(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058492
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20220405BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220405BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220405BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220405BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220405BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220405BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220405BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220405BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220405BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220405BHJP
C07D 403/04 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P43/00 111
A61P35/00
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/02
C07D403/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022000480
(22)【出願日】2022-01-05
(62)【分割の表示】P 2019569270の分割
【原出願日】2018-06-15
(31)【優先権主張番号】62/521,007
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517024618
【氏名又は名称】ベータ ファーマ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グレコ,マイケル,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】コスタンゾ,マイケル,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,マイケル,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ペン,ジロン
(72)【発明者】
【氏名】ワイルド,ビクトリア,リン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ドン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミド(化合物1)を含む医薬製剤、および様々な癌などの上皮成長因子受容体(EGFR)の変異型が介在する疾患または病状を治療または予防するための前記医薬製剤の使用方法を提供する。
【解決手段】下記化合物1のメタンスルホン酸塩と、薬学的に許容される1以上の賦形剤とを含む医薬製剤である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
【化1】
で表される化合物のメタンスルホン酸塩と、薬学的に許容される1以上の賦形剤と、
を含む医薬製剤。
【請求項2】
前記メタンスルホン酸塩は、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パター
ンにおいて、以下の2θ値:12.6°±0.2°、15.5°±0.2°、17.9°
±0.2°、22.1°±0.2°、および25.2°±0.2°を含むX線粉末回折パ
ターンを有する結晶形態2Aである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記結晶形態2Aは、以下の1つ以上によってさらに特徴付けられる、請求項2に記載
の医薬製剤:
(a)CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の2
θ値のうちの2つ以上をさらに含むX線粉末回折パターン:11.1°±0.2°、13
.8°±0.2°、14.7°±0.2°、16.7°±0.2°、19.3°±0.2
℃、20.9°±0.2°、23.2°±0.2°、および25.8°±0.2°;
(b)示差走査熱量測定で測定される融点の開始温度が約233.3℃、および/また
はピーク温度が約238.1℃である結晶形態;
(c)実質的に
図1に示されるX線粉末回折パターン;
(d)実質的に
図2に示されるような示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム;およ
び/または
(e)実質的に
図3に示されるような熱重量分析(TGA)サーモグラム。
【請求項4】
前記メタンスルホン酸塩は、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パター
ンにおいて、以下の2θ値:12.8°±0.2°、15.7°±0.2°、18.2°
±0.2°、20.3°±0.2°を含むX線粉末回折パターンを有する結晶形態2Bで
ある、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記結晶形態2Bは、以下の少なくとも1つによってさらに特徴付けられる、請求項1
に記載の医薬製剤:
(a)CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の1
つ以上の2θ値を含むX線粉末回折パターン:9.7°±0.2°、25.1°±0.2
°、25.6°±0.2°、および26.8°±0.2°;
(b)実質的に
図4に示されるX線粉末回折パターン;および/または
(c)実質的に
図6に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム。
【請求項6】
前記メタンスルホン酸塩は、式1で表される化合物およびメタンスルホン酸を実質的に
1:1のモル比で含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記製剤は、式1で表される化合物のメタンスルホン酸塩を約10重量%から約30重
量%含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記薬学的に許容される1以上の賦形剤は、ラクトース一水和物、無水ラクトース、ス
クロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプ
ン、微結晶性セルロース、二水和物または無水リン酸二カルシウム、リン酸カルシウム、
炭酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群より独立して選択される1つ以上の充
填剤を含み、
前記充填剤のそれぞれは、製剤の約15重量%から約50重量%を占める、請求項1~
7のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記薬学的に許容される1以上の賦形剤は、デンプン、アルファ化デンプン、ヒドロキ
シプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナ
トリウム、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、ケイ酸アルミニウム、クロス
ポビドン、およびヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される1つ以上の崩
壊剤を含み、
前記崩壊剤のそれぞれは、製剤の約1重量%から約10重量%を占める、請求項1~8
のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記薬学的に許容される1以上の賦形剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸
カルシウム、タルク(「タルカムパウダー」)、ポリエチレングリコール(「PEG」)
、エチレンオキシドのポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、
オレイン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、および二酸化ケイ素からなる群
から選択される1つ以上の潤滑剤を含み、
前記潤滑剤のそれぞれは、製剤の約1重量%から約10重量%を占める、請求項1~9
のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記薬学的に許容される1以上の賦形剤は、アカシア、メチルセルロース、カルボキシ
メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロー
ス、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、グルコース、デキストロース、キシリトー
ル、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、デンプン、トラガカン
ト、キサンタン樹脂、アルギン酸塩、マグネシウム-ケイ酸アルミニウム、ポリエチレン
グリコール(PEG)、およびベントナイトからなる群から選択される1つ以上の結合剤
を含み、
前記結合剤のそれぞれは、製剤の約5重量%から約30重量%を占める、請求項1~1
0のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
治療有効量の請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬製剤を、それを必要とする対
象に投与することを含む、EGFR活性に関連する疾患または障害を治療する方法。
【請求項13】
前記疾患または障害は、L858R活性化変異体L858R、delE746-A75
0、G719S;エクソン19欠失活性化変異体;およびT790M耐性変異体からなる
群より選択されるEGFRの1つ以上の変異体に関連する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患または障害は、脳癌、肺癌、腎臓癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、頭頸部癌、食道
癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌、リンパ
腫、甲状腺腫瘍、およびそれらの合併症からなる群から選択される癌である、請求項12
または13に記載の方法。
【請求項15】
EGFR活性に関連する疾患または障害を治療するための製剤の製造における、請求項
1~11のいずれか1項に記載の医薬製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、35 U.S.C. §109(e)の下、2017年6月16日に出願
された米国仮出願第62/521,007号の優先権を主張するものであり、その全体の
内容が本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((
4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェ
ニル)アクリルアミド、特にそのメタンスルホン酸塩の医薬製剤、および癌の治療または
予防のための製剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
上皮成長因子受容体(EGFR、Herl、ErbBl)は、Her2(Neu、Er
bB2)、Her3(ErbB3)、およびHer4(ErbB4)の他のメンバーと共
に構造的に関連する4つの細胞表面受容体のErbBファミリーのうちの主要メンバーで
ある。EGFRは、その固有の触媒性チロシンプロテインキナーゼ活性により、その主要
な細胞機能を発揮する。受容体は、上皮成長因子(EGF)やトランスフォーミング成長
因子アルファ(TGF-a)などの成長因子リガンドと結合することで活性化され、触媒
的に不活性なEGFRモノマーを触媒的に活性なホモおよびヘテロ二量体に変換する。こ
れらの触媒的に活性な二量体は、細胞内チロシンキナーゼ活性を開始し、特定のEGFR
チロシン残基の自己リン酸化を引き起こし、シグナル伝達タンパク質の下流の活性化を誘
発する。その後、シグナル伝達タンパク質は複数のシグナル伝達カスケード(MAPK、
Akt、およびJNK)を開始し、最終的に細胞の成長、増殖、運動性、および生存に不
可欠な生物学的プロセスを仲介する。
【0004】
EGFRは、多くの種類の癌細胞の表面に異常に高いレベルで見られ、EGFRのレベ
ルの増加は、進行性疾患、癌の広がり、および臨床的予後不良と関連している。EGFR
の変異は、受容体の過剰発現、永続的な活性化、または持続的な活動亢進を引き起こし、
制御されない細胞成長、つまり癌を引き起こす可能性がある。その結果、EGFR変異は
、転移性肺癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、膵臓癌など、いくつかの種類の悪性腫瘍で特定さ
れている。肺癌では、突然変異は主にキナーゼドメインのアデノシン三リン酸(ATP)
結合ポケットをエンコードするエクソン18~21で発生する。最も臨床的に重要な製剤
感受性EGFR変異は、共通アミノ酸モチーフ(LREA)を除去するエクソン19の欠
失と、位置858(L858R)のロイシンをアルギニンに置換するエクソン21の点変
異である。合わせて、これら2つの活性化変異は、肺癌で観察されるEGFR変異のほぼ
85%を占めている。両方の突然変異は、永続的なチロシンキナーゼ活性を有し、その結
果、発癌性がある。 現在の治療に最初に反応する患者の少なくとも50%において、疾
患の進行が、二次変異、EGFRのエクソン20のT790M(ゲートキーパー変異と呼
ばれる)の発生に関連している。癌治療のための新しい効果的で安定した製剤の開発が必
要とされている。
【発明の概要】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、薬学的に許容される賦形剤とともに含有される、N-(2-(2-(ジメチ
ルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-
3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミド(化合物1)、ま
たはその薬学的に許容される塩の医薬製剤、およびさまざまな癌などの上皮成長因子受容
体(EGFR)の変異型を介した疾患または病状の治療または予防のための製剤の使用方
法を提供する。
【0006】
【0007】
一態様では、本発明は、活性成分として、化合物1の遊離塩基、または好ましい実施形
態では化合物1のメシル酸塩(1・MeSO3H、化合物2)と、1以上の薬学的に許容
される賦形剤とを含む医薬製剤を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、化合物1は、形態2Aと称されるメシル酸塩の結晶形態であ
り、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の2θ値
を含むX線粉末回折パターンを有する:11.1°±0.2°、12.6°±0.2°、
13.8°±0.2°、14.7°±0.2°、15.5°±0.2°、16.7°±0
.2°、17.9°±0.2°、19.3°±0.2°、20.9°±0.2°、22.
1°±0.2°、23.2°±0.2°、25.2°±0.2°、および25.8°±0
.2°。
【0009】
いくつかの実施形態では、化合物1は、形態2Bと称されるメシル酸塩(化合物2)の
結晶形態であり、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、
以下の2θ値を含むX線粉末回折パターンを有する:9.7℃±0.2°、12.8℃±
0.2°、15.7℃±0.2℃、18.2℃±0.2℃、20.3℃±0.2°、25
.1°±0.2°、25.6°±0.2°、および26.8°±0.2°。
【0010】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、ラクトース一水和物、無
水ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、
アルファ化デンプン、微結晶セルロース、二水和物または無水リン酸二カルシウム、リン
酸カルシウム、炭酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される1つ以
上の充填剤を含み、前記充填剤のそれぞれは、製剤の約15重量%~約50重量%である
。
【0011】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、デンプン、アルファ化デ
ンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメ
チルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、ケイ酸アル
ミニウム、クロスポビドン、およびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択さ
れる1つ以上の崩壊剤を含み、前記崩壊剤のそれぞれは、製剤の約1重量%~約10重量
%である。
【0012】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、ステアリン酸マグネシウム、
ステアリン酸カルシウム、タルク(「タルカムパウダー」)、ポリエチレングリコール(
「PEG」)、エチレンオキシドのポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マ
グネシウム、オレイン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、および二酸化ケイ
素からなる群から選択される1つ以上の潤滑剤を含み、前記潤滑剤のそれぞれは、製剤の
約1重量%~約10重量%である。
【0013】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、アカシア、セルロース誘
導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメ
チルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、ゼラ
チン、グルコース、デキストロース、キシリトール、ポリメタクリレート、ポリビニルピ
ロリドン、ソルビトール、デンプン、トラガカント、キサンタン樹脂、アルギン酸塩、ケ
イ酸アルミニウムマグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)およびベントナイト
からなる群から選択される1つ以上の結合剤を含み、前記結合剤のそれぞれは、製剤の約
5重量%~約30重量%である。
【0014】
本発明の別の態様は、治療有効量の本明細書に記載の製剤を、それを必要とする対象に
投与することを含む、EGFR活性に関連する疾患または障害を治療する方法を提供する
。
【0015】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、EGFRの1つ以上の変異体に関連して
いる。いくつかの実施形態では、EGFRの1つ以上の変異体は、L858R活性化変異
体L858R、delE746-A750、G719S;エクソン19欠失活性化変異体
;およびT790M耐性変異体から選択される。いくつかの実施形態では、疾患または障
害は癌である。
【0016】
本発明の他の態様は、EGFRの1つ以上の変異体に関連する疾患または症状、特に様
々な癌の治療のための製剤の製造における、化合物1のメタンスルホン酸塩を含む医薬組
成物の使用を提供する。
【0017】
本発明の他の態様または利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲を考
慮するとよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】結晶形態2Aにおける1・MeSO
3H(化合物2)のXRPDパターンを示している。
【
図1B】結晶形態2における1・MeSO
3H(化合物2)のXRPDデータを示している。
【
図2】化合物2(形態2A)のDSCサーモグラムを示している。
【
図3】化合物2(形態2A)のTGAサーモグラムを示している。
【
図4A】結晶形態2Bにおける化合物2のXRPDパターンを示している。
【
図4B】結晶形態2Bにおける化合物2のXRPDデータを示している。
【
図5】化合物2(形態2A)のTGA-MSサーモグラムを示している。
【
図6】化合物2(形態2B)のDSCサーモグラムを示している。
【
図7】50℃での製剤1の安定性試験におけるコントロールとして化合物2のHPLCクロマトグラムの重ね合わせを示している。
【
図8】50℃での製剤1の安定性試験のHPLCクロマトグラムの重ね合わせを示している。
【
図9】相対湿度75%、40℃での製剤1の安定性試験のHPLCクロマトグラムの重ね合わせを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
化合物1は、活性化変異に加えてT790M二重変異体のキナーゼドメインを効果的に
阻害し、したがって、現在使用されている可逆的阻害剤の治療で観察された耐性を克服す
る。非小細胞肺癌(NSCLC)におけるEGFRの役割は十分に確立されているため、
化合物1は非小細胞癌の治療のための新規治療薬である。
【0020】
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物1の薬学的に許容される塩、および化合物
1またはその薬学的に許容される塩の製剤を提供する。この製剤は、望ましい薬物動態プ
ロファイルを保証するだけでなく、長期間にわたって優れた安定性を示す。
【0022】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤または担体」という用語は、それ自
体は治療薬ではない任意の物質であるが、治療薬を患者に送達するための担体、希釈剤、
アジュバント、結合剤、潤滑剤、崩壊剤および/またはビヒクルとして使用されるか、ま
たは医薬組成物に加えて、その取り扱いまたは貯蔵特性を改善するか、投与のための化合
物または医薬組成物の単位剤形への形成を可能または促進するあらゆる物質を指す。薬学
的に許容される賦形剤は、製薬分野で知られており、例えば、Remington:Th
e Science and Practice of Pharmacy、第21版(
Lippincott Williams&Wilkins、メリーランド州ボルチモア
、2005年)および医薬品添加物ハンドブック、米国医薬品協会、ワシントンDC、(
たとえば、第1、第2、第3版、1986、1994、2000年)に開示されている。
当業者に知られているように、薬学的に許容される賦形剤は、様々な機能を提供すること
ができ、湿潤剤、緩衝剤、懸濁剤、潤滑剤、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、防腐剤、界面活性
剤、着色剤、香味料および甘味料などとして説明することができる。
【0023】
本明細書で使用される「対象」または「患者」という用語は、ヒトを含むがこれに限定
されず、哺乳類を意味する。したがって、本明細書に開示される方法は、人間の治療およ
び獣医学の用途に有用であり得る。一実施形態では、患者は哺乳類である。いくつかの実
施形態では、患者はヒトである。いくつかの実施形態では、患者は犬、猫、馬などの哺乳
類である。
【0024】
本明細書で使用される冠詞「a」および「an」は、特に明記しない限り、「1つ以上
」または「少なくとも1つ」を指す。すなわち、不定冠詞「a」または「an」による本
発明の任意の要素または構成要素への言及は、複数の要素または構成要素が存在する可能
性を排除しない。
【0025】
本明細書で使用される「約」という用語は、材料量のモル比および温度の範囲などの特
定の好ましい動作範囲が固定的に決定されないことを示すために使用される。通常のスキ
ルを有する者の経験からのガイダンスが不足している場合、文脈からのガイダンスが不足
している場合、より具体的なルールが以下に列挙されていない場合、「約」の範囲は終了
点の絶対値の10%以下か、または記載されている範囲の10%以下のいずれか小さい方
でなければならない。
【0026】
「治療する」または「治療」という用語は、(i)疾患、障害、または症状を阻害する
、すなわち、その進行を停止すること、または(ii)疾患、障害、または症状を緩和す
る、すなわち、疾患、障害、および/または症状の退行を引き起こすことを意味する。し
たがって、一実施形態では、「治療する」または「治療」は、治療される対象によって識
別されないかもしれないが、1つ以上の身体的パラメータを改善することを含む疾患また
は障害を改善することを意味する。別の実施形態において、「治療する」または「治療」
とは、物理的に(例えば、認識可能な症状の安定化)または生理学的に(例えば、身体的
パラメータの安定化)またはその両方の疾患または障害を調節することを含む。
【0027】
医薬製剤
本発明の一態様は、化合物1またはその薬学的に許容される塩と、1以上の薬学的に許
容される賦形剤とを含む医薬製剤を提供する。いくつかの実施形態において、活性成分化
合物1は、製剤中において遊離塩基形態である。いくつかの実施形態において、有効成分
は、化合物1の薬学的に許容される塩である。塩を形成するのに適した酸の非限定的な例
には、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸、およびクエン酸が含まれる
。とりわけこれらの塩、およびそれぞれの結晶形態は、本出願人による国際出願番号PC
T/US2017/037872に記載されており、その全体が参照により本明細書に組
み込まれる。
【0028】
製剤中の化合物1またはその薬学的に許容される塩の量は、標的治療、投与計画、およ
び実際の賦形剤などの要因に依存する。しかし、製剤中の化合物1またはその薬学的に許
容される塩の例示的な範囲は、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約30重量
%、約15重量%~約35%、約15重量%~約30重量%、および約15重量%~約2
5重量%である。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態では、製剤中の活性成分は、化合物1のメシル酸塩(すな
わち、化合物2)である。
【0030】
【0031】
一実施形態では、本発明は、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パター
ンが以下の2θ値:12.6°±0.2°、15.5°±0.2°、17.9°±0.2
°、22.1°±0.2°、および25.2°±0.2°を含む、形態2Aと称されるメ
シル酸塩の結晶形態を含む医薬製剤を提供する。結晶形態2Aは、1つ以上の以下の特性
を有する:
(a)CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンが、以下の2θ値を2
つ以上さらに含む:11.1°±0.2°、13.8°±0.2°、14.7°±0.2
°、16.7°±0.2°、19.3°±0.2°、20.9°±0.2°、23.2°
±0.2°、および25.8°±0.2°
(b)示差走査熱量測定で測定される融点の開始温度が約233.3℃、および/または
ピーク温度が約238.1℃である;
(c)実質的に
図1に示されるX線粉末回折パターン;
(d)実質的に
図2に示される示差走査熱量測定サーモグラム;および/または
(e)実質的に
図3に示される熱重量分析サーモグラム。
【0032】
他の実施形態において、本発明は、以下の特性の1つ以上を有することを特徴とする形
態2Bと呼ばれるメシル酸塩の結晶形態を含む医薬製剤を提供する:
(a)CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンが以下の2θ値を3つ
以上含む:9.7°±0.2°、12.8°±0.2°、15.7°±0.2°、18.
2°±0.2°、20.3°±0.2°、25.1°±0.2°、25.6°±0.2°
、および26.8°±0.2°;
(b)実質的に
図4Aと
図4Bとに示されるX線粉末回折パターン;
(c)実質的に
図6に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム;および/また
は
(d)実質的に
図5に示される熱重量分析サーモグラムを有する。
【0033】
本発明の製剤は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。賦形剤の非限定的な例
には、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、pH調整剤、またはこれらの任意
の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、賦形剤は、充填剤、結合剤、崩壊剤
、および潤滑剤から選択される1つ以上を含む。製剤中の賦形剤の量は、すべての部分範
囲を含めて、で約10重量%~約98重量%の範囲である。賦形剤の量の例は、約1重量
%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約30重量%、約40重
量%、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、およ
び約95重量%である。
【0034】
適切な充填剤としては、これらに限定されないが、ラクトース一水和物、無水ラクトー
ス、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化
デンプン、セルロース(特に微結晶セルロース)、二水和物または無水リン酸二カルシウ
ム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、および硫酸カルシウムが含まれる。各充填剤は
、製剤の約15重量%~約70重量%、約15重量%~約60重量%、約15重量%~約
50重量%、約20重量%~約60重量%、または約20重量%~約50重量%を占める
。いくつかの実施形態では、充填剤は、第1の充填剤として微結晶セルロースと、一水和
物ラクトース、無水ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビト
ール、デンプン、アルファ化デンプン、二水和物または無水リン酸二カルシウム、リン酸
カルシウム、炭酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される第2の充
填剤と、を含む。
【0035】
適切な結合剤としては、これらに限定されないが、アカシア、セルロース誘導体(例え
ば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロ
ース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、ゼラチン、グル
コース、デキストロース、キシリトール、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、
ソルビトール、デンプン、トラガカント、キサンタン樹脂、アルギン酸塩、ケイ酸アルミ
ニウムマグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)、ベントナイトが含まれる。各
結合剤は、製剤の約1重量%~約50重量%、約5重量%~約50重量%、約10重量%
~約50重量%、約5重量%~約30重量%、または約5重量%~約20重量%を占める
。
【0036】
適切な崩壊剤には、これらに限定されないが、デンプン、アルファ化デンプン、ヒドロ
キシプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース
ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、ケイ酸アルミニウム、クロ
スポビドン、および低置換ヒドロキシプロピルセルロースが含まれる。各崩壊剤は、製剤
の約1重量%~約10重量%、約1重量%~約7重量%、約1重量%~約5重量%、また
は約2重量%~約4重量%を占める。いくつかの実施形態において、崩壊剤は、デンプン
、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム
、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸
塩、ケイ酸アルミニウム、クロスポビドン、および低置換ヒドロキシプロピルセルロース
から選択される1、2、3、または4つからなる。
【0037】
適切な潤滑剤としては、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステア
リン酸カルシウム、タルク(「タルカムパウダー」)、ポリエチレングリコール(「PE
G」)、エチレンオキシドのポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシ
ウム、オレイン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、二酸化ケイ素が含まれる
。各潤滑剤は、製剤の約1重量%~約10重量%、約1重量%~約7重量%、約1重量%
~約5重量%、または約2重量%~約4重量%を占める。いくつかの実施形態において、
潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク(「タルカムパ
ウダー」)、ポリエチレングリコール(「PEG」)、エチレンオキシドのポリマー、ラ
ウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、二酸
化ケイ素から選択される1、2、3、または4つからなる。いくつかの実施形態では、製
剤はラウリル硫酸ナトリウムを実質的に含まない。
【0038】
一実施形態では、製剤中の薬学的に許容される賦形剤は、微結晶セルロース、リン酸二
カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグ
ネシウムを含むことが場合によっては好ましい。
【0039】
一実施形態では、製剤中の薬学的に許容される賦形剤は、微結晶セルロース、リン酸二
カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグ
ネシウムから実質的になることが場合によっては好ましい。このタイプの製剤の特定の例
は、実施例3および表1に実質的に記載されている製剤1である。
【0040】
一実施形態では、製剤中の薬学的に許容される賦形剤は、微結晶セルロース、ラクトー
ス一水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、
およびステアリン酸マグネシウムを含むことが場合によっては好ましい。
【0041】
一実施形態では、製剤中の薬学的に許容される賦形剤は、微結晶セルロース、ラクトー
ス一水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、
およびステアリン酸マグネシウムから実質的になることが場合によっては好ましい。この
タイプの製剤の特定の例は、実施例4および表2に実質的に記載されている製剤2である
。
【0042】
本発明の剤形の例には、カプセル、錠剤、サシェ、または顆粒粉末が含まれる。単位剤
形は、例えば、約1mgから約1000mgの化合物1またはその薬学的に許容される塩
を含む。単位剤形中の化合物1またはその薬学的に許容される塩の量の非限定的な例には
、約1mg、約5mg、約7.5mg、約10mg、約25mg、約35mg、約40m
g、または約50mgが含まれる。剤形は、1つ以上の単位剤形を含んでもよい。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「メタンスルホン酸塩(methanesulfon
ic acid salt)」、「メタンスルホン酸塩(methanesulfona
te salt)」、「メシル酸塩(mesylate salt)」などは互換的に使
用される。それらは、一般式1・MeSO3H、すなわち化合物2を有する酸付加塩を意
味する。好ましくは、塩は、化合物1およびメタンスルホン酸を1:1のモル比で、また
は実質的に1:1のモル比で含む。しかし、当業者が理解するように、比率は正確に1:
1であってもなくてもよい。したがって、1:0.8から1:1.2の範囲の1とMeS
O3Hとの間の比を有するこのタイプの付加塩は、好ましくは1:0.9から1:1.1
の範囲内、より好ましくは1:0.95から1:1.05の範囲内で制御される1とMe
SO3Hとの塩とみなされるべきである。当業者が理解するように、任意の比率での化合
物1とメタンスルホン酸との共存はメシル酸塩、すなわち化合物2を形成する可能性が高
いが、比率に応じて、化合物1または酸のいずれかがそれぞれ遊離塩基または遊離酸とし
て部分的に存在してもよい。
【0044】
化合物1のメシル酸塩は、結晶形態およびそれが生成される溶媒に応じて、水(水和物
)、メタノール、THFなどのさまざまな量の溶媒分子を含む溶媒和物の形であってもよ
い。これらの塩形態または溶媒和物形態のすべては、本明細書に開示された方法を実質的
に使用して製剤化することができ、それらはすべて本発明に含まれる。
【0045】
製剤の治療的使用
他の態様において、本発明は、本明細書に開示される任意の実施形態による化合物1の
メタンスルホン酸塩を含む医薬製剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、E
GFR活性に関連する疾患または障害を治療する方法を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、EGFRの1つ以上の変異体に関連して
いる。
【0047】
いくつかの実施形態では、EGFRの1つ以上の変異体は、L858R活性化変異体L
858R、delE746-A750、G719S;エクソン19欠失活性化変異体;お
よびT790M耐性変異体から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は癌である。
【0049】
いくつかの実施形態では、癌は、脳癌、肺癌、腎臓癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、頭頸部
癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌
、リンパ腫、甲状腺腫瘍、またはそれらの合併症から選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、癌は脳癌または肺癌である。
【0051】
いくつかの実施形態では、癌は転移性脳癌である。
【0052】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際出願番号PCT/US2017/0
32066に開示されているように、化合物1は、転移性脳癌を含む脳癌の治療に使用す
ることができる。したがって、本発明の製剤は、これらの症状の患者の治療に特に有用で
ある。これらの治療用途に特に有用な製剤には、本明細書に開示されている製剤1および
製剤2が含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、疾患または障害を治療する方法の任意の実施形態は、患者へ
の第2の治療薬の投与と組み合わせて使用される。
【0054】
いくつかの実施形態では、第2の治療薬は化学療法薬である。
【0055】
いくつかの実施形態では、第2の治療薬は異なるEGFRモジュレーターである。
【0056】
他の態様において、本発明は、患者の生体試料を本明細書に開示される任意の実施形態
による製剤と接触させることを含む、対象におけるEGFRの変異体を阻害する方法を提
供する。
【0057】
他の態様において、本発明は、EGFR活性に関連する疾患または障害の治療のための
医薬品の製造における、本明細書に開示された任意の実施形態による製剤の使用を提供す
る。
【0058】
この態様のいくつかの実施形態において、疾患または障害は、脳癌、肺癌、腎臓癌、骨
癌、肝臓癌、膀胱癌、頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫
、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌、リンパ腫、甲状腺腫瘍およびそれらの合併症からなる群よ
り選択される癌である。
【0059】
この態様のいくつかの実施形態において、疾患または障害は脳癌または肺癌である。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、疾患または障害の発症を遅らせるため、ま
たは疾患、障害、および/または症状の素因があるが、まだ診断されていない対象に疾患
、障害または症状が生じるのを防ぐために使用することができる。
【0061】
本発明の他の態様は、実質的に説明および図示されているように、本明細書に開示され
ている任意の実施形態にしたがって製剤を調製する方法プロセスを提供する。
【0062】
医薬製剤は、単位用量あたり所定量の活性成分を含む単位用量形態で提供されてもよい
。典型的には、本開示の医薬製剤は、1日あたり約1~約5回、あるいは連続注入として
投与される。そのような投与は、慢性または急性療法として使用できる。単一の剤形を製
造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される状態、状
態の重篤度、投与回数、投与経路、使用された化合物の排泄率、治療期間、患者の年齢、
性別、体重、状態によって変わる。好ましい単位用量製剤は、本明細書で上記に列挙した
ように、活性成分の1日用量またはサブ用量、またはその適切な量を含むものである。一
般に、治療は化合物の最適用量よりも実質的に少ない量で開始される。その後、状況下で
最適な効果が得られるまで、投与量を少しずつ増やす。一般に、化合物は、実質的に有害
または有害な副作用を引き起こすことなく一般に効果的な結果をもたらす濃度レベルで投
与することが最も望ましい。
【0063】
本開示の製剤が化合物1またはその薬学的に許容される塩の結晶形態と、1つ以上、好
ましくは1つまたは2つの追加の治療薬または予防薬との組み合わせを含む場合、化合物
1および追加薬の両方は、単独療法レジメンで通常投与される用量の約10~150%、
より好ましくは約10~80%の用量レベルで通常存在する。
【0064】
医薬製剤は、任意の適切な経路、例えば、経口(口腔または舌下を含む)、直腸、鼻、
局所(口腔、舌下、または経皮を含む)、膣、または非経口(皮下、皮内、筋肉内、関節
内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内、静脈内、もしくは皮内注射または注入を
含む)経路で投与される。
【0065】
そのような製剤は、薬学の分野で知られている任意の方法、例えば、活性成分を担体ま
たは賦形剤と結合させることにより調製することができる。経口投与または注射による投
与が好ましい。
【0066】
経口投与に適した医薬製剤は、カプセルや錠剤;粉末または顆粒;水性または非水性液
体の溶液または懸濁液;食用フォームまたはホイップ;または水中油型液体エマルジョン
または油中水型エマルジョンなどの個別のユニットとして存在し得る。
【0067】
例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与の場合、活性薬物成分は、エタノール
、グリセロール、水などの経口の無毒の薬学的に許容される不活性担体と組み合わせるこ
とができる。粉末は、化合物を適切な微細サイズに粉砕し、例えばデンプンまたはマンニ
トールなどの食用炭水化物などの同様に粉砕された医薬担体と混合することにより調製さ
れる。香料、防腐剤、分散剤、および着色剤も存在し得る。
【0068】
カプセルは、上記のように粉末混合物を調製し、形成されたゼラチン鞘に充填すること
により作成される。コロイダルシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン
酸カルシウム、または固体ポリエチレングリコールなどの流動促進剤および潤滑剤を、充
填操作の前に粉末混合物に加えることができる。寒天、炭酸カルシウム、または炭酸ナト
リウムなどの崩壊剤または可溶化剤も添加して、カプセルを摂取するときの製剤の有効性
を改善することができる。
【0069】
錠剤は、例えば、粉末混合物の調製、造粒またはスラッギング、潤滑剤および崩壊剤の
添加、および錠剤への圧縮によって製剤化される。粉末混合物は、例えば、適切に粉砕さ
れた化合物を、上記の希釈剤または基剤、および任意で、カルボキシメチルセルロース、
アルギン酸塩、ゼラチン、もしくはポリビニルピロリドンなどの結合剤、パラフィンなど
の溶液遅延剤、四級塩などの吸収促進剤、および/またはベトナイト、カオリン、もしく
はリン酸二カルシウムなどの吸収剤などと混合することにより調製される。粉末混合物は
、シロップ、デンプンペースト、アカディア粘液、またはセルロースもしくはポリマー材
料の溶液などの結合剤で湿らせ、スクリーンに押し込むことにより造粒することができる
。造粒の代替として、粉末混合物を錠剤機に通すことができ、その結果、不完全に形成さ
れたスラグが破壊され顆粒になる。顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、ま
たは鉱油の添加により、錠剤成形金型への粘着を防ぐために潤滑化されうる。潤滑化され
た混合物は、次に錠剤に圧縮される。本開示の化合物は、自由流動性不活性担体と組み合
わせて、顆粒化またはスラッギングステップを経ることなく、直接錠剤に圧縮することも
できる。シェラックのシーリングコート、砂糖または高分子材料のコーティング、および
ワックスのつや出しコーティングからなる透明または不透明な保護コーティングが提供さ
れうる。異なる単位用量を区別するために、染料がこれらのコーティングに追加されうる
。
【0070】
適切な場合、経口投与用の投与単位製剤はマイクロカプセル化することができる。製剤
は、例えば、粒子材料をポリマー、ワックスなどにコーティングまたは埋め込むことによ
り、放出を延長または持続するように調製することもできる。
【0071】
以下の非限定的な実施例は、本発明の特定の態様をさらに説明するものである。
【実施例0072】
(実施例)
実施例1
化合物1の調製
N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メ
チル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリ
ルアミド(1)
【0073】
【0074】
【0075】
ステップ1。THF(550mL)および水(120mL)中、4-(2-(ジメチル
アミノ)エトキシ)-6-メトキシ-N-l-(4-(1-メチル-1H-インドール-
3-イル)ピリミジン-2-イル)ベンゼン-1,3ジアミンの溶液(A、国際出願番号
PCT/US15/65286のように調製した;1当量、16.8g、26.2mmo
lモル)を0~5℃に冷却した。塩化アクリロイル(1.0当量、3.3mL)を30分
かけて滴下した。2時間後、追加の塩化アクリロイル(0.4mL)を10分間かけて加
え、混合物を1時間撹拌した。NaOH(2当量、2.8g、68.0mmol)を加え
、混合物を30分間撹拌し、次いで部分的に濃縮してTHFを除去した。水相をジクロロ
メタン(900mL)で抽出し、有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。粗生成物を
カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ジクロロメタン/MeOH、80:1~20:
1勾配)で精製して化合物1(14.0g)を得て、必要に応じてステップ2にしたがっ
てさらに精製した。
【0076】
ステップ2。850mLのTHF中のステップ1のように調製した化合物1(1当量、
22.5g、46.3mmol)の溶液に、NaOH(203mLのH2Oに9g溶解)
を5分かけて加えた。混合物を攪拌しながら50分間60℃に加熱し、その後10~20
℃に冷却し、1N HCl(180mL)を20分かけて添加した。層を分離し、水相を
ジクロロメタン(2×400mL)で抽出した。有機相を合わせて、乾燥させ(Na2S
O4)、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ジクロロメタン
/MeOH 20:1)で精製して固体を得て、これをジクロロメタン/ヘプタン(2:
3)に溶解し、濃縮して、19.5gの化合物1を結晶性固体として得た。
【0077】
1H NMR(400MHz,CD3OD) δppm 2.42(s,6H)、2.
80(br t,J=5.0Hz,2H)、3.98(s,3H)、3.92(s,3H
)、4.21(br t,J=5.0Hz,2H)、5.79(dd,J=10.2,1
.4Hz,1H)、6.39(dd,J=16.9,1.4Hz,1H)、6.64(d
d,J=16.9,10.2Hz,1H)、6.83(s,1H)、7.15-7.30
(m,3H)、7.46(d,J=7.6Hz,1H)、8.16-8.30(m,2H
)、8.52(s,1H)、9.29(s,1H)。
【0078】
実施例2
メタンスルホン酸塩の調製(化合物2、結晶形2Aおよび2B)
N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メ
チル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリ
ルアミドメタンスルホネート(1:1)(2)
【0079】
【0080】
4mLのTHF中の100mgの化合物1(遊離塩基)の溶液に、0.164mLの水
中の21.7mgのメタンスルホン酸の溶液を加え、溶液を室温で一晩撹拌した。800
0rpmで5分間の遠心分離により沈殿物を単離した。真空下、30℃で一晩乾燥させた
後、60mgのメタンスルホン酸塩、結晶形態2Aを得た。
【0081】
1H NMR (400MHz,CD3OD) δppm 2.73(s,3H)、3
.06(s,6H)、3.65-3.72(m,2H)、3.94(s,3H)、4.0
0(s,3H)、4.54-4.60(m,2H)、5.86(br d,J=10.0
Hz,1H)、6.40-6.48(m 1H)、6.56-6.66(m,1H)、6
.98(s,1H)、7.20-7.34(m,3H)、7.50(d,J=8.0Hz
,1H)、8.11(br d,J=6.0Hz,1H)、8.35(br d,J=7
.8Hz,1H)、8.42(s,1H)、8.50(br s,1H).
Anal. Calcd. for C28H34N6O6S:C,57.72;H,
5.88;N,14.42;O,16.47;S,5.50.
Found:C,57.76;H,5.85;N,14.45;O,16.34;S,
5.60;C27H30N6O3・1.0CH3SO3H。
【0082】
形態2Aはベージュ色の結晶性粉末である;そして、そのXRPDパターンは
図1に示
される。複屈折を示し、示差走査熱量測定(DSC)分析において、融点より前に-0.
40%の重量損失を有し、かつ融点の開始温度が233.3℃である融点と(
図2)、重
量損失熱重量分析(TGA)において170℃から210℃で-0.035%の重量損失
(
図3)とを示している。
【0083】
多形スクリーニング研究は、スラリー、溶媒-熱加熱/冷却、逆溶媒沈殿、固体加熱-
冷却、および粉砕方法により、形態2Aで実施された。室温で逆溶剤としてジオキサンを
使用して水溶液から沈殿させることにより、1つの新しい結晶形態、形態2Bが得られた
。形態2Bは、形態2Aの水和物形態であってもよく、形態2Aと比較して、より低い結
晶化度、より低い融点およびより高い重量損失を示す。形態2BのXRPD、TGA-M
S、およびDSC分析が
図4,5および6にそれぞれ示されている。その明白な優れた安
定性のために、限定することを意図するものではないが、結晶形態2Aは、この出願では
メタンスルホン酸塩(化合物2)の製剤を調製するために使用されている。
【0084】
実施例3
メタンスルホン酸塩の製剤1の調製(2)
微結晶セルロース(392.43mg)、リン酸二カルシウム(735.35mg)、
デンプングリコール酸ナトリウム(45.09mg)、二酸化ケイ素(15.03mg)
、およびステアリン酸マグネシウム(15.03mg)を組み合わせて、表1に示された
量および割合で、ボルテックスミキサーでブレンドした。得られた混合物を#35メッシ
ュふるいを通して濾過して、混合物Aを得た。混合物Aの20.05mg部分を結晶形態
2Aの5.0mgの1・Ms(C27H30N6O3・1.06CH3SO3H、純度=
100%)と合わせ40mLガラスバイアルに入れ、ボルテックスミキサーで完全にブレ
ンドして、表1で計算された理論的組成を持つ製剤1を得た。
【0085】
すべてのサンプルは、-20℃、50℃、40℃/75%相対湿度の温度で2週間およ
び4週間、安定性チャンバー内で保管し、安定性を分析した。閉じた皿のサンプルに蓋を
して、パラフィルムで密封した。開いた皿のサンプルは、ピンホールが開けられたアルミ
ホイルで覆った。
【0086】
【0087】
実施例4
メタンスルホン酸塩の製剤2の調製(2)
上記と実質的に同様の手順により化合物2の製剤2を調製し、分析した。微結晶セルロ
ース(545.23mg)、ラクトース一水和物(495.71mg)、ラウリル硫酸ナ
トリウム(7.51mg)、クロスカルメロースナトリウム(42.58mg)、二酸化
ケイ素(14.19mg)、およびステアリン酸マグネシウム(14.19mg)を組み
合わせて、表1に示す量と割合で、ボルテックスミキサーでブレンドした。この実施例で
は、結晶形態2Aをすべてのサンプルの調製に使用した。得られた混合物を#35メッシ
ュふるいを通して濾過して混合物Bを得た。混合物Bの18.65mg部分を、結晶形2
Aの5.0mLの1・Ms(C27H30N6O3・1.06CH3SO3H、純度=1
00%)と合わせ40mLガラスバイアルに入れ、ボルテックスミキサーで完全にブレン
ドして、表2で計算した理論組成を持つ製剤1を得た。すべてのサンプルは、-20℃、
50℃、40℃/75%相対湿度の温度で2週間および4週間、安定性チャンバー内に保
管し、安定性を分析した。
【0088】
【0089】
実施例5
メタンスルホン酸塩の製剤1の安定性試験
室温に達した後、各サンプルを10mLの希釈液(H
2O:MeCN=1:1v/v中
の0.05%TFA)を含む40mLサンプルバイアルに加え、時々振とうしながら10
分間超音波処理した。すべてのサンプルを14,000rpmで10分間遠心分離し、上
清をHPLCで分析した。作業標準溶液(10mLの希釈液中に5mgの1・Ms)を参
照として使用した。製剤1の結果を表3に示す。表3では、純度は全関連物質(TRS)
に対するパーセント(%)として測定されている。表1と
図7~9に示すように、製剤1
は長期間安定だった。製剤中の化合物1の劣化は、50℃または40℃/75%相対湿度
で4週間観察されなかった。
【0090】
【0091】
当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく多数の様々な修正を行うことがで
きることを理解するであろう。したがって、本明細書に記載の本発明の様々な実施例およ
び実施形態は例示にすぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを
理解されたい。
前記メタンスルホン酸塩は、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の2θ値:12.6°±0.2°、15.5°±0.2°、17.9°±0.2°、22.1°±0.2°、および25.2°±0.2°を含むX線粉末回折パターンを有する結晶形態2Aである、請求項1に記載の医薬製剤。
前記メタンスルホン酸塩は、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の2θ値:12.8°±0.2°、15.7°±0.2°、18.2°±0.2°、20.3°±0.2°を含むX線粉末回折パターンを有する結晶形態2Bである、請求項1に記載の医薬製剤。