(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058393
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】記憶機能および/または認知機能を支持するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/714 20060101AFI20220405BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20220405BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20220405BHJP
A61K 31/232 20060101ALI20220405BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20220405BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20220405BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20220405BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20220405BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220405BHJP
A61K 31/557 20060101ALI20220405BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20220405BHJP
A61K 31/7072 20060101ALI20220405BHJP
A61K 33/04 20060101ALI20220405BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220405BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220405BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220405BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220405BHJP
【FI】
A61K31/714
A61K31/14
A61K31/202
A61K31/232
A61K31/355
A61K31/375
A61K31/44
A61K31/4415
A61K31/519
A61K31/557
A61K31/7068
A61K31/7072
A61K33/04
A61P3/02
A61P3/02 104
A61P3/02 107
A61P3/02 109
A61P25/28
A61P43/00 121
A23L33/10
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021208951
(22)【出願日】2021-12-23
(62)【分割の表示】P 2018547886の分割
【原出願日】2017-03-08
(31)【優先権主張番号】PCT/NL2016/050161
(32)【優先日】2016-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(71)【出願人】
【識別番号】505296821
【氏名又は名称】エヌ.ブイ.・ヌートリシア
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】マテウス・コーネリス・デ・ビルデ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】記憶機能及び/又は認知機能を支持するための組成物の使用を提供する。
【解決手段】シナプス接続性の治療的な改善、並びに/又は記憶及び/もしくは認知機能の治療的な支持を必要とするヒト対象において、当該改善並びに/又は支持をするための製品の製造における、治療有効量の、(a)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、並びに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)及びドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、又は(b)(i)ビタミンC及び/もしくはセレン、並びに(iii)ウリジン及びシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せの使用であって、(a)、(b)又は(c)は、任意に、ビタミンEをさらに含む、使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シナプス接続性の治療的な改善、ならびに/または記憶および/もしくは認知機能の治療的な支持を必要とするヒト対象において、当該改善ならびに/または支持をするための製品の製造における、治療有効量の、(a)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せの使用であって、(a)、(b)または(c)は、任意に、ビタミンEをさらに含む、使用。
【請求項2】
シナプス接続性の治療的な改善、ならびに/または記憶および/もしくは認知機能の治療的な支持を必要とする対象が、認知および/または記憶機能の機能障害の増加したリスクを有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記対象は、脳萎縮を患っており、かつ/または神経変性疾患のリスクを有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記製品は、ビタミンB6および/またはビタミンB12を、それらの機能的等価物を含めて治療量で含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
DHAは、前記製品の100g当たりまたは1日当たり少なくとも0.5g、好ましくは前記製品の100g当たりまたは1日当たり0.5~5gの量で投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
ウリジンは、ウリジン、デオキシウリジン、ウリジンホスフェート、ヌクレオベースウラシルおよびアシル化ウリジン誘導体の累積量として、前記製品の100g当たりまたは1日当たり、0.1~5g、好ましくは0.2~2.5g、より好ましくは0.25~1gの量で投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
セレンは、組成物の100g当たりまたは1日当たり、0.01~0.5mg、好ましくは0.02~0.1mgの量で投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
ビタミンCは、組成物の100g当たりまたは1日当たり、20~1000mg、特に30~500mgの範囲、より特定すると50~150mgの範囲の量で投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
記憶および/または認知機能の治療的な改善を必要とするヒト対象において使用するための組成物であって、前記組成物は、(a)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せを含み、(a)、(b)または(c)は、任意に、ビタミンEをさらに含む、組成物。
【請求項10】
ヒト対象における記憶機能および/または認知機能の治療的な改善において使用するための、有効量の、(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せであって、前記組合せは、任意に、ビタミンEをさらに含む、組合せ。
【請求項11】
記憶機能および/または認知機能を(非治療的に)改善することを必要とする健常なヒト対象において、当該改善をするための方法であって、前記方法は、(a)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せを前記対象に投与することを含み、(a)、(b)または(c)は、任意に、ビタミンEをさらに含む、方法。
【請求項12】
記憶および/または認知機能の改善を必要とする対象が、認知および/または記憶機能の機能障害の増加したリスクを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ビタミンCは、組成物の100g当たりまたは1日当たり、20~1000mg、特に30~500mgの範囲、より特定すると50~150mgの範囲の量で投与される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
ウリジンは、ウリジン、デオキシウリジン、ウリジンホスフェート、ヌクレオベースウラシルおよびアシル化ウリジン誘導体の累積量として、製品の100g当たりまたは1日当たり、0.1~5g、好ましくは0.2~2.5g、より好ましくは0.25~1gの量で投与される、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
セレンは、組成物の100g当たりまたは1日当たり、0.01~0.5mg、好ましくは0.02~0.1mgの量で投与される、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景の説明】
【0001】
本発明は、医療栄養学の分野に属し、より特定すると、記憶および/もしくは認知機能の支持、シナプス接続性の改善もしくは保存、ならびに/または脳ネットワーク組織の改善もしくは保存を必要とする対象において使用するための組成物であって、組成物は、特に成人、好ましくは高齢者において使用するためのものであって、脳萎縮または脳収縮の治療もしくは予防、またはそのリスクの低減において使用するための組成物に関する。
【0002】
脳は、可塑的な器官である。出生前と出生後の両方において、脳は急速な変化を経験し、脳の接続が形成される。一生を通じて、脳はその可塑性を保持し、結果として、新しい神経突起およびシナプスが絶えず形成される。経験に応答して記憶が保存される海馬は、脳の継続的な適応および発達にとって典型的なものである。
【0003】
他方で、脳萎縮は、加齢脳の特色であるだけでなく、脳に影響を及ぼす多くの疾患に共通する特色でもあり、萎縮のパターンおよび進行速度は、関与する疾患に依存する。脳萎縮または大脳萎縮(cerebral atrophy)は、ニューロンおよび中間の接続の喪失として説明することができ、脳体積の収縮を引き起こす。萎縮は、脳のすべてが収縮していることを意味する全般性である場合があり、または脳の限定された領域のみに対して影響を及ぼし、その脳の領域が制御する機能の低下をもたらす、局所的である場合もある。有意な脳萎縮の症状としては、他に認知症、てんかん発作(seizure)および失語症としても公知である、複数の認知機能に関与する進行性の認知および/または記憶機能障害が挙げられる。これは、言語の理解もしくは生成、またはそれら両方の分裂である。
【0004】
ある程度の大脳の収縮は、加齢とともに自然に発生する。脳が成長を完了し、25歳頃にその最大質量に達した後、一生のうち10年毎に徐々に質量を失う。しかし、その喪失速度は、脳体積の約0.5~1%が毎年失われる60歳になるまでは、比較的小さい。75歳までに、脳は、25歳のときよりも平均で15%小さくなる。記憶に関与する海馬のように、脳の一部の領域は、他の領域よりも収縮する場合がある。
【0005】
アルツハイマー患者における栄養物の改善に関する研究は、介入群における認知神経科学的転帰の改善を示しているが、栄養摂取量の増加が、健常な対象、または脳萎縮を患い、認知および/もしくは記憶機能の機能障害のリスクを有する対象において脳萎縮を予防または減速させ得るかどうかについては、十分に研究されていない。
【0006】
食事および栄養学的介入が、記憶および/または認知機能の改善および支持を必要とする対象において役立つかどうかについて、さらに調査することの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らによって、ヒト対象に対して、(a)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せを含む、組合せまたは製品であって、(a)、(b)または(c)は、任意に、ビタミンEと組み合わされる、組合せまたは製品を投与すると、対象の脳における機能的シナプス接続性を改善および/または保存することができ、本発明の組成物を使用することで、脳ネットワーク組織を保存または改善することができ、特に、必要とする対象、特に健常な高齢者および脳萎縮を有する対象における記憶および/または認知機能を支持することができることが観察された。
【0008】
したがって、本発明は、シナプス接続性の改善、脳萎縮の予防/治療またはそのリスクの低減、ならびに記憶および/または認知機能の改善、好ましくは少なくとも脳萎縮の予防または治療または低減を必要とする対象における治療上の使用のための、(i)および(ii)、または(i)および(iii)、または(i)、(ii)および(iii)の組合せに関する。治療有効量の、(i)および(ii)、または(i)および(iii)、または(i)、(ii)および(iii)が、前記ヒト対象に対して投与される組成物の一部であることが好ましい。本発明はまた、シナプス接続性を改善する、脳萎縮を予防する、ならびに記憶および/または認知機能を改善するための(治療上の)方法であって、前記方法は、(治療)有効量の、(i)および(ii)、または(i)および(iii)、または(i)、(ii)および(iii)を前記ヒト対象、好ましくは健常な対象に対して投与することを含む、方法にも関する。また、本発明は、脳萎縮の疑いがあるまたはそれが確認されたヒト対象、ならびに神経変性および神経変性疾患のリスクを有する対象における治療上の使用のための組成物または医薬(すなわち、製品)の製造における、治療量の、(i)および(ii)、または(i)および(iii)、または(i)、(ii)および(iii)の使用にも関する。
【0009】
本発明はまた、健常な成人、好ましくは高齢者において記憶機能および/または認知機能を支持するための非治療的方法にも関する。本発明は、亜臨床的な脳萎縮を有する、55歳以降、好ましくは60歳以降の高齢者において特に有用である。
【0010】
本発明者らは驚くべきことに、臨床研究を通じて、(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびにウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステルを含有する組成物を、任意にビタミンEと組み合わせて投与することによって、脳萎縮を有する患者における記憶および認知機能における有意な改善と、20以上(すなわち、20~30)のミニメンタルステート試験スコア(MMSE)とが示されたことを見出した。海馬体積の喪失における低下は、本発明による組成物で治療された対象において決定された。コンプライアンスおよび耐容性は非常に高く、副作用は比較的低かった。臨床研究の結果は、実施例のセクションに要約している。また、健常なラットにおけるインビボ実験は、本発明による組成物の投与が、シナプス形成の増加をもたらすことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、対照治療または本発明による組成物を用いた栄養補給に無作為化された、脳萎縮を有する対象群の、cm
3単位での、海馬総体積における経時的変化を示している。海馬(左および右)萎縮の有意な減速が、活性組成物を受容した群において観察された。
【
図1B】
図1Bは、対照治療または本発明による組成物を用いた栄養補給に無作為化された、脳萎縮を有する対象群における、cm
3単位での、脳総体積における経時的変化を示している。脳萎縮の減速が、活性組成物を受容した群において観察された。
【
図2】
図2は、対照治療または本発明による組成物を用いた栄養補給に無作為化された、脳萎縮を有する対象群における、認知機能の経時的変化を示している。認知機能喪失の低下という、臨床的に関連した傾向が、本発明による活性組成物を受容した群において観察されている。
図2Aは、すべての無作為化された対象の結果を示しており、
図2Bは、パープロトコール集団の結果を示している。
【
図3】
図3は、対照治療または本発明による組成物を用いた栄養補給に無作為化された、脳萎縮を有する同じ対象群における、記憶機能の経時的変化を示している。記憶機能における低下の減速が、活性組成物を受容した群において観察された。
図3Aは、すべての無作為化された対象の結果を示しており、
図3Bは、パープロトコール集団の結果を示している。
【
図4】
図4は、DHA、ウリジン、ビタミンC、ビタミンEおよびセレンの組合せが、インビトロのPC12細胞の神経突起成長(ニューロン当たりの神経突起の全長として測定した)を有意に(p<0.0001)改善したことを示している。
【0012】
好ましい態様のリスト
1.シナプス接続性の治療的な改善、ならびに/または記憶および/もしくは認知機能の治療的な支持を必要とするヒト対象において、当該改善ならびに/または支持をするための製品の製造における、治療有効量の、(a)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せの使用であって、(a)、(b)または(c)は、任意に、ビタミンEをさらに含む、使用。
【0013】
2.シナプス接続性の治療的な改善、ならびに/または記憶および/もしくは認知機能の治療的な支持を必要とする対象が、認知および/または記憶機能の機能障害の増加したリスクを有する、態様1に記載の使用。
【0014】
3.対象は、脳萎縮を患っており、かつ/または神経変性疾患のリスクを有する、態様1および2に記載の使用。
【0015】
4.製品は、ビタミンB6および/またはビタミンB12を、それらの機能的等価物を含めて治療量で含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用。
【0016】
5.DHAは、前記製品の100g当たりまたは1日当たり少なくとも0.5g、好ましくは前記製品の100g当たりまたは1日当たり0.5~5gの量で投与される、先行する態様のいずれか1つに記載の使用。
【0017】
6.ウリジンは、ウリジン、デオキシウリジン、ウリジンホスフェート、ヌクレオベースウラシルおよびアシル化ウリジン誘導体の累積量として、製品の100g当たりまたは1日当たり、0.1~5g、好ましくは0.2~2.5g、より好ましくは0.25~1gの量で投与される、先行する態様のいずれかに記載の使用。
【0018】
7.セレンは、組成物の100g当たりまたは1日当たり、0.01~0.5mg、好ましくは0.02~0.1mgの量で投与される、先行する態様のいずれかに記載の使用。
【0019】
8.ビタミンCは、組成物の100g当たりまたは1日当たり、20~1000mg、特に30~500mgの範囲、より特定すると50~150mgの範囲の量で投与される、先行する態様のいずれかに記載の使用。
【0020】
9.記憶および/または認知機能の治療的な改善を必要とするヒト対象において使用するための組成物であって、前記組成物は、(a)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せを含み、(a)、(b)または(c)は、任意に、ビタミンEをさらに含む、組成物。
【0021】
10.ヒト対象における記憶機能および/または認知機能の治療的な改善において使用するための、有効量の、(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せであって、前記組合せは、任意に、ビタミンEをさらに含む、組合せ。
【0022】
11.記憶機能および/または認知機能を(非治療的に)改善することを必要とする健常なヒト対象において、当該改善をするための方法であって、前記方法は、(a)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せを前記対象に投与することを含み、(a)、(b)または(c)は、任意に、ビタミンEをさらに含む、方法。
【0023】
12.記憶および/または認知機能の改善を必要とする対象が、認知および/または記憶機能の機能障害の増加したリスクを有する、態様11に記載の方法。
【0024】
13.ビタミンCは、組成物100g当たりまたは1日当たり、20~1000mg、特に30~500mgの範囲、より特定すると50~150mgの範囲の量で投与される、態様11および12に記載の方法。
【0025】
14.ウリジンは、ウリジン、デオキシウリジン、ウリジンホスフェート、ヌクレオベースウラシルおよびアシル化ウリジン誘導体の累積量として、製品の100g当たりまたは1日当たり、0.1~5g、好ましくは0.2~2.5g、より好ましくは0.25~1gの量で投与される、態様11から13のいずれかに記載の方法。
【0026】
15.セレンは、組成物の100g当たりまたは1日当たり、0.01~0.5mg、好ましくは0.02~0.1mgの量で投与される、態様11から14のいずれかに記載の方法。
【0027】
16.DHAは、製品の100g当たりまたは1日当たり、少なくとも0.5g、好ましくは100g当たり0.5~5gの量で投与される、態様11から15のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0028】
本出願全体を通して、以下の専門用語および略語が使用され得る。
【0029】
大脳萎縮の脳萎縮は、脳体積の漸進的な喪失およびシナプス接続性の喪失によって特徴付けられる。加齢プロセスにおいて、脳は収縮する。脳萎縮の度合いは概して、MRIを使用して決定され、脳および特定の脳領域の体積が決定される。海馬萎縮は、海馬が位置する内側側頭脳領域における萎縮を指す。海馬萎縮は通常、陳述、エピソード、空間および文脈の記憶のパフォーマンスにおける欠陥を伴い、海馬のサイズと記憶機能のパフォーマンスとの間には、確かな関係性が存在する。海馬萎縮は、海馬硬化症(HS)とアルツハイマー病(AD)の両方にとって重要な特色である。
【0030】
高齢者とは、年齢が好ましくは55歳を超える、好ましくは60歳を超えるヒト対象のことである。
【0031】
シナプス接続性とは、異なるニューロン間に形成され、前記ニューロン間のシグナル伝達を可能にする接続のことを指す。シナプスは、記憶の形成においてある役割を果たす。シナプス形成とは、新しいシナプスおよびシナプス接続の形成のことである。
【0032】
いくつかの疾患が、脳萎縮の発達と因果関係がある。萎縮は、アルツハイマー病、脳性麻痺、老人性認知症、前頭側頭型認知症および血管性認知症、ピック病、ハンチントン病、ならびにニューロンにおける毒性レベルのタンパク質の蓄積を引き起こす他の遺伝性障害、パーキンソン病、ならびに栄養失調によって引き起こされたり、またはこれらと関連する場合がある。それらの態様においては、本発明は、前述の障害、特にアルツハイマー病、脳性麻痺、老人性認知症、前頭側頭型認知症および血管性認知症、ピック病、ハンチントン病、ならびにパーキンソン病を患っているヒト対象の脳萎縮の(予防的)治療に関する。
【0033】
内側側頭葉萎縮(MTA)スコアとは、前脳橋(anterior pons)のレベルでの海馬を通じて、コロナルT1w MRI画像において決定される視覚的スコアのことを指し、以下の3つの特色:1)脈絡膜裂の幅、2)側脳室の下角の幅、および3)海馬の高さについて評価する。これにより、脈絡膜裂の広域化、下角の拡大、および海馬の萎縮の程度に応じて、0~4のスコアがもたらされ、年齢が75歳未満の人々においては、2以上のスコアは異常とみなされる。
【0034】
「記憶機能」という用語は、対象に、もはや存在しない情報を回復させることを可能とする能力のセットを説明するものである。記憶とは、対象の認知機能の一部である。特に、記憶は、情報を保存、保持および思い出す、生命体の知能のことである。調査することができる記憶現象としては、(1)知識(何を覚えるべきか)、(2)理解(それが何を意味しているか)、(3)文脈/機能(なぜ覚えるべきか)、および(4)方策(どのように覚えるか)が挙げられる。記憶とは、複合的な心理過程であり、単一の記憶ドメイン過程から独立するものではない。記憶は、感覚記憶、聴覚記憶および視覚記憶を含めた、いくつかの他の認知ドメインに関連する。
【0035】
認知機能とは、知識を得て、思考、経験および感覚を通じて理解する心的作用または過程のことを指す。認知には、知識、注意、記憶および作業記憶、判断、評価、推論、意思決定、理解、および言語の生成などの過程が包含される。
【0036】
ミニメンタルステート試験(MMSE)とは、アルツハイマー病の診断および長期的な評価などにおいて、認知機能障害を測定するための30ポイントのアンケートのことを指す。(30ポイント中)24ポイント以上の任意のスコアが、正常な認知を示す。これ未満では、スコアは、重度(9ポイント以下)、中等度(10~18ポイント)、または軽度(19~23ポイント)の認知機能障害を示し得る。生スコアは、学業成績および年齢に関して補正されてもよい。
【0037】
NTB試験は、神経心理学的試験バッテリー(Neuropsychological Test Battery)を指し、これは、いくつかの検証された認知試験の組合せを含み、認知分野における対象のパフォーマンスの尺度が得られる。NTB試験を使用して、記憶機能および認知機能を評価した。
【0038】
本発明の一側面においては、本発明は、1つ以上の薬学的に許容される担体材料を含む医薬製品として使用することができる、組成物、または(i)および(ii)、もしくは(i)および(iii)、もしくは(i)、(ii)、および(iii)の組合せに関する。いずれの場合においても、組成物または組合せは、ビタミンEをさらに含んでもよい。
【0039】
本発明の好ましい側面において、(i)および(ii)、または(i)および(iii)、または(i)、(ii)および(iii)は、栄養製品として、たとえば、栄養補給製品として、たとえば、普通食への添加物として、普通食に追加する増強剤として、または完全な栄養物として使用される、組成物の一部である。栄養製品は、好ましくは、脂肪、タンパク質、および炭水化物の群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。これは、好ましくは、30~60エネルギー%(en%)の炭水化物、30~60エネルギー%の脂肪、および1~20エネルギー%のタンパク質を含む。栄養製品は、特に、タンパク質、脂肪、消化可能な炭水化物、および食物繊維の存在下において、組成物が投与される対象に、栄養物を提供する栄養素の存在により、医薬製品とは異なることが理解される。これは、好ましくは、特別医療目的用食品の要件を満たす、好ましくは、ECのdirective FSMP 1999/21/ECに従う組成物であり、これは参照により本明細書に組み込まれる。これは、さらに、ミネラル、ビタミン、有機酸、および香味剤などの成分をさらに含有してもよい。
【0040】
本発明の第1の側面は、脳萎縮を有し、神経変性疾患のリスクを有する可能性があるヒト対象の記憶機能および/または認知機能の治療的な改善であって、
(a)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または
(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または
(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せを前記対象に与えることによる、(a)、(b)または(c)は、任意に、ビタミンEと組み合わせて使用される、改善を提供する。構成要素は、好ましくは、治療有効量で提供される。
【0041】
本発明の別の側面は、健常な状態にある、必要とするヒト対象、好ましくは成人、より好ましくは高齢者の記憶機能および/または認知機能の非治療的な改善であって、
(a)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、または
(b)(i)ビタミンCおよび/もしくはセレン、ならびに(iii)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、もしくはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、または
(c)(i)、(ii)および(iii)の組合せを前記対象に与えることによる、(a)、(b)または(c)は、任意に、ビタミンEと組み合わせて使用される、非治療的な改善を提供する。
【0042】
本発明は、好ましくは、そのような健常な個体の記憶および/または認知機能の支持において使用するためのものである。
【0043】
好ましい態様においては、本発明の方法は、対象、特に、脳萎縮を有する対象、特に、神経変性疾患のリスクを有する脳萎縮を有する対象の認知および/または記憶機能不全を治療的に治療または予防する、好ましくは、認知および/または記憶機能における低下または機能障害を治療または予防する方法である。予防的治療には、認知および/または記憶機能における低下または機能障害の発生のリスクを低減することが含まれる。本発明の態様においては、脳萎縮を有する対象は、前駆アルツハイマー病のリスクを有するかまたはそれを患っている可能性がある。対象は、高齢者であってもよい。
【0044】
対象は、ヒト対象、好ましくは成人、より好ましくは高齢者、好ましくは年齢が少なくとも55歳である。好ましくは、対象は、24以上、特に26以上、より特定すると27以上のミニメンタルステート試験(MMSE)スコアを有する。
【0045】
さらに別の好ましい態様においては、本発明の方法は、必要とする対象において認知および/もしくは記憶機能を支持し、かつ/またはシナプス接続性を改善する(非治療的)方法であり、本方法は、脳が発達しているヒト対象に特に有用である。
【0046】
さらに別の好ましい態様においては、本発明の方法は、必要とする対象において認知および/もしくは記憶機能を支持し、かつ/またはシナプス接合性を改善する方法であり、記憶および/または認知機能障害のリスクを有する脳萎縮を有する対象に特に有用である。
【0047】
有効量の本発明による組成物は、記憶および/または認知機能の改善をもたらす。なおもさらなる態様においては、有効量の本発明による組成物は、必要とする前記対象においてシナプス形成の増加をもたらし、より好ましくは脳体積および海馬体積における生理学的増加をもたらす。
【0048】
さらに別の好ましい態様においては、本発明による使用のための方法および組成物は、健常な対象、より好ましくは高齢者に特に有用である。有効量の組成物は、前記対象において使用するためのものである。
【0049】
一態様においては、「予防すること」は、認知および/または記憶機能における降下が、本発明による組成物を使用することで、同じ状態を患っているが本発明の組成物を与えていない対照の治療ナイーブ対象群と比較してより低いことを意味することが意図される。
【0050】
本発明の一態様によれば、組成物は、栄養製品または栄養補給製品として提供される。本発明の製品は、経口投与が意図される経腸組成物である。それは、好ましくは、液体形態で投与される。一態様においては、食品製品は、100ml当たり50~250kcal、より好ましくは100ml当たり75~125kcalを含有する液体組成物である。
【0051】
好ましくは、組成物は、少なくとも12週間、好ましくは少なくとも26週間、より好ましくは少なくとも1年間、または少なくとも2年間の期間、1日当たり少なくとも1回、患者に経腸投与される。
【0052】
本発明の方法または使用は、(治療)有効量の、前述の成分(i)~(ii)または(i)~(iii)または(i)~(ii)および(iii)を含む組成物を、上記に概説されるように、必要とする対象に投与することを含む。予防的(prophylactic)または予防的(preventive)側面には、記憶および認知機能障害の発生のリスクを低減することが含まれる。
【0053】
ω-3 LC-PUFA
本発明の方法、組成物または組合せは、(治療)有効量の、ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5 ω-3、DPA)からなる群から選択される少なくとも1つのω-3長鎖多価不飽和脂肪酸(LC PUFA、18個以上の炭素原子の鎖長を有する)、好ましくはDHAおよびEPAのうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、本発明の組成物または組合せは、少なくともDHA、より好ましくはDHAおよびEPAを含有する。EPAは、DPA(ω-3)に変換され、続く脳内でのDPAからDHAへの変換を増加させる。したがって、本発明の組成物または組合せは、好ましくは、インビボでのDHA形成をさらに刺激するために、有意な量のEPAもまた含有する。
【0054】
LCPUFA(DHA、EPAおよび/またはDPA)は、好ましくは、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸、またはそれらの塩もしくはエステル、リン脂質、リゾリン脂質、グリセロールエーテル、リポタンパク質、セラミド、糖脂質もしくはこれらの組合せとして提供される。好ましくは、本発明の組成物または組合せは、少なくとも、トリグリセリド形態のDHAを含む。好適なω-3 LCPUFAおよび/またはDHA源としては、マグロ油、(他の)魚油、DHAリッチアルキルエステル、藻類油、卵黄、またはω-3 LCPUFAが富化されたリン脂質、たとえば、ホスファチジルセリン-DHAが挙げられる。好ましくは、本発明による組成物または組合せは、ω-3 LCPUFAを提供する魚油を含む。別の特に好適なω-3 LCPUFA源は、藻類油である。
【0055】
EPA、DHA、および/またはEPAが存在する場合、DHA+EPA+DPAを合わせた合計1日投薬量は、組成物の100g当たり0.25~5g、好ましくは0.5~5g、より好ましくは0.75~2.5gの範囲、または1日投薬量に関して、1日当たり0.25~5g、好ましくは0.5~5g、より好ましくは0.75~2.5gの範囲である。好ましい態様においては、これらの量は、DHAおよびEPAが存在する場合のそれらの総合計に基づく。DHAは、好ましくは、治療量、好ましくは組成物の100g当たり少なくとも0.5g、より好ましくは100g当たり0.5~5g、最も好ましくは100g当たり0.75~2gの量で、または1日投薬量という点では、100g当たり少なくとも0.5g、より好ましくは100g当たり0.5~5g、最も好ましくは1日当たり0.75~2gの範囲で投与される。
【0056】
組成物、組合せ、または方法に関して、組成物における総脂肪酸中のω-3 LCPUFA(より好ましくはDHA+EPA+DPA、最も好ましくはDHA+EPA)の比率は、総脂肪酸の、好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~80重量%、最も好ましくは15~70重量%、さらにより好ましくは20~60重量%である。本発明の組成物または組合せは、好ましくは総脂肪酸に基づいて5~95重量%のDHA、好ましくは総脂肪酸に基づいて10~75重量%のDHA、より好ましくは組成物または組合せの総脂肪酸に基づいて10~60重量%、さらにより好ましくは10~50重量%、より好ましくは10~40重量%、特に少なくとも20重量%のDHAを含む。本発明の組成物または組合せは、好ましくは総脂肪酸に基づいて5~95重量%のEPA、好ましくは組成物または組合せの総脂肪酸に基づいて5~75重量%、さらにより好ましくは5~50重量%、より好ましくは5~25重量%、最も好ましくは5~15重量%のEPAを含む。
【0057】
本発明の方法、組合せまたは組成物において、DHA対EPAの重量比は、好ましくは1超、より好ましくは2:1~10:1、より好ましくは2:1~5:1である。比は、最適な有効性を確保し、同時に低体積の製剤を維持するために、DHAとその前駆体との間のバランスを考慮し、それを最適化するものである。
【0058】
アラキドン酸(AA)が存在するかまたは投与される場合、それは、本発明の組成物、組合せまたは方法におけるDHA/AA重量比に関して表される、少なくとも5、好ましくは少なくとも6という非常に低い量のAAに関する。AAが投与される場合、それは、好ましくは、液体製剤100ml当たり5g未満、および/または組成物もしくは組合せの乾燥重量100g当たり300mg未満となる。
【0059】
ウリジン、シチジンおよび/またはそれらの等価物
本発明による方法、組合せおよび組成物は、(治療)有効量の、ウリジン、シチジンのうちの1つ以上および/または等価物を含み、その等価物は塩、ホスフェート、アシル誘導体および/もしくはエステルを含む。方法、組合せおよび組成物は、好ましくは、少なくとも1つのウリジン、またはウリジン(すなわち、リボシルウラシル)、デオキシウリジン(デオキシリボシルウラシル)、ウリジンホスフェート(UMP、dUMP、UDP、UTP)、ヌクレオベースウラシルおよびアシル化ウリジン誘導体からなる群から選択されるその等価物を含む。一態様において、シチジン、CMP、シチコリン(CDP-コリン)が、ウリジン(等価物)に加えて、またはその代わりに、適用されてもよい。好ましくは、本発明により投与される組成物または組合せは、ウリジン、デオキシウリジン、ウリジンホスフェート、ウラシル、およびアシル化ウリジンからなる群から選択されるウリジン源を含む。
【0060】
好ましくは、本発明による方法、組合せおよび組成物は、ウリジンモノホスフェート(UMP)、ウリジンジホスフェート(UDP)およびウリジントリホスフェート(UTP)からなる群から選択されるウリジンホスフェート、ならびに/またはシチジンホスフェート(CMP、CDP、CTP、好ましくはCMP)を含む。好ましい態様において、組成物または組合せは、前述のウリジンホスフェートのうちの少なくとも1つを含む。最も好ましくは、本発明の組成物または組合せはUMPを含むが、これは、UMPが身体によって最も効率的に取り込まれるためである。したがって、本発明の方法、組合せおよび組成物にUMPを含めることにより、最も低い投薬量における高い効率性もしくは有効性および/または対象への低体積の投与が可能となる。好ましくは、本発明の方法、組合せおよび組成物におけるウリジンの少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%が、UMPによって提供される。投与される用量は、UMPとして与えられる。ウラシル源の量は、UMP量(分子量324ダルトン)に対するモル当量をとることで計算することができる。
【0061】
本発明の方法は、好ましくは、組成物の100g当たり0.1~5g、好ましくは0.2~2.5g、より好ましくは0.25~1gの量、または1日投薬量という点では、1日当たり0.1~5g、好ましくは0.2~2.5g、より好ましくは0.25~1gの範囲での、ウリジン(ウリジン、デオキシウリジン、ウリジンホスフェート、ヌクレオベースウラシルおよびアシル化ウリジン誘導体の累積量)の投与を含む。一態様においては、本発明の方法、組合せおよび組成物は、UMPとして計算される、100kcalの製品当たり0.1~5g、好ましくは0.2~2.5g、より好ましくは0.25~1gの濃度での、ウリジン源の投与を含んでもよい。製品、組成物および組合せという用語は、交換可能に使用される。
【0062】
ビタミンC、セレンおよびビタミンE
本発明による方法、組合せおよび組成物は、(治療)有効量のビタミンCおよび/またはセレンを、任意に、ビタミンEと組み合わせて含む。組成物が、ビタミンCおよびセレンの両方を含み、任意に、ビタミンEをさらに含むことが特に好ましく、最も好ましくは、本発明による組成物は、ビタミンC、ビタミンEおよびセレンを含む。
【0063】
ビタミンCは、その機能的等価物を含み、組成物の100g当たり20~1000mgの範囲、特に30~500mgの範囲、より特定すると50~150mgの範囲、または1日投薬量という点では、1日当たり20~1000mg、特に30~500mgの範囲、より特定すると50~150mgの範囲の量で存在してもよい。
【0064】
セレンは、組成物の100g当たり0.01~0.5mg、好ましくは0.02~0.1mgの量、または1日投薬量という点では、1日当たり0.01~0.5mg、好ましくは0.02~0.1mgの範囲で存在してもよい。
【0065】
ビタミンEとは、当該技術分野において公知であるように、ビタミンE活性を有する化合物、典型的にはトコフェロールおよび/またはその等価物のことを指す。ビタミンEは、組成物の100g当たり10~200mgの範囲、特に10~100mgの範囲、より特定すると20~50mgの範囲の量で、または1日投薬量という点では、1日当たり10~200mgの範囲、特に10~100mgの範囲、より特定すると20~50mgの範囲の量で、トコフェロールおよびトコフェロール等価物として存在し得る。本明細書において使用される場合、「トコフェロールおよびその等価物」という用語は、トコフェロール(たとえば、α-およびγ-)、トコトリエノール、それらの薬学的および/または栄養学的に許容される誘導体、ならびにそれらの任意の組合せを含む。上の数字は、当該技術分野において認識されているように、α-トコフェロール等価物に基づくものである。
【0066】
コリン
好ましい態様においては、本発明による方法、組合せおよび組成物は、(治療)有効量の、コリン、コリン塩および/またはコリンエステルを含む。ここで、「コリン」という用語は、すべてのそれらの等価物を包含するとみなされるものとする。コリン塩が好ましい。コリン塩は、好ましくは、塩化コリン、重酒石酸コリンまたはステアリン酸コリンから選択される。コリンエステルは、好ましくは、ホスファチジルコリンおよびリゾ-ホスファチジルコリンからなる群から選択される。本発明の方法は、好ましくは、組成物もしくは組合せの100g当たり0.1g超のコリン、好ましくは100g当たり0.1~1gのコリン、より好ましくは100g当たり0.2~0.5gのコリン、または1日投薬量という点では、100g当たり0.1g超のコリン、好ましくは100g当たり0.1~1gのコリン、より好ましくは1日当たり0.2~0.5gのコリンの投与を含む。上の数字はコリンに基づくものであり、コリン等価物または源の量は、104g/molのコリンのモル質量に基づき、コリンに対するモル当量を考慮に入れて計算することができる。
【0067】
ビタミンB
好ましい態様においては、本発明による方法、組合せおよび組成物は、(治療)有効量の、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサールもしくはピリドキサミン、またはピリドキシン塩酸塩)、ビタミンB9(葉酸またはフォレート)、およびビタミンB12(コバラミン)からなる群から選択される、少なくとも1つのビタミンBを含む。これらの用語には、機能的等価物も包含される。好ましくは、本発明の組成物は、少なくともビタミンB6および/またはビタミンB9、より好ましくは少なくともビタミンB6およびB9、最も好ましくはビタミンB6、B9およびB12を含む。ビタミンB6は、好ましくは、組成物の100gに基づきまたは1日当たり、100~500mcg、好ましくは150~300mcgの量が提供されるように投与される。ビタミンB9は、好ましくは、組成物の100g当たりまたは1日当たり、50~1000μg、特に100~1000μgの範囲、より特定すると200~800μgの範囲の量が提供されるように投与される。ビタミンB9は、葉酸、フォリン酸、フォレートのメチル化、メテニル化およびホルミル化形態、それらの塩またはエステル(たとえば、C1~6アルキルエステル)、ならびに1つ以上のグルタミン酸によるそれらの誘導体、ならびにすべての還元または酸化形態を含むフォレートとして存在してもよい。好ましくは、ビタミンB9は、葉酸として提供される。ビタミンB12は、好ましくは、組成物の100g当たりまたは1日当たり、0.5~20μgの範囲、特に1~10μgの範囲の量が提供されるように投与される。「ビタミンB12」という用語には、当該技術分野において公知である、すべてのコバラミン等価物が組み込まれる。
【0068】
好ましい態様においては、本発明による方法、組合せおよび組成物は、コリンならびに少なくともビタミンB6および/またはビタミンB9、より好ましくは少なくともビタミンB6およびB9、最も好ましくはビタミンB6、B9およびB12をさらに含む。
【0069】
組成物は、好ましくはラクトース源および多糖源を含めた、消化可能な炭水化物の画分をさらに含んでもよい。
【実施例0070】
本開示のより完全な理解のために、ここで、以下の実施例を添付の図面と併せて参照する。
【0071】
実施例1 臨床治験
無作為対照二重盲検並行群多国間臨床試験を行い、311人の前駆対象に対して、本発明による組成物(活性組成物、125ml当たり300mgのEPA、1200mgのDHA、106mgのリン脂質、400mgのコリン、625mgのUMP、40mgのビタミンE、80mgのビタミンC、60mcgのセレン、3mcgのビタミンB12、1mgのビタミンB6、400mcgの葉酸)で2年間治療したか、同カロリー対照を受容させた。
【0072】
前駆患者の組入れ基準については、以下のように定義した。
【0073】
1)エピソード記憶障害を患っており、8回の試験(下でさらに説明する)中2回で-1SDと定義され、これらの試験の最小記憶試験スコアが-1SDであること。
【0074】
2)潜在的なアルツハイマー病の病理の証拠
- 1以上の内側側頭葉萎縮、MRI画像において決定
- 脳脊髄液測定:β-アミロイド比<1、もしくはp-タウ>60、もしくはt-タウ>350、または
- アルツハイマー病型の変化と適合性である異常なFDG-PET。
【0075】
3)年齢が55~85歳であること
4)MMSE≧24(学校教育が6年以下の対象の場合は20以上)
5)対象と介護者の両方からのインフォームドコンセント。
【0076】
合計で311人の対象を、同カロリー(itt、n=158)または活性組成物(itt、n=153)群のいずれかに無作為化した。
【0077】
組入れ基準において言及した試験は、以下である。
【0078】
記憶
・FCSRT-遅延自由想起
*≦8
・FCSRT自由想起-学習≦22
・WMS-Rストーリー遅延想起(%)≦75%
・WMS-R遅延図面想起(%)≦75%
非記憶
・TMT A≧60
・TMT B≧150
・数字符号置換検査≦35(120秒)
・カテゴリーフルーエンシー≦16(60秒)
略語:
FCRT:手掛りなしおよび手掛りあり選択想起試験(Free and Cued Selective reminding tests)、WMS:ウェクスラー記憶尺度(Wechsler Memory Scale)、TMT:トレイルメイキングテスト(Trial Making Test)
図1Aは、cm
3単位での、海馬総体積における経時的変化を示している。左および右海馬萎縮の有意な減速が、活性群において観察された(左:p=0.052、右:p=0.016、データは示さず)。海馬全体(左および右)の萎縮の有意な減速が、活性組成物を受容した群において観察され、すべての無作為化対象を含むitt群においてMMスロープ(MM slope)p=0.011であった。(MM
*24か月 p-0.008)
図1Bは、cm
3単位での、脳総体積における経時的変化を示している。脳萎縮全体の減速が、すべての無作為化対象を含むitt群の、活性組成物を受容した群において観察された(MMスロープ p=0.033、MM
*24か月 p=0.416、およびANCOVA 24か月 p=0.420)。
【0079】
図2は、認知機能の経時的変化を示している。認知機能を評価するために、認知機能に関連する5つのNTB試験のうち少なくとも4つに基づいて、Zスコアを計算した(CERAD、即時および遅延想起および認識、カテゴリーフルーエンシー、LDST)。(ITT集団全体にまたがる)項目のベースライン平均を減算し、(ITT集団全体にまたがる)項目のベースラインSDによって除算することによって、NTB構成要素のそれぞれに関して計算を行った。結果として得られたZスコアを平均して、複合Zスコアを得た。認知機能喪失の低下という、臨床的に関連した傾向が、本発明による活性組成物を受容した群において観察されている。
図2Aは、すべての無作為化された対象を有するitt群について示しており、
図2Bはパープロトコール分析対象について示している。
【0080】
図3は、同じ対象群の記憶機能における経時的変化を示している。記憶複合Zスコアを、3つのNTB構成要素(CERAD、即時および遅延想起および認識)における対象のパフォーマンスに基づいて計算した。(ITT集団全体にまたがる)項目のベースライン平均を減算し、(ITT集団全体にまたがる)項目のベースラインSDによって除算することによって、NTB構成要素のそれぞれに関して計算を行った。結果として得られたZスコアを平均して、複合Zスコアを得た。記憶ドメインZスコアは、3つのNTB構成要素すべてが利用可能であった場合にのみ計算した。記憶機能における低下の減速が、活性組成物を受容した群において観察された。研究期間中の治療遵守は、両方の群に関して90%超であり、研究プロトコールは概して、いずれの治療群においても、重度の有害効果の報告も伴わずに良好に耐容された。
図3Aは、すべての無作為化された対象を有するitt群について示しており、
図3Bはパープロトコール分析対象について示している。
【0081】
全体的に、本発明による活性組成物を受容する群に無作為化された対象群に関して、明確な利益が観察され、海馬および脳全体の萎縮の発達はより緩徐であり、記憶および認知機能における低下はより緩徐であった。
【0082】
実施例2 本発明の組成物に対して健常なラットのシナプスを曝露した効果
ウリジン(ウリジン-5’-モノホスフェートとして)、ならびにDHAおよびEPAを含有する魚油(FO)を補充した、本発明によるビタミンC、ビタミンEおよびセレンのさらなる値について、健常なラットにおいて評価した。
【0083】
ラットを4つの治療群に無作為化し、6週間にわたって、4つの介入食事のうちの1つを給餌した(表1を参照されたい)。食事治療が完了したら、ラットを屠殺し、リン脂質、シナプスタンパク質、ならびにリン脂質の合成に関与する2つの酵素、すなわちコリン-リン酸シチジリルトランスフェラーゼ(PCYT1A)およびコリン/エタノールアミンホスホトランスフェラーゼ(CEPT1)のレベルに関して分析した。
【0084】
表1:異なる量の抗酸化剤、魚油およびUMPを含む食事。
【0085】
【0086】
合計および個別のリン脂質のレベル(ホスファチジルイノシトールを除く)、シナプス前およびシナプス後タンパク質、シナプシン-1およびPSD-95のレベル、ならびに酵素PCYT1AおよびCEPT1のレベルはすべて、魚油+ウリジンおよび抗酸化剤が組み合わさった補充によって有意に増加し、抗酸化剤を伴わない魚油+ウリジンの補充によっては、レベルは増進されなかった。結果については表2を参照されたい。
【0087】
表2.ラットにおける、リン脂質、シナプスタンパク質、およびリン脂質合成に関与する酵素に対する、抗酸化剤、魚油およびUMPを伴う特定の食事介入の効果。値は、平均±SEMである。*AOX低に対してP<0.05、一元配置分散分析事後比較。
【0088】
【0089】
結果から、リン脂質前駆体を含有する食事における抗酸化剤、ビタミンC、ビタミンEおよびセレンは、神経突起形成、シナプス形成およびシナプス接続性の間接的指標である、膜リン脂質とシナプスタンパク質の両方の増加したレベルに対して、前駆体の効果について相乗効果を及ぼすことが示される。また、リン脂質合成に関与する酵素のレベルも、この組合せが補充された場合には増加し、FO+ウリジンまたはAOX単独の補充によっては増加しなかった。
【0090】
実施例3
本発明による組成物のニューロン成長に対する効果のインビトロ研究
PC12褐色細胞腫細胞を、95%の空気および5%のCO2を有する加湿雰囲気下で、37℃において、10%のウシ胎仔血清(FBS)、ペニシリン(100ユニット/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)(Gibco)で補充したDMEM(Gibco)において成長させた。細胞を、ウェル当たり2000個の細胞の密度で96ウェルプレートに蒔き、24時間後に、20ng/mlの神経成長因子(NGF)を含有する培地で補充した。これらの細胞を、本発明による組成物に対して曝露するか、または未補充のまま放置した(対照)。細胞を補充した組成物については、表3に示されている。細胞の補充は、三連で行った。これらの条件を、非補充の細胞と比較した。これらの組合せで2日間補充した後、細胞を、ウェル当たり100μlの培養培地において、カルセイン-AM染色剤(2ng/マイクロリットル)を使用して染色し、核を、ヘキスト染色剤(0.6マイクログラム/ml)を使用して対比染色し、37℃において20~30分間インキュベートした。続いて、Arrayscan XTIハイコンテントイメージングシステムを使用して、FITCおよびDAPI画像(ウェル当たり25枚の画像)を撮影した。神経突起成長を、Neuronal profiling Bioapplicationアルゴリズムを使用して定量化した。最終的に、すべてのデータを、Graphpad Prismを使用して統計的に分析した。本データは、DHA、ウリジン、ビタミンC、ビタミンEおよびセレンの組合せが、インビトロのPC12細胞の神経突起成長(ニューロン当たりの神経突起の全長として測定した)を有意に(p<0.0001)改善したことを示している(
図4)。
【0091】
知覚および運動制御から認知に至るまでの脳機能は、ニューロンネットワークにおける協調的活性を支持するニューロン間の構造的接続性に高度に依存している。細胞レベルにおいては、ニューロンの形状(たとえば、神経突起の長さ、ならびに神経突起および分岐の数)が、ニューロンが受容できる入力の数、およびそれらの入力がどのように処理されるのかを決定することから、ニューロンの機能にとって非常に重要である。本発明による組成物に対して曝露されたPC12細胞で得られた結果は、本発明による組成物に応答した、新しい神経突起の形成を示している。
【0092】
表3.PC12細胞は、2日間、栄養素DHA、ウリジン、ビタミンC、ビタミンEおよびセレンを含む組成物で補充した。
【0093】
【0094】
実施例4 1回分125mL当たり以下を含む、本発明による液体組成物
・4.9gの脂肪 ・40mgのビタミンE(α-TE)
・300mgのEPA ・80mgのビタミンC
・1200mgのDHA ・60μgのセレン
・106mgのリン脂質 ・3μgのビタミンB12
・400mgのコリン ・1mgのビタミンB6
・625mgのUMP ・400μgの葉酸
ウリジンは、ウリジン、デオキシウリジン、ウリジンホスフェート、ヌクレオベースウラシルおよびアシル化ウリジン誘導体の累積量として、前記製品の100g当たりまたは1日当たり、0.1~5g、好ましくは0.2~2.5g、より好ましくは0.25~1gの量で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。