb、Cu、Niを特定範囲で含有させることで、Biによる融点低下効果を良好に保持するとともに、Biによる物理的特性の低下を大幅に抑制することができる。特に、長期使用時の劣化を抑制し、良好な耐熱疲労特性を有することが可能になる。そのため、信頼性の高いはんだ接合部を形成することが可能になる。また、Sb、Cu、Niは、Biよりも体積抵抗率が低い元素であることから、BiをSnとの共晶組成物に近い組成で含有させた場合に比べてその含量が低いことと相俟って、はんだ合金の体積抵抗率を従来よりも低下させことが可能である。
【0021】
また、前述のSnを母相とし、Bi、Sb、Cu、Niを特定範囲で含有させ、更に、Si、As及びPtの群から選ばれる1種以上の元素を特定範囲で添加することで、例えば基板上の金属配線とはんだ合金との界面等における186℃で起こるCu6Sn5η―η’変態を抑制し、更に、延性や歪み特性等が向上させることが可能である。その結果、はんだ合金内部のクラックの発生、はんだ合金と金属配線間の界面剥離を防止して、外的な刺激により発生する応力に対しても信頼性の高い接合部を形成可能である。
【0022】
また、このような特定の成分組成を有することで、エレクトロマイグレーションの発生を抑制することができる。その作用機序は明らかではないが、通電、高温環境により生じ得るはんだ合金中の金属原子の移動を抑制可能なため、はんだ接合部中のIMC粗大化やボイド形成を抑制して、信頼性の高いはんだ接合部を形成可能であると考えられる。
【0023】
Biの含量は、32質量%以上40質量%以下である。32質量%より低いと、融点低下効果が十分ではない傾向にある。また、40質量%より多いとはんだ合金が脆くなり、所望の物理的特性が得られない傾向にある。Biの含量はこのような範囲であればよいが、36質量%以上38質量%以下が好ましい。
【0024】
Sbの含量は、0.1質量%以上1.0質量%以下である。好ましくは、0.1質量%以上0.6質量%以下である。SbはSn-Biはんだ合金に延性を付与したり、β-Snからα-Snへの相変態を抑制することで体積変化を抑制したりする作用があることは知られている。しかし、他の金属成分との関係で、Sbをこのような範囲で含有させることで初めて、前述のような各種の作用効果が発揮されるのである。
【0025】
Cuの含量は、0.1質量%以上1.0質量%以下である。好ましくは、0.3質量%以上0.7質量%以下である。CuはSn-Biはんだ合金に延性を付与する作用があることは知られている。しかし、他の金属成分との関係で、Cuをこのような範囲で含有させることで初めて、前述のような各種の作用効果が発揮されるのである。
【0026】
Niの含量は、0.001質量%以上0.1質量%以下である。好ましくは、0.005質量%以上0.07質量%以下、より好ましくは、0.01質量%以上0.05質量%以下である。Niは、CuとSnとの金属間化合物の発生を抑制し融点の上昇や流動性の低下を抑制する作用、合金の強度や接合性を向上させる作用があることは知られている。しかし、他の金属成分との関係で、Niをこのような範囲で含有させることで初めて186℃で起こるCu6Sn5η―η’変態を抑制する作用効果が発揮されるのである。
【0027】
更に、Sn、Bi、Sb、Cu及びNi以外にSi、As及びPtの群から選ばれる1種以上の元素をそれぞれ特定範囲で含有することにより、延性や歪み特性が向上し合金強化に繋がる。加えて、濡れ広がりの向上、金属間化合物の成長抑制や、耐衝撃特性向上も期待できる。
【0028】
Siは、はんだ接合部の延性や歪み特性の向上が期待できる。Siの含量は、0.0005~0.1質量%であり、0.001~0.05質量%が好ましく、0.003~0.02質量%がより好ましい。
【0029】
Asは、はんだ接合時に濡れ広がりを改善し、はんだ接合部の強度を向上させる。Asの含量は、0.0005~0.1質量%であり、0.001~0.05質量%が好ましく、0.003~0.02質量%がより好ましい。
【0030】
Ptは、はんだ接合部の金属間化合物の成長を抑制し、耐衝撃性を向上させることが期待できる。Ptの含有量は、0.0005~0.1質量%であり、0.001~0.05質量%が好ましく、0.003~0.02質量%がより好ましい。
【0031】
実施形態に係るはんだ合金には、不可避不純物が含まれ得る。しかし、不可避不純物が含まれても、前述の効果を奏することができる。
【0032】
はんだ合金の形態は、特に限定はなく、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、ディップはんだ付け方法によりはんだ接合を行う場合は、棒状の形状とすることができる。リフローはんだ付けによりはんだ接合を行う場合は、ペースト状の不定形のものでもよいし、ボール状、プリフォーム状の形状を有するものでもよい。はんだ鏝を用いてはんだ接合を行う場合は、やに入りはんだとしたものを線状に成形されたものが挙げられる。
【0033】
本発明の実施形態に係るはんだ接合部は、前述のはんだ合金を用いて形成されたものである。より具体的には、はんだ接合部は、例えば、電子部品の電極端子と基板上の金属配線等の電極端子とが前述のはんだ合金により接合されている。即ち、はんだ接合部は、前述のはんだ合金と、該はんだ合金を介して接合された電子部品と基板とで構成されている。はんだ接合部は、前述のはんだ合金を用いて形成されているため、本発明のはんだ合金の特性を有し、当該はんだ接合部の長期使用時の劣化が抑制され、良好な耐熱疲労特性を有しており、高い信頼性を有する。
【実施例0034】
本発明について、実施例を基に以下に詳細を説明する。
【0035】
〔試験例1〕
表1に示す組成のはんだ合金を調製し、引張強度試験に用いた。
本発明のはんだ合金の評価として、引張強度並びにはんだ合金の伸び率を測定し、その優位性を確認した。
引張強度ははんだ接合部の強度を表し、数値が高いほど機械的特性に優れていることを意味し、伸び率ははんだ接合部の延性を表し、数値が高いほど応力歪に対する緩和能に優れていることを意味する。実際の動作時における電子部品の発熱・冷却や使用環境温度の変化によって、電子部品の接合部には、部品と基板との間の線膨張係数差に起因する応力歪が繰り返し負荷される。この繰り返しの負荷に伴って接合部が損傷を受ける、いわゆる熱疲労現象が発生する。部品と基板とを接合しているはんだは、その延性によって応力歪の緩衝機能を担っている。このため、はんだの延性(伸び率)が改善されることによって、接合部に生じる応力歪が緩和され、耐熱疲労特性に優れた接合部を維持することが可能となることを意味する。
従って、引張強度値と伸び率の両方を併せ持ったはんだ合金が信頼性の高いはんだ接合部を形成すると考えられる。
【0036】
【0037】
(試験方法)
1.引張強度試験
(1)表1のはんだ合金を溶解させた後、
図1に示す形状なるように鋳型に鋳込み、測定用サンプルを作製する。
(2)株式会社島津製作所製試験機AG-ISを用い、下記の条件で各サンプルが切断するまで引っ張り、サンプルの引張強度と伸び率を測定した。
・室温(20℃~25℃)
・引張速度:10mm/分
【0038】
2.測定結果の評価
(1)引張強度
・上記の方法にて測定した結果に関し、測定前のサンプル断面積(mm2)と測定後の最大負荷応力(N)より、次式を得て算出した。
引張強度(MPa)=最大負荷応力(N)/測定前のサンプル断面積(mm2)
(2)伸び率
・測定前の評点部長さ(1-A11)であるL0に対する測定後の評点部長さL(破断部箇所を突き合わせたときの長さ)の変化率で、次式により算出した。
伸び率(%)={(L-L0)/L0}×100
・比較例1を100とした場合の各サンプルの伸び率を示した結果を「伸び率の変化率」として百分率で表した。
【0039】
3.評価基準
(1)引張強度:鉛フリーはんだで実績のあるSAC305(Agが3.0質量%、Cuが0.5質量%、残部がSn)の1.5倍以上の数値である80MPaを合格最低数値とした。
(2)伸び率:伸び率の変化率が100%を超えるものを合格とした。
【0040】
【0041】
また、引張強度の結果の比較を
図2に、伸び率の変化率を
図3に夫々表した。
表2、
図2及び
図3より、本発明のはんだ合金である実施例は何れも合格基準を上回っており、信頼性の高いはんだ接合部を得ることが証明された。
【0042】
〔試験例2〕
表3、4に示す組成となるように、定法に従い各金属を混合し、はんだ合金を作製した。得られたはんだ合金を用い、以下に説明する方法に従ってインパクトシェア試験を行った。尚、各はんだ合金は、各原料となる金属を表3、4に示す組成になるように混合するため、原料等に起因する不可避不純物を含む。また、表3、4中、試験例1と実質的に同じ組成のはんだ合金には、同じ実施例番号及び比較例番号を付した。
【0043】
【0044】
【0045】
(試験方法)
<インパクトシェア試験>
1)実施例1~16、比較例1、3、4で得られたはんだ合金からなる直径0.5mmの球状はんだボールを準備した。
2)銅箔基板を準備し、実装箇所に「フラックスRM-5」(株式会社日本スペリア社製)を0.01g塗布した後、はんだボールを搭載した。
3)昇温温度1.5℃/秒、最高温度200℃又は250℃で50秒間の条件でリフロー加熱し、接合させた後、冷却し、IPAにて洗浄して、フラックスを除去したものを測定用サンプルとした。
4)上記の手順で作製した測定用サンプルの一部を150℃に保持した電気炉内に100時間放置し、エージング処理を行った。
5)エージング処理を行わなかった測定用サンプル(イニシャル)、エージング処理した測定用サンプル(エージング)をインパクトシェア試験機(DAGE社製 4000HS)にセットした。
6)測定は、シェア速度100mm/秒で実施し、シェア強度(N)、吸収エネルギー(mJ)を測定した。シェア強度のうち、最大値をシェア強度として評価した。また、エージング前後のシェア強度及び吸収エネルギーの各測定値の変化率(エージング後/エージング前×100)及び当該変化率の比較例1の値を100として算出した相対変化率((各実施例及び各比較例の変化率)/(比較例1の変化率)×100)を算出し、エージングによる影響を評価した。結果を表5~7に示す。また、表6に示した「変化率」について棒グラフとしてまとめたものを
図4に示した。また、表7に示した「相対変化率」について棒グラフとしてまとめたものを
図5に示した。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
表6、7、
図4、5に示すように、所定の組成のはんだ合金を用いることで、エージング処理後も同処理前よりも良好なシェア強度を有し、良好なエネルギーの吸収特性を示すことが分かる。特に、表7、
図5に示すように、比較例1である特許文献5に記載されているはんだ合金を基準として対比すると、各実施例のはんだ合金は、比較例1と同等以上の良好な特性を有するのに対して、比較例3、4である従来の共晶系のSn-Biはんだ合金では、Si、As、Ptを所定範囲で含有する効果が得られていない。このように、Snを母相とし、特定範囲の含有量のBi、Sb、Cu、Niとともに、更に、特定範囲の含有量の、Si、As及びPtの群から選ばれる1種以上の元素を存在させることで、従来のはんだ合金よりも良好な物理的特性を示すことが分かる。また、特許文献5に記載のはんだ合金と同等以上の良好な物理的特性を示すことが分かる。
【0050】
以上のように、試験例1の結果より、所定の組成のはんだ合金は、良好な引張強度と伸び率の両方を併せ持ち、信頼性の高いはんだ接合部を形成することが可能であると考えられるが、試験例2の結果により、この点がさらに裏付けられたと考えられる。
本発明に係る鉛フリーはんだ合金は、低温での接合を可能とするため電子部品に熱負荷をかけることなく、はんだ接合を可能とし、当該はんだ合金で接合されたはんだ接合部は、従来の低温はんだ合金を用いたはんだ接合部に比べ高い信頼性を有する為、低温での接合を必要とする電子部品の接合に広く応用が期待できる。