(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058665
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】吸入器
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022006455
(22)【出願日】2022-01-19
(62)【分割の表示】P 2019527248の分割
【原出願日】2017-09-14
(31)【優先権主張番号】62/424,299
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルデロン オリべラス,エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】バック,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】カンター,エリカ,ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】ウィアー,ロス,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ガーディナー,スティーブン デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】キブリン,ロバート オーウェン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アドヒアランスおよびコンプライアンスを改善するために、電気的構成要素を含む吸入器を提供する。
【解決手段】吸入器は、ハウジングを有する電子モジュール105を備えてよく、ハウジングは、モジュールキャップ110である。吸入器は、さらに、プリント回路基板118と、部分的に変形してプリント回路基板をハウジングに固定するように構成されたヒートステークと、を備えてよい。複数のヒートステーク212、214は、ハウジングの頂内面から突出または延在してよい。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器であって、
ハウジングを有する電子モジュールを備え、前記ハウジングは、モジュールキャップであり、
前記吸入器は、さらに、
プリント回路基板と、
部分的に変形して前記プリント回路基板を前記ハウジングに固定するように構成されたヒートステークと、を備え、複数の前記ヒートステークは、前記ハウジングの頂内面から突出または延在している、
ことを特徴とする吸入器。
【請求項2】
前記プリント回路基板は、複数の開口を備え、前記複数のヒートステークは、前記複数の開口を通って突出して前記プリント回路基板を前記ハウジングに固定するように構成されている、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記複数のヒートステークは、追加の締結具を用いずに前記プリント回路基板を前記ハウジングに固定するように構成されている、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項4】
前記複数のヒートステークは、円形の断面を有し、及び/又は、前記複数のヒートステークは、1.4mm未満の直径を有する、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項5】
前記複数のヒートステークは、リブ形状の断面を有する、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項6】
前記電子モジュールは、バッテリホルダをさらに備え、任意で、前記バッテリホルダは、前記プリント回路基板に固定されるように構成されており、かつ、当該バッテリホルダによって保持されたバッテリが前記プリント回路基板との電気接続を維持することを確保するように構成されている、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項7】
マウスピースカバーと、
前記プリント回路基板を前記マウスピースカバーの動作に機械的に連結するスライダと、をさらに備える、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項8】
前記プリント回路基板は、さらに、スイッチを備え、
前記スライダは、前記マウスピースカバーが開かれて前記マウスピースを露出させるとき、軸方向に動いて前記スイッチを作動させるように構成されている、
請求項7に記載の吸入器。
【請求項9】
前記スイッチは、作動されると、前記プリント回路基板にウェイク信号を提供するように構成されており、前記ウェイク信号は、前記プリント回路基板を第1動作状態から第2動作状態に移行させるように構成されている、
請求項8に記載の吸入器。
【請求項10】
前記マウスピースカバーの開閉に連動して動くように構成されたヨークをさらに備え、
前記スライダは、前記ヨークの上下動を伝達して前記スイッチを作動させるように構成されている、
請求項8に記載の吸入器。
【請求項11】
前記プリント回路基板は、前記スイッチから受信した信号に基づいて、前記マウスピースカバーが開かれたか閉じられたかを判定するように構成されている、
請求項8に記載の吸入器。
【請求項12】
前記プリント回路基板はノッチを規定し、前記ヒートステークの1つは前記ノッチを介して前記プリント回路基板を通って突出するように適合されており、前記スライダは前記プリント回路基板の当該ノッチの隣りの別のノッチを通って突出する、
請求項8に記載の吸入器。
【請求項13】
前記スライダが軸方向に動く際に前記スイッチを作動させおよび非作動にするように、前記スイッチは前記別のノッチの隣りに位置されている、
請求項12に記載の吸入器。
【請求項14】
前記プリント回路基板は、前記吸入器を通じた患者の吸入についての情報をプロセッサに提供するように構成されたセンサをさらに備え、
前記プロセッサは、前記患者の吸入についての前記情報を用いて、前記患者の吸入と関連する前記吸入器の空気流路を通る空気流量を割り出すように構成されている、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項15】
前記モジュールキャップは、前記吸入器のハウジングと整合する、
請求項1に記載の吸入器。
【請求項16】
吸入器であって、
薬剤およびマウスピースを備えるハウジングと、
プロセッサ、バッテリ、無線通信回路、および、複数の開口を備えるプリント回路基板と、
前記ハウジングに固定されるようにかつ前記プリント回路基板を保持するように構成されたキャップと、を備え、
前記キャップは、
前記キャップの頂内面から前記複数の開口を通って突出または延在し、かつ、部分的に変形されて前記プリント回路基板を前記キャップに固定するように構成された複数のヒートステークを備える、
ことを特徴とする吸入器。
【請求項17】
機械的接触部が、前記ハウジングと前記キャップとの間に存在し、当該機械的接触部は、圧力センサにおいて測定される空気流量が前記マウスピースの開口において測定される空気流量の2%以内であるように構成されている、
請求項16に記載の吸入器。
【請求項18】
吸入器であって、
マウスピースおよび薬剤を備えるハウジングと、
ヨークと、を備え、当該ヨークの運動が、1用量の薬剤が前記マウスピースを通って延在する空気流路で利用可能になることをもたらすように構成されており、
前記吸入器は、さらに、
プロセッサおよびスイッチを備える電子モジュールと、
スライダガイドに係合するように構成されたスライダと、を備え、
前記スライダの末端は、前記ヨークの運動が前記スライダに伝達されて前記スライダが前記スイッチを操作することをもたらすように、前記ヨークと接触し、
前記スイッチは、前記スライダによって操作されると、前記プロセッサの電力状態を変化させるように構成されている、
ことを特徴とする吸入器。
【請求項19】
前記スライダガイドによって受けられるスライダスプリングをさらに備え、前記スライダスプリングは、前記スライダの一部と係合するように、かつ、前記スライダの末端を付勢して前記ヨークと接触させるように構成されており、
前記スライダガイドは、前記スライダのクリップと係合するように構成されたストッパを備え、
前記ストッパは、前記ヨークの運動の間に前記スライダの移動を制限するように構成されており、
前記ストッパは、前記スライダが前記スイッチを作動させた後、前記スライダの移動を制限するように構成されている、
請求項18に記載の吸入器。
【請求項20】
前記スライダガイドは、前記スライダのクリップと係合するように構成されたストッパを備え、前記ストッパは、前記ヨークの運動の間に前記スライダの移動を制限するように構成されている、
請求項18に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年11月18日に出願された米国仮特許出願第62/424,299号の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
薬送達デバイスは、様々な投与経路を介した患者の体内への薬剤の送達を容易にする。典型的な投与経路には、経口、局所、舌下吸入、注射などが含まれる。このデバイスは、様々な疾患、病気、および医学的状態を治療するための薬剤を送達するために用いられ得る。吸入デバイスは、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および嚢胞性線維症(CF)を治療するために用いられ得る。薬送達デバイスは、治療処置の一部として適切な1用量の薬剤を患者に送達するように設計されるが、特定の処置の有効性は、患者のアドヒアランスおよびコンプライアンスなどの非生理学的な要因によって影響され得る。
【0003】
薬物療法において、アドヒアランスは、患者が処方された投薬レジメンに従っている程度を指し得る。例えば、患者の処方箋が毎日2回の用量を必要とし、患者が1日2回の用量を服用している場合、患者は100%のアドヒアランスであると考えることができる。患者が1日1回しか服用していない場合、患者はたった50%のアドヒアランスであるとみなすことができる。後者の場合、患者は当該患者の医師によって処方された処置を受けていないかもしれず、これは治療処置の効力に悪影響を及ぼし得る。
【0004】
コンプライアンスは、特定の薬送達デバイスを用いるときの患者の技術を指し得る。患者が医師または製造業者によって推奨される方法でデバイスを用いている場合、デバイスは所望の用量の薬剤を送達する可能性が高く、患者はコンプライアンスに準拠しているとみなすことができる。しかし、デバイスが薬投与中に適切に用いられていない場合、デバイスが適切な用量の薬剤を送達する能力は損なわれ得る。したがって、患者は、コンプライアンスに準拠していないとみなすことができる。吸入デバイスの場合、例えば、患者は、1用量全部の薬剤がデバイスから患者の肺に送達されることを確実にするために最低限の吸気努力を達成する必要があるかもしれない。小児および高齢者などの一部の患者では、肺機能の制限などの身体的制限ゆえに、完全なコンプライアンスのための要件を満たすことは困難かもしれない。従って、アドヒアランスと同様に、完全なコンプライアンスを達成できないことは、処方された処置の有効性を低下させ得る。
【0005】
患者が完全なコンプライアンスを達成する能力は、薬剤のいくらかの物理的特性によってさらに複雑になり得る。例えば、いくつかの呼吸器系薬剤は微粒子からなるかもしれず、および/または、いかなる臭いまたは味も欠いているかもしれない。したがって、吸入デバイスを用いる患者は、薬剤が吸入されていることを直ちに検出または感知することができないかもしれない、および/または、吸入された薬剤の量が処方箋に従っているのかどうかを知ることができないかもしれないので、患者は、コンプライアンスに準拠していない使用を修正することができないかもしれない。
【発明の開示】
【0006】
[概要]
アドヒアランスおよびコンプライアンスを改善するために、薬送達デバイスは、当該デバイスに関連する使用条件およびパラメータを感知、追跡および/または処理するように構成される電子モジュールを含むように適合され得る。電子モジュールは、同様のおよび/またはさらなる処理のために、スマートフォンなどの外部デバイスに条件およびパラメータを通信するようにさらに構成されてよい。薬送達デバイスに電子モジュールを含めることは、豊富なデジタル改良および特徴への門戸を開き、当該デバイスの使用を向上させる。電子モジュールは、これに関連して、有用なスマートフォンアプリケーションおよび有力なデータ分析を活用するためのプラットフォームを作成し得る。しかし、任意の薬送達デバイスへの電子機器の導入は、耐久性、電気-機械的統合、および薬送達性能などのいくらかの技術的課題を導入し得る。本開示は、吸入器などの薬送達デバイスにいくらかの電気的構成要素を含めるための解決策を提供する。
【0007】
吸入デバイス(例えば、呼吸作動式吸入器)の例示が、本明細書で提供される。例示に係る吸入器は、プリント回路基板(PCB)をモジュールキャップなどの電子モジュールのハウジングに固定するためのヒートステークを含んでよい。ヒートステークは、PCBをハウジングに固定するときに部分的に変形するように構成されてよい。ヒートステークの使用は、吸入器の耐久性を改善し得るものであり、例えば、吸入器が落下した結果として、電子モジュールが損傷を受けるかまたは動作不能になる危険性を低減することを含む。PCBをキャップに固定するためのヒートステークの使用は、製造コストおよび/または製造時間を低減し得る。
【0008】
また、例えば、スライダが、吸入器のヨークの上下運動を電子モジュールのスイッチに伝達するために用いられてよい。吸入器のヨークの運動は、典型的な吸入器の動作(操作)に関連してよく、例えば、ヨークは、吸入器のマウスピースカバーの開閉に関連して運動してよい。ここで、スライダは、電子モジュールを、ユーザによく知られている動作に効果的に組み込ませてよく、吸入器の全体的な電気-機械的統合を改善する。すなわち、電子モジュールの作動(アクティブ化)は、ユーザが吸入器を操作する際にユーザに対して透過的でよい。
【0009】
また、例えば、所望の性能を達成するために、電子モジュールを吸入器のハウジングの他の部分に接続するときに、いくらかのシールが用いられるまたは形成されてよい。電子モジュールは、吸入器内の圧力変化を測定するための圧力センサを含んでよい。これらの圧力変化は、吸入器の空気流路を通る空気流量などの吸入器の動作性能の態様を演算または割り出すために用いられてよい。本明細書に記載されるように、シールすることは、測定された圧力変化を吸入器の動作性能パラメータに効果的に変換することを確実にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1Aは、電子モジュールを有する例示の吸入器の斜視図である。
【0011】
図1Bは、電子モジュールを有する例示の吸入器の部分分解図を示す。
【0012】
図1Cは、電子モジュールを有する例示の吸入器の部分分解図を示す。
【0013】
図1Dは、電子モジュールを有する例示の吸入器の断面図を示す。
【0014】
【0015】
図2Bは、吸入器用の例示の電子モジュールの部分分解図を示す。
【0016】
図3は、吸入器用の電子モジュールの例示のスライダを表す。
【0017】
図4A-B、吸入器用の電子モジュールの例示のスライダの投影図を示す。
【0018】
図5A-Dは、吸入器内の例示のスライダの動作を示す。
【0019】
図6は、複数のバイパスポートを有する吸入器の例示のマウスピースを示す。
【0020】
[詳細な説明]
図1Aは、吸入器100を表し、当該吸入器は、マウスピース120、マウスピースカバー130、外側ハウジング190、ヨーク(視認されない)、および、電子モジュール105を備える。外側ハウジング190は、上側ハウジング140を備え、当該上側ハウジングは、下側ハウジング150に整合(インターフェース)してよい。上側ハウジング140および下側ハウジング150は、互いに取外可能にまたは取り外しできないように取り付けられてよく、それによってシール125を形成する。ハウジング190はまた、電子モジュール105を含んでよい。電子モジュール105は、上側ハウジング140と整合するキャップ110(例えば、電子モジュールキャップ)を含んでよい。キャップ110および上側ハウジング140は、互いに取外可能にまたは取り外しできないように取り付けられてよく、それによってシール127を形成する。
【0021】
図1Bは、上側ハウジング140と下側ハウジング150との間の接触部分(境界面)を含む、吸入器100の部分分解図を示す。具体的には、下側ハウジング150は、上側外面152を規定する頂部155を有してもよい。上側外面152は、シール156を含んでよく、当該シールは、ラビリンスシールでよい。上側外面152は、上側ハウジング140に受けられ、上側ハウジング140の下側内面の少なくとも一部と重なってよい。下側ハウジング150は、リム153を規定してよく、当該リムは、下側ハウジング150と上側ハウジング140とが互いに接続されたとき上側ハウジング140の底縁148に当接してよい。底縁148とリム153との間の接触部分は、(例えば、
図1Aに示されるように)シール125を規定する。
【0022】
下側ハウジング150はまた、1つまたは複数の凹部154を規定してよく、当該凹部は、上側ハウジング140の下側内面上の1つまたは複数のクリップまたは突起(図示せず)を個々に受けるように構成されてよい。1つまたは複数の凹部154の1つまたは複数のクリップまたは突起との結合が、上側ハウジング140が下側ハウジング150から外れることをさらに防止または抑制してよい。
【0023】
図1Bは、上側ハウジング140とキャップ110との間の接触部分をさらに表す。より具体的には、キャップ110は、内周面112と、縁113とを規定してよく、当該縁は、面取りされてよい。キャップ110は、内周面112から延在する1つまたは複数のクリップまたは突起114をさらに含んでよい。上側ハウジング140は、第1断面積を有する頂部145と、第2断面積を有する底部147とを規定してよい。第1断面積は、第2断面積より小さくてよい。上側ハウジング140の頂部145は、上側外面142を規定してよく、当該上側外面は、キャップ110に受けられかつキャップ110の内周面112の少なくとも一部と重なるように構成されてよい。
【0024】
上側ハウジング140の底部147は、リム143を規定してよく、当該リムは、頂部145の第1断面積から底部147の第2断面積への移行部を規定してよい。キャップ110の縁113は、キャップ110が上側ハウジング140に取り付けられるまたは据え付けられるとき、リム143に当接してよい。縁113とリム143との間の接触部分は、
図1Aに示すようにシール127を規定してよい。
【0025】
上側ハウジング140の頂部145は、1つまたは複数の凹部144を規定してよく、当該凹部は、キャップ110上の1つまたは複数のクリップまたは突起114を受けるように構成されてよい。1つまたは複数の凹部144の1つまたは複数のクリップまたは突起114との結合は、キャップ110が上側ハウジング140から外れることをさらに防止または抑制してよい。
【0026】
上側ハウジング140はまた、頂面149を含んでよく、当該頂面は、1つまたは複数のオリフィス146を規定してよい。1つまたは複数のオリフィス146は、スライダ116を受け入れてよく、当該スライダは、電子モジュール105内にスライド可能に取り付けられてよい。2つ以上のオリフィス146を有することにより、上側ハウジング140および/またはキャップ110が、それらが互いに取り付けられる方法に影響を及ぼすことなく、軸周りに180度回転されることを可能にし得ることが、理解されるであろう。すなわち、スライダ116は、上側ハウジング140および/またはキャップ110が軸周りに180度回転された場合でも、オリフィス146の少なくとも1つによって依然として受けられ得る。
【0027】
吸入器100は、ヨーク170を含んでよく、当該ヨークは、上側ハウジング140内に収容されてよい。ヨーク170は、円筒形であってよく、その中に中空部を規定してよい。ヨーク170は、例えば中空部内にベローズ(例えば、
図1Dに示されるベローズ180)を収容してよい。ヨーク170の頂面172は、1つまたは複数の開口(アパーチャ)174を含んでよい。ヨーク170は、マウスピースカバー130が開位置と閉位置との間で動かされるときにヨーク170が軸176に沿って軸方向に動き得るように、マウスピースカバー130に機械的に連結されてよい。例えば、ヨーク170は、ヒンジ機構160を介してマウスピースカバー130に機械的に連結されてよい。ヨーク170は、カムフォロア178(複数)を介してマウスピースカバー130に機械的に連結されてもよく、当該カムフォロアは、ヒンジ機構160から、ヒンジ機構160から末端のベルト179まで、マウスピース120のどちらの側においても下側ハウジング150内で延在している。ベルト179は、下側ハウジング150内に収容されてよい。ベルト179は、カムフォロア178がヨーク170に機械的に連結されるように、ヨーク170によって規定された底縁171と係合するように構成されてよい。カムフォロア178は、マウスピースカバー130のヒンジ機構160の各カム162と係合するように構成されてよい。マウスピースカバー130が開かれるときに、ヒンジ機構160のカム162が回転して、カムフォロア178を軸176に沿って動かしてよく、それによって、ヨーク170が軸176に沿って下側ハウジング150に向かう方向に動くようにしてよい。軸176に沿ったヨーク170の運動は、ベローズを収縮させてよく、その結果、1用量の薬剤が下側ハウジング150内の用量カップ(図示せず)に移送される。
【0028】
上述のように、電子モジュール105は、吸入器100の使用および動作に関連するパラメータを監視するための構成要素(部品)を含んでよい。例えば、電子モジュール105は、マウスピース120における患者の吸入または呼息により生じるハウジング190内(より具体的にはキャップ110内)の圧力変化を感知するための圧力センサ(図示せず)を含んでよい。負の圧力変化は吸入を示し、正の圧力変化は呼息を示してよい。電子モジュール105は、測定された圧力変化を、空気流路189を通る空気流量と関連付けてよい。例えば、電子モジュール105は、マウスピース120における患者の吸入または呼息により生じる空気流量を割り出してよい。割出された空気流量は、吸入または呼息の持続時間にわたる平均空気流量を示してよい。割出された空気流量は、ピーク空気流量を示してもよい。割出された空気流量は、患者の吸入の質を示してもよい。すなわち、より高い流量は、一般的に、より強い吸入に関連し得るものであり、これは、1用量全部の薬剤が患者の肺に送達される可能性を増大させ得る。逆に、より低い流量は、一般的に、より弱い吸入に関連し得るものであり、これは、1用量全部の薬剤が患者の肺に送達される可能性を減少させ得る。したがって、吸入器100の各使用中に空気流路189を通る空気流量を割り出し、追跡することによって、電子モジュール105は、患者および他の第三者(例えば、ヘルスケア提供者)にとって有用であろうアドヒアランスおよびコンプライアンスデータを生成するように構成されてよい。
【0029】
キャップ110と上側ハウジング140との間のシール127(例えば、機械的接触部分)は、電子モジュール105が吸入器動作特性および/または統計を適切に測定および/または感知することを可能にするように構成されてよい。例えば、上側ハウジング140の上側外面142とキャップ110の内周面112との間の重なりの長さは、十分なエアシールがキャップ110と上側ハウジング140との間のシール127において維持されるように、決められてよい。特に、エアシールは、電子モジュール105内の圧力センサがマウスピース120の開口122における患者の吸入により生じるハウジング190内(より具体的にはキャップ110内)の圧力変化を感知することを可能にし、かつ、電子モジュール105がそのような圧力変化を吸入器100の空気流路189を通る空気流量と適切に関連付けることを可能にするほどに十分であってよい。シール127が乏しく、過剰な量の周囲の空気がシール127を通って入ることが許容される場合、開口122における吸入は、予想よりも低い圧力変化を生じさせるかもしれない。したがって、このような場合、圧力センサによって検出される圧力変化は、空気流路189を通る実際の空気流量を正確に反映しないかもしれない。
【0030】
図1Cは、吸入器100の別の部分分解図を表す。図示のとおり、電子モジュール105のキャップ110は、プリント回路基板(PCB)118を収容してよく、当該プリント回路基板は、ノッチ119を規定する縁117を有してよい。PCB118は、本明細書でさらに説明されるように、複数のヒートステークを介してキャップ110に取り付けられてよい。ヒートステークは、例えば、締結具を用いることなく、キャップ110内でPCB118を保持しかつ/または落下試験要件を満たすように構成されてよい。スライダ116は、PCB118をマウスピースカバー130の動作に機械的に連結してよい。例えば、スライダ116は、マウスピースカバー130が開かれてマウスピース120を露出させるとき、軸方向に動いてPCB118上のスイッチ(例えば、
図2Aおよび
図2Bに示されるスイッチ222)を作動させてよい。
【0031】
スライダ116が電子モジュール105内にスライド可能に取り付けられるとき、スライダ116の第1(例えば、上側)部分がノッチ119を通って突出してよい。スライダ116の第2(下側)部分は、オリフィス146の1つを通って突出し、かつ、上側ハウジング140内へ延在してよい。本明細書でさらに説明されるとおり、電子モジュール105内のスライダスプリング(例えば、
図2Bに示されるスライダスプリング260)は、スライダ116を下方向に付勢してよい、すなわち、スライダを下側ハウジング150に向けて押してよい。したがって、スライダスプリングは、上側ハウジング140内のスライダ116の端を、ヨーク170の頂面172との接触を維持しかつ継続的にこれに寄りかるようにしてよい。したがって、スライダ116は、マウスピースカバー130が開位置と閉位置との間で動かされるとき、軸176に沿ってヨーク170と共に軸方向に動いてよい。
【0032】
図1Dは、吸入器100の断面図である。吸入器100は、上側ハウジング140内に配置された作動スプリング182と、ヨーク170内に配置されたベローズ180とを有してよい。作動スプリング182は、ヨーク170をベローズ180に対して付勢してよい。マウスピースカバー130が開かれてマウスピース120を露出させるとき、ヨーク170は、下側ハウジング150に向かう方向に軸方向に動いてよい。作動スプリング182からのヨーク170に対する付勢は、ベローズ180を圧縮させ、それによって、1用量の薬剤がリザーバ184から下側ハウジング150内の用量カップ186へ移送されることとなる。上述のように、吸入器100は、呼吸作動式DPIでよい。したがって、吸入器100は、脱凝集器187を含んでよく、当該脱凝集器は、空気流路189を通る空気流が特定の速度と合致するか、または特定の速度を超えるか、または特定の範囲内にあるときに、用量カップ186内の薬剤の凝集体を崩すことによって、当該1用量の薬剤をエアロゾル化するように構成されてよい。エアロゾル化されたときに、当該1用量の薬剤は、マウスピース120を通って延在する空気流路189を介して患者に経口的に送達されてよい。
【0033】
空気流路189は、マウスピース120の開口122から脱凝集器187を通りかつ下側ハウジング150の通気口188を通って延在する薬剤送達空気流路でよい。通気孔188は、空気流路189ための入口として機能してよい。マウスピース120の開口122は、空気流路189のための出口として機能してよい。薬剤は、患者が吸気するまたは吸入するときに、空気流路189に導入されてよい。例えば、患者がマウスピース120から吸気または吸入すると、空気が通気口188を通って脱凝集器187に引き込まれる。次いで、空気は、脱凝集器187を通って引き込まれ、そこで空気は薬剤と混合する。空気-薬剤混合物は、マウスピース120の開口122を介して吸入器100から出てよい。
【0034】
キャップ110と上側ハウジング140との間のシール127は、薬剤送達が悪影響を受けないように構成されてよい。例えば、脱凝集器187は、空気流路189を介した空気流量が30LPM以上に達したとき、またはより好ましくは空気流量が45LPM以上に達したときに、リザーバ184からの1用量の薬剤をエアロゾル化するように構成されてよい。したがって、吸入器100は、ある圧力がマウスピース120の開口122において適用されたときに、空気流路189を通る特定の空気流量を生じさせるように構成されてよい。ハウジング190に望ましくないギャップまたは開口がある場合、空気流量と適用された圧力との間の関係は変化するかもしれない。すなわち、シール127を通ってハウジング190に入る過剰な周囲の空気ゆえに、空気流路189に関連する空気流抵抗が変化した(例えば、減少した)場合、開口122におけるより高い圧力(例えば、より強い吸入)が必要とされるかもしれない。この増加した圧力(またはより強い吸入)は、限られた肺機能を有する患者の身体的能力を超える可能性がある。したがって、上側ハウジング140とキャップ110との間のシール127の十分性は、吸入器100が適切な用量の薬剤を送達する能力に影響を及ぼすかもしれない。
【0035】
上記を考慮すると、キャップ110と上側ハウジング140との間の機械的接触部分は、開口122において適用された所与の圧力において、吸入器100の空気流路189を通る空気流量が、電子モジュール105がない、かつ/または、上側ハウジング140の頂部145がオリフィス146などの開口を全く含まない場合の吸入器100の空気流路189を通る空気流量と実質的に同じであり得るように構成されてよい。好ましくは、適用された所与の圧力において、空気流量は互いに2%以内でよい。
【0036】
さらに、吸入器100の空気流路189に関連する適切な空気流抵抗は、0.020キロパスカル/リットル/分(kPa0.5/LPM)から0.042kPa0.5/LPMの範囲内でよい。より好ましくは、吸入器100の空気流路189に関連する空気流抵抗は、0.025kPa0.5/LPMから0.037kPa0.5/LPMの範囲内でよい。さらにより好ましくは、吸入器100の空気流路189に関連する空気流抵抗は、0.028kPa0.5/LPM~0.034kPa0.5/LPMの範囲内でよい。
【0037】
吸入器100の空気流路189に関連する適切な空気流量は、4.0kPaの圧力降下が空気流路189に渡り適用されたとき、50LPMから80LPMの範囲内にあってよい。より好ましくは、吸入器100の空気流路189に関連する空気流量は、4.0kPaの圧力降下が空気流路189に渡り適用されたとき、55LPMから75LPMの範囲内にあってよい。さらにより好ましくは、吸入器100の空気流路189に関連する空気流量は、4.0kPaの圧力降下が空気流路189に渡り適用されたとき、59LPMから71LPMの範囲内にあってよい。
【0038】
図2Aは、吸入器100のための例示の電子モジュール105を表す。
図2Bは、吸入器100のための例示の電子モジュール105の部分分解図を示す。電子モジュール105は、キャップ110と、PCB118と、バッテリ230と、バッテリホルダ240と、スライダ116とを含んでよい。PCB118は、キャップ110内に取り付けられてよい。
【0039】
吸入器100のような呼吸デバイスは、落下試験を首尾よく合格することが要求され得る。落下試験は、デバイスの動作および/または性能が悪影響を受ける程度を評価するために、呼吸デバイスを所定の高さから落下させることを含み得る。締結具(例えば、ネジ、リベットなど)を用いてPCB 118をキャップ110に締結すると、落下試験を合格できないこともある。例えば、吸入器100の動作および/または性能は、PCB118が締結具を用いてキャップ110に取り付けられる場合に悪影響を受ける可能性がある。また、締結具を用いてPCB118をキャップ110に締結することは、製造コストおよび/または製造時間を増大させるかもしれない。したがって、キャップ110は、ヒートステーク212、214などの複数のヒートステークを含んでよい。
【0040】
ヒートステーク212、214は、例えば、締結具を用いずに、PCB118をキャップ110に固定するように構成されてよい。ヒートステーク212、214は、キャップ110の頂内面220から突出するまたは延在してよい。ヒートステーク212は、円形断面を有してよい。ヒートステーク212は、標準的なヒートステークの直径よりも小さい直径を有してよい。すなわち、ヒートステーク212の直径は、吸入器100がPCB118上に余りに多くのスペースを占めることなく落下試験に合格するように選択されてよい。好ましくは、ヒートステーク212は、1.4mm未満の直径を有してよい。PCB118は、
図2Bに示されるとおり、複数の開口224、226、228を有してよい。1つまたは複数の開口(例えば、開口226)は、PCB118がキャップ110内に取り付けられるときに、ヒートステーク212が開口226を介してPCB118を通って突出するように適合され得るように、ヒートステーク212に対応してよい。
【0041】
ヒートステーク214は、例えばリブ形状の断面のような、非円形の断面を有してよい。PCB118上の複数の開口は、例えばヒートステーク214の位置に対応するノッチ224を含んでよい。PCB118は、PCB118がキャップ110内に取り付けられたときに、ヒートステーク214がノッチ224を介してPCB118を通って突出するように適合され得るように、ノッチ224を規定してよい。ヒートステーク212およびヒートステーク214のそれぞれは、キャップ110の頂内面220とは反対側の末端を規定してよい。ヒートステーク212およびヒートステーク214の各々の末端は、所定の温度に加熱されると部分的に変形するように構成されてよい。部分的に変形したヒートステーク212およびヒートステーク214が、PCB118をキャップ110に固定してよい。
【0042】
PCB118は、スイッチ222を含んでよく、当該スイッチは、トグルスイッチまたはディテクタスイッチでよい。ディテクタスイッチのアームは、トグルスイッチ上の運動範囲よりも大きな運動範囲または許容範囲を有してよい。したがって、ディテクタスイッチはスライダ116によって係合/係合解除されたときに、損傷の危険性がより低い。スイッチ222は、例えば、作動されると、電子モジュール105にウェイク信号を提供してよい。ウェイク信号は、電子モジュール105を第1動作状態から第2動作状態に移行させてよい。第1動作状態は、オフ状態またはスリープ状態でよい。第2動作状態は、アクティブ(例えば、オン)状態でよい。
【0043】
吸入器のトップ(例えば、マウスピース120から末端)において設置されている電子モジュール105は、マウスピースカバー130が開けられおよび/または閉じられる際にスイッチ222に機械的に係合するアダプタデバイスを含んでよい。例えば、スライダ116は、スイッチ222を作動させるように構成されてよい。スイッチ222は、例えば、スライダ116が軸方向に動く際にスイッチ222を作動させおよび非作動にするように、ノッチ119の隣りに位置されてもよい。本明細書で説明されるように、スライダ116は、マウスピースカバー130が開閉されるときに軸方向に動いてよい。
【0044】
キャップ110は、スライダガイド216を含んでよい。スライダガイド216は、キャップ110の頂内面220から突出してよい。スライダガイド216は、スライダがキャップ110内にスライド可能に取り付けられるように、スライダ116を受け入れるように構成されてよい。例えば、スライダガイド216は、スライダ116の一部を受け入れるように構成されてよい。スライダガイド216は、ストッパ217を規定してよい。ストッパ217は、スライダ116をスライダガイド216内に保持するように構成されてよい。ストッパ217は、例えばマウスピースカバー130が開かれるおよび/または閉じられるときに、スライダ116の軸方向の移動を制限するようにさらに構成されてよい。
【0045】
キャップ110は、複数の基準リブ211を規定することができる。基準リブ211は、PCB118を支持するように構成されてよい。基準リブ211は、キャップ110の頂内面220から所定の距離にPCB 118を位置させるように構成されてよい。基準リブ211は、任意の形状でよく、PCB118に取り付けられた電気部品のクリアランスを可能にするように構成されてよい。キャップ110は、複数の凹部213を規定してよい。凹部213は、キャップ110の頂内面220のキャビティでよい。凹部213は、PCB118に取り付けられた1つまたは複数の電気部品のクリアランスを可能にするように構成されてもよい。例えば、凹部213は、PCB118に取り付けられた1つまたは複数の電気部品の部分をそれぞれ受け入れてよい。
【0046】
PCB118は、プロセッサおよびトランスミッタをさらに含んでよい。PCB118は、(例えば、吸入器の平衡化に続いて)吸入器の製造の終盤頃に設置されてよい。PCB118を吸入器100の製造の終盤頃に設置することは、吸入器100の平衡化がPCB 118上の敏感な電子機器を損傷し得るので、有利であろう。平衡化は、吸入器100に薬剤を充填し、吸入器100を所定の温度および湿度で、吸入器100の最終包装前に、期間(例えば、4週間)保管することを含んでよい。
【0047】
電池ホルダ240は、貫通孔型の電池ホルダでよい。例えば、バッテリホルダ240は、ベース242および2つのレッグ244を規定してよい。レッグ244の長さは、バッテリホルダ240がバッテリ230を受け入れることができるように構成されてよい。ベース242は、湾曲縁246を含んでよい。湾曲縁246は、バッテリ230へのアクセスを可能にするように構成されてよい。バッテリホルダ240は、レッグ244から延在するタブ248(複数)を有してよい。タブ248は、ベース242に対して実質的に垂直にレッグ244から延在してよい。タブ248は、バッテリホルダ240をPCB118に取り付けるように構成されてよい。例えば、タブ248は、PCB118によって規定された開口228を通って延在してよい。タブ248は、当該タブが偏向して開口228に係合することでバッテリホルダ240がPCB118に取外可能に取り付けられるように、柔軟でよい。
【0048】
バッテリホルダ240は、バッテリ230がPCB118との接触を維持するように構成されてよい。バッテリホルダ240は、PCB118に固定されてよい。バッテリホルダ240は、電気接続がPCB118とバッテリ230(例えば、コインセルなど)との間に形成され得るように構成されてよい。PCB118の1つまたは複数の構成要素(部品)は、マウスピースカバー130の位置に基づいて選択的に作動されてよい。例えば、スイッチ222の作動(例えば、または光センサ、加速度計またはホール効果センサなどの他の何らかのスイッチング手段の作動)は、プロセッサおよび/またはトランスミッタをオフ状態(または電力節約スリープモード)からオン状態(またはアクティブモード)に立ち上げてよい。逆に、スイッチ222の非作動は、プロセッサおよび/またはトランスミッタをオン状態(またはアクティブモード)からオフ状態または低電力モードに移行させてよい。
【0049】
上述のように、PCB118は、センサ(図示せず)を含んでよく、当該センサは、患者の吸入について情報をプロセッサに提供してよい。センサは、MEMSまたはNEMS圧力センサ(例えば、気圧センサ、差圧センサなど)などの圧力センサでよい。センサは、例えば圧力変化および/または圧力差を用いて、情報を提供してよい。センサは、プロセッサに、瞬間的な圧力値、および/または、時間にわたり集計された圧力値を提供してよい。プロセッサは、当該情報を用いて、患者の吸入と関連する空気流路189を通る空気流量を割り出してよい。プロセッサはまた、空気流の方向を割り出すために当該情報を用いてよい。すなわち、空気流路189を通じた空気圧の負の変化は患者がマウスピース120から吸入したことを示し得る一方、空気流路189を通じた空気圧の正の変化は患者がマウスピース120内へ呼息したことを示し得る。
【0050】
電子モジュール105は、Bluetoothチップセット(例えば、Bluetooth Low Energyチップセット)などの無線通信回路をさらに含んでよい。したがって、電子モジュール105は、外部デバイス(例えば、スマートフォン)に圧力測定値を提供してよく、当該外部デバイスは、圧力測定データに対して追加の計算を実行し、ユーザにフィードバックおよび/または同様のものを提供してよい。電子モジュール105は、制御回路を含んでよく、当該制御回路は、例えば通信回路の一部であってよい。
【0051】
スイッチ222および/またはセンサから受信した情報または信号に基づいて、電子モジュール105は、マウスピースカバー130が開かれたかまたは閉じられたかを、および、受信した圧力測定値が閾値を超えているかまたは特定の圧力範囲内にあるかを判定してよく、これは、ユーザによって吸入された薬剤が所定のレベルまたは処方されたレベルに達したかどうかを示し得る。圧力測定閾値および/または範囲は、電子モジュール105のメモリに格納されてよい。所定の閾値または範囲が満たされたとき、電子モジュール105は、吸入器100の状態を割り出してよく、そして、吸入器100の状態を示す信号を生成してよい。
【0052】
電子モジュール105は、センサによって収集されたデータ(例えば、圧力測定値)および/またはプロセッサによって生成されたデータ(例えば、空気流量)を格納するためのメモリ(図示せず)を含んでよい。格納されたデータは、プロセッサによってアクセスされ、無線通信回路を介して、スマートフォンなどの外部デバイスに無線で通信されてよい。メモリは、取外不能なメモリおよび/または取外可能なメモリでよい。取外不能なメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードディスク、または任意の他のタイプのメモリ記憶デバイスを含んでよい。取外可能なメモリは、加入者識別モジュール(SIM)カード、メモリスティック、セキュアデジタル(SD)メモリカードなどを含んでよい。電子モジュール105は、サーバまたはスマートフォン上など、吸入器100内に物理的に位置していないメモリから情報にアクセスし、その中にデータを格納してよい。
【0053】
電子モジュール105のプロセッサは、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または任意の適切な処理デバイス、コントローラ、または制御回路を備えてよい。プロセッサは、内部メモリを備えてよい。
【0054】
電子モジュール105のプロセッサは、バッテリ230から電力を受け取ってよく、電子モジュール105内の他の構成要素に電力を分配および/または制御するように構成されてよい。バッテリ230は、電子モジュール105に電力を供給するための任意の適切なデバイスであってもよい。バッテリ230は、電子モジュール105のセンサ、メモリ、および/またはトランシーバのうちの1つまたは複数に直接接続されてよい。
【0055】
図3は、吸入器100のための例示のスライダ116を示す。本明細書に記載されるように、マウスピースカバー130が開かれおよび/または閉じられる際に、スライダ116が電子モジュール105内のスイッチ222と係合するように、スライダ116は、吸入器のマウスピースカバー130に機械的に連結されてよい。スライダ116は、末端302(例えば、ベース)を含んでよい。スライダ116は、アーム304を含んでよい。アーム304は、末端302から延在してよい。アーム304は、クリップ306を規定してよい。クリップ306は、アーム304の拡大部分でよい。クリップ306は、
図2Aおよび
図2Bに示されるストッパ217と係合するように構成されてよい。アーム304は、スライダ116とのその接続において柔軟であってよい。例えば、アーム304は、適用された力に応答して、スライダ116に向かっておよび/またはスライダ116から離れるように撓むように構成されてよい。クリップ306は、スライダ116が
図2Aおよび2
図Bに示されるスライダガイド216内に押し込まれたとき、(例えば、クリップ306がストッパ217に係合するまで)アーム304がスライダ116から離れるように撓むように、傾斜面を有してよい。2Aおよび2B。
【0056】
スライダ116は、スプリングシート312を規定してよい。スプリングシート312は、スライダ116の上側水平面でよい。スプリング十字形部314が、スプリングシート312から延在してよい。スプリング十字形部314は、スライダスプリング260(
図2Bに示されている)内に延在しかつスライダスプリング260を係止するように構成されてよい。スライダ116は、1つまたは複数のリブ316を規定してよい。リブ316は、スプリング十字形部314を越えて延在する1つまたは複数のフィンガー308、310を規定してよい。フィンガー308は、吸入器100のスイッチ222と係合するように構成されてよい。例えば、フィンガー308は、水平延在部311を含んでよい。水平延在部311は、スプリング十字形部314と反対の方向に延在してよい。1つまたは複数のフィンガー310は、スライダ116の上下移動を制限するように構成されてよい。例えば、フィンガー310は、スライダスプリング260が圧縮されるとき、スライダガイド216(
図2Aおよび
図2Bに示される)内の面に当接してよい。
【0057】
図4A-
図4Bは、例示のスライダ116の投影図である。リブ316は、スライダ116の長さに沿って延在する長方形の突起でよい。リブ316は、スライダ116がスライダガイド216内で整合されたままであるようにスライダガイド216の内面に係合(例えば、当接)するように構成されてよい。スライダ116は、中間面303を規定してよい。リブ316は、中間面303から延在してよい。リブ316の各々は、フィンガー308、310のうちの1つを含んでよい。例えば、リブ316の1つは、フィンガー308を規定してよい。スライダ116の末端302は、フィンガー308からオフセットされてよい。フィンガー308は、中心線309を規定してよい。スライダ116の末端302は、中心線309から距離D1オフセットされてよい。スライダ116の末端302は、中間面303から延在してよい。スライダ116の末端302は、底面301を規定してよい。底面301は、吸入器100のヨーク170に当接するように構成されてよい。底面301は、中間面303から距離D2離れてよい。例えば、距離D2は、約2.0mm(例えば、約+/-0.1mmの製造公差で2.0mm)でよい。
【0058】
スライダ116は、スプリングシート312およびスプリング十字形部314を規定してよい。スプリング十字形部314は、スプリングシート312から距離D3延在してよい。例えば、距離D3は、約1.5mm(例えば、約+/-0.1mmの製造公差で1.5mm)でよい。
【0059】
スライダ116のアーム304は、クリップ306を含んでよい。クリップ306は、停止機構として構成されるアーム304の拡大部分でよい。例えば、クリップ306は、ストッパ面305を規定してよい。ストッパ面305は、
図2Aおよび
図2Bに示されるキャップ110のスライダガイド216のストッパ217などのストッパに当接するように構成されてよい。フィンガー308は、水平延在部311を含んでよく、当該水平延在部は、リブ316の対応するリブから直角に延在してよい。例えば、水平延在部311は、複数のリブ316のうち対応するリブから距離D4延在してよい。距離D4は、水平延在部311がスライダ116の移動を妨げることなく(例えば、
図5A-
図5Dに示されるように)PCB 118のスイッチ222と係合するように決められてよい。例えば、距離D4は、約2.30mm(例えば、約+/-0.07mmの製造公差で2.30mm)でよい。フィンガー308は、頂面307を規定してよい。例えば、頂面307は、水平延在部311によって規定されてよい。ストッパ面305は、頂面307から距離D5離れてよい。距離D5は、スライダガイド216内のスライダ116の上下移動を制限するように決められてよい。例えば、距離D5は、スライダ116が電子モジュール105のPCB118上のスイッチ222を作動させた後、スライダ116の上下移動を制限するように決められてよい。例えば、距離D5は、約7.22mm(例えば、約+/-0.09mmの製造公差で7.22mm)でよい。頂面307は、スプリングシート312から距離D6離れてよい。例えば、距離D6は、約3.52mm(例えば、約+/-0.1mmの製造公差で3.52mm)でよい。
【0060】
スライダ116は、1つまたは複数の第2フィンガー310を規定してよい。例えば、リブ316のうちの1つまたは複数が、第2フィンガー310を規定してよい。第2フィンガー310は、スプリングシート312から距離D7延在してよい。例えば、距離D7は、約3.12mm(例えば、約+/-0.1mmの製造公差で3.12mm)でよい。
【0061】
図5A-
図5Dは、マウスピースカバー130が閉位置から開位置(例えば、部分的に開いた位置)に動作(操作)される際の例示の吸入器100のスライダ116の動作を示す。具体的には、マウスピースカバー130の閉位置から開位置への運動は、スライダ116を、軸方向に、マウスピース120に向かって下方向に移動させてよい。スライダ116が下方向に動く際、スライダ116の一部がスイッチ222と物理的に係合し、それによってスイッチ222を作動させてよい(アクティブにしてよい)。逆に、マウスピースカバー130の開位置から閉位置への運動は、スライダ116を、キャップ110に向かって上方向に移動させてよい。スライダ116が上方向に動く際、スライダ116の一部がスイッチ222と物理的に係合解除し、それによってスイッチ222を非作動にしてよい(非アクティブにしてよい)。
【0062】
より具体的には、ヨーク170は、マウスピースカバー130が開かれおよび閉じられるとき、吸入器100の上側ハウジング140内で上方および下方に動くように構成されてよい。スライダ116は、ヨーク170を介してマウスピースカバー130に動作可能に連結されてよい。ヨーク170の上下運動によって、スライダ116が、スイッチ222を作動および/または非作動にそれぞれするようにしてよい。簡略化のために、マウスピースカバー130は、4つの位置、すなわち、
図5Aの閉位置、
図5Bの第1位置、
図5Cの第2位置、および、
図5Dの第3の位置で示されている。しかしながら、マウスピースカバー130を開くとき、マウスピースカバー130は、閉位置から全開位置に移行される際に任意の数の別個の位置の間で移行してもよく、そして、その逆に移行される際もまた同様であることに留意されたい。
【0063】
図5Aのとおり、スライダ116は、マウスピースカバー130が閉位置にあるとき、中間位置にあってよい。スライダ116が中間位置にあるとき、スライダ116の水平延在部311は、キャップ110の頂内面220とスイッチ222との間に位置されてよい。スライダスプリング260は、スライダ116が中間位置にあるときに部分的に圧縮されてよい。スライダ116の末端302は、ヨーク170の頂面172と接触していてよい。
【0064】
図5Bのとおり、マウスピースカバー130は、第1位置へ開かれてよい。第1位置は、マウスピース120の一部が露出されるように部分的に開いた位置でよい。スライダ116は、マウスピースカバー130が第1位置にあるときにスライダ116の水平延在部311がキャップ110の頂内面220により近くなるように、上側位置にあってよい。例えば、水平延在部311は、頂内面220と接触してよい。スライダスプリング260は、スライダ116の中間位置に関連する部分的に圧縮された位置を越えてさらに圧縮されてよい。スライダ116が上側位置にあるとき、スライダ116の末端302は、ヨーク170の頂面172と接触したままでよい。
【0065】
図5Cのとおり、マウスピースカバー130は、第2位置へ開かれてよい。第2位置は、マウスピース120が第1位置よりも露出されるように部分的に開いた位置でよい。例えば、マウスピースカバー130は、第2位置では第1位置よりも開いている。スライダ116は、マウスピースカバー130が第2位置にあるときにスライダ116の水平延在部311がスイッチ222と接触している接触位置にあってよい。スイッチ222は、スライダ116が接触位置にあるときに作動されてよい。スライダ116が接触位置にあるとき、スライダ116の末端302は、ヨーク170の頂面172と接触したままでよい。
【0066】
図5Dに示されるように、マウスピースカバー130は、第3位置へ開かれてもよい。第3の位置は、マウスピース120が第2位置よりも露出されるように部分的に開いた位置であってよい。例えば、マウスピースカバー130は、第3位置では第2位置よりも開いている。スライダ116の水平延在部311は、マウスピースカバー130が第3位置にあるとき、スイッチ222と接触したままでよい。スライダ116の水平延在部311は、マウスピースカバー130が第3位置にあるとき、スイッチ222を最大スイッチ移動角度まで作動させてよい。スライダ116が作動位置にあるとき、スライダ116の末端302は、ヨーク170の頂面172と接触したままでよい。
【0067】
図6は、(例えば、実施例の吸入器100のような)吸入器600の例示のマウスピース620を示す。例示のマウスピース620は、複数(例えば、4つ)のバイパスポート623、624、625、626を有する代替のマウスピースでよい。バイパスポート623、624、625、626は、空気が空気流路(例えば、
図1Dに示される空気流路189など)から独立して流れることを可能にしてよく、それにより、患者がマウスピース620を通じて吸気または吸入するとき、患者によって吸入された空気の一部は空気流路からであり、患者によって吸入された空気の別の部分は空気流路からではない。例えば、バイパスポート623、624、625、626は、マウスピース620の前面621からマウスピース620の後面(図示せず)へ、空気流路の外部でマウスピース120を通って延在してよい。バイパスポート623、624、625、626は、空気流路を通る流量を減少させて、吸入器100の流量依存性を減少させ、かつ/または、低流量で空気流路189を通じて適切な1用量の薬剤を送達してよい。
【0068】
マウスピース620は、流路開口622および複数のバイパスポート623、624、625、626を規定する前面621を有してよい。流路開口622は、吸入器600の空気流路の入口および/または出口コンジットでよい。例えば、空気流路は、吸入器600からドライパウダー薬剤を取り込むための、呼吸で作動される空気流路でよく、この空気流路は、通気口610で始まり流路開口622で終わる。バイパスポート623、624、625、626は、呼吸で誘発される低圧が前面621に適用されたときに、マウスピース620の外部領域から前面621への空気流路とは独立して空気が流れることができるように構成されてよい。バイパスポート623、624、625、626は、空気流路および流路開口622を通る空気の線形流量を減少させてよい。流路開口622を通る空気の減少された線形流量は、例えば、呼吸で誘発される低圧の変化の結果として、空気流路を通って流れる空気の速度の変動を減少させてよい。すなわち、バイパスポート623、624、625、626は、送達される微粒子用量(例えば活性物質の質量)の流量依存性を5μm未満に低減してよい。送達される微粒子用量は、Anderson Cascade Impactorを用いて、European Pharmacopoeia 6.0のs.2.9.18に従って測定することができる。
【0069】
バイパスポート623、624、625、626は、二次渦、空気流路の旋回チャンバ内の失速空気流、および/または、旋回チャンバの壁の高せん断領域の形成を低減してよく、これらはすべて吸入器600の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0070】
バイパスポート623、624、625、626の断面積の合計の、流路開口622の断面積に対する比は、圧力呼吸により誘発される低圧がマウスピース620の前面621に適用されたとき、結果として生じる空気流の少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは約5%から約50%、より好ましくは約15%から約40%、さらにより好ましくは約20%から約30%がバイパスポート623、624、625、626を通って導かれるように決められてよい。
【0071】
例えば、バイパスポート623、624、625、626の断面積の合計は、約0.75mm2から約20mm2、より好ましくは約5mm2から約16mm2、さらにより好ましくは約9mm2から約11mm2でよい。
【0072】
流路開口622は、約25mm2から約50mm2、好ましくは約30mm2から約45mm2、より好ましくは約35mm2から約45mm2の断面積を有してよい。
【0073】
電子モジュールおよびバイパスポート623、624、625、626を有する吸入器600の空気流路189に関連する適切な空気流抵抗は、0.015kPa0.5/LPMから0.031kPa0.5/LPMの範囲内でよい。より好ましくは、電子モジュールおよびバイパスポート623、624、625、626を有する吸入器600の空気流路189に関連する空気流抵抗は、0.018kPa0.5/LPMから0.028kPa0.5/LPMの範囲内でよい。さらにより好ましくは、電子モジュールおよびバイパスポート623、624、625、626を有する吸入器600の空気流路189に関連する空気流抵抗は、0.021kPa0.5/LPMから0.025kPa0.5/LPMの範囲内でよい。
【0074】
電子モジュールおよびバイパスポート623、624、625、626を有する吸入器600の空気流路189に関連する適切な空気流量は、4.0kPaの圧力降下が吸入器600の空気流路189に渡り適用される場合、70LPMから105LPMの範囲内でよい。より好ましくは、電子モジュールおよびバイパスポート623、624、625、626を有する吸入器600の空気流路189に関連する空気流量は、4.0kPaの圧力降下が空気流路189に渡り適用される場合、75LPMから100LPMの範囲内でよい。さらにより好ましくは、電子モジュールおよびバイパスポート623、624、625、626を有する吸入器600の空気流路189に関連する空気流量は、4.0kPaの圧力降下が空気流路189に渡り適用される場合、80LPMから95LPMの範囲内でよい。
【外国語明細書】