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特開2022-59056幹細胞由来シュワン細胞を使用する薬物発見のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059056
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】幹細胞由来シュワン細胞を使用する薬物発見のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20220405BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20220405BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022022796
(22)【出願日】2022-02-17
(62)【分割の表示】P 2019524940の分割
【原出願日】2017-11-14
(31)【優先権主張番号】62/421,816
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】508057896
【氏名又は名称】コーネル・ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】CORNELL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツ スチューダー
(72)【発明者】
【氏名】ファラナク ファタヒ
(72)【発明者】
【氏名】ザニアー ガジザデー
(72)【発明者】
【氏名】シュイビン チェン
(57)【要約】
【課題】末梢神経系(PNS)および/もしくは中枢神経系(CNS)の再生、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復、ならびに/またはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、糖尿病性末梢神経障害)の予防および/もしくは処置における薬物発見のための、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)から誘導されたシュワン細胞前駆体およびシュワン細胞の使用を提供すること。
【解決手段】本開示の主題は、末梢神経系(PNS)の再生のため、中枢神経系(CNS)の再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害を予防および/もしくは処置するために適切な化合物をスクリーニングするin vitro方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年11月14日に出願された米国特許出願番号第62/421,816号に基づく優先権を主張しており、そしてその内容は、本明細書中にその全体が参考として本明細書によって援用され、そしてその中の各々に基づく優先権が主張される。
【0002】
序論
本開示の主題は、末梢神経系(PNS)および/もしくは中枢神経系(CNS)の再生、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復、ならびに/またはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、糖尿病性末梢神経障害)の予防および/もしくは処置における薬物発見のための、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)から誘導されたシュワン細胞前駆体およびシュワン細胞の使用に関する。前記薬物発見用の材料および方法によって同定された化合物を使用する、シュワン細胞関連障害の処置の方法がさらに提供される。
【背景技術】
【0003】
背景
シュワン細胞(SC)は、末梢神経系(PNS)のグリアであり、PNS機能にとって重要である。これらは、神経堤(NC)からシュワン細胞前駆体(SCP)中間体を介して発生する。SCは、PNSの機能的調節、維持および修復において重要な役割を果たし、傷害後に神経修復を促進する優れた能力を示す(Jessenら、2015年;Lavdasら、2008年)。SC欠損は、広範なヒト障害、例えば、神経鞘腫症、シャルコー・マリー・トゥース病、ギラン・バレー症候群、および糖尿病性末梢神経障害(DPN)を含む種々の他の末梢神経障害に関与する。
【0004】
真性糖尿病は、糖尿病患者の30%(Callaghanら、2012年)~60%(Zochodne
、2007年)が罹患する末梢神経障害の主要原因である。これは、生活の質の低減ならびに罹患率および死亡率の増加を引き起こす主要な健康上の問題を提示する(La Fontaineら、2014年)。米国におけるDPNに関連する医療費は、2001年には1年間に46億~137億ドルと推定され、増加し続けている(Gordoisら、2003年)。DP
Nの症状は多様であるが、感覚機能不全および疼痛ならびに自律神経およびENSの合併症が含まれる。
【0005】
グルコースレベルを注意深くモニタリングおよび調整することによってさらなる損傷を予防するという主要な目標を追求すること以外、DPNに対する有効な処置は現在存在しない。対症的処置には、抗うつ薬、抗痙攣薬、ならびに神経障害性疼痛に対処するためのオピオイドの使用が含まれる。
【0006】
DPNの病理発生には、末梢神経における細胞毒性および変性をもたらすいくつかの複雑な寄与因子が関与する可能性が高い(SimmonsおよびFeldman、2002年)。糖尿病における高血糖、低酸素および酸化ストレスは、特に感覚神経においてSCの変性をもたらすという証拠がある(Eckersley、2002年)。究極的症状はニューロンの機能不全か
ら生じるが、感覚ニューロンまたはグリアがDPNの病理発生において重要な役割を果たすかどうかは不明である(Eckersley、2002年)。細胞型特異的機構を精査すること
は、疾患表現型への、全身性血管異常を含む非細胞自律的因子の複雑な寄与を考えると、DPNの現在の動物モデルでは非常に困難である。従って、DPNのin vitro疾患モデルが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本開示の主題は、in vitro分化によって幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)から誘導されたシュワン細胞前駆体およびシュワン細胞が、末梢神経系(PNS)および/もしくは中枢神経系(CNS)の再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、糖尿病性末梢神経障害(「DPN」))を予防および/もしくは処置するために適切な薬物をスクリーニングするための疾患モデルにおいて使用できるという発見に関する。本開示の主題は、前記材料および方法によって同定された分子を使用してシュワン細胞関連障害を処置する方法にさらに関する。
【0008】
本開示の主題は、末梢神経系(PNS)の再生のため、中枢神経系(CNS)の再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害を予防および/もしくは処置するために適切な化合物をスクリーニングするin
vitro方法を提供する。ある特定の実施形態では、この方法は、
(a)1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する細胞の集団を、少なくとも約30mMのグルコース濃度に曝露するステップであって、細胞は、幹細胞のin vitro分化から得られる、ステップ;
(b)細胞を、グルコース曝露後に試験化合物と接触させるステップ;
(c)試験化合物による処理なしの細胞の第1のソルビトールレベル、第1のグルコースレベルおよび第1の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップ;
(d)試験化合物で処理した細胞の第2のソルビトールレベル、第2のグルコースレベルおよび第2の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップ;
(e)以下のうち1つまたは複数を比較するステップ:
(i)第2のソルビトールレベルを第1のソルビトールレベルと、
(ii)第2のグルコースレベルを第1のグルコースレベルと、
(iii)第2の細胞生存度を第1の細胞生存度と;ならびに
(f)以下のうち1つまたは複数が存在する場合に、PNSおよび/もしくはCNSの再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害の予防および/もしくは処置のために適切な試験化合物を同定するステップ:
(i)第2のソルビトールレベルが第1のソルビトールレベルよりも低い場合、
(ii)第2のグルコースレベルが第1のグルコースレベルよりも低い場合、および
(iii)第2の細胞生存度が第1の細胞生存度よりも低い場合
を含む。
【0009】
ある特定の実施形態では、この方法は、
(a)1つまたは複数のシュワン細胞マーカーを発現する細胞の集団を、少なくとも約30mMのグルコース濃度に曝露するステップであって、細胞は、幹細胞のin vitro分化から得られる、ステップ;
(b)細胞を、グルコース曝露後に試験化合物と接触させるステップ;
(c)試験化合物による処理なしの細胞の第1のソルビトールレベル、第1のグルコースレベルおよび第1の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップ;
(d)試験化合物で処理した細胞の第2のソルビトールレベル、第2のグルコースレベルおよび第2の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップ;
(e)以下のうち1つまたは複数を比較するステップ:
(i)第2のソルビトールレベルを第1のソルビトールレベルと、
(ii)第2のグルコースレベルを第1のグルコースレベルと、
(iii)第2の細胞生存度を第1の細胞生存度と;ならびに
(f)以下のうち1つまたは複数が存在する場合に、PNSおよび/もしくはCNSの再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害の予防および/もしくは処置のために適切な試験化合物を同定するステップ:
(i)第2のソルビトールレベルが第1のソルビトールレベルよりも低い場合、
(ii)第2のグルコースレベルが第1のグルコースレベルよりも低い場合、および
(iii)第2の細胞生存度が第1の細胞生存度よりも低い場合
を含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する細胞は、幹細胞の集団をTGFβ/アクチビン-ノーダル(Nodal)シグナル伝達の1種ま
たは複数の阻害剤と接触させるステップおよびこれらの細胞を1種または複数のWnt活性化因子と接触させるステップ、ならびにこれらの細胞を1種または複数のFGF活性化因子と少なくとも約3日間にわたってさらに接触させるステップを含む方法による幹細胞のin vitro分化から得られる。
【0011】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞マーカーを発現する細胞は、幹細胞の集団をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と接触させるステップおよびこれらの細胞を1種または複数のWnt活性化因子と接触させるステップ、これらの細胞を1種または複数のFGF活性化因子と少なくとも約3日間にわたってさらに接触させて、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する分化した細胞の集団を産生するステップ、ならびに1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する分化した細胞の集団を、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件に供するステップを含む方法による幹細胞のin vitro分化から得られる。
【0012】
ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、細胞を1種または複数のFGF活性化因子と約14日間にわたって接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約20日以内に、細胞を1種または複数のFGF活性化因子と最初に接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約10日後と約15日後との間に、細胞を1種または複数のFGF活性化因子と最初に接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約11日後に、細胞を1種または複数のFGF活性化因子と最初に接触させるステップを含む。
【0013】
ある特定の実施形態では、この方法は、細胞を1種または複数のSC分化誘導剤と接触させて、1つまたは複数のSC前駆体マーカーを発現する細胞の集団を産生するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、細胞を1種または複数のSC分化誘導剤と少なくとも約3日間にわたって接触させて、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する分化した細胞の集団を産生するステップを含む。ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、細胞を1種または複数のSC分化誘導剤と約14日間にわたって接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約10日後と約15日後との間に、細胞を1種または複数のSC分化誘導剤と最初に接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、細胞を1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のSC分化誘導剤と同時に接触させるステップを含む。
【0014】
ある特定の実施形態では、幹細胞の集団は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約25日後またはそれ以降に、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する分化した細胞の集団へと分化する。
【0015】
ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、幹細胞を1種または複数のSMAD阻害剤と接触させるステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、幹細胞を、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤および1種または複数のSMAD阻害剤と同時に接触させるステップを含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約4日以内に、細胞を1種または複数のWnt活性化因子と最初に接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約2日後に、細胞を、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と最初に接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、幹細胞を分化させるための方法は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触と同日に、細胞を、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と最初に接触させるステップを含む。
【0017】
ある特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤は、SB431542、その誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される小分子である。ある特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤はSB431542である。
【0018】
ある特定の実施形態では、1種または複数のSMAD阻害剤は、LDN193189、その誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される小分子である。ある特定の実施形態では、1種または複数のSMAD阻害剤はLDN193189である。
【0019】
ある特定の実施形態では、1種または複数のWnt活性化因子は、Wntシグナル伝達の活性化のためにグリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)を低下させる。ある特定の実施形態では、1種または複数のWnt活性化因子は、CHIR99021、Wnt-1、WNT3A、Wnt4、Wnt5a、それらの誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される小分子である。ある特定の実施形態では、1種または複数のWnt活性化因子はCHIR99021である。
【0020】
ある特定の実施形態では、1種または複数のSC分化誘導剤は、ニューレグリン、LIF、CNTF、フォルスコリン、TGFβおよびFBSからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、1種または複数のSC分化誘導剤はNRG1である。
【0021】
ある特定の実施形態では、1種または複数のFGF活性化因子は、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF7、FGF8、FGF10、FGF18、それらの誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、1種または複数のFGF活性化因子はFGF2である。
【0022】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーは、SOX10、GAP43、BLBP、MPZ、Dhh、P75NTR、CD49D、TFAP2、CDH19、CD44、ERBB3、POU3F1、GFAP、CALCB、GRP116、TSPYL5、ITPKA、SLC17A6、SYPL2、LOC100128252、ANGPTL7、LOC728978、ZNF502、SLC16A6、LPL、SLC30A2、およびSLC10A4からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーは、表1~4に列挙される遺伝子から選択される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーは、表1に列挙される遺伝子から選択される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーは、CALCB、GRP116、TSPYL5、ITPKA、SLC17A6、SYPL2、LOC100128252、ANGPTL7、LOC728978およびZNF502からなる群から選択される。
【0023】
ある特定の実施形態では、幹細胞はヒト幹細胞である。ある特定の実施形態では、ヒト幹細胞は、ヒト胚性幹細胞、ヒト誘導多能性幹細胞、ヒト単為生殖幹細胞、始原胚細胞様多能性幹細胞、エピブラスト幹細胞、Fクラス多能性幹細胞からなる群から選択される。
【0024】
ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、細胞を1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と接触させることを含む。ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、細胞を1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と少なくとも約3日間にわたって接触させることを含む。ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、細胞を1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と約10日間にわたって接触させることを含む。ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、細胞を1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と約35日間にわたって接触させることを含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、細胞を1種または複数のSC分化増強剤とさらに接触させることを含む。ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、細胞を1種または複数のSC分化増強剤と少なくとも約3日間にわたって接触させることを含む。ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、細胞を1種または複数のSC分化増強剤と約10日間にわたって接触させることを含む。ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、細胞を1種または複数のSC分化増強剤と約35日間にわたって接触させることを含む。ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、集団細胞を、1種または複数のFGF活性化因子、1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤および1種または複数のSC分化増強剤と同時に接触させることを含む。
【0026】
ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、細胞を1種または複数のSC分化増強剤とさらに接触させることを含む。ある特定の実施形態では、1種または複数のSC分化増強剤は、ニューレグリン、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、フォルスコリン、LIFおよびCNTFからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、1種または複数のSC分化増強剤はcAMPである。
【0027】
ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、細胞を3Dスフェロイドへと凝集させること;ならびに3Dスフェロイドを、1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と接触させることを含む。ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件は、3Dスフェロイドを接着培養で培養することをさらに含む。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞マーカーは、LRRTM4、CDH1、FABP7、BDNF、UNCB5、SOSTDC1、OLIG1、PLAT、KCNJ10、SHH、NTN1、GDNF、ERBB3、GAP43、SOX10、S100、GFAP、POU3F1、PMP22、MBP、AQP4、MPZ、NGFR、NFATC4、MOG、IFNG、MAL、NTF3、TGFB1、CD9、CD81、CD44、CD98、CD49E、CD49D、TYRP1、ENTHD1、NT5E、HTR2B、NOV、IL8、SLC16A6、CDKN2A、PLP2、S100A6、AQP9、およびCDH19からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のSCマーカーは、表1~4に列挙される遺伝子から選択される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のSCマーカーは、表2~4に列挙される遺伝子から選択される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のSCマーカーは、TYRP1、CD44、ENTHD1、NT5E、HTR2B、NOV、IL8、SLC16A6およびCDKN2Aからなる群から選択される。
【0028】
ある特定の実施形態では、グルコース濃度は少なくとも約10mMである。ある特定の実施形態では、グルコース濃度は約30mMである。ある特定の実施形態では、測定は、細胞のグルコースへの最初の曝露から少なくとも約12時間後に実施される。ある特定の実施形態では、測定は、細胞のグルコースへの最初の曝露から約72時間後に実施される。
【0029】
ある特定の実施形態では、シュワン細胞関連障害は、末梢神経障害、神経鞘腫症、シャルコー・マリー・トゥース病およびギラン・バレー症候群からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、シュワン細胞関連障害は末梢神経障害である。ある特定の実施形態では、末梢神経障害は糖尿病性末梢神経障害である。
【0030】
ある特定の実施形態では、本開示の主題は、対象における中枢神経系(CNS)の再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害を予防および/もしくは処置するための、末梢神経系(PNS)の再生の方法であって、有効量の化合物またはそれを含む組成物を、シュワン細胞関連障害に罹患している対象に投与するステップを含み、この化合物が、カリウムチャネルブロッカー、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤、シクロペンチアジド、カプトプリル、イスラジピン、コンデルフィン(condelphine)、ニメスリド、トリアムシノロン、それらの
塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらの包接体およびそれらのプロドラッグ、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、方法もまた提供する。
【0031】
ある特定の実施形態では、カリウムチャネルブロッカーはスルホニルウレア化合物である。ある特定の実施形態では、スルホニルウレア化合物は、トルブタミド、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリシクラミド(glycyclamide)(トルヘキサミド(tolhexamide))、メタヘキサミド、トラザミド、グリベンクラミド(グリブリド
)、グリボルヌリド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、グリソキセピド、グリクロピラミド、グリメピリド、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらの包接体およびそれらのプロドラッグからなる群から選択される。
【0032】
ある特定の実施形態では、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤は、ブプロピオン、アミネプチン、メチルフェニデート(Ritalin(登録商標)、Concerta(登録商標)、Metadate(登録商標)、Methylin(登録商標)、Rubifen(登録商標)またはStimdate(登録商標))、アトモキセチン、マプロチリン、デスオキシピプラドロール(desoxypipradrol)、デクスメチルフェニデ
ート、ジフェメトレックス(difemetorex)、ジフェニルプロリノール(diphenylprolinol)、エチルフェニデート、フェンカムファミン(fencamfamine)、フェンカミン(fencamine)、レフェタミン、メチレンジオキシピロバレロン(methylenedioxypyrovalerone)、メチルフェニデート、ノミフェンシン、O-2172、オキソリニン酸、ピプラドロール、プロリンタン、ピロバレロン(pyrovalerone)、タメトラリン(tametraline)、W
Y-46824、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらのプロドラッグおよびそれらの包接体からなる群から選択される。
【0033】
ある特定の実施形態では、シュワン細胞関連障害は、末梢神経障害、神経鞘腫症、シャルコー・マリー・トゥース病およびギラン・バレー症候群からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、シュワン細胞関連障害は末梢神経障害である。ある特定の実施形態では、末梢神経障害は糖尿病性末梢神経障害である。
【0034】
ある特定の実施形態では、この化合物は、ブプロピオン、その塩、溶媒和物、水和物、包接体またはプロドラッグである。ある特定の実施形態では、この化合物は塩酸ブプロピオンである。ある特定の実施形態では、この化合物は、ブプロピオン代謝物、またはその塩、溶媒和物、水和物、包接体もしくはプロドラッグである。ある特定の実施形態では、ブプロピオン代謝物は、ヒドロキシブプロピオン(hydroxybupropion)、スレオ-ヒドロブプロピオン(threo-hydrobupropion)およびエリスロヒドロブプロピオン(erythrohydrobupropion)からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、カリウムチャネル
ブロッカーは、トルブタミド、その塩、溶媒和物、水和物、包接体またはプロドラッグである。
【0035】
ある特定の実施形態では、この組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む医薬組成物である。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
末梢神経系(PNS)の再生のため、中枢神経系(CNS)の再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害を予防および/もしくは処置するために適切な化合物をスクリーニングするin vitro方法であって、
(a)1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する細胞の集団を、少なくとも約30mMのグルコース濃度に曝露するステップであって、前記細胞は、幹細胞のin vitro分化から得られる、ステップ
(b)前記細胞を、グルコース曝露後に試験化合物と接触させるステップ、
(c)前記試験化合物による処理なしの前記細胞の第1のソルビトールレベル、第1のグルコースレベルおよび第1の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップ;
(d)前記試験化合物で処理した前記細胞の第2のソルビトールレベル、第2のグルコースレベルおよび第2の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップ;
(e)以下のうち1つまたは複数を比較するステップ:
(i)前記第2のソルビトールレベルを前記第1のソルビトールレベルと、
(ii)前記第2のグルコースレベルを前記第1のグルコースレベルと、
(iii)前記第2の細胞生存度を前記第1の細胞生存度と;ならびに
(f)以下のうち1つまたは複数が存在する場合に、PNSおよび/もしくはCNSの再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害の予防および/もしくは処置のために適切な試験化合物を同定するステップ:
(i)前記第2のソルビトールレベルが前記第1のソルビトールレベルよりも低い場合、
(ii)前記第2のグルコースレベルが前記第1のグルコースレベルよりも低い場合、および
(iii)前記第2の細胞生存度が第1の細胞生存度よりも低い場合
を含む、in vitro方法。
(項目2)
末梢神経系(PNS)の再生のため、中枢神経系(CNS)の再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害を予防および/もしくは処置するために適切な化合物をスクリーニングするin vitro方法であって、
(a)1つまたは複数のシュワン細胞マーカーを発現する細胞の集団を、少なくとも約30mMのグルコース濃度に曝露するステップであって、前記細胞は、幹細胞のin vitro分化から得られる、ステップ、
(b)前記細胞を、グルコース曝露後に試験化合物と接触させるステップ、
(c)前記試験化合物による処理なしの前記細胞の第1のソルビトールレベル、第1のグルコースレベルおよび第1の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップ;
(d)前記試験化合物で処理した前記細胞の第2のソルビトールレベル、第2のグルコースレベルおよび第2の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップ;
(e)以下のうち1つまたは複数を比較するステップ:
(i)前記第2のソルビトールレベルを前記第1のソルビトールレベルと、
(ii)前記第2のグルコースレベルを前記第1のグルコースレベルと、
(iii)前記第2の細胞生存度を前記第1の細胞生存度と;ならびに
(f)以下のうち1つまたは複数が存在する場合に、PNSおよび/もしくはCNSの再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害の予防および/もしくは処置のために適切な試験化合物を同定するステップ:
(i)前記第2のソルビトールレベルが前記第1のソルビトールレベルよりも低い場合、
(ii)前記第2のグルコースレベルが前記第1のグルコースレベルよりも低い場合、および
(iii)前記第2の細胞生存度が第1の細胞生存度よりも低い場合
を含む、in vitro方法。
(項目3)
1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する前記細胞が、幹細胞の集団をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と接触させるステップおよび前記細胞を1種または複数のWnt活性化因子と接触させるステップ、ならびに前記細胞を1種または複数のFGF活性化因子と少なくとも約3日間にわたってさらに接触させるステップを含む方法による幹細胞のin vitro分化から得られる、項目2に記載の方法。
(項目4)
1つまたは複数のシュワン細胞マーカーを発現する前記細胞が、
幹細胞の集団をTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と接触させるステップおよび前記細胞を1種または複数のWnt活性化因子と接触させるステップ、
前記細胞を1種または複数のFGF活性化因子と少なくとも約3日間にわたってさらに接触させて、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する分化した細胞の集団を産生するステップ、ならびに
1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する分化した細胞の前記集団を、シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する条件に供するステップ
を含む方法による幹細胞のin vitro分化から得られる、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記細胞を前記1種または複数のFGF活性化因子と約14日間にわたって接触させるステップを含む、項目3または4に記載の方法。
(項目6)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の阻害剤との最初の接触から約20日以内に、前記細胞を前記1種または複数のFGF活性化因子と最初に接触させるステップを含む、項目3から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約10日後と約15日後との間に、前記細胞を前記1種または複数のFGF活性化因子と最初に接触させるステップを含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約11日後に、前記細胞を前記1種または複数のFGF活性化因子と最初に接触させるステップを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記細胞を1種または複数のSC分化誘導剤と接触させて、1つまたは複数のSC前駆体マーカーを発現する細胞の集団を産生するステップをさらに含む、項目3から8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記細胞を前記1種または複数のSC分化誘導剤と少なくとも約3日間にわたって接触させて、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する分化した細胞の集団を産生するステップを含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記細胞を前記1種または複数のSC分化誘導剤と約14日間にわたって接触させるステップを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約10日後と約15日後との間に、前記細胞を前記1種または複数のSC分化誘導剤と最初に接触させるステップを含む、項目9から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記細胞を前記1種または複数のFGF活性化因子および前記1種または複数のSC分化誘導剤と同時に接触させるステップを含む、項目9から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
幹細胞の前記集団が、前記幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の阻害剤との最初の接触から約25日後またはそれ以降に、1つまたは複数の前記シュワン細胞前駆体マーカーを発現する分化した細胞の集団へと分化する、項目3から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記幹細胞を1種または複数のSMAD阻害剤と接触させるステップをさらに含む、項目3から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記幹細胞を、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の阻害剤および前記1種または複数のSMAD阻害剤に同時に接触させるステップを含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の阻害剤との最初の接触から約4日以内に、前記細胞を前記1種または複数のWnt活性化因子と最初に接触させるステップを含む、項目3から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の阻害剤との最初の接触から約2日後に、前記細胞を、Wntシグナル伝達の前記1種または複数の活性化因子と最初に接触させるステップを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記幹細胞を分化させるための前記方法が、前記幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の阻害剤との最初の接触と同日に、前記細胞を、Wntシグナル伝達の前記1種または複数の活性化因子と最初に接触させるステップを含む、項目17に記載の方法。
(項目20)
TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の阻害剤が、SB431542、その誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される小分子である、項目3から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の前記1種または複数の阻害剤がSB431542である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記1種または複数のSMAD阻害剤が、LDN193189、その誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される小分子である、項目15から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記1種または複数のSMAD阻害剤がLDN193189である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記1種または複数のWnt活性化因子が、Wntシグナル伝達の活性化のためにグリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)を低下させる、項目3から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記1種または複数のWnt活性化因子が、CHIR99021、Wnt-1、WNT3A、Wnt4、Wnt5a、それらの誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される小分子である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記1種または複数のWnt活性化因子がCHIR99021である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記1種または複数のSC分化誘導剤が、ニューレグリン、LIF、CNTF、フォルスコリン、TGFβおよびFBSからなる群から選択される、項目9から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記1種または複数のSC分化誘導剤がNRG1である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記1種または複数のFGF活性化因子が、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF7、FGF8、FGF10、FGF18、それらの誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目4から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記1種または複数のFGF活性化因子がFGF2である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーが、SOX10、GAP43、BLBP、MPZ、Dhh、P75NTR、CD49D、TFAP2、CDH19、CD44、ERBB3、POU3F1、GFAP、CALCB、GRP116、TSPYL5、ITPKA、SLC17A6、SYPL2、LOC100128252、ANGPTL7、LOC728978、ZNF502、SLC16A6、LPL、SLC30A2、およびSLC10A4からなる群から選択される、項目1、3から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記幹細胞がヒト幹細胞である、項目3から31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記ヒト幹細胞が、ヒト胚性幹細胞、ヒト誘導多能性幹細胞、ヒト単為生殖幹細胞、始原胚細胞様多能性幹細胞、エピブラスト幹細胞、Fクラス多能性幹細胞からなる群から選択される、項目32に記載の方法。
(項目34)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記細胞を1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と接触させることを含む、項目4に記載の方法。
(項目35)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記細胞を前記1種または複数のFGF活性化因子および前記1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と少なくとも約3日間にわたって接触させることを含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記細胞を前記1種または複数のFGF活性化因子および前記1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と約10日間にわたって接触させることを含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記細胞を前記1種または複数のFGF活性化因子および前記1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と約35日間にわたって接触させることを含む、項目35に記載の方法。
(項目38)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記細胞を1種または複数のSC分化増強剤とさらに接触させることを含む、項目33から37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記細胞を前記1種または複数のSC分化増強剤と少なくとも約3日間にわたって接触させることを含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記細胞を前記1種または複数のSC分化増強剤と約10日間にわたって接触させることを含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記細胞を前記1種または複数のSC分化増強剤と約35日間にわたって接触させることを含む、項目39に記載の方法。
(項目42)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記集団細胞を、前記1種または複数のFGF活性化因子、前記1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤および前記1種または複数のSC分化増強剤と同時に接触させることを含む、項目38から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記細胞を1種または複数のSC分化増強剤とさらに接触させることを含む、項目33から42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記1種または複数のSC分化増強剤が、ニューレグリン、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、フォルスコリン、LIFおよびCNTFからなる群から選択される、項目38から43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記1種または複数のSC分化増強剤がcAMPである、項目44に記載の方法。
(項目46)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記細胞を3Dスフェロイドへと凝集させること;ならびに前記3Dスフェロイドを、前記1種または複数のFGF活性化因子および前記1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と接触させることを含む、項目3から45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
シュワン細胞前駆体細胞のシュワン細胞への成熟化を支持する前記条件が、前記3Dスフェロイドを接着培養で培養することをさらに含む、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記1つまたは複数のシュワン細胞マーカーが、LRRTM4、CDH1、FABP7、BDNF、UNCB5、SOSTDC1、OLIG1、PLAT、KCNJ10、SHH、NTN1、GDNF、ERBB3、GAP43、SOX10、S100、GFAP、POU3F1、PMP22、MBP、AQP4、MPZ、NGFR、NFATC4、MOG、IFNG、MAL、NTF3、TGFB1、CD9、CD81、CD44、CD98、CD49E、CD49D、TYRP1、ENTHD1、NT5E、HTR2B、NOV、IL8、SLC16A6、CDKN2A、PLP2、S100A6、AQP9、およびCDH19からなる群から選択される、項目4および34から37のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記グルコース濃度が少なくとも約10mMである、項目1から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記グルコース濃度が約30mMである、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記測定が、前記細胞の前記グルコースへの最初の曝露から少なくとも約12時間後に実施される、項目1から50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記測定が、前記細胞の前記グルコースへの最初の曝露から約72時間後に実施される、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記シュワン細胞関連障害が、末梢神経障害、神経鞘腫症、シャルコー・マリー・トゥース病およびギラン・バレー症候群からなる群から選択される、項目1から52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記シュワン細胞関連障害が末梢神経障害である、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記末梢神経障害が糖尿病性末梢神経障害である、項目54に記載の方法。
(項目56)
対象における中枢神経系(CNS)の再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害を予防および/もしくは処置するための、末梢神経系(PNS)の再生の方法であって、有効量の化合物またはそれを含む組成物を、前記シュワン細胞関連障害に罹患している対象に投与するステップを含み、前記化合物が、カリウムチャネルブロッカー、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤、シクロペンチアジド、カプトプリル、イスラジピン、コンデルフィン、ニメスリド、トリアムシノロン、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらの包接体およびそれらのプロドラッグ、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、方法。
(項目57)
前記カリウムチャネルブロッカーがスルホニルウレア化合物である、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記スルホニルウレア化合物が、トルブタミド、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリシクラミド(トルヘキサミド)、メタヘキサミド、トラザミド、グリベンクラミド(グリブリド)、グリボルヌリド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、グリソキセピド、グリクロピラミド、グリメピリド、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらの包接体およびそれらのプロドラッグからなる群から選択される、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤が、ブプロピオン、アミネプチン、メチルフェニデート(Ritalin(登録商標)、Concerta(登録商標)、Metadate(登録商標)、Methylin(登録商標)、Rubifen(登録商標)またはStimdate(登録商標))、アトモキセチン、マプロチリン、デスオキシピプラドロール、デクスメチルフェニデート、ジフェメトレックス、ジフェニルプロリノール、エチルフェニデート、フェンカムファミン、フェンカミン、レフェタミン、メチレンジオキシピロバレロン、メチルフェニデート、ノミフェンシン、O-2172、オキソリニン酸、ピプラドロール、プロリンタン、ピロバレロン、タメトラリン、WY-46824、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらのプロドラッグおよびそれらの包接体からなる群から選択される、項目56から58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記シュワン細胞関連障害が、末梢神経障害、神経鞘腫症、シャルコー・マリー・トゥース病およびギラン・バレー症候群からなる群から選択される、項目56から59のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記シュワン細胞関連障害が末梢神経障害である、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記末梢神経障害が糖尿病性末梢神経障害である、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記化合物が、ブプロピオン、その塩、溶媒和物、水和物、包接体またはプロドラッグである、項目56から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記化合物が塩酸ブプロピオンである、項目56から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記化合物が、ブプロピオン代謝物、その塩、溶媒和物、水和物、包接体またはプロドラッグである、項目56から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記ブプロピオン代謝物が、ヒドロキシブプロピオン、スレオ-ヒドロブプロピオンおよびエリスロヒドロブプロピオンからなる群から選択される、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記カリウムチャネルブロッカーが、トルブタミド、その塩、溶媒和物、水和物、包接体またはプロドラッグである、項目56から66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記組成物が、薬学的に許容される担体をさらに含む医薬組成物である、項目56から67のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1ABCD図1A~1Iは、hESCからのSCの誘導を示す図である。(1A)シュワン細胞前駆体およびシュワン細胞を誘導するためのプロトコール(11~35日目)の概略図表示。(1B)分化の11日目、25日目および35日目におけるSOX10::GFP発現。(1C、1D)シュワン細胞の分化およびミエリン形成(1C)ならびに神経の相互作用および支持(1D)に関与するシュワン系列マーカーのパネルについてのqRT-PCR。SOX10についての、選別されていないおよびCD49D選別された分化したNC細胞の免疫蛍光。(1E)60日目における、シュワン系列マーカーについてのhESC由来SCの代表的免疫蛍光イメージ。F)(1E)中のマーカーの定量化。(1G)CNS前駆体と比較した、CD49d精製されたNC、CD49d精製されたSCP、ヒト初代シュワン細胞、ならびに分化の50日目および100日目におけるCD98精製されたhESC由来SCの主成分分析。(1H)25日目のSCPおよび100日目のSCにおいて有意に上方調節された、上位10(通常の書体)および選択されたさらなる(太字の書体)遺伝子。(1I)(1E)中のマーカーの定量化。スケールバー=Bの左および中央のパネルでは100μm、Bの右パネルおよびEでは25μm。
図1EF図1A~1Iは、hESCからのSCの誘導を示す図である。(1A)シュワン細胞前駆体およびシュワン細胞を誘導するためのプロトコール(11~35日目)の概略図表示。(1B)分化の11日目、25日目および35日目におけるSOX10::GFP発現。(1C、1D)シュワン細胞の分化およびミエリン形成(1C)ならびに神経の相互作用および支持(1D)に関与するシュワン系列マーカーのパネルについてのqRT-PCR。SOX10についての、選別されていないおよびCD49D選別された分化したNC細胞の免疫蛍光。(1E)60日目における、シュワン系列マーカーについてのhESC由来SCの代表的免疫蛍光イメージ。F)(1E)中のマーカーの定量化。(1G)CNS前駆体と比較した、CD49d精製されたNC、CD49d精製されたSCP、ヒト初代シュワン細胞、ならびに分化の50日目および100日目におけるCD98精製されたhESC由来SCの主成分分析。(1H)25日目のSCPおよび100日目のSCにおいて有意に上方調節された、上位10(通常の書体)および選択されたさらなる(太字の書体)遺伝子。(1I)(1E)中のマーカーの定量化。スケールバー=Bの左および中央のパネルでは100μm、Bの右パネルおよびEでは25μm。
図1GH図1A~1Iは、hESCからのSCの誘導を示す図である。(1A)シュワン細胞前駆体およびシュワン細胞を誘導するためのプロトコール(11~35日目)の概略図表示。(1B)分化の11日目、25日目および35日目におけるSOX10::GFP発現。(1C、1D)シュワン細胞の分化およびミエリン形成(1C)ならびに神経の相互作用および支持(1D)に関与するシュワン系列マーカーのパネルについてのqRT-PCR。SOX10についての、選別されていないおよびCD49D選別された分化したNC細胞の免疫蛍光。(1E)60日目における、シュワン系列マーカーについてのhESC由来SCの代表的免疫蛍光イメージ。F)(1E)中のマーカーの定量化。(1G)CNS前駆体と比較した、CD49d精製されたNC、CD49d精製されたSCP、ヒト初代シュワン細胞、ならびに分化の50日目および100日目におけるCD98精製されたhESC由来SCの主成分分析。(1H)25日目のSCPおよび100日目のSCにおいて有意に上方調節された、上位10(通常の書体)および選択されたさらなる(太字の書体)遺伝子。(1I)(1E)中のマーカーの定量化。スケールバー=Bの左および中央のパネルでは100μm、Bの右パネルおよびEでは25μm。
図1I図1A~1Iは、hESCからのSCの誘導を示す図である。(1A)シュワン細胞前駆体およびシュワン細胞を誘導するためのプロトコール(11~35日目)の概略図表示。(1B)分化の11日目、25日目および35日目におけるSOX10::GFP発現。(1C、1D)シュワン細胞の分化およびミエリン形成(1C)ならびに神経の相互作用および支持(1D)に関与するシュワン系列マーカーのパネルについてのqRT-PCR。SOX10についての、選別されていないおよびCD49D選別された分化したNC細胞の免疫蛍光。(1E)60日目における、シュワン系列マーカーについてのhESC由来SCの代表的免疫蛍光イメージ。F)(1E)中のマーカーの定量化。(1G)CNS前駆体と比較した、CD49d精製されたNC、CD49d精製されたSCP、ヒト初代シュワン細胞、ならびに分化の50日目および100日目におけるCD98精製されたhESC由来SCの主成分分析。(1H)25日目のSCPおよび100日目のSCにおいて有意に上方調節された、上位10(通常の書体)および選択されたさらなる(太字の書体)遺伝子。(1I)(1E)中のマーカーの定量化。スケールバー=Bの左および中央のパネルでは100μm、Bの右パネルおよびEでは25μm。
【0037】
図2ABCD図2A~2Dは、高グルコース曝露に対するhESC-SCの選択的脆弱性を示す図である。(2A)hESC由来細胞型において糖尿病性神経損傷をモデル化するための実験パラダイムの概略図表示。(2B)LDH活性アッセイを使用する、異なるグルコース濃度への曝露に応答したhESC由来SCおよび感覚ニューロンの細胞死分析。(2C)未分化hESCならびにhESC由来シュワン細胞および感覚ニューロンにおけるアルドースレダクターゼ(AR)およびソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH)についてのqRT-PCR。(2D)異なるグルコース濃度への曝露に応答した、hESC由来SCおよび感覚ニューロンにおける細胞内ソルビトール測定。
図2E】記載なし。
【0038】
図3ABCD図3A~3Fは、塩酸ブプロピオンが糖毒性に対してhESC-SCを保護することを示す図である。(3A、3E)高グルコース処理したhESC-SCの生存度を増強する化合物の同定のためのハイスループット薬物スクリーニングの概略図表示。(3B)高グルコースで処置した生存hESC-SCの総数および1280のスクリーニングされた化合物を示す一次スクリーニングデータ。(3C)細胞死に対する効果についての、選択されたヒット化合物「塩酸ブプロピオン」の用量応答分析。(3D)ソルビトールレベルに対する効果についての、選択されたヒット化合物「塩酸ブプロピオン」の用量応答分析。(3F)一次ヒット化合物のリスト(Z-スコア>3)。p値は、p値:p<0.05;**p<0.01である。
図3E図3A~3Fは、塩酸ブプロピオンが糖毒性に対してhESC-SCを保護することを示す図である。(3A、3E)高グルコース処理したhESC-SCの生存度を増強する化合物の同定のためのハイスループット薬物スクリーニングの概略図表示。(3B)高グルコースで処置した生存hESC-SCの総数および1280のスクリーニングされた化合物を示す一次スクリーニングデータ。(3C)細胞死に対する効果についての、選択されたヒット化合物「塩酸ブプロピオン」の用量応答分析。(3D)ソルビトールレベルに対する効果についての、選択されたヒット化合物「塩酸ブプロピオン」の用量応答分析。(3F)一次ヒット化合物のリスト(Z-スコア>3)。p値は、p値:p<0.05;**p<0.01である。
図3F図3A~3Fは、塩酸ブプロピオンが糖毒性に対してhESC-SCを保護することを示す図である。(3A、3E)高グルコース処理したhESC-SCの生存度を増強する化合物の同定のためのハイスループット薬物スクリーニングの概略図表示。(3B)高グルコースで処置した生存hESC-SCの総数および1280のスクリーニングされた化合物を示す一次スクリーニングデータ。(3C)細胞死に対する効果についての、選択されたヒット化合物「塩酸ブプロピオン」の用量応答分析。(3D)ソルビトールレベルに対する効果についての、選択されたヒット化合物「塩酸ブプロピオン」の用量応答分析。(3F)一次ヒット化合物のリスト(Z-スコア>3)。p値は、p値:p<0.05;**p<0.01である。
【0039】
図4図4A~4Dは、グルコース代謝およびポリオール経路に対するブプロピオンの影響を示す図である。塩酸ブプロピオンは、解糖フラックス(glycolytic flux)を増加させることによってソルビトールレベルを低減させる。(4A~4C)塩酸ブプロピオンに応答した細胞内グルコースレベル(4A)、グルコース再取り込み(4B)およびピルベート(4C)の測定。(4D)SCにおけるグルコース代謝に対するブプロピオンの影響のモデルの概略図表示。p値は、p値:p<0.05;**p<0.01である。
【0040】
図5ABC図5A~5Gは、ブプロピオン処置がマウスにおいて糖尿病性神経損傷を予防することを示す図である。(5A)マウスにおける糖尿病のモデル化およびブプロピオン処置の概略図表示。(5B)正常マウスならびにSTZおよびブプロピオンで処置したマウスにおける血中グルコースレベル。(5C)正常マウスならびにSTZおよびブプロピオンで処置したマウスにおける後肢引っ込めの潜時を測定する熱感度試験。(5D、5E)正常マウスならびにSTZおよびブプロピオンで処置したマウスの坐骨神経におけるTUNEL染色および定量化。(5F、5G)正常マウスならびにSTZおよびブプロピオンで処置したマウスの坐骨神経における損傷ミエリン構造の透過電子顕微鏡および定量化。p値は、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.000である。スケールバー=Dでは100μm、Fでは5μm。BP、塩酸ブプロピオン。
図5DEFG図5A~5Gは、ブプロピオン処置がマウスにおいて糖尿病性神経損傷を予防することを示す図である。(5A)マウスにおける糖尿病のモデル化およびブプロピオン処置の概略図表示。(5B)正常マウスならびにSTZおよびブプロピオンで処置したマウスにおける血中グルコースレベル。(5C)正常マウスならびにSTZおよびブプロピオンで処置したマウスにおける後肢引っ込めの潜時を測定する熱感度試験。(5D、5E)正常マウスならびにSTZおよびブプロピオンで処置したマウスの坐骨神経におけるTUNEL染色および定量化。(5F、5G)正常マウスならびにSTZおよびブプロピオンで処置したマウスの坐骨神経における損傷ミエリン構造の透過電子顕微鏡および定量化。p値は、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.000である。スケールバー=Dでは100μm、Fでは5μm。BP、塩酸ブプロピオン。
【0041】
図6図6A~6Bは、hESC由来SCPおよびSC系列の特徴付けを示す図である。(6A)hESC由来NC(11日目)およびSCP(25日目)におけるSOX10::GFPのフローサイトメトリー分析。(6B)in vitro分化の間の異なる時点におけるhESC由来SCにおけるGFAPのフローサイトメトリー分析。
【0042】
図7AB図7A~7Cは、抗体スクリーニングがヒトSCについての新規表面マーカーを同定することを示す図である。(7A)抗体スクリーニングパラダイムの概略図表示。(7B)一次スクリーニングは、hESC-SCについての新規表面マーカーを同定する。(7C)SC分化の異なる段階における表面マーカー発現の免疫細胞化学およびフローサイトメトリーベースの検証。
図7C-1】図7A~7Cは、抗体スクリーニングがヒトSCについての新規表面マーカーを同定することを示す図である。(7A)抗体スクリーニングパラダイムの概略図表示。(7B)一次スクリーニングは、hESC-SCについての新規表面マーカーを同定する。(7C)SC分化の異なる段階における表面マーカー発現の免疫細胞化学およびフローサイトメトリーベースの検証。
図7C-2】図7A~7Cは、抗体スクリーニングがヒトSCについての新規表面マーカーを同定することを示す図である。(7A)抗体スクリーニングパラダイムの概略図表示。(7B)一次スクリーニングは、hESC-SCについての新規表面マーカーを同定する。(7C)SC分化の異なる段階における表面マーカー発現の免疫細胞化学およびフローサイトメトリーベースの検証。
【発明を実施するための形態】
【0043】
発明の詳細な説明
本開示の主題は、シュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、糖尿病性末梢神経障害)を予防および/または処置する際の薬物発見のための幹細胞由来シュワン細胞前駆体および/またはシュワン細胞の使用に関する。本開示の主題は、シュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、糖尿病性末梢神経障害)を予防および/または処置するための、かかる薬物発見方法からスクリーニングされた化合物およびかかる化合物の医薬組成物の使用にも関する。
【0044】
限定ではなく開示の明確さを目的として、詳細な説明は以下のサブセクションに分割される:
1.定義
2.幹細胞を分化させる方法
3.治療的化合物をスクリーニングする方法
4.処置の方法
5.キット
【0045】
1.定義
本明細書で使用される用語は一般に、本発明の文脈内で、各用語が使用される具体的な文脈において、当該分野におけるその通常の意味を有する。ある特定の用語は、本発明の組成物および方法ならびにそれらをどのように作製および使用するかを記述するにあたり実務者にさらなるガイダンスを提供するために、以下または本明細書の他の箇所で議論される。
【0046】
用語「約」または「およそ」は、当業者によって決定され、その値がどのように測定または決定されるか、即ち、測定系の限界に一部依存する、特定の値について許容される誤差範囲内を意味する。例えば、「約」は、当該分野における実務に従い、3標準偏差以内または3標準偏差よりも大きいことを意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の最大で20%、例えば、最大で10%、最大で5%または最大で1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に、生物システムまたはプロセスに関して、この用語は、ある値の1オーダー以内、例えば、5分の1~5倍以内または2分の1~2倍以内を意味し得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「シグナル伝達タンパク質」に関して、用語「シグナル伝達」とは、膜受容体タンパク質へのリガンド結合または一部の他の刺激によって活性化されるまたは他の方法で影響されるタンパク質を指す。シグナル伝達タンパク質の例には、線維芽細胞増殖因子(FGF)、SMAD、ベータ-カテニン(catnin)を含むウイングレス(Wnt)複合タンパク質、NOTCH、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、アクチビン、ノーダルおよびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3P)タンパク質が含まれるがこれらに限定されない。多くの細胞表面受容体または内部受容体タンパク質について、リガンド-受容体相互作用は、細胞の応答と直接関連するわけではない。リガンド活性化された受容体は、細胞の挙動に対するリガンドの究極的な生理学的影響が生じる前に、細胞の内側の他のタンパク質と最初に相互作用し得る。しばしば、いくつかの相互作用性細胞タンパク質の鎖の挙動は、受容体の活性化または阻害後に変更される。受容体活性化によって誘導される細胞変化のセット全体は、シグナル伝達機構またはシグナル伝達経路と呼ばれる。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「シグナル」とは、細胞の構造および機能における変化を制御する内部および外部の因子を指す。これらは、性質が化学的または物理的であり得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「リガンド」とは、受容体に結合する分子およびタンパク質、例えば、TGFβ、アクチビン、ノーダル、骨形態形成タンパク質(BMP)などを指す。
【0050】
「阻害剤」とは、本明細書で使用される場合、分子または経路のシグナル伝達機能を妨害する(例えば、低減、減少、抑制、排除または遮断する)化合物または分子(例えば、小分子、ペプチド、ペプチド模倣物、天然化合物、siRNA、アンチセンス核酸、アプタマーまたは抗体)を指す。阻害剤は、一例として、SMADシグナル伝達に直接接触すること、SMAD mRNAに接触すること、SMADのコンフォメーション変化を引き起こすこと、SMADタンパク質レベルを減少させること、またはSMADとシグナル伝達パートナー(例えば、本明細書に記載されるものが含まれる)との相互作用を妨害すること、およびSMAD標的遺伝子(例えば、本明細書に記載されるもの)の発現に影響を与えることを介して、指定されたタンパク質(シグナル伝達分子、指定されたシグナル伝達分子に関与する任意の分子、指定された関連する分子、例えば、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β))(例えば、本明細書に記載されるシグナル伝達分子が含まれるがこれらに限定されない)の任意の活性を変化させる任意の化合物または分子であり得る。阻害剤には、上流シグナル伝達分子(例えば、細胞外ドメイン内)を妨害することによって、SMADの生物活性を間接的に調節する分子も含まれ、シグナル伝達分子および効果の例には、骨形態形成タンパク質を隔離し、ALK受容体1、2、3および6の活性化を阻害し、それによって下流SMAD活性化を防止するノギンが含まれる。同様に、コーディン、ケルベロス、フォリスタチンも同様に、SMADシグナル伝達の細胞外活性化因子を隔離する。膜貫通タンパク質であるバンビ(Bambi)もまた、細胞外TGFb
シグナル伝達分子を隔離する偽受容体として作用する。アクチビン、ノーダル、TGFbおよびBMPを遮断する抗体は、SMADシグナル伝達の細胞外活性化因子を中和するためなどの使用について企図される。阻害剤は、指定された分子の阻害を次に引き起こす、指定されたシグナル伝達分子から上流の分子に結合しそれに影響を与えることによって誘導される阻害に加えて、競合的阻害(別の公知の結合化合物の結合を除外または低減させる様式で活性部位に結合する)およびアロステリック阻害(そのタンパク質の活性部位への化合物の結合を妨害する様式でタンパク質コンフォメーションを変化させる様式でタンパク質に結合する)の観点から記載される。阻害剤は、シグナル伝達標的を実際に接触させることによってシグナル伝達標的またはシグナル伝達標的経路を阻害する「直接的阻害剤」であり得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「シュワン細胞前駆体」とは、本明細書に開示されるシュワン細胞前駆体マーカーが含まれるがこれらに限定されない1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する細胞を指す。適切な成熟化条件下で、シュワン細胞前駆体はシュワン細胞になり得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「シュワン細胞」とは、本明細書に開示されるシュワン細胞マーカーが含まれるがこれらに限定されない1つまたは複数のシュワン細胞マーカーを発現する細胞を指す。シュワン細胞は、ミエリン形成性シュワン細胞または非ミエリン形成性シュワン細胞であり得る。ある特定の実施形態では、シュワン細胞は、末梢神経系においてニューロンの軸索を維持および再生することが可能である(例えば、健康な軸索の維持)。ある特定の実施形態では、シュワン細胞は、ミエリン鞘を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、シュワン細胞は、Remakバンドル(Remak bundle)を形成することが可能である。
【0053】
「活性化因子」とは、本明細書で使用される場合、分子または経路のシグナル伝達機能、例えば、Wntシグナル伝達またはFGFシグナル伝達を増加させる、誘導する、刺激する、活性化する、促進する、またはその活性化を増強する化合物を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「誘導体」とは、類似のコア構造を有する化学化合物を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「細胞の集団」または「細胞集団」とは、少なくとも2つの細胞の群を指す。非限定的な例では、細胞集団は、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000個の細胞を含み得る。集団は、1つの細胞型を含む純粋な集団、例えば、SC前駆体の集団、SCの集団、または未分化幹細胞の集団であり得る。あるいは、集団は、1つよりも多い細胞型、例えば、混合細胞集団、例えば、SC前駆体およびSCの混合集団を含み得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「幹細胞」とは、培養物中で不確定の期間にわたって分裂し、特殊化された細胞を生じる能力を有する細胞を指す。ヒト幹細胞とは、ヒト由来の幹細胞を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「胚性幹細胞」とは、着床前段階の胚から誘導され、培養物中で長期間にわたって分化せずに分裂することが可能であり、3つの主な胚葉の細胞および組織へと発生することが公知の、原始的(未分化)細胞を指す。ヒト胚性幹細胞とは、ヒト由来の胚性幹細胞を指す。本明細書で使用される場合、用語「ヒト胚性幹細胞」または「hESC」とは、胚盤胞段階までおよび胚盤胞段階を含む初期段階のヒト胚から誘導され、培養物中で長期間にわたって分化せずに分裂することが可能であり、3つの主な胚葉の細胞および組織へと発生することが公知の、多能性幹細胞(「PSC」)の1つの型を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「胚性幹細胞系」とは、最大で数日間、数ヶ月~数年間にわたって分化せずに増殖することを可能にするin vitro条件下で培養された胚性幹細胞の集団を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「全能性」とは、身体の全ての細胞型+胎盤などの胚外組織を構成する全ての細胞型を生じる能力を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「多分化能性」とは、身体の1つよりも多い細胞型へと発生する能力を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「多能性」とは、内胚葉、中胚葉および外胚葉を含む生物の3つの発生的胚葉へと発生する能力を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「誘導多能性幹細胞」または「iPSC」とは、体細胞、例えば、CI4、C72などの中へのある特定の胚性遺伝子(例えば、OCT4、SOX2およびKLF4導入遺伝子)(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるTakahashiおよびYamanaka Cell 126巻、663~676頁(2006年)を参照のこと
)の導入によって形成される、胚性幹細胞と類似の多能性幹細胞の1つの型を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「体細胞」とは、配偶子(卵または精子)以外の身体中の任意の細胞を指し、「成体」細胞と呼ばれる場合がある。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「体性(成体)幹細胞」とは、自己再生(実験室中で)および分化の両方について限定的な能力を有する、多くの臓器および分化した組織において見出される比較的稀な未分化細胞を指す。かかる細胞は、その分化能が異なっているが、起源の臓器中の細胞型に通常は限定される。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「ニューロン」とは、神経系の主要な機能的単位である神経細胞を指す。ニューロンは、細胞体およびその突起、即ち軸索、および1つまたは複数の樹状突起からなる。ニューロンは、シナプスにおいて神経伝達物質を放出することによって、他のニューロンまたは細胞に情報を伝達する。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「増殖」とは、細胞数の増加を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「未分化」とは、特殊化された細胞型へと未だ発生していない細胞を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「分化」とは、特殊化されていない胚性細胞が、心臓、肝臓または筋肉細胞などの特殊化された細胞の特色を獲得するプロセスを指す。分化は、細胞表面中に包埋されたタンパク質が関与するシグナル伝達経路を通常は介した、細胞の遺伝子と細胞の外側の物理的および化学的条件との相互作用によって制御される。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「方向付けられた分化」とは、特定の(例えば、所望の)細胞型、例えばSC前駆体への分化を誘導するための幹細胞培養条件の操作を指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、幹細胞に関して、用語「方向付けられた分化」とは、多能性状態から、より成熟したまたは特殊化された細胞運命(例えば、SC前駆体、SCなど)への幹細胞の移行を促進するための、小分子、増殖因子タンパク質および他の成長条件の使用を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、細胞に関して、用語「分化を誘導する」とは、デフォルト細胞型(遺伝子型および/または表現型)を非デフォルト細胞型(遺伝子型および/または表現型)へと変化させることを指す。従って、「幹細胞において分化を誘導する」とは、幹細胞とは異なる特徴、例えば、遺伝子型(例えば、マイクロアレイなどの遺伝子分析によって決定される、遺伝子発現における変化)および/または表現型(例えば、SC前駆体マーカー(単数または複数)およびSCマーカー(単数または複数)などのタンパク質の発現における変化)を有する子孫細胞へと分裂するように幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)を誘導することを指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「細胞培養」とは、研究または医学的処置のための人工培地中でのin vitroでの細胞の成長を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「培養培地」とは、培養容器、例えば、ペトリプレート、マルチウェルプレートなどの中の細胞を覆う液体を指し、細胞に栄養を与え細胞を支持する栄養素を含む。培養培地は、細胞において所望の変化を生じさせるために添加される増殖因子もまた含み得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、細胞を化合物(例えば、1種または複数の阻害剤、活性化因子および/または誘導剤)と「接触させる」という用語は、それが細胞に触れるのを可能にする位置に化合物を配置することを指す。接触させることは、任意の適切な方法を使用して達成され得る。例えば、接触させることは、細胞の管に化合物を添加することによって達成され得る。接触させることは、細胞を含む培養培地に化合物を添加することによっても達成され得る。化合物(例えば、本明細書に開示される阻害剤、活性化因子および誘導剤)の各々は、細胞を含む培養培地に、溶液(例えば、濃縮溶液)として添加され得る。あるいはまたはさらに、化合物(例えば、本明細書に開示される阻害剤、活性化因子および誘導剤)ならびに細胞は、製剤化された細胞培養培地中に存在し得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「in vitro」とは、人工的環境、および人工的環境内で生じるプロセスまたは反応を指す。in vitro環境には、試験管および細胞培養物が例示されるがこれらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「in vivo」とは、天然の環境(例えば、動物または細胞)、および天然の環境内で生じるプロセスまたは反応、例えば、胚発生、細胞分化、神経管形成などを指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、遺伝子またはタンパク質に関して、用語「発現する」とは、アッセイ、例えば、マイクロアレイアッセイ、抗体染色アッセイなどを使用して観察され得る、mRNAまたはタンパク質を作製することを指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「マーカー」または「細胞マーカー」とは、特定の細胞または細胞型を同定する遺伝子またはタンパク質を指す。細胞についてのマーカーは、1つのマーカーに限定されなくてもよく、マーカーとは、指定された群のマーカーがある細胞または細胞型を別の細胞または細胞型から同定できるような、マーカーの「パターン」を指し得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「~から誘導される」または「~から樹立される」または「~から分化させた」は、本明細書に開示される任意の細胞に関して用いられる場合、任意の操作、例えば、限定なしに、単細胞単離、in vitroでの培養、例えば、タンパク質、化学物質、照射、ウイルスによる感染、DNA配列による、例えば、モルフォゲンなどによるトランスフェクション、培養された親細胞中に含まれる任意の細胞の選択(例えば、連続培養による)を使用する処理および/または変異誘発を使用して、細胞系、組織(例えば、解離された胚)または体液中の親細胞から得られた(例えば、単離された、精製されたなどの)細胞を指す。誘導された細胞は、増殖因子、サイトカイン、サイトカイン処理の選択された経過に対する応答、接着性、接着性の欠如、選別手順などによって、混合集団から選択され得る。
【0080】
本明細書の「個体」または「対象」は、脊椎動物、例えば、ヒトまたは非ヒト動物、例えば、哺乳動物である。哺乳動物には、ヒト、霊長類、家畜、スポーツ動物(sport animal)、げっ歯類およびペットが含まれるがこれらに限定されない。非ヒト動物対象の非
限定的な例には、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモット;ウサギ;イヌ;ネコ;ヒツジ;ブタ;ヤギ;ウシ;ウマ;ならびに非ヒト霊長類、例えば、類人猿およびサルが含まれる。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「疾患」とは、細胞、組織または臓器の正常な機能を損傷または妨害する任意の状態または障害を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」または「処置」とは、処置されている個体または細胞の疾患過程を変更することを試みた臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理の過程の間に実施され得る。処置の治療効果には、限定なしに、疾患の出現または再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果の減殺、転移の予防、疾患進行の速度の減少、疾患状態の軽快または緩和、および寛解または改善された予後が含まれる。疾患または障害の進行を予防することによって、処置は、罹患したもしくは診断された対象、または障害を有すると疑われる対象における障害に起因する悪化を予防できるが、処置は、障害のリスクがある対象または障害を有すると疑われる対象における障害または障害の症状の開始もまた予防し得る。
【0083】
2.幹細胞をシュワン細胞へと分化させる方法
シュワン細胞は、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)のin vitro分化から得られ得る。ある特定の実施形態では、幹細胞はヒト幹細胞である。ヒト幹細胞の非限定的な例には、ヒト胚性幹細胞(hESC)、ヒト多能性幹細胞(hPSC)、ヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)、ヒト単為生殖幹細胞、始原胚細胞様多能性幹細胞、エピブラスト幹細胞、Fクラス多能性幹細胞、体性幹細胞、がん幹細胞、または系列特異的分化が可能な任意の他の細胞が含まれる。ある特定の実施形態では、ヒト幹細胞はヒト多能性幹細胞である。ある特定の実施形態では、ヒト幹細胞はヒト胚性幹細胞(hESC)である。ある特定の実施形態では、ヒト幹細胞はヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)である。ある特定の実施形態では、幹細胞は、哺乳動物幹細胞、霊長類幹細胞、またはげっ歯類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジなど由来の幹細胞が含まれるがこれらに限定されない非ヒト幹細胞である。
【0084】
二重SMAD阻害の使用は、1つの型の神経系列への幹細胞(例えば、hPSC)の分化を誘導するために使用され得る。例えば、その全体が参照によって組み込まれるChambers(2009年)。さらに、幹細胞は、SMADシグナル伝達の連続的阻害とその後のWntシグナル伝達の活性化によって、神経堤系列細胞(例えば、侵害受容器)へと分化させ得る。例えば、全て、その全体が参照によって組み込まれる、Chambers(2012年);Mica(2013年);WO2011/149762;Fattahi(2016年);および
2015年12月23日出願の米国特許仮出願番号62/387,468号。
【0085】
ある特定の実施形態では、SCへの幹細胞の分化は、3つの相を含む:1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞(神経堤系列細胞)への幹細胞のin vitro分化、SC前駆体への神経堤系列細胞のin vitro分化、およびSCへのSC前駆体のin vitro分化または成熟化。Chambers(2012年);Mica(2013年);WO2011/149762;2015年12月23日出願の米国特許仮出願番号62/387,468号;およびFattahi(2016年)に開示されるものが含まれるがこれ
らに限定されない、神経堤系列細胞への幹細胞のin vitro分化のための任意の適切な方法が、第1の相において使用され得る。ある特定の実施形態では、幹細胞の集団を神経堤系列細胞の集団へとin vitroで分化させ、神経堤系列細胞の集団をSC前駆体の集団へとin vitroで分化させ、SC前駆体の集団をSCの集団へとin vitroでさらに誘導する。
【0086】
神経堤系列マーカーの非限定的な例には、SOX10、p75、HNK1、CD49D、ERBB3、TFAP2、SNAILおよびSLUGが含まれる。
【0087】
ある特定の実施形態では、神経堤系列細胞は、SMADシグナル伝達の阻害およびWntシグナル伝達の活性化によって、幹細胞からin vitroで分化させる。ある特定の実施形態では、この方法は、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)の集団を、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤および1種または複数のWnt活性化因子と接触させるステップを含む。
【0088】
ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SC分化を誘導することによって、神経堤系列細胞からin vitroで分化させる。ある特定の実施形態では、この方法は、神経堤系列細胞(例えば、SMADシグナル伝達の阻害およびWntシグナル伝達の活性化によって幹細胞から誘導された神経堤系列細胞)の集団を、1種または複数のWnt活性化因子および1種または複数のFGF活性化因子と接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、この方法は、神経堤系列細胞(例えば、SMADシグナル伝達の阻害およびWntシグナル伝達の活性化によって幹細胞から誘導された神経堤系列細胞)の集団を、1種または複数のSC分化誘導剤と接触させるステップを含む。
【0089】
ある特定の実施形態では、SCは、SC分化を増強することによって、SC前駆体からin vitroで分化させる。ある特定の実施形態では、この方法は、SC前駆体(例えば、SC分化を誘導することによって神経堤系列細胞から誘導されたSC前駆体細胞)の集団を、1種または複数のFGF活性化因子、1種または複数のSC分化誘導剤と接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、この方法は、SC前駆体(例えば、SC分化を誘導することによって神経堤系列細胞から誘導されたSC前駆体細胞)の集団を、1種または複数のSC分化増強剤と接触させるステップを含む。
【0090】
1.神経堤系列細胞への幹細胞のin vitro分化
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞への幹細胞の分化をin vitroで誘導する方法は、幹細胞(例えば、ヒト幹細胞)の集団を、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の阻害剤は、TGFβ、骨形成タンパク質(BMP)、ノーダルおよびアクチビンを含むリガンドを中和し、または受容体および下流のエフェクターを遮断することを介して、そのシグナル経路を遮断する。TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の阻害剤の非限定的な例は、その全体が参照によって組み込まれる、WO2011/149762、Chambers(2009年)およびChambers(2012年)に開示されている。ある特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤は、SB431542、その誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される小分子である。ある特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤はSB431542である。
【0091】
「SB431542」とは、CAS番号301836-41-9、C2218の分子式、および4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-2-イル]-ベンズアミドの名称を有する分子を指す。例えば、以下の構造:
【化1】

を参照のこと。
【0092】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞への幹細胞の分化をin vitroで誘導する方法は、幹細胞を、Small Mothers Against Decapentaplegic(SMAD)シグナル伝達の1種または複数の阻害剤(「SMAD阻害剤」)と接触させるステップをさらに含む。SMAD阻害剤の非限定的な例は、その全体が参照によって組み込まれる、WO2011/149762、Chambers(2009年)およびChambers(2012年)に開示されている。ある特定の実施形態では、SMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤は、LDN193189、その誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される小分子である。ある特定の実施形態では、1種または複数のSMAD阻害剤はLDN193189である。
【0093】
「LDN193189」とは、C2522の化学式を有し、以下の式
【化2】

を有する小分子DM-3189、IUPAC名4-(6-(4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)キノリンを指す。
【0094】
LDN193189は、SMADシグナル伝達阻害剤として機能することが可能である。LDN193189は、ALK2、ALK3およびALK6、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)の高度に強力な小分子阻害剤でもあり、ALK1およびALK3ファミリーのI型TGFβ受容体のメンバーのシグナル伝達を阻害し、骨形成タンパク質(BMP)BMP2、BMP4、BMP6、BMP7、およびアクチビンサイトカインシグナルを含む複数の生物シグナルの伝達、ならびに引き続いてSmad1、Smad5およびSmad8のSMADリン酸化の阻害を生じる(参照によって本明細書に組み込まれる、Yuら(2008年)Nat Med 14巻:1363~1369頁;Cunyら(2008年)Bioorg. Med. Chem. Lett. 18巻:4388~4392頁)。
【0095】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞への幹細胞の分化をin vitroで誘導する方法は、細胞を1種または複数のWnt活性化因子と接触させるステップをさらに含む。本明細書で使用される場合、リガンドに関して、用語「WNT」または「ウイングレス」とは、WNT受容体、例えば、FrizzledおよびLRPDerailed/RYK受容体ファミリー中の受容体と相互作用することが可能な一群の分泌タンパク質(即ち、ヒトではInt1(組み込み1))を指す。本明細書で使用される場合、シグナル伝達経路に関して、用語「WNT」または「ウイングレス」とは、β-カテニンで媒介されるまたは媒介されない、WntファミリーリガンドおよびWntファミリー受容体、例えば、FrizzledおよびLRPDerailed/RYK受容体から構成されるシグナル経路を指す。ある特定の実施形態では、WNTシグナル伝達経路は、β-カテニン、例えば、WNT/β-カテニンによる媒介を含む。
【0096】
ある特定の実施形態では、1種または複数のWnt活性化因子は、Wntシグナル伝達の活性化のためにグリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)を低下させる。従って、Wnt活性化因子は、GSK3β阻害剤であり得る。GSK3P阻害剤は、WNTシグナル伝達経路を活性化することが可能である。例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Cadiganら、J Cell Sci. 2006年;119巻:395~402頁;Kikuchiら、Cell Signaling. 2007年;19巻:659~671頁を参照の
こと。本明細書で使用される場合、用語「グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β阻害剤」とは、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β酵素を阻害する化合物を指す。例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるDobleら、J Cell Sci. 2003年;116巻:1175~1186頁を参照のこと。
【0097】
Wnt活性化因子またはGSK3β阻害剤の非限定的な例は、その全体が参照によって組み込まれる、WO2011/149762、Chambers(2012年)およびCalderら、J Neurosci. 2015年8月19日;35巻(33号):11462~81頁に開示されている。ある特定の実施形態では、1種または複数のWnt活性化因子は、CHIR99021、WNT3A、Wnt-1、Wnt4、Wnt5a、それらの誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される小分子である。ある特定の実施形態では、1種または複数のWnt活性化因子はCHIR99021である。
【0098】
「CHIR99021」(「アミノピリミジン」または「3-[3-(2-カルボキシエチル)-4-メチルピロール-2-メチリデニル]-2-インドリノン」としても公知)とは、以下の式
【化3】

を有する、IUPAC名6-(2-(4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)エチルアミノ)ニコチノニトリルを指す。
【0099】
CHIR99021は高度に選択的であり、関連するキナーゼおよび関連しないキナーゼのパネルに対してほぼ1000倍の選択性を示し、ヒトGSK3βに対してIC50=6.7nM、げっ歯類GSK3βホモログに対してナノモル濃度のIC50値である。
【0100】
1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞への幹細胞のin vitro分化のために、幹細胞は、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、少なくとも約17日間、少なくとも約18日間、少なくとも約19日間、少なくとも約20日間、少なくとも約21日間、少なくとも約22日間、少なくとも約23日間、少なくとも約24日間、少なくとも約25日間、少なくとも約26日間、少なくとも約27日間、少なくとも約28日間、少なくとも約29日間、または少なくとも約30日間にわたって接触され得る。ある特定の実施形態では、幹細胞は、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、最大で約3日間、最大で約4日間、最大で約5日間、最大で約6日間、最大で約7日間、最大で約8日間、最大で約9日間、最大で約10日間、最大で約11日間、最大で約12日間、最大で約13日間、最大で約14日間、最大で約15日間、最大で約16日間、最大で約17日間、最大で約18日間、最大で約19日間、最大で約20日間、最大で約21日間、最大で約22日間、最大で約23日間、最大で約24日間、最大で約25日間、最大で約26日間、最大で約27日間、最大で約28日間、最大で約29日間、または最大で約30日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、約4日間と約30日間との間、約4日間~約27日間の間、約4日間と約26日間との間、約4日間と約25日間との間、約4日間と約24日間との間、約4日間と約20日間との間、約4日間と約15日間との間、約4日間と約10日間との間、約5日間と約15日間との間、約5日間と約10日間との間、約10日間と約15日間との間、約15日間と約20日間との間、約10日間と約20日間との間、約20日間と約25日間との間、または約25日間と約30日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、10日間と約15日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、約24日間、約25日間、約26日間、約27日間、約28日間、約29日間、または約30日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、約10日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、約11日間にわたって接触される。
【0101】
1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞への幹細胞のin vitro分化のために、幹細胞は、SMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、少なくとも約17日間、少なくとも約18日間、少なくとも約19日間、少なくとも約20日間、少なくとも約21日間、少なくとも約22日間、少なくとも約23日間、少なくとも約24日間、少なくとも約25日間、少なくとも約26日間、少なくとも約27日間、少なくとも約28日間、少なくとも約29日間、または少なくとも約30日間にわたって接触され得る。ある特定の実施形態では、幹細胞は、SMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、最大で約3日間、最大で約4日間、最大で約5日間、最大で約6日間、最大で約7日間、最大で約8日間、最大で約9日間、最大で約10日間、最大で約11日間、最大で約12日間、最大で約13日間、最大で約14日間、最大で約15日間、最大で約16日間、最大で約17日間、最大で約18日間、最大で約19日間、最大で約20日間、最大で約21日間、最大で約22日間、最大で約23日間、最大で約24日間、最大で約25日間、最大で約26日間、最大で約27日間、最大で約28日間、最大で約29日間、または最大で約30日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、SMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、約4日間と約30日間との間、約4日間~約27日間の間、約4日間と約26日間との間、約4日間と約25日間との間、約4日間と約24日間との間、約4日間と約20日間との間、約4日間と約15日間との間、約4日間と約10日間との間、約5日間と約15日間との間、約5日間と約10日間との間、約10日間と約15日間との間、約15日間と約20日間との間、約10日間と約20日間との間、約20日間と約25日間との間、または約25日間と約30日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、SMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、10日間と約15日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、SMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、約24日間、約25日間、約26日間、約27日間、約28日間、約29日間、または約30日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、SMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、約10日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、SMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、約11日間にわたって接触される。
【0102】
さらに、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、少なくとも約17日間、少なくとも約18日間、少なくとも約19日間、少なくとも約20日間、少なくとも約21日間、少なくとも約22日間、少なくとも約23日間、少なくとも約24日間、少なくとも約25日間、少なくとも約26日間、少なくとも約27日間、少なくとも約28日間、または少なくとも約29日間、少なくとも約30日間にわたって接触され得る。ある特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、最大で約4日間、最大で約5日間、最大で約6日間、最大で約7日間、最大で約8日間、最大で約9日間、最大で約10日間、最大で約11日間、最大で約12日間、最大で約13日間、最大で約14日間、最大で約15日間、最大で約16日間、最大で約17日間、最大で約18日間、最大で約19日間、最大で約20日間、最大で約21日間、最大で約22日間、最大で約23日間、最大で約24日間、最大で約25日間、最大で約26日間、最大で約27日間、最大で約28日間、最大で約29日間、または最大で約30日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、約4日間と約30日間との間、約4日間~約27日間の間、約4日間と約26日間との間、約4日間と約25日間との間、約4日間と約24日間との間、約4日間と約20日間との間、約4日間と約15日間との間、約4日間と約10日間との間、約5日間と約15日間との間、約5日間と約10日間との間、約10日間と約15日間との間、約15日間と約20日間との間、約10日間と約20日間との間、約20日間と約25日間との間、または約25日間と約30日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、5日間と約15日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、約24日間、約25日間、約26日間、約27日間、約28日間、約29日間、または約30日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、約11日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、約10日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、約9日間にわたって接触される。
【0103】
ある特定の実施形態では、幹細胞は、約1nM~約300nM、約5nM~約250nM、約10nM~約200nM、約10nM~約50nM、約50nM~約150nM、約80nM~約120nM、約90nM~約110nM、約50nM~約100nM、約100nM~約150nM、約150nM~約200nM、約200nM~約250nM、または約250nM~約300nMの濃度のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、約80nM~約120nMの濃度のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、約100nMの濃度のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、上記濃度のいずれか1つのTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、毎日、1日おきに、または2日毎に接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、約100nMの濃度のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、毎日接触される。
【0104】
ある特定の実施形態では、幹細胞は、約1μM~100μM、約1μM~20μM、約1μM~15μM、約1μM~10μM、約1μM~5μM、約5μM~10μM、約5μM~15μM、約15μM~20μM、約20μM~30μM、約30μM~40μM、約40μM~50μM、約50μM~60μM、約60μM~70μM、約70μM~80μM、約80μM~90μM、または約90μM~100μMの濃度のSMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、約5μM~15μMの濃度のSMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、約10μMの濃度のSMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、上記濃度のいずれか1つのSMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、毎日、1日おきに、または2日毎に接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、約10μMの濃度のSMADシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と、毎日接触される。
【0105】
ある特定の実施形態では、細胞は、約1μM~100μM、約1μM~20μM、約1μM~15μM、約1μM~10μM、約1μM~5μM、約5μM~10μM、約5μM~15μM、約15μM~20μM、約20μM~30μM、約30μM~40μM、約40μM~50μM、約50μM~60μM、約60μM~70μM、約70μM~80μM、約80μM~90μM、または約90μM~100μMの濃度のWntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、約1μM~5μMの濃度のWntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、約3μMの濃度のWntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、上記濃度のいずれか1つのWntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、毎日、1日おきに、または2日毎に接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、約3μMの濃度のWntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、毎日接触される。
【0106】
2.シュワン細胞前駆体への神経堤系列細胞のin vitro分化
ある特定の実施形態では、神経堤系列細胞は、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞、例えば、幹細胞の集団を1種または複数のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達および任意選択で1種または複数のSMAD阻害剤と接触させ、それらの細胞を1種または複数のWnt活性化因子とさらに接触させた後の、分化した細胞)を、本明細書に記載される1種または複数のWnt活性化因子、およびFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子(「FGF活性化因子」)と接触させて、SC前駆体、例えば、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する細胞の集団を産生するステップを含む方法によって、シュワン細胞前駆体へと分化させる。ある特定の実施形態では、この方法は、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞、例えば、幹細胞の集団を1種または複数のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達および任意選択で1種または複数のSMAD阻害剤と接触させ、それらの細胞を1種または複数のWnt活性化因子とさらに接触させた後の、分化した細胞)を、シュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子(「SC分化誘導剤」)と接触させて、SC前駆体、例えば、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する細胞の集団を産生するステップを含む。
【0107】
SC分化誘導剤の非限定的な例には、ニューレグリン、LIF、CNTF、フォルスコリン、TGFβおよびFBSが含まれる。ある特定の実施形態では、1種または複数のSC分化誘導剤はニューレグリン1(NRG1)である。
【0108】
FGFシグナル伝達の活性化因子の非限定的な例には、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF7、FGF8、FGF10、FGF18、それらの誘導体、およびそれらの混合物が含まれる。ある特定の実施形態では、1種または複数のFGF活性化因子はFGF2である。
【0109】
ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、1種または複数のWnt活性化因子および1種または複数のFGF活性化因子、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と同時に接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、1種または複数のWnt活性化因子、1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のSC分化誘導剤と同時に接触される。例えば、1種または複数のWnt活性化因子および1種または複数のFGF活性化因子、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤は全て、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)を含む細胞培養培地中に存在する。ある特定の実施形態では、1種または複数のWnt活性化因子、1種または複数のFGF活性化因子、および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤は、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞、例えば、幹細胞の集団を1種または複数のTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達および任意選択で1種または複数のSMAD阻害剤と接触させ、それらの細胞を1種または複数のWnt活性化因子とさらに接触させた後の、分化した細胞)を含む細胞培養培地に、毎日(または1日おきに、もしくは2日毎に)一緒に添加される。
【0110】
1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞は、SC前駆体を産生するために、1種または複数のWnt活性化因子、1種または複数のFGF活性化因子、および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、少なくとも約17日間、少なくとも約18日間、少なくとも約19日間、または少なくとも約20日間にわたって接触され得る。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞は、SC前駆体を産生するために、1種または複数のWnt活性化因子、1種または複数のFGF活性化因子、および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と、少なくとも約10日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞は、SC前駆体を産生するために、1種または複数のWnt活性化因子、1種または複数のFGF活性化因子、および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と、最大で約15日間、最大で約16日間、最大で約17日間、最大で約18日間、最大で約19日間、最大で約20日間、最大で約21日間、最大で約22日間、最大で約23日間、最大で約24日間、最大で約25日間、最大で約26日間、最大で約27日間、最大で約28日間、最大で約29日間、または最大で約30日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞は、SC前駆体を産生するために、1種または複数のWnt活性化因子、1種または複数のFGF活性化因子、および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と、約3日間と約5日間との間、約5日間と約10日間との間、約10日間と約15日間との間、約15日間と約20日間との間、約20日間と約25日間との間、または約25日間と約30日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞は、SC前駆体を産生するために、1種または複数のWnt活性化因子、1種または複数のFGF活性化因子、および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と、約10日間と約15日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞は、SC前駆体を産生するために、1種または複数のWnt活性化因子、1種または複数のFGF活性化因子、および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、約24日間、約25日間、約26日間、約27日間、約28日間、約29日間、または約30日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞は、SC前駆体を産生するために、1種または複数のWnt活性化因子、1種または複数のFGF活性化因子、および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と、約14日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞は、SC前駆体を産生するために、1種または複数のWnt活性化因子、1種または複数のFGF活性化因子、および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と、約15日間にわたって接触される。
【0111】
ある特定の実施形態では、細胞は、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞の集団を産生するために、1種または複数のWnt活性化因子と接触され、神経堤系列細胞集団は、1種または複数のWnt活性化因子とさらに接触される。従って、細胞は、1種または複数のWnt活性化因子と、合計で少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、少なくとも約17日間、少なくとも約18日間、少なくとも約19日間、少なくとも約20日間、少なくとも約21日間、少なくとも約22日間、少なくとも約23日間、少なくとも約24日間、少なくとも約25日間、少なくとも約26日間、少なくとも約27日間、少なくとも約28日間、または少なくとも約29日間、少なくとも約30日間、少なくとも約31日間、少なくとも約32日間、少なくとも約33日間、少なくとも約34日間、少なくとも約35日間、少なくとも約36日間、少なくとも約37日間、少なくとも約38日間、少なくとも約39日間、または少なくとも約40日間にわたって接触され得る。ある特定の実施形態では、細胞は、1種または複数のWnt活性化因子と、合計で最大で約15日間、最大で約16日間、最大で約17日間、最大で約18日間、最大で約19日間、最大で約20日間、最大で約21日間、最大で約22日間、最大で約23日間、最大で約24日間、最大で約25日間、最大で約26日間、最大で約27日間、最大で約28日間、最大で約29日間、最大で約30日間、最大で約31日間、最大で約32日間、最大で約33日間、最大で約34日間、最大で約35日間、最大で約36日間、最大で約37日間、最大で約38日間、最大で約39日間、最大で約40日間、最大で約41日間、最大で約42日間、最大で約43日間、最大で約44日間、最大で約45日間、最大で約46日間、最大で約47日間、最大で約48日間、最大で約49日間、最大で約50日間、最大で約51日間、最大で約52日間、最大で約53日間、最大で約54日間、最大で約55日間、最大で約56日間、最大で約57日間、最大で約58日間、最大で約59日間、または最大で約60日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、1種または複数のWnt活性化因子と、約14日間と約20日間との間、約20日間と約25日間との間、約25日間と約30日間との間、約30日間と約35日間との間、約35日間と約40日間との間、約40日間と約45日間との間、約45日間と約50日間との間、約50日間と約55日間との間、または約55日間と約60日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、1種または複数のWnt活性化因子と、合計で20日間と約30日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、合計で20日間と約25日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、1種または複数のWnt活性化因子と、合計で25日間と約30日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、合計で約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、約24日間、約25日間、約26日間、約27日間、約28日間、約29日間、約30日間、約31日間、約32日間、約33日間、約34日間、約35日間、約36日間、約37日間、約38日間、約39日間、約40日間、約41日間、約42日間、約43日間、約44日間、約45日間、約46日間、約47日間、約48日間、約49日間、約50日間、約51日間、約52日間、約53日間、約54日間、約55日間、約56日間、約57日間、約58日間、約59日間または約60日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、1種または複数のWnt活性化因子と、合計で約26日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、合計で約25日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、1種または複数のWnt活性化因子と、合計で約24日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、細胞は、1種または複数のWnt活性化因子と、合計で約23日間にわたって接触される。
【0112】
ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約1nM~100nM、約1nM~20nM、約1nM~15nM、約1nM~10nM、約1nM~5nM、約5nM~10nM、約5nM~15nM、約15nM~20nM、約20nM~30nM、約30nM~40nM、約40nM~50nM、約50nM~60nM、約60nM~70nM、約70nM~80nM、約80nM~90nM、または約90nM~100nMの濃度のFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約5nM~15nMの濃度のFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約10nMの濃度のFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、上記濃度のいずれか1つのFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、毎日、1日おきに、または2日毎に接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約10nMの濃度のFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、毎日接触される。
【0113】
ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約1ng/ml~100ng/ml、約1ng/ml~20ng/ml、約1ng/ml~15ng/ml、約1ng/ml~10ng/ml、約1ng/ml~5ng/ml、約5ng/ml~10ng/ml、約5ng/ml~15ng/ml、約15ng/ml~25ng/ml、約15ng/ml~20ng/ml、約20ng/ml~30ng/ml、約30ng/ml~40ng/ml、約40ng/ml~50ng/ml、約50ng/ml~60ng/ml、約60ng/ml~70ng/ml、約70ng/ml~80ng/ml、約80ng/ml~90ng/ml、または約90ng/ml~100ng/mlの濃度のシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約5ng/ml~15ng/mlの濃度のシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約10ng/mlの濃度のシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、上記濃度のいずれか1つのシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と、毎日、1日おきに、または2日毎に接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約10ng/mlの濃度のシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と、毎日接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約10ng/mlの濃度のシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と、毎日接触される。
【0114】
ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約1μM~100μM、約1μM~20μM、約1μM~15μM、約1μM~10μM、約1μM~5μM、約5μM~10μM、約5μM~15μM、約15μM~20μM、約20μM~30μM、約30μM~40μM、約40μM~50μM、約50μM~60μM、約60μM~70μM、約70μM~80μM、約80μM~90μM、または約90μM~100μMの濃度のWntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約1μM~5μMの濃度のWntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、SC前駆体を産生するために、約3μMの濃度のWntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、上記濃度のいずれか1つのWntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、毎日、1日おきに、または2日毎に接触される。ある特定の実施形態では、細胞(例えば、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞)は、約3μMの濃度のWntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、毎日接触される。
【0115】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞を少なくとも約50%含む細胞集団は、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する細胞へと分化させ、細胞のこの集団は、1種のWnt活性化因子(例えば、CHIR99021、例えば、3μM CHIR99021)、1種のFGF活性化因子(例えば、FGF2、例えば、10nM FGF2)および1種のSC分化誘導剤(例えば、NRG1、例えば、10ng/ml NRG1)と、約15日間(例えば、約14日間または約15日間)にわたって接触される。
【0116】
ある特定の実施形態では、幹細胞は、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する細胞へと分化させ、この細胞は、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種の阻害剤(例えば、SB431542、例えば、10μM SB431542)および任意選択で1種のSMAD阻害剤(例えば、LDN193189、例えば、100nM LDN193189)と約10日間(例えば、約10日間または約11日間)にわたって;1種のWnt活性化因子(例えば、CHIR99021、例えば、3μM CHIR99021)と約23日間(例えば、約23日間または約24日間)にわたって;ならびに1種のFGF活性化因子(例えば、FGF2、例えば、10nM FGF2)および1種のSC分化誘導剤(例えば、NRG1、例えば、10ng/ml NRG1)と約15日間(例えば、約14または15日間)にわたって接触される。
【0117】
ある特定の実施形態では、細胞は、ソニックヘッジホッグ(SHH)シグナル伝達の活性化因子には曝露されない。SHHシグナル伝達の活性化因子の非限定的な例には、ソニックヘッジホッグ(SHH)、C25II、スムーズンド(SMO)受容体小分子アゴニスト(例えば、プルモルファミン(purmorphamine))、それらの誘導体、およびそれら
の混合物が含まれる。ある特定の実施形態では、細胞は、SHHには曝露されない。
【0118】
3.シュワン細胞へのシュワン細胞前駆体のin vitro誘導
シュワン細胞前駆体は、シュワン細胞へとin vitroでさらに誘導され得る。分化したSC前駆体は、SC前駆体のシュワン細胞の集団への成熟化を支持する条件に供され得る。シュワン細胞は、ミエリン形成性シュワン細胞または非ミエリン形成性シュワン細胞であり得る。
【0119】
ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体(SC前駆体)は、SCの集団を産生するために、本明細書に記載される1種または複数のFGF活性化因子、本明細書に記載される1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤と接触される。ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体(SC前駆体)は、シュワン細胞分化を増強する1種または複数の分子(「SC分化増強剤」と呼ばれる)と接触される。SC分化増強剤の非限定的な例には、ニューレグリン、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、フォルスコリン、LIFおよびCNTFが含まれる。ある特定の実施形態では、ニューレグリンはNRG1である。ある特定の実施形態では、1種または複数のSC分化増強剤はcAMPである。ある特定の実施形態では、シュワン細胞前駆体(SC前駆体)は、SCの集団を産生するために、1種のFGF活性化因子および2種のシュワン細胞分化誘導剤と接触される。ある特定の実施形態では、2種のシュワン細胞分化誘導剤は、cAMPおよびNRG1である。
【0120】
ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、細胞培養培地中の1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤と接触される。ある特定の実施形態では、細胞培養培地は、L-グルタミン(例えば、Gibco製、25030-164)、N2(例えば、Stem Cell Technologies製、07156)およびB27(例えば、Life Technologies製、17504044)を補充したNB培地である。
【0121】
ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、約1ng/ml~100ng/ml、約1ng/ml~20ng/ml、約1ng/ml~15ng/ml、約1ng/ml~10ng/ml、約1ng/ml~5ng/ml、約5ng/ml~10ng/ml、約5ng/ml~15ng/ml、約15ng/ml~25ng/ml、約15ng/ml~20ng/ml、約20ng/ml~30ng/ml、約30ng/ml~40ng/ml、約40ng/ml~50ng/ml、約50ng/ml~60ng/ml、約60ng/ml~70ng/ml、約70ng/ml~80ng/ml、約80ng/ml~90ng/ml、または約90ng/ml~100ng/mlの濃度のシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、約15ng/ml~25ng/mlの濃度のシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、約20ng/mlの濃度のシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、上記濃度のいずれか1つのシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と、毎日、1日おきに、または2日毎に接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、約10ng/mlの濃度のシュワン細胞分化を誘導する1種または複数の分子と、毎日接触される。
【0122】
ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤と、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、または少なくとも約15日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤と、約3日間と約40日間との間、約3日間と約35日間との間、約3日間と約30日間との間、約3日間と約25日間との間、約3日間と約20日間との間、約3日間と約15日間との間、約10日間と約40日間との間、約10日間と約20日間との間、約20日間と約40日間との間、約20日間と約30日間との間、または約30日間と約40日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤と、約3日間と約15日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤と、約30日間と約40日間との間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤と、約10日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤と、約11日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤と、約35日間にわたって接触される。
【0123】
ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、約1nM~100nM、約1nM~20nM、約1nM~15nM、約1nM~10nM、約1nM~5nM、約5nM~10nM、約5nM~15nM、約15nM~20nM、約20nM~30nM、約30nM~40nM、約40nM~50nM、約50nM~60nM、約60nM~70nM、約70nM~80nM、約80nM~90nM、または約90nM~100nMの濃度のFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SC前駆体を産生するために、約5nM~15nMの濃度のFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、SCを産生するために、約10nMの濃度のFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、上記濃度のいずれか1つのFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、毎日、1日おきに、または2日毎に接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、約10nMの濃度のFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と、毎日接触される。
【0124】
ある特定の実施形態では、SC前駆体からSCへの成熟化を支持する条件は、分化したSC前駆体細胞を3Dスフェロイドへと凝集させること、ならびに前記3Dスフェロイドを、1種または複数のFGF活性化因子および1種または複数のシュワン細胞分化誘導剤、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤とさらに接触させることを含む。ある特定の実施形態では、培養培地は、懸濁培養培地である。
【0125】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する細胞を少なくとも約50%含む細胞集団は、1つまたは複数のシュワン細胞マーカーを発現する細胞へと分化させ、細胞のこの集団は、1種のFGF活性化因子(例えば、FGF2、例えば、10nM FGF2)、2種のSC分化誘導剤(例えば、NRG1(例えば、10ng/ml NRG1)およびcAMP(例えば、100mM cAMP))と、少なくとも約10日間にわたって接触される。
【0126】
ある特定の実施形態では、細胞は、ソニックヘッジホッグ(SHH)シグナル伝達の活性化因子には曝露されない。SHHシグナル伝達の活性化因子の非限定的な例には、ソニックヘッジホッグ(SHH)、C25II、スムーズンド(SMO)受容体小分子アゴニスト(例えば、プルモルファミン)、それらの誘導体、およびそれらの混合物が含まれる。ある特定の実施形態では、細胞は、SHHには曝露されない。
【0127】
4.細胞培養培地
ある特定の実施形態では、上記阻害剤、活性化因子、誘導剤および増強剤は、細胞、例えば、幹細胞、1つもしくは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞、1つもしくは複数のSC前駆体マーカーを発現する細胞、1つもしくは複数のSCマーカーを発現する細胞、またはそれらの組合せを含む細胞培養培地に添加される。適切な細胞培養培地には、Knockout(登録商標)Serum Replacement(「KSR」)培地、N2培地、Essential 8(登録商標)/Essential 6(登録商標)(「E8/E6」)培地およびNeurobasal(NB)培地(例えば、N2およびB-27(登録商標)Supplementを補充したNB培地)が含まれるがこれらに限定されない。KSR培地、N2培地、E8/E6培地およびNB培地は、市販されている。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞への幹細胞のin vitro分化のための培地は、KSR培地、N2培地、およびそれらの組合せからなる群から選択される培地である。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞への幹細胞のin vitro分化のための培地は、E8/E6培地である。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のSC前駆体マーカーを発現する細胞への、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞のin vitro誘導のための培地は、NB培地である。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のSCマーカーを発現する細胞への、1つまたは複数のSC前駆体マーカーを発現する細胞のin vitro誘導のための培地は、NB培地である。
【0128】
KSR培地は、培養物中で未分化hESC細胞を成長させ維持するために最適化された、規定された無血清製剤である。KSR培地の構成成分は、WO2011/149762に開示されている。ある特定の実施形態では、KSR培地は、Knockout DMEM、Knockout Serum Replacement、L-グルタミン、Pen/Strep、MEMおよびβ-メルカプトエタノール(13-mercaptoethanol)を含む。ある特定の実施形態では、1リットルのKSR培地は、820mLのKnockout DMEM、150mLのKnockout Serum Replacement、10mLの200mM L-グルタミン、10mLのPen/Strep、10mLの10mM MEM、および55μMのβ-メルカプトエタノールを含み得る。
【0129】
E8/E6培地は、ヒト多能性幹細胞の成長および拡大増殖を支持するフィーダーフリーかつゼノフリーの培地である。E8/E6培地は、体細胞初期化を支持することが証明されている。さらに、E8/E6培地は、PSCの培養のためのカスタム培地の製剤化のための基礎として使用され得る。一例のE8/E6培地は、その全体が参照によって組み込まれるChenら、Nat Methods. 2011年5月;8巻(5号):424~9頁に記載
されている。一例のE8/E6培地は、その全体が参照によって組み込まれるWO15/077648に開示されている。ある特定の実施形態では、E8/E6細胞培養培地は、DMEM/F12、アスコルビン酸、セレン、インスリン、NaHCO、トランスフェリン、FGF2およびTGFβを含む。E8/E6培地は、E8/E6培地が活性なBMPもWnt成分も含まないという点で、KSR培地とは異なる。従って、ある特定の実施形態では、幹細胞を培養するためにE8/E6培地が使用される場合、1種または複数のSMAD阻害剤(例えば、BMPを阻害するもの)がE8/E6培地に添加される必要はない。
【0130】
N2 supplementは、培養物中での未分化神経幹および前駆細胞の拡大増殖のために使用される、化学的に規定された動物フリーのサプリメントである。N2 Supplementは、DMEM/F12培地との使用のために意図される。N2培地の構成成分は、WO2011/149762に開示されている。ある特定の実施形態では、N2培地は、グルコース、炭酸水素ナトリウム、プトレシン、プロゲステロン、亜セレン酸ナトリウム、トランスフェリンおよびインスリンを補充したDMEM/F12培地を含む。ある特定の実施形態では、1リットルのN2培地は、DMEM/F12粉末、1.55gのグルコース、2.00gの炭酸水素ナトリウム、プトレシン(100mLの蒸留水中に溶解された1.61gの100uLアリコート)、プロゲステロン(100mLの100%エタノール中に溶解された0.032gの20uLアリコート)、亜セレン酸ナトリウム(蒸留水中0.5mM溶液の60uLアリコート)、100mgのトランスフェリン、および10mLの5mM NaOH中25mgのインスリンと共に、985mlの蒸留HOを含む。
【0131】
ある特定の実施形態では、幹細胞は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触の約1、約2、約3、約4、または約5、約6、約7、または約8日後から、幹細胞とSC分化誘導剤およびFGF活性化因子との接触まで、漸増量のN2培地で漸進的に置き換えられるKSR培地中で最初に培養される。ある特定の実施形態では、幹細胞は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触後4日目~10日目に、漸増量のN2培地で漸進的に置き換えられるKSR培地中で最初に培養される。
【0132】
本明細書に開示される幹細胞の集団を培養するために使用される細胞培養培地は、細胞と接触される阻害剤(単数または複数)、活性化因子(単数または複数)、誘導剤(単数または複数)および増強剤(単数または複数)を決定するだけでなく(例えば、KSR培地については、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤および1種または複数のSMAD阻害剤が必要とされる;E8/E6培地については、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤のみが必要とされる)、阻害剤(単数または複数)、活性化因子(単数または複数)、誘導剤(単数または複数)および増強剤(単数または複数)を細胞培養培地に添加する順序も決定する。
【0133】
ある特定の実施形態では、細胞と1種または複数のWnt活性化因子との最初の接触は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約4日以内(例えば、同時に(同日に)、または約1日後と約4日後との間、例えば、約1日後、約2日後、約3日後もしくは約4日後)である。
【0134】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞への幹細胞のin vitro分化のための細胞培養培地は、KSR培地であり、細胞と1種または複数のWnt活性化因子との最初の接触は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約2日後である。ある特定の実施形態では、幹細胞と1種または複数のSMAD阻害剤との最初の接触は、例えば、SMAD阻害剤(単数または複数)およびTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の阻害剤(単数または複数)を、幹細胞を含む細胞培養培地に同日に最初に添加することによって、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触と同日である。
【0135】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の神経堤系列マーカーを発現する細胞への幹細胞のin vitro分化のための細胞培養培地は、E8/E6培地であり、細胞と1種または複数のWnt活性化因子との最初の接触は、例えば、Wnt活性化因子(単数または複数)およびTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の阻害剤(単数または複数)を、幹細胞を含む細胞培養培地に同日に最初に添加することによって、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触と同日である。ある特定の実施形態では、BMP活性剤がE8/E6培地に添加される。ある特定の実施形態では、BMP活性剤は、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、または約10日間の培養後に、培地から取り出される。ある特定の実施形態では、BMP活性剤は、約3日間の培養後に培地から取り出される。ある特定の実施形態では、BMP活性剤は、約0.5ng/mLと約20ng/mLとの間、または約1ng/mlと約15ng/mlとの間、または約2ng/mlと約10ng/mlとの間、または約3ng/mlと約5ng/mlとの間の濃度で、培養培地中に存在する。ある特定の実施形態では、BMP活性剤は、約5ng/mlの濃度で培養培地中に存在する。BMP活性剤の非限定的な例には、BMP1、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP10、BMP11、BMP15、それらの誘導体、およびそれらの混合物が含まれる。
【0136】
ある特定の実施形態では、1種または複数のFGF活性化因子および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤の細胞との最初の接触は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約20日以内である。ある特定の実施形態では、1種または複数のFGF活性化因子および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤の細胞との最初の接触は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から少なくとも約5日後である。ある特定の実施形態では、1種または複数のFGF活性化因子および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤の細胞との最初の接触は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約5日後と約20日後との間(例えば、約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、約10日後、約11日後、約12日後、約13日後、約14日後、約15日後、約16日後、約17日後、約18日後、約19日後、または約20日後)である。ある特定の実施形態では、1種または複数のFGF活性化因子および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤の細胞との最初の接触は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約10日後である。ある特定の実施形態では、1種または複数のFGF活性化因子および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤の細胞との最初の接触は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤との最初の接触から約11日後である。
【0137】
ある特定の実施形態では、Wnt活性化因子(単数または複数)、FGF活性化因子(単数または複数)および任意選択でSC分化誘導剤(単数または複数)は、SC前駆体を産生するために、L-グルタミン(例えば、Gibco、25030-164)、N2(例えば、Stem Cell Technologies、07156)およびB27(例えば、Life Technologies、17504044)を補充したNB培地に、(毎日、1日おきに、または2日毎に)添加される。
【0138】
ある特定の実施形態では、SC分化誘導剤(単数または複数)、FGF活性化因子(単数または複数)および任意選択でSC分化増強剤(単数または複数)は、SC前駆体を産生するために、L-グルタミン(例えば、Gibco、25030-164)、N2(例えば、Stem Cell Technologies、07156)およびB27(例えば、Life Technologies、17504044)を補充したNB培地に、(毎日、1日おきに、または2日毎に)添加される。
【0139】
ある特定の実施形態では、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の阻害剤(単数または複数)、SMAD阻害剤(単数または複数)、Wnt活性化因子(単数または複数)、SC分化誘導剤(単数または複数)、FGF活性化因子(単数または複数)、および任意選択でSC分化増強剤(単数または複数)は、幹細胞を含む細胞培養培地に、毎日(または1日おきに、もしくは2日毎に)添加される。
【0140】
ある特定の実施形態では、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤および1種または複数のSMAD阻害剤との最初の接触は、0日目であり、細胞と1種または複数のWnt活性化因子との最初の接触は、2日目であり、細胞と1種または複数のFGF活性化因子および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤との最初の接触は、11日目であり、細胞と1種または複数のSC分化誘導剤および1種または複数のFGF活性化因子、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤との最初の接触は、25日目である。ある特定の実施形態では、0日目~10日目についての細胞培養培地は、KSR培地、N2培地、またはそれらの混合物である。ある特定の実施形態では、0日目~3日目についての細胞培養培地は、KSR培地である。ある特定の実施形態では、4日目~10日目についての細胞培養培地は、KSR培地およびN2培地の組合せである。ある特定の実施形態では、10日目についての細胞培養培地は、N2培地である。ある特定の実施形態では、11日目およびそれ以降についての細胞培養培地は、L-グルタミン、N2およびB27を補充したNB培地である。
【0141】
ある特定の実施形態では、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤および1種または複数のWnt活性化因子との最初の接触は、0日目であり、細胞と1種または複数のFGF活性化因子および任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤との最初の接触は、11日目(または1日おきに、もしくは2日毎に)であり、細胞と1種または複数のSC分化誘導剤および1種または複数のFGF活性化因子、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化増強剤との最初の接触は、25日目である。ある特定の実施形態では、0日目~10日目についての細胞培養培地は、E8/E6培地、N2培地、またはそれらの混合物である。ある特定の実施形態では、11日目およびそれ以降についての細胞培養培地は、L-グルタミン、N2およびB27を補充したNB培地である。
【0142】
ある特定の実施形態では、細胞は、SC前駆体を産生するために、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤および1種または複数のSMAD阻害剤と約10日間にわたって;1種または複数のWnt活性化因子と約23日間にわたって;および1種または複数のFGF活性化因子と約14日間にわたって、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と約14日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、1種または複数のSC分化誘導剤、1種または複数のFGF活性化因子および任意選択で1種または複数のSC分化増強剤と少なくとも8日間(例えば、10日間または35日間)にわたって接触される。
【0143】
ある特定の実施形態では、細胞は、SC前駆体を産生するために、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の1種または複数の阻害剤と約10日間にわたって;Wntシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と約25日間にわたって;およびFGFシグナル伝達の1種または複数の活性化因子と約14日間にわたって、ならびに任意選択で1種または複数のSC分化誘導剤と約14日間にわたって接触される。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、SCを産生するために、1種または複数のSC分化誘導剤、1種または複数のFGF活性化因子および任意選択で1種または複数のSC分化増強剤と少なくとも8日間(例えば、10日間または35日間)にわたって接触される。
【0144】
シュワン細胞(SC)前駆体(例えば、1つまたは複数の初期シュワン細胞マーカーを発現する細胞)は、TGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の阻害剤(単数または複数)との最初の接触から約35日未満、約34日未満、約33日未満、約32日未満、約31日未満、約30日未満、約29日未満、約28日未満、約27日未満、約26日未満、約25日未満、約24日未満、約23日未満、約22日未満、約21日未満、または約20日未満で、幹細胞から分化し得る。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、幹細胞とTGFβ/アクチビン-ノーダルシグナル伝達の阻害剤(単数または複数)との最初の接触から約25日後またはそれ以降に、幹細胞から分化する。
【0145】
5.マーカーおよびレポーター
分化したSC前駆体は、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーを発現する。シュワン細胞前駆体マーカーの非限定的な例には、SOX10、GAP43、BLBP、ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)、Dhh、P75NTR、CD49D、TFAP2、CDH19、CD44、ERBB3、POU3F1、およびグリア線維酸性タンパク質(GFAP)、CALCB、GRP116、TSPYL5、ITPKA、SLC17A6、SYPL2、LOC100128252、ANGPTL7、LOC728978、ZNF502、SLC16A6、LPL、SLC30A2、SLC10A4、ならびに表1~4に列挙される遺伝子が含まれる。
【0146】
SCは、1つまたは複数のシュワン細胞マーカーを発現する。シュワン細胞マーカーの非限定的な例には、ロイシンリッチリピート膜貫通ニューロン4(LRRTM4)、カドヘリン1(CDH1)、脂肪酸結合タンパク質7(FABP7)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、UNCB5、スクレロスチンドメイン含有1(SOSTDC1)、オリゴデンドロサイト転写因子1(OLIG1)、プラスミノーゲン活性化因子(PLAT)、カリウム内向き整流性チャネルサブファミリーJメンバー10(KCNJ10)、ソニックヘッジホッグ(SHH)、ネトリン1(NTN1)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、erb-b2受容体チロシンキナーゼ3(ERBB3)、成長関連タンパク質43(GAP43)、SOX10、S100、GFAP、POU3F1、PMP22、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、アクアポリン4(AQP4)、NGFR、NFATC4、MOG、IFNG、MAL、NTF3、TGFB1、MPZ、CD9、CD49D、CD49E、CD44、CD98、およびCD81、TYRP1、ENTHD1、NT5E、HTR2B、NOV、IL8、SLC16A6、CDKN2A、PLP2、S100A6、AQP9、CDH19、ならびに表1~4に列挙される遺伝子が含まれる。
【0147】
分化したSC前駆体およびさらに成熟したSCは、1つまたは複数のレポーターをさらに発現し得る。レポーターの非限定的な例には、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(EBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1)、シアン蛍光タンパク質(ECFP、Cerulean、CyPet、mTurquoise2)および黄色蛍光タンパク質誘導体(YFP、Citrine、Venus、YPet、EYFP))、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)、酵素(例えば、オキシダーゼおよびペルオキシダーゼ);および抗原性分子が含まれる。本明細書で使用される場合、用語「レポーター遺伝子」または「レポーター構築物」とは、容易に検出可能なまたは容易にアッセイ可能なタンパク質、例えば、有色タンパク質、蛍光タンパク質、例えばGFP、または酵素、例えばベータ-ガラクトシダーゼ(lacZ遺伝子)をコードする核酸を含む遺伝子構築物を指す。
【0148】
分化したSC前駆体およびさらに成熟したSCは、例えば、細胞培養培地中での分化後に精製され得る。本明細書で使用される場合、用語「精製された」、「精製する」、「精製」、「単離された」、「単離する」および「単離」とは、試料からの、少なくとも1つの夾雑物の量における低減を指す。例えば、所望の細胞型は、望ましくない細胞型の量における対応する低減により、少なくとも約10%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、および少なくとも約90%>精製される。用語「精製する」とは、試料からのある特定の細胞(例えば、望ましくない細胞)の除去を指し得る。望ましくない細胞の除去または選択は、試料中の所望のSC前駆体またはSCのパーセントにおける増加を生じる。ある特定の実施形態では、SC前駆体は、混合細胞集団を、少なくとも1つのシュワン細胞前駆体マーカーを発現する細胞へと選別することによって精製される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーは、SOX10、GAP43、BLBP、MPZ、Dhh、P75NTR、CD49D、TFAP2、CDH19、CD44、ERBB3、POU3F1、GFAP、CALCB、GRP116、TSPYL5、ITPKA、SLC17A6、SYPL2、LOC100128252、ANGPTL7、LOC728978、ZNF502、SLC16A6、LPL、SLC30A2、およびSLC10A4からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーは、表1~4に列挙される遺伝子から選択される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーは、表1に列挙される遺伝子から選択される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のシュワン細胞前駆体マーカーは、CALCB、GRP116、TSPYL5、ITPKA、SLC17A6、SYPL2、LOC100128252、ANGPTL7、LOC728978およびZNF502からなる群から選択される。
【0149】
本開示の主題は、本明細書に記載されるin vitro方法によって産生されるSC前駆体およびSCの集団、ならびにかかる細胞を含む組成物もまた提供する。
【0150】
3.治療的化合物をスクリーニングする方法
幹細胞由来SC前駆体または成熟したSCは、神経障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)に寄与する細胞型特異的機構を決定するためのアプローチであり得る。このアプローチでは、hESCから誘導された個々の細胞型は、糖尿病において生じるような高グルコース濃度に曝露され得る。従って、これらの処置の代謝的および機能的結果は、各々の潜在的な寄与する細胞型において評価され得る。
【0151】
本明細書に開示される幹細胞由来SC前駆体または成熟したSCは、シュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)をモデル化するために使用され得、シュワン細胞関連障害における疾患関連欠損を克服できる候補化合物についてスクリーニングするためのプラットフォームとして機能し得る。シュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)を軽減する候補化合物の能力は、シュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)を引き起こす高グルコース毒性によって引き起こされる生理学的または細胞性欠損をレスキューする候補化合物の能力をアッセイすることによって決定され得る。STZ処置した糖尿病マウスにおける神経障害関連の組織学的および挙動上の欠陥をレスキューすることにおけるブプロピオンの本発明者らによる同定は、薬物発見における本明細書に開示される幹細胞由来SC前駆体または成熟したSCの使用についての概念実証を示す。実施例1を参照のこと。
【0152】
本開示の主題は、PNSおよび/またはCNSの再生のため、ミエリン損傷を予防および/または処置もしくは修復するため、ならびに/あるいはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)を予防および/または処置するために適切な化合物をスクリーニングするin vitro方法を提供する。ある特定の実施形態では、この方法は、本明細書に開示されるSC前駆体または成熟したSCにおいて高血糖誘導性の細胞毒性(例えば、高グルコース誘導性の毒性)をレスキューすること、例えば、高グルコース曝露後のかかる細胞において、グルコースレベルを低減させること、ソルビトールレベルを低減させること、および/または細胞生存度を低減させることが可能な化合物を同定するステップを含む。
【0153】
ある特定の実施形態では、この方法は、(a)本明細書に開示される幹細胞のin vitro分化から得られたSC前駆体および/または成熟したSCの集団を、少なくとも約10mMのグルコース濃度に曝露するステップ、ならびに(b)細胞集団を、グルコース曝露後に試験化合物と接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、この方法は、(c)前記試験化合物による処理なしの細胞集団の第1のソルビトールレベル、第1のグルコースレベルおよび第1の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップ、ならびに(d)前記試験化合物で処理した細胞集団の第2のソルビトールレベル、第2のグルコースレベルおよび第2の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップを含む。さらに、この方法は、(e)(i)第2のソルビトールレベルを第1のソルビトールレベルと、(ii)第2のグルコースレベルを第1のグルコースレベルと、および/または(iii)第2の細胞生存度を第1の細胞生存度と比較するステップを含む。
【0154】
この方法は、(f)(i)第2のソルビトールレベルが第1のソルビトールレベルよりも低い場合、(ii)第2のグルコースレベルが第1のグルコースレベルよりも低い場合、および/または(iii)第2の細胞生存度が第1の細胞生存度よりも低い場合に、PNSおよび/またはCNSの再生のため、ミエリン損傷を予防および/または処置もしくは修復するため、ならびに/あるいはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)を予防および/または処置するために適切な試験化合物を同定するステップをさらに含む。
【0155】
ある特定の実施形態では、グルコース濃度は、少なくとも約10mM、例えば、10mMと100mMとの間である。ある特定の実施形態では、グルコース濃度は約30mMである。ある特定の実施形態では、測定(第1および第2のソルビトールレベル、グルコースレベルおよび細胞生存度の測定を含む)は、最初のグルコース曝露の少なくとも約12時間後、少なくとも約24時間(1日)後、約48時間(2日)後、約72時間(3日)後、約4日後、約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、または約10日後に実施される。ある特定の実施形態では、測定(第1および第2のソルビトールレベル、グルコースレベルおよび細胞生存度の測定を含む)は、最初のグルコース曝露の少なくとも約72時間(3日)後に実施される。
【0156】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるスクリーニング方法によって同定される化合物には、カリウムチャネルブロッカー、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤、シクロペンチアジド、カプトプリル、イスラジピン、コンデルフィン、ニメスリドおよびトリアムシノロンが含まれるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、カリウムチャネルブロッカーはスルホニルウレア化合物である。スルホニルウレアの非限定的な例には、トルブタミド、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリシクラミド(トルヘキサミド)、メタヘキサミド、トラザミド、グリベンクラミド(グリブリド)、グリボルヌリド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、グリソキセピド、グリクロピラミド、グリメピリド、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらの包接体およびそれらのプロドラッグが含まれる。ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤の非限定的な例には、ブプロピオン、アミネプチン、メチルフェニデート(Ritalin(登録商標)、Concerta(登録商標)、Metadate(登録商標)、Methylin(登録商標)、Rubifen(登録商標)またはStimdate(登録商標))、アトモキセチン、マプロチリン、デスオキシピプラドロール、デクスメチルフェニデート、ジフェメトレックス、ジフェニルプロリノール、エチルフェニデート、フェンカムファミン、フェンカミン、レフェタミン、メチレンジオキシピロバレロン、メチルフェニデート、ノミフェンシン、O-2172、オキソリニン酸、ピプラドロール、プロリンタン、ピロバレロン、タメトラリン、WY-46824、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらのプロドラッグおよびそれらの包接体が含まれる。
【0157】
4.治療的化合物による処置の方法
本明細書に開示される薬物発見の方法で同定される化合物、またはかかる化合物を含む組成物(例えば、薬学的に許容される担体および/またはさらなる薬理学的に活性な成分をさらに含む医薬組成物)は、限定としてではなく例えば、例えば末梢神経系(PNS)において神経再生を促進するため、ミエリン損傷を予防もしくは低減もしくは修復するため、および/またはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、糖尿病性末梢神経障害であるがこれに限定されない)を予防および/もしくは処置するために、治療的に使用され得る。
【0158】
上で同定した治療のために適切な化合物の非限定的な例には、カリウムチャネルブロッカー、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤、シクロペンチアジド、カプトプリル、イスラジピン、コンデルフィン、ニメスリドおよびトリアムシノロンが含まれる。ある特定の実施形態では、カリウムチャネルブロッカーはスルホニルウレア化合物である。スルホニルウレアの非限定的な例には、トルブタミド、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリシクラミド(トルヘキサミド)、メタヘキサミド、トラザミド、グリベンクラミド(グリブリド)、グリボルヌリド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、グリソキセピド、グリクロピラミド、グリメピリド、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらの包接体およびそれらのプロドラッグが含まれる。
【0159】
ある特定の実施形態では、塩は、薬学的に許容される塩、例えば、薬学的に許容される非毒性の無機または有機の酸または塩基から調製された塩である。薬理学的に許容されるアニオンを含む塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、イソチオン酸塩(isothionate)、乳酸塩、リンゴ酸塩、ムチン酸塩、ゲンチジン酸塩、イソニ
コチン酸塩、糖酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、グリコール酸塩、グルクロン酸塩、マレイン酸塩、フロ酸塩、グルタミン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、アントラニル酸塩、サリチル酸塩、フェニル酢酸塩、マンデル酸塩、エンボン酸塩(パモ酸塩)、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、パントテン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ステアリン酸塩、スルファニル酸塩、アルギン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびガラクツロン酸塩が含まれるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、アニオンは、臭化水素酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、マレイン酸塩、硫酸塩および酸性リン酸塩である。ある特定の実施形態では、アニオンは、塩酸塩およびマレイン酸塩である。
【0160】
薬理学的に許容されるカチオンを含む塩には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、および特に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたはカリウム塩が含まれるがこれらに限定されない。適切な有機塩基には、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(meglumaine)(N-メチルグルカミン)、リシンおよびプロカインが含まれるがこれらに限定されない。
【0161】
ある特定の実施形態では、この化合物は、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤(NDRI)再取り込み阻害剤である。ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤は、それぞれノルエピネフリン輸送体およびドーパミン輸送体作用を遮断することによって、神経伝達物質ノルエピネフリンおよびドーパミンに対する再取り込み阻害剤として作用する薬剤である。例示的なNDRIには、ブプロピオン、アミネプチン、メチルフェニデート(Ritalin(登録商標)、Concerta(登録商標)、Metadate(登録商標)、Methylin(登録商標)、Rubifen(登録商標)またはStimdate(登録商標))、アトモキセチン、マプロチリン、デスオキシピプラドロール、デクスメチルフェニデート、ジフェメトレックス、ジフェニルプロリノール、エチルフェニデート、フェンカムファミン、フェンカミン、レフェタミン、メチレンジオキシピロバレロン、メチルフェニデート、ノミフェンシン、O-2172、オキソリニン酸、ピプラドロール、プロリンタン、ピロバレロン、タメトラリン、WY-46824、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらのプロドラッグおよびそれらの包接体が含まれるがこれらに限定されない。
【0162】
ある特定の実施形態では、この化合物は、ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接体もしくはプロドラッグである。「ブプロピオン」はNDRIであり、カリウムチャネルを妨害する機能もまた有する。これは、抗うつ薬として、ならびに禁煙のために承認されている。ブプロピオンの商標名は、Wellbutrin、ElontrilおよびZybanである。そのIUPAC名は、3-クロロ-N-tert-ブチル-β-ケト-α-メチルフェネチルアミンであり、C1318ClNOの化学式を有し、以下の式:
【化4】

を有する。
【0163】
ある特定の実施形態では、この化合物は塩酸ブプロピオンである。これは、ブプロピオンの塩酸塩であり、単環式のアミノケトン抗うつ薬である。そのIUPAC名は、2-(tert-ブチルアミノ)-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オン;塩酸塩であり、C1319ClNOの化学式を有し、以下の式:
【化5】

を有する。
【0164】
ある特定の実施形態では、この化合物は、ブプロピオン代謝物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接体もしくはプロドラッグである。ブプロピオン代謝物には、2-(3-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-モルホリノール(morpholinol)(ヒドロキシブプロピオンとしても公知)、2-(tert
-ブチルアミノ)-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール(ジヒドロブプロピオン(dihydrobupropion)としても公知)、および1-(3-クロロフェニル)-2-[(1,1-ジメチルエタノール)アミノ]-1-プロパノンのラセミ形態および光学的に純粋な形態が含まれるがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、用語「光学的に純粋なブプロピオン代謝物」には、光学的に純粋な:(R,R)-2-(3-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-モルホリノール((R,R)-ヒドロキシブプロピオンとも呼ばれる);(S,S)-2-(3-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-モルホリノール((S,S)-ヒドロキシブプロピオンとも呼ばれる);(R,R)-2-(tert-ブチルアミノ)-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール((R,R)-ジヒドロブプロピオンとも呼ばれる);(S,R)-2-(tert-ブチルアミノ)-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール((S,R)-ジヒドロブプロピオンとも呼ばれる);(S,S)-2-(tert-ブチルアミノ)-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール((S,S)-ジヒドロブプロピオンとも呼ばれる);(R,S)-2-(tert-ブチルアミノ)-1-(3-クロロフェニル)-プロパン-1-オール((R,S)-ジヒドロブプロピオンとも呼ばれる);(R)-1-(3-クロロフェニル)-2-[(1,1-ジメチル-エタノール)アミノ]-1-プロパノン;および(S)-1-(3-クロロフェニル)-2-[(1,1-ジメチルエタノール)アミノ]-1-プロパノン;ヒドロキシブプロピオン、スレオ-ヒドロブプロピオン;ならびにエリスロヒドロブプロピオンが含まれるがこれらに限定されない。
【0165】
ある特定の実施形態では、この化合物はカリウムチャネルブロッカーである。カリウムチャネルブロッカーは、カリウムチャネルを介した伝導を妨害し、細胞膜を介したカリウム流出を阻害する薬剤である。カリウムチャネルの遮断は、活動電位の持続時間を延長させ得る。例示的なカリウムチャネルブロッカーには、アミオダロン、ドフェチリド、ソタロール、イブチリド、アジミリド、ブレチリウム、クロフィリウム、E-4031、ニフェカラント、テジサミル、およびセマチリド(sematilide)、テトラエチルアンモニウムCl(TEA)、プロカイン、4-アミノピリジン(4AP)、キニジン、アパミン、トルブタミド、およびグリベンクラミドが含まれるがこれらに限定されない。
【0166】
ある特定の実施形態では、カリウムチャネルブロッカーは、トルブタミド、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接体もしくはプロドラッグである。トルブタミドは、スルホニルウレア血糖降下剤である。そのIUPAC名は、1-ブチル-3-(4-メチルフェニル)スルホニルウレアであり、C12H18N2O3Sの化学式を有し、以下の式:
【化6】

を有する。
【0167】
ある特定の実施形態では、この化合物は、シクロペンチアジド、カプトプリル(captoprio)、イスラジピン、コンデルフィン、ニメスリド、トリアムシノロン、およびそれら
の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接体またはプロドラッグからなる群から選択される。
【0168】
限局性注射、正所性(orthotropic)(OT)注射、全身注射、静脈内注射または非経口
投与を介して、これらの化合物またはそれを含む医薬組成物を投与するステップを含む処置の方法が、本明細書に開示される。
【0169】
本明細書に開示される化合物は、選択されたpHへと緩衝され得る無菌液体調製物、例えば、等張水性溶液、懸濁物、乳濁物、分散物、または粘性組成物として簡便に提供され得る。液体調製物は通常、ゲル、他の粘性組成物および固体組成物よりも調製が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射によって投与するために、いくらかより簡便である。他方、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間を提供するために、適切な粘性範囲内で製剤化され得る。液体または粘性組成物は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る担体を含み得る。無菌の注射可能な溶液は、本開示の主題の組成物、例えば、本明細書に開示される化合物を含む組成物を、所望に応じて種々の量の他の成分と共に、必要な量の適切な溶媒中に取り込むことによって調製され得る。かかる組成物は、適切な担体、希釈剤または賦形剤、例えば、無菌水、生理学的食塩水、グルコース、デキストロースなどとの混合物中にあり得る。これらの組成物は、凍結乾燥もされ得る。これらの組成物は、所望の投与経路および調製物に依存して、補助物質、例えば、湿潤剤、分散剤または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化添加物または粘性増強添加物、防腐剤、調味剤、顔料などを含み得る。参照によって本明細書に組み込まれる「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE」、第17版、1985年などの標準的な教科書が、過度の実験なしに適切な調製物を調製するために参考にされ得る。
【0170】
抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤および緩衝剤を含む、組成物の安定性および無菌性を増強する種々の添加物が添加され得る。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にされ得る。注射可能な医薬品形態の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩アルミニウム(alum inurn monostearate)およびゼラチン
の使用によってもたらされ得る。しかし、本開示の主題によれば、使用される任意のビヒクル、希釈剤または添加物は、本明細書に開示される化合物またはそれを含む医薬組成物と適合性でなければならない。
【0171】
当業者は、医薬組成物の構成成分が、化学的に不活性であるように選択されるべきであり、本明細書に開示される化合物の有効性に影響を与えないことを認識する。これは、化学および医薬品の原理における当業者にとって問題にはならず、または問題は、標準的な教科書を参照して、もしくは単純な実験によって(過度の実験を伴わずに)、本開示および本明細書で引用された文書から、容易に回避され得る。
【0172】
「有効量」(または「治療有効量」)は、処置の際に有益なまたは所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1つまたは複数の用量で対象に投与され得る。処置に関して、有効量は、シュワン細胞関連障害(例えば、DPN)を緩和、軽快、安定化、反転するもしくはその進行を緩徐化する、またはシュワン細胞関連障害(例えば、DPN)の病理学的結果を他の方法で低減させるのに十分な量である。有効量は一般に、ケースバイケースで医師によって決定され、当業者の技術範囲内である。典型的には、いくつかの因子が、有効量を達成するための適切な投薬量を決定する場合に考慮される。これらの因子には、対象の年齢、性別および体重、処置されている状態、状態の重症度、ならびに投与される細胞の形態および有効濃度が含まれる。
【0173】
本開示の主題は、かかる処置を必要とする対象における糖尿病性末梢神経障害を処置する方法であって、有効量のノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤(NDRI)(例えば、ブプロピオン、アミネプチン、メチルフェニデート(Ritalin(登録商標)、Concerta(登録商標)、Metadate(登録商標)、Methylin(登録商標)、Rubifen(登録商標)またはStimdate(登録商標))、アトモキセチン、マプロチリン、デスオキシピプラドロール、デクスメチルフェニデート、ジフェメトレックス、ジフェニルプロリノール、エチルフェニデート、フェンカムファミン、フェンカミン、レフェタミン、メチレンジオキシピロバレロン、メチルフェニデート、ノミフェンシン、O-2172、オキソリニン酸、ピプラドロール、プロリンタン、ピロバレロン、タメトラリン、WY-46824、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの水和物、それらのプロドラッグおよびそれらの包接体からなる群から選択されるもの)を対象に投与して、糖尿病性神経障害の1つまたは複数の徴候または症状を低減させるステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、NDRIは、ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接体もしくはプロドラッグである。例えば、限定ではなく、糖尿病性末梢神経障害の症状および/または徴候には、1つまたは複数の四肢におけるしびれ、ピリピリ感および/または灼熱感;1つまたは複数の四肢における疼痛および/または温度の知覚の低減;1つまたは複数の四肢における感覚過敏;1つまたは複数の四肢における反射の低減;1つまたは複数の四肢における筋力低下;1つまたは複数の四肢の潰瘍化および/または感染が含まれる。
【0174】
5.キット
本開示の主題は、PNSおよび/もしくはCNSの再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)を処置および/もしくは予防するために適切な化合物をスクリーニングするためのキットを提供する。ある特定の実施形態では、このキットは、本明細書に開示される分化方法による幹細胞からのin vitro分化から得られるSC前駆体および/または成熟したSCの集団の有効量を含む。ある特定の実施形態では、このキットは、細胞を含む無菌コンテナを含む;かかるコンテナは、箱、アンプル、瓶、バイアル、管、バッグ、パウチ、ブリスターパック、または当該分野で公知の他の適切なコンテナ形態であり得る。かかるコンテナは、プラスチック、ガラス、ラミネート加工紙、金属箔、または医薬を保持するのに適切な他の材料で作製され得る。
【0175】
ある特定の実施形態では、このキットは、高グルコース誘導性の毒性からSC前駆体および/または成熟したSCをレスキューすることが可能な化合物を同定するための使用説明書をさらに含む。ある特定の実施形態では、使用説明書は、(a)SC前駆体および/または成熟したSCを、少なくとも約10mMのグルコース濃度に曝露するステップ、ならびに(b)細胞集団を、グルコース曝露後に試験化合物と接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、使用説明書は、(c)前記試験化合物による処理なしの細胞の第1のソルビトールレベル、第1のグルコースレベルおよび第1の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップ、ならびに(d)前記試験化合物で処理した細胞の第2のソルビトールレベル、第2のグルコースレベルおよび第2の細胞生存度のうち1つまたは複数を測定するステップを含む。さらに、使用説明書は、(e)(i)第2のソルビトールレベルを第1のソルビトールレベルと、(ii)第2のグルコースレベルを第1のグルコースレベルと、および/または(iii)第2の細胞生存度を第1の細胞生存度と比較するステップを含む。
【0176】
使用説明書は、(f)(i)第2のソルビトールレベルが第1のソルビトールレベルよりも低い場合、(ii)第2のグルコースレベルが第1のグルコースレベルよりも低い場合、および/または(iii)第2の細胞生存度が第1の細胞生存度よりも低い場合に、PNSおよび/またはCNSの再生のため、ミエリン損傷を予防および/または処置もしくは修復するため、ならびに/あるいはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)を予防および/または処置するために適切な試験化合物を同定するステップをさらに含む。
【0177】
ある特定の実施形態では、グルコース濃度は、少なくとも約10mM、例えば、10mMと100mMとの間である。ある特定の実施形態では、グルコース濃度は約30mMである。ある特定の実施形態では、測定(第1および第2のソルビトールレベル、グルコースレベルおよび細胞生存度の測定を含む)は、最初のグルコース曝露の少なくとも約12時間後、少なくとも約24時間(1日)後、約48時間(2日)後、約72時間(3日)後、約4日後、約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、または約10日後に実施される。ある特定の実施形態では、測定(第1および第2のソルビトールレベル、グルコースレベルおよび細胞生存度の測定を含む)は、最初のグルコース曝露の少なくとも約72時間(3日)後に実施される。
【0178】
さらに、本開示の主題は、PNSおよび/もしくはCNSの再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)を処置および/もしくは予防するためのキットを提供する。ある特定の実施形態では、このキットは、本明細書に開示されるスクリーニング方法によって同定される化合物の有効量を含む。ある特定の実施形態では、このキットは、治療的組成物を含む無菌コンテナを含む;かかるコンテナは、箱、アンプル、瓶、バイアル、管、バッグ、パウチ、ブリスターパック、または当該分野で公知の他の適切なコンテナ形態であり得る。かかるコンテナは、プラスチック、ガラス、ラミネート加工紙、金属箔、または医薬を保持するのに適切な他の材料で作製され得る。
【0179】
ある特定の実施形態では、このキットは、同定された化合物またはそれを含む組成物を、対象、例えば、例えば、シュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)に罹患している対象に投与するための使用説明書を含む。使用説明書は、PNSおよび/もしくはCNSの再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)を処置および/もしくは予防するための化合物または組成物の使用についての情報を含み得る。ある特定の実施形態では、使用説明書は、以下のうち少なくとも1つを含む:化合物の説明;PNSおよび/もしくはCNSの再生のため、ミエリン損傷の予防および/もしくは修復のため、ならびに/またはシュワン細胞関連障害(例えば、末梢神経障害、例えば、DPN)もしくはその症状を処置および/もしくは予防するための投薬スケジュールおよび投与;事前注意;警告;適応症;禁忌(counter-indication);過量投薬情報;有害反応;動物薬理学;臨床研究;ならびに/あるいは参考文献。使用説明書は、コンテナ上に直接(存在する場合)、またはコンテナに貼られた標識として、またはコンテナ中にもしくはコンテナと同梱された別々のシート、パンフレット、カードもしくはホルダーとして印刷され得る。
【実施例0180】
本開示の主題は、限定ではなく本開示の主題の例示として提供される以下の実施例を参照してより良く理解される。
【0181】
(実施例1)
概要
シュワン細胞前駆体およびシュワン細胞を、ヒト幹細胞(例えば、hPSC)から誘導した。本発明者らは、高血糖誘導性の細胞毒性およびポリオール経路の活性化に対するヒトSCの選択的脆弱性を明らかにする、DPNのhESCベースのin vitroモデルを樹立した。本発明者らはさらに、このモデルを使用してハイスループット薬物スクリーニングを実施し、ブプロピオンをDPNの処置のための化合物として同定した。ブプロピオンは、SCにおいてin vitroで高グルコース誘導性の細胞毒性に対抗でき、STZ処置した糖尿病マウスにおける神経障害関連の組織学的および挙動上の欠陥をレスキューする。
【0182】
方法および材料
未分化ヒト胚性幹細胞(hESC)の培養
hESC系統H9(WA-09)および誘導体(SOX10::GFP;SYN::ChR2-YFP;SYN::YFP;PHOX2B:GFP;EF1::RFP EDNRB-/-)ならびに2つの独立したhiPSC系統(健康および家族性自律神経異常症、センダイベースのOMSK(Cytotune))を、hESCを含むKSR(Life Technologies、10828-028)培地中のマウス胚性線維芽細胞(MEF、Global Stem、Rockville、MD)上で維持した(Chambersら、2009年)。細胞を、1ヶ月間隔でマイコプラズマ試験に供し、STRを、この研究の開始時にプロファイルして、細胞の種類を確認した。
【0183】
hESCからの神経堤誘導ならびにシュワン細胞の誘導および拡大増殖
hESCを、10nM FGF2(R&D Systems、233-FB-001MG/CF)を含むhESC培地中で、マトリゲル(BD Biosciences、354234)コーティングしたディッシュ上にプレートした(10細胞/cm)。分化を、LDN193189(100nM、Stemgent、Cambridge、MA)およびSB431542(10μM、Tocris、Ellisville、MI)を含むknockout serum replacement(KSR)培地(KO DMEM+15%KSR、L-グルタミン(Life Technologies、25030-081)、NEAA(Life Technologies、11140-050))中で開始させた。KSR培地を、以前に記載されたように(Chambersら、2009年)、4日目~10日目に、漸増量のN2培地で漸進的に置き換えた。頭蓋NC(CNC)誘導のために、細胞を、2日目~11日目に、LDNおよびSBに加えて3uM CHIR99021(Tocris Bioscience、4423)で処理する。CNS前駆体対照細胞は、以前に記載されたように(Chambersら、2009年)、0日目~11日目のLDNおよびSBによる処理によって生成した。この実施例を通じて、0日目は、培地を、hESC培地からLDNおよびSB含有培地に切り替える日である。本文および図面中の分化の日数は、多能性段階(0日目)以降の日数を指す。
【0184】
11日目に、NC細胞を、Ultra Low Attachment 6ウェル培養プレート(Fisher Scientific、3471)中で3Dスフェロイド(500万細胞/ウェル)へと凝集させ、CHIR(3uM、Tocris Bioscience、4423)およびFGF2(10nM、R&D Systems、233-FB-001MG/CF)およびNRG1(10ng/ml、R&D 378-SM-025)を含むL-グルタミン(Gibco、25030-164)、N2(Stem Cell Technologies、07156)およびB27(Life Technologies、17504044)を補充したNeurobasal(NB)培地中で培養した。14日間の懸濁培養後、スフェロイドを、NRG1(20ng/ml、R&D 378-SM-025)、FGF2(10nM、R&D Systems、233-FB-001MG/CF)およびcAMP(100mM、Sigma、D0260)を含むL-グルタミン(Gibco、25030-164)、N2(Stem Cell Technologies、07156)およびB27(Life Technologies、17504044)を補充したNeurobasal(NB)培地中で、ポリオルニチン/ラミニン/フィブロネクチン(PO/LM/FN)コーティングしたディッシュ(以前に記載されたように調製する)上にプレートする(Lee Gら、2007年)。SC前駆体は、プレートしたスフェロイドの外に遊走し、10日以内にSCへと分化する。長期拡大増殖のために、細胞を、PO/LM/FNコーティングしたディッシュ上でシュワン細胞培地(Sciencell、1701)中で培養した。細胞を、免疫染色のために固定し、または分化の25日目、35日目、50日目、60日目および100日目に、遺伝子発現分析のために収集した。
【0185】
FACSおよび免疫蛍光(IF)分析
IFのために、細胞を、4%パラホルムアルデヒド(PFA、Affymetrix-USB、19943)で20分間固定し、次いで、1%ウシ血清アルブミン(BSA、Thermo Scientific、23209)および0.3%triton X-100(Sigma、T8787)を使用して、ブロッキングおよび透過処理した。次いで、細胞を、一次抗体溶液中で4℃(セルシウス)で一晩インキュベートし、フルオロフォアコンジュゲートした二次抗体でRTで1時間染色し、次いで、染色された細胞を、DAPI(1ng/ml、Sigma、D9542-5MG)と共にインキュベートし、数回洗浄し、その後イメージングした。フローサイトメトリー分析のために、細胞を、Accutase(Innovative Cell Technologies、AT104)を用いて解離させ、BD Cytofix/Cytoperm(BD Bioscience、554722)溶液を使用して固定および透過処理し、次いで、BD Perm/Wash緩衝剤(BD Bioscience、554723)を製造業者の使用説明書に従って使用して、洗浄、ブロッキングおよび透過処理する。次いで、細胞を、一次(4℃で一晩)および二次(室温で30分間)抗体で染色し、フローサイトメーター(FlowJo software)を使用して分析する。一次抗体および希釈のリストは表5に提供される。
【0186】
表面マーカースクリーニング
特異的表面抗原についてのスクリーニングを、分化の80日目にhESC-SCに対して、BD Lyoplate library(登録商標)(BD、560747)を使用して実施した。細胞を、96ウェルプレート中にプレートし(10,000細胞/ウェル)、製造業者の使用説明書に従って、一次および二次抗体で染色した。染色された細胞を、プレート全体イメージングおよび定量化のために固定した。総GFAPのうちの二重陽性細胞のパーセンテージを、各抗体について定量化した。上位ヒット(>60%二重陽性)を、フローサイトメトリーをさらに使用して検証した。
【0187】
遺伝子発現分析
RNA配列決定のために、総RNAを、RNeasy RNA精製キット(Qiagen、74106)を使用して抽出した。qRT-PCRアッセイのために、総RNA試料を、Superscript II Reverse Transcriptase(Life Technologies、18064-014)を使用してcDNAに逆転写した。qRT-PCR反応を、QuantiTect SYBR Green PCRミックス(Qiagen、204148)を使用して設定した。各データポイントは、3つの独立した生物学的反復を示す。RNA-seq読み取りを、TopHat v2.0を使用して、ヒト参照ゲノム(hg19)にマッピングした。TopHatを、カバー範囲検索に対する例外を伴って、デフォルトパラメーターで実行した。次いで、アラインメントを、HTSeqを使用して定量化し、差示的遺伝子発現を、頭蓋神経堤試料に対して標準化したDESeqを使用して計算した。
【0188】
生存度アッセイ
SCの生存度をモニタリングするために、細胞を、CytoTox 96細胞毒性アッセイキット(Promega、G1780)を使用してLDH活性についてアッセイした。簡潔に述べると、細胞を、30,000細胞/cmで96ウェルプレート中にプレートした。上清および細胞溶解物を、24時間後に収集し、プレートリーダー(490nm吸光度)を使用してLDH活性についてアッセイする。生存度を、溶解物のLDHシグナルを総LDHシグナル(溶解物+上清から)で除算することによって計算した。細胞を、アッセイの間、PO/LM/FNコーティングしたディッシュ上でシュワン細胞培地(Sciencell、1701)中で培養した。
【0189】
代謝物測定
高グルコース、低グルコースならびに薬物処理したSCおよび感覚ニューロンを、製造業者の使用説明書に従って、ソルビトール(abcam、ab118968)、グルコース(abcam、ab65333)、ピルベート(abcam、ab65342)および2DG取り込み(abcam、ab136955)測定のための生化学的アッセイに供した。データを、細胞数に従って標準化し、3~6回の生物学的反復について平均した。
【0190】
グルコース媒介性SC細胞毒性を反転させる薬物についてのハイコンテンツスクリーニングアッセイ
化学化合物スクリーニングを、Prestwick Chemical Library(登録商標)を使用して実施した。RFP標識したhESC-SCを、384ウェルプレート中にプレートし(1,000/ウェル)、化合物の添加直前に30mMグルコースで処理した。化合物を1μM濃度で添加した。72時間後、プレートをDAPIで10分間処理し、2回洗浄し、プレート全体イメージングのために固定した。生存細胞の数を、DAPI陰性RFP陽性細胞の数を計数することによって、各ウェルについて定量化した。死細胞のパーセンテージを、DAPI陽性細胞の数を総RFP陽性細胞によって除算することによって、各ウェルについて計算した。
【0191】
選択されたヒット化合物(塩酸ブプロピオン、Sigma、B102)の検証のために、細胞を、用量応答分析のために種々の濃度の化合物で処理した。最大無毒性用量(最適なソルビトール低減および生存度に基づいて0.7μM)を追跡実験に使用した。
【0192】
糖尿病マウスの薬物処置
全ての手順を、NIHガイドラインに従って実施し、これは、地域の動物実験委員会(IACUC)によって承認された。3~8週齢の雄性C57BL6マウスを、ストレプトゾトシン(180mg/kg、sigma、85882)の一用量IP注射で処置して、膵ベータ細胞死を誘導した。血中グルコースレベルを、標準的なグルコメーター(Freestyle Lite)を使用して、尾の先端から血液を一滴採血することによって、処置の1週間後に開始して1週間間隔で測定した。BP処置を、ストレプトゾトシン処置の1週間後に開始した。BPを、約300mg/kgで毎日経口投与される固形飼料1グラム当たり1.63mgで、標準的な固形飼料と混合した。用量は、平均一日食物摂取(5.5グラム/日)および初期体重(30グラム)に基づいて計算した。
【0193】
マウス熱感度試験
温痛覚を、ホットプレート試験を使用して査定した。ホットプレート(Ugo Basile 35100)は、金属表面(55℃)と、マウスを収容する透明プレキシガラスシリンダーとからなった。対象を、一定温度のホットプレート上に配置し、後肢の舐め/震えまたはジャンプのいずれかによって査定される不快感を示すのに必要な潜時を決定する。典型的なベースライン潜時は5~10秒であり、最大潜時は30秒である。不快挙動を示さない動物はいずれも、最大潜時である30秒後に除去して、組織損傷を回避する。
【0194】
統計分析
データは、平均±SEMとして示され、少なくとも3回の独立した実験から導出した。反復(n)に関するデータは、図の説明中に与えられる。統計分析を、スチューデントt検定(2つの群を比較する)、またはダネット検定(複数の群を対照に対して比較する)を用いるANOVAを使用して実施した。正規性について検定するために、十分な数の反復を有するデータについて、生データの分布を、正規分布で近似した(コルモゴロフ-スミルノフ正規性検定)。生存度分析を、ログランク(マンテル-コックス)検定を使用して実施した。一次ヒットについてのZ-スコアを、Z=(x-μ)/σとして計算した。Xは、移動スコア値であり、全てのヒット化合物について3である。μは、平均移動スコア値であり、σは、全ての化合物およびDMSO対照についての標準偏差である。
【0195】
結果
hESCからのSC系列の誘導および前向き単離
DPNにおける感覚神経損傷の細胞型特異的機構を精査するために、ヒト感覚ニューロンおよびSCをhPSCから生成した。hESCからの感覚ニューロンの誘導のための方法は、Caiら、2016年;Chambersら、2012年に記載されているが、SCの誘導は
、依然として理解が進んでいない。従って、DPNのhESCモデルを樹立することを目指した第1のステップとして、hESCをSCへと分化させるための有効な戦略を樹立した。
【0196】
より最近の研究は、hPSCからのSC様細胞の誘導について報告したが、SOX10などの重要な系列マーカーの発現を示さず、機能的ミエリン形成を実証できなかった(Liuら、2012年;Zieglerら、2011年)。胚発生の間に、SCは、段階的プロセスでSOX10NC細胞から生じると考えられた。マウスおよびニワトリ胚における研究に基づくと、NCは、発達中の神経においてニューロンの束と関連するSC前駆体を最初に生じる。関連するニューロンは、NRG1を発現し、それらのERBB3受容体を活性化することによって、SC前駆体の生存およびさらなる分化を促進する(NewbernおよびBirchmeier、2010年)。マウス発生のE13.5までに、SC前駆体は、SOX10の
発現を維持しつつ、GFAP、S100およびPOU3F1などの系列マーカーを上方調節する未熟なSCを生じる。ミエリン形成性運命および非ミエリン形成性運命へのSCの最終分化は、誕生後まで継続する(Jessenら、2015年)。
【0197】
初期のhESCベースのNC分化プロトコールは、p75+および/またはHNK1+NC前駆体の前向き単離と組み合わせた、神経上皮系列からの推定NC細胞の離脱(delamination)に依存する(Bajpaiら、2010年;Leeら、2007年)。これらのプロト
コールは種々のNC由来系列を生じるが、SOX10発現のレベルは一般に低い。対照的に、WNTシグナル伝達の活性化因子へのタイミングをとった曝露に基づく、より方向付けられたNCの誘導プロトコールは、分化の11日目までに、細胞の大部分においてSOX10のロバストな誘導を示す(Fattahiら、2016年;Menendezら、2011年;Micaら、2013年)。さらなる培養により、これらのhESC由来NC細胞は、SOX1
0+メラニン細胞へと方向付けられ得るが(Micaら、2013年)、SOX10-の間充織およびニューロン前駆体もまた生じる(Micaら、2013年)。SOX10発現は、発生を通じてSC系列において保持される重要なマーカーであるので、グリア運命に向けてそれらを指示する前に、培養物中でSOX10前駆体を維持するための条件を樹立することに最初に焦点を当てた。EGF、FGF、WNT、Notch、TGFβ、BMP、NRGおよびエンドセリン3シグナル伝達のモジュレーターの存在下で、2Dまたは3DのNC培養物中のSOX10+細胞のパーセンテージを決定した。FGF2およびNRG1処理に加えた、3D凝集ステップとCHIR99021によるWntシグナル伝達の活性化との組合せは、SOX10発現の維持(図6A)ならびに25日目までのS100および他の初期SCマーカーの誘導(図1A~1C)を生じた。この段階で、さらに10日間にわたるFGF2、NRG1およびcAMPによる25日目培養物前駆体の処理は、GFAP、POU3F1、PMP22、MBP、AQP4、MPZなどのいくつかのSCマーカーのロバストな誘導、ならびにとりわけGDNF、ERBB3およびGAP43が含まれる、ニューロンの相互作用および支持に関与する遺伝子の上方調節を促進する(図1A~1D)。より長期の培養は、GFAP+細胞の富化を生じ、S100、MBPおよびGFAPの発現(図1E、1Fおよび1I)に基づいて、60~90日目までにSCのほぼ均質な集団を生じた(図6B)。これらのhESC由来集団は、S100、MBPおよびGFAPを発現するSCの高いパーセンテージを維持したまま、さらに数週間にわたって増殖できる(図1E、1Fおよび1I)。
【0198】
分化の間のhESC-SCの前向き単離を可能にするために、GFAP+SCを特異的にマークする表面抗原について、242の抗体のライブラリーをスクリーニングした(図7A)。CD44、CD49e、CD81およびCD98は、GFAP+細胞集団を標識すると決定された(図7B)。さらなる検証により、CD98は、60日目のSCにおいて特異的に発現されるが、初期SOX10+NC系列を標識することが以前に示されたマーカーであるCD49D(Fattahiら、2016年)を発現する11日目のNCまたは2
5日目のSCP細胞では発現されない(図7C)唯一のマーカーであることが明らかになった。精製された細胞のRNA配列決定により、25日目のhESC由来SCPは、初期NC細胞と密接に関連するが、50日目、および特に100日目のSCは、初代成体ヒトSCと密接に整合する遺伝子発現パターンを示すことが実証された(図1G)。遺伝子発現データにより、25日目および100日目の細胞を11日目のNCと比較することによって、新規候補SCPおよびSCマーカーもまた得られた(図1H)。各系列についての上位200の富化された転写物のリストは、表1~4に提供される。
【0199】
hESC-SCは、糖毒性に対して選択的に脆弱性である
上記知見は、機能的SCを誘導するための効率的なプロトコールを樹立した。DPNを媒介する特異的な細胞型を同定するために、hESC由来SCならびに感覚ニューロンに対する糖尿病の影響を、糖尿病において生じるような高グルコース曝露に対するそれらの応答を評価することによって調査した(図2A)。細胞型特異的な脆弱性を査定するために、hESC由来感覚ニューロンおよびSCの培養物を、様々なグルコース濃度で処理した。感覚ニューロンは、45mMまでのグルコースレベルでは毒性を示さなかった。しかし、hPSC由来SCは、わずかに増加したグルコースレベルに対して感受性であった(図2B、2E)。
【0200】
糖尿病における上昇したレベルのグルコースは、ある特定の細胞型においてポリオール経路を活性化し得る(Oates、2002年)。ポリオール(polypol)経路は、それぞれアルドースレダクターゼ(AR)およびソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH)によって触媒される2つの酵素ステップを介して、過剰なグルコースをソルビトールへと代謝し、引き続いて、フルクトースへと代謝する。ポリオール経路およびソルビトールが媒介する浸透圧ストレスおよび酸化ストレスは、ラットにおけるグルコース誘導性の水晶体白内障に関する研究における高グルコースによる組織損傷の潜在的な媒介因子であり得る(Van
Heyningen、1959年)。ソルビトール蓄積は、動物モデルにおける糖尿病誘導性の
末梢神経損傷にも関与する(Mizisin、2014年;Oates、2002年)。hESC-SCに対するグルコースの毒性効果を考慮して、それらが、高グルコース曝露に応答してソルビトールの増加を示すかどうかを査定したところ、それらの選択的脆弱性についての潜在的機構が示唆できた。以前の報告(Maekawaら、2001年;MizisinおよびPowell、1993年)と一致して、感覚ニューロンと比較して、hESC由来SCにおいて、ARのSDHに対する増加した比が観察された(図2C)。これは、感覚ニューロンではなくSCが、高グルコースに曝露された場合に増加したレベルのソルビトールを示したという観察によって、さらに支持された(図2D)。
【0201】
ハイコンテンツスクリーニングは、hESC-SCにおいて糖毒性に対抗する薬物を同定する
これらのデータは、DPNに対する提示された新規治療機会を低減させる、高グルコースに対するSCの脆弱性を実証した。hESC-SCにおいてこの細胞損傷を再現する能力は、この毒性に対抗できる薬物についてのハイスループットスクリーニング(HTS)のためのプラットフォームを提供した。従って、30mMグルコースの存在下でのhPSC由来SCの生存度を測定するHTSシステムを樹立した(図3Aおよび3E)。本発明者らは、承認された薬物(FDA、EMAまたは他の規制機関)の1,280の小分子を含むPrestwickライブラリーをスクリーニングした。高グルコース処理したhESC-SCの生存度を増強するのに最も強力な化合物は、Wellbutrin(登録商標)として市販される抗うつ薬ブプロピオン(BP)であった(図3B)。検証研究により、SC生存度をレスキューすることおよびソルビトールレベルを減少させることにおいて、BPについて、263nMのIC50(図3C、3D)、および0.7μMにおける最大効果で用量応答が示され、この0.7μM用量を全てのさらなる研究のために使用した。2μMを上回るBPレベルは、漸進的な用量依存的毒性を誘導した。本発明者らは、BPが細胞内グルコースレベルをモジュレートすることによって作用するのかどうかを次に調査した。ソルビトールのレベルに対するBPの影響を考慮して、本発明者は、BP処理がSCにおいてグルコースのレベルを変化させるかどうかを調査した。BPは、グルコース取り込みに影響を与えることなく、hESC-Scにおける細胞内グルコースレベルを低減させた(図4A、4B)。従って、BPは、解糖フラックスを増加させ、ソルビトール産生が起きにくくなるようにバランスをシフトさせることによって、グルコースレベルを低下させるという仮説を立てた。この仮説は、BPで処理したhESC-SCにおける、解糖最終産物であるピルベートのレベルの増加によって支持された(図4C)。合わせて考えると、これらの研究は、hESC-SCにおける高グルコースの曝露が、BPによる処理によって正常化され得る細胞内グルコースおよびソルビトールの上昇をもたらすことを実証している(図4D)。
【0202】
ブプロピオンは、DPNのマウスモデルにおいて疾患表現型をレスキューする
高グルコース処理したhESC-SCのin vitroでの生存度をレスキューすることにおけるBPの顕著な能力を考慮して、DPNのマウスモデルにおけるBP処置の治療効果を研究した。野生型C57BL6マウスを、1型糖尿病のマウスモデルとして、ベータ細胞死、損なわれたインスリン産生および高血糖をもたらす膵ベータ細胞特異的毒素ストレプトゾトシン(STZ)で処置した(WuおよびHuan、2008年)。この方法は、げっ歯類において1型糖尿病をモデル化するために広く使用されている(Akbarzadehら、2007年;WuおよびHuan、2001年)。DPN患者および動物モデルでは、感覚神経損傷は、四肢における感覚消失をもたらす場合が多い。STZ処置したマウスにおけるDPN表現型に対するBP処置の影響を、機能的読み出しとして温感試験を使用し、坐骨神経の組織学的分析によって評価して、構造的損傷を査定した(図5A)。STZ処置したマウスは、非糖尿病対照動物と比較して、BP処置とは無関係に、血中グルコースのレベルにおける有意な増加を示し(図5B)、このことは、BP処置がグルコースレベルに影響しないことを示している。BPで処置しなかった糖尿病マウスは、STZ処置の7週間後および8週間後に、熱刺激に対する遅延した応答を示した。BP処置した糖尿病マウスは、正常な非糖尿病動物のものと匹敵する有意に改善された応答時間を示した(図5C)。組織学的分析により、STZマウスの坐骨神経におけるTUNEL+アポトーシス細胞のパーセンテージにおける増加が明らかになった。BP処置した動物は、未処置群の動物よりも有意に少ないアポトーシス細胞を示した(図5D、5E)。次に、末梢ミエリンに対するSTZおよびBP処置の影響を、透過型電子顕微鏡を使用して評価した。大きいパーセンテージの深く損傷したミエリンが、STZ処置した動物の坐骨神経において観察されたが、このパーセンテージは、BPで処置したSTZマウスにおいて有意に低減された(図5F~5G)。これらの研究は、DPNのSTZモデルにおけるBPのロバストな治療効果を実証している。
【0203】
考察
SCは、末梢神経の発生、機能および修復において重要な役割を果たす。しかし、それらの発生および機能は、初代組織から実行可能な数でそれらを得ることにおける限界に起因して、ヒトではあまり理解されていない。他の研究者が、P75+/HNK1+NC前駆体の長期維持後のhPSC由来のシュワン様細胞を以前に報告しているが(Leeら、2
007年)、これらの研究は、低い誘導効率、および数ヶ月間のin vitro培養、長引く分化、限定的なSC成熟化、およびミエリン形成データの欠如という限界を有する(Leeら、2007年;Liuら、2012年;Zieglerら、2011年)。他の研究者によ
るヒトSCを誘導するための試みもまた、低い収量、限定的な表現型の特徴付け、およびin vitroまたはin vivoミエリン形成の欠如を生じた(Liら、2015年;Micaら、2013年)。ヒトSCの十分特徴付けられた純粋な集団の生成のための高度に効率的なアプローチを樹立したが、これは、将来の徹底的な発生研究、および疾患モデル化などの橋渡し適用、ならびに細胞治療のためのお膳立てとなる。
【0204】
本発明者らのhESCベースのプラットフォームの重要な特色は、得られたSCの拡張性および純度、ならびにSC特性を喪失することなしに延長された期間にわたって細胞を培養する能力である。対照的に、初代SCは、延長された培養の際にそれらの特性を迅速に喪失する傾向があり、線維芽細胞様細胞によるシュワン細胞培養物の夾雑が増加していくことになる。この新規分化テクノロジーを使用してここで到達可能な重要な発生上の疑問には、多分化能性NC幹細胞から傾倒したSCへの移行を制御する機構、ならびにメラニン細胞および副交感ニューロンの両方が初期SC系列から誘導できることを示唆するマウスにおける最近のデータを考慮したヒトSC可塑性の研究が含まれる(Adameykoら、2009年;Espinosa-Medinaら、2014年)。傾倒したSCの前向き単離のための表面
マーカーとしてのCD98の同定は、かかる研究のための強力なツールを提示する。PNS病理のモデル化は特に関心の対象となり得る。培養hESC由来シュワン細胞の驚くべき特色は、シュワン細胞であることを確認するだけでなく、多能性由来細胞が成体シュワン細胞の発現パターンと整合することを示唆する、それらの遺伝子発現パターンである。これは、胎児段階のマーカーを発現するニューロンなどの、ほとんどの他のin vitro誘導されたhPSC系列とは対照的である(Studerら、2015年)。
【0205】
ミエリン形成性SCを生成する能力は、シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病などの遺伝性ミエリン形成障害のモデル化を可能にする。CMTをモデル化するための現在の試みは、実際の疾患表現型をとらえておらず、SC前駆体における初期分子事象を規定することに限定されている。CMTは、PNSの最も一般的な遺伝性障害であるが、末梢神経障害の大部分は、糖尿病によって生じ、最も頻度が高い症例である(全ての糖尿病患者の15~60%が罹患する(MartynおよびHughes、1997年))。
【0206】
本発明者らは、糖尿病関連高血糖に対するSCの選択的脆弱性を明らかにしたhESCベースのDPNモデルを提示する。データのほとんどは、高グルコース曝露に応答して得られたが、本発明者らは、非常にわずかなレベルの、グルコースの増加においてでさえ、SC生存度における減少を観察した。グルコース媒介性のシュワン細胞毒性に対抗するBPの能力は、細胞内グルコースおよびスクロースレベルにおける減少と相関したが、酸素消費における増加を示唆するピルベートレベルにおける増加とも相関した。興味深いことに、BPは、患者において体重増加ではなく中程度の体重減少と一般に関連する唯一の抗うつ薬のようであり、従って、グルコース代謝におけるBP媒介性の変化は、そのような全身効果と関連する可能性がある。in vivo研究により、BP処置が、DPN関連の挙動上の欠陥および神経損傷をレスキューできることが実証された。BPは、神経障害性疼痛に罹患している患者の処置においていくらかの利益を示したことから(Semenchuk
ら、2001年)、別の適応症に対するこの薬物の効果もまたSC脆弱性に対するその効果によって媒介され得るかどうかという疑問を生じる。BPに加えて、本発明者らは、シュワン細胞脆弱性をレスキューすることが可能ないくつかのさらなる化合物を同定した。これらの化合物が共通の機構を介して作用するのか別個の機構を介して作用するのか、およびそれらが、STZマウスにおいてBPと匹敵するin vivo活性を示すかどうかを決定することに興味がもたれる。
【0207】
この研究は、他の後天的末梢神経障害のモデル化における進歩をもたらし得る。医原性神経障害は、シスプラチンなどの化学療法薬による処置後にがん患者において一般に観察される(QuasthoffおよびHartung;Thompsonら、1984年)。hPSC由来系列を使用するin vitro細胞毒性試験とHTSとの組合せは、これらの化学療法剤の細胞型特異的副作用を反転させる潜在的薬物の同定のためのプラットフォームとして機能し得る。
【0208】
結論として、この研究は、健康および疾患におけるそれらの生物学を探索し、DPNに対する新規治療を開発するためにヒトSC系列を入手するための有効な枠組みを提示する。hPSCの方向付けられた分化は、基礎研究および橋渡し研究において広い意義を有する、ヒトSCの大規模誘導のための有効なアプローチを提示する。この枠組みは、PNSの生物学および疾患におけるグリアの役割の徹底的な研究のための新たな可能性を提供し、将来的な末梢神経障害に対する新規治療剤の開発に寄与する。この研究は、DPNの病理発生におけるSC欠損をさらに示し、DPN関連損傷をin vitroおよびin vivoで処置できるFDA承認された薬物としてBPを提示する。
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】

【表1-6】

【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】

【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】

【表3-5】

【表4-1】

【表4-2】

【表4-3】

【表4-4】

【表4-5】

【表4-6】

【表5】
【0209】
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図1ABCD
図1EF
図1GH
図1I
図2ABCD
図2E
図3ABCD
図3E
図3F
図4
図5ABC
図5DEFG
図6
図7AB
図7C-1】
図7C-2】
【外国語明細書】