(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059181
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】インペラ、軸流ファン、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/38 20060101AFI20220406BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
F04D29/38 C
F04D29/66 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166754
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】日本電産サーボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝則
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AB66
3H130AB68
3H130AC19
3H130BA03C
3H130CB01
3H130DD01Z
3H130EB01C
(57)【要約】
【課題】サージングを改善し、高いPQ特性を得られるインペラを提供することである。
【解決手段】中心軸を中心に回転する軸流ファンのインペラであって、前記インペラは、中心部にハブを有し、前記ハブから径方向外側に延びると共に、回転方向前側の翼先端部と回転方向後側の翼後端部とを有する翼を備え、前記翼先端部は、前記翼後端部よりも軸方向一方側に設けられ、前記翼の軸方向他方側の面は、前記翼先端部と前記翼後端部を周方向に結ぶ翼弦に対し、軸方向一方側に湾曲した凹面であり、前記翼の軸方向一方側の面は、ハブの周方向の所定位置から中心軸から離れる方向に連なる第一凸面と第二凸面とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心に回転する軸流ファンのインペラであって、
前記インペラは、中心部にハブを有し、前記ハブから径方向外側に延びると共に、回転方向前側の翼先端部と回転方向後側の翼後端部とを有する翼を備え、
前記翼先端部は、前記翼後端部よりも軸方向一方側に設けられ、
前記翼の軸方向他方側の面は、前記翼先端部と前記翼後端部を周方向に結ぶ翼弦に対し、軸方向一方側に湾曲した凹面であり、
前記翼の軸方向一方側の面は、ハブの周方向の所定位置から中心軸から離れる方向に連なる第一凸面と第二凸面とを有する
インペラ。
【請求項2】
前記翼の軸方向他方側の面は、前記翼弦よりも軸方向一方側に位置し、
前記翼の軸方向他方側の面と前記翼弦との距離は、周方向に真ん中よりも前記翼先端部に近い側が最も離れている
請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記第一凸面は前記翼先端部側に設けられ、前記第二凸面は前記翼後端部側に設けられた
請求項1又は2に記載のインペラ。
【請求項4】
前記第二凸面は、前記ハブから前記翼の径方向外側端部まで連なっている
請求項1から3のいずれか1項に記載のインペラ。
【請求項5】
前記第二凸面の周方向から見た頂点は、前記翼後端部と一定の間隔で中心軸から離れる方向に連なる
請求項1から4のいずれか1項に記載のインペラ。
【請求項6】
前記第二凸面の頂点は、前記翼弦と等しい距離で中心軸から離れる方向に連なる
請求項1から5のいずれか1項に記載のインペラ。
【請求項7】
複数の前記翼を有し、
前記複数の翼のそれぞれで、前記翼後端部から前記第二凸面の間隔が異なる
請求項1から6のいずれか1項に記載のインペラ。
【請求項8】
複数の前記翼を有し、
前記複数の翼のそれぞれで、前記翼弦から前記第二凸面の距離が異なる
請求項1から6のいずれか1項に記載のインペラ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のインペラを有する吸気側ファンと、
排気側ファンと、
を直列に配置して成る
軸流ファン。
【請求項10】
請求項9に記載の軸流ファンを有する
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラ、軸流ファン、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸流ファンは、複数の翼を備えたインペラが回転することで軸方向に空気を流す。従来、ファンの騒音を抑えることを目的として、翼を湾曲させた形状にすることが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸流ファンの性能の一つはPQ特性(静圧-風量特性)によって求められる。高風量を要求される軸流ファンでは、インペラの回転軸に対して翼の取付け角を大きくすることが考えられる。しかし、大きな取付け角の翼は、PQ特性の一部を低下させるサージング域を持つという問題があった。サージング域では、空気の流れは回転する翼の前後で乱れるサージング現象が発生している。この現象により、翼が回転して送る空気の量が減少してしまうため、圧力Pを増やすことが出来ないまま風量Qは低下する。特許文献1のように翼を湾曲させた場合もサージングに改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、サージングを改善し、高いPQ特性を得られるインペラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な第1発明は、中心軸を中心に回転する軸流ファンのインペラであって、前記インペラは、中心部にハブを有し、前記ハブから径方向外側に延びると共に、回転方向前側の翼先端部と回転方向後側の翼後端部とを有する翼を備え、前記翼先端部は、前記翼後端部よりも軸方向一方側に設けられ、前記翼の軸方向他方側の面は、前記翼先端部と前記翼後端部を周方向に結ぶ翼弦に対し、軸方向一方側に湾曲した凹面であり、前記翼の軸方向一方側の面は、ハブの周方向の所定位置から中心軸から離れる方向に連なる第一凸面と第二凸面とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本願の例示的な第1発明によれば、サージングを改善し、高いPQ特性を得られるインペラを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るファンを示す斜視図である。
【
図2】ファン10を、排気側ファン200が吸気側ファン100よりも手前側となる向きで示す斜視図である。
【
図3】ファン10を、Z軸と直交する面で切断して示す斜視断面図である。
【
図4】インペラ120を+Y側から見た平面図である。
【
図5】インペラ120を+Z側から見た側面図である。
【
図7】ファン10のPQ特性を、従来と対比させて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るファンについて説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0010】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Y軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Z軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち
図1の上下方向とする。X軸方向は、Z軸方向とY軸方向との両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0011】
また、以下の説明においては、Y軸方向の正の側(+Y側)を「フロント側」又は「一方側」と呼び、Y軸方向の負の側(-Y側)を「リア側」又は「他方側」と呼ぶ。なお、リア側(他方側)及びフロント側(一方側)とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。周方向において図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。周方向の正の側(+θ側)を「一方側」と呼び、周方向の負の側(-θ側)を「他方側」と呼ぶ。
【0012】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。
【0013】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るファンを示す斜視図である。ファン10は、軸流ファンである。ファン10は、吸気側ファン100と、排気側ファン200と、を有する。ファン10は、吸気側ファン100と排気側ファン200を直列に配置して成る。吸気側ファン100と排気側ファン200とは軸方向に並ぶ。
【0014】
図1は、ファン10を、吸気側ファン100が排気側ファン200よりも手前側となる向きで示す斜視図である。
図1に示す通り、吸気側ファン100は、中心軸Jを中心に回転可能なインペラ120と、インペラ120の径方向外側に配置されたハウジング101と、を備える。インペラ120は、
図1の矢印Aが示す方向、すなわち、周方向一方側に回転する。周方向一方側は、インペラ120の回転方向前側であり、周方向他方側は、インペラ120の回転方向後側である。
【0015】
インペラ120は、中心部のハブ121と、ハブ121から径方向外側に延びる翼122、123、124、125及び126とを有する。
インペラ120が、矢印Aが示す方向に回転したとき、翼122、123、124、125及び126の軸方向一方側の面は負圧面となり、軸方向他方側の面は正圧面となる。
【0016】
ハウジング101は、インペラ120を収容する。ハウジング101は、中心軸J方向に延びる円筒形状の円筒部103と、円筒部103の軸方向他方側に配置されたフランジ部102と、円筒部103の軸方向一方側に配置されたフランジ部104と、を備える。
【0017】
図2は、ファン10を、排気側ファン200が吸気側ファン100よりも手前側となる向きで示す斜視図である。
図2に示す通り、排気側ファン200は、中心軸Jを中心に回転可能なインペラ220と、インペラ220の径方向外側に配置されたハウジング201と、を備える。インペラ220は、
図2の矢印Bが示す方向、すなわち、周方向他方側に回転する。周方向他方側は、インペラ220の回転方向前側であり、周方向一方側は、インペラ120の回転方向後側である。
【0018】
インペラ220は、中心部のハブ221と、ハブ221から径方向外側に延びる翼222、223及び224とを有する。
インペラ220が、矢印Bが示す方向に回転したとき、翼222、223及び224の軸方向一方側の面は負圧面となり、軸方向他方側の面は正圧面となる。
【0019】
ハウジング201は、インペラ220を収容する。ハウジング201は、中心軸J方向に延びる円筒形状の円筒部203と、円筒部203の軸方向一方側に配置されたフランジ部202と、円筒部203の軸方向他方側に配置されたフランジ部204と、を備える。
【0020】
ファン10は、吸気側ファン100のフランジ部102の軸方向他方側の面と排気側ファン200のフランジ部202の軸方向一方側の面とを軸方向に対向し、例えば不図示のボルトによって固定して成る。
【0021】
ファン10において、インペラ120は、
図1の矢印Aが示す方向、すなわち、周方向一方側に回転させ、インペラ220は、
図2の矢印Bが示す方向、すなわち、周方向他方側に回転させることで、軸方向一方側から軸方向他方側へと軸方向に空気を流す。吸気側ファン100の回転方向は、排気側ファン200の回転方向と逆である。ファン10は、二重反転ファンである。
【0022】
図3は、ファン10を、Z軸と直交する面で切断して示す斜視断面図である。
図3の断面図の切断面は、翼122の断面が見える位置である。
【0023】
吸気側ファン100は、インペラ120と、インペラ120を回転させる不図示のモータを備える。インペラ120は、軸方向一方側に底を有して軸方向他方側が開口する有底円筒形状のハブ121を備える。ハブ121は、モータを収容する。モータは、その軸方向他方側をモータハウジング161に支持される。モータハウジング161は、ハブ121の軸方向他方側の開口部側に配置された略円板形状の部材である。モータハウジング161は、その径方向外側端部を、リブ160を介してハウジング101に固定される。リブ160は、周方向に複数設けられる。モータハウジング161、リブ160及びハウジング101は同一部材であってもよい。
【0024】
排気側ファン200は、インペラ220と、インペラ220を回転させる不図示のモータを備える。インペラ220は、軸方向一方側に底を有して軸方向他方側が開口する有底円筒形状のハブ221を備える。ハブ221は、モータを収容する。モータは、その軸方向一方側をモータハウジング261に支持される。モータハウジング261は、ハブ221の軸方向他方側の開口部側に配置された略円板形状の部材である。モータハウジング261は、その径方向外側端部を、リブ260を介してハウジング201に固定される。リブ260は、周方向に複数設けられる。モータハウジング261、リブ260及びハウジング201は同一部材であってもよい。
【0025】
インペラ120は、ハブ121から径方向外側に延びる翼122、123、124、125及び126を有する。翼122、123、124、125及び126は、ハブ121を中心にして、周方向に等間隔で配置されている。また、翼122、123、124、125及び126は、同一の形状、同一の大きさである。本発明は、これに限られるものではなく、周方向に配置されている翼122、123、124、125及び126、のいずれかの間隔が異なってもよい。また、翼122、123、124、125及び126のうちのいずれかは、形状及び大きさの少なくとも一方が他の翼と異なってもよい。
【0026】
以下では、翼122、123、124、125及び126の複数の翼を代表して翼122についての説明を行い、他の翼についての説明は省略する。また、本実施形態では、吸気側ファン100の翼の数を5枚として説明しているがこれに限られるものではない。更に、排気側ファン200の翼は、吸気側ファン100の翼と異なる数、異なる形状、及び異なる大きさであるが、本発明はこれに限られるものではない。排気側ファン200の翼は、吸気側ファン100の翼と同様であってもよい。
【0027】
翼122は、インペラ120の回転方向前側の翼先端部122aが、回転方向後側の翼後端部122bよりも軸方向一方側に設けられている。翼122の軸方向一方側の面である面142は、ハブ121の周方向の所定位置から中心軸Jから離れる方向に連なる複数の凸面を有する。
【0028】
凸面は、翼先端部122a側に設けられる第一凸面151と、翼後端部122b側に設けられる第二凸面152を有する。面142は、第一凸面151と第二凸面152との間に、第一凸面151の裾と第二凸面152の裾とを滑らかに接続する変曲箇所153を有する。
【0029】
一般に翼の形状は、翼の先端部と後端部を結ぶ線を翼玄と、翼上面と翼下面との距離である翼厚と、翼上面と翼下面との間の中心位置を、翼先端部から翼後端部まで結ぶ線であるキャンバーとで表現される。翼先端から翼後端まで一様に連なる滑らかな曲線で示される翼厚やキャンパーがよく知られている。
【0030】
翼122においては、翼122の軸方向他方側の面である面141は、翼弦140に対し、軸方向一方側に湾曲した凹面である。また、翼122の軸方向一方側の面である面142は、ハブ121の周方向の所定位置から中心軸Jから離れる方向に連なる第一凸面151と第二凸面152とを有する。翼上面すなわち翼122の軸方向一方側の面である面142の軸方向位置の影響を受けて翼厚の変化は周方向に変動する。翼122の翼厚は、翼先端部122aから第一凸面151の頂点に向けて大きくなり、第一凸面151の頂点から変曲箇所153に向けて小さくなり、変曲箇所153から第二凸面152の頂点に向けて大きくなり、第二凸面152の頂点から翼後端部122bに向けて小さくなる。
【0031】
翼122におけるキャンパーは、翼の途中で変曲点を持つ。翼の正圧面側は、滑らかな曲線である。しかし、翼の負圧面側は、第二凸面152が設けられており変曲しており、キャンパーも同様に変曲する。翼の正圧面側は、滑らかな曲線であるが、翼の負圧面側は、第一凸面151、第二凸面152および変曲箇所153が設けられており、キャンパーも同様に変曲点をもつ。
【0032】
図4は、インペラ120を+Y側から見た平面図である。
図5は、インペラ120を+Z側から見た側面図である。
図6は、インペラ120の斜視図である。
面141は、翼弦140よりも軸方向一方側に位置する。面141と翼弦140との距離は、周方向に真ん中の位置である位置140aよりも、翼先端部122aに近い側の位置である位置140bにおいて、最も離れている。すなわち翼122の面141の軸方向位置は、位置140bで翼弦140から最も離れ、翼先端部122aに近づくにつれて翼弦140に徐々に近づき、翼後端部122bに近づくにつれて翼弦140に徐々に近づく。面141には、このほかの凹凸が無く、変曲箇所は無い。
【0033】
線152aは、中心軸Jから離れる方向に連なる第二凸面152の頂点を結ぶ線である。線152aは、翼後端部122bと一定の間隔で連なっている。なお、複数の翼122、123、124、125及び126のそれぞれで、第二凸面の位置、大きさが異なってもよいし、同じであってもよい。
【0034】
図7は、ファン10のPQ特性を、従来と対比させて示す図である。
図7において、縦軸は圧力(P)であり、横軸は風量(Q)である。
図7は、流体解析によって求めたPQ特性を示す。
図7における第1実施形態とは、
図1に示したファン10を示す。
図7における従来とは、インペラの軸方向一方側の面に第二凸面を有しないファンを示す。
図7においては、ファン10のPQ特性を太線の実線で示し、従来のファンのPQ特性を細線の実線で示す。
図7に示すように、従来のファンではサージングによる圧力Pの低下が確認できるが、本実施形態のファン10によればサージングによる圧力Pの低下が抑えられている。
【0035】
従来の翼において、正圧面側(軸方向他方側)は、翼によって空気が押されることで軸方向の空気の流れができる。翼の正圧面側を流れる空気は、翼の傾きが大きくなるに従って加速する。
【0036】
また、負圧面側(軸方向一方側)は、翼の負圧面側に沿って空気の流れができる。翼の負圧面側を流れる空気は、翼の傾きが大きくなるに従って加速し、同時に圧力が低下する。サージング領域においては、流れに乱れが発生する。
【0037】
本実施形態の翼122では、負圧面側(軸方向一方側)において、中心軸から離れる方向に連なる第二凸面152の頂点を結ぶ線152aが、翼後端部122bと一定の間隔で連なるようにしている。
負圧面側の空気の流れは、翼先端部122aから第一凸部151に沿って加速し周方向中央部に向かう。空気の圧力は、加速によって低下し流れに乱れが発生する場合もあるが、翼先端部122aから中央部に凹部があることで乱れの成長を抑制でき流れの大きな乱れには成長しない。
また、負圧面側の空気は、中央部から第二凸部152に沿って加速し翼後端部122bに向かう。空気の圧力は、加速によって低下し流れの乱れが発生する場合もあるが、中央部から翼後端部122bまでの距離が短いことから、流れの大きな乱れに成長することを抑えることができる。
また、翼後端部122bにおける負圧面側の空気の流れは、回転方向後側の凸部によって正圧面側の空気の流れと同方向に流れる量が増えるため、翼後端部での合流時の乱れを抑制できる。
【0038】
第二凸部152の頂点を結ぶ線152aと翼後端部122bとの間隔を径方向に変化させ、径方向位置で異なる空気の流れに合わせることで、空気の乱れをより抑制できる場合がある。
【0039】
翼は複数あり、負圧面の第二凸部152の位置、大きさを、それぞれ異ならせることで、より広い圧力(P)範囲で風量(Q)の低下を抑制できる場合がある。複数の翼で全て同じ形状の場合には、PQ特性の低下を特定の圧力で抑制できる。一方、異なる形状とすることで、特定の圧力での風量低下の抑制効果は限定されるが、広い圧力範囲で風量の低下を抑制できる。
また、各翼で発生する空気の流れの乱れは、互いに影響しあうので、各翼面にそれぞれ異なる第二凸部152を設けることで、圧力(P)風量(Q)特性の低下を抑制できる場合がある。
【0040】
特に、二重反転ファンでは、吸気側ファン100と排気側ファン200の間の軸方向中央部にリブ(リブ160及び260)が設けられている。空気の流れの乱れはこのリブによって更に大きくなり、PQ特性の低下、騒音や振動の原因となる。本実施形態の吸気側ファン100の翼122の形状によれば、空気の流れの大きな乱れが発生することを抑制できるので、リブによる空気の乱れを抑制できる。
【0041】
上述したファン10は、例えば情報処理装置に内蔵された冷却用ファンとして用いることができる。情報処理装置の例としては、携帯電話、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどを挙げることができる。このような情報処理装置では、小型化のため、多くの部品が小さな筐体内に収容され、冷却用の送風の通路が狭い。このため、冷却用ファンには高いPQ特性が求められ、上述したファン10が適している。
【0042】
<インペラ120の作用・効果>
次に、インペラ120の作用・効果について説明する。
【0043】
上述の実施形態に係る発明においては、中心軸を中心に回転する軸流ファンのインペラであって、前記インペラは、中心部にハブを有し、前記ハブから径方向外側に延びると共に、回転方向前側の翼先端部と、回転方向後側の翼後端部とを有する翼を備え、前記翼先端部は、前記翼後端部よりも軸方向一方側に設けられ、前記翼の軸方向他方側の面は、前記翼先端部と前記翼後端部を周方向に結ぶ翼弦に対し、軸方向一方側に湾曲した凹面であり、前記翼の軸方向一方側の面は、ハブの周方向の所定位置から中心軸から離れる方向に連なる第一凸面と第二凸面とを有する。
負圧面(翼の軸方向一方側の面)側の空気の流れは、加速によって乱れるが、変曲箇所(第一凸面と第二凸面の間)を設けることで空気の流れの大きな乱れへの成長を抑制できる。また、翼後端部と最後の凸面(第二凸面の間)の距離が短く、空気の流れの大きな乱れに成長することを抑制できる。また、最後の凸面(第二凸面の間)により、翼後端部の負圧面側の空気の流れは正圧面(翼の軸方向他方側の面)側の空気の流れと同等まで加速するため、合流後の流れの乱れを抑制できる。
【0044】
また、前記翼の軸方向他方側の面は、前記翼弦よりも軸方向一方側に位置し、前記翼の軸方向他方側の面と前記翼弦との距離は、周方向に真ん中よりも前記翼先端部に近い側が最も離れている。
翼の正圧面の翼弦との距離は、周方向に真ん中よりも翼先端部に近い側が最も離れており、変曲箇所は無い。その為、正圧面側の空気は、翼面に沿って徐々に加速するため、流れの乱れを抑制できる。
【0045】
また、前記第一凸面は前記翼先端部側に設けられ、前記第二凸面は前記翼後端部側に設けられた。
翼の負圧面の翼弦との距離は、変曲箇所よりも変曲箇所の両側の翼先端部側と翼後端部側が離れており、凸面(第一凸面及び第二凸面)となる。その為、負圧面側の空気は、第一凸面で加速後翼面に沿って流れ、変曲点からの第二凸面で再び加速することで、空気の流れに乱れの発生や成長を抑制できる。
【0046】
また、前記第二凸面は、前記ハブから前記翼の径方向外側端部まで連なっている。
翼の径方向全体で、空気の流れの乱れの発生と成長を効率よく抑制できる。
【0047】
また、前記第二凸面の周方向から見た頂点は、前記翼後端部と一定の間隔で中心軸から離れる方向に連なる。
空気の流れの乱れの発生と成長を効率よく抑制できる。
【0048】
また、前記第二凸面の頂点は、前記翼弦と等しい距離で中心軸から離れる方向に連なる。
負圧面側の空気の流れは、第二凸面にそって流れ、翼後端部で正圧面側の空気の流れと合流する。第二凸面の高さが径方向に等しいので、空気の流れの速さも径方向に等しくでき、高さの設定が容易となる。
【0049】
また、複数の前記翼を有し、前記複数の翼のそれぞれで、前記第二凸面の位置が異なる。
また、複数の前記翼を有し、前記複数の翼のそれぞれで、前記第二凸面の大きさが異なる。
翼の取付け角、形状、回転数によりPQ特性、及びサージング域等が変化する。しかし、サージング域で発生、成長する流れの乱れは、凸面の形状により抑制できる。
複数の翼で全て同じ翼形状にすることで、一つの回転数のサージングによるPQ特性の低下を抑制できる。一方、複数の回転数で使用する場合には、最適な凸面形状が異なる。複数の翼のそれぞれで凸面形状を変えることで、抑制効果は下がるが、より広い回転数でPQ特性の低下を抑制できる。
また、各翼で発生する空気の流れの乱れは、互いに影響しあうので、各翼面にそれぞれ異なる第二凸部152を設けることで、全体的な空気の乱れを抑制し、圧力(P)風量(Q)特性の低下を抑制できる。
【0050】
また、軸流ファンであって、前記インペラを有する吸気側ファンと、排気側ファンと、を直列に配置して成る。
特に、直列軸流ファンでは、吸気側ファンの翼の下流側にリブが設けられている。空気の流れの乱れはリブにより更に大きくなり、PQ特性の低下、騒音や振動の原因となる。吸気側ファンの翼を上記の形状にすることにより、空気の流れの大きな乱れが発生することを抑制できるので、リブでの空気の乱れを抑制できる。
【0051】
また、情報処理装置であって、前記軸流ファンを有する。
PQ特性を改善した軸流ファンによって冷却効果を向上した情報処理装置を提供することができる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
10 ファン
100 吸気側ファン
120 インペラ
121 ハブ
122 翼
122a 翼先端部
122b 翼後端部
140 翼弦
140a 位置
140b 位置
141 面
142 面
151 第一凸面
152 第二凸面
152a 線
153 変曲箇所
200 排気側ファン