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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058610
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】DPアンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07C 327/48 20060101AFI20220405BHJP
   C07D 309/06 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20220405BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220405BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C07C327/48
C07D309/06 CSP
A61K31/351
A61P43/00 111
A61P37/08
A61P25/20
A61K31/196
A61P17/10
A61P35/00
A61P35/02
A61P13/10
A61P21/00
A61P31/12
A61P9/10
A61P1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003838
(22)【出願日】2022-01-13
(62)【分割の表示】P 2020548589の分割
【原出願日】2019-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2018175758
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】浅田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】花田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】樋口 悟法
(72)【発明者】
【氏名】長縄 厚志
(72)【発明者】
【氏名】武田 康宏
(57)【要約】      (修正有)
【課題】DP受容体アンタゴニストを提供する。
【解決手段】一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩。

(Rは、H、C1-4アルキル、又はベンジル基;R、R、及びRは、夫々独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換/非置換のC1-4アルキル等;Jは、結合手、-O-、又は-S-;Lは、結合手、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン等;Rは、H、C3-10炭素環、又は3-10員ヘテロ環;Rは、H又はC1-4アルキル基;R11、R12は、H、ハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換/非置換のC1-4アルキル基;nは、0-4の整数;mは、0-3の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
(式中、Rは、水素原子、C1-4アルキル、またはベンジル基を表し、
、R、およびRは、それぞれ独立して、(1)ハロゲン原子、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル、または(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルコキシ基を表し、
またはRがそれぞれ複数存在する場合は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
Jは、結合手、-O-、または-S-を表し、
Lは、結合手、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、またはC2-6アルキニレン基を表し、
は、水素原子、C3-10炭素環、または3-10員ヘテロ環を表し、
中のC3-10炭素環および3-10員ヘテロ環は、1-6個のRで置換されていてもよく、
但し、Lが結合手の場合、Rは水素原子ではなく、
は、(1)ハロゲン原子、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル、または(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルコキシ基を表し、
が複数存在する場合は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
Qは、酸素原子、または硫黄原子を表し、
但し、Qが酸素原子の場合、(1)LがC1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、またはC2-6アルキニレン基であり、且つRはC3-8単環炭素環または3-8員単環ヘテロ環、または(2)Lは結合手であり、且つRはC3-10炭素環または3-10員ヘテロ環であり、
は、水素原子またはC1-4アルキル基を表し、
11は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル基を表し、
12は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル基を表し、
11とR12は、それらが結合している炭素原子と一緒になってC3-6飽和炭素環を形成してもよく、
nは、0-4の整数を表し、
mは、0-3の整数を表す。)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Qが、硫黄原子である、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
一般式(I-1):
【化2】
(式中、R51はC3-10炭素環、または3-10員ヘテロ環を表し、Jは結合手、または-O-を表し、その他の記号は請求項1記載の記号と同じ意味を表す。)で示される請求項1または2記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
51が、3-8員飽和単環ヘテロ環である、請求項3記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
化合物が、
(1)(4-クロロ-3-{4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド}フェニル)酢酸、
(2){4-クロロ-3-[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]フェニル}酢酸、
(3){4-クロロ-3-[4-(2-フェニルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]フェニル}酢酸、
(4){4-クロロ-3-[4-(2-シクロプロピルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]フェニル}酢酸、
(5)(4-クロロ-3-{2,6-ジメチル-4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]ベンズアミド}フェニル)酢酸、
(6){4-クロロ-3-[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}酢酸、
(7){4-クロロ-3-[4-(2-シクロプロピルエトキシ)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}酢酸、
(8)(3-{4-[(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)オキシ]-2,6-ジメチルベンズアミド}-4-フルオロフェニル)酢酸、
(9){4-クロロ-3-[4-(3-シクロヘキシルプロプ-1-イン-1-イル)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}酢酸、
(10)(4-クロロ-3-{4-[(1E)-3-シクロヘキシルプロプ-1-エン-1-イル]-2,6-ジメチルベンズアミド}フェニル)酢酸、
(11)(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2,6-ジメチルベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(12)[4-クロロ-3-({4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル}アミノ)フェニル]酢酸、
(13)(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(14)(4-クロロ-3-{[4-(2-フェニルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(15)(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロプロピルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(16)[4-クロロ-3-({2,6-ジメチル-4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]ベンゼン-1-カルボチオイル}アミノ)フェニル]酢酸、
(17){4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}酢酸、
(18){4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2S)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}酢酸、
(19)2-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}プロパン酸、
(20)1-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}シクロプロパンカルボン酸、
(21)2-{4-クロロ-3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸、
(22)2-{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2S)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸、
(23)2-{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸、
(24)2-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}-2-メチルプロパン酸、または、
(25)2-(4-クロロ-3-{[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]エトキシ}フェニル)カルボチオイル]アミノ}フェニル)プロパン酸である、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩を含有してなる医薬組成物。
【請求項7】
DP受容体拮抗剤である、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
DP受容体介在性疾患の予防および/または治療剤である、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項9】
DP受容体介在性疾患が、アレルギー性疾患、全身性肥満細胞症、全身性肥満細胞活性化障害、アナフィラキシーショック、気道収縮、蕁麻疹、湿疹、にきび、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、副鼻腔炎、片頭痛、鼻茸、過敏性血管炎、好酸球増多症、接触性皮膚炎、痒みを伴う疾患、痒みに伴う行動により二次的に発生する疾患、フラッシングを伴う疾患、炎症、慢性閉塞性肺疾患、虚血再灌流障害、脳血管障害、自己免疫疾患、脳外傷、肝障害、移植片拒絶、関節リウマチ、胸膜炎、変形性関節症、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎、筋ジストロフィー、多発性筋炎、癌、白血病、ウイルス感染、多発性硬化症、睡眠覚醒障害、または血小板凝集である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
DP受容体介在性疾患が、睡眠覚醒障害であり、睡眠覚醒障害が、過眠症、不眠症、睡眠時無呼吸症候群の残遺眠気、概日リズム睡眠-覚醒障害、神経変性疾患に随伴する過眠症状、精神疾患に随伴する過眠症状、昼間の病的な眠気を基礎症状とする疾患である、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩の有効量を、DP受容体介在性疾患の予防および/または治療を必要とする患者に投与することを特徴とする、DP受容体介在性疾患の予防および/または治療方法。
【請求項12】
DP受容体介在性疾患の予防および/または治療に使用される、請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
DP受容体介在性疾患の予防および/または治療剤を製造するための、請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、日本国特許出願第2018-175758号について優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、その全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。
本発明は、DP受容体拮抗活性を有する化合物またはその薬学的に許容される塩、およびそれらを有効成分として含有する医薬に関する。詳しくは、一般式(I)
【化1】
(式中、全ての記号は後記と同じ意味を表す。)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩(以下、本発明化合物という。)、およびそれらを有効成分として含有する医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンD2(PGD2と略記する。)は、アラキドン酸カスケードの代謝産物として知られており、アレルギー性疾患、睡眠、ホルモン分泌、疼痛、血小板凝集、グリコーゲン代謝、眼圧調整などに関与していることが知られている(非特許文献1~11)。PGD2の受容体には、DP受容体およびCRTH2受容体が存在することが知られており、このうち、脳内、特に前脳基底部吻側腹側部のくも膜下腔に存在するDP受容体が、PGD2の睡眠誘発作用に関連していることが知られている(非特許文献12)。すなわち、PGD2の睡眠誘発作用を阻害し、睡眠覚醒障害治療薬とするためには、DP拮抗活性のみならず、中枢への移行性を有する薬剤である必要がある。
【0003】
一方、特許文献1には、以下の一般式(A)で示される化合物が、DP受容体に特異的に結合し拮抗することが記載されている。
【化2】
(式中、R1Aは、(1)水素原子、(2)C1~4アルキル基などを表し、Eは、-C(=O)-などを表し、R2Aは、(1)ハロゲン原子、(2)C1~6アルキル基などを表し、R3Aは、(1)ハロゲン原子、2)C1~6アルキル基などを表し、Wは、C5~12の単環もしくは二環の炭素環、または5~12員の単環もしくは二環の複素環を表し、R4Aは、(1)水素原子、(2)C1~6アルキル基などを表し、R5Aは、C1~6アルキル基などを表し、(1)Gは、(1)窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる0~2個のヘテロ原子を含むC1~6のアルキレン基などを表し、Jは、C5~12の単環もしくは二環の炭素環、または5~12員の単環もしくは二環の複素環を表し、mAは、0または1~4の整数を表し、nAは、0または1~4の整数を表し、iAは、0または1~11の整数を表す。)
【0004】
また、特許文献2には、以下の一般式(B)で示される化合物が、DP受容体に特異的に結合し、拮抗する化合物であることが記載されている。
【化3】
(式中、R1Bは、(1)水素原子、(2)C1~4アルキル基などを表し、Eは、-CO-基などを表し、R2Bは、(1)ハロゲン原子、(2)C1~6アルキル基などを表し、R3Bは、(1)ハロゲン原子、(2)C1~6アルキル基などを表し、R4Bは、(1)水素原子、(2)C1~6アルキル基などを表し、R5Bは、C1~6アルキル基などを表し、Wは、C5~12の単環もしくは二環の炭素環、または5~12員の単環もしくは二環の複素環を表し、Gは、(1)窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる0~2個のヘテロ原子を含むC1~6のアルキレン基などを表し、Jは、C5~12の単環もしくは二環の炭素環、または5~12員の単環もしくは二環の複素環を表し、mBは、0または1~4の整数を表し、nBは、0または1~4の整数を表し、iBは、0または1~11の整数を表し、R12BおよびR13Bは、それぞれ独立して(1)酸化されていてもよいC1~4アルキル基、(2)水素原子などを表す。)
しかし、これら先行技術文献には、中枢への移行性について何ら記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/078409号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/028455号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ザ ニューイングランド ジャーナル オブ メディシン(The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINENE)、Vol.303,1400-1404,1980
【非特許文献2】アメリカン レビュー オブ レスピラトリー ディジーズ(American Review of Respiratory Disease)、Vol.128,597-602,1983
【非特許文献3】ザ ジャーナル オブ アレルギー アンド クリニカル イムノロジー(The Journal of Allergy and Clinical Immunology)、Vol.88,33-42,1991
【非特許文献4】アーカイブス オブ オトラリンゴロジー-ヘッド アンド ネック サージャリー(Archives of Otolaryngology-Head and Neck Surgery)、Vol.113,179-83,1987
【非特許文献5】ザ ジャーナル オブ アレルギー アンド クリニカル イムノロジー(The Journal of Allergy and Clinical Immunology)、Vol.82,869-77,1988
【非特許文献6】ザ ジャーナル オブ イムノロジー(The Journal of Immunology)、Vol.146,671-676,1991
【非特許文献7】ザ ジャーナル オブ アレルギー アンド クリニカル イムノロジー(The Journal of Allergy and Clinical Immunology)、Vol.83,905-912,1989
【非特許文献8】ザ ニューイングランド ジャーナル オブ メディシン(The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINENE)、Vol.315,800-804,1986
【非特許文献9】アメリカン レビュー オブ レスピラトリー ディジーズ(American Review of Respiratory Disease)、Vol.142,126-132,1990
【非特許文献10】ザ ジャーナル オブ アレルギー アンド クリニカル イムノロジー(The Journal of Allergy and Clinical Immunology)、Vol.87,540-548,1991
【非特許文献11】ザ ジャーナル オブ アレルギー アンド クリニカル イムノロジー(The Journal of Allergy and Clinical Immunology)、Vol.78,458-461,1986
【非特許文献12】プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシーズ オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)、Vol.98,11674-11679,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、DP受容体に対する強力な拮抗活性および良好な中枢移行性を併せもつ化合物を見出し、DP受容体の活性化に起因する疾患の予防および/または治療剤、特に、睡眠覚醒障害の治療剤として、有用な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、後述の一般式(I)で示される化合物が前記の課題を解決するものであることを見出し、さらに検討を加えることにより本発明を完成した。
すなわち、本発明は、一態様において
〔1〕 一般式(I):
【化4】
(式中、Rは、水素原子、C1-4アルキル、またはベンジル基を表し、
、R、およびRは、それぞれ独立して、(1)ハロゲン原子、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル、または(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルコキシ基を表し、
またはRがそれぞれ複数存在する場合は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
Jは、結合手、-O-、または-S-を表し、
Lは、結合手、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、またはC2-6アルキニレン基を表し、
は、水素原子、C3-10炭素環、または3-10員ヘテロ環を表し、
中のC3-10炭素環および3-10員ヘテロ環は、1-6個のRで置換されていてもよく、
但し、Lが結合手の場合、Rは水素原子ではなく、
は、(1)ハロゲン原子、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル、または(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルコキシ基を表し、
が複数存在する場合は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
Qは、酸素原子、または硫黄原子を表し、
但し、Qが酸素原子の場合、(1)LがC1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、またはC2-6アルキニレン基であり、且つRはC3-8単環炭素環または3-8員単環ヘテロ環、または(2)Lは結合手であり、且つRはC3-10炭素環または3-10員ヘテロ環であり
は、水素原子またはC1-4アルキル基を表し、
11は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル基を表し、
12は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル基を表し、
11とR12は、それらが結合している炭素原子と一緒になってC3-6飽和炭素環を形成してもよく、
nは、0-4の整数を表し、
mは、0-3の整数を表す。)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩、
〔2〕 Qが、硫黄原子である、前記〔1〕記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、
〔3〕 一般式(I-1):
【化5】
(式中、R51はC3-10炭素環、または3-10員ヘテロ環を表し、Jは結合手、または-O-を表し、その他の記号は前記〔1〕記載の記号と同じ意味を表す。)で示される前記〔1〕または〔2〕記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、
〔4〕 R51が、C3-8単環炭素環または3-8員単環ヘテロ環である、前記〔3〕記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、
〔5〕 R51が、3-8員飽和単環ヘテロ環である、前記〔3〕記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、
〔6〕 Qが酸素原子であり、RがC3-8単環炭素環または3-8員単環ヘテロ環である、前記〔1〕記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、
〔7〕 (1)(4-クロロ-3-{4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド}フェニル)酢酸、
(2){4-クロロ-3-[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]フェニル}酢酸、
(3){4-クロロ-3-[4-(2-フェニルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]フェニル}酢酸、
(4){4-クロロ-3-[4-(2-シクロプロピルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]フェニル}酢酸、
(5)(4-クロロ-3-{2,6-ジメチル-4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]ベンズアミド}フェニル)酢酸、
(6){4-クロロ-3-[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}酢酸、
(7){4-クロロ-3-[4-(2-シクロプロピルエトキシ)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}酢酸、
(8)(3-{4-[(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)オキシ]-2,6-ジメチルベンズアミド}-4-フルオロフェニル)酢酸、
(9){4-クロロ-3-[4-(3-シクロヘキシルプロプ-1-イン-1-イル)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}酢酸、
(10)(4-クロロ-3-{4-[(1E)-3-シクロヘキシルプロプ-1-エン-1-イル]-2,6-ジメチルベンズアミド}フェニル)酢酸、
(11)(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2,6-ジメチルベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(12)[4-クロロ-3-({4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル}アミノ)フェニル]酢酸、
(13)(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(14)(4-クロロ-3-{[4-(2-フェニルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(15)(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロプロピルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(16)[4-クロロ-3-({2,6-ジメチル-4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]ベンゼン-1-カルボチオイル}アミノ)フェニル]酢酸、
(17){4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}酢酸、
(18){4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2S)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}酢酸、
(19)2-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}プロパン酸、
(20)1-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}シクロプロパンカルボン酸、
(21)2-{4-クロロ-3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸、
(22)2-{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2S)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸、
(23)2-{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸、
(24)2-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}-2-メチルプロパン酸、または、
(25)2-(4-クロロ-3-{[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]エトキシ}フェニル)カルボチオイル]アミノ}フェニル)プロパン酸である、前記〔1〕記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、
〔8〕 一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩を含有してなる医薬組成物、
〔9〕 DP受容体拮抗剤である、前記〔8〕記載の医薬組成物、
〔10〕 DP受容体介在性疾患の予防および/または治療剤である、前記〔9〕記載の医薬組成物、
〔11〕 DP受容体介在性疾患が、アレルギー性疾患、全身性肥満細胞症、全身性肥満細胞活性化障害、アナフィラキシーショック、気道収縮、蕁麻疹、湿疹、にきび、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、副鼻腔炎、片頭痛、鼻茸、過敏性血管炎、好酸球増多症、接触性皮膚炎、痒みを伴う疾患、痒みに伴う行動により二次的に発生する疾患、フラッシングを伴う疾患、炎症、慢性閉塞性肺疾患、虚血再灌流障害、脳血管障害、自己免疫疾患、脳外傷、肝障害、移植片拒絶、関節リウマチ、胸膜炎、変形性関節症、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎、筋ジストロフィー、多発性筋炎、癌、白血病、ウイルス感染、多発性硬化症、睡眠覚醒障害、または血小板凝集である、前記〔10〕記載の医薬組成物、
〔12〕DP受容体介在性疾患が、睡眠覚醒障害である、前記〔11〕記載の医薬組成物、
〔13〕 睡眠覚醒障害が、過眠症、不眠症、睡眠時無呼吸症候群の残遺眠気、概日リズム睡眠-覚醒障害、神経変性疾患に随伴する過眠症状、精神疾患に随伴する過眠症状、昼間の病的な眠気を基礎症状とする疾患である、前記〔12〕記載の医薬組成物、
〔14〕 前記〔1〕記載の一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩の有効量を、哺乳動物に投与することを特徴とする、DP受容体介在性疾患の予防および/または治療方法、
〔15〕 DP受容体介在性疾患の予防および/または治療に使用される、前記〔1〕記載の一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩、
〔16〕 DP受容体介在性疾患の予防および/または治療剤を製造するための、前記〔1〕記載の一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用、
〔17〕 前記〔1〕記載の一般式(I)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩を含有する、DP受容体介在性疾患の予防および/または治療剤等に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明化合物は、DP受容体に対する強力な拮抗活性を有し、且つ良好な中枢移行性を併せもつため、DP受容体の活性化に起因する疾患の予防および/または治療剤、特に、睡眠覚醒障害の治療剤として有用である。また、本発明化合物は、DP受容体を選択的に拮抗するため、安全性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中、C1-4アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、ブチル基、およびそれらの異性体である。
【0011】
本明細書中、C1-4アルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基、およびそれらの異性体である。
【0012】
本明細書中、C1-6アルキレン基とは、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン基、およびそれらの異性体である。
【0013】
本明細書中、C2-6アルケニレン基とは、例えば、二重結合を1~2個有するC2-6アルケニレン基を意味し、具体的にはエテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ブタジエニレン、ペンテニレン、ペンタジエニレン、ヘキセニレン、ヘキサジエニレン基、およびそれらの異性体である。
【0014】
本明細書中、C2-6アルキニレン基とは、例えば、三重結合を1~2個有するC2-6アルキニレン基を意味し、具体的にはエチニレン、プロピニレン、ブチニレン、ブタジイニレン、ペンチニレン、ペンタジイニレン、ヘキシニレン、ヘキサジイニレン基、およびそれらの異性体である。
【0015】
本明細書中、ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素原子である。
【0016】
本明細書中、C3-10炭素環とは、単環、または二環式のC3-10炭素環であり、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロノナン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロデカン、シクロデセン、ペンタレン、パーヒドロペンタレン、アズレン、パーヒドロアズレン、インデン、パーヒドロインデン、インダン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、およびパーヒドロナフタレン環などである。
【0017】
本明細書中、3-10員ヘテロ環とは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1~5個のヘテロ原子を含む、3-10員の単環または二環式ヘテロ環を意味し、例えば、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾリン、テトラゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、ジヒドロイソオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、ジヒドロイソチアゾール、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、ジヒドロフラザン、テトラヒドロフラザン、ジヒドロオキサジアゾール、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、ジヒドロチアジアゾール、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、ジオキソラン、ジチオラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラン、チオピラン、オキサジン、オキサジアジン、チアジン、チアジアジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジアジン、テトラヒドロオキサジアジン、ジヒドロチアジン、テトラヒドロチアジン、ジヒドロチアジアジン、テトラヒドロチアジアジン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、ジオキサン、ジチアン、アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.1.1]ヘプタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、アゼピン、ジアゼピン、オキセピン、チエピン、オキサゼピン、オキサジアゼピン、チアゼピン、チアジアゼピン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、パーヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、パーヒドロジアゼピン、ジヒドロオキセピン、テトラヒドロオキセピン、パーヒドロオキセピン、ジヒドロチエピン、テトラヒドロチエピン、パーヒドロチエピン、ジヒドロオキサゼピン、テトラヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサゼピン、ジヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロオキサジアゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、ジヒドロチアゼピン、テトラヒドロチアゼピン、パーヒドロチアゼピン、ジヒドロチアジアゼピン、テトラヒドロチアジアゼピン、パーヒドロチアジアゼピン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、オキサビシクロ[3.2.1]オクタン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、インダゾール、プリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラザン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、インドリン、イソインドリン、ジヒドロベンゾフラン、パーヒドロベンゾフラン、ジヒドロイソベンゾフラン、パーヒドロイソベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェン、パーヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロイソベンゾチオフェン、パーヒドロイソベンゾチオフェン、ジヒドロインダゾール、パーヒドロインダゾール、ジヒドロベンゾオキサゾール、パーヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、パーヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、パーヒドロベンゾイミダゾール、ジオキサインダン、ベンゾジチオラン、アザスピロ[4.4]ノナン、オキサザスピロ[4.4]ノナン、ジオキサスピロ[4.4]ノナン、ジチアナフタレン、キノリン、イソキノリン、キノリジン、フタラジン、プテリジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、クロメン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、パーヒドロキノリン、ジヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、パーヒドロイソキノリン、ジヒドロフタラジン、テトラヒドロフタラジン、パーヒドロフタラジン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、パーヒドロナフチリジン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノキサリン、ジヒドロキナゾリン、テトラヒドロキナゾリン、パーヒドロキナゾリン、ジヒドロシンノリン、テトラヒドロシンノリン、パーヒドロシンノリン、ベンゾオキサチアン、ジヒドロベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾチアジン、ピラジノモルホリン、ベンゾジオキサン、クロマン、ベンゾジチアン、アザスピロ[4.5]デカン、チアスピロ[4.5]デカン、ジチアスピロ[4.5]デカン、ジオキサスピロ[4.5]デカン、およびオキサザスピロ[4.5]デカン環などである。
【0018】
本明細書中、C3-8単環炭素環とは、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、およびシクロオクタジエン環などである。
【0019】
本明細書中、C3-6飽和炭素環とは、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、およびシクロヘキサンである。
【0020】
本明細書中、3-8員単環ヘテロ環とは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1~3個のヘテロ原子を含む、3-8員の単環ヘテロ環であり、例えば、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾリン、テトラゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、ジヒドロイソオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、ジヒドロイソチアゾール、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、ジヒドロフラザン、テトラヒドロフラザン、ジヒドロオキサジアゾール、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、ジヒドロチアジアゾール、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、ジオキソラン、ジチオラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラン、チオピラン、オキサジン、オキサジアジン、チアジン、チアジアジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジアジン、テトラヒドロオキサジアジン、ジヒドロチアジン、テトラヒドロチアジン、ジヒドロチアジアジン、テトラヒドロチアジアジン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、ジオキサン、ジチアン、アゼピン、ジアゼピン、オキセピン、チエピン、オキサゼピン、オキサジアゼピン、チアゼピン、チアジアゼピン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、パーヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、パーヒドロジアゼピン、ジヒドロオキセピン、テトラヒドロオキセピン、パーヒドロオキセピン、ジヒドロチエピン、テトラヒドロチエピン、パーヒドロチエピン、ジヒドロオキサゼピン、テトラヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサゼピン、ジヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロオキサジアゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、ジヒドロチアゼピン、テトラヒドロチアゼピン、パーヒドロチアゼピン、ジヒドロチアジアゼピン、テトラヒドロチアジアゼピン、およびパーヒドロチアジアゼピン環などである。
【0021】
本明細書中、3-8員飽和単環ヘテロ環とは、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、イミダゾリジン、トリアゾリジン、テトラゾリジン、ピラゾリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、テトラヒドロフラザン、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、ジオキソラン、ジチオラン、ピペリジン、ピペラジン、パーヒドロピリミジン、パーヒドロピリダジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、テトラヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジアジン、テトラヒドロチアジン、テトラヒドロチアジアジン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、ジオキサン、ジチアン、パーヒドロアゼピン、パーヒドロジアゼピン、パーヒドロオキセピン、パーヒドロチエピン、パーヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、パーヒドロチアゼピン、およびパーヒドロチアジアゼピン環などである。
【0022】
本明細書中、
【化6】
は紙面の向こう側(すなわちα-配置)に結合していることを表し、
【化7】
は紙面の手前側(すなわちβ-配置)に結合していることを表し、
【化8】
は、α-配置、β-配置、またはそれらの任意の割合の混合物であることを表す。
【0023】
一般式(I)で示される化合物のうち、好ましい態様としては、例えば、
一般式(I-a):
【化9】
(式中、Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、またはC2-6アルキニレン基を表し、R52は、C3-8単環炭素環または3-8員単環ヘテロ環を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩であり、好ましい別の態様としては、一般式(I-b):
【化10】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩であり、特に好ましい態様としては、一般式(I-c-0):
【化11】
(式中、R1cは、水素原子またはメチル基であり、R2cは、フッ素原子または塩素原子であり、R3cは、メチル基、またはトリフルオロメチル基であり、R4cは、水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基であり、-L-J-が-O-の場合、R54は、
【化12】
であり、または、-L-J-が、
【化13】
の場合、R54は、
【化14】
であり、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩である。
【0024】
特に好ましい別の態様としては、一般式(I-c):
【化15】
(式中、すべての記号は前述と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩である。
【0025】
一般式(I)中、別の好ましい態様としては、一般式(I-d):
【化16】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩である。より好ましい態様としては、一般式(I-1):
【化17】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩であり、さらに好ましい態様としては、一般式(I-2-0):
【化18】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩であり、さらに好ましい別の態様としては、一般式(I-2):
【化19】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩である。最も好ましい態様としては、一般式(I-3-0):
【化20】
(式中、R53は3-8員飽和単環ヘテロ環であり、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩である。最も好ましい別の態様としては、一般式(I-3):
【化21】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩である。
または、最も好ましい態様は、一般式(I-4):
【化22】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、およびその薬学的に許容される塩である。
【0026】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-d)、(I-1)、(I-2-0)、(I-2)、(I-3-0)、または(I-3)のいずれにおいても、Rとして好ましくは水素原子またはC1-4アルキル基であり、より好ましくは、水素原子またはメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0027】
一般式(I-c-0)、(I-c)、または(I-4)のいずれにおいても、R1cとして好ましくは水素原子である。
【0028】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-d)、(I-1)、(I-2-0)、(I-2)、(I-3-0)、または(I-3)のいずれにおいても、Rとして好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくはフッ素原子または塩素原子であり、特に好ましくは塩素原子である。
【0029】
一般式(I-c-0)、(I-c)、または(I-4)のいずれにおいても、R2cとして好ましくは塩素原子である。
【0030】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-d)、(I-1)、(I-2-0)、(I-2)、(I-3-0)、または(I-3)のいずれにおいても、Rとして好ましくはハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル基であり、特に好ましくはメチル基またはトリフロオロメチル基である。
【0031】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-d)、(I-1)、(I-2-0)、(I-2)、(I-3-0)、または(I-3)のいずれにおいても、Rとして好ましくはハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル基であり、より好ましくはメチル基またはトリフロオロメチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0032】
一般式(I-c-0)、(I-c)、または(I-4)中、R4cとして好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0033】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、または(I-d)のいずれにおいても、Jとして好ましくは結合手、または-O-であり、より好ましくは-O-である。
【0034】
一般式(I-1)、(I-2-0)、(I-2)、(I-3-0)、または(I-3)のいずれにおいても、Jとして好ましくは-O-である。
【0035】
一般式(I)または(I-d)中、Rとして好ましくはC3-10炭素環、または3-10員ヘテロ環であり、より好ましくは、C3-8単環炭素環または3-8員単環ヘテロ環であり、さらに好ましくは、3-8員飽和単環ヘテロ環である。あるいは、一般式(I)または(I-d)中、Rとして好ましくはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、またはテトラヒドロピラン環であり、さらに好ましくはシクロヘキサン、ベンゼン、シクロプロパン、またはテトラヒドロピラン環であり、最も好ましくはテトラヒドロピラン環である。また、上記好ましいRは、(好ましくは1~3個の)Rで置換されていてもよい。
【0036】
一般式(I-b)または(I-1)中、R51として好ましくはC3-8単環炭素環または3-8員単環ヘテロ環であり、より好ましくは、3-8員飽和単環ヘテロ環である。あるいは、一般式(I-b)または(I-1)中、R51として好ましくはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、またはテトラヒドロピラン環であり、さらに好ましくはシクロヘキサン、ベンゼン、シクロプロパン、またはテトラヒドロピラン環であり、最も好ましくはテトラヒドロピラン環である。
【0037】
一般式(I-a)、(I-2-0)、または(I-2)中、R52として好ましくは3-8員飽和単環ヘテロ環である。あるいは、一般式(I-a)、(I-2-0)、または(I-2)中、R52として好ましくはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、またはテトラヒドロピラン環であり、より好ましくはシクロプロパン、シクロヘキサン、ベンゼン、またはテトラヒドロピラン環であり、最も好ましくはテトラヒドロピラン環である。
【0038】
一般式(I-3-0)または(I-3)中、R53として好ましくは、テトラヒドロピラン環である。
【0039】
一般式(I-c-0)、(I-c)または(1-4)中、R54として好ましくは、テトラヒドロピラン環である。
【0040】
一般式(I)中、Qとして好ましくは硫黄原子である。
【0041】
一般式(I)、(I-d)、(I-1)、(I-2-0)、(I-2)、(I-3-0)、または(I-3)のいずれにおいても、Lとしては好ましくはC1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、またはC2-6アルキニレン基であり、さらにエチレン、プロペニレン、またはプロピニレンが好ましく、より好ましくはエチレン基である。
【0042】
一般式(I-a)において、Lとしてエチレン、プロペニレン、またはプロピニレンが好ましく、より好ましくはエチレン基である。
【0043】
一般式(I)、(I-a)、(I-d)、(I-1)、(I-2-0)、(I-2)、(I-3-0)、または(I-3)中、-L-J-、-L-J-または-L-J-として好ましくは、-O-、
【化23】
であり、より好ましくは
【化24】
である。
【0044】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-d)、(I-1)、(I-2-0)、(I-2)、(I-3-0)、または(I-3)のいずれにおいても、Rとして好ましくは水素原子である。
【0045】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-1)、(I-2-0)、(I-3-0)、または(I-4)のいずれにおいても、R11として好ましくは水素原子、メチル基、またはエチル基であり、より好ましくは水素原子、またはメチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0046】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-1)、(I-2-0)、(I-3-0)、または(I-4)のいずれにおいても、R12として好ましくは水素原子、メチル基、またはエチル基であり、より好ましくは水素原子、またはメチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0047】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-1)、(I-2)、(I-3)、または(I-4)のいずれにおいても、R11およびR12は結合する炭素原子と一緒になってC3-6員飽和炭素環を形成してもよく、該C3-6員飽和炭素環としてはシクロプロパン環が好ましい。
【0048】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-d)、または(I-1)のいずれにおいても、nとしては1が好ましい。
【0049】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-d)、(I-1)、(I-2-0)、(I-2)、(I-3-0)、または(I-3)のいずれにおいても、mとしては0または1が好ましく、より好ましくは1である。
【0050】
一般式(I)で示される化合物としては、前記の好ましいR、R、R、R、R、R、R11、R12、J、L、Q、nおよびmを、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0051】
一般式(I-a)で示される化合物としては、前記の好ましいR、R、R、R、R52、R、R11、R12、J、L、nおよびmを、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0052】
一般式(I-b)で示される化合物としては、前記の好ましいR、R、R、R、R51、R、R11、R12、J、nおよびmを、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0053】
一般式(I-c-0)で示される化合物としては、前記の好ましいR1c、R2c、R3c、R4c、R11、R12、J、L、およびR54を、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0054】
一般式(I-c)で示される化合物としては、前記の好ましいR1c、R2c、R3c、R4c、J、L、およびR54を、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0055】
一般式(I-d)で示される化合物としては、前記の好ましいR、R、R、R、R、R、R11、R12、J、L、nおよびmを、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0056】
一般式(I-1)で示される化合物としては、前記の好ましいR、R、R、R、R51、R、R11、R12、J、L、nおよびmを、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0057】
一般式(I-2-0)で示される化合物としては、前記の好ましいR、R、R、R、R52、R、R11、R12、J、L、およびmを、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0058】
一般式(I-2)で示される化合物としては、前記の好ましいR、R、R、R、R52、R、J、L、およびmを、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0059】
一般式(I-3-0)で示される化合物としては、前記の好ましいR、R、R、R、R53、R、R11、R12、J、L、およびmを、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0060】
一般式(I-3)で示される化合物としては、前記の好ましいR、R、R、R、R53、R、J、L、およびmを、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0061】
一般式(I-4)で示される化合物としては、前記の好ましいR1c、R2c、R3c、R4c、J、L、R11、R12、およびR54を、一部もしくはすべて組み合わせた化合物が好ましい。
【0062】
本明細書中、一般式(I)の別の態様として最も好ましくは、後記の実施例に記載の本発明化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0063】
[異性体]
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基、アルコキシ基、およびアルキレン基などには直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における異性体(E、Z、シス、トランス体)、不斉炭素の存在などによる異性体(R、S体、α、β体、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。また、本発明においては、互変異性による異性体もすべて包含される。
本発明において、本発明化合物に関する言及はすべて、一般式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩、それらのN-オキシド体、それらの溶媒和物、もしくはそれらの共結晶を包含する。
【0064】
[塩]
一般式(I)で示される化合物は、公知の方法で塩に変換される。
塩としては薬学的に許容される塩である。
塩は、水溶性のものが好ましい。
薬学的に許容される塩としては、例えば、酸付加塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、またはアミン塩などが挙げられる。
酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩のような無機酸塩、または酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、またはグルコン酸塩のような有機酸塩が挙げられる。
アルカリ金属塩としては、例えば、カリウム塩およびナトリウム塩などが挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩などが挙げられる。
アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
アミン塩としては、例えば、トリエチルアミン塩、メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロペンチルアミン塩、ベンジルアミン塩、フェネチルアミン塩、ピペリジン塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩、リジン塩、アルギニン塩、およびN-メチル-D-グルカミン塩などが挙げられる。
【0065】
[N-オキシド体]
一般式(I)で示される化合物は、任意の方法でN-オキシド体にすることができる。N-オキシド体とは、一般式(I)で示される化合物の窒素原子が、酸化されたものを表す。一般式(I)で示される化合物のN-オキシド体は塩であってもよい。
【0066】
[溶媒和物]
一般式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩、およびそれらのN-オキシド体は、溶媒和していない形態で存在してもよいし、水、エタノールなどの薬学的に許容できる溶媒と溶媒和した形態で存在してもよい。一般式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩、およびそれらのN-オキシド体は、公知の方法で溶媒和物に変換することができる。
溶媒和物は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば、水和物、またはアルコール系の溶媒(例えば、エタノールなど)のような溶媒和物が挙げられる。
【0067】
[共結晶]
一般式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩、それらのN-オキシド体は、適切な共結晶形成剤と共結晶を形成することができる。共結晶形成剤としては、薬学的に許容されるものが好ましい。共結晶とは、典型的に、2種以上の異なる分子がイオン結合とは異なる分子間相互作用で形成される結晶として定義される。また、共結晶は中性分子と塩の複合体であってもよい。共結晶は、公知の方法、例えば、融解結晶化により、溶媒からの再結晶により、又は成分を一緒に物理的に粉砕することにより調整することができる。適当な共結晶形成剤としては、国際公開2006/007448号パンフレットに記載のものを含む。
【0068】
[プロドラッグ]
一般式(I)で示される化合物は、プロドラッグとして投与することができる。一般式(I)で示される化合物のプロドラッグとは、生体内において酵素や胃酸などによる反応により一般式(I)で示される化合物に変換される化合物をいう。一般式(I)で示される化合物のプロドラッグとしては、例えば、一般式(I)で示される化合物がカルボキシ基を有する場合、該カルボキシ基がエステル化、アミド化された化合物(例えば、一般式(I)で示される化合物のカルボキシ基がエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、1-{(エトキシカルボニル)オキシ}エチルエステル化、フタリジルエステル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルエステル化、1-{[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]オキシ}エチルエステル化、メチルアミド化された化合物など)などが挙げられる。これらの化合物はそれ自体公知の方法によって製造することができる。また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは、廣川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻「分子設計」163~198頁に記載されているような、生理的条件において一般式(I)で示される化合物に変化するものであってもよい。一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは塩または溶媒和物であってもよいし、または適切な共結晶形成剤と共結晶を形成していてもよい。
【0069】
[標識化合物]
本発明化合物は、それらを構成する各原子の一部または全部がその同位元素によって置換された、いわゆる標識化合物をも包含する。これら標識化合物は、自体公知の方法によって製造することができる。標識のために用いられる同位元素としては、これに限定されないが、例えば、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、17O、18O、18F、35S、36Cl、77Br、125Iなどを好適に用いることができる。
【0070】
[本発明化合物の製造方法]
一般式(I)で示される本発明化合物は、公知の方法、例えば、コンプリヘンシヴ・オーガニック・トランスフォーメーションズ:ア・ガイド・トゥ・ファンクショナル・グループ・プレパレーションズ、セカンド・エディション[Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations, 2nd Edition (Richard C. Larock, John Wiley & Sons Inc, 2018)]に記載された方法、以下に示す方法、これらに準ずる方法または実施例に示す方法に従って製造することができる。なお、以下の各製造方法において、原料化合物は塩として用いてよい。このような塩としては、一般式(I)で示される本発明化合物の薬学的に許容される塩として記載されたものが好ましい。
【0071】
一般式(I)で示される化合物のうち、Rが水素原子であり、Jが-O-または-S-であり、Qが酸素原子である化合物、すなわち一般式(Ia):
【化25】
(式中、Jaは、-O-または-S-を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物は、以下の反応工程式Aに準じて製造することができる。
【化26】
(式中、Pはカルボキシ基の保護基を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)
すなわち、一般式(IIa)で示される化合物と一般式(IIIa)で示される化合物を光延反応に付すことにより一般式(IVa)で示される化合物を製造し、その後、カルボキシ基の脱保護反応を行うことにより、一般式(Ia)で示される化合物を製造することができる。
【0072】
光延反応は公知であり、例えば、アルコールを有機溶媒(ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエンなど)中、光延試薬(ジアゾ化合物(アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン、1,1’-アゾビス(N,N-ジメチルホルムアミド)、など)とホスフィン化合物(トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、ポリマーサポートトリフェニルホスフィンなど)の組み合わせ、またはイリド試薬(シアノメチレントリメチルホスホラン(CMMP)、シアノメチレントリブチルホスホラン(CMBP)など)の存在下、フェノール誘導体またはチオフェノール誘導体と0~60℃で反応させることにより行なわれる。
【0073】
また、一般式(IVa)で示される化合物は、一般式(Va):
【化27】
(式中、Xはハロゲン原子、トシルオキシ基(TsO-)、メシルオキシ基(MsO-)などの脱離基を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物と、一般式(IIIa)で示される化合物をアルキル化反応に付すことにより製造することもできる。
このアルキル化反応は公知であり、例えば有機溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル t-ブチル エーテル等)中、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)もしくは炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)またはその水溶液あるいはこれらの混合物の存在下、0~100℃で反応させることにより行なわれる。
【0074】
反応工程式A中、カルボキシ基の脱保護反応は公知であり、以下の通り行うことができる。
カルボキシ基の保護基としては、例えばメチル基、エチル基、アリル基、t-ブチル基、トリクロロエチル基、ベンジル(Bn)基、フェナシル基等が挙げられる。 カルボキシ基の保護基としては、上記した以外にも容易にかつ選択的に脱離できる基であれば特に限定されない。例えば、Peter G. M. Wuts, Green’s Protective Groups in Organic Synthesis, Fifth Edition, Wiley, New York, 2014に記載されたものが用いられる。
カルボキシ基の脱保護反応はよく知られており、例えば、
(1)アルカリ加水分解、
(2)酸性条件下における脱保護反応、
(3)加水素分解による脱保護反応、
(4)シリル基の脱保護反応、
(5)金属を用いた脱保護反応、
(6)金属錯体を用いた脱保護反応等が挙げられる。
これらの方法を具体的に説明すると、
(1)アルカリ加水分解による脱保護反応は、例えば、有機溶媒(メタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)中、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)または炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)あるいはその水溶液もしくはこれらの混合物を用いて、0~60℃の温度で行なわれる。
(2)酸条件下での脱保護反応は、例えば、有機溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサン、酢酸エチル、アニソール等)中、有機酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トシル酸等)、または無機酸(塩酸、硫酸等)もしくはこれらの混合物(臭化水素/酢酸等)中、0~100℃の温度で行なわれる。
(3)加水素分解による脱保護反応は、例えば、溶媒(エーテル系(テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等)、アルコール系(メタノール、エタノール等)、ベンゼン系(ベンゼン、トルエン等)、ケトン系(アセトン、メチルエチルケトン等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、アミド系(ジメチルホルムアミド等)、水、酢酸エチル、酢酸またはそれらの2以上の混合溶媒等)中、触媒(パラジウム-炭素、パラジウム黒、水酸化パラジウム、酸化白金、ラネーニッケル等)の存在下、常圧または加圧下の水素雰囲気下またはギ酸アンモニウム存在下、0~200℃の温度で行なわれる。
(4)シリル基の脱保護反応は、例えば、水と混和しうる有機溶媒(テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)中、テトラブチルアンモニウムフルオライドを用いて、0~40℃の温度で行なわれる。
(5)金属を用いた脱保護反応は、例えば、酸性溶媒(酢酸、pH4.2~7.2の緩衝液またはそれらの溶液とテトラヒドロフラン等の有機溶媒との混合液)中、粉末亜鉛の存在下、必要であれば超音波をかけながら、0~40℃の温度で行なわれる。
(6)金属錯体を用いる脱保護反応は、例えば、有機溶媒(ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジオキサン、エタノール等)、水またはそれらの混合溶媒中、トラップ試薬(水素化トリブチルスズ、トリエチルシラン、ジメドン、モルホリン、ジエチルアミン、ピロリジン等)、有機酸(酢酸、ギ酸、2-エチルヘキサン酸等)および/または有機酸塩(2-エチルヘキサン酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム等)の存在下、ホスフィン系試薬(トリフェニルホスフィン等)の存在下または非存在下、金属錯体(テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)等)を用いて、0~40℃の温度で行なわれる。
また、上記以外にも、例えば、Peter G. M. Wuts, Green’s Protective Groups in Organic Synthesis, Fifth Edition, Wiley, New York, 2014に記載された方法によって、脱保護反応を行なうことができる。
当業者には容易に理解できることではあるが、これらの脱保護反応を使い分けることにより、目的とする本発明化合物を容易に製造することができる。
【0075】
一般式(I)で示される化合物のうち、Rが水素原子であり、Qが酸素原子であり、Jが結合手であり、Lがアルキニレン基である化合物、すなわち一般式(Ib):
【化28】
(式中、nbは、0-4の整数を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物は、一般式(IIIb):
【化29】
(式中、Xはハロゲン原子、またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基(TfO-)を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物と、一般式(Vb)で示される化合物:
【化30】
(式中、全ての記号は前記と同じ意味を表す。)
とを、カップリング反応に付した後、カルボキシ基の脱保護反応を行うことにより製造することができる。このカップリング化反応は公知であり、一般式(IIIb)で示される化合物と一般式(Vb)で示される化合物を、例えば有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、N、N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなど)中、パラジウム触媒(ビストリフェニルホスフィンパラジウム(II) クロリド、など)の存在下、および銅触媒(ヨウ化銅(I)など)存在下、塩基(トリエチルアミンなど)の存在下、室温~還流温度で反応させることにより製造することができる。
【0076】
一般式(I)で示される化合物のうち、Rが水素原子であり、Qが酸素原子であり、Jが結合手であり、Lがアルケニレンまたはアルキレン基である化合物は、一般式(Ib)で示される化合物を還元反応に付すことにより製造することができる。
還元反応は公知であり、例えば、水素雰囲気下、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、酢酸、1,2-ジメトキシエタン、またはこれらの有機溶媒を適宜混合した溶媒など)またはこれらの有機溶媒と水の混合溶媒中、パラジウム触媒(例えば、パラジウム-カーボン、水酸化パラジウム、リンドラー触媒(Lindlar’s catalyst)など)存在下、室温~約80℃の温度で行なわれる。
【0077】
一般式(I)で示される化合物のうち、Rが水素原子であり、Qが硫黄原子である化合物、すなわち一般式(Ic):
【化31】
(式中、全ての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物は、以下の反応工程式Cに準じて製造することができる。
【化32】
(式中、全ての記号は前記と同じ意味を表す。)
すなわち、一般式(IVa)で示される化合物をチオ化反応に付すことにより一般式(Vc)で示される化合物を製造し、その後カルボキシ基の脱保護反応を行うことにより、一般式(Ic)で示される化合物を製造することができる。
【0078】
反応工程式C中、チオ化反応は公知であり、アミド体を有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ピリジンなど)中、塩基(炭酸水素ナトリウムなど)の存在下または非存在下、チオ化試薬(例えば、ローソン試薬(2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3,2,4-ジチアジホスフェタン-2,4-ジスルフィド)、テトラホスホラスデカスルフィド、ジホスホラスペンタスルフィド、硫化水素、硫黄等など)とホスフィン試薬(例えば、トリクロロホスフェートなど)の存在下または非存在下、室温~還流温度で反応させることにより製造することができる。
【0079】
上記の各反応において、出発原料として用いた化合物は公知であるか、あるいは公知の方法により容易に製造することができる。
例えば一般式(IIIa)で示される化合物:
【化33】
(式中、全ての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物は、以下の反応工程式Dに準じ、必要に応じて保護・脱保護反応を行なうことによって製造することができる。
【化34】
(式中、Pは水酸基またはチオール基の保護基を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)
すなわち、一般式(VId)で示される化合物を水酸基またはチオール基の保護反応に付すことにより一般式(VIId)で示される化合物を製造し、その後一般式(VIIId)で示される化合物とアミド化反応に付すことにより、一般式(IXd)で示される化合物が製造できる。その後、一般式(IXd)で示される化合物を水酸基またはチオール基の脱保護反応に付すことにより、一般式(IIIa)で示される化合物を製造することができる。
【0080】
水酸基の保護基としては、例えば、メチル基、トリチル基、メトキシメチル(MOM)基、1-エトキシエチル(EE)基、メトキシエトキシメチル(MEM)基、2-テトラヒドロピラニル(THP)基、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基、アセチル(Ac)基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ベンジル(Bn)基、p-メトキシベンジル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基等が挙げられる。
チオール基の保護基としては、例えばベンジル基、メトキシベンジル基、メトキシメチル(MOM)基、2-テトラヒドロピラニル(THP)基、ジフェニルメチル基、アセチル(Ac)基が挙げられる。
【0081】
水酸基またはチオール基の保護基としては、上記した以外にも容易にかつ選択的に脱離できる基であれば特に限定されない。例えば、Peter G. M. Wuts, Green’s Protective Groups in Organic Synthesis, Fifth Edition, Wiley, New York, 2014に記載されたものが用いられる。
【0082】
反応工程式D中、アミド化反応は公知であり、例えば、
(1)酸ハライドを用いる方法、
(2)混合酸無水物を用いる方法、
(3)縮合剤を用いる方法等が挙げられる。
これらの方法を具体的に説明すると、
(1)酸ハライドを用いる方法は、例えば、カルボン酸を有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中または無溶媒で、酸ハライド化剤(オキザリルクロライド、チオニルクロライド等)と-20℃~還流温度で反応させ、得られた酸ハライドを塩基(ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン等)の存在下、アミンと有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中、0~80℃の温度で反応させることにより行なわれる。また、得られた酸ハライドを有機溶媒(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)中、アルカリ水溶液(重曹水または水酸化ナトリウム溶液等)を用いて、アミンと0~40℃で反応させることにより行なうこともできる。
(2)混合酸無水物を用いる方法は、例えば、カルボン酸を有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中または無溶媒で、塩基(ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン等)の存在下、酸ハライド(ピバロイルクロライド、トシルクロライド、メシルクロライド等)、または酸誘導体(クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル等)と、0~40℃で反応させ、得られた混合酸無水物を有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中、アミンと0~40℃で反応させることにより行なわれる。
(3)縮合剤を用いる方法は、例えば、カルボン酸とアミンを、有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中、または無溶媒で、塩基(ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアミノピリジン等)の存在下または非存在下、縮合剤(1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨウ素、1-プロピルホスホン酸環状無水物(1-propanephosphonic acid cyclic anhydride、TP)等)を用い、1-ヒドロキシベンズトリアゾール(HOBt)の存在下、または非存在下で、0~80℃で反応させることにより行なわれる。
これら(1)、(2)および(3)の反応は、いずれも不活性ガス(アルゴン、窒素等)雰囲気下、無水条件で行なうことが望ましい。
【0083】
反応工程式D中、水酸基またはチオール基の脱保護反応は公知であり、反応工程式A中のカルボキシ基の脱保護反応と同様に行うことができる。
当業者には容易に理解できることではあるが、これらの脱保護反応を使い分けることにより、目的とする本発明化合物を容易に製造することができる。
【0084】
その他の出発原料として用いた化合物および試薬として用いた化合物は、それ自体公知であるか、あるいは公知の方法、例えば、コンプリヘンシヴ・オーガニック・トランスフォーメーションズ:ア・ガイド・トゥ・ファンクショナル・グループ・プレパレーションズ、セカンド・エディション[Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations, 2nd Edition (Richard C. Larock, John Wiley & Sons Inc, 2018)]に記載された方法などを組み合わせて用いることで容易に製造することができる。
【0085】
本明細書中の各反応において、各基は保護が必要な場合には保護されていてもよく、適宜、保護基で保護された化合物を公知の脱保護反応に付すことができる。
【0086】
本明細書中の各反応において、加熱を伴う反応は、当業者にとって明らかなように、水浴、油浴、砂浴またはマイクロウェーブを用いて行なうことができる。
【0087】
本明細書中の各反応において、適宜、高分子ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリエチレングリコールなど)に担持させた固相担持試薬を用いてもよい。
【0088】
本明細書中の各反応において、反応生成物は通常の精製手段、例えば、常圧下または減圧下における蒸留、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウム等を用いた高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、イオン交換樹脂、スカベンジャー樹脂あるいはカラムクロマトグラフィーまたは洗浄、再結晶などの方法により精製することができる。精製は反応ごとに行なってもよいし、いくつかの反応終了後に行なってもよい。
【0089】
[毒性]
本発明化合物の毒性は非常に低いものであり、医薬として使用するために十分安全である。
【0090】
[医薬品への適応]
本発明化合物は、優れたDP受容体拮抗活性を有しているため、DP受容体介在性疾患、例えばアレルギー性疾患、全身性肥満細胞症、全身性肥満細胞活性化障害、アナフィラキシーショック、気道収縮、蕁麻疹、湿疹、にきび、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、副鼻腔炎、片頭痛、鼻茸、過敏性血管炎、好酸球増多症、接触性皮膚炎、痒みを伴う疾患、痒みに伴う行動により二次的に発生する疾患、フラッシングを伴う疾患、炎症、慢性閉塞性肺疾患、虚血再灌流障害、脳血管障害、自己免疫疾患、脳外傷、肝障害、移植片拒絶、関節リウマチ、胸膜炎、変形性関節症、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎、筋ジストロフィー、多発性筋炎、癌、白血病、ウイルス感染、多発性硬化症、睡眠覚醒障害、または血小板凝集に有用である。さらに本発明化合物は中枢への移行性に優れているため、特に睡眠覚醒障害、例えば、過眠症(例えば、ナルコレプシー、突発性過眠症、反復性過眠症、およびクライネレビン症候群等)、不眠症、睡眠時無呼吸症候群の残遺眠気、概日リズム睡眠-覚醒障害(例えば、交代勤務型概日リズム障害、不規則睡眠覚醒リズム障害等)、神経変性疾患(例えば、パーキンソン病、レビー小体型認知症、およびアルツハイマー型認知症等)に随伴する過眠症状、精神疾患(例えば、うつ病、および双極性障害等)に随伴する過眠症状、昼間の病的な眠気を基礎症状とする疾患)に有用である。
【0091】
本発明化合物は、
1)その化合物の予防および/または治療効果の補完および/または増強、
2)その化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、および/または
3)その化合物の副作用の軽減のために他の薬剤と組み合わせて、併用剤として投与してもよい。
【0092】
本発明化合物と他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明化合物を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本発明化合物を後に投与してもよい。それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0093】
上記併用剤により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、本発明化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
【0094】
本発明化合物の睡眠覚醒障害に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、精神刺激薬(例えば、モダフィニル、(塩酸)メチルフェニデート、(塩酸)メタンフェタミン、ペモリンなど)、ナルコレプシー治療薬(例えば、γヒドロキシ酪酸、クロミプラミンなど)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、(塩酸)ドネペジル、フィゾスチグミン、(酒石酸)リバスチグミン、(臭化水素酸)ガランタミン、(フマル酸)ザナペジル;TAK-147、タクリン、メトリホネイトなど)、NMDA受容体拮抗薬(例えば、ケタミン、メマンチン、臭化水素酸デキストロメトルファンなど)、ドーパミン受容体作動薬(例えば、レボドパ、ブロモクリプチン、パーゴライド、タリペキソール、(塩酸)プラミペキソール(水和物)、カベルゴリン、(塩酸)アマンタジンなど)、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン塩酸塩、イミプラミン塩酸塩など)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(例えば、パロキセチン,エスシタロプラムなど)、躁病治療薬(例えば、炭酸リチウムなど)、抗精神病薬(例えば、クロフェクトン、スピペロン、スルピリド、ゾテピン、チミペロン、デカン酸ハロペリドール、デカン酸フルフェナジン、ハロペリドール、ピモジド、プロペリシアジン、ブロムペリドール、ペルフェナジン、マレイン酸レボメプロマジン、塩酸クロルプロマジン、塩酸チオリダジン、塩酸トラゾドン、塩酸モサプラミン、リスペリドン、オランザピンなど)、ノルアドレナリン再取り込阻害薬(例えば、アトモキセチンなど)などが挙げられる。
【0095】
本発明化合物と他の薬剤の質量比は特に限定されない。
他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。
【0096】
また、本発明化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0097】
本発明化合物を単剤として、あるいは他の薬剤を組み合わせて併用剤として、上記の疾患の予防および/または治療の目的に用いるには、有効成分である当該物質を、通常、各種の添加剤または溶媒等の薬学的に許容される担体とともに製剤化したうえで、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。ここで、薬学的に許容される担体とは、一般的に医薬品の製剤に用いられる、有効成分以外の物質を意味する。薬学的に許容される担体は、その製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害で、有効成分の治療効果を妨げないものが好ましい。また、薬学的に許容される担体は、有効成分および製剤の有用性を高める、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、または使用性を向上させる等の目的で用いることもできる。具体的には、薬事日報社2016年刊「医薬品添加物事典」(日本医薬品添加剤協会編集)等に記載されているような物質を、適宜目的に応じて選択すればよい。
【0098】
投与に用いられる剤型としては、例えば、経口投与用製剤(例:錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤等)、口腔用製剤(例:口腔用錠剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、含嗽剤等)、注射用製剤(例:注射剤等)、透析用製剤(例:透析用剤等)、吸入用製剤(例:吸入剤等)、眼科用製剤(例:点眼剤、眼軟膏剤等)、耳科用製剤(例:点耳剤等)、鼻科用製剤(例:点鼻剤等)、直腸用製剤(例:坐剤、直腸用半固形剤、腸注剤等)、腟用製剤(例:腟錠、腟用坐剤等)、および皮膚用製剤(例:外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等)等が挙げられる。
【0099】
[経口投与用製剤]
経口投与用製剤には、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤等が含まれる。また、経口投与用製剤には、製剤からの有効成分の放出性を特に調節していない速崩性製剤と、固有の製剤設計および製法により放出性を目的にあわせて調節した、例えば、腸溶性製剤や徐放性製剤等の放出調節製剤がある。腸溶性製剤は、有効成分の胃内での分解を防ぐ、または有効成分の胃に対する刺激作用を低減させる等の目的で、有効成分を胃内で放出せず、主として小腸内で放出するよう設計された製剤をいい、通常、酸不溶性の腸溶性基剤を用いて皮膜を施すことにより製造することができる。徐放性製剤は、投与回数の減少または副作用の低減を図る等の目的で、製剤からの有効成分の放出速度、放出時間、放出部位を調節した製剤をいい、通常、適切な徐放化剤を用いることにより製造することができる。経口投与用製剤のうち、カプセル剤、顆粒剤、錠剤等では、服用を容易にする、または有効成分の分解を防ぐ等の目的で、糖類または糖アルコール類、高分子化合物等適切なコーティング剤で剤皮を施すこともできる。
【0100】
(1)錠剤
錠剤は、経口的に投与される一定の形状を有する固形の製剤であり、素錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、多層錠、有核錠等の一般的に錠剤と称されるもののほか、口腔内速崩錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠等が含まれる。素錠を製造する際には、通常、下記の(a)、(b)、または(c)の手法:
(a)有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を加えて混和して均質とし、水または結合剤を含む溶液を用いて適切な方法で粒状とした後、滑沢剤等を加えて混和し、圧縮成形する;
(b)有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を加えて混和して均質としたものを、直接圧縮成形するか、または予め添加剤で製した顆粒に有効成分および滑沢剤等を加えて混和して均質とした後、圧縮成形する;
(c)有効成分に賦形剤、結合剤等の添加剤を加えて混和して均質とし、溶媒で湿潤させた練合物を一定の型に流し込んで成形した後、適切な方法で乾燥する;
が用いられる。フィルムコーティング錠は、通常、素錠に高分子化合物等の適切なコーティング剤で薄く剤皮を施すことにより製造することができる。糖衣錠は、通常、素錠に糖類または糖アルコールを含むコーティング剤で剤皮を施すことにより製造することができる。多層錠は、適切な方法により、組成の異なる粉粒体を層状に積み重ね、圧縮成形することにより製造することができる。有核錠は、内核錠を組成の異なる外層で覆うことにより製造することができる。また、錠剤は、公知の適切な手法を用いて腸溶錠または徐放錠とすることもできる。口腔内速崩錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、および溶解錠は、添加剤の適切な選択により錠剤に独特の機能を付与したものであり、前記錠剤の製造手法に準じて製造することができる。なお、口腔内速崩錠とは、口腔内で速やかに溶解または崩壊させて服用できる錠剤を;チュアブル錠とは、咀嚼して服用する錠剤を;発泡錠とは、水中で急速に発泡しながら溶解または分散する錠剤を;分散錠とは、水に分散して服用する錠剤を;溶解錠とは、水に溶解して服用する錠剤をいう。発泡錠は、適切な酸性物質、炭酸塩、炭酸水素塩等を添加剤に用いることにより製造することができる。
【0101】
(2)カプセル剤
カプセル剤は、カプセルに充填またはカプセル基剤で被包成形した製剤であり、硬カプセル剤、軟カプセル剤等が含まれる。硬カプセル剤は、有効成分に賦形剤等の添加剤を加えて混和して均質としたもの、または適切な方法で粒状もしくは成形物としたものを、カプセルにそのまま、または軽く成形して充填することにより製造することができる。軟カプセル剤は、有効成分に添加剤を加えたものを、グリセリン、D-ソルビトール等を加えて塑性を増したゼラチン等の適切なカプセル基剤で、一定の形状に被包成形することにより製造することができる。カプセル剤は、公知の適切な手法を用いて腸溶性カプセル剤または徐放性カプセル剤とすることもでき、また、カプセル基剤に着色剤または保存剤等を加えることもできる。
【0102】
(3)顆粒剤
顆粒剤は、粒状に造粒した製剤であり、一般的に顆粒剤と称されるもののほか、発泡性顆粒剤等も含まれる。顆粒剤を製造する際には、通常、下記の(a)、(b)、または(c)の手法:
(a)粉末状の有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤、またはその他の添加剤を加えて混和して均質にした後、適切な方法により粒状とする;
(b)予め粒状に製した有効成分に賦形剤等の添加剤を加えて混和し、均質とする;
(c)予め粒状に製した有効成分に賦形剤等の添加剤を加えて混和し、適切な方法により粒状とする;
が用いられる。顆粒剤には、必要に応じて剤皮を施すこともでき、また、公知の適切な手法を用いて腸溶性顆粒剤または徐放性顆粒剤とすることもできる。発泡顆粒剤は、適切な酸性物質、炭酸塩、炭酸水素塩等を添加剤に用いることにより製造することができる。なお、発泡顆粒剤とは、水中で急速に発泡しながら溶解または分散する顆粒剤をいう。顆粒剤は、粒子の大きさを調節することにより、細粒剤とすることもできる。
【0103】
(4)散剤
散剤は、粉末状の製剤であり、通常、有効成分に賦形剤またはその他の添加剤を加えて混和し、均質とすることにより製造することができる。
【0104】
(5)経口液剤
経口液剤は、液状または流動性のある粘稠なゲル状の製剤であり、一般的に経口液剤と称されるもののほか、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、リモナーデ剤等が含まれる。経口液剤は、通常、有効成分に添加剤および精製水を加え、混和して均質に溶解、または乳化もしくは懸濁し、必要に応じて濾過することにより製造することができる。エリキシル剤とは、甘味および芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の経口液剤をいい、通常、固形の有効成分またはその浸出液に、エタノール、精製水、着香剤、および白糖、その他の糖類、または甘味剤を加えて溶かし、濾過またはその他の方法によって澄明な液とすることにより製造することができる。懸濁剤とは、有効成分を微細均質に懸濁した経口液剤をいい、通常、固形の有効成分に懸濁化剤またはその他の添加剤と精製水または油を加え、適切な方法で懸濁し、全体を均質とすることにより製造することができる。乳剤とは、有効成分を微細均質に乳化した経口液剤をいい、通常、液状の有効成分に乳化剤と精製水を加え、適切な方法で乳化し、全体を均質とすることにより製造することができる。なお、リモナーデ剤とは、甘味および酸味のある澄明な液状の経口液剤をいう。
【0105】
(6)シロップ剤
シロップ剤は、糖類または甘味剤を含む粘稠性のある液状または固形の製剤であり、シロップ用剤等が含まれる。シロップ剤は、通常、白糖、その他の糖類、もしくは甘味剤の溶液、または単シロップに有効成分を加えて溶解、混和、懸濁、または乳化し、必要に応じて混液を煮沸した後、熱時濾過することにより製造することができる。シロップ用剤とは、水を加えるとシロップ剤となる顆粒状または粉末状の製剤をいい、ドライシロップ剤とも称されることがある。シロップ用剤は、通常、糖類または甘味剤を添加剤として用いて、前記顆粒剤または散剤の製造手法に準じて製造することができる。
【0106】
(7)経口ゼリー剤
経口ゼリー剤は、流動性のない成形したゲル状の製剤であり、通常、有効成分に添加剤および高分子ゲル基剤を加えて混和し、適切な方法でゲル化させ一定の形状に成形することにより製造することができる。
【0107】
[注射用製剤]
(1)注射剤
注射剤は、皮下、筋肉内、または血管等の体内組織や器官に直接投与する、溶液、懸濁液、もしくは乳濁液、または用時溶解もしくは用時懸濁して用いる固形の無菌製剤であり、一般的に注射剤と称されるもののほか、凍結乾燥注射剤、粉末注射剤、充填済みシリンジ剤、カートリッジ剤、輸液剤、埋め込み注射剤、および持続性注射剤等が含まれる。注射剤を製造する際には、通常、下記の(a)または(b)の手法:
(a)有効成分をそのまま、または有効成分に添加剤を加えたものを注射用水、他の水性溶剤、または非水性溶剤等に溶解、懸濁、もしくは乳化して均質としたものを注射剤用の容器に充填して密封し、滅菌する;
(b)有効成分をそのまま、または有効成分に添加剤を加えたものを注射用水、他の水性溶剤、または非水性溶剤等に溶解、懸濁、もしくは乳化して均質としたものを無菌濾過するか、無菌的に調製して均質としたものを注射剤用の容器に充填して密封する;
が用いられる。凍結乾燥注射剤は、通常、有効成分をそのまま、または有効成分および賦形剤等の添加剤を注射用水に溶解し、無菌濾過し、注射剤用の容器に充填した後に凍結乾燥するか、または専用容器で凍結乾燥した後に直接の容器に充填することにより製造することができる。粉末注射剤は、通常、無菌濾過により処理した後、晶析により得た粉末またはその粉末に滅菌処理した添加剤を加えて注射剤用の容器に充填することにより製造することができる。充填済みシリンジ剤は、通常、有効成分をそのまま、または有効成分および添加剤を用いて溶液、懸濁液、または乳濁液を調製して注射筒に充填することにより製造することができる。カートリッジ剤とは、薬液が充填されたカートリッジを専用の注射器に入れて用いる注射剤をいい、薬液が充填されたカートリッジは、通常、有効成分をそのまま、または有効成分および添加剤を用いて溶液、懸濁液、または乳濁液を調製してカートリッジに充填することにより製造することができる。輸液剤とは、静脈内に投与される通常100mL以上の注射剤をいう。埋め込み注射剤とは、長期にわたる有効成分の放出を目的として、皮下、筋肉内等に埋め込み用の器具を用いて、または手術により適用する固形またはゲル状の注射をいう。埋め込み注射剤は、通常、生分解性高分子化合物を用い、ペレット、マイクロスフェア、またはゲル状にすることにより製造することができる。持続性注射剤とは、長期にわたる有効成分の放出を目的として、筋肉内等に適用する注射剤をいい、通常、有効成分を植物油等に溶解もしくは懸濁するか、または生分解性高分子化合物を用いたマイクロスフェアの懸濁液とすることにより製造することができる。
【0108】
本発明化合物、または本発明化合物と他の薬剤の併用剤の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、1ngから1000mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるか、または成人一人当たり、一回につき、0.1ngから100mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるか、または一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0109】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的、科学的用語、および略語は、本発明の分野に属する当業者によって普通に理解されるものと同様の意味を有する。
また、本明細書において、明示的に引用される全ての特許文献および非特許文献もしくは参考文献の内容は、全て本明細書の一部としてここに引用し得る。
【実施例0110】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[合成実施例]
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されるカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表す。
NMRの箇所に示されているカッコ内の溶媒は、測定に使用した溶媒を示している。
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラム、ACD/Name(登録商標)を用いるか、Chemdraw Ultra(バージョン12.0、Cambridge Soft社製)を用いるか、またはIUPAC命名法に準じて命名したものである。
LC-MS/ELSDは、下記条件で行った。
カラム:Waters Triart C18(粒子径:1.9 x 10-6 m;カラム長:30 x 2.0 mm I.D.);流速:1.0mL/min;カラム温度:30℃;移動相(A):0.1%トリフルオロ酢酸水溶液;移動相(B):0.1%トリフルオロ酢酸-アセトニトリル溶液;グラジエント(移動相(A):移動相(B)の比率を記載):[0分]95:5;[0.1分]95:5;[1.2分]5:95;[1.4分]5:95;[1.41分]95:5;[1.5分]95:5;検出器:UV(PDA)、ELSD、MS 。
HPLC保持時間は、別途記載がなければ前記LC-MS/ELSDに記載の条件での保持時間を示す。
超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)は、下記条件で行った。
カラム:CHIRALPAK IC/SFC(ダイセル)、内径20mm×長さ250mm、粒子径5μm;流速:100mL/min:Co-solvent/CO=12/88:ISOCRATIC 21min(Co-solvent:MeCN/MeOH=9/1);Backpressure:120 bar。
【0111】
参考例1:4-(アセトキシ)-2-(トリフルオロメチル)安息香酸
4-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)安息香酸(CAS.No.320-32-1、500mg)の酢酸エチル(7.5mL)溶液にピリジン(0.392mL)、無水酢酸(0.573mL)を加え、一晩撹拌した。反応混合物に水、希塩酸を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮することにより、以下の物性値を有する標題化合物(528mg)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.34, 7.56, 7.70, 7.91, 13.66。
【0112】
参考例2:4-(クロロカルボニル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル アセタート
参考例1で製造した化合物(1.0g)のトルエン(1.6mL)-アセトニトリル(0.26mL)溶液に、塩化チオニル(0.17mL)を加え、60℃で4時間撹拌した。反応液を減圧濃縮することにより得られた化合物を、精製することなく次の反応に用いた。
【0113】
参考例3:メチル {3-[4-(アセトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]-4-クロロフェニル}アセタート
参考例2で製造した化合物のトルエン(1.6mL)-アセトニトリル(1.6mL)溶液に、ピリジン(0.342mL)およびメチル 2-(3-アミノ-4-クロロフェニル)アセタート(CAS.No.59833-69-1、422mg)を加え、室温で一晩撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を1mol/L塩酸、水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=70:30)にて精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(715mg)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 2.37, 3.68, 3.72, 7.07, 7.37, 7.43, 7.53, 7.71, 7.93, 8.45。
【0114】
参考例4:メチル {4-クロロ-3-[4-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]フェニル}アセタート
参考例3で製造した化合物(1.75g)のメタノール(8.8mL)-テトラヒドロフラン(8.8mL)溶液に、炭酸カリウム(404mg)を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物に水、1mol/L塩酸を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮することにより、以下の物性値を有する標題化合物(1.36g)を得た。
TLC:Rf 0.55(ヘキサン:酢酸エチル=1:1);
1H-NMR(CDCl3):δ 3.63, 3.75, 7.12-7.16, 7.19, 7.49, 7.52, 7.59, 10.07, 10.52。
【0115】
実施例1:メチル (4-クロロ-3-{4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド}フェニル)アセタート
【化35】
参考例4で製造した化合物(500mg)、2-(テトラヒドロピラン-2-イル)エタノール(CAS.No.38786-79-7、218mg)のトルエン(5mL)溶液に、シアノメチレントリフェニルホスフィン(0.507mL)を加え、60℃で一晩撹拌した。反応液を減圧濃縮後,得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)にて精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(564mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.15;
1H-NMR(CDCl3):δ 1.37, 1.47-1.68, 1.86, 1.94, 3.40-3.53, 3.67, 3.72, 3.98, 4.13, 4.20, 7.04, 7.13, 7.29, 7.36, 7.62, 7.93, 8.47。
【0116】
実施例2:(4-クロロ-3-{4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド}フェニル)酢酸
【化36】
実施例1で製造した化合物(40.0mg)のジメトキシエタン(0.4mL)溶液に、2mol/L水酸化リチウム水溶液(0.12mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に1mol/L塩酸を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮することにより、以下の物性値を有する標題化合物(29mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.03;
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.25, 1.41-1.53, 1.63, 1.77, 1.83-1.89, 3.45, 3.63, 3.88, 4.14-4.23, 7.19, 7.32, 7.35, 7.48, 7.51, 7.68, 10.14, 12.46。
【0117】
実施例2-1~2-3
2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エタノールの代わりに相当するアルコール体を用いて、実施例1→実施例2と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
実施例2-1:{4-クロロ-3-[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]フェニル}酢酸
【化37】
TLC:Rf 0.60(酢酸エチル:メタノール=9:1);
1H-NMR(CDCl3):δ 0.85-1.10, 1.13-1.35, 1.52, 1.63-1.83, 3.71, 4.08, 7.05, 7.10, 7.38, 7.62, 7.94, 8.49。
実施例2-2:{4-クロロ-3-[4-(2-フェニルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]フェニル}酢酸
【化38】
HPLC保持時間(分):1.07;
1H-NMR(DMSO-d6):δ 3.09, 3.63, 4.36, 7.18, 7.24, 7.31-7.37, 7.48, 7.51, 7.68, 10.14, 12.45。
実施例2-3:{4-クロロ-3-[4-(2-シクロプロピルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド]フェニル}酢酸
【化39】
HPLC保持時間(分):1.05;
1H-NMR(DMSO-d6):δ -0.02-0.01, 0.28-0.32, 0.70, 1.51, 3.48, 4.02, 7.03, 7.16, 7.20, 7.33, 7.36, 7.53, 9.99, 12.29。
【0118】
実施例3:メチル (4-クロロ-3-{2,6-ジメチル-4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]ベンズアミド}フェニル)アセタート
【化40】
参考例4で製造した化合物の代わりに、メチル {4-クロロ-3-[(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゾイル)アミノ]フェニル}アセタート(CAS No.1351163-96-6、Bioorganic & Medicinal Chemistry 19 (2011) 6935-6948, Compound 44)を用いて、実施例1と同様の反応を行うことにより以下の物性を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.75(ヘキサン:酢酸エチル=1:1);
1H-NMR(CDCl3):δ1.33, 1.51, 1.63, 1.85, 1.91, 2.38, 3.43, 3.50, 3.68, 3.73, 3.97, 4.08, 6.63, 7.03, 7.35, 7.74, 8.49。
【0119】
実施例3-1:メチル {4-クロロ-3-[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}アセタート
【化41】
参考例4で製造した化合物の代わりに、メチル {4-クロロ-3-[(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゾイル)アミノ]フェニル}アセタートを用いて、2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エタノールの代わりに2-シクロヘキシルエタノール(CAS No.28438-52-0)を用いて、実施例1と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.68(酢酸エチル:ヘキサン=2:1);
1H-NMR(CDCl3):δ0.80-1.05, 1.10-1.35, 1.40-1.55, 1.65-1.80, 2.35, 3.53, 3.68, 3.73, 4.00, 4.19, 6.61, 7.04, 7.36,7.74,8.50。
【0120】
実施例4:(4-クロロ-3-{2,6-ジメチル-4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]ベンズアミド}フェニル)酢酸
【化42】
実施例1で製造した化合物の代わりに、実施例3で製造した化合物を用いて、実施例2と同様の反応を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
HPLC保持時間(分):1.02;
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.16-1.83, 2.32, 3.39, 3.61, 3.86, 4.02, 6.66, 7.15, 7.45, 7.49, 9.95, 12.44。
【0121】
実施例4-1~4-2:
2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エタノールの代わりに相当するアルコール体を用いて、参考例4で製造した化合物の代わりに、メチル {4-クロロ-3-[(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゾイル)アミノ]フェニル}アセタートを用いて、実施例1→実施例2と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
実施例4-1:{4-クロロ-3-[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}酢酸
【化43】
TLC:Rf 0.27(ヘキサン:酢酸エチル=1:2);
1H-NMR(CD3OD):δ 0.83-1.08, 1.13-1.38, 1.42-1.59, 1.60-1.91, 2.41, 3.64, 4.01, 6.65, 7.19, 7.43, 7.72。
実施例4-2:{4-クロロ-3-[4-(2-シクロプロピルエトキシ)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}酢酸
【化44】
HPLC保持時間(分):1.05;
MS(ESI, Pos.):402 (M+H)+
【0122】
実施例5:(3-{4-[(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)オキシ]-2,6-ジメチルベンズアミド}-4-フルオロフェニル)酢酸
【化45】
メチル 2-(3-アミノ-4-クロロフェニル)アセタートの代わりに、メチル 2-(3-アミノ-4-フルオロフェニル)アセタート(CAS No.257632-77-2)を用いて、4-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)安息香酸の代わりに、4-ヒドロキシ-2,6-ジメチル安息香酸(CAS No.75056-97-2)を用いて、2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エタノールの代わりに、2-インダノール(CAS No.4254-29-9)を用いて、参考例1→参考例2→参考例3→参考例4→実施例1→実施例2と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
HPLC保持時間(分):1.02;
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.29, 3.02, 3.39, 3.60, 5.27, 6.70, 7.13-7.28, 7.57, 10.07, 12.38。
【0123】
参考例5:メチル (4-クロロ-3-{2,6-ジメチル-4-[(トリフルオロメタンスルホニル)オキシ]ベンズアミド}フェニル)アセタート
メチル [4-クロロ-3-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンズアミド)フェニル]アセタート(1.00g)のジクロロメタン(15mL)溶液に、トリエチルアミン(0.52mL)およびN,N-ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アニリン(1.23g)を加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:0→7:3)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(1.38g)を得た。
TLC:Rf 0.39(ヘキサン:酢酸エチル=2:1);
1H-NMR(CDCl3):δ 1.55, 2.45, 3.69, 3.73, 7.02, 7.08, 7.37, 7.40, 7.73, 8.43。
【0124】
実施例6:メチル {4-クロロ-3-[4-(3-シクロヘキシルプロプ-1-イン-1-イル)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}アセタート
【化46】
参考例5で製造した化合物(1.38g)のN,N-ジメチルホルムアミド(12mL)溶液に、3-シクロヘキシル-1-プロピン(1.26mL)、トリエチルアミン(8.1mL)を加えアルゴン雰囲気下とした。ヨウ化銅(55mg)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(204mg)を加え、50℃で終夜撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒で抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:0→7:3)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(1.46g)を得た。
TLC:Rf 0.45 (ヘキサン:酢酸エチル=4:1);
1H-NMR(CDCl3):δ 0.95-1.40,1.45-1.78, 1.85-1.90, 2.30, 2.37, 3.68, 3.73, 7.05, 7.14, 7.35, 7.38, 7.71, 8.47。
【0125】
実施例7:{4-クロロ-3-[4-(3-シクロヘキシルプロプ-1-イン-1-イル)-2,6-ジメチルベンズアミド]フェニル}酢酸
【化47】
実施例1で製造した化合物の代わりに、実施例6で製造した化合物を用いて、実施例2と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.61(酢酸エチル:メタノール=9:1);
1H-NMR(CDCl3):δ0.98-1.35, 1.56, 1.65-1.80, 1.82-1.90, 2.30, 2.38, 3.72, 7.06, 7.14, 7.36, 7.39, 7.71, 8.48。
【0126】
実施例8:(4-クロロ-3-{4-[(1E)-3-シクロヘキシルプロプ-1-エン-1-イル]-2,6-ジメチルベンズアミド}フェニル)酢酸
【化48】
参考例5で製造した化合物(1000mg)のジオキサン(12mL)溶液に、2-[(E)-3-シクロヘキシルプロペン-3-イル] -4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(626mg),リン酸カリウム(884mg),[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物を加え、50℃で18時間撹拌した。反応混合物に水、酢酸エチルを加えた後、セライト(商品名)濾過した。濾液を酢酸エチルで抽出後、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することにより、標題化合物のメチルエステル体(533mg)を得た。得られたメチルエステル体を用いて、実施例2と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.38(ヘキサン:酢酸エチル:酢酸=14:5:1);
HPLC保持時間(分):1.31;
MS(ESI, Pos.):440 (M+H)+
【0127】
実施例9:メチル [4-クロロ-3-({2,6-ジメチル-4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]ベンゼン-1-カルボチオイル}アミノ)フェニル]アセタート
【化49】
実施例3で製造した化合物(40mg)のトルエン(0.4mL)溶液にローソン試薬(CAS No.19172-47-5、21mg)を加え、100℃で24時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1→4:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(40mg)を得た。
TLC:Rf 0.50 (ヘキサン:酢酸エチル=2:1);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.25, 1.46, 1.62, 1.81, 2.37, 3.44, 3.64, 3.80, 3.87, 4.02, 6.68, 7.30, 7.42, 7.55, 11.74。
【0128】
実施例10:[4-クロロ-3-({2,6-ジメチル-4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]ベンゼン-1-カルボチオイル}アミノ)フェニル]酢酸
【化50】
実施例1で製造した化合物の代わりに、実施例9で製造した化合物を用いて、実施例2と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.28 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.25, 1.47, 1.62, 1.80, 2.37, 3.42, 3.67, 3.87, 4.04, 6.68, 7.29, 7.39, 7.54, 11.74, 12.46。
【0129】
実施例10-1~10-5:
実施例3で製造した化合物の代わりに、実施例1、実施例3-1で製造した化合物、実施例2-1~2-3で製造した化合物のメチルエステル体を用いて、実施例9→実施例2と同様の操作を行うことにより以下の物性値を有する標題化合物を得た。
実施例10-1:(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2,6-ジメチルベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸
【化51】
TLC:Rf 0.46(酢酸エチル:メタノール=9:1);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 0.85-1.02, 1.10-1.30, 1.43, 1.55-1.75, 2.35, 3.65,3.99, 6.67, 7.28, 7.36, 7.51, 7.54, 11.71, 12.44。
実施例10-2:[4-クロロ-3-({4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル}アミノ)フェニル]酢酸
【化52】
HPLC保持時間(分):1.05;
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.25, 1.42-1.51, 1.63, 1.77, 1.83-1.89, 3.45, 3.67, 3.88, 4.12-4.21, 7.25, 7.29-7.32, 7.35, 7.47, 7.55, 11.90, 12.46。
実施例10-3:(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸
【化53】
HPLC保持時間(分):1.21;
1H-NMR(DMSO-d6):δ 0.92-1.02, 1.13-1.29, 1.49, 1.63-1.77, 3.66, 4.14, 7.24, 7.29-7.32, 7.34, 7.46, 7.54, 11.89, 12.46。
実施例10-4:(4-クロロ-3-{[4-(2-フェニルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸
【化54】
HPLC保持時間(分):1.09;
1H-NMR(DMSO-d6):δ 3.08, 3.66, 4.34, 7.23-7.27, 7.29-7.37, 7.46, 7.55, 11.90, 12.50。
実施例10-5:(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロプロピルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸
【化55】
HPLC保持時間(分):1.06;
1H-NMR(DMSO-d6):δ -0.02-0.01, 0.28-0.32, 0.70, 1.51, 3.50, 4.00, 7.08, 7.13-7.18, 7.31, 7.38, 11.74, 12.30。
【0130】
実施例11:
実施例9で製造した化合物を用いて、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)にて光学分割を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
実施例11-1:メチル {4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}アセタート
【化56】
HPLC保持時間(分):13.2(CHIRAL PAK IC, ヘキサン:イソプロパノール=70:30);
実施例11-2:メチル {4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2S)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}アセタート
【化57】
HPLC保持時間(分):11.8(CHIRAL PAK IC, ヘキサン:イソプロパノール=70:30);
【0131】
実施例12:{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}酢酸
【化58】
実施例1で製造した化合物の代わりに、実施例11-1で製造した化合物を用いて実施例2と同様の操作を行うことにより以下の物性値を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.28 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
HPLC保持時間(分):1.05;
MS(ESI, Pos.):462(M+H)+
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.25, 1.47, 1.62, 1.80, 2.37, 3.42, 3.67, 3.87, 4.04, 6.68, 7.29, 7.39, 7.54, 11.74, 12.46。
【0132】
実施例13:{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2S)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}酢酸
【化59】
実施例1で製造した化合物の代わりに、実施例11-2で製造した化合物を用いて実施例2と同様の操作を行うことにより以下の物性値を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.28 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
HPLC保持時間(分):1.05;
MS(ESI, Pos.):462(M+H)+
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.25, 1.47, 1.62, 1.80, 2.37, 3.42, 3.67, 3.87, 4.04, 6.68, 7.29, 7.39, 7.54, 11.74, 12.46。
【0133】
参考例6:メチル 2-(3-アミノ-4-フルオロフェニル)プロパノアート
酢酸(34mL)、水(4.0mL)に鉄粉(4.8g)を加え、65℃に加熱した混合物に、国際公開第2013/045451号パンフレットに記載の方法で製造したメチル 2-(4-フルオロ-3-ニトロフェニル)プロパノアート(CAS No. 1428790-43-5、3.9g)の酢酸(5mL)溶液を加え、反応混合物を65℃で30分間撹拌した。反応混合物を室温に冷却後、セライト(商品名)濾過し、ろ液を0℃に冷却後、2N水酸化ナトリウム水溶液(345mL)を注ぎ、再度セライト(商品名)濾過した。ろ液をtert-ブチルメチルエーテルで2回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=99:1→65:35)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(3.4g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.45, 3.60, 3.63, 3.71, 6.60, 6.73, 6.91。
【0134】
実施例14:2-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}プロパン酸
【化60】
メチル 2-(3-アミノ-4-クロロフェニル)アセタートの代わりに参考例6で製造した化合物を、参考例1で製造した化合物の代わりにBioorganic & Medicinal Chemistry, vol.19, 6935-6948, 2011に記載の方法で製造した4-アセトキシ-2,6-ジメチル安息香酸(CAS No.1351163-93-3)を用いて、参考例2→参考例3→参考例4→実施例1→実施例9→実施例2と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
HPLC保持時間(分): 1.07;
MS(ESI, Pos., 20V):460 (M + H)+
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.18, 1.19-1.29, 1.38, 1.39-1.55, 1.62, 1.71-1.87, 2.32, 3.26-3.52, 3.77, 3.87, 4.04, 6.69, 7.26-7.43, 11.64, 12.44。
【0135】
実施例15:1-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}シクロプロパンカルボン酸
【化61】
国際公開第2019/003143号パンフレットに記載の方法により製造したメチル 1-(4-フルオロ-3-ニトロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシラート(CAS No.、2260554-65-0)、参考例1で製造した化合物の代わりに4-アセトキシ-2,6-ジメチル安息香酸を用いて、参考例6→参考例2→参考例3→参考例4→実施例1→実施例9→実施例2と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
HPLC保持時間(分): 1.09;
MS(ESI, Pos., 20V):472 (M + H)+
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.12-1.31, 1.38-1.54, 1.61, 1.71-1.86, 2.32, 3.27-3.47, 3.87, 4.03, 6.68, 7.26, 7.36, 7.43, 11.64, 12.42。
【0136】
実施例16:メチル 2-[4-クロロ-3-({2,6-ジメチル-4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]ベンゼン-1-カルボチオイル}アミノ)フェニル]-2-メチルプロパノアート
【化62】
Bioorganic Medicinal Chemistry, 2011, vol.19, 6935-6948に記載の方法により製造したメチル2-(3-アミノ-4-クロロフェニル)-2-メチルプロパノアート(CAS No. 343326-75-0)と参考例1で製造した化合物の代わりに4-アセトキシ-2,6-ジメチル安息香酸を用いて、参考例2→参考例3→参考例4→実施例1→実施例9と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6):δ1.20-1.28, 1.42-1.50, 1.53, 1.58-1.65, 1.72-1.85, 2.36, 3.28-3.48, 3.61, 3.85-3.90, 4.00-4.08, 6.68, 7.35, 7.43, 7.58 11.75。
【0137】
実施例17:2-{4-クロロ-3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸
【化63】
実施例16で製造した化合物を用いて、実施例2と同様の操作を行うことにより以下の物性値を有する標題化合物を得た。
HPLC保持時間(分): 1.14;
MS(ESI, Pos., 20V):490(M+H)+
1H-NMR(DMSO-d6):δ1.20-1.25, 1.43-1.49, 1.49, 1.58-1.65, 2.36, 3.26-3.48, 3.77, 4.00-4.08, 6.68, 7.38, 7.46, 7.58 11.74, 12.57。
【0138】
実施例18:メチル 2-{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2S)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパノアート、およびメチル 2-{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパノアート
実施例16で製造した化合物を用いて、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)にて光学分割を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
分離条件 カラム:CHIRALPAK IC 5μm 20mm×250(ダイセル社製); CO:(酢酸エチル/メタノール=9/1)=78/22
実施例18-1:(第一ピーク)
SFC保持時間(分):3.69(CHIRALPAK IC 5μm 20mm×250(ダイセル社製);CO:(酢酸エチル/メタノール=9:1)=78:22)
実施例18-2:(第二ピーク)
SFC保持時間(分):5.32(CHIRALPAK IC 5μm 20mm×250(ダイセル社製);CO:(酢酸エチル/メタノール=9:1)=78:22)
【0139】
実施例19:2-{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2S)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸、および2-{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸
実施例18-1または実施例18-2で得られた化合物を用いて、実施例2と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
実施例19-1:(実施例18-1で製造した化合物を用いて製造した化合物)
HPLC保持時間(分): 1.14;
MS(ESI, Pos., 20V):490(M+H)+
1H-NMR(DMSO-d6):δ1.20-1.25, 1.43-1.49, 1.49, 1.58-1.65, 2.36, 3.26-3.48, 3.77, 4.00-4.08, 6.68, 7.38, 7.46, 7.58 11.74, 12.57。
実施例19-2:(実施例18-2で製造した化合物を用いて製造した化合物)
HPLC保持時間(分): 1.14;
MS(ESI, Pos., 20V):490(M+H)+
1H-NMR(DMSO-d6):δ1.20-1.25, 1.43-1.49, 1.49, 1.58-1.65, 2.36, 3.26-3.48, 3.77, 4.00-4.08, 6.68, 7.38, 7.46, 7.58 11.74, 12.57。
【0140】
実施例20:2-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}-2-メチルプロパン酸
【化64】
国際公開第2018/116107号パンフレットに記載の方法で製造したメチル 2-(4-フルオロ-3-ニトロフェニル)-2-メチルプロパノアートと参考例1で製造した化合物の代わりに4-アセトキシ-2,6-ジメチル安息香酸を用いて、参考例6→参考例2→参考例3→参考例4→実施例1→実施例9→実施例2と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
HPLC保持時間(分): 1.09;
MS(ESI, Pos., 20V):474(M+H)+
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.25, 1.41-1.48, 1.49, 1.62, 1.71-1.85, 2.31, 3.32, 3.43, 3.87, 3.99-4.08, 6.68, 7.31, 7.38, 7.44, 11.65, 12.51。
【0141】
実施例21:2-(4-クロロ-3-{[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]エトキシ}フェニル)カルボチオイル]アミノ}フェニル)プロパン酸
【化65】
実施例11-1で製造した化合物(1200mg)のジクロロメタン(25mL)溶液に、DIPEA(2.2mL)およびメトキシメチルクロリド(0.57mL)を0℃で加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5→35:65)によって精製することにより、粗精製物(1300mg)を得た。この粗精製物のジメチルアセトアミド(10mL)溶液に、炭酸セシウム(4.1g)およびヨウ化メチル(0.78mL)を加え、反応混合物を35℃で16時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却後、塩化アンモニウム水溶液を注ぎ、tert-ブチルメチルエーテルで2回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=90:10→0:100)によって精製することにより、粗精製物(410mg)を得た。この粗精製物のジオキサン(10mL)溶液に5mol/L塩酸水溶液(5mL)を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をtert-ブチルメチルエーテルで2回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=90:10→0:100)によって精製することにより、粗精製物(320mg)を得た。この粗精製物のテトラヒドロフラン(4mL)溶液にメタノール(4mL)と2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(4mL)を加え、反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応混合物に2mol/L塩酸水溶液を加え、tert-ブチルメチルエーテルで2回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=90:10→0:100)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(275mg)を得た。
HPLC保持時間(分): 1.10;
MS(ESI, Pos., 20V):476(M+H)+
1H-NMR(CDCl3):δ 0.78-0.84, 1.30-1.90, 2.17-2.25, 2.39, 3.39-3.60, 3.90-4.12, 4.54, 6.37, 6.52-6.65, 7.01-7.04, 7.25-7.30, 7.42-7.45, 8.71, 8.88, 9.70。
【0142】
実施例22:[4-クロロ-3-({[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2,6-ジメチルフェニル]カルボチオイル}アミノ)フェニル]酢酸ナトリウム
【化66】
実施例10-1で製造した化合物(60mg)のジオキサン(2mL)溶液に、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(0.13mL)を加えた後、凍結乾燥することにより、以下の物性値を有する標題化合物(49mg)を得た。
HPLC保持時間(分): 1.38;
MS(ESI, Pos., 20V): 460(M+H-Na)+
1H-NMR(DMSO-d6):δ 0.87-1.02, 1.10-1.28, 1.47, 1.67-1.79, 2.36, 3.26, 3.99, 6.65, 7.12-7.28, 7.38, 11.70。
【0143】
[薬理実施例]
生物学的実施例1:ヒトDP受容体発現細胞を用いたDP受容体拮抗活性の測定
DP受容体拮抗活性の測定には、cAMP-HTRF kit(セティメディカルラボ、62AM6PEJ)を用いた。384 well plateに,各種濃度に調製した本発明化合物及びプロスタグランジンD2(最終濃度10nmol/L)を10μL/well添加した。ヒトDP受容体発現細胞を2μmoL/Lのジクロフェナク及び1mmol/LのIBMX(3―Isobutyl―1―methylxantine)を含有するリン酸バッファーで懸濁し、5000cells/10μL/wellになるように播種した。細胞播種後は、室温で1時間インキュベーションした。その後、測定キットの方法に準じてanti-cAMP Cryptate conjugate及びcAMP-d2溶液を添加し、室温で1時間インキュベーションした後、サンプル中のcAMP濃度を定量した。
本発明化合物によるDP受容体拮抗作用の強度は、10nmol/L プロスタグランジンD2刺激で増加するcAMP産生量に対する抑制率から算出されるIC50値(本発明化合物非存在下におけるcAMP産生量を50%阻害するのに要する本発明化合物の濃度)として表した。表1に本発明化合物のDP受容体拮抗活性を示す。
【表1】

本発明化合物は、DP受容体に対し強力な拮抗活性を示した。
【0144】
薬物動態試験1:脳脊髄液(以下、CSF)中の本発明化合物濃度測定
(1)CSF採取
5個の被験物質を混和し、各被験物質の投与量が3mg/5mL/kgとなるように被験物質溶液を調製した。媒体は5%DMSO 20%コリフォールHS15/プロピレングリコール(7:3)を使用した。日本チャールス・リバーより購入した雄性の8~10週齢のWistarラットに被験物質溶液を経口投与した。投与3時間後、ラットに麻酔をかけ、大槽穿刺によりCSFを採取した。採取に使用したシリンジでCSFと等量のエタノール(wako)を取り、洗い込みをすることでシリンジに吸着した化合物を回収した。
(2)測定
内部標準物質としてCandesartan(TRC)を用い、得られたCSFサンプル10μLにアセトニトリル40μL、Candesartan含有アセトニトリル/エタノール(7:3)160μLを添加して、撹拌した。検量線作成用に、血漿10μLに化合物溶液40μL、Candesartan含有アセトニトリル/エタノール(7:3)160μLを添加して、攪拌した。各溶液を除蛋白用フィルタープレートに全量を移して吸引濾過した。得られたろ液をアセトニトリル/水(1:1)で適宜希釈し、測定に用いた。測定では、それぞれ同一マトリックスで検量線用標準試料を調製し、同様に分析した。測定は以下の条件で行った。
液体クロマトグラフィーシステム:Prominence UFLCXR(島津製作所)、
カラム:Shim-pack XR-ODSII 2.0 mm ID×75 mm(島津製作所)、
カラム温度:40℃、
移動相:A:0.2%ギ酸5mmol/L酢酸アンモニウム水溶液、B:アセトニトリル、
グラジエントプログラム:
時間(移動相B(%)):0分(10)→1.5分(90)→3.0分(90)→3.1分(10)→4分(10)、
流量:0.5mL/min
質量分析システム:API4000、API5000(AB SCIEX)
(3)解析
解析ソフトウェアAnalyst ver. 1.5.2(AB SCIEX)を用いて検量線用標準試料の測定で得られたピーク面積比(被験物質のピーク面積/内部標準物質のピーク面積)から回帰式を算出した。測定試料についてもピーク面積比を求め,回帰式に代入して定量値を算出した。平均値及び標準偏差の算出では、定量下限未満のポイントは0として計算した。
結果を表2に示す。
【表2】

比較化合物として、先行技術文献の特許文献2中の実施例13―24に記載の化合物を用い、CSF中化合物濃度を測定したところ、4.8ng/mLであった。本発明化合物のCSF中化合物濃度は比較化合物よりも高く、良好な中枢移行性を示した。
【0145】
生物学的実施例2:正常ラット覚醒時間延長作用
ラットの脳及び頸部筋に慢性電極を留置し、脳波及び筋電図を測定可能なラットを作製した。一週間以上の回復期間の後、音及び電気的ノイズを遮断したシールドボックス内で、ラットと生体信号増幅装置を接続した。測定ケージ内で一時間以上馴化した後、種々の用量の本発明化合物をラットに単回経口投与し、経口投与後6時間の脳波及び筋電図を記録した。測定終了後のラットは、その都度飼育ケージに戻し、媒体及び各化合物の評価は一週間以上の休薬期間を設けて実施した。
記録した脳波及び筋電図はSleepSign Ver.3を用いて解析し、10秒ごとのエポックに分割し、脳波及び筋電図の特徴、並びに脳波の各周波数成分のスペクトル解析結果を参考に、覚醒・ノンレム睡眠・レム睡眠のいずれかにステージ判定した。ステージ判定は、高振幅の筋電図が認められる場合は「覚醒」、高振幅徐波及び低振幅の筋電図が認められる場合は「ノンレム睡眠」、シータ波成分を含む低振幅の脳波及び低振幅の筋電図が認められる場合は「レム睡眠」と判定した。ノイズなどでステージ判定が困難なエポックは、前のエポックの判定結果に準拠した。
睡眠・覚醒状態を判定後、本発明化合物投与群の投与後6時間の総覚醒時間と媒体投与群の投与後6時間の総覚醒時間の差を覚醒時間延長作用の指標として表した。
本発明化合物の覚醒時間延長作用を評価した結果、例えば実施例化合物8および実施例化合物12は、3mg/kgの用量でそれぞれ48分及び60分の覚醒時間延長作用を示し、本発明化合物は睡眠覚醒障害治療剤として有用であることを示した。
【0146】
[製剤例]
本発明に用いられる代表的な製剤例を以下に示す。
{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}酢酸(100g)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(20g)、ステアリン酸マグネシウム(10g)および微結晶セルロース(870g)を常法により混合した後打錠することにより、一錠中に10mgの活性成分を含有する錠剤約1万錠が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明化合物は、強力なDP受容体拮抗活性を有し、且つ優れた中枢移行性を有しているため、DP受容体介在性疾患、特に睡眠覚醒障害の予防および/または治療剤として有用である。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
(式中、Rは、水素原子、C1-4アルキル、またはベンジル基を表し、
、R、およびRは、それぞれ独立して、(1)ハロゲン原子、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル、または(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルコキシ基を表し、
またはRがそれぞれ複数存在する場合は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
Jは、結合手、-O-、または-S-を表し、
Lは、結合手、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、またはC2-6アルキニレン基を表し、
は、水素原子、C3-10炭素環、または3-10員ヘテロ環を表し、
中のC3-10炭素環および3-10員ヘテロ環は、1-6個のRで置換されていてもよく、
但し、Lが結合手の場合、Rは水素原子ではなく、
は、(1)ハロゲン原子、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル、または(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルコキシ基を表し、
が複数存在する場合は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
Qは、硫黄原子を表し、
は、水素原子またはC1-4アルキル基を表し、
11は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル基を表し、
12は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよいC1-4アルキル基を表し、
11とR12は、それらが結合している炭素原子と一緒になってC3-6飽和炭素環を形成してもよく、
nは、0-4の整数を表し、
mは、0-3の整数を表す。)で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩(但し、{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}酢酸、またはその薬学的に許容される塩を除く)。
【請求項2】
一般式(I-1):
【化2】
(式中、R51はC3-10炭素環、または3-10員ヘテロ環を表し、Jは結合手、または-O-を表し、その他の記号は請求項1記載の記号と同じ意味を表す。)で示される請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
51が、3-8員飽和単環ヘテロ環である、請求項2記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
化合物が、
(11)(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2,6-ジメチルベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(12)[4-クロロ-3-({4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル}アミノ)フェニル]酢酸、
(13)(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロヘキシルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(14)(4-クロロ-3-{[4-(2-フェニルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(15)(4-クロロ-3-{[4-(2-シクロプロピルエトキシ)-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1-カルボチオイル]アミノ}フェニル)酢酸、
(16)[4-クロロ-3-({2,6-ジメチル-4-[2-(オキサン-2-イル)エトキシ]ベンゼン-1-カルボチオイル}アミノ)フェニル]酢酸、
(18){4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2S)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}酢酸、
(19)2-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}プロパン酸、
(20)1-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}シクロプロパンカルボン酸、
(21)2-{4-クロロ-3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸、
(22)2-{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2S)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸、
(23)2-{4-クロロ-3-[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-オキサン-2-イル]エトキシ}ベンゼン-1-カルボチオイル)アミノ]フェニル}-2-メチルプロパン酸、
(24)2-{3-[({2,6-ジメチル-4-[2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エトキシ]フェニル}カルボチオイル)アミノ]-4-フルオロフェニル}-2-メチルプロパン酸、または、
(25)2-(4-クロロ-3-{[(2,6-ジメチル-4-{2-[(2R)-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]エトキシ}フェニル)カルボチオイル]アミノ}フェニル)プロパン酸である、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。