(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059165
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】歯科用粉液混練型調剤包装体
(51)【国際特許分類】
A61C 5/68 20170101AFI20220406BHJP
A61C 5/66 20170101ALI20220406BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
A61C5/68
A61C5/66
A61J1/10 333A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166730
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】品川 裕作
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達矢
【テーマコード(参考)】
4C047
4C052
【Fターム(参考)】
4C047AA12
4C047BB18
4C047BB20
4C047CC04
4C047CC14
4C047DD12
4C047DD22
4C047DD33
4C047FF06
4C047HH05
4C052AA17
4C052HH02
4C052HH05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】袋体の内部空間を、液材を収容した第一の内部空間と粉材を収容した第二の内部空間とに離隔している剥離自在な離隔領域を、その幅方向全体に渡って確実に剥離することができる、歯科用粉液混練型調剤包装体を提供する。
【解決手段】袋体4を構成する片面壁と他面壁との外面には、夫々、摘み片14aが付設されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層又は積層合成樹脂フィルムから形成された片面壁及び単層又は積層合成樹脂フィルムから形成された他面壁から構成され、全周縁は閉じられており、内部空間の幅方向全体に渡って該片面壁の内面と該他面壁の内面とが剥離自在に固着されて該内部空間を第一の内部空間と第二の内部空間に隔離している隔離領域が配設されている袋体と、該第一の内部空間に収容された液材と、該第二の内部空間に収容された粉材とを具備する歯科用粉液混練型調剤包装体において、
該片面壁の外面と該片他面壁の外面には摘み片が付設されている、ことを特徴とする歯科用粉液混練型調剤包装体。
【請求項2】
該摘み片の各々は該隔離領域において該片面壁の外面及び該他面壁の外面に夫々固着された基端部と該基端部から延出する摘み部とから構成されている、請求項1記載の歯科用粉液混練型調剤包装体。
【請求項3】
該摘み片の各々の該基端部は該隔離領域の幅方向全体に渡って幅方向に延在している、請求項2記載の歯科用粉液混練型調剤包装体。
【請求項4】
該離隔領域は矩形状であり、該摘み片の各々の該基端部は該離隔領域と同一の寸法の矩形状であり、該掴み片の各々の該基端部は該離隔領域に整合配置されている、請求項3記載の歯科用粉液混練型調剤包装体。
【請求項5】
該摘み片の各々の該摘み部の自由端縁は凸円弧形状である、請求項2から4までのいずれかに記載の歯科用粉液混練型調剤包装体。
【請求項6】
該摘み片の各々の該摘み部は該基端部から該第二の内部空間側に延出している、請求項2から5までのいずれかに記載の歯科用粉液混練型調剤包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉材と液材とが分離して収容されている歯科用粉液混練型調剤包装体、更に詳しくは単層又は積層合成樹脂フィルムから形成された片面壁及び単層又は積層合成樹脂フィルムから形成された他面壁から構成され、全周縁は閉じられており、内部空間の幅方向全体渡って片面壁の内面と他面壁の内面とが剥離自在に固着されて内部空間を第一の内部空間と第二の内部空間とに離隔している離隔領域が配設されている袋体と、第一の内部空間に収容された液材と第二の内部空間に収容された粉材とを具備する歯科用粉液混練型調剤包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯床裏装材の如き歯科用調剤は、別個に準備した(メタ)アクリル酸系ポリマー及び酸化剤を主成分とする粉材と(メタ)アクリル酸系モノマー等の重合性単量体及び還元剤を主成分とする液材とを使用に際して、所定の割合で混練して生成される。かような歯科用粉液混練型調剤を便宜に提供する歯科用粉液混練型調剤包装体として、下記特許文献1及び2には、積層合成樹脂フィルムから形成された片面壁及び積層合成樹脂フィルムから形成された他面壁から構成され、片面壁と他面壁との全周縁は相互に溶着することによって閉じられている袋体を具備する歯科用粉液混練型調剤包装体が開示されている。袋体の内部空間は、その幅方向全体に渡って片面壁の内面と他面壁の内面とを剥離自在に溶着した離隔領域によって第一の内部空間と第二の内部空間とに離隔されており、第一の内部空間には液材が収容され、第二の内部空間には粉材が収容されている。
【0003】
液材と粉材を混錬して調剤を生成する際には、液材が収容されている空間に押圧力を加えて離隔領域に向けて液材を強制し、これによって離隔領域を剥離し液材を収容している第一の内部空間と粉材を収容している第二の内部空間とを連通して液材を粉材に混入し、次いで指或いは適宜の器具によって袋体に所要作用を加えて粉材と液材を混錬する。しかる後に、袋体を開封して混練された調剤を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-223237号公報
【特許文献2】特開2019-182765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、本発明者等の経験によれば、上述したとおりの従来の歯科用粉液混練型調剤包装体には、離隔領域を剥離して液材を収容している第一の内部空間と粉材を収容している第二の内部空間とを連通する際に、離隔領域がその幅方向全体に渡って剥離されずに一部、特に両側部が剥離されることなく固着されたままの状態で残留し、固着されたままの状態で残留した部位の第一の内部空間側に、第一の内部空間に収容されていた液材の一部及び/又は第二の内部空間から第一の内部空間に逆流した粉材が滞留し、これに起因して液材体と粉材との混合が不充分になる、或いは上記部位に滞留した液材及び/又は粉材を第二の内部空間に流動するための付加的な作業を必要とする、という問題が存在することが判明した。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、離隔領域をその幅方向全体に渡って確実に剥離することができる、新規且つ改良された歯科用粉液混練型調剤包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究及び実験の結果、袋体の片面壁の外面と他面壁の外面とに摘み片を付設することによって、上記主たる技術的課題を解決することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成することができる歯科用粉液混練型調剤包装体として、
単層又は積層合成樹脂フィルムから形成された片面壁及び単層又は積層合成樹脂フィルムから形成された他面壁から構成され、全周縁は閉じられており、内部空間の幅方向全体に渡って該片面壁の内面と該他面壁の内面とが剥離自在に固着されて該内部空間を第一の内部空間と第二の内部空間に隔離している隔離領域が配設されている袋体と、該第一の内部空間に収容された液材と、該第二の内部空間に収容された粉材とを具備する歯科用粉液混練型調剤包装体において、
該片面壁の外面と該片他面壁の外面には摘み片が付設されている、ことを特徴とする歯科用粉液混練型調剤包装体が提供される。
【0009】
好ましくは、該摘み片の各々は該隔離領域において該片面壁の外面及び該他面壁の外面に夫々固着された基端部と該基端部から延出する摘み部とから構成されている。該摘み片の各々の該基端部は該隔離領域の幅方向全体に渡って幅方向に延在しているのが好適である。殊に、該離隔領域は矩形状であり、該摘み片の各々の該基端部は該離隔領域と同一の寸法の矩形状であり、該掴み片の各々の該基端部は該離隔領域に整合配置されているのが好適である。好ましくは、該摘み片の各々の該摘み部の自由端縁は凸円弧形状である。該摘み片の各々の該摘み部は該基端部から該第二の内部空間側に延出しているのが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯科用粉液混練型調剤包装体においては、袋体の片面壁の外面と他面壁の外面とに摘み片が付設されている故に、隔離領域を剥離する際には、必要に応じて2個の摘み片を夫々指で把持して片面壁と他面壁とを相互に離隔する方向に引っ張ることによって、離隔領域を幅方向全体に渡って確実に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って構成された歯科用粉液混練型調剤包装体の好適実施形態を、摘み片を省略して図示する平面図。
【
図2】本発明に従って構成された歯科用粉液混練型調剤包装体の好適実施形態を図示する平面図。
【
図3】
図2の線III-IIIにおける拡大横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された歯科用粉液混練型調剤包装体の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0013】
本発明に従って構成された歯科用粉液混練型調剤包装体の好適実施形態を摘み片(後述する)を省略して図示する
図1と共に
図3を参照して説明すると、全体を番号2で示す図示の歯科用粉液混練型調剤包装体は、片面壁6及び他面壁8(
図3)から構成された袋体4を具備している。片面壁6と他面壁8とは実質上同一寸法で矩形状であるのが好都合である。片面壁6及び他面壁8の各々は、単層合成樹脂フィルムから形成することもできるが、積層樹脂フィルム、殊に液体及び気体バリア性を有する外側層と加熱溶着性を有する内側層(シーラント層)とを含む積層合成樹脂フィルム、から形成されているのが好ましい。外側層を構成する好適合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレプタレートフィルム及びシリカを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムを例示することができる。内側層を構成する好適合成樹脂フィルムとしては、エチレン、(メタ)アクリル酸アクリル酸エステルの共重合物のアイオノマーを主成分とするポリマーアロイとポリエチレンの混合物から形成されたフィルムを例示することができる。必要に応じて液体及び気体バリア性並びに紫外線遮断性等に優れた合成樹脂フィルム、例えばポリエチレンフィルム及びエチレンービニルアルコール共重合体フィルム、を中間層として外側層と内側層との間に介在させることもできる。袋体4内に収容される粉体及び液体を目視することができるように、片面壁6と他面壁8との少なくとも一方は透明乃至半透明であるのが好都合である。袋体4は片面壁6を形成するフィルムと他面壁8を形成するフィルムとの2枚のフィルルを相互に重ね合わせ、所要部位を固着することによって、或いは単一のフィルムを折り畳んで重ね合わせ、所要部位を固着することによって作成することができる(固着については次に言及する)。
【0014】
袋体4を構成する片面壁6と他面壁8とは全周縁に渡って閉じられていて密閉された内部空間が規定されていることが重要である。図示の実施形態においては、便宜上
図1おいて密に黒点を付した領域において片面壁6を形成するフィルムの内面と他面壁8を形成するフィルムの内面とが固着されている。従って、袋体4内には矩形状の内部空間が規定されている。片面壁6を形成するフィルムの内面と他面壁8を形成するフィルムの内面との固着は加熱溶着によって遂行するのが好都合である。更に、片面壁6を形成するフィルムと他面壁8を形成するフィルムの内面とは、便宜上
図1において疎に黒点を付した領域、即ち
図1において左右方向の適宜の部位において袋体4の内部空間の幅方向全体に渡って延在する領域、において剥離自在に固着されており、幅方向に細長く延在する矩形状であるのが好都合である離隔領域10が配設されている。従って、袋体4の内部空間は離隔領域10によって第一の内部空間12aと第二の内部空間12bとに離隔されている。片面壁6を形成するフィルムと他面壁8を形成するフィルムの内面との剥離自在な固着も加熱溶着によって遂行するのが好都合である。そして、第一の内部空間12a内には所定量の液材(図示していない)が収容され、第二の内部空間12b内には所定量の粉材(図示していない)が収容されている。
【0015】
図2及び
図3を参照して説明を続けると、本発明に従って構成された歯科用粉液混練型調剤包装体2においては、片面壁6の外面と他面壁8の外面には、夫々、掴み片14a及び14bが付設されていることが重要である。図示の実施形態においては、摘み片14a及び14bの各々は、袋体4の片面壁6の外面及び他面側8の外面に夫々固着される基端部16a及び16bとかかる基端部16a及び16bから延出する摘み部18a及び18bとから構成されている。
図2においては、便宜上片面壁6の外面及び他面側8の外面に対する摘み片14a及び14bの基端部16a及び16bの固着を密な黒点を付して示している。摘み片14a及び14bの基端部16a及び16bは、袋体4の離隔領域10において片面壁6の外面及び他面壁の外面8に固着されているのが好適である。特に、掴み片14a及び14bの基端部16a及び16bは、離隔領域10の幅方向全体に渡って延在する、殊に離隔領域10と実質上同一寸法の矩形状であり離隔領域10と整合配置されている、のが好都合である。一方、基端部16a及び16bから延出する掴み部18a及び18bは、掴み部18a及び18bの掴み勝手及び美観の見地から、自由端縁が凸円弧形状であるのが望ましい。更に、掴み部18a及び18bは、粉体が収容されている第二の内部空間12b側(
図2においては左側、
図3においては下側)に延出しているのが好ましい。上記のとおりの摘み片14a及び14bは、片面壁6を形成するフィルムと他面壁8を形成するフィルムとを全周縁に渡って固着して袋体4を形成するのに先立って、片面壁6を形成するフィルムの外面と他面壁8を形成するフィルムの外面とに固着するのが好都合である。片面壁6を形成するフィルムの外面及び他面壁8を形成するフィルムの外面への摘み片14a及び14bの固着も加熱溶着によって遂行するのが望ましい。摘み片14a及び14bは、例えば厚さが40μm乃至200μm程度であって容易に破断することのない強度を有し、加熱溶着性を有する単層又は積層合成樹脂フィルムから形成することができる。単層フィルム及び積層フィルムの内側層を構成する好適合成樹脂フィルムとしては、エチレン、(メタ)アクリル酸アクリル酸エステルの共重合物のアイオノマーを主成分とするポリマーアロイとポリエチレンの混合物から形成されたフィルムを例示することができる。積層フィルムの外側層を構成する好適合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びシリカを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムを例示することができる。
【0016】
上述したとおりの歯科用粉液混練型調剤包装体2において、袋体4の第一の内部空間12aに収容されている液材と第二の内部空間12bに収容されている粉材とを混錬して歯科用調剤を生成する際には、摘み片14a及び14bの摘み部18a及び18bを夫々指で摘まみ、相互に離隔する方向(
図3において左右方向)に引っ張る。かくすると、摘み片14a及び14bの基端部16a及び16bを介して離隔領域10に効果的に引っ張り力が伝えられ、これによって一部を固着状態に残留させることなく離隔領域10を全体に渡って剥離することができる。離隔領域10を剥離する際に、
図3に図示する如く、袋体4を第一の内部空間12aが上方に第二の内部空間12bが下方に位置する状態で直立した状態に維持すると、離隔領域10の剥離と同時に第一の内部空間12aに収容されている液体を第二の内部空間12bに向けて流下させることができる。摘み片14a及び14bの摘み部18a及び18bが第二の内部空間12b側(
図3において下側)に延出している場合、上述したとおりの直立状態に維持されている袋体4における摘み片14a及び14bの摘み部18a及び18bを好都合に把持して相互に離隔する方向に引っ張ることができる。所望ならば、上記摘み片の引っ張り操作は、液材が収容されている空間に押圧力を加えて離隔領域に向けて液材を強制し、これによって離隔領域の剥離を少なくとも部分的に遂行した後に、必要に応じて遂行することもできる。この場合には、離隔領域における上記押圧により剥離しなかった部分のみを剥離すればよいので、引っ張りに要する力が小さくなり、引っ張り操作時における力のかけ過ぎによる破損を確実に回避することができる。第一の内部空間12aに収容されていた液材の実質上全てが第二の内部空間12bに流動され粉材に混合されると、指によって或いは上記特許文献2に開示されている混練具の如き適宜の混練具を使用して、粉材と液材とを混錬する。しかる後に、袋体4の適宜の部位を破って、粉材と液材を混錬して生成されたペースト状の調剤を袋体4から取り出して使用する。
【符号の説明】
【0017】
2:歯科用粉液混練型調剤包装体
4:袋体
6:片面壁
8:他面壁
10:離隔領域
12a:第一の内部空間
12b:第二の内部空間
14a:摘み片
14b:摘み片
16a:基端部
16b:基端部
18a:摘み部
18b:摘み部