(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058914
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】HTS界磁コイル
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20220405BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20220405BHJP
G21B 1/11 20060101ALI20220405BHJP
G21K 1/093 20060101ALI20220405BHJP
H05H 7/04 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H01F6/06 120
H01F6/06 150
H01F6/06 110
H01F6/06 140
A61N5/10 H ZAA
G21B1/11 A
G21K1/093 D
H05H7/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022017190
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2020541677の分割
【原出願日】2019-01-31
(31)【優先権主張番号】1801621.2
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1812119.4
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1818817.7
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】512317995
【氏名又は名称】トカマク エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】スレード、 ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クルイプ、 マーセル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ノグテレン、 バス
(72)【発明者】
【氏名】ブリトルズ、 グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス デ ヴィラ バルデス、 エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ベイトマン、 ロッド
(72)【発明者】
【氏名】ダウン、 アラン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大きな高温超伝導(HTS)界磁コイルを提供する。
【解決手段】高温超伝導(HTS)界磁コイルは、複数の巻線と、部分絶縁層とを含む。複数の巻線は、HTS材料及び金属安定化材を含む。部分絶縁層は、部分絶縁層を介して巻線の間で電流をシェアすることができるように巻線を分離する。部分絶縁層は、導電層と、第1及び第2の絶縁層902とを含む。導電層は、一方の側が第1の絶縁層で被覆され、他方の側が第2の絶縁層で被覆されている。各絶縁層は、それを通して巻線と導電層との間に電気的接触を形成することができる1つ以上の窓903を有する。第1の絶縁層の窓は、第2の絶縁層の窓から導電細片901の平面内でオフセットされている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温超伝導(HTS)界磁コイルであって、
HTS材料及び金属安定化材を含む複数の巻線と、
部分絶縁層を介して前記巻線の間で電流をシェアすることができるように巻線を分離す
る部分絶縁層と
を含み、
前記部分絶縁層は、
一方の側を第1の絶縁層で、他方の側を第2の絶縁層でコーティングした導電層を含
み、
各絶縁層は、それを通して前記巻線と前記導電層との間に電気的接触を形成すること
ができる1つ以上の窓を有し、
前記第1の絶縁層の窓は、前記第2の絶縁層の窓から前記導電性細片の平面内でオフセ
ットされている、HTS界磁コイル。
【請求項2】
前記導電層は連続的な導電性細片である、請求項1に記載のHTS界磁コイル。
【請求項3】
前記導電層は複数の領域を含み、各領域は、前記第1の絶縁層内のそれぞれの第1の窓
を前記第2の絶縁層内のそれぞれの第2の窓に電気的に接続し、各領域は、前記導電層の
平面内で他の領域から電気的に絶縁されている、請求項1又は2に記載のHTS界磁コイ
ル。
【請求項4】
各領域は、前記第1の窓と第2の窓との間の軌道を含み、前記第1の窓と第2の窓との
間の軌道の長さは、前記長さに垂直に測定された前記軌道の幅の少なくとも2倍である、
請求項3に記載のHTS界磁コイル。
【請求項5】
各軌道は直線でない、請求項4に記載のHTS界磁コイル。
【請求項6】
前記第2の層内の窓はそれぞれ、前記第1の絶縁層、前記第2の絶縁層、及び前記導電
層を通って延びるそれぞれのビアの一部であり、前記部分絶縁層は、それぞれのビアの前
記第1の絶縁層に近接する端部に絶縁キャップをさらに含む、請求項1から5のいずれか
一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項7】
前記導電層は金属を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項8】
前記金属は、
銅、
真鍮、
スチール、
ステンレス鋼、
ハステロイ、及び
ニッケル
のうちの1つである、請求項7に記載のHTS界磁コイル。
【請求項9】
前記部分絶縁層及び前記巻線は連続的に巻かれている、請求項1から8のいずれか一項
に記載のHTS界磁コイル。
【請求項10】
一方の層の各窓と他方の層の最も近い窓との間のオフセット距離は、前記導電層の厚さ
よりも大きい、請求項1から9のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項11】
一方の層の各窓と他方の層の最も近い窓との間のオフセット距離は、HTS界磁コイル
の1巻きの長さの1/5未満であり、より好ましくは1/10未満であり、より好ましく
は1/50未満である、請求項1から10のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項12】
各絶縁層は、前記部分絶縁層の長さに沿ってオフセットされている複数の窓を含む、請
求項1から11のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項13】
各絶縁層の窓は、両絶縁層に関して同じ間隔で規則的に離間し、各窓は同じ面積を有す
る、請求項1から12のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項14】
一方の絶縁層の窓は、一方の絶縁層の各窓が反対側の絶縁層の2つの最も近い窓から等
距離になるように、反対側の絶縁層の窓からオフセットされている、請求項1から13の
いずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項15】
前記絶縁層は、螺旋状の巻き付けの前記間隙が窓を形成するように、
前記導電層の周りに絶縁テープを螺旋状に巻き付けること、又は
前記巻線の周りに絶縁テープを螺旋状に巻き付けること
によって形成される、請求項1から14のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項16】
各絶縁層は、前記絶縁層の長さに沿って延びる単一の窓を含み、一方の絶縁層の窓は、
他方の絶縁層の窓から前記部分絶縁層の幅に沿ってオフセットされている、請求項1から
11のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項17】
前記導電層は、前記導電層の各窓によって露出する部分が前記各絶縁層の平面内にある
ように曲げられている、請求項16に記載のHTS界磁コイル。
【請求項18】
各絶縁層は、少なくとも1つの側で前記導電層を越えて延びている、請求項1から17
のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項19】
前記部分絶縁層は、前記窓又は各窓内に導電性インサートを含み、
各窓は、導電性材料でめっきされ、かつ/又は
前記導電層は、各窓内に延びる導電性突出部を含む、請求項1から18のいずれか一項
に記載のHTS界磁コイル。
【請求項20】
前記導電性インサート又は突出部はそれぞれの窓を埋める、請求項19に記載のHTS
界磁コイル。
【請求項21】
前記導電性インサート又は突出部はそれぞれの窓の一部分のみを埋め、前記窓を通した
前記導電層と前記巻線との電気的接触は前記導電性インサートのみを介している、請求項
19に記載のHTS界磁コイル。
【請求項22】
前記部分絶縁層は、前記絶縁層の外側に配置されかつ前記窓を通して前記導電性細片に
電気的に接続されている導電性接続細片を含み、前記導電性接続細片は、隣接する巻線に
電気的に接続されている、請求項1から21のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項23】
前記HTS界磁コイルははんだポッティングされている、請求項1から22のいずれか
一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項24】
前記部分絶縁層は、突き合わせ接合によって接続されている複数のセクションを含む、
請求項1から23のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項25】
HTS界磁コイルの製造方法であって、
HTS材料及び金属安定化材を含むHTSケーブルを提供することと、
部分絶縁層であって、
一方の側に第1の絶縁層を、他方の側に第2の絶縁層をコーティングした導電層を含
み、
各絶縁層は、それを通して前記巻線と前記導電層との間に電気的接触を形成すること
ができる1つ以上の窓を有し、
前記第1の絶縁層内の窓は、前記第2の絶縁層内の窓から前記導電層の平面内でオフ
セットされている部分絶縁層を提供することと、
前記部分絶縁層を介して前記HTSケーブルの巻線の間で電流をシェアすることができ
るように、前記HTSケーブルと前記部分絶縁層とを一緒に組み立ててHTS界磁コイル
を形成することと
を含む方法。
【請求項26】
前記部分絶縁層を提供することは、前記導電層及び絶縁層のそれぞれを別々に提供する
ことと、前記HTSコイルの巻線中に前記部分絶縁層を形成することとを含む、請求項2
5に記載の方法。
【請求項27】
前記コイルの巻線中に前記部分絶縁層を形成することは、前記絶縁層をエポキシ樹脂で
前記導電層に取り付けることと、前記部分絶縁層を前記コイルへと巻線する直前に加熱し
た加圧ローラを用いて前記エポキシ樹脂を硬化させることとを含む、請求項26に記載の
方法。
【請求項28】
前記部分絶縁層を提供することは、
前記絶縁層を前記導電層に接着剤で接着することと、
前記絶縁層をエッチングして前記窓を形成することと
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記部分絶縁層を提供することは、前記部分絶縁層の複数のセクションを提供すること
と、前記セクションを突き合わせ接合によって接続することとを含む、請求項25又は2
8に記載の方法。
【請求項30】
前記部分絶縁層を提供することは、
第1の絶縁層を提供することと、
前記第1の絶縁層の表面を導電層で被覆することと、
前記導電層に第2の絶縁層を取り付けることと、
前記第1及び第2の絶縁層に窓を穿孔することと
を含む、請求項25から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の絶縁層の窓を穿孔することは、前記第1の絶縁層、導電層、及び第2の絶縁
層を通るビアを穿孔することと、前記第1の絶縁層に近接する各ビアの端部に絶縁キャッ
プを付けることとを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記部分絶縁層を提供することはさらに、
前記第1及び第2の絶縁層のそれぞれについて、前記絶縁層の前記導電層と反対側の面
を導電性接続層で被覆することを含み、前記導電性接続層は、前記コイルの巻線後の前記
HTSケーブルに接触し又ははんだ付けされている、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記導電層とそれぞれの金属層とを電気的に接続するために各窓を導電性材料でライニ
ングすることを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記導電層をエッチングして複数の領域を形成し、前記部分絶縁層が組み立てられたと
きに、各領域が前記第1の絶縁層内のそれぞれの第1の窓を前記第2の絶縁層内のそれぞ
れの第2の窓に電気的に接続し、各領域が前記導電層の平面内で他の領域から電気的に絶
縁されるようにすることを含む、請求項30から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記HTS界磁コイルをはんだポッティングすることを含む、請求項25から34のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記部分絶縁層のうちの少なくとも1つが、少なくとも一方の側で前記導電層を越えて
延びるオーバーハングを有し、はんだポッティングのステップに続いて、前記オーバーハ
ングの少なくとも一部が除去されるようなレベルまで前記HTSコイルの前記一方の側を
機械加工することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
はんだポッティングのステップに続いて、前記HTS界磁コイルをエポキシ樹脂でポッ
ティングすることを含む、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
はんだポッティングの前に前記HTSコイルの一方の側に取り外し可能なマスクを取り
付け、はんだポッティング後に前記マスクを取り外すことを含む、請求項35から37の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
HTSケーブルを提供することは、それぞれがHTS材料を含む複数のHTSテープを
提供することと、前記HTSテープを接続してケーブルを形成することとを含む、請求項
25から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記HTSテープを互いに接続してテーブルを形成するステップは、前記HTS界磁コ
イルの巻線中に行われる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記HTSテープを互いに接続するステップは、
各テープをはんだでコーティングすることと、
前記HTS界磁コイルを巻く直前に加熱ローラに前記HTSテープを一緒に通すことと
を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
50cmより大きい半径を有する高温超伝導(HTS)界磁コイルであって、HTS界磁コイルはHTS材料を含む複数の巻線を有し、前記巻線は抵抗材料を介して前記巻線の間で電流をシェアすることができるように配置されている、HTS界磁コイル。
【請求項43】
前記抵抗材料は半導体である、請求項42に記載のHTS界磁コイル。
【請求項44】
前記抵抗材料はゲルマニウムである、請求項43に記載のHTS界磁コイル。
【請求項45】
各巻線が複数のHTSテープを含み、各巻線におけるHTSテープ間の抵抗が巻線間の
抵抗よりも小さい、請求項1から24及び42から44のいずれか一項に記載のHTS界
磁コイル。
【請求項46】
50cmより大きい半径を有する高温超伝導(HTS)界磁コイルであって、HTS界磁コイルはHTS材料を含む巻線を有し、HTSの最大臨界温度よりも低い第1の温度での第1の抵抗率と、前記第1の温度よりも高い第2の温度でのより低い第2の抵抗率とを有する金属絶縁体転移材料によって前記巻線が分離されている、HTS界磁コイル。
【請求項47】
前記第2の抵抗率は前記第1の抵抗率の1/10未満である、請求項46に記載のHT
S界磁コイル。
【請求項48】
請求項1から24及び42から47のいずれか一項に記載のHTS界磁コイルを含むト
カマク核融合炉であって、前記HTS界磁コイルはトロイダル磁場コイル又はポロイダル
磁場コイルのいずれかである、トカマク核融合炉。
【請求項49】
請求項1から24及び42から47のいずれか一項に記載のHTS界磁コイルを含む陽
子線治療、PBT装置であって、前記HTS界磁コイルは、
PBT装置の加速器の界磁コイル、及び
PBT装置の陽子線ステアリングシステムの双極子磁石又は四重極磁石
のうちの1つである、PBT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HTS磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
核融合発電の課題は非常に複雑である。トカマク以外の多くの代替装置が提案されてい
るが、JETのような現在稼働している最良のトカマクに匹敵する成果はまだ得られてい
ない。
【0003】
世界の核融合研究は、これまでに建設された最大かつ最も高価な(150億ユーロの)
トカマクであるITERの建設開始後、新しい段階に入った。商用核融合炉への成功につ
ながるルートは、電力生産を経済的にするために必要とされる高効率と組み合わせた長パ
ルス、安定した動作を必要とする。これらの3つの条件を同時に達成することは特に困難
であり、計画されたプログラムは、理論的及び技術的研究だけでなく、ITER及び他の
核融合施設に関する長年の実験的研究を必要とするであろう。このルートで開発された商
用核融合炉は2050年までに建設されないと広く予想されている。
【0004】
経済的な発電(つまり、電力入力よりもはるかに多い電力出力)に必要な核融合反応を
得るために、熱核融合が起こるのに十分なほどプラズマが高温になるようにエネルギー閉
じ込め時間(プラズマ体積にほぼ比例する)を十分長くすることができるように、従来の
トカマクは(ITERで例示されるように)巨大でなければならない。
【0005】
特許文献1には、中性子源又はエネルギー源として使用するためのコンパクトな球状ト
カマクの使用を含む代替的なアプローチが記載されている。球状トカマクにおける低アス
ペクト比のプラズマ形状は、粒子閉じ込め時間を改善し、はるかに小さい機械での正味の
発電を可能にする。しかしながら、小さな直径の中心柱が必要であり、それはプラズマ閉
じ込め磁石の設計に対する課題を提示している。高温超伝導体(HTS)界磁コイルは、
このような磁石の有望な技術である。
【0006】
HTS磁石のもう1つの潜在的な用途は、陽子線治療装置である。陽子線治療(陽子線
療法としても知られるPBT)は、がん(放射線治療に反応するその他の状態)の治療に
用いられる粒子線治療の一種である。PBTでは、陽子線が治療部位(例えば、腫瘍)に
向けられる。
【0007】
もう1つの類似した治療法は、ホウ素-11を標的部位に導入し、陽子線を用いてp+11
B→3αの反応を開始する、陽子ホウ素捕捉療法(PBCT)である。同じ装置を用いて、
PBT又はPBCTのいずれかに陽子線を提供することができる。
【0008】
PBT及びPBCTのための陽子線は、サイクロトロン又は線形加速器などの粒子加速
器によって生成される。通常PBT及びPBCTに使用される加速器は、一般に60から
250MeVの範囲のエネルギーで陽子を生成し、現在稼働している最も強力な施設は、
400MeVの最大エネルギーを有する。
【0009】
大まかに言って、ビーム角度の変化を可能にするPBT装置の設計には2つのタイプが
ある。第1のタイプの設計では、
図7に示すように、加速器3001は、加速器3001
が患者3003の周りで(通常、水平軸を中心に)回転することを可能にするガントリ3
002に取り付けられる。患者は、更なる自由度(例えば、並進運動及び垂直軸を中心と
する回転)を提供する可動ベッド3004上に置かれる。
【0010】
第2のタイプの設計を
図8に示す。加速器4001は静止しており、ビームはステアリ
ング電磁石4002(一般に四重極磁石と双極子磁石の両方を含む)を介して患者に向け
られ、ステアリング電磁石の少なくとも一部はガントリ4003に配置され、ビームは患
者4004の周りで(例えば、水平軸を中心に)回転することができる。患者は、可動ベ
ッド4005上に置かれる。
【0011】
いずれの設計も、ガントリが400MeVにもなるビームエネルギーで陽子を進ませる
ことができる電磁石を保持することを必要とする。これには非常に高い磁場が必要である
ため、HTS磁石を使用することにより、電磁石とそれを動かすのに必要なガントリの質
量及びサイズを大幅に削減することができる。HTS磁石は、加速器、ステアリング磁石
の四重極磁石、又はステアリング磁石の双極子磁石内で使用することができる。
【0012】
超伝導材料は通常、「高温超伝導体」(HTS)と「低温超伝導体」(LTS)に分け
られる。Nb及びNbTiなどのLTS材料は、その超伝導性をBCS理論で説明できる
金属又は金属合金である。すべての低温超伝導体は、約30K未満の臨界温度(それを超
えるとゼロ磁場でも材料が超伝導にならない温度)を有する。HTS材料の挙動はBCS
理論では説明されておらず、このような材料は約30Kを超える臨界温度を有する可能性
がある(ただし、HTS及びLTS材料を定義するのは、臨界温度ではなく、組成及び超
伝導動作の物理的な違いであることに注意すべきである)。最も一般的に使用されるHT
Sは「銅酸化物超伝導体」、BSCCO又はReBCO(ここで、Reは希土類元素、通
常はY又はGdである)などの銅酸化物(酸化銅基含有化合物)をベースとするセラミッ
クである。他のHTS材料は、鉄ニクタイド(例えば、FeAs及びFeSe)及び二ホ
ウ酸マグネシウム(MgB2)を含む。
【0013】
ReBCOは通常、
図1に示すような構造のテープとして製造される。このようなテー
プ100は、一般に約100ミクロンの厚さであり、基板101(通常、約50ミクロン
の厚さの電解研磨したハステロイ)を含み、基板101の上に、IBAD、マグネトロン
スパッタリング、又は他の好適な技術によって、約0.2ミクロンの厚さのバッファスタ
ック102として知られる一連のバッファ層が堆積される。エピタキシャルReBCO-
HTS層103(MOCVD又は他の好適な技術によって堆積される)がバッファスタッ
クを覆い、通常1ミクロンの厚さである。1~2ミクロンの銀層104が、スパッタリン
グ又は他の好適な技術によってHTS層上に堆積され、銅安定化層105が、電気めっき
又は他の好適な技術によってテープ上に堆積され、これは、多くの場合テープを完全に封
入する。
【0014】
基板101は、製造ラインを通して供給されかつ後続の層の成長を可能にすることがで
きる機械的なバックボーンを提供する。バッファスタック102は、その上にHTS層を
成長させるための二軸配向結晶テンプレートを提供するために必要とされ、その超伝導特
性を損なう基板からHTSへの元素の化学拡散を防止する。銀層104は、ReBCOか
ら安定化層への低抵抗界面を提供するために必要とされ、安定化層105は、ReBCO
のいずれかの部分が超伝導を停止する(「常伝導」状態になる)場合に代替的な電流経路
を提供する。
【0015】
さらに、基板及びバッファスタックがなく、代わりにHTS層の両側に銀層を有する「
剥離」HTSテープを製造することができる。基板を有するテープは、「基板付き」HT
Sテープと呼ばれる。
【0016】
HTSテープは、HTSケーブルに配置することができる。HTSケーブルは、導電性
材料(通常は銅)によってそれらの長さに沿って接続されている1つ以上のHTSテープ
を含む。HTSテープは積み重ねる(すなわち、HTS層が平行になるように配置する)
ことができ、又はHTSテープはケーブルの長さに沿って変化し得るテープの他の配置を
有することができる。HTSケーブルの注目すべき特別なケースは、単一のHTSテープ
とHTS対である。HTS対は、HTS層が平行になるように配置された一対のHTSテ
ープを含む。基板付きテープを使用する場合、HTS対は、タイプ0(HTS層が互いに
向き合う)、タイプ1(一方のテープのHTS層が他方のテープの基板に面する)、又は
タイプ2(基板が互いに向き合う)であり得る。3つ以上のテープを含むケーブルは、テ
ープの一部又は全部をHTS対に配置することができる。積層HTSテープは、HTS対
の様々な配置、最も一般的には、タイプ1の対の積層、又はタイプ0の対(又は同等にタ
イプ2の対)の積層のいずれかを含むことができる。HTSケーブルは、基板付きテープ
と剥離テープの混合物を含むことができる。
【0017】
本明細書でコイルを説明する場合、次の用語を使用する。
・「HTSケーブル」-1つ以上のHTSテープを含むケーブル。この定義では、単一の
HTSテープはHTSケーブルである。
・「巻線」-コイル内のHTSケーブルのうち、コイルの内側を囲む部分(すなわち、完
全なループとしてモデル化することができる)
・「弧」-界磁コイル全体より短いコイルの連続した長さ
・「内半径/外半径」-コイルの中心からHTSケーブルの内側/外側までの距離
・「内周/外周」-コイルの内側/外側の周囲で測定した距離
・「厚さ」-コイルのすべての巻線の径方向の深さ、すなわち内半径と外半径の差
・「臨界電流」-所与の温度及び外部磁場でHTSが常伝導になる電流(HTSは、テー
プが1メートルあたりE0ボルトを生成する超伝導転移の特徴点で「常伝導になる」とみ
なされる。E0の選択は任意であるが、通常は1メートルあたり10マイクロボルト又は
100マイクロボルトとみなされる。)
・「臨界温度」-所与の磁界及び電流でHTSが常伝導になる温度
・「最大臨界温度」-外部磁場がなく、電流が無視できる場合にHTSが常伝導になる温
度。
【0018】
大まかに言って、磁気コイルには、巻き付けによるものと複数のセクションの組み合わ
せによるものの2種類の構造がある。
図2に示すように、巻線コイルは、HTSケーブル
201をフォーマ202の周りに連続した螺旋状に巻き付けることによって製造される。
前者は、コイルの必要な内周を提供するように成形され、最終的な巻線コイルの構造部分
であることができ、又は巻き付け後に除去することができる。セクションコイルは、
図3
に概略的に示すように、いくつかのセクション301から構成され、セクションのそれぞ
れは、いくつかのケーブル又は予め形成されたバスバー311を含むことができ、コイル
全体の弧を形成する。これらのセクションは、接合部302によって接続され、完全なコ
イルを形成する。
図2及び
図3のコイルの巻線は、明確にするために間隔を空けて示して
いるが、一般にコイルの巻線を接続する材料が存在し、例えば、コイルの巻線はエポキシ
樹脂でポッティングすることによってまとめることができる。
【0019】
コイルは、コイルの巻線の間に電気絶縁材料を有する「絶縁」か、又はコイルの巻線が
(例えば、はんだ付け又は直接接触によりケーブルの銅安定化層を接続することにより)
ケーブルに沿ってだけでなく径方向に電気的に接続される「非絶縁」である。非絶縁コイ
ルは、後でより詳細に説明する理由により、大きな界磁コイルには適していない。
【0020】
図4は、HTSケーブル401が1巻きのリボンと同様の方法で平らなコイルを形成す
るように巻かれる「パンケーキコイル」として知られる特定のタイプの巻線コイルの断面
を示す。パンケーキコイルは、任意の2次元形状である内周で作製することができる。多
くの場合、パンケーキコイルは、
図5の断面図に示すように、パンケーキコイル間の絶縁
体503と、互いに接続されている内部端子504とを備える、反対方向に巻かれた2つ
のパンケーキコイル501、502を含む「二重パンケーキコイル」として提供される。
これは、コイルの巻線に電流を流して磁場を生成するのに、一般によりアクセスしやすい
外部端子521、522に電圧を供給するだけでよいことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様によれば、高温超伝導(HTS)界磁コイルが提供される。HTS界磁コイルは、複数の巻線と、部分絶縁層とを含む。複数の巻線は、HTS材料及び金属安定化材を含む。部分絶縁層は、部分絶縁層を介して巻線の間で電流をシェアすることができるように巻線を分離する。部分絶縁層は、導電層と、第1及び第2の絶縁層とを含む。導電層は、一方の側が第1の絶縁層で被覆され、他方の側が第2の絶縁層で被覆されている。各絶縁層は、それを通して巻線と導電層との間に電気的接触を形成することができる1つ以上の窓を有する。第1の絶縁層の窓は、第2の絶縁層の窓から導電細片の平面内でオフセットされている。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、HTS界磁コイルを製造する方法が提供される。HTS
材料及び金属安定化材を含むHTSケーブルが提供される。部分絶縁層が提供される。部
分絶縁層は、導電層と、第1及び第2の絶縁層とを含む。導電層は、一方の側が第1の絶
縁層で被覆され、他方の側が第2の絶縁層で被覆されている。各絶縁層は、それを通して
巻線と導電層との間に電気的接触を形成することができる1つ以上の窓を有する。第1の
絶縁層の窓は、第2の絶縁層の窓から導電層の平面内でオフセットされている。HTSケ
ーブル及び部分絶縁層は、部分絶縁層を介してHTSケーブルの巻線の間で電流をシェア
することができるように組み立てられてHTS界磁コイルを形成する。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、50cmより大きい半径を有する高温超伝導(HTS)界磁コイルであって、HTS界磁コイルはHTS材料を含む複数の巻線を有し、巻線は抵抗材料を介して巻線の間で電流をシェアすることができるように配置されているHTS界磁コイルが提供される。
【0025】
本発明の第4の態様によれば、50cmより大きい半径を有する高温超伝導(HTS)界磁コイルであって、HTS界磁コイルはHTS材料を含む巻線を有し、HTSの最大臨界温度よりも低い第1の温度での第1の抵抗率と、第1の温度よりも高い第2の温度での第2のより低い抵抗率とを有する金属絶縁体転移材料によって巻線が分離されているHTS界磁コイルが提供される。
【0026】
本発明の第5の態様によれば、第1、第3又は第4の態様のいずれか1つによるHTS
界磁コイルを含むトカマク核融合炉であって、HTS界磁コイルはトロイダル磁場コイル
又はポロイダル磁場コイルのいずれかであるトカマク核融合炉が提供される。
【0027】
本発明の第6の態様によれば、第1、第3又は第4の態様のいずれか1つによるHTS
界磁コイルを含む陽子線治療、PBT装置であって、HTS界磁コイルは、
PBT装置の加速器の界磁コイル、及び
PBT装置の陽子線ステアリングシステムの双極子磁石又は四重極磁石
のうちの1つであるPBT装置が提供される。
【0028】
本発明の更なる実施形態は、請求項2以降に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図5】二重パンケーキコイルの断面の概略図である。
【
図6】ランプアップ中及び定常状態への部分絶縁コイルにおける電流、電圧、及び電力を示す。
【
図14】部分絶縁層及びHTSテープのアセンブリの断面図である。
【
図15】例示的なはんだポッティングされたコイルを示す。
【
図16A-C】部分絶縁層の更なる代替構成を示す。
【
図16D-E】部分絶縁層の更なる代替構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上記のように、HTSコイルは絶縁されていても、絶縁されていなくてもよい。一般に
、非絶縁コイルは、トカマクの界磁コイルのように、クエンチが起こり得る状態で動作す
る大きな磁石には適していないと考えられる。絶縁体が意図的にないことにより、各ケー
ブル巻線内のテープの間だけでなく、ケーブル巻線の間でも電流をシェアすることができ
る。巻線の間の材料が従来の導体、例えば金属の抵抗と、セラミック又は有機絶縁体など
の従来の絶縁体の抵抗との中間の抵抗を有し、例えば、銅の抵抗率の100から1015倍
又は10-6から108オームメートルの抵抗率を有する「部分絶縁」(部分的に絶縁した
)コイルも可能である。巻線の間に絶縁体がないか部分的な絶縁体があると、局所的な「
ホットスポット」(常伝導域)の温度が上昇する速度が遅くなる。HTS磁石の常伝導(
抵抗性HTS)域の増大(空間的伝播)速度は多くのパラメータによって決まるが、通常
、軸方向において(すなわち、ケーブルに沿って)100mm/s未満であり、横方向に
おいて(すなわち、隣接する巻線の間で)約2~100倍遅い。各方向における常伝導域
の正確な伝播速度は、利用される材料及びケーブル構造の熱的及び電気的性質によって決
まる。特に、横方向の伝播速度は巻線の間の材料の熱的性質の影響を受ける。
【0031】
大きな磁石(数メートルの長さ寸法、例えば、半径が50cmを超え、コイルの断面寸
法が全体の最大コイル寸法よりも小さい(すなわち、約10分の1である))では、横方
向の伝播によって、コイルの周囲のごく一部をカバーする領域でコイルの全断面が常伝導
になり、その結果、すべての巻線の全電流が常伝導部分内で金属安定化材のみに流れる可
能性がある。常伝導域の外側では、導体は依然として超伝導である。この常伝導域の抵抗
は、磁石の電流を急速に低下させるのに十分ではないが、磁石全体の蓄積された磁気エネ
ルギーが、コイルの周囲でゆっくりとしか成長しないこの小さな常伝導(抵抗性)の体積
に放出される。磁石の蓄積エネルギーをコイルの外部の抵抗に放出できるようにこの状況
が迅速に検出されない限り、常伝導域の温度が非常に急速に上昇し、常伝導域内の導体に
重大な損傷を与える可能性がある。
【0032】
小さなコイル(数センチメートルの長さ寸法、例えば、半径が10cm未満で、コイル
の断面が最大コイル寸法と同程度の大きさである)の場合、関係する蓄積磁気エネルギー
は相対的にはるかに低く、常伝導域は短時間でコイルの全体積により均等に広がる。言い
換えると、常伝導域の温度が損傷値(通常は約200Kとみなされる)を超える前に、ク
エンチがコイル全体を取り囲むように伝播する。
【0033】
このため、非絶縁又は部分絶縁コイルは、小さなHTS磁石のパッシブクエンチ保護に
は良い選択肢であるが、大きな磁石のパッシブクエンチ保護には不十分であると考えられ
てきた。
【0034】
さらに、非絶縁又は部分絶縁コイルは、ランプアップ中の磁場の安定化に遅れを示す。
これは、コイルのインダクタンスに発生する電圧が、巻線の間の金属に電流を流すためで
ある。非絶縁HTSコイルは、3つの電流経路、すなわち、HTSテープをたどる2つの
螺旋状経路(HTSに1つと金属安定化材に1つ)と、コイル端末の間で非絶縁又は部分
絶縁HTSケーブルを接続する金属(及び他の抵抗材料)を通る径方向経路(これは単一
の経路としてモデル化できるが、実際には磁石を通るすべての径方向の抵抗性経路の合計
を表す)とを有するものとしてモデル化することができる。螺旋状経路を流れる電流のみ
がコイルの中心に大きな軸方向磁場を生成する。HTS螺旋状経路は、テープがすべて超
伝導である場合、インダクタンスLとゼロ又は無視できる抵抗を有するインダクタとして
モデル化できる。銅安定化材の螺旋状経路は、HTS経路と平行であり、同じインダクタ
ンスを有するが、かなりの抵抗を有する。このため、HTS螺旋状経路の一部がクエンチ
し始めない限り、ほとんど電流が流れない。これが起こると、HTS螺旋状経路の臨界電
流Icを超える過剰電流は、それらの相対抵抗に従って、螺旋状安定化材経路と径方向経
路との間でシェアされる。径方向電流経路は、HTSが全体にわたって超伝導である間、
無視できるインダクタンスと螺旋状経路よりはるかに大きい抵抗Rを有するようにモデル
化できる。
【0035】
図6は、ランプアップ中及び定常状態動作中の非絶縁コイルにおける電流、電圧、及び
電力を示す。非絶縁コイルのランプアップの間、電流は最初に主に径方向経路に流れ(図
6の期間A)、その後安定する。径方向経路を流れる電流の量は、ランプ速度が速いほど
多くなる(螺旋状経路の両端の電圧L.dI/dtが高いため。これは期間Bである)。
ランプの終わりに、dI/dtはゼロに低下し、電流は時定数L/RでHTS螺旋状経路
に移動する(期間C)。電流は、ランプの終了後、ほとんどの場合、数(約5)L/R時
定数で螺旋状経路に移される。このため、時定数は、適正なランプアップ時間をもたらす
ように選択されるべきであり、例えば、5~10時間の時定数がトカマクのTFコイルに
ふさわしい(約1~2日のランプアップ時間をもたらす)。
【0036】
コイルを巻くために使用されるHTSケーブルに接合部がある場合、電源電流のごく一
部が、期間Cの間、径方向経路に流れ続ける。この割合は、単に、径方向抵抗(すなわち
、すべての巻線から巻線への、すなわち巻線間の抵抗の合計)と螺旋状経路抵抗の合計に
対する螺旋状経路抵抗の比率である。
【0037】
大きなLを有する磁石において充電遅延時定数を短く保つには、比較的高い巻線間の抵
抗が必要であるが、常伝導域の温度を低く保つには、比較的低い巻線間の抵抗が必要であ
る。したがって、最良の妥協点を得るために、巻線から巻線への抵抗を容易に制御する方
法を見出すことが望ましい。
【0038】
理想的な巻線から巻線への抵抗の選択における更なる考慮事項は、磁石のランピング段
階(期間A及びB)の間の径方向抵抗に電流を流すことによって生じる熱負荷である。か
なりの量(数kW程度)になる可能性があるこの更なる熱負荷は、それが界磁コイルを含
む装置の動作中に生じる熱負荷、例えば核融合炉のコイルの中性子熱負荷以下であるなら
ば、更なる冷却を必要としない。これが可能なのは、動作の熱負荷とランピングの熱負荷
が同時に発生する可能性がないため(例えば、TF磁石が磁場になるまで融合が開始され
ないため)である。当然ながら、より高い熱負荷(すなわち、より高い巻線から巻線への
抵抗)でランプアップし、更なる冷却を提供することも可能である。これは一般によりコ
ストがかかるが、より速いランプ時間を可能にする。
【0039】
大きな磁石では、(絶縁コイル又は非絶縁コイルのどちらかで)クエンチによる損傷を
避けるために、アクティブクエンチ保護スキームを実施することもできる。このスキーム
では、クエンチ領域で十分な温度上昇が発生して損傷を引き起こす前に、磁石の蓄積エネ
ルギーを磁石のクエンチ領域以外の他の何らかの構成要素に放出することができる。他の
構成要素は、外部抵抗、又は磁石のコールドマスのより大きな割合でクエンチされた磁石
の別個の部分であることができる(これにより、磁石の蓄積エネルギーを大きな体積に分
散し、全体的な温度上昇を抑える)。しかしながら、アクティブなアプローチは、ホット
スポットの端末温度が、コイルの損傷が発生する可能性がある温度、例えば約200K未
満であるように、常伝導域(「ホットスポット」とも呼ばれる)の開始から磁石電流ラン
プダウン(「ダンプ」)のトリガまでの時間が十分に短いことを必要とする。
【0040】
したがって、許容可能な時間枠で安定した磁場にランプできるようにコイルの時定数を
制御する一方で、ホットスポット温度の上昇率を制限するためにクエンチされた常伝導域
の周囲の巻線の間である程度の電流シェアリングを提供する手段を開発することが望まし
い。
【0041】
時定数L/Rを選択するために変えることができるコイルの可能なパラメータは、以下
の通りである。
・コイルの巻き数Nの2乗に比例するインダクタンスL。したがって、巻き数を減らすこ
とによって時定数を減らすことができる。しかしながら、磁場はアンペア回数に比例する
ので、少ない巻き数で高い磁場を生成するには、より多くの巻き数及びより低い輸送電流
で同じ磁場を生成する磁石よりも高い輸送電流が必要である。
・巻線から巻線への径方向抵抗、RT(ここで、R=NRT)
【0042】
これらのパラメータに関して、RはNRTにほぼ比例し、LはN2にほぼ比例するため、
L/RはN/RTにほぼ比例する。BはNIに比例するため、Nの最小値は、必要な磁場
(B)と、ケーブルあたりの最大電流(I)とによって設定される。時定数及びランピン
グ中の熱負荷は、より少ない巻き数を使用することによって低減することができるが、こ
れは、磁石が所定の磁場を生成するためにより高い電流を必要とする。
【0043】
各巻線の間の抵抗RTを大きくすることにより、時定数及びランピング熱負荷を低減す
ることもできる。しかしながら、RTを高くし過ぎると、巻線の間の電流シェアリングが
阻害され、コイルの「パッシブクエンチ保護」、すなわち、クエンチすることなく、また
コイルからエネルギーを放出することなく、ホットスポットから回復するコイルの能力が
低下する。大電流ケーブルは、電流を流すために複数のテープを必要とし、特にテープ間
の良好な電流シェアリング及び高い熱伝導率を可能にするために、テープ間の抵抗を非常
に低く保つことが望ましい。これにより、テープはReBCO超伝導層の欠陥に対して堅
牢になる。各巻線が複数のテープを含む場合、必要なRTは、各巻線のテープ間の抵抗よ
りもはるかに大きい場合があり、そのため、電流は、巻線の間ではなく欠陥をバイパスす
るために巻線内で優先的にシェアされる。しかしながら、RTは、ホットスポットの熱暴
走の速度を制限し、問題を検出して磁石をダンプする時間を最大にするために、巻線の間
の電流シェアリングを可能にするべきである。
【0044】
部分絶縁コイルを使用すると、ホットスポットの開始から常伝導域温度が200Kを超
えるまでの時間窓を同等の絶縁コイルと比較して大幅に延長することができ、磁石ダンプ
の開始のための追加の時間を可能にすることが分かった。これにより、RTを正しく選択
した部分絶縁コイルは、トカマクの大きな界磁コイルとしての使用に驚くほど適している
。
【0045】
この時間窓内に、ホットスポットを検出しなければならず、クエンチ検出システムは、
ホットスポットが(パッシブ電流シェアリングによって消散するのではなく)クエンチを
引き起こす可能性が高いと判断し、安全な方法で磁石からエネルギーを放出、すなわち、
制御された方法で大きなコールドマスを強制的にウォームアップしなければならない(大
きなコールドマスは、磁石の意図的にクエンチされた部分、例えばトロイダル磁場コイル
のリターンリムであり得る)。
【0046】
時間窓の持続時間は、各巻線における導電性金属(例えば銅)の量によって決まり、金
属安定化材が多いほど、時間窓が延長される。しかしながら、安定化材の量を増やすとコ
イルの電流密度が低下し、これは、トロイダル磁場コイルの中心柱のようなスペースが限
られた用途では望ましくない(ここで、より高い電流密度が核融合炉におけるより厚い中
性子シールドを可能にし、したがってより少ない熱負荷、又は球状トカマクにとってより
好ましいアスペクト比もしくはより小さい全体サイズを可能にする)。
【0047】
球状トカマクに絶縁コイルを用いる現在のクエンチ保護アプローチは、巻線により多く
の金属安定化材をもたらし、その結果、時間窓を管理可能なレベルまで増大させるために
、より大きく、より高価な装置をもたらすが、時間窓は(0.5から1秒のオーダーで)
依然として短い。非絶縁又は部分絶縁コイルは絶縁コイルよりも必要な金属安定化材が少
ないため、非絶縁又は部分絶縁トロイダル磁場コイルの使用により、時間窓を延長し、電
流密度を増加させることができる。実際、非絶縁トロイダル磁場コイルの電流密度の限界
は、電流密度が増加するにつれて中心柱への応力が制限要因になるため、電気的な問題で
はなく機械的な問題である。最終的に、テープ材料に生じた歪みがReBCO層に伝達さ
れ、臨界電流の低下を引き起こす。
【0048】
プラズマ半径1.4m、5Tの磁場、18個のリムを有するトロイダル磁場(TF)磁
石の実施例を考える。全TF中心ロッド電流は35MAである。10kAの輸送電流を仮
定すると、各リムは196の巻線を有し、全TFインダクタンスは約46Hである。(約
6時間の合計ランプ時間を有するために)1.4時間の時定数を達成するには、約0.5
ミリオームの個々のリムの径方向抵抗を必要とする。したがって、所望の時定数を達成す
るためには、巻線から巻線への平均抵抗RTは、2.54マイクロオームである必要があ
る。
【0049】
モデリングにより、これは、0.05mmの厚さ及び0.02オームメートルの抵抗率
(これは20Kでの通常の銅の2×106倍である)を有する巻線間の部分絶縁層を用い
て達成することができる。当業者は、部分絶縁のための他のパラメータも可能であること
を理解するであろう。
【0050】
RTは、HTSケーブル内及び/又はコイルの巻線の間の被覆材のための金属の選択に
よって調整することができる。典型的なHTSケーブルでは、これは銅であるが、より大
きな抵抗を可能にするために、ステンレス鋼などの他の金属を使用することができる。代
替的又は追加的に、コイルの巻線の間の間隔を増加させて、コイルの巻線の間により厚い
(そのためより抵抗が大きい)金属層を生じることができる。他の工学的制約(例えば、
電流密度及び構造安定性)も満たす適切な材料には、ゲルマニウム及び他の半導体が含ま
れる。
【0051】
更なる代替例は、絶縁体に常伝導(すなわち、非超伝導)金属を使用するが、従来の絶縁体を用いて電流経路の形状を調整することである。言い換えれば、巻線の間で電流を強制的に流す距離を増大させる。コイルの巻線の間の材料は、
図9A及びBに示すように、「漏れのある絶縁」を有する金属細片(又は他の導電性細片)を含む部分絶縁層を含むことができる。金属細片901は、少なくともHTSケーブルに面する側に薄い絶縁被覆902を備え、絶縁被覆は、金属細片のそれぞれの側で間隔を置いて窓(すなわち「貫通穴」)903の上で除去されるか又は欠落している。窓は任意の形状を有することができ、テープの端まで延びることができる。金属細片の両側の窓の位置は、
図9Bに示すように、ずらして配置されており、これにより、電流が金属細片の長さの一部に沿った経路910を取らなければならないので、(絶縁されていない細片、又はそれぞれの側の窓が互いに正反対である細片と比較して)抵抗が増加する。
【0052】
図9A及びBに示す部分絶縁層の抵抗(すなわち、巻線間の抵抗)は、以下によって決
まる。
・同じ側の隣接する窓間の距離(距離が大きいほど抵抗が大きくなる)。これが支配的な
効果である。
・反対側の隣接する窓間のオフセット、すなわち一方の側の窓と反対側の隣接する窓との
間の距離(オフセットが大きいほど抵抗が大きくなる)
・抵抗は、窓の両側の相対的なオフセットによっても変化し、一方の側の窓が反対側の最
も近い窓の中間にあるとき、同じ側の所定の窓間の距離で最大になる。この配置はまた、
部分絶縁層の均一な抵抗加熱を提供する。
・金属細片の厚さ(オフセットが厚さよりも著しく大きい場合、厚さが大きいほど抵抗が
小さくなる)
・金属細片の幅(幅が広いほど抵抗が小さくなる)
・金属細片の抵抗率(抵抗率が大きいほど抵抗が大きくなる)
・窓の面積(面積が大きいほど抵抗が小さくなる)。ただし、窓の面積は、窓間の距離が
窓の寸法と同等である場合にのみ重要である。
【0053】
正確な関係は、当技術分野で知られている一般的に利用可能な技術又は簡単な実験によ
ってモデル化することができる。
【0054】
窓の間隔が一定である必要はない。重要な要素は、電流が細片の一方の側の巻線から他
方の側へ流れるためには、電流が窓を通って細片に入り、次に細片に沿って流れ、細片の
反対側の別の窓を通って出なければならないことである。1つの窓に入った電流が複数の
経路に分割され、複数の窓を通って出ることは明らかに可能である。各経路をたどる電流
の割合は、単にその経路のインピーダンスによって決まる(インピーダンスは変化する電
流を遅くするための経路の抵抗によって支配されるが、経路のインダクタンスは急速に変
化する電流に対して作用する)。
【0055】
細片の両側の窓間の距離が窓の寸法に同等でない限り、窓間の経路の抵抗は、窓間の距
離によって支配され、窓間の距離に比例し、細片の厚さに反比例する。これは、部分絶縁
細片の望ましい配置である。
【0056】
コイルの異なる場所で抵抗を変えることが望ましい場合、これらの特性のいずれかを部
分絶縁層の長さに沿って変化させることができる。
【0057】
絶縁被覆は、例えば、カプトン(登録商標)テープの形態で又は液体として用いられた
ポリアミド、マイラーフィルム、絶縁ワニス、又は任意の他の好適な絶縁体であることが
できる。
【0058】
金属は、銅、真鍮、ステンレス鋼、ハステロイ、又は必要に応じて任意の他の好適な金
属(又は非金属導体)であることができる。ハステロイのステンレス鋼などの材料を使用
することにより、部分絶縁層は、従来の全銅磁石と比較して、改善された構造的安定性も
提供することができ、高磁場トカマクで経験する大きな応力に対処するのに役立つ。
【0059】
HTSコイルは、通常どおりに巻くことができ、部分絶縁層は巻線を巻くときに巻線の
間に配置される。HTSコイルは、樹脂中に封入するか又は互いにはんだ付けすることが
でき、後者の場合、部分絶縁層は、任意選択ではんだ付け可能なコーティングで被覆して
巻線の間のはんだ接着性を高めることができる。部分絶縁層は、コイルの各巻線を分離す
るようにHTS巻線で連続的に巻かれている。
【0060】
窓は、エッチングによって、絶縁体細片を金属細片に付ける前に切断することによって
、マスキングによるスプレーコーティングによって、インクジェット印刷によって、又は
当技術分野で知られている他の好適な方法によって(例えば、フレキシブルPCB製造で
知られている技術を用いて)製造することができる。
【0061】
窓間の距離が窓のサイズよりも著しく大きく、一方の側の窓が他方の側の窓の中間にな
るように窓がオフセットされている場合、巻線間の抵抗R
TTは以下のように概算すること
ができる。
【数1】
ここで、dは窓の間(同じ側の窓と次の窓との間)の距離、ρは抵抗率(コイルが低温か
つ高磁場で作動することを考慮)、wはテープの幅、tは金属細片の厚さ、Lは各巻線の
平均長さである。
【0062】
例えば、2.54マイクロオームの巻線間の抵抗は、20mmの幅、50ミクロンの厚
さ、16.2mの巻線長さ、及び60.5mmの窓間の距離dを有する真鍮細片(=約2
0Kで45nm)を用いて実現することができる。
【0063】
代替的な「漏れのある絶縁」構造を
図10A(平面図)及び10B(10AのB-B断
面)に示す。前述のように、金属細片1001は、少なくともHTSに面する側に薄い絶
縁被覆1002を備えている。この場合、前の実施例のように縦方向に間隔を置いて配置
された窓の代わりに、各絶縁被覆1002は、金属細片の全長にわたる単一の窓1003
(又は「通路」)を有し、金属細片のそれぞれの側の窓は反対側の縁にある(例えば、細
片、細片の一端から見て、上面の左側と下面の右側に窓を有することができる)。
【0064】
窓は金属細片の縁まで延びているように表示されているが、必ずしもそうである必要は
ない。すなわち、窓の両側に絶縁材料がある場合がある。
【0065】
窓は、それらが重ならないように配置され、電流1010が細片の幅に沿って進むだけ
で細片を通って流れることを可能にする。
【0066】
この構造では、巻線から巻線への抵抗は、以下によって決定される。
・片側の窓と反対側の窓との間の距離(細片の幅に沿って内側の縁で測定され、距離が大
きいほど抵抗が大きくなる)。
・金属細片の厚さ(厚さが大きいほど抵抗が小さくなる)
・金属細片の抵抗率(抵抗率が大きいほど抵抗が大きくなる)
・各窓の幅(幅が広いほど抵抗が小さくなる)。前の構成の窓の面積と同様に、これは小
さな影響であるが、この場合、窓間の距離と各窓の幅は、金属細片の幅によって制限され
ることに留意すべきである。
【0067】
窓間の距離が細片の厚さよりも著しく大きい場合、巻線から巻線への抵抗は次のように
与えられる。
【数2】
ここで、sは窓間の距離、ρは抵抗率(コイルが低温かつ高磁場で作動することを考慮)
、tは金属細片の厚さ、Lは各巻線の長さである。
【0068】
例えば、2.54マイクロオームの巻線間の抵抗は、20mmの幅、50ミクロンの厚
さを有するステンレス鋼細片(=486nm)と、それぞれの側の対向する縁にある7.
9mmの非絶縁細片とを用いて実現することができる。
【0069】
上記の両方の構成が特定の実施例である一般的な場合、部分絶縁層は、それぞれの側に
薄い絶縁層を有する金属細片を含む。各絶縁層は、(細片の厚みによるオフセットに加え
て)金属細片の面内で他の層の窓からオフセットされた1つ以上の窓を有する。オフセッ
ト距離は、金属細片の厚さよりも大きく、コイルの1巻きの長さよりもかなり短いことが
できる(例えば、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1、又は少なくとも100分
の1)。窓は、HTSテープと金属細片との電気的接触を可能にし、その結果、巻かれた
コイル内の隣接するHTSテープ間の電流経路が金属細片を横切って(長さに沿って又は
幅に沿って)横方向に進む。これにより、窓の位置及び間隔を変えることによって部分絶
縁層の抵抗を容易に制御することが可能となり、同様の寸法の金属細片のみによって得ら
れるよりも大きな抵抗が得られる。
【0070】
窓は、部分絶縁層の長さに沿って均等に分布させることができ、そのような分布は、部
分絶縁層の全長に沿って延在する。代替的に、窓間の距離(又は窓の他の特性)は、コイ
ルの各巻線の全抵抗が一定になるように、部分絶縁層に沿って変化させることができる。
【0071】
各部分絶縁層に1つの窓のみが設けられている場合、各窓は、部分絶縁層の全長にわた
って延在することができる。
【0072】
窓を通しての電気的接触を確実にするために、部分絶縁層は、巻線中にHTSケーブル
にはんだ付けすることができる。代替的に、接触は、一度巻かれたコイル内の圧力のみに
よって得ることができる。更なる代替例として、追加の導電性インサートを窓に追加する
ことができ、又は金属細片は、窓内に延びる突出部を有することができる。インサート又
は突出部は、窓全体を埋めるか又は窓の一部のみを埋めることができる。例えば、窓が「
通路」である場合、インサートは、その通路に沿って間隔を置いて設けることができる。
この結果、インサートは効果的に窓のサイズを小さくするように作用し、部分絶縁層の抵
抗をさらに調整するために使用することができる。
【0073】
先に開示した窓の様々な配置のすべては、窓と、窓を部分的に埋める金属インサート又
は突出部との組合せによって実現することができ、例えば、金属インサートの間隔は、コ
イルの1巻線あたりの抵抗が一定であることを確実にするために部分絶縁層に沿って変え
ることができる。
【0074】
部分絶縁層とHTSコイルとの物理的接続は、圧力のみによって(すなわち、単にコイ
ルのコンパクトな巻線によって)、絶縁被覆とHTSケーブルの外面との接着剤(例えば
エポキシ樹脂)接続によって、及び/又は部分絶縁層の外側金属面とHTSケーブルとの
間のはんだ接続によって行うことができる。
【0075】
図11は、良好な物理的及び電気的接続を確実にするために部分絶縁層に対して行われ
得るいくつかの更なる改良点を示す。前述のように、部分絶縁層は、金属(又は他の導電
性)細片1101と、薄い絶縁被覆1102とを含む。金属インサート1103は、窓内
に配置することができ、又は金属細片は、HTSケーブルとの接触を容易にするために窓
を通って延びる突出部を有することができる。
【0076】
代替的又は追加的に、より大きなはんだ付け表面(ひいてはコイルのより容易な製造及
びより強固に結合されたコイル)を提供するために、部分絶縁層は、絶縁層の外面に結合
された更なる金属細片1104、以下「接続細片」を含むことができる。これらの接続細
片は、層の電気的性質にほとんど影響を及ぼさないが、部分絶縁層を実質的に全表面に沿
ってHTSケーブルにはんだ付けすることを可能にする。
【0077】
部分絶縁層はまた、コイルを製造するときに部分絶縁層を横切って及び/又は絶縁被膜
を横切るはんだブリッジを避けるために、部分絶縁層の縁に結合され、金属細片1101
の少なくとも縁を覆う絶縁材料1105を有することができる。
【0078】
部分絶縁層はフレキシブルPCBとして製造することができ、絶縁被覆は接着剤によっ
て金属細片に結合され、次いで窓を形成するためにエッチングされ、必要に応じて更なる
金属要素が金属細片と電気的に接触するように更なる金属要素が絶縁被覆又は金属細片に
結合される。代替的に、絶縁被覆は、予め切断された窓を有し(又は細片に付けたときに
「通路」を提供するようなサイズとし)、次いで接着剤によって巻線中の金属細片に結合
することができる。他の製造方法も使用することができる。
【0079】
図12は、部分絶縁層の代替構成を示す。前述のように、部分絶縁層は、金属細片12
01と、(
図10A及びBを参照して上述したように)金属細片のそれぞれの側の一方の
縁に「通路」を形成するように配置されている絶縁被覆1202とを含む。この場合、金
属細片は、「ジョグル」又は「キンク」1203を備え、すなわち、金属細片は、金属細
片の窓によって露出する部分が絶縁被覆の平面内にあるように曲げられている。絶縁被覆
は、はんだ付け時に金属細片と絶縁被覆の他方の側のHTSテープとの間の望ましくない
橋絡を防ぐために、オーバーハング1204を備えることができる。
【0080】
上記は主に、金属細片に絶縁体を付け、次にこれをHTSケーブルで巻いてコイルを形
成することによって形成される部分絶縁層の観点から書かれているが、HTSケーブルに
絶縁体を付け、次にそれを裸の金属細片で巻いている構造は、HTSケーブル、絶縁体、
及び金属細片を巻線中にまとめる構造と同様であることが理解されるであろう。事実上、
「部分絶縁層」は、コイルを巻くとその場で形成することができる。
【0081】
漏れのある絶縁層の更なる代替例では、カプトン(登録商標)テープなどの絶縁材料の
螺旋状ラップを金属細片の周りに巻き付け、絶縁巻線の間に意図的に間隙を残して「窓」
を形成することができる。代替的に、各巻線を絶縁層で螺旋状に包み、間隙を残して「窓
」を形成することもできる。しかしながら、隣接する巻線の間の抵抗率(すなわち、窓の
接触領域及び反対側の窓間のオフセット)を制御することは、後者のアプローチではより
困難になるであろう。
【0082】
図16A~Eは、さらに別の漏れのある絶縁層を示す。先の実施例と同様に、この実施
例の技術的特徴は、必ずしも一緒に使用する必要はなく、必要に応じて他の実施例の特徴
と組み合わせることができる。漏れのある絶縁層は5つの層を含み、5つの層は順番に以
下のとおりである。
・第1の金属接続層1611、
・第1の絶縁層1621、
・導電層1630、
・第2の絶縁層1622、
・第2の金属接続層1612。
【0083】
図16A~Cは、それぞれ、第1の金属接続層1611、導電層1630、及び第2の
金属接続層1622のレイアウトを示す。
図16D及びEは、
図16A~Cの線D及びE
に沿った断面図である。
【0084】
先の実施例と同様に、接続層は、はんだ付けによるHTSケーブルへの取り付けを容易
にするために存在する。
【0085】
導電層が連続した金属細片である先の実施例とは対照的に、この実施例では、導電層は
いくつかの導電領域に分割されている。これらの領域には2つのタイプがある。正方形の
領域1631(実際には任意の形状であることができるが)は、ビア1606によって金
属接続層の一方にのみ接続されている。これらの領域は、部分絶縁層の電気的性質に影響
を与えないが、それぞれの絶縁層を通る熱経路を提供する。これらの領域のサイズ及びそ
れらと金属接続層との間の接続の数を変えることによって、部分絶縁層の熱的性質を電気
的性質とは無関係に変えることができる。
【0086】
他の領域1632は、第1の絶縁層1621の窓1601と第2の絶縁層1622の窓
1602とを接続している。窓間の抵抗は、領域1632の幾何学的形状を変えることに
よって制御することができる。例えば、領域1632が
図16Bに示すように細長い軌道
1633を含む場合、軌道の幅を増大させると窓間の抵抗が減少し、(例えば、直線でな
い軌道を提供することにより、又は窓を移動することにより)軌道の長さを増大させると
窓間の抵抗が増加する。
【0087】
第1の絶縁層の窓1601は、第1の接続層及び第1の絶縁層を通る穿孔されたビアに
より形成され、次いで第1の接続層及び導電層を接続するために金属1603(又は他の
導電性材料)でめっきされる。第2の絶縁層の窓1602は、すべての層を通るビア16
02を穿孔することによって形成され、次いで金属1604(又は他の導電性材料)でめ
っきされる。第2の絶縁層の窓1602を通して第1の接続層に接続が形成されるのを防
ぐために、第1の接続層をビア1602の周囲でエッチングして電気的に絶縁し、ビア1
602の端部に絶縁キャップ1605を配置して、はんだ付け又はHTSケーブルとの接
触による橋絡が生じないことを確実にする。
【0088】
代替例として、代わりに窓1602は、それらが第2の接続層、第2の絶縁層、及び導
電層を通過し、かつ第1の絶縁層を通過しない(又は完全には通過しない)ように部分絶
縁層の他方の側から穿孔することができる。更なる代替例として、すべての窓は、すべて
の層を通過するビアから形成することができ、第2の接続層のエッチング及び第2の接続
層上の絶縁キャップが第1の絶縁層の窓1601に使用される。
【0089】
一実施例として、
図16A~Eによる部分絶縁層は、以下のように、フレキシブルPC
Bプロセスによって製造することができる。
・第1の絶縁層1621を提供し、その上面及び下面に(それぞれ第1の接続層1611
及び導電層1630を形成するために)銅でめっきする。
・銅めっきした第1の絶縁層1621(すなわち、層1621、1611m1630)を
ドリル加工してビア1601を形成し、穴をめっきする(1603)。
・導電層1630をエッチングして、領域1632(及び任意選択で領域1631、ただ
しこれらはエッチング除去され得ることが望ましい)を形成する。
・第2の絶縁層1622を導電層1630に付ける。これは、第1の絶縁層と同じ絶縁体
であってもよいし、異なる絶縁体であってもよい。
・一実施例では、第2の絶縁層は、第2の接続層を接続するために使用される接着剤であ
ることができる。
・第2の接続層1612を第2の絶縁層1622に付ける。
・第1及び第2の絶縁層に窓1602を形成するために上記のようにビアを穿孔する。
・ビアを銅1604で被覆する。
・第1の接続層をエッチングして、窓1602を第1の接続層から分離する(1611)
。
・窓1602を形成するビアの第1の接続層1611の端部に絶縁キャップ1605を付
ける。
【0090】
当然ながら、
図16A~Eの実施例の特徴の一部のみを部分絶縁層で使用する場合、存
在しない特徴に対応する方法ステップは実行されない。
【0091】
一般に、上記の部分絶縁層の実施例の特徴は、様々な方法で組み合わせることができ、
それぞれの実施例の他の特徴とは別に使用することができることに留意されたい。例えば
、絶縁層の窓は、「通路」の実施例(
図10A)のように、
図16Bのパターン化された
導電層と組み合わせて、各絶縁層の縁に単一の細長い窓を備えていることができ、導電層
は、
図12のように、パターン化された導電層の電気接点を絶縁層の平面にもたらすため
に「ジョグル」を備えていることができる。
【0092】
上記の説明の多くは、大きなHTSコイルに焦点を当ててきたが、先に開示された「漏
れのある絶縁」は、より小さなHTSコイルにもそれらのコイルに制御された巻線から巻
線への抵抗を提供するために適用可能であることに留意されたい。
【0093】
このような「漏れのある絶縁」を含むコイルの様々な製造方法について次に説明する。
これらは実施例としてのみ提示されており、当業者は、他の巻線方法が可能であり、各実
施例の要素を本明細書に提示されていない様々な方法で組み合わせることができることを
容易に理解するであろう。
【0094】
部分絶縁層は、(例えば、上記のようなフレキシブルPCB製造プロセスによって)事
前に形成されてもよいし、巻線中にその場で形成されてもよい。金属細片に絶縁被覆を施
すことは、絶縁被覆及び/又は金属細片にそれらを接続する前に接着剤(例えばエポキシ
樹脂)を塗布することを含み得る。
【0095】
部分絶縁層が(事前に形成されるか又は後述するように巻線プロセスの初期段階によっ
て)コイルへの巻線前に形成される場合、巻線プロセス中の接続を容易にするために、層
はそれぞれの側にHTSテープを備えることができる。
【0096】
図13は、例示的な巻線システムの概略図を示す。コイル1300は、3巻きのHTS
テープ1301と、部分絶縁層1302とから巻線される。部分絶縁層は、2巻きのHT
Sテープ1311と、それぞれの側が乾燥エポキシ樹脂でコーティングされた2巻きの絶
縁テープ1312と、1巻きのステンレス鋼箔1313とからその場で形成される。部分
絶縁層及びHTSテープのアセンブリは、それを熱及び圧力ローラ1303に通すことに
よって互いに結合される(巻線の圧力がエポキシ樹脂を硬化させるのに十分な場合には、
これらのローラを省略するか又は大きな熱又は圧力を加えないローラに置き換えることが
できる)。部分絶縁層1302及びHTSテープ1301の各々は、露出した表面にフラ
ックスを塗布するためにフラックスボックス1304に通される。
【0097】
図13のコイルは円形として示されているが、同様の巻線システムを使用して(例えば
、異なる形状のフォーマを用いて)任意の形状のコイルを巻くことができる。
【0098】
図14は、部分絶縁層及びHTSテープのアセンブリの断面を示す。アセンブリは、絶
縁層1402の間に挟まれているステンレス鋼テープ1401を含み、絶縁層1402は
同様にHTSテープ1403の間に挟まれている。各層はエポキシ樹脂で結合されている
が、ステンレス鋼テープとHTSテープの間の直接接続には(良好な電気的接続を確保す
るため)エポキシ樹脂は使用されていない。部分絶縁層及びHTSのアセンブリの最小曲
げ半径は、(アセンブリの厚さにより)単一のHTSテープの最小曲げ半径よりも制限さ
れるので、コイルを製造するこの方法は、より大きなコイルに好ましい。しかしながら、
これは、製造時にアセンブリを部分的に「事前に曲げる」こと、すなわち、(「ゼロ歪み
」位置が一直線のテープとコイルの最小曲率半径の中間の曲率半径になるように)アセン
ブリを部分的に曲げた状態に形成することよって克服することができる。
【0099】
図示の実施例では、絶縁テープは、「通路」の実施形態を提供するように配置され、テ
ープのそれぞれの側の一方の縁に単一の大きな窓を有する。これは、巻線中にHTSテー
プ及びステンレス鋼テープから絶縁テープをずらしてオーバーハング1410を形成する
ことによって達成される。このオーバーハングは、アセンブリがはんだ付けされるとき、
又は後述するようにコイルが「はんだポッティング」されるときに、HTSとステンレス
鋼との間の望ましくない電気的橋絡を防ぐのに役立つ。代替的に、ステンレス鋼よりも幅
の狭い絶縁テープを設け、ステンレス鋼の一方の縁に位置合わせ(して他方の縁に「通路
」を提供)することもできる。
【0100】
部分絶縁層が他の配置の窓を有する場合、HTSテープとスチールテープとの間の電気
的接続を確実にするために、例えば、窓が部分絶縁層の外縁への流体連通を許容しない場
合に、部分絶縁層の組み立て中にはんだを設けることができる。代替的又は追加的に、前
述のように、窓内に更なる金属インサート又は金属層の突出部を使用することができる。
【0101】
コイルをまとめて電気的接続を改善するために、コイルは、「はんだポッティング」さ
れ又は「はんだで結合され」、すなわち、(当技術分野でよく知られている「エポキシ樹
脂ポッティング」との類推により)コイルを貫通させることができるはんだで完全に被覆
され得る。
図15は、例示的なはんだポッティングされたコイルを示す。コイルは、部分
絶縁層1510とHTSケーブル1520とを含む。部分絶縁層1510は、金属細片1
511と絶縁被覆1512とを含み、絶縁被覆は、コイルの縁を越えて突出するオーバー
ハング1513を有する。コイルがはんだポッティングされると、はんだ1530はコイ
ルの表面を被覆し、ケーブルのHTSテープ間に延び、それにより、ケーブルのHTSテ
ープ間及びHTSケーブルと金属層との間の電気的接続を確実にする。HTSテープの金
属表面及び部分絶縁層の露出した金属表面は、はんだ付けの前にフラックスで処理するこ
とができる。
【0102】
次いで、コイルを平面1514(点線)に沿って機械加工し、オーバーハングを切断し
てはんだを滑らかにすることができ、これにより、オーバーハングを横切るはんだブリッ
ジが残らないことをさらに確実にする。
【0103】
部分絶縁層がオーバーハングの代わりに縁に絶縁被覆を備えている場合(例えば、
図1
1に示し、上述したように)、コイルは、はんだポッティングに続いてこの絶縁被覆まで
機械加工されることができる。使用するはんだが使用する絶縁被覆を濡らさない場合、縁
の絶縁被覆が十分に広ければ、そのようなブリッジは形成されない可能性がある。
【0104】
コイルの一方の側にオーバーハングを設ける代わりに、コイルのその側を取り外し可能
なマスク(例えば、2成分シリコーン)でコーティングして、はんだがその側の接続をブ
リッジするのを防ぐことができる。この配置により、HTSテープ及び部分絶縁層のすべ
ての一端を共通の平面上に配置することができるため、コイルの位置合わせが容易になる
。
【0105】
「通路」の実施形態についてはんだポッティングが示されているが、はんだポッティン
グは先に提示した他の構成にも同様に適用可能である。一部の例では、オーバーハング1
513は、各絶縁コーティングの両側に、又は部分絶縁層の長さの一部のみに沿って、す
なわち、絶縁層を横切る接続が望ましくない場合に設けることができ、そのような接続が
許容される場合(例えば、窓が金属層の縁部まで延びている場合など)にはオーバーハン
グがない。絶縁被膜の窓がコイルの外側と流体連通しないように配置される場合、これら
の窓を通して巻線中の別のはんだ付け段階をはんだ接続部に行うことができ、又は本明細
書に開示されている他の任意の接続方法を代わりに使用することができる(例えば、窓内
の追加の金属インサート)。
【0106】
部分絶縁層が圧力のみによってHTSテープに電気的に接続できる場合(例えば、
図1
1及び
図12の実施形態、ならびに金属層又は金属層に電気的に接続されている構成要素
の一部が絶縁被覆の平面内にある他の実施形態では)、必要に応じてはんだを使用するこ
ともできるが、はんだポッティング又は他のはんだ付けを行うことなく、HTSと部分絶
縁層との間に電気的接続を形成することができる。この場合、コイルは、機械的安定性を
改善するためにエポキシ樹脂ポッティングすることができるが、エポキシ樹脂が(HTS
ケーブル内又はケーブルと部分絶縁層との間の)いかなる電気的接続も阻止しないように
注意すべきである。
【0107】
HTSケーブルは、巻線前又は巻線プロセス中に個別にはんだ付けすることができる。
巻線中のはんだ付けは、HTSテープが巻き戻されているときに各HTSテープをはんだ
でコーティングし、それらを一緒に加熱ローラに通してケーブルを形成し、次いでケーブ
ルに部分絶縁層を巻き付けることによって行うことができる。
【0108】
一部の実施形態では、HTSケーブルと金属層との間の間隙が小さいため、はんだは、
ポッティング中にこれらの間隙を濡らさない可能性がある。これは、はんだ、金属層、及
びHTSケーブルの外面の組成によって決まる。これは通常、金属層とHTSケーブルの
外面が異なる場合に起こる。このため、金属層とHTSケーブルとの直接接触によって電
気的接続が行われない実施形態では、金属層とHTSケーブルの外面は類似の金属である
ことができ、又はこれらの間隙はポッティングによってではなく個別にはんだ付けするこ
とができる。
【0109】
同様に、はんだは一般に、絶縁層とHTSテープとの間の間隙を濡らさない。はんだポ
ッティングに続いて、これらの間隙を結合するためにコイルをエポキシ樹脂ポッティング
することができる(少なくともコイルの外側に流体連通している場合)。
【0110】
場合によっては(例えば、部分絶縁層がフレキシブルPCBとして製造される場合)、
より短い長さの部分絶縁層(例えば、2~5m)を形成し、それらをコイル内の突き合わ
せ接合で接続することが望ましいことがある。上記のどの実施例でも、これは単一の「部
分絶縁層」と考えるべきである。
【0111】
上記の開示は、多くの可変要素を等しく扱ってきたが、所与の磁石について、設計プロ
セスにより、いくつかの可変要素は制約され、他の可変要素は自由に選択できることが理
解されるであろう。例えば、必要な磁場及び磁石の形状が分かっている場合、設計プロセ
スは以下のステップを含むことができる。
・必要な磁場を生成するために必要な数の「アンペア回数」(すなわち、巻き数Nに輸送
電流Iを乗じたもの)を決定するステップ。
・許容可能な時定数を達成するインダクタンスL(Nによって決まる)及び径方向抵抗R
(N及び巻線間の抵抗RTTによって決まる)を提供するため値I及びNを選択するステッ
プ(「許容できる」は使用事例によって決まる)。
・必要なRTTを提供するために部分絶縁体の性質を選択するステップ。
【0112】
I及びRTTの選択は、他の要因によって制約される可能性が高い。例えば、輸送電流は、
HTSケーブルの臨界電流を超えることができず、RTTは、部分絶縁層の許容可能な厚さ
及びテープの幅によって決まる(どちらも他の考慮事項、例えば、利用可能なスペース及
びHTSテープの性能によって設定される可能性が高い)。
【0113】
上記の説明は巻かれたパンケーキコイルに関するものであるが、同様の考慮事項がセク
ションコイルにも当てはまる。このようなコイルでは、コイルパラメータに対するL及び
Rの依存性は異なる可能性があるが、HTS磁石の設計の通常の技術を用いて当業者が確
認することができる。
【0114】
本開示は、許容可能な速いコイルランプ時間と、1巻線で形成されるホットスポットと
HTSテープの損傷との間の長い時間窓との間の良好なトレードオフを提供するようにL
/R時定数を調整することを可能にすることによって、非絶縁/部分絶縁コイルの使用を
可能にする。これにより、ホットスポットは、コイル温度を監視することによって検出す
ることができ、必要に応じて、アクティブクエンチ保護システムを係合させて、同等の絶
縁コイルと比較してより長い時間枠で磁石電流を流すことができる。
【0115】
さらに、非絶縁コイルは、HTSケーブル間で銅を「シェア」できるため、同等の絶
縁コイルよりも少ない銅又は他の金属安定化材しか必要としない(すなわち、各HTSケ
ーブルがそのケーブルからの電流をシェアするのに十分な銅を必要とするのではなく、コ
イルが全体としてケーブルのサブセットのみからの電流をシェアするのに十分な銅を必要
とする)。したがって、部分絶縁コイルを用いてより高い電流密度を実現することができ
、これは、コイルの厚さが重要な設計上の考慮事項である球状トカマクのトロイダル磁場
コイルのような用途において(球状トカマクの場合、中心柱の半径を最小化するか又は所
与の中心柱の半径に対してより多くの中性子遮蔽を可能にするために)特に有用である。
【0116】
絶縁コイルの挙動が通常動作に要求される場合、非絶縁コイルの利点は、冷却時の非常
に高い抵抗と、転移温度(酸化バナジウムの場合は約110 K)を超えて温めた場合の
比較的低い温度(少なくとも10分の1)と有する、酸化バナジウムなどの金属絶縁体転
移材料を使用することにより、クエンチ中にも得ることができる。このため、巻線間に金
属絶縁体遷移材料を備えた「半絶縁」コイルは、通常動作中及びランプアップ中は(非常
に低い時定数を有する)絶縁コイルとして、(金属絶縁体転移材料が熱くなり、導電性に
なる)クエンチ中は非絶縁コイルとして挙動する。これにより、金属絶縁体遷移金属が低
い抵抗を有する場合のRTをランプアップの時定数に悪影響を与えることなく可能な限り
低くすることができる(低温でのRTが十分に低い時定数を提供するという条件で。ただ
し、金属絶縁体転移材料はそれらの転移温度付近で抵抗率が非常に急激に低下するため(
例えば、10ケルビンを超えると抵抗率が少なくとも10分の1に低下、又は10ケルビ
ンを超えると抵抗率が1000分の1に低下)、これは容易に達成可能である)。
【0117】
上記開示は、様々なHTS磁石システムに適用することができる。例としての上述した
トカマク核融合炉に加えて、本開示は、核磁気共鳴イメージング(NMR/MRI)装置
におけるHTSコイル、磁場による非磁気媒体内の磁気装置の操作(例えば、患者内で医
療デバイスを操作するためのロボット磁気ナビゲーションシステム)、及び例えば電子航
空機用の電気モータのための磁石に使用することができる。更なる例として、本開示は、
開示された特徴を含むHTS磁石システムを含む陽子線治療装置に適用することができ、
HTS磁石システムは、PBT装置の加速器、PBT装置の四重極又は双極子ステアリン
グ磁石、又はPBT装置の任意の他の磁石内で使用される。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-09
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温超伝導(HTS)界磁コイルであって、
HTS材料を含む複数の巻線と、
半導体を介して前記巻線の間で電流をシェアすることができるように配置されている半導体と
を有する、HTS界磁コイル。
【請求項2】
前記HTS界磁コイルは50cmより大きい半径を有する、請求項1に記載のHTS界磁コイル。
【請求項3】
前記半導体はゲルマニウムである、請求項1に記載のHTS界磁コイル。
【請求項4】
各巻線が複数のHTSテープを含み、各巻線におけるHTSテープ間の抵抗が巻線間の抵抗よりも小さい、請求項1に記載のHTS界磁コイル。
【請求項5】
前記半導体は前記巻線間の半導体の層として提供される、請求項1に記載のHTS界磁コイル。
【請求項6】
前記半導体は10
-6
から10
8
オームメートルの抵抗率を有する、請求項1に記載のHTS界磁コイル。
【請求項7】
請求項1に記載のHTS界磁コイルを含むトカマク核融合炉であって、前記HTS界磁コイルはトロイダル磁場コイル又はポロイダル磁場コイルのいずれかである、トカマク核融合炉。
【請求項8】
請求項1に記載のHTS界磁コイルを含む陽子線治療(PBT)装置であって、前記HTS界磁コイルは、
前記PBT装置の加速器の界磁コイル、及び
前記PBT装置の陽子線ステアリングシステムの双極子磁石又は四重極磁石
のうちの1つである、PBT装置。
【外国語明細書】