(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058717
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】燃料電池接合体及び関連する動作方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20220405BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/2484 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/04492 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20220405BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220405BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/249
H01M8/2484
H01M8/04858
H01M8/04302
H01M8/04225
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04537
H01M8/04313
H01M8/0432
H01M8/04492
H01M8/0438
H01M8/04701
H01M8/0444
H01M8/04694
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007896
(22)【出願日】2022-01-21
(62)【分割の表示】P 2017530088の分割
【原出願日】2015-12-07
(31)【優先権主張番号】1421778.0
(32)【優先日】2014-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】504175659
【氏名又は名称】インテリジェント エナジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INTELLIGENT ENERGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(72)【発明者】
【氏名】アシュトン、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】カーマジン、ハリー ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】クプチョ、ケビン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】負荷に電力を一括して供給するために一緒に接続された複数の燃料電池を含む燃料電池接合体、および該燃料電池接合体を動作させる方法を提供する。
【解決手段】それぞれの燃料電池2はアノード5とカソード6とを含み、該方法は、負荷とは独立して燃料電池を横切る電圧を低下させるために、接合体の燃料電池のうちの少なくとも1つにおけるアノード5とカソード6の間の電気的接続を選択的に提供することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を一括して提供するために一緒に接続された複数の燃料電池を含む燃料電池接合体であって、前記接合体は、1つ以上のコンディショニングスイッチを含み、それぞれのコンディショニングスイッチは、前記複数の燃料電池のうちの1つ以上の燃料電池に関連付けられ、前記負荷とは独立して前記燃料電池または燃料電池のグループを横切る電圧を制御するために、その関連付けられる燃料電池のアノードとカソードとの間、または、燃料電池のグループに関連付けられる場合は、前記グループ内の第1の燃料電池のアノードと最後の燃料電池のカソードとの間、の電気的接続を選択的に提供するように構成される、燃料電池接合体。
【請求項2】
前記複数の燃料電池のそれぞれの燃料電池は、前記電気的接続を選択的に提供するための対応するコンディショニングスイッチを含む、請求項1に記載の燃料電池接合体。
【請求項3】
前記またはそれぞれのコンディショニングスイッチは、1つ以上の半導体デバイスを含む、請求項1または請求項2に記載の燃料電池接合体。
【請求項4】
それぞれの燃料電池は、その燃料電池の膜電極接合体に当接するように構成された燃料電池プレートを含み、前記燃料電池プレートは、前記コンディショニングスイッチに接続するための少なくとも1つのコネクタを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料電池接合体。
【請求項5】
前記燃料電池プレートは、複数のコネクタを備え、前記コンディショニングスイッチは、前記複数のコネクタに接続し、一緒に動作して、それらに関連付けられた燃料電池に対して電気的接続を選択的に提供するように構成された複数のスイッチング素子を対応して備える、請求項4に記載の燃料電池接合体。
【請求項6】
それぞれの燃料電池プレートは、少なくとも2つのコネクタを含み、前記少なくとも2つのコネクタは、前記燃料電池プレートの異なる側に形成される、請求項4または5に記載の燃料電池接合体。
【請求項7】
前記複数の燃料電池は、スタック内に一緒に配置され、前記スタック内の前記複数の燃料電池のうちの1つ以上に反応物を搬送しまたはそこから排気流を受け取るためのマニホールドを含み、前記接合体は、前記燃料電池スタックと前記マニホールドとの間に延在する基板を含み、前記基板は、前記1つ以上のコンディショニングスイッチを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の燃料電池接合体。
【請求項8】
それぞれの燃料電池は、前記燃料電池の膜電極接合体に当接するように構成された燃料電池プレートを含み、前記基板は、それぞれの燃料電池プレートと係合するように構成される、請求項7に記載の燃料電池接合体。
【請求項9】
前記電気的接続は、前記燃料電池を横切る前記電圧を所定の電圧に制御するように構成された燃料電池電圧制御素子を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の燃料電池接合体。
【請求項10】
前記燃料電池電圧制御素子は、前記所定の電圧が前記燃料電池接合体の動作中に構成可能であるように制御可能である、請求項9に記載の燃料電池接合体。
【請求項11】
複数のコンディショニングスイッチが設けられ、コンディショニングスイッチコントローラが前記コンディショニングスイッチを制御するように構成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の燃料電池接合体。
【請求項12】
前記コントローラは、前記コンディショニングスイッチを作動して、前記燃料電池接合体の始動または停止時に前記電気的接続を選択的に提供するように構成される、請求項11に記載の燃料電池接合体。
【請求項13】
前記コントローラは、前記コンディショニングスイッチを作動して、前記複数の燃料電池にわたって順次に前記電気的接続を選択的に提供するように構成される、請求項11に記載の燃料電池接合体。
【請求項14】
前記コントローラは、前記燃料電池接合体の電圧が所定の閾値を超えたことに応答して、前記コンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を選択的に提供するように構成される、請求項11に記載の燃料電池接合体。
【請求項15】
前記コントローラは、燃料電池性能の測定量が閾値を過ぎたことに応答して、前記コンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を選択的に提供するように構成される、請求項11に記載の燃料電池接合体。
【請求項16】
燃料電池性能の前記測定量は、
i)前記燃料電池接合体内の、一酸化炭素などの混入物の測定量、または
ii)前記複数の燃料電池内の任意の1つ(または2つ以上)の燃料電池の前記電圧の測定量、または
iii)冷却剤を有する個別の燃料電池(または2つ以上の燃料電池)のフラッディングの測定量、または
iv)温度もしくは湿度などの、前記燃料電池接合体に近接する環境条件の測定量、を含む、請求項15に記載の燃料電池接合体。
【請求項17】
前記コントローラは、前記コンディショニングスイッチを作動して、前記接合体の前記燃料電池接合体を通る反応物流の増加が開始してから、前記反応物の流量または圧力が所定のレベルに達するまでの間に少なくとも、前記電気的接続を選択的に提供するように構成される、請求項11に記載の燃料電池接合体。
【請求項18】
前記コントローラは、前記燃料電池のうちの特定の1つを横切る前記電圧が、前記接合体内の少なくとも1つの他の燃料電池に対して負になったか、または負になりそうであるという指示に応答して、前記コンディショニングスイッチを作動してその特定の燃料電池の前記電気的接続を選択的に提供する、請求項11に記載の燃料電池接合体。
【請求項19】
前記コントローラは、前記コンディショニングスイッチの前記作動を開始するために、前記接合体内の前記燃料電池のそれぞれを横切る前記電圧を監視するように構成される、請求項18に記載の燃料電池接合体。
【請求項20】
前記コントローラは、前記コンディショニングスイッチを作動して前記少なくとも1つの燃料電池の前記電気的接続を選択的に提供することによって、前記燃料電池接合体内の少なくとも1つの燃料電池の温度の制御を提供するように構成される、請求項11に記載の燃料電池接合体。
【請求項21】
前記コントローラは、特定の燃料電池の前記コンディショニングスイッチを選択的に作動してそれらの温度を上昇させることによって、前記燃料電池接合体内の前記燃料電池の前記温度を均衡させるように構成される、請求項20に記載の燃料電池接合体。
【請求項22】
前記コントローラは、前記燃料電池接合体の始動時に、前記燃料電池のうちの少なくとも1つの前記コンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を提供し、その燃料電池を流れる電流が閾値に達したことに応答して、その関連付けられるコンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を遮断するように構成される、請求項11に記載の燃料電池接合体。
【請求項23】
前記コントローラは、前記燃料電池接合体の始動時に、前記燃料電池接合体内の大部分の前記燃料電池の前記コンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を提供し、特定の燃料電池を流れる電流が閾値に達したことに応答して、その関連付けられるコンディショニングスイッチを作動して電気的接続を遮断するように構成される、請求項11に記載の燃料電池接合体。
【請求項24】
負荷に電力を一括して提供するために一緒に接続された複数の燃料電池を含む燃料電池接合体を動作させる方法であって、前記方法は、
前記負荷とは独立して前記燃料電池または燃料電池のグループを横切る前記電圧を制御するために、前記接合体の前記燃料電池のうちの少なくとも1つのアノードとカソードとの間、または燃料電池のグループの場合、前記グループ内の第1の燃料電池のアノードと最後の燃料電池のカソードとの間、の電気的接続を選択的に提供すること、を含む、方法。
【請求項25】
前記方法は、 前記燃料電池接合体の始動時または停止時に前記電気的接続を選択的に提供する前記ステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、 前記複数の燃料電池にわたって順次に前記電気的接続を選択的に提供する前記ステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、前記燃料電池接合体の電圧が所定の閾値を過ぎたことに応答して、前記電気的接続を選択的に提供する前記ステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、燃料電池性能の測定量が閾値を過ぎたことに応答して、前記コンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を選択的に提供する前記ステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
燃料電池の性能の前記測定量は、
i)前記燃料電池接合体内の、一酸化炭素などの混入物の測定量、または
ii)前記複数の燃料電池内の任意の1つもしくは2つ以上の燃料電池の前記電圧の測定量、または
iii)冷却剤を有する個別の燃料電池もしくは2つ以上の燃料電池のフラッディングの測定量、または
iv)温度もしくは湿度などの、前記燃料電池接合体に近接する環境条件の測定量、を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記方法は、
少なくとも前記接合体の前記燃料電池接合体を通る反応物流の増加が開始してから、前記反応物の流量または圧力が所定のレベルに達するまでの間に、前記電気的接続を選択的に提供する前記ステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記方法は、前記燃料電池のうちの特定の1つを横切る前記電圧が、前記接合体内の少なくとも1つの他の燃料電池に対して負になったか、または負になりそうであるという指示に応答して、その特定の燃料電池に前記電気的接続を選択的に提供する前記ステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記方法は、前記接合体内の前記燃料電池のそれぞれを横切る前記電圧を監視する前記ステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は、前記少なくとも1つの燃料電池のための電気的接続の選択的な提供によって、前記燃料電池接合体内の少なくとも1つの燃料電池の温度の前記制御を提供する前記ステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記方法は、特定の燃料電池に前記電気的接続を選択的に提供してそれらの温度を上昇させることによって、前記燃料電池接合体内の前記燃料電池の前記温度を均衡させる前記ステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記方法は、前記燃料電池接合体の始動時に、前記燃料電池のうちの少なくとも1つに前記電気的接続を提供し、その燃料電池を流れる電流が閾値に達したことに応答して、前記電気的接続を切り離す前記ステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記方法は、前記燃料電池接合体の始動時に、前記燃料電池接合体内の大部分の前記燃料電池の前記コンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を提供し、特定の燃料電池を流れる電流が閾値に達したことに応答して、その関連付けられるコンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を遮断する前記ステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
電気的接続を選択的に提供する前記ステップは、30秒未満の間、前記電気的接続を提供することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項38】
請求項24~36のいずれか1項に記載の方法を実施するためのプロセッサ及びメモリを有するコンピューティングデバイス上で実行するための命令を含む、コンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池接合体及び燃料電池接合体を動作させる方法に関する。特に、本発明は、接合体に印加される負荷とは独立して、接合体間の電圧を制御することによって接合体を形成する個々の燃料電池を調整するように構成された燃料電池接合体に関する。
【0002】
従来の電気化学燃料電池は、燃料及び酸化剤を電気エネルギー及び反応生成物に変換する。一般的なタイプの電気化学燃料電池は、アノードとカソードとの間に高分子イオン(プロトン)移動膜とガス拡散構造とを含む、膜電極接合体(MEA)を含む。水素などの燃料及び空気からの酸素などの酸化剤は、MEAの対応する側面を通過して反応生成物として電気エネルギー及び水を生成する。別個のアノード及びカソード流体流路とともに配置されたいくつかのそのような燃料電池を含むスタックを形成することができる。このようなスタックは、典型的には、スタックのそれぞれの端部でエンドプレートによって一緒に保持された多数の個々の燃料電池プレートを含むブロックの形態である。
【0003】
第1の態様によれば、負荷に電力を一括して提供するために相互に接続された複数の燃料電池を含む、燃料電池接合体を提供し、該接合体は、1つ以上のコンディショニングスイッチを備え、それぞれのコンディショニングスイッチは、複数の燃料電池のうちの1つ以上の燃料電池に関連付けられており、負荷とは独立して燃料電池または燃料電池のグループを横切る電圧を制御するために、その関連付けられた燃料電池のアノードとカソードとの間、または燃料電池のグループに関連付けられた場合、グループ内の第1の燃料電池のアノードと最後の燃料電池のカソードの間の電気的接続を選択的に提供するように構成される。
【0004】
これは、効率的な動作または燃料電池劣化メカニズムの緩和のために、接合体がプロトン交換膜または触媒層などの燃料電池またはその構成部品を調整できるので有利である。コンディショニングスイッチによって提供される電気的接続は、負荷に電力を提供するための電気的経路よりも低いインピーダンスの電気的経路を生成し得るので、関連付けられる燃料電池または直列に接続された燃料電池のグループの短絡を可能にし得る。したがって、燃料電池は、負荷に電力を提供するために一緒に電気的に接続されてもよく、コンディショニングスイッチの作動が、電池のアノード及び/またはカソードからの追加のもしくは代替の電気的接続を提供してもよい。特に、電気的接続は、関連付けられる燃料電池または燃料電池のグループを横切る電位を低下させ得る。燃料電池接合体の動作中(すなわち、燃料電池接合体に反応物が提供される間)、及び特に始動または停止時(すなわち、燃料電池接合体は反応物を供給される場合もされない場合もあるとき、または反応物の供給が開始または停止されている間)に、個別の燃料電池を横切る電圧を制御することは、以下に説明するように、多くの有利な効果があることが判明している。
【0005】
必要に応じて、複数の燃料電池のすべての燃料電池は、接合体内のありとあらゆる燃料電池を横切る電圧を負荷とは独立して制御できるように、個別にまたは直列接続されたグループの一部のいずれかでコンディショニングスイッチに関連付けられる。
【0006】
必要に応じて、複数の燃料電池のそれぞれの燃料電池は、電気的接続を選択的に提供するための対応するコンディショニングスイッチを含む。したがって、それぞれの個別の燃料電池を横切る電圧を制御することができる。接合体内の個別の燃料電池を横切る電圧を制御するか、または短絡することが有利であり得る。コンディショニングスイッチは、個別にかつ順次に作動するように構成することができる。あるいは、2つ以上のコンディショニングスイッチを同時に作動させるように構成してもよい。
【0007】
燃料電池接合体は、燃料電池スタックを含む。
【0008】
必要に応じて、コンディショニングスイッチ(単数または複数)は、トランジスタなどの半導体デバイスを含む。あるいは、コンディショニングスイッチ(単数または複数)は、インダクタ結合リレーを含む。
【0009】
必要に応じて、それぞれの燃料電池は、燃料電池の膜電極接合体に当接するように構成された燃料電池プレートを含み、燃料電池プレートは、コンディショニングスイッチに接続するための少なくとも1つのコネクタを含む。燃料電池スタック内の個別の燃料電池を分離し得る燃料電池プレートは、コンディショニングスイッチへの接続を形成するのに都合のよい本体を提供する。必要に応じて、燃料電池プレートは、コンディショニングスイッチへの接続のためにプレートから突出するタブを含んでもよく、コンディショニングスイッチへの接続部を受け入れるためのキャビティを含んでもよい。コンディショニングスイッチ(単数または複数)は、燃料電池接合体の本体内に、または燃料電池接合体の本体の外部に位置させることができる。
【0010】
必要に応じて、燃料電池プレートは複数のコネクタを含み、コンディショニングスイッチは対応して、複数のコネクタに接続し、それらの関連付けられた燃料電池の電気的接続を選択的に提供するように一緒に動作するように構成された複数のスイッチング素子を含む。それぞれのコンディショニングスイッチは、複数の半導体デバイスによって提供されてもよい。燃料電池プレート上の複数のコネクタは、有利には、複数の半導体デバイスの接続点を提供することができる。これは、スイッチング素子によって形成される電気的接続によって大きな電流が流れる必要がある場合に有利であり得る。したがって、複数の半導体デバイスを一緒に作動させて、コンディショニングスイッチの機能を提供するように構成することができる。
【0011】
必要に応じて、それぞれの燃料電池プレートは少なくとも2つのコネクタを含み、少なくとも2つのコネクタは燃料電池プレートの異なる側部に形成される。少なくとも2つのコネクタは、燃料電池プレートの同じ側部、燃料電池プレートの異なる側部または対向する側部に設けられてもよい。大電流が電気接続部を流れる必要がある場合、コネクタを燃料電池プレートの異なる部分に設けることは、コネクタの領域におけるピーク電流密度を低減するのに有利である。他の実施形態では、それぞれの燃料電池プレート上の単一のコネクタが、コンディショニングスイッチへの接続のために設けられる。
【0012】
必要に応じて、複数の燃料電池は、スタック内の複数の燃料電池セルのそれぞれに反応物を搬送するため、または複数の燃料電池のそれぞれから排気流を受け入れるために燃料電池スタックと一緒に配置されたマニホールドを含むスタックに一緒に配置され、接合体は、燃料電池スタックとマニホールドの間で延在する基板を含み、基板は、1つ以上のコンディショニングスイッチを含む。必要に応じて、それぞれの燃料電池は、燃料電池の膜電極接合体に当接するように構成された燃料電池プレートと、それぞれの燃料電池プレートと係合するように構成された基板を含む。それぞれの燃料電池用の共通の基板を設けてもよい。基板は、複数の燃料電池用のコンディショニングスイッチを共通の基板上に取り付けることができ、それによって担持されたコンディショニングスイッチがスタック内の燃料電池に接続するように配置できるので、有利である。
【0013】
必要に応じて、電気的接続は、所定の電圧に関連付けられる燃料電池を横切る電圧を制御するように構成された燃料電池電圧制御素子を含む。燃料電池電圧制御素子は、制御可能なインピーダンスを含むことができる。燃料電池電圧制御素子は、その関連付けられる燃料電池のアノードにおける電圧及びカソードにおける電圧を独立して制御するように構成されてもよい。燃料電池電圧制御素子は、燃料濃度/燃料量/アノードフラッディングレベルを制御してアノード電圧を制御するように構成されてもよい。燃料電池電圧制御素子は、酸化剤濃度/酸化剤量/カソードフラッディングを制御してカソード電圧を制御するように構成されてもよい。
【0014】
必要に応じて、燃料電池電圧制御素子は、所定の電圧が燃料電池接合体の動作中に構成可能であるように制御可能である。これにより、それぞれの燃料電池またはそのアノード/カソードの降圧/昇圧される電圧を積極的に制御することができる。コンディショニングスイッチは、燃料電池電圧制御素子への接続を提供することができる。あるいは、コンディショニングスイッチは、燃料電池電圧制御素子の一部を形成してもよい。いずれの場合も、関連付けられる燃料電池(複数可)のアノードとカソードとの間の電気的接続が形成される。
【0015】
必要に応じて、複数のコンディショニングスイッチが設けられ、コンディショニングスイッチコントローラが前記コンディショニングスイッチを制御するように構成される。したがって、接合体の燃料電池はそれぞれ、関連付けられるコンディショニングスイッチ及び/または燃料電池電圧制御素子を有することができる。コントローラは、有利には、コンディショニングスイッチを作動させ、及び/または必要に応じて、順次または一緒に、燃料電池電圧制御素子を制御することができる。
【0016】
必要に応じて、コントローラは、燃料電池接合体の始動または停止時に電気的接続を選択的に提供するためにコンディショニングスイッチを作動させるように構成される。始動時に、コンディショニングスイッチの作動は、接合体を通って移動する反応物圧力波面によって引き起こされる劣化から接合体の燃料電池を保護することができる。停止時に、スイッチの作動は残留反応物の消費を助けることができる。したがって、反応物の提供開始後の時間などの始動期間外では、コンディショニングスイッチの選択的作動は、周波数が低減されるか停止され得る。
【0017】
必要に応じて、コントローラは、コンディショニングスイッチを作動させて、複数の燃料電池にわたって順次に電気的接続を選択的に提供するように構成される。必要に応じて、接合体内の燃料電池の10%または5%未満、または1つの燃料電池のみがいつでも電気的接続を提供される。それぞれのコンディショニングスイッチは個別に作動させることができるが、コントローラはいつでも2つ以上を作動させることができることが理解されよう。
【0018】
必要に応じて、コントローラは、所定の閾値を超える燃料電池接合体の電圧に応答して、コンディショニングスイッチを作動させて電気的接続を選択的に提供するように構成される。開回路電圧に近い燃料電池接合体を作動させることは、劣化を引き起こすことがあるが、コンディショニングスイッチの選択的使用によって軽減され得る。
【0019】
必要に応じて、コントローラは、関連付けられる閾値を過ぎた燃料電池性能の1つ以上の測定量に応答して、コンディショニングスイッチを作動して電気的接続を選択的に提供するように構成される。
【0020】
必要に応じて、燃料電池性能の測定量は、
i)燃料電池接合体内の、一酸化炭素などの混入物の測定量、または
ii)複数の燃料電池内の任意の1つ(または2つ以上)の燃料電池の電圧の測定量、または
iii)冷却剤を有する個別の燃料電池(または2つ以上の燃料電池)のフラッディングの測定量、または
iv)温度もしくは湿度などの、前記燃料電池接合体に近接する環境条件の測定量、を含む。
【0021】
必要に応じて、コントローラは、コンディショニングスイッチを作動して、接合体の燃料電池接合体を通る反応物流の増加が開始してから、反応物の流量または圧力が所定のレベルに達するまでの間に少なくとも、電気的接続を選択的に提供するように構成される。反応物流の増加は、燃料電池の始動時に重要な圧力波面を生じさせる可能性がある。圧力波面の有害な影響はコンディショニングスイッチを使用することで軽減され得る。
【0022】
必要に応じて、コントローラは、燃料電池の特定の1つを横切る電圧が、接合体内の少なくとも1つの他の燃料電池に対して負になったか、または負になりそうであるという指示に応答して、コンディショニングスイッチを作動して特定の燃料電池の電気的接続を選択的に提供する。必要に応じて、コントローラは、接合体内のそれぞれの燃料電池を横切る電圧を監視するように構成される。
【0023】
必要に応じて、コントローラは、関連付けられるコンディショニングスイッチの作動によって燃料電池接合体内の少なくとも1つの燃料電池の温度を制御して、前記少なくとも1つの燃料電池の電気的接続を選択的に提供するように構成される。これは、燃料電池接合体が、複数の燃料電池を横切る所定の閾値温度を維持するために、サブゼロ条件で動作している場合に有利であり得る。コントローラは、閾値よりも低い周囲温度で燃料電池スタックを動作させるとき、または燃料電池スタックが閾値よりも低い温度にあるとき、燃料電池スタックの中心にある燃料電池に優先して燃料電池スタックの端部で燃料電池のコンディショニングスイッチを動作させるように構成することができる。
【0024】
必要に応じて、コントローラは、特定の燃料電池のコンディショニングスイッチを選択的に作動してそれらの温度を上昇させることによって、燃料電池接合体内の燃料電池の温度を均衡させるように構成される。
【0025】
必要に応じて、コントローラは、燃料電池接合体の始動時に、燃料電池のうちの少なくとも1つのコンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を提供し、その燃料電池を流れる電流が閾値に達したことに応答して、関連付けられるコンディショニングスイッチを作動させて、電気的接続を遮断する。必要に応じて、コントローラは、燃料電池接合体の始動時に、少なくとも2つの燃料電池のコンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を提供し、少なくとも2つの燃料電池の特定の燃料電池を流れる電流が閾値に達したことに応答して、その関連付けられるコンディショニングスイッチを作動して電気的接続を遮断する。したがって、それぞれの燃料電池を流れる電流がその閾値に達すると、コンディショニングスイッチを作動して電気的接続を解除することができる。
【0026】
必要に応じて、コントローラは、燃料電池接合体の始動時に、燃料電池接合体内の大部分の燃料電池のコンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を提供し、特定の燃料電池を通る電流が閾値に達したことに応答して、その関連付けられるコンディショニングスイッチを作動して電気的接続を遮断する。さらなる例では、電気的接続は、接合体内のすべての燃料電池に対して提供されてもよく、それぞれの燃料電池が所定の電圧に達したときに、関連付けられるコンディショニングスイッチを開いて接続を遮断してもよい。
【0027】
第2の態様によれば、負荷に電力を一括して供給するために一緒に接続された複数の燃料電池を含む燃料電池接合体を動作させる方法であって、
負荷とは独立して燃料電池または燃料電池のグループを横切る電圧を制御するために、接合体の少なくとも1つの燃料電池のアノードとカソードとの間、または燃料電池のグループの場合、グループの第1の燃料電池のアノードと最後の燃料電池のカソードとの間、の電気的接続を選択的に提供することを含む方法を提供する。
【0028】
必要に応じて、この方法は、燃料電池接合体の始動または停止時に電気的接続を選択的に提供するためにコンディショニングスイッチを作動させるステップを含む。始動期間または停止期間外では、スイッチを、その温度または個別の燃料電池電圧などの、燃料電池接合体の測定された変数に応答して、僅かまたはそれだけに作動することができる。
【0029】
必要に応じて、方法は、コンディショニングスイッチを作動させて、複数の燃料電池にわたって順次に電気的接続を選択的に提供するステップを含む。必要に応じて、燃料電池の10%、5%未満、または1つの燃料電池のみがいつでも電気的接続を提供される。
【0030】
必要に応じて、方法は、所定の閾値を超える燃料電池接合体の電圧に応答して、コンディショニングスイッチを作動させて電気的接続を選択的に提供するステップを含む。閾値は、接合体の開回路電圧に基づく電圧を含んでもよい。
【0031】
必要に応じて、方法は、関連付けられる閾値を過ぎた燃料電池性能の1つ以上の測定量に応答して、コンディショニングスイッチを作動して電気的接続を選択的に提供するステップを含む。
【0032】
必要に応じて、燃料電池性能の測定量は、
i)燃料電池接合体内の、一酸化炭素などの混入物の測定量、または
ii)複数の燃料電池内の任意の1つ(または2つ以上)の燃料電池の電圧の測定量、または
iii)冷却剤を有する個別の燃料電池(または2つ以上の燃料電池)のフラッディングの測定量、または
iv)温度もしくは湿度などの、前記燃料電池接合体に近接する環境条件の測定量、を含む。
【0033】
必要に応じて、方法は、コンディショニングスイッチを作動して、接合体の燃料電池接合体を通る反応物流の増加が開始してから、反応物の流量または圧力が所定のレベルに達するまでの間に少なくとも、電気的接続を選択的に提供するステップを含む。所定のレベルは、所与の反応物流量に対する基準動作圧力であることができる。
【0034】
必要に応じて、方法は、燃料電池の特定の1つを横切る電圧が、接合体内の少なくとも1つの他の燃料電池に対して負になったか、または負になりそうであるという指示に応答して、コンディショニングスイッチを作動して特定の燃料電池の電気的接続を選択的に提供するステップを含む。
【0035】
必要に応じて、方法は、接合体内の燃料電池のそれぞれを横切る電圧を監視するステップを含む。
【0036】
必要に応じて、方法は、コンディショニングスイッチを作動して前記少なくとも1つの燃料電池のための電気的接続を選択的に提供することによって、燃料電池接合体内の少なくとも1つの燃料電池の温度の制御を提供するステップを含む。
【0037】
必要に応じて、方法は、特定の燃料電池のコンディショニングスイッチを選択的に作動してそれらの温度を上昇させることによって、燃料電池接合体内の燃料電池の温度を均衡させるステップを含む。
【0038】
必要に応じて、この方法は、燃料電池接合体の始動時に、少なくとも2つの燃料電池のコンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を提供し、特定の燃料電池を流れる電流が閾値に達したことに応答して、その関連付けられるコンディショニングスイッチを作動させて電気的接続を遮断するステップを含む。
【0039】
必要に応じて、方法は、燃料電池接合体の始動時に、燃料電池接合体内の大部分の燃料電池のコンディショニングスイッチを作動して前記電気的接続を提供し、特定の燃料電池を通る電流が閾値に達したことに応答して、その関連付けられるコンディショニングスイッチを作動して電気的接続を遮断するステップを含む。
【0040】
必要に応じて、電気的接続を選択的に提供するステップは、30秒未満、10秒未満、5秒未満、3秒未満、もしくは1秒未満の間、前記電気的接続を連続的に提供することを含む。
【0041】
さらなる態様によれば、第2の態様の方法を実施するためのプロセッサ及びメモリを有するコンピューティングデバイス上で実行するための命令を含むコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品が提供される。
【0042】
プロセッサ及び/またはメモリは、燃料電池接合体に埋め込まれてもよく、プロセッサは、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを備えてもよいことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の実施形態の詳細な説明は、以下の図面を参照して、単なる一例として以下に続く。
【
図1】コンディショニングスイッチモジュールを有する第1の例示燃料電池接合体の展開概略図を示す。
【
図2】
図1の燃料電池接合体のより詳細な概略図を示す。
【
図3】燃料電池接合体の動作方法を例示する第1のフローチャートを示す。
【0044】
図1は、この例では、燃料電池スタックを含む燃料電池接合体1を示す。燃料電池スタックは、負荷(図示せず)に電力を一括して供給するために一緒に接続された複数の燃料電池2を含む。したがって、個別の燃料電池2は、一緒に電気的に接続され、モータを駆動するために使用され得る複合電力出力を提供する。例えば、燃料電池接合体は、車両の動力源を提供するように構成することができる。燃料電池2は、プロトン交換膜、触媒層及びガス拡散層を含む膜電極接合体3を含むことができ、燃料電池プレート4の間に配置されている。この例の燃料電池プレートは、バイポーラプレートであり、一方の側の燃料電池のアノード側と他方の側の隣接する燃料電池のカソード側とを形成する。したがって、それぞれの燃料電池は、アノード5及びカソード6を含む。プレートは、代わりに、ユニポーラプレートを含むことができる。燃料電池プレート3は、関連付けられる膜電極接合体上に導くように反応物流を受け取るためのチャネルを含むか、または画定することができる。チャネルは、プレート3の一端から他端まで伸長してもよい。
【0045】
図2を参照すると、複数の燃料電池2のうちの1つ以上は、コンディショニングスイッチ7を含む。コンディショニングスイッチ7は、その関連付けられる燃料電池2を短絡するため、関連付けられる燃料電池2のアノード5とカソード6との間の電気的接続13または短絡経路を選択的に提供するように構成される。したがって、選択された電気的接続13を介してコンディショニングスイッチは、負荷とは独立して電池を横切る電圧を制御する。電気的接続は、低インピーダンス経路(接合体の一部として負荷に電力を供給する燃料電池に対して低インピーダンス経路など)を選択的に提供することによって、その関連付けられる燃料電池を短絡させる。燃料電池スタック1の動作中のコンディショニングスイッチ7の能動的な制御、特に負荷とは独立してスタック内の個別の燃料電池を横切る電圧の能動的な制御は、燃料電池スタックの性能にとって有利である。この能動的個別燃料電池電圧制御は、高分子電解質膜、すなわち酸性またはアルカリ性の高分子電解質膜ベースの燃料電池またはリン酸燃料電池を使用するすべての燃料電池技術において有利に使用することができる。理論に縛られることを望むものではないが、接合体内の個々の燃料電池の選択的な短絡は、膜及び/または触媒層の電気化学的健全性を改善し得ると考えられる。
【0046】
この例では、燃料電池スタック1内の燃料電池2のそれぞれは、関連付けられるコンディショニングスイッチを含む。特に、燃料電池スタック1のそれぞれの燃料電池2には、第1及び第2のスイッチング素子8、9を含むコンディショニングスイッチ7が設けられている。第1のスイッチング素子8は、第1の基板10に設けられ、第2のスイッチング素子9は、異なる第2の基板11上に設けられている。第1及び第2のスイッチング素子8、9は、異なる位置のそれぞれの燃料電池のアノード及びカソードに接続する。これは、2つ以上のスイッチング素子を設けることにより、スイッチング素子とアノード/カソードとの間に流れる電流密度の分布を可能にするので有利である。
【0047】
コンディショニングスイッチ7のスイッチング素子は、半導体デバイスとして具体化されてもよく、この例ではトランジスタを含む。したがって、第1の基板10及び/または第2の基板11は、その上にスイッチング素子を有するプリント回路基板(PCB)またはセラミック基板を含むことができる。
【0048】
コンディショニングスイッチ、特にスイッチング素子は、コントローラ12からスイッチング信号を受信するように構成されている。コントローラ12は、制御信号をトランジスタベースのスイッチング素子のゲートターミナルに通して、アノード5及びカソード6に接続されている2つの他のトランジスタ端子の間の電気的接続を制御することができる。
【0049】
別の例では、電気的接続13は、燃料電池電圧制御素子(図示せず)を含む。燃料電池電圧制御素子は、制御可能インピーダンスなどの能動的構成要素を含むことができる。これは、コンディショニングスイッチが電気的接続を形成するとき、燃料電池電圧制御素子が、負荷とは独立して燃料電池を横切る電圧を能動的に制御することを可能にする。燃料電池電圧制御素子は、アノードにおける電圧及び/またはカソードにおける電圧が個別に制御され得るように構成され得る。燃料電池電圧制御素子を、燃料濃度/燃料量/アノードフラッディングレベルを制御して、アノード電圧を制御するように構成することができる。燃料電池電圧制御素子を、酸化剤濃度/酸化剤量/カソードフラッディングを制御してカソード電圧を制御するように構成することができる。燃料または酸化剤レベルとの組み合わせで電気的接続を制御してアノード及び/またはカソードにおける電圧を制御することが有利であり得る。燃料電池電圧制御素子を、コントローラ12によって制御することができる。
【0050】
図1に戻ると、燃料電池2のそれぞれに1つ以上の反応物を供給するように構成された入口マニホールド14が示されている。排気マニホールド15は、未使用の反応物及び反応副産物を燃料電池から受け取り、燃料電池接合体から排気流を提供するように構成される。したがって、燃料電池プレート4及び/または燃料電池2は、入口マニホールド14から反応物流を受け取り、反応物(複数可)を燃料電池のそれぞれの活性領域に向け、排気流を排気マニホールド15に通すように構成される。第1の基板10は、燃料電池スタック2と入口マニホールド14との間に取り付けられる。第2の基板は、燃料電池スタック2と出口マニホールド15との間に取り付けられる。
【0051】
燃料電池プレート4は、コンディショニングスイッチまたはそのスイッチング素子に接続するための突出タブを設けることができるコネクタを含むことができる。したがって、第1及び第2の基板10、11は、それらのコンディショニングスイッチを燃料電池プレート4のコネクタ/タブに接続するために、例えば開口部または接続構造を含むことによって適合させることができる。
【0052】
図1及び2は、電気的接続の選択的スイッチングがどのように達成され得るかの一例を示しているが、他の構造及び構成が利用可能であることが理解されよう。例えば、半導体デバイスは、燃料電池プレートに一体化することができる。
【0053】
図3は、ステップ30において、負荷とは独立して燃料電池を横切る電圧を制御するために、接合体の少なくとも1つの燃料電池のアノードとカソードとの間の電気的接続を選択的に提供することを含む燃料電池を動作させる方法を示している。選択的な電気的接続は、例えば10msのコンディショニング期間の後に除去される。この方法は、ステップ31に示すように、負荷とは独立して燃料電池を横切る電圧を制御するために、接合体の燃料電池の少なくとも1つの他のアノードとカソードとの間に電気的接続を選択的に提供することを含むことができる。
【0054】
この方法は、ステップ32に示すように、燃料電池接合体内の複数の燃料電池の電気的接続を順次に提供することを含むことができる。電気的接続の順次供給は、燃料電池接合体の始動または停止時に開始することができる。このステップは、燃料電池のサブセットが電気的接続を提供され、残りの燃料電池は供給されないように、限定された回数だけ実行されてもよい。あるいは、燃料電池のすべてに、所定の回数、またはカソード排気温度などの燃料電池接合体測定値が達成されるまで、関連付けられる電気的接続を順次に提供することができる。この方法は、燃料電池接合体の動作中に周期的に呼び出されてもよい。したがって、燃料電池接合体の動作中に、燃料電池に電圧を制御するための前記電気的接続が提供される第1のモードと、電気的接続が提供されない第2のモードの2つの動作モードが提供されてもよい。燃料電池接合体は、第1のモードと第2のモードとの間で周期的に交互になるように構成されてもよい。任意の1つの燃料電池の電気的接続は、例えば5秒未満、2秒未満、1秒未満、0.5秒未満または0.1秒未満のように瞬間的に提供されてもよい。第1または第2のモードの選択は、1つ以上の燃料電池を横切る温度または電圧などの閾値に対する燃料電池接合体に関連付けられる測定量に基づくことができる。
【0055】
電気的接続による燃料電池電流の瞬間的な増加及び燃料電池の電位の低下は、燃料電池の動作にいくつかの潜在的利益をもたらす可能性がある。この方法の多くの有利な実装を以下に説明する。以下に説明する方法は、記載された方法を実施するように構成されたスイッチングコントローラ及び/または燃料電池電圧制御素子によって実装されてもよいことが理解されよう。
【0056】
第1に、選択的な電気的接続を使用して、燃料電池の膜電極接合体を迅速に調整することができる。したがって、選択的な電気的接続は、反応物の流れを受けている間に、燃料電池接合体内の燃料電池に対して1回以上、順番にまたは一緒に供給されてもよい。選択的な電気的接続を用いることにより、それぞれの燃料電池の挙動のバランスにかかわらず、燃料電池の急速な電圧及び負荷循環を安全に誘導することができる。理論に縛られることを望むものではないが、燃料電池の電圧及び負荷を急速に循環させるこのプロセスは、燃料電池製造に使用される溶媒/不純物の酸化及び蒸発を迅速に促進し、一方、燃料電池を調整するのに必要な膜及びアイオノマー構造内の変化を促すと予期される温度及び湿度サイクルを誘発すると考えられる。
【0057】
さらに、選択的な電気的接続を、動作しない長期間後に燃料電池を迅速に調整するために提供することができる。したがって、接合体を、燃料電池接合体の最後の動作からの時間を決定し、未使用の時間閾値を超える場合には、接合体の複数の燃料電池のうちの1つ以上の選択的な電気的接続のために提供するように構成してもよい。
【0058】
燃料電池電圧制御素子を、選択的な電気的接続によって燃料電池接合体の電流、カソード/アノード電位、温度及び水和を安全に操作するように構成することができる。これらのパラメータは、燃料電池接合体を作動するように制御することができる。したがって、負荷とは独立して燃料電池を横切る電圧を制御するために、接合体の少なくとも1つの燃料電池のうちのアノードとカソードとの間の電気的接続を選択的に提供することを含む燃料電池接合体を作動する方法を提供する。燃料電池接合体の作動は、それが組み立てられた後の反応物流により初めて燃料電池接合体を動作させることを含むことができる。
【0059】
この方法は、燃料電池膜及び/または触媒層の所定の水和レベルを維持するのに有利であることが分かっている。この方法の使用は、開回路電圧(OCV)またはそれに近い電圧において長期間の膜脱水を避けることができる。特定の状況において、高インピーダンス負荷または開回路状態で燃料電池接合体を動作させると、それぞれの燃料電池の活性領域を形成し、電気化学的燃料電池反応が生じる膜及び触媒が脱水されることがある。これは、燃料電池接合体の動作寿命の短縮または性能の低下を引き起こす可能性がある。理論に縛られることを望むものではないが、電気的接続を提供することにより、燃料電池の電気化学的反応がより速い速度で進行することが可能になり、反応副産物(水素酸素燃料電池内の)としての水を生成して膜を水和する可能性がある。
【0060】
したがって、この方法は、負荷とは独立して燃料電池を横切る電圧を制御するために、接合体の少なくとも1つの燃料電池のアノードとカソードとの間の電気的接続を選択的に提供することを含む、燃料電池接合体を水和する方法を含むことができる。この方法は、燃料電池膜及び/または触媒を水和するために周期的に、または連続的に行われ、低湿度条件に関連付けられる劣化メカニズムを回避することによって動作寿命を延ばすことができる。この方法は、接合体の燃料電池または接合体の燃料電池のサブセットを横切る電圧が、OCV値付近などの所定の電圧閾値を上回っている場合に実行されてもよい。したがって、上述の第1及び第2の動作モードは、上述の燃料電池接合体電圧または燃料電池水和の別の測定量に基づいて決定されてもよい。
【0061】
選択的な電気的接続を使用する燃料電池接合体の水和は、燃料電池接合体に導入される加湿流体の流れなしで動作する燃料電池接合体(すなわち、電気化学反応副産物によって燃料電池接合体内に加湿が生成される接合体)に特に有利である。
【0062】
本方法はブロッキング種、例えば、燃料電池酸化剤(すなわち、空気汚染物質)及び/または表面酸化物に含まれる燃料電池触媒中毒種の除去に有利であることが判明している。特に、燃料電池電圧制御素子の動作を用いて、それぞれの燃料電池のカソードでの電位を操作して、カソード被毒の影響を緩和することができる。
【0063】
特に、燃料電池の電圧制御素子は、燃料電池のカソード電位がアノード電位に向かって低下し、0.2V未満の低い燃料電池電位が、酸化供給及び/または電力需要に関係なく達成され得るように、燃料電池酸化剤の欠乏(すなわち、カソード欠乏)を誘発するように使用され得る。水素-酸素PEM燃料電池接合体では、燃料電池のカソード電位は、名目上0.6VRHE(可逆的水素電極)を上回るが、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1VRHEよりも低くすることができる。
【0064】
したがって、負荷とは独立して燃料電池を横切る電圧を制御するために、接合体の少なくとも1つの燃料電池のアノードとカソードとの間の電気的接続を選択的に提供することを含む燃料電池接合体における燃料電池のカソード被毒の影響を緩和する方法を提供する。カソード電極における電圧は、アノード電位の制御に優先して低減されてもよい。
上述したように、これは、例えば、カソード制限電流(すなわち、利用可能な酸化剤によって制限される)がアノード制限電流(すなわち、利用可能な燃料によって制限される)よりも大幅に低い値に減少するように酸化剤濃度を減少させることによって、酸化剤供給またはカソード動作条件の流体操作により達成され得る。選択的電気的接続を係合させて「酸化剤枯渇状態」を誘発すると、カソード電気化学電位は、アノード電気化学電位に向かって減少するように誘導することができる。
【0065】
本方法は、プロトン交換膜水素-酸素燃料電池接合体において、溶解した白金Pt2+触媒材料の再堆積を促進する点で有利であることが判明している。特に、カソードが実質的に0.4Vより低くなるようにカソード電位を周期的に操作することによりそれぞれの燃料電池の触媒層中の活性触媒粒子上に溶解したPt2+イオンを再沈殿させ、燃料電池の耐久性を向上させることができる。理論に縛られることなく、通常の燃料電池動作中に、水素の存在下で膜電解質中に白金粒子として再沈殿するPt2+イオン中間体を形成する燃料電池膜電解質に白金粒子の表面原子が溶解するとも考えられる。しかしながら、これらの粒子は、膜に隣接する触媒層ではなく膜に再沈殿するため、燃料電池反応を触媒するために不活性である。
【0066】
したがって、この方法は、負荷とは独立して燃料電池を横切る電圧を制御するために、接合体の少なくとも1つの燃料電池のアノードとカソードとの間の電気的接続を選択的に提供することを含む、燃料電池接合体を形成する複数の燃料電池の少なくとも1つの触媒層内の触媒粒子のレベルを制御する方法を含む。カソード電極における電圧は、アノード電位の制御に優先して低減されてもよい。
【0067】
この方法は、所定の燃料電池接合体(または燃料電池スタック)の温度を維持するのに有利であることが分かっている。この方法は、例えば、燃料電池の負荷需要に関係なく、サブゼロの周囲環境での動作中にスタック温度を維持するために低電力需要期間(閾値に対する電力需要)に応じて係合させることができる。
【0068】
したがって、本方法は、複数の燃料電池を含む燃料電池接合体内の燃料電池の温度を制御する方法を含むことができ、この方法は、負荷とは独立して燃料電池を横切る電圧を制御することために、少なくとも1つの燃料電池のアノードとカソードとの間の電気的接続を選択的に提供することを含む。したがって、電気的接続により順次に燃料電池を加熱するように電流を流すことが可能になる。この方法は、所定の燃料電池温度を維持するように構成することができる。燃料電池接合体の動作中、2つの動作モードが提供されてもよく、最初に、燃料電池がその温度を上昇させるために前記電気的接続(順番など)を選択的に備え、第2のモードは、電気的接続(複数可)が提供されていない場合であり、もし燃料電池接合体の温度が所定の温度閾値を下回るとき(または、電力出力が「低電力」出力閾値を下回るとき)、及び動作される第2のモードの温度が所定の温度閾値を上回るとき、第1のモードが動作される。所定の温度閾値は4℃(もしくは0、1、2、3、5、6℃)を含むことができる。
【0069】
この方法は、燃料中の混入物(例えば、一酸化炭素、CO)などのアノード流体流中に存在する燃料電池触媒被毒混入物の酸化及び/または脱着を容易にするアノード電位の操作に有利であることが判明している。
【0070】
燃料電池電圧制御素子は、COなどの燃料混入物が酸化/脱着され燃料電池性能を回復する程度にアノード電位を過電位まで増加させることによって、燃料欠乏状態を誘発するように構成することができる。
【0071】
したがって、本方法は、負荷とは独立して燃料電池の両端の電圧を制御するために、少なくとも1つの燃料電池のアノードとカソードとの間の電気的接続を選択的に提供することを含む燃料電池接合体を形成する複数の燃料電池の燃料電池のアノードから混入物を除去する方法を含む。特に、この方法は、カソード電位に優先してアノード電位を制御するステップを含むことができる。これは、例えばアノード制限電流(すなわち、利用可能な燃料によって制限される)がカソード制限電流(すなわち、利用可能な酸化剤に制限される)の値よりも大幅に低い値に減少するように燃料濃度を低減することによって、燃料供給またはアノード動作条件の流体操作によって達成され得る。選択的な電気的接続を係合して「燃料欠乏状態」を誘発すると、アノード電気化学電位を、カソード電気化学電位に向かって増加するように誘導することができる。
【0072】
さらなる例では、コントローラは、コンディショニングスイッチを作動して、接合体の燃料電池を通る反応物流の増加が開始してから、反応物の流量または圧力が所定のレベルに達するまでの間に少なくとも、電気的接続を選択的に提供するように構成される。反応物流が増加すると、増加した圧力の反応物の「フロント」を、燃料電池接合体内で移動させることがある。この圧力フロントは、燃料電池接合体をオフ状態から始動するときに重要であり得る。燃料電池接合体を停止するときに、減圧された圧力フロントが燃料電池接合体を通って移動してもよく、コントローラは、このような状況でコンディショニングスイッチを作動するように構成されてもよい。
【0073】
この方法を、アノード/カソードを通って流れる水素/空気フロントの存在中に電流を有利に短絡するように実装することができ、逆電流減衰メカニズム及び/または急速な燃料電池の停止の低減の利点を提供し得る。
【0074】
逆電流減衰メカニズムは、燃料電池接合体内の燃料電池が、接合体内の他の燃料電池によって生成された電流によって駆動され、通常の動作に比べて逆電流が生じる。これは、関連する燃料電池の性能を低下させる可能性がある。電気的接続を提供すること及び/または電気的接続を介して燃料電池の電圧を制御することにより、反応物圧力フロントの間に低い電池電圧(例えば、水素酸素ポリマー膜ベースの燃料電池の場合には0.2V未満)を達成することができる。
【0075】
圧力フロントが発生する完全な始動/停止中に通常生じる劣化は、ほぼ完全に排除され得ることが判明している。これにより、特に自動車用途などの多くの完全な燃料電池始動/停止事象を必要とする用途において、燃料電池の耐久性を劇的に改善する。
【0076】
したがって、この方法は、燃料電池接合体を通る反応物(燃料など)の圧力及び/または流量の増加に応答して、接合体内の1つ以上の燃料電池の前記コンディショニングスイッチを作動するステップを含むことができる。コンディショニングスイッチは、すべて一緒に、またはグループで順次に、または個別にかつ順次に作動することができる。
【0077】
水素燃料化燃料電池接合体の停止時に、残留水素が燃料電池接合体内に存在する可能性がある。水素濃度を所定のレベルまで低下させることが重要である。この方法は、接合体の停止時に燃料電池接合体内の残留水素を消費するために使用されてもよい。コンディショニングスイッチを作動することによって、水素が急速に消費される可能性がある。
【0078】
したがって、この方法は、燃料電池接合体の停止時に、接合体内の1つ以上の燃料電池の前記コンディショニングスイッチを作動するステップを含むことができる。コンディショニングスイッチは、すべて一緒に、またはグループで順次に、または個別にかつ順次に作動することができる。このステップを、接合体を通じて反応物を駆動する圧縮機が停止されるときのように、燃料電池接合体を通る燃料及び/または酸化剤の流れの停止に応答して実行してもよい。
【0079】
ある状況では、コンディショニングスイッチの作動時に、アノードコンパートメント/燃料供給接続部に存在する残留水素が急速に消費され、燃料電池スタックが完全に放電され、わずか数秒後安全な休止状態に留まる。同様に、酸素は、カソードコンパートメントを排気するためにカソードコンパートメントで消費されてもよい。
【0080】
他の実施形態(図示せず)では、単一のコンディショニングスイッチ(1つ以上のスイッチング素子で形成することができる)が、燃料電池接合体内の直列に接続された燃料電池のグループを横切る電圧の制御を提供することができる。したがって、コンディショニングスイッチは、直列に接続された燃料電池グループと回路を形成する電気的接続を提供するように作用することができる。したがって、単一の燃料電池のための電気的接続を提供するのではなく、燃料電池のグループに対して電気的接続が提供される。
【0081】
燃料電池接合体は、燃料電池システム内に複数の燃料電池接合体の1つを形成することができる。コンディショニングスイッチの作動は、順番に燃料電池接合体のそれぞれを横切って行われてもよい。したがって、第1の燃料電池接合体のコンディショニングスイッチを作動させ、その後に第2の燃料電池接合体のコンディショニングスイッチを作動させることができる。これは、コンディショニングスイッチの作動を受けていない燃料電池接合体が通常の動作モードで動作することができるので、有利であり得る。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を一括して提供するために一緒に接続された複数の燃料電池を含む燃料電池接合体を動作させる方法であって、前記方法は、
1つのグループの燃料電池の間、および、前記1つのグループの燃料電池のうちの最初の燃料電池のアノードと最後の燃料電池のカソードとの間の電気的接続を選択的に提供して、前記負荷とは独立して、前記1つのグループの前記燃料電池を横切る電圧、または、前記1つのグループの燃料電池の全体を横切る電圧を制御するステップと、
コンディショニングスイッチを制御するように構成されたコンディショニングスイッチコントローラを作動させて、前記燃料電池接合体の第1のモードの動作において、前記1つのグループの燃料電池のうちの最初の燃料電池のアノードと最後の燃料電池のカソードとの電気的接続を行い、前記燃料電池接合体の第2のモードの動作において、前記コンディショニングスイッチを非活性化させるステップとを有することを特徴とする方法。