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特開2022-58506ポリアミドMXD.10から製造される組成物
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  • 特開-ポリアミドMXD.10から製造される組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058506
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】ポリアミドMXD.10から製造される組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20220405BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220405BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20220405BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220405BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20220405BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K3/04 ZNM
C08K7/06
C08J5/18 CFG
C08J3/22
C08J5/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000843
(22)【出願日】2022-01-06
(62)【分割の表示】P 2020036703の分割
【原出願日】2014-06-02
(31)【優先権主張番号】1355539
(32)【優先日】2013-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・ブリュル
(72)【発明者】
【氏名】オード・シクオ
(72)【発明者】
【氏名】ナディーヌ・ディクラエメール
(72)【発明者】
【氏名】イブ・デライユ
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・ジャンコラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】結晶性材料の機械的特性および寸法安定特性を保ちながら結晶化が加速された、ポリアミド、特にMXD.10を含む組成物を提供する。
【解決手段】第1のポリアミド、第1のポリアミドとは異なる第2のポリアミドおよび0.1から5重量%の炭素系ナノ充填剤を含む組成物であって、第1のポリアミドが、メタ-キシリレンジアミンとセバシン酸との縮合に由来するまたはメタ-キシリレンジアミンおよびパラ-キシリレンジアミンのセバシン酸との混合物に由来する単位を含み、第1のポリアミドが融点Tfを呈し;第2のポリアミドが、Tf1-40℃以上の融点Tf2を呈する、組成物に関する。本発明は、この組成物を製造するための方法および様々な品目を製造するための組成物の使用も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリアミド、第1のポリアミドとは異なる第2のポリアミドおよび0.1から1.5重量%の炭素系ナノ充填剤を含む組成物であって、
・第1のポリアミドが、メタ-キシリレンジアミンとセバシン酸との縮合またはメタ-キシリレンジアミンおよびパラ-キシリレンジアミンの混合物とセバシン酸との縮合から生じる単位を含み、第1のポリアミドが融点Tfを呈し;
・第2のポリアミドが融点Tfを呈し、Tf-40℃≦Tf<Tf+20℃であり、
炭素系ナノ充填剤がカーボンナノチューブであり、第2のポリアミドが、第1のポリアミドおよび第2のポリアミドの合計に対して、0.1から20重量%の割合で存在する、
組成物。
【請求項2】
第2のポリアミドが融点Tfを呈し、Tfが、Tf-30℃≦Tf≦Tf+10℃である;または第2のポリアミドがポリウンデカンアミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第2のポリアミドが、第1のポリアミドおよび第2のポリアミドの合計に対して、1から10重量%の割合で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
第1のポリアミドがホモポリアミドまたはコポリアミドであり、コポリアミド中におけるメタ-キシリレンジアミンとセバシン酸との縮合またはメタ-キシリレンジアミンおよびパラ-キシリレンジアミンの混合物とセバシン酸との縮合から生じる単位のモル割合が、90%以上である、請求項1から3の一項に記載の組成物。
【請求項5】
強化剤を更に含み、組成物中における強化剤の重量割合が、70%以下である、請求項1から4の一項に記載の組成物。
【請求項6】
規格ASTM D257に従って決定して、1010Ω/sq以上の表面抵抗率を呈する、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項7】
第1のポリアミドおよび第1のポリアミドとは異なる第2のポリアミドを含む組成物の結晶化のための核剤としての、炭素系ナノ充填剤の使用であって、
・第1のポリアミドが、メタ-キシリレンジアミンとセバシン酸との縮合またはメタ-キシリレンジアミンおよびパラ-キシリレンジアミンの混合物とセバシン酸との縮合から生じる単位を含み、第1のポリアミドが融点Tfを呈し;
・第2のポリアミドが、Tf-40℃以上の融点Tfを呈し、
炭素系ナノ充填剤がカーボンナノチューブであり、第2のポリアミドが、第1のポリアミドおよび第2のポリアミドの合計に対して、0.1から20重量%の割合で存在する、
使用。
【請求項8】
請求項1から7の一項に記載の組成物の調製のための方法であって、第2のポリアミドおよび炭素系ナノ充填剤を含むマスターバッチを用意すること、次いでマスターバッチを第1のポリアミドと溶融ブレンドすることを含む、方法。
【請求項9】
第2のポリアミドを炭素系ナノ充填剤と溶融ブレンドすることによる、マスターバッチの製造の予備段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から7の一項に記載の組成物の調製のための方法であって、第1のポリアミドを、第2のコポリアミドおよび炭素系ナノ充填剤と同時に溶融ブレンドすることを含む、方法。
【請求項11】
請求項8から10の一項に記載の方法であって、組成物の冷却および結晶化を含む、方法。
【請求項12】
単層構造を、または多層構造のうちの少なくとも1層を形成するための、請求項1から7の一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
構造が、繊維、フィルム、管、中空体または射出成形部品の形態である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
物体の製造のための方法であって、請求項1から7の一項に記載の組成物を射出成形する段階を含む、方法。
【請求項15】
請求項1から7の一項に記載の組成物から製造された物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドに基づく組成物、特にポリアミドMXD.10からの組成物、その調製方法、その成形方法およびその使用、特に様々な物体の製造、例えば標準の消費財、例えば電気的機器、電子的機器または自動車機器、医療および手術機器、包装またはスポーツ用品の製造における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在までに知られているポリアミドの中で、いくつかは、その注目すべき機械的特性の結果として、特に高い引張および曲げ弾性率のために、大きな利点を呈する。
【0003】
特に、ポリフタルアミド(PPA)を挙げることができ、このポリフタルアミドは半芳香族ポリアミドであり、ほぼ3GPa程度の高い引張弾性率を呈する。ポリアミドMXD.6、すなわちMXDおよびアジピン酸の縮合生成物の場合も同様であり、ここでMXDは、メタ-キシリレンジアミン(場合によって少量のパラ-キシリレンジアミンまたはPXDと混合される)を示す。
【0004】
PPAおよびMXD.6は、機械的特性(特に高い引張弾性率)に関して非常に申し分ないが、ただし下記の2つの大きな不利益を呈する。
【0005】
・第1に、高い融点の点から見て、PPAおよびMXD.6は高い変換温度(典型的には280℃を超える)を呈する。高い変換温度における使用は、エネルギー集約的であることに加えて、PPAまたはMXD.6に基づく組成物に、当該温度において分解するある一定の強化剤および/または添加剤を導入することを制限する。
【0006】
・第2に、ガラス転移温度(Tg)が同じく高いことおよび結晶化の速度が遅いことの結果として、PPAまたはMXD.6に基づく材料の成形は、比較的高い金型温度、典型的には、ほぼ120℃から130℃(Tgを30から40℃超える)程度における作業を必要とする。これは、結晶化を最大として、最適な機械的特性および寸法安定特性を材料に付与するためである。
【0007】
より詳細には、PPAまたはMXD.6に基づく材料を射出成形により成形する際、油を熱交換流体として使用しながら金型を使用する必要があり、当該金型は、水を熱交換流体として使用する金型よりも、使用が限定的であり、成形機には普及していない。
【0008】
MXD.6に基づく組成物の結晶化を最適化するために、雑誌Polymer Engineering and Science、2007年、365-373頁に掲載された、Effect of Nucleating Additives on Crystallization of Poly(m-xylylene adipamide)と題された論文は、核剤、適例においてはタルクおよびPA 6.6の導入を提供しており、その融点はほぼ250℃程度である。
【0009】
ポリアミドMXD.10、すなわちMXDおよびセバシン酸(デカン二酸)の縮合生成物も、良好な機械的特性、特に、高い引張弾性率を呈する。
【0010】
MXD.10は、PPAまたはMXD.6よりも低い融点(おおよそ193℃)を呈するので、MXD.10の変換温度は200℃から270℃の間、より一般的に210℃から260℃の間であり、これはPPAおよびMXD.6の変換温度より低いため、エネルギー消費が制限される。更に、PPAおよびMXD.6の変換温度において分解する、ある一定の強化剤および/または添加剤を含むMXD.10に基づく組成物を想定することが可能である。
【0011】
更に、MXD.10の密度は、PPAまたはMXD.6に関して一般に観測される密度よりも低い。したがって、MXD.10に基づく組成物から得られる物体は、PPAまたはMXD.6に基づく組成物から得られる物体と比較して、より軽いという利点を呈する。
【0012】
一方、PPAまたはMXD.6の場合のように、射出成形により成形する際、高い金型温度(典型的には、ほぼ120℃程度)が必要である。これは、製品の結晶化を最大として、最適な機械的特性および寸法安定特性を付与するためである。
【0013】
MXD.10に基づく組成物の成形条件を改善するために、特に、射出成形により成形する際の冷却段階の持続時間を短縮することによって成形条件を改善するために、文献EP 0272503は、100重量部のポリアミドMXD.10を含む組成物に、融点がMXD.10よりもおおよそ20から30℃高い結晶性ポリアミドを1から20重量部添加することを提供している。
【0014】
したがって、結晶性ポリアミドは、他の任意の無機充填剤型の核剤、例えば上述のタルクが存在しない場合、核剤として挙動する。
【0015】
文献EP 0272503において、最良の成形条件、特に急速サイクルは、金型温度130℃において得られる。
【0016】
更に、文献WO 2011/010039は、融点がTfであるMXD.10型のポリアミドに基づく組成物を記載しており、この組成物は、融点がTfである第2のポリアミドを含み、TfはTf-40℃からTf+20℃の間である。この第2のポリアミドは、核剤として機能する。これは、組成物の結晶化を制御することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第0272503号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/010039号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】「Effect of Nucleating Additives on Crystallization of Poly(m-xylylene adipamide)」、Polymer Engineering and Science、2007年、365-373頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、ポリアミド、特にMXD.10またはこれに類するものに基づく組成物について、結晶性材料の機械的特性および寸法安定特性を保ちながら、結晶化の加速に成功する要求が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、第1に、第1のポリアミド、第2のポリアミドおよび0.1から5重量%の炭素系ナノ充填剤を含む組成物であって、
・第1のポリアミドが、メタ-キシリレンジアミンとセバシン酸との縮合またはメタ-キシリレンジアミンおよびパラ-キシリレンジアミンの混合物とセバシン酸との縮合から生じる単位を含み、第1のポリアミドが融点Tfを呈し;
・第2のポリアミドが、Tf-40℃以上の融点Tfを呈する、
組成物に関する。
【0021】
一実施形態によると、炭素系ナノ充填剤は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、グラフェンおよびこれらの混合物から選択され、好ましくは炭素系ナノ充填剤がカーボンナノチューブである。
【0022】
一実施形態によると、組成物は、0.2から2重量%の炭素系ナノ充填剤、好ましくは0.5から1.5重量%の炭素系ナノ充填剤を含む。
【0023】
一実施形態によると、第2のポリアミドは融点Tfを呈し、Tfは、Tf-40℃≦Tf<Tf+60℃、好ましくはTf-40℃≦Tf<Tf+20℃、より特定すると好ましくはTf-30℃≦Tf≦Tf+10℃である;または第2のポリアミドはポリウンデカンアミドである。
【0024】
一実施形態によると、第2のポリアミドは、第1のポリアミドおよび第2のポリアミドの合計に対して、0.1から20重量%、好ましくは1から10重量%の割合で存在する。
【0025】
一実施形態によると、第1のポリアミドはホモポリアミドまたはコポリアミドであり、コポリアミド中におけるメタ-キシリレンジアミンとセバシン酸との縮合またはメタ-キシリレンジアミンおよびパラ-キシリレンジアミンの混合物とセバシン酸との縮合から生じる単位のモル割合は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
【0026】
一実施形態によると、組成物は、強化剤、有利には繊維、好ましくはガラス繊維および/または炭素繊維を更に含み、組成物中における強化剤の重量割合は、好ましくは70%以下、有利には15から65%、より好ましくは20から60%である。
【0027】
一実施形態によると、組成物は、規格ASTM D257に従って決定して、1010Ω/sq以上、好ましくは1012Ω/sq以上の表面抵抗率を呈する。
【0028】
本発明は、第1のポリアミドおよび第2のポリアミドを含む組成物の結晶化のための核剤としての、炭素系ナノ充填剤の使用であって、
・第1のポリアミドが、メタ-キシリレンジアミンとセバシン酸との縮合またはメタ-キシリレンジアミンおよびパラ-キシリレンジアミンの混合物とセバシン酸との縮合から生じる単位を含み、第1のポリアミドが融点Tfを呈し;
・第2のポリアミドが、Tf-40℃以上の融点Tfを呈する、
使用にも関する。
【0029】
一実施形態によると、炭素系ナノ充填剤は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、グラフェンおよびこれらの混合物から選択され、好ましくは炭素系ナノ充填剤がカーボンナノチューブである。
【0030】
一実施形態によると、炭素系ナノ充填剤は、全組成物に対して、0.2から2重量%、好ましくは0.5から1.5重量%の含有量で使用される。
【0031】
一実施形態によると、第2のポリアミドは融点Tfを呈し、Tfは、Tf-40℃≦Tf<Tf+60℃、好ましくはTf-40℃≦Tf<Tf+20℃、より特定すると好ましくはTf-30℃≦Tf≦Tf+10℃である;または第2のポリアミドはポリウンデカンアミドである。
【0032】
一実施形態によると、第2のポリアミドは、第1のポリアミドおよび第2のポリアミドの合計に対して、0.1から20重量%、好ましくは1から10重量%の割合で存在する。
【0033】
一実施形態によると、第1のポリアミドはホモポリアミドまたはコポリアミドであり、コポリアミド中におけるメタ-キシリレンジアミンとセバシン酸との縮合またはメタ-キシリレンジアミンおよびパラ-キシリレンジアミンの混合物とセバシン酸との縮合から生じる単位のモル割合は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
【0034】
一実施形態によると、組成物は、強化剤、有利には繊維、好ましくはガラス繊維および/または炭素繊維を更に含み、組成物中における強化剤の重量割合は、好ましくは70%以下、有利には15から65%、より好ましくは20から60%である。
【0035】
一実施形態によると、炭素系ナノ充填剤は炭素系ナノ充填剤の粉末の形態で使用される、または炭素系ナノ充填剤は第2のポリアミドのマスターバッチ中に組込まれた形態で使用される。
【0036】
本発明は、上記の組成物の調製のための方法であって、第2のポリアミドおよび炭素系ナノ充填剤を含むマスターバッチを用意すること、次いでマスターバッチを第1のポリアミドおよび適切な場合には強化剤と、溶融ブレンド、好ましくは配合することを含む、方法にも関する。
【0037】
一実施形態によると、この方法は、第2のポリアミドを炭素系ナノ充填剤と溶融ブレンド、好ましくは配合することによる、マスターバッチの製造の予備段階を含む。
【0038】
一実施形態によると、この方法は、第1のポリアミドを、第2のコポリアミドならびに炭素系ナノ充填剤および適切な場合には強化剤と、同時に溶融ブレンド、好ましくは配合することを含む。
【0039】
一実施形態によると、組成物は顆粒の形態で回収される。
【0040】
本発明は、単層構造を、または多層構造のうちの少なくとも1層を形成するための、上記の組成物の使用にも関する。
【0041】
一実施形態によると、構造は、繊維、フィルム、管、中空体または射出成形部品の形態である。
【0042】
本発明は、上記の組成物を射出成形する段階を含む、物体の製造のための方法にも関する。
【0043】
本発明は、上記の組成物から、好ましくは射出成形により製造された物体にも関する。
【0044】
一実施形態によると、物体は、輸送、特に自動車、バス、トラック、電車、船もしくは航空機のための機械部品、建設業界用品、家庭用品、電気用品、電子用品、医療用品またはスポーツ用品、特にスキー用品である。
【0045】
本発明は、最新技術の不利益を克服することを可能にする。本発明はより特定すると、ポリアミドMXD.10またはMXD.10単位を含むコポリアミドに基づく組成物であって、結晶性材料の機械的特性および寸法安定特性を保ちながら、最新技術よりも結晶化の加速を呈し、特に文献WO 2011/010039よりも結晶化の加速を呈する、組成物を提供する。
【0046】
本発明はまた、従来の核剤、例えばタルクの使用に対する結晶化の加速も提供する。
【0047】
結晶化の加速は、射出サイクル時間の減少および生産性の増大を可能にする。
【0048】
これは、第2の半結晶性ポリアミドに加え、炭素系ナノ充填剤を核剤として使用することにより達成され、この第2の半結晶性ポリアミドは、第1のポリアミドに近い融点を呈する。前記第2のポリアミドも、炭素系ナノ充填剤と共同で、核剤として機能する。
【0049】
本発明による組成物は、優れた機械的特性、特にほぼ3GPa程度の引張弾性率を付与された材料または物体を得ることを可能にし、この組成物は更に、同時に下記の特性を呈する。
【0050】
・ほぼポリアミドMXD.10の変換温度程度の変換温度、すなわち、有利には210℃から260℃の間の変換温度(したがってPPAおよびMXD.6の変換温度よりも低く、PPAまたはMXD.6の変換温度において分解する強化剤および/または添加剤の導入と両立できる);
・金型温度、特に射出成形プロセスにより成形するための金型温度であって、水を熱交換流体として使用することと両立でき、したがって典型的には100℃未満、好ましくは90℃未満の金型温度。
【0051】
第2のポリアミドおよび炭素系ナノ充填剤の両方の存在は、ポリアミドMXD.10に基づく組成物の結晶化の効果的な制御を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、本発明による2つの組成物(B、C)および参照組成物(A)についての示差走査熱分析測定を示すグラフである。以下の実施例を参照のこと。温度を℃で横軸にとり、熱流をmW/mgで縦軸にとる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、ここからより詳細にかつ、限定をすることなく、下記の説明において記載される。
【0054】
ポリアミド
本発明による組成物の第1のポリアミドは、式MXD.10のホモポリアミドまたは一般式MXD.10/Zに相当するコポリアミド、すなわち、MXD.10単位および他の単位Zを含むコポリアミドである(コポリアミドは、他の(繰り返し)単位Zを1つだけ含み得るまたは、いくつかの場合には、2種以上の他の異なる単位Zを含み得ると理解される)。
【0055】
単位Z(または各単位Z)は特に、アミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位またはCジアミンおよびC二酸の縮合に相当する単位であってもよく、aはジアミンの炭素の数を表し、bは二酸の炭素の数を表す。
【0056】
ホモポリアミドは、メタ-キシリレンジアミン(MXDもしくは1,3-キシリレンジアミンとしても知られる)とセバシン酸との重縮合またはMXDおよびパラ-キシリレンジアミン(PXDもしくは1,4-キシリレンジアミンとしても知られる)の混合物であって、MXDが混合物中で主である混合物とセバシン酸との重縮合から生じ、このセバシン酸は直鎖脂肪族のC10二酸である。
【0057】
コポリアミドは、下記:
・MXD、またはMXDおよびPXDの混合物であって、MXDが混合物中で主である混合物、
・直鎖脂肪族のC10二酸であるセバシン酸、ならびに
・少なくとも1種のα,ω-アミノカルボン酸、ラクタムまたはCジアミンおよびC二酸
の重縮合から生じる。
【0058】
MXD.10/Zコポリアミド中の単位Zのモル割合は、例えば、0.1から10%、有利には0.5から5%であり得る。
【0059】
単位Zがα,ω-アミノカルボン酸の縮合の残基を表す場合、α,ω-アミノカルボン酸は、例えば、9-アミノノナン酸(Z=9)、10-アミノデカン酸(Z=10)、12-アミノドデカン酸(Z=12)ならびに11-アミノウンデカン酸(Z=11)およびこの誘導体、特にN-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸から選択され得る。
【0060】
単位Zがラクタムの縮合の残基を表す場合、ラクタムは特に、カプロラクタム(Z=6)およびラウリルラクタム(Z=12)から選択され得る。
【0061】
単位ZがCジアミンおよびC二酸の縮合の残基を表す場合、Cジアミンは、直鎖もしくは分枝状の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンまたは芳香族ジアミンであり得る。C二酸は、直鎖もしくは分枝状の脂肪族ジカルボン酸、脂環式の二酸または芳香族の二酸であり得る。
【0062】
aはCジアミンの炭素の数を表し、bはCジカルボン酸の炭素の数を表すことが規定される。aおよびbはそれぞれ、好ましくは6から36の値を有する。
【0063】
本発明による組成物は、上記で定義された第1のポリアミドを1つだけ含んでもよいまたは場合によって、上記で定義されたいくつかの第1のポリアミドを含んでもよい。
【0064】
第2のポリアミドは、第1のポリアミドとは異なるポリアミドである。
【0065】
第2のポリアミドは、融点Tfを呈し、TfはTf-40℃以上(好ましくはTf+60℃未満)であり、ここでTfは第1のポリアミドの融点である。
【0066】
融点は、規格ISO 11357-3に従って決定される。
【0067】
第2のポリアミドは半結晶性ポリアミドであり、融点のない非晶質ポリアミドとは対照的である。
【0068】
本発明の有利な変型によると、融点Tfは、Tf-40℃≦Tf<Tf+20℃;好ましくはTf-30℃≦Tf≦Tf+10℃である。
【0069】
本発明の有利な変型においては、この第2のポリアミドは、PA 11(ポリウンデカンアミド)、PA 12(ポリラウロアミド)、PA 10.10(ポリデカメチレンセバカミド)、PA 10.12(ポリデカメチレンドデカンジアミド)、PA 6(ポリカプロラクタム)、PA 6.10(ポリヘキサメチレンセバカミド)、PA 6.12(ポリヘキサメチレンドデカンジアミド)、PA 6.14(ポリヘキサメチレンテトラデカンジアミド)およびPA 10.14(ポリデカメチレンテトラデカンジアミド)から選択される。PA 11、PA 12、PA 10.10およびPA 10.12は、比較的低い融点(Tf+20℃未満)を呈し、結晶化が改善されるため、好ましい。PA 11が特に好ましい。
【0070】
上記で定義された2種以上の第2のポリアミドの使用を想定することも可能である。
【0071】
本発明による組成物は、第1のポリアミドおよび第2のポリアミドの合計重量に対して、前記第2のポリアミドを、重量割合0.1から20%、有利には1から10%で含む。
【0072】
第1のポリアミドおよび/または第2のポリアミドは、全部または一部において、バイオベースであり得る、すなわち、バイオマスから生じる有機炭素であって、規格ASTM D6866に従って決定される有機炭素を含み得る。このような仮定の下において、本発明による組成物は、それ自体が部分的にバイオベースであり、化石出発材料から生じるポリアミド、例えばPPAおよびMXD.6に基づくポリアミドに基づく組成物に対して、利点を呈すると考えることができる。
【0073】
特に、単位MXD.10のセバシン酸および/または単位Zはバイオベースであり得る。同様に、第2のポリアミドはバイオベースであってもよく、第2のポリアミドがPA11、ヒマシ油に由来するポリアミドである特定の場合がある。
【0074】
炭素系ナノ充填剤
炭素系ナノ充填剤は、本発明によると、ポリアミド組成物の結晶化のための核剤として使用される。
【0075】
「炭素系ナノ充填剤」は、主として炭素からなる充填剤であって、少なくとも1つの寸法(最小寸法)100nm以下、好ましくは50nm以下、より特定すると好ましくは20nm以下を呈する充填剤を意味すると理解される。
【0076】
好ましくは、炭素系ナノ充填剤の最小寸法は、0.4nm以上、好ましくは1nm以上である。
【0077】
炭素系ナノ充填剤は特に、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、グラフェンまたはこれらの混合物であり得る。好ましくは、炭素系ナノ充填剤は異方性ナノ充填剤であり、したがって特に、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンまたはこれらの混合物である。特に好ましくは、炭素系ナノ充填剤はカーボンナノチューブである。
【0078】
カーボンナノチューブは、中空の管状構造であり、長手方向軸線の周りに配置されたグラファイト面または長手方向軸線の周りに同心円状に配置されたいくつかのグラファイト面(もしくはシート)を含む。
【0079】
カーボンナノチューブは、単層、2層または多層型のものであり得る。2層ナノチューブは特に、Flahautら、Chem.Comm.(2003)、1442頁に記載された通り調製できる。多層ナノチューブは、文献WO 03/02456に記載された通り調製できる。
【0080】
カーボンナノチューブは一般に、平均直径(長手方向軸線に垂直であり、平均値は長手方向軸線に沿った線形平均(linear mean)およびナノチューブのアセンブリにおける統計平均(statistical mean)である)が、0.4から100nmの範囲、好ましくは1から50nmの範囲、更に良いのは2から30nmの範囲、更には10から15nmの範囲であり、有利には長さが0.1から10μmである。長さ/直径の比率は、好ましくは10を超え、最も多くの場合、100を超える。これらの値は、ポリマーマトリックスへの導入前のカーボンナノチューブについて意味される。これは、ポリマーマトリックスへの混和時に、ナノチューブは砕ける傾向があるため、最終組成物において、減少した長さを呈する傾向があるからである(例えば、長さ/直径の比率が5から10)。
【0081】
比表面は、例えば、100から300m/g、有利には200から300m/gの値を有し、バルク密度は特に、0.05から0.5g/cm、より好ましくは0.1から0.2g/cmの値を有し得る。多層ナノチューブは、例えば、5から15シート(または層)、より好ましくは7から10シートを含み得る。これらのナノチューブは、処理されていてもそうでなくてもよい。
【0082】
カーボンナノチューブの寸法、特に平均直径は、透過型電子顕微鏡法により決定できる。
【0083】
粗製カーボンナノチューブの例は、特に、Arkema社から商品名Graphistrength(登録商標)C100として販売されている。
【0084】
これらのカーボンナノチューブは、本発明の状況において用いられる前に、精製および/または処理(例えば酸化)および/または粉砕および/または官能化され得る。
【0085】
カーボンナノチューブの粉砕は、特に、低温条件または高温条件下で実施でき、機器、例えばボール、ハンマー、エッジランナー、ナイフもしくはガスジェットミルまたは絡み合ったナノチューブのネットワークのサイズを減少できる任意の他の粉砕システムにおいて用いられる公知の技術により実施できる。この粉砕段階は、ガスジェット粉砕技術によって、特にエアジェットミル内で実施されることが好ましい。
【0086】
粗製または粉砕カーボンナノチューブは、硫酸溶液を使用して洗浄することによって精製して、それらの調製プロセスに由来する、残留する可能性がある残留無機不純物および金属不純物、例えば鉄を除去することができる。ナノチューブ対硫酸の重量比は、特に1:2から1:3の値を有し得る。精製作業は更に、90℃から120℃の範囲の温度で、例えば5から10時間の間実施され得る。この作業の後、有利には、精製されたカーボンナノチューブを水ですすぎ、乾燥させる段階を行うことができる。代替の形態において、カーボンナノチューブは、典型的には1000℃を超える高温熱処理により精製され得る。
【0087】
カーボンナノチューブの酸化は、有利には、カーボンナノチューブを次亜塩素酸ナトリウム溶液と接触させることにより実施され、この次亜塩素酸ナトリウム溶液は、0.5重量%から15重量%のNaOCl、好ましくは1重量%から10重量%のNaOClを含み、例えばカーボンナノチューブ対次亜塩素酸ナトリウムの重量比が1:0.1から1:1の範囲において実施される。酸化は有利には、60℃未満の温度において、好ましくは周囲温度において、数分間から24時間の範囲の時間実施される。この酸化作業の後、有利には、酸化されたナノチューブを濾過および/または遠心分離、洗浄ならびに乾燥させる段階を行うことができる。
【0088】
カーボンナノチューブの官能化は、反応性の単位、例えばビニルモノマーを、カーボンナノチューブの表面にグラフト化することにより実施され得る。カーボンナノチューブの構成材料は、酸素のない無水媒体中で、900℃を超える温度で熱処理を行った後、ラジカル重合開始剤として使用され、このことは、表面から酸素含有基を除去することを意図する。したがって、メチルメタクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートを、カーボンナノチューブの表面上で重合させることにより、特にポリアミド中でのカーボンナノチューブの分散を容易にすることが可能である。
【0089】
本発明において、好ましくは、粗製カーボンナノチューブ、すなわち、酸化も精製も官能化もされていないカーボンナノチューブであって、任意の他の化学処理および/または熱処理がなされておらず、場合によって粉砕されたカーボンナノチューブが使用される。
【0090】
用語「グラフェン」は、平坦で、孤立した別々のグラファイトシートを示すために、ただし拡大すると、1から数10シートを含み、平坦または多少波打った構造を呈する集合も示すために使用される。したがってこの定義は、FLG(数層グラフェン)、NGP(ナノサイズグラフェンプレート)、CNS(カーボンナノシート)またはGNR(グラフェンナノリボン)を包含する。
【0091】
更に、本発明により使用されるグラフェンは、追加の化学的酸化段階または官能化段階を実施されないことが好ましい。
【0092】
上記に示した通り、本発明により使用されるグラフェンは、化学蒸着またはCVDにより得られる。グラフェンは、特質上、厚さが50nm未満、好ましくは15nm未満、より好ましくは5nm未満であり、横寸法が1マイクロメートル未満、好ましくは10nmから1000nm未満、好ましくは50から600nm、より好ましくは100から400nmである粒子の形態で提供される。これらの粒子のそれぞれは、一般に、1から50シートを含み、好ましくは1から20シートを含み、より好ましくは1から10シートを含み、更には1から5シートを含み、これらは、例えば超音波処理中に、独立したシートの形態で、互いに分離されることができる。
【0093】
CVDによるグラフェンの製造のための方法は、一般に、不活性ガス、例えばアルゴンまたは窒素の流れ下において、ガス状炭素源の分解、特に炭化水素、例えばエチレン、メタンまたはアセチレンの分解を含み、不活性ガス中の炭化水素の希釈度は、例えばおおよそ1:5である。この分解は、900から1000℃、好ましくは960から1000℃の温度において、一般に大気圧において、粉末形態の触媒上で実施される。触媒は、特に、不活性基材上に支持されたまたは支持されていない金属触媒であり得る。触媒は例えば、場合によって鉄と混合され、マグネシア上に支持されたコバルトであってもよく、コバルト対マグネシアのモル比は一般に10%未満である。触媒は通常、コバルト塩および場合によって鉄の塩のアルコールまたはグリコール中溶液を使用して支持体を含浸させた後、溶媒を蒸発させ、仮焼段階を行うことにより調製される。
【0094】
この発明によるグラフェンを製造するための別のCVD法は、下記の段階を含む。
【0095】
a)合成反応器内にグラフェンの合成のための活性触媒を導入する段階、場合によって前記反応器内の流動層として活性触媒を置く段階であって、活性触媒は、式AFeの混合酸化物を含み、式中Aは、少なくとも2つの原子価を呈する混合原子価を有する少なくとも1つの金属元素であり、この原子価の1つは+2に等しく、この金属元素は特にコバルト、銅またはニッケルから選択され、触媒はスピネル構造である、導入する段階、
b)前記触媒を反応器内において、500から1500℃の間、好ましくは500から800℃の間、更には610から800℃の間の温度に加熱する段階、
c)ガス状炭素源を、段階b)の触媒と、場合によって流動床として接触させ、触媒作用によって、500から800℃、好ましくは610から800℃の温度で分解する段階であって、ガス状炭素源はC-C12アルコールおよびC-C12炭化水素、例えばアルカンまたはアルケン、好ましくはエチレンから選択され、このガス状炭素源は還元剤、例えば水素の流れおよび場合によって不活性ガスと混合され得る、段階、
d)c)で製造されたグラフェンを、反応器の出口において取り出す段階。
【0096】
カーボンナノファイバーは、充填剤メント状の形態の物体である。カーボンナノチューブと異なり、カーボンナノファイバーは中空物体ではない。例として、カーボンナノファイバーはヘリングボーン構造(長手方向軸線の両側に対称的に配向されたグラフェン層の積層体)またはプレートレットもしくはラメラ構造(軸に対して垂直に積層されたグラフェンシート)または積層カップ構造としても知られる円錐構造(グラフェンシート自体の上に巻き付けられた連続的なグラフェンシート)または「竹状」構造(直径の周期的な変動を呈する繊維であって、グラファイトシートにより分離された区画から形成される繊維)またはリボン構造(巻き付けられることなく、長手方向軸線に平行に配向されたグラフェンシート)または管状構造(多層カーボンナノチューブの構造と同様)を有し得る。
【0097】
カーボンナノファイバーは、平均直径(長手方向軸線に垂直であり、平均値は長手方向軸線に沿った線形平均およびナノファイバーのアセンブリにおける統計平均である)が、0.4から100nmの範囲、好ましくは1から50nmの範囲、更に良いのは2から30nmの範囲、更には10から15nmの範囲であり、有利には長さが0.1から10μmであり得る。長さ/直径の比率は、好ましくは10を超え、最も多くの場合、100を超える。これらの値は、ポリマーマトリックスへの導入前のカーボンナノファイバーについて意味される。これは、ポリマーマトリックスへの混和時に、ナノファイバーは砕ける傾向があるため、最終組成物において、減少した長さを呈する傾向があるからである(例えば、長さ/直径の比率が5から10)。
【0098】
カーボンナノファイバーの寸法、特に平均直径は、走査型電子顕微鏡法により決定できる。
【0099】
本発明の状況で使用できるカーボンブラックは、平均直径が100nm以下、例えば10nmから100nmの粒子からなる粉末の形態で提供される。平均直径は、透過型電子顕微鏡法における統計的観測により決定され得る。
【0100】
組成物中の炭素系ナノ充填剤の重量による含有量(組成物の合計重量に対する)は、0.1から0.2%;または0.2から0.3%;または0.3から0.4%;または0.4から0.5%;または0.5から0.6%;または0.6から0.7%;または0.7から0.8%;または0.8から0.9%;または0.9から1.0%;または1.0から1.1%;または1.1から1.2%;または1.2から1.3%;または1.3から1.4%;または1.4から1.5%;または1.5から1.6%;または1.6から1.7%;または1.7から1.8%;または1.8から1.9%;または1.9から2.0%;または2.0から2.1%;または2.1から2.2%;または2.2から2.3%;または2.3から2.4%;または2.4から2.5%;または2.5から2.6%;または2.6から2.7%;または2.7から2.8%;または2.8から2.9%;または2.9から3.0%;または3.0から3.1%;または3.1から3.2%;または3.2から3.3%;または3.3から3.4%;または3.4から3.5%;または3.5から3.6%;または3.6から3.7%;または3.7から3.8%;または3.8から3.9%;または3.9から4.0%;または4.0から4.1%;または4.1から4.2%;または4.2から4.3%;または4.3から4.4%;または4.4から4.5%;または4.5から4.6%;または4.6から4.7%;または4.7から4.8%;または4.8から4.9%;または4.9から5.0%であり得る。
【0101】
他の添加剤
本発明の有利な変型によると、組成物は更に、強化剤を含み得る。
【0102】
本発明の組成物への強化剤の添加は、この組成物から得られる材料の機械的特性の一部、特に引張弾性率の改善を可能にする。強化剤の性質および量は、引張弾性率のために望ましい値に調節され、したがって引張弾性率は、3GPaよりも著しく大きい値、例えば、ガラス繊維の場合、ほぼ20GPa程度の値を達成できる。
【0103】
強化剤は、ビーズ、短繊維もしくは長繊維、織連続繊維もしくは不織連続繊維(woven or nonwoven continuous fiber)、織マットもしくは不織マットまたは粉砕材料または小麦粉であって、ポリマーマトリックスと組み合わされた場合に、引張弾性率の増加を可能にするものを意味すると理解される。
【0104】
強化剤は、例えば、ガラスビーズ、ガラスまたは炭素繊維であり得る繊維、ポリマー繊維、天然繊維(例えば植物または動物繊維)およびこれらの混合物から選択され得る。
【0105】
炭素繊維は特に、直径が5から15μmであり得る。
【0106】
有利には、強化剤は、バイオベースであり得る、すなわち、バイオマスから生じる有機炭素であって、規格ASTM D6866に従って決定される有機炭素を含み得る。
【0107】
本発明の状況で使用できるバイオベース強化剤は、下記の通りである。
【0108】
・植物繊維であって、種の種子毛(綿、カポック)に由来する繊維、植物の茎から取り出される靱皮繊維(亜麻、麻、黄麻、ラミーおよびこれらに類するもの)または葉から取り出される硬質繊維(サイザル、アバカおよびこれらに類するもの)、木の幹から取り出される硬質繊維(マニラ麻、一般に木材)もしくは果実の殻から取り出される硬質繊維(ココナッツおよびこれに類するもの)を含む植物繊維、
・動物繊維であって、毛に由来するもの、例えば動物のフリースおよび分泌物に由来するもの、例えば絹、
・バイオベース出発材料から生じる炭素繊維、
・バイオベース出発材料から生じるポリマー繊維、
・樹皮、皮もしくは種子(ヘーゼルナッツ、クルミ、およびこれらに類するもの)からの粉砕材料、動物の甲殻(カニおよびこれに類するもの)からの粉砕材料または種からの粉砕材料(米およびこれに類するもの)。
【0109】
本発明による組成物の変換温度は、強化剤、例えばある一定の植物繊維の強化剤の幅広い選択を可能にし、このことは、現実の経済的および技術的な利点を呈する。これは特に、当該植物繊維を含む組成物から得られる材料または物体が、ある一定の他の強化剤を含む組成物から得られるものよりも軽いという利点を呈するからである。これは、これらの植物繊維が、これらの他の強化剤と比較して、密度が低いことによる。
【0110】
本発明の具体的な代替形態において、強化剤は有利には繊維であり、好ましくはガラス繊維および/または炭素繊維である。
【0111】
好ましくは、前記強化剤の重量割合は、本発明による組成物の合計重量に対して、0から70%、有利には15から65%、好ましくは20から60%である。
【0112】
本発明による組成物は、1種以上の難燃剤、例えば、Mg(OH)、メラミンピロホスフェート、メラミンシアヌレート、アンモニウムポリホスフェート、ホスフィン酸もしくはジホスフィン酸の金属塩または少なくとも1種のホスフィン酸もしくはジホスフィン酸の金属塩を含むポリマーを含んでもよい。
【0113】
塩は、例えば、アルミニウムメチルエチルホスフィネートおよびアルミニウムジエチルホスフィネートから選択され得る。当該金属塩を含有する混合物は、Clariant社から商品名Exolit OP1311、OP1312、OP1230およびOP1314として販売されている。
【0114】
本発明による組成物の変換温度は、難燃剤の幅広い選択を可能にし、このことは、現実の経済的および技術的な利点を呈する。
【0115】
好ましくは、難燃剤の重量割合は、本発明による組成物の合計重量に対して、0から35%、有利には10から30%、好ましくは15から25%の値を有する。
【0116】
組成物は、(場合による上記の強化剤および難燃剤に加えて)ポリアミドに基づく組成物において一般に使用される1種以上の他の添加剤も含み得る。
【0117】
当該添加剤の選択は、PPAまたはMXD.6に基づく組成物における選択よりも広く、これは本発明による組成物の変換温度の低下による。
【0118】
有利には、添加剤は、バイオベースであり得る、すなわち、バイオマスから生じる有機炭素であって、規格ASTM D6866に従って決定される有機炭素を含み得る。
【0119】
本発明の組成物に導入され得る添加剤の量および性質は、望ましい効果の関数として調節される。
【0120】
限定するものではないが、充填剤、染料、安定剤、特にUV安定剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、表面活性剤、顔料、光学増白剤、酸化防止剤、滑剤、天然ワックスおよびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤を挙げることができる。
【0121】
充填剤のうち、シリカ、カオリン、マグネシア、スラグおよび/または酸化チタンを挙げることができる。
【0122】
組成物中に導電性充填剤、例えばグラファイトを含むことを想定することも可能である。当該充填剤は、本発明の組成物に導電性を付与することを可能にし、したがって、前記組成物から得られる材料に導電性を付与することを可能にする。
【0123】
しかし、本発明の好ましい変型において、組成物は本質的に導電性充填剤を含まないまたは完全に導電性充填剤を含まない。特に、組成物中に核剤として存在する炭素系ナノ充填剤は、炭素系ナノ充填剤が導電性充填剤の機能を提供し得るような量では存在しない。したがって、本発明による組成物は、好ましくは絶縁性である。言い換えると、組成物の成形後、測定される表面抵抗率は、1010Ω/sq以上、好ましくは1012Ω/sq以上である。更に、規格ASTM D257に従って決定される表面抵抗率は、好ましくは1018Ω/sq以下である。
【0124】
本発明の意味内の有利な組成物は、下記の重量割合の下記の異なる化合物を含み得る。
【0125】
・10から99.9%の第1のポリアミドおよび第2のポリアミド(好ましくはPA 11)、第2のポリアミドの重量割合は、第1のポリアミドおよび第2のポリアミドの組み合わせの0.1から20%に相当する、
・0.1から5%の炭素系ナノ充填剤、
・0から70%のガラスおよび/または炭素繊維、
・0から35%の難燃剤、
・0から20%、好ましくは0から10%の他の添加剤、
これらは合計100%を達成する。
【0126】
本発明による組成物の調製
本発明によると、組成物は、ポリマー、炭素系ナノ充填剤ならびに場合による強化剤および他の添加剤の均質なブレンドを得ることを可能にする、任意の方法により調製され得る。
【0127】
特に、これらの方法のうち、溶融押出し、圧縮、またはロールミルにおける混練を挙げることができる。
【0128】
より特定すると、本発明による組成物は、ポリマーを炭素系ナノ充填剤および場合による添加剤(強化繊維を含む)と溶融ブレンドすることにより調製され、この溶融ブレンドは、当業者に公知の装置、例えば二軸押出機、共混練機またはミキサーにより配合することによりなされる。その際、顆粒が得られる。好ましくは、顆粒はサイズがミリメートルの範囲である。顆粒は、例えば、長さ(最大寸法)がおおよそ2から3mmであり、直径(長さに垂直)がおおよそ2mmであり得る。
【0129】
第1の実施形態によると、組み合わされた化合物は、好ましくは配合により、同時に混合される。
【0130】
第2の実施形態によると、まず、第2のポリアミドが炭素系ナノ充填剤と混合され、マスターバッチが調製される。その後、第2の工程において、このマスターバッチが第1のポリアミドおよび場合による添加剤(強化繊維を含む)と混合される。2つの段階のうちのそれぞれは、好ましくは配合により実施される。
【0131】
この第2の実施形態の代替の形態において、第2のポリアミドおよび炭素系ナノ充填剤を含む、プレ調製されたマスターバッチ(例えば、Arkema社から、特に参照番号Graphistrength(登録商標)C M3-20、PA11マスターバッチとして販売されている)が用意される。
【0132】
驚くべきことに、このようなマスターバッチの使用は、組成物の結晶化の加速に関して、良好な結果を得ることを可能にすることが見出だされた。このことは、理論に委ねられることを望むものではないが、マスターバッチを第1のポリアミドと混合する段階の間に、炭素系ナノ充填剤が第1のポリアミド中に正しく分布することを示唆する。
【0133】
上記の調製方法により得られる、本発明による組成物は、当業者に公知のその後の使用またはその後の変換のために、特に装置、例えば射出成形プレスまたは押出成形機を使用して変換され得る。
【0134】
本発明による組成物は、当業者に公知の加工配置に従って、中間の造粒段階ない二軸押出供給、射出成形プレスまたは押出成形機内へと導入され得る。
【0135】
本発明による組成物の使用
本発明による組成物は、構造を形成するために使用され得る。
【0136】
この構造は、構造が本発明による組成物のみから形成される場合、単層であり得る。
【0137】
この構造は、構造が少なくとも2つの層を含み、構造を形成する異なる層のうちの少なくとも1層が本発明による組成物から形成される場合、多層構造であり得る。
【0138】
構造は、単層であっても多層であっても、特に、繊維、フィルム、管、中空体または射出成形部品の形態で提供され得る。本発明は、特に、射出成形プロセスにより得られる部品または物体の製造に非常に役立つ。
【0139】
上記で定義された少なくとも1つの組成物から、特に射出成形、押出し、共押出しまたはマルチ射出成形により、物体を製造することが可能である。
【0140】
製造方法は、好ましくは射出成形段階を含む。
【0141】
本発明による組成物から得られる材料または物体の機械的特性(特に引張弾性率)は、金型温度から、特に射出成形による成形の段階において選択される金型温度からほとんど完全に独立している。これは、組成物の結晶化が良好に改善されているためである。したがって、本発明による組成物は、熱交換流体としての水または油により調節される、任意の種類の金型により成形できるという利点を提供する。特に、金型温度100℃未満、有利には90℃未満において、射出成形により成形する段階を想定することが可能である。
【0142】
35℃までの低い範囲の金型温度でさえも想定され得る。逆に、100℃を超える金型温度、例えばPPAまたはMXD.6で一般に使用される金型温度を用いることも可能である。
【0143】
PPAまたはMXD.6に基づく組成物と比較して、本発明による組成物は、消費するエネルギーが少なく、有利には変換温度および金型の温度はより低い。
【0144】
本発明による組成物から調製される物体は、輸送(特に自動車、トラック、電車、バス、船、航空機およびこれらに類するもののための機械部品)、建設業界、家庭部門、電気、電子機器、医学またはスポーツ(特にスキー)の分野において使用され得る。
【0145】
本発明による組成物は、PPAまたはMXD.6に基づく組成物よりも低い密度を呈するので、このような組成物から得られる物体は、全く同じ体積に対して、より軽い。
【0146】
本発明による組成物は、電気および電子商品の構成要素の全部または一部の製造のために、有利に使用されることができ、この構成要素は例えば、封入ソレノイド、ポンプ、電話、コンピュータ、プリンタ、ファックス装置、モデム、モニタ、遠隔制御装置、カメラ、回路遮断器、電気ケーブルジャケット、光ファイバ、スイッチまたはマルチメディアシステムである。これらの電気および電子商品の構成要素は、当該商品の構造部品(ケーシング、ハウジングおよびこれらに類するもの)を対象とするだけでなく、場合による関連した付属品(イヤホン、接続要素、ケーブルおよびこれらに類するもの)も対象とする。
【0147】
また、自動車機器の全部または一部の製造のためにも使用されることができ、自動車機器は例えば、管継手、ポンプ、ボンネットの下の射出成形部品またはフェンダ、ダッシュボードもしくはドアトリム型の射出成形部品である。
【0148】
また、医療もしくは手術機器、包装またはスポーツもしくはレジャー機器、例えば自転車部品(サドル、ペダルおよびこれらに類するもの)の全部または一部の製造のためまたは例えば履物の剛性構成要素を形成するためにも使用され得る。
【0149】
また、家庭用機器(エアコンおよびこれに類するもの)または家庭用電気器具(コーヒーメーカ、オーブン、洗濯機、食器洗浄器およびこれらに類するもの)の全部または一部の製造のためにも使用され得る。
【実施例0150】
下記の実施例は、制限することなく本発明を示す。
【0151】
ポリアミドに基づく組成物は、下記の化合物から調製される。
・ホモポリアミドPA MXD.10:57%のバイオベース炭素を含み、融点193℃を呈するポリマー、供給元Arkema社。
・ポリアミドPA 11:100%のバイオベース炭素を含み、融点185℃を呈するポリマー、供給元Arkema社。
・タルク:Steamic OOS DG、供給元Luzenac社。
・ガラス繊維:参照番号CT FT 692として販売されている強化剤、供給元Asahi社。
・酸化防止剤:参照番号Irganox 1010、供給元Ciba社。
・ステアリン酸カルシウム:滑剤、供給元BASF社。
・カーボンナノチューブ(CNT):参照番号Graphistrength(登録商標)C100またはC M3-20、供給元Arkema社。
【0152】
組成物の処方(重量割合による)および調製方法は、下記の通りである。
【0153】
【表1】
【0154】
1段階製造方法は、化合物の全てをLeitstriz押出成形機内で、260℃において配合することに基づく。
【0155】
2段階製造方法は、PA MXD.10、ガラス繊維、酸化防止剤、ステアレート、およびマスターバッチを、Werner 40二軸押出機内で、260℃において配合することに基づく。マスターバッチは、PA 11およびカーボンナノチューブを含む。Arkema社から参照番号Graphistrength(登録商標)C M3-20として入手可能なマスターバッチは、PA 11およびGraphistrength(登録商標)C100カーボンナノチューブをBuss共混練機によって混合することにより調製される。
【0156】
組成物A、BおよびCのそれぞれの結晶化の速度は、非等温(anisothermal)条件下において、示差走査熱分析により、押出し後の冷却中に監視された。得られた曲線は、図1に表される。これらの条件下において、MXD.10ホモポリアミドは結晶化しないことに注意すべきである。
【0157】
結晶化ピーク温度および結晶化開始温度は、以下に要約される。
【0158】
【表2】
【0159】
したがって、カーボンナノチューブの存在は、結晶化を加速することが見出だされる(結晶化は、組成物の冷却中、より高い温度において起こる)。
【0160】
物体は、金型温度115℃を用いて、組成物A、BおよびCから始まる射出成形により製造される。2種類の物体が製造された:厚さが2mmの物体(規格ISO 527 1BA)および厚さが1mmの物体(100mm×100mmのシート)。組成物BおよびCは、参照組成物Aに対して、サイクル時間を20%減少できることが見出だされる。
図1