(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058783
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】マルチセル・ウルトラキャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 11/78 20130101AFI20220405BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20220405BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20220405BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20220405BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20220405BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20220405BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20220405BHJP
【FI】
H01G11/78
H01G11/68
H01G11/70
H01G11/42
H01G11/60
H01G11/62
H01G11/10
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022011538
(22)【出願日】2022-01-28
(62)【分割の表示】P 2018561044の分割
【原出願日】2017-05-17
(31)【優先権主張番号】62/339,172
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】クノップスナイダー,ジョナサン・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】リッター,アンドリュー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】柔軟なハウジングを用いて、キャパシタンス及び等価直列抵抗に優れたウルトラキャパシタを提供する。
【解決手段】並列に接続された複数の電気化学セルを含むウルトラキャパシタ101であって、セル104は、炭素質材料でコーティングされた対向する面を有する集電子を含む第1の電極110と、炭素質材料でコーティングされた対向する面を有する集電子を含む第2の電極120と、第1の電極及び第2の電極の間に位置決めされたセパレータ112とによって画定される。第2のセルは、第2の電極と、炭素質材料でコーティングされた対向する面を有する集電子を含む第3の電極130と、第2の電極及び第3の電極の間に位置決めされたセパレータ114とによって画定される。ウルトラキャパシタは、電極にイオン接触している非水性電解質も含み、非水性溶媒及びイオン性液体も含む。パッケージは、第1のセル、第2のセル及び非水性電解質を封入する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質材料でコーティングされた対向面を有する集電子を含む第1の電極、炭素質材料でコーティングされた対向面を有する集電子を含む第2の電極、ならびに前記第1の電極および前記第2の電極の間に位置決めされたセパレータによって画定された、第1の電気化学セルと、
前記第1のセルと並列に接続された第2の電気化学セルであって、前記第2の電極、炭素質材料でコーティングされた対向面を有する集電子を含む第3の電極、ならびに前記第2の電極および前記第3の電極の間に位置決めされたセパレータによって画定された、第2の電気化学セルと、
前記第1の電極、第2の電極、および第3の電極にイオン接触している非水性電解質であって、非水性溶媒およびイオン性液体を含有する非水性電解質と、そして
前記第1の電気化学セル、前記第2の電気化学セル、および前記非水性電解質を封入するパッケージであって、約20マイクロメートルから約1,000マイクロメートルの厚さを有する支持体を含むパッケージと
を含む、ウルトラキャパシタ。
【請求項2】
温度23℃、周波数120Hzで、印加電圧なしで決定されたとき、立方センチメートル当たり約6ファラド以上のキャパシタンスを示す、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項3】
温度23℃、周波数1kHzで、印加電圧なしで決定されたとき、約150mオーム以下のESRを示す、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項4】
前記第1の電極、第2の電極、第3の電極、またはこれらの組合せの前記集電子が、導電性金属を含む、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項5】
前記導電性金属が、アルミニウムまたはその合金である、請求項4に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項6】
複数の繊維様ウィスカが、前記導電性金属から外向きに突出している、請求項4に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項7】
前記ウィスカが、前記導電性金属の炭化物を含有する、請求項6に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項8】
前記第1の電極、第2の電極、第3の電極、またはこれらの組合せの前記炭素質材料が、活性炭粒子を含有する、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項9】
前記活性炭粒子の少なくとも50体積%が、約0.01から約30マイクロメートルのサイズを有する、請求項8に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項10】
前記活性炭粒子が複数の細孔を含有し、約2ナノメートル以下のサイズを有する細孔の量が全細孔体積の約50体積%以下であり、約2ナノメートルから約50ナノメートルのサイズを有する細孔の量が全細孔体積の約20体積%から約80体積%であり、約50ナノメートル以上のサイズを有する細孔の量が全細孔体積の約1体積%から約50体積%である、請求項8に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項11】
前記非水性溶媒がプロピレンカーボネートを含む、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項12】
前記イオン性液体が、カチオン種および対イオンを含有する、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項13】
前記カチオン性種が、有機第四級アンモニウム化合物を含む、請求項12に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項14】
前記有機第四級アンモニウム化合物が、下記の構造
【化1】
[式中、mおよびnは独立して3から7の数である]
を有する、請求項13に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項15】
前記イオン性液体が、約1.0M以上の濃度で存在する、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項16】
前記第1の電気化学セル、前記第2の電気化学セル、または両方の、前記セパレータが、セルロース繊維材料を含む、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項17】
前記パッケージの前記支持体が、障壁層を含む、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項18】
前記障壁層が金属を含む、請求項17に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項19】
前記支持体が、外層をさらに含む、請求項17に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項20】
前記外層が、ポリオレフィン、ポリエステル、またはこれらの組合せを含むフィルムを含む、請求項19に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項21】
前記支持体が、封止層をさらに含む、請求項17に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項22】
前記封止層がイオノマーを含む、請求項21に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項23】
前記第1および第2の電気化学セルが、一緒に積層される、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項24】
前記第1の電極および前記第3の電極に電気的に接続された第1の端子と、前記第2の電極に電気的に接続された第2の端子とをさらに含む、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項25】
前記第3の電極、炭素質材料でコーティングされた対向面を有する集電子を含む第4の電極、ならびに前記第3の電極および前記第4の電極の間に位置決めされたセパレータによって画定された、第3の電気化学セルをさらに含む、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
【請求項26】
前記第1の電極および前記第3の電極に電気的に接続された第1の端子と、前記第2の電極および前記第4の電極に電気的に接続された第2の端子とをさらに含む、請求項25に記載のウルトラキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、その参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2016年5月20日に出願された米国仮出願第62/339,172号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギー貯蔵セルは、電子、電気機械、電気化学、およびその他の有用なデバイスに電力を提供するのに広く使用される。例えば、電気二重層ウルトラキャパシタは、一般に、液体電解質を含浸させた炭素粒子(例えば、活性炭)を含有する1対の分極性電極を用いる。粒子の有効表面積と、電極間の小さい間隔とに起因して、大きいキャパシタンス値が実現され得る。それにも関わらず、課題が残される。例えば、多くの従来のウルトラキャパシタは、剛性のある金属容器内に設けられる。これらの容器は一般に嵩高く、回路または装置内に事前に製作された実装ポイントの使用を必要とする。このため、種々の寸法のウルトラキャパシタを収容するのが難しい。ウルトラキャパシタは、柔軟なハウジングを用いるものも開発されてきたが、それらは依然として嵩高い傾向があり、比較的低いキャパシタンスおよび高い等価直列抵抗(「ESR」)を有する。したがって、改善されたウルトラキャパシタが現在求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施形態によれば、第1の電気化学セルを、第2の電気化学セルに並列に接続させて含む、ウルトラキャパシタが開示される。第1のセルは、炭素質材料でコーティングされた対向する面を有する集電子を含む第1の電極と、炭素質材料でコーティングされた対向する面を有する集電子を含む第2の電極と、第1の電極および第2の電極の間に位置決めされたセパレータとによって画定される。第2のセルは、第2の電極と、炭素質材料でコーティングされた対向する面を有する集電子を含む第3の電極と、第2の電極および第3の電極の間に位置決めされたセパレータとにより画定される。ウルトラキャパシタは、第1の電極、第2の電極、および第3の電極にイオン接触している非水性電解質も含み、この非水性電解質は、非水性溶媒およびイオン性液体を含む。パッケージは、第1のセル、第2のセル、および非水性電解質を封入し、このパッケージは、約20マイクロメートルから約1,000マイクロメートルの厚さを有する支持体を含む。
【0004】
本発明のその他の特徴および態様について、以下に、さらに詳細に述べる。
当業者を対象にした本発明の完全かつ可能な開示を、その最良の形態も含めて、添付される図を参照しながら本明細書の残りの部分でより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、本発明のウルトラキャパシタで用いられてもよい集電子の、一実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明のウルトラキャパシタで用いられてもよい集電子/炭素質コーティング構成の、一実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明のウルトラキャパシタの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書および図面における参照符号の反復使用は、本発明の同じまたは類似の形体または要素を表すものとする。
当業者なら、本考察が単なる例示的な実施形態の記載であり、例示的な構造に具体化される本発明のより広い態様を、限定するものではないことを理解されたい。
【0007】
概して、本発明は、実際に比較的薄いが依然として高度なキャパシタンスを提供することが可能であるということで、高度な体積効率を有するウルトラキャパシタを対象とする。ウルトラキャパシタは、第1のセルおよび第2のセルなど、少なくとも2つの電気化学セルを含む。第1のセルは、炭素質材料(例えば、活性炭粒子)でコーティングされた対向する面を有する集電子を含む第1の電極と、炭素質材料(例えば、活性炭粒子)でコーティングされた対向する面を有する集電子を含む第2の電極と、第1の電極および第2の電極の間に位置決めされたセパレータとによって画定される。第2のセルは、同様に、第2の電極と、炭素質材料(例えば、活性炭粒子)でコーティングされた対向する面を有する集電子を含む第3の電極と、第2の電極および第3の電極の間に位置決めされたセパレータとにより画定される。所望の特性を実現するのを助けるため、第1および第2のセルは並列に接続される。例えば、第1の端子は第1の電極および第3の電極に電気的に接続され、第2の端子は、第2の電極に電気的に接続される。電解質も、第1の電極、第2の電極、および第3の電極にイオン接触する。
【0008】
本発明者らは、ウルトラキャパシタを形成するのに使用される材料の特定の性質の選択的制御を通して、ならびにそれらが形成される手法を通して、様々な有益な特性が実現され得ることを発見した。例えば、電解質は、一般にその性質が非水性であり、したがって少なくとも1種の非水性溶媒を含有する。電解質は、非水性溶媒に溶解され得る少なくとも1種イオン性液体も含有する。電気化学セル(例えば、電極、セパレータ、および電解質)は、ウルトラキャパシタの構成要素を封入し封止する、比較的薄い柔軟性のあるパッケージ内にも保持される。所望の厚さおよび体積効率を実現するのを助けるため、パッケージは一般に、約20マイクロメートルから約1,000マイクロメートル、いくつかの実施形態では、約50マイクロメートルから約800マイクロメートル、いくつかの実施形態では約100マイクロメートルから約600マイクロメートルの厚さを有するような、実際に比較的薄い支持体から形成される。その薄い性質にも関わらず、得られるウルトラキャパシタは、高温に曝露されたときであっても依然として優れた電気的特性を示す。例えばウルトラキャパシタは、温度23℃、周波数120Hzで、および印加電圧なしで測定したときに、立方センチメートル当たり約6ファラド(「F/cm3」)以上、いくつかの実施形態では約8F/cm3以上、いくつかの実施形態では約9から約100F/cm3、いくつかの実施形態では約10から約80F/cm3のキャパシタンスを示してもよい。ウルトラキャパシタは、温度23℃、周波数1kHzでかつ印加電圧なしで決定されたとき、低い等価直列抵抗(「ESR」)、例えば約150mオーム以下、いくつかの実施形態では約125mオーム未満、いくつかの実施形態では約0.01から約100mオーム、いくつかの実施形態では約0.05から約70mオームを有していてもよい。
【0009】
本発明の様々な実施形態について、次に、より詳細に記載する。
I. 電極
上述のように、電気化学セルに用いられた電極は、一般に、集電子を含む。1つまたは複数のセルの集電子は、同じまたは異なる材料から形成されてもよい。それにも関わらず、各集電子は、典型的には、導電性金属、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、銀、パラジウムなど、ならびにこれらの合金を含む支持体から形成される。アルミニウムおよびアルミニウム合金は、本発明で使用するのに特に適切である。支持体は、箔、シート、プレート、メッシュなどの形をとってもよい。支持体は、比較的小さい厚み、例えば約200マイクロメートル以下、いくつかの実施形態では約1から約100マイクロメートル、いくつかの実施形態では約5から約80マイクロメートル、いくつかの実施形態では約10から約50マイクロメートルを有していてもよい。決して必要というわけではないが、支持体の表面は、任意で、洗浄、エッチング、ブラスト処理などによって粗くしてもよい。
【0010】
ある実施形態では、集電子は、支持体から外向きに突出する複数の繊維状ウィスカを含んでいてもよい。理論に拘泥するものではないが、これらのウィスカは、集電子の表面積を効果的に増大させ、集電子と対応する電極との接着を改善することもできると考えられる。このことは、第1の電極および/または第2の電極における比較的低い結合剤含量の使用を可能にし、電荷移動を改善しかつ界面抵抗を低減させることができ、その結果、非常に低いESR値を得ることができる。ウィスカは、典型的には、炭素、および/または炭素および導電性金属の反応生成物を含有する材料から形成される。例えば、一実施形態では、材料は、炭化アルミニウム(Al
4C
3)などの導電性金属の炭化物を含有してもよい。例えば、
図1を参照すると、支持体1から外向きの突出する複数のウィスカ21を含有する集電子の一実施形態が示されている。所望の場合には、ウィスカ21は、支持体1内に埋め込まれたシード部分3から任意に突出してもよい。ウィスカ21と同様に、シード部分3は、炭素、および/または炭素および導電性金属の反応生成物、例えば導電性金属の炭化物(例えば、炭化アルミニウム)を含有する材料から形成されてもよい。
【0011】
そのようなウィスカが支持体上に形成される手法は、所望の通りに変えてもよい。例えば、一実施形態では、支持体の導電性金属を炭化水素化合物と反応させる。そのような炭化水素化合物の例としては、例えば、パラフィン炭化水素化合物、例えばメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタンなど;オレフィン炭化水素化合物、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンなど;アセチレン炭化水素化合物、例えばアセチレン;ならびに前述のいずれかの誘導体または組合せを挙げることができる。炭化水素化合物は、反応中に気体状形態にあることが一般に望ましい。したがって、加熱したときに気状形態をとる、メタン、エタン、およびプロパンなどの炭化水素化合物を用いることが望ましいと考えられる。必ずしも必要ではないが、炭化水素化合物は、支持体100重量部に対し、約0.1重量部から約50重量部、一実施形態では約0.5重量部から約30重量部の範囲で、典型的には用いられる。炭化水素および導電性金属との反応を開始するために、支持体を、一般的には約300℃以上の温度、一実施形態では約400℃以上、いくつかの実施形態では約500℃から650℃の温度の雰囲気中で加熱する。加熱する時間は、選択された厳密な温度に依存するが、典型的には約1時間から約100時間に及ぶ。雰囲気は、支持体表面での誘電体被膜の形成を最小に抑えるために、典型的には比較的低い量の酸素を含有する。例えば、雰囲気の酸素含量は、約1体積%以下であってもよい。
【0012】
ウルトラキャパシタで使用される電極は、集電子の対向する面にコーティングされた炭素質材料も含む。それらは同じまたは異なるタイプの材料から形成されてもよく、1つまたは複数の層を含んでいてもよいが、炭素質コーティングのそれぞれは一般に、活性化粒子を含む少なくとも1つの層を含む。例えば、ある実施形態では、活性炭層を集電子上に直接位置決めしてもよく、任意に、炭素質コーティングの唯一の層であってもよい。好適な活性炭粒子の例としては、例えば、ヤシ殻をベースにした活性炭、石油コークスをベースにした活性炭、ピッチをベースにした活性炭、ポリ塩化ビニリデンをベースにした活性炭、フェノール樹脂をベースにした活性炭、ポリアクリロニトリルをベースにした活性炭、および石炭、木炭、またはその他の天然有機源などの天然源からの活性炭を挙げることができる。
【0013】
ある実施形態では、活性炭粒子のある態様、例えばそれらの粒度分布、表面積、および孔径分布を選択的に制御することにより、1回または複数回の充放電サイクルに供された後の、あるタイプの電解質に関するイオン移動度を改善するのを助けることが望ましいと考えられる。例えば、粒子の少なくとも50体積%(D50サイズ)は、約0.01から約30マイクロメートル、いくつかの実施形態では約0.1から約20マイクロメートル、いくつかの実施形態では約0.5から約10マイクロメートルの範囲のサイズを有してもよい。粒子の少なくとも90体積%(D90サイズ)は同様に、約2から約40マイク
ロメートル、いくつかの実施形態では約5から約30マイクロメートル、いくつかの実施形態では約6から約15マイクロメートルの範囲のサイズを有してもよい。BET表面は、約900m2/gから約3,000m2/g、いくつかの実施形態では約1,000m2/gから約2,500m2/g、いくつかの実施形態では約1,100m2/gから約1,800m2/gに及んでもよい。
【0014】
あるサイズおよび表面積を有することに加え、活性炭粒子は、あるサイズ分布を有するある細孔を有してもよい。例えば、サイズが約2ナノメートル未満の細孔(即ち、「ミクロ細孔」)の量は、全細孔体積の約50体積%以下、いくつかの実施形態では約30体積%以下、いくつかの実施形態では0.1体積%から15体積%の細孔体積を提供し得る。サイズが約2ナノメートルから約50ナノメートルの間の細孔(即ち、「メソ細孔」)の量は同様に、約20体積%から約80体積%、いくつかの実施形態では約25体積%から約75体積%、いくつかの実施形態では、約35体積%から約65体積%であってもよい。最後に、サイズが約50ナノメートルよりも大きい細孔(即ち、「マクロ細孔」)の量は、約1体積%から約50体積%、いくつかの実施形態では約5体積%から約40体積%、いくつかの実施形態では約10体積%から約35体積%であってもよい。炭素粒子の全細孔体積は、約0.2cm3/gから約1.5cm3/g、いくつかの実施形態では約0.4cm3/gから約1.0cm3/gの範囲であってもよく、メジアン細孔幅は、約8ナノメートル以下、いくつかの実施形態では約1から約5ナノメートル、いくつかの実施形態では約2から約4ナノメートルであってもよい。孔径および全細孔体積は、窒素吸着を使用して測定され、当技術分野で周知のBarrett-Joyner-Halenda(「BJH」)技法によって分析されてもよい。
【0015】
本発明の1つの独自の態様は、電極が、ウルトラキャパシタ電極に従来から用いられるかなりの量の結合剤を含有する必要がないものである。即ち結合剤は、第1および/または第2の炭素質コーティング中、炭素100部当たり約60部以下の量で、いくつかの実施形態では40部以下で、いくつかの実施形態では約1から約25部の量で存在してもよい。結合剤は、例えば、炭素質コーティングの全重量の約15重量%以下、いくつかの実施形態では約10重量%以下、いくつかの実施形態では約0.5重量%から約5重量%を構成してもよい。それにも関わらず、用いられる場合には、様々な適切な結合剤のいずれかを、電極に使用することができる。例えば、水不溶性有機結合剤は、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリ酢酸ビニルホモポリマー、酢酸ビニル-エチレンコポリマー、酢酸ビニル-アクリルコポリマー、エチレン-塩化ビニルコポリマー、エチレン-塩化ビニル-酢酸ビニルターポリマー、アクリルポリ塩化ビニルポリマー、アクリルポリマー、ニトリルポリマー、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリフッ化ビニリデンなどのフルオロポリマー、ポリオレフィンなど、ならびにこれらの混合物などが、ある実施形態で用いられてもよい。水不溶性有機結合剤は、多糖およびその誘導体などが用いられてもよい。ある特定の実施形態では、多糖は、非イオン性セルロースエーテル、例えばアルキルセルロースエーテル(例えば、メチルセルロースおよびエチルセルロース);ヒドロキシアルキルセルロースエーテル(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースなど);アルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテル(例えば、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、およびメチルエチルヒドロキシプロピルセルロース);カルボキシアルキルセルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース);および同様のもの、ならびに前述のいずれかのプロトン化塩、例えばナトリウムカルボキシエチルセルロースであってもよい。
【0016】
所望の場合には、炭素質材料の活性炭層内に、その他の材料を用いてもよい。例えば、ある実施形態では、導電性促進剤を用いて、導電率をさらに増大させてもよい。例示的な導電性促進剤としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛(天然または人工)、黒鉛、カーボンナノチューブ、ナノワイヤまたはナノチューブ、金属ファイバ、グラフェンなど、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。カーボンブラックが特に好適である。用いられる場合、導電性促進剤は、典型的には、炭素質コーティング中の活性炭粒子100部当たり、約60部以下、いくつかの実施形態では40部以下、いくつかの実施形態では約1から約25部を構成する。導電性促進剤は、例えば、炭素質コーティングの全重量の、約15重量%以下、いくつかの実施形態では約10重量%以下、いくつかの実施形態では約0.5重量%から約5重量%を構成してもよい。活性炭粒子は同様に、典型的には、炭素質コーティングの85重量%以上、いくつかの実施形態では約90重量%以上、いくつかの実施形態では約95重量%から約99.5重量%を構成する。
【0017】
炭素質材料が集電子の面にコーティングされる特定の手法は、印刷(例えば、輪転グラビア)、噴霧、スロット-ダイコーティング、ドロップコーティング、浸漬コーティングなど、当業者に周知のように様々であってもよい。塗布する手法とは無関係に、約100℃以上、いくつかの実施形態では約200℃以上、いくつかの実施形態では約300℃から約500℃の温度などで、コーティングから水分が除去されるように、得られる電極を典型的には乾燥させる。電極は、ウルトラキャパシタの体積効率を最適化するために、圧縮され(例えば、カレンダ加工され)てもよい。任意のいずれかの圧縮後、各炭素質コーティングの厚さは一般に、ウルトラキャパシタの所望の電気性能および動作範囲に基づいて変化してもよい。しかし典型的には、コーティングの厚さは、約20から約200マイクロメートル、30から約150マイクロメートル、いくつかの実施形態では約40から約100マイクロメートルである。コーティングは、集電子の片面または両面に存在してもよい。それにも関わらず、電極全体(任意の圧縮後の集電子および炭素質コーティング(複数可)を含む)の厚さは、典型的には約20から約350マイクロメートルの範囲内、いくつかの実施形態では約30から約300マイクロメートルの範囲内、いくつかの実施形態では約50から約250マイクロメートルの範囲内である。
II. 非水性電解質
上述のように、ウルトラキャパシタで用いられる電解質は、一般に、その性質が非水性であり、したがって少なくとも1種の非水性溶媒を含有する。ウルトラキャパシタの動作温度範囲を拡げるのを助けるため、典型的には、非水性溶媒が比較的高い沸騰温度、例えば約150℃以上、いくつかの実施形態では約200℃以上、いくつかの実施形態では約220℃から約300℃を有することが望ましい。特に好適な高沸点溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート溶媒を挙げることができる。プロピレンカーボネートは、その高い導電率および分解電圧、ならびにその広範囲にわたる温度で使用される能力に起因して、特に好適である。当然ながら、その他の非水性溶媒を、単独でまたは環状カーボネート溶媒と組み合わせて用いてもよい。そのような溶媒の例としては、例えば、開鎖カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)、脂肪族モノカルボキシレート(例えば、酢酸メチル、プロピオン酸メチルなど)、ラクトン溶媒(例えば、ブチロラクトン バレロラクトンなど)、ニトリル(例えば、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリルなど)、アミド(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン)、アルカン(例えば、ニトロメタン、ニトロエタンなど)、硫黄化合物(例えば、スルホラン、ジメチルスルホキシドなど);および同様のものを挙げることができる。
【0018】
電解質は、非水性溶媒に溶解され得る少なくとも1種のイオン性液体も含有する。イオン性液体の濃度は変えることができるが、典型的には、イオン性液体は比較的高い濃度で
存在することが望ましい。例えば、イオン性液体は、電解質リットル当たり約0.8モル(M)以上の量、いくつかの実施形態では約1.0M以上、いくつかの実施形態では約1.2M以上、いくつかの実施形態では約1.3から約1.8Mの量で存在してもよい。
【0019】
イオン性液体は、一般に、比較的低い融解温度、例えば約400℃以下、いくつかの実施形態では約350℃以下、いくつかの実施形態では約1℃から約100℃、いくつかの実施形態では約5℃から約50℃を有する塩である。塩は、カチオン種および対イオンを含有する。カチオン性種は、「カチオン中心」として少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、窒素またはリン)を有する化合物を含有する。そのようなヘテロ原子化合物の例としては、例えば、非置換または置換有機第四級アンモニウム化合物、例えばアンモニウム(例えば、トリメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなど)、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピラミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム、チアゾリウム、キノリニウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、2個以上の環がスピロ原子(例えば、炭素、ヘテロ原子など)によって一緒に接続されている第四級アンモニウムスピロ化合物、第4級アンモニウム縮合環(例えば、キノリニウム、イソキノリニウムなど)、および同様のものが挙げられる。例えば、ある特定の実施形態では、カチオン性種はN-スピロ二環式化合物、例えば環式環を有する対称または非対称N-スピロ二環式化合物であってもよい。そのような化合物の一例は、下記の構造:
【0020】
【0021】
[式中、mおよびnは独立して3から7の数であり、いくつかの実施形態では4から5である(例えば、ピロリジニウムまたはピペリジニウム)である]
を有する。
【0022】
同様に、陽イオン性種に好適な対イオンとしては、ハロゲン(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物など);スルフェートまたはスルホネート(例えば、硫酸メチル、硫酸エチル、硫酸ブチル、硫酸ヘキシル、硫酸オクチル、硫酸水素、スルホン酸メタン、スルホン酸ドデシルベンゼン、ドデシルスルフェート、スルホン酸トリフルオロメタン、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、ドデシルエトキシ硫酸ナトリウムなど);スルホスクシネート;アミド(例えば、ジシアナミド);イミド(例えば、ビス(ペンタフルオロエチル-スルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチル)イミドなど);ボレート(例えば、テトラフルオロボレート、テトラシアノボレート、ビス[オキサラト]ボレート、ビス[サリチラト]ボレートなど);ホスフェートまたはホスフィネート(例えば、ヘキサフルオロホスフェート、ジエチルホスフェート、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィネート、トリス(ペンタフルオロエチル)-トリフルオロホスフェート、トリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェートなど);アンチモネート(例えば、ヘキサフルオロアンチモネート);アルミネート(例えば、テトラクロロアルミネート);脂肪酸カルボキシレート(例えば、オレエート、イソステアレート、ペンタデカフルオロオクタノエートなど);シアネート;アセテート;および同様のもの、ならびに前述のいずれかの組合せを挙げることができる。
【0023】
好適なイオン性液体のいくつかの例としては、例えば、テトラフルオロホウ酸スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、ヨウ化スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウム、ヨウ化トリエチルメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルトリエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウムなどを挙げることができる。
III. セパレータ
上述のように、本発明の電気化学セルは、2つの電極間に位置決めされるセパレータを含む。セパレータは、1つの電極を別の電極から電気的に分離させることができ、その結果、電気的短絡を防止するのを助けるが、それでも2つの電極間でイオンは輸送される。例えば、ある実施形態では、セパレータは、セルロース繊維材料(例えば、エアレイドペーパーウェブ、湿式ペーパーウェブなど)、不織繊維材料(例えば、ポリオレフィン不織ウェブ)、織布、フィルム(例えば、ポリオレフィンフィルム)などを含むものが用いられてもよい。セルロース繊維材料は、天然繊維、合成繊維などを含有するものなどが、ウルトラキャパシタで使用するのに特に適している。セパレータで使用するのに適したセルロース繊維の特定の例としては、例えば、広葉樹パルプ繊維、針葉樹パルプ繊維、レーヨン繊維、再生セルロース繊維などを挙げることができる。用いられる特定の材料とは無関係に、セパレータは、典型的には約5から約150マイクロメートル、いくつかの実施形態では約10から約100マイクロメートル、いくつかの実施形態では約20から約80マイクロメートルの厚さを有する。
IV. ハウジング
本発明のウルトラキャパシタは、各電気化学セルの電極、電解質、およびセパレータが内部に保持されるハウジングを用いる。これらの構成要素がハウジングに挿入される手法は、当技術分野で公知のように様々であってもよい。例えば、電極およびセパレータを最初に折り畳み、巻き上げ、またはその他の手法で一緒に接触させて、電極アセンブリを形成してもよい。電解質は、任意で、アセンブリの電極に浸漬してもよい。ある特定の実施形態では、電極、セパレータ、および任意の電解質を巻き上げて、「ジェリーロール」構成を有する電極アセンブリにしてもよい。
【0024】
それにも関わらず、ハウジングは一般に、ウルトラキャパシタの構成要素を封入する柔軟なパッケージの形をとる。パッケージは、1つまたは複数の層、いくつかの実施形態では2層以上、いくつかの実施形態では2から4層など、所望のレベルの障壁特性を実現するのに望ましい、いずれかの数の層を含んでもよい支持体を含む。典型的には支持体は、アルミニウム、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼などの金属を含んでもよい障壁層を含む。そのような障壁層は、一般に、その漏出を阻止できるように電解質を通さず、一般に水およびその他の汚染物質も通さない。所望の場合には、支持体は、パッケージ用の保護層として働く外層を含んでいてもよい。このように、障壁層は電気化学セルに面し、外層はパッケージの外側に面する。外層は例えば、ポリオレフィン(例えば、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、プロピレンホモポリマーなど)、ポリエステルなどから形成されるような、ポリマーフィルムから形成されてもよい。特に好適なポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。
【0025】
所望の場合には、支持体は、封止層を含んでいてもよい。封止層は、電気化学セルに面するように、パッケージ上で連続的であってもよい。あるいは、封止層は、パッケージを封止するのを助けるようにキャパシタの縁部、および端子の周りにのみ用いられてもよい。それにも関わらず、封止層は、ヒートシール可能なポリマーを含有してもよい。好適なヒートシール可能なポリマーとしては、例えば、塩化ビニルポリマー、ビニルクロリジンポリマー、イオノマーなど、ならびにこれらの組合せを挙げることができる。イオノマー
が特に好適である。例えば、一実施形態では、イオノマーは、α-オレフィンおよび(メタ)アクリル酸反復単位を含有するコポリマーであってもよい。特定のα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1個または複数のメチル、エチル、またはプロピル置換基を持つ1-ペンテン;1個または複数のメチル、エチル、またはプロピル置換基を持つ1-ヘキセン;1個または複数のメチル、エチル、またはプロピル置換基を持つ1-ヘプテン;1個または複数のメチル、エチル、またはプロピル置換基を持つ1-オクテン;1個または複数のメチル、エチル、またはプロピル置換基を持つ1-ノネン;エチル、メチル、またはジメチル-置換1-デセン;1-ドデセン;およびスチレンを挙げることができる。エチレンが特に好適である。上述のように、コポリマーは、(メタ)アクリル酸反復単位であってもよい。本明細書で使用される「(メタ)アクリル」という用語は、アクリルおよびメタクリルモノマー、ならびにそれらの塩またはエステル、例えばアクリレートおよびメタクリレートモノマーを含む。そのような(メタ)アクリルモノマーの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸s-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸i-アミル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸2-エチルブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸n-デシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸n-アミル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸i-アミル、メタクリル酸s-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルブチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸シンナミル、メタクリル酸クロチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸2-エトキシエチル、メタクリル酸イソボルニルなど、ならびにこれらの組合せを挙げることができる。典型的には、α-オレフィン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、金属イオンで少なくとも部分的に中和されて、イオノマーを形成する。適切な金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウムなど)、遷移金属(例えば、マンガン、亜鉛など)、および同様のもの、ならびにこれらの組合せを挙げることができる。金属イオンは、金属のギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、および同様のものなどの、イオン化合物によって提供されてもよい。
【0026】
例えば、
図3を参照すると、柔軟なパッケージ103を含むウルトラキャパシタ101の一実施形態が示されている。図示される実施形態では、パッケージ103は、3つの電気化学セル104、105、および106を封入するが、いずれの数のセルを本発明で用いてもよいことが理解されるべきである。第1のセル104は、第1の電極110と、第2の電極120と、電極110および120の間に位置決めされたセパレータとによって画定される。第2のセル105は、第2の電極120と、第3の電極130と、電極120および130の間に位置決めされたセパレータ114によって画定される。第3のセル106は、第3の電極130と、第4の電極140と、電極130および140の間に位置決めされたセパレータ116とによって画定される。電解質(図示せず)も、パッケージ103内に位置決めされる。電気化学セル104、105、および106は、第1の端子162および第2の端子164を介して並列に接続される。例えば第1の端子162は、第1の電極110に接続されたリード163と、第3の電極130に接続されたリード165とに電気的に接続される。同様に、第2の端子164は、第2の電極120に接続されたリード167と、第4の電極140に接続されたリード169とに電気的に接続される。
【0027】
パッケージ103は、一般に、2つの端部の間に拡がりかつ端子162および164を取り囲む縁部を有する、支持体を含む。本明細書で述べるように、支持体は、所望の程度の封止が得られるように多数の層を含むことができる。層は、パッケージ全体にわたって連続的であっても不連続であってもよい。図示される実施形態では、例えば、支持体は、パッケージ103の縁部にのみ位置付けられた不連続封止層150を含む。しかし支持体の残りは、パッケージの全面にわたって連続してもよい。
【0028】
上述のように、得られたウルトラキャパシタは、改善されたキャパシタンスおよびESR値など、広く様々な有益な電気的性質を示し得る。とりわけ、ウルトラキャパシタは、高温に曝露されたときであっても優れた電気的性質を示し得る。例えば、ウルトラキャパシタは、約80℃以上の温度、いくつかの実施形態では約100℃から約150℃、いくつかの実施形態では約105℃から約130℃(例えば、85℃または105℃)の温度を有する雰囲気に接触させて配置されてもよい。キャパシタンスおよびESR値は、そのような温度でかなりの期間にわたり、例えば100時間以上、いくつかの実施形態では約300時間から約5000時間、いくつかの実施形態では約600時間から約4500時間(例えば、168、336、504、672、840、1008、1512、2040、3024、または4032時間)などにわたり、安定なままにすることができる。
【0029】
一実施形態では、例えば、高温雰囲気(例えば、85℃または105℃)に1008時間曝露された後のウルトラキャパシタのキャパシタンス値の、高温雰囲気に最初に曝露されたときのウルトラキャパシタのキャパシタンス値に対する比が、約0.75以上、いくつかの実施形態では約0.8から1.0、いくつかの実施形態では約0.85から1.0である。そのような高キャパシタンス値は、電圧が印加されたときおよび/または湿った雰囲気中などの様々な極限条件下で維持することもできる。例えば、高温雰囲気(例えば、85℃または105℃)および印加電圧に曝露された後のウルトラキャパシタのキャパシタンス値の、高温雰囲気に曝露されるが電圧が印加される前のウルトラキャパシタの初期キャパシタンス値に対する比は、約0.60以上、いくつかの実施形態では約0.65から1.0、いくつかの実施形態では約0.7から1.0であってもよい。電圧は、例えば約1ボルト以上、いくつかの実施形態では約1.5ボルト以上、いくつかの実施形態では約2から約10ボルト(例えば、2.1ボルト)であってもよい。例えば、一実施形態では、上述の比は1008時間以上維持されてもよい。ウルトラキャパシタは、高湿度レベルに曝露されたとき、例えば約40%以上、いくつかの実施形態では約45%以上、いくつかの実施形態では約50%以上、いくつかの実施形態では約70%以上(例えば、約85%から100%)の相対湿度を有する雰囲気に接触して配置されたときに、上述のキャパシタンス値を維持してもよい。相対湿度は、例えば、ASTM E337-02、方法A(2007)に従い決定されてもよい。例えば、高温雰囲気(例えば、85℃または105℃)および高湿度(例えば、85%)に曝露された後のウルトラキャパシタのキャパシタンス値の、高温雰囲気に曝露されるが高湿度に曝露される前のウルトラキャパシタの初期キャパシタンス値に対する比は、約0.7以上、いくつかの実施形態では約0.75から1.0、いくつかの実施形態では約0.80から1.0であってもよい。例えば、一実施形態では、この比は1008時間以上維持されてもよい。
【0030】
ESRは、上述のようなかなりの期間にわたり、そのような温度で安定なままにすることもできる。例えば、一実施形態では、高温雰囲気(例えば、85℃または105℃)に1008時間曝露された後のウルトラキャパシタのESRの、高温雰囲気に最初に曝露されたときのウルトラキャパシタのESRに対する比は、約1.5以下、いくつかの実施形態では約1.2以下、いくつかの実施形態では約0.2から約1であってもよい。とりわけ、そのような低ESR値は、様々な極限条件下、例えば上記のように高電圧が印加されたときおよび/または湿った雰囲気にあるときに、維持することもできる。例えば、高温雰囲気(例えば、85℃または105℃)および印加電圧に曝露された後のウルトラキャ
パシタのESRの、高温雰囲気に最初に曝露されるが電圧が印加される前のウルトラキャパシタの初期ESRに対する比は、約1.8以下、いくつかの実施形態では約1.7以下、いくつかの実施形態では約0.2から約1.6であってもよい。例えば、一実施形態では、上述の比は、1008時間以上維持され得る。ウルトラキャパシタは、高湿度レベルに曝露されたときに、上述のESR値を維持してもよい。例えば、高温雰囲気(例えば、85℃または105℃)および高湿度(例えば、85%)に曝露された後のウルトラキャパシタのESRの、高温雰囲気に曝露されるが高湿度に曝露される前のウルトラキャパシタの初期キャパシタンス値に対する比は、約1.5以下、いくつかの実施形態では約1.4以下、いくつかの実施形態では約0.2から約1.2であってもよい。例えば、一実施形態では、この比は1008時間以上にわたり維持され得る。
【0031】
本発明は、以下の実施例を参照することで、より良く理解されよう。
試験方法
等価直列抵抗(ESR)
等価直列抵抗は、Keithley 3330 Precision LCZメータを使用して、DCバイアス0.0ボルト、1.1ボルト、または2.1ボルト(0.5ボルトのピーク間正弦波信号)で測定されてもよい。動作周波数は1kHzである。様々な温度および相対湿度レベルを試験してもよい。例えば、温度は23℃、85℃または105℃であってもよく、相対湿度は25%または85%であってもよい。
キャパシタンス
キャパシタンスは、Keithley 3330 Precision LCZメータを使用して、DCバイアス0.0ボルト、1.1ボルト、または2.1ボルト(0.5ボルトのピーク間正弦波信号)で測定されてもよい。動作周波数は120kHzである。様々な温度および相対湿度レベルを試験してもよい。例えば、温度は23℃、85℃または105℃であってもよく、相対湿度は25%または85%であってもよい。
【実施例0032】
本発明による電気化学セルを形成する能力を実証した。最初に、炭化アルミニウムウィスカを含有する2つのアルミニウム集電子(厚さ12から50μm)の各面を、活性炭粒子10~40重量%、スチレン-ブタジエンコポリマー2~10重量%、およびナトリウムカルボキシメチルセルロース5~40重量%の混合物でコーティングした。活性炭粒子は、そのD50サイズが約5~20μm、BET表面積が約1300~2200m2/gであった。活性炭粒子は、サイズが2ナノメートル未満の細孔を10体積%未満の量で、サイズが2から50ナノメートルの細孔を約40から70体積%の量で、サイズが50nmよりも大きい細孔を約20から50体積%の量で含有した。得られるコーティングのそれぞれの厚さは、約12から200μmであった。次いで電極をカレンダ加工し、70℃から150℃の温度で真空乾燥した。形成した後、2つの電極を、電解質およびセパレータ(厚さ25μmのセルロース材料)と共に組み立てた。電解質は、5-アゾニアスピロ[4,4]-ノナンテトラフルオロボレートを、プロピレンカーボネート中1.05から2.5Mの濃度で含有した。得られたストリップを個々の電極に切り分け、それらの間でセパレータと交互に電極を積層することによって組み立てた。電極積層体が完成したら、全ての電極端子を単一アルミニウム端子に溶接する。次いでこのアセンブリを、プラスチック/アルミニウム/プラスチック積層パッケージ材料に入れ、縁部の1つを除く全てを一緒にヒートシールする。次に、電解質を、開放縁部を通してパッケージに注入する。次いで電解質充填パッケージを真空中に置き、最終縁部をヒートシールして、仕上げられたパッケージを完成させる。得られたセルを、形成し、キャパシタンスおよびESRに関して試験をした。結果を、以下の表1~6に示す:
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
本発明のこれらおよびその他の修正例および変形例を、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者なら実施することができる。加えて、様々な実施形態の態様は、
全体的にも部分的にも相互に交換してもよいことを、理解されるべきである。さらに、当業者なら、先の記述は単なる例示であり、そのような添付された特許請求の範囲にさらに記述されるような本発明を限定するものではないことが理解されよう。
炭素質材料でコーティングされた対向面を有する集電子を含む第1の電極、炭素質材料でコーティングされた対向面を有する集電子を含む第2の電極、ならびに前記第1の電極および前記第2の電極の間に位置決めされたセパレータによって画定された、第1の電気化学セルと、
前記第1のセルと並列に接続された第2の電気化学セルであって、前記第2の電極、炭素質材料でコーティングされた対向面を有する集電子を含む第3の電極、ならびに前記第2の電極および前記第3の電極の間に位置決めされたセパレータによって画定された、第2の電気化学セルと、
ここで、前記第1の電極、第2の電極、第3の電極、またはこれらの組合せの前記集電子が、導電性金属を含み、前記第1の電極、第2の電極、第3の電極、またはこれらの組合せの前記炭素質材料が、活性炭粒子を含有する、
前記第1の電極、第2の電極、および第3の電極にイオン接触している非水性電解質であって、非水性溶媒およびイオン性液体を含有する非水性電解質と、ここで、前記イオン性液体が、カチオン種および対イオンを含有する、
前記第1の電気化学セル、前記第2の電気化学セル、および前記非水性電解質を封入するパッケージであって、約20マイクロメートルから約1,000マイクロメートルの厚さを有する支持体を含むパッケージと、そして
前記第1の電極および前記第3の電極に電気的に接続された第1の端子と、前記第2の電極に電気的に接続された第2の端子と、
を含む、ウルトラキャパシタ。
温度23℃、周波数120Hzで、印加電圧なしで決定されたとき、立方センチメートル当たり約6ファラド以上のキャパシタンスを示す、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
前記活性炭粒子が複数の細孔を含有し、約2ナノメートル以下のサイズを有する細孔の量が全細孔体積の約50体積%以下であり、約2ナノメートルから約50ナノメートルのサイズを有する細孔の量が全細孔体積の約20体積%から約80体積%であり、約50ナノメートル以上のサイズを有する細孔の量が全細孔体積の約1体積%から約50体積%である、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。
前記第3の電極、炭素質材料でコーティングされた対向面を有する集電子を含む第4の電極、ならびに前記第3の電極および前記第4の電極の間に位置決めされたセパレータによって画定された、第3の電気化学セルをさらに含む、請求項1に記載のウルトラキャパシタ。