(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058982
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】弁用ダイヤフラム及びダイヤフラム弁
(51)【国際特許分類】
F16K 7/12 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
F16K7/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020834
(22)【出願日】2022-02-14
(62)【分割の表示】P 2020539916の分割
【原出願日】2018-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】大岡 秀充
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐久性を向上させることができる弁用ダイヤフラムを好適に備えることができるダイヤフラム弁を提供する。
【解決手段】ダイヤフラム20は円筒状の周壁を軸方向一方側から閉鎖する底壁の外面が弁座14との接触面を形成する。周壁から張り出す膜部22の内周部分に、軸方向一方側から他方側へ凹み且つ周方向に延びる溝が形成され、溝の断面形状は円弧状である。膜部22において軸方向他方側を向く内周部分の面および外周部分の面は面一である。内周部分の内周縁は、周壁の外周面の軸方向における中点を含む部分に接続し、軸方向一方側を向く外周部分の面は、軸方向の一方側に離れた位置と他方側に離れた位置との間に位置する。内周部分の内周縁から外周縁までの径方向の寸法は、外周部分の内周縁から外周縁までの径方向の寸法の5/10以上7/10以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体室の内部に弁座が形成される流体室を有し、前記流体室に前記弁座を外部に露出させるための開口部が形成される弁本体と、
前記弁座に離接可能に配置され、主弁体部と、前記主弁体部の外周面から径方向に張り出す円環状の膜部とを有する弁用ダイヤフラムと、
前記弁用ダイヤフラムの主弁体部に連結される進退動可能な軸部を有する駆動部と、前記駆動部を収容するとともに前記開口部を覆うように配置されるケースと、を有し、前記軸部によって前記弁用ダイヤフラムを前記弁座に対して離接させることで、前記第1ポートと前記第2ポートとの連通および遮断を切り換える駆動装置と、
前記弁本体に前記駆動装置を取り付けるためのピン部材と、
を備え、
前記流体室における前記開口部の外周縁部には、シール部が形成され、
前記シール部の外周側の部分に、前記開口部を囲繞するように突出する第1取付壁部が形成され、
前記ケースにおける前記開口部側の端部に、前記軸部を囲繞するように突出し、前記第1取付壁部の内周側に配置される第2取付壁部が形成され、
前記第1取付壁部には、前記ピン部材が挿入される第1取付孔が形成され、
前記第2取付壁部には、前記ピン部材が挿入される第2取付孔が形成され、
前記ピン部材が前記第1取付孔と前記第2取付孔とに跨がるように挿入されることにより、前記弁本体に前記駆動装置が取り付けられており、
前記第2取付壁部と前記シール部との間に、前記膜部の外周部分が挟み込まれ、
前記第2取付壁部が前記シール部との間で前記外周部分を前記弁本体側に圧縮させた状態において、前記ピン部材が前記第1取付孔と前記第2取付孔とに跨がるように挿入されており、
前記ピン部材は、圧縮された前記外周部分が前記弁本体から離れる方向に前記ケースを付勢することにより、前記第1取付孔の内周面に押し付けられ、
前記駆動部は、ボビンを有し、前記軸部は前記ボビンの内周側に配置され、
前記ボビンは、前記ケースにおける前記開口部側に突出する中継筒部を有し、
前記中継筒部は、前記ケースにおける前記開口部側の端部における前記第2取付壁部が形成される側とは反対側の部分に接し、前記中継筒部の軸方向延長線上に、前記膜部の外周部分が位置する、ダイヤフラム弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁用ダイヤフラム及びこれを備えるダイヤフラム弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばJP2014-169725Aは、弁座を有する弁本体と、弁座に離接可能に配置される弁体部材としてのダイヤフラムと、ダイヤフラムを弁座から離接させる駆動装置と、を備えるダイヤフラム弁を開示している。
【0003】
JP2014-169725Aに開示されたダイヤフラム弁では、弁本体と駆動装置とがボルトによって連結される。しかし、ボルトを締め付けるための工具が必要となるため、弁本体と駆動装置との連結作業に手間がかかるという問題がある。
【0004】
そこで本件出願人は、上記の問題を考慮し、ダイヤフラムの弾性と、弁本体および駆動装置に跨がって挿入されるピンとを利用することで、工具を用いることなく弁本体と駆動装置とを連結することができるダイヤフラム弁をJP5819550Bにおいて提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件出願人は、以前、
図14に示されるダイヤフラム100をダイヤフラム弁において使用していた。
図14に示されるダイヤフラム100は、駆動装置が進退動させる軸部に連結されるとともに弁座に接触される筒状の主弁体部101と、主弁体部101の外周面から張り出す円環状の膜部102と、を備えている。
【0006】
膜部102は、弁本体と駆動装置との間に挟み込まれる円環状の外周部分103と、外周部分103と主弁体部101との間に位置して、外周部分103と主弁体部101とを結合する円環状の内周部分104と、を有している。このダイヤフラム100では、駆動装置の軸部が進退動する方向(以下、軸方向)で弁座の側に位置する外周部分103の面及び内周部分104の面が、主弁体部101における弁座に接触する面と面一となっている。一方で、内周部分104には、軸方向で弁座の側に凹み、且つ周方向の全域にわたって延びる円環状の溝105が形成されている。これにより、内周部分104の厚さは外周部分103の厚さよりも小さくなっている。
【0007】
ダイヤフラム100では、内周部分104の厚さが外周部分103の厚さよりも小さくなることで、内周部分104が変形し易くなり、駆動装置の軸部の移動に対する良好な感度(追従性)が得られる。一方で、弁座の側に位置する外周部分103及び内周部分104の面は、主弁体部101の弁座に接触する面と面一であることで、流体圧に対する剛性が確保され、流体の漏れ出しを効果的に抑制できる。
【0008】
またダイヤフラム100は、駆動装置が軸部を進退動させることにより、主弁体部101によって弁座を開閉する。本件出願人は、ダイヤフラム100を特定のゴム材料で形成することにより、100万回程度の弁座の開閉動作に耐え得る耐久性をダイヤフラム100において実現した。
【0009】
しかしながら、本件出願人は、弁座の側に位置する外周部分103の面及び内周部分104の面が、主弁体部101の弁座に接触する面と面一である場合には、開閉時にダイヤフラムに生じる応力の影響により、耐久性が損なわれ得ることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づく鋭意研究により実現されたものであり、駆動装置の動作に対する良好な感度および流体圧に対する良好な剛性を確保できるとともに、従来よりも耐久性を向上させることができる弁用ダイヤフラムを好適に備えることができるダイヤフラム弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるダイヤフラム弁は、流体室の内部に弁座が形成される流体室を有し、前記流体室に前記弁座を外部に露出させるための開口部が形成される弁本体と、前記弁座に離接可能に配置され、主弁体部と、前記主弁体部の外周面から径方向に張り出す円環状の膜部とを有する弁用ダイヤフラムと、前記弁用ダイヤフラムの主弁体部に連結される進退動可能な軸部を有する駆動部と、前記駆動部を収容するとともに前記開口部を覆うように配置されるケースと、を有し、前記軸部によって前記弁用ダイヤフラムを前記弁座に対して離接させることで、前記第1ポートと前記第2ポートとの連通および遮断を切り換える駆動装置と、前記弁本体に前記駆動装置を取り付けるためのピン部材と、を備える。そして、前記流体室における前記開口部の外周縁部には、シール部が形成され、前記シール部の外周側の部分に、前記開口部を囲繞するように突出する第1取付壁部が形成され、前記ケースにおける前記開口部側の端部に、前記軸部を囲繞するように突出し、前記第1取付壁部の内周側に配置される第2取付壁部が形成される。前記第1取付壁部には、前記ピン部材が挿入される第1取付孔が形成され、前記第2取付壁部には、前記ピン部材が挿入される第2取付孔が形成され、前記ピン部材が前記第1取付孔と前記第2取付孔とに跨がるように挿入されることにより、前記弁本体に前記駆動装置が取り付けられる。そして、前記第2取付壁部と前記シール部との間に、前記膜部の外周部分が挟み込まれ、前記第2取付壁部が前記シール部との間で前記外周部分を前記弁本体側に圧縮させた状態において、前記ピン部材が前記第1取付孔と前記第2取付孔とに跨がるように挿入されており、前記ピン部材は、圧縮された前記外周部分が前記弁本体から離れる方向に前記ケースを付勢することにより、前記第1取付孔の内周面に押し付けられ、前記駆動部は、ボビンを有し、前記軸部は前記ボビンの内周側に配置され、前記ボビンは、前記ケースにおける前記開口部側に突出する中継筒部を有し、前記中継筒部は、前記ケースにおける前記開口部側の端部における前記第2取付壁部が形成される側とは反対側の部分に接し、前記中継筒部の軸方向延長線上に、前記膜部の外周部分が位置する。
弁用ダイヤフラムは、円筒状の周壁と、前記周壁を軸方向の一方側から閉鎖する底壁とを有するとともに、前記周壁を前記軸方向の他方側に開放させる開口が形成されており、駆動装置が前記軸方向に沿って進退動させる軸部を前記開口から内部に受け入れた状態で前記軸部に連結し、前記軸方向の一方側を向く前記底壁の外面に弁座との接触面が形成される主弁体部と、前記主弁体部の外周面から径方向に張り出す円環状の膜部と、を備えてもよい。
前記膜部は、前記弁座が形成される弁本体と前記駆動装置の一部を構成し且つ前記軸部を覆った状態で前記弁本体に取り付けられるケースとの間に挟み込まれる円環状の外周部分と、前記外周部分と前記主弁体部との間に位置して、前記外周部分と前記主弁体部とを結合する円環状の内周部分と、を有してもよい。
前記内周部分には、前記軸方向の一方側における前記内周部分の前記外周部分との境界および前記主弁体部との境界から前記軸方向の他方側へ凹み、且つ周方向の全域にわたって延びる環状の溝が形成され、前記溝の断面形状は円弧状であり、前記軸方向の他方側を向く前記内周部分の面および前記外周部分の面は、面一になっていてもよい。
前記軸方向における前記外周部分の厚さは、前記軸方向における前記主弁体部の厚さの2/5以上3/5以下であり、前記軸方向における前記内周部分の最小の厚さは、前記軸方向における前記外周部分の厚さの1/4以上1/3以下でもよい。
前記内周部分の内周縁は、前記周壁の外周面の前記軸方向における中点を含む部分に接続し、前記軸方向の一方側を向く前記外周部分の面は、前記軸方向の一方側を向く前記主弁体部の前記接触面から、前記軸方向における前記外周部分の厚さの3/20の距離だけ前記軸方向の一方側に離れた位置と他方側に離れた位置との間に位置してもよい。
前記内周部分の内周縁から外周縁までの前記径方向における寸法は、前記外周部分の内周縁から外周縁までの前記径方向における寸法の5/10以上7/10以下でもよい。
また、弁用ダイヤフラムは、弾性材料から形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態にかかるダイヤフラム弁の斜視図である。
【
図2】
図1の矢印II方向に見たダイヤフラム弁の側面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図6】
図5のVI-VI線に対応する断面図である。
【
図7】
図1に示すダイヤフラム弁に設けられるダイヤフラムの断面図である。
【
図8】
図1に示すダイヤフラム弁の弁本体と駆動装置とが分離した状態を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示した駆動装置を弁本体に仮組みする作業を説明する斜視図である。
【
図10】
図9に示す状態から、駆動装置を弁本体側に押し込みつつ、弁本体側に形成された取付孔と駆動装置側に形成された取付孔とにピン部材を挿入することにより、弁本体に駆動装置を取り付ける作業を説明する斜視図である。
【
図11】
図9に示す状態に対応する、弁本体側および駆動装置側の取付孔の位置関係を説明する図である。
【
図12】
図9に示す状態から、駆動装置を弁本体側に押し込んだ際の、弁本体側および駆動装置側の取付孔の位置関係を説明する図である。
【
図13】
図12の状態から、弁本体側および駆動装置側の取付孔にピン部材を挿入した後の様子を示す図である。
【
図15A】実施の形態にかかるダイヤフラムを駆動装置によって変形させた状態を示す図である。
【
図15B】
図14に示す従来のダイヤフラムを駆動装置によって変形させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態にかかるダイヤフラム弁1の斜視図である。
図2は、
図1の矢印II方向に見たダイヤフラム弁1の側面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面図であり、
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。また、
図5は、
図4の拡大図であり、
図6は、
図5のVI-VI線に沿う断面図である。また、
図7は、ダイヤフラム弁1に設けられるダイヤフラム20の断面図である。
【0014】
図1乃至
図4に示すように、本実施の形態にかかるダイヤフラム弁1は、弁本体10と、弁体部材であるダイヤフラム20と、駆動装置30と、ピン部材40と、を備えている。このダイヤフラム弁1では、ピン部材40が弁本体10と駆動装置30とに跨がるように挿入されることにより、駆動装置30が弁本体10に取り付けられている。以下、ダイヤフラム弁1の各部の構成について詳述する。
【0015】
(弁本体)
弁本体10は、流体が通流する第1ポート11および第2ポート12と、第1ポート11および第2ポート12が接続される流体室13と、流体室13の内部に形成される弁座14と、を有している。
図3に示すように、第1ポート11は、互いに連通する外側管部11Aと内側管部11Bとを有し、外側管部11Aと内側管部11BとがL字をなすように結合されることで構成されている。外側管部11Aは、流体室13を貫通するように流体室13に接続されており、内側管部11Bは、外側管部11Aの流体室13の内部側の端部から折れ曲がり、その先端部が流体室13の内部で開口している。本実施の形態においては、第1ポート11の内側管部11Bの開口端に、上述の弁座14が形成されている。なお、弁座14の形成態様は特に限定されるものではない。
【0016】
また、第2ポート12は直線状に形成されている。第2ポート12は、第1ポート11と同様に、流体室13の内部で開口している。
【0017】
図1および
図3に示すように、本実施の形態においては、第1ポート11、特にその外側管部11Aと、第2ポート12とが、同一直線上に延びるように流体室13に接続されている。流体室13の外部に位置する第1ポート11および第2ポート12の各々の端部には、図示しない配管部材が接続されるようになっている。
【0018】
流体室13は、円筒状に形成され、その軸方向の一端側の部分、正確に言うと一端側の部分の内周面に、弁座14を流体室13の外部に露出させるための開口部15が形成されている。開口部15は、この例において円形に形成されている。図中の符号L1は、開口部15の中心軸線を示している。
図5に示すように、流体室13に形成された開口部15は、第1ポート11の内側管部11Bの開口端に形成された弁座14よりも、中心軸線L1方向で外側に位置している。これにより、本実施の形態における開口部15は、弁座14に対向する位置関係となっている。なお、この例において、開口部15は、円形に形成されるが、多角形状等の他の形状に形成されてもよい。また、流体室13は、円筒状に形成されるが、横断面が矩形状等の他の形状に形成されてもよい。また、開口部15は、中心軸線L1方向で、弁座14と同じ位置となっていてもよい。また、弁座14が、中心軸線L1方向で、開口部15よりも外側に位置していてもよい。
【0019】
流体室13における開口部15の外周縁部には、シール部16が形成されており、本実施の形態において、シール部16は、フランジ状に形成されている。このシール部16は、内周側に位置する内側シール部16Aと、外周側に位置する外側シール部16Bと、を有している。外側シール部16Bは、内側シール部16Aよりも中心軸線L1方向で外側に突出している。このうち、内側シール部16Aには、上述のダイヤフラム20が載置されている。
【0020】
本実施の形態では、
図5に示すように、内側シール部16Aの外周側の部分に、円環状の溝16A1が形成されている。ダイヤフラム20は、内側シール部16Aの内周側の部分に接しており、外周側の溝16A1が形成された部分に対しては浮いた状態になっている。
【0021】
また、外側シール部16Bの外周側の部分には、開口部15を囲繞するように突出する第1取付壁部17が形成されており、本実施の形態において、この第1取付壁部17は、開口部15の全周を囲繞するように形成されている。第1取付壁部17は、開口部15の中心軸線L1方向に見て、その外周面の形状が、略矩形状に形成されており、その内周面の形状が、円形に形成されている(
図1、
図6等参照)。この第1取付壁部17には、上述のピン部材40が挿入される第1取付孔18が形成されている。
【0022】
図6は、
図5のVI-VI線に沿う断面図である。
図6に示すように、本実施の形態において、第1取付孔18は、開口部15の中心軸線L1に直交する方向のうちの一方向に規定される第1基準方向Ls1に平行に延びる方向(LL1,LR1)上で、第1取付壁部17を貫通するように形成されている。より詳しくは、中心軸線L1方向に見て、第1取付孔18は、第1基準方向Ls1に直交する方向に沿って開口部15(二点鎖線で示す。)の中心軸線L1から一方側および他方側に所定オフセット距離Dだけ離間した位置の各々において第1基準方向Ls1に平行に延びる方向(LL1,LR1)上で、第1取付壁部17を貫通するように形成されている。すなわち、第1取付孔18は一対で形成される。以下では、方向LL1,LR1のことを、取付孔延在方向LL1,LR1と呼ぶ。
【0023】
第1基準方向Ls1は、開口部15の中心軸線L1に直交する方向のうちの任意の一方向に規定可能であるが、本実施の形態では、第1基準方向Ls1が、
図1乃至
図3に示すように、開口部15の中心軸線L1に直交する方向のうちの第1ポート11と第2ポート12とが同一直線上に延びる方向に、規定されている。この場合、第1ポート11と第2ポート12とが同一直線上に延びる方向を目印として、第1取付孔18の方向(延在方向または貫通方向)を確認できるため、有益である。
【0024】
また、本実施の形態では、
図6に示すように、第1取付壁部17における取付孔延在方向LL1,LR1が通る部分が、一連に延びていない。換言すれば、第1取付壁部17における取付孔延在方向LL1,LR1が通る部分は、取付孔延在方向LL1,LR1の一方側と他方側とで分断されている。そのため、第1取付孔18の各々は、取付孔延在方向LL1,LR1における一方側に位置する前側第1取付孔18Aと、他方側に位置する後側第1取付孔18Bと、で構成されている。
【0025】
なお、変形例として、第1取付壁部17における取付孔延在方向LL1,LR1が通る部分が一連に延びる場合には、第1取付孔18の各々は、一連に延びるように形成されてもよい。また、本実施の形態では、第1取付孔18が、開口部15の中心軸線L1を基準に一方側と他方側の各々に1つ形成されているが、第1取付孔18の個数は1つでもよいし、3以上であってもよい。また、第1取付孔18の形成位置も、図中に示す取付孔延在方向LL1,LR1上に限られるものではない。
【0026】
(ダイヤフラム)
続いて、ダイヤフラム20について説明する。
図3乃至
図5に示すように、弁体部材としてのダイヤフラム20は、上述した内側シール部16Aに載置された状態で、弁座14に離接可能に配置されている。ダイヤフラム20は、弁座14に対向して配置される有底円筒状の主弁体部21と、主弁体部21の外周面から張り出す膜部22とを有する弾性材料から形成されるダイヤフラムである。以下のダイヤフラム20の説明においては、
図7に示される主弁体部21の中心軸線X1上を延びる方向を、単に軸方向と呼び、中心軸線X1に直交する方向を単に径方向と呼ぶ。なお、
図7においては、説明の便宜上、ハッチングの図示を省略している。また、
図7は、軸方向および径方向を含む平面でダイヤフラム20を切断した際のダイヤフラム20の断面図である。
【0027】
図7を参照し、本実施の形態におけるダイヤフラム20の主弁体部21は、円筒状の周壁211と、周壁211を軸方向の一方側(
図7の下側)から閉鎖する底壁212と、周壁211の軸方向の他方側(
図7の上側)の端部の内周面から径方向の内側に張り出す円環状のサポート部213と、を有しており、サポート部213の内周面によって、周壁211を軸方向の他方側に開放させる開口214が形成されている。
【0028】
またサポート部213と底壁212との間には、後述する駆動装置30が備えるアクチュエータ本体31の軸部32の先端部が連結される連結部215が形成されている。ダイヤフラム20は中心軸線X1が、開口部15の中心軸線L1および軸部32と同軸となるように配置され、駆動装置30が軸方向に沿って進退動させる軸部32を開口214から内部に形成された連結部215に受け入れた状態で軸部32に連結するようになっている。また軸方向の一方側(
図7の下側)を向く底壁212の外面には、弁座14との接触面216が形成され、接触面216は平坦面として形成されている。
【0029】
一方で、膜部22は円環状に形成されており、主弁体部21の外周面から張り出している。膜部22は、外周側に位置する円環状の外周部分221と、内周側に位置する円環状の内周部分222と、を有している。外周部分221は、弁座14が形成される弁本体10と、駆動装置30の一部を構成し且つ軸部32を覆った状態で弁本体10に取り付けられる後述するケース33との間に挟み込まれる部分であり、内周部分222は、外周部分221と主弁体部21との間に位置して、外周部分221と主弁体部21とを結合する部分である。
【0030】
図5に示すように、ダイヤフラム20は、駆動装置30の軸部32の先端部と連結部215によって連結するとともに、その外周部分221を弁本体10と駆動装置30のケース33との間に挟み込まれる。この状態で、連結部215に連結された軸部32が移動することにより、ダイヤフラム20は弁座14に対して離接(離間、当接)する。ダイヤフラム20が弁座14から離間した際には、弁座14が開放し、第1ポート11と第2ポート12とが連通するようになっている。また、ダイヤフラム20が弁座14に当接した際には、弁座14が閉鎖し、第1ポート11と第2ポート12とが遮断するようになっている。
【0031】
以下では、ダイヤフラム20の形状について更に詳しく説明する。まず、本実施の形態における膜部22の内周部分222には、軸方向の一方側(
図7の下側)における内周部分222の外周部分221との境界および主弁体部21との境界から軸方向の他方側(
図7の上側)へ凹み、且つ周方向の全域にわたって延びる環状の溝223が形成されている。軸方向に沿って延在する平面で切断した際の溝223の断面形状(言い換えると、軸方向断面での溝223の断面形状)は、円弧状であり、詳しくは半円形になっている。ただし、溝223の断面形状は半円形をなす円弧状に限られるものではなく、中心角が90度未満となる円弧であってもよい。また、円弧状をなす溝223の断面形状は、真円の円弧に沿うものであってもよいし、楕円弧に沿うものであってもよい。
【0032】
軸方向断面で見た際の溝223の円弧状部分の両縁間の距離である幅をWとし、溝223の深さをDとしたとき、D/Wは、1/3以上1/2以下であることが望ましく、本実施の形態では、溝223の断面形状が半円形であることで、D/Wが1/2になっている。
【0033】
また、軸方向の他方側(
図7の上側)を向く内周部分222の面および外周部分221の面は平坦面であって、面一になっている。また、軸方向の他方側を向く内周部分222の面の主弁体部21側の部分は、円弧面をなして主弁体部21の外周面に滑らかに接続している。
【0034】
また、軸方向における外周部分221の厚さT1は、軸方向における主弁体部21の厚さT0の2/5以上3/5以下である。また、軸方向における内周部分222の最小の厚さT2は、外周部分221の厚さT1の1/4以上1/3以下である。T0~T2の値は特に限られるものではないが、例えば、主弁体部21の厚さT0は、2.5mm以上5mm以下でもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、
図7において破線で示される内周部分222の内周縁222A(つまり径方向内側の縁部分)が、周壁211の外周面の軸方向における中点C1を含む部分に接続している。また、本実施の形態では、サポート部213と底壁212との間の軸方向における中点C2が、内周部分222の内周縁222Aの軸方向の両端の間に位置している。
【0036】
また、軸方向の一方側(
図7の下側)を向く外周部分221の面は、軸方向の一方側を向く主弁体部21の接触面216から、外周部分221の厚さT1の3/20の距離だけ軸方向の一方側に離れた位置と他方側に離れた位置との間に位置している。
【0037】
一方で、内周部分222の内周縁222Aから
図7において破線で示される内周部分の外周縁222Bまでの径方向における寸法D2は、外周部分221の内周縁221Aから外周縁221Bまでの径方向における寸法D1の5/10以上7/10以下である。また、主弁体部21の半径D0は、内周部分222の内周縁222Aから外周部分221の外周縁221Bまでの径方向における寸法D3(D1+D2)の1/2以上で且つ2倍以下であることが望ましい。本実施の形態では、寸法D2は、寸法D1の6/10になっている。また、半径D0は、寸法D3の7/8になっている。
【0038】
(駆動装置)
続いて、駆動装置30について説明する。
図3に示すように、駆動装置30は、ダイヤフラム20に連結される進退動可能な軸部32を有する駆動部であるアクチュエータ本体31と、アクチュエータ本体31を収容するとともに上述の弁本体10の開口部15を覆うように配置されるケース33と、を有している。駆動装置30は、軸部32によってダイヤフラム20を弁座14に対して離接させることで、第1ポート11と第2ポート12との連通および遮断を切り換えるように構成されている。
【0039】
本実施の形態の駆動装置30はソレノイドであり、円筒状のケース33にアクチュエータ本体31が収容されている。ケース33の軸方向における一端部には、軸部32を外側に延ばすためのケース側開口部33Aが形成されている。アクチュエータ本体31は、ケース33と同軸の状態で、ケース33内に収容されるボビン34を有している。ボビン34には、電磁コイル35が巻き回されている。ボビン34の内周側には、固定鉄芯36と、上述した軸部32(プランジャ)とが収容されている。
【0040】
固定鉄芯36は、ボビン34の内周側におけるケース側開口部33A側とは反対側の部分に、ボビン34およびケース33に対して相対移動不能に固定されている。一方、軸部32は、ボビン34の内周側におけるケース側開口部33A側の部分に、その先端部がケース側開口部33Aから外側に延びる状態で、進退動可能に収容されている。固定鉄芯36と軸部32との間には、スプリング32Sが配置されており、軸部32の先端部には、上述のダイヤフラム20の連結部215に連結される係合部32Aが形成されている。
【0041】
図中の符号L2は、軸部32の中心軸線を示し、軸部32は、中心軸線L2に沿って進退動(進出・後退)するようになっている。軸部32は、電磁コイル35に電流が供給された際に、固定鉄芯36側に後退する。この状態において、軸部32は、進出する方向への付勢力をスプリング32Sから付与される。これにより、軸部32は、電磁コイル35への電流の供給が停止された際に、弁座14側に進出するようになっている。なお、図中の符号33Bは、コネクタを示し、コネクタ33Bにケーブルが接続されることにより、電磁コイル35に電流が供給可能となる。コネクタ33Bは、ケース33から外周側に突出している。
【0042】
図3および
図5に示すように、ケース33における開口部15側の端部には、軸部32を囲繞するように突出し、第1取付壁部17の内周側に配置される第2取付壁部37が形成されている。すなわち、ケース33は、一端部に軸部32を通過させる上述したケース側開口部33Aを有する筒状のケース本体330と、第2取付壁部37とを有している。ここで、第2取付壁部37は、ケース側開口部33Aの外周縁部から立ち上がり且つケース本体330の周壁に対してはケース側開口部33A側に離れている。
【0043】
本実施の形態では、第2取付壁部37が、軸部32の全周を囲繞するように形成されている。軸部32の中心軸線L2方向に見て、第2取付壁部37の外周面の形状は、第1取付壁部17の内周側に挿入される円形に形成されている(
図6等参照)。この第2取付壁部37には、上述のピン部材40が挿入される第2取付孔38が形成されている。
【0044】
図5に示すように、本実施の形態の第2取付壁部37は、ケース本体330から突出するとともに、その先端部が弁本体10側における内側シール部16Aおよび外側シール部16Bに対向する基部37Aと、基部37Aの内側シール部16Aに対向する部分に設けられ、内側シール部16Aに向けて突出する弾性体当接部37Bと、を有している。弾性体当接部37Bは、環状に形成されており、基部37Aとは別体に形成されている。このうち、弾性体当接部37Bは、ダイヤフラム20の膜部22の外周部分221に当接している。これにより、本実施の形態では、ダイヤフラム20の膜部22の外周部分221が、弾性体当接部37Bと内側シール部16Aとの間に挟み込まれている。また、基部37Aに、上述の第2取付孔38が形成されている。
【0045】
また、
図3及び
図5に示すように、本実施の形態では、基部37Aの内周側の部分にボビン34の中継筒部39が接している。ボビン34は、電磁コイル35が巻き付けられる円筒部分と、円筒部分のケース側開口部33A側の端部の外周面から径方向に張り出す第1フランジ部と、円筒部分のケース側開口部33A側とは反対側の端部の外周面から径方向に張り出す第2フランジ部と、第1フランジ部の内周側の部分から軸方向に突出した上記の中継筒部39と、を有している。ここで、基部37Aの内周側の部分はケース側開口部33Aよりも径方向の内側に張り出しており、この張り出し部分に中継筒部39が接している。したがって、中継筒部39は、ケース側開口部33Aを通過した状態で基部37Aの内周側の部分に接触している。そして中継筒部39の軸方向延長線上には、ダイヤフラム20の膜部22の外周部分221が位置している。なお、基部37Aの内周側の部分は、ケース側開口部33Aよりも径方向の内側に張り出していなくてもよく、この場合、中継筒部39は、ケース本体330のケース側開口部33Aの内面側の外周縁部を介して、基部37Aの内周側の部分に接する。
【0046】
次いで
図6を参照しつつ第2取付孔38について説明する。
図6に示すように、本実施の形態において、第2取付孔38は、軸部32の中心軸線L2に直交する方向のうちの一方向に規定される第2基準方向Ls2に平行に延びる方向(LL2,LR2)上で、第2取付壁部37を貫通するように形成されている。より詳しくは、中心軸線L2方向に見て、第2取付孔38は、第2基準方向Ls2に直交する方向に沿って軸部32の中心軸線L2から一方側および他方側に第1取付孔18の場合と同様の所定オフセット距離Dだけ離間した位置の各々において第2基準方向Ls2に平行に延びる方向(LL2,LR2)上で、第2取付壁部37を貫通するように形成されている。すなわち、第2取付孔38は一対で形成される。以下では、方向LL2,LR2のことを、取付孔延在方向LL2,LR2と呼ぶ。なお、
図6においては、第2基準方向Ls2と第1基準方向Ls1とが重なっているため、これらを同一直線上に示している。また、取付孔延在方向LL2と取付孔延在方向LL1とが重なっているため、これらを同一直線上に示している。また、取付孔延在方向LR2と取付孔延在方向LR1とが重なっているため、これらを同一直線上に示している。
【0047】
第2基準方向Ls2は、軸部32の中心軸線L2に直交する方向のうちの任意の一方向に規定可能であるが、本実施の形態では、一例として、軸部32の中心軸線L2に直交する方向のうちの、ケース33に設けられたコネクタ33Bが突出する方向に、規定されている。この場合、コネクタ33Bを目印として、第2取付孔38の方向(延在方向または貫通方向)を確認できるため、有益である。
【0048】
また、本実施の形態では、
図6に示すように、第2取付壁部37における取付孔延在方向LL2,LR2が通る部分が、一連に延びている。そのため、第2取付孔38の各々は、取付孔延在方向LL2,LR2上で一連に延びている。また、第2取付孔38は、第2取付壁部37の内部空間に連通しないように形成されている。また、本実施の形態においては、第2取付孔38の各々が、取付孔延在方向LL2,LR2上に沿って第2取付壁部37を貫通するのに加えて、外周側(径方向)に開放している。すなわち、取付孔延在方向LL2,LR2に見た場合に、第2取付孔38は、外側に開放するU字状に形成されている。
【0049】
本実施の形態では、弁本体10に駆動装置30が取り付けられる際、第2取付壁部37が第1取付壁部17の内周側に配置され、軸部32の中心軸線L2が開口部15の中心軸線L1と同軸となるように配置される。この状態において、第1取付孔18と第2取付孔38とに、ピン部材40が挿入されることにより、弁本体10に駆動装置30が取り付けられる。
【0050】
この際、
図6に示したように、第1取付孔18が、第1基準方向Ls1に直交する方向に沿って開口部15の中心軸線L1から一方側および他方側に所定オフセット距離Dだけ離間した位置の各々において第1基準方向Ls1に平行に延びる取付孔延在方向LL1,LR1上で、第1取付壁部17を貫通するように形成されている。また、第2取付孔38が、第2基準方向Ls2に直交する方向に沿って軸部32の中心軸線L2から一方側および他方側に所定オフセット距離Dだけ離間した位置の各々において第2基準方向Ls2に平行に延びる取付孔延在方向LL2,LR2上で、第2取付壁部37を貫通するように形成されている。これにより、第1取付孔18と第2取付孔38とは、各々が同一の方向に向けられた際に、互いに重なり合うことが可能となる。そして、第1取付孔18と第2取付孔38とに、ピン部材40を挿入することが可能となる。
【0051】
ここで、本実施の形態では、駆動装置30が弁本体10側に押し込まれて、第2取付壁部37の弾性体当接部37Bがダイヤフラム20の膜部22の外周部分221を内側シール部16A側に所定距離だけ圧縮させた状態において、第1取付孔18と第2取付孔38とが、ピン部材40を挿入可能に互いに重なり合うようになっている。
【0052】
すなわち、本実施の形態では、駆動装置30が弁本体10側に押し込まれず、第2取付壁部37が第1取付壁部17の内周側に配置され、第2取付壁部37の弾性体当接部37Bがダイヤフラム20の膜部22の外周部分221に当接された状態においては、第1取付孔18と第2取付孔38とが、ピン部材40を挿入可能に重なり合う状態となっていない。一方、この状態から、駆動装置30が弁本体10側に押し込まれて、第2取付壁部37の弾性体当接部37Bがダイヤフラム20の膜部22の外周部分221を内側シール部16A(弁本体10)側に所定距離だけ圧縮させた状態において、第1取付孔18と第2取付孔38とが、ピン部材40を挿入可能に互いに重なり合う状態となるようになっている。したがって、本実施の形態では、駆動装置30が弁本体10側に押し込まれ、第1取付孔18と第2取付孔38とがピン部材40を挿入可能に互いに重なり合う状態において、第1取付孔18と第2取付孔38とにピン部材40が挿入されている。
【0053】
この場合、ピン部材40の挿入後に駆動装置30を弁本体10側に押し込んだ状態を解除することで、圧縮された膜部22の外周部分221が弁本体10から離れる方向に駆動装置30のケース33を付勢することにより、ピン部材40が第1取付孔18の内周面に押し付けられる状態となる。これにより、ピン部材40が第1取付孔18と第2取付孔38とから抜けることが防止されている。また、ピン部材40が第1取付孔18の内周面に押し付けられる状態まで膜部22の外周部分は復元するが、内側シール部16Aと弾性体当接部37Bとの間で圧縮された状態が維持されるため、内側シール部16Aと弾性体当接部37Bとの間の気密性または液密性が好適に確保されている。
【0054】
なお、本実施の形態では、基部37Aの内周側の部分にボビン34の中継筒部39が接しており、中継筒部39の軸方向延長線上にダイヤフラム20の膜部22の外周部分221が位置している。これにより、駆動装置30を弁本体10側に押し込むための力が、軸方向に沿って、ケース33からボビン34の中継筒部39を介して基部37A及び弾性体当接部37Bに伝わるため、膜部22の外周部分221を容易に変形させることができる。これにより、第1取付孔18と第2取付孔38とを、ピン部材40を挿入可能な状態に容易に重ね合わせることができる。
【0055】
また、本実施の形態では、第2取付孔38の各々が、取付孔延在方向LL2,LR2上で一連に延びているが、変形例として、第2取付壁部37における取付孔延在方向LL2,LR2が延びる部分が一連に延びていない場合には、第1取付孔18と同様に分断されて形成されてもよい。ただし、この場合には、上述の所定オフセット距離Dは、軸部32の半径よりも大きいことが好ましい。所定オフセット距離Dが軸部32の半径よりも大きければ、特別な加工を施すことなく、ピン部材40が軸部32の移動を阻害することが防止されるため有益である。
【0056】
(ピン部材)
次に、
図6に示すように、本実施の形態のピン部材40は、U字状であり、互いに平行に延びる一対の第1部分41と、一対の第1部分41の端部間を連結する第2部分42と、を有している。一対の第1部分41のうちの一方は、開口部15および軸部32の中心軸線(L1,L2)を基準に一方側に位置する第1取付孔18と第2取付孔38とに跨るように挿入されており、一対の第1部分41のうちの他方は、開口部15および軸部32の中心軸線(L1,L2)を基準に他方側に位置する第1取付孔18と第2取付孔38とに跨るように挿入されている。より詳しくは、一対の第1部分41の各々は、第1取付孔18の前側第1取付孔18Aから第2取付孔38を通って後側第1取付孔18Bに跨るように挿入されている。
【0057】
さらに詳しく説明すると、
図1乃至
図3にも示すように、一対の第1部分41はそれぞれ、互い重なった第1取付孔18と第2取付孔38とに跨がるように挿入される挿入部分41Aと、挿入部分41Aから折れ曲がって延びるオフセット部分42Bと、を有している。各オフセット部分42Bの挿入部分41A側の端部とは反対側の端部間を第2部分42が連結している。
【0058】
本実施の形態では、上述したように、圧縮された膜部22の外周部分221が弁本体10から離れる方向に駆動装置30のケース33を付勢することにより、ピン部材40の第1部分41の挿入部分41Aの各々が第1取付孔18の内周面に押し付けられる状態となっている。これにより、ピン部材40の第1部分41の各々が第1取付孔18と第2取付孔38とから抜けることが防止されている。また、ピン部材40が第1取付孔18と第2取付孔38とに挿入された際、第2部分42は、第1取付孔18と第2取付孔38とに挿入された挿入部分41Aから軸部32の軸方向の一方側または他方側へ離れている。図示の例では、第2部分42は、ケース本体330の周壁の径方向外側に位置している。第2部分42がケース本体330の軸方向外側且つ第1取付壁部17の径方向外側に位置する場合、ピン部材40の抜き差しに手間がかかる。これに対して、本実施の形態のように第2部分42がケース本体330の周壁の径方向外側等に位置する場合には、ピン部材40の抜き差しを容易に行うことが可能となる。
【0059】
(取付方法)
以下では、
図8乃至
図13を用いて、上述の弁本体10に駆動装置30を取り付ける取付方法の一例について説明する。
【0060】
図8は、弁本体10と駆動装置30とが分離した状態を示している。弁本体10に駆動装置30を取り付ける際には、まず、
図8および
図9に示すように、駆動装置30を弁本体10に仮組みする。この例にかかる仮組みの状態では、まず、
図8に示すように、軸部32の係合部32Aにダイヤフラム20の連結部215が連結され、ダイヤフラム20に弾性体当接部37Bが載置される。この状態で、ダイヤフラム20と弾性体当接部37Bと軸部32とが弁本体10のシール部16に載置される。この状態から、矢印に示すように、第2取付壁部37が第1取付壁部17の内周側に配置され、
図9に示すように、駆動装置30が弁本体10に載置される。この状態において、第2取付壁部37の基部37Aが弾性体当接部37Bを介してダイヤフラム20の膜部22の外周部分221に当接される。
【0061】
また、第1取付孔18の方向と第2取付孔38の方向とが、目視によって同一の方向に向くように調整される。ここで、
図11は、
図9に示す状態に対応する、第1取付孔18と第2取付孔38との位置関係を説明する図である。
図11に示すように、この仮組みの状態では、第1取付孔18の一部が第2取付孔38の外周縁部に重なっており、第1取付孔18と第2取付孔38とが、ピン部材40を挿入可能に重なり合う状態となっていない。
【0062】
続いて、
図10の矢印αに示すように、駆動装置30が弁本体10側に所定距離だけ押し込まれる。これにより、第2取付壁部37の弾性体当接部37Bが、ダイヤフラム20の膜部22の外周部分221を内側シール部16A側に所定距離だけ圧縮させる。これにより、第1取付孔18と第2取付孔38とが、ピン部材40を挿入可能に互いに重なり合う状態となる。
図12は、
図9に示す状態から、駆動装置30を弁本体10側に所定距離だけ押し込んだ際の、第1取付孔18と第2取付孔38との位置関係を説明する図である。
図12に示すように、この状態では、第1取付孔18が、
図11に示す状態から所定距離だけ弁本体10側に移動することによって、第1取付孔18と第2取付孔38とが、ピン部材40を挿入可能に重なり合う状態となっている。
【0063】
そして、第1取付孔18と第2取付孔38とがピン部材40を挿入可能に重なり合う状態において、
図10および
図13に示すように、ピン部材40の第1部分41の各々が、第1取付孔18と第2取付孔38とに挿入される。その後、駆動装置30を弁本体10側に押し込んだ状態を解除することで、圧縮された膜部22の外周部分221が弁本体10から離れる方向に駆動装置30のケース33を付勢することにより、ピン部材40が第1取付孔18の内周面に押し付けられる状態となる。これにより、ピン部材40が第1取付孔18と第2取付孔38とから抜けることが防止される。また、ピン部材40が第1取付孔18の内周面に押し付けられる状態まで膜部22の外周部分221は復元するが、内側シール部16Aと弾性体当接部37Bとの間で圧縮された状態が維持される。これにより、内側シール部16Aと弾性体当接部37Bとの間の気密性または液密性が好適に確保される。このようにして、弁本体10に、駆動装置30が取り付けられる。
【0064】
一方、この取付状態において、ピン部材40を第1取付孔18と第2取付孔38とから抜くことで、弁本体10から駆動装置30が取り外すことができる。この際には、駆動装置30を弁本体10側に押し込んで、ピン部材40の第1部分41の各々が第1取付孔18の内周面に押し付けられた状態を緩和させる又は解除することで、ピン部材40を第1取付孔18と第2取付孔38とからスムーズに抜くことができる。
【0065】
以上に説明した本実施の形態にかかるダイヤフラム弁1は、ダイヤフラム20の弾性と、弁本体10および駆動装置30に跨がって挿入されるピン部材40と、を利用することで、工具を用いることなく弁本体10と駆動装置30とを容易に連結することができる。
【0066】
また、ダイヤフラム20には、形状及び寸法条件に関する工夫が施されている。これにより、駆動装置30の動作に対する良好な感度および流体圧に対する良好な剛性を確保できるとともに、従来(
図14のダイヤフラム)よりも耐久性を向上させることができる。
【0067】
詳しくは、本実施の形態にかかるダイヤフラム20では、膜部22の内周部分222に、軸方向の一方側における内周部分222の外周部分221との境界および主弁体部21との境界から軸方向の他方側へ凹み、且つ周方向の全域にわたって延びる環状の溝223が形成され、溝223の断面形状は円弧状になっている。これにより、内周部分222が薄肉になることで適度な柔軟性が付与され、駆動装置30の動作に対する良好な感度が確保される。また、溝223は流体圧に晒される面が円弧状であることで、流体圧を分散させることが可能となり、その結果、流体圧に対する良好な剛性を確保できる。また、軸方向の他方側を向く内周部分222の面および外周部分221の面は面一になっていることで、流体圧による内周部分222の変形に対する剛性が確保され、これによっても、流体圧に対する良好な剛性を確保できる。
【0068】
さらには、上記の形状に加えて、内周部分222の内周縁222Aは、周壁211の外周面の軸方向における中点を含む部分に接続する。また、軸方向の一方側を向く外周部分221の面は、軸方向の一方側を向く主弁体部21の接触面216から、軸方向における外周部分221の厚さT1の3/20の距離だけ軸方向の一方側に離れた位置と他方側に離れた位置との間に位置する。さらには、厚さ及び径に関する各種の寸法条件を規定することにより、ダイヤフラム20を開閉させた際の応力が抑制される。これにより、耐久性を向上させることができる。
【0069】
図15Aは、実施の形態にかかるダイヤフラム20を駆動装置30によって変形させた状態を示す図である。
図15Bは、
図14に示す従来のダイヤフラム100を駆動装置によって変形させた状態を示す図である。
図15Aに示すダイヤフラム20と、
図15Bに示すダイヤフラム100は、厚さ及び直径などに関する寸法が同等となっている。
【0070】
図15Aに示すダイヤフラム20を0.5mmだけ開方向にストロークさせた場合、本件発明者の解析では、
図15Aの符号Aで示す部分の応力が0.5MPaであり、符号Bで示す部分の応力が0.1MPaであり、符号Cで示す部分の応力が0.45MPaであった。これに対して、
図15Bに示す従来のダイヤフラム100を同じ条件でストロークさせた場合、
図15Bの符号A’で示す部分の応力が1.62MPaであり、符号B’で示す部分の応力が3.19MPaであり、符号C’で示す部分の応力が1.60MPaであった。本実施の形態にかかるダイヤフラム20は、このように開閉時の応力が抑制されることで、従来よりも耐久性を向上させることが可能となっている。
【0071】
以上、一実施の形態を説明したが、上記の一実施の形態は、例として提示したものであり、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。上記の実施の形態には、各種の変更を行ってもよい。