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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058534
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】熱潜在性に触媒された二成分系
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20220405BHJP
   C08G 18/24 20060101ALI20220405BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20220405BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220405BHJP
【FI】
C09D175/04
C08G18/24
C08G18/73
C09D7/63
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022001518
(22)【出願日】2022-01-07
(62)【分割の表示】P 2018554777の分割
【原出願日】2017-04-18
(31)【優先権主張番号】16166720.9
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】グラール,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】クリッパート,ウーベ
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ジークムント,スウェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイカート,ヤン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】適用された二成分系を硬化させるための熱潜在性触媒の触媒活性に悪影響を及ぼすことなく、再現可能に延長されたポットライフを示す二成分系から製造されるコーティングを提供する。
【解決手段】少なくとも1つのNCO反応性化合物を含む成分A)及び少なくとも1つのポリイソシアネートを含む成分B)を含有する二成分系から製造されるコーティングであって、前記成分A)が、前記成分A)の全重量に基づいて、≧400~≦9500ppmwの水を含有し、前記成分A)及び/又は前記成分B)が、少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有する、コーティングである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのNCO反応性化合物を含む成分A)及び少なくとも1つのポリイソシ
アネートを含む成分B)を含有する二成分系であって、前記成分A)が、前記成分A)の
全重量に基づいて、≧400~≦9500ppmwの水を含有し、前記成分A)及び/又
は前記成分B)が、少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有することを特徴と
する、二成分系。
【請求項2】
前記成分A)が、前記成分A)の全重量に基づいて、≧501~≦6500ppmw、
好ましくは≧700~≦5000ppmw、特に好ましくは≧1001~≦4000pp
mw、非常に特に好ましくは≧1400~≦2400ppmwの水を含有することを特徴
とする、請求項1に記載の二成分系。
【請求項3】
前記NCO反応性化合物が、ポリヒドロキシル化合物であることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の二成分系。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネートであることを
特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の二成分系。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はペンタメチレ
ンジイソシアネートの誘導体であり、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートトリマ
ー及び/又はペンタメチレンジイソシアネートトリマーであることを特徴とする、請求項
1~4のいずれかに記載の二成分系。
【請求項6】
前記熱潜在性無機スズ含有触媒が、式I、II、若しくはIIIの環式スズ化合物又は
それらの混合物を含み:
【化1】
【化2】
(ここで、n>1)、
【化3】
(ここで、n>1)、
式中:
Dは、-O-、-S-、又は-N(R1)-を表し、
ここで、R1は、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ
原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂
環式ラジカル、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカルを表すか、
又は水素若しくはラジカル
【化4】
であるか、
又はR1及びL3が一緒になって-Z-L5-を表し;
D*は、-O-又は-S-を表し;
X、Y、及びZは、式-C(R2)(R3)-、-C(R2)(R3)-C(R4)(
R5)-、若しくは-C(R2)(R3)-C(R4)(R5)C(R6)(R7)-を
有するアルキレンラジカル、又は式
【化5】
若しくは
【化6】
を有するオルト-アリーレンラジカルから選択される同一若しくは異なるラジカルを表し

ここで、R2~R11は、独立して、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒
素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐
、脂肪族若しくは脂環式、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカル
を表すか、又は水素であり;
L1、L2、及びL5は、独立して、-O-、-S-、-OC(=O)-、-OC(=
S)、-SC(=O)-、-SC(=S)-、OS(=O)O-、-OS(=O)
、又は-N(R12)-を表し、
ここで、R12は、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテ
ロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは
脂環式ラジカル、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカルを表すか
、又は水素であり;
L3及びL4は、独立して、-OH、-SH、-OR13、-Hal、-OC(=O)
R14、-SR15、-OC(=S)R16、-OS(=O)OR17、-OS(=O
R18、又は-NR19R20を表すか、又はL3及びL4は一緒になって-L1-
X-D-Y-L2-を表し、
ここで、R13~R20は、独立して、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒
素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐
、脂肪族若しくは脂環式、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカル
を表すか、又は水素である
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の二成分系。
【請求項7】
a1)基材を提供する工程と;
b1)請求項1~6のいずれかに記載の少なくとも1つの二成分系を適用する工程と;
c1)加熱によりコーティングを硬化させる工程と
を含む、基材上にコーティングを製造するための方法。
【請求項8】
a2)基材を提供する工程と;
b2)少なくとも1つのNCO反応性化合物を含む成分A)及び少なくとも1つのポリ
イソシアネートを含む成分B)を含有する少なくとも1つの二成分系を適用する工程であ
って、成分A)及び/又は成分B)が少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有
する工程と;
c2)加熱によりコーティングを硬化させる工程と
を含む、基材上にコーティングを製造するための方法であって、工程b2)で適用中の前
記二成分系が、前記成分A)の全重量に基づいて、≧400~≦9500ppmwの水を
適用雰囲気から吸収することを特徴とする、方法。
【請求項9】
工程b2)で適用中の前記二成分系が、前記成分A)の全重量に基づいて、≧501~
≦6500ppmw、好ましくは≧700~≦5000ppmw、特に好ましくは≧10
01~≦4000ppmw、非常に特に好ましくは≧1400~≦2400ppmwの水
を吸収することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基材が、プラスチック及び/又は金属で完全に又は部分的に作製された表面を有す
ることを特徴とする、請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれかに記載の二成分系で使用するための成分A)。
【請求項12】
請求項1~6のいずれかに記載の二成分系で使用するための成分B)。
【請求項13】
請求項7~10のいずれかに記載の方法によって製造される又は製造可能なコーティン
グ。
【請求項14】
前記基材が、シャーシ、特に乗り物のシャーシ、又はその一部であってもよい、請求項
13に記載のコーティングで被覆された基材。
【請求項15】
前記シャーシ又はその一部が、金属、プラスチック、又はそれらの混合物から選択され
る材料のうちの1つ以上を含むことを特徴とする、請求項14に記載の基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分系と、基材上、特に自動車ボディ又は自動車部品上にコーティングを
製造するための方法と、この方法により得られるコーティングとに関する。本発明はさら
に、二成分系における成分A)又はB)の使用と、コーティングで被覆された基材、特に
被覆された自動車ボディ又は自動車部品とに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンコーティングは、長年にわたり既知であり、多くの分野で使用されている
。それらは一般に、適用直前に混合することによってヒドロキシル成分(成分A)及びポ
リイソシアネート成分(成分B)から製造される(二成分技術)。
【0003】
二成分系におけるヒドロキシル成分は、含水量に関して一般的な仕様に従うので、50
0ppm以下の含水量を有する溶剤は、ポリウレタン化学に好適であると特定される。
【0004】
しかしながら、ヒドロキシル成分の含水量がラッカーの硬化反応の化学量論の変化に影
響を及ぼすので、通常、500ppmよりも著しく少ない含水量が求められている。例え
ば、プラスチックラッカー塗装用の二成分ポリウレタンクリアコートでは、これは次のよ
うに現れる:100部のポリオール成分対35部の硬化剤の架橋比。供給された硬化剤の
当量(NCO):306g。硬化剤1当量あたり875gのポリオール成分が使用される
。1000ppmの含水量では、0.05モルに相当する0.875gの水が存在する。
これは、水との反応によりアミンを得るイソシアネート基(NCO基)の理論的損失が5
%に相当する。再び同じ量のNCO基が、その後の尿素形成によって理論的に消費され得
、したがってNCO基の全損失は、最大10%である。
【0005】
水との反応によるより高いNCO損失では、架橋の化学量論は既に許容できない程度に
影響され、その結果、実際にポリオール成分中の含水量は、500ppm未満又は最大で
も1000ppm未満に保持される。
【0006】
国際公開第2013/076208号には、ポリアクリレート成分と、組成物の全量に
基づいて、1重量%以下の非常に低い含水量を有する架橋剤成分とからなる溶剤含有クリ
アコートコーティング組成物が開示されている。しかしながら、国際公開第2013/0
76208号は、含水量をその中で使用される「溶剤含有」という用語の定義として規定
しているのみであり、架橋反応について詳述していない。
【0007】
耐光性コーティングは、一般に、芳香族に結合したイソシアネート基を有する生成物と
比較して、はるかにゆっくりとヒドロキシル成分と反応する脂肪族ポリイソシアネートを
ベースとするポリイソシアネート成分を用いる。したがって、反応は、ほとんどの場合触
媒されなければならない。さらに、混合物は、反応をさらに促進させるために可能な場合
に加熱される。本明細書で有利であると判明した触媒は、有機スズ化合物、特にジブチル
スズジラウレート(DBTL)である。これらは、有害な生態学的プロファイルの一般的
な欠点を有しており、例えば、既に有機スズ化合物の物質クラスが、殺生物剤として添加
されている海洋コーティングから完全に禁止されている。
【0008】
イソシアネート基とNCO反応性基との間の架橋反応はゆっくりと進行し、触媒作用に
よって著しく迅速に進行するので、室温でさえ、狭い使用窓(ポットライフ)のみが二成
分系の即時配合された混合物の使用のために残存し、これは触媒の存在によりさらに短縮
される。
【0009】
スプレー塗装、特に溶剤含有クリアコートにおけるさらに重要な側面は、硬化後のラッ
カーの外観である。前記外観は、まだ湿っているラッカーが基材上に膜を形成する流動段
階において、及びオーブン中での加熱の結果としてラッカー材料が溶剤を放出する最初の
乾燥期間において、実質的に決定され、初期の架橋反応は、連続膜を形成する。
【0010】
2つの成分の混合後に架橋反応をほとんど促進しないが、適用後に前記反応を著しく促
進する触媒を開発する試みは不十分ではない。したがって、国際公開第2011/051
247号には、とりわけ、ポリイソシアネートを熱潜在性無機スズ含有触媒の存在下でN
CO反応性化合物と反応させるコーティング分野において使用するためのポリイソシアネ
ート重付加生成物が記載されている。しかしながら、これでさえ、コーティング組成物に
必要とされるように、習慣的に使用される触媒、特にDBTLと比較して、再現可能に延
長されたポットライフをすべての二成分系について確実にすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2013/076208号
【特許文献2】国際公開第2011/051247号
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、成分A)と成分B)との混合時に、温度を上昇させるこ
とによって適用された二成分系を硬化させるための熱潜在性触媒の触媒活性に悪影響を及
ぼすことなく、基材のコーティングのための再現可能に延長されたポットライフを示す二
成分系を提供することである。また、二成分系から得られるコーティングの物理的特性、
特に硬度の発現が、非熱潜在性触媒で製造され、従来技術から既知であるコーティングと
少なくとも等しいことが保証されるべきである。
【0013】
この目的は、本発明に従い、少なくとも1つのNCO-反応性化合物を含む成分A)及
び少なくとも1つのポリイソシアネートを含む成分B)を含有する二成分系であって、成
分A)が、成分A)の全重量に基づいて、≧400~≦9500ppmwの水を含有し、
成分A)及び/又は成分B)が、少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有する
ことを特徴とする二成分系によって解決された。
【0014】
驚くべきことに、成分A)中のある特定の量の水、好ましくはポリウレタン化学のため
に特定された限度を超える量の水が、硬化に対する後の触媒作用を損うことなく、熱潜在
性無機スズ含有触媒を含有する二成分系において著しく延長されたポットライフをもたら
すことが分かった。同時に、得られたコーティングの物理的特性、特に硬度の発現は、少
なくとも同じレベルで維持される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の好ましい実施形態では、成分A)は、成分A)の全重量に基づいて、≧501~
≦6500ppmw、好ましくは≧700~≦5000ppmw、特に好ましくは≧10
01~≦4000ppmw、非常に特に好ましくは≧1400~≦2400ppmwの水
を含有する。これは、ポットライフがさらに延長され、熱潜在性触媒の熱潜在性作用がさ
らに増幅されるという利点を有する。さらに、製造されたコーティングのラッカーの外観
がさらに改善され、二成分系の適用がさらに容易になる。
【0016】
本発明の文脈において、含水量は、DIN53715(DIN53715は、DIN5
1777パート1(1973年版)に基づく)に従った容積法としてのカールフィッシャ
ー滴定によって決定される。含水量の測定範囲は、0.01~<99重量%である。
【0017】
本発明の文脈において、ポットライフは、塗料がその粘度を2倍にした時間として定義
される(DINカップ、4mmの流出時間を2倍にすることによって間接的に決定される
)。
【0018】
本発明によれば、二成分系の少なくとも成分A)、好ましくは成分A)のみが上記の量
の範囲の水を含有することが提供される。この水は、任意の所望の経路によって成分A)
に導入され得、これらの経路は、成分A)中に必要な水の全量を達成するために互いに補
完し得る。例えば、成分A)中に存在する化合物、特にNCO反応性化合物を介した生成
の結果として、適切な量の水が導入され得る。同様に、成分A)自体に水を添加すること
も可能である。
【0019】
さらに好ましい実施形態では、成分A)中の水は、別個に添加され、及び/又は生成の
結果としてNCO反応性化合物中に存在する。
【0020】
本発明によれば、「含む(comprising)」又は「含有する(contain
ing)」という表現は、好ましくは、「本質的に~からなる(consisting
essentially of)」及び特に好ましくは「からなる(consistin
g of)」を意味する。
【0021】
本発明によれば、成分A)は、少なくとも1つのNCO反応性(イソシアネート反応性
)化合物を含む。NCO反応性化合物は、ポリイソシアネートと反応して重付加化合物、
特にポリウレタンを生成することができる化合物を意味すると理解される。本発明の文脈
において、ポリイソシアネートは、1分子あたり少なくとも2つのイソシアネート基を有
する化合物である。
【0022】
使用されるNCO反応性化合物は、少なくとも1.5の平均OH又はNH官能価を有す
る当業者に既知の任意の化合物であり得る。これらは、例えば、低分子量ジオール(例え
ば、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-又は-1,2-ジオール、ブタン-
1,4-ジオール)、トリオール(例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン)及
びテトラオール(例えば、ペンタエリスリトール)、短鎖ポリアミンであり得るが、ポリ
ヒドロキシル化合物、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ
ウレタンポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエ
ーテルポリアミン、ポリブタジエンポリオール、ポリアクリレートポリオール及び/又は
ポリメタクリレートポリオール、並びにそれらのコポリマーもあり得、以下ポリアクリレ
ートポリオールと呼ばれる。
【0023】
さらに好ましい実施形態では、NCO反応性化合物は、ポリヒドロキシル化合物である
【0024】
ポリヒドロキシル化合物は、好ましくは、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマト
グラフィー(GPC)によって測定して、>500ダルトン、より好ましくは800~1
00000ダルトン、特に1000~50000ダルトンの質量平均分子量Mwを有する
【0025】
ポリヒドロキシル化合物は、好ましくは30~400mgKOH/g、特に100~3
00KOH/gのOH価を有する。ヒドロキシル価(OH価)は、アセチル化において1
gの物質が結合した酢酸の量に等しいmg数の水酸化カリウムを指す。決定では、試料を
無水酢酸/ピリジンで煮沸し、形成された酸を水酸化カリウム溶液で滴定する(DIN5
3240-2)。
【0026】
ポリヒドロキシル化合物のDIN EN ISO11357-2によるDSC測定を用
いて測定したガラス転移温度は、好ましくは-150~100℃、より好ましくは-12
0℃~80℃である。
【0027】
ポリエーテルポリオールは、それ自体既知の方法で、塩基触媒下での好適な出発分子の
アルコキシル化によって、又は二重金属シアン化物化合物(DMC化合物)を使用して得
ることができる。ポリエーテルポリオールの製造に好適な出発分子は、例えば、単純な低
分子量ポリオール、水、少なくとも2つのN-H結合を有する有機ポリアミン、又はその
ような出発分子の任意の所望の混合物である。
【0028】
アルコキシル化、特にDMC法によるポリエーテルポリオールの製造のための好ましい
出発分子は、特に単純なポリオール、例えばエチレングリコール、プロピレン1,3-グ
リコール及びブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグ
リコール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、グリセロール、トリメチロールプロ
パン、ペンタエリスリトール、並びにそのようなポリオールと、例えば以下の実施例で特
定されるタイプのジカルボン酸との低分子量ヒドロキシル含有エステル、又はそのような
単純ポリオールの低分子量エトキシル化若しくはプロポキシル化生成物、又はそのような
修飾若しくは非修飾アルコールの任意の所望の混合物である。アルコキシル化に好適なア
ルキレンオキシドは、特にエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドであり、アル
コキシル化に任意の順序で、又は混合物中で使用することができる。
【0029】
好適なポリエステルポリオールは、例えば欧州特許第A-0994117号及び同第A
-1273640号に記載されている。ポリエステルポリオールは、低分子量ポリカルボ
ン酸誘導体、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、
ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロ
ロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、マレイン酸、
無水マレイン酸、フマル酸、二量体脂肪酸、三量体脂肪酸、フタル酸、無水フタル酸、イ
ソフタル酸、テレフタル酸、クエン酸、若しくはトリメリット酸と、低分子量ポリオール
、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサ
ンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプ
ロパン、1,4-ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオ
ール、ブタン-1,2,4-トリオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリ
コール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール
、ジブチレングリコール、及びポリブチレングリコールとの重縮合による、又はε-カプ
ロラクトンのような環式カルボン酸エステルの開環重合による既知の方法で製造すること
ができる。さらに、ヒドロキシカルボン酸誘導体、例えば乳酸、桂皮酸、又はω-ヒドロ
キシカプロン酸を重縮合してポリエステルポリオールを得ることも可能である。しかしな
がら、オレオケミカル由来のポリエステルポリオールを使用することも可能である。その
ようなポリエステルポリオールは、例えば、少なくとも部分的にオレフィン性不飽和の脂
肪酸含有脂肪混合物のエポキシ化トリグリセリドを1~12個の炭素原子を有する1つ以
上のアルコールと完全に開環させ、続いてアルキルラジカル中に1~12個の炭素原子を
有するアルキルエステルポリオールへのトリグリセリド誘導体の部分エステル交換によっ
て製造することができる。
【0030】
ポリウレタンポリオールは、好ましくはポリエステルポリオールプレポリマーと好適な
ジ又はポリイソシアネートとの反応により製造され、例えば欧州特許第A-127364
0号に記載されている。好適なポリシロキサンポリオールは、例えば国際公開第A-01
/09260号に記載されており、そこに引用されているポリシロキサンポリオールは、
好ましくはさらなるポリヒドロキシル化合物、特により高いガラス転移温度を有するもの
と組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明に従う非常に特に好ましいポリアクリレートポリオールは、一般にコポリマーで
あり、それぞれポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い
て測定して、好ましくは1000~20000ダルトン、特に5000~10000ダル
トンの質量平均分子量Mwを有する。コポリマーのガラス転移温度は、一般に-100℃
~100℃、特に-50℃~80℃(DIN EN ISO11357-2に従ったDS
C測定により測定)である。
【0032】
ポリアクリレートポリオールは、好ましくは60~250mgKOH/g、特に70~
200KOH/gのOH価、及び0~30mgKOH/gの酸価を有する。本明細書での
酸価は、それぞれの化合物1gの中和に使用される水酸化カリウムのmg数を指す(DI
N EN ISO2114)。
【0033】
好適なポリアクリレートポリオールの製造は、それ自体当業者に既知である。それらは
、ヒドロキシル基を有するオレフィン性不飽和モノマーのフリーラジカル重合によって、
又はヒドロキシル基を有するオレフィン性不飽和モノマーと他のオレフィン性不飽和モノ
マー、例えば、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プ
ロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチ
ルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリ
レート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、アミルアク
リレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エ
チルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5-トリメチルヘ
キシルアクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアク
リレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート若しくはラウリルメタクリ
レート、シクロアルキルアクリレート、及び/又はシクロアルキルメタクリレート、例え
ば、シクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリ
レート、イソボルニルメタクリレート、又は特にシクロヘキシルアクリレート及び/若し
くはシクロヘキシルメタクリレートとのフリーラジカル共重合によって得られてもよい。
ヒドロキシル基を有する好適なオレフィン性不飽和モノマーは、特に2-ヒドロキシエチ
ルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリ
レート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート
、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒ
ドロキシブチルメタクリレート、特に4-ヒドロキシブチルアクリレート及び/又は4-
ヒドロキシブチルメタクリレートである。
【0034】
ポリアクリレートポリオールに使用されるさらなるモノマー単位は、ビニル芳香族炭化
水素、例えばビニルトルエン、α-メチルスチレン、又は特にアクリル酸若しくはメタク
リル酸のスチレン、アミド、若しくはニトリル、ビニルエステル又はビニルエーテル、特
に少量のアクリル酸及び/又はメタクリル酸であり得る。
【0035】
本発明によれば、成分B)は少なくとも1つのポリイソシアネートを含む。
【0036】
本明細書で使用されるポリイソシアネートは、原則として、ポリイソシアネート重付加
生成物、特にポリウレタンの製造に好適であることが当業者に既知の任意のポリイソシア
ネート、特に、1分子あたり少なくとも2つのイソシアネート基を有する、有機脂肪族、
脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族ポリイソシアネート、並びにそれらの混合物の群で
あり得る。この種のポリイソシアネートの例は、ジ又はトリイソシアネート、例えばブタ
ン1,4-ジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート(ペンタメチレンジイ
ソシアネート、PDI)、ヘキサン1,6-ジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシ
アネート、HDI)、4-イソシアナトメチルオクタン1,8-ジイソシアネート(トリ
イソシアナトノナン、TIN)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネー
ト)(H12MDI)、3,5,5-トリメチル-1-イソシアナト-3-イソシアナト
メチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,3-及び1,4
-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ナフタレン1,5-ジイ
ソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン(2,2’-、2,4’-、及び4,4
’-MDI又はそれらの混合物)、ジイソシアナトメチルベンゼン(トルイレン2,4-
及び2,6-ジイソシアネート、TDI)、並びに2つの異性体の工業グレードの混合物
、さらに1,3-及び/又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、
3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート(TODI)、パラフェニ
レン1,4-ジイソシアネート(PPDI)及びシクロヘキシルジイソシアネート(CH
DI)、並びに個々に又は上記からの混合物として得られ、ビウレット、ウレトジオン、
イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、アロファネート、ウレタン、及びカル
ボジイミド/ウレトンイミン構造単位を有するより高分子量のオリゴマーである。脂肪族
及び脂環式ジイソシアネートをベースとするポリイソシアネートを使用することが好まし
い。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、成分B)中に存在するポリイソシアネートは、脂肪族及
び/又は脂環式ポリイソシアネートである。
【0038】
本発明の別の好ましい実施形態では、成分B)中に存在するポリイソシアネートは、ヘ
キサメチレンジイソシアネート及び/又はペンタメチレンジイソシアネートの誘導体、特
にヘキサメチレンジイソシアネートトリマー及び/又はペンタメチレンジイソシアネート
トリマーである。
【0039】
NCO反応性基に対するイソシアネート基のモル量に基づいて、二成分系におけるポリ
イソシアネート対NCO反応性化合物の比が0.8:1.0~2.0:1.0であるとき
が好ましい。1.0:1.0~1.5:1.0の比が特に好ましい1.05:1.0~1
.25:1.0の比が非常に特に好ましい。
【0040】
本発明による二成分系の成分A)及び/又は成分B)は、少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有する。この文脈において、「無機」という用語は、熱潜在性無機スズ含有触媒として使用される化合物が直接スズ-炭素結合を有さないことを意味すると理解されるべきである。本発明の文脈において、「熱潜在性無機スズ含有触媒」は、特に、直接スズ-炭素結合を有さず、ウレタン結合を形成するための少なくとも1つのポリイソシアネートと少なくとも1つのNCO反応性化合物との架橋反応を25℃未満、特に30℃未満、好ましくは40℃未満で促進せず、又は顕著に促進せず、しかし、それを60℃超、特に70℃超で顕著に促進する任意の触媒を意味すると理解される。本明細書で「顕著に促進しない」とは、25℃未満、特に30℃未満、好ましくは40℃未満で、コーティング中の熱潜在性触媒の存在が、いずれの場合にも進行する反応の反応速度に顕著に影響を及ぼさないことを意味する。顕著な促進は、60℃超、特に70℃超で、コーティング中の熱潜在性触媒の存在が、いずれの場合にも進行する反応の反応速度に明確な影響を及ぼすことを意味すると理解される。
【0041】
二成分系で使用される熱潜在性無機スズ含有触媒が、式I、II、若しくはIIIの環
式スズ化合物又はそれらの混合物を含む場合、本発明に関して特に有利であることが分か
っている:
【化1】
【化2】
【0042】
(式中、n>1)、
【化3】
【0043】
(式中、n>1)、
式中:
Dは、-O-、-S-、又は-N(R1)-を表し、
ここで、R1は、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ
原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂
環式ラジカル、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカルを表すか、
又は水素若しくはラジカル
【化4】
【0044】
であるか、
又はR1及びL3が一緒になって-Z-L5-を表し;
D*は、-O-又は-S-を表し;
X、Y、及びZは、式-C(R2)(R3)-、-C(R2)(R3)-C(R4)(
R5)-、若しくは-C(R2)(R3)-C(R4)(R5)C(R6)(R7)-を
有するアルキレンラジカル、又は式
【化5】
【0045】
若しくは
【化6】
【0046】
を有するオルト-アリーレンラジカルから選択される同一若しくは異なるラジカルを表し

ここで、R2~R11は、独立して、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒
素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐
、脂肪族若しくは脂環式、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカル
を表すか、又は水素であり;
L1、L2、及びL5は、独立して、-O-、-S-、-OC(=O)-、-OC(=
S)、-SC(=O)-、-SC(=S)-、OS(=O)O-、-OS(=O)
、又は-N(R12)-を表し、
ここで、R12は、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテ
ロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは
脂環式ラジカル、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカルを表すか
、又は水素であり;
L3及びL4は、独立して、-OH、-SH、-OR13、-Hal、-OC(=O)
R14、-SR15、-OC(=S)R16、-OS(=O)OR17、-OS(=O
R18、又は-NR19R20を表すか、又はL3及びL4は一緒になって-L1-
X-D-Y-L2-を表し、
ここで、R13~R20は、独立して、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒
素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐
、脂肪族若しくは脂環式、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族ラジカル
を表すか、又は水素である。
【0047】
Dは、好ましくは-N(R1)-である。
【0048】
R1は、好ましくは水素、又は最大20個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、
アルカリール、又はアリールラジカル若しくはラジカル
【化7】
【0049】
であり、
特に、好ましくは水素、又は最大12個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、ア
ルカリール、又はアリールラジカル若しくはラジカル
【化8】
【0050】
であり、
非常に特に好ましくは水素、又はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル若しく
はオクチルラジカルであり、プロピル、ブチル、ヘキシル、及びオクチルは、すべての異
性体プロピル、ブチル、ヘキシル、及びオクチルラジカル、又はPh-、CHPh-若
しくはラジカル
【化9】
【0051】
である。
【0052】
D*は、好ましくは-O-である。
【0053】
X、Y、及びZは、好ましくは、-C(R2)(R3)、-C(R2)(R3)C(R
4)(R5)-又はオルト-アリーレンラジカル
【化10】
【0054】
であり、
R2~R7は、好ましくは、水素、又は最大20個の炭素原子を有するアルキル、アラ
ルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、特に好ましくは水素、又は最大8個の
炭素原子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、非常
に特に好ましくは水素、又は最大8個の炭素原子を有するアルキルラジカル、さらにより
好ましくは水素又はメチルである。
【0055】
R8~R11は、好ましくは、水素又は最大8個の炭素原子を有するアリールラジカル
、特に好ましくは水素又はメチルである。
【0056】
L1、L2、及びL5は、好ましくは、-NR12-、-S-、-SC(=S)-、-
SC(=O)-、-OC(=S)-、-O-、又は-OC(=O)-、特に好ましくは-
O-又は-OC(=O)-である。
【0057】
R12は、好ましくは水素、又は最大20個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル
、アルカリール若しくはアリールラジカル、特に好ましくは水素又は最大12個の炭素原
子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、非常に特に
好ましくは水素、又はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル若しくはオクチルラ
ジカルであり、プロピル、ブチル、ヘキシル及びオクチルは、すべての異性体プロピル、
ブチル、ヘキシル、及びオクチルラジカルを表す。
【0058】
L3及びL4は、好ましくは-Hal、-OH、-SH、-OR13、-OC(=O)
R14であり、R13及びR14ラジカルは、最大20個の炭素原子、好ましくは最大1
2個の炭素原子を有する。
【0059】
L3及びL4は、特に好ましくはCl-、MeO-、EtO-、PrO-、BuO-、
HexO-、OctO-、PhO-、ホルマート、アセテート、プロパノエート、ブタノ
エート、ペンタノエート、ヘキサノエート、オクタノエート、ラウレート、ラクテート、
又はベンゾエートであり、Pr、Bu、Hex、及びOctは、すべての異性体プロピル
、ブチル、ヘキシル、及びオクチルラジカルであり、さらにより好ましくはCl-、Me
O-、EtO-、PrO-、BuO-、HexO-、OctO-、PhO-、ヘキサノエ
ート、ラウレート、又はベンゾエートであり、Pr、Bu、Hex、及びOctは、すべ
ての異性体プロピル、ブチル、ヘキシル、及びオクチルラジカルを表す。
【0060】
R15~R20は、好ましくは水素、又は最大20個の炭素原子を有するアルキル、ア
ラルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、特に好ましくは水素、又は最大12
個の炭素原子を有するアルキル、アラルキル、アルカリール若しくはアリールラジカル、
非常に特に好ましくは水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、又はオクチ
ルラジカルであり、プロピル、ブチル、ヘキシル及びオクチルは、すべての異性体プロピ
ル、ブチル、ヘキシル、及びオクチルラジカルを表す。
【0061】
単位L1-X、L2-Y、及びL5-Zは、好ましくは-CHCHO-、-CH
CH(Me)O-、-CH(Me)CHO-、-CHC(Me)O-、-C(Me
CHO-、又は-CHC(=O)O-を表す
単位L1-X-D-Y-L2は、好ましくは、HN[CHCHO-]、HN[C
CH(Me)O-]、HN[CHCH(Me)O-][CH(Me)CHO-
]、HN[CHC(Me)O-]、HN[CHC(Me)O-][C(Me)
CHO-]、HN[CHC(=O)O-]、MeN[CHCHO-]、M
eN[CHCH(Me)O-]、MeN[CHCH(Me)O][CH(Me)C
O-]、MeN[CHC(Me)O-]、MeN[CHC(Me)O-]
[C(Me)CHO-]、MeN[CHC(=O)O-]、EtN[CHCH
O-]、EtN[CHCH(Me)O-]、EtN[CHCH(Me)O-]
[CH(Me)CHO-]、EtN[CHC(Me)O-]、EtN[CH
(Me)O-][C(Me)CHO-]、EtN[CHC(=O)O-]、P
rN[CHCHO-]、PrN[CHCH(Me)O-]、PrN[CH
H(Me)O-][CH(Me)CHO-]、PrN[CHC(Me)O-]
PrN[CHC(Me)O-][C(Me)CHO-]、PrN[CHC(=
O)O-]、BuN[CHCHO-]、BuN[CHCH(Me)O-]
BuN[CHCH(Me)O-][CH(Me)CHO-]、BuN[CHC(M
e)O-]、BuN[CHC(Me)O-][C(Me)CHO-]、Bu
N[CHC(=O)O-]、HexN[CHCHO-]、HexN[CH
H(Me)O-]、HexN[CHCH(Me)O-][CH(Me)CHO-]
、HexN[CHC(Me)O-]、HexN[CHC(Me)O-][C(
Me)CHO-]、HexN[CHC(=O)O-]、OctN[CHCH
O-]、OctN[CHCH(Me)O-]、OctN[CHCH(Me)O-
][CH(Me)CHO-]、OctN[CHC(Me)O-]、OctN[C
C(Me)O-][C(Me)CHO-]、OctN[CHC(=O)O-

(式中、Pr、Bu、Hex、及びOctは、任意の異性体プロピル、ブチル、及びオ
クチルラジアルを表し得る)PhN[CHCHO-]、PhN[CHCH(Me
)O-]、PhN[CHCH(Me)O-][CH(Me)CHO-]、PhN[
CHC(Me)O-]、PhN[CHC(Me)O-][C(Me)CH
O-]、PhN[CHC(=O)O-]
【化11】
【化12】
【0062】
又は
【化13】
【0063】
を表す。
【0064】
本発明による好適な熱潜在性触媒を製造するための方法は、例えば、欧州特許第290
0716号、同第2900717号、同第2772496号、同第14182806号、
J.Organomet.Chem.2009 694 3184-3189、Chem
.Heterocycl.Comp.2007 43 813-834、Indian
J.Chem.1967 5 643-645、及びその中で参照されている文献に記載
されており、その開示内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
当業者には既知のように、スズ化合物は、オリゴマー化する傾向があるので、多くの場
合多核スズ化合物、又は単核スズ化合物と多核スズ化合物との混合物が存在する。多核ス
ズ化合物において、スズ原子は、好ましくは、酸素原子を介して互いに接続される(「酸
素ブリッジ」)。典型的なオリゴマー錯体(多核スズ化合物)は、例えば、酸素又は硫黄
、例えば
【化14】
【0066】
(式中、n>1(式II参照))
を介したスズ原子の縮合を介して形成される。オリゴマー化の程度が低い場合には、環状
オリゴマーがしばしば生じ、オリゴマー化の程度が高い場合には、OH又はSH末端基を
有する直鎖オリゴマーである(式III参照)。
【0067】
本発明の一実施形態では、熱潜在性触媒は、以下のタイプの単核又は多核スズ化合物の
群から選択される:
1,1-ジ-「R」-5-「オルガニル」-5-アザ-2,8-ジオキサ-1-スタン
ナ-シクロオクタン、
1,1-ジ-「R」-5-(N-「オルガニル」)アザ-3,7-ジ-「オルガニル」
-2,8-ジオキサ-1-スタンナ-シクロオクタン、
1,1-ジ-「R」-5-(N-「オルガニル」)アザ-3,3,7,7-テトラ-「
オルガニル」-2,8-ジオキサ-1-スタンナ-シクロオクタン、
4,12-ジ-「オルガニル」-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ
-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジ-「オルガニル」-2,6,10,14-テトラ-「オルガニル」-1,
7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタ
デカン、
4,12-ジ-「オルガニル」-2,2,6,6,10,10,14,14-オクタ-
「オルガニル」-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタナスピ
ロ[7,7]ペンタデカン、
ここで、「R」は、上記で定義したD*、L3、又はL4であり、「オルガニル」は上
記で定義したR1である。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、熱潜在性触媒は、以下から選択される:
4,12-ジ-n-ブチル-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8
-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジ-n-ブチル-2,6,10,14-テトラメチル-1,7,9,15-
テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
2,4,6,10,12,14-ヘキサメチル-1,7,9,15-テトラオキサ-4
,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジ-n-オクチル-2,6,10,14-テトラメチル-1,7,9,15
-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジ-n-オクチル-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-
8-スタンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
4,12-ジメチル-1,7,9,15-テトラオキサ-4,12-ジアザ-8-スタ
ンナスピロ[7,7]ペンタデカン、
1,1-ジクロロ-5-メチル-5-アザ-2,8-ジオキサ-1-スタンナシクロオ
クタン
又はそれらの混合物。
【0069】
熱潜在性無機スズ含有触媒は、従来技術から既知のさらなる触媒/活性化剤と組み合わ
せてもよい;例えば、国際公開第2005/058996号に記載されているように、例
えば、チタン、ジルコニウム、ビスマス、スズ(II)、及び/又は鉄触媒である。アミ
ン又はアミジンを添加することも可能である。さらに、ポリイソシアネート重付加反応に
おいて、酸性化合物、例えば2-エチルヘキサン酸、又はアルコールを添加して反応を制
御することも可能である。
【0070】
本発明により使用される熱潜在性無機スズ含有触媒の量は、広い範囲内で変えてもよく
、成分B)中のポリイソシアネートの全量に基づいて、好ましくは≧50~≦5000p
pmw、好ましくは≧100~≦3000ppmw、特に好ましくは≧300~≦250
0ppmw、非常に特に好ましくは≧500~≦1500ppmwのスズである。
【0071】
成分A)及び成分B)の両方は、有効量の慣用の助剤及び添加物をさらに含み得る。溶
剤の有効量は、いずれの場合も、発明による二成分系の不揮発性構成成分に基づいて、好
ましくは最大150重量%、特に好ましくは最大100重量%、特に最大70重量%であ
る。他の添加剤の有効量は、いずれの場合も、本発明による二成分系の不揮発性構成成分
に基づいて、好ましくは最大25重量%、特に好ましくは最大10重量%、特に最大5重
量%である。
【0072】
好適な助剤及び添加剤の例は、特に、UV吸収剤及び立体障害アミン(HALS)のよ
うな光安定剤、さらに安定剤、充填剤及び沈降防止剤、消泡剤、抗クレータ化剤及び/又
は湿潤剤、レベリング剤、膜形成助剤、反応性希釈剤、溶剤、レオロジー制御のための物
質、スリップ剤、並びに/又は汚れを防止する及び/若しくは硬化したコーティングの清
浄性を改善する成分、並びに艶消し剤である。
【0073】
光安定剤、特にUV吸収剤、例えば置換ベンゾトリアゾール、S-フェニルトリアジン
、又はオキサルアニリド、及び立体障害アミン、特に2,2,6,6-テトラメチルピペ
リジル構造を有するもの(HALSと称される)の使用は、例えば、A.Valet,L
ichtschutzmittel fur Lacke,Vincentz Verl
ag,Hanover,1996に記載されている。
【0074】
例えば、フリーラジカルスカベンジャー及び立体障害フェノールのような他の重合禁止
剤のような安定剤は、貯蔵中に塗料成分を安定化させ、硬化中の変色を防止することが意
図される。また、アルキル置換リン酸部分エステルのような酸性安定剤が成分B)につい
て考慮される。
【0075】
本発明による二成分系は、顔料、染料、及び/又は充填剤をさらに含有してもよい。そ
のために使用される金属若しくは他の効果顔料を含む顔料、染料、及び/又は充填剤は、
当業者に既知である。
【0076】
好ましい充填剤は、コーティングの外観に悪影響を及ぼさないそれらの化合物である。
例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又は酸化ジルコニウムをベースとするナノ粒子
である;Rompp Lexicon「Lacke und Druckfarben」
[Coatings and Printing Inks]Georg Thieme
Verlag,Stuttgart,1998,pages 250 to 252も
さらに参照されたい。
【0077】
充填剤、艶消し剤、又は顔料が本発明による二成分系中に存在する場合、保存中の構成
成分の分離を防止するために沈降防止剤の添加が推奨され得る。
【0078】
湿潤剤及びレベリング剤は、表面の濡れ及び/又はコーティングのレベリングを改善す
る。例は、フルオロ界面活性剤、シリコーン界面活性剤、及び特定のポリアクリレートで
ある。レオロジー制御添加剤は、適用時及び基材上のレベリング相における二成分系の特
性を制御するために重要であり、例えば、特許明細書の国際公開第94/22968号、
欧州特許第A-0276501号、欧州特許第A-0249201号、又は国際公開第9
7/12945号からのものが既知であり;架橋されたポリマー微粒子は、例えば欧州特
許第A-0008127号に開示されており;無機シートシリケート、例えばアルミニウ
ム-マグネシウムシリケート、モンモリロナイトタイプのナトリウム-マグネシウム及び
ナトリウム-マグネシウム-フッ素-リチウムシートシリケート;AeRosil(登録
商標)などのシリカ;又はイオン及び/若しくは会合基を有する合成ポリマー、例えばポ
リビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニ
ルピロリドン、スチレン-無水マレイン酸若しくはエチレン-無水マレイン酸コポリマー
、並びにそれらの誘導体、又は疎水性に改質されたエトキシル化ウレタン若しくはポリア
クリレートである。
【0079】
本発明による二成分系は、無溶剤状態で使用され得るが、好ましくは成分A)及び/又
は成分B)中に少なくとも1つの溶剤を含有する。成分A)中で使用される溶剤が製造の
結果として水を含有する場合、成分A)の含水量を適切に調整するために、上記カールフ
ィッシャー滴定によって含水量を決定してもよい。
【0080】
好適な溶剤は、当業者に既知の方法で、用いられる二成分系及び適用プロセスに適合さ
せるために使用されるべきである。溶剤は、使用される成分を溶解し、それらの混合を促
進し、非相溶性を避けることを意図している。加えて、適用及び硬化の間に、それらは、
可能な限り最良の外観を有し、かつポッピング又はピンホールのような欠陥のない無溶剤
コーティングをもたらすように、進行する架橋反応に適合する方法でコーティングを残す
べきである。企図される溶剤は、特に二成分技術において使用されるものを含む。例は、
アセトン、メチルエチルケトン、又はヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル
、酢酸メトキシプロピル、置換グリコール及び他のエーテルなどのエステル、例えばEx
xon-Chemieのキシレン又はソルベントナフサなどの芳香族化合物、並びに言及
された溶剤の混合物である。
【0081】
本発明による二成分系は、基材のコーティングに非常に容易に使用され得る。
【0082】
したがって、本発明は、
a1)基材を提供する工程;
b1)本発明による少なくとも1つの二成分系を適用する工程;
c1)加熱によりコーティングを硬化させる工程
を含む、基材上にコーティングを製造するための方法をさらに提供する。
【0083】
さらに、二成分系はまた、二成分系の基材への適用中に、適用雰囲気の大気湿度によっ
て水を吸収し得る。適用雰囲気の相対大気湿度が≧30%~≦80%、好ましくは≧35
%~≦75%、特に好ましくは≧45%~≦65%であるときが好ましい。
【0084】
したがって、本発明は同様に、
a2)基材を提供する工程;
b2)少なくとも1つのNCO反応性化合物を含む成分A)及び少なくとも1つのポリ
イソシアネートを含む成分B)を含有する少なくとも1つの二成分系を適用する工程であ
って、成分A)及び/又は成分B)が少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有
する、工程;
c2)加熱によりコーティングを硬化させる工程、
を含む、基材上にコーティングを製造するための方法であって、
工程b2)で適用中の二成分系が、成分A)の全重量に基づいて、≧400~≦950
0ppmwの水を適用雰囲気から吸収する、方法を提供する。
【0085】
本明細書では、工程b2)で適用中の二成分系が、成分A)の全重量に基づいて、≧5
01~≦6500ppmw、好ましくは≧700~≦5000ppmw、特に好ましくは
≧1001~≦4000ppmw、非常に特に好ましくは≧1400~≦2400ppm
wの水を吸収するときが好ましい。
【0086】
このようにして、例えば、製造の結果として十分な水分を含有せず、及び/又は成分A
)中に水を添加することなく、本発明による方法で使用される二成分系は、基材上への適
用中に成分A)の全重量に基づいて、≧400~≦9500ppmw、好ましくは≧50
1~≦6500ppmw、特に好ましくは≧700~≦5000ppmw、非常に特に好
ましくは≧1001~≦4000ppmw、特に非常に好ましくは≧1400~2400
ppmwの水の含水量を吸収することができる。
【0087】
以下、工程a)は、工程a1)及び/又は工程a2)を表し、工程b)は、工程b1)
及び/又は工程b2)を表し、工程c)は、工程c1)及び/又は工程c2)を表す。
【0088】
上に列挙した本発明による方法の工程a)における使用のために、基材は、コーティン
グされていなくてもコーティングされていてもよい。コーティングとして、プライマー、
充填剤、及び/又はベースコートは、例えば、本発明による方法でそれが使用される前に
基材に既に適用されていてもよい。プライマーの例は、特にOEM自動車の仕上げに使用
されるような陰極ディップコート、プラスチック用、特にPP又はPP-EPDMのよう
な低い表面張力を有するプラスチック用の溶剤型又は水性プライマーである。好適なベー
スコートは、例えばA.Goldschmidt,H.Streitberger,「B
ASF Handbuch Lackiertechnik」,Vincentz-Ve
rlag,Hannover,D,2002から当業者に既知である。そのような製品は
、例えば、「COATiQ(登録商標)WORWAGPREMIUM BASECOAT
S」の商品名で、Karl Worwag Lack-und Farbenfabri
k GmbH & Co.KG,Stuttgart,DE、「xColor」の商品名
でBASF Coatings GmbH,Munster,DE、及び「Primum
Base」の商品名でHemmelrath Lackfabrik GmbH,Kl
ingenberg,DEから得ることができる。
【0089】
好適な基材は、例えば、特にいわゆる複合材料を含む、1つ以上の材料を含む基材であ
る。少なくとも2つの材料から形成された基材は、本発明によれば、複合材料と称される
。好適な材料は、例えば、木材、金属、プラスチック、紙、皮革、織物、フェルト、ガラ
ス、木質材料、コルク、木材及び繊維セメント板などの無機結合基材、電子アセンブリ又
は鉱物基材である。好適なタイプの複合材料は、例えば、分散材料とも称される粒子複合
材料、繊維複合材料、ラミネートとも称される層状複合材料、浸透複合材料、及び構造複
合材料である。
【0090】
好適な金属は、例えば、いわゆるワイヤコーティング、コイルコーティング、缶コーテ
ィング、又はコンテナコーティングなどの用途に使用される鋼、アルミニウム、マグネシ
ウム、及び金属の合金である。
【0091】
本発明の文脈において、プラスチックという用語は、繊維強化プラスチック、例えばガ
ラス繊維又は炭素繊維強化プラスチック、及び2つ以上のプラスチックからなるプラスチ
ックブレンドも包含する。
【0092】
本発明による好適なプラスチックの例は、ABS、AMMA、ASA、CA、CAB、
EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、L
LDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF
、SAN、PBT、PPE、POM、PUR-RIM、SMC、BMC、PP-EPDM
、及びUPである(DIN7728T1による略語)。これらは、膜の形態であっても、
ガラス繊維又は炭素繊維強化プラスチックの形態であってもよい。
【0093】
本発明による方法の好ましい実施形態では、基材は、完全に又は部分的にプラスチック
及び/又は金属で作製された表面を有する。特に好ましくは、基材は、複合材料、特にプ
ラスチック及び/又は金属を含む複合材料から少なくとも部分的になる。
【0094】
本発明の方法のさらなる実施形態では、基材は、金属を含み;より詳細には、基材は、
80重量%、70重量%、60重量%、50重量%、25重量%、10重量%、5重量%
、1重量%の程度の金属からなり得る。
【0095】
本発明の一実施形態では、工程a)で提供される基材は、上述の材料のうちの1つ以上
を含むシャーシ又はその一部である。好ましくは、シャーシ又はその一部は、金属、プラ
スチック、又はそれらの混合物から選択される材料のうちの1つ以上を含む。
【0096】
さらなる実施形態では、工程a)で提供される基材は、「家庭用電化製品」分野からの
プラスチック部分である。
【0097】
本発明による方法の工程b)における二成分系の適用は、溶液から行ってもよい。好適
な適用方法は、例えば印刷、塗装、ローリング、キャスティング、浸漬、流動床法、及び
/又は噴霧、例えば、圧縮空気噴霧、エアレス噴霧、高回転、静電噴霧塗布(ESTA)
であり、ホットスプレー塗布、例えば熱風噴霧と組み合わされていてもよい。本明細書で
は、例えば、熱風噴霧のような熱噴霧適用と併用されていてもよい、例えば、圧縮空気噴
霧、エアレス噴霧、高速回転、静電噴霧塗布(ESTA)のような噴霧による適用が特に
好ましい。
【0098】
工程b)において適用される二成分系は、成分A)とB)との混合後に適用されてもよ
く、又は適用時にのみ直接適用されてもよい。第1の場合には、混合後の架橋反応は既に
ゆっくりと進行しているので、混合された二成分系は、限られた貯蔵寿命、いわゆるポッ
トライフを有する。第2の場合には、延長されたポットライフの有利な効果は、例えば、
本発明による二成分系が基材上に均一な膜を形成することができるので、改善されたラッ
カー外観において明らかであるが、同時に、熱潜在性無機スズ含有触媒の触媒活性が損わ
れないので、驚くべきことに硬度の発現が高レベルのままである。
【0099】
工程c)における硬化が、120℃未満、好ましくは110℃未満、特に好ましくは1
00℃未満、特に90℃未満の基材温度で行われる場合、実用上本発明による方法に特に
適切であることが分かった。
【0100】
本発明による方法の工程c)における硬化は、有利には本質的に45分未満以内に完了
する。好ましくは、工程e)における硬化は、40分未満、特に好ましくは35分未満、
非常に特に好ましくは30分未満以内に本質的に完了する。
【0101】
本明細書で使用される「本質的に完了する」とは、工程c)における硬化後の残留イソ
シアネート含有量が、工程b)におけるポリイソシアネートのイソシアネート含有量に基
づいて、20%未満、好ましくは15%未満、特に好ましくは10%未満、特に好ましく
は5%未満、非常に特に好ましくは3%未満であることを意味する。なお存在するイソシ
アネート基の百分率は、工程b)における重量%でのイソシアネート基の含有量と、工程
c)における硬化後の重量%でのイソシアネート基の含有量とを比較することによって、
例えば、IR分光法により約2270cm-1のイソシアネートバンドの強度を比較する
ことによって決定することができる。
【0102】
本発明の方法の特定の実施形態では、工程c)の後に、コーティングを再び基材から取
り外して膜を製造するさらなる工程d1)及び/又はさらなる工程d2)を行ってもよい
【0103】
したがって、本発明の方法は、純金属基材及び熱可塑性材料又は複合材料の一般的な塗
装を可能にする。本発明の方法のさらなる利点は、塗装プロセスが、標準プロセスと比較
して使用される温度がはるかに低いことにより、エネルギー効率が良く、安価であること
である。
【0104】
本発明は、本発明による二成分系で使用するための成分A)をさらに提供する。
【0105】
本発明は、本発明による二成分系で使用するための成分B)をさらに提供する。
【0106】
本発明は、本発明による方法によって製造される又は製造可能なコーティングをさらに
提供する。
【0107】
本発明は、本発明によるコーティングで被覆された基材をさらに提供する。
【0108】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のコーティングで被覆された基材は、シャーシ
、特に乗り物のシャーシ、又はその一部であってもよい。乗り物は、1つ以上の材料から
形成されてもよい。好適な材料は、例えば、金属、プラスチック、又はそれらの混合物で
ある。乗り物は、当業者に既知である任意の乗り物であり得る。例えば、乗り物は、自動
車、大型商品乗り物、オートバイ、モペット、自転車などであってもよい。好ましくは、
乗り物は、自動車及び/又は重量物の乗り物、特に好ましくは自動車である。
【0109】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明によるコーティングで被覆された基材は
、金属、プラスチック、又はそれらの混合物から選択される材料のうちの1つ以上を含む
シャーシ又はその一部である。
【0110】
さらに好ましい実施形態では、工程a)で提供される基材は、「家庭用電化製品」分野
からのプラスチック部分である。
【0111】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明される。
【0112】
[実施例]
4mm DINカップ流出時間:
BYK Gardnerからの4mm DINカップを使用して、流出時間をDIN5
3211(DIN53211は、1996年10月に撤回された)に従って決定したが、
本明細書では絶対値ではなく比較値のみが関係するので、正確な温度制御をすることなく
室温で決定した。
【0113】
ケーニッヒ振り子減衰:
振り子減衰は、標準ISO1522に従って、BYK Gardnerからの振り子減
衰試験機を使用して23℃及び50%の相対湿度で気候調節室において決定した。
【0114】
カールフィッシャー水分決定:
含水量は、DIN53715(DIN53715は、DIN51777パート1(19
73年版)に基づいた)に従った容積法としてのカールフィッシャー滴定によって決定し
た。含水量は、Methrom Titrando 841自動滴定装置を用いて測定し
た。含水量の測定範囲は、0.01~<99重量%であった。
【0115】
使用される物質:
別段の記載がない限り、原材料は、さらに精製又は前処理することなく使用した。すべ
ての%及び比率の数字は、重量に基づく。
【0116】
Setalux D A 665 BA/X:OH含有アクリレートポリオール(Nu
plex、NL)、Byk 355:流れ改善のためのポリアクリレートをベースとした
表面添加剤(Byk Chemie GmbH、DE)、DBTL:ジブチルスズジラウ
レート、触媒、CAS77-58-7(Aldrich、DE)、MPA:1-メトキシ
-2-プロピルアセテート、CAS108-65-6、溶剤(BASF SE、DE)、
キシレン:異性体混合物、CAS1330-20-7、溶剤(Aldrich、DE)、
Desmodur N 3390 BA、架橋剤、HDIトリマー(Covestro、
DE)、酢酸ブチル:酢酸n-ブチルエステル、CAS123-86-4、溶剤(BAS
F SE、DE)。
【0117】
4mm DINカップを使用したポットライフ実験
クリアコート配合物
記載された二成分系のポットライフに対する効果を実証するために、OH含有アクリレ
ートポリオールをベースとした溶剤含有クリアコートを製造した。この目的のために、成
分A及びBを連続して計量し、混合した。本発明の文脈において、ポットライフは、塗料
が粘度を2倍にした時間として定義される(DINカップの流出時間を2倍にすることに
よって間接的に決定される、4mm)。
【表1】
【表2】
【0118】
ポットライフ決定
二成分系の架橋を達成するために、その後、混合物A及びBを、実験室用撹拌機(10
00rpmで60秒)で撹拌することによって、互いに均質に混合した。 次いで、室温
で4mm DINカップを使用して初期流出時間を決定するために、混合システムを60
秒間休止させたままにした。
【0119】
流出時間は、流出時間の増加による粘度上昇を追跡するために、30分ごとに再決定さ
れた。
【表3】
【表4】
【0120】
この結果は、DBTLの場合、触媒含水量(例9及び10)がポットライフに何ら影響
を及ぼさないことが分かったことを示している。対照的に、熱潜在性触媒は、混合系にお
ける水の含有量に応じてポットライフの差異を示す。系内の350ppmの水(比較例1
)では、ポットライフは、本発明の例2~8よりも著しく短い(比較例9及び10と同様
に)。
【0121】
ケーニヒ振り子減衰による硬度決定
硬度決定のために、ポットライフ決定のために製造されたクリアコート配合物を、いず
れの場合も、架橋及びその後の休止時間後に120μmの膜キャスティングフレームを使
用して3枚のガラスシートに適用した。室温で15分間のフラッシュオフ時間の後、いず
れの場合も、1枚のガラス板を60℃の再循環空気乾燥キャビネット中で30分間乾燥し
、さらに1枚を80℃で30分間乾燥させた後、第3のガラス板を23℃及び50%の相
対大気湿度の気候調節室に置いた。再循環空気乾燥キャビネット内で乾燥したガラス板の
場合、ケーニヒ振り子減衰は、気候調節室で3時間後にISO1522に従って決定した
。3枚すべてのガラス板のケーニヒ振り子減衰を気候調節室で24時間後に再決定した。
【表5】
【表6】
【0122】
二成分系への水分の添加により、硬度の発現及びこれに伴う物理的特性が不利に変化し
ないことが実証された。熱潜在性触媒の触媒活性も保持される。
【0123】
本発明によれば、熱潜在性触媒と組み合わせて水分を添加することにより、温度を上げ
ることによって適用された二成分系を硬化させるための熱潜在性触媒の触媒活性に悪影響
を及ぼすことなく、二成分系の再現可能に延長されたポットライフを実証することができ
る。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのNCO反応性化合物を含む成分A)及び少なくとも1つのポリイソシアネートを含む成分B)を含有する二成分系から製造されるコーティングであって、前記成分A)が、前記成分A)の全重量に基づいて、≧400~≦9500ppmwの水を含有し、前記成分A)及び/又は前記成分B)が、少なくとも1つの熱潜在性無機スズ含有触媒を含有し、ここで、前記熱潜在性無機スズ含有触媒が、式I、II、若しくはIIIの環式スズ化合物又はそれらの混合物を含み:
【化1】
【化2】
(ここで、n>1であり、式IIは環状オリゴマーを表す)、
【化3】
(ここで、n>1であり、式IIIは直鎖オリゴマーを表す)、
式中:
Dは、-O-、-S-、又は-N(R1)-を表し、
ここで、R1は、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式基、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族基を表すか、
又は水素若しくは基
【化4】
であるか、
又はR1及びL3が一緒になって-Z-L5-を表し;
D*は、-O-又は-S-を表し;
X、Y、及びZは、式-C(R2)(R3)-、-C(R2)(R3)-C(R4)(R5)-、若しくは-C(R2)(R3)-C(R4)(R5)-C(R6)(R7)-を有するアルキレン基、又は式
【化5】
若しくは
【化6】
を有するオルト-アリーレン基から選択される同一若しくは異なる基を表し、
ここで、R2~R11は、独立して、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式基、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族基を表すか、又は水素であり;
L1、L2、及びL5は、独立して、-O-、-S-、-OC(=O)-、-OC(=S)、-SC(=O)-、-SC(=S)-、-OS(=O)O-、-OS(=O)-、又は-N(R12)-を表し、
ここで、R12は、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式基、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族基を表すか、又は水素であり;
L3及びL4は、独立して、-OH、-SH、-OR13、-Cl、-OC(=O)R14、-SR15、-OC(=S)R16、-OS(=O)OR17、-OS(=O)R18、又は-NR19R20を表すか、又はL3及びL4は一緒になって-L1-X-D-Y-L2-を表し、
ここで、R13~R20は、独立して、最大20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素の群からのヘテロ原子を含有していてもよい、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐、脂肪族若しくは脂環式基、又は置換されていてもよい芳香族若しくは芳香脂肪族基を表すか、又は水素であることを特徴とする、コーティング。
【請求項2】
前記成分A)が、前記成分A)の全重量に基づいて、≧501~≦6500ppmwの水を含有することを特徴とする、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
前記NCO反応性化合物が、ポリヒドロキシル化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコーティング。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のコーティング。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー及び/又はペンタメチレンジイソシアネートトリマーであることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のコーティング。
【請求項6】
基材が、シャーシ、特に乗り物のシャーシ、又はその一部であってもよい、請求項1~5のいずれかに記載のコーティングで被覆された基材。
【請求項7】
前記シャーシ又はその一部が、金属、プラスチック、又はそれらの混合物から選択される材料のうちの1つ以上を含むことを特徴とする、請求項6に記載の基材。
【外国語明細書】