(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059228
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/40 20060101AFI20220406BHJP
【FI】
B29C45/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166825
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】山守 勝也
(72)【発明者】
【氏名】西村 一平
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CB01
4F202CM01
4F202CM09
4F202CM90
(57)【要約】
【課題】射出成形後の型開きの際に固定型からの軟質成形体の型外しを安定させることができる金型を提供する。
【解決手段】金型1の固定型2の側には、成形後の型開きの開始に伴い成形体を可動型3の方向に押し出すための押出部材5が設けられる。押出部材5は、型閉じ状態において、射出空間4の固定型2側の壁面4bの一部を形成する表面5aを有する。押出部材5はスプリング6により可動型3の方向に付勢された状態に設けられるが、型閉じ状態においては可動型3の突出部8により壁面4bが面一となる退避位置に保持されている。押出部材5の表面5aには突起9が形成される。突起9は断面三角形状であり、表面5aの周方向における全周に亘って連続して形成されている。押出部材5は、突起9が軟質成形体に入り込んだ状態で、軟質成形体を固定型2から押し出す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と、
前記固定型に対して開閉可能に設けられ、型閉じ状態において前記固定型との間で、ショアA硬度80以下の成形体を射出成形するための空間を形成する可動型と、
前記固定型側に設けられ、前記空間の前記固定型側の壁面の一部を形成する表面を有し、成形後の前記可動型の型開き動作の開始に伴い前記可動型の方向に前記成形体を押し出すための押出部材と、
前記可動型の型開き動作の開始に伴い前記押出部材を前記可動型の方向に移動させる押出制御部材とを備え、
前記押出部材は前記表面に突起を有する、金型。
【請求項2】
前記突起は先端にいくほど細くなる形状に形成される請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記突起は前記表面の中心を間に挟んで相対する両側に形成される請求項1又は2に記載の金型。
【請求項4】
前記押出制御部材は、前記押出部材を可動型の方向に付勢するスプリングであり、
前記固定型は、前記表面の方向に突出して、型閉じ状態において前記表面の一部に先端が接触する突出部を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟質成形体を射出成形するための金型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、固定型(キャビティ型)と可動型(コア型)とを備えた射出成形金型により成形された成形体は、型開き動作に伴い可動型に張り付いた状態で固定型から外れる。また、型開きの際に固定型から成形体を外すために、固定型側に、可動型の型開き動作の開始に伴い可動型の方向に成形体を押し出す押出部材を備えた金型もある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ショアA硬度が80以下の軟質成形体にあっては、固定型側押出部材で成形体を押し出す際に、成形体の、固定型側押出部材に接触していない部位(非接触部位)が固定型に張り付いたままとなることで、成形体の、固定型側押出部材に接触している部位と前記非接触部位との間で成形体が曲がり、固定型側押出部材と成形体とにズレが生じる。ズレが生じることで、固定型押出部材からの押し出し力が成形体に上手く伝わらず、固定型からの成形体の型外しが安定しないという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされ、固定型からの軟質成形体の型外しを安定させることができる金型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の金型は、
固定型と、
前記固定型に対して開閉可能に設けられ、型閉じ状態において前記固定型との間で、ショアA硬度80以下の成形体を射出成形するための空間を形成する可動型と、
前記固定型側に設けられ、前記空間の前記固定型側の壁面の一部を形成する表面を有し、成形後の前記可動型の型開き動作の開始に伴い前記可動型の方向に前記成形体を押し出すための押出部材と、
前記可動型の型開き動作の開始に伴い前記押出部材を前記可動型の方向に移動させる押出制御部材とを備え、
前記押出部材は前記表面に突起を有する。
【0007】
本発明によれば、型開きの際に、押出部材の表面に形成される突起が軟質成形体に入り込んだ状態で軟質成形体を押出部材で押し出すので、押出部材と軟質成形体とにズレが生じるのを抑制できる。これにより、押出部材と軟質成形体との接触を安定させることができ、ひいては、固定型からの成形体の型外しを安定させることができる。
【0008】
また、前記突起は先端にいくほど細くなる形状に形成されてよい。これによれば、押出部材で軟質成形体を固定型から押し出した後に、軟質成形体を押出部材から容易に外すことができる。
【0009】
また、前記突起は前記表面の中心を間に挟んで相対する両側に形成されてよい。これによれば、押出部材で軟質成形体を固定型から押し出す際に、押出部材と軟質成形体とにズレが生じるのをより一層抑制できる。
【0010】
また、前記押出制御部材は、前記押出部材を可動型の方向に付勢するスプリングであり、
前記固定型は、前記表面の方向に突出して、型閉じ状態において前記表面の一部に先端が接触する突出部を有するとしてよい。これによれば、型閉じ状態において、固定型の突出部により、スプリングの付勢力に抗して押出部材を引っ込んだ状態に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】突起の断面図であって、
図1のA部拡大図であり、
図2のIII-III線で突起を切ったときの断面図である。
【
図6】金型の断面図であって、射出空間において成形体が成形された状態を示す図である。
【
図7】金型の断面図であって、成形後の型開きの際に押出部材で成形体を押し出している状態を示す図である。
【
図8】金型の断面図であって、成形後に型開きの際に押出部材の固定型からの突出が終了し、成形体が押出部材から離れて可動型に張り付いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1に示す金型1は、ショアA硬度が80以下の成形体(軟質成形体)を射出成形するための金型である。金型1は、固定型2と可動型3と押出部材5とスプリング6とを備えている。
【0013】
固定型2はキャビティ型として構成されており、型閉じ状態において可動型3との間で軟質成形体を射出成形するための空間4を形成する。固定型2には押出部材5及びスプリング6を収容する空間7が形成されている。
【0014】
可動型3はコア型として構成されており、固定型2に対して開閉可能に設けられる。すなわち、可動型3は、固定型2のパーティングラインに可動型3のパーティングラインが突き合わさる型閉じ状態(
図1の状態)と、固定型2のパーティングラインから離間した型開き状態との間で移動可能に設けられる。可動型3の型閉じ動作又は型開き動作の方向は、固定型2のパーティングラインに直角な方向(
図1の紙面の上下方向)である。
【0015】
可動型3の、射出空間4を形成する壁面4aには、押出部材5の表面5aの方向に突出する突出部8が形成されている。突出部8は、表面5aに対向する位置に形成されており、型閉じ状態において突出部8の先端面が表面5aの中央部に接触する。また突出部8は円錐台状に形成されており、すなわち突出部8の側面8aは先端側にいくにしたがって徐々に径が小さくなるよう勾配がつけられている。突出部8は、型閉じ状態においてスプリング6の付勢力に抗して押出部材5を、固定型2の、射出空間4を形成する壁面2bと面一となる位置に保持するための部分である。
【0016】
なお、固定型2又は可動型3には、射出成形装置から導入される溶融樹脂を射出空間4まで導く通路(スプール、ランナー、ゲート)が形成されている。その通路の端部であるゲートが射出空間4に導通している。
【0017】
押出部材5は、型開きの際に、成形体が固定型2に張り付いて離れないこと(キャビ取られともいう)を防ぐために、可動型3の型開き動作の開始に伴い(換言すれば可動型3の型開き動作に同期して)可動型3の移動方向(
図1の下方向)に成形体を押し出すための部材である。なお、本実施形態では、押出部材5は1つの射出空間4(1つの成形体)に対して1つのみ設けられている。押出部材5は、固定型2の収容空間7において可動型3の移動方向(
図1の紙面の上下方向)、換言すれば押出部材5の表面5aに直角な方向に移動可能に設けられる。より具体的には、押出部材5は、その表面5aが固定型2の壁面2bと面一となる退避位置(
図1参照)と、固定型2の壁面2bから所定量Xだけ突出した突出位置(
図8参照)との間で移動可能に設けられる。所定量Xは、型開きが完了したときの固定型2のパーティングラインと可動型3のパーティングラインとの間隔Y(
図1参照)よりも小さい値に設定されている。固定型2には、押出部材5が所定量Xを超えて突出しないようストッパ(図示外)が設けられている。
【0018】
押出部材5は、射出空間4の固定型2側の壁面4bの一部を形成する表面5aを有する。表面5aは、型閉じ状態において固定型2の壁面2bと面一となっている。また表面5aのうち後述の突起9を除いた部分は、押出部材5による成形体の押出方向(
図1の上下方向)に直角、かつ、可動型3の開閉方向(
図1の上下方向)にも直角な平面に形成されている。表面5aは
図2に示すように例えば矩形状の外周線5bを有する。なお、外周線5bは矩形状以外の形状(円形など)であってもよい。
【0019】
また表面5aは、射出成形により形成された成形体100(
図4参照)の表面又は裏面の外周線104よりも内側の部位(本実施形態では中央部)を形成するように設けられる。また、表面5aは、成形体100の部位のうち、成形体100を製品(例えば車両)に組み付けたときに外側から見えない部位又は他の部材(例えば車両の板金パネル)に当たらない部位又は他の部材に接合するための両面テープの接着部位を外した部位に接触するように設けられる。成形体100の部位のうち、製品に組み付けたときに外側から見える部位又は他の部材に当たる部位又は他の部材に接合するための両面テープの接着部位に、押出部位5に起因したバリが発生するリスクを避けるためである。本実施形態では、表面5aは成形完了時に成形体100の中央部105(
図4参照)に接触するように設けられる。
【0020】
図1に示すように、表面5aには突起9が形成されている。突起9は
図1に示すように表面5aの中心を間に挟んで相対する両側に形成されている。より具体的には、突起9は、
図2の平面視で見て、矩形状の外周線5bにおける相対する上辺側と下辺側とに形成され、かつ、相対する右辺側と左辺側とに形成され、これら上辺側、下辺側、右辺側、左辺側の各突起9が連続している。つまり、突起9は、
図2に示すように表面5aの周方向における全周に亘って連続して形成されている。また突起9は、
図2の平面視で見て、外周線5bに沿って、外周線5bに相似する矩形状を描くように設けられるが、外周線5bに相似しない形状(例えば円形)に形成されてもよい。また突起9の基端部(表面5aに繋がる端部)が描く外周側の線9a(
図2参照)は表面5aの外周線5bと一致しているが、外周線5bよりも内側に設けられても良い。突起9の基端部が描く内周側の線9b(
図2参照)は外周側の線9aと相似する矩形状に設けられる。
【0021】
突起9は先端にいくほど細くなる形状に形成されており、より具体的には、
図3に示すように断面が三角形状に形成されている。なお、
図3の断面は、押出部材5の表面5aに直角であり、かつ、突起9の先端を面内に含み、かつ、平面視において突起9が描く矩形状の線9a、9bに直角に交差する平面で突起9を切った断面である。断面9は、押出部材5の表面5aの面内に位置する底辺9cと、互いに同じ長さの2つの斜辺9d、9eとを有する二等辺三角形に形成される。さらに、断面9は、2つの斜辺9d、9eが成す角度θ1(先端9fの角度)が90度である直角二等辺三角形に形成される。底辺9cと斜辺9d、9eとの成す角度θ2は45度である。なお角度θ2は45度以外の角度であってもよいが、角度θ2が大きすぎると、軟質成形体と突起9との固着が強くなりすぎてしまい、型開きの際に押出部材5で軟質成形体を固定型2から押し出した後に、突起9が軟質成形体から外れなくなるおそれがある。反対に、角度θ2が小さすぎると、突起9への軟質成形体の張り付きが弱くなってしまい、押出部材5で軟質成形体を押し出す際に、突起9が軟質成形体から外れてしまい、押出部材5と軟質成形体との接触位置(押圧位置)がズレてしまうおそれがある。これら問題を鑑みて、角度θ2は例えば30度以上70度以下とするのが好ましい。
【0022】
また突起9の高さh(
図3参照)は、射出空間4の厚みd(固定型2の壁面4bと可動型3の壁面4aとの間隔)(
図1参照)よりも小さく、例えば0.3mm以上1mm以下(例えば0.5mm)とすることができる。なお、厚みdは、成形体の厚みd(
図5参照)に相当する。高さhを厚みdよりも小さくすることで、突起9に起因した貫通穴が成形体に形成されてしまうのを回避できる。また高さhを0.3mm以上とすることで、突起9と成形体との張り付きを強くでき、押出部材5で成形体を押し出す際に、突起9が成形体から外れてしまうのを抑制できる。また高さhを1mm以下とすることで、突起9に起因して成形体に形成される溝を小さくできる。なお、厚みdは例えば5mm以下であり、より具体的には例えば3mm以下である。
【0023】
また突起9の幅w(
図3参照)は例えば突起9の高さh以上であり、例えば1mm程度とすることができる。幅wを高さh以上とすることで、突起9の斜辺9d、9eの角度θ2が過度に大きくなってしまうのを抑制でき、押出部材5で成形体を押し出した後に、突起9が成形体に固着して外れなくなってしまうのを抑制できる。
【0024】
スプリング6は、固定型2の収容空間7において、押出部材5の、表面5aとは反対側の面を、可動型3の方向(
図1の紙面の下方向)に付勢するように設けられる。スプリング6は、可動型3の型開き動作の開始に伴い押出部材5を可動型3の方向に移動させる押出制御部材として機能する。
【0025】
また金型1は、上記部材2、3、5、6に加えて、型開き後に、可動型3に張り付いている成形体を可動型3から押し出す可動型側押出部材(押し出しピン)(図示外)を備えている。可動型側押出部材は可動型3側に設けられている。
【0026】
図4、
図5は金型1で成形される軟質成形体100を例示している。軟質成形体100は全体がショアA硬度80以下の軟質材にて形成されている。軟質材としては、例えばPPO(ポリフェニレンオキシド)、TPE(熱可塑性エラストマー:例えばTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー))等を含むことができる。なお、軟質材の硬度の下限値は特に限定はないが、軟質材の硬度は例えばショアA硬度60以上80以下である。
【0027】
軟質成形体100は例えば車両に組み付けられる部材(例えば車両のバックドア端末に設けられる部材)である。軟質成形体100は板状に形成されている。金型1による成形完了時に固定型2の壁面4b(
図1参照)に接触する軟質成形体100の表面100aには、突起9に起因する溝102が形成されている。溝102は、突起9の断面形状(二等辺三角形状)に対応した断面V字状に形成されている(
図5参照)。また溝102は、平面視において突起9が描く形状(矩形状)に対応した平面視矩形状を描くように形成されている(
図4参照)。
図4の平面視で見て、溝102の外周線が突起9の外周線9a(
図2参照)に対応し、かつ、押出部材5の表面5aの外周線5b(
図2参照)に対応する。平面視で見て、溝102の内周線が突起9の内周線9b(
図2参照)に対応する。
【0028】
また、溝102は成形体100の中央部105に形成されている。中央部105には貫通穴101が形成されており、溝102はこの貫通穴101の周囲の全周に亘って連続して形成されている。貫通穴101は可動型3の突出部8(
図1参照)に起因して形成された穴である。貫通穴101は、突出部8の形状に対応して円錐台状に形成されている(
図5参照)。
【0029】
成形体100の、溝102が形成される側の表面100aには、両面テープが接着される複数の部位103が設定されている。溝102は、これら部位103を外した部位に形成されており、かつ、成形体100の外周線104に交差しない部位に形成されている。
【0030】
さらに、成形体100の外周線104上の各点から、押出部材5の表面5aの外周線5b(
図2参照)に対応する成形体100上の線(溝102の外周線に相当)に最短距離で結んだ仮想線のうち最も長い仮想線106(
図4参照)の長さLは例えば100mm以上に設定されており、本実施形態では200mm以上に設定されている。
【0031】
次に、金型1を用いて成形体100を成形し、その後、成形体100を金型1から取り出す方法を説明する。先ず、固定型2及び可動型3を型閉じ状態(
図1の状態)にする。次に、ゲート(図示外)を介して射出空間4に溶融樹脂を射出する。次に、射出空間4に充填された溶融樹脂を冷却して、軟質成形体100にする。
図6は、成形完了時の状態であって、射出空間4に軟質成形体100が形成された状態を示している。
図6の状態では、押出部材5の表面5aが軟質成形体100の表面100aの中央部に接触しており、かつ、突起9が表面100aから内部に入り込んでいる。
【0032】
その後、金型1を型開きして、軟質成形体100を金型1から外す。具体的には、先ず、可動型3を型開き動作させる(
図6の紙面で下方に移動させる)。型開き動作が開始すると、押出部材5は、スプリング6の付勢力により、可動型3の移動に追従(同期)して可動型3の方向に移動する。押出部材5が移動することで、軟質成形体100は固定型2から押し出される(
図7参照)。このとき、突起9が軟質成形体100に入り込んだ状態で、軟質成形体100の押し出しが行われる。
【0033】
可動型3及び押出部材5の移動量が所定量X(
図8参照)に達した時に、押出部材5の突出方向への移動が終了する一方で、可動型3の移動は継続する。このとき、軟質成形体100は、押出部材5から外れて、可動型3に張り付いた状態となる(
図8参照)。
【0034】
可動型3の型開き動作が終了した後、可動型側押出部材(押し出しピン)を駆動して、軟質成形体100を可動型3から外す。このとき、可動型3の突出部8には勾配がつけられているので、突出部8は、軟質成形体100の押し出しに伴い軟質成形体100から容易に外れる。以上により、軟質成形体100は金型1から取り出される。
【0035】
なお、押出部材5は、型開き状態において固定型2から突出した位置にあるが、可動型3の型閉じ動作に伴い可動型3の突出部8で押されることで、型閉じ状態においては固定型2の壁面2bと面一となる退避位置に戻る。
【0036】
このように本実施形態では、成形後の型開きの際に、突起9が軟質成形体100に入り込んだ状態(換言すれば、突起9に軟質成形体100が張り付いた状態)で軟質成形体100を押出部材5で押し出すので、押出部材5と軟質成形体100との接触位置(押圧位置)にズレが生じるのを抑制できる。これにより、軟質成形体100の、押出部材5に接触していない部位(非接触部位)が仮に固定型2に張り付いてしまったとしても、その非接触部位にも押出部材5からの押し出し力を効果的に伝達でき、ひいては非接触部位も固定型2から外すことができる。特に、本実施形態のように、押出部材5による押圧部位が軟質成形体100の中央部105しか設定できない場合や、軟質成形体100の端末107(
図4参照)と押圧部位105との間の距離L(
図4参照)が長い場合(例えば距離Lが100mm以上の場合)や、軟質成形体100の厚みd(
図5参照)が小さい場合(例えば0.5mm以下)であっても、押出部材5の押し出し力を端末107まで効果的に伝達できる。
【0037】
これに対して、仮に押出部材5に突起9が設けられていないとすると、軟質成形体100の端末107が固定型2に張り付いてしまった場合、端末107と押圧部位105との間が曲がってしまい、端末107に押出部材5の押し出し力が上手く伝わらないおそれがある。
【0038】
また、突起9は押出部材5の表面5aの全周に亘って連続して形成されているので、表面5aの面内方向の全方向に対して押出部材5と成形体100とにズレが生じるのを抑制できる。特に、突起9は表面5aの外周において表面5aの外周線104(
図4参照)と相似する形状を描くように形成されるので、成形体100と突起9との接触範囲を広くすることができ、ひいては押出部材5と成形体100とにズレが生じるのをより一層抑制できる。
【0039】
また、突起9は断面が三角形状なので、突起9と軟質成形体100との張り付きを適度な強さにでき、押出部材5で軟質成形体100を押し出す途中で突起9が軟質成形体100から外れてしまうのを抑制できるとともに、押出部材5で軟質成形体100を押し出した後に、突起9が軟質成形体100から外れなくなるのを抑制できる。
【0040】
また、突起9は断面が二等辺三角形状なので、突起9の一方の斜辺9d(
図3参照)と成形体100との張り付きの強さと、突起9の他方の斜辺9e(
図3参照)と成形体100との張り付きの強さとを同等にできる。これにより、押出部材5で軟質成形体100を押し出す際に、突起9が軟質成形体100の溝102内で変位したり、溝102から外れたりするのを抑制できる。
【0041】
また、押出部材5はスプリング6により可動型3の方向に付勢されており、かつ、可動型3の、押出部材5に対峙した位置には突出部8が設けられるので、可動型3の型開き動作に追従して押出部材5を固定型2から突出させることができるとともに、可動型3の型閉じ動作に追従して押出部材5を固定型2に退避させることができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない限度で種々の変更が可能である。例えば、押出部材と軟質成形体とのズレが抑制できるのであれば、押出部材の突起は、押出部材の表面の周方向における一部に設けられてもよいし、押出部材の外周よりも内側に設けられてもよいし、突起が押出部材の表面に描く平面視形状と、押出部材の外周線が描く形状とが相似していなくてもよい。また押出部材の突起は、押出部材の表面の第1側に形成された第1突起と、押出部材の表面の中心を間に挟んで第1側に相対する第2側に形成された第2突起とを有し、第2突起は第1突起に非連続に形成されており、第1側、第2側以外の側には突起が形成されていなくてもよい。
図2の例でいえば、矩形状の外周線5bにおける上辺側及び下辺側のみに突起が形成されてもよいし(つまり右辺側及び左辺側には突起が形成されていなくてもよいし)、矩形状の外周線5bにおける右辺側及び左辺側のみに突起が形成されてもよい(つまり上辺側及び下辺側には突起が形成されていなくてもよい)。また、押出部材と軟質成形体とのズレが抑制でき、かつ、軟質成形体を押し出した後に突起が軟質成形体から外れるのであれば、突起は断面三角形状以外の形状(例えば断面台形や半円形など)であってもよいし、断面が二等辺三角形以外の三角形状であってもよい。また押出部材はスプリング以外の方法(油圧又は空圧シリンダ等)で進退動作されてもよい。
【0043】
また押出部材は成形体の中央部以外の部位を押圧するように設けられてもよい。また、成形体の複数の部位を押圧するように、1つの成形体当たりに複数の押出部材が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 金型
2 固定型
3 可動型
4 射出空間
5 押出部材
6 スプリング
9 突起
100 軟質成形体