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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058394
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】一本鎖RNAを提供する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20220405BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】48
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021209047
(22)【出願日】2021-12-23
(62)【分割の表示】P 2018555164の分割
【原出願日】2017-04-19
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/059056
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515145032
【氏名又は名称】バイオエヌテック エールエヌアー ファーマシューティカルズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】BIONTECH RNA PHARMACEUTICALS GMBH
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バイアースドルフ, マルクス
(72)【発明者】
【氏名】カリコ, カタリーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】HPLCに基づく方法よりも費用対効果が高く、簡便であり、時間消費が少ないssRNAを提供するための代替の方法を提供する。
【解決手段】一本鎖RNA(ssRNA)を提供する方法であって、(i)インビトロ転写によって生成されたssRNAを含むRNA調製物を提供すること;(ii)セルロース材料への二本鎖RNA(dsRNA)の結合を可能にする条件下で、RNA調製物をセルロース材料と接触させること;及び(iii)セルロース材料へのdsRNAの結合を可能にする条件下で、セルロース材料からssRNAを分離することを含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本鎖RNA(ssRNA)を提供する方法であって、
(i)インビトロ転写によって生成されたssRNAを含むRNA調製物を提供すること;
(ii)セルロース材料への二本鎖RNA(dsRNA)の結合を可能にする条件下で、RNA調製物をセルロース材料と接触させること;及び
(iii)セルロース材料へのdsRNAの結合を可能にする条件下で、セルロース材料からssRNAを分離すること
を含む、方法。
【請求項2】
インビトロ転写によってssRNAを含むRNA調製物を生成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)及び(iii)が、セルロース材料へのdsRNAの結合を可能にし、セルロース材料へのssRNAの結合を可能にしない条件下で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)が、ssRNAを含むRNA調製物を、振盪及び/又は撹拌下で、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、セルロース材料と混合することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(ii)において、RNA調製物が、ssRNA及び第1の緩衝液を含む液体として提供され、及び/又はセルロース材料が第1の緩衝液中の懸濁液として提供され、第1の緩衝液が、セルロース材料へのdsRNAの結合を可能にし、セルロース材料へのssRNAの結合を可能にしない濃度で、水、エタノール及び塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1の緩衝液中のエタノール濃度が14-20%(v/v)、好ましくは14-16%(v/v)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1の緩衝液中の塩の濃度が15-70mM、好ましくは20-60mMである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
第1の緩衝液が、緩衝物質、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、及び/又はキレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む、請求項5から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(iii)において、RNA調製物、セルロース材料、及び第1の緩衝液の混合物がチューブに入れられ、工程(iii)が、(1)液相及び固相が分離されるようにチューブに重力又は遠心力を適用すること;並びに(2)ssRNAを含む上清を回収するか又はセルロース材料を除去することを含む、請求項5から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(iii)において、RNA調製物、セルロース材料、及び第1の緩衝液の混合物がスピンカラム又はフィルターデバイスに入れられ、工程(iii)が、(1’)液相及び固相が分離されるようにスピンカラム又はフィルターデバイスに重力、遠心力、圧力、又は真空を適用すること;並びに(2’)ssRNAを含むフロースルーを回収することを含む、請求項5から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)及び(iii)が1回又は2回以上、反復され、工程(ii)及び(iii)の1サイクルのうち工程(iii)の後に得られたssRNA調製物が、次サイクルの工程(ii)におけるRNA調製物として使用され、工程(ii)及び(iii)の各サイクルのうち工程(ii)において、新鮮なセルロース材料が使用される、請求項3から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(ii)がdsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件下で行われ、工程(iii)がdsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない条件下で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
工程(II)が、(1)ssRNAを含むRNA調製物を、振盪及び/又は撹拌下で、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、セルロース材料と混合すること;並びに(2)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を残部から分離することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(ii)において、RNA調製物が、ssRNA及び第2の緩衝液を含む液体として提供され、及び/又はセルロース材料が第2の緩衝液中の懸濁液として提供され、第2の緩衝液が、セルロース材料へのdsRNA及びssRNAの結合を可能にする濃度で、水、エタノール及び塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2の緩衝液中のエタノールの濃度が、少なくとも35%(v/v)、好ましくは38-42%(v/v)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第2の緩衝液中の塩の濃度が、15-70nM、好ましくは20-60mMである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
第2の緩衝液が、緩衝物質、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、及び/又はキレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む、請求項14から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(ii)(2)において、工程(ii)(1)で得られたRNA調製物とセルロース材料の混合物がチューブに入れられ、工程(ii)(2)が、(2a)液相及び固相が分離されるようにチューブに重力又は遠心力を適用すること;並びに(2b)上清を除去するか、又はdsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を回収することを含む、請求項14から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程(ii)(2)において、工程(ii)(1)で得られたRNA調製物とセルロース材料の混合物がスピンカラム又はフィルターデバイスに入れられ、工程(ii)(2)が、(2a’)液相及び固相が分離されるようにスピンカラム又はフィルターデバイスに重力、遠心力、圧力、又は真空を適用すること;並びに(2b’)フロースルーを廃棄することを含む、請求項14から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(ii)が、(3)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料に第2の緩衝液のアリコートを添加すること;(4)得られた混合物を、振盪及び/又は撹拌下で、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、インキュベートすること;並びに(5)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を液相から分離すること;並びに、任意選択的に(6)工程(3)-(5)を1回又は2回以上、反復することをさらに含む、請求項14から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程(iii)が、(1)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を、振盪及び/又は撹拌下で、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは10分間、第1の緩衝液と混合することであって、第1の緩衝液が、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない濃度で、水、エタノール及び塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む、混合すること;並びに(2)ssRNAを含む液相をセルロース材料から分離することを含む、請求項12から20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
第1の緩衝液中のエタノールの濃度が14-20%(v/v)、好ましくは14-16%(v/v)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第1の緩衝液中の塩の濃度が15-70mM、好ましくは20-60mMである、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
第1の緩衝液が、緩衝物質、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、及び/又はキレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む、請求項21から23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
工程(iii)において、セルロース材料と第1の緩衝液の混合物がチューブに入れられ、工程(iii)(2)が、(2a)液相及び固相が分離されるようにチューブに重力又は遠心力を適用すること;並びに(2b)ssRNAを含む上清を回収するか又はセルロース材料を除去することを含む、請求項21から24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
工程(iii)において、セルロース材料と第1の緩衝液の混合物がスピンカラム又はフィルターデバイスに入れられ、工程(iii)(2)が、(2a’)スピンカラム又はフィルターデバイスに重力、遠心力、圧力、又は真空を適用すること;及び(2b’)ssRNAを含むフロースルーを回収することを含む、請求項21から24の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程(ii)及び(iii)が1回又は2回以上、反復され、工程(ii)及び(iii)の1サイクルのうち工程(iii)の後に得られたssRNA調製物が、次サイクルの工程(ii)におけるRNA調製物として使用され、工程(ii)及び(iii)の各サイクルのうち工程(ii)において、新鮮なセルロース材料が使用される、請求項12から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
工程(ii)において、セルロース材料がカラムに入れられ、工程(ii)が、dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件下で、カラムにRNA調製物をロードすることを含み、工程(iii)が、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない条件下で、セルロース材料からssRNAを溶出することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項29】
工程(ii)において、RNA調製物が提供され、ssRNAを含む液体及び第2の緩衝液としてカラムにロードされ、第2の緩衝液が、dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする濃度で、水、エタノール及び塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第2の緩衝液中のエタノール濃度が少なくとも35%(v/v)、好ましくは38-42%(v/v)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第2の緩衝液中の塩の濃度が15-70mM、好ましくは20-60mMである、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
第2の緩衝液が、緩衝物質、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、及び/又はキレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む、請求項29から31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
工程(iii)が、溶離液として第1の緩衝液を使用して実施され、第1の緩衝液が、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない濃度で、水、エタノール及び塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む、請求項28から32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
第1の緩衝液中のエタノール濃度が14-20%(v/v)、好ましくは14-16%(v/v)である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
第1の緩衝液中の塩の濃度が15-70mM、好ましくは20-60mMである、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
第1の緩衝液が、緩衝物質、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、及び/又はキレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む、請求項33から35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
RNA調製物が、T3、T7及びSP6 RNAポリメラーゼからなる群から選択されるRNAポリメラーゼを使用することによって生成される、請求項1から36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
工程(ii)の前に、RNA調製物が、少なくとも1つの予備精製処理に供される、請求項1から37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの予備精製処理が、以下:好ましくは塩化リチウムを用いた核酸の沈殿;核酸の磁気ビーズへの結合;限外濾過;及び好ましくは二重鎖特異的ヌクレアーゼ(DSN)を用いたDNAの分解のうちの一又は複数を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ssRNAが、アンチセンスRNA、siRNA、又はmiRNAなどのmRNA又は阻害RNAである、請求項1から39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
ssRNAが、少なくとも2700nt、好ましくは少なくとも3000nt、より好ましくは少なくとも3500nt、より好ましくは少なくとも4500のntの長さを有する、請求項1から40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
セルロース材料が、セルロース繊維、好ましくは分配クロマトグラフィー試薬としての使用に適したグレードのセルロース繊維を含む、請求項1から41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
工程(ii)においてRNA調製物と接触させる前に、セルロース材料が洗浄セルロース材料として提供される、請求項1から42の何れか一項に記載の方法。
【請求項44】
セルロース材料の洗浄が、(I)セルロース材料を、振盪及び/又は撹拌下で、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、洗浄溶液と混合すること;並びに(II)液体を除去するか又はセルロース材料を回収すること;並びに任意選択的に(III)工程(I)及び(II)を1回又は2回以上、反復することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
洗浄溶液が、(A)工程(ii)がdsRNAの洗浄セルロース材料への結合を可能にし、ssRNAの洗浄セルロース材料への結合を可能にしない条件下で行われる場合、請求項5から8の何れか一項に定義された第1の緩衝液、又は(B)工程(ii)がdsRNA及びssRNAの洗浄セルロース材料への結合を可能にする条件下で行われる場合、請求項14から17の何れか一項に定義された第2の緩衝液の組成を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1から45の何れか一項に記載の方法によって得ることができるssRNA。
【請求項47】
dsRNAを実質的に含まず、好ましくはdsRNA及びDNAを実質的に含まない、請求項46に記載のssRNA。
【請求項48】
治療に用いるための、請求項46又は47に記載のssRNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一本鎖RNA(ssRNA)を提供する方法に関する。さらに、本発明は、本発明の方法によって得ることができるssRNA、及び治療におけるこのようなssRNAの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
T7 RNAポリメラーゼを用いたインビトロ転写(IVT)によるmRNAの合成中に(Yin等、Cell 116 (2004)、393-404参照)、二本鎖RNA(dsRNA)を含む有意な量の異常産物が、酵素の従来的でない活性のために生成される(Triana-Alonso等、JBC 270 (1995)、6298-6307;Cazenave等、PNAS USA 91(1994)、6972-6976; Gong等、JBC 281 (2006)、23533-23544参照)。dsRNAは、タンパク質合成阻害をもたらす炎症性サイトカインを誘導し、エフェクター酵素を活性化するため(Kariko等、Curr. Opin. Drug Discov. Devel. 10 (2007)、523-532参照)、治療薬として使用されるIVT mRNAからdsRNAを除去することが重要である。
【0003】
今日まで、IVT mRNAからdsRNAを除去するための2つの異なる方法が記載されている。1つの方法は、非多孔性(Weissman等、Methods Mol. Biol. 969 (2013)、43-54参照)又は多孔性(米国特許第8383340B2号)C-18ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)マトリックスを用いたイオン対逆相HPLCによるIVT mRNAの精製である。しかしながら、RNAを精製するためにHPLCを使用する方法は、いくつかの欠点を有し、例えば、複雑な装置;アセトニトリルのような毒性溶媒の使用;長い持続時間の標準的な精製操作;スケールアップの困難性;コスト;せん断のために長いRNAの分解が挙げられる。
【0004】
あるいは、酵素ベースの方法は、ssRNAではなく、dsRNAを特異的に加水分解する大腸菌(E.coli)RNaseIIIを用いて確立されており、それによってIVT mRNA調製物からdsRNA混入物を除去する(国際公開第2013/102203A1号参照)。しかしながら、RNaseIIIがRNAで治療される患者において、望ましくない反応(望ましくない免疫反応など)を誘導する可能性がある。したがって、RNAを患者に投与する前に、酵素を除去することが必要であり、それにより、この方法の複雑さ及びコストが増大する。さらに、RNaseIIIの使用は、しばしば、インキュベーション中にssRNA、特に長いssRNAの部分的な分解をもたらす。これは、ssRNAに含有される二本鎖の二次構造のRNaseIII触媒による加水分解によって引き起こされる可能性が高い。
【0005】
1966年に、非イオン性相互作用が、EtOHの存在下で非修飾セルロース粉末CF-11とRNAとの間で記述され、クロマトグラフィーによるリボソームRNA(rRNA)からsRNA(「可溶性RNA」)を分離するために使用された(Barber, R. Biochim. Biophys. Acta 114 (1966), 422-424)。sRNAはカラムから35%EtOHを用いて溶出されたが、rRNAは、クロマトグラフィー緩衝液のEtOH濃度を15%に低下させることによって選択的に溶出させることができた。
【0006】
Franklin等(PNAS USA 55 (1966)、1504-1511)は、大腸菌の全RNAからRNAバクテリオファージR17の複製中間体(RI)RNAを単離するために同じ分離原理を使用した。ここで、RNアーゼA耐性dsRNAとして同定されたセルロース結合RI RNAは、EtOHを含まない緩衝液中でのみ効率的に溶出された。この技術は、栗の木の寄生性真菌であるクリ胴枯病菌(Cryphonectria parasitica)(Day等、Phytopathology 67 (1977)、1393)からdsRNAを単離するために適用された。
【0007】
Morris及びDodds(Phytopathology 69 (1977), 854-858)は、15%(v/v)EtOHの存在下で、植物及び真菌のRNA分離株からウイルスdsRNAを選択的にプルダウンすることによって、上記のセルロースベースの手法を単純化した。この手法は、dsRNAを単離するために数十年にわたって使用されており、例えば、CF-11セルロースを充填した市販のミニカラムを用いて、わずかな修飾のみを経て、プロセスを高速化し、サンプル処理量を増加させている(Castillo等、Virol. J. 8 (2011)、38; Okada等、Arch. Virol. 159 (2014)、807-809参照)。
【0008】
本発明の目的は、上記の一又は複数の課題に対処する手段を提供することである。特に、本発明の目的は、HPLCに基づく方法よりも費用対効果が高く、簡便であり、時間消費が少ないssRNAを提供するための代替の方法を提供することであり、これは、有害物質を避け、簡単にスケールアップすることができ、HPLCを用いて得られたssRNAに匹敵する収率及び純度でssRNAを提供し、長いRNAに影響せず、及び/又はRNAを分解しない。本発明の根底にあるこのような目的は、本明細書のどこにでも、例えば添付の特許請求の範囲の主題によって、開示又は定義されるような主題によって解決される。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、本発明は、ssRNAを提供する方法であって、(i)インビトロ転写によって生成されたssRNAを含むRNA調製物を提供すること;(ii)RNA調製物を、二本鎖RNA(dsRNA)のセルロース材料への結合を可能にする条件下で、セルロース材料と接触させること;及び(iii)dsRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件下で、セルロース材料からssRNAを分離することを含む、方法を提供する。
【0010】
第1の態様の一実施態様では、本方法は、インビトロ転写によってssRNAを含むRNA調製物を生成する工程をさらに含む。
【0011】
第1の態様の第1の主要な実施態様では、工程(ii)及び(iii)は、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない条件下で実施される(第1の態様のこの主要な実施態様は、時として、本明細書において「陰性」精製手法と呼ばれ、これは、dsRNAのセルロース材料への選択的結合を可能にし、一方、ssRNAは結合しないままであるためである)。
【0012】
陰性精製手法の一実施態様では、工程(ii)は、ssRNAを含むRNA調製物を、振盪及び/又は撹拌下で、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、セルロース材料と混合することを含む。
【0013】
陰性精製手法の一実施態様では、工程(ii)において、RNA調製物は、ssRNAを含む液体として提供され、第1の緩衝液及び/又はセルロース材料は、第1の緩衝液中の懸濁液として提供され、第1の緩衝液は、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない濃度で、水、エタノール及び塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む。一実施態様では、第1の緩衝液中のエタノールの濃度は、14-20%(v/v)、好ましくは14-16%(v/v)である。一実施態様では、第1の緩衝液中の塩の濃度は、15-70mM、好ましくは20-60mMである。一実施態様では、第1の緩衝液は、緩衝物質、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、及び/又はキレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む。
【0014】
陰性精製手法の一実施態様では、工程(ii)及び/又は工程(iii)において、RNA調製物、セルロース材料、及び第1の緩衝液の混合物はチューブに入れられ、工程(iii)は、(1)液相及び固相が分離されるようにチューブに重力又は遠心力を適用すること;並びに(2)ssRNAを含む上清を回収するか又はセルロース材料を除去することを含む。代替の実施態様では、工程(ii)及び/又は工程(iii)において、RNA調製物、セルロース材料、及び第1の緩衝液の混合物はスピンカラム又はフィルターデバイスに入れられ、工程(iii)は、(1’)液相及び固相が分離されるようにスピンカラム又はフィルターデバイスに重力、遠心力、圧力、又は真空を適用すること;並びに(2’)ssRNAを含むフロースルーを回収することを含む。
【0015】
陰性精製手法の一実施態様において、工程(ii)及び工程(iii)は、1回又は2回以上、反復され、工程(ii)及び(iii)の1サイクルのうち工程(iii)の後に得られたssRNA調製物は、次サイクルの工程(ii)においてRNA調製物として使用され、工程(ii)及び(iii)工程の各サイクルの工程(ii)において、新鮮なセルロース材料が使用される。
【0016】
第1の態様の第2の主要な実施態様では、工程(ii)は、dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件下で実施され;及び工程(iii)は、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない条件下で実施される(第1の態様のこの第2の主要な実施態様は、時として、本明細書において「陽性」精製手法と呼ばれ、これは、最初のdsRNA及びssRNAがセルロース材料に結合し、次にssRNAがセルロース材料から選択的に放出され、一方、dsRNAは結合したままであるためである)。
【0017】
陽性精製手法の一実施態様では、工程(ii)は、(1)ssRNAを含むRNA調製物を、振盪及び/又は撹拌下で、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、セルロース材料と混合すること;並びに(2)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を残部から分離することを含む。
【0018】
陽性精製手法の一実施態様では、工程(ii)において、RNA調製物は、ssRNA及び第2の緩衝液を含む液体として提供され、及び/又はセルロース材料は、第2の緩衝液中の懸濁液として提供され、第2の緩衝液は、dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする濃度で、水、エタノール及び塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む。一実施態様では、第2の緩衝液中のエタノールの濃度は、少なくとも35%(v/v)、好ましくは38-42%(v/v)である。一実施態様では、第2の緩衝液中の塩の濃度は、15-70mM、好ましくは20-60mMである。一実施態様では、第2の緩衝液は、緩衝物質、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、及び/又はキレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む。
【0019】
陽性精製手法の一実施態様では、工程(ii)(1)及び/又は(ii)(2)において、工程(ii)(1)で得られたRNA調製物とセルロース材料の混合物は、チューブに入れられ、工程(ii)(2)は、(2a)液相及び固相が分離されるように、チューブに重力又は遠心力をチューブに適用すること;並びに(2b)上清を除去するか又はdsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を回収することを含む。代替の実施態様では、工程(ii)(1)及び/又は(ii)(2)において、工程(ii)(1)で得られたRNA調製物とセルロース材料の混合物は、スピンカラム又はフィルターデバイスに入れられ、工程(ii)(2)は、(2a’)液相及び固相が分離されるように、スピンカラム又はフィルターデバイスに重力、遠心力、圧力、又は真空を適用すること;並びに(2b’)フロースルーを廃棄することを含む。
【0020】
陽性精製手法の一実施態様では、工程(ii)は、(3)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料に第2の緩衝液のアリコートを添加すること;(4)得られた混合物を、振盪及び/又は撹拌下で、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、インキュベートすること;(5)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を液相から分離すること;並びに、任意選択的に(6)工程(3)から(5)を1回又は2回以上、反復することをさらに含む。
【0021】
陽性精製手法の一実施態様では、工程(iii)は、(1)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を、振盪及び/又は撹拌下で、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは10分間、第1の緩衝液と混合することであって、第1の緩衝液は、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない濃度で、水、エタノール及び塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む、混合すること;並びに(2)ssRNAを含む液相をセルロース材料から分離することを含む。一実施態様では、第1の緩衝液中のエタノールの濃度は、14-20%(v/v)、好ましくは14-16%(v/v)である。一実施態様では、第1の緩衝液中の塩の濃度は、15-70mM、好ましくは20-60mMである。一実施態様では、第1の緩衝液は緩衝物質、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、及び/又はキレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む。
【0022】
陽性精製手法の一実施態様では、工程(iii)において、セルロース材料及び第1の緩衝液の混合物をチューブに入れ、工程(iii)(2)は、(2a)液相及び固相が分離されるようにチューブに重力又は遠心力を適用すること;並びに(2b)ssRNAを含む上清を回収するか又はセルロース材料を除去することを含む。代替の実施態様では、工程(iii)において、セルロース材料及び第1の緩衝液の混合物は、スピンカラム又はフィルターデバイスに入れられ、工程(iii)(2)は、(2a’)スピンカラム又はフィルターデバイスに重力、遠心力、圧力、又は真空を適用すること;及び(2b’)ssRNAを含むフロースルーを回収することを含む。
【0023】
陽性精製手法の一実施態様では、工程(ii)及び(iii)は、1回又は2回以上、反復され、工程(ii)及び(iii)の1サイクルのうち工程(iii)の後に得られたssRNA調製物は、次サイクルの工程(ii)においてRNA調製物として使用され、工程(ii)及び工程(iii)の各サイクルの工程(ii)において、新鮮なセルロース材料が使用される。
【0024】
陽性精製手法の一実施態様では、工程(ii)において、セルロース材料がカラムに入れられ、工程(ii)がdsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件下でカラム上にRNA調製物をロードすることを含み、工程(iii)は、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない条件下でセルロース材料からssRNAを溶出することを含む。一実施態様では、工程(ii)において、RNA調製物が提供され、ssRNA及び第2の緩衝液を含む液体としてカラムにロードされ、第2の緩衝液は、dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする濃度で、水、エタノール及び塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む。一実施態様では、第2の緩衝液中のエタノールの濃度は、少なくとも35%(v/v)、好ましくは38-42%(v/v)である。一実施態様では、第2の緩衝液中の塩の濃度は、15-70mM、好ましくは20-60mMである。一実施態様では、第2の緩衝液は、緩衝物質、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、及び/又はキレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む。一実施態様では、工程(iii)は、溶離液として第1の緩衝液を用いて実施され、第1の緩衝液は、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない濃度で、水、エタノール及び塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む。一実施態様では、第1の緩衝液中のエタノールの濃度は、14-20%(v/v)、好ましくは14-16%(v/v)である。一実施態様では、第1の緩衝液中の塩の濃度は、15-70mM、好ましくは20-60mMである。一実施態様では、第1の緩衝液は緩衝物質、好ましくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、及び/又はキレート剤、好ましくはEDTAをさらに含む。
【0025】
第1の態様の1つの実施態様では、RNA調製物は、T3、T7及びSP6 RNAポリメラーゼからなる群から選択されるRNAポリメラーゼを使用することによって生成される。
【0026】
第1の態様の一実施態様では、工程(ii)の前に、RNA調製物は、少なくとも1つの予備精製処理に供される。一実施態様では、少なくとも1つの予備精製処理は、一又は複数の以下:核酸の沈殿、好ましくは塩化リチウムの使用;磁気ビーズへの核酸の結合;限外ろ過;及び好ましくは二重鎖特異的ヌクレアーゼ(DSN)の使用する、DNAの分解を含む。
【0027】
第1の態様の1つの実施態様では、ssRNAは、mRNA又は阻害性RNA(アンチセンスRNA、siRNA、又はmiRNAなど)である。
【0028】
第1の態様の一実施態様では、ssRNAは、長さが少なくとも2,700nt、好ましくは少なくとも2,800nt、少なくとも2,900nt、少なくとも3,000nt、少なくとも3,100nt、少なくとも3,200nt、少なくとも3,300nt、少なくとも3,400nt、例えば、少なくとも3,500nt、少なくとも3,600nt、少なくとも3,700nt、少なくとも3,800nt、少なくとも3,900nt、少なくとも4,000nt、少なくとも4,100nt、少なくとも4,200nt、少なくとも4,300、少なくとも4,400nt、又は少なくとも4500ntである。
【0029】
第1の態様の一実施態様では、セルロース材料は、セルロース繊維、好ましくは分配クロマトグラフィー試薬としての使用に適したグレードのセルロース繊維を含む。一実施態様では、工程(ii)におけるRNA調製物と接触させる前に、セルロース材料は、洗浄セルロース材料として提供される。一実施態様では、セルロース材料の洗浄は、(I)セルロース材料を、振盪及び/又は撹拌下で、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、洗浄溶液と混合すること;並びに(II)液体を除去するか又はセルロース材料を回収すること;並びに、任意選択的に(III)工程(I)及び(II)を1回又は2回以上、反復することを含む。一実施態様では、洗浄溶液は、(A)工程(ii)が、dsRNAの洗浄セルロース材料への結合を可能にし、ssRNAの洗浄セルロース材料への結合を可能にしない条件下で実施される場合、上記又は下記で定義される第1の緩衝液(すなわち、「陰性」精製手法の実施態様における)、又は(B)工程(ii)が、dsRNA及びssRNAの洗浄セルロース材料への結合を可能にする条件下で工程(ii)が行われる場合、上記又は下記で定義される第2の緩衝液(すなわち、「陽性」精製手法の実施態様において)の組成物を含む。
【0030】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の何れかの方法によって得ることができるssRNAを提供する。第2の態様の一実施態様では、ssRNAは、dsRNAを実質的に含まず、及び/又はDNAを実質的に含まず、好ましくはdsRNA及びDNAを実質的に含まない。
【0031】
第3の態様では、本発明は、治療における使用のための第2の態様のssRNAを提供する。
【0032】
本発明のさらなる態様並びに利点及び新規な特徴は、任意選択的に添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】セルロースによるIVT RNAからのdsRNAのプルダウンを示す図である。16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液の存在下でセルロース材料とともにインキュベートした後、50μgの2500nt長のm1Ψ修飾されたIVT RNAの未結合及び結合画分は、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロッティングによって、dsRNA混入物について分析された。比較のために、未精製RNA(インプット)を並行して分析した。対応するRNAの180ng、900ng及び1,800ng RNAをドットブロット分析のためにロードした。RNA完全性を制御するために、80ngのRNAを1.4%(w/v)アガロースゲル上にロードし、電気泳動により分離した。
図2】セルロースによるIVT RNAからのdsRNA除去効率における様々な濃度のEtOHの影響を示す図である。16%(v/v)、18%(v/v)又は20%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液の存在下でセルロース材料とともにインキュベートした後、50μgの1,500nt長のm1Ψ修飾され、D2キャップされたIVT RNAの未結合及び結合画分は、dsRNA特異的J2抗体又はRNA-DNAハイブリッド特異的S9.6抗体をそれぞれ用いたドットブロッティングにより、dsRNA及びRNA/DNAハイブリッド混入物について、分析された。比較のために、未精製RNA(インプット)を並行して分析した。対応するRNAの40ng、200ng、及び1,000ng RNAを、ドットブロット分析において示された抗体とそれぞれハイブリダイズした2つの別々の膜上にロードした。
図3】RNaseIII処理及びHPLC精製に対するIVT RNAのセルロース精製の比較を示す図である。100μgの2,500nt長のm1Ψ修飾されたIVT RNAは、マイクロ遠心分離スピンカラム及び16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液を用いて、セルロースによって1倍、2倍又は3倍精製された。200ng、1,000ng及び3,000ngのセルロース精製RNAは、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロッティングにより、dsRNA混入物について分析された。比較のために、同量の未精製RNA並びにRNaseIII処理RNA及びHPLC精製RNAをドットブロット膜にロードした。ハイブリダイゼーションシグナルはデンシトメトリーによって定量化され、値は、未精製RNAから除去されたdsRNAのパーセンテージとして表された。RNA完全性を制御するために、80ngのRNAを1.4%(w/v)アガロースゲル上にロードし、電気泳動により分離した。
図4】IVT RNAからdsRNAを除去する際の様々なタイプのセルロースの性能の比較を示す図である。様々なセルロース(Sigma、C6288;Macherey-Nagel、MN 100及びMN2100)、マイクロ遠心分離スピンカラム及び16%(v/v)EtOを含有する1×STE緩衝液を用いた1サイクルの精製後、100μgの1,500nt長のm1Ψ修飾されたIVT RNAの未結合及び結合画分をドットブロッティングにより分析した。80ng、400ng及び2,000ngのRNAサンプルは、dsRNA特異的J2抗体を用いて、dsRNA混入物について分析された。比較のために、同量の未精製RNA(インプットRNA)をドットブロット膜にロードした。ハイブリダイゼーションシグナルをデンシトメトリーによって定量化し、値は、未精製RNAから除去したdsRNAのパーセンテージとして表された。RNAの完全性をモニターするために、80ngのRNAを1.4%(w/v)アガロースゲルにロードし、電気泳動により分離した。
図5】セルロース精製法は拡張性であることを示す図である。5mgの1,900nt長のD1キャップされたIVT RNAは、真空駆動フィルターデバイス及び16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液を用いてセルロースにより1倍又は2倍精製された。40ng、200ng及び1,000ngのセルロース精製RNAは、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロッティングにより、dsRNA混入物について分析された。比較のために、同量の未精製RNA(インプットRNA)をドットブロット膜にロードした。ハイブリダイゼーションシグナルをデンシトメトリーによって定量化し、値は、未精製RNAから除去されたdsRNAのパーセンテージとして表された。RNAの完全性を制御するために、80ngのRNAを1.4%(w/v)アガロースゲル上にロードし、電気泳動により分離した。両方のサンプルのRNA回収率を示す。
図6】「陽性」精製手法を用いて様々な長さを有するIVT RNAの精製を示す図である。400μgの>10,000nt長のD1キャップされたIVT RNA、1,300nt長のD2キャップされたIVT RNA(A)及び2,500nt長のIVT RNA(キャップされていない)(B)をセルロース精製の2サイクルのために使用した。何れのRNAもヌクレオシド修飾を含有しなかった。最初のサイクル中に、RNAを、40%(v/v)のEtOHを含有する1×STEを用いてセルロースに完全に結合させ、その後、16%(v/v)含有緩衝液により溶出し、セルロース材料を含有する第2のマイクロ遠心分離カラムに移した(「陽性」精製)。指示された量の精製RNAは、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロッティングによってdsRNA混入物について分析された。比較のために、同量の未精製RNAをドットブロット膜にロードした。RNAの完全性をモニターするために、80ngのRNAを1.4%(w/v)アガロースゲルにロードし、電気泳動により分離した。
図7】様々なイオン強度を有する緩衝液を用いたIVT RNAの精製を示す図である。250μg(A)又は160μg(B)の1,300nt長のm1Ψ修飾されたIVT RNAは、25-150mMのNaCl(A)又は0-50mMのNaCl(B)を含有する1×STE緩衝液を使用してセルロース精製された。16%(v/v)EtOHを含有する対応する緩衝液による溶出、続く、0%(v/v)EtOH緩衝液による溶出前に、RNAを、40%(v/v)EtOHの存在下でセルロースに完全に結合させた。40ng、200ng、1,000ng及び3000ngの溶出されたRNAは、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロッティングにより、dsRNA混入物について分析された。回収率が低いため、0%(v/v)EtOHで溶出された40ng、200ng及び1,000ngのRNAのみが(B)のドットブロット分析のためにロードされた。比較のために、同量の未精製RNA(インプットRNA)をドットブロット膜にロードした。ハイブリダイゼーションシグナルをデンシトメトリーによって定量化し、値は、未精製RNAから除去したdsRNAのパーセンテージとして表された。RNAの完全性をモニターするために、80ngのRNAを1.4%(w/v)アガロースゲルにロードし、電気泳動により分離した。
図8】FPLCによるIVT RNAのセルロース精製を示す図である。(A)500μgの1,300nt長のm1Ψ修飾されたIVT RNAのFPLCクロマトグラムを示し、RNAは4gのセルロース材料で充填されたXK 16/20カラムにロードされた。結合は、40%(v/v)EtOHを含有する1×STEを用いて行われた。ssRNA及びdsRNA混入物は、泳動緩衝液のEtOH濃度をそれぞれ16%(v/v)及び0%(v/v)に減少させることにより溶出された。クロマトグラムの灰色の枠で指示され画分を回収した(F1:16%EtOH溶出液、F2:0%EtOH溶出液)。(B)画分F1及びF2から回収された40ng、200ng、1,000ng及び3,0000ngのRNAは、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロッティングによりdsRNA混入物について分析された。比較のために、同量の未精製RNA(インプットRNA)をドットブロット膜にロードした。ハイブリダイゼーションシグナルをデンシトメトリーによって定量化し、値は、未精製RNAから除去したdsRNAのパーセンテージとして表された。RNAの完全性をモニターするために、80ngのRNAを1.4%(w/v)アガロースゲルにロードし、電気泳動により分離した。
図9】ssRNA溶出のための様々なEtOH濃度を用いたIVT RNAの精製を示す図である。200μgの1,500nt長のD1キャップされたIVT RNAは、ssRNA溶出を溶出するために、6%、10%、12%、14%、16%、18%、20%又は24%(v/v)のEtOHを含有する1×STE緩衝液を用いてセルロース精製された。溶出前に、RNAを、40%(v/v)EtOHの存在下でセルロースに完全に結合させた。200ng、1,000ng及び3,000ngの溶出されたssRNAは、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロッティングにより、dsRNA混入物について分析された(A)。比較のために、同量の未精製RNA(インプットRNA)をドットブロット膜にロードした。RNAの完全性をモニターするために、80ngのRNAを1.4%(w/v)アガロースゲルにロードし、電気泳動により分離した。(B)ハイブリダイゼーションシグナルをデンシトメトリーで定量化し、値(未精製RNAから除去されたdsRNAのパーセンテージとして表される)は、溶出に使用されたEtOH濃度に対してプロットされ(実線)、個々の溶出液から回収されたRNAの比率と比較された(破線)。
図10】セルロースのRNA結合能の決定を示す図である。0.1gのセルロース(Sigma、C6288)は、マイクロ遠心分離カラムにおいて40%(v/v)EtOHを含有する500μlの1×STE中で、25μg、50μg、100μg、250μg、500μg、750μg、1,000μg又は1,500μgの1,500nt長のD1キャップされたIVT RNAとともにインキュベートされた。遠心分離による未結合RNAの分離後、セルロース結合RNAは、最初に16%(v/v)EtOHを含有する1×STEを用いて、最後にHO(0%(v/v)EtOH)を用いて段階的に溶出された。沈殿後、フロースルー(A、B;40%(v/v)EtOH、実線)、16%(v/v)EtOH溶出液(A、B;破線)及び0%(v/v)EtOH溶出液(A、B;点線)から回収されたRNAの量は、分光光度法によって決定され、精製に使用されたRNAの総量に対してプロットされた。値は、使用されたRNAの総量に対する回収率(A)として、又は回収されたRNAの総収量(B)として示される。16%(v/v)溶出液から回収された200ng、1,000ng及び3,000ngのRNAは、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロッティングにより、dsRNA混入物について分析された(C)。比較のために、同量の未精製RNA(インプットRNA)をドットブロット膜にロードした。RNAの完全性をモニターするために、これらのRNAの80ngを1.4%(w/v)アガロースゲルにロードし、電気泳動により分離した。ハイブリダイゼーションシグナルをデンシトメトリーにより定量化し、値(未精製RNAから除去されたdsRNAのパーセンテージとして表される)は、精製に使用されたRNAの総量に対して値をプロットされ(D;実線)、個々の16%(v/v)EtoH溶出液から回収されRNAの割合と比較された(D;破線)。
図11】その翻訳能力及び免疫原性におけるIVT RNAのセルロース精製の影響を示す図である。マウスエリスロポエチン(EPO)をコードするD1キャップされたIVT RNA(200μg)を未精製のままとしたか又はそれぞれセルロース材料で満たした2つのスピンカラムを用いた2工程手法によって精製した。第1のカラム:IVT RNAの陽性精製(すなわち、40%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液を用いたdsRNA及びssRNAの結合;16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液を用いたssRNAの溶出);第2のカラム:第1のカラムからの溶出液の陰性精製(すなわち、ssRNAを含有する溶出液であり、16%EtOHを含有する1×STE緩衝液を用いて第1カラムから得られる)。第2のカラムから得られたフロースルーをイソプロパノール/酢酸ナトリウムで沈殿させ、HOに再溶解させた。TransIT(Mirus Bio)を用いた製剤化後、IVT RNAを3μgRNA/動物の用量でマウス(n=4匹)に腹腔内注射した。血液を注射の2、6、及び24時間後に採取し、血漿サンプルを回収した。コントロールマウスにはTransITのみが注射された。マウスインターフェロンアルファ(A)及びマウスEPO(B)のレベルは、特異的ELISAアッセイ(マウスインターフェロンアルファ特異的ELISA(eBioscience);マウスEPO特異的DuoSet ELISA発色キット(R&D))を用いて測定された。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は以下にさらに詳細に記載されるが、本発明は、これらが変更され得るため、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール及び試薬に限定されないことを理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特定の実施態様のみを説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことを理解するべきである。他に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0035】
以下では、本発明の要素をより詳細に説明する。これらの要素は、特定の実施態様とともに列挙されているが、追加の実施態様を作製するために任意の方法及び任意の数で組み合わせられることを理解するべきである。様々に記載された実施例及び好ましい実施態様は、本発明を明示的に記載された実施態様のみに限定するものとして解釈されるべきではない。この説明は、明示的に記載された実施態様を、任意の数の開示された及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施態様を支持及び包含するものと理解されるべきである。さらに、本出願において、記載されているすべての要素の任意の順列及び組合せは、文脈からそうでないことが示されていない限り、本出願の記載によって開示されるものとして考慮されるべきである。例えば、好ましい実施態様では、ssRNAが120ヌクレオチドからなるポリ(A)尾部を含み、別の好ましい実施態様では、ssRNA分子が5’キャップ類似体を含む場合、好ましい実施態様では、ssRNAは120ヌクレオチドからなるポリ(A)尾部及び5’キャップ類似体を含む。同様に、好ましい実施態様では、第1の緩衝液中のEtOH濃度が14-16%(v/v)であり、別の好ましい実施態様では、第1の緩衝液中のキレート剤濃度が15-40mMである場合、次に、好ましい実施態様では、第1の緩衝液は、濃度が14-16%(v/v)のEtOH及び濃度が15から40mMのキレート剤を含む。
【0036】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」,H.G.W.Leuenberger、B.Nagel、及びH.Kolbl編、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 Basel、Switzerland、(1995)に記載されるように定義される。
【0037】
本発明の実施は、他に指示がなければ、当該技術分野の文献で説明されている化学、生化学、及び組換えDNA技術の従来の方法を用いる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、J. Sambrook等 編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor 1989参照)。
【0038】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通じて、文脈が他を必要としない限り、語句「含む(comprise)」、及び「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形は、記述されたメンバー、整数若しくは工程、又はメンバー、整数若しくは工程の群の包含を意味すると理解されるが、任意の他のメンバー、整数もしく工程、及びメンバー、整数若しくは工程の群を排除するものではない。用語「本質的に~からなる」とは、任意の本質的な意味を有する他のメンバー、整数又は工程を排除することを意味する。用語「含んでいる(comprising)」は、「本質的に~からなる」という用語を包含し、これは用語「からなる」を包含する。したがって、本出願における各場合において、用語「含んでいる(comprising)」は、「本質的に~からなる」又は「~からなる」という用語で置き換えることができる。同様に、本出願における各場合において、用語「本質的に~からなる」は、用語「からなる」で置き換えることができる。
【0039】
本発明を説明する文脈において(特に特許請求の範囲において)使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」並びに類似の関連語は、本明細書において他に指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾していない限り、単数形と複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内のそれぞれ別個の値を個々に参照する略式の方法として役立つことを単に意図するものである。本明細書において他に示されない限り、それぞれ各値は、本明細書において個別に列挙されているかのように本明細書に援用される。本明細書において記載されているすべての方法は、本明細書において他に指示されない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書において提供される、あらゆる例、又は例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明するためのものであり、他のかたちで請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書においていかなる言葉も、本発明の実施に不可欠な任意の請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0040】
本明細書の本文を通していくつかの文献が引用されている。本明細書において引用された各文献(すべての特許、特許出願、科学刊行物、製造者の仕様書、指示書などを含む)は、上記又は下記の何れかにかかわらず、出典明示によりそれらの全体が本明細書に援用される。本明細書中のいかなるものも、本発明が、先行する発明によるこのような開示よりも先行する資格がないと認めるものとして解釈されるべきではない。
【0041】
本明細書で使用される「dsRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件」という表現は、dsRNAのセルロース材料への結合(好ましくは非共有結合又は吸着)を促進(例えば、増強)し、セルロース材料から、セルロース材料に結合しているdsRNAの放出を阻害し、及び/又は遊離dsRNA(すなわち、セルロース材料に結合していないdsRNA)の量を低減させる条件を意味する。これらの条件は、dsRNA(例えば、ssRNA)以外のRNAのセルロース材料への結合を可能にするか又は可能にしない条件であり得る。したがって、一実施態様では、「dsRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件」という表現は、「dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない条件」である。この実施態様では、条件は、(i)dsRNAのセルロース材料への結合(好ましくは非共有結合又は吸着)を促進(例えば、増強)し、セルロース材料から、セルロース材料に結合しているdsRNAの放出を阻害し、及び/又は遊離dsRNAの量(すなわち、セルロース材料に結合していないdsRNAの量)を低減させ、並びに(ii)ssRNAの非結合状態(すなわち、セルロース材料に結合していないか又は吸着されていないssRNAの状態)を促進(例えば、増強)し、セルロース材料へ結合した(好ましくは、非共有結合又は吸着した)ssRNAの量を低減させ、及び/又はssRNAのセルロース材料への結合(好ましくは、非共有結合又は吸着)を阻害する。代替の実施態様では、「dsRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件」という表現は、「dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件」である。この代替の実施態様では、条件は、dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合(好ましくは非共有結合又は吸着)を促進(例えば、増強)し、セルロース材料から、セルロース材料に結合しているdsRNA及びssRNAの放出を阻害し、並びに/又は遊離dsRNA及びssRNAの量(すなわち、セルロース材料に結合していないdsRNA及びssRNAの量)を低減させる。
【0042】
dsRNA/ssRNAのセルロース材料への結合を可能にするか又は可能にしない上記の条件は、dsRNA/ssRNAを含むRNA調製物が溶解されるか又はセルロース材料に添加される培地の組成(緩衝液の組成など)によって制御することができる。この点において、「組成」は、培地中(例えば、緩衝液中)に含有する成分の種類及び量を意味する。
【0043】
したがって、一実施態様では、「dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない条件」は、水、エタノール、及びdsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない濃度の塩を含む第1の培地(例えば、第1の緩衝液)によって達成され得る。したがって、これらの条件を満たすために、工程(ii)において、RNA調製物は、ssRNA及び第1の培地(例えば、第1の緩衝液)を含む液体として提供され得;セルロース材料は、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の懸濁液として(例えば、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)が洗浄液として使用されている洗浄セルロース材料として)提供され得;RNA調製物は、ssRNA及び第1の培地(例えば、第1の緩衝液)を含む液体として提供され得、セルロース材料は、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の懸濁液として提供され得;又はRNA調製物は、ssRNA及び第1の培地(例えば第1の緩衝液)を含む液体として提供され得、セルロース材料は、洗浄セルロース材料(第1の培地(例えば第1の緩衝液)が洗浄溶液として使用されている)として、乾燥形態で若しくは第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の懸濁液の何れかで提供され得る。
【0044】
「dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない濃度において」という表現は、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の成分(特に水、エタノール及び塩)の濃度が、(i)dsRNAのセルロース材料への結合(好ましくは非共有結合又は吸着)を促進(例えば、増強)し、第1の培地(例えば、第1の緩衝液中に)中に、セルロース材料から、セルロース材料に結合しているdsRNAの放出を阻害し、及び/又は第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の遊離dsRNAの量(すなわち、セルロース材料に結合していないdsRNAの量)を低減させ、並びに(ii)ssRNAの非結合状態(すなわち、セルロース材料に結合していないか又は吸着されていないssRNAの状態)を促進(例えば、増強)し、セルロース材料に結合した(好ましくは、非共有結合又は吸着した)ssRNAの量を低減させ、及び/又はssRNAのセルロース材料への結合(好ましくは、非共有結合又は吸着)を阻害するのに十分であることを意味する。
【0045】
さらに、一実施態様では、「dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件」は、水、エタノール、並びにdsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする濃度の塩を含む第2の培地(例えば、第2の緩衝液)によって達成することができる。したがって、これらの条件を満たすために、工程(ii)において、RNA調製物は、ssRNA及び第2の培地(例えば、第2の緩衝液)を含む液体として提供され得;セルロース材料は、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中の懸濁液として(例えば、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)が洗浄液として使用されている洗浄セルロース材料として)提供され得;RNA調製物は、ssRNA及び第2の培地(例えば、第2の緩衝液)を含む液体として提供され得、セルロース材料は、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中に懸濁液として提供され得;又はRNA調製物は、ssRNA及び第2の培地(例えば第2の緩衝液)を含む液体として提供され得、セルロース材料は、洗浄セルロース材料(第2の培地(例えば第2の緩衝液)が洗浄溶液として使用されている)として、乾燥形態で若しくは第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中の懸濁液の何れかで提供され得る。
【0046】
「dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする濃度において」という表現は、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中の成分(特に水、エタノール及び塩)の濃度が、dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合(好ましくは非共有結合又は吸着)を促進(例えば、増強)し、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中に、セルロース材料からのセルロース材料に結合しているdsRNA及びssRNAの放出を阻害し、並びに/又は第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中の遊離dsRNA及びssRNAの量(すなわち、セルロース材料に結合していないdsRNA及びssRNAの量)を低減させるのに十分であることを意味する。
【0047】
驚くべきことに、本発明者らは、ssRNAではなくdsRNAは、濃度が14-20%(v/v)のエタノールの存在下でセルロース材料に選択的に結合することを見出した。したがって、一実施態様では、「dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしない条件」は、濃度が14-20%(v/v)、好ましくは14-19%(v/v)、より好ましくは14-18%(v/v)、例えば、14-17%(v/v)、14-16%(v/v)、15-19%(v/v)、15-18%(v/v)、15-17%(v/v)、16-19%(v/v)、又は16-18%(v/v)であるエタノールを含有する上記で特定される第1の培地(例えば、第1の緩衝液)によって達成され得る。一実施態様では、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)は、上記で開示された範囲のエタノールに加えて、濃度が15-70mM、好ましくは20-60mM、例えば、25-50mM又は30-50mMである塩を含む。第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の塩は、好ましくは塩化ナトリウムである。しかしながら、本出願で提供される情報及びデータに基づいて、当業者は、本発明の方法に使用される第1の培地(例えば、第1の緩衝液)に適した他の塩及びそれらの濃度を容易に決定することができる。第1の培地(例えば、第1の緩衝液)のさらなる任意選択的な成分は、緩衝物質(好ましくはTRIS又はHEPES、より好ましくはTRIS)、及び/又はキレート剤(好ましくはEDTA又はニトリロ三酢酸、より好ましくはEDTA)を含む。一実施態様では、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の緩衝物質の濃度は、5-40mM、好ましくは6-30mM、例えば、8-20mM又は10-15mMである。一実施態様では、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)のpHは、6.5-8.0、好ましくは6.7-7.8、例えば、6.8-7.2(例えば、TRISが緩衝物質である場合)又は7.3-7.7(HEPESが緩衝物質である場合)である。一実施態様では、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中のキレート剤の濃度は、10-50mM、好ましくは15-40mM、例えば、20-30mMである。
【0048】
一実施態様では、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)は、水、エタノール、TRIS及びEDTA(例えば、水、エタノール、塩(好ましくは塩化ナトリウム)、TRIS及びEDTA)を、好ましくは第1の培地(例えば、第1の緩衝液)に対して上記で特定される濃度で含む。しかしながら、本出願で提供される情報及びデータに基づいて、当業者は、本発明の方法に使用される第1の培地(例えば、第1の緩衝液)に適した、TRIS以外の緩衝物質及び/又はEDTA以外のキレート剤及び/又は塩化ナトリウム以外の塩並びにそれらの濃度を容易に決定することができる。例えば、一実施態様では、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)は、上記で開示された範囲(すなわち、14-20%(v/v)など)のエタノールに加えて、5-40mMの量のTRIS、及び15-70mMの量の塩(好ましくは塩化ナトリウム)を含む。別の実施態様では、第1の培地(例えば、第1の緩衝液)は、上記で開示された範囲(すなわち、14-20%(v/v)など)のエタノールに加えて、5-40mMの量のHEPES及び100-150mM(例えば、110-140mM又は120-130mM)の量の塩(好ましくは塩化ナトリウム)を含む。
【0049】
一実施態様では、「dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件」は、少なくとも35%(v/v)、好ましくは少なくとも36%(v/v)、少なくとも37%(v/v)、少なくとも38%(v/v)、少なくとも39%(v/v)、少なくとも40%(v/v)、例えば、35-45%(v/v)、36-45%(v/v)、37-45%(v/v)、38-45%(v/v)、38-42%(v/v)、又は39-41%(v/v)の濃度のエタノールを含有する上記で特定される第2の培地(例えば、第2の緩衝液)によって達成され得る。一実施態様では、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)は、上記の開示された範囲内のエタノール(すなわち、少なくとも35%(v/v)、少なくとも36%(v/v)、37%(v/v)、少なくとも38%(v/v)など)に加えて、濃度が15-70mM、好ましくは20-60mM、例えば、25-50mM又は30-50mMである塩を含む。第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中の塩は、好ましくは塩化ナトリウムである。しかしながら、本出願で提供される情報及びデータに基づいて、当業者は、本発明の方法に使用される第2の培地(例えば、第2の緩衝液)に適した他の塩及びそれらの濃度を容易に決定することができる。第2の培地(例えば、第2の緩衝液)のさらなる任意選択的な成分は、緩衝物質(好ましくはTRIS又はHEPES、より好ましくはTRIS)、及び/又はキレート剤(好ましくはEDTA又はニトリロ三酢酸、より好ましくはEDTA)を含む。一実施態様では、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中の緩衝物質の濃度は、5-40mM、好ましくは6-30mM、例えば、8-20mM又は10-15mMである。一実施態様では、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)のpHは、6.5-8.0、好ましくは6.7-7.8、例えば、6.8-7.2(例えば、TRISが緩衝物質である場合)又は7.3-7.7(例えば、HEPESが緩衝物質である場合)である。一実施態様では、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中のキレート剤の濃度は、10-50mM、好ましくは15-40mM、例えば、20-30mMである。
【0050】
一実施態様では、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)は、水、エタノール、TRIS及びEDTA(例えば、水、エタノール、塩(好ましくは塩化ナトリウム)、TRIS及びEDTA)を、好ましくは第2の培地(例えば、第2の緩衝液)について上記で特定される濃度で含む。しかしながら、本出願で提供される情報及びデータに基づいて、当業者は、TRIS以外の緩衝物質及び/又はEDTA以外のキレート剤及び/又は塩化ナトリウム以外の塩、並びに本発明の方法において使用される第2の培地(例えば、第2の緩衝液)に適したそれらの濃度を容易に決定することができる。一実施態様では、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)は、上記の開示された範囲(すなわち、少なくとも35%(v/v)、少なくとも36%(v/v)、少なくとも37%(v/v)、少なくとも38%(v/v)など)のエタノールに加えて、5-40mMの量のTRIS、及び15-70mMの量の塩(好ましくは塩化ナトリウム)を含む。別の実施態様では、第2の培地(例えば、第2の緩衝液)は、上記の開示された範囲(すなわち、少なくとも35%(v/v)、少なくとも36%(v/v)、少なくとも37%(v/v)、少なくとも38%(v/v)など)のエタノールに加えて、5-40mの量のMHEPES、及び100-150mM(例えば、110-140mM又は120-130mM)の量の塩(好ましくは塩化ナトリウム)を含む。
【0051】
一実施態様では、第1及び第2の培地(すなわち、第1及び第2の緩衝液)は、エタノールの濃度だけでなく、一若しくは複数の他の成分(塩、任意選択的な緩衝物質、及び/又は任意選択的なキレート剤など)の種類及び/又は濃度が異なる。好ましい一実施態様では、第1及び第2の培地(すなわち、第1及び第2の緩衝液)は、エタノールの濃度を除いて、同じ組成(すなわち、水以外の成分、例えば塩、任意選択的な緩衝物質及び任意選択的なキレート剤の種類及び濃度に関して)を有する。
【0052】
本明細書で使用される「dsRNAのセルロース材料への結合を可能にする条件下でssRNAをセルロース材料から分離すること」という表現は、ssRNAを含む相(前記相は好ましくは液体である)が、dsRNAが結合しているセルロース材料から単離されることを意味する。このような単離/分離は、当業者に公知であるいくつかの方法で、例えば、dsRNAが結合しているセルロース材料のみを選択的に除去することによって(例えば、セルロース材料として、磁気ビーズに共有結合しているセルロースを使用し、磁石を使用することによって)又はssRNAを含む相のみを(例えば、ピペットを用いることによって)回収することによって達成され得る。
【0053】
例えば、一実施態様では、RNA調製物、セルロース材料、及び第1の緩衝液の混合物がチューブ内に入れられる(この実施態様では、(α)RNA調製物は、ssRNA及び第1の緩衝液を含む液体として提供され、及び/又は(β)セルロース材料は、洗浄セルロース材料(第1の緩衝液が洗浄溶液として使用されている)として、乾燥形態で若しくは第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の懸濁液の何れかで提供され、並びに/又は(γ)RNA調製物、セルロース材料、及び第1の緩衝液は、振盪及び/若しくは撹拌しながら(好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、例えば5-30分間又は10-20分間)、混合され;最も好ましくは、(α)RNA調製物は、ssRNA及び第1の緩衝液を含む液体として提供され、(β)セルロース材料は、洗浄セルロース材料(第1の緩衝液が洗浄溶液として使用されている)として、乾燥形態で若しくは第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の懸濁液の何れかで提供され、並びに(γ)RNA調製物、セルロース材料、及び第1の緩衝液は、振盪及び/若しくは撹拌下で、例えば5-30分若しくは10-20分間混合される)。この実施態様では、好ましくは、工程(iii)は、(1)液相及び固相が分離される(好ましくは完全に分離される)ように、チューブに重力又は遠心力(例えば、10,000×g-15,000×gで1-5分間)を適用すること;並びに(2)ssRNAを含む上清を(例えば、ピペットを用いることによって)回収すること、又はセルロース材料を(例えば、セルロース材料として、磁気ビーズに共有結合したセルロースを使用し、磁石を使用することによって)除去することを含む。工程(ii)及び(iii)は、1回又は2回以上(例えば、1回、2回又は3回)反復され得る。工程(ii)及び(iii)を反復する場合、1サイクルの工程(iii)の後に得られたssRNA調製物は、次の(すなわち直後の)サイクルの工程(ii)においてRNA調製物として使用され、各サイクルにおいて、新鮮なセルロース材料(好ましくは新鮮な洗浄セルロース材料)が使用される。
【0054】
代替の実施態様では、RNA調製物、セルロース材料、及び第1の緩衝液の混合物は、スピンカラム又はフィルターデバイスに入れられる(この実施態様では、好ましくは(α)RNA調製物は、ssRNA及び第1の緩衝液を含む液体として提供され、及び/又は(β)セルロース材料は、乾燥形態で又は第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の懸濁液として、洗浄セルロース材料(第1の緩衝液は洗浄溶液として使用されている)として提供され、並びに/又は(γ)RNA調製物、セルロース材料、及び第1の緩衝液は、(好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、例えば、5-30分間又は10-20分間)振盪及び/若しくは撹拌しながら混合され;最も好ましくは(α)RNA調製物は、ssRNA及び第1の緩衝液を含む液体として提供され、(β)セルロース材料は、乾燥形態で若しくは第1の培地(例えば、第1の緩衝液)中の懸濁液として、洗浄セルロース材料(第1の緩衝液は洗浄溶液として使用されている)として提供され、並びに(γ)RNA調製物、セルロース材料、及び第1の緩衝液は、例えば、5-30分間又は10-20分間、振盪及び/又は撹拌しながら混合される)。この実施態様では、好ましくは、工程(iii)は、(1’)液相及び固相が分離される(好ましくは完全に分離される)ように、スピンカラム又はフィルターデバイスに重力、遠心力(例えば、10,000×g-15,000×gで1-5分間)、圧力(例えば、1000hPa-3000hPa)、又は真空(例えば、100hPa-900hPa、例えば200hPa-800hPa)を適用すること;並びに(2’)ssRNAを含むフロースルーを回収することを含む。工程(ii)及び(iii)は、1回又は2回以上(例えば、1回、2回又は3回)反復され得る。工程(ii)及び(iii)を反復する場合、1サイクルの工程(iii)の後に得られたssRNA調製物は、次の(すなわち直後の)サイクルの工程(ii)においてRNA調製物として使用され、各サイクルにおいて、新鮮なセルロース材料(好ましくは新鮮な洗浄セルロース材料)が使用される。
【0055】
本明細書で使用される「dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を残部から分離すること」という表現は、dsRNA及びssRNAが結合している(好ましくは非共有結合又は吸着している)固相(すなわち、セルロース材料)が、他の相(好ましくは前記他の相は液体である)から単離することを意味する。このような単離/分離は、当業者に公知であるいくつかの方法で、例えば、dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料のみを選択的に回収することによって(例えば、セルロース材料として、磁気ビーズに共有結合しているセルロースを使用し、磁石を使用することによって)又は他の相のみを(例えば、ピペットを用いることによって)選択的に除去することによって達成され得る。
【0056】
例えば、一実施態様では、RNA調製物、セルロース材料、及び第2の緩衝液の混合物は、チューブに入れられる(この実施態様では、好ましくは(α’)RNA調製物は、ssRNA及び第2の緩衝液を含む液体として提供され、並びに/又は(β’)セルロース材料は、乾燥形態で若しくは第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中の懸濁液として、洗浄セルロース材料(第2の緩衝液は洗浄溶液として使用されている)として提供され、並びに/又は(γ’)RNA調製物、セルロース材料、及び第2の緩衝液は、(好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、例えば、5-30分間又は10-20分間)振盪及び/若しくは撹拌しながら混合され;最も好ましくは(α’)RNA調製物は、ssRNA及び第2の緩衝液を含む液体として提供され、(β’)セルロース材料は、乾燥形態で又は第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中の懸濁液として、洗浄セルロース材料(第2の緩衝液は洗浄溶液として使用されている)として提供され、並びに(γ’)RNA調製物、セルロース材料、及び第2の緩衝液は、例えば、5ました。30分間又は10-20分間、振盪及び/又は撹拌しながら混合される)。この実施態様では、好ましくは、工程(ii)(2)(すなわち、「dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を残部から分離すること)は、(2a)液相及び固相が分離される(好ましくは完全に分離される)ように、チューブに重力又は遠心力(例えば、10,000×g-15,000×gで1-5分間)を適用すること;並びに(2b)上清を除去すること(例えば、ピペットを用いることによって)、又はdsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を回収すること(例えば、セルロース材料として、磁性ビーズに共有結合したセルロースを使用し、磁石を使用することによって)を含む。工程(ii)は、さらに、(3)第2の緩衝液のアリコート(好ましくは、アリコートはセルロース材料の体積の0.5-3倍(例えば、1から2倍))をdsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料に添加すること;(4)得られた混合物を振盪及び/又は撹拌しながら(好ましくは5-20分間又は10-15分間)インキュベートすること;並びに(5)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を液相から分離する(好ましくは、分離は上記(2a)及び(2b)において定義されるのと同様の様式で行われる)こと;並びに、任意選択的に(6)工程(3)から(5)を1回又は2回以上(例えば、1回、2回又は3回)反復することを含む。工程(iii)は、(1)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を、(好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、例えば、5-30分間又は10-20分間)振盪及び/又は撹拌しながら、上記で特定される第1の緩衝液(例えば、EtOH濃度は14-20%(v/v)、好ましくは14-16%(v/v)である)と混合すること;並びに(2)ssRNAを含む液相をセルロース材料から分離すること(好ましくは、ssRNAを含む液相をセルロース材料から分離する工程は、上記で特定されるように、例えば、重力又は遠心力(例えば、10,000×g-15,000×gで1-5分間)を、液相及び固相が分離される(好ましくは完全に分離される)ようにチューブに適用することによって行われる);(2)ssRNAを含む上清を(例えば、ピペットを用いることによって)回収するか、又はセルロース材料を(例えば、セルロース材料として、磁気ビーズに共有結合したセルロースを使用して、磁石を使用することによって)除去することを含み得る。工程(ii)及び(iii)は、1回又は2回以上(例えば、1回、2回又は3回)反復されてもよい。工程(ii)及び(iii)を反復する場合、1サイクルの工程(iii)の後に得られたssRNA調製物は、次の(すなわち直後の)サイクルの工程(ii)においてRNA調製物として使用され、各サイクルにおいて新鮮なセルロース材料(好ましくは、新鮮な洗浄セルロース材料)が使用される。
【0057】
代替の実施態様では、RNA調製物、セルロース材料、及び第2の緩衝液の混合物は、スピンカラム又はフィルターデバイスに入れられる(この実施態様では、好ましくは(α’)RNA調製物が、ssRNA及び第2の緩衝液を含む液体として提供される、並びに/又は(β’)セルロース材料は、洗浄セルロース材料(第2の緩衝液は洗浄液として使用されている)として、乾燥形態で若しくは第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中の懸濁液の何れかとして提供され、並びに/又は(γ’)RNA調製物、セルロース材料、及び第2の緩衝液は、振盪及び/若しくは撹拌しながら(好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、例えば、5-30分間又は10-20分間)混合される;最も好ましくは(α’)RNA調製物は、ssRNA及び第2の緩衝液を含む液体として提供され、(β’)セルロース材料は、洗浄セルロース材料(第2の緩衝液は洗浄液として使用されている)として、乾燥形態で又は第2の培地(例えば、第2の緩衝液)中の懸濁液の何れかとして提供され、並びに(γ’)RNA調製物、セルロース材料、及び第2の緩衝液は、振盪及び/又は撹拌しながら、例えば、5-30分間又は10-20分間)混合される。この実施態様では、好ましくは、工程(ii)(2)(すなわち、「dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を残部から分離すること」)は、(2a’)液相及び固相が分離される(好ましくは完全に分離される)ように、スピンカラム又はフィルターデバイスに重力、遠心力(例えば、10,000×g-15,000×gで1-5分間)、圧力(例えば、1000hPa-3000hPa)、又は真空(例えば、100hPa-900hPa、例えば200hPa-800hPa)を適用すること;並びに(2b’)フロースルーを廃棄することを含む。工程(ii)は、(3)第2の緩衝液のアリコート(好ましくはアリコートを0.5-3倍(例えば、1-2倍)のセルロース材料の体積)を、dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料に添加すること;(4)得られた混合物を振盪及び/又は撹拌しながら(好ましくは5-20分間又は10-15分間)インキュベートすること;並びに(5)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を、液相から分離すること(好ましくは分離は上記の工程(2a’)及び(2b’)において定義したのと同様の様式で実施する;並びに、任意選択的に(6)(3)から(5)の工程を1回又は2回以上(例えば、1回、2回又は3回)反復することを含む。工程(iii)は、(1)dsRNA及びssRNAが結合しているセルロース材料を、(好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、例えば、5-30分間又は10-20分間)振盪及び/又は撹拌しながら、上記で特定される第1の緩衝液(例えば、EtOH濃度が14-20%(v/v)、好ましくは14-16%(v/v)である)と混合すること;並びに(2)ssRNAを含む液相をセルロース材料から分離すること(好ましくは、ssRNAを含む液相をセルロース材料から分離することは、上記で特定されるように、例えば、液相及び固相を分離する(好ましくは完全に分離する)ように、重力、遠心力(例えば、10,000×g-15,000×gで1-5分間)、圧力(例えば、1000hPa-3000hPa)、又は真空(例えば、100hPa-900hPa、例えば、200hPa-800hPa)をスピンカラム又はフィルターデバイスに適用することによって実施される);及びssRNAを含むフロースルーを回収することを含み得る。工程(ii)及び(iii)は、1回又は2回以上(例えば、1回、2回又は3回)反復され得る。工程(ii)及び(iii)を反復する場合、1サイクルの工程(iii)の後に得られたssRNA調製物は、次の(すなわち直後の)サイクルの工程(ii)においてRNA調製物として使用され、各サイクルにおいて新鮮なセルロース材料(好ましくは新鮮な洗浄セルロース材料)が使用される。
【0058】
陽性精製手法の一実施態様では、セルロース材料はカラムに入れられる(この実施態様では、セルロース材料は洗浄セルロース材料として提供されることが好ましく、上記で特定される第2の緩衝液(すなわち、少なくとも35%(v/v)、少なくとも36%(v/v)、少なくとも37%(v/v)、少なくとも38%(v/v)などのEtOH濃度を有する)は、洗浄溶液として使用されている)。この実施態様では、RNA調製物は工程(ii)のカラムにロードされる前に、セルロース材料を含むカラムが、上記で特定される第2の緩衝液(例えば、前記第2の緩衝液のアリコートを用いて)を用いて平衡化(洗浄)されることが好ましい。その後、RNA調製物(好ましくは、ssRNA及び前記第2の緩衝液を含む液体として提供される)をカラムに(好ましくは注射によって)ロードし、好ましくはカラムを前記第2の緩衝液(例えば、前記第2の緩衝液のさらなるアリコート、好ましくはカラムの中に含有されるセルロース材料の体積の0.5から2倍)を用いて洗浄される。この洗浄工程が好ましく、それは、RNA以外の混入物を洗い流すことができるためである(このような混入物には、特に、IVT RNA(任意選択的に修飾されている)を生成するために使用される出発材料及びそれらの分解産物、例えば、DNA鋳型;RNAポリメラーゼ(T7、T3又はSP6など);修飾されていない形態のモノリボヌクレオチド(例えば、rATP、rGTP、rCTP、rUTP、及び1つ又は2つのリン酸基のみを有するそれらの類似体)又は修飾形態(例えば、r(1mΨ)TP又はrΨTP)及び1つ又は2つだけのリン酸基を有するそれらの類似体);ピロリン酸;キャップ試薬(すなわち、5’-キャップ又は5’-キャップ類似体を導入するための試薬);及びIVT RNAを生成するために使用される添加物(例えば、緩衝剤、塩、抗酸化剤、ポリアミン(例えば、スペルミジンなど)が含まれる)。工程(iii)は、好ましくは、上記で特定される第1の緩衝液(すなわち、EtOH濃度が14-20%(v/v)、好ましくは14-16%(v/v)である)を溶離液として使用することによって実施され、それにより、セルロース材料からssRNAを放出させる。カラムから溶出又は洗浄される化合物(特に、ssRNA、任意選択的にさらにはdsRNA)は、従来の手段(例えば、ダイオードアレイ検出器などのUV/VIS検出器)を使用することによって、例えば、260nm(核酸の検出用)及び/又は215nm(ペプチド/タンパク質の検出用)及び/又は280nm(芳香族アミノ酸を含有するペプチド/タンパク質の検出用)で検出及び/又はモニターすることができる。
【0059】
本発明の方法の何れかによって得られるssRNA(特に、「陰性」又は「陽性」精製手法が使用されたかどうかにかかわらず)は、沈殿及び/又は修飾などのさらなる処理に供され得る。例えば、本発明の方法によって得られるssRNAは、従来の方法を用いて(例えば、「酢酸ナトリウム/イソプロパノール」沈殿法又は「LiCl」沈殿法を用いて)沈殿させて、乾燥形態のssRNA調製物を得ることができる。乾燥したssRNAは、保存(例えば、-70℃で)することができ、又は適切な溶媒(例えば、水又はTE緩衝液(10mM TRIS、1mM EDTA))に溶解し、次に保存(例えば、-70℃で)し、若しくは使用(例えば、薬学的組成物の調製のために)することができる。代替的に又は付加的に、ssRNAは、例えば、キャップされていない5’-三リン酸を除去することによって、及び/又はキャップ構造を添加することによってさらに修飾することができ、その後、保存(例えば、-70℃で)か又は使用(例えば、薬学的組成物の調製のために)される。
【0060】
本出願の実施例に実証されるように、本発明の方法は、一又は複数の以下のものなどのいくつかの利点を提供する。例えば、本発明の方法は、単純な遠心分離工程、マイクロ遠心分離スピンカラム、真空駆動フィルターシステム、及びFPLCを含む広範囲の異なる精製技術を提供する。HPLC法と比較して、本発明の方法は、費用対効果が高く、簡単であり(複雑な装置を必要としない)、毒性物質(アセトニトリルなど)を避け、比較的高純度及び収率でssRNAを提供する。さらに、セルロースは天然産物であるため、セルロースをベースとし、ssRNA(特にIVT ssRNA)を精製するのに有効な本発明の方法は、GMP調節環境に移した場合に複雑さが少なくなることが期待され得る。さらに、本出願において、本発明の方法は容易にスケールアップされ得、従来のHPLC法より時間がかからないことが実証されている。これに関して、従来のHPLC法(Weissman等(前出)に開示されているものなど)は、一般的に、カラムサイズ、及び大きなカラムの使用に伴う背圧の問題によって制限されることに留意されたい。これは、本発明の方法にはあてはまらない。例えば、本出願で示されているように(実施例5参照)、本発明の方法を使用する場合、50-100mgのIVT RNAの精製を2時間未満で達成することができる。対照的に、実施例3で使用されるHPLCカラム(Semi-Prep RNASep 100×21.1mm、Transgenomic)は、35mlのカラム体積を有し、1mgのIVT RNAの最大結合能を有する。このようなHPLCカラムを使用する標準的な精製操作は60分を超えるため、50mgのIVT RNAの精製は、本発明の方法を用いた場合のたった2時間に比べて、約50時間かかる。さらに、従来のHPLCベースの方法を用いた長いIVT RNAの精製は問題を引き起こし、しばしば、(a)IVT RNAの高喪失(特に、IVT RNAが少なくとも約2,700nt(好ましくは少なくとも2,800nt、少なくとも2,900nt、少なくとも3,000nt、少なくとも3,100nt、少なくとも3,200nt、少なくとも3,300nt、少なくとも3,400nt、より好ましくは少なくとも3,500nt、少なくとも3,600nt、少なくとも3,700nt、少なくとも3,800nt、少なくとも3,900nt、少なくとも4,000nt、少なくとも4,100nt、少なくとも4,200nt、少なくとも4,300nt、少なくとも4,400nt、より好ましくは少なくとも4,500nt、少なくとも4,600nt、少なくとも4,700nt、少なくとも4,800nt、少なくとも4,900nt、少なくとも5,000nt)の長さを有する場合、このような長さを有するIVT RNAは、従来のHPLCベースの方法では明確に鋭いピークとして溶出されず、広いピークとして溶出され、したがって、それにより、ssRNAの喪失を最小限にするために、長時間に渡って溶出液(ssRNAを含む)の回収を必要とするためである)、及び/又は、より重要なことには、(b)IVT RNAの分解(特に、長いIVT RNA(例えば、少なくとも3,500nt、例えば、少なくとも4,000nt、少なくとも4,500nt、少なくとも5,000nt、少なくとも5,500nt、少なくとも6,000nt、少なくとも6,500nt、少なくとも7,000nt、少なくとも7,500nt、少なくとも8,000nt、少なくとも8,500nt、少なくとも9,000nt、又は少なくとも9,500ntのサイズを有する)がおそらく、緊密に充填されたカラム材料を通して長いRNAの通過中のせん断に起因して精製されるべきである場合)をもたらす。対照的に、本出願で実証されているように、約10,000nt又はそれを超えるサイズを有するIVT RNAを精製するための本発明の方法の使用は、RNAの分解をもたらさない。さらに、本発明の方法を使用することにより、IVT ssRNAs(特に、少なくとも約2,700nt(好ましくは少なくとも2,800nt、少なくとも2,900nt、少なくとも少なくとも3,000nt、少なくとも3,100nt、少なくとも3,200nt、少なくとも3,300nt、少なくとも3,400nt、より好ましくは少なくとも3,500nt、少なくとも3,600nt、少なくとも3,700nt、少なくとも3,800nt、少なくとも3,900nt、少なくとも4,000nt、少なくとも4,100nt、少なくとも4,200nt、少なくとも4,300nt、少なくとも4,400nt、より好ましくは少なくとも4,500nt、少なくとも4,600nt、少なくとも4,700nt、少なくとも4,800nt、少なくとも4,900nt、少なくとも5,000nt)の長さを有するIVT ssRNA)を明確に鋭いピークでセルロース材料から溶出し、それにより最小限に回収されるべき溶出液(ssRNAを含む)の量(すなわち、体積)を低減させることができることが見出された。最後に、精製されたRNAの完全性は、インキュベーション中に(おそらくssRNAに含有される二本鎖の二次構造のRNaseIII触媒の加水分解に起因して)、ssRNA、特に長いssRNAの部分的な分解をしばしば生じさせる大腸菌RNaseIIIを使用する従来の方法と比較して、本発明の方法を優れたものにする。
【0061】
本明細書で使用される用語「振盪及び/又は撹拌すること」とは、混合物、例えば、固相(セルロース材料など)及び液相(培地(例えば、緩衝液)、洗浄溶液、又は培地(例えば、緩衝液)に溶解したRNA調製物など)を含む混合物を混合(好ましくは、完全に混合する)のに適した任意の作用を意味する。「振盪及び/又は撹拌すること」を達成するための例示的なデバイスは、当業者に公知であり、シェーカー、ミキサー(例えば、ボルテックスミキサー又は静的ミキサー)、磁気スターラー(スターラーバーを含む)、及び撹拌棒が含まれ、これらは、混合される混合物の体積に応じて異なるサイズで利用可能である。混合物の振盪及び/又は撹拌は、完全な混合を達成するのに十分な時間、例えば、少なくとも1分間(例えば、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも4分間、少なくとも5分間、少なくとも8分間、少なくとも10分間)行うことができる。混合物の振盪及び/又は撹拌の最長時間は、最大40分(例えば、最大35分、最大30分、最大28分、最大26分、最大24分、最大22分、又は最大20分)であり得る。したがって、混合物の振盪及び/又は撹拌の例示的な時間範囲は、5-40分、5-30分、5-20分、10-40分、10-30分、10-20分、15-40分、15-30分、又は15-20分である。一般的に、振盪及び/又は撹拌の持続時間は、意図される使用(例えば、セルロース材料の洗浄又はRNAのセルロース材料への結合)、及び混合される固体の量などの因子に依存する。例えば、セルロース材料の洗浄のためには、振盪及び/又は撹拌の持続時間は、1-15分、例えば5-10分の範囲であり得る。RNAのセルロース材料への結合のためには、振盪及び/又は撹拌の持続時間は、最大1gのセルロース材料を使用する場合は5-20分間(10-20分間など)の範囲であり、又は1gを超えるセルロース材料を使用する場合は10-30分間(15-30分間など)の範囲であり得る。同様に、セルロース材料からセルロース材料に結合しているRNA(特にssRNA)を放出するためには、振盪及び/又は撹拌の持続時間は、最大1gのセルロース材料を使用する場合には5-20分間(10-20分間など)、又は1gを超えるセルロース材料を使用する場合には10-30分間(15-30分間など)の範囲であり得る。
【0062】
第1及び第2の培地(例えば、第1及び第2の緩衝液)に関して使用される用語「塩」とは、酸及び塩基の中和反応から生じる任意のイオン性化合物を意味する。好ましくは、塩(i)は緩衝物質ではなく、(ii)キレート剤ではない、又は(iii)緩衝物質及びキレート剤はない。例示的な酸には、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、及び過塩素酸)及び有機酸(例えば、モノカルボン酸、1-5個(1、2又は3個など)の炭素原子を有するモノカルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸)が含まれ、好ましくは無機酸である。例示的な塩基には、無機塩基(NH、水酸化アンモニウム(NHOH)、並びに金属の酸化物及び水酸化物、好ましくはアルカリ金属、土類金属、及びアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物(例えばLi、Na、K、Rb、Be、Mg、Ca、Sr、Al、及びZn)の酸化物及び水酸化物)、及び有機塩基(アミン、例えばモノアルキル、ジアルキル又はトリアルキルアミンなど)が含まれ、好ましくは無機塩基、より好ましくはLi、Na、K、Mg、Ca、Al、及びZnの酸化物及び水酸化物、より好ましくはLi、Na、K、及びZnの酸化物及び水酸化物、例えば、Li、Na、及びKの酸化物及び水酸化物である。第1及び第2の培地(例えば、第1及び第2の緩衝液)に関して使用することができる例示的な塩には、LiCl、NaCl及びKClが含まれ、この点で1つの特に好ましい塩はNaClである。好ましくは、塩は、前記培地中のRNAの沈殿をもたらさない濃度で、第1及び第2の培地(例えば、第1及び第2の緩衝液)中で使用される。一実施態様では、第1及び/又は第2の培地(例えば、第1及び/又は第2の緩衝液)中の塩の濃度は、15-70mM、例えば、20-60mM、25-50mM又は30-50mMであり、特に緩衝物質がTRISである場合である。一実施態様では、第1及び/又は第2の培地(例えば、第1及び/又は第2の緩衝液)中の塩の濃度は、100-200mM、例えば、110-190mM、120-180mM、130-170mM、140-160mM又は145-155mMであり、特に緩衝物質がHEPESである場合である。
【0063】
本明細書で使用する用語「緩衝物質」及び「緩衝剤」は、強酸又は塩基を液体に添加したとしても、溶液のpHをほぼ一定に保つことができる化合物の混合物を意味する。一実施態様では、緩衝物質又は緩衝剤は、弱酸及びその共役塩基の混合物である。別の実施態様では、緩衝物質又は緩衝剤は、弱塩基及びその共役酸の混合物である。好ましくは、緩衝物質はキレート剤ではない。第1及び第2の培地(例えば、第1及び第2の緩衝液)に適した緩衝物質の例としは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、2-[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸(TES)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、及び3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)が挙げられ、好ましくはTRIS又はHEPES、より好ましくはTRISが挙げられる。所望のpH値(例えば、pH6.5-8.0、好ましくはpH6.6-7.8、例えば、pH6.8-7.6、pH6.8-7.2、pH6.9-7.5、pH6.9-7.3、pH7.0-7.7、pH7.0-7.5、pH7.0-7.3、pH7.3-7.8、pH7.3-7.7、又はpH7.3-7.6)は、対応する塩基(例えば、TRIS)に十分な量の酸(例えば、塩酸などの無機酸)を添加することによって達成され、又は相当する酸(例えば、PIPES、6.76のpKaを超えるpH(7.0又は7.3-7.7のpHなど)が望まれる場合)に十分な量の塩基(例えば、水酸化ナトリウムなどの無機塩基)を添加することによって達成され得る。一実施態様では、第1及び/又は第2の培地(例えば、第1及び/又は第2の緩衝液)中の緩衝物質の濃度は、5-40mM、例えば、6-30mM、8-20mM又は10-15mMである。
【0064】
第1及び第2の培地(例えば、第1及び第2の緩衝液)に関して本明細書で使用される用語「キレート剤」は、多座配位子(polydenate ligand)であり、単一の中心原子(好ましくはCa2+又はMg2+などの単一の金属カチオン)に2つ以上(好ましくは3つ以上、例えば、4つ以上)配位結合を形成することができる化合物(好ましくは有機化合物)を意味する。この点において、「多座」とは、単一配位子分子中に1を超える(すなわち、2つ以上、好ましくは3つ以上、例えば4つ以上の)ドナー基を有する配位子を指し、ドナー基は、好ましくは自由電子対(例えば、O、=O、-NH、-NRH(ここで、Rは、アルキル、特にC1-3アルキルなどの有機部分である)、及びNR(ここで、各Rは、独立して、アルキル、特にC1-3アルキルなどの有機部分である))を有する原子を含む。好ましくは、キレート剤は緩衝物質ではない。キレート剤の例としては、EDTA、ニトリロ三酢酸、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-三酢酸(PCTA)、及び1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(DO3A)が挙げられ、好ましくはEDTA又はニトリロ三酢酸、より好ましくはEDTAが挙げられる。一実施態様では、第1及び/又は第2の培地(例えば、第1及び/又は第2の緩衝液)中のキレート剤の濃度は、10-50mM、例えば、15-40mM又は20-30mMである。
【0065】
本明細書で使用される用語「セルロース材料」は、任意のセルロース繊維を指し、好ましくは分配クロマトグラフィー試薬としての使用に適したグレードを有するものを指す。本発明の方法に適したセルロース材料の特定の例としては、CF-11セルロース粉末、及びSigma-Aldrichからのセルロース(例えば、カタログ番号C6288)及びMacherey-Nagelからのもの(例えば、MN 100又はMN 2100)などの市販のセルロースが含まれる。一実施態様では、セルロース材料は、本発明の方法において使用前に洗浄される。したがって、本発明の方法の1つの好ましい実施態様では、セルロース材料は、例えば、乾燥形態で又は洗浄溶液中の懸濁液として、洗浄セルロース材料として提供される(前記洗浄溶液は、本明細書で特定されるように第1又は第2の培地(例えば、第1又は第2の緩衝液)であり得る)。セルロース材料の洗浄は、(I)セルロース材料を、(好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10分間、例えば、5-10分間)振盪及び/又は撹拌しながら、洗浄溶液と混合すること;並びに(II)(例えば、ピペットを用いることによって)液体を除去すること又は(例えば、セルロース材料として、磁気ビーズに共有結合したセルロースを使用して、磁石を使用することによって)セルロース材料を回収すること;並びに、任意選択的に(III)工程(I)及び(II)を1回又は2回以上(例えば、1回、2回又は3回)反復することを含み得る。例えば、セルロース材料と洗浄液との混合物をチューブに入れる場合、好ましくは、重力又は遠心力(例えば、4000×g-15,000×g、例えば、5,000×g-10,000×gで1-5分間)がチューブに適用され、それにより、液相及び固相は、分離され(好ましくは完全に分離され)、上清は、(例えば、ピペットを用いることによって)除去され、又はセルロース材料は、(例えば、セルロース材料として、磁性ビーズに共有結合したセルロースを使用して、磁石を使用することによって)回収される。あるいは、セルロース材料と洗浄液との混合物をスピンカラムやフィルターデバイスに入れる場合、好ましくは、重力、遠心力(例えば、4000-15000×g、例えば、5,000-10,000×gで1-5分間)、圧力(例えば、1000hPa-3000hPa)、又は真空(例えば、100hPa-900hPa、例えば、200hPa-800hPa)がスピンカラム又はフィルターデバイスに適用され、それにより、液相及び固相は分離され(好ましくは完全に分離され)、フロースルーは廃棄される。洗浄緩衝液の組成は、好ましくは、RNAの洗浄セルロース材料への選択的結合の意図された様式に依存する:(1)dsRNAのみが洗浄セルロース材料に選択的に結合し、一方、ssRNAは結合しないままである場合、洗浄溶液は、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を可能にしないようなものでなければならない。したがって、(1)の好ましい実施態様では、洗浄溶液は、上記で特定されるように第1の培地(例えば、第1の緩衝液)の組成を有する。(2)dsRNAとssRNAの両方を洗浄セルロース材料に結合させる場合、洗浄液は、dsRNA及びssRNAのセルロース材料への結合を可能にするようにすべきである。したがって、(2)の好ましい実施態様では、洗浄溶液は、上記で特定されるように第2の培地(例えば、第2の緩衝液)の組成を有する。
【0066】
洗浄後、洗浄セルロース材料は、乾燥製造物(すなわち、洗浄溶液が、本明細書において特定される洗浄セルロースから完全に除去された後)として又は洗浄溶液中の懸濁液として保存され得る(又は本発明の方法に使用され得る)。しかしながら、洗浄液中に保存された洗浄セルロース材料が本発明の方法において使用される場合、好ましくは、洗浄セルロース材料がRNA調製物と接触する前に、液相(すなわち、セルロース材料が保存のために懸濁されている洗浄液)は、(例えば、洗浄セルロースがチューブに入れられる場合、(セルロース材料の洗浄に関して上記で特定されるように)重力又は遠心力を適用することによって、又は洗浄セルロースがスピンカラム又はフィルターデバイスに入れられる場合、(セルロース材料の洗浄に関して上記で特定されるように)重力、遠心力、圧力、又は真空を適用することによって)洗浄セルロース材料から除去され、次に、このように(すなわち、乾燥形態で)得られた洗浄セルロースは、本発明の方法において使用されるか、又は洗浄溶液中に懸濁させ(ここで、前記洗浄溶液は、本明細書において特定されるように第1又は第2の培地(例えば、第1又は第2の緩衝液であり得る)、次に本発明の方法において使用される。
【0067】
本明細書で使用される用語「新鮮なセルロース材料」とは、前記新鮮なセルロース材料がRNA調製物と接触していないことを意味する。このような新鮮なセルロース材料は、洗浄され得ないか又は洗浄され得る。好ましい実施態様では、新鮮なセルロース材料は、上記で特定されるように(例えば、乾燥形態で又は洗浄溶液中の懸濁液として)洗浄セルロース材料として提供される。したがって、((1)ssRNAではなくdsRNA、又は(2)dsRNA及びssRNA、の何れかに選択的に結合するために)洗浄された新鮮なセルロース材料の意図された使用に依存して、洗浄された新鮮なセルロース材料は、(1)上記で特定される第1の培地(例えば、第1の緩衝液)、又は(2)上記で特定される第2の培地(例えば、第2の緩衝液)の何れかを用いることによって得られた。
【0068】
本発明の方法の工程(ii)におけるRNA(RNA調製物に含有される)対セルロース材料の比は、セルロース材料のRNA結合能を超えないようなものである。好ましい実施態様では、100mgのセルロース材料あたりのRNAの量は、最大250μg、より好ましくは最大200μg、例えば、最大150μgである。したがって、一実施態様では、100mgのセルロース材料あたりのRNAの量は、10-250μg、例えば、20-220μg、30-200μg、40-180μg、50-160μg、60-140μg、70-120μg、80-110μg、又は90-100μgの範囲である。したがって、一実施態様では、1μgのRNAあたりのセルロース材料の量は、少なくとも0.4mg、好ましくは少なくとも0.5mg、例えば、少なくとも0.67mgであり得る。例えば、1μgのRNAあたりのセルロース材料の量は、0.4-10mg、例えば、0.45-5mg、0.5-3.3mg、0.56-2.5mg、0.63-2mg、0.71-1.67mg、0.83-1.43mg、0.91-1.25mg、又は1-1.11mgの範囲であり得る。
【0069】
本明細書で使用する用語「チューブ」とは、化合物及び/又は液体を容器に導入し及び/又は容器から除去ことができるように、1つの開口部のみを有する容器、特に細長い容器を指す。好ましい実施態様では、チューブの開口部は、開口部をしっかりと密封するような方法で、螺合可能なカバー蓋、又は開口部にフィットしているカバー蓋などの適切な手段によって閉じられ得るように構成される。一実施態様では、チューブは、重力又は遠心力が、内容物の何れもこぼさずに、チューブの完全性を損なうことなしに、(それらの比重に対してチューブの内容物を分離するために)チューブに適用され得るように構成される。
【0070】
本明細書で使用する「スピンカラム」及び「フィルターデバイス」という用語は、反対側の2つの開口部及びフリット又はフィルターを有する容器、特に細長い容器を指し、第1の開口部は、化合物及び/又は液体が容器に導入され、及び/又は容器から除去され得るものであり、第2の開口部は、フリット又はフィルターによって第1の開口部から分離され、そのため、固体化合物(特にセルロース材料)はフリット又はフィルターによって容器内に保持されるが、液体は、フリット又はフィルター及び第2の開口部を通過できるようになる。フリット又はフィルターは、好ましくは、最大1μm、例えば、最大0.8μm、最大0.6μm、例えば、0.30-0.60μmの範囲、例えば、0.35-0.55μmの孔径を有する。好ましい実施態様では、スピンカラム又はフィルターデバイスの少なくとも第1の開口部(好ましくは、開口部の各々)は、開口部をしっかりと密封するような方法で、螺合可能なカバー蓋、又は第1又は第2の開口部にフィットしているカバー蓋などの適切な手段によって閉じることができるように構成される。一実施態様では、スピンカラム又はフィルターデバイスは、重力、遠心力、圧力、又は真空が、スピンカラム又はフィルターデバイスの完全性を損なうことなしに、スピンカラム又はフィルターデバイスに(スピンカラム又はフィルターデバイス内の内容物を分離するために)適用することができるように構成される。適切なスピンカラムの例としては、マイクロ遠心分離スピンカラム(Macherey-Nagelから入手可能なもの、例えば、NucleoSpin Filters(カタログ番号740606))が挙げられ、適切なフィルターデバイスの例としては、使い捨ての真空駆動フィルターデバイス(Merck Chemicals GmbH/Milliporeから入手可能なもの、例えば、Steriflip-HV、0.45μm孔径、PVDF(カタログ番号SE1M003M00))が挙げられる。
【0071】
本明細書で使用される「液体」及び「液相」という用語は、標準状態の流体を指す。液体の特定の例には、培地(例えば、緩衝液)、洗浄溶液、及び培地(例えば、緩衝液)中に溶解されたRNA調製物が含まれる。本明細書で使用される「固体」及び「固相」という用語は、一定の形状及び体積を有するが、標準状態では非液体及び非気体である物質又は物質の混合物を指す。固体の特定の例は、セルロース材料を含む。
【0072】
本明細書で使用される用語「標準状態」は、20℃の温度及び1,013.25hPaの絶対圧を指す。
【0073】
本明細書で使用される用語「上清」は、液相及び固相が混合され、混合物が(例えば、重力又は遠心力を適用することによって)分離されるときに発生される上相を指す。固相が液相と比較して高い比重を有する場合、液相が上清である。
【0074】
本明細書で使用される用語「フロースルー」は、スピンカラム又はフィルターデバイスを通過する液相を指す。
【0075】
本明細書で使用される用語「アリコート」とは、固体に添加されるべきであるか、又はカラムの固定相にロードされるべきある、一定体積の液体を意味し、アリコートの体積は、一般的に、0.1-10倍(0.5-5倍、1-4倍、1-3倍、又は1-2倍など)の固体相又は固定相の体積である。一実施態様では、液体は、培地(例えば、緩衝液)(本明細書で特定される第1、第2又は第3の培地(例えば、第1、第2又は第3の緩衝液)又は洗浄溶液である。一実施態様では、固体は、洗浄セルロース材料などのセルロース材料である。
【0076】
本明細書で使用される用語「重力を適用する」とは、チューブ、スピンカラム、又はフィルターデバイスなどの容器が、地球の「通常の」重力(約1×g)のみに供され、すなわち、地球の「通常の」重力に加えて、容器に適用される重量がないことを意味する(例えば、培地は、カラムの固定相を通って受動的に流れることが可能であり、カラムは、カラムの縦軸(すなわち、カラムの両方の開口部を通る線)は、地心点を指すような様式で配置される)。一実施態様では、重力は、容器に含有される相(液相及び固相など)を分離する(好ましくは完全に分離する)のに十分な期間、容器に適用される。
【0077】
本明細書で使用される「遠心力を適用する」という用語は、チューブ、スピンカラム、又はフィルターデバイスなどの容器が、地球の通常の重力の倍数(すなわち、1×を超えるg、少なくとも2×g、少なくとも10×g、少なくとも100×g、及び最大20,000×g、例えば、最大15,000×g、最大10,000×g、最大5,000×g、又は最大4,000×g)に供されることを意味する。このような遠心力を発生させることができる適切なデバイスには、遠心分離機が含まれる。一実施態様では、遠心力は、容器に含有される相(液相及び固相など)を分離する(好ましくは完全に分離する)のに十分な期間、容器に適用される。例示的な持続時間は、1分-30分の範囲(例えば、1、2、3、4又は5分間-25分間、5、6、7、8、9若しくは10分間-20分間又は10-15分間)である。一般的に、適用される遠心力のレベル及び持続時間は、意図される使用(例えば、セルロース材料の洗浄、RNAのセルロース材料への結合、又はセルロース材料からのRNAの放出)、容器の体積及び重量(その内容物を含む)などの因子に依存する。例えば、短い持続時間(例えば、1-5分間)で適用される高い遠心力(10,000×g-20,000×gなど)は、(完全な)分離には十分であり得るが、一方、低い遠心力(最大100×gなど)は、(完全な)分離のためにより長い持続時間(20-30分間など)を必要とする場合がある。同様に、小さな体積及び重量(例えば、最大約2mlの体積及び約2gの重量)については、短い持続時間(例えば、1-10分間)で適用される高い遠心力(10,000×g-20,000×gなど)は、(完全な)分離には十分であり得るが、一方、より大きな体積及び/又は重量については、より低い遠心力(200×g-10,000×gなど)のみが適用され得る場合、(完全な)分離を達成するためにより長い持続時間(例えば、20-30分間)を必要とする場合がある。
【0078】
本明細書で使用される「圧力を適用する」という用語は、スピンカラム、フィルターデバイス又はカラムなどの容器が、容器の1つの開口部に適用される正の力(標準条件と比較して)に供されることを意味する。特に、容器がカラムである場合、圧力を適用することは、液体(培地又は緩衝液など)が、例えば、一又は複数のポンプを使用することによって、容器を通してポンプ輸送されることを意味する。本発明の方法で適用される圧力は、HPLC法で適用される圧力と比較してはるかに低く、好ましくは最大2MPa(例えば、最大1MPa、最大5000hPa、最大4000hPa、最大3000hPa、最大2000hPa)である。
【0079】
本明細書で使用される「真空を適用する」という用語は、スピンカラム、フィルターデバイス、又はカラムなどの容器が陰圧(標準条件と比較して)に供されることを意味し、陰圧は、好ましくは、容器の開口部に適用される。好ましくは、陰圧は、最大900hPa、例えば最大800hPa、最大700hPa、最大600hPa、最大500hPa、最大400hPa、最大300hPa、最大200hPa、又は最大100hPaである。一実施態様では、真空は、容器に含有される相(液相及び固相など)を分離する(好ましくは完全に分離する)のに十分な持続時間、容器に適用される。陰圧を発生させるためのデバイスは、当業者に公知であり、ウォータージェット真空ポンプを含む。
【0080】
本明細書で使用される「1回又は2回以上、反復される」という表現は、対応する工程(複数可)が、少なくとも1回、例えば、2回以上、3回以上、4回以上など、好ましくは1回、2回又は3回行われることを意味する。
【0081】
本明細書で使用される「工程(ii)及び(iii)の1サイクル」という表現は、工程(ii)及び工程(iii)を各々1回だけ行うことを意味する。工程(ii)及び(iii)の1サイクルが完了した場合、工程(ii)及び(iii)の任意選択的にさらなるサイクル(本明細書では「次サイクル」とも呼ばれる)を行うことができる。例えば、工程(ii)及び(iii)のこのような次サイクルの工程(ii)において、工程(ii)及び工程(iii)の先のサイクルの工程(iii)の後に得られたRNA調製物(すなわち、好ましくは、先のサイクルの工程(ii)で使用されたRNA調製物と比較してより少ない量でdsRNAを含むRNA調製物)は、RNA調製物として使用される。好ましくは、工程(ii)及び(iii)の各サイクルにおいて、新鮮なセルロース材料が(例えば、dsRNAによる混入を避けるために)使用される。したがって、工程(ii)及び(iii)を実施し、任意選択的にこれらの工程を1回又は2回以上、反復することによって、最終的に得られるssRNAが、dsRNAを実質的に含まず、及び/又はDNAを実質的に含まず、好ましくはdsRNA及びDNAを実質的に含まないこのような程度までssRNA調製物からdsRNAを除去することが可能である。
【0082】
「先のサイクルの工程(ii)で使用されたRNA調製物と比較してより少ない量でdsRNAを含むRNA調製物」という表現は、工程(ii)及び(iii)の1サイクルを行うことがdsRNAの除去に有効であり、そのため、1サイクルの工程(iii)の後に得られたRNA調製物中のdsRNAの総量は、先のサイクルの工程(ii)で使用されたRNA調製物中のdsRNAの総量よりも小さいことを意味する。好ましくは、工程(ii)及び(iii)の第1のサイクルは、工程(ii)及び(iii)の第1のサイクルの工程(ii)で使用されたRNA調製物に含有するdsRNAの少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%)の除去に有効である。好ましい実施態様では、工程(ii)及び(iii)の合計2回、3回又は4回のサイクルを行うことは、工程(ii)及び(iii)の第1のサイクルの工程(ii)で使用されたRNA調製物に含有するdsRNAの少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%(例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)の除去に有効である。
【0083】
本明細書で使用される「溶離液」という用語は、固定相(例えば、セルロース材料)に対して化合物(dsRNA又はssRNAなど)の結合特性を変更することができる液体を意味する。「結合特性を変更する」とは、化合物(例えば、dsRNA又はssRNA)が固定相(例えば、セルロース材料)に結合する能力を増加又は減少させることを意味する。好ましくは、溶離液は、化合物(例えばdsRNA又はssRNA)が固定相(例えば、セルロース材料)に結合する能力を減少させることができる。したがって、この好ましい実施態様では、(1)化合物が固定相に結合する場合、固定相を溶離液と接触させる工程は、化合物の固定相から放出をもたらすか、又は(2)化合物が溶離液に溶解する場合、溶離液は、化合物の固定相への結合能を低下させ、好ましくは溶離液は化合物の固定相への結合を妨げる。本明細書で使用される「溶出すること」という用語は、化合物(例えば、ssRNA)を結合させて、固定相から化合物を放出する、固定相(例えば、セルロース材料)を含有するカラム(スピンカラムを含む)に溶離液を適用又はロードすることを意味する。セルロース材料に結合させるssRNAに対して好ましい溶離液は、上記で特定される第1の培地(例えば、第1の緩衝液)であり、一方、セルロース材料に結合させるdsRNAに対して好ましい溶離液は、第1又は第2の培地(例えば、第1又は第2の緩衝液)と同じ組成を有してもよいが、EtOHを含有しない第3の培地(例えば第3の緩衝液)である(例えば、第3の培地は水であり得る)。セルロース材料に結合しているdsRNA又はssRNAを放出しない好ましい洗浄溶液は、上記で特定される第2の培地(例えば、第2の緩衝液)である。
【0084】
本明細書で使用される用語「溶出液」とは、溶離液がカラム上に適用又はロードされたときに、カラムから出てくる液体を指す。
【0085】
本明細書で使用される用語「カラム」とは、反対側の2つの開口部、少なくとも1つのフリット、及び固定相(セルロース材料など)を有する容器、特に円筒形容器を指し、第1の開口部は、容器内に液体(培地など、例えば、洗浄溶液又は培地、例えば、第1又は第2の緩衝液)の導入を可能にするように構成され、一方、第2の開口部は、(i)固定相はフリットによってカラム内に保持されるが、(ii)液体はフリット及び第2の開口部を通過することができるように、フリットによって第1の開口部及び固定相から分離される。カラムは、HPLC法又はFPLC法において使用できるように構成することができる。しかしながら、本発明の方法において使用されるカラムは、好ましくは、FPLC法において使用可能であるように構成される。
【0086】
本明細書で使用される用語「HPLC」とは、高圧液体クロマトグラフィーを意味し、液相は、混合物中の少なくとも1つの成分を分離、同定、及び/又は定量化するために、カラムを通って高圧下(典型的には、少なくとも5MPa、例えば5-35MPa)でポンプ輸送される。
【0087】
本明細書で使用される用語「FPLC」とは、高速液体クロマトグラフィーを意味し、液相は、混合物中の少なくとも1つの成分を分離、同定、及び/又は定量化するために、カラムを通って流れるようする。FPLCカラムを通る液体の流れは、重力又は圧力を適用することによって達成することができ、圧力は、好ましくは最大で2MPa(最大で1MPa、最大で5,000hPa、最大で4,000hPa、最大で3,000hPa、最大で2,000hPa、又は最大で1,000hPaなど)である。
【0088】
RNA調製物に関して本明細書中で使用される用語「予備精製処理」とは、RNA調製物の混入物を部分的又は完全に除去するための手法を意味し、混入物は、好ましくはRNA以外のすべての化合物を含み、例えば、IVT RNA(任意選択的に修飾されている)を生成するために使用される出発材料及びそれらの分解産物、例えば、DNA鋳型;RNAポリメラーゼ(例えば、T7、T3又はSP6);未修飾形態のモノリボヌクレオチド(例えば、rATP、rGTP、rCTP、rUTP、及び1つ又は2つのリン酸基のみを有するそれらの類似体)又は修飾形態(例えば、r(1mΨ)TP又はrΨTP及び1つ又は2つのリン酸基のみを有するそれらの類似体);ピロリン酸塩;キャップ試薬(すなわち、5’-キャップ又は5’-キャップ類似体を導入するための試薬);及びIVT RNAを生成するために使用される添加剤(例えば、緩衝剤、塩、抗酸化剤、及びポリアミン(例えば、スペルミジン))が挙げられる。当業者に公知である適切な予備精製処理の例としては、核酸の沈殿(好ましくは塩化リチウムを使用する);核酸(特にRNA)の磁気ビーズへの結合(例えば、磁気ビーズに結合しない混入物は、適切な媒体を用いて洗い流すことができる);限外ろ過;及び好ましくは二重鎖特異的ヌクレアーゼ(DSN)を使用した、DNAの分解が含まれる。例えば、RNAは、「酢酸ナトリウム/イソプロパノール」沈殿法又は「LiCl」沈殿法(好ましくは「LiCl」沈殿法による)を用いて沈殿させることができ、ともに乾燥形態のRNA調製物をもたらす。何れの場合においても、このようにして得られた、沈殿し、乾燥したRNAは、適切な量の水又はTE緩衝液(10mM TRIS、1mM EDTA)に溶解することができ、これらは両方とも、好ましくはRNaseを含まない。
【0089】
「酢酸ナトリウム/イソプロパノール」沈殿法は、以下の工程を含む:RNA調製物に0.1容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.0)及び1容量のイソプロパノールを添加する工程、得られた混入物を混合する工程、混合物を-20℃で1時間インキュベートする工程、遠心力(例えば、14,000×gで10分間)を適用する工程、RNAペレットから上清を除去する工程、200μlの70%(v/v)氷冷EtOHでRNAペレットを洗浄する(すなわち、200μlの70%(v/v)氷冷EtOHをRNAペレットに添加し、遠心力(例えば、14,000×gで5分間)を適用し、及び上清をRNAペレットから除去する)工程、並びにRNAペレットを(好ましくはエタノールを除去するような様式で)乾燥(好ましくは空気乾燥)する工程。
【0090】
「LiCl」沈殿法は、以下の工程を含む:最終的なLiCl濃度が2.5Mになるように塩化リチウム(LiCl)をRNA調製物に添加する工程、混合物を-20℃で30分間インキュベートする工程、遠心力(例えば、14,000×gで10分間)を適用する工程、RNAペレットから上清を除去する工程、200μlの70%(v/v)氷冷EtOHでRNAペレットを洗浄する(すなわち、200μlの70%(v/v)氷冷EtOHをRNAペレットに添加し、遠心力(例えば、14,000×gで5分間)を適用し、上清をRNAペレットから除去する)工程、及びRNAペレットを(好ましくはエタノールを除去するような様式で)乾燥(好ましくは空気乾燥)する工程。
【0091】
本明細書で使用される用語「RNAポリメラーゼ」は、一次転写RNAを生成するDNA依存性RNAポリメラーゼを指す。本発明によるIVT RNAを生成するのに適したRNAポリメラーゼの例としては、T7、T3及びSP6 RNAポリメラーゼが含まれる。好ましいRNAポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼである。
【0092】
本発明の方法に供されているssRNA又はssRNAを含むRNA調製物と併せて、本明細書で使用される用語「dsRNAを実質的に含まない」とは、ssRNA又はssRNAを含むRNA調製物中のdsRNAの量が、前記ssRNA又はssRNAを含むRNA調製物が本発明の方法に供される前のssRNA又はssRNAを含むRNA調製物に含有されるdsRNAの量と比較して、少なくとも70%(好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも84%、少なくとも86%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)減少していることを意味する。好ましくは、本発明の方法に供されているssRNA又はssRNAを含むRNA調製物は、対象に投与された場合に、前記ssRNA又はssRNAを含むRNA調製物が、前記対象において、望ましくない応答(例えば、炎症性サイトカイン(例えば、IFN-α)の望ましくない誘導、及び/又は本発明のssRNAからのタンパク質合成の阻害をもたらすエフェクター酵素の望ましくない活性化)を実質的に誘導しないようなdsRNA含量を有する。例えば、「dsRNAを実質的に含まない」及び「望ましくない応答を実質的に誘導しない」という用語は、本発明の方法に供されているssRNA又はssRNAを含むRNA調製物が、対象に投与された場合、コントロールssRNA(すなわち、本発明の方法に供されていないssRNA又はssRNAを含むRNA調製物)と比較して、少なくとも60%(例えば、少なくとも62%、少なくとも64%、少なくとも66%、少なくとも68%、少なくとも70%、少なくとも72%、少なくとも74%、少なくとも76%、少なくとも78%、少なくとも80%)低減された量の炎症性サイトカイン(特にIFN-α)を誘導することを意味し得る。好ましくは、「dsRNAを実質的に含まない」及び「望ましくない応答を実質的に誘導しない」という用語は、本発明の方法に供されているssRNA又はssRNAを含むRNA調製物であって、前記ssRNAがペプチド又はタンパク質をコードする、ssRNA又はssRNAを含むRNA調製物が、対象に投与された場合、投与後の少なくとも10時間(例えば、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、又は少なくとも24時間)、ペプチド又はタンパク質へとssRNAの翻訳をもたらすことを意味する。例えば、本発明の方法に供されているssRNA又はssRNAを含むRNA調製物の含量は、前記ssRNA又はssRNAを含むRNA調製物の総重量に対して、最大5重量%(好ましくは最大4重量%、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、最大0.1重量%、最大0.05重量%、最大0.01重量%、最大0.005重量%、最大0.001重量%)であり得る。
【0093】
本発明の方法に供されているssRNA又はssRNAを含むRNA調製物と併せて、本明細書で使用される用語「DNAを実質的に含まない」とは、ssRNA又はssRNAを含むRNA調製物中のdsRNAの量が、前記ssRNA又はssRNAを含むRNA調製物の総重量に対して、最大5重量%(好ましくは最大4重量%、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、最大0.1重量%、最大0.05重量%、最大0.01重量%、最大0.005重量%、最大0.001重量%)であり得ることを意味する。
【0094】
本発明の方法に供されているssRNA又はssRNAを含むRNA調製物と併せて、本明細書で使用される用語「dsRNA及びDNAを実質的に含まない」とは、前記ssRNA又はssRNAを含むRNA調製物が、上記で特定されるdsRNAを実質的に含まず(例えば、翻訳が投与後の少なくとも10時間持続し、及び/又はdsRNA含量が最大5重量%である)、上記で特定されるDNAを実質的に含まない(例えば、DNA含量が最大5重量%である)ことを意味する。
【0095】
本発明との関連において、用語「RNA」は、リボヌクレオチド残基を含む分子、好ましくはリボヌクレオチド残基から全体的に又は実質的に構成される分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。用語「RNA」は、部分的に又は完全に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、及び組換え的に生成されたRNAなどの単離されたRNAを含み、一若しくは複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は変更によって、天然に存在するRNAとは異なる修飾されたRNAを含む。このような変更は、RNAの末端など(複数可)に、又は内部的に、例えば、RNAの一又は複数のヌクレオチドに、非ヌクレオチド物質の付加を含むことができる。RNA分子中のヌクレオチドはまた、天然に存在しないヌクレオチド若しくは化学的に合成されたヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドを含み得る。これらの変更/修飾されたヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドの類似体と称され得、このような変更/修飾されたヌクレオチド(すなわち、変更/修飾されたRNA)を含有する対応するRNAは、天然に存在するRNAの類似体と称され得る。分子中のリボヌクレオチド残基の含量が、分子中のヌクレオチド残基の総数に対して、少なくとも40%(例えば、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)である場合、分子は「リボヌクレオチド残基から実施的に構成される」。分子中のヌクレオチド残基の総数は、すべてのヌクレオチド残基の合計である(ヌクレオチド残基が標準(すなわち、天然に存在する)ヌクレオチド残基であるか又はその類似体であるかにかかわらない)。
【0096】
RNAは、細胞から単離することができ、DNA鋳型から作製することができ、又は当該技術分野において公知である方法を用いて化学的に合成することができる。好ましい実施態様では、RNAは、インビトロでDNA鋳型から合成される。1つの特に好ましい実施態様では、RNA、特にmRNA又は阻害性ssRNA(例えば、アンチセンスRNA、siRNA又はmiRNA)などのssRNAは、DNA鋳型からのインビトロ転写によって生成される。インビトロ転写法は、当業者に公知である;例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、J.Sambrook等,編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor 1989を参照されたい。さらに、様々なインビトロ転写キットが存在し、例えば、Thermo Fisher Scientific(such as TranscriptAid(商標)T7キット、MEGAscript(登録商標)T7キット、MAXIscript(登録商標)など)、New England BioLabs Inc.(HiScribe(商標)T7キット、HiScribe(商標)T7 ARCA mRNAキットなど)、Promega(RiboMAX(商標)、HeLaScribe(登録商標)、Riboprobe(登録商標)システムなど)、Jena Bioscience(SP6又はT7転写キットなど)、及びEpicentre(AmpliScribe(商標)など)から市販されている。1つの特に好ましい態様では、RNAは、インビトロで転写されたRNA(IVT RNA)である。修飾されたRNAを提供するために、修飾された天然に存在するヌクレオチド、天然に存在しないヌクレオチド及び/又は修飾された天然に存在しないヌクレオチドなどの対応する修飾されたヌクレオチドは、合成(好ましくはインビトロ転写)中に組み込むことができ、又は修飾は転写後にRNAに影響を及ぼし及び/又はそれに付加され得る。
【0097】
本発明によれば、RNAとして好ましいものは、6-100、好ましくは10-50、特に15-30若しくは15-20ヌクレオチドの合成オリゴヌクレオチド、又は50ヌクレオチドを超える、好ましくは100-15,000、より好ましくは50-10,000、より好ましくは100-5,000、特に200-1,000ヌクレオチドの長さの転写物である。
【0098】
本発明によれば、「RNA」は、mRNA、tRNA、rRNA、snRNA、ssRNA、dsRNA、及び阻害性RNAを含む。
【0099】
本発明によれば、「ssRNA」は、mRNA及び阻害性ssRNA(アンチセンスssRNA、siRNA、又はmiRNAなど)を含む。
【0100】
「ssRNA」は、一本鎖RNAを意味する。ssRNAは、RNAの一部が折り畳まれ、それ自身で対になって二重らせんを形成することを可能にする自己相補性配列を含有し得る。ssRNAのサイズは、6ヌクレオチドから15,000、好ましくは10-12,000、特に100-10,000、150-8,000、200-7,000、250-6,000、又は300-5,000ヌクレオチドで変化し得る。一実施態様では、ssRNAは、長さが少なくとも2,700ヌクレオチド(例えば、少なくとも2,800、少なくとも2,900、少なくとも3,000、少なくとも3,100、少なくとも3,200、少なくとも3,300、少なくとも3,400、少なくとも3,500、少なくとも3,600、少なくとも3,700、少なくとも3,800、少なくとも3,900、少なくとも4,000、少なくとも4,100、少なくとも4,200、少なくとも4,300、少なくとも4,400、少なくとも4,500、少なくとも4,600、少なくとも4,700、少なくとも4,800、少なくとも4,900、少なくとも5,000ヌクレオチド)である。本明細書で使用される長いssRNAは、サイズが少なくとも3,500ヌクレオチド(例えば、少なくとも3,600、少なくとも3,700、少なくとも3,800、少なくとも3,900、少なくとも4,000、少なくとも4,100、少なくとも4,200、少なくとも4,300、少なくとも4,400、少なくとも4,500、少なくとも4,600、少なくとも4,700、少なくとも4,800、少なくとも4,900、少なくとも5,000、少なくとも5,500、少なくとも6,000、少なくとも6,500、少なくとも7,000、少なくとも7,500、少なくとも8,000、少なくとも8,500、少なくとも9,000、少なくとも9,500ヌクレオチド)、好ましくは最大15,000、例えば、最大14,000、最大13,000又は最大12,000ヌクレオチドであるssRNAを意味する。
【0101】
本発明によれば、「dsRNA」は二本鎖RNAを意味し、2つの部分的に又は完全に相補的な鎖を有するRNAである。鎖のサイズは、6ヌクレオチド-10,000、好ましくは10-8,000、特に200-5,000,200-2,000又は200-1,000ヌクレオチドで変化し得る。
【0102】
本発明によれば、用語「mRNA」とは、「メッセンジャーRNA」を意味し、DNA鋳型を用いて生成され、ペプチド又はタンパク質をコードし得る「転写物」を指す。典型的には、mRNAは、5’-UTR、タンパク質コード領域、及び3’-UTRを含む。本発明との関連において、mRNAは、好ましくは、DNA鋳型からのインビトロ転写によって生成される。上記されるように、インビトロ転写法は、当業者に公知であり、様々なインビトロ転写キットが市販されている。mRNAのサイズは、約1,000ヌクレオチド-15,000、好ましくは2,000-12,000、特に2,700-11,000、3,000-10,000,3,500-9,000、4,000-9,000、4,500-7,000、又は5,000-8,000ヌクレオチドで変化し得る。一実施態様では、mRNAは、少なくとも2,700ヌクレオチド(例えば、少なくとも2,800、少なくとも2,900、少なくとも3,000、少なくとも3,100、少なくとも3,200、少なくとも3,300、少なくとも3,400、少なくとも3,500、少なくとも3,600、少なくとも3,700、少なくとも3,800、少なくとも3,900、少なくとも4,000、少なくとも4,100、少なくとも4,200、少なくとも4,300、少なくとも4,400、少なくとも4,500、少なくとも4,600、少なくとも4,700、少なくとも4,800、少なくとも4,900、少なくとも5,000のヌクレオチド)の長さを有する。長いmRNAとは、少なくとも3,500ヌクレオチド(例えば、少なくとも3,600、少なくとも3,700、少なくとも3,800、少なくとも3,900、少なくとも4,000、少なくとも4,100、少なくとも4,200、少なくとも4,300、少なくとも4,400、少なくとも4,500、少なくとも4,600、少なくとも4,700、少なくとも4,800、少なくとも4,900、少なくとも5,000、少なくとも5,500、少なくとも6,000、少なくとも6,500、少なくとも7,000、少なくとも7,500、少なくとも8,000、少なくとも8,500、少なくとも9,000、少なくとも9,500ヌクレオチド)、好ましくは最大15,000、例えば、最大14,000、最大13,000、最大12,000、最大11,000、又は最大10,000ヌクレオチドのサイズを有するmRNAを意味する。
【0103】
mRNAは、細胞において及びインビトロにおいて限られた半減期を有するだけである。したがって、本発明によれば、RNAの安定性及び翻訳効率は、必要に応じて修飾され得る。例えば、mRNAは、安定化され得て、その翻訳は、mRNAの安定化効果及び/又は転写効率の増加を有する一又は複数の修飾によって増加され得る。このような修飾は、例えば、国際公開第2007/036366号に記載されていて、その全開示は出典明示により本明細書に援用される。本発明によるmRNAの発現を増加させるために、コード領域、すなわち、発現されるペプチド又はタンパク質をコードする配列内で、好ましくは発現されるペプチド又はタンパク質の配列を変更することなく修飾して、GC含量を増加させてmRNA安定性を増加させ、コドンの最適化を行い、したがって細胞内の翻訳を増強し得る。
【0104】
本発明によるRNA、好ましくはssRNA(例えば、mRNA)との関連における「修飾」という用語は、m前記RNA中に天然には存在しないRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)の任意の修飾を含む。
【0105】
本発明の一実施態様では、本発明によるssRNA(好ましくはmRNA)は、キャップされていない5’-三リン酸を有さない。このようなキャップされていない5’-三リン酸の除去は、ssRNA(好ましくはmRNA)をホスファターゼで処理することによって達成され得る。
【0106】
本発明によるssRNA(好ましくはmRNA)は、その安定性を増加させ、及び/又は細胞傷害性を減少させるために、修飾されたリボヌクレオチドを有し得る。例えば、一実施態様では、本発明によるssRNA(好ましくはmRNA)において、5-メチルシチジンは、シチジンで部分的に又は完全に、好ましくは完全に置換される。代替的に又は付加的に、一実施態様では、本発明によるssRNA(好ましくはmRNA)において、プソイドウリジン又はN(1)-メチルプソイドウリジンは、ウリジンで部分的に又は完全に、好ましくは完全に置換される。(部分的に又は完全に、好ましくは完全にウリジンで置換されている)プソイドウリジンによって修飾されたRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)は、本明細書では「Ψ修飾された」と呼ばれ、一方、用語「1mΨ修飾された」とは、RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)が、N(1)-メチルプソイドウリジン(部分的に又は完全に、好ましくは完全にウリジンで置換されいる)を含有することを意味する。
【0107】
一実施態様では、用語「修飾」は、5’キャップ又は5’キャップ類似体を有するRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)を提供することに関する。用語「5’キャップ」は、RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)分子の5’末端に見出されるキャップ構造を指し、一般的に、通常でない5’-5’三リン酸連結を介して、RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)に接続されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施態様では、このグアノシンは7位でメチル化される。用語「従来の5’キャップ」は、天然に存在するRNAの5’キャップ、好ましくは7-メチルグアノシンキャップ(m7G)を指す。本発明との関連において、用語「5’キャップ」には、RNAキャップ構造に類似し、それに結合している場合、好ましくはインビボ及び/又は細胞中で、RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)を安定化する能力、及び/又はRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)の翻訳を増強する能力を有するように修飾された5’キャップ類似体が含まれる。
【0108】
好ましくは、RNAの5’末端(好ましくはmRNAなどのssRNA)は、以下の一般式:
(式中、R及びRは、独立してヒドロキシ又はメトキシであり、W、X及びYは、独立して酸素、硫黄、セレン又はBHである)を有するキャップ構造を含む。好ましい実施態様では、R及びRはヒドロキシであり、W、X及びYは酸素である。さらに好ましい実施態様では、R及びRの一方、好ましくはRはヒドロキシであり、他方はメトキシであり、W、X及びYは酸素である。さらに好ましい実施態様では、R及びRはヒドロキシであり、W、X及びYの1つ、好ましくはXは、硫黄、セレン、又はBH、好ましくは硫黄であり、他方は酸素である。さらに好ましい実施態様では、R及びRの一方、好ましくはRはヒドロキシであり、他方はメトキシであり、W、X及びYの1つ、好ましくはXは、硫黄、セレン、又はBH、好ましくは硫黄であり、他方は酸素である。
【0109】
上記の式において、右側のヌクレオチドは、その3’基を介してRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)鎖に接続される。
【0110】
W、X及びYの少なくとも1つが硫黄である、すなわち、ホスホロチオエート部分を有するキャップ構造は、異なるジアステレオマー形態で存在し、それらのすべてが本明細書に包含される。さらに、本発明は、上記式のすべての互変異性体及び立体異性体を包含する。
【0111】
例えば、Rがメトキシであり、Rがヒドロキシであり、Xが硫黄であり、W及びYが酸素である上記構造を有するキャップ構造は、2つのジアステレオマー形態(Rp及びSp)で存在する。これらは、逆相HPLCによって分離することができ、逆相HPLCカラムからのそれらの溶出順序に従ってD1及びD2と命名される。本発明によれば、m 7,2’-OGpppGのD1異性体が特に好ましい。結果として、本明細書で使用される用語「D1キャップされた」は、上記で特定されるm 7,2’-OGpppGのD1異性体でキャップされたRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)を指す。同様に、本明細書で使用される用語「D2キャップされた」は、上記で特定されるm 7,2’-OGpppGのD2異性体でキャップされたRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)を指す。キャップ構造のさらなる例は、当業者に公知であり、国際公開第2008/157688号に記載されているものを含み、その全開示は、出典明示により本明細書に援用される。
【0112】
5’キャップ又は5’キャップ類似体を有するRNA(好ましくはmRNAのようなssRNA)を提供することは、前記5’キャップ又は5’キャップ類似体の存在下でDNA鋳型のインビトロ転写によって達成され得、前記5’キャップは、生成されたRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)鎖に同時転写的に組み込まれるか、又はRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)は、例えば、インビトロ転写によって生成され得、5’キャップは、キャッピング酵素、例えば、ワクシニアウイルスのキャッピング酵素を用いて転写後にRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)に結合され得る。
【0113】
RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)はさらなる修飾を含み得る。例えば、本発明によるssRNAのさらなる修飾は、天然に存在するポリ(A)尾部の伸長若しくは切断、又は5’-若しくは3’-非翻訳(「5’-又は3’-翻訳されない)領域(UTR)の変更であり得る。
【0114】
マスクされていないポリA配列を有するRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)は、マスクされたポリA配列を有するRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)よりも効率的に翻訳される。用語「ポリ(A)尾部」又は「ポリA配列」は、典型的には、RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)分子の3’末端に位置するアデノシン(特にアデニリル)(A)残基の配列に関し、「マスクされていないポリA配列」とは、RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)分子の3’末端でのポリA配列が、ポリA配列のAで終わり、ポリA配列の3’末端、すなわち下流に位置するA以外のヌクレオチドが続かないことを意味する。さらに、約120ヌクレオチドの長さを有する長いポリA配列は、RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)の最適な転写物安定性及び翻訳効率をもたらす。
【0115】
したがって、本発明によるRNA、好ましくはssRNA(mRNAなど)の安定性及び/又は発現を増加させるために、ポリA配列と併せて存在するように修飾され得、好ましくは、10-500、より好ましくは30-300、さらにより好ましくは65-200、特に100-150のアデノシン(特にアデニリル)残基を有する。特に好ましい実施態様では、ポリA配列は、約120アデノシン(特にアデニリル)残基の長さを有する。本発明によるRNA、好ましくはssRNA(mRNAなど)の安定性及び/又は発現をさらに増加させるために、ポリA配列をマスクしないようにすることができる。
【0116】
さらに、RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)分子の3’非翻訳領域への3’UTRの組み込みは、翻訳効率の向上をもたらすことができる。相乗効果は、このような2つ以上の3’-UTRを組み込むことによって達成され得る。3’-UTRは、それらが導入されるRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)に対して自己又は異種であり得る。特定の一実施態様では、3’-UTRは、アルファ2-グロビン、アルファ1-グロビン、又はベータ-グロビン、好ましくはベータ-グロビン、より好ましくはヒトベータ-グロビンの遺伝子又はmRNAなどのグロビン遺伝子又はmRNAに由来する。
【0117】
上記の修飾の組合せ、すなわち、ポリA配列の組み込み、ポリA配列のアンマスキング、一又は複数の3’-UTRの組み込み及び一又は複数の天然に存在するヌクレオチドの合成ヌクレオチド(例えば、シチジンに対して5-メチルシチジン、及び/又はウリジンに対してプロイドウリジン(Ψ)若しくはN(1)-メチルプロイドウリジン(1mΨ))による置き換えは、RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)の安定性及び翻訳効率の増加において相乗的に影響を及ぼす。
【0118】
本明細書で使用される用語「阻害性RNA」は、標的mRNAに選択的にハイブリダイズし、及び/又はそれに特異的であるRNAを意味し、それによりその転写及び/又は翻訳を阻害する(例えば低減させる)。阻害性RNAは、標的mRNAに対してアンチセンス方向に配列を有するRNA分子を含む。適切な阻害性オリゴヌクレオチドは、典型的には長さが5-数百ヌクレオチド、より典型的には長さが約20-70ヌクレオチド又はそれより短く、さらにより典型的には長さが約10-30ヌクレオチドである。阻害性RNAの例としては、アンチセンスRNA、リボザイム、iRNA、siRNA及びmiRNAが挙げられる。
【0119】
本明細書で使用される用語「アンチセンスRNA」は、特定の遺伝子を含むDNA又は前記遺伝子のmRNAに、生理学的条件下でハイブリダイズし、それにより前記遺伝子の転写及び/又は前記mRNAの翻訳を阻害するRNAを指す。核酸又はその一部のアンチセンス転写物は、天然に存在するmRNAと二重鎖を形成し、したがってmRNAの蓄積又は翻訳を阻止し得る。別の可能性は、核酸を不活性化するためのリボザイムの使用である。アンチセンスRNAは、翻訳開始部位、転写開始部位若しくはプロモーター部位などのN末端又は5’上流部位とハイブリダイズし得る。さらなる実施態様では、アンチセンスRNAは、3’-非翻訳領域又はmRNAスプライシング部位とハイブリダイズし得る。
【0120】
アンチセンスRNAのサイズは、15ヌクレオチド15,000で変化し得、好ましくは20-12,000、特に100-10,000、150-8,000、200-7,000、250-6,000、300-5,000ヌクレオチド、例えば、15-2,000、20-1,000、25-800、30-600、35-500、40-400、45-300、50-250、55-200、60-150、又は65-100ヌクレオチドである。一実施態様では、アンチセンスRNAは、少なくとも2,700ヌクレオチドの長さ(例えば、少なくとも2,800、少なくとも2,900、少なくとも3,000、少なくとも3,100、少なくとも3,200、少なくとも3,300、少なくとも3,400、少なくとも3,500、少なくとも3,600、少なくとも3,700、少なくとも3,800、少なくとも3,900、少なくとも4,000、少なくとも4,100、少なくとも4,200、少なくとも4,300、少なくとも4,400、少なくとも4,500、少なくとも4,600、少なくとも4,700、少なくとも4,800、少なくとも4,900、少なくとも5,000ヌクレオチド)を有する。本明細書で使用する長いアンチセンスRNAは、サイズが少なくとも3,500ヌクレオチド(例えば、少なくとも3,600、少なくとも3,700、少なくとも3,800、少なくとも3,900、少なくとも4,000、少なくとも4,100、少なくとも4,200、少なくとも4,300、少なくとも4,400、少なくとも4,500、少なくとも4,600、少なくとも4,700、少なくとも4,800、少なくとも4,900、少なくとも5,000、少なくとも5,500、少なくとも6,000、少なくとも6,500、少なくとも7,000、少なくとも7,500、少なくとも8,000、少なくとも8,500、少なくとも9,000、少なくとも9,500ヌクレオチド)、好ましくは最大15,000、例えば、最大14,000、最大13,000、最大12,000、最大11,000、又は最大10,000のヌクレオチドであるアンチセンスRNAを意味する。
【0121】
アンチセンスRNAの安定性は、必要に応じて修飾され得る。例えば、アンチセンスRNAは、安定化効果を有する一又は複数の修飾によって安定化され得る。このような修飾には、修飾ホスホジエステル連結(例えば、天然に存在するホスホジエステル連結の代わりに、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート又はホスホロアミデート連結)及び2’-置換(例えば、2’-フルオロ、2’-O-アルキル(例えば、2’-O-メチル、2’-O-プロピル、又は2’-O-ペンチル)及び2’-O-アリル)含まれる。例えば、アンチセンスRNAの一実施態様では、ホスホロチオエート連結は、ホスホジエステル連結について部分的に置換される。代替的又は追加的に、アンチセンスRNAの一実施態様では、リボース部分は、2’位でO-アルキル(例えば、2’-O-メチル)で部分的に置換される。
【0122】
アンチセンスRNAは、標的mRNA配列(「標的配列」)の何れかにおいて約19-25個の連続したヌクレオチドの任意のストレッチを標的化することができる。一般的に、標的mRNA上の標的配列は、好ましくは開始コドンから50-100nt下流(すなわち、3’方向)で始まる、標的mRNAに対応する所定のcDNA配列から選択することができる。しかしながら、標的配列は、5’-若しくは3’-非翻訳領域、又は開始コドンの近くの領域に位置し得る。
【0123】
アンチセンスRNAは、当業者に公知である多数の技術を用いて得ることができる。例えば、アンチセンスRNAは、当該技術分野において公知である方法を用いて化学的に合成され得るか又は組換え的に生成され得る。好ましくは、アンチセンスRNAは、任意の適切なプロモーターを用いて、組換え環状又は線状DNAプラスミドから転写される。
【0124】
アンチセンスRNAの発現に適したプラスミドの選択、アンチセンスRNAをプラスミドに発現させるための核酸配列を挿入する方法、及び前記アンチセンスRNAのインビトロ転写のIVT法は、当業者の範囲内である。
【0125】
「アンチセンスssRNA」は、一本鎖である上記で特定されるアンチセンスRNAを指す。
【0126】
本明細書で使用する「低分子干渉RNA」又は「siRNA」は、好ましくは長さが10ヌクレオチドを超え、より好ましくは長さが15ヌクレオチドを超え、最も好ましくは長さ18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチドであり、標的mRNAの一部分に特異的に結合することができるRNA分子を意味する。この結合は、標的mRNAの前記部分が切断又は分解され、それによって前記標的mRNAの遺伝子発現が阻害されるプロセスを誘導する。19-25ヌクレオチドの範囲がsiRNAにとって最も好ましいサイズである。原理的には、siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、2つの相補的な一本鎖RNA分子を含むことができるが、本発明によるsiRNAは、2つの相補的部分が塩基対形成し、一本鎖「ヘアピン」領域によって共有結合的に連結される単一分子を含む。すなわち、センス領域及びアンチセンス領域は、リンカー分子を介して共有結合的に接続させることができる。リンカー分子は、ポリヌクレオチド又は非ヌクレオチドリンカーであり得るが、好ましくはポリヌクレオチドリンカーである。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、一本鎖siRNA分子のヘアピン領域は、「ダイサー(Dicer)」タンパク質(又はその等価物)によって細胞内で切断され、2つの個々の塩基対形成したRNA分子のsiRNAを形成すると考えられている。
【0127】
siRNAはまた、3’-オーバーハングを含むことができる。本明細書で使用される場合、「3’-オーバーハング」は、RNA鎖の3’末端から伸長する少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。したがって、一実施態様では、siRNAは、長さが1-約6ヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドを含む)、好ましくは長さが1-約5ヌクレオチド、より好ましくは長さが1-約4ヌクレオチド、特に好ましくは長さ少なくとも約2-約4ヌクレオチドの少なくとも1つの3’-オーバーハングを含む。siRNA分子の両方の鎖(すなわち、一本鎖siRNA分子が「ダイサー」タンパク質によって細胞内で切断された後)が3’-オーバーハングを含む実施態様では、オーバーハングの長さは、各鎖について同じであるか又は異なることができる。最も好ましい実施態様では、3’-オーバーハングは、siRNAの両方の鎖上に存在し、長さが2ヌクレオチドである。例えば、siRNAの各鎖は、ジデオキシチミジル酸(「TT」)又はジウリジル酸(「uu」)の3’-オーバーハングを含み得る。
【0128】
siRNAの安定性を増強するために、3’-オーバーハングはまた、分解に対して安定化することができる。一実施態様では、オーバーハングは、プリンヌクレオチド、例えば、アデノシン又はグアノシンヌクレオチドを含むことによって安定化される。あるいは、修飾された類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、3’-オーバーハングにおけるウリジンヌクレオチドの2’-デオキシチミジンによる置換は許容され、RNAi分解の効率に影響を及ぼさない。特に、2’-デオキシチミジン中の2’-ヒドロキシルの不存在は、組織培地中の3’-オーバーハングのヌクレアーゼ耐性を有意に増強する。
【0129】
本明細書で使用される場合、「標的mRNA」は、ダウンレギュレーションの標的であるRNA分子を指す。
【0130】
本発明によるsiRNAは、標的mRNA配列(「標的配列」)の何れかにおいて、約19-25個の連続したヌクレオチドの任意のストレッチを標的化することができる。siRNAの標的配列を選択する技術は、例えば、その全開示が出典明示により本明細書に援用される、Tuschl T.等、「The siRNA User Guide」、改訂Oct.11、2002に記載されている。「siRNA User Guide」は、米国ニューヨーク州のロックフェラー大学のRNA分子生物学研究所のThomas Tuschl博士によって管理されているウェブサイト、ワールド・ワイド・ウェブで入手でき、ロックフェラー大学のウェブサイトにアクセスし、キーワード「siRNA」で検索することによって見出すことができる。標的配列の選択及び/又はsiRNAの設計に関するさらなるガイダンスは、Protocol Online(www.protocol-online.com)のウェブページ上でキーワード「siRNA」を用いて見出すことができる。したがって、一実施態様では、本発明のsiRNAのセンス鎖は、標的mRNA中の約19-約25ヌクレオチドの任意の連続ストレッチと実質的に同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0131】
一般的に、標的mRNA上の標的配列は、好ましくは開始コドンから50-100nt下流(すなわち、3’方向)に開始する、標的mRNAに対応する所定のcDNA配列から選択することができる。しかしながら、標的配列は、5’-若しくは3’-非翻訳領域、又は開始コドンの近くの領域に位置し得る。
【0132】
siRNAは、当業者に公知である多数の技術を用いて得ることができる。例えば、siRNAは、化学的に合成され得るか、又はその全開示が出典明示により本明細書に援用される、Tuschl等の米国特許出願第2002/0086356号に記載されているショウジョウバエ(Drosophila)のインビトロ系などの当該技術分野において公知である方法を用いて、組換え的に生成され得る。pol IIIプロモーターからのRNAの発現が、第1の転写されたヌクレオチドがプリンである場合にのみ効率的であると考えられるため、siRNAは、標的部位の変化なしにpol III発現ベクターから発現され得る。
【0133】
好ましくは、siRNAは、任意の適切なプロモーターを用いて、組換え環状又は線状DNAプラスミドから転写される。プラスミドから本発明のsiRNAを転写するのに適したプロモーターには、例えば、U6又はH1 RNA pol IIIプロモーター配列及びサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。他の適切なプロモーターの選択は、当業者の範囲内である。
【0134】
siRNAを転写するのに適したプラスミドの選択、siRNAを発現するための核酸配列をプラスミドに挿入する方法、及び前記siRNAのインビトロ転写のIVT方法は、当業者の範囲内である。
【0135】
本明細書で使用される用語「miRNA」(マイクロRNA)は、長さが21-25(例えば、21-23、好ましくは22)のヌクレオチドであり、標的mRNAの分解を誘導し及び/又は翻訳を妨げる非コードRNAに関する。miRNAは、植物、動物及びいくつかのウイルスにおいて典型的に見出され、それらは、植物及び動物における真核細胞核DNA並びに(ゲノムがDNAに基づくウイルスにおける)ウイルスDNAによってそれぞれコードされる。miRNAは、標的メッセンジャーRNA転写物(mRNA)上の相補的配列に結合し、通常、翻訳抑制又は標的分解及び遺伝子サイレンシングを生じる転写後調節因子である。
【0136】
miRNAは、当業者に公知である多数の技術を用いて得ることができる。例えば、アンチセンスRNAは、化学的に合成するか又は当該技術分野において公知である方法を用いて(例えば、Applied Biological Materials Inc.によって販売されているmiRNA cDNA合成キットなどの市販のキットを使用することにより)組換え的により生成することができる。好ましくは、アンチセンスRNAは、任意の適切なプロモーターを用いて、組換え環状又は線状DNAプラスミドから転写される。RNAの二次構造を予測する技術は、例えば、Sato等(Nucleic Acids Res. 37(2009):W277-W280)、Hamada等(Nucleic Acids Res. 39(2011):W100-W106 2011)、並びにReuter及びMathews(BMC Bioinformatics 11(2010):129)に記載されている。
【0137】
用語「ヌクレオシド」は、リン酸基を有さないヌクレオチドと考えることができる化合物を指す。ヌクレオシドは、糖(例えば、リボース又はデオキシリボース)に連結された核酸塩基であり、ヌクレオチドは、ヌクレオシド及び一又は複数のリン酸基から構成される。ヌクレオシドの例としては、シチジン、ウリジン、アデノシン、及びグアノシンが挙げられる。
【0138】
核酸を構成する5つの標準的なヌクレオシドは、ウリジン、アデノシン、チミジン、シチジン及びグアノシンである。5つのヌクレオシドは、それぞれ、一般的には1文字コードとしてU、A、T、C及びGと略記される。しかしながら、チミジンは、ウリジンに見出されるリボフラノース環と比較して、2’-デオキシリボフラノース部分を含有するため、より一般的には「dT」(「d」は「デオキシ」を表す)として記載される。これは、チミジンがリボ核酸(RNA)ではなく、デオキシリボ核酸(DNA)に見出されるためである。逆に、ウリジンは、RNAでは見出されるが、DNAでは見出されない。残りの3つのヌクレオシドは、RNAとDNAの両方に見出され得る。RNAでは、それらはA、C及びGとして表され、一方、DNAではdA、dC及びdGとして表される。
【0139】
RNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)の「安定性」という用語は、RNAの「半減期」に関する。「半減期」は、分子の活性、量又は数の半分を除去するのに必要な時間を指す。本発明に関して、RNA(好ましくはssRNA、例えば、mRNA又は阻害性ssRNA)の半減期は、前記RNAの安定性を示す。
【0140】
当然に、本発明によれば、RNA(好ましくはssRNA、例えば、mRNA又は阻害性ssRNA)の安定性を減少させることが望まれる場合、RNA(好ましくssRNA、例えば、mRNA又は阻害性ssRNA)の安定性を増加させる上述の要素の機能と干渉するように、RNA(好ましくssRNA、例えば、mRNA又は阻害性ssRNA)を修飾することができる。
【0141】
一実施態様では、本発明によるssRNAは、ペプチド又はタンパク質をコードする(修飾された)ssRNA、特に(修飾された)mRNAである。本発明によれば、「ペプチド又はタンパク質をコードするssRNA」という用語は、適切な環境、好ましくは細胞内に存在する場合、ssRNAが、翻訳のプロセスでペプチド又はタンパク質を生成する、すなわち発現するアミノ酸の集合を指向し得ることを意味する。好ましくは、本発明によるssRNA(mRNAなど)は、ペプチド又はタンパク質の翻訳を可能にする細胞翻訳機構と相互作用することができる。
【0142】
用語「発現」は、その最も一般的な意味で本発明に従って使用され、例えば、転写及び/若しくは翻訳によるRNA並びに/又はペプチド若しくはタンパク質の生成を含む。RNAに関して、用語「発現」又は「翻訳」は、特に、ペプチド又はタンパク質の生成に関する。これはまた、核酸の部分発現を含む。さらに、発現は、一時的又は安定的であり得る。
【0143】
本発明との関連において、用語「転写」は、DNA配列中の遺伝子コードがRNAに転写されるプロセスに関する。続いて、RNAはタンパク質に翻訳され得る。本発明によれば、用語「転写」は、「インビトロ転写」を含み、用語「インビトロ転写」は、RNA、特にmRNAなどのssRNAが無細胞系において、好ましくは適切な細胞抽出物を用いて、インビトロで合成されるプロセスに関する。好ましくは、クローニングベクターが転写物の生成に適用される。これらのクローニングベクターは、一般的に、転写ベクターと呼ばれ、本発明によれば、用語「ベクター」に包含される。本発明によれば、RNA調製物は、インビトロ転写、特に適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって生成されるssRNAを含む。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモーターであり得る。RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3、及びSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、インビトロ転写は、T7、T3、又はSP6プロモーターによって制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAのクローニング、及びインビトロ転写のための適切なベクターへの導入によって得ることができる。cDNAは、RNAの逆転写によって得ることができる。
【0144】
cDNAを含有するベクター鋳型は、異なるcDNA挿入物を有するベクターを含むことができ、転写後、任意選択的に異なるペプチド若しくはタンパク質を発現することができる異なるRNA分子の集団をもたらし、又は転写後、1つのペプチド又はタンパク質のみを発現することができる1つのRNA種の集団のみをもたらすただ1種のcDNA挿入物を有するベクターを含むことができる。したがって、単一のペプチド若しくはタンパク質のみを発現することができるRNAを生成することができ、又は1を超えるペプチド若しくはタンパク質を発現することができるRNAライブラリー及び全細胞RNAなどの異なるRNAの組成物、例えば、ペプチド若しくはタンパク質の組成物を生成することができる。本発明は、このようなRNAのすべてを細胞に導入することを想定している。
【0145】
本発明による用語「翻訳」は、mRNAの鎖がアミノ酸の配列の集合を指向して、ペプチド又はタンパク質を作製する、細胞のリボソームにおけるプロセスに関する。
【0146】
本明細書で使用される用語「ペプチド」は、オリゴペプチド及びポリペプチドを含み、ペプチド結合によって共有結合的に接続された、2個以上、好ましくは3個以上、好ましくは4個以上、好ましくは6個以上、好ましくは8個以上、好ましくは10個以上、好ましくは13個以上、好ましくは16個以上、好ましくは21個以上、最大好ましくは8個、10個、20個、30個、40個又は50個、特に100個のアミノ酸を含む物質を指す。用語「タンパク質」は、優先的に、大きなペプチドを指し、好ましくは100個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般的に、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書において互換的に使用される。
【0147】
本発明によれば、mRNAなどのssRNAは、ペプチド又はタンパク質をコードし得る。したがって、ssRNAは、ペプチド又はタンパク質をコードするコード領域(オープンリーディングフレーム(ORF))を含有し得る。例えば、ssRNAは、免疫学的に活性な化合物(好ましくは抗原ではない)などの抗原又は薬学的に活性なペプチド若しくはタンパク質をコードし、発現し得る。この点において、「オープンリーディングフレーム」又は「ORF」は、開始コドンで始まり終止コドンで終わるコドンの連続ストレッチである。
【0148】
「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」という用語は、ペプチド又はタンパク質の発現が、例えば、疾患又は障害の症状を軽快させるのに有益である対象の治療に使用することができるペプチド又はタンパク質を含む。例えば、薬学的に活性なタンパク質は、通常、タンパク質を発現しないか、又はタンパク質を誤って発現する細胞においてタンパク質発現を置き換え又は増強することができ、例えば、薬学的に活性なタンパク質は、所望のタンパク質を供給することによって突然変異を補うことができる。さらに、「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」は、対象において有益な結果を生じさせ得、例えば、感染性疾患に対して、対象にワクチン接種するタンパク質を生成するために使用され得る。好ましくは、「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」は、治療有効量で対象に投与された場合、対象の状態又は疾患状態に対してプラス又は有利な効果を有する。好ましくは、薬学的に活性なペプチド又はタンパク質は、治癒的又は緩和的な特性を有し、疾患又は障害の一又は複数の症状の軽快、軽減、緩和、好転、発症の遅延又は重症度の低下のために投与され得る。薬学的に活性なペプチド又はタンパク質は、予防的特性を有してもよく、疾患の発症を遅延させるか、又はこのような疾患若しくは病理学的状態の重症度を低下するために使用され得る。用語「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」は、タンパク質又はポリペプチド全体を含み、また、それらの薬学的に活性な断片を指すことができる。それはまた、ペプチド又はタンパク質の薬学的に活性な類似体を含み得る。用語「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」は、抗原であるペプチド及びタンパク質を含み、すなわち、ペプチド又はタンパク質は、治療的又は部分的若しくは完全に防御的であり得る、対象において免疫応答を誘発する。
【0149】
薬学的に活性なタンパク質の例としては、限定されないが、免疫学的に活性な化合物などのサイトカイン及び免疫系タンパク質(例えば、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、インテグリン、アドレシン、セレクチン、ホーミング受容体、T細胞受容体、免疫グロブリン、可溶性主要組織適合複合体抗原、免疫学的に活性な抗原、例えば、細菌、寄生虫又はウイルスの抗原、アレルゲン、自己抗原、抗体)、ホルモン(インスリン、甲状腺ホルモン、カテコールアミン、ゴナドトロピン、刺激ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、ドーパミン、ウシソマトトロピン、レプチンなど)、成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン)、増殖因子(例えば、上皮増殖因子、神経成長因子、インスリン様増殖因子など)、増殖因子受容体、酵素(組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、コレステロール生合成酵素又は分解酵素、ステロイド産生酵素、キナーゼ、ホスホジエステラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、デヒドロゲナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アロマターゼ、チトクロム、アデニル酸シクラーゼ又はグアニル酸シクラーゼ、ノイラミダーゼなど)、受容体(ステロイドホルモン受容体、ペプチド受容体)、結合タンパク質(成長ホルモン結合タンパク質又は増殖因子結合タンパク質など)、転写因子及び翻訳因子、腫瘍増殖抑制タンパク質(例えば、血管新生を阻害するタンパク質)、構造タンパク質(コラーゲン、フィブロイン、フィブリノーゲン、エラスチン、チューブリン、アクチン、及びミオシンなど)、並びに血液タンパク質(トロンビン、血清アルブミン、第VII因子、第VIII因子、インスリン、第IX因子、第X因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、プロテインC、フォンヴィレブランド因子、アンチトロンビンIII、グルコセレブロシダーゼ、エリスロポエチン顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)又は修飾第VIII因子、抗凝固因子など)が挙げられる。
【0150】
一実施態様では、薬学的に活性なタンパク質は、リンパ球ホメオスタシスの調節に関与するサイトカイン、好ましくは、T細胞の発生、プライミング、増殖、分化及び/又は生存に関与し、好ましくは誘導又は増強するサイトカインである。一実施態様では、サイトカインは、インターロイキンである。一実施態様では、薬学的に活性なタンパク質は、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、及びIL-21からなる群から選択されるインターロイキンである。
【0151】
「免疫学的に活性な化合物」という用語は、好ましくは、免疫細胞の成熟を誘導及び/若しくは抑制することによって、サイトカイン生合成を誘導及び/若しくは抑制することによって、並びに/又はB細胞による抗体生成を刺激することによって体液性免疫を変更させることによって、免疫応答を変化させる任意の化合物に関する。免疫学的に活性な化合物は、限定されないが、抗ウイルス活性及び抗腫瘍活性を含む強力な免疫刺激活性を有し、また、免疫応答の他の態様をダウンレギュレーションし、例えば、免疫応答をTH2免疫応答からシフトさせることもでき、これは、広範囲のTH2媒介性疾患の治療に有用である。免疫学的に活性な化合物は、ワクチンアジュバントとして有用であり得る。
【0152】
一実施態様では、疾患関連抗原などの抗原をコードするsRNA(mRNAなど)は、特に抗原(疾患関連抗原)を伴い又はそれを発現する疾患を有する哺乳動物の治療が所望される場合、哺乳動物に投与される。ssRNAは、好ましくは、哺乳動物の抗原提示細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞又は他の細胞)に取り込まれる。ssRNAの抗原の翻訳生成物が形成され、生成物は、T細胞による認識のために細胞の表面上に提示される。一実施態様では、抗原又はその任意選択的な処理によって生成された生成物は、活性化をもたらすT細胞受容体を介したT細胞による認識のためのMHC分子において細胞表面に提示される。
【0153】
インターフェロンは、抗ウイルス活性、抗増殖活性及び免疫調節活性によって特徴付けられる重要なサイトカインである。インターフェロンは、調節された細胞の表面上のインターフェロン受容体に結合し、それにより細胞内のウイルス複製を妨げることによって、細胞内の遺伝子の転写を変更及び調節するタンパク質である。インターフェロンは、2つの型に分類することができる。IFN-ガンマは、唯一のII型インターフェロンである;他はすべてI型インターフェロンである。I型及びII型インターフェロンは、遺伝子構造(II型インターフェロン遺伝子は3つのエキソンを有する;I型では1つである)、染色体の位置(ヒトでは、II型は第12染色体に位置する;I型インターフェロン遺伝子は連鎖しており、第9染色体に位置する)、及びそれらが生成される組織のタイプ(I型インターフェロンは遍在的に合成され、II型はリンパ球によって合成される)において相違する。I型インターフェロンは、細胞受容体への結合を互い競合的に阻害するが、一方、II型インターフェロンは異なる受容体を有する。本発明によれば、用語「インターフェロン」又は「IFN」は、好ましくはI型インターフェロンを指し、特にIFN-アルファ及びIFN-ベータに関する。
【0154】
一実施態様では、RNA、特に細胞内で発現されるべきRNAは、一本鎖自己複製RNAである。一実施態様では、自己複製RNAは、プラス鎖の一本鎖RNAである。一実施態様では、自己複製RNAは、ウイルスRNA又はウイルスRNA由来のRNAである。一実施態様では、自己複製RNAは、アルファウイルスゲノムRNAであるか、又はアルファウイルスゲノムRNAに由来する。一実施態様では、自己複製RNAはウイルス遺伝子発現ベクターである。一実施態様では、ウイルスはセムリキ森林熱ウイルスである。一実施態様では、自己複製RNAは、一又は複数の導入遺伝子を含有し、これは、一実施態様では、RNAがウイルスRNAである場合、構造タンパク質をコードするウイルス配列などのウイルス配列を部分的に又は完全に置き換え得る。
【0155】
本明細書で使用される用語「RNA調製物」は、上記で特定される様々なRNA型の少なくとも1つの型(すなわち、mRNA、tRNA、rRNA、snRNA、ssRNA、dsRNA、及び阻害性ssRNA(例えば、アンチセンスRNA、siRNA、又はmiRNA))を含む任意の組成物を指す。本明細書で使用される用語「ssRNAを含むRNA調製物」は、少なくともssRNAを含む任意の組成物を指す(しかし、前記組成物はまたdsRNAも含み得る)。用語「インビトロ転写によって生成されるssRNAを含むRNA調製物」は、少なくともssRNAを含む任意の組成物を指し、前記ssRNAは、インビトロ転写によって生成されている。
【0156】
本明細書で使用される用語「インビトロ転写」又は「IVT」は、転写(すなわち、RNAの生成)が無細胞様式で行われることを意味する。すなわち、IVTは、生存している/培養された細胞を使用せず、むしろ、細胞から抽出された転写機構(例えば、RNAポリメラーゼ(好ましくはT7、T3又はSP6ポリメラーゼ)を含む、細胞溶解物又はその単離された成分)を使用する。
【0157】
本明細書で使用される用語「任意選択的な」又は「任意選択的に」という用語は、その後に記載される事象、状況又は状態が起こってもよく又は起こらなくてもよいことを意味し、この記載は前記事象、状況又は状態が起こる場合及び起こらない場合を含むことを意味する。
【0158】
「異性体」は、同じ分子式を有するが、構造(「構造異性体」)、又は官能基及び/若しくは原子(「立体異性体」)の幾何学的配置が異なる化合物である。「鏡像異性体」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である一対の立体異性体である。「ラセミ混合物」又は「ラセミ体」は、等量の一対のエナンチオマーを含有し、接頭辞(±)で示される。「ジアステレオマー」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体である。「互変異性体」は、たとえ純粋であっても、互いに自然に相互変換する同じ化学物質の構造異性体である。
【0159】
「減少すること」、「低減すること」又は「阻害すること」などの用語は、レベルにおいて全体的な減少、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上の減少を引き起こす能力に関する。これには、完全な又は本質的に完全な減少、すなわち、ゼロ又は本質的にゼロまでの減少を含む。
【0160】
「増加すること」、「増強すること」、又は「延長すること」などの用語は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも100%、好ましくは少なくとも200%、及び特に少なくとも300%の増加、増強又は延長に関する。これらの用語はまた、ゼロ又は測定不能若しくは検出不能レベルからゼロを超えるレベル又は測定可能若しくは検出可能なレベルまでの増加、増強、又は延長に関し得る。
【0161】
本明細書で使用される用語「天然に存在する」は、物体が自然界に見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在するタンパク質又は核酸は、自然界の供給源から単離され得、実験室でヒトによって意図的に修飾されていないが、天然に存在する。
【0162】
本発明のssRNAは、同位体標識されていてもよく、すなわち、ssRNAの一又は複数の原子が、同じ数のプロトンを有するが、中性子の数が異なる対応する原子によって置き換えられる。例えば、水素原子は、重水素原子で置き換えられてもよい。本発明のssRNAに用いることができる例示的な同位体には、重水素、11C、13C、14C、15N、18F、32S、36Cl、及び125Iが含まれる。同位体標識されたssRNAは、インビトロ転写中に対応する同位体標識されたヌクレオチドを使用することにより、又は対応するそのような同位体標識されたヌクレオチドを転写後に付加することによって生成することができる。
【0163】
一態様では、本発明は、本発明のssRNA及び一又は複数の薬学的に許容される添加剤を含む薬学的組成物を提供する。一実施態様では、薬学的組成物は、本発明のssRNA、一又は複数の薬学的に許容される添加剤、及び一又は複数の追加的/補足的な活性化合物を含む。
【0164】
さらなる態様では、本出願は、治療に使用するための、上記で特定されたssRNA又は本明細書に特定された薬学的組成物を提供する。
【0165】
例えば、本発明のssRNA及び薬学的組成物は、感染症(例えば、ウイルス、細菌、真菌又は他の微生物によって引き起こされる感染症);望ましくない炎症(例えば、免疫障害);及び癌からなる群から選択される状態、障害又は疾患の治療(予防的処置を含む)において使用され得る。
【0166】
したがって、さらなる態様において、本発明は、(i)本明細書で特定される状態、障害又は疾患、特に、感染症(例えば、ウイルス、細菌、真菌又は他の微生物によって引き起こされるもの);望ましくない炎症;及び癌からなる群から選択される疾患を治療する方法において使用するための本発明のssRNA(又は任意選択的に薬学的に許容される添加剤と一緒に、このようなssRNAを含む薬学的組成物);及び(ii)それを必要とする個体を治療する方法であって、治療有効量の本発明のssRNA(又は任意選択的に、薬学的に許容される添加剤と一緒に、このようなssRNAを含む薬学的組成物)を個体に投与することを含む、方法を提供する。一実施態様では、個体は、本明細書に開示されている状態、障害若しくは疾患の一又は複数に罹患しているか、又はそれに罹患し易いか、又はそのリスクがある。状態、障害又は疾患は、感染症(例えば、ウイルス、細菌、真菌又は他の微生物によって引き起こされるもの);望ましくない炎症;及び癌からなる群から選択され得る。さらに、個体は、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0167】
癌(医学用語:悪性新生物)は、細胞群が、制御不可能な増殖(正常限界を超える分裂)、浸潤(隣接組織の侵入及び破壊)、及び時には転移(リンパや血液を介した生体の他の場所への拡散)を示す疾患のクラスである。癌のこれらの3つの悪性の特性は、自己限定的であり、浸潤又は転移しない良性腫瘍とそれらを区別する。大部分の癌は、腫瘍、すなわち、(新生細胞又は腫瘍細胞と呼ばれる)細胞の異常増殖によって形成される腫脹又は病変を形成するが、白血病のようなものはそうでない。本発明による用語「癌」とは、白血病、セミノーマ、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎癌、副腎癌、甲状腺癌、血液の癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸癌(intestinal cancer)、肝癌、結腸癌、胃癌、腸癌(intestine cancer)、頭頸部癌、胃腸の癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵癌、耳、鼻及び咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮の癌、卵巣癌及び肺癌並びにそれらの転移を含む。それらの例は、肺癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎細胞癌腫、子宮頸癌腫、又は上記した癌型のタイプ若しくは腫瘍の転移である。本発明による癌という用語はまた、癌転移を含む。
【0168】
本発明のssRNA及び薬学的組成物で治療可能な癌の例には、悪性黒色腫、すべてのタイプの癌腫(結腸、腎細胞、膀胱、前立腺、非小細胞肺及び小細胞肺癌腫など)、リンパ腫、肉腫、芽細胞腫、神経膠腫などが含まれる。
【0169】
悪性黒色腫は、深刻なタイプの皮膚癌である。これは、メラノサイトと呼ばれる色素細胞の制御不可能な増殖によるものである。
【0170】
本発明によれば、「癌腫」は、上皮細胞に由来する悪性腫瘍である。このグループは、最も一般的な癌を表し、乳癌、前立腺癌、肺癌及び結腸癌の一般的な形態が含まれる。
【0171】
リンパ腫及び白血病は、造血(血液形成)細胞に由来する悪性腫瘍である。
【0172】
肉腫は、胚性中胚葉から発生する多数の組織のうちの1つの形質転換細胞から生じる癌である。したがって、肉腫には、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、及び造血組織の腫瘍が含まれる。
【0173】
芽球性腫瘍又は芽細胞腫は、未熟又は胚組織に類似した腫瘍(通常は悪性)である。これらの腫瘍の多くは、小児において最も一般的である。
【0174】
神経膠腫は、脳又は脊髄で始まる腫瘍の一種である。それはグリア細胞から生じるため、神経膠腫と呼ばれる。神経膠腫の最も一般的な部位は脳である。
【0175】
「転移」とは、元の部位から身体の別の部分への癌細胞の伝播を意味する。転移の形成は、非常に複雑なプロセスであり、原発腫瘍からの悪性細胞の剥離、細胞外マトリックスの浸潤、体腔及び血管に入る内皮基底膜の浸透、続いて、血液による輸送後の標的臓器の浸潤に依存する。最後に、標的部位における新たな腫瘍、すなわち、二次腫瘍又は転移腫瘍の増殖は、血管新生に依存する。腫瘍転移は、原発腫瘍の除去後でさえもしばしば起こり、これは、腫瘍細胞又は成分が残存し、転移能を発現するためである。一実施態様では、本発明による用語「転移」は、原発腫瘍及び局所リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。
【0176】
例示的な免疫障害には、限定されないが、自己免疫疾患(例えば、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症及び乾癬性関節炎を含む)、多発性硬化症、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、乾癬、シェーグレン症候群、クローン病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、敗血症及び敗血症性ショック、炎症性腸障害、皮膚性エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬物発疹、らい病好転反応、紅斑性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側進行性感音難聴、再生不良性貧血、純赤血球貧血、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンスジョンソン症候群、糸球体腎炎、特発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、及び間質性肺線維症)、移植片対宿主病、移植症例、及びアトピー性アレルギーなどのアレルギーが含まれる。
【0177】
例示的なウイルスには、限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、CMV5)、ヒトヘルペスウイルス(HHV)(例えば、HHV6、7又は8)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ウシヘルペスウイルス(BHV)(例えば、BHV4)、ウマヘルペスウイルス(EHV)(例えば、EHV2)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)5、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、麻疹ウイルス、パポバウイルス(JC及びBK)、肝炎ウイルス(例えば、HBV又はHCV)、粘液腫ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、ポリオーマウイルス、インフルエンザウイルス、パピローマウイルス及びポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルス、及び伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、及びリッカウイルスが挙げられる。このようなウイルスは、アポトーシス阻害剤を発現してもよく又は発現しなくてもよい。ウイルス感染によって引き起こされる例示的な疾患には、限定されないが、水痘、サイトメガロウイルス感染、性器ヘルペス、B型肝炎及びC型肝炎、インフルエンザ及び帯状疱疹、並びに狂犬病が含まれる。
【0178】
例示的な細菌には、限定されないが、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、エンテロバクター属種(Enterobacter species)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、大腸菌(Escherichia coli)(例えば、F.coli O157:H7)、A群連鎖球菌(Group A streptococci)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、リステリア菌(listeria)、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)、サルモネラ菌(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、並びにボレリア菌(Borrelia)及びリケッチア菌(Rickettsia)が含まれる。細菌感染によって引き起こされる例示的な疾患としては、限定されないが、炭疽、コレラ、ジフテリア、食物疾病、らい病、髄膜炎、消化性潰瘍疾患、肺炎、敗血症、敗血症ショック、梅毒、破傷風、結核、腸チフス、及び尿路感染、並びにライム病及びロッキー山発疹熱が挙げられる。
【0179】
本発明のssRNA及び薬学的組成物で治療可能な感染性疾患の特定の例には、ウイルス感染病、例えば、AIDS(HIV)、A型肝炎、B型又はC型肝炎、ヘルペス、帯状疱疹(水痘)、ドイツ麻疹(風疹ウイルス)、黄熱病、デング熱;フラビウイルスによって引き起こされる感染症;インフルエンザ;出血性感染症(マールブルグ又はエボラウイルス);細菌感染病(例えば、レジオネラ病(レジオネラ菌(Legionela))、胃潰瘍(ヘリコバクター菌(Helicobacter)、コレラ(ビブリオ菌(Vibrio))、大腸菌、ブドウ球菌(Staphylococc)、サルモネラ菌(Salmonella)又は連鎖球菌(Streptococci)による感染症(破傷風);マラリアなどの原虫病原体よる感染、睡眠病、リーシュマニア症、トキソプラズマ症、すなわち、プラスモディウム菌(Plasmodium)、トリパノソーマ菌(Trypanosoma)、リーシュマニア菌(Leishmania)及びトキソプラズマ菌(Toxoplasma)による感染症;又は、例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプシラタム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・インミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)若しくはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)によって引き起こされる真菌感染が含まれる。
【0180】
本発明のssRNA及び薬学的組成物は、単独で、又は本発明のssRNA若しくは薬学的組成物の投与の前に、投与と同時又は投与の後に投与することができる一又は複数の追加的/補足的な活性化合物と併せて用いることができる。このような一又は複数の追加的/補足的な活性化合物には、癌患者のための化学療法薬(例えば、ゲムシタビン、エトポホス、シスプラチン、カルボプラチン)、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、抗細菌剤、免疫療法剤(例えば、抗体又はその断片(特に、その免疫原性断片))、及びアジュバントが含まれ、本発明のssRNAと同時に投与される場合、本発明の薬学的組成物中に存在し得る。
【0181】
特に、一又は複数の追加的/補足的な活性化合物は、免疫療法剤、好ましくは標的化された、すなわち特異的な免疫反応を誘導するか又は達成する免疫療法剤を含むことができる。したがって、一実施態様では、本発明のssRNA及び薬学的組成物は、免疫療法剤、好ましくは標的化された、すなわち特異的な免疫反応を誘導するか又は達成する免疫療法剤と併せて用いることができる。このような免疫療法剤には、疾患関連抗原に対して指向される薬剤が含まれ、例えば、治療抗体、又は疾患関連抗原若しくは疾患関連抗原を発現する細胞に対して指向される免疫反応を誘導する薬剤が挙げられる。有用な免疫療法剤には、疾患関連抗原又は疾患関連抗原を発現する細胞に対するB細胞応答又はT細胞応答を誘導するタンパク質又はペプチドが挙げられる。これらのタンパク質又はペプチドは、疾患関連抗原又は一若しくは複数のそれらの断片の配列に本質的に対応するか又は同一である配列を含み得る。一実施態様では、タンパク質又はペプチドは、疾患関連抗原に由来するMHC提示ペプチドの配列を含む。タンパク質又はペプチドを投与する代わりに、タンパク質又はペプチドをコードする核酸、好ましくはmRNAを投与することも可能である。タンパク質又はペプチドをコードするRNAは、本発明のssRNAであり得る。代替的に又は追加的に、タンパク質又はペプチドをコードするRNAは、本発明によらない異なるRNAであり得、このRNAは、本発明の薬学的組成物の投与と同時に(この場合、RNAは本発明の薬学的組成物の一部を形成し得る)及び/又は投与前に及び/又は投与後に投与され得る。したがって、本発明の薬学的組成物は、遺伝子ワクチン接種に使用され得、免疫応答は、抗原又はその断片をコードする適切な核酸分子(DNA又はmRNA)を対象に導入することによって刺激される。
【0182】
一実施態様では、疾患関連抗原は腫瘍関連抗原である。この実施態様では、本発明のssRNA及び薬学的組成物は、癌又は癌転移の治療に有用であり得る。好ましくは、疾患臓器又は組織は、疾患関連抗原を発現する癌細胞などの疾患細胞によって特徴付けられ、及び/又は疾患関連抗原とそれらの細胞の表面との会合によって特徴付けられる。無傷又は実質的に無傷な腫瘍関連抗原又はその断片、例えば、MHCクラスI及びクラスIIペプチド、又は、特にこのような抗原又は断片をコードする核酸、特にmRNAを用いた免疫化は、MHCクラスI及び/又はクラスII型応答の誘発を可能にし、したがって、癌細胞及び/又はCD4+T細胞を溶解することができるCD8+細胞傷害性Tリンパ球などのT細胞を刺激する。このような免疫化はまた、体液性免疫応答(B細胞応答)を誘発し得、腫瘍関連抗原に対する抗体の産生をもたらす。さらに、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)に、直接、又はインビトロで腫瘍抗原又は腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸によるトランスフェクションによって、MHCクラスI提示ペプチドをロードし、患者に投与することができる。
【0183】
本発明によれば、腫瘍関連抗原は、好ましくは、タイプ及び/又は発現レベルに関して、腫瘍又は癌並びに腫瘍細胞又は癌細胞に特徴的である任意の抗原を含む。一実施態様では、用語「腫瘍関連抗原」は、正常な状態下にある、すなわち、限定された数の臓器及び/若しくは組織において、又は特異的な発生段階において特異的に発現される健康な対象におけるタンパク質に関連し、例えば、腫瘍関連抗原は、胃組織、好ましくは胃粘膜、生殖器官、例えば精巣、栄養芽細胞、例えば胎盤、又は生殖系列細胞において特異的に発現される正常な条件下にあり得、一若しくは複数の腫瘍組織又は癌組織において発現若しくは異常に発現される。この文脈において、「限定された数」とは、好ましくは3以下、より好ましくは2又は1以下を意味する。本発明との関連における腫瘍関連抗原には、例えば、分化抗原、好ましくは細胞型特異的分化抗原、すなわち、特定の分化段階で特定の細胞型において特異的に発現する正常な状態下にあるタンパク質、すなわち、癌/精巣抗原、すなわち、精巣及び時には胎盤において特異的に発現する正常な状態下にあるタンパク質、並びに生殖系列特異的抗原が含まれる。本発明との関連において、腫瘍関連抗原は、好ましくは癌細胞の細胞表面に会合しており、好ましくは正常組織では発現しないか又は稀にしか発現しない。好ましくは、腫瘍関連抗原、又は腫瘍関連抗原の異常な発現は、癌細胞を同定する。本発明との関連において、対象、例えば癌疾患に罹患している患者において癌細胞によって発現される腫瘍関連抗原は、好ましくは前記対象の自己タンパク質である。好ましい実施態様では、本発明との関連における腫瘍関連抗原は、非必須である組織若しくは臓器、すなわち、免疫系によって損傷された場合、対象の死に至らない組織若しくは臓器、又は免疫系によって全く若しくはほとんどアクセスできない身体臓器又は構造体において特異的に、正常な状態下で発現される。一実施態様では、腫瘍関連抗原のアミノ酸配列は、正常組織で発現される腫瘍関連抗原と、癌組織で発現される腫瘍関連抗原の間で同一である。好ましくは、腫瘍関連抗原は、それが発現される癌細胞によってMHC分子において提示される。
【0184】
腫瘍免疫療法において、特に腫瘍ワクチン接種において、標的構造として本発明により企図される腫瘍関連抗原の基準を理想的に満たす分化抗原の例は、CLDN6及びCLDN18.2などのクローディンファミリーの細胞表面タンパク質である。これらの分化抗原は、種々の起源の腫瘍に発現され、それらの選択的発現(毒性に関連する正常組織において発現しない)及び原形質膜への局在化に起因して、抗体媒介性癌免疫療法に関連する標的構造として特に適している。
【0185】
本発明において有用であり得る抗原のさらなる例は、p53、ART-4、BAGE、ベータ-カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、CLAUDIN-12、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(又はhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくはMAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、又はMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/Melan-A、MC1R、Myosin/m、MUC1、MUM-1、-2、-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、p190マイナーBCR-abL、Pm1/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1又はRU2、SAGE、SART-1又はSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、SURVIVIN、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTE及びWT、好ましくはWT-1である。
【0186】
「抗原」は、抗体の形成及び/又は細胞性免疫応答の活性化を引き起こし得る任意の構造を意味するものとして理解されるべきである。抗原の例は、ポリペプチド、タンパク質、細胞、細胞抽出物、炭水化物/多糖、多糖複合体、脂質及び糖脂質である。これらの抗原は、腫瘍抗原又はウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原及び原生生物抗原若しくはアレルゲンであり得る。用語「抗原」はまた、形質転換を介してのみ(例えば、分子の中間に、体タンパク質による完成によって)により抗原性及び感作となる二次物質として誘導体化された抗原、原子基(例えば、イソシアネート、ジアゾニウム塩)の人工的組み込みにより、新たな構成的特異性を示す、コンジュゲートされた抗原が含まれる。抗原は、適切な担体に結合されたハプテンの形態で、本発明のワクチン中に存在し得る。適切な担体は、当業者に公知であり、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。ハプテンは、先行技術において周知である方法、例えば、Lys残基に対するアミド結合を介したポリペプチド担体の場合において、担体に結合され得る。
【0187】
用語「免疫原性」は、特定の物質、特にRNA(好ましくはmRNAなどのssRNA)の、ヒトなどの対象の体内で免疫応答を引き起こす能力を指す。換言すると、免疫原性は、免疫応答を誘導する能力である。
【0188】
「免疫応答を誘導する」とは、免疫応答を誘導する前に免疫応応答がなかったことを意味し得るが、免疫応答を誘導する前に、あるレベルの免疫応答があり、免疫応答を誘導した後に前記免疫応答が増強することも意味する。したがって、「免疫応答を誘導する」には、「免疫応答を増強する」ことが含まれる。好ましくは、対象において免疫応答を誘導した後、前記対象は、癌若しくは感染性疾患などの疾患を発症することから保護されるか、又は免疫応答を誘導することによって疾患状態が軽快する。
【0189】
用語「免疫療法」は、好ましくは特異的免疫反応及び/又は免疫エフェクター機能(複数可)を伴う治療に関する。
【0190】
用語「免疫化」又は「ワクチン接種」は、治療上又は予防上の理由で対象を治療するプロセスを記載する。
【0191】
「対象」、「患者」、又は「個体」という用語は、脊椎動物に関連する。例えば、本発明との関連における脊椎動物は、哺乳動物、鳥類(例えば、家禽類)、爬虫類、両生類、骨魚類、及び軟骨魚類、特に上記の何れかの飼い馴らされた動物、並びに動物園の動物などの捕獲された動物であり、好ましくは哺乳動物である。本発明との関連における哺乳動物には、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、飼い馴らされた動物、例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマなど、実験哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモットなど、並びに動物園の哺乳動物などの捕獲された哺乳動物が含まれる。本明細書で使用される用語「対象」には、ヒトも含まれる。
【0192】
「移入する」、「トランスフェクトする」又は「細胞に導入する」などの用語は、本明細書において互換的に用いられ、核酸、特に外因性又は異種の核酸、特にssRNAを細胞に導入することに関する。本発明によれば、細胞は、臓器、組織及び/又は生物の一部を形成することができる。
【0193】
本発明の薬学的組成物は、一般的に、「薬学的に許容される量」及び「薬学的に許容される製剤」に適用される。「薬学的に許容される」という用語は、薬学的組成物の活性物質(複数可)の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
【0194】
本発明によれば、核酸(例えばssRNA)の投与は、裸の核酸として、及び/又は一若しくは複数の薬学的に許容される添加剤と組み合わせて達成される。好ましくは、核酸の投与は、裸の核酸の形態である。好ましくは、RNAは、RNase阻害剤などの安定化物質と組み合わせて投与される。本発明はまた、延長された期間の持続的な発現を可能にするための、細胞への核酸の反復導入も想定している。
【0195】
細胞は、例えば、ssRNAと複合体を形成するか、又はssRNAが封入若しくはカプセル化されたビヒクルを形成することによって、ssRNAが会合することができる任意の添加剤(特に、担体)を用いてトランスフェクトすることができ、裸のssRNAとは比較して、ssRNAの安定性の増加をもたらす。本発明に有用な添加剤(特に、担体)には、例えば、カチオン性脂質、リポソーム、特にカチオン性リポソームなどの脂質含有担体、及びミセル、並びにナノ粒子が含まれる。カチオン性脂質は、負に帯電した核酸と複合体を形成し得る。何れのカチオン性脂質も本発明に従って使用することができる。さらに、細胞は対象から採取され得、細胞はssRNA又は本発明の薬学的組成物でトランスフェクトされ得、及びトランスフェクトされた細胞を対象に挿入することができる。
【0196】
好ましくは、ペプチド又はポリペプチドをコードするssRNAの、細胞、特にインビボで存在する細胞への導入は、細胞内で前記ペプチド又はポリペプチドの発現をもたらす。特定の実施態様では、特定の細胞への核酸の標的化が好ましい。このような実施態様では、細胞に核酸を投与するのに適用した担体(例えば、レトロウイルス又はリポソーム)は、標的分子を提示する。例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体、又は標的細胞上の受容体に対するリガンドなどの分子を核酸担体に組み込んでもよく、それらに結合させてもよい。核酸がリポソームによって投与される場合、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質は、標的化及び/又は取り込みを可能にするためにリポソーム製剤に組み込まれ得る。このようなタンパク質は、特定の細胞型に特異的なキャプシドタンパク質又はその断片、内在化されたタンパク質に対する抗体、細胞内の位置を標的化するタンパク質などを包含する。
【0197】
用語「添加剤」は、本明細書で使用する場合、活性剤ではない(例えば、使用される量/濃度においていかなる治療効果も示さない治療的に不活性な成分である)薬学的組成物中のすべての物質を示すことを意図され、例えば、塩、担体、結合剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、分散剤、防腐剤、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、香味剤、着色剤、安定化剤(例えば、RNase阻害剤)又は抗酸化剤などを含み、これらのすべては、好ましくは薬学的に許容される。
【0198】
「薬学的に許容される塩」は、例えば、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸又はリン酸などの薬学的に許容される酸を用いることによって形成され得る酸付加塩を含む。さらに、適切な薬学的に許容される塩には、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩又はマグネシウム塩);アンモニウム(NH );及び適切な有機配位子(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成された第4級アンモニウム及びアミンカチオン)で形成された塩が含まれ得る。薬学的に許容される塩の例示的な例としては、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸、重炭酸塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、エデト酸カルシウム、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート(estolate)、エシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクタン酸塩、ガラクツロン酸塩、グルセプト酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコリルアニサニル酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソ酪酸塩、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミン・アンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、フタル酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる(例えば、S. M. Berge等, "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci., 66, p. 1-19 (1977)参照)。薬学的に許容されない塩は、薬学的に許容される塩を調製するために使用することができ、本発明に含まれる。
【0199】
本発明による組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合可能である、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。「薬学的に許容される担体」は、固体、半固体、液体、又はそれらの組合せの形態であり得る。
【0200】
薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液又は分散液、滅菌非水性溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末剤が含まれる。薬学的に活性な薬剤のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性剤と不適合である場合を除いて、本発明の薬学的組成物におけるその使用が企図される。注射可能な製剤のための例示的な薬学的に許容される担体には、水、等張緩衝食塩水(例えば、リンゲル又はリンゲル乳酸塩)、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリアルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、水素化ナフタレン、特に、生体適合性のラクチドポリマー(例えば、ラクチド/グリコリドコポリマー又はポリオキシエチレン/ポリオキシ-プロピレンコポリマー)が挙げられる。
【0201】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;(3)金属キレート剤、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0202】
本発明の薬学的組成物における使用に適した緩衝剤には、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸、及び塩中のリン酸が含まれる。
【0203】
本発明の薬学的組成物における使用に適した防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、ソルビン酸、及びチメロサールなどの様々な抗菌剤及び抗真菌剤が含まれる。微生物の存在の防止はまた、滅菌手法(例えば、滅菌濾過、特に滅菌精密濾過)によっても確実にされ得る。
【0204】
本発明の薬学的組成物は、任意の経路、好ましくは非経口的に個体に投与され得る。本明細書で使用される「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という表現は、腸内投与(本明細書で使用される「腸内投与」及び「腸内に投与される」とは、投与された薬物が胃及び/又は腸によって取り込まれることを意味する)以外の投与様式を意味する。非経口投与は、通常、注射及び/又は注入によるものであり、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、骨内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、大脳内、脳室内、くも膜下、脊髄内、硬膜外胸骨内、及び局所の投与が含まれる。
【0205】
本発明のssRNA又は薬学的組成物は、当該技術分野において公知である様々な方法によって投与することができる。当業者によって理解されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に依存して変化する。
【0206】
活性剤(すなわち、本発明のssRNA及び任意選択的に一又は複数の追加的/補足的な活性化合物)は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化された送達システムを含む放出制御製剤など、急速放出に対して化合物を保護する担体とともに調製され得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は、一般的に、当業者に公知である。例えば、Sustained及びControlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978を参照されたい。
【0207】
特定の投与経路によって活性剤(すなわち、本発明のssRNA、及び任意選択的に一又は複数の追加的/補足的な活性化合物)を投与するために、活性剤を、活性剤の不活性化を防止し、及び/又は翻訳されるべき活性剤(特に、本発明のssRNA)の有効性を増加させる材料でコーティングするか、化合物をその材料と同時投与することが必要である場合がある。例えば、活性剤は、適切な担体、例えば、脂質含有担体(特にカチオン性脂質)、リポソーム(例えば、水中油中水型のCGFエマルジョン、並びに従来のリポソーム(Strejan等、J. Neuroimmunol. 7: 27 (1984))、特にカチオン性リポソーム)、ミセル、ssRNAが封入され若しくはカプセル化されたナノ粒子剤、又は希釈剤で、個体に投与され得る。薬学的に許容される希釈剤は、生理食塩水及び水性緩衝溶液を含む。
【0208】
薬学的組成物は、典型的には、製造及び保存の条件下で無菌であり、安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルなどを含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを薬学的組成物に含めることが好ましい。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0209】
一般的に、分散剤は、塩基性分散媒及び上記に列挙されるものから必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に活性剤を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末剤の場合、好ましい調製方法は、活性剤の粉末に加え任意の追加の所望の成分を予め滅菌濾過したその溶液から得る真空乾燥及び凍結乾燥(freeze-drying)(凍結乾燥(lyophilization))である。
【0210】
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調節される。例えば、単一のボーラスを投与することができ、いくつかの分割用量を経時的に投与することができ、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例して低減若しくは増加させることができる。投与の容易性及び投薬量の均一性のために、単位剤形の薬学的組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、治療される個体に単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指す;各単位は、必要とされる薬学的な担体に関連して、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性剤を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性剤の国有の特性及び達成すべき特定の治療効果、及び(b)個体における感受性を治療するためにこのような活性剤を配合する当該技術分野に固有の制限によって決定し、それらに直接依存する。薬学的組成物(例えば、単一剤形)を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性剤の量(特に、ssRNAの量)は、治療される個体、及び投与の特定の様式に依存して変化する。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性剤の量は、一般的に、治療効果を生じる組成物のその量である。
【0211】
一般的に、(医薬製剤/組成物の)100%のうち、活性剤の量(特に、医薬製剤/組成物に存在する場合、任意選択的に一又は複数の追加的/補足的な活性化合物を伴う本発明のssRNAの量)は、約0.01%-約99%、好ましくは約0.1%-約70%、最も好ましくは約1%-約30%の範囲であり、残部は、好ましくは、一又は複数の薬学的に許容される添加剤から構成される。
【0212】
単位剤形における、及び/又は個体に投与されるか若しくは治療において使用される場合、活性剤の量、例えば、本発明のssRNAの量は、単位、投与又は治療あたり約0.001mg-約1000mg(例えば、約0.01mg-約500mg、約0.1mg-約100mg、例えば、約1mg-約50mg)の範囲であり得る。ある特定の実施態様では、このような活性剤の適切な量は、個体の体重又は体表面積を用いて計算され得、約0.1mg/kg-10mg/kgの間(例えば、約0.2mg/kg-5mg/kgの間)、又は約0.1mg/m-約400mg/mの間(例えば、約0.3mg/m-約350mg/mの間、又は約1mg/m-約200mg/mの間)の量が挙げられる。
【0213】
選択された投与経路にかかわらず、適切な水和形態で使用され得る活性剤(すなわち、ssRNA及び任意選択的に一又は複数の追加的/補足的な活性化合物)及び/又は本発明の薬学的組成物は、当業者に公知である従来の方法によって薬学的に許容される剤形に製剤化される(例えば、Remington、「The Science and Practice of Pharmacy」Allen、Loyd V., Jr.編、第22版、Pharmaceutical Sciences、September 2012; Ansel等、「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」、第7版、Lippincott Williams & Wilkins Publishers、1999参照)。
【0214】
本発明の薬学的組成物中の活性剤の実際の投薬量レベルは、特定の患者、組成物、及び投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効であり、患者に毒性でない量の活性剤を得るように変更することができる。選択された投薬量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の活性剤の排出速度、治療期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態及び以前の病歴、並びに医学分野で周知の同様の因子などの様々な薬剤動態的因子に依存する。
【0215】
当業者である医師又は獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、及び処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで、薬学的組成物において用いられる活性剤の用量で開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることができる。一般的に、本発明の薬学的組成物の適切な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最も低い用量である活性剤の量である。このような有効用量は、一般的に、上記の因子に依存する。好ましくは、投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下などの非経口であり、好ましくは標的部位の近くに投与される。投与はまた、腫瘍内でもあり得る。必要に応じて、薬学的組成物の有効1日の用量は、その日を通して適切な間隔で別々に、任意選択的に単位剤形で投与される2回、3回、4回、5回、6回又はそれを超える副用量として投与され得る。本発明の活性剤(特にssRNA)を単独で投与することは可能であるが、活性剤を医薬製剤/組成物として投与することが好ましい。
【0216】
一実施態様では、本発明のssRNA又は薬学的組成物は、毒性の副作用を低減させるために、注入、好ましくは24時間を超えるなどの長期間にわたるゆっくりとした連続注入によって投与され得る。投与はまた、2-24時間、例えば2-12時間にわたる連続注入によって行うこともできる。このようなレジメンは、例えば6カ月又は12カ月後に、必要に応じて、一又は複数の回数、反復され得る。
【0217】
本発明の薬学的組成物は、注射によって、例えば、ボーラス注射又は連続注入によって、非経口投与のために製剤化することができる。注射用の製剤は、単位剤形(例えば、小瓶、複数回用量容器)で、防腐剤を加えて提供することができる。本発明の薬学的組成物は、懸濁液剤、液剤、又は油性若しくは水性ビヒクル中のエマルジョン剤などの形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤又は分散剤などの処方剤(formulatory agent)を含有することができる。あるいは、薬剤は、使用前に適切なビヒクル(例えば、滅菌発熱物質不含水)で構成するための粉末形態であり得る。典型的には、静脈内投与用の薬学的組成物は、滅菌等張水性緩衝液の液剤である。必要に応じて、薬学的組成物はまた、注射部位での痛みを和らげるために、可溶化剤及びリグノカインなどの局所麻酔剤を含み得る。一般的に、成分は、例えば、活性剤の量を示すアンプル又はサシェなどの密閉容器中の乾燥凍結乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として、単位剤形にいて、別々に又は一緒に混合して供給される。薬学的組成物が注入によって投与されるべきである場合、それは、無菌の医薬品グレードの水又は生理食塩水を含有する注入ボトルで分配することができる。組成物が注射によって投与される場合、注射用の滅菌水又は生理食塩水のアンプルを提供して、投与前に成分を混合することができる。
【0218】
薬学的組成物は、当該技術分野において公知である医療デバイスとともに投与することができる。例えば、好ましい実施態様では、本発明の薬学的組成物は、US599163;US5383851;5312335;US5064413;US4941880;US4790824;又はUS4596556に開示されているデバイスなどの無針皮下注射デバイスで投与することができる。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例には、制御された速度で医薬を分配するための移植可能なマイクロ注入ポンプを開示しているUS4487603;皮膚を介して医薬品を投与するための治療デバイスを開示しているUS4486194;正確な注入速度で医薬品を送達するための医薬注入ポンプを開示しているUS4447233;連続的な薬物送達のための可変流量の移植可能な注入装置を開示しているUS4447224;マルチチャンバ区画を有する浸透圧薬物送達システムを開示しているUS4439196;浸透圧薬物送達システムを開示しているUS4475196に記載されているものが含まれる。
【0219】
多くの他のこのようなインプラント、送達システム、及びモジュールは、当業者に公知である。ある特定の実施態様では、本発明のssRNA又は薬学的組成物は、インビボでの適切な分布を確実にするように製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多数の高親水性化合物を排除する。本発明のssRNA又は薬学的組成物が(所望される場合)BBBを確実に通過することを確実にするために、それらは、例えば、リポソーム中に製剤化され得る。リポソームを製造する方法について、例えば、US4522811;US5374548;及びUS5399331を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送され、したがって標的薬物送達を増強する一又は複数の部分を含み得る(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29: 685参照)。例示的な標的化部分には、葉酸塩又はビオチン(例えば、Low等のUS5416016参照);マンノシド(Umezawa等、(1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153: 1038);抗体(P.G. Bloeman等 (1995) FEBS Lett. 357: 140; M. Owais等 (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39: 180);及びサーファクタントプロテインA受容体(Briscoe等 (1995) Am. J. Physiol. 1233: 134)が挙げられる。
【0220】
本発明の一実施態様では、本発明のssRNAは、リポソームに製剤化される。より好ましい実施態様では、リポソームは標的化部分を含む。最も好ましい実施態様では、リポソーム中のssRNAは、ボーラス注射によって、所望の領域に近い部位に送達される。このようなリポソームベースの組成物は、容易な注射可能性が存在する程度に流動性であるべきであり、製造及び保存の条件下で安定であるべきであり、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されるべきである。
【0221】
治療のための「治療上有効な投薬量」は、完全であっても又は部分的であってもよい客観的な応答によって測定され得る。完全応答(CR)とは、状態、障害又は疾患の臨床的、放射線学的及び他の証拠がないものとして定義される。部分応答(PR)は、50%を超える疾患の低減に起因する。進行までの時間の中央値は、客観的応答の耐久性を特徴付ける尺度である。
【0222】
治療のための「治療上有効な投薬量」はまた、例えば、当業者に公知である適切な動物モデル系及び/又はインビトロアッセイを使用することによって、状態、障害又は疾患の進行を安定化するその能力によっても測定することができる。治療有効量の活性剤は、所望の反応又は所望の効果を単独で又はさらなる用量と一緒に達成する量を指す。特定の疾患又は特定の状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅延させ、特に、疾患の進行を中断又は好転させることを含む。疾患又は状態の治療における所望の反応は、前記疾患又は前記状態の発症の遅延又は発症の予防であり得る。したがって、治療有効量の活性剤は、個体における、状態、障害若しくは疾患、又は状態、障害若しくは疾患の症状、又は状態、障害若しくは疾患になり易い傾向を治療、治癒、緩和、軽減、変更、是正、軽快、改善又は影響することができる。当業者は、治療すべき疾患、障害若しくは状態、疾患、障害若しくは状態の重症度、治療される個体のパラメータ(年齢、生理学的状態、大きさ及び体重など)、治療期間、付随する治療のタイプ(存在する場合)、特定の投与経路及び類似の因子として、このような因子に基づいてこのような量を決定することができる。したがって、本明細書に記載されている活性剤の用量は、このような様々なパラメータに依存し得る。個体/患者における反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(又は異なる、より局所的な投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用することができる。
【0223】
本発明の薬学的組成物は、本発明のssRNA、及び少なくとも1つの抗原、例えば、上記で検討した抗原若しくはその断片(特にその免疫原性断片)、又は前記抗原若しくは断片をコードする核酸、特にRNAを含むワクチン調製物の形態を取り得る。
【0224】
本発明の薬学的組成物はまた、必要に応じて、活性剤(すなわち、ssRNA及び任意選択的に一又は複数の追加的/補足的な活性化合物)を含有する一又は複数の単位剤形を含有することができるパック、キット又はディスペンサーデバイスで存在し得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属又はプラスチックホイルを含むことができる。パック、キット又はディスペンサーデバイスは、投与のための指示書を添付することができる。
【0225】
一又は複数の追加的/補足的な活性化合物は、免疫調節剤、例えば、抗CTL-A4又は抗PD1又は抗PDL1又は抗制御性T細胞試薬、例えば、抗CD25抗体又はシクロホスファミドを含み得る。
【0226】
本発明の薬学的組成物は、一又は複数のアジュバントなどの補助的な免疫増強物質と一緒に投与され得、その有効性をさらに増大するために、好ましくは免疫刺激の相乗効果を達成するために、一又は複数の免疫増強物質を含み得る。
【0227】
用語「アジュバント」は、免疫応答を延長又は増強若しくは促進する化合物を指す。種々のタイプのアジュバントに応じて、様々なメカニズムがこの点において可能である。例えば、DCの成熟を可能にする化合物、例えば、リポ多糖又はCD40リガンドは、第1のクラスの適切なアジュバントを形成する。一般的に、「危険シグナル」(LPS、GP96、dsRNAなど)のタイプの免疫系に影響を及ぼす任意の薬剤、又はサイトカイン、例えば、GM-CSFは、免疫応答が制御された様式で強化及び/又は影響を受けることを可能にするアジュバントとして使用することができる。CpGオリゴデオキシヌクレオチドはまた、任意選択的に、この文脈において使用することができるが、上記で説明したように、特定の状況下で生じるそれらの副作用を考慮するべきである。しかしながら、一実施態様における本発明のssRNA(好ましくはmRNA)が免疫刺激物質をコードし、前記ssRNAによってコードされる前記免疫促進物質が第1の免疫刺激剤として作用する場合、比較的少量のCpG DNAのみが(CpG DNAのみによる免疫刺激と比較して)必要である。特に好ましいアジュバントは、モノカイン、リンホカイン、インターロイキン又はケモカインなどのサイトカイン、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IFN-α、IFN-γ、GM-CSF、LT-α、又は増殖因子、例えば、hGHである。また、Pam3Cysなどのリポペプチドは、本発明の薬学的組成物中のアジュバントとしての使用に適している。
【0228】
治療は、自宅、診療所、クリニック、病院の外来部門、又は病院で行うことができる。治療は、一般的に、医療監督下で開始されるため、医療従事者は治療の効果を注意深く観察し、必要な任意の調整を行うことができる。治療期間は、患者の年齢及び状態、並びに患者が治療にどのように応答するかに依存する。
【0229】
状態、障害又は疾患を発症するリスクがより大きいヒトは、状態、障害又は疾患の症状を阻害又は遅延させるための予防的処置を受けることができる。
【0230】
用語「治療」は、当業者に公知であり、状態、障害若しくは疾患、状態、障害若しくは疾患の症状、又は状態、障害若しくは疾患になり易い傾向を治療、治癒、緩和、軽減、変更、是正、軽快、改善、影響又は予防する目的で(例えば、対象における腫瘍のサイズ若しくは腫瘍の数を低減させることを含む疾患を予防若しくは排除するため;対象における疾患を停止又は遅延させるため;対象における新たな疾患の発症を阻害若しくは遅延させるため;現在疾患を有するか若しくは以前に疾患を有していた対象における症状及び/若しくは再発の頻度又は重症度を減少させるため;及び/又は延長させるため、すなわち、対象の寿命を延ばすために)、状態、障害若しくは疾患、状態、障害若しくは疾患の症状、又は状態、障害若しくは疾患になり易い傾向を有する個体/患者に活性剤(例えば、前記活性剤を含有する薬学的組成物)若しくは手法を適用又は投与すること、あるいはそれを有する対象から単離された細胞、細胞培養物、細胞株、サンプル、組織若しくは臓器に活性剤(例えば、前記活性剤を含有する薬学的組成物)若しくは手法を適用又は投与することを含む。特に、用語「疾患の治療」は、治療すること、持続時間を短縮すること、進行若しくは悪化を軽快させること、予防すること、減速又は抑制すること、あるいは疾患若しくはその症状の予防すること若しくはその発症の遅延することを含む。したがって、用語「治療」は、状態、障害若しくは疾患、又は状態、障害若しくは疾患の症状の予防的処置を含み得る。活性剤は、治療に使用される場合、本発明のssRNA、並びに本明細書に記載されている一又は複数の追加的/補足的な活性化合物を含み、限定されないが、低分子、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド/タンパク質、抗体、他のポリヌクレオチド、例えば、DNA又はdsRNA、細胞、ウイルス、リボザイム、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る他の治療的に活性な化合物が挙げられる。
【0231】
本発明は、本発明の好ましい実施態様を説明する以下の実施例によって例証され、特許請求の範囲において定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。添付の特許請求の範囲によって包含されていないこれらの実施例は、比較目的のためにのみ与えられている。
【実施例0232】
省略形
EtOH:エタノール
h:時間(複数可)
hPa:ヘクトパスカル
min:分(複数可)
mM:ミリモル濃度(10-3mol/l)
MPa:メガパスカル
nt:ヌクレオチド(複数可)
sec:秒(複数可)
v/v:体積%
【0233】
実験手法
IVT RNAのセルロース精製
他に指示がない限り、中程度サイズの繊維(Sigma-Aldrich、カタログ番号C6288)及び1×STE緩衝液(10mM TRIS、pH7.0、50mMのNaCl、20mMのEDTA)からなるセルロース粉末を精製手法に使用した。すべての実験は、室温で行われた。
【0234】
「陰性」精製手法
「負の」の精製手法は、16%EtOHを含有する1×STE緩衝液中のIVT RNAを伴うセルロースのインキュベーションに基づく。この条件は、ssRNAが可溶性画分に残っている間に、セルロースへのdsRNAの選択的結合を可能にする。
【0235】
セルロースを最初に16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液中に0.2gセルロース/mlの濃度で懸濁させ、激しく振盪しながら10分間インキュベートした。4,000×gで5分間遠心分離した後、セルロースを0.2gセルロース/ml(洗浄セルロース)の濃度で16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液に再懸濁した。
【0236】
プルダウン実験のために、500μlの洗浄セルローススラリーを1.5mlチューブに移し、5分間、14,000×gで遠心分離した。上清を除去した後、16%(v/v)EtOHを含有する、100μlの1×STE緩衝液中の50μgのIVT RNAをセルロースに添加し、激しく振盪しながら15分間インキュベートした。5分間、14,000×gで遠心分離した後、上清を除去し、核酸を沈殿させた。次に、セルロースは、EtOHを含有しない100μlの1×STE緩衝液と15分間、激しく振盪しながらインキュベートして、結合した核酸を放出させた。5分間、14,000×gで遠心分離した後、上清を除去し、溶出した核酸を沈殿させた。
【0237】
ミクロ遠心分離スピンカラム(NucleoSpin Filters、Macherey-Nagel、カタログ番号740606)を用いたセルロース精製のために、600μlの予め洗浄したセルローススラリー(0.12gのセルロース)をスピンカラムに移し、60秒間、14,000×gで遠心分離した。フロースルーを廃棄し、16%(v/v)EtOHを含有する500μlの1×STE緩衝液をスピンカラムに添加し、激しく振盪しながら5分間インキュベートしてセルロースを再懸濁させた。60秒間、14,000×gで遠心分離した後、フロースルーを廃棄し、16%(v/v)EtOHを含有する300-500μlの1×STE緩衝液中のIVT RNA(50-500μg)をスピンカラムに添加し、激しく振盪しながら20分間インキュベートしてセルロースを再懸濁させた。次に、スピンカラムを60秒間、14,000×gで遠心分離し、核酸沈殿のためにフロースルーを回収した。複数のサイクルのセルロース精製を行った場合、フロースルーは、新たに調製されたセルローススピンカラムに直接移され、手法を反復した。最後に、300-500μlの1×STE緩衝液を添加することにより、セルロース結合核酸は、激しく振盪しながら20分間のインキュベーション中に放出され、スピンカラムを60秒間、14,000×gで遠心分離した。
【0238】
精製プロセスのスケールアップは、16%(v/v)EtOHを含有する15mlの1×STE緩衝液中の1.5gのセルロース及び5mgのIVT RNAを用いて、50mlチューブ中で行われた。RNAを乾燥セルロースに添加し、磁気撹拌下で30分間インキュベートした。結合していない核酸は、使い捨ての真空駆動フィルターデバイス(Steriflip-HV、0.45μm孔径、PVDF、Merck Chemicals GmbH/Millipore、カタログ番号SE1M003M00)を用いた濾過によって回収された。指示されている場合、濾液は、1.5gの新鮮なセルロースを添加し、このプロセスを反復することによって、精製の第2のサイクルのために使用された。最後に、濾液中の核酸は、等量のイソプロパノールを添加することにより沈殿された。
【0239】
「陽性」精製手法
「陽性」精製手法の原理は、40%EtOHを含有する1×STE緩衝液中でセルロースとともにIVT RNAをインキュベートすることにより、最初にすべてのRNAをセルロースに結合させることである。第2の工程では、ssRNAは、これらの条件下でdsRNAがセルロース繊維に結合したままである間に、16%EtOHを含有する1×STE緩衝液中でのインキュベーションにより選択的に放出される。
【0240】
使用前に、セルロースは、0.2gセルロース/mlの濃度で40%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液に懸濁させ、激しく振盪しながら10分間インキュベートされた。5分間、4,000×gで遠心分離した後、セルロースは、0.2gセルロース/ml(洗浄セルロース)の濃度で40%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液に再懸濁された。
【0241】
マイクロ遠心分離スピンカラム(NucleoSpin Filters、Macherey-Nagel、カタログ番号740606)を用いたセルロース精製のために、600μlの洗浄セルローススラリー(0.12gセルロース)をスピンカラムに移し、60秒間、14,000×gで遠心分離した。フロースルーを廃棄し、40%(v/v)EtOHを含有する500μlの1×STE緩衝液をスピンカラムに添加し、激しく振盪しながら5分間インキュベートしてセルロースを再懸濁した。14,000×gで60秒間、遠心分離した後、フロースルーを廃棄し、40%(v/v)EtOHを含有する300-500μlの1×STE緩衝液中のIVT RNA(50-500μg)をスピンカラムに添加し、激しく振盪しながら、20分間インキュベートしてセルロースを再懸濁した。次に、スピンカラムを14,000×gで60秒間、遠心分離し、核酸沈殿のためにフロースルーを回収した。16%(v/v)EtOHを含有する300-500μlの1×STE緩衝液を添加することによって、ssRNAは、激しく振盪しながら、20分間のインキュベーション中にセルロースから放出され、スピンカラムを14,000×gで60秒間、遠心分離した。複数サイクルのセルロース精製を行った場合、フロースルーは、新たに調製されたセルローススピンカラムに直接移され、手法を反復した。最後に、300-500μlの1×STE緩衝液を添加することによって、セルロース結合核酸は、激しく振盪しながら、20分間のインキュベーション中に放出され、スピンカラムを14,000×gで60秒間、遠心分離した。
【0242】
セルロースを固定相として使用するFPLCについて、最初に、40%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液中のセルローススラリー(0.2g/ml)を調製し、30分間撹拌した。20mlのこのスラリー(4gセルロース)を用いて、XK16/20カラム(GE Healthcare Life Sciences、カタログ番号28-9889-37)を充填した。カラム床の最終高さは約5cmであった。クロマトグラフィーは、AKTA Avant 25システム(GE Healthcare Life Sciences)を用い、UV(260nm)吸光度をモニターして行われた。結合緩衝液として40%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液(緩衝液B)、及び溶出緩衝液として1×STE緩衝液(緩衝液A)を使用した。カラムを100%緩衝液Bで15分間、2ml/分の流速で平衡化した。500μgのRNA(サンプル体積:500μl)の注入後、流速を40分間、1ml/分に低減させた。ssRNAを40%緩衝液B(16%(v/v)EtOH)を用いて、40分間、流速2ml/分で溶出させた。最後に、緩衝液の組成を0%緩衝液B(0%EtOH)に変更することにより、dsRNAをカラムから溶出させた。クロマトグラフィーのピークを回収し、さらなる分析のために核酸を沈殿させた。
【0243】
核酸のイソプロパノール沈殿
セルロース精製から得られたRNAは、0.1容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.0)及び1容量のイソプロパノールを添加することによって沈殿させた。ボルテックス後、サンプルを1時間、-20℃でインキュベートし、続いて、10分間、14,000×gで間遠心分離した。RNAペレットを200μlの氷冷した70%(v/v)EtOHで洗浄し、風乾し、適切な体積のヌクレアーゼ不含HOに溶解した。RNA濃度は、Nanodropシステム(Eppendorf)を用いて分光光度的に測定された。
【0244】
ドットブロット分析
dsRNA及びRNA-DNAハイブリッド混入物の量を決定するために、異なる濃度のRNAサンプルの連続希釈物を調製し、増加した量のRNA(通常40ng、200ng及び1,000ng)をナイロンブロッティング膜(Nytran SuPerCharge(SPC)ナイロンブロッティング膜(GE Healthcare Life Sciences、カタログ番号10416216))上にスポット(0.5μl)した。次に、膜は、5%(w/v)スキムミルク粉末を含有するTBS-T緩衝液(20mMのTRIS、pH7.4、137mMのNaCl、0.1%(v/v)TWEEN-20)中で1時間遮断された。dsRNAの検出のために、膜は、1%(w/v)スキムミルク粉末を含有するTBS-T緩衝液中、1:10,000の比率で希釈したJ2 dsRNA特異的マウスmAb(English&Scientific Consulting、Szirak、Hungary)とともに1時間、インキュベートされた。指示されている場合、1:10,000の比で希釈したS9.6 RNA-DNAハイブリッド特異的マウスmAb IgG2a(KeraFAST、カタログ番号ENH001)を用いて、RNA-DNAハイブリッド混入物を検出した。TBS-Tで洗浄した後、膜は、1%(w/v)スキムミルク粉末を含有するTBS-T緩衝液中、1:10,000の比で希釈された、HRPをコンジュゲートしたロバ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号715-035-150)とともに1時間、インキュベートし、TBS-Tで洗浄し、Amersham ECLプライムウェスタンブロッティング検出試薬(Fisher Scientific、カタログ番号RPN2232)及びChemiDoc MP画像化システム(BIO-RAD)を用いて発色させた。指示されている場合、ハイブリダイゼーションシグナル強度は、Image Lab 5.1ソフトウェア(BIO-RAD)を用いたデンシトメトリーによって定量化された。
【0245】
アガロースゲル電気泳動
精製RNAの完全性をモニターし、ドットブロットにロードされた量を検証するために、アガロースゲル電気泳動を使用した。ドットブロッティングのために調製した40ng/μlの連続RNA希釈液の等量のRNA(例えば、2μl)を分析した。RNAサンプルは、Masek等(Anal. Biochem. 336 (2005)、46-50)に従って、2μlのRNA(80ng)を6μlのホルムアミドと混合し、5分間、65℃でインキュベートすることによって変性し、その後、0.005%(v/v)のGelRed(商標)核酸ゲル染色剤(Biotium Inc.、カタログ番号41003)を含有する1.4%(w/v)アガロース上にロードした。電気泳動は、泳動緩衝液としてTAE(40mMのTRIS酢酸塩、1mMのEDTA)を用いて、100Vで20分間行われ、続いてGel Doc(商標)EZ Imagerシステム(BIO-RAD)を用いてゲルを画像化した。
【0246】
実施例1- セルロースを用いたIVT RNAからのdsRNAのプルダウン
最初にIVT RNAからdsRNA混入物を除去するためにセルロースを適用する実施可能性を試験するために、簡単なプルダウン実験を行った。IVT反応からの塩化リチウム(LiCl)沈殿によって予備精製された、50μgの2,500nt長のN-メチル-プソイドウリジン(m1Ψ)修飾されたIVT RNAを、16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液の存在下で、0.1gのセルロースとともにインキュベートした。遠心分離後、上清中の未結合RNAを沈殿させた。EtOHを含有しない1×STE中のセルロースの再懸濁、遠心分離及び上清の沈殿により、セルロース結合RNAを回収した。両方の画分からのRNA並びに出発RNA材料のRNAのdsRNA含量を、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロットによって分析した。RNAの完全性は、アガロースゲル電気泳動によってモニターされた。
【0247】
ドットブロット分析は、未処理のインプットIVT RNAと比較して、セルロースとのインキュベーション後の未結合RNA画分中のdsRNA含量が大きく低減することを示している(図1)。これは、16%(v/v)EtOHの存在下でのセルロース材料への混入dsRNAの選択的結合に起因し、これにより、セルロースの沈降によるssRNAからのdsRNAの分離が可能になる。分離後、dsRNA混入物は、EtOHを含有しない緩衝液を用いてセルロースから放出させることができる。これは、結合したRNA画分中のJ2反応性RNAの有意な量を実証することによって確認される(図1)。さらに、RNAの電気泳動は、RNA完全性が、このセルロース精製手法中に保存されることを実証する。この実施例は、IVT RNAからdsRNA混入物を除去するセルロースの首尾良い使用を実証する。
【0248】
実施例2- セルロースによるIVT RNAからのdsRNA除去の効率における様々な濃度のEtOHの影響
次のステップで、上記の精製方法(実施例1参照)を、ミクロ遠心分離スピンカラムを用いるために、セルロースから未結合RNAを分離するように適合させた。この技術の利点は、遠心分離によってセルロースから液体、及びしたがって未結合RNAを完全に除去することである。さらに、最大18%(v/v)又は20%(v/v)の、IVT RNAのセルロースとのインキュベーション中のEtOH濃度を増加させることがdsRNA除去の効率を増加させるかどうかを試験した。最初に、磁気ビーズによるIVT反応から予備精製された、50μgの1,500nt長のシプソイドウリジン(Ψ)修飾及びD2キャップされたIVT RNAを、0.1gのセルロースを有するマイクロ遠心分離スピンカラムにおいて、16%(v/v)、18%(v/v)又は20%(v/v)のEtOHを含有する1×STE緩衝液の存在下でインキュベートした。遠心分離後、カラムの遠心分離によって未結合RNAを回収し、沈殿させた。セルロース結合RNAは、EtOHを含有しない1×STEをカラムに添加し、激しく振盪してセルロースを再懸濁し、最後に遠心分離及び沈殿させることにより回収された。両方の画分並びに出発RNA材料からのRNAのdsRNA含量を、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロットによって分析した。第2の膜には、同量の異なるRNA画分をロードし、RNA/DNAハイブリッド特異的S9.6抗体とハイブリダイズさせて、これらのIVT RNA混入物がまたセルロース精製によって除去され得るかどうかを試験した。
【0249】
未精製IVT RNAと比較すると、すべての未結合RNA画分(フロースルー)中のdsRNA含量は、セルロースとのインキュベーション後に大きく低減する(図2)。しかしながら、これらの画分中のRNA/DNAハイブリッドの量はほんのわずかに減少し、これは、RNA/DNAハイブリッドが、試験された条件下でセルロースに効率的に結合せず、したがってセルロースを用いてIVT RNAから除去することができないことを実証している。EtOH濃度を16%(v/v)-18%(v/v)又は20%(v/v)に増加させることは、dsRNA除去の効率を有意に増大させない。結合RNA画分中のJ2反応性RNAの高量は、dsRNAの濃縮を示し(図2)、これは、この方法によるdsRNA混入物とssRNAの分離を確実にする。さらに、この結果は、マイクロ遠心分離スピンカラムフォーマットに対する「陰性」セルロース精製手法の成功した適合を示す。
【0250】
実施例3- RNaseIII処理及びHPLC精製に対するセルロース精製の比較
マイクロ遠心分離スピンカラムを用いた上記の方法(実施例2参照)によるセルロース精製の複数回のサイクルが、dsRNA除去の効率を高めるかどうかを試験するために、IVT反応からの塩化リチウム(LiCl)沈殿によって予備精製された、100μgの2,500nt長のm1Ψ修飾されたIVT RNAは、16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液を用いて上記のように1×、2×又は3×で精製された。さらに、セルロースによって精製されたRNAは、大腸菌RNaseIII(0.2U/100μgのRNA)で30分間、37℃で処理されたか、またWeissman等(上記)によって記載されたプロトコールに従ってHPLCで精製されたIVT RNAと比較された。すべてのRNAのdsRNA含量は、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロットにより分析され、ハイブリダイゼーションシグナルの密度分析によって定量化された。RNA完全性は、アガロースゲル電気泳動によってモニターされた。
【0251】
セルロース精製サイクルの回数の増加は、IVT RNAから除去されたdsRNAの量を増加させる(図3)。1サイクルの精製は約90%のdsRNA混入物を除去するが、この量は、それぞれ2回及び3回の精製サイクルを実施した場合、95%及び97%まで増加する。興味深いことに、セルロース精製の1サイクルは、RNaseIIIを用いたIVT RNAの処理とほぼ同量のdsRNAを排除する。さらに、3サイクルのセルロース精製を行うことは、HPLC精製の効率に非常に近くなる。したがって、セルロース精製の効率は、RNaseIII処理とHPLC精製との間の範囲である。
【0252】
実施例4- IVT RNAからdsRNAを除去する際の様々なブランドのセルロースの性能の比較
dsRNA混入物の除去が、上記の実験(Sigma-Aldrich、カタログ番号C6288)において使用した特定のセルロースブランドに限定されるのかどうか、又は他の供給業者からのセルロースもまた使用することができるかどうかを試験するために、本発明者等は、Macherey-Nagelからの2つの他のセルロースタイプ(MN 100、MN 2100)の性能を試験した。最初に、IVT反応から塩化リチウム(LiCl)沈殿によって予備精製された、100μgの1,500nt長のm1Ψ修飾されたIVT RNAは、マイクロ遠心分離スピンカラム中で、16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液の存在下で、0.15gの異なるタイプのセルロースとともにインキュベートされた。遠心分離後、未結合RNAは、カラムを遠心分離し、フロースルー中のRNAを沈殿させることによって回収された。セルロース結合RNAは、カラムに1×STEを添加し、続いて、激しく振盪してセルロースを再懸濁し、最後に遠心分離及び沈殿によって回収された。すべてのRNAサンプルのdsRNA含量は、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロットにより分析され、ハイブリダイゼーションシグナルの密度分析によって定量化された。RNA完全性は、アガロースゲル電気泳動によってモニターされた。
【0253】
精製に使用されたセルロースとは無関係に、すべての未結合RNA画分中のdsRNA含量は、未精製のインプットRNAと比較して大幅に低減する(図4)。結合RNA画分中のJ2反応性RNAの量が多いことは、試験したすべてのセルロースタイプによるdsRNA混入物及びssRNAの分離を確認するdsRNAの濃縮を示す。
【0254】
実施例5- セルロース精製法の拡張性
重要な点は、セルロース精製法が拡張性であるかどうかを試験することであった。したがって、実験は、磁気ビーズによるIVT反応により予備精製された、5mgの1,900nt長のD1キャップされたIVT RNAからdsRNA混入物を除去するために実施された。RNAは、16%(v/v)EtOHを含有する15mlの1×STE緩衝液中の1.5gのセルロース(Sigma、カタログ番号C6288)とともにインキュベートされた。未結合RNAは、真空駆動フィルターデバイス(孔径0.45μM)によってセルロースから分離され、沈殿された。別の5mgの同じRNAを用いて、2精製サイクルを実施した。両方の精製RNAのdsRNA含量は、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロットにより分析され、ハイブリダイゼーションシグナルの強度の密度分析により定量化された。RNA完全性は、アガロースゲル電気泳動によってモニターされた。
【0255】
ドットブロット分析の結果は、1.5gのセルロースによる1サイクルの精製の後、dsRNA混入物の72%が5mgのIVT RNAから除去されることを示す。精製効率は、1.5gの新鮮なセルロースを用いた第2の精製サイクルによって83%までさらに増加させることができる。予期されるように、RNA回収率は、1サイクルの精製後の67%から2サイクル後の53%に減少し、これは、なおも許容することができ、Weismann等(上記)によって記載されるHPLC精製プロトコールによって達成される約50%の回収率に匹敵する。この結果は、本発明のセルロース精製法が、1回の単一バッチ精製で数mgのIVT RNAからdsRNA混入物を除去するためにスケールアップすることができることを明確に実証している。
【0256】
実施例6- 「陽性」精製手法を用いた様々な長さのIVT RNAの精製
次のステップで、EtOH濃度を16%(v/v)に減少させることによってssRNA画分を選択的に放出する前に、高EtOH濃度の存在下でIVT RNA調製物の全RNA成分をセルロースに最初に結合させることが実施可能かどうかを試験した。この条件下で、dsRNA混入物はセルロース材料に結合したままであり、したがってssRNAから分離されるべきである(「陽性」精製)。この手法は、EtOHの存在下でセルロースに結合しない非核酸混入物(例えば、タンパク質、遊離ヌクレオチド)の除去も可能にするため、「陰性」精製と比較して有利である。したがって、様々な長さ(1,300nt、2,500nt及び>10,000nt)及びキャップ構造(D1、D2、キャップなし)を有する、400μgの3つのIVT RNAは、40%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液を用いて、マイクロ遠心分離スピンカラム中の0.12gのセルロースに完全に結合させる実験を行った。ssRNAは、16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液で溶出され、1.2mgの新鮮なセルロースを含有する第2のスピンカラムに移された。激しく振盪しながらインキュベーション及び遠心分離後、フロースルー中のRNAを沈殿させ、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロッティングによりdsRNA混入物を分析した。RNA完全性は、アガロースゲル電気泳動によってモニターされた。
【0257】
RNAの長さとは無関係に、すべてのIVT RNAのdsRNA含量は、セルロース精製後、ほとんど検出できないレベルまで有意に低減し(図6)、これは、上記の「陽性」精製手法の実施可能性を実証する。予想外に、>10,000nt長のIVT RNAはまた、dsRNA混入物から首尾良く精製され得た(図6A)。これは、精製がより短いRNA(1,300-2,500ntなど)に限定されず、RNAの長さが精製の成功に対する制限因子ではないことを示唆している。しかしながら、1,300ntと2,500nt長のRNA(45-55%回収率)の両方の回収率と比較して、長いIVT RNAの回収率はより低い(35%回収率)。>10,000nt長のIVT RNAの完全性は、両方のより短いIVT RNAの完全性よりも低いが、本発明によるセルロース精製法によって負に影響されない。これらの実験に使用されたRNAは、様々な5’キャップ構造(10,000nt:D1キャップ、1,300nt:D2キャップ、2,500nt:キャップなし)を有するため、本実施例は、この構造的特徴が、セルロースによるIVT RNAの精製の成功にとって重要な因子ではないことを実証する。
【0258】
実施例7- 様々なイオン強度を有する緩衝液を用いたIVT RNAの精製
二本鎖核酸の安定性は、環境のイオン強度によって影響される。高塩濃度は二本鎖構造の形成を促進するが、一本鎖核酸へのそれらの解離は低塩濃度下で増強される。セルロースによるdsRNA除去効率における緩衝液のイオン強度の影響を分析するために、IVT反応から塩化リチウム(LiCl)沈殿によって予備精製された、1,300nt長のm1Ψ修飾されたIVT RNAは、1.5mlチューブにおいて、40%(v/v)EtOH及び様々な濃度のNaCl(0-150mM)を含有する500μlの1×STE緩衝液中の0.1gのセルロースとともにインキュベートされた。遠心分離後、上清を除去し、セルロースを16%(v/v)EtOHを含有する、500μlの対応する1×STE緩衝液に再懸濁して、ssRNAを放出させた。遠心分離後、上清を集め、RNAを沈殿により回収した。最終工程で、セルロースは、EtOHを含有しない、500μlの対応する1×STE緩衝液に再懸濁し、遠心分離し、上清の沈殿によってRNAを回収した。両方の画分(16%EtOH溶出液、0%EtOH溶出液)からのRNA、並びに出発RNA材料(IVT RNA)からのRNAのdsRNA含量は、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロットにより分析され、ハイブリダイゼーションシグナルの密度分析によって定量化された。RNAの完全性は、アガロースゲル電気泳動によってモニターされた。
【0259】
セルロースによるdsRNA除去効率は、STE緩衝液中のNaCl濃度によって影響される。25mM又は50mMのNaClの存在下で、94%-98%のdsRNA混入物が、16%EtOH溶出液から除去される(図7A、B)。NaCl濃度を75mMまで増加させるか(図7A)又は10mMまでそれを減少させること(図7B)は、精製効率を低減させる。125mMを超えるNaCl濃度は、精製効率の有意な低下をもたらす(図7A)。この結果は、使用されるSTE緩衝液のNaCl濃度が、25-50mMのNaClの範囲で最も高い精製効率に影響し得ることを実証する。J2抗体を用いた、150mM NaClサンプル(図7A)以外の0%EtOH溶出液すべての強い反応性は、これらのサンプル中のdsRNA混入物の濃縮を反映する。
【0260】
実施例8- FPLCによるIVT RNAのセルロース精製
「陽性」精製手法を用いたセルロースによるdsRNA混入物からのssRNAの分離は実現可能であるため(実施例6及び7参照)、FPLCの精製プロトコールを適合させる試みがなされた。4gのセルロースは、XK16/20カラムを充填するために、固定相として使用された。40%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液で平衡化した後、IVT反応から塩化リチウム(LiCl)沈殿によって予備精製された、500μgの1,300nt長のm1Ψ修飾されたIVT RNAをカラムにロードした。結合ssRNA及びdsRNAは、緩衝液のEtOH濃度をそれぞれ16%(v/v)及び0%(v/v)に低減させることによって溶出され、画分を回収した。RNAを沈殿によって回収し、両画分(F1:16%EtOH溶出液、F2:0%EtOH溶出液)からのRNA、並びに出発RNA材料(インプットRNA)からのRNAのdsRNA含量をdsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロットによって分析された。RNAの完全性は、アガロースゲル電気泳動によってモニターされた。
【0261】
クロマトグラムの溶出プロファイル(260nmでの吸光度)は、高い割合のロードしたIVT RNAが、40%(v/v)EtOHの存在下で、セルロース材料に結合することを示す。わずかな量のRNAだけが未結合のままであり、これらの条件下でカラムから結合せずに溶出される(図8A)。EtOH濃度を16%(v/v)まで低下させると、RNAの大部分がUV吸光度の鋭い単一ピークで示されるように溶出する。このピークは回収され(画分F1)、精製されたssRNAを含有する。未精製のインプットRNAと比較して、約88%のdsRNA含量がこの画分から除去された(図8B)。緩衝液のEtOH濃度をさらに0%(v/v)に低減させた後、少量のRNAだけがカラムから溶出する(画分F2)。ドットブロット分析は、dsRNAがこのRNA画分に濃縮されていることを明らかにした(図8B)。これは、dsRNAからのssRNAの分離を確認し、dsRNA混入物を除去するためのIVT RNAのFPLC精製用の固定相としてのセルロースの首尾良い使用を実証する。
【0262】
実施例9- ssRNA溶出のための様々なEtOH濃度を用いたIVT RNAの精製
「陽性」セルロース精製手法のプロトコールを最適化するために、dsRNA除去及びRNA回収の効率における様々なEtOH濃度の影響を試験した。磁気ビーズによるIVT反応から予備精製された、200μgの1,500nt長のD1キャップされたIVT RNAは、マイクロ遠心分離スピンカラムにおいて、40%(v/v)EtOHを含有する500μlの1×STE緩衝液中の0.1gの洗浄セルロースとともにインキュベートされた。セルロース結合ssRNAは、6、10、12、14、16、18、20又は24%(v/v)のEtOHを含有する1×STE緩衝液で溶出され、沈殿により溶出液から回収された。様々な溶出液から得られたRNA並びに出発RNA材料(インプットRNA)のRNAのdsRNA含量は、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロットにより分析され、ハイブリダイゼーションシグナルの密度分析によって定量化された。RNAの完全性は、アガロースゲル電気泳動によって確認された。
【0263】
「陽性」精製手法中にssRNAの溶出のためのEtOH濃度の最適範囲は14-16%(v/v)である(図9A、B)。これらのEtOH濃度では、dsRNAの83-84%がセルロースに結合したままであり、ssRNAの58-64%が対応する溶出液から回収される。EtOHを18%(v/v)又は20%(v/v)に増加させると、dsRNA除去効率(それぞれ85%又は90%)がさらに改善されるが、RNA回収率は有意に低減する(それぞれ47%又は36%)。対照的に、EtOH濃度を12%(v/v)に減少させると、RNA回収を有意に改善させることなく、精製効率が悪化する(除去されたdsRNAの63%)。この結果は、dsRNA除去効率及び溶出液からのRNA回収率が逆相関することを実証している。さらに、dsRNA混入物に対するssRNAの相対純度は、溶出に使用されるEtOH濃度によって制御することができる。しかしながら、より高いEtOH濃度は、ssRNA回収の低減という代償を払って、dsRNAのより効率的な除去をもたらす。したがって、ssRNAの溶出のためのEtOH濃度を調整することにより、dsRNA混入物/RNA回収率は、様々な用途のIVT RNAの純度/コスト要件を満たすように調整することができる。
【0264】
実施例10- セルロースのRNA結合能力の測定
「陽性」セルロース精製手法をスケールアップするためには、過剰にロードすることによって引き起こされるRNA喪失を最小にする、セルロースのRNA結合能を知ることが重要である。RNA結合能を決定するために、本発明者等は、マイクロ遠心分離スピンカラムにおいて40%(v/v)EtOHを含有する500μlの1×STE緩衝液中で、磁気ビーズによってIVT反応から予備精製された、25μg、50μg、100μg、250μg、500μg、750μg、1,000μg又は1,500μgの1,500nt長のD1キャップされたIVT RNAとともに固定量の洗浄セルロース(100mg、Sigma、C6288)をインキュベートした。遠心分離後、ssRNAは、16%(v/v)のEtOHを含有する500μlの1×STE緩衝液で溶出された。最後に、なおもセルロースに結合したRNAをHO(0%(v/v)EtOH)とのインキュベーションによって放出させた。フロースルー(40%(v/v)EtOH)中、及び16%(v/v)と0%(v/v)の両溶出液中のRNAを沈殿により回収し、回収されたRNAの量を分光光度法で決定した。さらに、16%(v/v)EtOH溶出液並びに出発RNA材料(インプットRNA)から得られたRNAのdsRNA含量は、dsRNA特異的J2抗体を用いたドットブロットにより分析され、個々のサンプル中におけるdsRNA除去効率をモニターした。これらのRNAの完全性は、アガロースゲル電気泳動によってモニターされた。
【0265】
試験したセルロース(Sigma、C6288)の最大RNA結合能は、1gのセルロースあたり1-2.5mgのRNAに対応する、100mgのセルロースあたり100μgから250μgの間の範囲である。これは、未結合RNA画分を表す、40%(v/v)EtOHのフロースルーから回収されたRNA回収率(図10A)及びRNA収量(図10B)が、250μg以上のRNAを100mgのセルロースによる精製のために使用する場合に、着実に増加するという事実によって反映される。しかしながら、16%(v/v)EtOH及び0%(v/v)EtOH溶出液中の結合RNAの量は、250μg以上RNAを精製のために使用する場合、それに応じて増加せず、これは、結果的に両方の画分からのRNA回収率の減少をもたらす(図10A、B)。16%(v/v)EtOH溶出液からの最大RNA回収率は、100μgのRNAが100mgのセルロースを用いた精製のために使用される場合に達成される(68%のRNA回収)。さらに、RNA:セルロースのこの比で、88%のdsRNA除去の最高の浄化効率が達成される(図10C、D)。興味深いことに、IVT RNAから除去されたdsRNAの相対量は、セルロースの結合RNA能を超えた場合、有意に減少しない。
【0266】
実施例11- IVT RNAのセルロース精製がその翻訳能力及び免疫原性に及ぼす影響
上記のように、IVT RNAは、T7 RNAポリメラーゼの異常な活性に起因するdsRNA混入物を含有する。しかしながら、dsRNAは、RIG-1、MDA5及びTLR3を含む異なる細胞センサーを活性化させることによって炎症性サイトカイン(インターフェロンなど)を誘導し、さらに、プロテインキナーゼR(PKR)及びオリゴアデニレートシンテターゼ(OAS)を活性化することによって翻訳を直接に阻害する。本発明の方法に供されたIVT RNAがより少ない炎症性サイトカインを誘導するかどうか、及び/又は本発明の方法に供されていないIVT RNAと比較してより効率的に翻訳され得るかどうかを試験するために、マウスエリスロポエチン(EPO)をコードするIVT RNAは、未精製のままとしたか、又はセルロース材料(0.12gセルロース(Sigma、C6288))でそれぞれ充填された2つのスピンカラムを使用する2工程手法によって精製した。最初に、IVT RNAは、第1のスピンカラムを用いて(すなわち、dsRNA及びssRANをセルロース材料に結合させるために、IVT RNAを第1のスピンカラムにおいて、40%(v/v)を含有する1×STE緩衝液の存在下でセルロース材料とともにインキュベートし;第1のスピンカラムに遠心力を適用し;フロースルーを廃棄し;16%(v/v)EtOHを含有する1×STE緩衝液を添加し、第1スピンカラムに遠心力を適用することによって、第1のスピンカラムからssRNAを溶出して)、上記される陽性精製手法に供された。次に、このようにして得られたssRNAを含有する溶出液は、第2のスピンカラムを用いて(すなわち、第2のスピンカラムにおいてssRNAを含有する溶出液をセルロース材料とともにインキュベートし;第2のスピンカラムに遠心力を適用し;フロースルーを回収して)、上記される陰性精製手法に供された。次に、第2のスピンカラムから得られたフロースルーは、イソプロパノール/酢酸ナトリウムを用いて沈殿させ、HOに再溶解させた。TransIT(Mirus Bio)を用いて処方後、IVT RNAは、3μgのRNA/動物の用量でマウス(n=4)に腹腔内注射された。血液を注射後の2、6、及び24時間に採取し、血漿サンプルを回収した。コントロールマウスは、TransITのみを注射された。マウスインターフェロンアルファ(IFN-α)及びマウスEPOのレベルは、特異的ELISAアッセイ(マウスインターフェロンアルファ特異的ELISA(eBioscience)、マウスEPO特異的DuoSet ELISA発色キット(R&D))を用いて、測定された。
【0267】
図11Aに示すように、本発明の方法に供されたIVT RNAは、未精製IVT RNAと比較して、有意に少ないIFN-αを誘導した。したがって、この実施例は、本発明の方法が、IVT RNAから混入している二本鎖分子を効率的に除去することを実証する。おそらく、セルロース精製されたIVT RNAによって誘導された残留IFN-αは、ウリジンを含有するssRNAによるTLR7の活性化によるものであった。
【0268】
さらに、図11Bは、EPOをコードするIVT RNA調製物が、本発明の方法に供され、したがって、タンパク質合成阻害dsRNAを欠損し、非常に効率的に翻訳され、本発明に従って精製されたIVT RNAの投与から24時間でさえ、血漿中で高いEPOレベルを生じることを示す。対照的に、本発明の方法に供されていないが、未精製のままである、EPOをコードするIVT RNA調製物は、dsRNAの直接的及びIFN-α媒介による効果によるタンパク質合成阻害のために、より低い効率で翻訳された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
【外国語明細書】