(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059292
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】個別分散空調制御方法、個別分散空調制御装置、及び個別分散空調制御プログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20220406BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20220406BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20220406BHJP
F24F 140/60 20180101ALN20220406BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/54
F24F11/56
F24F140:60
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166945
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】藤村 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 康介
(72)【発明者】
【氏名】浅田 雄樹
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA42
3L260CA12
3L260CB04
3L260CB79
3L260FA01
3L260FA09
3L260FB02
3L260JA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な構成で、多様な仕様の個別分散空調システムにつき、エネルギー消費効率の良い制御を行うことができる個別分散空調制御方法を提供する。
【解決手段】1基の室外機で1台以上の室内機を個別に運転でき、複数の室外機に対して監視・操作を集中して行える集中コントローラを備える空調システムにおける制御方法であって、集中コントローラとネットワーク接続された制御コンピュータを用いて、室外機の負荷率を推定するための所定の測定値を、集中コントローラを介して取得する測定値取得ステップと、取得した測定値に基づいて、室外機の負荷率及びエネルギー消費効率を算出する演算ステップと、算出された室外機の負荷率及びエネルギー消費効率に基づいて、室外機がエネルギー消費効率のより高い負荷率での運転時間が長くなるように制御コンピュータを用いて、集中コントローラを介して室外機に制御指令を与える制御指令ステップを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1基の室外機で1台以上の室内機を個別に運転でき、複数の室外機に対して監視・操作を集中して行える集中コントローラを備える空調システムにおける制御方法であって、
前記集中コントローラとネットワーク接続された制御コンピュータを用いて、前記室外機の負荷率を推定するための所定の測定値を、前記集中コントローラを介して取得する測定値取得ステップと、
取得した前記測定値に基づいて、前記室外機の負荷率及びエネルギー消費効率を算出する演算ステップと、
算出された前記室外機の負荷率及びエネルギー消費効率に基づいて、前記室外機がエネルギー消費効率のより高い負荷率での運転時間が長くなるように、前記制御コンピュータを用いて、前記集中コントローラを介して前記室外機に制御指令を与える制御指令ステップ、
を備えたことを特徴とする個別分散空調制御方法。
【請求項2】
前記測定値取得ステップにおいて、
前記測定値は、前記室外機の電流値、圧縮機の周波数若しくは定格周波数比、又は、前記室内機の運転能力値の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1に記載の個別分散空調制御方法。
【請求項3】
前記制御コンピュータを用いて、前記室外機の負荷率を算出する基準となる測定項目を切り替えるステップを更に備え、
前記測定項目は、前記室外機の電流値、圧縮機の周波数若しくは定格周波数比、又は、前記室内機の運転能力値であることを特徴とする請求項1に記載の個別分散空調制御方法。
【請求項4】
前記制御コンピュータを用いて、前記室内機の設定温度及び室内温度を、前記集中コントローラを介して取得するステップを更に備え、
前記制御指令ステップは、更に、前記室内機の設定温度と室内温度の差に基づいて、前記制御指令を与えることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の個別分散空調制御方法。
【請求項5】
前記制御コンピュータを用いて、前記負荷率及び前記エネルギー消費効率を基に算出されたよりエネルギー消費効率の高い制御指令の出力上限と、目標となるデマンド値に基づく出力上限を比較し、より低い出力上限に該当する前記制御指令を選択する比較ステップを更に備えたことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の個別分散空調制御方法。
【請求項6】
前記制御指令ステップにおいて、
前記制御指令は、それぞれ前記室外機の出力上限値が設定された複数の運転モードの切替指令であり、
現在の運転モードとなった後、一定時間経過後に、
前記室内機の設定温度と室内温度の差が、冷房運転時において所定の閾値を上回った場合又は暖房運転時において所定の閾値を下回った場合には、より大きい負荷率ゾーンを有する運転モード、又は、負荷率の制限が無い運転モードに切り替え、
前記室外機の負荷率が、所定の閾値を下回った場合には、より小さい負荷率ゾーンを有する運転モード、又は、運転を停止する運転モードに切り替える、
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の個別分散空調制御方法。
【請求項7】
1基の室外機で1台以上の室内機を個別に運転でき、複数の室外機に対して監視・操作を集中して行える集中コントローラを備える空調システムにおける制御装置であって、
前記集中コントローラとネットワーク接続され、
前記室外機の負荷率を推定するための所定の測定値を、前記集中コントローラを介して取得する測定値取得手段と、
取得した前記測定値に基づいて、前記室外機の負荷率及びエネルギー消費効率を算出する演算手段と、
算出された前記室外機の負荷率及びエネルギー消費効率に基づいて、前記室外機がエネルギー消費効率のより高い負荷率での運転時間が長くなるように、前記集中コントローラを介して前記室外機に制御指令を与える制御指令手段、
を備えたことを特徴とする個別分散空調制御装置。
【請求項8】
前記室外機の負荷率を算出する基準となる測定項目を切り替える手段を更に備え、
前記測定項目は、室外機の電流値、圧縮機の周波数若しくは定格周波数比、又は、室内機の運転能力値であることを特徴とする請求項7に記載の個別分散空調制御装置。
【請求項9】
前記集中コントローラを介して、前記室内機の設定温度及び室内温度を取得する手段を更に備え、
前記制御指令手段は、更に、前記室内機の設定温度と室内温度の差に基づいて、前記制御指令を与えることを特徴とする請求項7又は8に記載の個別分散空調制御装置。
【請求項10】
前記負荷率及び前記エネルギー消費効率を基に算出されたよりエネルギー消費効率の高い制御指令の出力上限と、目標となるデマンド値に基づく出力上限を比較して、より低い出力上限に該当する前記制御指令を選択する比較手段を更に備えたことを特徴とする請求項7~9の何れかに記載の個別分散空調制御装置。
【請求項11】
請求項1~6の何れかの個別分散空調制御方法における全てのステップを、コンピュータに実行させるための個別分散空調制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1基の室外機で1台以上の室内機を個別に運転できる空気調和装置の省エネ性能を高める技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、空調機器において、室外機の出力制限を最大デマンドに応じて段階的に制御するシステムは存在する。機器の種類にもよるが、例えば、最大負荷率を70%、40%、0%と設定し、目標電力を超えそうになると上限を下げるというように制御を行う。
しかし、これはあくまでも目標となるデマンド値を超えないようにするためのものであり、エネルギー消費効率(COP:Coefficient Of Performance)に着目したものではない。
【0003】
最近の個別空調装置では、運転能力に対する負荷率が高過ぎても低過ぎてもエネルギー消費効率が低下し、特に軽負荷時においては著しく低下することが知られている。
そこで、室内の温度が設定温度に達した場合に、室外機が停止して室内を暖める動作、或は、冷やす動作を止めるサーモオフと呼ばれる制御がなされる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。サーモオフによれば、軽負荷時におけるエネルギー消費効率の低下を防止できる。
しかしながら、空調装置におけるエネルギー消費効率を高めることは、軽負荷時に限らず、軽負荷から重負荷にいたるまで、あらゆる場合において求められるものである。
【0004】
また、一般に空調装置においては、室内機に温度計が設けられ、室内温度と設定温度の差を埋めるように、自動で温度制御がなされるが、このような温度制御を行う場合は、室内温度を早く設定温度に近づけるために、エネルギー消費効率が必ずしも高くない負荷率で運転する問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、本発明者らは、個別分散空調システムのエネルギー消費効率の良い制御を行うことができる個別分散空調高効率制御方法を既に提案している(特許文献2を参照)。
上記特許文献2に開示された個別分散空調高効率制御方法によれば、室外機に供給される電流値を計測するという簡易な手法で、エネルギー効率の良い制御が可能になるという利点がある。
【0006】
しかしながら、空調システムに備えられた集中コントローラに簡易な構成でアクセスできれば、室外機に供給される電流値を計測しなくても、室外機の運転状態を把握することは可能であるし、集中コントローラを介して室内機又は室外機に関するより詳細なデータを取得することが可能である。
但し、空調システムの仕様はメーカーによって多種多様であり、各メーカーに合わせた装置を提供するとなると、開発コストが増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-38334号公報
【特許文献2】特開2020-109331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる状況に鑑みて、本発明は、簡易な構成で、多様な仕様の個別分散空調システムにつき、エネルギー消費効率の良い制御を行うことができる個別分散空調制御方法、制御装置及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明の個別分散空調制御方法は、1基の室外機で1台以上の室内機を個別に運転でき、複数の室外機に対して監視・操作を集中して行える集中コントローラを備える空調システムにおける制御方法であって、下記1)~3)の各ステップを備える。
1)集中コントローラとネットワーク接続された制御コンピュータを用いて、室外機の負荷率を推定するための所定の測定値を、集中コントローラを介して取得する測定値取得ステップ。
2)取得した測定値に基づいて、室外機の負荷率及びエネルギー消費効率を算出する演算ステップ。
3)算出された室外機の負荷率及びエネルギー消費効率に基づいて、室外機がエネルギー消費効率のより高い負荷率での運転時間が長くなるように、制御コンピュータを用いて、集中コントローラを介して室外機に制御指令を与える制御指令ステップ。
【0010】
制御コンピュータを用いて、1)測定値取得ステップ及び3)制御指令ステップにおいて、集中コントローラを介して、室外機の負荷率を推定するための測定値を取得し、室外機に制御指令を与えることにより、簡易な構成で、室外機の制御を行うことができる。なお、集中コントローラは、室外機を介して、複数の室内機に対しても監視・操作を集中して行うことが可能である。制御コンピュータと集中コントローラを接続するネットワークは、有線又は無線の何れかにより接続される。なお、制御対象となる空調システムの仕様に合わせた通信インターフェースを用いることでもよい。
2)演算ステップにより、エネルギー消費効率の良い制御を行う。
制御指令の内容については、制御対象となる空調システムの仕様に合わせて、適宜設定可能であり、例えば、0~100%の任意の値で指令し、0%はサーモオフとするといったことが可能である。室外機の負荷率を推定するための所定の測定値としては、室外機から得られる測定値に限られず、室内機から得られる測定値も含まれる。
【0011】
本発明の個別分散空調制御方法における測定値取得ステップでは、測定値として、室外機の電流値、圧縮機の周波数若しくは定格周波数比、又は、室内機の運転能力値の少なくとも何れかを用いるのがよい。
室外機の電流値、圧縮機の周波数若しくは定格周波数比、又は、室内機の運転能力値を、負荷率を推定するための測定値として用いることにより、室外機の運転状態をより正確に把握することができる。上記の測定項目は、複数種類を取得することでもよく、かかる場合には、取得した測定値の平均値を算出することで、より室外機の運転状態を正確に把握することが可能である。なお、上記以外の測定項目としては、例えば、圧縮機の電流値を利用することでもよい。
【0012】
本発明の個別分散空調制御方法において、制御コンピュータを用いて、室外機の負荷率を算出する基準となる測定項目を切り替えるステップを更に備え、測定項目は、室外機の電流値、圧縮機の周波数若しくは定格周波数比、又は、室内機の運転能力値であることでもよい。
制御対象となる空調システムの仕様が判明している場合には、何れの測定値を運転状態の把握に利用すればよいかが判明していることが多い。したがって、測定項目を切り替えるステップを備えることにより、制御対象となる空調システムの仕様に適合した測定値を取得し、制御に利用することが可能となる。
【0013】
本発明の個別分散空調制御方法において、制御コンピュータを用いて、室内機の設定温度及び室内温度を、集中コントローラを介して取得するステップを更に備え、制御指令ステップは、更に、室内機の設定温度と室内温度の差に基づいて、制御指令を与えることが好ましい。
室内機の設定温度と室内温度の差に基づいて制御指令を与えることにより、室内の快適性を維持しつつ、エネルギー消費効率の良い制御をより正確に行うことができる。ここで、室内温度の取得は、集中コントローラを介してデータを取得すべく、室内機における吸込温度の取得により行われることが好ましい。
【0014】
本発明の個別分散空調制御方法において、制御コンピュータを用いて、負荷率及びエネルギー消費効率を基に算出されたよりエネルギー消費効率の高い制御指令の出力上限と、目標となるデマンド値に基づく出力上限を比較し、より低い出力上限に該当する制御指令を選択する比較ステップを更に備えたことが好ましい。
デマンド値とは、30分間の平均使用電力のことであり、1ヵ月間における最大デマンド値を基準に契約電力が決定されることから、電気料金を抑制するためには、デマンド値を下げる必要がある。そこで、空調システムにおいては、目標となるデマンド値を設定し、それを超えるデマンド値とならないような制御が行われている。
そこで、デマンド制御が行われている場合に、制御指令ステップにおいて算出されたよりエネルギー消費効率の高い制御指令の出力上限と、目標となるデマンド値に基づく出力上限を比較して、より低い出力上限に該当する制御指令を選択することで、目標となるデマンド値を超えることなく、エネルギー効率の良い制御を可能としたものである。ここで“より低い出力上限”とは、「より出力を制限する」制御指令を与えることを意味している。
【0015】
本発明の個別分散空調制御方法の制御指令ステップにおいて、制御指令は、それぞれ室外機の出力上限値が設定された複数の運転モードの切替指令であり、現在の運転モードとなった後、一定時間経過後に、室内機の設定温度と室内温度の差が、冷房運転時において所定の閾値を上回った場合又は暖房運転時において所定の閾値を下回った場合には、より大きい負荷率ゾーンを有する運転モード、又は、負荷率の制限が無い運転モードに切り替え、室外機の負荷率が、所定の閾値を下回った場合には、より小さい負荷率ゾーンを有する運転モード、又は、運転を停止する運転モードに切り替えることが好ましい。
上記構成とされることにより、エネルギー消費効率の良い制御を行うことができる。
【0016】
本発明の個別分散空調制御装置は、1基の室外機で1台以上の室内機を個別に運転でき、複数の室外機に対して監視・操作を集中して行える集中コントローラを備える空調システムにおける制御装置であって、集中コントローラとネットワーク接続され、下記A)~C)の各手段を備える。
A)室外機の負荷率を推定するための所定の測定値を、集中コントローラを介して取得する測定値取得手段。
B)取得した測定値に基づいて、室外機の負荷率及びエネルギー消費効率を算出する演算手段。
C)算出された室外機の負荷率及びエネルギー消費効率に基づいて、室外機がエネルギー消費効率のより高い負荷率での運転時間が長くなるように、集中コントローラを介して室外機に制御指令を与える制御指令手段。
【0017】
本発明の個別分散空調制御装置は、室外機の負荷率を算出する基準となる測定項目を切り替える手段を更に備え、測定項目は、室外機の電流値、圧縮機の周波数若しくは定格周波数比、又は、室内機の運転能力値であることが好ましい。
【0018】
本発明の個別分散空調制御装置は、集中コントローラを介して、室内機の設定温度及び室内温度を取得する手段を更に備え、制御指令手段は、更に、室内機の設定温度と室内温度の差に基づいて、制御指令を与えることが好ましい。
【0019】
本発明の個別分散空調制御装置は、負荷率及びエネルギー消費効率を基に算出されたよりエネルギー消費効率の高い制御指令の出力上限と、目標となるデマンド値に基づく出力上限を比較して、より低い出力上限に該当する制御指令を選択する比較手段を更に備えたことが好ましい。
【0020】
本発明の個別分散空調制御プログラムは、上記の何れかの個別分散空調制御方法におけるステップを、コンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易な構成で、エネルギー効率の良い制御が可能になるといった効果がある。また、既存の空調システムと通信ケーブル等で接続するだけで実装できるため、低コストで装置を後付けすることができるといった効果もある。また、複数台・複数メーカーの集中コントローラが対象であっても、ハブ等でTCP/IPネットワークを構成することで、制御コンピュータ1台で制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図7】室外機のエネルギー消費効率の一例を示すグラフイメージ
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例0024】
図1は、個別分散空調制御装置の機能ブロック図を示している。
図1に示すように、制御対象となる空調システム2は、集中コントローラ3、室外機4及び室内機5を備える。空調システム2は、1基の室外機4で1台以上の室内機5を個別に運転できるビル用マルチエアコンであり、複数の室外機4に対して監視・操作を集中して行える集中コントローラ3を備えている。
実施例1の個別分散空調制御装置10は、制御コンピュータ1及び通信ネットワーク6から成り、制御コンピュータ1は、空調システム2における集中コントローラ3に通信ネットワーク6を介して接続されている。制御コンピュータ1は、測定値取得手段11、演算手段12、制御指令手段13、測定項目切替手段14、設定温度取得手段15、室内温度取得手段16、比較手段17及びデマンド制御手段7を備える。
【0025】
測定値取得手段11は、室外機4の負荷率を推定するための所定の測定値を、集中コントローラ3を介して取得するものであり、演算手段12は、取得した測定値に基づいて、室外機4の負荷率及びエネルギー消費効率を算出するものである。制御指令手段13は、算出された室外機4の負荷率及びエネルギー消費効率に基づいて、室外機4が、エネルギー消費効率のより高い負荷率での運転時間が長くなるように、集中コントローラ3を介して室外機4に制御指令を与えるものである。
測定項目切替手段14は、室外機4の負荷率を算出する基準となる測定項目を切り替えるものであり、測定項目としては、例えば、室外機4の電流値、圧縮機の周波数若しくは定格周波数比、又は、室内機5の現在の運転能力値が挙げられる。設定温度取得手段15は、集中コントローラ3を介して、室内機5の設定温度に関する情報を取得するものである。室内温度取得手段16は、集中コントローラ3を介して、空調対象となる室内の温度を取得するものであり、具体的には、室内機5において計測された吸込温度を取得することにより行う。比較手段17は、負荷率及びエネルギー消費効率を基に算出されたよりエネルギー消費効率の高い制御指令の出力上限と、目標となるデマンド値に基づく出力上限を比較して、より低い出力上限に該当する制御指令を選択するものである。デマンド制御手段7は、目標となるデマンド値に基づいた制御を行うものである。
制御コンピュータ1と集中コントローラ3、集中コントローラ3と室外機4、及び室外機4と室内機5、それぞれ有線で接続されているが、例えば、制御コンピュータ1と集中コントローラ3を接続する通信ネットワーク6は、無線で通信を行うものでもよい。
【0026】
図2は、個別分散空調制御装置のシステム構成図を示している。
図2に示すように、制御対象となる空調システム2は、集中コントローラ3、室外機(4a,4b)及び室内機(5a~5f)を備える。実施例1の個別分散空調制御装置10は、制御コンピュータ1及びLANケーブル6aから成り、制御コンピュータ1は、空調システム2を構成する集中コントローラ3にLANケーブル6aを介して接続されている。
室外機4は、ここでは室外機(4a,4b)の2基しか図示していないが、3基以上設けることが可能である。また、室外機4aには室内機(5a~5d)、室外機4bには室内機(5e,5f)が接続されているが、接続される室内機の数はかかる台数に限定されるものではない。制御コンピュータ1には、図示しないが、目標となるデマンド値に基づいた制御を行うデマンド制御手段が設けられている。
【0027】
図3は、個別分散空調制御方法の概略フロー図を示している。
図3に示すように、まず、制御コンピュータ1を用いて、初期設定を行う(ステップS01)。初期設定では、通信設定及び測定項目の設定を行うが、具体的な手順については後述する。次に、制御コンピュータ1は、設定した測定項目について、測定値取得手段11を用いて、集中コントローラ3を介して測定値を取得する(ステップS02:測定値取得ステップ)。制御コンピュータ1は、取得した測定値に基づいて、演算手段12により、室外機の負荷率及びエネルギー消費効率を算出する(ステップS03:演算ステップ)。
【0028】
取得した測定値に基づいて室外機の負荷率を算出する方法としては、例えば、測定値として室外機の電流値を利用する場合は、当該電流値から定格電流比率を算出し、圧縮機の周波数を利用する場合は、当該周波数から定格周波数比を算出し、室外機の負荷率を表すものとして利用する。また、測定値として室内機の運転能力値(パワーレベル)を利用する場合は、下記式1に示す方法で室外機出力(負荷率)を算出する。なお、室内機の運転能力値を利用する場合は、算出の前提として各室内機の平均値を算出したものを測定値として利用する。
【0029】
【0030】
エネルギー効率の良い制御指令がどのように与えられるのかについては、制御対象となる室外機4のエネルギー消費効率を分析する必要がある。
図7は、室外機のエネルギー消費効率の一例を示すグラフイメージである。縦軸はエネルギー消費効率(COP)、横軸は室外機の負荷率(%)を表している。また、破線は室外機の各運転モードの境界値を示している。
図7に示すように、室外機のエネルギー消費効率は、40%付近で最も高くなっており、それよりも高くなっても低くなっても次第に効率が悪くなることが判る。また、負荷率が10%未満になると、負荷率が100%の場合よりも効率が悪くなることも判る。したがって、室外機においては、できる限り負荷率が40%に近い値となるように制御することが望ましく、また、負荷率が10%未満になった場合には、室外機の運転を止めることが望ましいといえる。ここで示した例は、あくまでも一例であり、COP曲線は各空調システムの仕様によって異なるものであり、各仕様に合わせてエネルギー消費効率を算出する。
【0031】
また、上記測定値の取得以外にも、制御コンピュータ1は、設定温度取得手段15により、集中コントローラ3を介して、室内機5の設定温度に関する情報を取得し、室内温度取得手段16により、集中コントローラ3を介して、空調対象となる室内の温度を取得する(ステップS04:設定温度及び室内温度取得ステップ)。
算出された室外機の負荷率及びエネルギー消費効率と、取得した室内機の設定温度と室内温度の差に基づいて、室外機がエネルギー消費効率のより高い負荷率での運転時間が長くなるように、集中コントローラを介して室外機に制御指令を与える(ステップS05:制御指令ステップ)。
【0032】
次に、
図4及び5を用いて、個別分散空調制御装置の初期設定フローと個別分散空調制御方法の具体的な制御フローについて説明する。
図4は、個別分散空調制御装置の設定フロー図を示している。個別分散空調制御装置10は、既存の空調システム2に接続して使用することから、使用に当たって初期設定を行う。具体的には、
図4に示すように、まず、制御コンピュータ1と集中コントローラ3を、通信ネットワーク6を介して接続し、通信設定を行う(ステップS11)。次に、既存の空調システム2との関係で、測定項目の切り替えが不要であるかを判定し(ステップS12)、不要である場合には初期設定が完了する。また、測定項目の切り替えが必要である場合には、測定項目切替手段14を用いて、室外機の負荷率を算出する基準となる測定項目を切り替える(ステップS13)。
【0033】
図5は、個別分散空調制御方法の制御フロー図であり、空調システムが運転中の状態に関するフローを示している。ここでは前提として、室外機の負荷率の算出対象となる測定値としては、室外機の圧縮機の定格周波数比を用いる。1基の室外機4には複数の室内機5が接続され、室内機グループを構成している。室外機4には4つの運転モードが存在し、それぞれ出力上限値が設定されているものとする。下記表1は、各運転モードと室外機の出力上限値の対応関係を表したものである。
【0034】
【0035】
上記表1に示すように、運転モードAの室外機出力上限値は100%、運転モードBの室外機出力上限値は70%、運転モードCの室外機出力上限値は40%、また運転モードDの室外機出力上限値は0%となっている。なお、室外機出力上限値が0%である場合は、サーモオフの状態となる。
本実施例の制御フローでは、室外機の負荷率及びエネルギー消費効率に基づいて、当該室外機に制御指令を与えるための基準となる閾値として、Q1~Q3の計3つの閾値を用いて判定する。下記表2は、負荷率に関する閾値を表したものである。
【0036】
【0037】
上記表2に示すように、閾値Q1は負荷率10%、閾値Q2は負荷率30%、閾値Q3は負荷率60%とされている。なお、表2はあくまでも負荷率に関する閾値の一例であり、設定する閾値の数やそれぞれの数値は適宜設定可能である。
また、室内機の設定温度と室内温度の差に基づいて、当該室外機に制御指令を与えるための基準となる閾値として、t1~t3の計3つの閾値を用いて判定する。下記表3は、温度差に関する閾値を表したものである。
【0038】
【0039】
上記表3に示すように、閾値t1は温度差+0.5℃、閾値t2は温度差+1℃、また閾値t3は温度差+1.5℃とされている。なお、表3についてもあくまでも負荷率に関する閾値の一例であり、設定する閾値の数やそれぞれの数値は適宜設定可能である。
【0040】
このような前提の下で、個別分散空調制御方法の具体的な制御フローについて説明する。
図5に示すように、まず、室外機の圧縮機の定格周波数比などの測定値に基づいて算出された室外機負荷率が閾値Q
1を下回り(ステップS101)、かつ室内温度と設定温度の差が全て閾値t
1を下回る場合(ステップS102)には、運転モードDに設定される(ステップS103)。運転モードDに設定後、所定の効果待ち時間が経過した後(ステップS104)に、室内機グループを構成する室内機5の内、1つでも室内温度と設定温度の差が閾値t
2を上回るかの判定(ステップS105)を行い、上回る場合には、運転モードCに設定される(ステップS106)。
また、室外機の圧縮機の定格周波数比などの測定値に基づいて算出された室外機負荷率が閾値Q
1を下回らない場合(ステップS101)や、室内温度と設定温度の差が全て閾値t
1を下回るわけではない場合(ステップS102)も、運転モードCに設定される(ステップS106)。
ステップS105において、室内機5の内、1つも室内温度と設定温度の差が閾値t
2を上回らない場合は、再度、室外機負荷率が閾値Q
1を下回るかの判定を行う(ステップS101)。
【0041】
運転モードCに設定された場合(ステップS106)、所定の効果待ち時間が経過した後(ステップS107)に、室内機グループを構成する室内機5の内、1つでも室内温度と設定温度の差が閾値t3を上回るかの判定(ステップS108)を行い、1つでもt3を上回る場合には、運転モードBに設定される(ステップS109)。これに対して、1つも閾値t3を上回らない場合には、再度、室外機負荷率が閾値Q1を下回るかの判定を行う(ステップS101)。
【0042】
運転モードBに設定された場合(ステップS109)、所定の効果待ち時間が経過した後(ステップS110)、室外機負荷率が閾値Q2を下回ることなく(ステップS111)、かつ室内機5の内、1つでも室内温度と設定温度の差が閾値t3を上回る場合(ステップS112)には、運転モードAに設定される(ステップS113)。
ステップS111において、室外機負荷率が閾値Q2を下回る場合には、運転モードCに設定される(ステップS106)。また、ステップS112において、室内機グループを構成する室内機5の全てにつき、室内温度と設定温度の差が閾値t3を上回らない場合には、運転モードBに設定される(ステップS109)。
【0043】
運転モードAに設定された場合(ステップS113)、所定の効果待ち時間が経過した後(ステップS114)、室外機負荷率が閾値Q3を下回る場合(ステップS115)には、運転モードBに設定され(ステップS109)、室外機負荷率が閾値Q3を下回らない場合(ステップS115)には、再度、ステップS115の判定がなされる。
【0044】
図6は、デマンド制御との優先順位判定フロー図を示している。
図6に示すように、空調システム2の運転を開始し(ステップS21)、室外機の負荷率を推定するための測定値を取得する(ステップS22)。室外機の負荷率及びエネルギー消費効率を算出し(ステップS23)、エネルギー効率の良い運転モードを決定する(ステップS24)。ステップS21~24の詳細については、上述の通りである。
ここで、デマンド制御が行われていないかの判定を行い(ステップS25)、デマンド制御が行われていない場合には、ステップS24の決定に従い、エネルギー効率の良い運転モード選択する(ステップS26)。これに対して、デマンド制御が行われている場合には、エネルギー効率の良い運転モードと、デマンド制御による運転モードを比較し(ステップS27)、より強い出力制限となる運転モードを選択する(ステップS28)。
このような制御を行うことにより、デマンド制御を阻害することなく、よりエネルギー効率の良い制御を行うことができる。
【0045】
(その他の実施例)
1)室内温度と室内機の設定温度の差を制御の判定に用いない構成でもよい。
2)実施例1では、冷房運転時におけるフローを例に説明したが、暖房運転時の場合は、例えば、閾値t
1を温度差-0.5℃、閾値t
2を温度差-1℃、また閾値t
3を温度差-1.5℃とし、室内温度と設定温度の差が閾値t
1~t
3を上回る或いは下回るかの判定については、冷房運転時に“上回る”とした箇所を“下回る”とし、“下回る”とした箇所を“上回る”として判定することができる。
3)制御コンピュータ1と集中コントローラ3を有線で接続するに当たり、LANケーブル6aだけではなく、通信インターフェースを用いることでもよい。
4)
図8は、HUBを用いた接続方法の説明図を示している。
図8に示すように、制御コンピュータ1は、LANケーブル6a及びHUB8を用いて、複数の集中コントローラ(3a~3d)と接続されている。なお、室外機や室内機については図示していない。集中コントローラ(3a~3d)は異なるメーカーの集中コントローラである。このように、複数台・複数メーカーの集中コントローラが対象であっても、HUB8等でTCP/IPネットワークを構成することで、1台の制御コンピュータ1で制御することが可能である。
1基の室外機で1台以上の室内機を個別に運転でき、複数の室外機に対して監視・操作を集中して行える集中コントローラを備える空調システムにおける制御方法であって、
前記集中コントローラとネットワーク接続された制御コンピュータを用いて、前記室外機の負荷率を算出する基準となる測定項目であって、前記室外機の電流値、圧縮機の周波数若しくは定格周波数比、又は、前記室内機の運転能力値である前記測定項目を切り替えるステップと、
切り替えた前記測定項目の測定値を、前記集中コントローラを介して取得する測定値取得ステップと、
取得した前記測定値に基づいて、前記室外機の負荷率及びエネルギー消費効率を算出する演算ステップと、
算出された前記室外機の負荷率及びエネルギー消費効率に基づいて、前記室外機がエネルギー消費効率のより高い負荷率での運転時間が長くなるように、前記制御コンピュータを用いて、前記集中コントローラを介して前記室外機に制御指令を与える制御指令ステップ、
を備えたことを特徴とする個別分散空調制御方法。
前記制御コンピュータを用いて、前記負荷率及び前記エネルギー消費効率を基に算出されたよりエネルギー消費効率の高い制御指令の出力上限と、目標となるデマンド値に基づく出力上限を比較し、より低い出力上限に該当する前記制御指令を選択する比較ステップを更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の個別分散空調制御方法。
1基の室外機で1台以上の室内機を個別に運転でき、複数の室外機に対して監視・操作を集中して行える集中コントローラを備える空調システムにおける制御装置であって、
前記集中コントローラとネットワーク接続され、
前記室外機の負荷率を算出する基準となる測定項目であって、前記室外機の電流値、圧縮機の周波数若しくは定格周波数比、又は、前記室内機の運転能力値である前記測定項目を切り替える手段と、
切り替えた前記測定項目の測定値を、前記集中コントローラを介して取得する測定値取得手段と、
取得した前記測定値に基づいて、前記室外機の負荷率及びエネルギー消費効率を算出する演算手段と、
算出された前記室外機の負荷率及びエネルギー消費効率に基づいて、前記室外機がエネルギー消費効率のより高い負荷率での運転時間が長くなるように、前記集中コントローラを介して前記室外機に制御指令を与える制御指令手段、
を備えたことを特徴とする個別分散空調制御装置。
前記負荷率及び前記エネルギー消費効率を基に算出されたよりエネルギー消費効率の高い制御指令の出力上限と、目標となるデマンド値に基づく出力上限を比較して、より低い出力上限に該当する前記制御指令を選択する比較手段を更に備えたことを特徴とする請求項5又は6に記載の個別分散空調制御装置。