(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058671
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】新規なペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20220405BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220405BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20220405BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20220405BHJP
A61K 6/69 20200101ALI20220405BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20220405BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C07K7/06
A23L33/17
A61K6/69
A61K38/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006808
(22)【出願日】2022-01-20
(62)【分割の表示】P 2020533855の分割
【原出願日】2018-12-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0182322
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0078548
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.Witepsol
(71)【出願人】
【識別番号】518165752
【氏名又は名称】ハイセンスバイオ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュ ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジ ヒョン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硬組織および/または歯髄組織の再生促進、並びに象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用ペプチド、該ペプチドを含む薬学的組成物、医薬部外品組成物、および健康機能性食品組成物を提供する。
【解決手段】一実施例において、一般式K-Y-R1-R2-R3-R4-R5(R1およびR2は、それぞれアルギニン、リジン、グルタミン、またはアスパラギンであり、R3、R4およびR5は、それぞれアルギニンまたはリジンである)のアミノ酸配列を含むペプチドであって、N末端またはC末端のアセチル化、アミド化またはメチル化、D-アミノ酸の導入、CH2-NH、CH2-S、CH2-S=OまたはCH2-CH2のペプチド結合の修飾、バックボーン修飾、および、側鎖修飾からなる群から選択される修飾を受けたペプチド、該ペプチドを含む薬学的組成物、医薬部外品組成物、および健康機能性食品組成物を提供する。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~128のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドであって、
前記ペプチドは、N末端またはC末端がアセチル化されたもの、アミド化またはメチル化されたもの、D-アミノ酸が導入されたもの、CH2-NH、CH2-S、CH2-S=OまたはCH2-CH2のペプチド結合修飾されたもの、バックボーン修飾されたもの、および、側鎖修飾されたものからなる群から選択される修飾を受けたペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項4】
配列番号1~128のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドを含む、象牙質-歯髄疾患及び/又は歯周疾患の予防又は治療用の医薬組成物。
【請求項5】
配列番号1~128のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドを含む、象牙質-歯髄疾患及び/又は歯周疾患の予防又は改善用の医薬部外品組成物。
【請求項6】
配列番号1~128のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドを含む、象牙質-歯髄疾患及び/又は歯周疾患の予防又は改善用の健康機能性食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なペプチドに関するもので、より具体的に、硬組織および/または歯髄組織の再生促進用および象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用ペプチド、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、並びに前記ペプチドを含む象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または治療用薬学的組成物、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または改善用医薬部外品組成物および予防または改善用健康機能性食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯髄は、歯の内部にある歯髄腔を占めている柔らかい結合組織であって、神経と血管が豊富に分布しており、象牙質の表面まで至る部分を指す。このような歯髄に生じる病変を歯髄疾患という。
【0003】
歯髄疾患の原因は非常に多様であるが、ほとんどの場合は、虫歯による細菌感染によって、または歯の穿孔、破折、亀裂、歯周ポケットを介して歯髄内部への感染によって発生する。また、外傷、摩耗、歯の亀裂、治療の際に歯科用器具からの熱や摩擦もまた、歯髄疾患を誘発し得る。細菌感染による歯髄炎は、歯根端疾患および歯周疾患に拡大され得る。歯髄疾患が発生すると、歯髄充血、歯髄炎、歯髄壊死へと順に進行する。歯髄壊死の場合、歯髄が死んで歯髄への血液供給ができなくなり、歯髄組織全体が失われ、終いには歯根端疾患または歯全体の異常をもたらし得る。
【0004】
歯髄、歯根端疾患の治療には、歯髄覆罩材および歯根管充填材が用いられるが、一般的に水酸化カルシウム、MTA(Mineral Trioxide Aggregate、ミネラル三酸化物集合体)、ガッタパーチャ(Gutta-percha)などが用いられてきた。MTAの場合、密封力と生体適合性を有しているため治療に効果を示すが、相対的に歯科用治療剤として高コストの問題と、変色による審美的な問題が発生する。ガッタパーチャは、比較的低コストであり流動性は良いが、歯髄の生存性が失われるため、生理学的に不適な方法である。これまで、象牙質-歯髄疾患を治療するための保存治療法は、治療済の歯が脆くなるか、または砕け易くなり、再感染の恐れを有することとなる。
【0005】
歯周組織(periodontium)は、上皮組織、軟組織性結合組織、および石灰化された結合組織からなる複合器官である。歯周組織の構造として、歯肉(gingiva)、歯周靭帯(PDL:periodontal ligament)、白亜質(cementum)、および歯槽骨(alveolar bone)がある。歯肉線維芽細胞(gingival fibroblast)と歯周靭帯線維芽細胞(periodontal ligament fibroblast)は、歯肉軟組織性結合組織の主要細胞構成成分であり、細胞外基質(extracellular matrix)を形成し、これを維持する役割をする。このうち、歯肉線維芽細胞は、主に歯肉結合組織を維持するために関与することに対し、歯周靭帯線維芽細胞は、その特有の機能により、歯周靭帯を形成するだけでなく、生体内における隣接歯槽骨および白亜質の修復と再生に関与するものと知られている。歯周疾患が発生すると、臨床的に歯肉出血と腫脹、歯周ポケットの形成および歯槽骨の破壊などにより歯の喪失をもたらすことになる。
【0006】
歯周疾患を治療する最終的な結果は、損傷した結合組織、白亜質および歯槽骨を復元することなので、そのためには、歯槽骨を支える歯周靭帯の再生だけでなく、歯周靭帯が付着できる歯槽骨と白亜質の再生が必要となる。
【0007】
これにより、前記象牙質-歯髄疾患または歯周疾患を効果的に治療できる治療剤を開発するための研究が盛んに行われている。例えば、特許文献1には、エナメル芽細胞、根尖(apical bud)細胞、またはこれらの培養液を有効成分として含む硬組織の形成、および象牙質または歯髄組織再生用組成物が開示されており、特許文献2には、歯小嚢由来の新規な歯幹細胞およびその培養方法が開示されている。また、特許文献3には、エナメル芽細胞培養液を含む歯周疾患の治療用組成物が開示されている。
【0008】
このような背景下において、本発明者らは、より効果的に象牙質-歯髄疾患および/または歯槽骨と白亜質の損傷を誘発する歯周疾患を治療できる製剤を開発するために、鋭意研究努力した結果、象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進用の細胞治療、並びに象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療効果を示すペプチドを開発して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第2012-0089547号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2009-0033643号公報
【特許文献3】韓国公開特許第2016-0105627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一つの目的は、硬組織および/または歯髄組織の再生促進、並びに象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用ペプチドを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することである。
【0012】
本発明のまた他の目的は、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供することである。
【0013】
本発明のまた他の目的は、前記ペプチドを含む、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0014】
本発明のまた他の目的は、前記ペプチドを含む、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または改善用医薬部外品組成物を提供することである。
【0015】
本発明のまた他の目的は、前記ペプチドを含む、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または改善用健康機能性食品組成物を提供することである。
【0016】
本発明のまた他の目的は、前記ペプチドを含む組成物を、ヒトを除いた個体に投与する段階を含む、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または治療方法を提供することである。
【0017】
本発明のまた他の目的は、前記ペプチドを含む組成物を、ヒトを除いた個体に投与する段階を含む、象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生を促進する方法を提供することである。
【0018】
本発明のまた他の目的は、前記ペプチドの硬組織および/または歯髄組織の再生促進の用途を提供することである。
【0019】
本発明のまた他の目的は、前記ペプチドの象牙質-歯髄疾患または歯周疾患の予防または治療用途を提供することある。
【0020】
本発明の目的は、以上で言及したものに制限されず、言及されていないまた他の目的は、以下の記載から本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に明確に理解され得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前述の目的を達成するための一実施様態として、本発明は下記一般式(1)のアミノ酸配列を含む、ペプチドを提供する。
【0022】
K-Y-R1-R2-R3-R4-R5 ・・・ 一般式(1)
前記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれアルギニン(R)、リジン(K)、グルタミン(Q)、またはアスパラギン(N)であり、R3、R4、およびR5は、それぞれアルギニン(R)またはリジン(K)である。
【0023】
一実施例によると、前記ペプチドは、配列番号1~128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~128のいずれか1つのアミノ酸配列から構成され得る。
【0024】
一実施例によると、前記ペプチドは、配列番号1~24のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~24のいずれか1つのアミノ酸配列から構成され得る。
【0025】
一実施例によると、前記一般式(1)において、R1はグルタミン(Q)であり、R2はアルギニン(R)であり得る。
【0026】
一実施例によると、前記一般式(1)において、R1はアルギニン(R)またはリジン(K)であり、R2はグルタミン(Q)であり得る。
【0027】
一実施例によると、前記ペプチドは、配列番号25~48のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、または配列番号25~48のいずれか1つのアミノ酸配列から構成され得る。
【0028】
一実施例によると、前記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれグルタミン(Q)であり得る。
【0029】
一実施例によると、前記一般式(1)において、R1はアルギニン(R)またはリジン(K)であり、R2はアルギニン(R)であり得る。
【0030】
一実施例によると、前記ペプチドは、配列番号49~128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、または配列番号49~128のいずれか1つのアミノ酸配列から構成され得る。
【0031】
一実施例によると、前記一般式(1)において、R1はグルタミン(Q)、アルギニン(R)またはリジン(K)であり、R2はリジン(K)であり得る。
【0032】
一実施例によると、前記一般式(1)において、R1はアルギニン(R)、リジン(K)、グルタミン(Q)またはアスパラギン(N)であり、R2はアルギニン(R)、リジン(K)、グルタミン(Q)またはアスパラギン(N)であり、R1およびR2の少なくとも一つはアスパラギン(N)であり得る。
【0033】
一実施例によると、前記ペプチドは、N末端またはC末端のアセチル化、アミド化またはメチル化したもの、D-アミノ酸の導入されたもの、CH2-NH、CH2-S、CH2-S=OまたはCH2-CH2のようなペプチド結合修飾されたもの、バックボーン修飾されたもの、または側鎖修飾されたものであり得る。
【0034】
一実施例によると、前記ペプチドは、硬組織および/または歯髄組織の再生促進、並びに象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用であり得る。
【0035】
一実施例によると、前記硬組織は、象牙質、骨および白亜質を含むものであり得る。
【0036】
前記象牙質-歯髄疾患は、象牙質知覚過敏症、歯髄充血、歯髄炎、歯髄変性、および/または歯髄の壊死または壊疽性歯髄を含み得る。
【0037】
前記歯周疾患は、歯肉炎、歯周炎、歯周ポケットおよび/または歯周膿瘍を含み得る。
【0038】
他の様態として、本発明は、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0039】
また他の様態として、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0040】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドを含む組成物を提供する。
【0041】
一実施例において、前記組成物は、象牙質-歯髄疾患の予防または治療用薬学的組成物であり得る。
【0042】
一実施例において、前記組成物は、歯周疾患の予防または治療用薬学的組成物であり得る。
【0043】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドを含む象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0044】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドを含む象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または改善用健康機能性食品組成物を提供する。
【0045】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドを含む組成物を象牙質-歯髄疾患を有する個体に投与する段階を含む、象牙質-歯髄疾患の予防または治療方法を提供する。
【0046】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドを含む組成物を、歯周疾患を持つ個体に投与する段階を含む歯周疾患の予防または治療方法を提供する。
【0047】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドを含む組成物を個体に投与する段階を含む、象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生を促進する方法を提供する。
【0048】
前記個体は、ヒト、またはヒトを除く個体であり得る。
【0049】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドの象牙質-歯髄疾患の予防または治療用途を提供する。
【0050】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドの歯周疾患の予防または治療用途を提供する。
【0051】
また他の様態として、本発明は、象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進用途を提供する。
【発明の効果】
【0052】
本発明の硬組織および/または歯髄組織の再生促進、並びに象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用ペプチドは、硬組織および/または歯髄組織の優れた再生促進効果を示すので、様々な象牙質-歯髄疾患の予防または治療のための製剤の開発に広く活用されるか、または骨および/または白亜質の損傷を誘発する歯周疾患の予防または治療のための製剤の開発に広く活用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1a】
図1aは、本発明の新規ペプチドが処理されたヒト歯髄細胞(hDPCs)において、象牙芽細胞分化マーカーであるDspp(Dentin sialophosphoprotein)遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図1b】
図1bは、本発明の新規ペプチドが処理されたヒト歯髄細胞(hDPCs)において、象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子の発現レベルを比較した結果を示す別のグラフである。
【
図1c】
図1cは、本発明のペプチドが処理されたヒト歯髄細胞(hDPCs)において、象牙芽細胞分化マーカーであるNestin遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図2a】
図2aは、本発明の新規ペプチドが処理されたヒト由来間葉系幹細胞(hBMSCs)において、骨および白亜質の分化マーカーであるBSP遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図2b】
図2bは、本発明の新規ペプチドが処理されたヒト由来間葉系幹細胞(hBMSCs)において、骨および白亜質の分化マーカーであるBSP遺伝子の発現レベルを比較した結果を示す他のグラフである。
【
図3】
図3は、in vivoで6週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて新たに形成した硬組織の量を測定した結果を示す。
【
図4】
図4は、in vivoで6週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織を組織形態学的に分析したものを示す顕微鏡写真であって、A~DはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを示し、E~HはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに6週間移植した結果を示す(サイズバー:A、E500μm、B、F200μm、C、G100μm、D、H50μm)。
【
図5】
図5は、in vivoで6週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織に含まれているコラーゲンの形成レベルを示す顕微鏡写真であって、A~DはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、E~HはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに6週間移植した結果を示す(サイズバー:A、E500μm、B、F200μm、C、G100μm、D、H50μm)。
【
図6】
図6は、in vivoで6週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織を、免疫染色法により象牙芽細胞分化マーカーであるDSPの発現レベルを分析したものを示す免疫染色の写真であって、AはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、BはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに6週間移植した結果を示す。AおよびBは、形成された硬組織を抗DSP抗体により免疫染色した。Cは、2次抗体のみを処理した免疫組織化学的分析の陰性対照群である。AおよびBの矢印は、新たに形成された石灰化した組織におけるDSPの発現を示す。サイズバーは50μmである。
【
図7】
図7は、in vivoで12週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて新たに形成した硬組織の量を測定した結果を示す。
【
図8】
図8は、in vivoで12週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織を組織形態学的に分析したものを示す顕微鏡写真であって、A~DはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、E~HはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに12週間移植した結果を示す(サイズバー:A、E500μm、B、F200μm、C、G100μm、D、H50μm)。
【
図9】
図9は、in vivoで12週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織に含まれているコラーゲンの形成レベルを示す顕微鏡写真であって、A~DはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、E~HはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに12週間移植した結果を示す(サイズバー:A、E500μm、B、F200μm、C、G100μm、D、H50μm)。
【
図10】
図10は、in vivoで12週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織を、免疫染色法により象牙芽細胞分化マーカーであるDSPの発現レベルを分析したものを示す免疫染色の写真であって、AはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、BはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに12週間移植した結果を示す。AおよびBは、形成された硬組織を抗DSP抗体により免疫染色した。Cは、2次抗体のみを処理した免疫組織化学的分析の陰性対照群である。AおよびBの矢印は、新たに形成された石灰化した組織におけるDSPの発現を示す。サイズバーは50μmである。
【
図11】
図11は、in vivoで12週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて分析したものを示すSEM写真であり、AはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、BおよびCは、hDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに12週間移植した結果を示す。サイズバーは10μmである。
【
図12】
図12は、損傷した象牙質の象牙細管を生理的象牙質で再生して閉鎖することを走査電子顕微鏡で観察した結果である。具体的に、
図12のB、C、Dはそれぞれ、
図12のAを拡大した画像である。また、
図12のF、G、Hは、それぞれ
図12のEを拡大した画像である(サイズバーA:1mm、B:50μm、C:20μm、D:10μm、E:1mm、F:50μm、G:20μm、H:10μm)。
【
図13】
図13は、損傷した象牙質の表面に露出した象牙細管が生理的再石灰化によって閉鎖されることを走査電子顕微鏡で観察した結果である。具体的に、
図13のB、C、Dは、それぞれ
図13のAを拡大した画像である。また、
図13のF、G、Hは、それぞれ
図13のEを拡大した画像である(サイズバーA:1mm、B:50μm、C:20μm、D:10μm、E:1mm、F:50μm、G:20μm、H:10μm)。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明者らは、より効果的に象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患を治療できる製剤を開発するために、様々な研究を行った結果、7個のアミノ酸を含むか、または7個のアミノ酸から構成された新規なペプチドを開発した。
【0055】
前記開発された新規なペプチドは、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療効果を示せるペプチドのアミノ酸配列の一部を置換して作製されたものであり、象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子およびNestin遺伝子の発現レベルを増加させることができ、象牙質の再生を促進する効果を示すとともに、骨芽細胞および白亜質芽細胞の分化マーカーであるBSP(Bone sialoprotein)遺伝子の発現レベルを増加させることができ、骨と白亜質の再生を促進する効果を示し得る。
【0056】
また、ヒト歯髄細胞とともに前記ペプチドを含むインプラントを作製し、前記作製されたインプラントを免疫システムが損傷しているマウスの皮下組織に移植して、6週間または12週間経過した後、移植された組織を分析した結果、生体内の象牙質-歯髄組織と最も類似した形態の象牙質-歯髄様組織が形成され、生体内の骨組織と最も類似した形態の骨様組織が形成され、コラーゲンの形成レベルが増加し、象牙芽細胞(odontoblasts)の特異的分化マーカーであるDSP遺伝子の発現レベルが増加することを確認した。
【0057】
さらに、前記移植された組織の形状を走査電子顕微鏡により分析した結果、形成された硬組織に沿って象牙芽細胞(odontoblasts)様細胞が観察され、象牙芽細胞突起もまた、形成された硬組織の方向に拡張されていることを確認した。また、形成された硬組織の表面に立方形の細胞が付着している典型的な骨芽細胞(osteoblast)および/または白亜質芽細胞(cementoblast)の特徴を示すことを確認した。
【0058】
したがって、本発明のペプチドは、硬組織および/または歯髄組織の再生促進、並びに象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患に効果を示すことが分かった。このような効果を示す本発明のペプチドは、これまで全く報告されておらず、本発明者によって最初に開発された。
【0059】
一実施様態として、本発明は、下記一般式(1)のアミノ酸配列を含む、硬組織および/または歯髄組織の再生促進、並びに象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用ペプチドを提供する。
【0060】
K-Y-R1-R2-R3-R4-R5 ・・・ 一般式(1)
前記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれアルギニン(R)、リジン(K)、グルタミン(Q)、またはアスパラギン(N)であり、R3、R4、およびR5は、それぞれアルギニン(R)またはリジン(K)である。また、前記一般式(1)において、Kはリジンを意味し、Yはチロシンを意味する。
【0061】
本発明の用語、「硬組織(hard tissue)」とは、骨、硝子軟骨(hyaline cartilage)、そして、繊維軟骨を含む相対的に硬い骨組織のことを意味する。本発明に係る一実施例において、前記硬組織は、象牙質、骨および白亜質を含むものであり得る。
【0062】
本明細書の用語「象牙質(dentine)」とは、「歯質」とも呼ばれ、歯の大部分を成している、黄色みを帯びた白色の硬い組織を意味する。前記象牙質は、歯冠部ではエナメル質で、歯根部では白亜質で覆われているため、歯の表面には現れないが、加齢によりエナメル質が摩滅すると、歯冠の先端部や咬合面に象牙質が露出され得る。前記象牙質は一種の骨様組織であるが、象牙質を成している細胞の本体は歯髄の中にあり、その突起だけが象牙質の中に延びてくるという点から、一般的な骨組織と区別される。
【0063】
本発明の用語「白亜質(cementum)」とは、哺乳動物の歯根とその他一部を覆っている骨とが少し変形した形態の薄い膜のことを意味する。前記白亜質は50%の無機質および50%の水分-有機質で構成され、黄色みを帯びており、象牙質やエナメル質よりも低い硬度を示す。前記白亜質は、歯を歯槽骨に固定する歯周靭帯繊維質を含むが、細菌が歯肉に感染すると、歯を取り囲んでいる白亜質の変性が起こり、変性された白亜質には、歯と歯槽骨を連結する歯周靭帯繊維質がくっつかなくなり、歯が揺れてくる。このような白亜質の変性を治療するために、変性された白亜質を取り除いて、新たな白亜質の形成を促進する方法が用いられている。
【0064】
本発明で提供するペプチドは、象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子およびNestin遺伝子と、骨芽細胞および白亜質芽細胞分化マーカーであるBSP遺伝子との発現レベルを増加させることができ、ヒト歯髄細胞とともに生体内に移植すると、前記ヒト歯髄細胞が象牙質/歯髄様組織および骨様組織を形成する特徴を示し得る。
【0065】
本発明で提供するペプチドは、象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進、並びに象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療効果を示し得る限り、これを構成するアミノ酸配列と一つ以上のアミノ酸残基が異なる配列とを有する変異体ペプチドも、本発明で提供するペプチドの範疇に含まれる。
【0066】
一般的に、分子の活性を全体的に変更させないタンパク質およびポリペプチドにおけるアミノ酸の交換は、当該分野に公知である。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。また、アミノ酸配列上の変異または修飾によってペプチドの熱、pHなどに対する構造的安定性が増加したペプチド、または象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進能が増加したペプチドを含み得る。
【0067】
アミノ酸変異は、アミノ酸の側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいてなされる。本発明のペプチドを構成する7個のアミノ酸は、いずれも親水性アミノ酸に該当するので、アミノ酸の側鎖置換体の相対的類似性が高い。これにより、配列番号1のペプチドを構成するアミノ酸は、親水性の性質を有する様々なアミノ酸に置換されても、その構造的類似性に起因して、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができる。
【0068】
例えば、本発明で提供する配列番号1のペプチドの3番目に位置するグルタミンは、アスパラギンに置換されたり、塩基性アミノ酸であるアルギニンまたはリジンに置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができ;配列番号1のペプチドの4番目に位置する塩基性アミノ酸であるアルギニンは、塩基性アミノ酸であるリジンに置換されたり、グルタミンまたはアスパラギンに置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができ;配列番号1のペプチドの5番目に位置する塩基性アミノ酸であるアルギニンは、塩基性アミノ酸であるリジンに置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができ;配列番号1のペプチドの6番目または7番目に位置する塩基性アミノ酸であるリジンは、塩基性アミノ酸であるアルギニンに置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができる。
【0069】
このように、本願発明のペプチドを構成する酸性アミノ酸または塩基性アミノ酸はそれぞれ、異なる酸性アミノ酸または塩基性アミノ酸に置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができるので、本発明のペプチドを構成するアミノ酸配列と1つ以上のアミノ酸残基が異なる配列を有するペプチド変異体も、本発明で提供するペプチドの範疇に含まれるのは自明である。
【0070】
また、本発明のペプチドは、そのN末端またはC末端に任意のアミノ酸が付加された形態を有しても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができるので、本発明で提供するペプチドの範疇に含まれる。一例として、前記ペプチドのN末端またはC末端に1~300個のアミノ酸が付加された形態になり得る。また、他の例として、前記ペプチドのN末端またはC末端に1~100個のアミノ酸が付加された形態になり得る。さらに、また別の例として、前記ペプチドのN末端またはC末端に1~24個のアミノ酸が付加された形態になり得る。
【0071】
本発明のペプチドは、生体内のタンパク質切断酵素から保護し、安定性を増加させるために、そのN末端および/またはC末端などが化学的に修飾されたり、有機化合物で保護されたり、またはペプチド末端などにアミノ酸が追加され変形された形態であり得る。特に、化学的に合成したペプチドの場合、N-およびC-末端が電荷を帯びているため、このような電荷を除去するために、N末端をアセチル化(acetylation)、N末端をメチル化(metylation)および/またはC末端をアミド化(amidation)することができ、またはD-アミノ酸の導入、CH2-NH、CH2S、CH2S=O、CH2-CH2のようなペプチド結合修飾、バックボーン修飾、側鎖修飾を含み得るが、これに制限されない。ペプチド模倣体化合物を調製する方法は、技術分野に公知のものとして、例えば、Quantitative Drug Design, C.A. Ramsden Gd., Choplin Pergamon Press(1992)に記載された内容を参照し得る。
【0072】
本発明の用語「バックボーン修飾」とは、ペプチドを構成するアミノ酸の主となる鎖状または環状の骨格のことをバックボーン(主鎖:backbone)と言い、これらのペプチドバックボーンを構成するアミノ酸を、アミノ酸類似体に直接修飾することをバックボーン修飾という。アミノ酸類似体(analogue)とは、アミノ酸バックボーンの窒素またはα炭素の水素原子を置換作用により修飾させたアミノ酸のことを言う。
【0073】
本発明の用語「側鎖修飾」とは、ペプチドを構成するアミノ酸の主となる鎖状または環状の骨格から枝分かれしている原子団をアミノ酸の側鎖(side-chains)と言い、これらの側鎖を化学物質により修飾することを側鎖修飾と言う。ペプチド側鎖修飾の例として、還元アルキル化反応、メチルアセチミデートによるアミド化;無水酢酸によるアルキル化;シアネートによるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ酸のトリニトロベンジル化;無水コハク酸によるアミノ基のアルキル化;またはピリドキサール-5-リン酸との反応後、NaBH4で還元することによるピリドキシル化のような、アミノ基の修飾等を含む。
【0074】
また、本発明のペプチドは単独で使用され得るが、有機溶媒のような薬剤として許可されたキャリア(carrier)と混合して用いられてもよく、安定性および効能の増大のために、グルコース、スクロースまたはデキストランのような炭水化物(carbohydrate)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、またはグルタチオン(glutathione)のような抗酸化剤(antioxidants)、キレート剤(chelating agents)、低分子タンパク質、または他の安定化剤(stabilizers)などを含んで用いることも可能である。
【0075】
本発明の一実施例によると、本発明で提供する一般式(1)に該当する128種のペプチドを合成し、前記合成されたペプチドが象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子の発現レベルに及ぼす影響を検証した。その結果、本発明のペプチドを処理していないヒト歯髄細胞(対照群)から測定された象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子のmRNAレベルに比べて、前記128種のペプチドを処理したヒト歯髄細胞から前記Dspp遺伝子のmRNAレベルが8倍以上の値、または6倍以上の値、または3倍以上の値、または少なくとも約1.5倍以上の値を示すことを確認した(
図1a、
図1bおよび表18~表33)。
【0076】
これまで報告されたものによると、DsppのmRNA発現レベルが増加すると、象牙芽細胞分化および象牙質の再生が促進されると知られているので、前記Dspp遺伝子のmRNAレベルを増加させる効果を示す前記128種のペプチドは、象牙芽細胞分化および象牙質再生を促進する効果を示すことが分かった(Taduru Sreenath et al., THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, Vol.278, No.27, Issue of July 4, pp.24874-24880, 2003; William T. Butler et al, Connective Tissue Research, 44(Suppl.1):171-178, 2003)。
【0077】
また、前記合成されたペプチドが、骨芽細胞/白亜質芽細胞分化マーカーであるBSP遺伝子の発現レベルに及ぼす影響を検証した。その結果、本発明のペプチドを処理していないヒト歯髄細胞(対照群)から測定された骨芽細胞/白亜質芽細胞分化マーカーであるBSP遺伝子のmRNAレベルに比べて、前記128種のペプチドを処理したヒト歯髄細胞で前記BSP遺伝子のmRNAレベルが13倍以上の値、または12倍以上の値、または9倍以上の値、または少なくとも約3倍以上の値を示すことを確認した(
図2aおよび
図2b)。
【0078】
これにより、BSPのmRNA発現レベルが増加すると、骨芽細胞/白亜質芽細胞分化および骨と白亜質の再生が促進されると知られているので、前記BSP遺伝子のmRNAレベルを増加させる効果を示す前記128種のペプチドは、骨芽細胞/白亜質芽細胞分化および骨と白亜質の再生を促進する効果を示すことが分かった。
【0079】
他の一様体として、本発明は、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0080】
前記ポリヌクレオチドは、一つ以上の塩基が、置換、欠失、挿入またはこれらの組み合わせによって修飾され得る。ヌクレオチド配列を化学的に合成して調製する場合、当業界に公知の合成法、例えば、文献(Engels and Uhlmann, Angew Chem IntEd Engl., 37:73-127, 1988)に記述されている方法を用いることができ、亜リン酸トリエステル、ホスホロアミダイトおよびH-ホスホネート法、PCR、並びにその他のオートプライマー法、固体支持体上のオリゴヌクレオチド合成法などを用いて合成し得る。例えば、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号4の塩基配列を含み得る。
【0081】
また他の様態として、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記発現ベクターを含む形質転換体、および前記形質転換体を用いて前記ペプチドを調製する方法を提供する。
【0082】
本明細書の用語「発現ベクター」とは、宿主細胞から目的のペプチドが発現できる組み換えベクターであって、遺伝子挿入物が発現されるよう作動可能に連結された必須の調節要素を含む遺伝子作製物のことを意味する。前記発現ベクターは、開始コドン、終止コドン、プロモーター、オペレーターなどの発現調節要素を含むが、前記開始コドンおよび終止コドンは通常、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の一部とみなされ、遺伝子作製物が投与された時に必ず個体において作用を示す必要があり、必ずコーディング配列とインフレームにある必要がある。ベクターのプロモーターは構成的または誘導性であり得る。
【0083】
本明細書の用語「作動可能に連結(operably linked)」とは、核酸発現調節配列と、目的とするタンパク質またはRNAをコードする核酸配列とが、一般的機能を行えるように機能的に連結(functional linkage)されている状態を意味する。例えば、プロモーターと、タンパク質またはRNAをコードする核酸配列とが作動可能に連結され、コーディング配列の発現に影響を与え得る。発現ベクターとの作動可能な連結は、当該技術分野に公知の遺伝子組み換え技術を用いて作製することができ、部位特異的DNA切断および連結は、当該技術分野で一般的に知られている酵素などを用いて行うことができる。
【0084】
また、前記発現ベクターは、細胞培養物からのペプチドの分離を促進するために、前記ペプチドの放出のためのシグナル配列を含み得る。特異的な開始シグナルは、また挿入された核酸配列の効率的な翻訳にも必要になり得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接する配列を含む。場合によっては、ATG開始コドンを含み得る外因性翻訳調節シグナルが提供されるべきである。これらの外因性翻訳調節シグナルおよび開始コドンは、様々な天然および合成供給源であり得る。発現効率は、適宜な転写または翻訳強化因子の導入によって増加され得る。
【0085】
加えて、前記発現ベクターは、前記ペプチドの検出を容易にするために、任意にエンドペプチダーゼを用いて除去し得るタンパク質タグをさらに含み得る。
【0086】
本明細書の用語「タグ」とは、定量可能な活性または特性を示す分子を意味し、フルオレセインのような化学的蛍光物質(fluoracer)、緑色蛍光タンパク質(GFP)または関連タンパク質などのポリペプチド蛍光物質を含む蛍光分子であってもよく、Mycタグ、Flagタグ、Hisタグ、ロイシンタグ、IgGタグ、ストレプトアビジンタグなどのエピトープタグでもあり得る。特に、エピトープタグを用いる場合、好ましくは6個以上のアミノ酸残基からなり、より好ましくは8個~50個のアミノ酸残基からなるペプチドタグを使用し得る。
【0087】
本発明において、前記発現ベクターは、前術の本発明の象牙質、骨、および白堊質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進用、並びに象牙質‐歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る。また、この際に用いられるベクターは、前記ペプチドを生産できる限り特に制限はされないが、好ましくは、プラスミドDNA、ファージDNAなどとなり得、より好ましくは、商業的に開発されたプラスミド(pUC18、pBAD、pIDTSAMRT-AMPなど)、大腸菌由来のプラスミド(pYG601BR322、pBR325、pUC118、pUC119など)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のプラスミド(pUB110、pTP5など)、酵母由来のプラスミド(YEp13、YEp24、YCp50など)、ファージDNA(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAPなど)、動物ウイルスベクター(レトロウイルス(retrovirus)、アデノウイルス(adenovirus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)など)、昆虫ウイルスベクター((baculovirus)など)となり得る。前記発現ベクターは、宿主細胞の種類に応じてタンパク質の発現量や修飾等が異なって現れるため、目的に最も好適な宿主細胞を選択して用いることが望ましい。
【0088】
本発明で提供する形質転換体は、前記本発明で提供する発現ベクターを宿主に導入して形質転換することにより作製され得、前記発現ベクターに含まれているポリヌクレオチドを発現させ、前記ペプチドを生産することに使用され得る。前記形質転換は、様々な方法によって行うことができ、CaCl2沈殿法、CaCl2沈殿法にDMSO(ジメチルスルホキシド)を還元物質として用いることにより効率が向上したHanahan法、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム沈殿法、原形質融合法、シリコンカーバイド繊維を用いた撹拌法、アグロバクテリアにより媒介された形質転換法、PEGを用いた形質転換法、硫酸デキストラン(dextran sulphate)、リポフェクタミン、および乾燥/抑制により媒介された形質転換法などが使用され得るが、前記ペプチドを生産できる限り、特にこれらに制限されない。また、前記形質転換体の作製に用いられる宿主もまた、大腸菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)などのバクテリア細胞;サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces erevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などの酵母細胞;ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの真菌細胞;ショウジョウバエ(Drosophilla)、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)Sf9細胞などの昆虫細胞;CHO、COS、NSO、293、Bowesメラノーマ細胞などの動物細胞;または植物細胞となり得るが、前記ペプチドが生産できる限り、特にこれらに制限されない。
【0089】
前記形質転換体はまた、本発明の象牙質、骨、および白堊質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進用、並びに象牙質‐歯髄疾患および/または歯周疾患治療用ペプチドを生産する方法に使用され得る。具体的に、本発明の象牙質、骨および白堊質を含む硬組織および/または歯髄の再生促進用、並びに象牙質‐歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用ペプチドを生産する方法は、(a)前記形質転換体を培養して培養物を収得する段階と、(b)前記培養物から本発明のペプチドを回収する段階とを含み得る。
【0090】
本明細書の用語「培養」とは、適宜人工的に調節した環境条件において微生物を生育させる方法を意味する。本発明において、前記形質転換体を培養する方法は、当業界に公知の方法により行うことができる。具体的に、前記培養は、バッチ処理、流加培養または反復流加培養処理(batch, fed batch or repeated fed batch process)により行うことができるが、本発明の象牙質、骨および白堊質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進用、並びに象牙質‐歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用ペプチドを発現させて生産できる限り、特にこれらに制限されない。
【0091】
培養に用いられる培地は、適宜な炭素源、窒素源、アミノ酸、ビタミンなどを含有する通常の培地内において、好気性条件下で温度、pHなどを調節しながら適切な方法により特定菌株の要件を満たす必要がある。使用され得る炭素源としては、グルコースおよびキシロースの混合糖が主炭素源として使用され、その他に、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、でん粉、セルロースなどの糖および炭水化物;大豆油、ひまわり油、ヒマシ油、ココナッツ油などの油および脂肪;パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸などの脂肪酸;グリセロール、エタノールなどのアルコール;酢酸などの有機酸が含まれる。これらの物質は、単独で、または混合物として使用され得る。また、使用され得る窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、および硝酸アンモニウムなどの無機窒素源と、グルタミン酸、メチオニン、グルタミンのようなアミノ酸およびペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物などの有機窒素源とが使用され得る。これらの窒素源は、単独で、または混合物として使用され得る。前記培地には、リン源として、第1リン酸カリウム、第2リン酸カリウム、および相応するするナトリウム含有塩が含まれ得る。使用され得るリン源としては、リン酸二水素カリウムまたはリン酸水素二カリウムもしくは相応するナトリウム含有塩が含まれる。また、無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、および炭酸カルシウムなどが使用され得る。前記物質に加えて、アミノ酸およびビタミンなどの成長に必須の物質が使用され得る。
【0092】
また、培養培地に適切な前駆体が使用され得る。前記原料は、培養過程において適宜な方法でバッチ式、流加式または連続式により培養物に添加され得るが、特にこれらに制限されない。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの塩基性化合物、またはリン酸もしくは硫酸などの酸性化合物を適切に用いて、培養物のpHを調節し得る。
【0093】
また、脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制し得る。好気状態を維持するために、酸素または酸素含有気体(例えば、空気)を培養物内に注入する。培養物の温度は、通常27℃~37℃、好ましくは30℃~35℃である。培養は、前記ペプチドの生成量が所望のレベルに達するまで続けられる。その目的から通常、10時間~100時間で達成される。
【0094】
さらに、培養物から前記ペプチドを回収する段階は、当業界に公知の方法により行われる。具体的に前記回収方法として、好ましくは、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧、乾燥、蒸発、沈殿、結晶化、電気泳動、分別溶解(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、疎水性、およびサイズ排除)などの方法を使用し得るが、生産された前記ペプチドの回収に使用され得る限り、特にこれらに制限されない。
【0095】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドを含む、象牙質-歯髄疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0096】
前述のように、本発明の象牙質、骨、および白堊質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進用、並びに象牙質‐歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用ペプチドは、ヒト歯髄細胞とともに生体内に移植すると、ヒト歯髄細胞による象牙質/歯髄様組織の形成を促進させられるので、歯髄組織が損傷して生じる生じる象牙質-歯髄疾患治療用薬学的組成物の有効成分として使用され得る。
【0097】
前記薬学的組成物に含まれるペプチドは、ペプチド単独の形態でも使用され得、前記ペプチドが2回以上繰り返され結合されたポリペプチドの形態でも使用され得、象牙質-歯髄疾患の治療効果を示す薬物が前記ペプチドのN末端またはC末端に結合された複合体の形態でも使用され得る。
【0098】
本明細書の用語「象牙質‐歯髄疾患」とは、前記歯髄組織の損傷により、歯髄組織とこれに結合された象牙質とが損傷して発症する疾患のことを意味する。
【0099】
本発明において、前記象牙質‐歯髄疾患は一例として、象牙質知覚過敏症、歯髄充血、歯髄炎、歯髄変性、歯髄の壊死および壊疽性歯髄などが挙げられるが、本発明のペプチドにより治療効果を示す限り、特にこれらに制限されない。
【0100】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドを含む歯周疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0101】
前述のように、本発明の象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進用、並びに象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用ペプチドは、ヒト歯髄細胞とともに生体内に移植すると、前記ヒト歯髄細胞による骨様組織の形成を促進させ得るので、骨および/または白亜質の損傷を誘発する歯周疾患の治療用薬学的組成物の有効成分として使用され得る。
【0102】
前記薬学的組成物に含まれるペプチドは、ペプチド単独の形態でも使用され得、前記ペプチドが2回以上繰り返し結合されたポリペプチドの形態でも使用され得、歯周疾患の治療効果を示す薬物が前記ペプチドのN末端またはC末端に結合された複合体の形態でも使用され得る。
【0103】
本発明の用語「歯周疾患(periodontal disease)」とは、歯肉(歯茎)と歯の間の隙間に細菌が感染して歯周靭帯と隣接組織を損傷させる疾患のことを指すが、病症の程度に応じて歯肉炎と歯周炎とに区分する。前記歯周疾患の発症時、炎症が進むにつれさらに多くの組織が損傷されながら歯周ポケット(periodontal pocket)が形成され、歯周炎が酷いほど歯周ポケットの深さが深くなってくるが、歯周ポケットが深くなるにつれ歯周靭帯に炎症が生じるようになり、最終的には骨の消失が誘発されると知られている。
【0104】
本発明において、前記歯周疾患は、一例として、歯肉炎(gingivitis)、歯周炎(periodontitis)、歯周ポケット(periodontal pocket)または歯周膿瘍(periodontal abscess)などが挙げられるが、本発明のペプチドによって治療効果を示す限り、特にこれらに限定されない。
【0105】
本発明の用語「予防」とは、本発明のペプチドを含む象牙質-歯髄疾患の予防または治療用薬学的組成物の投与により、象牙質-歯髄疾患の発生を阻害または遅延させるすべての行為、または本発明のペプチドを含む歯周疾患の予防または治療用薬学的組成物の投与により、歯周疾患の発生を阻害または遅延させるすべての行為を意味する。
【0106】
本発明の用語「治療」とは、本発明のペプチドを有効成分として含む薬学的組成物を象牙質‐歯髄疾患の治療が必要とされる個体に投与して、象牙質または歯髄組織の再生を促進することにより、歯髄疾患の治療が行われるようにするすべての行為、または、本発明のペプチドを有効成分として含む薬学的組成物を歯周疾患の治療が必要とされる個体に投与して、骨および/または白亜質の再生を促進することにより、歯周疾患の治療が行われるようにするすべての行為を意味する。
【0107】
本発明の薬学的組成物は、前記ペプチドに加え、薬学的組成物の調製に通常用いられる適切な担体(天然または非天然担体)、賦形剤、または希釈剤をさらに含む、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用薬学的組成物の形態で調製され得る。具体的に、前記薬学的組成物は、各々通常の方法により、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患が誘発された部位に投与し得る滅菌注射溶液の形態で剤型化して使用され得る。本発明において、前記薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤、および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、でん粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、コラーゲンなどが挙げられる。製剤化する場合には、通常用いられる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製され得る。特に、滅菌済の水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤、坐剤、軟膏剤(例えば、歯髄裏装材(pulp liner)等)などが含まれ得る。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール(macrogol)、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0108】
本発明の薬学的組成物に含まれている前記ペプチドの含量は、特に制限されないが、最終組成物の総重量を基準に、0.0001重量%~50重量%、より好ましくは0.01重量%~20重量%の含量で含まれ得る。
【0109】
前記本発明の薬学的組成物は、薬剤学的に有効な量で投与され得るが、本明細書の用語「薬剤学的に有効な量」とは、医学的治療または予防に適用可能な合理的恩恵/リスク比で疾患を治療または予防するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康状態、性別、患者の薬物に対する敏感度、使用された本発明の組成物の投与時間、投与経路、および排出比率、治療期間、使用された本発明の組成物と配合または同時使用される薬物を含む要素、並びに医学分野に公知のその他の要素に基づいて定められる。本発明の薬学的組成物は、単独で投与されるか、公知の象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用薬学的組成物と併用で投与され得る。前記すべての要素を考慮した上で、副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要である。
【0110】
本発明の薬学的組成物の投与量は、使用目的、疾患の重症度、患者の年齢、体重、性別、既往歴、または有効成分として用いられる物質の種類などを考慮して当業者が決められる。例えば、本発明の薬学的組成物は、成人1人当たり約0.1ng/kg~約100mg/kg、好ましくは1ng/kg~約10mg/kgで投与し得る。また、本発明の組成物の投与頻度は、1日1回投与するか、または用量を分割して1日数回投与し得るが、特にこれに制限されない。前記投与量は、如何なる面からも本発明の範囲を限定するものではない。
【0111】
本発明は、他の様態として、前記薬学的組成物を薬剤学的に有効な量で、象牙質-歯髄疾患が発病されているヒト、またはヒトを除く個体に投与する段階を含む、象牙質-歯髄疾患を治療する方法を提供する。また他の様態として、前記薬学的組成物を薬剤学的に有効な量で、歯周疾患が発病しているヒト、またはヒトを除く個体に投与する段階を含む、歯周疾患を治療する方法を提供する。
【0112】
本明細書の用語「個体」とは、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療が必要とされるヒト、またはヒトを除くマウス、家畜などを含む哺乳動物などを制限なく含み得る。
【0113】
本発明の象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の治療用薬学的組成物の投与経路は、目的の組織に到達し得る限り、いかなる一般的な経路を介しても投与され得る。本発明の薬学的組成物は、特に制限されないが、目的に応じて口腔内投与または口腔内注射などの経路を介して投与され得る。
【0114】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドを含む、象牙質-歯髄疾患の予防または改善用医薬部外品組成物、または前記ペプチドを含む歯周疾患の予防または改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0115】
本明細書の用語「改善」とは、治療される状態に関連するパラメータ、例えば、症状の程度を、少なくとも減少させるすべての行為を意味する。
【0116】
本発明において、前記改善は、本発明のペプチドを有効成分として含む薬学的組成物を、象牙質-歯髄疾患の治療が必要とされる個体に投与して、象牙質または歯髄組織の再生を促進することにより、象牙質-歯髄疾患の症状が好転するかまたは有利になるようにするすべての行為、または本発明のペプチドを有効成分として含む薬学的組成物を、歯周疾患の治療が必要とされる個体に投与して、骨および/または白亜質の再生を促進することにより、歯周疾患の症状が好転するかまたは有利になるようにするすべての行為を意味するものと解釈され得る。
【0117】
本明細書の用語「医薬部外品」とは、ヒトや動物の疾病を診断、治療、改善、軽減、処置または予防する目的で用いられる物品のうち、医薬品よりも作用が軽微な物品を意味するものとして、例えば、薬事法によると、医薬部外品とは、医薬品の用途に用いられる物品を除いたものとして、ヒトまたは動物の疾病の治療や予防のために使われる繊維・ゴム製品、人体に対する作用が軽微であるかまたは直接作用しないで、器具または機械ではない物およびその類似物、感染症を防ぐための殺菌・殺虫剤などが含まれる。
【0118】
本発明において、前記ペプチドを含む医薬部外品組成物の種類や剤型は特に制限されないが、一例として、口腔消毒マウスウォッシュ、口腔衛生用品、歯みがき粉、デンタルフロス、口腔用軟膏剤などであり得る。
【0119】
また他の様態として、本発明は、前記ペプチドを含む象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または改善用健康機能性食品組成物を提供する。
【0120】
本明細書の用語「食品」は、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む乳製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、健康機能性食品、および健康食品などがあり、通常の意味における食品をすべて含む。
【0121】
前記「健康機能性食品(functional food)」とは、特定保健用食品(food for special health use, FoSHU)と同じ用語であって、栄養補給の他にも生体調節機能が効率的に表れるように加工された医学、医療効果の高い食品を意味する。なお、「機能(性)」とは、人体の構造および機能に対して栄養素を調整するか、または生理学的作用等のような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の食品は、当業界で通常使用される方法により製造可能であり、該製造に際には、当業界において通常添加される原料および成分を添加して製造し得る。また、前記食品の剤型もまた、食品として認められる剤型であれば、制限することなく製造され得る。本発明の食品用組成物は、様々な形態の剤型で製造されることができ、一般薬品とは異なり食品を原料とするので、薬品の長期服用時に生じ得る副作用などがないという利点があり、また携帯性に優れており、本発明の食品は象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または改善の効果を増進させるためのサプリメントとして摂取可能である。
【0122】
前記健康食品(health food)は、一般食品に比べて積極的な健康維持や増進効果を有する食品を意味し、健康補助食品(health supplement food)は、健康補助目的の食品を意味する。場合によって、健康機能性食品、健康食品、および健康補助食品の用語は混用され得る。
【0123】
具体的に、前記健康機能性食品は、本発明のペプチドを飲料、茶類、香辛料、ガム類、菓子類などの食品材料に添加するか、またはカプセル化、粉末化、懸濁液などにより製造された食品であり、これを摂取すると、健康上の特定の効果をもたらすことを意味するが、一般薬品とは異なり、食品を原料とするため、薬品の長期服用時に生じ得る副作用がないという利点がある。
【0124】
本発明の食品組成物は、日常的に摂取することが可能であるため、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または改善に対して高い効果が期待され得るので、非常に有用に使用され得る。
【0125】
前記食品組成物は、生理学的に許容可能な担体をさらに含み得るが、担体の種類は特に制限されず、当該技術分野において通常用いられるものであれば、いかなる担体も使用し得る。
【0126】
また、前記食品組成物は、食品組成物に通常使用され、香り(匂い)、味、見かけなどを向上させ得る成分をさらに含み得る。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ナイアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、葉酸(folate)、パントテン酸(panthotenic acid)などを含み得る。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)などのミネラルを含み得る。さらに、リジン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含み得る。
【0127】
さらに、前記食品組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、殺菌剤(漂白粉と高度漂白粉、次亜塩素酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)など)、着色剤(タール色素など)、発色剤(亜硝酸ナトリウムなど)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、調味料(グルタミン酸ナトリウム(MSG)など)、人工甘味料(ズルチン、サイクラミン酸ナトリウム、サッカリン、ナトリウムなど)、香料(バニリン、ラクトン類など)、膨張剤(ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)、D-酒石酸水素カリウムなど)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、被膜剤、ガムベース、消泡剤、溶剤、改良剤などの食品添加物を含み得る。前記添加物は、食品の種類に応じて選択され、適宜の量で使用され得る。
【0128】
本発明のペプチドはそのまま添加するか、他の他の食品または食品成分とともに使用され、通常の方法により適宜使用され得る。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康または治療的処置)に応じて適宜決定され得る。一般に、食品または飲料の製造の際、本発明の食品組成物は、食品または飲料の総重量に対して50重量部以下、具体的に20重量部以下の量で添加され得る。しかし、健康および衛生の目的で長期間摂取する場合は前記範囲以下の含量で含み得るが、安全性の面から何ら問題はないので、有効成分は前記範囲の以上の量でも使用され得る。
【0129】
本発明の食品組成物の一例で健康飲料組成物として使用されてもよく、この場合、通常の飲料と同様に様々な香味剤または天然炭水化物などが追加成分として含有され得る。前記天然炭水化物は、グルコース、フルクトースのような単糖類;マルトースおよびスクロースのような二糖類;デキストリン、シクロデキストリンのような多糖類;キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであり得る。甘味剤は、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤;サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などが使用され得る。前記天然炭水化物の比率は、本発明の健康飲料組成物100ml当たり、通常、約0.01g~0.04g、具体的に、約0.02g~0.03gであり得る。
【0130】
上記の外に、健康飲料組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、香味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、または炭酸化剤などを含み得る。その他、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、または野菜飲料の製造のための果肉を含み得る。このような成分は、独立して、または混合して使用し得る。このような添加剤の比率は、大いに重要ではないが、本発明の健康飲料組成物100重量部当たり0.01~0.1重量部の範囲で選択されるのが一般的である。
【0131】
本発明の食品組成物は、象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または改善効果を示せるのであれば、様々な重量%で含み得るが、具体的に、本発明のペプチドを、食品組成物の総重量に対して0.00001重量%~100重量%、または0.01重量%~80重量%で含み得るが、これに制限されない。
【0132】
本発明の他の様態として、前記ペプチドを含む組成物を個体に投与する段階を含む、象牙質-歯髄疾患の予防または治療方法、および/または歯周疾患の予防または治療方法を提供する。
【0133】
また他の様態として、前記ペプチドを含む組成物を個体に投与する段階を含む、象牙質または歯髄組織の再生を促進する方法、および/または骨または白亜質の再生を促進する方法を提供する。
【0134】
本発明の他の一様態として、下記一般式(1)のアミノ酸配列を含むペプチドまたは前記ペプチドを含む組成物の象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進用途、並びに象牙質‐歯髄疾患または歯周疾患の予防または治療用途を提供する。
【0135】
K-Y-R1-R2-R3-R4-R5 ・・・ 一般式(1)
前記式(1)において、R1およびR2は、それぞれアルギニン(R)、リジン(K)、グルタミン(Q)またはアスパラギン(N)であり、R3、R4、およびR5は、それぞれアルギニン(R)またはリジン(K)である。
【0136】
また他の様態として、本発明は、配列番号1~128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドまたは前記ペプチドを含む組成物の象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進用途、並びに象牙質‐歯髄疾患および/または歯周疾患の予防または治療用途を提供する。
【0137】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0138】
(実施例1:実験方法および材料)
[実施例1-1.象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進用、並びに象牙質-歯髄疾患および/または歯周疾患治療用ペプチドの合成]
本発明者らは、象牙質、骨および白亜質を含む硬組織および/または歯髄組織の再生促進効果を示すペプチド(配列番号1)を9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(9-fluorenylmethyloxycarbonyl、Fmoc)により合成し、前記合成されたペプチドのアミノ酸を置換して、代表的なグループのペプチドを合成した(表1~表16)。
【0139】
N-KYQRRKK-C(配列番号1)
まず、グループ1のペプチドは、配列番号1のペプチドまたは前記配列番号1のペプチドの5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表1)。
【0140】
【0141】
次に、グループ2のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアルギニンに置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表2)。
【0142】
【0143】
次に、グループ3のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をリジンに置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表3)。
【0144】
【0145】
次に、グループ4のペプチドは、配列番号1のペプチドの4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表4)。
【0146】
【0147】
次に、グループ5のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアルギニンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表5)。
【0148】
【0149】
次に、グループ6のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をリジンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表6)。
【0150】
【0151】
次に、グループ7のペプチドは、配列番号1のペプチドの4番目のアミノ酸をリジンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表7)。
【0152】
【0153】
次に、グループ8のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアスパラギンに置換し、4番目のアミノ酸をリジンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表8)。
【0154】
【0155】
次に、グループ9のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアスパラギンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表9)。
【0156】
【0157】
次に、グループ10のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアルギニンに置換し、4番目のアミノ酸をアスパラギンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表10)。
【0158】
【0159】
次に、グループ11のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をリジンに置換し、4番目のアミノ酸をアスパラギンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表11)。
【0160】
【0161】
次に、グループ12のペプチドは、配列番号1のペプチドの4番目のアミノ酸をアスパラギンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表12)。
【0162】
【0163】
次に、グループ13のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアスパラギンに置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表13)。
【0164】
【0165】
次に、グループ14のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸と4番目のアミノ酸とをアスパラギンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表14)。
【0166】
【0167】
次に、グループ15のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアルギニンに置換し、4番目のアミノ酸をリジンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表15)。
【0168】
【0169】
最後に、グループ16のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸と4番目のアミノ酸とをリジンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表16)。
【0170】
【0171】
[実施例1-2.細胞培養]
5%のCO2を含む湿潤空気37℃の条件で培養され、実験に使用された。ヒト骨髄間葉系幹細胞(human bone marrow mesenchymal stem cell;hBMSCs)はロンザ社(LONZA Group AG、スイス)から購入して使用した。hBMSCsは10%熱不活性化された牛の血清が添加されたα-MEM(Invitrogen)培地で培養した。
【0172】
[実施例1-3.ヒト由来歯髄細胞の分離および培養]
ヒト歯髄細胞(hDPCs)(つまり、ヒト由来歯髄細胞)は、ソウル大学歯科病院にて成人10名(18歳-22歳)の親知らずからヒト歯髄細胞を分離した。具体的に、すべての実験は、臨床研究審査委員会(hospital’s Institutional Review Board)から承認を受けてから患者の同意を得て実験を行い、Jung HS et al(J Mol Histol(2011))の方法に基づいて、親知らずは切断して歯髄を露出させ鉗子(Forcep)で歯髄を分離した。分離した歯髄を両刀で細かく切り分け、60mm皿に入れてカバースリップで覆った後、DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)で培養した。ヒト歯髄細胞は、様々な条件において象牙芽細胞、骨芽細胞、白亜質芽細胞および歯周靭帯細胞に分化し得ることが知られている(Tissue Eng Part A. 2014 Apr; 20(7-8):1342-51)。
【0173】
[実施例1-4.逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)およびリアルタイムPCR解析]
TRIzol試薬を用いて、ヒト歯髄細胞(hDPCs)とヒト骨髄間葉系幹細胞(hBMSCs)との全(total)RNAを分離した。2μgの全RNAと逆転写酵素1μlと0.5μgのオリゴ(oligo;dT)とを用いてcDNAを合成した。合成されたcDNAをリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応に用いた。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、SYBR GREEN PCR Master Mix(TAKARA社、日本)を用いて、ABI PRISM 7500シーケンス検出システム(sequence detectionsystem、 Biosystems提供)で行われた。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、94℃、1分;95℃、15秒;60℃、34秒を40サイクル(cycles)繰り返す条件として行った。結果の分析は、比較閾値サイクル(comparative cycle threshold;CT)法を用いて評価し、プライマーの塩基配列は下記表17に記載されている。
【0174】
【0175】
[実施例1-5.in vivo移植および組織学的分析]
ヒト歯髄細胞(hDPCs)を分離してin vivo移植実験に使用した。hDPCs(2×106細胞)を100mgのヒドロキシアパタイト(hydroxy apatite)/トリカルシウムホスフェート(tricalcium phosphate)(HA/TCP)セラミックパウダー(Zimmer、USA)単独で、または本発明のペプチド(10μg)とともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルと混合した後、免疫システムが損傷しているマウス(NIH-bg-nu-xid; Harlan Laboratories、Indianapolis、IN)に6週間および12週間移植した。
【0176】
以降、サンプルを収穫して4%パラホルムアルデヒドにより固定し、10%EDTA(pH7.4)にて脱灰させ、パラフィンに包埋(embedding)して、ヘマトキシリン-エオシン(HE)(Vector Labs)により染色するか、または免疫組織化学的分析を行った。免疫組織化学的分析を行うために、1次抗原として1:150に希釈した抗DSP抗体、そして2次抗原としてビオチン標識したヤギ抗ウサギIgG(Vector Labs)とともにタンパク質を検知した。
【0177】
コラーゲン染色(Masson’s Trichrome Stain)は、Polysciences社のMasson’s Trichrome Stain Kit(Cat. 25088-100)により提供された実験方法に準じて実施した。
【0178】
新たに形成された硬組織の定量的分析は、LSstarterプログラム(OLYMPUS Soft Imaging Solution, Muster, Germany)を使用して分析した。新たに形成された硬組織の比率は、総面積から新たに形成された硬組織の面積をパーセントの割合で計算した。
【0179】
[実施例1-6.走査電子顕微鏡分析(Scanning Electron Microscope analysis)]
サンプル組織を2.5%グルタルアルデヒド/0.1Mカコジル酸緩衝液(Cacodylate buffer)で30分間固定し、0.1Mカコジル酸緩衝液に1%四酸化オスミウム(osmium tetroxide)が含まれている溶液で1時間反応させた。その後、サンプルは、エタノールを利用して迅速に脱水および乾燥させた後、試料を金でコーティングして、走査電子顕微鏡(S-4700、HITACHI社、日本)で観察した。
【0180】
[実施例1-7.統計分析]
スチューデントt-テストにより統計分析を行った。すべての統計分析は、SPSS software ver. 19.0により行った。
【0181】
(実施例2:実験結果)
[実施例2-1.象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子の発現レベルに及ぼす象牙質または歯髄組織の再生促進および象牙質-歯髄疾患治療用ペプチドの影響]
Dspp遺伝子は象牙芽細胞分化マーカーとして使用され、象牙質の石灰化に重要な遺伝子として知られている。したがって、本発明のペプチドが象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子の発現を増加させ、象牙芽細胞分化と象牙質形成とを促進する効果を有しているかを確認した。
【0182】
前記実施例1-3の方法を行って培養したヒト歯髄細胞(hDPCs)に、前記実施例1-1で合成された各グループのペプチドを10μg/mlの濃度で処理し、48時間培養した後、前記ヒト歯髄細胞において発現される象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子のmRNAレベルを測定し、前記測定された各Dspp遺伝子のmRNAレベルを、対照群から測定されたDspp遺伝子のmRNAレベルに対する相対的比率で換算した(表18~33)。
【0183】
また、前記表1~表3の各グループのペプチドにより測定されたDspp遺伝子のmRNAレベルの平均値を各グループ別に比較した(
図1a)。具体的に、アミノ酸塩基配列の置換または一部の配列が欠如した本発明の新規ペプチドを表1~表3のようにグループ化し、各グループの新規ペプチドがヒト歯髄細胞において象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子の発現に及ぼす影響を示した結果として、ヒト歯髄細胞においてDsppのmRNAレベルを定量的リアルタイムPCRで測定した各グループの平均値を示すグラフを
図1aに示した。この際、対照群としては、本発明のペプチドを処理していないヒト歯髄細胞を使用した。
【0184】
また、前記表4~表16の各グループのペプチドにより測定されたDspp遺伝子のmRNAレベルの平均値を各グループ別に比較した(
図1b)。具体的に、アミノ酸塩基配列の置換または一部の配列が欠如した本発明の新規ペプチドを表4~表16のようにグループ化し、各グループの新規ペプチドがヒト歯髄細胞において象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子の発現に及ぼす影響を示した結果として、ヒト歯髄細胞におけるDsppのmRNAレベルを定量的リアルタイムPCRで測定した各グループの平均値を示すグラフを
図1bに示した。この際、対照群としては、本発明のペプチドを処理していないヒト歯髄細胞を使用した。
【0185】
前記Dspp遺伝子の発現レベルは、前記実施例1-4で説明したRT-PCRおよびリアルタイムPCR分析により測定した。この際、内部対照群としてはGapdh遺伝子を使用し、測定値は3回繰り返し実験を行った後、その平均値および標準偏差値を使用した。プライマーの塩基配列は前記表17に記載されている。
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
図1aは、本発明のペプチドが処理されたヒト歯髄細胞(hDPCs)において、象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。
図1aおよび表18~表20を参照すると、本発明のペプチドを処理していないヒト歯髄細胞(対照群、Control)から測定された象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子のmRNAレベルに比べて、本発明のペプチドを処理すると、Dspp遺伝子のmRNAレベルが、いずれも約6倍~8倍以上増加したことが確認できる。特に、グループ3のペプチドで処理された場合は、最も高いDsppのmRNA発現値を示した。
図1bは、本発明のペプチドが処理されたヒト歯髄細胞において、象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。
図1bおよび表21~表33を参照すると、本発明のペプチドを処理していないヒト歯髄細胞(対照群、Control)から測定された象牙芽細胞分化マーカーであるDspp遺伝子のmRNAレベルに比べて、本発明のペプチドを処理と、Dspp遺伝子のmRNAレベルが、いずれも約1.5倍~3倍以上増加したことが確認できる。
【0203】
[実施例2-2.象牙芽細胞分化マーカーであるNestin遺伝子の発現レベルに及ぼす象牙質または歯髄組織の再生促進および象牙質-歯髄疾患治療用ペプチドの影響] 前記実施例2-1の結果から、本発明のペプチドは、Dspp遺伝子のmRNAレベルを増加させることができ、例えば、すべてのグループのペプチドは、Dspp遺伝子のmRNAレベルを1.5倍以上、さらには3倍以上増加させることができ、特にグループ1~グループ3のペプチドは、Dspp遺伝子のmRNAレベルを6倍以上増加させ得ることを確認した。
【0204】
これにより、前記グループ1~3のペプチドが、他の象牙芽細胞分化マーカーであるNestin遺伝子のmRNAレベルも増加させられるかを確認した。
【0205】
概ね、プライマーを異なって使用することを除いては、前記実施例2-1と同一、類似の方法を行い、Nestin遺伝子の発現レベルに及ぼす本発明のペプチドの効果を測定して、各グループ別に算出された平均レベルを比較した(
図1c)。この際、対照群としては、本発明のペプチドを処理していないヒト歯髄細胞を使用した。
【0206】
図1cは、本発明のペプチドが処理されたヒト歯髄細胞(hDPCs)において象牙芽細胞分化マーカーであるNestin遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。
図1cで示すように、本発明のペプチドを処理した群(グループ1、2、3)は、対照群に比べて象牙芽細胞分化マーカーであるNestin遺伝子の発現レベルが、いずれも5倍以上増加したことを確認できる。
【0207】
前記DsppおよびNestin遺伝子は、象牙芽細胞分化マーカーとして用いられ、象牙質の石灰化過程に関与する遺伝子として知られているので、本発明で提供するペプチドは、象牙質の再生を促進する効果を示すものと分析された。
【0208】
[実施例2-3.骨芽細胞および白亜質芽細胞分化マーカーであるBSP遺伝子の発現レベルに及ぼす骨および/または白亜質の再生促進および歯周疾患治療用ペプチドの影響]
BSP遺伝子は、骨芽細胞および白亜質芽細胞分化マーカーとして用いられ、骨と白亜質の石灰化に重要な遺伝子として知られている。したがって、本発明の新規なペプチドが、骨芽細胞および白亜質芽細胞分化マーカーであるBSP遺伝子の発現に及ぼす効果を確認するために、前記実施例1-2の方法により培養したヒト由来間葉系幹細胞(つまり、ヒト骨髄間葉系幹細胞、hBMSCs)に、各グループのペプチドを処理した後、BSP遺伝子発現をリアルタイムPCRにより確認した。
【0209】
概ね、プライマーを異なって使用することを除いては、前記実施例2-1と同一、類似の方法を行い、BSP遺伝子の発現レベルに及ぼす本発明のペプチドの効果を測定し、各グループ別に算出された平均レベルを比較した(
図2a、
図2b)。具体的に、表1~表3のようにグループ化した本発明の新規ペプチドにおいて、各グループの新規ペプチドがヒト由来間葉系幹細胞(hBMSCs)で骨と白亜質の分化マーカーであるBSP(Bone sialoprotein)遺伝子の発現に及ぼす影響を示した結果であって、ヒト由来間葉系幹細胞でBSPのmRNAレベルを定量的リアルタイムPCRで測定した結果のグラフを
図2aに示した。また、表4~表16のようにグループ化した本発明の新規ペプチドにおいて、各グループの新規ペプチドがヒト由来間葉系幹細胞で骨と白亜質の分化マーカーであるBSPの発現に及ぼす影響を示した結果であって、ヒト由来間葉系幹細胞でBSPのmRNAレベルを定量的リアルタイムPCRで測定した結果のグラフを
図2bに示す。
【0210】
この際、ペプチドは10μg/mlの濃度で処理した。そして対照群としては、本発明のペプチドを処理していないヒト骨髄間葉系幹細胞を使用した。
【0211】
図2aは、本発明のペプチドが処理されたヒト由来間葉系幹細胞(hBMSCs)で骨および白亜質の分化マーカーであるBSP遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。
図2aで示すように、本発明のペプチドを処理した群(グループ1、2、3)は、対照群に比べてBSP遺伝子の発現が約9倍な~13倍以上増加したことが確認できる。特に、グループ3のペプチドで処理された場合、最も高いBSPのmRNA発現値を示した。
【0212】
図2bは、本発明のペプチドが処理されたヒト由来間葉系幹細胞(hBMSCs)で骨および白亜質の分化マーカーであるBSP遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。
図2bで示すように、本発明のペプチドを処理した群(グループ4~グループ16)は、対照群に比べてBSP遺伝子の発現が約3倍~9倍以上、さらには12倍以上増加したことが確認できる。特に、グループ11のペプチドで処理された場合、最も高いBSPのmRNA発現値を示した。
【0213】
前記BSP遺伝子は、骨芽細胞と白亜質芽細胞分化マーカーとして用いられ、骨と白亜質の石灰化過程に関与する遺伝子として知られているので、本発明で提供するペプチドは、骨および白亜質の再生を促進する効果を示すものと分析された。
【0214】
[実施例2-4.6週間生体内で新規なペプチドによるヒト歯髄細胞(hDPCs)の硬組織形成]
(1)組織形態学的分析
図1a、
図1b、
図1c、
図2aおよび
図2bに示すin vitro実験結果に基づいて、in vivoで硬組織形成に対する本発明のペプチドの効果を測定するために、前記実施例1-5で説明したのように、ヒト歯髄細胞(hDPCs)および100mgのヒドロキシアパタイト/トリカルシウムホスフェート(HA/TCP)を、10μgのグループ3のペプチド(例えば、配列番号24)とともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルと混合してインプラントを作製した。前記インプラントを、免疫システムが損傷しているマウスの皮下組織に移植した。この際、対照群としては、本発明のペプチドを含まないインプラントが移植されたものを使用した。移植して6週間後、前記実施例1-5で説明したように、サンプルを採取した後、LS starterプログラムにより、新たに形成された硬組織を定量分析し、その結果を
図3に示した。
【0215】
図3は、in vivoで6週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて新たに形成した硬組織の量を測定した結果を示す。
図3に示すように、移植して6週間後の硬組織の形成率は、対照群(13.5%)と比較して、新規なペプチドを処理した群(グループ3、29.6%)が約2倍以上増加した。
【0216】
図4は、in vivoで6週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を使用して形成した硬組織を組織形態学的に分析したものを示す顕微鏡写真であって、A~DはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、E~HはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに6週間移植した結果を示す(サイズバー:A、E500μm、B、F200μm、C、G100μm、D、H50μm)。形成された硬組織はヘマトキシリン-エオシン(H-E)により染色した。
【0217】
図4に示すように、ヘマトキシリン-エオシン染色による組織形態学的分析の結果、本発明のペプチドを含まない対照群(
図4のA~D)および本発明のペプチドを含む群(
図4のE~H)のすべてにおいて、HA/TCP粒子周辺の石灰化した組織の基質に細胞が陥入(invagination)された骨様組織および象牙質-歯髄様組織が形成されることが観察された。
【0218】
(2)コラーゲン染色分析
コラーゲンは象牙質、骨および白亜質で最も豊富に存在する有機基質(organic matrix)であり、沈着する無機質を収容する役割をする。これにより、前記組織形態学的分析の各実験群で形成された石灰化した組織においてコラーゲンタンパク質の蓄積を確認するために、コラーゲン染色を行った。
【0219】
図5は、in vivoで6週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織に含まれているコラーゲンの形成レベルを示す顕微鏡写真であって、A~DはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、E~HはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに6週間移植した結果を示す(サイズバー:A、E500μm、B、F200μm、C、G100μm、D、H50μm)。形成された硬組織は、コラーゲン染色(Masson’s trichrome stain)により染色した。
【0220】
図5に示すように、対照群(
図5のA~D)と比較して、本発明のペプチドを含む群(
図5のE~H)において、コラーゲンの形成レベルが増加することを確認した。
【0221】
(3)免疫組織化学的分析
象牙芽細胞特異的分化マーカーであるDSP遺伝子の発現を免疫組織化学的分析により確認した。
【0222】
図6は、in vivoで6週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織を免疫染色法により、象牙芽細胞分化マーカーであるDSPの発現レベルを分析したものを示す免疫染色の写真であって、AはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、BはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに6週間移植した結果を示す。AおよびBは、形成された硬組織を抗DSP抗体により免疫染色した。Cは、二次抗体のみを処理した免疫組織化学的分析の陰性対照群である。AおよいBの矢印は、新たに形成された石灰化した組織におけるDSPの発現を示す。サイズバーは50μmある。
【0223】
図6に示すように、対照群(
図6のA)は、新たに形成された象牙質-歯髄様組織においてDSPが弱く発現しているが、本発明のペプチドを含む群(
図6のB)において、DSPが新たに形成された石灰化した組織で強く発現された。
図6のCは、免疫組織化学的分析で二次抗体のみを処理した陰性対照群であって、DSP染色がされていないことを示す。
【0224】
[実施例2-5.12週間生体内で新規なペプチドによるヒト歯髄細胞(hDPCs)の硬組織形成]
(1)組織形態学的分析
インプラントが移植されたマウスを12週間飼育することを除いては、前記実施例2-4の方法を行い、ヒト歯髄細胞の硬組織形成を分析した。
【0225】
図7は、in vivoで12週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて新たに形成した硬組織の量を測定した結果を示す。
図7に示すように、移植12週間後の硬組織の形成率は、対照群(23.7%)と比較して、新規なペプチドを処理した群(グループ3、39.5%)が約1.6倍以上増加した。
【0226】
図8は、in vivoで12週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を使用して形成した硬組織を組織形態学的に分析したものを示す顕微鏡写真であって、A~DはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、E~HはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに12週間移植した結果を示す(サイズバー:A、E500μm、B、F200μm、C、G100μm、D、H50μm)。形成された硬組織は、ヘマトキシリン-エオシン(H-E)により染色した。
【0227】
図8に示すように、ヘマトキシリン-エオシン染色による組織形態学的分析の結果、本発明のペプチドを含まない対照群(
図8のA~D)および本発明のペプチドを含む群(
図8のE~H)のいずれも、
図4の場合(6週間移植)と同様に、HA/TCP粒子周辺の石灰化した組織の基質に細胞が陥入された骨様組織と象牙質-歯髄様組織とが形成されることが観察された。
【0228】
(2)コラーゲン染色分析
前記実施例2-5における組織形態学的分析の各実験群で形成された石灰化した組織でコラーゲンタンパク質の蓄積を確認するために、コラーゲン染色を行った。
【0229】
図9は、in vivoで12週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織に含まれているコラーゲンの形成レベルを示す顕微鏡写真であって、A~DはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、E~HはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化マウスに12週間移植した結果を示す(サイズバー:A、E500μm、B、F200μm、C、G100μm、D、H50μm)。形成された硬組織はコラーゲン染色(Masson’s trichrome stain)により染色した。
【0230】
図9に示すように、対照群(
図9のA~D)と比較して、本発明のペプチドを含む群(
図9のE~H)で、コラーゲンの形成レベルが増加することを確認した。
【0231】
(3)免疫組織化学的分析
象牙芽細胞特異的分化マーカーであるDSP遺伝子の発現を免疫組織化学的分析により確認した。
【0232】
図10は、in vivoで12週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を用いて形成した硬組織を、免疫染色法により象牙芽細胞分化マーカーであるDSPの発現レベルを分析したものを示す免疫染色の写真であって、AはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、BはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスの12週間移植した結果を示す。AおよびBは、形成された硬組織を抗DSP抗体により免疫染色した。Cは、二次抗体のみを処理した免疫組織化学的分析の陰性対照群である。AおよびBの矢印は、新たに形成された石灰化された組織におけるDSPの発現を示す。サイズバーは50μmある。
【0233】
図10に示すように、対照群(
図6のA)は、新たに形成された象牙質-歯髄様組織においてDSPが弱く発現したが、本発明のペプチドを含む群(
図6のB)においてDSPが新たに形成された石灰化した組織で強く発現された。
図10のCは、免疫組織化学的分析で二次抗体のみを処理した陰性対照群であって、DSP染色がされていないことを示す。
【0234】
前記実施例2-4および2-5の結果をまとめると、本発明の新規なペプチドは、象牙質/歯髄組織複合体および骨/白亜質様組織の再生を促進することができる効果を示すことが分かった。
【0235】
[実施例2-6.移植組織の走査電子顕微鏡による細胞分析]
移植12週間後の対照群と新規なペプチドを処理した実験群とにおいて、ヒト歯髄細胞(hDPCs)の象牙芽細胞または骨芽細胞/白亜質芽細胞への分化を確認するために、前記実施例1-6の方法により走査電子顕微鏡分析を行った。
【0236】
図11は、in vivoで12週間ヒト歯髄細胞(hDPCs)を使用して形成した硬組織を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて分析したものを示すSEM写真であって、AはhDPCsおよび100mgのHA/TCPを0.5%フィブリンゲルに混合して調製した対照群のインプラントを、BとCは、hDPCsおよび100mgのHA/TCPを10μgのグループ3のペプチドとともに、それぞれ0.5%フィブリンゲルに混合して調製したインプラントを、免疫システムが脆弱化したマウスに12週間移植した結果を示す。サイズバーは10μmある。形成された硬組織は、走査電子顕微鏡で細胞を観察した。
【0237】
図11で示すように、hDPCs-単独で処理した対照群では、形成された硬組織の周囲において、象牙芽細胞の突起が不完全に形成された象牙芽細胞様細胞が一部観察された(
図11のA)。本発明のペプチド(例えば、グループ3のペプチド)を処理した群においては、形成された硬組織に沿って象牙芽細胞様細胞が観察されており、象牙芽細胞突起もまた形成された硬組織の方向に拡張されていた(
図11のB)。また、本発明のペプチドを処理した群においては、形成された硬組織の表面に立方形の細胞が付着している、典型的な骨芽細胞/白亜質芽細胞の特徴を示すことを確認した(
図11のC)。
【0238】
したがって、本発明のペプチドは、象牙芽細胞および骨芽細胞/白亜質芽細胞をより効果的に形成できることが分かった。
【0239】
[実施例2-7.in vivoにおける象牙細管閉鎖能試験]
生後12ヶ月の成犬の小臼歯から、歯科用バー(bur)により歯茎部のエナメル質を除去して象牙質を露出させた。象牙質が露出した成犬の小臼歯は、窩洞形成の際に発生したエナメル質-象牙質の片を完全に除去するために十分に洗浄した後、水分を除去した。
【0240】
露出された象牙質部位の象牙細管の入口に、本発明に係るペプチド配列番号24(グループ3)を1.5μg塗布し、3週間後成犬を安楽死させて歯を抜歯した。その後、ダイヤモンドソー(diamond saw)により、抜歯した歯の試験片を作製した。
【0241】
そして、損傷した象牙質の露出された象牙細管閉鎖に本発明による新規ペプチドが及ぼす影響を確認するために、走査電子顕微鏡により象牙細管閉鎖能を評価し、その結果を
図12に示した。
【0242】
具体的に、
図12Aおよび
図12Eに示すように、象牙質の損傷部位の下部を切断した後、切断面の下面(ボックス部分)を観察した。走査電子顕微鏡の観察結果、何の処理もしていない対照群は、損傷した象牙質の下部の象牙細管が露出されていることが確認できる(
図12A~
図12D)。一方、ペプチドを処理した実験群においては、露出した象牙細管が生理的再石灰化により閉鎖されたことが確認できる(
図12E~
図12H)。
【0243】
[実施例2-8.in vivoにおける象牙質損傷部位の表面観察]
実施例2-7と同様の方法により抜歯された成犬の歯の試験片を作製した。
【0244】
そして、損傷した象牙質の表面において、象牙細管閉鎖に本発明による新規ペプチドが及ぼす影響を確認するために、走査電子顕微鏡により表面部位の象牙細管閉鎖能を評価し、その結果を
図13に示した。
【0245】
走査電子顕微鏡の観察結果、何の処理もしていない対照群の損傷した象牙質表面には、象牙細管が露出されていることが確認できる(
図13A~
図13D)。一方、ペプチドを処理した実験群においては、露出した象牙細管がほとんど閉鎖されていることが確認できる(
図13E~
図13H)。
【0246】
なお、この研究は、2017年度大韓民国産業通商資源部および産業技術評価管理院(KEIT)の研究費支援による研究である(10078369、「象牙質の再生を誘導する機能性ペプチドを用いたしみる歯の治療の源泉技術開発」)。
【0247】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施され得ることは理解できることである。したがって、以上において記述した実施例は、いずれの面において例示的なものであり、限定的ではないものと理解するべきである。
【配列表】