(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059244
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】アタッチ部材
(51)【国際特許分類】
G09F 3/14 20060101AFI20220406BHJP
B65D 25/20 20060101ALN20220406BHJP
【FI】
G09F3/14 Z
B65D25/20 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166855
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000134464
【氏名又は名称】株式会社トスカバノック
(74)【代理人】
【識別番号】100081570
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰芳
(72)【発明者】
【氏名】黒川 浩紀
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062BB02
3E062BB10
3E062DA01
3E062DA02
3E062DA06
(57)【要約】
【課題】 表示札を衣服等に取り付けるためのアタッチ部材として、例えリリースが可能であっても挿し込み部及び受部には複雑な構成となってしまい、プラスチックの型成形にあって、常に精度よく製造することができる構成とし、そのため構成を簡易なものとして大量生産にも好適で、その分価格も低廉なものとできるアタッチ部材はなかったという点である。
【解決手段】 一端に係合部を形成したプラスチック製の挿し込み部を有し、他端に前記した挿し込み部が挿し込み嵌合され、挿し込み部の係合部を係止する係止部を備えたプラスチック製の受部を有し、前記した挿し込み部と受部との嵌合によって無端状態を構成し、表示札を対象物に取り付けるための線状体から成るアタッチ部材において、前記した受部に、挿し込み部が挿し込まれる孔部の径を拡開及び復元するための切れ目が設けられており、受部における係止部はリング状段部とし、挿し込み部の係合部は挿し込み部の先端部基部における段部としてあることとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に係合部を形成したプラスチック製の挿し込み部を有し、他端に前記した挿し込み部が挿し込み嵌合され、挿し込み部の係合部を係止する係止部を備えたプラスチック製の受部を有し、前記した挿し込み部と受部との嵌合によって無端状態を構成し、表示札を対象物に取り付けるための線状体から成るアタッチ部材において、前記した受部に、挿し込み部が挿し込まれる孔部の径を拡開及び復元するための切れ目が設けられており、受部における係止部はリング状段部とし、挿し込み部の係合部は挿し込み部の先端部基部における段部としてあることを特徴とするアタッチ部材。
【請求項2】
前記した切れ目は有幅のスリットであることを特徴とする請求項1に記載のアタッチ部材。
【請求項3】
前記した挿し込み部と受部は嵌合状態でラグビーボール状となり、受部には前記した有幅のスリットと連通する窓孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアタッチ部材。
【請求項4】
前記した受部の孔部は、前記した線状体の軸芯方向と直交して形成され、かつ、前記した孔部は貫通孔とされ、係止部となるリング状段部は孔部の中央部位に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアタッチ部材。
【請求項5】
前記した線状体は、中程で略U字状に屈曲され、その屈曲部分は肉盛りによって大径に補強されていることを特徴とする請求項1または4に記載のアタッチ部材。
【請求項6】
前記した受部の孔部は、前記した線状体の軸芯方向と直交して形成され、係止部となるリング状段部は挿し込み部の挿し込み口と反対側近傍に形成され、孔部は平面的に見て楕円形状とされていることを特徴とする請求項1に記載のアタッチ部材。
【請求項7】
前記した線状体は延伸加工処理されたプラスチックもしくはポリアミドとしたことを特徴とする請求項1から6のうち1項に記載のアタッチ部材。
【請求項8】
前記した線状体は糸もしくは紐であることを特徴とする請求項1から6のうち1項に記載のアタッチ部材。
【請求項9】
前記した挿し込み部及び受部はプラスチックまたはポリアミドで成形されていることを特徴とする請求項1から8のうち1項に記載のアタッチ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアタッチ部材、特に、衣料品や履物、小物等に価格や品質等を表示した表示札を取り付けするために使用され、挿し込み部とその受部の嵌合によって無端状態を形成することのできるアタッチ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したアタッチ部材として種々の形態をしたものが知られている。まず、第一の従来例として
図5乃至
図8として示すものがある。このアタッチ部材1は糸を使用した線状体2を有しており、その線状体2の一端に挿し込み部3を一体的に備えており、この挿し込み部3は球面状とした先端部4を有し、その先端部4の下面が係合部5とされ、その係合部5に続けて括れ部6が形成されている。
【0003】
また、線状体2の他端には、前記した挿し込み部3が挿し込まれて嵌合し、ロック状態とされる受部7が一体的に備えられている。この受部7は、線状体2の連結部分と反対側に挿し込み部3の挿し込み口8が開口されており、この挿し込み口8の奥部分に、挿し込み部3の先端部4の挿し込みで一旦は拡開され、先端部4の通過後に復元して係合部5と係合してロック状態とする羽根状部9、9が相対向して一対備えられたものとなっている。さらに、受部7は、嵌合状態を目視可能とする窓孔10が設けられている。
【0004】
次に、第二の従来例として
図14乃至
図17に示すものがある。ここに示すアタッチ部材11は生分解性プラスチックによる線状体12を有しており、その線状体12の一端に挿し込み部13を一体に備えており、この挿し込み部13は球面状とした先端部14を有し、その先端部14に係合部としての相対向する一対の羽根体15、15を形成しており、その羽根体15、15の遊端縁に、後述する係止部と沿う爪体15a、15aを一体に形成してある。
【0005】
また、線状体12の他端には、前記した挿し込み部13が挿し込まれて嵌合し、ロック状態とされる受部16が一体に設けられている。この受部16の挿し込み部13の挿通孔17は線状体12の軸芯方向と直交しており、その挿通孔17は貫通孔とされ、その内壁面中央にリング状に係止部18が形成されている。挿し込み部13がこの挿通孔17へ挿し込まれると、挿し込み部13の羽根体15、15は係止部18によってすぼめられ、この係止部18を通過後に復元拡開し、ロック状態となって抜けなくなる。この際に、爪体15a、15aは係止部18の内壁面と当接してロック状態を補強する。
【0006】
次いで第三の従来例として
図20乃至
図21に示すものがある。ここに示すアタッチ部材19はプラスチックによる線状体20を有しており、この線状体20の中程をU字状に屈曲させ、線状体20を二本の平行状態としてこの屈曲部21は素材のプラスチックを肉盛りして他の部分より太径とし変形しないように補強してある。線状体20の一端には挿し込み部22が一体に備えられており、この挿し込み部22は球面状とした先端部23を有し、その先端部23の基部に係合段部24が形成されているもので、先端部23には中空部25が形成され、その中空部25内には細径とした支持バー26が設けられ、係合段部24部分のすぼみと復元を行なえるものとしている。
【0007】
また、線状体20の他端には、前記した挿し込み部22が挿通される挿通孔27を貫通孔として形成した受部28が一体に備えられているもので、前記挿通孔27は線状体20の軸芯方向と直交する構成となっている。挿通孔27の内壁面中央部位にはリング状段部とした係止部29が形成され、挿通孔27に挿通された挿し込み部22の係合段部24を一旦すぼめ、復元させることでロック状態を形成するものとなっている。
【0008】
さらに、第四の従来例として
図24乃至
図25として示すものがある。この
図24、25はアタッチ部材30をランナーバー31a、31bとつないだアッセンブリ状態として示している。このアタッチ部材30は線状体32として糸もしくは紐を使用しているもので、その一端に挿し込み部33を一体的に備えており、その挿し込み部33の方向性は線状体32の軸芯方向と直交するものとなっている。挿し込み部33の球面状とした先端部34の基部には段状とした係合部35が形成されている。
【0009】
また、線状体32の他端には、前記した挿し込み部33が挿通される挿通孔36を貫通孔として形成した受部37が一体的に備えられている。この受部37の挿通孔36の内面には弾発性を保有した一対の爪体38、38が相対向して備えられており、挿し込み部33の先端部34を挿通孔36に挿通することで、爪体38、38を拡開させ、通過後に爪体38、38は復元して係合部35と係合してロック状態を形成する。このアタッチ部材30は使用時にはカッターによってランナーバー31a、31bと切離されることになる。
【0010】
しかしながら、この従来例として示すアタッチ部材はいずれも、表示札(特に値札)の交換の必要性がある時や最終ユーザーが表示札を取り外したい時に線状体をカッターによって切断する必要性があり、その作業は非常に煩わしく、アタッチ部材としても再使用はできないこととなる。
【0011】
加えて、挿し込み部及び受部には嵌合ロック状態を得るため、極めて複雑な構造が要求されることとなり、挿し込み部、受部はプラスチックを使用して型成形をするため、細部にバリが生じてしまうことも多く、精巧なものを製造するのは困難なものであった。
【0012】
アタッチ部材の嵌合ロックを解除してリリース可能なものとする技術として先行技術文献として示す特許第6161428号がある。しかしながら、このアタッチ部材であってもスリットの下面にアンダーカット処理をすること、挿し込み部は線状体の軸芯と直交する受凹部から挿し込み、受入溝に対して直角に傾倒させることが必要で、挿し込み部にも係合状態を良好とするため、くびれ部を径と異ならしめて形成する等々の要素が必要で、その型を使っての成形は難しい点が多いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来、表示札を衣服等に取り付けるためのアタッチ部材として、例えリリースが可能であっても挿し込み部及び受部には複雑な構成となってしまい、プラスチックの型成形にあって、常に精度よく製造することができる構成とし、そのため構成を簡易なものとして大量生産にも好適で、その分価格も低廉なものとできるアタッチ部材はなかったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した問題点を解決するために、本発明に係るアタッチ部材は、一端に係合部を形成したプラスチック製の挿し込み部を有し、他端に前記した挿し込み部が挿し込み嵌合され、挿し込み部の係合部を係止する係止部を備えたプラスチック製の受部を有し、前記した挿し込み部と受部との嵌合によって無端状態を構成し、表示札を対象物に取り付けるための線状体から成るアタッチ部材において、前記した受部に、挿し込み部が挿し込まれる孔部の径を拡開及び復元するための切れ目が設けられており、受部における係止部はリング状段部とし、挿し込み部の係合部は挿し込み部の先端部基部における段部としてあることを特徴とし、前記した切れ目は有幅のスリットであることを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係るアタッチ部材は、前記した挿し込み部と受部は嵌合状態でラグビーボール状となり、受部には前記した有幅のスリットと連通する窓孔が形成されていることを特徴としている。
【0017】
さらに、本発明に係るアタッチ部材は、前記した受部の孔部は、前記した線状体の軸芯方向と直交して形成され、かつ、前記した孔部は貫通孔とされ、係止部となるリング状段部は孔部の中央部位に形成されていることを特徴としている。
【0018】
そして、本発明に係るアタッチ部材は、前記した線状体は、中程で略U字状に屈曲され、その屈曲部分は肉盛りによって大径に補強されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係るアタッチ部材は、前記した受部の孔部は、前記した線状体の軸芯方向と直交して形成され、係止部となるリング状段部は挿し込み部の挿し込み口と反対側近傍に形成され、孔部は平面的に見て楕円形状とされていることを特徴としている。
【0020】
さらに、本発明に係るアタッチ部材は、前記した線状体は延伸加工処理されたプラスチックもしくはポリアミドとしたことを特徴とし、前記した線状体は糸もしくは紐であることを特徴とし、前記した挿し込み部及び受部はプラスチックまたはポリアミドで成形されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るアタッチ部材は上記のように構成されている。そのため、受部に設けられている切れ目が挿し込みの挿し込み時に挿通部(挿通孔)を拡開し、ロック状態となるとその拡開は復元する。かかる作用のため、受部の係止部もリング状段部のみで済み、挿し込み部の係合部も先端下面の段部のみで済むという簡易な構造となり、型成形にあっても常に精巧な製品を大量生産することができる。また、リリースも切れ目を挿し込み部によって押し拡げることで容易に外すことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図12】同じく嵌合ロック状態を示す部分断面図である。
【
図13】同じく嵌合ロック状態を示す全体図である。
【
図17】同じく嵌合ロック状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例0024】
次に、本発明の第一実施例を
図1乃至
図4を参照して説明する。尚、第一の従来例と共通する部分は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。アタッチ部材50が第一の従来例と構成を異にしているのは受部51である。この受部51も第一の従来例と同様に線状体2の連結部分と反対側に挿し込み部3の挿し込み口52が開口されているもので、この挿し込み口52の奥方にリング状に形成された係止部53が一体に形成されており、この係止部53の中心孔はさらに奥まで連通し、挿し込み部3の先端部4の位置スペースが確保されており、この位置スペースと対応する受部51には嵌合状態を目視し、後述する受部51の拡開作用を補助する窓孔54が設けられている。ここで、挿し込み部3及び受部51は拡開、復元を可能とする弾発性を少なくとも保有したプラスチックで成形されており、後述する各々の実施例についてもこれは同様である。
【0025】
また、前記した挿し込み口52の開口縁から窓孔54まで、線状体2の軸芯方向に沿って直線状の有幅のスリット55が形成されており、このスリット55は係止部53も連通した構成となっている。このスリット55の存在によって、挿し込み部3を先端部4から挿し込み口52に挿入して押し込めることで、この圧力と先端部4の外径によってスリットは拡開され、挿し込み部3を、係止部53も押し拡げながら窓孔54に対応するスペースまで送ることができ、スペースまで先端部4が到達する括れ部6の存在によって拡張は復元して係合部5と係止部53とによるロック状態となる。尚、このロック状態をリリースするには挿し込み部3を、先端部4を支点としてスリット55に沿って倒立させることで容易にロックを外すことができる。
一方、挿し込み部13は先端部58の基部には係合段部60が形成され、この先端部58は無垢の一体成形となっている。この先端部58と挿し込み部13は細径ピン状の括れ部59で一体に連接された構成となっており、型成形も容易で精巧な製品を得ることができ、羽根体15、15等の存在が不要なので、成形時にバリが生じてしまうこともない。挿し込み部13を先端部58から挿通孔17へ挿し込むと、スリット57の存在によって挿通孔17の径は拡がり、係止部18を先端部58が通過すると、スリット57の作用で径は復元し、係合段部60が係止部18と係合してロック状態となる。このロック状態をリリースするには挿し込み部13をスリット57側へ傾け挿し込み部13によってスリット57を拡開させることで実行できる。尚、この第二実施例にあって、図では先端部58をやや偏平なものとしているが、勿論、正面から見て真円状となるものでもかまわず、実効性に変わりはない。