(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058678
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】ブプレノルフィンの乱用抵抗性粘膜付着性送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20220405BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220405BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20220405BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220405BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61K31/485
A61P43/00 121
A61P25/36
A61P25/04
A61K9/70
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006949
(22)【出願日】2022-01-20
(62)【分割の表示】P 2020017711の分割
【原出願日】2012-08-20
(31)【優先権主張番号】61/525,094
(32)【優先日】2011-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514043023
【氏名又は名称】バイオデリバリー サイエンシズ インターナショナル,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】フィン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシシュト,ニラジ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ブプレノルフィンの送達のための乱用抑止粘膜付着性デバイスを提供する。
【解決手段】疼痛またはオピオイド依存を管理するのに使用するための乱用抑止粘膜付着性デバイスであって、約4.0~約6.0のpHに緩衝された有効量のブプレノルフィンを含む粘膜付着性層;および約4.0~約4.8のpHに緩衝されたバッキング層を含む、前記デバイスである。バッキング層が有効量のナロキソンを含むことが好ましく、デバイスに存在するブプレノルフィンのナロキソンに対するw/w比率が1:1~10:1であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ブプレノルフィンは、部分的なμ-オピエート受容体アゴニスト、高親和性であり、受容体からゆっくりとした結合および解離をするORL1/ノシセプチン受容体アゴニスト、並びにκ-オピエート受容体アンタゴニストである。ブプレノルフィンの経粘膜バイオアベイラビリティーは、その経口バイオアベイラビリティーよりも大きく、結果として、ブプレノルフィンは、当初舌下の剤型として発展し、市場に流通している。一般に、ブプレノルフィンは、Temgesic(登録商標)0.2mg舌下錠として、また0.3mg/ml非経口製剤のBuprenex(登録商標)として入手可能であり、両者は中等度から重度の疼痛の治療のために必要とされる。
【0002】
ブプレノルフィンの、特にオピオイド依存のために使用される投与において乱用の危険性があるために、オピオイドアンタゴニストのナロキソンとの組み合わせ製品が発展してきている。ナロキソンのブプレノルフィンへの添加は、注入されたナロキソンが非ブプレノルフィンオピオイドを受容体部位から移動させ、これらの部位をブプレノルフィンの占有からブロックすることにより退薬(withdrawal)を促進するので、オピオイド依存被験体におけるブプレノルフィンの非経口乱用の可能性を減少させる。ヒト実験室研究が、ブプレノルフィンおよびナロキソンの異なる薬用量比率を試験するために実施されてきており、ブプレノルフィンおよびナロキソンをw/wで2:1または4:1の薬用量比率で含む製剤がオピエート乱用者のための抑止力を与えるために最適であるという結論を導いている(Fudala P.J.ら、Effects of buprenorphine and naloxone in morphine-stabilized opioid addicts、(1998) Drug Alcohol Depend.、50(1):1-8;Mendelson J.ら、Buprenorphine and naloxone combinations:the effects of three dose ratios in morphine-stabilized、opiate-dependent volunteers、(1999)Psychopharmacology 141:37-46)。ブプレノルフィンの舌下錠型調剤薬Suboxone(登録商標)は、ブプレノルフィンおよびナロキソンを4:1のw/w薬用量比率で含み、オピオイド依存を治療するためにFDAにより承認されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Fudala P.J.ら、Effects of buprenorphine and naloxone in morphine-stabilized opioid addicts、(1998) Drug Alcohol Depend.、50(1):1-8
【非特許文献2】Mendelson J.ら、Buprenorphine and naloxone combinations:the effects of three dose ratios in morphine-stabilized、opiate-dependent volunteers、(1999)Psychopharmacology 141:37-46
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、二層化された乱用抵抗性経粘膜薬剤送達デバイスの粘膜付着性層に配置されるオピオイドアゴニスト、例えばブプレノルフィンのバイオアベイラビリティーが、粘膜付着性層のpHにより影響を受けるだけでなく、二層膜の舌側に存在するバッキング層(backing layer)のpHによっても影響を受けるという発見に、少なくとも部分的に基づいている。この層はオピオイドアンタゴニストを含んでいても含まなくてもよいが、バッキング層の組成物の好適な実施形態では、ナロキソンなどのオピオイドアンタゴニストを含む。したがって、粘膜付着性層のpHおよびバッキング層のpHの両方は、粘膜付着性層からのブプレノルフィンの吸収が緩衝のないバッキング層を有するデバイスの粘膜付着性層からの吸収と同等か、またはそれよりも高くなるように選択され得、一方で、ナロキソンの吸収は、バッキング層に存在する場合、妨げられる。
【0005】
本発明はまた、緩衝されたバッキング層を有する粘膜付着性デバイスがナロキソンのより少ない薬用量を含み得る一方で、それでもなお乱用抑止力を備えるという驚くべき発見に、少なくとも部分的に基づいている。ナロキソンの薬用量が少なくなり、その結果、ブプレノルフィンのナロキソンに対するw/w比率は、乱用抑止力を与えるために有効であるものとして当該技術分野で認められている4:1の比率よりも高くなる。いくつかの実施形態では、本発明の粘膜付着性デバイスに存在するブプレノルフィンのナロキソンに対するw/w比率は4:1~10:1である。特定の実施形態では、ブプレノルフィンのナロキソンに対するw/w比率は6:1である。このようなデバイスは、より少ないナロキソン薬用量で有効な乱用抑止力を与えることができるために有利である。
【0006】
本発明は、バッキング層においてナロキソンを必要とすることを意図しない。いくつかの実施形態では、退薬を促進するために必要なナロキソンの量は、注射により乱用される場合、0.1mgと少ない。いくつかの実施形態では、ブプレノルフィン薬用量のナロキソンに対する最大比率は10:1であり、1:1まで小さくすることができる。いくつかの実施形態では、ブプレノルフィン薬用量のナロキソンに対する比率は、10:1~4:1である。特定の実施形態では、比率は6:1である。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、疼痛またはオピオイド依存を管理するのに使用するための乱用抑止粘膜付着性デバイスを提供し、デバイスは、
約4.0~約6.0のpHに緩衝されたブプレノルフィンを含む粘膜付着性層;および
約4.0~約4.8のpHに緩衝されたバッキング層
を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、口腔粘膜を通したブプレノルフィンの吸収が最適化され、ブプレノルフィンの治療的に有効な薬用量が供される。いくつかの実施形態では、バッキング層はナロキソンを含む。いくつかの実施形態では、デバイスに存在するブプレノルフィンのナロキソンに対するw/w比率は、1:1~10:1である。いくつかの実施形態では、比率は約4:1~10:1である。好適な実施形態では、デバイスに存在するブプレノルフィンのナロキソンに対するw/w比率は、6:1である。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は疼痛またはオピオイド依存を管理するのに使用するための乱用抑止粘膜付着性デバイスを提供し、デバイスは、
約4.0~約6.0のpHに緩衝されたブプレノルフィンを含む粘膜付着性層;
および約4.0~約4.8のpHに緩衝されたバッキング層;
を含み:
ここで、デバイスから吸収されるブプレノルフィンのバイオアベイラビリティーは40%より大きい。いくつかの実施形態では、バイオアベイラビリティーは約60%である。いくつかの実施形態では、バイオアベイラビリティーは約65%である。いくつかの実施形態では、バイオアベイラビリティーは約75%である。
【0010】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性層は約4.50~約5.50のpHに緩衝され、バッキング層は約4.10~約4.4のpHに緩衝される。好適な実施形態では、粘膜付着性層は約4.75のpHに緩衝され、バッキング層は約4.25のpHに緩衝される。
【0011】
いくつかの実施形態では、デバイスは約0.075~12mgのブプレノルフィンを含む。いくつかの実施形態では、ブプレノルフィンの量は、0.15~12mgのブプレノルフィンである。いくつかの実施形態では、デバイスはまた、約0.0125~2mgのナロキソンも含む。いくつかの実施形態では、ナロキソンの量は、約0.1~2mgである。いくつかの実施形態では、デバイスから吸収されるブプレノルフィンのバイオアベイラビリティーは40%より大きい。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は疼痛またはオピオイド依存を管理するのに使用するための乱用抑止粘膜付着性デバイスを提供し、デバイスは、
ブプレノルフィンを含み、第1のpHに緩衝された粘膜付着性層;
第2のpHに緩衝されたバッキング層;
を含み:
第2のpHは、ブプレノルフィンの経粘膜送達が妨げられないように、ブプレノルフィンのバイオアベイラビリティーが40%より大きくなるように選択される。いくつかの実施形態では、バッキング層はナロキソンを含み、ナロキソンの送達は妨げられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明はまた、疼痛またはオピオイド依存を管理するのに使用するための乱用抑止粘膜付着性デバイスを提供し、デバイスは、
ブプレノルフィンを含み、第1のpHに緩衝された粘膜付着性層、
第2のpHに緩衝されたバッキング層、
を含み:
第1のpHおよび第2のpHは、ブプレノルフィンの粘膜への一方向送達勾配が妨げられないように、デバイスにより提供されるブプレノルフィンの総バイオアベイラビリティーが、バッキング層のpHを調節していない同じデバイスにより提供されるブプレノルフィンの総バイオアベイラビリティーと同等であるように選択される。1つの実施形態では、バッキング層はナロキソンを含み、ナロキソンの送達は妨げられる。
【0014】
いくつかの実施形態では、疼痛またはオピオイド依存を管理するのに使用するための乱用抑止粘膜付着性デバイスは、
ブプレノルフィンを含み、第1のpHに緩衝された粘膜付着性層および第2のpHに緩衝されたバッキング層;
を含み:
ここで、第1のpHは、約4.0~約6.0であり、第2のpHは、約4.0~約4.8である。
【0015】
いくつかの実施形態では、バッキング層はナロキソンを含む。いくつかの実施形態では、デバイスに配置されたブプレノルフィンおよびナロキソンは約4:1~約10:1のブプレノルフィン:ナロキソンのw/w比率で存在する。1つの実施形態では、比率は約6:1である。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1のpHは約4.50~約5.50であり、第2のpHは約4.10~約4.4である。特定の実施形態では、第1のpHは約4.75であり、第2のpHは約4.25である。いくつかの実施形態では、デバイスは約0.075~12mgのブプレノルフィンおよび約0.0125~2mgのナロキソンを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、疼痛またはオピオイド依存を管理するのに使用するための乱用抑止粘膜付着性デバイスは、
ブプレノルフィンを含み、第1のpHに緩衝された粘膜付着性層および第2のpHに緩衝されたバッキング層;
を含み:
ここで、第1のpHは、約4.0~約6.0であり;第2のpHは、約4.0~約4.8であり;デバイスから吸収されるブプレノルフィンのバイオアベイラビリティーは40%より大きい。いくつかの実施形態では、バッキング層はナロキソンを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1のpHは約4.50~約5.50であり、第2のpHは約4.10~約4.4である。特定の実施形態では、第1のpHは約4.75であり、第2のpHは約4.25である。いくつかの実施形態では、デバイスは約0.075~12mgのブプレノルフィンおよび約0.0125~2mgのナロキソンを含む。
【0019】
好適な実施形態では、疼痛またはオピオイド依存を管理することに使用するための乱用抑止粘膜付着性デバイスは、
ブプレノルフィンを含み、第1のpHに緩衝された粘膜付着性層およびナロキソンを含み、第2のpHに緩衝されたバッキング層;
を含み:
ここで、第1のpHは、約4.75であり;第2のpHは、約4.25であり;デバイスに配備されたブプレノルフィンおよびナロキソンは約6:1のブプレノルフィン:ナロキソンのw/w比率で存在する。
【0020】
いくつかの実施形態では、被検体における、疼痛を治療するまたはオピオイド依存を管理する方法もまた提供される。方法は通常、それを必要とする被検体において、疼痛が治療されるかまたはオピオイド依存が管理されるように、被検体に本発明の乱用抑止粘膜付着性デバイスを投与する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、実施例4に記載されているように、0.875/0.15mg、3.5/0.6mgおよび5.25/0.9mgのブプレノルフィン/ナロキソンを含む本発明のデバイス投与後の、ブプレノルフィンC
maxの薬用量比例性の評価を示すグラフである。
【
図3】
図3は、実施例4に記載されているように、0.875/0.15mg、3.5/0.6mgおよび5.25/0.9mgのブプレノルフィン/ナロキソンを含む本発明のデバイス投与後の、ブプレノルフィンAUC
infの薬用量比例性の評価を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例5に記載されているように、ナロキソン退薬研究(Naloxone Withdrawal Study)の一部として研究薬物治療を受けた被検体の1時間以内に記録したCOWS総スコアを示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例5に記載されているように、ナロキソン退薬研究の一部として研究薬物治療を受けた被検体において、血圧、心拍数および酸素飽和度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の定義は、本明細書に用いる特定の用語の意味に関する指針として提供される。
【0023】
本明細書において使用される、単数形の用語は、別に示さない限り、「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」を意味する。すなわち、単数形による本発明の任意の要素への言及は、1つより多くの要素が存在する可能性を排除しない。
【0024】
本明細書において使用される、用語「吸収」は、薬剤などの物質の血流に入る過程を示す。吸収は、AUCinfおよびCmaxなどの薬物動態パラメータにより測定することができる。
【0025】
本明細書において使用される、用語「急性疼痛」は、短い期間、例えば3~6ヶ月により特徴づけられる疼痛を示す。急性疼痛は典型的には組織損傷に関連し、容易に説明し、観察することができる様式で現れる。例えば、発汗または心拍数の増加を引き起こし得る。急性疼痛はまた、時間と共に増大し、および/または断続的に生じ得る。
【0026】
本明細書において使用される、用語「バイオアベイラビリティー」(生物学的利用率)は、21 CFR Section 320.1において定義されており、活性成分または活性部分が薬剤製品から吸収され、作用部位で利用可能となる割合および程度を示す。用語「バイオアベイラブル」、「絶対バイオアベイラビリティー」または「総バイオアベイラビリティー」は、粘膜により(すなわち、経粘膜的に)および胃腸管を通して伝達される量を含む、総計のバイオアベイラビリティーを示す。用語「絶対バイオアベイラビリティー」は、静脈内投与後の同じ薬剤のバイオアベイラビリティーと比較した、静脈内ではない投与(すなわち、経粘膜、経口、直腸、経皮、皮下または舌下投与)を通して吸収される薬剤の割合を示す。比較は、薬用量に関して正規化され、すなわち異なる薬用量を勘案し、結果として、吸収量は、対応する投与された薬用量で割ることにより補正される。いくつかの実施形態では、本発明の粘膜付着性デバイスは、40%以上の、例えば、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のオピオイドアゴニストブプレノルフィンの絶対バイオアベイラビリティーを提供する。
【0027】
本明細書において使用される、用語「バイオイクイバレンス」または「バイオイクイバレント」(生物学的同等性)は、21 CFR Section 320.1において定義されており、1つの医薬製品および別の医薬製品における活性成分または活性部分の吸収の割合および程度において、有意な差がないことを意味する。バイオイクイバレンスでは、バイオイクイバレントな活性分に対する薬物動態パラメータCmaxおよびAUCは、互いの80%~125%の範囲内に収まる。いくつかの実施形態では、本発明のデバイスはSuboxone(登録商標)舌下錠とバイオイクイバレントであり得る。2.0/0.5mgおよび8.0/2.0mgのブプレノルフィン/ナロキソンを含むSuboxone(登録商標)舌下錠に対する薬物動態パラメータ、例えば、CmaxおよびAUCinfは、Suboxone(登録商標)の製品ラベルに含まれ、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
本明細書で使用されるように、用語「慢性疼痛」は、外傷または疾病に対する通常の回復期間を超えて持続する疼痛を示す。慢性疼痛は持続性または断続的であり得る。慢性疼痛の共通原因は、関節炎、癌、反射性交感神経性ジストロフィー症候群(RSDS)、反復性ストレス障害、帯状疱疹、頭痛、線維筋痛症、および糖尿病性神経障害、腰痛、首および肩の疼痛、中等度から重度の骨関節炎および重度の偏頭痛を有する患者を含むが、それらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用されるように、特に記載がなければ、用語「ブプレノルフィン」は、ブプレノルフィンの任意の薬学上許容される形態を含み、その塩、エステル、およびプロドラッグを含むが、それらに限定されない。1つの実施形態では、用語「ブプレノルフィン」は、ブプレノルフィン塩化水素酸塩を示す。本明細書で使用されるように、用語「ブプレノルフィン誘導体」は、ブプレノルフィンと類似の構造および機能を有する化合物を示す。いくつかの実施形態では、ブプレノルフィン誘導体は下記式のものまたはその薬学上許容される塩もしくはエステルを含む。
【化1】
【0030】
【0031】
は二重結合または単結合であり;R3はC1~4アルキル基またはシクロアルキル置換C1~4アルキル基から選択され;R4はC1~4アルキルから選択され;R5は-OHであり、またはR4およびR5は一緒になり、=O基を形成し;R6は-HまたはC1~4アルキル基から選択される。
【0032】
ブプレノルフィン誘導体は、エトルフィンおよびジプレノルフィンを含むが、それらに限定されない。一般のブプレノルフィン誘導体は国際公開第2008/011194号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
本明細書で使用されるように、特に記載がなければ、用語「ナロキソン」は、ナロキソンの任意の薬学上許容される形態を含み、その塩、エステル、およびプロドラッグを含むが、それらに限定されない。1つの実施形態では、用語「ナロキソン」は、ナロキソン塩化水素酸塩を示す。いくつかの実施形態では、ナロキソンは下記の化学構造により表せられる。
【化3】
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「粘膜付着性層」または「ポリマー拡散環境」は、ポリマー拡散環境の粘膜表面への付着により勾配が生成すると、薬剤の粘膜表面への流れを可能にすることができる環境を示す。輸送される薬剤の流れは、環境の拡散性と比例関係であり、その環境は、薬剤のイオン性および/または環境に含まれる1つまたは複数のポリマーのイオン性を考慮して、例えば、pHを調節することにより操作することができる。
【0035】
本明細書で使用されるように、用語「バッキング層」または「非付着性ポリマー環境」は、例えば、その方向の薬剤の流れを減速させ、または停止させることができる、層またはコーティングまたはバリア層の形態の環境を示し、口腔中の表面に付着しない。いくつかの実施形態では、バッキング層のpHは、粘膜の方向以外において、そのバッキング層および粘膜付着性層に含まれる薬剤の流れを停止するように調節される。いくつかの実施形態では、非付着性ポリマー環境は、例えば、薬剤のほとんどまたは全てが唾液により洗い流されないように十分なほど、薬剤の流れを著しく減速させる。いくつかの実施形態では、非付着性ポリマー環境は、薬剤の流れを減速させ、または停止させ、一方で、ポリマー拡散環境の、例えば唾液による水和を可能とする。
【0036】
本明細書で使用されるように、用語「一方向勾配」は、実質的に1つの方向で、例えば、被験体の粘膜に向かって、デバイスを通る、例えばポリマー拡散環境を通る薬剤(例えば、ブプレノルフィン)の流れを可能にする勾配を示す。例えば、ポリマー拡散環境は、バッキング層または膜に隣接して配置された層または膜の形態の粘膜付着性ポリマー拡散環境であり得る。粘膜投与されると、粘膜付着性ポリマー拡散環境と粘膜との間に勾配が生成され、薬剤は粘膜付着性ポリマー拡散環境から、実質的に一方向で、粘膜に向かって流れる。いくつかの実施形態では、薬剤のいくつかの流れは完全に勾配を横切って一方向というわけではないが、典型的には、全ての方向における薬剤の自由な流れは存在しない。
【0037】
本明細書で使用されるように、被験体の「治療」または「処置」は、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の症状を予防し、治療し、治癒させ、軽減し、緩和し、変化させ、是正し、寛解させ、改善し、安定化させ、または影響を与える目的で(例えば、疼痛を軽減するため)の、薬物の被験体への投与を含む。
【0038】
用語「被験体」は、ヒト、イヌ、ネコ、および他の哺乳類などの生物を示す。本発明のデバイスに含まれる薬剤の投与は、被験体の治療に有効な薬用量および期間で実施することができる。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。いくつかの実施形態では、本発明のデバイスの薬物動態プロファイルは、雄および雌被験体で同様である。
【0039】
治療効果を達成するために必要な薬物の「有効量」は、被験体の年齢、性別、および体重などの因子により変動し得る。薬用量の設計は、最適治療応答が得られるように調節することができる。例えば、薬用量を数回に分けて1日に投与し得る、または、薬用量を治療状況の緊急性により示されるように比例的に減少し得る。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「経粘膜」は、粘膜を介する任意の投与経路を示す。例として、口腔、舌下、経鼻、膣内、および直腸を含むが、それらに限定されない。1つの実施形態では、投与は口腔である。1つの実施形態では、投与は舌下である。本明細書で使用されるように、用語「直接経粘膜」は、口腔粘膜、例えば頬側および/または舌下による粘膜投与を示す。
【0041】
本明細書で使用されるように、用語「水浸食性」または「少なくとも部分的に水浸食性」は、無視できる~完全に水浸食性であるという範囲の水浸食性を示す物質を示す。物質は水中に容易に溶解し得る、または長期にわたりやっとのことで水に部分的にのみ溶解し得る。さらに、物質は、体液のより複雑な性質のために、水と比べて体液中で異なる浸食性を示し得る。例えば、水中で無視できるほどしか浸食性を示さない物質は、体液中でわずか~中程度の浸食性を示し得る。しかしながら、他の場合、水および体液中での浸食性は大体同じであり得る。
【0042】
乱用抵抗性デバイスからのオピオイドアンタゴニストの吸収または送達を説明するために使用される用語「妨げられる」は、同じデバイスに含まれるオピオイドアゴニストの効果を阻害するためには不十分である上記オピオイドアンタゴニストの吸収および/または送達を示す。
【0043】
本明細書で使用されるように、被験体に関連する「依存症治療」は、依存性物質の欲求を減らすことを目的とした薬剤の被験体への投与を含む。
【0044】
本明細書で使用されるように、用語「乱用性」または「乱用的」は、経粘膜投与を越える、例えば注射または吸引によるデバイスの使用を示す。
【0045】
本明細書で使用されるように、用語「配置された」は成分・要素の別の成分・要素内の均一または不均一な分布を示す。
【0046】
オピオイド依存の維持治療
本発明の特定の側面は、オピオイド依存の被験体のための維持治療の提供方法を含む。現在では、ブプレノルフィン維持は、長期間の禁断に関して依存被験体のためのもっとも期待のできる行動方針の一つである。
【0047】
疼痛管理
本発明の特定の側面は、それを必要とする被検体への疼痛管理および/または軽減の提供方法を含む。疼痛は、全ての疾患、障害、状態および/または状況に起因する当該技術分野で知られる全ての痛みであり、慢性疼痛または急性疼痛であり得る。
【0048】
粘膜付着性薬学的経粘膜送達デバイス
本発明の特定の側面では、乱用抵抗性経粘膜送達デバイスが提供される。したがって、1つの実施形態では、本発明は、疼痛および/またはオピオイド依存の管理のための、被検体へのオピオイド薬剤の有効量の投与に適した乱用抵抗性粘膜付着性送達デバイスに関する。デバイスは、デバイスの粘膜表面への貼付の際に生じる一方向勾配(すなわち、粘膜に向かって流れる流れ)によりオピオイドアゴニストを送達することができる。
【0049】
本発明のデバイスは、例えば、米国特許第6,159,498号、米国特許第5,800,832号、米国特許第6,585,997号、米国特許第6,200,604号、米国特許第6,759,059号および/またはPCT特許出願公開第WO 05/06321号において記載されているデバイスの成分、層および/または組成の任意の組み合わせまたはサブコンビネーションを含むことができる。これらの特許および公開公報の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0050】
i.粘膜付着性層
いくつかの実施形態では、粘膜付着性層は生体浸食性または水浸食性粘膜付着性層である。いくつかの実施形態では、本発明のデバイスは、粘膜付着性ポリマー拡散環境を含む生体浸食性粘膜付着性層を含む。デバイスは、適用(貼付)後約5秒以内に被検体の粘膜表面に付着する。
【0051】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性ポリマー拡散環境はオピオイドアゴニストを含む。いくつかの実施形態では、オピオイドアゴニストはブプレノルフィンである。オピオイド依存の治療に関するいくつかの実施形態では、本発明のデバイスに組み入れることができるブプレノルフィンの薬用量は、投与すべき所望の治療薬用量に依存し、約10μg~約20mgのブプレノルフィンに及び得る。疼痛の治療に関する別の実施形態では、ブプレノルフィンの薬用量は約60μg~約6mgに及び得る。いくつかの実施形態では、本発明の粘膜付着性デバイスに含まれるブプレノルフィンの低薬用量は、約0.075~12mgのブプレノルフィン、例えば、0.075mg、0.080mg、0.085mg、0.090mg、0.095mg、0.10mg、0.15mg、0.20mg、0.25mg、0.30mg、0.35mg、0.40mg、0.45mg、0.50mg、0.44mg、0.60mg、0.65mg、0.70mg、0.75mg、0.80mg、0.85mg、0.90mg、0.95mg、1.00mg、1.5mg、1.75mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、5.25mg、5.5mg、6.0mg、6.5mg、7.0mg、7.5mg、8.0mg、8.5mg、9.0mg、9.5mg、10.0mg、10.5mg、11.0mg、11.5mgまたは12.0mgのブプレノルフィンである。1つの実施形態では、薬用量は0.875mgのブプレノルフィンである。別の実施形態では、薬用量は1.75mgのブプレノルフィンである。別の実施形態では、薬用量は3.5mgのブプレノルフィンである。さらなる別の実施形態では、薬用量は5.25mgのブプレノルフィンである。
【0052】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性ポリマー拡散環境は、薬剤、生体付着が可能な少なくとも1つの薬理学上許容されるポリマー(「生体付着性ポリマー」)を含むことができ、場合により、少なくとも1つの膜形成性の生体浸食性または水浸食性ポリマー(「膜形成性ポリマー」)を含むことができる。あるいは、粘膜付着性ポリマー拡散環境を、生体付着性ポリマーおよび第1の膜形成性ポリマーの両方として作用する単一ポリマーから形成することができる。さらにあるいはまた、粘膜付着性ポリマー拡散環境は、別の膜形成性水浸食性ポリマーおよび/または水浸食性可塑剤、例えばグリセリンおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)を含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性ポリマー拡散環境の生体付着性ポリマーは任意の水浸食性置換セルロースポリマーまたは置換オレフィンポリマーを含むことができ、ここで、置換基はイオン性または水素結合、例えば、カルボン酸基、ヒドロキシルアルキル基、アミン基およびアミド基であり得る。ヒドロキシル含有セルロースポリマーでは、アルキル基とヒドロキシアルキル基の組み合わせが生体付着特性を提供するのに好ましく、これらの2つの基の比が水膨潤性および分散性に対しある一定の効果を有する。例としては、場合により部分的に架橋させることができるポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、中度~高度に置換されたヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP3、場合により部分的に架橋させることができる)、中度~高度に置換されたヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)またはそれらの組み合わせを含む。1つの実施形態では、HEMCは、1つのポリマーから形成された粘膜付着性ポリマー拡散環境について上記したように、生体付着性ポリマーおよび第1の膜形成性ポリマーとして使用することができる。これらの生体付着性ポリマーは、乾燥した系状態で、良好で即時の粘膜付着特性を有するため好ましい。
【0054】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性ポリマー拡散環境、例えば、生体浸食性粘膜付着性層は、通常、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、部分的に架橋されても、または架橋されなくてもよいポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、およびポリビニルピロリドン(PVP)またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない水浸食性ポリマーからなる。他の粘膜付着性水浸食性ポリマーもまた本発明において使用され得る。用語「ポリアクリル酸」は、架橋されていない形態および部分的に架橋された形態の両方、例えばポリカルボフィルを含む。
【0055】
同様の膜形成性水浸食性ポリマーもまた使用することができる。膜形成性水浸食性ポリマーはその溶解動力学を変化させるために、場合により架橋させることができ、および/または可塑化することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、粘膜付着性ポリマー拡散環境の特性はそのpHにより影響される。いくつかの実施形態では、例えば、粘膜付着性ポリマー拡散環境がブプレノルフィンを含む場合、そのpHは約4.0~約7.5である。一つの実施形態では、pHは4.0~6.0であり、より特には、4.5~5.5であり、さらにより特には、4.75~5.25である。特定の実施形態では、pHは4.75である。これらの値および範囲の値および範囲は全て、本発明により含まれるものであることを理解すべきである。
【0057】
粘膜付着性ポリマー拡散環境のpHは、緩衝剤の使用を含むがそれらに限定されない方法により、または本発明のデバイスの組成を調節することにより、調節および/または維持することができる。
【0058】
本発明と共に使用するのに適した緩衝剤は、例えば、リン酸塩、例えば、リン酸ナトリウム;一塩基性リン酸塩、例えばリン酸二水素ナトリウムおよびリン酸二水素カリウム;二塩基性リン酸塩、例えばリン酸水素二ナトリウムおよびリン酸水素二カリウム;三塩基性リン酸塩、例えばリン酸三ナトリウム;クエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウム(無水または脱水)およびクエン酸トリエチル;重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウム;酢酸塩、例えば酢酸ナトリウムを含み、それらを使用し得る。1つの実施形態では、単一緩衝剤、例えば二塩基性緩衝剤を使用する。別の実施形態では、緩衝剤の組み合わせ、例えば、三塩基緩衝剤および一塩基緩衝剤の組み合わせを使用する。いくつかの実施形態では、粘膜付着性層を作るために使用される組成物中に存在する緩衝剤の量は、アゴニスト薬剤、例えばブプレノルフィンの量の約1~20%である。
【0059】
ii.バッキング層
デバイスは、少なくとも1つの追加の非付着性ポリマー環境、例えばバッキング層を含む。この層、例えばバッキング層は粘膜付着性ポリマー拡散環境に隣接して配置され、ブプレノルフィンなどのオピオイドアゴニストの粘膜への送達を容易にするように機能するる。この追加の層は、粘膜付着性ポリマー拡散環境または非付着性ポリマー拡散環境と同じまたは異なる組み合わせのポリマーを含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、バッキング層は、本発明のデバイスを乱用抵抗性にするためにオピオイドアンタゴニストなどの追加の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、オピオイドアンタゴニストはナロキソンである。本発明のデバイスに組み入れることができるナロキソンの薬用量は投与すべき所望の治療薬用量に依存し、依存の治療のために約100μg~5mgのナロキソン、疼痛の徴候のために60μg~1.5mgのナロキソンに及び得る。いくつかの実施形態では、ナロキソンの薬用量は、約0.0125mg~約2.0mgのナロキソン、例えば、0.0125mg、0.0130mg、0.0135mg、0.0140mg、0.0145mg、0.0150mg、0.0155mg、0.0160mg、0.0165mg、0.0170mg、0.0175mg、0.0180mg、0.0185mg、0.0190mg、0.0195mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.145mg、0.2mg、0.29mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.58mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.87mg、0.9mg、1.0mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mgまたは2.0mgのナロキソンである。1つの実施形態では、薬用量は0.145mgのナロキソンである。別の実施形態では、薬用量は290μgのナロキソンである。別の実施形態では、薬用量は580μgのナロキソンである。さらなる別の実施形態では、薬用量は870μgのナロキソンである。いくつかの実施形態では、デバイスに配置されたブプレノルフィンの量およびナロキソンの量は、混合物が注射または吸引された場合にブプレノルフィンの効果がナロキソンにより打ち消される様に選択される比率で存在する。このような実施形態では、デバイスに配置されたブプレノルフィンおよびナロキソンは1:4~1:10の範囲のw/w比率で存在する。好適な実施形態では、ブプレノルフィンのナロキソンに対するw/w比率は、1:4~1:6であり、ここで1:6が最も好適な実施形態である。
【0061】
いくつかの実施形態では、バッキング層(すなわち、非付着性ポリマー実施形態)は粘膜付着性層に配置された薬剤、例えばブプレノルフィンの一方向流動を容易にするためのバリアとして機能する。粘膜表面に適用すると、薬剤の拡散勾配は粘膜に向かって生じる。別の実施形態では、バッキング層は、口咽頭組織(orophyrangeal tissue)におけるブプレノルフィンの吸収を容易にする浸食性ポリマーとして役立ち得る。いくつかの実施形態では、粘膜表面から離れる拡散を防ぐ。このような事例では、薬剤の大部分、すなわち少なくとも50%は粘膜に向かって流動する。他の実施形態では、
図1に示すように、非付着性ポリマー環境は粘膜付着性ポリマー拡散環境の境界を囲み得、それにより薬剤が粘膜に向かって流動することを確実にする。
【0062】
バッキング層(例えば、水浸食性非付着性バッキング層)は少なくとも1の水浸食性膜形成性ポリマーを更に含むことができる。この層は場合により薬剤を含み得る。1つまたは複数のポリマーは、ポリエーテルおよびポリアルコールならびに、ヒドロキシアルキル基置換または、好適にはヒドロキシアルキルのアルキル基に対する比率が中~高であるヒドロキシアルキル基およびアルキル基置換のいずれかを有する、水素結合性セルロースポリマーを含むことができる。例としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマー、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマーおよびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。水浸食性非付着性バッキング層成分は場合により架橋させることができる。
【0063】
特定の実施形態では、非付着性バッキング層は架橋ポリマーがない。デバイスの好適な実施形態では、非付着性バッキング層は、ポリアクリル酸がない。いずれの特別な理論にも縛られるつもりはないが、滞留時間は上記ポリアクリル酸の欠如により短くなると見積もられる。例えば、特定の実施形態では、滞留時間は15~30分である。好適な実施形態では、水浸食性非付着性バッキング層はヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含む。
【0064】
本発明のデバイスは、少なくとも部分的に、所望の滞留時間を提供するために使用される成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、これは、バッキング層のより遅い浸食速度を与える適当なバッキング層組成の選択の結果である。すなわち、非付着性バッキング層は制御された浸食性が得られるようにさらに改良される。これは、他の薬学的剤形での使用が承認されたFDA承認EudragitTMポリマー、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、およびヒドロキシルプロピルメチルセルロースフタレートの群から選択される、より疎水性のポリマーでバッキング層膜を被覆することにより達成することができる。他の疎水性ポリマーを単独でまたは他の疎水性もしくは親水性ポリマーと組み合わせて使用し得るが、これらのポリマーまたはポリマーの組み合わせ由来の層は湿潤環境で浸食されなければならない。溶解特性は、バッキング層に含まれる場合の薬物の滞留時間および放出プロファイルを改善するように調節され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明のデバイス内の層はいずれも、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはグリセリンなどの可塑剤も少量、0~15重量%含み、口の中でのこの層の「弾力性」を改善し、デバイスの浸食速度を調節し得る。加えて、ヒアルロン酸、グリコール酸、および他のアルファヒドロキシル酸などの湿潤剤もまた添加することができ、デバイスの「柔らかさ」および「触感」を改善することができる。最後に、着色剤および乳白剤を添加し得、得られた非付着性バッキング層を粘膜付着性ポリマー拡散環境から識別することを助ける。いくつかの乳白剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、などがある。
【0066】
デバイスはまた、場合により薬学上許容される溶解速度改変剤、薬学上許容される崩壊補助剤(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリカルボフィル、カルボキシメチルセルロース、またはポロキサマー)、薬学上許容される可塑剤、薬学上許容される着色剤(例えば、FD&C Blue #1)、薬学上許容される乳白剤(例えば、二酸化チタン)、薬学上許容される抗酸化剤(例えば、酢酸トコフェロール)、薬学上許容される系形成増強剤(例えば、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン)、薬学上許容される保存剤、香味剤(例えば、サッカリンおよびペパーミント)、中和剤(例えば、水酸化ナトリウム)、緩衝剤(例えば、一塩基性、または三塩基性リン酸ナトリウム)、またはそれらの組み合わせを含むことができる。好適には、これらの成分はそれぞれ、デバイスの最終重量の約1%以下で存在するが、量はデバイスの他の成分に依存して変動し得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、非付着性ポリマー拡散環境、例えばバッキング層は、緩衝された環境である。いくつかの実施形態では、バッキング層のpHは4.0~6.0であり、より特には4.2~4.7であり、さらにより特には、4.2~4.4である。1つの実施形態では、バッキング層のpHは4.25である。これらの値および範囲の値および範囲は全て、本発明により含まれるものであることを理解すべきである。
【0068】
バッキング層のpHは、緩衝剤の使用を含むがそれらに限定されない方法により、または本発明のデバイスの組成を調節することにより、調節および/または維持することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ポリマー拡散環境の特性は、その緩衝能力により影響される。いくつかの実施形態では、緩衝剤は粘着付着性ポリマー拡散環境に含まれる。本発明と共に使用するのに適した緩衝剤は、例えば、リン酸塩、例えば、リン酸ナトリウム;一塩基性リン酸塩、例えばリン酸二水素ナトリウムおよびリン酸二水素カリウム;二塩基性リン酸塩、例えばリン酸水素二ナトリウムおよびリン酸水素二カリウム;三塩基性リン酸塩、例えばリン酸三ナトリウム;クエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウム(無水または脱水)およびクエン酸トリエチル;重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウム;酢酸塩、例えば酢酸ナトリウムを含み、それらを使用し得る。1つの実施形態では、単一緩衝剤、例えば、二塩基性緩衝剤を使用する。別の実施形態では、緩衝剤の組み合わせ、例えば、三塩基緩衝剤および一塩基緩衝剤の組み合わせを使用する。いくつかの実施形態では、バッキング層はオピオイドアンタゴニストを含む。別の実施形態では、バッキング層はポリマーでマイクロカプセル化された粒子として存在するオピオイドアンタゴニストを含む。これらのポリマーは、アルギン酸塩、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチド-グリコリドコポリマー、ポリ-エプシロン-カプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物および誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲンおよび誘導体、ゼラチン、アルブミン、ポリアミノ酸および誘導体、ポリホスファゼン、多糖類および誘導体、キチン、キトサン生体付着性ポリマー、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【実施例0070】
本発明は、以下の実施例によりさらに理解される。しかしながら、特定の実験の詳細が例示されているだけであり、本明細書に記載され、別添する特許請求の範囲により定義される本発明を限定することを意味するものではないことを当業者は容易に理解することができる。
【0071】
実施例1.本発明のデバイスの調製
以下の表1に記載するように、異なる薬用量のブプレノルフィンおよびナロキソンを含み、異なるpHに調製したバッキング層を有する、いくつかの製剤(formulation)を調製した。
【表1】
【0072】
製剤2、4および6において粘膜付着性層を調製するために使用された成分を下記表2にまとめる。
【表2】
【0073】
製剤1および3における粘膜付着性層は、全ての成分の量をブプレノルフィンの量に正比例させて、0.78cm2の膜サイズに調節すること以外は、それぞれ製剤2および4に関する同じ成分を使用して調製する。同様に、製剤5および7における粘膜付着性層を、全ての成分の量をブプレノルフィンの量に正比例させて、製剤5を0.9cm2、製剤7を5.37cm2の膜サイズに調節すること以外は、製剤6に関する同じ成分を使用して調製する。
【0074】
製剤2のバッキング層を調製するために使用された成分を下記表3にまとめる。
【表3】
【0075】
製剤1および3におけるバッキング層は、全ての成分の量をナロキソンの量に正比例させて、0.78cm2の膜サイズに調節すること以外は、それぞれ製剤2および4に関する同じ成分を使用して調製する。同様に、製剤5および7におけるバッキング層を、全ての成分の量をブプレノルフィンの量に正比例させて、製剤5を0.9cm2、製剤7を5.37cm2の膜サイズに調節すること以外は、製剤6に関する同じ成分を使用して調製する。
【0076】
実施例2.製剤1および2における吸収プロファイル
これは、健常な被検体における非盲検(open label)、活性剤コントロール研究であり、製剤1および2からのブプレノルフィンおよびナロキソンの薬物動態パラメータをSuboxone(登録商標)舌下錠と比較した。分析のための血液サンプルを投与前並びに投与後0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、12および16時間において採取し、液体クロマトグラフィーおよび質量分析法(LC/MS)を利用する確立された手法を使用して分析した。ブプレノルフィンおよび総ナロキソンの選択された薬物動態パラメータを表4および5に示す。
【表4】
【0077】
1Roy, S. D.ら、Transdermal delivery of buprenorphine through cadaver skin (1994)、J. Pharm. Sci.、83:126-130
【表5】
【0078】
結果は、製剤1および2からのブプレノルフィンおよび総ナロキソンのCmaxおよびAUCinf値が、コントロールのSuboxone(登録商標)錠から観測された値よりも小さいことを示している。
【0079】
実施例3.製剤3および4における吸収プロファイル
この研究は、製剤3および4からのブプレノルフィンおよびナロキソンの血漿薬物動態パラメータをSuboxone(登録商標)舌下錠と比較するために設計された。これは、24人の被験体において2人のうちから1人をランダム化した12-被検体の群における、単一薬用量で、2-期間、クロスオーバーデザインであった。各群は、ランダムな順序で、それぞれ少なくとも5日間離して、本発明のデバイスおよびSuboxone(登録商標)錠を受けた。群1の被検体は、単一低薬用量Suboxone(登録商標)錠(2.0mgのブプレノルフィンおよび0.5mgのナロキソンを含む)および製剤3の単一薬用量を受けた。群2の被検体は、単一高薬用量Suboxone(登録商標)錠(8.0mgのブプレノルフィンおよび2.0mgのナロキソンを含む)および製剤4の単一薬用量を受けた。単一研究薬剤投与前約12時間30分並びに単一研究薬剤投与後約12および24時間後にナルトレキソンを共に投与した。薬物動態分析のための連続血液サンプルを投与前並びに投与後15、30、45、60、75、90、105、120、135、150、165、180、210、240、270、300、330および360分および投与後8、10、12、24および48時間で採取した。血液サンプルを液体クロマトグラフィーおよび質量分析法(LC/MS)を利用する確立された手法を使用して分析した。ブプレノルフィンおよび遊離ナロキソンの選択された薬物動態パラメータを表6および7に示す。
【表6】
【表7】
【0080】
結果は予想外にも、製剤3および4からのブプレノルフィンの吸収がコントロールと比較して増加していることを示す。ブプレノルフィン吸収におけるこの増加は、実施例2の結果を鑑みれば特に驚くべきことであり、製剤1および2における2.8から製剤3および4における4.25へのバッキング層のpHの変化に起因する。
【0081】
結果はまた、製剤3および4からのブプレノルフィンのCmax値がコントロールのSuboxone(登録商標)錠からの値に匹敵しており、本発明のデバイスからのブプレノルフィンのAUCinf値が対応するSuboxone(登録商標)錠からの値よりわずかに小さいことを示す。更に、遊離(結合していない)のナロキソンのCmaxおよびAUCinf値は対応するSuboxone(登録商標)錠からの値よりも大きい。
【0082】
実施例4.製剤5、6および7における吸収プロファイル
この研究は、ブプレノルフィンのナロキソンに対して6:1のw/w比率で存在するブプレノルフィンおよびナロキソンを含み、pH4.25に処方されたバッキング層を有する製剤5、6および7の投与後のブプレノルフィンおよびナロキソン曝露の血漿薬物動態パラメータを評価するために設計された。この研究はまた、試験した薬用量の範囲にわたるブプレノルフィン曝露の直線性を立証するために設計された。加えて、製剤5により調製した4つのデバイス(4×0.875/0.15mg ブプレノルフィン/ナロキソン)の投与後の薬物動態プロファイルを、同等の薬用量の活性剤を含む製剤6により調製された単一デバイス(3.5/0.6mg ブプレノルフィン/ナロキソン)からのものと比較した。
【0083】
これは、20人の健常な被検体における、非盲検(open label)、単一薬用量、4-期間クロスオーバー研究であった。それぞれの被験体は、ランダムな順序で、それぞれの投与を少なくとも7日間離して、本発明のデバイスにおけるブプレノルフィンの4回投与を受けた。投与された薬用量は、製剤5、6、7および5により調製されたデバイスにおいてそれぞれ0.875/0.15mg、3.5/0.6mg、5.25/0.9mgおよび4×0.875/0.15mgのブプレノルフィン/ナロキソンであった。単一研究薬剤投与前約12時間30分並びに単一研究薬剤投与後約12および24時間後にナルトレキソンを共に投与した。薬物動態分析のための連続血液サンプルを、投与前並びに投与後15、30、45、60、75、90、105、120、135、150、165、180、210、240、270、300、330および360分および投与後8、10、12、24および48時間で採取した。血液サンプルを液体クロマトグラフィーおよび質量分析法(LC/MS)を利用する確立された手法を使用して分析した。ブプレノルフィンおよび遊離ナロキソンの選択された薬物動態パラメータを表8および9に示す。
【表8】
【表9】
【0084】
研究の結果は、ブプレノルフィンのナロキソンに対するw/w比率を4:1から6:1に変化すると、乱用された場合に退薬を促進するために必要な曝露に則してよりも減少したナロキソン曝露を示すが、指示通りに使用した場合に退薬を促進するほどではない結果となることを示す。結果はまた、製剤5、6および7からのブプレノルフィンのC
maxおよびAUC
infが薬用量比例性であることを示す。ブプレノルフィンのC
maxおよびAUC
infの薬用量比例性はまた、それぞれ
図2および3に示したグラフにより立証される。
【0085】
実施例5.ナロキソン退薬研究
製剤1、3および5により調製された本発明の経粘膜デバイスは、比較的少ない薬用量のブプレノルフィンおよびナロキソン(同等のSuboxone(登録商標)錠に含まれる2mg/0.5mgブプレノルフィン/ナロキソンと比較して、0.75mg/0.19mgおよび0.875/0.15mgブプレノルフィン/ナロキソン)を含む。ナロキソンのより少ない薬用量は製品を正確に使用する患者にとっては有益であり得るが、フルアゴニストオピオイドに依存する患者により経験される予想忌避反応を生じ得ない。したがって、本研究の目的は、オピオイド依存被験体におけるブプレノルフィンの0.75mg薬用量と共に投与される場合に、退薬応答を生じるナロキソンの最小有効薬用量を決定することであった。研究の二次的な目的は、ナロキソンなしのブプレノルフィンの0.75mg薬用量の投与がオピオイド依存被験体における退薬応答を生じるかどうかを決定することであった。
【0086】
研究対象集団
研究は、4期間クロスオーバーを完了する全12人の成人被験体を含むように設計された。被検体は以下の基準に適合する場合に研究に含めることに適しているものとした:
研究の前に少なくとも3ヵ月間、1日につき>100mgモルヒネ同等量で治療されている慢性的な中等度から重度の癌ではない疼痛を経験している被験体;
ナロキソン検証(Naloxone Challenge)中のナロキソン投与後に退薬の徴候および症状(すなわち、COWSスコア>5)を示した被検体。
【0087】
研究薬物治療の詳細
入院患者の治療中に、来院被験体は、単一の、3mL IVボーラス投与の、以下のそれぞれの治療を少なくとも72時間離して受けた。
【0088】
a) ブプレノルフィン0.75mg(B)
b) ブプレノルフィン0.75mg+ナロキソン0.1mg(BN1)
c) ブプレノルフィン0.75mg+ナロキソン0.2mg(BN2)
d) プラセボ(5%デキストロース)(P)
研究手法
適格被験体は、8回までのナロキソンの0.05mg IV投与の投与後、退薬の徴候(例えばナロキソン退薬試験に対し肯定的な応答(COWS>5)を有する)を示した。
【0089】
臨床オピエート退薬スケール
臨床オピエート退薬スケール(COWS)を用いて、オピオイド退薬の症状を評価した。スケールは、脈拍数、消化器不調、発汗、身震い、不穏状態、あくび、瞳孔径、不安または興奮性、骨または関節痛、鳥肌、鼻水、涙を含むオピオイド退薬の徴候および症状を評価するための11の項目を含む。それぞれの症状は固有のスケールで評価される。スケールにおける総スコアは0~48の範囲であり、5~12のスコアは軽い退薬を示し;13~24のスコアは中等度の退薬を示し;25~36のスコアはやや重度の退薬を示し;>36のスコアは重度の退薬を示す。
【0090】
オピオイドアゴニストスケール
以下の項目:点頭、重いまたはだるい感覚、口渇、呑気、快然、活気的、胃のむかむか、皮膚のかゆみ、リラックス、惰性、ソープボックス、プレサントシック(pleasant sick)、気力、酔い、親しみやすさ、および神経質を、5ポイントリッカートスケール(0=全くなし、1=少し、2=中程度、3=かなり、4=ひどい)を使用して評価するために被検体への質問を行った。
【0091】
統計的分析
記述統計を、公式の統計的検定なしで、それぞれの時点における、それぞれの治療群に対するPD分析からの結果をまとめるために使用した。混合効果モデルを、総スコアにおけるベースラインからの変化に対するデータにフィットさせた。ここで、モデルは、全体的な平均の変化;順序による固定効果;治療、時期および期間;並びに順序内に組み入れられる被検体に対するランダム効果の因子を含んでいた。
【0092】
最小二乗平均変化および標準偏差は、ペアワイズ様式における治療間の違いに対し、95%CIを構成するように得られ、使用された。救済期間(すなわち、被検体が13以上のCOWS総スコアに到達した期間)後に収集された被検体のデータは、PD分析における救済の混同効果を最小にするために除外された。
【0093】
COWS総スコアのみについて、>13の総スコアまでの期間は、第1の投与から、被検体が>13の総スコアを報告するまでの期間(時間)として計算された。13以上の総スコアに到達しなかった被検体は24時間で検閲で除外された。この終点はカプラン-マイヤー法を使用してまとめられ、95%CIがそれぞれの治療群の中央値に対して示された。
【0094】
結果
COWS総スコア、および救済結果
投与後最初の1時間で少なくとも7のCOWS総スコアを有する被検体の数を
図4の左側に示す。ブプレノルフィンのみにおいては、8人の被験体が少なくとも7のCOWS値を有し、それと比較して、ブプレノルフィンとナロキソン0.1mgの群では9人、ブプレノルフィンとナロキソン0.2mgの群では12人の被検体、プラセボでは2人であった。同様に、COWS>13は、6人のブプレノルフィン被検体、9人のブプレノルフィンとナロキソン0.1mgの被検体、10人のブプレノルフィンとナロキソン0.2mgの被検体、2人のプラセボ患者であった。15人の被検体の内の2人が、プラセボを含む、それぞれの研究治療において退薬を経験した。
【0095】
ブプレノルフィンのみの群において、15人の被検体の内の7人(47%)が少なくとも13のCOWSスコアを有する中等度の退薬を経験し、7人全てが救済された。救済を受けなかった8人の被験体では、投与後1時間での中央値COWSは1であった。
【0096】
ブプレノルフィンと0.1mgのナロキソンの群では、9人の被験体(60%)がCOWS>13を有し、9人全てと追加の被検体が救済された。救済を受けなかった5人の被験体では、投与後1時間での中央値COWSは0であった。
【0097】
ブプレノルフィンと0.2mgのナロキソンの群では、11人の被験体(73%)が少なくとも13のCOWSスコアを有し、それらのそれぞれが救済された。救済を受けなかった4人の被験体では、投与後1時間での中央値COWSは3であった。
【表10】
【0098】
薬剤効果質問表(DEQ)-投与後1時間で観測された中央値
救済されなかった被検体における1時間での中央DEQ応答を、下記表11において示す。
【0099】
BN2群を除く全てにおけるそれぞれのパラメータの中央DEQスコアは、投与後1時間でゼロまたはほとんどゼロであった。それに対し、BN2群は薬剤効果、吐き気、悪い効果、めまいおよび体調不良の点で、著しくより高いスコアを示した。
【0100】
良い効果および気分が高揚しているかについての中央スコアは全ての治療群で1時間ではゼロであった。
【表11】
【0101】
オピオイド依存被験体におけるこの2重盲検、プラセボコントロール研究の結果は、静脈注射での0.75mgのブプレノルフィンの薬用量が乱用の可能性がほとんどなく、ナロキソンの添加が、退薬の発生と否定的な薬剤評価の両方を増加することを示す。したがって、オピオイド依存被験体に対し静脈内に投与した場合は、0.1および0.2mgの薬用量のナロキソンは、0.75mgの薬用量のブプレノルフィンに対して乱用防止効果を与える。
【0102】
等価物
本発明について様々な実施形態および実施例と共に記載してきたが、本開示はそのような実施形態または実施例に限定されるものではない。それどころか、本発明は、当業者に認識されるように、様々な代替案、改変、および等価物を含む。
(付記)
(付記1)
疼痛またはオピオイド依存を管理するのに使用するための乱用抑止粘膜付着性デバイスであって、
約4.0~約6.0のpHに緩衝された有効量のブプレノルフィンを含む粘膜付着性層;および
約4.0~約4.8のpHに緩衝されたバッキング層
を含む、前記デバイス。
(付記2)
バッキング層が有効量のナロキソンを含み、デバイスに存在するブプレノルフィンのナロキソンに対するw/w比率が1:1~10:1である、付記1に記載のデバイス。
(付記3)
デバイスに存在するブプレノルフィンのナロキソンに対するw/w比率が6:1である、付記2に記載のデバイス。
(付記4)
粘膜付着性層が約4.50~約5.50のpHに緩衝され、バッキング層が約4.10~約4.4のpHに緩衝されている、付記3に記載のデバイス。
(付記5)
粘膜付着性層が約4.75のpHに緩衝され、バッキング層が約4.25のpHに緩衝されている、付記4に記載のデバイス。
(付記6)
約0.075~12mgのブプレノルフィンを含む、付記1に記載のデバイス。
(付記7)
約0.0125~2mgのナロキソンを含む、付記2に記載のデバイス。
(付記8)
デバイスから吸収されたブプレノルフィンのバイオアベイラビリティーが40%より大きい、付記1に記載のデバイス。