(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058574
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】二酸化チタンを含有するスラリー
(51)【国際特許分類】
C01G 23/04 20060101AFI20220405BHJP
D01F 2/28 20060101ALI20220405BHJP
D01F 1/10 20060101ALI20220405BHJP
A24D 3/16 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
C01G23/04 Z
D01F2/28
D01F1/10
A24D3/16
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022002912
(22)【出願日】2022-01-12
(62)【分割の表示】P 2017092955の分割
【原出願日】2017-05-09
(31)【優先権主張番号】62/334,054
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518011552
【氏名又は名称】アセテート・インターナショナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ダイチュワン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・バンドレン
(72)【発明者】
【氏名】カレン・ザッザーラ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】周囲温度で4日間保存した後、様々な測定法に基づき測定したときに、1μm未満の粒径分布を有するスラリー、スラリーを調製する方法、およびセルロースアセテートドープを調製する方法を提供する。
【解決手段】スラリーの総重量に基づき、30~60重量%の二酸化チタン、39~69重量%の水、及び0.1~1重量%の1種又は複数の添加剤を含むスラリーであって、周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有するスラリーである。スラリーは、セルロースアセテートドープに組み込み可能であり、セルロースアセテートドープは、次に非常に多くの下流処理ステップを通じてタバコフィルターに加工される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーの総重量に基づき、30~60重量%の二酸化チタン、39~69重量%の水、及び0.1~1重量%の1種又は複数の添加剤を含むスラリーであって、周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有するスラリー。
【請求項2】
請求項1に記載のスラリーであって、周囲温度で8日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有するスラリー。
【請求項3】
請求項1に記載のスラリーであって、周囲温度で18日間保存した後に、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有するスラリー。
【請求項4】
請求項1に記載のスラリーであって、該1種又は複数の添加剤が、分散剤、抗菌剤、及びその組み合わせからなる群から選択されるスラリー。
【請求項5】
請求項1に記載のスラリーであって、二酸化チタンが、食品グレードの二酸化チタンであるスラリー。
【請求項6】
請求項1に記載のスラリーであって、二酸化チタンが、無機のコーティングでコーティングされるスラリー。
【請求項7】
請求項6に記載のスラリーであって、該無機のコーティングが、アルミニウム、セリウム、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物又は水酸化物であるスラリー。
【請求項8】
請求項1に記載のスラリーであって、二酸化チタンが、有機の物質で処理されているスラリー。
【請求項9】
請求項8に記載のスラリーであって、該有機の物質が、液体及び固体のポリオール、液体のポリリン酸塩、液体のヒドロキシアミン、液体及び固体のスチレン-無水マレイン酸コポリマー、並びにその組み合わせからなる群から選択されるスラリー。
【請求項10】
請求項8に記載のスラリーであって、該有機の物質が、低分子量ポリグリコール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ピロリン酸四カリウム、及びその組み合わせからなる群から選択されるスラリー。
【請求項11】
請求項1に記載のスラリーであって、該D[4,3]及びD[0.9]粒径分布の増加が、周囲温度で4日間保存したとき、20%未満であるスラリー。
【請求項12】
スラリーの総重量に基づき、10~25重量%の二酸化チタン、65~85重量%のアセトン、及び5~10重量%の1種又は複数の添加剤を含むスラリーであって、周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有するスラリー。
【請求項13】
請求項12に記載のスラリーであって、該1種又は複数の添加剤が、粘度調整剤を含むスラリー。
【請求項14】
スラリーを調製する方法であって、
二酸化チタン、液体、及び少なくとも1種の添加剤を組み合わせてスラリーを形成し、
該スラリーを混合し、そして
粒径低減装置を通して該スラリーをポンプ搬送すること
を含み、該スラリーが、周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、該粒径低減装置が、ペブルミル、サンドミル、高剪断ポンプ、及びプレミックスディスペンサーからなる群から選択される方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、該スラリーが、周囲温度で8日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、該スラリーが、周囲温度で18日間保存した後に、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する方法。
【請求項18】
セルロースアセテートドープを調製する方法であって、
二酸化チタン、液体、及び少なくとも1種の添加剤を含むスラリーを準備し、ここで、該スラリーは、周囲温度で18日間保存した後に、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する;
該スラリーをセルロースアセテート及び溶媒と混合して該セルロースアセテートを外溶媒中に溶解し、該スラリーを分散し;そして
該セルロースアセテートドープをフィルター処理して、溶媒不溶性粒子を取り除く
ことを含み、
該セルロースアセテートドープが、ドープの総重量に基づき、20~30重量%のセルロースアセテート、70~80重量%の溶媒、及び0.05~3重量%の二酸化チタンを含み、
更に、1重量%未満の二酸化チタンが、フィルター処理中に除去される方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、該スラリーが、スラリーの総重量に基づき10~25重量%の二酸化チタン、65~85重量%のアセトン、及び5~10重量%の1種又は複数の添加剤を含む方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、該スラリーが、スラリーの総重量に基づき、30~60重量%の二酸化チタン、39~69重量%の水、及び0.1~1重量%の1種又は複数の添加剤を含む方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法であって、該溶媒が、水、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、氷酢酸、超臨界二酸化炭素、及びその組み合わせからなる群から選択される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
[0001]本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2016年5月10日に出願した米国仮特許出願第62/334,054号の優先権を主張するものである。
【0002】
[0002]本発明は、一般的に二酸化チタンを含有するスラリーに関する。特に、本発明は、周囲温度で4日間保存した後、様々な測定法に基づき、1μm未満の粒径分布を有する、二酸化チタンを含むスラリーに関する。スラリーは、フィラメントを形成するために紡糸され得るセルロースアセテートドープに、最終的にタバコフィルターで用いられるセルロースアセテートトウに組み込まれ得る。
【背景技術】
【0003】
[0003]セルロースアセテートトウは、タバコフィルターの製造で一般的に用いられる。トウの製造中に、つや消し剤、一般的に二酸化チタンが、最終的なタバコフィルターに所定の不透明性を付与するために、様々な処理ステップにおいて組み込まれる。二酸化チタンは、使用済みのタバコの廃棄と関連したポイ捨て問題を最低限に抑えるための重要検討事項である、タバコフィルターの光分解促進においても利用可能である。二酸化チタンは、ほとんどの場合スラリーに処方化され、次にトウを形成する前にセルロースアセテートドープに添加される。特に粒子の凝集に起因して、スラリー内の粒径分布に問題が存在する。二酸化チタン粒子が大きいほど、トウの飛散を増加させ、押出成形装置の摩耗を加速させる可能性がある。フィルター処理は所望の大きさよりも大きな粒子を取り除くのに利用可能であるが、このフィルター処理は、最終タバコフィルター内の所望の二酸化チタン含有量を低下させる可能性があり、規格外製品や作業コスト増加の原因となる。
【0004】
[0004]その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,491,024号には、セルロースエステル、及び平均粒径が100ナノメートル未満の二酸化チタンを0.05~5.0重量%含む人工ファイバーが開示されている。該ファイバーは、光分解性セルロースエステルトウで用いられる。
【0005】
[0005]その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,647,383号には、タバコカラム、及びセルロースエステルを含む人工ファイバーを含み、平均粒径が100ナノメートル未満である二酸化チタンを0.05~5.0重量%含有するフィルターを備えるタバコが開示されている。
【0006】
[0006]米国特許第5,491,024号及び米国特許第5,647,383号は、いずれも二酸化チタン粒子の凝集は、最低限に抑えられる又は低減されるべきであることを示唆するが、感光性を最大化するためにそのようにする。
【0007】
[0007]その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,288,254号は、ルチル型二酸化チタン、少なくとも1種の分散剤、及び水を混合することにより、少なくとも約60重量%の固形分を有する、分散剤がコーティングされたルチル型二酸化チタンスラリーを調製する方法;分散剤がコーティングされた二酸化チタンスラリーを、二酸化チタンを解凝集させるが、コーティングが二酸化チタンから引き剥がされるのを防止するのに十分なインペラー周速度を有する高剪断ミルに直接通過させる方法;及び固形分が少なくとも60重量%の実質的に凝集物を含まないルチル型二酸化チタンスラリーを回収する方法に向けられている。スラリーは、比較的高い固形分を必要とする水性塗
料で利用可能である。
【0008】
[0008]その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許公開第2014/0261086号は、二酸化チタン顔料を製造する方法に向けられている。該方法は、二酸化チタン粒子の水性スラリーを調製するステップを含む。該方法は、超音波処理法を用いて、二酸化チタン粒子の水性スラリーを解凝集させるステップを更に含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,491,024号
【特許文献2】米国特許第5,647,383号
【特許文献3】米国特許第4,288,254号
【特許文献4】米国特許公開第2014/0261086号
【特許文献5】米国特許第2,740,775号
【特許文献6】米国特許公開第2013/0096297号
【特許文献7】米国特許公開第2013/0192613号
【特許文献8】米国特許第7,585,442号
【特許文献9】米国特許第7,610,852号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0009]凝集の問題は認識されているものの、保存が長期にわたっても、所定の粒径分布要件を満たすスラリー及びスラリー形成方法に対する必要性が存在する。特に、周囲温度で4日間保存した後、様々な測定法に基づき測定したときに、スラリーは、1μm未満の粒径分布を有するものが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0010]1つの実施形態では、本発明は、30~60重量%の二酸化チタン、39~69重量%の水、及び0.1~1重量%の1種又は複数の添加剤を含むスラリーであって、周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有するスラリーに向けられている。いくつかの態様では、スラリーは、周囲温度で8日間保存した後、又は18日間保存した後に、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する。1種又は複数の添加剤が、分散剤、抗菌剤、及びその組み合わせからなる群から選択され得る。二酸化チタンは、食品グレードの二酸化チタンであり得る。二酸化チタンは、無機のコーティングでコーティングされ得る。無機のコーティングは、アルミニウム、セリウム、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物又は水酸化物であり得る。二酸化チタンは、有機の物質で処理され得る。有機の物質は、液体及び固体のポリオール、液体のポリリン酸塩、液体のヒドロキシアミン、液体及び固体のスチレン-無水マレイン酸コポリマー、並びにその組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの態様では、有機の物質は、低分子量ポリグリコール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ピロリン酸四カリウム、及びその組み合わせからなる群から選択される。D[4,3]及びD[0.9]粒径分布の増加は、周囲温度で4日間保存したとき、20%未満であり得る。
【0012】
[0011]別の実施形態では、本発明は、10~25重量%の二酸化チタン、65~85重量%のアセトン、及び5~10重量%の1種又は複数の添加剤を含むスラリーであって、を周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する、スラリーに向けられている。いくつかの態様では、スラリーは、周囲温度で8日間保存した後、又は18日間保存した後に、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]
粒径分布を有する。1種又は複数の添加剤は、分散剤、抗菌剤、及びその組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの態様では、1種又は複数の添加剤は、粘度調整剤を含み得る。二酸化チタンは、食品グレードの二酸化チタンであり得る。二酸化チタンは、無機のコーティングでコーティングされ得る。無機のコーティングは、アルミニウム、セリウム、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物又は水酸化物であり得る。二酸化チタンは、有機の物質で処理され得る。有機の物質は、液体及び固体のポリオール、液体のポリリン酸塩、液体のヒドロキシアミン、液体及び固体のスチレン-無水マレイン酸コポリマー、並びにその組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの態様では、有機の物質は、低分子量ポリグリコール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ピロリン酸四カリウム、及びその組み合わせからなる群から選択される。D[4,3]及びD[0.9]粒径分布の増加は、周囲温度で4日間保存したとき、20%未満であり得る。
【0013】
[0012]なおも別の実施形態では、本発明は、スラリーを調製する方法であって、二酸化チタン、液体、及び少なくとも1種の添加剤を組み合わせてスラリーを形成し、そのスラリーを混合し、そして、粒径低減装置を通してそのスラリーをポンプ搬送することを含み、該スラリーが、周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する方法に向けられている。粒径低減装置は、ペブルミル、サンドミル、高剪断ポンプ、及びプレミックスディスペンサーからなる群から選択され得る。スラリーは、周囲温度で8日間保存した後、又は18日間保存した後に、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有し得る。
【0014】
[0013]なおも別の実施形態では、本発明は、セルロースアセテートドープを調製する方法であって、二酸化チタン、液体、及び少なくとも1種の添加剤を含むスラリーを準備し、ここで、該スラリーは、周囲温度で18日間保存した後に、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する;該スラリーをセルロースアセテート及び溶媒と混合して該セルロースアセテートを該溶媒中に溶解して該スラリーを分散し;そして、該セルロースアセテートドープをフィルター処理して溶媒不溶性粒子を取り除くことを含み、該セルロースアセテートドープが、20~30重量%のセルロースアセテート、70~80重量%の溶媒、及び0.05~3重量%の二酸化チタンを含み、更に、1重量%未満の二酸化チタンがフィルター処理の間に除去される方法に向けられている。いくつかの態様では、スラリーは、10~25重量%の二酸化チタン、65~85重量%のアセトン、及び5~10重量%の1種又は複数の添加剤を含む。その他の態様では、スラリーは、30~60重量%の二酸化チタン、39~69重量%の水、及び0.1~1重量%の1種又は複数の添加剤を含む。溶媒は、水、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、氷酢酸、超臨界二酸化炭素、及びその組み合わせからなる群から選択され得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
I.緒言
[0014]本発明は、セルロースアセテートトウにおいて、つや消し剤として一般的に用いられる顔料である二酸化チタンを含むスラリー組成物に関する。スラリー組成物は、セルロースアセテートドープへの添加用として調製及び保存され、次にトウに形成される。スラリー組成物は、セルロースアセテートドープに所定量添加される。しかし、スラリー保存上の問題として、スラリー内の固形分が凝集する傾向を有し、粒径が増加することが挙げられる。本明細書で更に記載されるように、ドープは、フィルター処理及び押出成形を含むいくつかのプロセスステップに供される。フィルター処理中に、粒子が凝集すると、フィルターサイズよりも大きな粒子が除去され、最終製品内の二酸化チタンの量が低下するので問題である。更に、粒子の凝集は、ファイバー内に脆弱スポットを形成する可能性
があり、ロッド製造工程においてより多くのトウが飛散するおそれがある。更に、プロセスステップの下流では、粒径が増加すると、クリンパー上で過剰の摩耗を引き起こすおそれもある。スラリー内の粒径が増大すると望ましくない効果が生じ、その効果はプロセスを通じて引きずられるので、スラリー組成物の成分が下流プロセス中にフィルター除去されないように、1ミクロン未満に制御された粒径を有するのが、スラリー組成物にとって極めて望ましい。スラリー組成物は、スラリー組成物が必要とされるまで保存され得るように、経時しても比較的一定である粒径分布を有するのが更に望ましい。
【0016】
[0015]したがって、いくつかの態様では、本発明は、スラリーの総重量に基づき30~60重量%の二酸化チタン、39~69重量%の水、及び0.1~1重量%の1種又は複数の添加剤を含むスラリーであって、周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する、スラリーに向けられている。
【0017】
[0016]更なる態様では、本発明はスラリーの総重量に基づき、10~25重量%の二酸化チタン、65~85重量%のアセトン、及び5~10重量%の1種又は複数の添加剤を含むスラリーであって、周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する、スラリーに向けられている。
【0018】
[0017]本発明はまた、スラリーを調製する方法にも向けられている。いくつかの態様では、この方法は、二酸化チタン、液体、及び少なくとも1種の添加剤を組み合わせてスラリーを形成するステップ、スラリーを混合するステップ、及び粒径低減装置を通してスラリーをポンプ搬送するステップを含み、その場合、該スラリーは、周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する。
【0019】
[0018]本発明はセルロースアセテートドープを調製する方法を更に含む。この方法は、二酸化チタン、液体、及び少なくとも1種の添加剤を含むスラリーを準備し、ここで該スラリーは、周囲温度で18日間保存した後に、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する;該スラリーをセルロースアセテート及び溶媒と混合してセルロースアセテートを該溶媒中に溶解して該スラリーを分散し;そして、該セルロースアセテートドープをフィルター処理して、溶媒(通常アセトン)不溶性粒子を取り除くことを含み、該セルロースアセテートドープが、ドープの総重量に基づき20~30重量%のセルロースアセテート、70~80重量%の溶媒、及び0.05~3重量%の二酸化チタンを含み、更に、ドープの総重量に基づき1重量%未満の二酸化チタンがフィルター処理の間に除去される。
【0020】
II.スラリー組成物
[0019]スラリーは、二酸化チタン、液体、及び少なくとも1種の添加剤を含む。一般的に、液体は水性スラリーを形成する水、又はアセトンスラリーを形成するアセトンである。含まれる添加剤の種類及び含有量は、スラリーが水性スラリーであるか、又はアセトンスラリーであるかに依存する。
【0021】
[0020]スラリーが水性スラリーのとき、スラリーは、スラリーの総重量に基づき、30~60重量%の、例えば35~60重量%、又は40~60重量%の二酸化チタン;及び39~69重量%の、例えば39~65重量%、又は39~60重量%の水(一般的に脱イオン水)を含み得る。水性スラリーは、スラリーの総重量に基づき0.1~1重量%の、例えば0.2~0.9重量%、又は0.3~0.8重量%の1種又は複数の添加剤も含み得る。添加剤(複数可)は、分散剤、抗菌剤、及びその組み合わせからなる群から選択される。一般的に、水性スラリーは、アセトンを一切含まない。
【0022】
[0021]好適な分散剤として、アルカリ性ポリリン酸塩、脂肪族カルボン酸とそのアルカ
リ性の塩、ポリアクリル酸とそのアルカリ性の塩、ポリヒドロキシアルコール、アミノアルコール、及びアクリル酸ポリマーが挙げられるが、但しこれらに限定されない。アクリル酸ポリマーは、主としてアクリル酸であるアクリル酸ホモポリマー又はアクリル酸コポリマーであり得るが、マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、スチレン、及び酸のエステルからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーを含んでもよく、その場合、該ホモポリマー又はコポリマーは、一価の基を有する中和剤及び多価の基を有する少なくとも1種の中和剤で部分的に又は完全に中和されている。分散剤は、スラリーの総重量に基づき、0.1~1重量%、例えば0.1~0.8重量%、又は0.2~0.6重量%でスラリー中に存在し得る。
【0023】
[0022]本発明と組み合わせて用いられる好適な抗菌剤として、抗菌性の金属イオン、クロルヘキシジン、クロルヘキシジンの塩、トリクロサン、ポリミキシン(polymoxin)、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、エリスロマイシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン、ペニシリン、ノノキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ムピロシン、メトロニダゾール、セクロピン、プロテグリン、バクテリオシン、デフェンシン、ニトロフラゾン、マフェニド、アシクロビル、バンコマイシン(vanocmycin)、クリンダマイシン、過酸化物(例えば、20~40%の強度の過酸化水素稀釈液)、リンコマイシン、スルホンアミド、ノルフロキサシン、ペフロキサシン、ナリジクス酸、シュウ酸、エノキサシン酸、シプロフロキサシン、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、PHMB誘導体(例えば、生分解性ビグアニド様のポリエチレンヘキサメチレンビグアニド(PEHMB))、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロヘキシジン塩酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA誘導体(例えば、EDTA二ナトリウム又はEDTA四ナトリウム)等、及び任意のこれらの組み合わせを挙げることができるが、但しこれらに限定されない。分散剤は、スラリーの総重量に基づき、0.1~1重量%、例えば0.1~0.8重量%、又は0.1~0.6重量%で、スラリー中に存在し得る。
【0024】
[0023]スラリーがアセトンスラリーのとき、スラリーは、スラリーの総重量に基づき10~25重量%、例えば10~23重量%又は10~21重量%の二酸化チタン、及び65~85重量%、例えば67~85重量%又は70~85重量%のアセトンを含み得る。アセトンスラリーは、スラリーの総重量に基づき、例えば最大10重量%、最大5重量%、又は最大3重量%の水を含み得る。アセトンスラリーは、スラリーの総重量に基づき、5~10重量%、例えば6~10重量%又は7~10重量%の1種若しくは複数の添加剤も含み得る。添加剤(複数可)は、分散剤、抗菌剤、又はその組み合わせであり得る。いくつかの態様では、粘度調整剤が添加剤として含まれ得る。更なる態様では、粘度調整剤は、アセトンスラリーに含まれる唯一の添加剤である。
【0025】
[0024]好適な粘度調整剤として、水溶性ポリマー化合物、例えば一般的にフレーク状の置換型又は非置換型のセルロースエステル等が挙げられるが、但しこれらに限定されない。セルロースエステルは、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースセルロースブチレート、及びセルロースアセテートブチレートスクシネート、並びにその組み合わせからなる群から選択される。粘度調整剤が、スラリーの総重量に基づき、5~15重量%の、例えば6~15重量%、又は7~15重量%の1種又は複数の添加剤として、アセトンスラリー中に存在し得る。
【0026】
[0025]アセトンスラリー又は水性スラリーで用いられる二酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型、又は混合相二酸化チタンであり得る。いくつかの好ましい実施形態では、二酸化チタンは、アナターゼ型である。理論に縛られなければ、粉砕がより容易なので、アナターゼ型が好ましいと考えられる。スラリーの粒径分布は、本明細書に記載するように、MalvernD[0.9]方法で測定したとき、一般的に0.01~1μm、例えば0.1~0.9μm、0.2~0.8μm、又は0.4~0.6μmの範囲である。比表面積は、3~30m2/gの範囲であり得る。粒径分布及び比表面積は、下流の処理装置要件に基づき選択され得る。
【0027】
[0026]二酸化チタンは、無機のコーティングでコーティングされ得る。無機のコーティングは、アルミニウム、セリウム、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物又は水酸化物から形成され得る。
【0028】
[0027]二酸化チタンは、有機の物質で処理され得る。有機の物質は、液体及び固体のポリオール、液体のポリリン酸塩、液体のヒドロキシアミン、液体及び固体のスチレン-無水マレイン酸コポリマー、並びにその組み合わせからなる群から選択され得る。
【0029】
[0028]無機のコーティングは、二酸化チタンがスラリーに導入される前に、二酸化チタンに適用される。同様に、二酸化チタンは、二酸化チタンがスラリーに導入される前に、有機の物質で処理される。したがって、二酸化チタンは、無機のコーティングを有し、及び/又は有機の物質により処理される際には、コーティング及び処理において、粒径分布及び比表面積はすでに考慮済みである。
【0030】
[0029]スラリーを形成するために、二酸化チタンが液体(例えば、水又はアセトン)に添加され、均等に分散するように混合される。同時に又はこの添加後に、1種又は複数の添加剤が液体に添加され、均等に分散するように混合される。次に、スラリーは、粒径低減装置を通してポンプ搬送され得る。このステップは、混合中に凝集したあらゆる粒子のサイズを低減し且つ二酸化チタン供給源に由来するあらゆる不均一性を是正するように機能する。粒径低減装置は、ペブルミル、サンドミル、高剪断ポンプ、及びプレミックスディスペンサーからなる群から選択され得る。粒径低減中、低減プロセスであることから、スラリーは最大45℃まで加熱し得るが、該スラリーは、次に保存中、周囲温度まで冷却される。粒径の低減は、一般的に不連続なプロセスであるが、用いられる際には、流量は、2.3~9.1kg/分(5~20ポンド/分)、例えば3.2~6.8kg/分(7~15ポンド/分)、又は4.5~5.4kg/分(10~12ポンド/分)の範囲であり得る。流量がこの範囲より低いと、二酸化チタン及びそれに適用されたあらゆるコーティングに損傷を引き起こすおそれがある。流量がこの範囲より低いと、過剰に発熱する可能性もあり、分散剤等の添加剤が不活性化し得る。流量がこの範囲より高いと、粉砕が過少となり、不良な粒子分布を引き起こす可能性がある。いくつかの態様では、スラリーは、粒子低減装置を通して1回のみ送られる。更なる態様では、スラリーは、粒子低減装置を通して少なくとも2回、例えば3回又は4回送られる。
【0031】
[0030]スラリーの粒径分布は、粒径低減装置を通してポンプ搬送する前、及び様々な時期に測定され得る。2つの粒径測定法、D[4,3]及びD[0.9]が、例えば Malvern Instruments 社より販売されている Mastersizer2000を用いて測定される。測定
は、レーザー回折を用いて行われる。D[4,3]測定法は、体積平均径を表し、D[0.9]測定法は、粒子の体積の90%が表示の直径又はそれ未満を有することを表す。
【0032】
[0031]上記のように、二酸化チタンは、下流の処理要件に基づき選択される初期の粒径
分布を有し得る。例えば、下流のフィルター処理が1μmを上回る粒子を除去する場合、1μm未満、例えば0.8未満μm又は0.4~0.6μmのD[4,3]又はD[0.9]粒径分布を有する二酸化チタンが望ましい。スラリーが形成されると、スラリー内の粒子は凝集する傾向を有し、粒径分布は、経時すると一般的に増加する。粒径低減装置を通してスラリーをポンプ搬送することにより、粒径分布は調整可能であり、粒径低減装置の設定に基づき制御可能である。
【0033】
[0032]スラリーは、一般的に周囲温度、例えば20~25℃、及び周囲圧力、例えば平均海面における14.7psi(101pKa)で保存される。スラリーは調製直後に使用可能であるが、将来使用するために、スラリーを保存できるのが望ましい。スラリーは、少なくとも1日、例えば少なくとも4日間、少なくとも8日間、少なくとも12日間、少なくとも18日間、又は少なくとも22日間保存され得る。上記開示に基づき調製されるスラリーは、周囲温度で4日間保存した後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する。いくつかの態様では、スラリーは、周囲温度で8日間保存した後、例えば12日間後、18日間後、又は22日間後、1μm未満のD[4,3]及びD[0.9]粒径分布を有する。更に、粒径分布の増加は、D[4,3]及びD[0.9]の両方の測定方法に基づき、4日間にわたる保存期間中、20%未満、例えば15%未満又は10%未満であり得る。粒径分布の増加は、D[4,3]及びD[0.9]の両方の測定方法に基づき、8日間にわたる保存期間中、20%未満、例えば15%未満又は10%未満であり得る。粒径分布の増加は、D[4,3]及びD[0.9]の両方の測定方法に基づき、18日間にわたる保存期間中、20%未満、例えば19%未満又は18%未満であり得る。粒径分布の増加は、D[4,3]及びD[0.9]の両方の測定方法に基づき、22日間にわたる保存期間中、20%未満、例えば19%未満又は18%未満であり得る。粒径分布が測定され、増加が所望の量を上回る場合、又は粒径が大きすぎる場合には、スラリーは、使用する前に、粒径低減装置を通してポンプ搬送され得る。
【0034】
III.セルロースアセテートドープ
[0033]スラリーが形成され、必要とされるまで保存されたら、セルロースアセテートドープに添加され得る。セルロースアセテートドープは、セルロースアセテートを溶媒中に溶解してドープ溶液を形成することにより形成される。溶媒は、水、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、氷酢酸、超臨界二酸化炭素、上記のポリマーを溶解する能力を有する任意の好適な溶媒、及びその組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの態様では、溶媒は、アセトン又はアセトンと水、例えばドープの総重量に基づき最大5重量%の水との組み合わせである。ドープは、20~30重量%のセルロースアセテート、及び70~80重量%の溶媒を含み得る。ドープは、ドープの総重量に基づき、0.05~3重量%、例えば0.05~2重量%又は0.08~1重量%の二酸化チタンを更に含む。ドープに添加されるスラリーの量は、スラリー内の二酸化チタン含有量により決定される。スラリーを添加する際には、所望の溶媒含有量を有するドープが生成するように、スラリー中のアセトン及び/又は水の量も考慮される。
【0035】
[0034]スラリーは、セルロースアセテートを溶解するのと同時に、又はセルロースアセテートを溶解する間の一部、例えばプロセスの終了まで溶媒に添加され得る。溶媒、セルロースアセテート、及びスラリーは、セルロースアセテートを溶解し、スラリーを分散するために混合される。ドープは、混合を強化するために、例えば45~70℃の温度に加熱され得る。混合は、周囲圧力又は高圧力の下で実施され得る。高圧力は、混合が窒素ブランケットの下で生ずる際に利用可能である。混合時間は、3~10時間の範囲であり得る。セルロースアセテートが溶媒に溶解したら、ドープは次にフィラメントを形成するために紡糸される前にフィルター処理及び脱気される。脱気プロセスは、周囲圧力又は高圧力の下で実施され得る。高圧力は、窒素ブランケットに起因して利用可能である。フィル
ターのサイズは変化し得るが、下流の装置及び製品仕様書に応じて選択される。一般的に、代表的なドープフラックスは濾過面積1平方メートル当たり、978~2441g/時(1平方フィート当たり、0.2~0.5ポンド/時)の総押出成形製品が望ましい。但し、一般的には
[0035]ドープ内の二酸化チタンの百分率は、フィルター処理後に測定され得る。二酸化チタンの百分率を測定する1つの技法は、X線分析法、例えばASOMA Instruments社より販売されている装置等を用いることによる。本明細書に記載するスラリーの粒径分布、及びその保存安定性から、ドープに最初に添加された二酸化チタンの1重量%未満、例えば0.9重量%未満、0.8重量%未満、又は0.7重量%未満がフィルター処理中に除去される。いくつかの態様では、ドープに最初に添加された二酸化チタンの20%未満、例えば15%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満がフィルター処理中に除去される。この二酸化チタン含有量の厳格な制御により、含有量及び不透明性に関する二酸化チタンの規格を満たす製品が実現可能となる。更に、二酸化チタンの粒径分布が、ドープステップで用いられるフィルターのサイズに基づき選択されるので、フィルターを通過し、その後下流のプロセスステップに至る大型の二酸化チタン粒子の数は減少する。より大きなサイズの二酸化チタン粒子は、ファイバー強度を低下させ、押出成形ガイダリー及びクリンピング装置の摩耗を増加させ、その結果、トウの飛散の増加を引き起こし、ロッド製造中にトウ性能に対して悪影響を及ぼし得ると考えられているので、これは有利である。
【0036】
IV.セルロースアセテートフィラメント及びトウ形成
[0036]本明細書に記載するドープに溶解したセルロースアセテートフレークは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第2,740,775号及び米国特許公開第2013/0096297号で開示されているプロセスを含む、公知のプロセスにより調製可能である。セルロースアセテートは、タバコフィルターを形成するのに用いられる最も一般的なセルロースエステルであるものの、代替的セルロースエステルも利用可能性がある。代替的セルロースエステルとして、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースセルロースブチレート、セルロースアセテートブチレートスクシネート、及びその混合物が挙げられる。
【0037】
[0037]一般的に、アセチル化セルロースは、好適な酸性触媒の存在下でセルロースをアセチル化剤と共に反応させることにより調製される。アシル化剤には、カルボン酸無水物(又は単に無水物)とカルボン酸ハロゲン化合物、特にカルボン酸塩化物(又は単に酸塩化物)の両方が含まれ得る。好適な酸塩化物として、例えば塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル等の酸塩化物を挙げることができる。好適な無水物として、例えば無水酢酸、無水プロピオン、無水酪酸、無水安息香酸等の無水物を挙げることができる。これらの無水物又はその他のアシル化剤の混合物も、異なるアシル基をセルロースに導入するために利用可能である。混合された無水物、例えば酢酸プロピオン酸無水物、酢酸酪酸無水物等も、いくつかの実施形態において、この目的で利用可能である。
【0038】
[0038]ほとんどの場合、いくつかの更なるヒドロキシル基置換(例えば、硫酸エステル)を伴う高度の置換値を有する誘導体化セルロースを生成するために、場合によっては、セルロースはアセチル化剤を用いて徹底的にアセチル化される。セルロースの徹底的アセチル化とは、セルロース内のできる限り多くのヒドロキシル基がアセチル化反応を受けるように、徹底的に実施されるアセチル化反応を意味する。セルロースアセテートがタバコフィルターで用いられるように意図されるとき、置換度は、3.0未満、好ましくは2.
2~2.8又は2.4~2.6であり得る。
【0039】
[0039]セルロースのアセチル化を促進する好適な酸性触媒は、硫酸又は硫酸と少なくとも1種のその他の酸との混合物を多くの場合含む。硫酸を含有しないその他の酸性触媒も、アセチル化反応を促進するのに同様に利用可能である。硫酸の場合、セルロース内の少なくとも一部のヒドロキシル基が、アセチル化反応中に硫酸エステルとして最初に機能化され得る。一般的に、このような硫酸エステルのほとんどは、アセチル置換の量を低減するのに用いられる制御された部分的加水分解の間に開裂する。その他の酸性触媒の場合、それ自身がセルロースのヒドロキシル基と反応する可能性は一般的にかなり低い。
【0040】
[0040]アセチル化セルロースの極めて望ましい特性の1つとして、その意図された最終用途に応じて、例えばフィルム、フレーク、ファイバー(例えば、ファイバートウ)、変形不能な固体等を含む、いくつかの異なる形態に容易に処理可能であることが挙げられる。ほとんどの場合、制御された部分的加水分解から得られるアセチル化セルロースは、フレーク状の材料として析出する。
【0041】
[0041]セルロースアセテートからフィラメントを形成するために、上記のようにドープが形成される。ドープは、1つ又は複数のキャビネットを備え、各キャビネットはスピナレットを備えるスピナー内で紡糸され得る。スピナレットは、溶媒がフィラメントから蒸発する速度に影響を及ぼす孔を備える。孔の形状及び紡糸パラメーターは、選択されたサイズ、断面形状、強度、及び加工適性を有するフィラメントが形成されるように選択され得る。一般的に、孔は、直径25~75マイクロメートルのフィラメントの形成を可能にする。孔に関する様々なデザインが、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許公開第2013/0192613号に開示されている。
【0042】
[0042]スピナレットは、最高100℃の温度で作動するキャビネット内にあり得るが、溶媒を蒸発させるために、高温の蒸気により熱が供給され得る。90%を超える溶媒が紡糸工程中に蒸発し、セルロースアセテートの固体フィラメントが残る。フィラメントは、一般的に1フィラメント当たり1~15デニールの範囲にあり、円形、凹凸形状、Y字状、X字状、及びドッグボーン形状を含む、但しこれらに限定されない断面形状を有し得る。紡糸工程中に温度を修正すること、並びにスピナー内のキャビネットの数を修正することにより、フィラメントの強度は調整可能である。例えば、フィラメントがスピナレットを最初に通過する際に、フィラメントは、容易に損傷を受ける又は破壊される可能性がある。但し、フィラメントがスピナレットから更に移動すると、フィラメントは硬化し、フィラメント強度が増し、より強くより多量の気流を継続させて、溶媒を蒸発させることが可能となる。スピナーを通過する空気の流れは、並流であっても、向流であってもよい。
【0043】
[0043]フィラメントがスピナレットを通過すると、定速ロール上に供給され、そこで更に引き伸ばされ得る。更なる紡糸技法も、湿式紡糸及び溶融紡糸を含め、本明細書に記載する乾式紡糸代わりに利用可能である。任意選択的に、潤滑剤又は仕上げ剤が、フィラメントに添加され得る。代表的な潤滑剤又は仕上げ剤として、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,585,442号で開示されているような鉱物油、乳化剤、及び水が挙げられ、但し潤滑剤又は仕上げ剤は、これらの成分に限定されない。潤滑剤又は仕上げ剤は、スプレーイング又はワイピングにより適用され得る。一般的に、潤滑剤又は仕上げ剤は、フィラメントをトウに形成する前に、フィラメントに添加される。
【0044】
[0044]フィラメントは、次にローラー上で束ねられ、トウを形成する。一般的に、トウは、10,000~100,000の範囲の総デニールであり得、8cm未満の幅を有し得る(水平方向端部から水平方向端部までを測定した場合)。トウが束ねられると、クリ
ンピング前又はその間に、トウは可塑化され得る。可塑剤は、一般的に液状でトウに噴霧されるが、その他の可塑剤適用方法も利用可能である。セルロースアセテートのバインダー又は硬化剤として作用する可塑剤が選択される。非常に多くの種類の可塑剤が、2~40重量%の量で利用可能である。用いられる可塑剤の量は、可塑剤そのもの、並びに可塑化されるトウの所望の硬度に依存する。
【0045】
[0045]いくつかの好ましい実施形態では、可塑剤は水であるが、非常に多くのその他の可塑剤も利用され得る。本明細書に記載する可塑化されたセルロースアセテートと共に利用するのに好適な可塑剤として、いくつかの実施形態では、以下が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0046】
【0047】
式(式中、R1は、H、C1~C4のアルキル、アリール、又はC1~C4のアルキルアリールである);式2(式中、R2は、H、C1~C4のアルキル、アリール、又はC1~C4のアルキルアリールであり、R3は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、アシル、又はC1~C4のアルキルアシルである);式3(式中、R4とR6は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアル
キルアミドであり、R5は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、アシル、又はC1~C4のアルキルアシルである);式4(式中、R7は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、C1~C4のアルコキシ、アミン、又はC1~C4のアルキルアミンであり、R8とR9は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式5(式中、R10、R11、及びR12は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式6(式中、R13は、H、C1~C4のアルキル、アリール、又はC1~C4のアルキルアリールであり、R14とR16は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドであり、R15は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、アシル、又はC1~C4のアルキルアシルである);式7(式中、R17は、H又はC1~C4のアルキルであり、R18、R19、R20は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式8(式中、R21は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドであり、R22は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、又はC1~C4のアルキルアミンである);式9(式中、R23とR24は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式10(式中、R25、R26、R27、及びR28は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式11(式中、R29、R30、及びR31は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式12(式中、R32は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリールであり、R33は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、C1~C4のアルコキシ、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、又はC1~C4のアルキルアミンであり、R34、R35、及びR36は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式12(式中、R37、R38、R39、及びR40は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式14(式中、R41は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、又はC1~C4のアルコキシであり、R42とR43は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボ
キシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである環式炭素又は環式窒素のそれぞれに由来するR置換基を有するトリアジン(1,2,3、1,2,4、又は1,3,5);独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである環式炭素又は環式窒素のそれぞれに由来するR置換基を有するトリアゾール(1,2,3又は1,2,4);独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、C1~C4のアルコキシ、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである環式炭素又は環状式窒素のそれぞれに由来するR置換基を有するピロール;独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、C1~C4のアルコキシ、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである環式炭素又は環式窒素のそれぞれに由来するR置換基を有するピペリジン;独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、C1~C4のアルコキシ、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである環式炭素又は環式窒素のそれぞれに由来するR置換基を有するピペラジン;R44とR46が、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドであり、及びR45が、C1~C10のアルキルであるR44HN-R45-NHR46;並びにその組み合わせ。本明細書で用いる場合、「アルキル」とは、直鎖状又は分岐状(例えば、t-ブチル)及び飽和又は不飽和であり得るCとHを有する置換基を意味する。本明細書で用いる場合、「アリール」とは、フェニル、ナフチル、及びヘテロ原子を含む芳香環を含み得る芳香環を意味する。
【0048】
[0046]本明細書に記載する可塑化されたセルロースアセテートで利用するのに適する可塑剤の例として、いくつかの実施形態では、トリアセチン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルシトレート、アセチルトリメチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリブチル-o-アセチルシトレート、ジブチルフタレート、ジアリールフタレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジ-2-メトキシエチルフタレート、ジオクチルフタレート(及び異性体)、ジブチルタルタレート、エチル-o-ベンゾイルベンゾエート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、n-エチルトルエンスルホンアミド、o-クレシル-p-トルエンスルホネート、芳香族ジオール、置換された芳香族ジオール、芳香族エーテル、トリプロピオニン、トリベンゾイン、ポリカプロラクトン、グリセリン、グリセリンエステル、ジアセチン、グリセロールトリベンゾエート、グリセロールアセテートベンゾエート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールジエステル、ジ-2-エチルヘキシルポリエチレングリコールエステル、グリセロールエステル、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコルジグリシジルエーテル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリジノン(pyrollidinone)、プロピレンカーボネート、C1~C20のジカルボン酸エステル、ジメチルアジペート(及びその他のジアルキルエステル)、ジブチルマレート、ジオクチルマレート、レゾルシノ
ールモノアセテート、カテコール、カテコールエステル、フェノール、エポキシ化大豆油、ひまし油、アマニ油、エポキシ化アマニ油、その他の植物油、その他の種子油、ポリエチレングリコールに基づく二官能性グリシジルエーテル、アルキルラクトン(例えば、γ-バレロラクトン)、アルキルホスフェートエステル、アリールホスフェートエステル、リン脂質、芳香物質(本明細書に記載するいくつか、例えばオイゲノール、シンナミルアルコール、樟脳、メトキシヒドロキシアセトフェノン(アセトバニロン)、バニリン、及びエチルバニリンを含む)、2-フェノキシエタノール、グリコールエーテル、グリコールエステル、グリコールエステルエーテル、ポリグリコールエーテル、ポリグリコールエステル、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、エチレングリコールエステル(例えば、エチレングリコール二酢酸エステル)、プロピレングリコールエステル、ポリプロピレングリコールエステル、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、ナプロキセン、イミダゾール、トリエタノールアミン、安息香酸、ベンジルベンゾエート、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、プロピル-4-ヒドロキシベンゾエート、メチル-4-ヒドロキシベンゾエート、エチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ベンジル-4-ヒドロキシベンゾエート、グリセリルトリベンゾエート、ネオペンチルジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリメチロールエタントリベンゾエート、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ソルビトール、キシリトール、エチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、トリアジン、トリアゾール、ピロール等、その任意の誘導体、及び任意のこれらの組み合わせが挙げられるが、但しこれらに限定されない。
【0049】
[0047]本明細書に記載する可塑化されたセルロースアセテートで利用するのに適する更なる可塑剤の例として、いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤を挙げることができ、これにはポリソルベート(例えば、SigmaAldrich 社から入手可能なTWEEN(
登録商標)20又はTWEEN(登録商標)80)、ソルビタンエステル(例えば、SigmaAldrich 社から入手可能なSPAN(登録商標)製品)、ポリエトキシル化芳香族炭化
水素(例えば、SigmaAldrich 社から入手可能なTORITON(登録商標)製品)、ポ
リエトキシル化脂肪酸、ポリエトキシル化脂肪族アルコール(例えば、SigmaAldrich 社
から入手可能なBRIJ(登録商標)製品)、フッ素系界面活性剤、グルコシド、及び炭化水素のテール(例えば、C6~C22アルキル基)及びヒドロキシル基及びエステル基を含む親水性ヘッド基を有するその他の非イオン性界面活性剤、並びにその組み合わせが含まれるが、但しこれらに限定されない。いくつかの非イオン性界面活性剤は、単独で又は小分子可塑剤と組み合わせて、セルロースアセテートを可塑化することが発見された。従来型の可塑剤は小分子なので、これは意外である。対照的に、長い炭化水素テール基及びおそらくは大型のヘッド基を有する非イオン性界面活性剤は嵩高い。例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートは、トリアセチン等の従来型のセルロースアセテート可塑剤よりも有意に大型であるが、セルロースアセテートを可塑化することが認められた。
【0050】
[0048]いくつかの実施形態では、可塑剤は生物由来であり得る。例えば、生物由来のトリアセチン、ジアセチン、トリプロピオニン、グリセリルエステルは、バイオディーゼルの副生成物であるグリセロールから生成され得る。生物由来であり得る可塑剤のその他の例として、バニリン、アセトバニロン、γ-バレロラクトン、オイゲノール、エポキシ化ダイズ油、ひまし油、アマニ油、エポキシ化アマニ油、及びジカルボキシルエステル(例えば、ジメチルアジペート、ジブチルマレート)を挙げることができるが、但しこれらに限定されない。いくつかの事例では、芳香性の可塑剤が天然物から抽出可能であり、したがって、生物由来の可塑剤である。
【0051】
[0049]いくつかの実施形態では、可塑剤は、半揮発性~揮発性可塑剤であり得る。いくつかの好ましい半揮発性~揮発性可塑剤の例として、グリセロールエステル、(例えば、
トリアセチン、ジアセチン、モノアセチン)、エチレングリコールジアセテート、アルキルラクトン(例えば、γ-バレロラクトン)、ジブチルマレート、ジオクチルマレート、ジブチルタルタレート、オイゲノール、トリブチルホスフェート、トリブチル-o-アセチルシトレート、及びレゾルシノールモノアセテートを挙げることができるが、但しこれらに限定されない。
【0052】
[0050]いくつかの態様では、2種以上の可塑剤が利用可能である。更に、熱可塑性のポリマーが、可塑化ステップ中に、トウと共に含まれ得る。熱可塑性のポリマーとして、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリアルファオレフィン、ポリエステル、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール(「PVOH」)、ポリエチレンイミン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエーテルアミドコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンコポリマー、ブチルゴム、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレンコポリマー、アクリル類、ニトリル、及びその組み合わせが挙げられる。
【0053】
[0051]トウが可塑化されたら、クリンパーに誘導される。いくつかの態様では、トウは、クリンパーに進入する少なくとも0.5メートル前、例えば少なくとも1メートル前に可塑化される。或いは、トウは、クリンパー内で可塑化され得る。非常に多くのクリンパーが当技術分野において公知であるが、それらは一般的にトウをクリンパー内に引き込んで作動し、その場合、ある種の溝又は表面テクスチャーを有するローラーがクリンプをトウに誘導する。その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,585,442号に記載されるように、クリンパーは、ベースフレーム及びベースフレームに関連して移動するトップフレームを有するスタッファーボックスクリンパーであり得る。クリンパーは、ニップローラー、ニップローラーの側辺上のチークプレート、ドクターブレード、フラッパー、及び蒸気インジェクターを備える。
【0054】
[0052]トウは、1対のニップローラーによりクリンパーを介して引っ張られるが、ニップローラーは、トウがニップを通過する際に、それにしわを付ける又はそれを曲げるので、「クリンプ誘導」ローラーと呼ばれる場合もあり、したがってトウ内のクリンプの場所に影響を及ぼす。1対のニップローラーのうち、一方のニップローラーは平滑であり得るが、他方のニップローラーには、溝が設けられる場合がある。溝は、表面性状、例えば溝、凹部、又はその他の種類のテクスチャー等を含む任意の種類であり得る。溝は、好ましくはサイン曲線の形態であるが、長方形、三角形、又は半円の切欠き、溝、又は畝であってもよく、それらの溝の間には、ローラーの表面を横断して軸の方向(すなわち、水平から水平の方向)に延在する平らな面がある場合と無い場合がある。これらの溝は、2.5cm(1インチ)当たり10~100本の範囲の溝、好ましくは2.5cm(1インチ)当たり25~75本の溝、最も好ましくは2.5cm(1インチ)当たり50本の溝であり得る。溝の深度(ピークからトラフ)は、12.5ミクロン~150ミクロン(0.5ミル~5.0ミル)、好ましくは25~50ミクロン(1~2ミル)の範囲であり得る。
【0055】
[0053]各ニップローラーは、スチール/合金結合型チタンカーバイド、タングステンカーバイド、HIP処理された若しくはHIP処理されないMgO安定化ジルコニア、又はHIP処理された若しくはHIP処理されないイットリア安定化ジルコニアを含む、但しこれらに限定されない金属材料又はセラミック材料からなり得る。いくつかの実施形態では、上側ニップローラーは平滑である一方、下側ニップローラーには溝が設けられている。トウはニップローラーを離脱し、スタッファーボックスに進入する。いくつかの態様で
は、トウの端部は、ニップローラーとニップローラーの側部上に位置するチークプレートとの間で生じるフィラメントの損傷を最低限に抑えるために、スタッファーボックスに進入する前に潤滑化され得る。このチークプレートは、ニップローラーの間にトウを維持するガイドとして機能し得る。ドクターブレードは、ニップローラーに隣接して位置し、トウをスタッファーボックスに誘導し且つトウがローラーに張り付くのを防ぐ働きをする。
【0056】
[0054]スタッファーボックスは、スタッファーボックスの各片側内に、ニップローラーに隣接して配置する蒸気インジェクターを備える。スタッファーボックスのチャンネル内でトウのクリンプを固定し、軽く結合させるために、蒸気インジェクターが、蒸気、一般的に温度が約100℃の低圧乾燥蒸気をスタッファーボックスに注入する。
【0057】
[0055]クリンプの形状は、最終ベールの加工適性において役割を演ずる可能性がある。クリンプ形状の例として水平方向、実質的に水平方向、垂直方向、実質的に垂直方向、水平方向と垂直方向の間のある角度、ランダム、又は任意のこれらの組み合わせを挙げることができるが、但しこれらに限定されない。留意すべき点として、用語「水平方向」及び「垂直方向」とは、一般的全体的なクリンプの向きを意味し、前記形状から+/-約30度ずれる場合もあることが挙げられる。
【0058】
[0056]クリンプの形状は、後続するプロセスステップにおける最終ベールの加工適性にとっても重要となり得、例えば、凝集力を増強する更なるステップが講じられないとすれば、水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプの形状の方が、垂直方向及び/又は実質的に垂直方向のクリンプ形状よりも良好なフィラメント凝集力を実現し得る。水平方向のクリンプを達成するために、3つの処理パラメーター、例えばクリンピング前のトウの水分含有量、クリンピング中のトウの厚さ、及びクリンピング中のフラップ力に対するニップ力の比のうちの少なくとも1つが操作され得る。
【0059】
[0057]水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプ形状を達成するために、総水分の重量パーセントが低めである、例えば5~25%等のフィラメントを含むトウについてクリンピングを実施するのが望ましいと考えられる。いくつかの実施形態では、低めの水分重量パーセントは、クリンピング前にトウを乾燥させること、高めの固体濃度若しくは水分含有量が低めの仕上げエマルジョンを適用すること、上質仕上げ剤を適用した後に分離制御用の水を添加すること、その他の水分に関係するトウのあらゆる添加を低減又は除去すること、スピニングセルを離脱するファイバーの水分含有量が低下するように、スピニング条件を変更すること(温度を上げる、スピードを落とす、加熱キャビネット内の気流を高める、ドープ濃度を変更する)、又はこれらを任意に組み合わせることにより達成され得る。
【0060】
[0058]更に、水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプ形状は、細めのトウをクリンピングすること、すなわちクリンパーニップローラー幅2.5cm(1インチ)当たり総デニールを低減することにより達成され得る。いくつかの実施形態では、クリンパーニップローラー幅2.5cm(1インチ)当たりの総デニールは、約60,000以下、約50,000以下、又は約40,000以下であり得る。適するクリンパーニップローラー幅2.5cm(1インチ)当たりのデニールは、下限の約5,000、10,000、15,000、又は20,000から上限の60,000、50,000、40,000、35,000、又は30,000の範囲であり得るが、クリンパーニップローラー幅2.5cm(1インチ)当たりの総デニールは、下限値のいずれかから上限値のいずれかまでの範囲であり得、その間のあらゆるサブセットを含み得る。
【0061】
[0059]更に、水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプ形状は、フラップ力に対するニップ力の比、すなわち負荷するフラップ力に対する負荷するニップ力の比を低下さ
せてクリンピングすることにより達成され得る。いくつかの実施形態では、フラップ力に対するニップ力の比は、約100:1以下、約50:1以下、又は約25:1以下であり得る。適するフラップ力に対するニップ力の比は、下限の約3:1、5:1、又は10:1から上限の約100:1、50:1、又は25:1の範囲であり得、その場合、ニップ対フラップ比は、下限のいずれかから上限のいずれかまでの範囲であり得、その間のあらゆるサブセットを含み得る。
【0062】
[0060]留意すべき点として、水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプ形状を達成する上記方法のうちの少なくとも2つが、任意の組み合わせで利用可能であることが挙げられる。併用して用いる場合、併用すると相乗的効果が生じ得るので、上記パラメーターの限界値は拡張され得ることにも留意すべきである。非限定的な実施例として、水分約27%w/wのトウは、フラップ力に対するニップ力の比約15:1でクリンパーニップロール幅2.5cm(1インチ)当たりの総デニール約25,000でクリンピングされると、水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプ形状が生ずる可能性がある。
【0063】
[0061]クリンプが形成されたら、トウは、残留する水及び/又はアセトンを乾燥及び除去する乾燥機に誘導される。乾燥したトウは、次にトウの積層物を形成するためにカンに供給される。乾燥したトウは、一連のローラーにより、例えばあるパターンでカン内にトウを横置きにし、積層し、又は整列させてカン内に配置され得る。留意すべき点として、カンは、任意の形状、好ましくは四角形又は長方形、及び任意の材料であり得る容器を一般的に指すのに使用され得ることが挙げられる。用語「パターン」とは、任意のデザインを意味し、配置している間に変化する場合もあれば、しない場合もある。いくつかの実施形態では、パターンは、約1.6サイクル/m~約19.7サイクル/m(約0.5サイクル/ft~約6サイクル/ft)の周期性を有する実質的にジグザグ形であり得る。いくつかの実施形態では、配置ステップは、約10m/m~約40m/mのパドリングインデックスを用いて、トウをパドリングするステップを含み得る。用語「パドリング」とは、トウを配置したときに、その直線距離よりもトウの実際の長さが長くなるように、トウをその上に少なくとも部分的に横置きに配置することを意味する。用語「パドリングインデックス」とは、トウを配置したときに、トウの長さがその直線距離の何倍に相当するかを意味する。
【0064】
[0062]トウの積層物は、次にベールプレスに移動し、そこでベールは圧縮され、出荷用に包装される。カンはプレスウォール内にセットされ、次にプラテンにより圧縮される。代表的なトウベールの圧縮及びベールプレス設計は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,610,852号に開示されている。一般的に、ベールプレスは、包装まで維持される実質的に平らな面を有するトウに形成が可能となるように選択された2つの形状化されたプラテンを備える。そのような実質的に平らな面は、保存及び出荷中にベールを積み重ねることができるので有利である。更に、トウが絡まった状態となる可能性がより低く、デベーリングがより効率的に実現可能であるので、ベール上の平らな面は、本明細書に記載するデベーリングプロセスにおいて有利である。
【0065】
[0063]いくつかの実施形態では、包装は、ラッピング材料、真空ポート(真空解除及び/又は真空吸引用)、緊締要素、又は任意のそれらの組み合わせ等の少なくとも1つの構成要素を含み得る。適するラッピング材料として、空気透過性材料、空気不透過性材料、フィルム(例えば、ポリマー性フィルム、ポリエチレンフィルム、プラスチックラップ)、熱収縮性フィルム、ダンボール、木材、織物材料(すなわち、ファブリックを形成するように相互に織り交ざった2セットの糸から構成されるファブリック)、非織物材料(すなわち、機械的手段又は化学的手段により共に保持される、ランダムなウェブ又はマット状のテキスタイルファイバーのアセンブリ、例えば融合した熱可塑性のファイバー)、フォイル材料(例えば、金属材料)等、又は任意のこれらの組み合わせが挙げられるが、但
しこれらに限定されない。適する緊締要素として、VELCRO(登録商標)、ピン、フック、ストラップ(例えば織物、非織物、ファブリック、及び/又は金属)、接着剤、テープ、溶融結合剤等、又は任意のこれらの組み合わせを挙げることができるが、但しこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、包装(そのあらゆる構成要素を含む)の少なくとも一部分は、再利用可能であり得る。
【0066】
[0064]いくつかの実施形態では、ベールは、高さが約76cm(30インチ)~約152cm(60インチ)、長さが約117cm(46インチ)~約142cm(56インチ)、及び幅が約89cm(35インチ)~約114cm(45インチ)の範囲の寸法を有し得る。いくつかの実施形態では、ベールは、重さ408kg(900ポンド)~953kg(2100ポンド)の範囲である。いくつかの実施形態では、ベールは、約300kg/m3(18.8lb/ft3)よりも大きい密度を有し得る。
【0067】
[0065]本発明は、下記の非限定的な実施例を参照すれば、よりよく理解される。
【実施例0068】
V.実施例
[0066]59.82重量%の二酸化チタン、39.52重量%の水、及び0.66重量%の添加剤を含むスラリーを調製した。二酸化チタンを、有機の物質で処理し、無機のコーティングでコーティングした。次に、スラリーを周囲温度(約25℃)で容器内に保存した。Malvern Instruments社より販売されているMastersizer2000パーティクルサイザーを用いて、粒径分布を測定した。1日保存及び18日間保存した後に、測定を行った。結果を下記の表1に示す。
[0067]表1に示す通り、スラリーの粒径分布の増加は、18日間にわたり受け入れ可能であり、両方の分布測定方法に基づき、粒径は1μm未満であり、第1日目からの増加パーセントが20%未満であった。