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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058508
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】傾斜アジャスタを含む履物
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20220405BHJP
   A43B 5/06 20220101ALI20220405BHJP
   A43B 7/1464 20220101ALI20220405BHJP
【FI】
A43B13/14 Z
A43B5/06
A43B7/1464
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022000877
(22)【出願日】2022-01-06
(62)【分割の表示】P 2020512534の分割
【原出願日】2018-08-30
(31)【優先権主張番号】62/552,548
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】514144250
【氏名又は名称】ナイキ イノベイト シーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,スティーヴン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ニコリ,レイモンド エル.
(72)【発明者】
【氏名】ポーザル,ロランド
(57)【要約】
【課題】従来技術の問題を解決する。
【解決手段】ソール構造は、電気粘性流体を含むチャンバおよび伝達チャネルを含み得る。電極は、その電極間の電圧に応答して、伝達チャネル内の電気粘性流体の少なくとも一部分に電界を生成するように位置決めされ得る。ソール構造には、さらに、プロセッサおよびメモリを含むコントローラが含まれ得る。プロセッサおよびメモリの少なくとも1つは、プロセッサによって実行可能な命令を記憶して動作を行い得、該動作は、電極間の電圧を、伝達チャネルを通る電気粘性流体の流れが遮断される1つ以上の流れ阻止レベルに維持することを含み、電極間の電圧を、伝達チャネルを通る電気粘性流体の流れを許容する1つ以上の流れ可能レベルに維持することをさらに含む。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体の外側で外方に延在する可変体積外側チャンバと、前記本体の内側で外方に延在する可変体積内側チャンバとを含む、傾斜アジャスタを含み、該傾斜アジャスタは、
前記本体の中央部分に画定され、前記外側チャンバと前記内側チャンバとの間に延在する伝達チャネルと、
前記外側チャンバ、前記伝達チャネル及び内側チャンバを満たす、電気粘性流体と、
前記中央部分に埋め込まれ、前記伝達チャネルに沿って前記電気粘性流体に曝される、金属シート製の第1の電極と、
前記第1の電極とは反対の位置において前記中央部分に埋め込まれ、前記伝達チャネルに沿って前記粘性流体に曝される、金属シート製の第2の電極と、
前記傾斜アジャスタの上方に配置されるプレートとを含み、該プレートは、前記傾斜アジャスタに向かう前記プレートに対する下向きの力が、前記第1及び第2の電極を収容する前記中央部分の領域を圧縮しないように配置される、
物品。
【請求項2】
前記外側チャンバに対応する前記傾斜アジャスタの外部部分が、前記伝達チャネルから前記外側チャンバ内への前記電気粘性流体の流れに応答して外方に膨張するように構成され、
前記内側チャンバに対応する前記傾斜アジャスタの外部部分が、前記伝達チャネルから前記内側チャンバ内への前記電気粘性流体の流れに応答して外方に膨張するように構成される、
請求項1に記載の物品。
【請求項3】
伝達チャネル経路が、前記外側チャンバと前記内側チャンバとの間の非線形伝達チャネル経路に沿って延在し、
前記第1の電極及び前記第2の電極は、それぞれ、前記伝達チャネル経路の形状に対応する形状を有する、
請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記第1の電極及び前記第2の電極の両方が延在する前記伝達チャネル経路の一部分が、長さLと、平均幅Wとを有し、
L/W比が、少なくとも50である、
請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記第1の電極及び前記第2の電極は、それぞれ、側縁を有し、該側縁は、前記中央部分に埋め込まれ、前記電気粘性流体に曝されない、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記第1の電極及び前記第2の電極は、それぞれ、前記側縁に沿って形成される一連のスロットを含み、
前記スロットの各々は、前記中央部分を形成する固体材料で満たされる、
請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記外側チャンバは、前記本体の上部外側から上方に延びる可撓性外側チャンバを含み、
前記内側チャンバは、前記本体の上部内側から上方に延びる可撓性内側チャンバを含む、
請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記外側チャンバ壁は、外側チャンバ壁中央セクションと、該外側チャンバ壁中央セクションを囲む外側チャンバ壁側部セクションとを含み、
前記外側チャンバ壁側部セクションは、前記外側チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を含む、
請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記内側チャンバ壁は、内側チャンバ壁中央セクションと、該内側チャンバ壁中央セクションを囲む内側チャンバ壁側部セクションとを含み、
前記内側チャンバ壁側部セクションは、前記内側チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を含む、
請求項7に記載の物品。
【請求項10】
前記外側チャンバ壁は、外側チャンバ壁中央セクションと、該外側チャンバ壁中央セクションを囲む外側チャンバ壁側部セクションとを含み、
前記外側チャンバ壁側部セクションは、前記外側チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を含む、
請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記外側チャンバ及び前記内側チャンバの少なくとも一方は、凹部を含む外形を有する、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
当該物品は、ソール構造を含む履物品であり、
前記傾斜アジャスタは、前記ソール構造の前足部分の一部を形成する、
請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記プレートは、前記内側チャンバ及び前記外側チャンバ上に位置し、前記プレートは、前記傾斜アジャスタに向かう方向における前記プレートに対する前記下向きの力が、前記中央部分に伝達されることなく、前記内側チャンバ及び前記外側チャンバに伝達されるように、位置決めされる、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記プレートは、前記内側チャンバ、前記中央部分及び前記外側チャンバの上に延在する、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
本体と、該本体の上部第1の側から上方に延在する可変体積第1のチャンバと、前記本体の上部第2の側から上方に延在する可変体積第2のチャンバとを含む、傾斜アジャスタを含み、
前記本体の前記上部第1の側は、前記本体の上部内側及び上部外側の一方であり、前記上部第2の側は、前記本体の前記上部内側及び前記上部外側の他方であり、
前記傾斜アジャスタは、
前記本体の中央部分に画定され、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間に延在する、伝達チャネルと、
前記第1のチャンバ、前記伝達チャネル及び前記第2のチャンバを満たす、電気粘性流体と、
前記中央部分に埋め込まれ、前記伝達チャネルに沿って前記電気粘性流体に曝される、第1の電極と、
前記第1の電極とは反対の位置において前記中央部分に埋め込まれ、前記伝達チャネルに沿って前記電気粘性流体に曝される、第2の電極と、を更に含み、
前記第1のチャンバは、前記本体の前記上部第1の側から上方に延在する可撓性の第1のチャンバ壁を含み、
前記第1のチャンバ壁は、第1のチャンバ壁中央セクションと、該第1のチャンバ壁中央セクションを囲む第1のチャンバ壁側部セクションとを含み、
前記第1のチャンバ壁側部セクションは、前記第1のチャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を含み、
前記第1のチャンバ壁中央セクションは、凹部を含む外形を含む、
物品。
【請求項16】
前記第2のチャンバは、前記本体の前記上部第2の側から上方に延在する可撓性の第2のチャンバ壁を含み、
前記第2のチャンバ壁は、第2のチャンバ壁中央セクションと、該第2のチャンバ壁中央セクションを囲む第2のチャンバ壁側部セクションとを含み、
前記第2のチャンバ壁側部セクションは、前記第2のチャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を含む、
請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記第2のチャンバは、凹部を含む外形を有する、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
当該物品は、ソール構造を含む履物品であり、
前記傾斜アジャスタは、前記ソール構造の前足部分の一部を形成する、
請求項15に記載の物品。
【請求項19】
プレートが、前記傾斜アジャスタの上方に配置され、前記プレートは、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバ上に位置し、前記プレートは、前記傾斜アジャスタの方向において前記プレートに対する下向きの力が、前記中央部分に伝達されることなく、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバに伝達されるように、位置決めされる、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記プレートは、前記傾斜アジャスタの上方に配置され、前記第1のチャンバ、前記中央部分及び前記第2のチャンバの上に延在し、
前記プレート及び傾斜アジャスタは、前記傾斜アジャスタに向かう前記プレートに対する下向きの力が、前記第1及び第2の電極を含む前記中央部分の領域を圧縮しないように、配置される、
請求項18に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月31日に出願された「FOOTWEAR INCLUDING AN INCLINE ADJUSTER(傾斜アジャスタを含む履物)」と題する米国仮特許出願第62/552,548号に対する優先権を主張する。第62/552,548号は、その全体が参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来の履物品は、一般に、アッパーおよびソール構造を含む。アッパーは、足のカバーを提供し、ソール構造に対して足を安定して位置決めする。ソール構造は、アッパーの下の部分に固定され、着用者が立っている時、歩いている時、または走っている時、足と地面の間に位置決めされるように構成されている。
【0003】
従来の履物は、多くの場合、靴を特定の条件または一連の条件に対して最適化させるという目的で設計される。例えば、テニスおよびバスケットボールなどのスポーツは、実質的に左右の移動を必要とする。多くの場合、そのようなスポーツ中に着用するために設計された靴は、横向きの移動中において、より大きな力を受ける領域に相当な補強部および/または支持部を含む。別の例として、ランニング用の靴は、多くの場合、着用者の直線的な前方移動のために設計される。条件が変わる中で、または複数の異なるタイプの動きをする中で、靴を着用していなければならない場合に、困難が生じ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
この概要は、発明を実施するための形態で以下にさらに説明される概念の選択を簡潔な形で紹介するために提供されている。この概要は、本発明の鍵となる特徴または本質的な特徴を明らかにする意図はない。
【0005】
少なくともいくつかの実施形態において、傾斜アジャスタは、体積可変型の外側チャンバと、体積可変型の内側チャンバと、を含み得る。傾斜アジャスタは、外側チャンバと内側チャンバとの間に延在する伝達チャネルと、外側チャンバ、伝達チャネル、および内側チャンバを満たす電気粘性流体と、伝達チャネルに沿って電気粘性流体に露出している対向電極と、をさらに含み得る。電極は、例えば、金属シートまたは導電性ゴムから形成され得る。
【0006】
いくつかの実施形態において、傾斜アジャスタは、体積可変型の第1のチャンバと、体積可変型の第2のチャンバと、を含み得る。傾斜アジャスタは、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に延在する伝達と、第1のチャンバ、伝達チャネル、および第2のチャンバを満たす電気粘性流体と、伝達チャネルに沿って電気粘性流体に露出している対向電極と、をさらに含み得る。第1のチャンバは、第1のチャンバ壁中央セクションと、第1のチャンバ壁中央セクションを囲む第1のチャンバ壁側部セクションと、をさらに含む可撓性第1のチャンバ壁を含み得る。第1のチャンバ壁側部セクションは、第1のチャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を含み得る。
【0007】
いくつかの実施形態において、傾斜アジャスタを製作する方法は、第1の構成要素を成形することを含み得、ここで、内側チャンバおよび外側チャンバの第1の部分と、伝達チャネルの第1の部分と、は、その内部に画定されており、第1の電極の一部分は、伝達チャネルの第1の部分に沿って露出している。この方法は、第2の構成要素を成形することも含み得、ここで、内側チャンバおよび外側チャンバの第2の部分と、伝達チャネルの第2の部分と、は、その内部に画定されており、第2の電極の一部分は、伝達チャネルの第2の部分に沿って露出している。この方法は、傾斜アジャスタを作成するために、第1の構成要素を第2の構成要素に接合することをさらに含み得、内側チャンバの第1および第2の部分は、内側チャンバを形成するために組み合わせられ、外側チャンバの第1および第2の部分は、外側チャンバを形成するために組み合わせられ、伝達チャネルの第1および第2の部分は、伝達チャネルを形成するために組み合わせられ、伝達チャネルは、内側チャンバと外側チャンバを連結する。
【0008】
さらなる実施形態を本明細書内に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面に、いくつかの実施形態を限定としてではなく例として示しており、そこでは、同様の参照番号は同様の要素を指す。
図1】いくつかの実施形態による靴の内側側面図である。
図2A図1の靴のソール構造の底面図である。
図2B】前足部アウトソール要素を除去した、図1の靴のソール構造の底面図である。
図2C図1の靴のソール構造の前足部アウトソール要素の底面図である。
図3図1の靴のソール構造の部分分解内側透視図である。
図4A図1の靴の傾斜アジャスタの拡大された後方外側上面斜視図である。
図4B図4Aの傾斜アジャスタの上面図である。
図4C図4Bに示す平面の断面図である。
図5A図4Aの傾斜アジャスタの第1の構成要素の第1の層と、金属製の第1の電極と、を示す。
図5B図5Aの第1の電極を取り付けた後の図5Aの第1の層を示す。
図5C】第1の層および取り付けられた第1の電極の上に第2の層を成形した後の、図4Aの傾斜アジャスタの第1の構成要素を示す。
図6A図4Aの傾斜アジャスタの第2の構成要素の第1の層と金属製の第2の電極とを示す。
図6B図6Aの第2の電極を取り付けた後の図6Aの第1の層を示す。
図6C】第1の層および取り付けられた第2の電極の上に第2の層を成形した後の、図4Aの傾斜アジャスタの第2の構成要素を示す。
図7A図5Cの第1の構成要素と、図6Cの第2の構成要素と、から得た図4Aの傾斜アジャスタの組立体を示す。
図7B図5Cの第1の構成要素と、図6Cの第2の構成要素と、から得た図4Aの傾斜アジャスタの組立体を示す。
図7C】組み立て後かつER流体充填前の傾斜アジャスタの拡大された後方外側上面斜視図である。
図8図4Aの傾斜アジャスタの伝達チャネルの一部分の拡大断面図である。
図9図1の靴の電気系統の構成要素を示すブロック図である。
図10A】最小傾斜状態から最大傾斜状態になっていく時の、図1の靴の傾斜アジャスタの動作を示す部分概略断面図である。
図10B】最小傾斜状態から最大傾斜状態になっていく時の、図1の靴の傾斜アジャスタの動作を示す部分概略断面図である。
図10C】最小傾斜状態から最大傾斜状態になっていく時の、図1の靴の傾斜アジャスタの動作を示す部分概略断面図である。
図10D】最小傾斜状態から最大傾斜状態になっていく時の、図1の靴の傾斜アジャスタの動作を示す部分概略断面図である。
図10E図10A図10Dの図に対応する区画線の近似位置を示す、図1の靴の傾斜アジャスタおよび底部プレートの上面図である。
図11A】最小傾斜状態から最大傾斜状態へ移行する間の様々な時間での足の状態、圧力差、電圧レベル、および傾斜角のグラフである。
図11B】最大傾斜状態から最小傾斜状態へ移行する間の様々な時間での足の状態、圧力差、電圧レベル、および傾斜角のグラフである。
図12A】さらなる実施形態に係る傾斜アジャスタの後部外側上面斜視図である。
図12B図12Aの傾斜アジャスタの後部内側上面斜視図である。
図12C図12Aの傾斜アジャスタの上面図である。
図13図12Cに示す平面の拡大断面図である。
図14】別個に形成された第1および第2の構成要素から得た図12A図12Cの傾斜アジャスタの組立体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
様々なタイプのアクティビティにおいて、靴の着用者が走っているか、他のアクティビティに参加している間、靴または靴の一部の形状を変化させることは有利であり得る。多くのランニングの競技会において、例えば、選手は、「コーナー」としても公知の曲がっている部分を有するトラックの周りを走る。いくつかの場合によっては、200メートルまたは400メートルレースなどの短距離種目で、選手は、トラックのコーナーを全力のペースで走り得る。しかし、平坦なカーブを速いペースで走ることは、生体力学的に非効率であり、ぎこちない体の動きを要し得る。そうした影響を相殺するために、いくつかのランニングトラックのコーナーは傾斜している。この傾斜により、より効率的な体の移動が可能となり、通常、ランニングタイムがより短縮される。テストは、同様の利点を靴の形状を変更することによって達成できることを示した。特に、地面に対して傾斜している中底を有する靴を履いて平坦なトラックのコーナーを走ることで、傾斜していない中底を有する靴を履いて傾斜の付いたコーナーを走ることの利益を模倣することができる。しかし、傾斜している中底は、ランニングトラックの直線部分において不利となる。コーナーを走る場合に傾斜している中底を提供することができ、直線トラックセクションを走る場合に傾斜を低減または解消することができる履物は、有意な利点をもたらし得る。
【0011】
いくつかの実施形態による履物において、電気粘性(ER)流体は、靴の1つ以上の部分の形状を変化させるのに用いられる。ER流体は、通常、非常に小さな粒子が懸濁している非導電性オイルまたは他の流体を備える。いくつかのタイプのER流体において、粒子は多分、5ミクロン以下の直径を有し得、ポリスチレン、または双極性分子を有する別のポリマーから形成され得る。ER流体全体に電界が課されると、流体の粘度は、その電界の強度が増加するにつれて高まる。以下により詳細に記載するように、この効果は、流体の伝達を制御し、履物の構成要素の形状を修正するのに用られ得る。トラックシューズの実施形態を初めに説明するが、他の実施形態においては、他のスポーツまたはアクティビティ向けに意図された履物を含む。
【0012】
「靴(シューズ)」および「履物品」は、人間の足に着用されるように意図された物品を指すために、本明細書中で互いに互換的に用いられる。靴は、着用者の足全体を包んでもよく、または包まなくてもよい。例えば、靴は、着用している足の大部分を露出するサンダル状のアッパーを含み得る。靴の要素は、その靴を着用している人間の足の領域および/または解剖学的構造に基づいて、かつ着用している足に靴の内部が概ね整合し、そうでなければ着用している足に適切にサイズ決めされていると仮定することによって、説明することができる。足の前足部領域は、中足骨の前端および本体部分、ならびに指節骨を含む。靴の前足部要素は、靴が着用された時に、着用者の前足部(またはその一部)の下に、上に、外側および/もしくは内側に、かつ/または手前に配置される1つ以上の部分を有する要素である。足の中足部領域は、立方骨、舟状骨および楔状骨、ならびに中足骨の付け根を含む。靴の中足部要素は、靴が着用された時に、着用者の中足部(またはその一部)の下に、上に、かつ/または外側および/もしくは内側に配置される1つ以上の部分を有する要素である。足の踵領域は、距骨および踵骨を含む。靴の踵要素は、靴が着用された時に、着用者の踵(またはその一部)の下に、かつ/または外側および/もしくは内側に、かつ/または後ろに配置される1つ以上の部分を有する要素である。前足部領域は、中足部領域と重なり合ってもよく、中足部領域と踵領域も同様である。
【0013】
図1は、いくつかの実施形態による、トラックシューズの靴10の内側側面図である。靴10の外側は、同様の構成および外観を有するが、着用者の足の外側に対応するように構成されている。靴10は右足の着用向けに構成されており、靴10の鏡像でありかつ左足の着用向けに構成されている靴(図示せず)を含む、一足のうちの片方である。しかし、以下により詳細に説明するように、靴10およびそれに対応する左靴は、所与の一連の条件下で、それらの形状を変更するように様々な方式で構成され得る。
【0014】
靴10は、ソール構造12に取り付けられたアッパー11を含む。アッパー11は、任意の様々なタイプまたは材料から形成され、任意の様々な異なる構造を有し得る。いくつかの実施形態において、例えば、アッパー11は、単一ユニットとして編まれてもよく、他のタイプの裏地のブーティを含まなくてもよい。いくつかの実施形態において、アッパー11は、アッパー11の底縁を縫って足受けの内部空間を包むことにより、スリップラスティング(slip lasting)されてもよい。他の実施形態において、アッパー11は、ストローベルまたは何らかの他の方式でラスティングされてもよい。電池組立体13は、アッパー11の踵の後ろ領域に配置され、コントローラに電力を提供する電池を含む。コントローラは、図1には見えないが、他の図面に関連して以下に記載する。
【0015】
ソール構造12は、中底14、アウトソール15、および傾斜アジャスタ16を含む。傾斜アジャスタ16は、前足部領域で、アウトソール15と中底14との間に位置する。以下により詳細に説明するように、傾斜アジャスタ16は、中底14の内側前足部分を支持する内側流体チャンバのみならず、中底14の外側前足部分を支持する外側流体チャンバを含む。ER流体は、それらのチャンバの間で、両方のチャンバの内部と流体連通している接続伝達チャネルを通って伝達され得る。そのような流体の伝達により、一方のチャンバに対する他方のチャンバ高さが高くなり得、チャンバの上に配置される中底14の一部分に傾斜をもたらす。チャネルを通るER流体のさらなる流れが中断されると、ER流体の流れの再開が可能になるまで、傾斜は維持される。
【0016】
アウトソール15は、ソール構造12の、地面に接触する部分を形成する。靴10の実施形態において、アウトソール15は、前方アウトソールアセクション17および後方アウトソールセクション18を含む。前方アウトソールセクション17と後方アウトソールセクション18との関係は、図2Aのソール構造12の底面図と、図2Bの、前足部アウトソールセクション17を除去したソール構造12の底面図と、を比較することによって見て取ることができる。図2Cは、ソール構造12から除去された前足部アウトソールセクション17の底面図である。図2Aで分かるように、前方アウトソールセクション17は、ソール構造12の前足部領域および中央の中足部領域を通って延在し、狭小な端部19に向かって先細りになる。端部19は、踵領域に配置されるジョイント20で後方アウトソールセクション18に取り付けられる。後方アウトソールセクション18は、側部の中足部領域の上および踵領域の上に延在し、中底14に取り付けられる。前方アウトソールセクション17も、支点要素によって、かつ傾斜アジャスタ16の上記の流体チャンバによって、中底14にカップリングされる。前足部アウトソールセクション17は、ジョイント20と、前足部の支点要素と、を通過する長手軸L1の周りを枢動する。特に、以下に説明するように、前足部アウトソールセクション17は、中底14の前足部分が前足部アウトソールセクション17に対して傾斜している時に、軸L1の周りを回転する。
【0017】
アウトソール15は、ポリマーまたはポリマー複合体で形成され得、地面に接触する面にゴムおよび/または他の耐摩耗材料を含み得る。トラクション要素21は、アウトソール15の底部に成形されるか、そうでなければその中に形成され得る。前足部アウトソールセクション17は、1つ以上の除去可能なスパイク要素22を保持するリセプタクルも含み得る。他の実施形態において、アウトソール15は、異なる構成を有し得る。
【0018】
中底14は、ミッドソール25を含む。靴10の実施形態において、ミッドソール25は、人間の足の外形にほぼ対応するサイズおよび形状を有するものであり、中底14の全長および全幅に延在する単一ピースであり、輪郭付けられた上面26を含む(図3に示す)。上面26の輪郭は、人間の足の足底領域の形状に概ね対応するように、かつアーチ支持部を提供するように構成されている。ミッドソール25は、エチレン酢酸ビニル(EVA)および/または1つ以上の他の独立気泡ポリマー発泡材料から形成され得る。以下に示すように、ミッドソール25は、その内部にコントローラおよび他の電子素子を収容するように形成されたポケット27および28も有し得る。後方アウトソールセクション18の内側および外側を上方に延在させると、着用者の足に、さらなる内側および外側の支持も提供し得る。他の実施形態において、中底は異なる構成を有し得る。例えば、ミッドソールは、中底の全体をカバーしなくてもよく、または、まったく存在しなくてもよく、かつ/または、中底は他の構成要素を含んでもよい。
【0019】
図3は、ソール構造12の部分分解内側透視図である。底部支持プレート29は、靴10の足底領域に配置される。靴10の実施形態において、底部支持プレート29は、前方アウトソールセクション17の上面30に取り付けられる。比較的硬いポリマーまたはポリマー複合体から形成され得る底部支持プレート29は、前方アウトソールセクション17の前足部領域を強化させ、傾斜アジャスタ16に安定した基部を提供することに役立つ。内側力検知抵抗器(FSR)32および外側FSR31は、底部支持プレート29の上面33に取り付けられる。以下に説明するように、FSR31および32は、傾斜アジャスタ16のチャンバ内の圧力を判定することに役立つ出力を提供する。
【0020】
支点要素34は、下部支持プレート29の上面33に取り付けられる。支点要素34は、底部支持プレート29の前方部分でFSR31および32の間に位置決めされる。支点要素34は、硬質ゴム、または靴10の着用者が走ると生じる負荷下で一般に非圧縮性である1つ以上の他の材料から形成され得る。
【0021】
傾斜アジャスタ16は、下部支持プレート29の上面33に取り付けられる。傾斜アジャスタ16の外側チャンバ35は、外側FRS31の上に位置決めされる。傾斜アジャスタ16の内側チャンバ36は、内側FSR32上に位置決めされる。傾斜アジャスタ16は、アパチャー37を含み、それを通って支点要素34が延在する。支点要素34の少なくとも一部分は、チャンバ35および36の間に位置決めされる。以下にさらに詳述されているように、傾斜アジャスタ51の製作時に、傾斜アジャスタ16の貫通穴51が使用され得る。貫通穴51は、下部支持プレート29に対して傾斜アジャスタ16を位置決めし、固定するために使用され得る。図3には示されていない対応突起部が上面33に形成され、傾斜アジャスタ16の底部側から貫通穴51内に延在し得る。
【0022】
上部支持プレート41は、靴10の足底領域に配置され、傾斜アジャスタ16上に位置決めされる。靴10の実施形態において、上部支持プレート41は、底部支持プレート29と概ね整列する。比較的硬いポリマーまたはポリマー複合体からも形成され得る上部支持プレート41は、傾斜アジャスタ16が押され得、かつ中底14の前足部領域を支持する、安定した比較的変形不能な領域を提供する。
【0023】
ミッドソール25の下側の前足部領域部分は、上部支持プレート41の上面42に取り付けられる。踵および側部中足部領域でミッドソール25の下側の部分は、後方アウトソールセクション18の上面43に取り付けられる。前方アウトソールセクション17の端部19は、セクション18の前縁の最後方位置44の後ろで、後方アウトソールセクション18に、ジョイント20を形成するように取り付けられる。いくつかの実施形態において、端部19は、位置14で、または位置14の近傍で、セクション18に形成されたスロットに摺動するタブであり得、かつ/または上面43とミッドソール25の下側との間に挟まれ得る。
【0024】
図3には、コントローラ47のDC-高電圧-DCコンバータ45および印刷回路基板(PCB)46も示される。コンバータ45は、低電圧のDC電気信号を傾斜アジャスタ16内の電極に印加される高電圧(例えば、5000V)のDC信号に変換する。PCB46は、1つ以上のプロセッサ、メモリ、および他の構成要素を含み、傾斜アジャスタ16を、コンバータ45を通して制御するように構成されている。PCB46はまた、FSR31および32から入力を受信し、電池ユニット13から電力を受信する。PCB46およびコンバータ45は、中足部領域48で、前方アウトソールセクション17の上面に取り付けられ得、ミッドソール25の下側でポケット28および27内にもそれぞれ置かれ得る。
【0025】
図4Aは、傾斜アジャスタ16の拡大された後方外側上面斜視図である。図4Bは、傾斜アジャスタ16の拡大上面図である。図4Cは、図4Bに示す平面の断面図である。傾斜アジャスタ16は、本体65を含む(図4B)。外側チャンバ35の一部分は、本体65の上部66の外側から上方に延在する可撓性輪郭壁67によって境されている。本体65内の対応領域69によって境されている外側チャンバ35の別の一部分(図4C)。内側チャンバ36の一部分は、上部側66の内側から上方に延在する可撓性輪郭壁68によって境されており、内側チャンバ36の別の一部分は、本体65内の対応領域70によって境されている。
【0026】
外側チャンバ35は、流体伝達チャネル60を通って内側チャンバ36と流体連通しており、流体伝達チャネル60は、本体65の中央部分に画定され、チャンバ35と36との間に延在する。図4A図4Cの実施形態における傾斜アジャスタ16は不透明であることから、伝達チャネル60の位置は、図4Bに小さな破線で示されている。ER流体59は、チャンバ35および36ならびに伝達チャネル60を満たしている。いくつかの実施形態において用いられ得るER流体の一例として、ERF Produktion Wurzberg GmbHから「RheOil4.0」という名前で販売されているものが挙げられ得る。外側チャンバ35の内部体積は、外側チャンバ35内へのER流体59の流入、または外側チャンバ35からのER流体59の流出に伴って変化し得る。壁67によって形成されたチャンバ35の部分は、ER流体59が外側チャンバ35内に流入すると膨張するように構成されており、それによって壁67の中央セクション71は、本体65から上方に変位する。内側チャンバ36の内部体積は、内側チャンバ36内へのER流体59の流入、または内側チャンバ36内からのER流体59の流出に伴って同様に変化し得る。壁68によって形成されたチャンバ36の部分は、ER流体59が内側チャンバ36内に流入すると膨張するように構成されており、それによって壁68の中央セクション72は、本体65から上方に変位する。
【0027】
一対の対向電極は、底部側および上部側上で伝達チャネル60内に位置決めされており、図4Bに大きな破線で示されている伝達チャネル60の流量調節部分61に沿って延在する。リード53および54は、底部電極および上部電極とそれぞれ電気的に接触しており、コンバータ45に接続されている。伝達チャネル60は、チャネル60内の電極に対する表面積を増加させるように蛇行形状を有して、チャネル60内のER流体59に電界を生成する。例えば、図4Bから分かるように、チャネル60は、チャンバ35と36との間の空間をカバーする、チャネル60の他のセクション同士を結合している3つの180°に曲がっているセクションを含む。いくつかの実施形態において、伝達チャネル60は、1ミリメートル(mm)の電極間の最大高さh、2mmの平均幅(w)、およびチャンバ35と36との間で流れ方向沿いに少なくとも200mmの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、伝達チャネル60は、1ミリメートル(mm)の電極間の最大高さh、4mmの平均幅(w)、およびチャンバ35と36との間で流れ方向沿いに少なくとも200mmの長さを有し得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、伝達チャネルの高さは、実際には、少なくとも0.250mmから3.3mm以下の範囲に制限され得る。柔軟な材料で構成されている傾斜アジャスタは、靴が使用されている間、屈曲し得る。伝達チャネルにわたって屈曲させることによって、屈曲点における高さが局所的に減少する。十分な許容量に至っていない場合、対応する電界強度の増加は、ER流体の最大絶縁強度を上回り得、電界の崩壊を招き得る。極端に言うと、電極は実際に接触するように近接し得て、電界の崩壊という同じ結果をもたらす。
【0029】
ER流体の粘度は、印加される電界強度に伴って増加する。その効果は非直線的であり、最適な電界強度は、ミリメートルあたり3~6キロボルト(kV/mm)の範囲である。3~5Vの電池をブーストするために用いられる高電圧DC-DCコンバータは、物理的なサイズおよび安全性の考慮によって、2W未満に制限され得るか、10kV以下の最大出力電圧に制限され得る。電界強度を所望の範囲内に維持するために、伝達チャネルの高さは、いくつかの実施形態において、最大約3.3mm(10kV/3kV/mm)に制限され得る。
【0030】
伝達チャネルの幅は、実際には、少なくとも0.5mmから4mm以下の範囲に制限され得る。チャネルの最大幅は、傾斜アジャスタの2つのチャンバの間の物理的な空間によって制限され得る。チャネルが幅広い場合、中間層内の材料は、中間層内の材料が薄くなって構成中において支持されず、チャネルの壁は容易に離脱し得る。また、ER流体の等価直列抵抗もチャネル幅が広がるにつれて減少し、それによって電力消費は増加するであろう。最低M7(US)までの靴のサイズの範囲において、実質的な幅は4mm未満に制限され得る。
【0031】
伝達チャネル60の流量調節部分61内の対向電極は、通電によって流量調節部分61内のER流体59の粘度を高め、それによって、チャネル60を通るER流体59の流れを減速または停止し得る。伝達チャネル60を通る流れが可能になると、セクション72に対する下向きの力は、ER流体59を内側チャンバ36から伝達チャネル60を通って外側チャンバ35内に押し込む。ER流体59が内側チャンバ36から外側チャンバ35内に伝達されるにつれて、セクション72は、本体65に向かって下方に移動し、セクション71は、上方に移動して本体65から遠ざかる。逆に、(伝達チャネル60を通る流れが可能になった時に)セクション71に対する下向きの力は、ER流体59を外側チャンバ35から伝達チャネル60を通って内側チャンバ36に押し込む。ER流体59が外側チャンバ35から内側チャンバ36に伝達されるにつれて、セクション71は、本体65に向かって下方に移動し、セクション72は、上方に移動して本体65から遠ざかる。図10A図10Dと関連付けて以下にさらに詳述するように、セクション71およびセクション72の相対的な高さの変化により、底部支持プレート29に対する上部支持プレート41の傾斜角度が変化する。
【0032】
伝達チャネルの所望の長さは、使用時に傾斜アジャスタのチャンバの間の最大圧力差の関数であり得る。チャネルが長くなると、耐えられ得る圧力差は大きくなる。最適なチャネルの長さは、用途および構成に依存し得、したがって、様々な実施形態によって異なり得る。長いチャネルによる不利益は、電界が除去された時の流体の流れにかかる制限が大きいことである。いくつかの実施形態において、チャネルの長さの実質的な制限は、25mm~350mmの範囲内である。少なくともいくつかの実施形態において、流量調節部分61は、少なくともL/w比50を有し得る。ここで、Lは流量調節部分61の長さであり、wは流量調節部分61の平均幅である。他の実施形態における伝達チャネル流量調節部分のL/W比の例示的最小値は、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、および170を含む。いくつかの実施形態において、流量調整伝達チャネル部分でER流体と接触する各対向電極の最小面積は、平均チャネル幅4mmの伝達チャネルの場合で800平方ミリメートルであり得る。以下にさらに詳述するように、電極の装着特徴部は、チャネルの壁内に封入され得るため、ER流体と接触し得ない。そのため、電極の総面積は、露出している機能的面積を上回り得る。
【0033】
図4Cから分かるように、外側チャンバ35の壁67は、上部側66から上方に延在して内側部セクション75に結合する外側部セクション73を有し、内側部セクション75は、セクション71に結合されている。セクション75および71は、外側チャンバ35の外形に凹部を形成する。この凹部により、システム内で必要とされるER流体59の総体積を低減することができる。図4A図4Cの実施形態において、外側チャンバ35のみが外部凹部を含む。他の実施形態において、外側チャンバおよび内側チャンバの両方が外部凹部を含み得る。さらに他の実施形態において、内側チャンバのみが凹部を含み得る。さらに他の実施形態において、内側チャンバも外側チャンバも凹部を含まない。
【0034】
いくつかの実施形態において、傾斜アジャスタチャンバは、蛇腹形状を有し得る。例えば、図4Cから分かるように、外側部セクション73は、外側チャンバ35の蛇腹形状を画定する折り目を有する。壁68の側部セクション74も、内側チャンバ36の蛇腹形状を画定する折り目を有する。図4A図4Cの実施形態において、外側チャンバの側部は、内側チャンバの側部よりも多くの折り目を有する。いくつかの実施形態において、両側のチャンバが同じ数の折り目を有し得る反面、さらに他の実施形態においては、内側チャンバが外側チャンバよりも多くの折り目を有し得る。チャンバの蛇腹形状により、チャンバの膨張および収縮中において湾曲が増しやすくなる。これは、システム内で必要とされるER流体の総量を減らすことに加え、摩耗を最小限に抑えることにも役立つ。いくつかの実施形態において、一方または両方のチャンバが蛇腹形状を有していなくてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、傾斜アジャスタ16が、底部構成要素および上部構成要素を別々に形成することによって製作され得る。底部構成要素は、チャンバ35および36の各々の領域69および70、伝達チャネル60の底部分、および底部電極を含み得る。上部構成要素は、チャンバ35および36の各々の壁67および68、伝達チャネル60の上部分、および上部電極を含み得る。底部構成要素の上部側は、いったん形成されると、上部構成要素の底部側に接合され得る。その後、チャンバ35、チャンバ36、および伝達チャネル60の内部体積を含む内部体積は、ER流体59で満たされ得、内部体積が封止され得る。
【0036】
図5A図5Cは、傾斜アジャスタ16の底部構成要素を形成するステップを示す。まず、図5Aに示すように、第1の層101が射出成形される。層101は、底部構成要素の底部層を形成するであろう。層101の境界線は、後方延在部103および104を除き、本体65の境界線の形状と同じ形状を有する。貫通穴51の最底部分を形成する開口51.1と、アパチャー37の最底部分を形成する開口37.1を除き、層101は切れ目がない。層101の上面105は、隆起部分106を含む。隆起部分106には、底部電極107に対応し、底部電極107用の安着部(seat)を画定する形状が備えられている。
【0037】
図5Aにも示されている底部電極107は、切れ目のない金属シートである。いくつかの実施形態において、底部電極107は、厚さ.05mm、1010ニッケルめっきの冷間圧延鋼から形成され得る。電極107は、リード53を取り付けるためのパッド108を含む。電極107の縁は、両方の縁に沿って形成された一連のスロット109を含む。スロット109の例示的な寸法は、.5mm×1mmである。以下にさらに詳述するように、電極107を所定の位置に固定するために、底部構成要素の成形中に材料がスロット109に流れ込み得る。
【0038】
延在部103および104は、傾斜アジャスタ16がER流体59で満たされ得る湯口を有するネックの部分を形成するであろう。充填後、それらの湯口は封止され得、ネックは除去され得る。延在部103内のチャネル129は、外側湯口の一部分を形成するであろう。延在部104内のチャネル110は、内側湯口の一部分を形成するであろう。
【0039】
図5Bでは、電極107が隆起部分106に取り付けられている。いくつかの実施形態において、感圧接着剤(PSA)が電極107の底面および/または隆起部分106の上面に塗布されて、その後の成形作業(以下に記載)中において電極107を所定の位置に保持し得る。リード53は、半田付け、導電性エポキシの使用、または他の技法によって所定の位置に置かれ、パッド108に取り付けられ得る。
【0040】
電極107およびリード53の取り付け後、第2の層112は、層101上にオーバーモールドされる。得られた傾斜アジャスタ16の底部構成要素115が、図5Cに示されている。チャンバ35および36の各々の領域69および70は、底部構成要素115の上面116に画定されている。伝達チャネル60の底部分60.1も同様に上面116に形成されている。電極107の一部分は、底部分60.1内で露出している。層101の開口51.1および37.1と整列する層112の開口51.2および37.2は、完成した傾斜アジャスタ16の貫通穴51およびアパチャー37の追加部分を形成するであろう。層112は、層101の延在部103および104を被せる延在部113および114も含む。上面116からリード53の上に延在する隆起領域119は、傾斜アジャスタ16の上部構成要素の底面の凹部に嵌合するであろう。上面116に凹部120が形成されて、リード54に対応する対応隆起領域を上部構成要素の底面で受容する。
【0041】
いくつかの実施形態において、層101は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から射出成形され得る。層112は、追加TPUの射出成形によって(電極107およびリード53が取り付けられた)層101上にオーバーモールドされ得る。層112は、層101を形成するために使用されたものと同じタイプのTPUから形成され得る。
【0042】
図6A図6Cは、傾斜アジャスタ16の上部構成要素を形成するステップを示す。まず、図6Aに示すように、第1の層151は射出成形される。層151は、上部構成要素の上部層を形成するであろう。層151の境界線は、後方延在部153および154を除き、本体65の境界線の形状と同じ形状を有する。貫通穴51の最上部分を形成する開口51.3と、アパチャー37の最上部分を形成する開口37.3を除き、層151は切れ目がない。層151の上面155は、隆起部分156を含む。隆起部分156には、上部電極157に対応し、上部電極157用の安着部を画定する形状が備えられている。図6Aからも分かるように、層151は、反対の壁67および68を含み、反対の壁67および68は、その縁周囲で層151の残りの部分に結合されている。図6Aにおいて、層151は、図4Aの傾斜アジャスタ16の向きから反転している。特に、層151の底部側が図6Aで視認できる。壁67および68を囲む層151の上部側の部分は、図6Aでは見えない部分であるが、完成した傾斜アジャスタ16における本体65の上部66を形成するであろう。延在部153および154は、傾斜アジャスタ16がER流体59で満たされ得る湯口を有するネックの部分を形成するであろう。延在部153内のチャネル179は、外側湯口の一部分を形成するであろう。延在部154内のチャネル160は、内側湯口の一部分を形成するであろう。
【0043】
上部電極157も図6Aに示されている。電極157も切れ目のない金属シートであり、電極107を形成するために使用された同じ材料から形成され得る。電極157は、リード54を取り付けるためのパッド158を含む。電極157の縁は、両方の縁に沿って形成された一連のスロット159を含む。スロット159の例示的な寸法は、電極107のスロット109の寸法と同じであり得る。
【0044】
電極157は、図6Bで隆起部分156に取り付けられている。いくつかの実施形態において、PSAが電極157の上面および/または隆起部分156の底面に塗布され、その後の成形作業(以下に記載)中において電極157を所定の位置に保持し得る。リード54は、半田付け、導電性エポキシの使用、または他の技法によって所定の位置に置かれ、パッド158に取り付けられ得る。
【0045】
電極157およびリード54の取り付け後、第2の層162は、層151上にオーバーモールドされる。得られた傾斜アジャスタ16の上部構成要素165が、図6Cに示されている。壁67および68内の各々のチャンバ35および36の内部領域への開口は、上部構成要素165の底面166に画定されている。伝達チャネル60の上部分60.2も同様に底面166に形成されている。電極157の一部分は、上部分60.2内で露出している。層151の開口51.3および37.3と整列する層162の開口51.4および37.4は、完成した傾斜アジャスタ16の貫通穴51およびアパチャー37の追加部分を形成するであろう。層162は、層151の延在部153および154を被せる延在部163および164も含む。底面166からリード54の上に延在する隆起領域169は、底部構成要素115の上面116の凹部120内に嵌合するであろう。底面166には、底部構成要素115の上面116にある隆起領域119を受容する凹部170が形成されている。
【0046】
いくつかの実施形態において、層151は、TPUから射出成形され得る。層162は、追加TPUの射出成形によって(電極157およびリード54が取り付けられた)層151上にオーバーモールドされ得る。層151および162は、層101および112を形成するために使用されたものと同じタイプのTPUから形成され得るか、異なるタイプのTPUから形成され得る。
【0047】
図7Aは、底部構成要素115および上部構成要素116が製作された後の傾斜アジャスタ16の組立体を示す。上部構成要素165の底面166は、底部構成要素115の上面116と接触するように配置される。構成要素115および165は、底部分60.1と上部分60.2が整列して伝達チャネル60を形成し、領域69が壁67によって境された空洞の内部への開口と整列して外側チャンバ35を形成し、領域70が壁68によって境された空洞の内部への開口と整列して内側チャンバ36を形成し、隆起領域119が凹部170内に配置され、隆起領域169が凹部120内に配置されるように組み立てられる。
【0048】
図7Bは、いくつかの実施形態に係る、組立中の構成要素115および165の整列を示す。ダボ91は、層101の穴50.1および層112の穴50.2によって形成された構成要素115の後方外側穴を通して挿入される。ダボ91はその後、層151の穴50.3および層162の穴50.4によって形成された構成要素165の後方外側穴を通して挿入される。同様の方式で、ダボ92は、構成要素115の後方内側穴および構成要素165の後方内側穴を通して挿入され、ダボ93は、構成要素115の前方外側穴および構成要素165の前方外側穴を通して挿入され、ダボ94は、構成要素115の前方内側穴および構成要素165の前方内側穴を通して挿入される。その後、面116および166とが接触するまで、構成要素115および165は、ダボ91~94沿いに摺動され得る。その後、RF溶接または化学接着剤を使用して面116および166とが互いに接合され得る。
【0049】
図7Cは、構成要素115および165とを接合した後、ただし、傾斜アジャスタ16をER流体59で満たす前の、傾斜アジャスタ16の拡大斜視図である。説明のために、層101、112、151、および152が図7Cに示されている。しかし、少なくともいくつかの実施形態(例えば、すべての層に同じ色の同じ材料が使用されている場合)においては、個々の層が傾斜アジャスタ16内で区別できないことがある。
【0050】
ネック193は、層101および112の各々の後方延在部103および113のみならず、層151および162の各々の後方延在部153および163によって形成されている。チャネル129および179によって形成された湯口191は、外側チャンバ35内への通路となる。ネック194は、層101および112の各々の後方延在部104および114のみならず、層151および162の各々の後方延在部154および164によって形成されている。チャネル110および160によって形成された湯口192は、内側チャンバ36内への通路となる。その後、ER流体59は、湯口191または192の一方を通って、湯口191または192の他方から流出するまで注入され得る。いくつかの実施形態において、米国特許出願公開第2017/0150785号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような脱気手順が用いられ得る。いくつかの実施形態において、「Degassing Electrorheological Fluid(電気粘性流体の脱気)」(本出願と同じ日に出願され、代理人整理番号215127.02298/170259US04を有する)と題する米国仮特許出願(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような脱気手順が用いられ得る。充填および脱気の後、湯口191および192が、(例えば、湯口191および192にわたるRF溶接によって)封止され得、それにより、チャンバ35および36の内部体積および伝達チャネル60によって形成された内部体積を封止し得る。その後、封止部の後方にあるネック193および194の部分が切り取られ得る。
【0051】
図8は、図4Bの断面図の拡大部分であり、埋め込み電極107および157を有する伝達チャネルのさらなる詳細を示す。底部電極107は、流量調節部分61内の伝達チャネル60の底部をまたぐ。上部電極157は、流量調節部分61内の伝達チャネル60の上部をまたぐ。電極107および157の側縁は、伝達チャネル60の側部を越えて、本体65の材料内にまで延在する。図8から分かるように、本体65の材料は、スロット109および159へと流入し、スロット109および159の内部で凝固して、電極107および157を所定の位置に固定する。上述のように、いくつかの実施形態において、伝達チャネル60は、1ミリメートル(mm)の電極間の最大高さh、2mmの平均幅(w)を有し得る。
【0052】
図9は、靴10の電気系統の構成要素を示すブロック図である。図9のブロックへの/からの個々の線は、信号(例えば、データおよび/または電力)の流れ経路を表し、必ずしも個々の導電体を表すことを意図していない。電池パック13は、再充電可能なリチウムイオン電池201、電池コネクタ202、およびリチウムイオン電池保護IC(集積回路)203を含む。保護IC203は、異常な充電および放電状態を検出し、電池201の充電を制御し、他の従来の電池保護回路動作を行う。電池パック13は、コントローラ47と通信するための、かつ電池201を充電するためのUSB(ユニバーサルシリアルバス)ポート208も含む。電力経路制御ユニット209は、電力がコントローラ47にUSBポート208から供給されるか、電池201から供給されるかを制御する。オン/オフ(O/O)ボタン206は、コントローラ47および電池パック13をアクティブ化または非アクティブ化する。LED(発光ダイオード)207は、電気系統がオンかオフかを示す。電池パック13の上記の個々の要素は、従来のものであってもよく、本明細書中に記載の新規かつ進歩的な方式で組み合わされかつ用いられる、市販の構成要素であってもよい。
【0053】
コントローラ47は、PCB46上に収容された構成要素のみならず、コンバータ45を含む。他の実施形態において、PCB46の構成要素およびコンバータ45は、単一のPCB上に含まれ得、または、なんらかの他の方式でパッケージ化され得る。コントローラ47は、プロセッサ210、メモリ211、慣性計測ユニット(IMU)213、および低エネルギー無線通信モジュール212(例えば、BLUETOOTH通信モジュール)を含む。メモリ211は、プロセッサ210によって実行され得る命令を記憶し、他のデータを記憶し得る。プロセッサ210は、メモリ211によって保存されかつ/またはプロセッサ210に記憶された命令を実行し、その実行により、コントローラ47は、本明細書中に記載されたような動作が行われる。本明細書中でいう命令は、ハードコードされた命令および/またはプログラム可能な命令を含み得る。
【0054】
IMU213は、ジャイロスコープおよび加速度計および/または磁力計を含み得る。IMU213によって出力されたデータは、靴10の、したがって靴10を着用した足の向きおよびモーションの変化を検出するために、プロセッサ210によって用いられ得る。以下により詳細を説明するように、プロセッサ10は、そうした情報を用いて、靴10の一部分の傾斜がいつ変化すべきかを判定し得る。無線通信モジュール212は、ASIC(特定用途向け集積回路)を含み得、プログラミングおよび他の命令をプロセッサ210に伝達するためのみならず、メモリ211またはプロセッサ210によって記憶され得るデータをダウンロードするために用いられ得る。
【0055】
コントローラ47は、低ドロップアウト電圧レギュレータ(LDO)214およびブーストレギュレータ/コンバータ215を含む。LDO214は、電池パック13から電力を受信し、定電圧をプロセッサ210、メモリ211、無線通信モジュール212、およびIMU213に出力する。ブーストレギュレータ/コンバータ215は、コンバータ45に許容入力電圧を提供するレベル(例えば、5ボルト)に、電池パック13からの電圧をブーストする。その後、コンバータ45は、その電圧をはるかに高いレベル(例えば、5000ボルト)に増加させ、その高電圧を傾斜アジャスタ16の電極107および157にわたって供給する。ブーストレギュレータ/コンバータ215およびコンバータ45は、プロセッサ210からの信号によって有効化/無効化される。コントローラ47は、外側FSR31から、かつ内側FSR32から、信号をさらに受信する。FSR31および32からのそれらの信号に基づいて、プロセッサ210は、着用者の足から外側流体チャンバ35および内側流体チャンバ36への力によって、チャンバ35内にチャンバ36内の圧力よりも高い圧力が生成されているかどうかを判定する。
【0056】
コントローラ47の上記の個々の要素は、従来のものであってもよく、本明細書中に記載の新規かつ進歩的な方式で組み合わされかつ用いられる、市販の構成要素であってもよい。さらに、コントローラ47は、メモリ211および/またはプロセッサ210に記憶された命令によって、靴10の中底14の前足部分の傾斜を調整するように、チャンバ35と36との間の流体の伝達を制御することに関連する、本明細書中に記載の新規かつ進歩的な動作を行うように物理的に構成されている。
【0057】
図10A図10Dは、いくつかの実施形態に従って、最小傾斜状態から最大傾斜状態なっていく時の傾斜アジャスタ16の動作を示す部分概略断面図である。最小傾斜状態において、上部プレートの底部プレートに対する傾斜角αは、前足部領域でソール構造12が提供するように構成された傾斜の最小量を表す値αminを有する。いくつかの実施形態において、αmin=0°である。最大傾斜状態おいて、傾斜角αは、ソール構造12が提供するように構成された傾斜の最大量を表す値αmaxを有する。いくつかの実施形態において、αmaxは、少なくとも5°である。いくつかの実施形態において、αmaxは=10°である。いくつかの実施形態において、αmaxは、10°より大きくてもよい。
【0058】
図10A図10Dで、底部プレート29、傾斜アジャスタ16、上部プレート41、FSR31、FSR32、および支点要素34が示されるが、他の要素は簡潔性のために省略されている。上部プレート41、およびソール構造12の他の要素は、プレート41に対する、傾斜アジャスタ16に向かう方向の下向きの力が、内側チャンバ36および外側チャンバ35ならびに/または支点34および/もしくは他の要素に伝達されるが、チャンバ35と36との間の本体65の中央部分には伝達されないように、かつプレート41に対するそのような下向きの力が、電極107および157を含む中央部分の領域を圧縮しないように構成されている。図10Eは、図10A図10Dの図に対応する区画線の近似位置を示す(最小傾斜状態の)傾斜アジャスタ16および底部プレート29の上面図である。上部プレート41は、図10Eから省略されるが、上部プレート41が図10Eに含まれていれば、上部プレート41の周辺縁は、底部プレート29の周辺縁と概ね一致するであろう。支点要素34は、図10Eの区画線による断面には示されていないが、図10A図10Dの他の要素の内側および外側に対する支点要素34の一般的な位置が破線で示される。
【0059】
外側止め具83および内側止め具82も、図10A図10Dに示される。内側止め具83は、傾斜アジャスタ16および上部プレート41が最大傾斜状態にある時、上部プレート41の内側を支持する。外側止め具82は、傾斜アジャスタ16および上部プレート41が最小傾斜状態にある時、上部プレート41の外側を支持する。外側止め具82は、上部プレート41が外側に向かって傾くことを防止する。走者はレース中においてトラックを反時計回りに進むので、靴10の着用者は、トラックの曲がっている部分を走る時に自分の左の方へ曲がっているであろう。そのような使用シナリオにおいて、右の靴のソール構造の中底を外側に傾斜させる必要はない。しかし、他の実施形態において、ソール構造は、内側または外側のいずれかに傾き得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、靴10を含む一足の靴のうちの左靴は、図10A図10Dに示されたものとはわずかに異なる方式で構成され得る。例えば、内側止め具は、靴10の外側止め具82と同様の高さに存在し得、外側止め具は、靴10の内側止め具83と同様の高さに存在し得る。かかる実施形態において、左靴の上部プレートは、上部プレートが外側に傾斜する最小傾斜状態と最大傾斜状態との間で移動する。
【0061】
内側止め具83および外側止め具82の位置は、図10A図10Dに概略的に表されているが、前述の図面には示されていない。いくつかの実施形態において、外側止め具82は、底部プレート29の外側または縁上にリム(rim)として形成され得る。同様に、内側止め具83は、底部プレート29の内側または縁上にリムとして形成され得る。
【0062】
図10Aは、上部プレート41が最小傾斜状態にある時の傾斜アジャスタ16を示す。靴10は、靴10の着用者がレース開始の直前に立っている時もしくはスターティングブロックにいる時、または着用者がトラックの直線部分を走っている時、上部プレート41を最小傾斜状態に置くように構成され得る。図10Aにおいて、コントローラ47は、電極107および157にわたって電圧を1つ以上の流れ阻止電圧レベル(V=Vfi)に維持している。電極107および157にわたる電圧は、伝達チャネル60内のER流体59の粘度を、チャンバ35および36からの流れまたはそれらへの流れを防止する粘度レベルまで高めるのに十分な強度を有する電界を生成するほど十分に高い。いくつかの実施形態において、流れ阻止電圧レベルVfiは、電極107と157との間の電界強度を3kV/mm~6kV/mmで生成するのに十分な電圧である。図10A図10Dにおいて、通常の粘度レベル、すなわち電界による影響を受けないレベルの粘度を有するER流体59を、薄い点描を用いて示す。チャネル60を通る流れが遮断されるレベルまで上昇した粘度のER流体59は、濃い点描を用いて示す。ER流体59は図10Aに示した状態下ではチャネル60を通って流れ得ないため、上部プレート41の傾斜角αは、靴10の着用者が靴10の内側と外側との間で体重を移動しても変化しない。
【0063】
図10Bは、コントローラ47によって、上部プレート41が最大傾斜状態に置かれるべき、すなわちα=αmaxまで傾斜すべきであると判定された直後の傾斜アジャスタ16を示す。いくつかの実施形態において、以下に説明するように、コントローラ47は、靴10の着用者のかなりの歩数に基づいてそのような判定を行う。上部プレート41がαmaxまで傾斜すべきであると判定すると、コントローラ47は、靴10を着用している足が、着用者の歩行サイクルの一部分にあるかを判定し、ここで靴10は地面に接している。コントローラ47は、内側チャンバ36内のER流体59の圧力Pと外側チャンバ35内のER流体59の圧力Pの差△PM-Lが正であるかどうか、すなわちP-Pがゼロより大きいかどうかも判定する。靴10が地面に接しており、△PM-Lが正である場合、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧を、流れ可能電圧レベルVfeまで低減させる。特に、電極107および157にわたる電圧は、伝達チャネル60内のER流体59の粘度が通常の粘度レベルになるように、伝達チャネル60内の電界強度を低減させるほど十分に低いレベルまで低減される。
【0064】
電極107および157にわたる電圧をVfeレベルまで低減させると、チャネル60内のER流体59の粘度は低下する。その後、ER流体59は、チャンバ35からチャンバ36内へ流れ始める。これによって、上部プレート41の内側は底部プレート29に向かって移動し始め、上部プレート41の外側は底部プレート29から離れるように移動し始める。その結果、傾斜角αは、αminから増加し始める。
【0065】
いくつかの実施形態において、コントローラ47は、IMU213からのデータに基づいて、靴10が歩行サイクルの歩部分にあるか、地面に接しているかを判定する。特に、IMU213は、3軸加速度計および3軸ジャイロスコープを含み得る。加速度計およびジャイロスコープからのデータを用いて、かつ、走者の足の既知の生体力学、例えば歩行サイクルの様々な部分における様々な方向の回転および加速度に基づいて、コントローラ47は、靴10の着用者の右足が地面を踏んでいるかどうかを判定することができる。コントローラ47は、FSR31およびFSR32からの信号に基づいて、△PM-Lが正であるかを判定し得る。それらの信号の各々は、FSRを押し下げる着用者の足による力の大きさに対応する。それらの力の大きさおよびチャンバ35および36の既知の寸法に基づいて、コントローラ47は、FSR31およびFSR32からの信号の値を△PM-Lの大きさおよび符号に相関付けることができる。
【0066】
図10Cは、図10Bに関連する時間のすぐ直後の傾斜アジャスタ16を示す。図10Cにおいて、上部プレート41は、最大傾斜状態に達している。特に、上部プレート41の傾斜角αは、αmaxに達している。内側止め具83によって、傾斜角αがαmaxを上回ることが防止される。図10Dは、図10Cに関連する時間のすぐ直後の傾斜アジャスタ16を示す。図10Dにおいて、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧を流れ阻止電圧レベルVfiまで上昇させている。このことにより、伝達チャネル60を通るさらなる流れが防止され、上部プレート41は最大傾斜状態に保持される。通常の歩行サイクルの間、前足部が内側にロールしているので、靴にかかる右足の下向きの力は、最初は外側においてより高い。チャネル60を通る流れが防止されなかった場合、着用者の右足の外側にかかる最初の下向きの力により、傾斜角αは減少するであろう。
【0067】
いくつかの実施形態において、靴10の着用者は、上部プレート41が最大傾斜に達するように、数歩を歩く必要があり得る。したがって、コントローラ47が(IMU213ならびにFSR31およびFSR32からのデータに基づいて)着用者の足は地面から離れたと判定すると、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧を上昇させるように構成され得る。その後、コントローラ47は、靴10が地面を踏んで、△PM-Lが正であると再度判定すると、その電圧を降下させ得る。これは、所定の歩数の間、繰り返され得る。これは、最小傾斜状態から最大傾斜状態へ移行する間の様々な時間での内側-外側の圧力差△PM-L、電極107および157にわたる電圧、および傾斜角αのグラフとして図11Aに示される。
【0068】
時間T1で、コントローラ47は、靴10の上部プレート41が最大傾斜状態へ移行すべきであると判定する。時間T2で、コントローラ47は、靴10が地面を踏んでいるが、△PM-Lは負であると判定する。時間T3で、コントローラ47は、靴10が地面を踏んでおり、△PM-Lが正であると判定し、コントローラは、電極107と157との間の電圧をVfeに低減させる。その結果、上部プレート41の傾斜角αは、αminから上昇し始める。時間T4で、コントローラ47は、靴10がもはや地面を踏んでいないと判定し、コントローラは、電極107および157にわたる電圧をVfiまで上昇させる。その結果、傾斜角αは、その現在の値に保持される。時間T5で、コントローラ47は、再度、靴10が地面を踏んでいるが、△PM-Lは負であると判定する。時間T6で、コントローラ47は、靴10が地面を踏んでおり、△PM-Lは正であると判定し、コントローラ47は、再度、電極107および157にわたる電圧をVfeに低減させ、傾斜角αの上昇が再開される。時間T7で、傾斜角αは、αmaxに達する。上部プレート41のさらなる傾きが内側止め具83により防止されるため、傾斜角αの上昇は止まる。時間T8で、コントローラ47は、靴10がもはや地面を踏んでいないと判定し、コントローラ47は、再度、電極107と電極157の間の電圧をVfiまで上昇させる。コントローラ47によって上部プレート41が最小傾斜状態に移行すべきであると判定されるまで、コントローラ47は、さらなるステップサイクル(step cycle)の間、該電圧をVfiに維持する。
【0069】
図11Bは、最大傾斜状態から最小傾斜状態に移行する間の様々な時間での内側-外側の圧力差△PM-L、電極107および157にわたる電圧、ならびに傾斜角αのグラフである。時間T11で、コントローラ47は、靴10の上部プレート47が最小傾斜状態に移行すべきであると判定する。時間T12で、コントローラ47は、靴10が地面を踏んでおり、△PM-Lは負であると判定し、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧をVfeに低減させる。その結果、負の△PM-Lは、内側チャンバ36内の圧力Pmedに比べて外側チャンバ35内の圧力Platが高いと表していることから、ER流体59は、外側チャンバ35から流出し、内側チャンバ36内に流入し始め、傾斜角αは、αmaxから減少し始める。時間T13で、コントローラ47は、靴10が地面を踏んでいるが、△PM-Lが正であるとを判定し、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧をVfiまで上昇させる。その結果、上部プレート41の傾斜角αは、保持される。時間T14で、コントローラ47は、靴10が再度地面を踏んでおり、△PM-Lは負であると判定し、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧をVfeまで下げる。その結果、傾斜角αは、減少し続ける。時間T15で、傾斜角αは、αminに達する。上部プレート41のさらなる傾きが外側止め具82により防止されるため、傾斜角αの減少は止まる。時間T16で、コントローラ47は、△PM-Lが正であると判定し、コントローラ47は、再度、電極107および157にわたる電圧をVfiまで上昇させる。コントローラ47によって上部プレート41が最大傾斜状態に移行すべきであると判定されるまで、コントローラ47は、さらなるステップサイクルの間、該電圧をVfiに維持する。
【0070】
上記の例において、コントローラ47は、2つのステップサイクルの間、傾斜状態間での移行のために、電極107および157にわたる電圧を下げた。しかし、他の実施形態において、コントローラ47は、より少ないステップサイクルまたはそれ以上のステップサイクルの間、該電圧を下げ得る。最小傾斜から最大傾斜に移行するためのステップサイクルの数は、最大傾斜から最小傾斜に移行するためのステップサイクルの数と同一でなくてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、コントローラ47は、初期化後の歩数を数え、該歩数が、靴10の着用者がトラックのコーナーの一部分に位置するのに十分なものであるかを判定することにより、最大傾斜位置に異動すべき時期を判定する。通常、陸上競技の選手の歩幅の長さは、非常に一貫している。トラックの寸法および各トラックレーンでのスタートラインからコーナーまでの距離は、コントローラ47によって記憶され得る既知の量である。靴10の着用者からコントローラ47への、該靴10の着用者に割り当てられたトラックレーンを示す入力のみならず、該着用者の歩幅の長さを示す入力に基づいて、コントローラ47は、ランニング中の歩数を記憶することによって、着用者のトラックでの位置を判定することができる。上述したように、コントローラ47は、IMU213からのデータに基づいて、靴10が歩行サイクル内にあり得る場合を判定することができる。これらの歩行サイクルの判定は、一歩踏み出した時を示すことができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、靴10を含む一足の靴のうちの左靴は、靴10に関する上記の方式と同様に動作し得るが、最大傾斜状態は、左靴の上部プレートが外側に向かって最大に傾斜していることを表す。左靴のコントローラによって行われる動作は、図11Aおよび図11Bと関連付けて上述したものと同様であり、判定は、△PL-M=P-Pの符号に基づく代わりに、△PM-Lの符号に基づいていた。ここで、Pは、左靴の外側流体チャンバ内の圧力であり、Pは、左靴の内側流体チャンバ内の圧力である。
【0073】
いくつかの実施形態において、靴のコントローラは、他のタイプの入力に基づいて、最小傾斜から最大傾斜に、かつその反対に移行する時を判定し得る。いくつかのかかる実施形態において、例えば、靴の着用者は、靴から離れているいくつかの他の位置および/または着用者の胴体上に配置される1つ以上のIMUを含む衣類を着用し得る。それらのセンサの出力は、無線モジュール212(図9)と同様の無線インタフェースを介して、靴のコントローラに伝達され得る。それらのセンサから、(例えば着用者の体が、トラックのコーナーを走っている時に側部に傾くにつれて)着用者が靴の上部プレートを傾斜させる必要性と一致する体の位置を占めたことを示す出力を受信すると、コントローラは、靴の上部プレートを傾斜させる動作を行うことができる。さらに他の実施形態において、靴のコントローラは、何らかの他の方式で(例えば、GPS信号に基づいて)位置を判定し得る。
【0074】
コントローラは、ソール構造内に配置されなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、コントローラの一部のまたは全ての構成要素は、電池組立体13などの電池組立体のハウジングと共に配置され得、かつ/または履物のアッパー上に位置決めされる別のハウジングに配置され得る。
【0075】
図12Aは、さらなる実施形態に係る傾斜アジャスタ316の拡大された後方外側上面斜視図である。傾斜アジャスタ316は、傾斜アジャスタ16と関連付けて上述したものと同様に動作し、靴10のソール構造12の傾斜アジャスタ16の代わりとなり得る。さらに詳しく後述されている場合を除き、傾斜アジャスタ316は、傾斜アジャスタ16と同一または同様の構造を有し得る。図12Bは、傾斜アジャスタ316の拡大された後方内側上面斜視図である。図12Cは、傾斜アジャスタ316の拡大上面図である。図13は、図12Cに示す平面の拡大断面図である。
【0076】
傾斜アジャスタ316は、本体365を含む。外側チャンバ335の一部分は、本体365の上部366の外側から上方に延在する可撓性輪郭壁367によって境されている。本体365内の対応領域369によって境されている外側チャンバ335の別の一部分(図13)。内側チャンバ336の一部分は、上部側366内側から上方に延在する可撓性輪郭壁368によって境されており、内側チャンバ336の別の一部分は、本体365内の対応領域370によって境されている。領域370は、図12A図13では視認できないが、図14には示されている(後述)。
【0077】
外側チャンバ335は、流体伝達チャネル360(図12C)を通って内側チャンバ336と流体連通しており、流体伝達チャネル360は、本体365の中央部分に画定され、チャンバ335と336との間に延在する。ER流体59は、チャンバ335およびチャンバ336ならびに伝達チャネル360を満たしている。一対の対向電極は、伝達チャネル360内に位置決めされており、伝達チャネル360の流量調節部分に沿って延在する。図12A図13の例において、流量調節部分は、伝達チャネル360全体と同延である。リード353および354は、底部とそれぞれ電気的に接触しており、上部電極は、コンバータ45に接続され得る。
【0078】
チャンバ335は、本体365の平面において、本体65の平面におけるチャンバ35の形状に類似した形状を有するが、チャンバ35とは異なる垂直輪郭を有する。特に、壁367の外側部セクションは、折り目を含まない。しかし、チャンバ35と同様、チャンバ335は、その外形に凹部を含む。同様に、チャンバ336は、本体365の平面において、本体65の平面におけるチャンバ36の形状に類似した形状を有するが、チャンバ36とは異なる垂直輪郭を有する。チャンバ335の壁367と同様、壁368の外側部セクションは折り目を含まない。チャンバ336の上部は概ね平坦だが、ある領域に形成された谷部599を含む。
【0079】
金属シートから形成された電極107および157を含む傾斜アジャスタ16とは異なり、傾斜アジャスタ316は、導電性ゴムから形成された電極を含む。さらに、傾斜アジャスタ316の電極は、電極107および157とは異なる断面プロフィールおよび相対位置を有する。図13から分かるように、上部電極457の断面は、時計回りに90度回転した「C」の形状を概ね有する。上部電極の凹状内側は下方に面し、流量調節部分に沿って伝達チャネル360の上壁および側壁を形成する。電極457の外側のみならず、縁付近の電極457の内側の小さな部分は、溝594、595、および597おいて本体365の材料に埋め込まれている。底部電極407は、半円に結合された正方形の断面を概ね有する。電極407の底部分は、溝596において本体365の材料に埋め込まれている。半円形の断面形状を有する電極407の部分は、上方に伝達チャネル360内に突出し、電極457の凹状内側の凹部内に突出している。
【0080】
いくつかの実施形態において、ER流体59に露出している電極457の内側凹状側部の半径および凹部内に突出している電極407の部分の半径は、伝達チャネル60の断面形状が半円環となるように、共に円形かつ同心である。いくつかのかかる実施形態において、ER流体59に露出している電極457の内側凹状側部の半径および凹部内に突出している電極407の部分の半径の値は、それぞれ1.5mmおよび0.5mmである。電極407および457を形成し得る材料の一例は、RTP社によってEMI 2862-60Aという製品名で販売され、ショアA硬度が60であり、典型的な電気特性として、体積抵抗率が1ohms-cm未満(ASTM D 257に準拠して測定)、表面抵抗率が10,000ohms/square未満(ASTM D 257およびESD STM11.11に準拠して測定)、表面抵抗率が1000ohm未満(ESD STM11.11に準拠して測定)、静的減衰率(MIL-PRF-81705Dによる、5kV~50V、12%RH)が2秒未満(FTMS101C 4046.1に準拠して測定)である埋め込みステンレス鋼繊維を有する熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TEO)である。
【0081】
他の実施形態において、傾斜アジャスタは、傾斜アジャスタ316と同様であり(かつ電極407および457と同様の電極を含み)、蛇腹形状チャンバ(例えば、傾斜アジャスタ16のチャンバ35および36と同様)をさらに含み得る。代替として、かかる実施形態におけるチャンバのうちの1つだけが蛇腹形状を含み得る。
【0082】
傾斜アジャスタ316は、図14に示すように、底部構成要素315と上部構成要素365とを別々に形成することによって製作され得る。底部構成要素は、チャンバ335および336の各々の領域369および370、伝達チャネル360の底部分、および底部電極407を含み得る。上部構成要素は、チャンバ335および336の各々の壁367および368、伝達チャネル360の上部分、および上部電極457を含み得る。
【0083】
底部構成要素315は、2-ステップの射出成形手順で形成され得る。第1のステップでは、電極407のない底部構成要素315に対応する層が成形される。その層では、電極407の一部分が埋め込まれる溝596(図13参照)が、伝達チャネル360の底部分に形成される。組み立て中において上部電極457の縁が配置される溝594および595が、伝達チャネル360の底部分の縁に形成される。リード353もその層内に成形され得、いったん形成されると、リードの一部分が溝596内へと延在して下側電極407に接触する。射出成形手順の第2のステップでは、電極407が適所に成形され得る。
【0084】
上部構成要素365も、2-ステップの射出成形手順で形成され得る。第1のステップでは、電極457のない上部構成要素365に対応する層が成形される。その層では、電極457の一部分が埋め込まれる溝597(図13参照)が、伝達チャネル360の上部分に形成される。リード354もその層内に成形され得、いったん形成されると、リードの一部分が溝597内へと延在して上側電極457に接触する。射出成形手順の第2のステップでは、電極457が適所に成形され得る。
【0085】
構成要素315および365が形成された後、底部構成要素315の上部側が、上部構成要素365の底部側に接合され得る。構成要素315および365は、伝達チャネル360の底部分および上部分が整列して伝達チャネル360を形成し、電極457の縁が溝594および595内へと延在するように組み立てられる。領域369は、壁367によって境された空洞の内部への開口と整列して外側チャンバ335を形成する。領域370は、壁368によって境された空洞の内部への開口と整列して内側チャンバ336を形成する。組み立て時の構成要素315および365の整列は、図7Bと関連付けて説明した方式と同様の方式で行われ得る。組み立て後、構成要素315の上部側および構成要素365の底部側の接触面は、RF溶接または化学接着剤を用いて接合され得る。その後、傾斜アジャスタ316と関連付けて説明された方式と同様の方式で、チャンバ335、チャンバ336、および伝達チャネル360の内部体積を含む内部体積がER流体59で満たされ得、内部体積が封止され得る。
【0086】
誤解を避けるために、本出願は、以下の番号付き段落(「Para.」)に記載された主題を含む。
1. 本体と、本体の外側上で外方に延在する体積可変型の外側チャンバと、本体の内側上で外方に延在する体積可変型の内側チャンバと、を備える傾斜アジャスタであって、本体の中央部分に画定され、外側チャンバと内側チャンバとの間に延在する伝達チャネルと、外側チャンバ、伝達チャネル、および内側チャンバを満たす電気粘性流体と、中央部分に埋め込まれ、伝達チャネルに沿って電気粘性流体に露出している金属シート製の第1の電極と、第1の電極とは反対側の位置で中央部分に埋め込まれ、伝達チャネルに沿って電気粘性流体に露出している金属シート製の第2の電極と、をさらに備える傾斜アジャスタを備える物品。
2. 外側チャンバに対応する傾斜アジャスタの外部部分は、伝達チャネルから外側チャンバ内への電気粘性流体の流れに応答して外方に膨張するように構成されており、内側チャンバに対応する傾斜アジャスタの外部部分は、伝達チャネルから内側チャンバ内への電気粘性流体の流れに応答して外方に膨張するように構成されている、段落1に記載の物品。
3. 伝達チャネル経路は、外側チャンバと内側チャンバとの間の非線形伝達チャネル経路に沿って延在し、第1の電極および第2の電極は、伝達チャネル経路の形状に対応する形状を各々有する、段落1または2に記載の物品。
4. 第1の電極および第2の電極の両方が延在する伝達チャネル経路の一部分は、長さLと平均幅Wとを有し、比L/Wは、少なくとも50である、段落3に記載の物品。
5. 第1の電極および第2の電極は、側縁を各々有し、側縁は、中央部分に埋め込まれ、電気粘性流体に露出していない、段落1~4に記載の物品。
6. 側縁の各々は、側縁に対応する電極を完全に貫通して延在するアパチャーを備え、アパチャーの各々は、中央部分を形成する固体材料で満たされている、段落5に記載の物品。
7. 外側チャンバは、本体の上部外側から上方に延在する可撓性外側チャンバ壁を備え、内側チャンバは、本体の上部内側から上方に延在する可撓性内側チャンバ壁を備える、段落1~6に記載の物品。
8. 外側チャンバ壁は、外側チャンバ壁中央セクションと、外側チャンバ壁中央セクションを囲む外側チャンバ壁側部セクションと、を備え、外側チャンバ壁側部セクションは、外側チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落7に記載の物品。
9. 内側チャンバ壁は、内側チャンバ壁中央セクションと、内側チャンバ壁中央セクションを囲む内側チャンバ壁側部セクションと、を備え、内側チャンバ壁側部セクションは、内側チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落7に記載の物品。
10. 外側チャンバ壁は、外側チャンバ壁中央セクションと、外側チャンバ壁中央セクションを囲む外側チャンバ壁側部セクションと、を備え、外側チャンバ壁側部セクションは、外側チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落9に記載の物品。
11. 外側チャンバおよび内側チャンバのうちの少なくとも1つは、凹部を含む外形を有する、段落1~10に記載の物品。
12. 物品は、ソール構造を備える履物品であり、傾斜アジャスタは、ソール構造の前足部分の一部を形成する、段落1~11に記載の物品。
13. プレートは、傾斜アジャスタの上方に配置され、内側チャンバおよび外側チャンバに載置され、プレートは、プレートに対する、傾斜アジャスタに向かう方向の下向きの力が、中央部分に伝達されることなく内側チャンバおよび外側チャンバに伝達されるように位置決めされる、段落12に記載の物品。
14. プレートは、傾斜アジャスタの上方に配置され、内側チャンバ、中央部分、および外側チャンバの上に延在し、プレートおよび傾斜アジャスタは、プレートに対する、傾斜アジャスタに向かう下向きの力が、第1および第2の電極を含む中央部分の領域を圧縮しないように配置されている、段落12または13に記載の物品。
15. 本体と、本体の外側上で外方に延在する体積可変型の外側チャンバと、本体の内側上で外方に延在する体積可変型の内側チャンバと、を備える傾斜アジャスタであって、本体の中央部分に画定され、外側チャンバと内側チャンバとの間に延在する伝達チャネルと、外側チャンバ、伝達チャネル、および内側チャンバを満たす電気粘性流体と、中央部分に埋め込まれ、伝達チャネルに沿って電気粘性流体に露出している導電性ゴム製の第1の電極と、第1の電極とは反対側の位置で中央部分に埋め込まれ、伝達チャネルに沿って電気粘性流体に露出している導電性ゴム製の第2の電極と、をさらに備える傾斜アジャスタを備える物品。
16. 外側チャンバに対応する傾斜アジャスタの外部部分は、伝達チャネルから外側チャンバ内への電気粘性流体の流れに応答して外方に膨張するように構成されており、内側チャンバに対応する傾斜アジャスタの外部部分は、伝達チャネルから内側チャンバ内への電気粘性流体の流れに応答して外方に膨張するように構成されている、段落15に記載の物品。
17. 伝達チャネル経路は、外側チャンバと内側チャンバとの間の非線形伝達チャネル経路に沿って延在し、第1の電極および第2の電極は、伝達チャネル経路の形状に対応する形状を各々有する、段落15または16に記載の物品。
18. 第1の電極および第2の電極の両方が延在する伝達チャネル経路の一部分は、長さLと平均幅Wとを有し、比L/Wは、少なくとも50である、段落17に記載の物品。
19. 第1の電極の凹側は、電気粘性流体に露出しており、凹側の凹部内に突出した第2の電極の一部分は、電気粘性流体に露出している、段落15~18に記載の物品。
20. 外側チャンバは、本体の上部外側から上方に延在する可撓性外側チャンバ壁を備え、内側チャンバは、本体の上部内側から上方に延在する可撓性内側チャンバ壁を備える、段落15~19に記載の物品。
21. 外側チャンバ壁は、外側チャンバ壁中央セクションと、外側チャンバ壁中央セクションを囲む外側チャンバ壁側部セクションと、を備え、外側チャンバ壁側部セクションは、外側チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落20に記載の物品。
22. 内側チャンバ壁は、内側チャンバ壁中央セクションと、内側チャンバ壁中央セクションを囲む内側チャンバ壁側部セクションと、を備え、内側チャンバ壁側部セクションは、内側チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落20に記載の物品。
23. 外側チャンバ壁は、外側チャンバ壁中央セクションと、外側チャンバ壁中央セクションを囲む外側チャンバ壁側部セクションと、を備え、外側チャンバ壁側部セクションは、外側チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落22に記載の物品。
24. 外側チャンバおよび内側チャンバのうちの少なくとも1つは、凹部を含む外形を有する、段落15~23に記載の物品。
25. 物品は、ソール構造を備える履物品であり、傾斜アジャスタは、ソール構造の前足部分の一部を形成する、段落15~24に記載の物品。
26. プレートは、傾斜アジャスタの上方に配置され、内側チャンバおよび外側チャンバに載置され、プレートは、プレートに対する、傾斜アジャスタに向かう方向の下向きの力が、中央部分に伝達されることなく内側チャンバおよび外側チャンバに伝達されるように位置決めされる、段落25に記載の物品。
27. プレートは、傾斜アジャスタの上方に配置され、内側チャンバ、中央部分、および外側チャンバの上に延在し、プレートおよび傾斜アジャスタは、プレートに対する、傾斜アジャスタに向かう下向きの力が、第1および第2の電極を含む中央部分の領域を圧縮しないように配置されている、段落25に記載の物品。
28. 本体と、本体の上部第1の側から上方に延在する体積可変型の第1のチャンバと、本体の上部第2の側から上方に延在する体積可変型の第2のチャンバと、を備える傾斜アジャスタを備え、本体の上部第1の側は、本体の上部内側および上部外側の一方であり、上部第2の側は、本体の上部内側および上部外側の他方であり、傾斜アジャスタは、本体の中央部分に画定され、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に延在する伝達チャネルと、第1のチャンバ、伝達チャネル、および第2のチャンバを満たす電気粘性流体と、中央部分に埋め込まれ、伝達チャネルに沿って電気粘性流体に露出している第1の電極と、第1の電極とは反対側の位置で中央部分に埋め込まれ、伝達チャネルに沿って電気粘性流体に露出している第2の電極と、をさらに備え、第1のチャンバは、本体の上部第1の側から上方に延在する可撓性の第1のチャンバ壁を備え、第1のチャンバ壁は、第1のチャンバ壁中央セクションと、第1のチャンバ壁中央セクションを囲む第1のチャンバ壁側部セクションと、を備え、第1のチャンバ壁側部セクションは、第1のチャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、物品。
29. 第2のチャンバは、本体の上部第2の側から上方に延在する可撓性の第2のチャンバ壁を備え、第2のチャンバ壁は、第2のチャンバ壁中央セクションと、第2のチャンバ壁中央セクションを囲む第2のチャンバ壁側部セクションと、を備え、第2のチャンバ壁側部セクションは、第2のチャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落28に記載の物品。
30. 第1のチャンバおよび第2のチャンバのうちの少なくとも1つは、凹部を含む外形を有する、段落28または29に記載の物品。
31. ソール構造を備える履物品であり、傾斜アジャスタは、ソール構造の前足部分の一部を形成する、段落28~30に記載の物品。
32. ププレートは、傾斜アジャスタの上方に配置され、第1のチャンバおよび第2のチャンバに載置され、プレートは、プレートに対する、傾斜アジャスタの方向の下向きの力が、中央部分に伝達されることなく第1のチャンバおよび第2のチャンバに伝達されるように位置決めされる、段落31に記載の物品。
33. プレートは、傾斜アジャスタの上方に配置され、第1のチャンバ、中央部分、および第2のチャンバの上に延在し、プレートおよび傾斜アジャスタは、プレートに対する、傾斜アジャスタに向かう下向きの力が、第1および第2の電極を含む中央部分の領域を圧縮しないように配置されている、段落31に記載の物品。
34. 内側部分、中央部分、および外側部分と、上部側と、を備える第1の構成要素を成形することであって、中央部分は、内側部分と外側部分との間にあり、内側チャンバおよび外側チャンバの第1の部分は、上部側上で内側部分および外側部分にそれぞれ画定され、伝達チャネルの第1の部分は、上部側上で中央部分に画定され、第1の電極の一部分は、伝達チャネルの第1の部分に沿って露出している、ことと、内側部分、中央部分、および外側部分と、底部側と、を備える第2の構成要素を成形することであって、第2の構成要素の中央部分は、第2の構成要素の内側部分と外側部分との間にあり、内側チャンバおよび外側チャンバの第2の部分は、第2の構成要素の内側部分および外側部分にそれぞれ画定され、伝達チャネルの第2の部分は、底部側上の第2の構成要素の中央部分に画定され、第2の電極の一部分は、伝達チャネルの第2の部分に沿って露出している、ことと、傾斜アジャスタを作成するために、第1の構成要素の上部側を第2の構成要素の底部側に接合することであって、内側チャンバの第1および第2の部分は、内側チャンバを形成するために組み合わせられ、外側チャンバの第1および第2の部分は、外側チャンバを形成するために組み合わせられ、伝達チャネルの第1および第2の部分は、伝達チャネルを形成するために組み合わせられ、伝達チャネルは、内側チャンバと外側チャンバを連結する、ことと、内部体積を電気粘性流体で満たすことであって、内部体積は、内側チャンバ、伝達チャネル、および外側チャンバの内部体積を含む、ことと、内部体積を封止することと、を含む、方法。
35. 第1の構成要素を成形することは、第1の構成要素の第1の層を成形することと、第1の電極を第1の構成要素の第1の層に取り付けることと、第1の構成要素の第2の層を第1の構成要素の第1の層および第1の電極上に成形することと、を含み、第2の構成要素を成形することは、第2の構成要素の第1の層を成形することと、第2の電極を第2の構成要素の第1の層に取り付けることと、第2の構成要素の第2の層を第2の構成要素の第1の層および第2の電極上に成形することと、を含み、第2の構成要素の第1の層は、内側チャンバの第2の部分を形成する可撓性内側チャンバ壁と、外側チャンバの第2の部分を形成する可撓性外側チャンバ壁と、を含む、段落34に記載の方法。
36. 第1の構成要素を成形することは、第1の構成要素の第1の層を成形することと、続いて第1の電極を第1の構成要素の第1の層内に成形することと、を含み、第2の構成要素を成形することは、第2の構成要素の第1の層を成形することと、続いて第2の電極を第2の構成要素の第1の層内に成形することと、を含む、段落34に記載の方法。
37. 第1および第2の電極の各々は、切れ目のない金属シートである、段落34または35に記載の方法。
38. 第1および第2の電極の各々は、切れ目のない1片の導電性ゴムである、段落34または36に記載の方法。
【0087】
実施形態の先述の説明は、例示および説明の目的で提示されている。先述の説明は、網羅的なものであると意図されるものではなく、または本発明の実施形態を、開示された正確な形態に制限することを意図されるものでもなく、改変および変更は、上記の教示を鑑みて可能であり、または様々な実施形態の実施から取得可能であり得る。本明細書中で論じられた実施形態は、様々な実施形態の原理および性質ならびにそれらの実際の適用を説明して、当業者が本発明を様々な実施形態で、また、考慮される特定の用途に適するような様々な改変を用いて利用することを可能にするために、選択および記載された。本明細書中で記載された実施形態の特徴のあらゆる組み合わせ、部分的組み合わせおよび置換は、本発明の範囲内にある。特許請求の範囲において、構成要素の潜在的なまたは意図された着用者またはユーザに関する言及は、構成要素の実際の着用もしくは使用、または着用者もしくはユーザの存在を、特許請求対象である発明の一部として必要とするものではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14
【外国語明細書】