(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059377
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】除草水性懸濁製剤
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20220406BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20220406BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20220406BHJP
A01N 47/38 20060101ALI20220406BHJP
A01N 43/70 20060101ALI20220406BHJP
A01N 37/26 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N25/04 102
A01P13/00
A01N47/38 A
A01N43/70
A01N37/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167077
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000242002
【氏名又は名称】北興化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥津 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】大井 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】秋山 正樹
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AB02
4H011BA01
4H011BA05
4H011BB06
4H011BB09
4H011BB14
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC07
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA15
4H011DH02
4H011DH03
4H011DH14
(57)【要約】
【課題】長期保管後においても湛水下水田に処理した際に、水田への除草活性成分の拡散性に優れ、かつ水性懸濁製剤が水稲に付着しにくいため、水稲への付着薬害発生の可能性が低く、更に水性懸濁製剤が仮に稲体へ付着したとしても、除草活性成分などに由来する付着薬害が軽減された除草水性懸濁製剤を提供すること。
【手段】除草活性成分、ブタンジオール変性ポリビニルアルコール、界面活性剤および水からなる湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤の提供。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除草活性成分、ブタンジオール変性ポリビニルアルコール、界面活性剤および水からなる湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤。
【請求項2】
ブタンジオール変性ポリビニルアルコールのケン化度が70mol%以上95mol%未満であることを特徴とする請求項1に記載の湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤。
【請求項3】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布した薬剤が稲体へ付着しにくく、長期保管後においても水田中にて除草活性成分の拡散性に優れた除草水性懸濁製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
湛水下水田への直接散布用水性懸濁製剤は、水田に入らずに散布できるため省力性に優れ、また水をベースとしているため安全性が高いことから、これまで多くの研究が行われ、様々な製剤が開発されてきた。その中でも有効成分の水田中への拡散性や薬剤の稲体への付着性は、除草効果や薬害に強く影響を及ぼすため、これらに着目した研究開発は下記に例示するように特に多くの研究が行われてきた。
【0003】
特開2008-150316(特許文献1)では、除草活性成分、ショ糖脂肪酸エステル、陰イオン界面活性剤および水よりなり、20℃における表面張力が35mN/m以下であることを特徴とする、湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤が提案されている。
【0004】
特開2009-84180(特許文献2)では、特定の除草活性化合物、比重調節剤、界面活性成分、増粘性成分、消泡剤及び水を含有する水面散布用水性懸濁状除草剤組成物であって、界面活性成分として、イオン性界面活性成分およびHLB値が15より大きい非イオン性界面活性成分を含有することを特徴とする水性懸濁状除草剤組成物が提案されている。
【0005】
特開2002-293702(特許文献3)では、20℃の水に対する溶解度が100ppm以下である除草活性成分と変性ポリビニルアルコールおよび水よりなることを特徴とする湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤が提案されている。
【0006】
特開昭62-289502(特許文献4)では、水を分散媒として除草活性成分と界面活性剤を配合し、表面張力が36~65dyne/cm(25℃)の物性を有する湛水下水田の田植後処理除草用水性懸濁製剤組成物が提案されている。
【0007】
特開2009-269838(特許文献5)では、除草活性成分、尿素、界面活性剤および/または保護コロイド剤、並びに水よりなり、製剤pHが7.0以上かつ、20℃における製剤粘度が300~800mPa・sの範囲であることを特徴とする湛水下水田への直接散布用除草水性懸濁製剤が提案されている。
【0008】
特開平10-287503(特許文献6)では、特定の除草活性成分を含有し、ポリビニルアルコール、高沸点溶剤および水よりなることを特徴とする湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤が提案されている。
【0009】
特開2004-26845(特許文献7)では、20℃の水に対する溶解度が100ppm以下である除草活性成分と保護コロイド剤(ポリビニルアルコール)および水よりなることを特徴とする湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤が提案されている。
【0010】
特許文献1、2の水性懸濁製剤は、それぞれ、「ショ糖脂肪酸エステル、陰イオン界面活性剤」、「イオン性界面活性成分およびHLB値が15より大きい非イオン性界面活性成分」と2種類の界面活性剤を含むことにより、除草活性成分の優れた拡散性を有し、特許文献3の水性懸濁製剤は、「変性ポリビニルアルコール」を含むことにより、貯蔵中に凍結した時でも分散質の凝集が起こらず、優れた拡散性を有する発明である。
【0011】
一方、特許文献4、5の水性懸濁製剤は、それぞれ「界面活性剤を配合し、表面張力が36~65dyne/cm(25℃)の物性を有する」こと、または「尿素、界面活性剤および/または保護コロイド剤」を含むことなどにより、除草活性成分による稲体への付着薬害を軽減した発明である。
【0012】
また、特許文献6の水性懸濁製剤は、「ポリビニルアルコール、高沸点溶剤」を含むことにより、除草活性成分の拡散性と稲体付着薬害軽減の2つの効用の両立を試みた発明であり、特許文献7は、保護コロイド剤を含有することにより、除草活性成分による稲体への付着薬害の軽減、除草活性成分の優れた拡散性のほか、長期保管による製剤中での分散質の沈降防止を有する発明である。
【0013】
しかしながら、これらの技術でも、長期保管後においては、水田中での除草活性成分の拡散性が低下するといった問題があり、また、集約化が進み、大型化する水田においては、さらなる拡散性向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008-150316号公報
【特許文献2】特開2009-84180号公報
【特許文献3】特開2002-293702号公報
【特許文献4】特開昭62-289502号公報
【特許文献5】特開2009-269838号公報
【特許文献6】特開平10-287503号公報
【特許文献7】特開2004-26845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の問題点を解決しようとするものである。すなわち、長期保管後においても湛水下水田に処理した際に、水田への除草活性成分の拡散性に優れ、かつ水性懸濁製剤が水稲に付着しにくいため、水稲への付着薬害発生の可能性が低く、更に水性懸濁製剤が仮に稲体へ付着したとしても、除草活性成分などに由来する付着薬害が軽減された除草水性懸濁製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した。その結果、除草活性成分、ブタンジオール変性ポリビニルアルコール、界面活性剤および水からなる水性懸濁製剤が上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明は以下の[1]~[3]のとおりである。
[1]除草活性成分、ブタンジオール変性ポリビニルアルコール、界面活性剤および水からなる湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤。
[2]ブタンジオール変性ポリビニルアルコールのケン化度が70mol%以上95mol%未満であることを特徴とする[1]に記載の湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤。
[3]界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする[1]または[2]に記載の湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明の湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤は、長期保管後も水田中での除草活性成分の拡散性がよく、水田に入らず畦畔から散布するだけで優れた生物効果を示し、また薬剤が水稲に付着しにくいため、付着薬害発生の可能性が低く、仮に薬剤が付着したとしても付着薬害が軽減される効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、除草水性懸濁製剤の拡散性試験に用いた水田試験区を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤を構成する成分、製剤の調製方法などの詳細に説明する。
【0021】
<構成成分>
(1)除草活性成分
本発明で用いる除草活性成分は、一般に農薬の活性成分として使用されるものであればよい。また、除草活性成分を2種類以上併用しても何ら構わない。
【0022】
このような除草活性成分としては、例えば、フェノキシ酸系、カーバメート系、アミド系(ブタクロール、イプフェンカルバゾンなど)、尿素系、アセト乳酸合成阻害除草剤(スルホニルウレア系、その他のアセト乳酸合成阻害除草剤)、トリアジン系(シメトリンなど)、ダイアジン系、ピラゾール系、ビピリジリウム系、ジニトロアニリン系、芳香族カルボン酸系、アミノ酸系、ニトリル系、シクロヘキサンジオン系、フェニルフタルイミド系、トリケトン系、ピリミジルオキシ安息香酸系、ダイアゾール系、脂肪酸系、有機リン系、シネオール系、インダンジオン系、ベンゾフラン系、トリアゾロピリミジン系、オキサジノン系、アリルトリアゾリノン系、イソウラゾール系、ピリミジニルチオフタリド系、無機除草剤、生物農薬などが挙げられる。
【0023】
なお、これらに含まれる個々の具体的な除草活性成分は、例えば「農薬ハンドブック2016年版」(社団法人 日本植物防疫協会刊)、「SHIBUYA INDEX 17th Edition」(SHIBUYA INDEX研究会刊)、「The Pesticide Manual 18th Edition」(British Crop Protection Council 刊)などに記載されている。
【0024】
また、本発明において使用される除草活性成分として、上記以外の公知あるいは今後開発される除草活性成分を適用することもできる。
【0025】
上記除草活性成分は、水性懸濁製剤100重量部中に、通常0.01~60重量部、好ましくは0.1~50重量部である。
【0026】
(2)ブタンジオール変性ポリビニルアルコール
本発明で使用するブタンジオール変性ポリビニルアルコールは、側鎖に1、2-ジオールを含有するポリビニルアルコールであり、従来のポリビニルアルコール系に比べ、低非晶性と高い水素結合力を有する。ガスバリア性や成型加工性に優れたフィルムとして用いられる他、水溶液では分散作用や乳化作用がある。
【0027】
本発明においては、水性懸濁製剤中に除草活性成分を分散させる作用を有する。また、水性懸濁製剤を畦畔から散布した際に、水田中へ除草活性成分を拡散させる働きの他、薬剤を水稲に付着させにくくする特徴をもつ。そして、水性懸濁製剤を水稲に付着させた際も接触角が大きくなるため、従来除草活性成分が持つ水稲への付着薬害を軽減させる効果を持つ。
【0028】
このブタンジオール変性ポリビニルアルコールの添加量は、上記の効果と経済性から水性懸濁製剤100重量部中に0.1~5.0重量部が好ましい。なお、水田中への除草活性成分の拡散性面からブタンジオール変性ポリビニルアルコールのケン化度は70mol%~95mol%未満であることが好ましい。
【0029】
(3)界面活性剤
本発明で使用できる界面活性剤の種類は水性懸濁製剤中に除草活性成分を分散させる作用を有するものであれば特に限定されない。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤などが挙げられるが、これらの界面活性剤を併用してもかまわない。
【0030】
なお、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤などの界面活性剤を製剤処方中に含むと、散布時、稲体へ薬剤が付着し薬害が発生しやすくなるなどの問題があるが、本発明においては、処方中にブタンジオール変性ポリビニルアルコールを含むため、除草活性成分の分散性の向上を目的に界面活性剤を使用することが可能となる。
【0031】
非イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレートポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、フッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキルカルボン酸など)、シリコーン系界面活性剤(ポリオキシアルキレンジメチルポリシロキサンコポリマーなど)、およびアセチレングリコール系界面活性剤(2,4,7,9-テトラメチル-デジン-4,7-ジオールなど)が挙げられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0032】
陰イオン界面活性剤の例としては、ポリカルボン酸型界面活性剤、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキル硫酸塩などが挙げられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0033】
陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤の例としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタインおよびアミンオキサイドなどが挙げられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0034】
上記した界面活性剤の添加量は、その効果と経済性より考えて水性懸濁製剤100重量部中に0.1~30重量部が好ましい。
なお、水田中への除草活性成分の拡散性面から非イオン界面活性剤が好ましく、非イオン界面活性剤としてはポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルが最も好ましい。
【0035】
(4)その他成分
本発明の湛水下水田直接散布用水性懸濁製剤には、必要に応じて上記の必須成分のほかに補助剤を添加することができる。凍結防止剤としてエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど、増粘剤としてキサンタンガム、グアガム、ウエランガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム、コロイド性含水ケイ酸アルミニウムマグネシウムなど、消泡剤としてシリコーン系、脂肪酸系物質など、防バイ剤としてソルビン酸カリウム、p-クロロ-メタキシレノール、p-オキシ安息香酸ブチル、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンなど、除草活性成分の安定化剤として酸化防止剤、紫外線防止剤、結晶析出防止剤などを添加してもよい。
なお本発明で使用できる補助剤は、上記の例に限定されるものではない。
【0036】
<水性懸濁製剤の調製方法>
本発明の除草水性懸濁製剤の調製方法は特に限定されないが、例えば次の方法によって調製できる。
除草活性成分、ブタンジオール変性ポリビニルアルコール、界面活性剤、水、その他補助剤を添加して混合する。なお、除草活性成分が固体の場合は予めJet粉砕機などで微粉砕化して使用してもよく、除草活性成分、ブタンジオール変性ポリビニルアルコール、界面活性剤、水、その他補助剤を添加して混合後、ガラスビーズなどを用いて湿式粉砕することによって調製してもよい。
【0037】
<水性懸濁製剤の使用態様>
上記により調製した水性懸濁製剤は、例えば、薬剤を水で希釈することなく畦畔から容器を振ることにより湛水下水田に滴下散布する方法、スプレー装置を用いて畦畔から湛水下水田に散布する方法、水口からの流入水の流れにのせて処理する方法、田植え機に装着して湛水下水田に滴下散布する方法、ヘリコプターやドローンを用いて空中から湛水下水田に滴下散布する方法、ラジコンボートを用いて散布する方法などがある。
【0038】
なお、水性懸濁製剤を、水で1.5から10倍程度に希釈して、上記の方法で散布してもかまわない。
本発明の水性懸濁製剤の湛水下水田への散布量は、10アールあたり通常0.1~3.0リットル、好ましくは0.2~2.0リットル、更に好ましくは0.3~1.0リットルである。
【実施例0039】
次に実施例で本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。従って、除草活性成分、界面活性剤などを種々のものに置き換えて、以下の実施例と同様な方法で調製することにより、水田中への除草活性成分の拡散性がよく、薬剤が稲体に対して起きる付着薬害を軽減した湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤とすることができる。
なお、実施例は表1、比較例は表2に記載される組成に基づき調製した。また、実施例中の「部」とあるのは、すべて重量部を示す。各種農薬活性成分における水性懸濁製剤の詳細な製造方法は、以下の通りである。
【0040】
[実施例1]
水93.0部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル0.3部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0041】
[実施例2]
水92.0部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル0.3部、リグニンスルホン酸塩1.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0042】
[実施例3]
水92.3部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.5部、リグニンスルホン酸塩1.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0043】
[実施例4]
水93.1部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.2部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0044】
[実施例5]
水93.0部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、ケン化度98mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル0.3部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0045】
[比較例1(特許文献7に準拠)]
水89.8部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、ポリビニルアルコール(無変性)5.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0046】
[比較例2(特許文献3に準拠)]
水86.8部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール8.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0047】
[比較例3(特許文献3に準拠)]
水89.8部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、スルホン酸変性ポリビニルアルコール5.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0048】
[比較例4]
水93.3部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.5部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0049】
[比較例5]
水92.8部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル2.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0050】
[比較例6]
水91.8部にイプフェンカルバゾン5.0部(除草活性成分)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1.0部、リグニンスルホン酸塩2.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0051】
[実施例6]
水88.8部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.0部、ポリカルボン酸塩1.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0052】
[実施例7]
水88.8部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.5部、アルキルベンゼンスルホン酸塩ホルマリン縮合物0.5部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、ウエランガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0053】
[実施例8]
水88.8部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル0.5部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、ウエランガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0054】
[実施例9]
水88.6部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール2.0部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.2部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0055】
[実施例10]
水89.9部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール0.5部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル0.3部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、コロイド含水ケイ酸アルミニウム0.3部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0056】
[比較例7(特許文献3に準拠)]
水82.8部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール8.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0057】
[比較例8(特許文献7に準拠)]
水85.5部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、ポリビニルアルコール(無変性)5.0部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル0.3部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0058】
[比較例9(特許文献6に準拠)]
水75.8部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、ポリビニルアルコール(無変性)5.0部、ヒマシ油10.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0059】
[比較例10]
水89.8部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、ポリカルボン酸塩1.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0060】
[比較例11]
水89.8部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、アルキルベンゼンスルホン酸塩ホルマリン縮合物1.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、ウエランガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0061】
[比較例12]
水89.8部にシメトリン9.0部(除草活性成分)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0062】
[実施例11]
水78.3部にブタクロール20.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.0部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル0.5部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0063】
[実施例12]
水78.2部にブタクロール20.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.0部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル0.5部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、コロイド含水ケイ酸マグネシウム0.3部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0064】
[実施例13]
水77.3部にブタクロール20.0部(除草活性成分)、ケン化度89mol%のブタンジオール変性ポリビニルアルコール1.5部、リグニンスルホン酸塩1.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁製剤を得た。
【0065】
[比較例13]
水77.7部にブタクロール20.0部(除草活性成分)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル2.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、0.3部コロイド含水ケイ酸アルミニウムを添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0066】
[比較例14]
水78.8にブタクロール20.0部(除草活性成分)、リグニンスルホン酸塩1.0部を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合する。その後、硬質ガラスビーズを用いてラボスターミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社製)にて湿式粉砕し、更に、キサンタンガム0.2部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、水性懸濁製剤を得た。
【0067】
【0068】
【0069】
次に試験例により、本発明の除草水性懸濁製剤の有用性を示す。本試験は稲体への付着性(付着具合、付着薬害)および水田中での拡散性(製造直後、長期保管後)を評価する目的で行った。
【0070】
[試験例1]付着性試験
100cm2のポットに水田土壌を充填し、1.5~1.8葉期の水稲を2本1株として2株移植し、湛水深は約3cmとした。水稲移植後5日後、第2葉身の中央部に対し実施例および比較例の除草水性懸濁製剤をマイクロピペットにて30μL×4滴を処理した。このときの稲体への薬剤の付着具合を下記基準で評価した。また、水稲の第2葉身に薬剤30μLをマイクロピペットにて強制的に付着させ、薬剤を付着させてから温室内(水温は薬害の発生しやすい温度である約15℃)で14日後、下記の評価基準で稲体の褐変などの付着薬害程度を評価した。その結果を表3(実施例)、表4(比較例)に示す。
【0071】
(評価基準)
付着性試験
付着具合 0:全く付着しない
1:極わずかに付着する
2:わずかに付着する
3:半分程度付着する
4:全量付着する
薬害程度 -:なし
±:僅小(実用上問題なし)
+:小(実用上問題あり)
++:中(実用上問題あり)
+++:大(実用上問題あり)
【0072】
[試験例2]製造時および長期保管後の拡散性試験
1区画の面積が16m
2(2m×8m)の水田試験区(湛水5cm)を作り、
図1のA点に実施例および比較例の除草水性懸濁製剤を水面から1mよりピペットで8mL(薬剤500mL/10a相当)を直接滴下した。処理24時間後に
図1のA~E点の各地点についての水深5cm~水面までの水をおのおの20mLずつ採取し、水中の除草活性成分濃度をHPLCにて分析した。なお、長期保管後の水性懸濁製剤については、密閉容器に入れた後、40℃の恒温室に90日間静置。その後室温で1日静置後、拡散性試験に用いた。
【0073】
なお、水の採取は、内径1cm長さ8cmのガラス管を用い、田面水へガラス管を深さ5cmまでに静かに入れ、ガラス管上部にゴム栓をし、静かに引き抜き、田面水約4mLを採取し、この操作を同一地点で5回繰り返して、1地点あたり合計20mLの水を採取する方法を用いた。そして、拡散性は、下記式により除草活性成分が試験区内の水中に均一に拡散した場合の理論水中濃度に対する割合で示した。
【0074】
【0075】
結果は表3、4に示す。
【0076】
【0077】
【0078】
〈表の説明〉
表1~4より、稲体への付着性(付着具合、付着薬害)および水田中での拡散性(製造直後、長期保管後)において、ブタンジオール変性ポリビニルアルコールおよび界面活性剤を含む実施例1~13は実用性の高い優れた結果を示した。一方でこれら2つをともに含有しない比較例1~14は、いずれかの項目で問題のある結果となった。ブタンジオール変性ポリビルアルコール以外の変性ポリビニルアルコールおよび、無変性ポリビニルアルコールを含有する特許文献3、6、7に基づき製造した比較例1~3、7~9も稲体への付着性または、拡散性に問題のある結果となった。
【0079】
なお、実施例の中でもケン化度が70mol%以上95mol%未満のブタンジオール変性ポリビニルアルコールを使用した実施例1は、ケン化度が95mol%以上の実施例5に比べ、拡散性が向上した。また、ブタンジオール変性ポリビニルアルコールのケン化度が70mol%~95mol%未満であり、界面活性剤として非イオン性界面活性剤のみを使用した実施例1、4、8~12は、イオン性の界面活性剤含む実施例2、3、6、7、13に比べ、拡散性が向上した。
【0080】
以上より、散布した薬剤が稲体へ付着しにくく、長期保管後においても水田中にて除草活性成分の拡散性に優れた除草水性懸濁製剤を得るためには、ブタンジオール変性ポリビニルアルコールと界面活性剤の2つを含有することが有効な手段である。さらにブタンジオール変性ポリビニルアルコールのケン化度が70mol%以上95mol%未満、界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることがより効果的な手段であることを見出した。