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特開2022-59399平型導体付電気コネクタ、相手電気コネクタ及び電気コネクタ組立体
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  • 特開-平型導体付電気コネクタ、相手電気コネクタ及び電気コネクタ組立体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059399
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】平型導体付電気コネクタ、相手電気コネクタ及び電気コネクタ組立体
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/79 20110101AFI20220406BHJP
【FI】
H01R12/79
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167117
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】佐当 星太朗
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB01
5E223BA04
5E223BA07
5E223BB01
5E223CA15
5E223CB46
5E223CC15
5E223CD01
5E223CD02
5E223DA05
5E223DB04
5E223DB09
5E223DB11
(57)【要約】
【課題】二つの平型導体を対向して平行に配して用いる場合に、平型導体の厚み方向でコネクタが大型化しない、平型導体付電気コネクタ、相手電気コネクタ及び電気コネクタ組立体を提供する。
【解決手段】平型導体C1,C2は、平型導体C1,C2の厚み方向で互いに離間した位置で、接触部C1A-1,C2A-1が配列された一方の面を内側面として該内側面同士が対面し、該内側面同士の間に、相手電気コネクタ2の嵌入部54を受け入れるための受入空間10Dが形成されており、ハウジング10は、平型導体C1,C2の前端側部分を収容しそして支持可能であるとともに相手ハウジング50と嵌合する嵌合部10Aを有し、嵌合部10Aは、平型導体C1,C2の前端側部分の外側面に対面する嵌合壁11,12で上記外側面を支持可能である。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる二つの帯状の平型導体の前端側部分を相手電気コネクタに嵌合接続するための平型導体付電気コネクタであって、
上記二つの平型導体と、
上記二つの平型導体の前端側部分を収容するハウジングと、
上記二つの平型導体の前端側部分を支持可能に上記ハウジングに取り付けられるリテーナとを有する平型導体付電気コネクタにおいて、
上記平型導体は、上記相手電気コネクタとの接続のための複数の接触部を、上記前端側部分の一方の面で、上記平型導体の帯幅方向に配列されて露呈した状態で有しており、
上記二つの平型導体は、該平型導体の厚み方向で互いに離間した位置で、接触部が配列された上記一方の面を内側面として該内側面同士が対面し、上記二つの平型導体の前端側部分の内側面同士の間に、上記相手電気コネクタに設けられた相手端子の相手接触部が配列された嵌入部を受け入れるための受入空間が形成されており、
上記ハウジングは、上記二つの平型導体の前端側部分を収容しそして支持可能であるとともに上記相手電気コネクタに設けられた相手ハウジングと嵌合する嵌合部を有し、
上記嵌合部は、上記平型導体の上記前端側部分の上記一方の面とは反対側に位置する他方の面をなす外側面に対面する嵌合壁を有し、該嵌合壁で上記平型導体の上記外側面を支持可能であり、
上記リテーナは、前後方向で上記受入空間とは異なる位置で上記二つの平型導体の間に位置し、上記ハウジングと相俟って上記二つの平型導体を支持可能となっている
ことを特徴とする平型導体付電気コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の平型導体付電気コネクタに対して嵌合接続される相手電気コネクタであって、
上記二つの平型導体の複数の上記接触部に対応して配列された複数の相手端子と、
上記複数の端子を保持する相手ハウジングとを備え、
上記複数の相手端子は、一方の平型導体に対応する一方の相手端子群と、他方の平型導体に対応する他方の相手端子群とを有しており、
一方及び他方の相手端子群は、コネクタ接続状態にて、上記平型導体付電気コネクタの上記受入空間内に進入する上記嵌入部に配列され、それぞれ対応する上記平型導体の上記接触部に接触するようになっている
ことを特徴とする平型導体付電気コネクタへ接続される相手電気コネクタ。
【請求項3】
上記複数の相手端子は、上記平型導体の厚み方向で弾性変位して上記平型導体の上記接触部と接触可能な相手接触部を有し、
上記一方の相手端子群の相手端子の相手接触部と上記他方の相手端子群の相手端子の相手接触部とは、上記平型導体の帯幅方向で互いに異なる位置に配されており、
上記相手電気コネクタが上記平型導体付電気コネクタに接続されて上記複数の相手端子の上記相手接触部が弾性変位した状態にて、上記平型導体の帯幅方向に見たとき、上記一方の相手端子群の相手端子の上記相手接触部と上記他方の相手端子群の相手端子の上記相手接触部との弾性変位範囲同士が、上記厚み方向で少なくとも一部で重複している
こととする請求項2に記載の相手電気コネクタ。
【請求項4】
請求項1に記載の平型導体付電気コネクタと請求項2又は請求項3に記載の相手電気コネクタとを有する電気コネクタ組立体であって、
上記相手電気コネクタの上記相手ハウジングは、上記複数の相手端子の上記相手接触部を収容するとともに上記平型導体付電気コネクタの上記ハウジングの上記嵌合部を受け入れる相手嵌合部を有し、
上記相手嵌合部は、該相手嵌合部が上記嵌合部を受け入れた状態で該嵌合壁の外面に対面する相手嵌合壁を有しており、上記相手嵌合壁の内面で上記嵌合壁の上記外面を支持することを特徴とする電気コネクタ組立体。
【請求項5】
上記相手電気コネクタの上記相手嵌合壁は、該相手嵌合壁の内面に、上記平型導体付電気コネクタの上記嵌合壁の外面に向けて突出する支持突部を有しており、
上記相手嵌合部が上記嵌合部を受け入れた状態で、上記支持突部の突出頂面で上記嵌合壁の上記外面を支持することとする請求項4に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項6】
上記嵌合壁は、該嵌合壁の外面で前後方向に延び上記支持突部を前方から受入可能な溝部を有し、
上記支持突部と上記溝部とが相俟って、上記平型導体の帯幅方向での上記平型導体付電気コネクタと上記相手電気コネクタとの相対移動を規制することとする請求項5に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項7】
上記支持突部は、上記平型導体の帯幅方向に見たときに、前後方向で上記平型導体の上記接触部と上記相手端子の上記相手接触部との接触位置を含む範囲に延びて形成されていることとする請求項5又は請求項6に記載の電気コネクタ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平型導体付電気コネクタ、これに嵌合される相手電気コネクタ及び両コネクタを有する電気コネクタ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
前後方向に延びる帯状の平型導体の前端部を受け入れて該平型導体が電気的に接続されるコネクタが特許文献1に開示されている。この特許文献1では、平型導体(特許文献1では「フレキシブル印刷配線基板」)がコネクタ(コネクタ装置)に一枚だけ接続されるようになっている。この平型導体は、前端部の両面に接触部を有しており、一方の面の接触部は信号配線用の接触部(接続端子部)をなし、他方の面の接触部は、接地用の接触部(接地接触部)をなしている。
【0003】
平型導体の前端部には、コネクタから不用意に抜出しないように、コネクタに設けられた係止部に係止可能な被係止部が形成されている。具体的には、平型導体の前端部の両側縁の一部が切り欠かれて被係止部(切欠き係合部)が形成されており、コネクタの係止部に係止可能となっている。平型導体の前端部には、上記係止部との係止力が作用するので強度が求められること、また、コネクタへの挿入時に剛性が必要であることに起因して、該前端部は後部に比べて厚い基材で作られている。
【0004】
特許文献1では、上述したように、一方の面に信号配線用の接触部が設けられ、他方の面には接地用の接触部が設けられているが、このように両面に接触部が形成されている平型導体においては、両面の接触部とも信号配線用とすることも可能である。この場合には、両面の信号配線の間での沿面距離を確保することが求められ、この点でも、平型導体の前端部の厚みを大きくすることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5093340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、前端部の両面に接触部を有する平型導体は、厚みが大きいことが要求される。このような平型導体の前端部がコネクタに接続される際には、両面の接触部に接触するコネクタの端子が平型導体の接触部上に位置することとなるので、コネクタは平型導体の厚み方向での寸法が大きくなり、これはコネクタ自体の大型化につながる。特許文献1のような一つの平型導体の両面に接触部が形成されている場合のみならず、前後方向に延びる二つの平型導体をそれらの厚み方向で互いに対向させ、それぞれの平型導体の接触部が対向方向での外側面(互いに反対側の面)に位置した状態でコネクタに接続する場合も、同じ事情のもとにある。このとき、平型導体の接触部と相手電気コネクタの端子(相手端子)のとの十分な接圧を確保するために、それぞれの平型導体の前端部の剛性を高くして該前端部の弾性変形を抑制することが求められ、この点でも、平型導体の前端部の厚みを大きくすることが必要である。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、二つの平型導体を対向して平行に配して用いる場合に、平型導体の厚み方向でコネクタが大型化しない、平型導体付電気コネクタ、相手電気コネクタ及び電気コネクタ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上述の課題は、次の第一発明に係る平型導体付電気コネクタ、第二発明に係る相手電気コネクタ、第三発明に係る電気コネクタ組立体により解決される。
【0009】
<第一発明>
第一発明に係る平型導体付電気コネクタは、前後方向に延びる二つの帯状の平型導体の前端側部分を相手電気コネクタに嵌合接続するための平型導体付電気コネクタであって、上記二つの平型導体と、上記二つの平型導体の前端側部分を収容するハウジングと、上記二つの平型導体の前端側部分を支持可能に上記ハウジングに取り付けられるリテーナとを有する。
【0010】
かかる平型導体付電気コネクタにおいて、第一発明では、上記平型導体は、上記相手電気コネクタとの接続のための複数の接触部を、上記前端側部分の一方の面で、上記平型導体の帯幅方向に配列されて露呈した状態で有しており、上記二つの平型導体は、該平型導体の厚み方向で互いに離間した位置で、接触部が配列された上記一方の面を内側面として該内側面同士が対面し、上記二つの平型導体の前端側部分の内側面同士の間に、上記相手電気コネクタに設けられた相手端子の相手接触部が配列された嵌入部を受け入れるための受入空間が形成されており、上記ハウジングは、上記二つの平型導体の前端側部分を収容しそして支持可能であるとともに上記相手電気コネクタに設けられた相手ハウジングと嵌合する嵌合部を有し、上記嵌合部は、上記平型導体の上記前端側部分の上記一方の面とは反対側に位置する他方の面をなす外側面に対面する嵌合壁を有し、該嵌合壁で上記平型導体の上記外側面を支持可能であり、上記リテーナは、前後方向で上記受入空間とは異なる位置で上記二つの平型導体の間に位置し、上記ハウジングと相俟って上記二つの平型導体を支持可能となっていることを特徴としている。
【0011】
第一発明に係る平型導体付電気コネクタでは、二つの平型導体が互いの内側面に接触部が位置するように配され、内側面同士の間に上記受入空間が形成されている。つまり、二つの平型導体の接触部同士は平型導体の厚み方向で受入空間の寸法分だけ離間しており、二つの平型導体間の沿面距離が十分に大きく確保されている。また、コネクタ嵌合状態では、相手電気コネクタの嵌入部が上記受入空間内に嵌入し、該嵌入部に配された相手端子の相手接触部が平型導体の内側面の接触部に接圧をもって接触する。したがって、上記相手端子は二つの平型導体の外側面側に位置することなく、その分だけ、従来のコネクタに比べて、平型導体の厚み方向でのコネクタ寸法を小さくすることができる。また、コネクタ嵌合状態にて、平型導体の接触部は相手接触部からの押圧力を受けることとなるが、平型導体の前端部の外側面はハウジングの嵌合壁によって支持され、該前端部の弾性変形が抑制されるので、上記接触部と上記相手接触部との接圧を十分に大きく確保できる。したがって、平型導体の前端部自体の厚みを大きくする必要がなくなり、その結果、上記厚み方向でコネクタ自体の大型化を回避できる。
【0012】
<第二発明>
第二発明に係る相手電気コネクタは、第一発明に係る平型導体付電気コネクタに対して嵌合接続される相手電気コネクタであって、上記二つの平型導体の複数の上記接触部に対応して配列された複数の相手端子と、上記複数の端子を保持する相手ハウジングとを備え、上記複数の相手端子は、一方の平型導体に対応する一方の相手端子群と、他方の平型導体に対応する他方の相手端子群とを有しており、一方及び他方の相手端子群は、コネクタ接続状態にて、上記平型導体付電気コネクタの上記受入空間内に進入する上記嵌入部に配列され、それぞれ対応する上記平型導体の上記接触部に接触するようになっていることを特徴としている。
【0013】
この相手電気コネクタに設けられた一方及び他方の相手端子群は、コネクタ嵌合状態にて、平型導体付電気コネクタの受入空間内、すなわち二つの平型導体の前端部の内側面同士間に進入する。つまり、一方及び他方の相手端子群が二つの平型導体の前端部の外側面側に位置することがないので、上記厚み方向での相手電気コネクタ自体の大型化を回避できる。
【0014】
第二発明において、上記複数の相手端子は、上記平型導体の厚み方向で弾性変位して上記平型導体の上記接触部と接触可能な相手接触部を有し、上記一方の相手端子群の相手端子の相手接触部と上記他方の相手端子群の相手端子の相手接触部とは、上記平型導体の帯幅方向で互いに異なる位置に配されており、上記相手電気コネクタが上記平型導体付電気コネクタに接続されて上記複数の相手端子の上記相手接触部が弾性変位した状態にて、上記平型導体の帯幅方向に見たとき、上記一方の相手端子群の相手端子の上記相手接触部と上記他方の相手端子群の相手端子の上記相手接触部との弾性変位範囲同士が、上記厚み方向で少なくとも一部で重複していることとしてもよい。
【0015】
このような構成とすることで、コネクタ嵌合状態にて、すなわち、一方の相手端子群の相手端子の上記相手接触部と上記他方の相手端子群の相手端子の上記相手接触部のそれぞれが弾性変位した状態にて、異なる相手端子群の相手接触部同士が平型導体の厚み方向の範囲での空間を共有でき、この厚み方向での相手電気コネクタひいては平型導体付電気コネクタの小型化が可能となる。
【0016】
<第三発明>
第三発明に係る電気コネクタ組立体は、第一発明に係る平型導体付電気コネクタと第二発明に係る相手電気コネクタとを有する電気コネクタ組立体であって、上記相手電気コネクタの上記相手ハウジングは、上記複数の相手端子の上記相手接触部を収容するとともに上記平型導体付電気コネクタの上記ハウジングの上記嵌合部を受け入れる相手嵌合部を有し、上記相手嵌合部は、該相手嵌合部が上記嵌合部を受け入れた状態で該嵌合壁の外面に対面する相手嵌合壁を有しており、上記相手嵌合壁の内面で上記嵌合壁の上記外面を支持することを特徴としている。
【0017】
第三発明では、コネクタ嵌合状態、すなわち相手電気コネクタの相手嵌合部が平型導体付電気コネクタの嵌合部を受け入れた状態にて、相手嵌合部の相手嵌合壁の内面で嵌合部の嵌合壁の外面を支持するようになっている。したがって、該嵌合部の壁厚寸法(平型導体の厚み方向での寸法を小さくすることができ、その分、平型導体の厚み方向での両コネクタの寸法を小さくできる。
【0018】
第三発明において、上記相手電気コネクタの上記相手嵌合壁は、該相手嵌合壁の内面に、上記平型導体付電気コネクタの上記嵌合壁の外面に向けて突出する支持突部を有しており、上記相手嵌合部が上記嵌合部を受け入れた状態で、上記支持突部の突出頂面で上記嵌合壁の上記外面を支持することとしてもよい。
【0019】
このように相手嵌合壁の内面に支持突部を設けることにより、相手嵌合壁はその内面全域ではなく支持突部の突出頂面で上記嵌合壁の外面を局部的に支持することとなり、より確実な支持が可能となる。
【0020】
第三発明において、上記嵌合壁は、該嵌合壁の外面で前後方向に延び上記支持突部を前方から受入可能な溝部を有し、上記支持突部と上記溝部とが相俟って、上記平型導体の帯幅方向での上記平型導体付電気コネクタと上記相手電気コネクタとの相対移動を規制することとしてもよい。
【0021】
コネクタ嵌合状態にて相手電気コネクタの支持突部が平型導体付電気コネクタの溝部に進入し、上記平型導体の帯幅方向でのコネクタ同士の相対移動を規制することにより、この帯幅方向で両コネクタの位置決めを良好に行うことができる。
【0022】
第三発明において、上記支持突部は、上記平型導体の帯幅方向に見たときに、前後方向で上記平型導体の上記接触部と上記相手端子の上記相手接触部との接触位置を含む範囲に延びて形成されていてもよい。
【0023】
支持突部が前後方向で上記接触位置を含む範囲に形成されていることで、平型導体付電気コネクタの嵌合壁の壁厚が小さくとも、相手電気コネクタの支持突部の突出頂面が上記範囲で上記嵌合壁の外面を支持して該嵌合壁の弾性変形を抑制するので、上記接触位置における上記接触部と上記相手接触部との十分な接圧が確保される。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、以上のように、コネクタ嵌合状態にて、相手電気コネクタの嵌入部が上記受入空間内に嵌入し、該嵌入部に配された相手端子の相手接触部が平型導体の内側面の接触部に接圧をもって接触する。したがって、上記相手端子は二つの平型導体の外側面側に位置することなく、その分だけ、従来のコネクタに比べて、平型導体の厚み方向でのコネクタ寸法を小さくすることができる。また、平型導体の前端部の外側面はハウジングの嵌合壁によって支持され、該前端部の弾性変形が抑制され、上記接触部と上記相手接触部との接圧を十分に大きく確保できるので、平型導体の前端部自体の厚みを大きくする必要がなくなり、その結果、上記厚み方向でコネクタ自体の大型化を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る電気コネクタ組立体を後方側から見た斜視図であり、コネクタ嵌合前の状態を示している。
図2図1の電気コネクタ組立体を後方側から見た斜視図であり、コネクタ嵌合後の状態を示している。
図3図1の電気コネクタ組立体の平型導体付電気コネクタの各部材を分離した状態で示した斜視図である。
図4】(A)は上側平型導体の平面図であり、(B)は下側平型導体の平面図である。
図5図1の電気コネクタ組立体の平型導体付電気コネクタを前方側から見た斜視図である。
図6図1の平型導体付電気コネクタのコネクタ幅方向に対して直角な面での断面図であり、ハウジングの係止腕部と平型導体の被係止部の位置での断面を示している。
図7図1の平型導体付電気コネクタの上下方向に対して直角な断面図であり、ハウジングの側方腕部とリテーナの側方被係止部の位置での断面を示している。
図8図1の電気コネクタ組立体の相手電気コネクタを後方側から見た斜視図である。
図9】(A)は上側相手端子を後方側から見た斜視図であり、(B)は下側相手端子を後方側から見た斜視図である。
図10】(A)は図8の相手電気コネクタを下方側から見た一部拡大図であり、(B)は図8の相手電気コネクタを後方から一部拡大図である。
図11図2の電気コネクタ組立体のコネクタ幅方向に対して直角な面での断面図であり、(A)は上側相手端子の位置での断面を示し、(B)は下側相手端子の位置での断面を示している。
図12】(A)は図2の電気コネクタ組立体のコネクタ幅方向に対して直角な面での断面図であり、ハウジングの上側溝部及び相手ハウジングの上側支持突部の位置での断面を示しており、(B)は(A)の一部拡大図であり、(C)は図2の電気コネクタ組立体の前後方向に対して直角な面での断面図であり、ハウジングの上側溝部及び相手ハウジングの上側支持突部の位置での断面を一部拡大して示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0027】
図1及び図2は、本実施形態に係る電気コネクタ組立体の斜視図であり、図1はコネクタ嵌合前の状態、図2はコネクタ嵌合後の状態を示している。図3は、図1の電気コネクタ組立体の平型導体付電気コネクタの各部材を分離した状態で示した斜視図である。本実施形態では、電気コネクタ組立体は、前後方向(X軸方向)をコネクタ挿抜方向として挿抜可能に接続される平型導体付電気コネクタ1(以下、「コネクタ1」という)と相手電気コネクタ(以下、「相手コネクタ2」という)とを有している。コネクタ1は、前方(X1方向)へ向けて、回路基板Pの実装面に実装された相手コネクタ2へ嵌合されて、相手コネクタ2に嵌合接続される。
【0028】
コネクタ1は、前後方向に延びる二つの平型導体C1,C2と、平型導体C1,C2の前端側部分を収容するハウジング10と、ハウジング10に取り付けられ平型導体C1,C2の前端側部分を後方から支持可能なリテーナ20とを有している。ハウジング10及びリテーナ20は、樹脂等の電気絶縁材で作られている。
【0029】
二つの平型導体C1,C2は、コネクタ幅方向(Y軸方向)を帯幅方向として前後方向(X軸方向)に延びる帯状をなしており、上下方向(Z軸方向)で互いに離間した位置で一方の面同士が対面している。本実施形態では、二つの平型導体C1,C2のうち、上側(Z1側)に位置する平型導体C1を「上側平型導体C1」、下側(Z2側)に位置する平型導体C2を「下側平型導体C2」といい、両者を区別する必要がない場合には、「平型導体C1,C2」という。
【0030】
図4(A)は上側平型導体C1の平面図であり、(B)は下側平型導体C2の平面図である。上側平型導体C1は、一方の面、すなわち下面に、前後方向に延びる複数の回路部C1A(図11(A)参照)が上側平型導体C1の帯幅方向(Y軸方向)に配列されている。回路部C1Aは、上記下面で露呈しており、平型導体C1の前端位置(X1側の端部位置)まで達している。回路部C1Aの前端側の部分は、相手コネクタ2の後述の上側相手端子30と接触するための上側接触部C1A-1(図11(A)参照)をなしている。また、上側平型導体C1は、ハウジング10の後述の上側挿入空間10Fへ挿入される前端側部分が他の部分より帯幅方向で幅広となっている。
【0031】
図3及び図4(A)に見られるように、上側平型導体C1の帯幅方向(Y軸方向)において、上側平型導体C1のY1側に位置する側縁部には上側平型導体C1の厚み方向(Z軸方向)に貫通する孔部C1Bが形成されており、該孔部C1Bの前端縁は、ハウジング10の後述の上側係止突部15A-1と係止する被係止部C1B-1として機能する(図6参照)。また、Y2側に位置する側縁部には切欠部C1Cが形成され、該切欠部C1Cの前方位置には上記帯幅方向での外側へ突出する耳部C1Dが形成されている。耳部C1Dの後端縁は、ハウジング10の後述の上側係止突部15A-1と係止する被係止部C1D-1として機能する。上側平型導体C1の前端側部分における上記帯幅方向での両側部の後端縁は、リテーナ20の後述の支持壁部22によって後方から支持される側方被支持部C1Eとして機能する。また、上側平型導体C1の前端側部分の他方の面、すなわち上面に補強板C1Fが貼付されており、前端側部分の補強が図られている。
【0032】
下側平型導体C2は、上側平型導体C1において孔部C1Bと切欠部C1Cとを上記帯幅方向(Y軸方向)で互いに入れ替えたような形状をしている(図6(A),(B))。つまり、下側平型導体C2は、一方の面、すなわち回路部C2Aが形成されている面が上面となる姿勢としたときに、孔部C2Bが上側平型導体C1の孔部C1Bと同じ側、すなわちY1側に位置し、切欠部C2Cが上側平型導体C1の切欠部C1Cと同じ側、すなわちY2側に位置する(図6(A),(B)参照)。下側平型導体C2において、回路部C2Aの前端側の部分が下側接触部C2A-1として機能すること、孔部C2Bの前端縁が被係止部C2B-1として機能すること、切欠部C2Cの前方に位置する耳部C2Dの後端縁が被係止部C2D-1として機能すること、下側平型導体C2の前端側部分における両側縁部の後端縁が側方被支持部C2Eとして機能すること、下側平型導体C2の前端側部分の他方の面、すなわち下面に補強板C2Fが貼付されていることは、上側平型導体C1と同様である。
【0033】
本実施形態では、上側平型導体C1の孔部C1B及び切欠部C1Cは、下側平型導体C2の孔部C2B及び切欠部C2Cと同じ形状に形成されているが、孔部C2B及び切欠部C2Cに対して前後方向にずれて位置している。具体的には、図4(A)と図4(B)とを比べると分かるように、上側平型導体C1の孔部C1Bが下側平型導体C2の孔部C2Bよりも若干前方(X1側)に位置しており、上側平型導体C1の切欠部C1Cが下側平型導体C2の切欠部C2Cよりも若干後方(X2側)に位置している。このように切欠部同士、孔部同士の位置を前後方向で異ならせることにより、上側平型導体C1と下側平型導体C2とを誤って入れ替えてハウジング10に取り付けてしまうことを防止できる。
【0034】
ハウジング10は、図3に見られるように、コネクタ幅方向(Y軸方向)を長手方向とする略直方体外形をなし、略前半部(X1側の部分)に、後述の相手ハウジング50と嵌合する嵌合部10Aを有しているとともに、略後半部(X2側の部分)に、リテーナ20が後方から装着されるリテーナ装着部10Bを有している。また、ハウジング10の内部空間には、前後方向(X軸方向)での嵌合部10Aの中間位置でコネクタ幅方向に延びる仕切壁10C(図7参照)が設けられており、仕切壁10Cによって上記内部空間が前後方向で仕切られている。具体的には、上記内部空間は、仕切壁10Cより前方に形成された前方受入空間10Dと、仕切壁10Cより後方に形成された後方受入空間10Eとに仕切られている。前方受入空間10Dは、コネクタ嵌合状態にて、相手コネクタ2の後述の嵌入部54を前方から受け入れるための空間である。後方受入空間10Eは、リテーナ20を後方からから受け入れるための空間である。
【0035】
また、ハウジング10の内部空間において、ハウジング10の上壁(後述の前方上壁11及び後方上壁16)の内面(下面)に沿って前後方向に延びて拡がる空間は上側挿入空間10Fとして形成されている(図6参照)。上側挿入空間10Fは、後方から挿入された上側平型導体C1の前端側部分を収容する(図6参照)。上側挿入空間10Fに上側平型導体C1の前端側部分が収容された状態において、ハウジング10の上壁の下面は、上側平型導体C1の上面に接面あるいは近接しており、上側平型導体C1の上面を支持可能となっている。
【0036】
また、ハウジング10の内部空間において、ハウジング10の下壁(後述の前方下壁12及び後方下壁17)の内面(上面)に沿って前後方向に延びて拡がる空間は下側挿入空間10Gとして形成されている(図6参照)。下側挿入空間10Gは、後方から挿入された下側平型導体C2の前端側部分を収容する(図6参照)。下側挿入空間10Gに下側平型導体C2の前端側部分が収容された状態において、ハウジング10の下壁の上面は、下側平型導体C2の下面に接面あるいは近接しており、下側平型導体C2の下面を支持可能となっている。
【0037】
このように、本実施形態では、ハウジング10の上壁及び下壁がそれぞれ対応する平型導体C1,C2の前端部を支持可能となっている。したがって、コネクタ嵌合状態にて、平型導体C1,C2の接触部C1A-1,C2A-1が後述の相手端子30,40の相手接触部32A,33A,42A,43Aからの押圧力を受けたとき、平型導体C1,C2の前端部がハウジング10の上壁及び下壁によって支持され、該前端部の弾性変形が抑制されるので、接触部C1A-1,C2A-1と相手接触部32A,33A,42A,43Aとの接圧を十分に大きく確保できる。したがって、平型導体C1,C2の前端部自体の厚みを大きくする必要がなくなり、その結果、上下方向、すなわち平型導体C1,C2の厚み方向でコネクタ1自体の大型化を回避できる。
【0038】
嵌合部10Aは、図5に見られるように、コネクタ幅方向に延び上下方向に対向する嵌合壁としての前方上壁11及び前方下壁12と、コネクタ幅方向での両端位置で上下方向に延びて前方上壁11及び前方下壁12とを連結する一対の前方側壁13と、コネクタ幅方向での中間域で上下方向に延び前方上壁11と前方下壁12とを連結する複数の隔壁14とを有している。
【0039】
前方上壁11には、コネクタ幅方向での両側端位置及び中間域での二位置に、前方上壁11の上面から突出するとともに前後方向に延びる突壁11A~11Dが形成されている。具体的には、突壁11A~11Dは、図3及び図5に見られるように、第一突壁11A、第二突壁11B、第三突壁11C、第四突壁11Dを、Y1側からY2側へ順次間隔をもって有している。第一突壁11A及び第四突壁11Dは、コネクタ幅方向での前方上壁11の両側端に位置しており、前方及び上方に開口して前後方向に延びる溝によりコネクタ幅方向に分割されている。第二突壁11B及び第三突壁11Cは、コネクタ幅方向での前方上壁11の中間域に位置しており、第二突壁11Bは第三突壁11Cよりも若干幅広に形成されている。
【0040】
また、前方上壁11のコネクタ幅方向での中央位置、すなわち第二突壁11Bと第三突壁11Cとの間には、前方上壁11の上面の前端位置から後方へ向けてハウジング10の後端位置まで延びる片持ち梁状のロック腕部11Eが形成されている。ロック腕部11Eは、前方上壁11の上面との間に間隔をもって位置で延びており、上下方向に弾性変位可能となっている。また、ロック腕部11Eの前後方向での中間位置には、上方に突出するロック突部11E-1が形成されており、該ロック突部11E-1で相手コネクタ2の後述のロック孔部51Fに係止してロック可能となっている。また、ロック腕部11Eの自由端部である後端部は、相手コネクタ2とのロック状態を解除するための上方からの押圧操作(ロック解除操作)を受ける操作部11E-2として機能する。
【0041】
前方上壁11の上面には、コネクタ幅方向で第二突壁11Bよりも外側にて第二突壁11Bに寄った位置で、また、コネクタ幅方向で第三突壁11Cよりも外側にて第三突壁11Cに寄った位置で、前後方向に延びる上溝部11F及び上突条部11Gが形成されている。図5に見られるように、上溝部11Fは、前方上壁11の前端側で前方上壁11の上面から没して形成されている。後述するように、上溝部11Fは相手コネクタ2の上側支持突部51Eの前方からの進入を許容する。上突条部11Gは、前方上壁11の後端側で前方上壁11の上面から突出して形成されている。後述するように、上突条部11Gは相手コネクタ2の相手上壁51の内面(下面)に当接する。
【0042】
前方下壁12の下面には、上下方向に見て、前方上壁11の上溝部11F及び上突条部11Gと同じ位置に、上溝部11F及び上突条部11Gと同形状の下溝部12A(図12(A),(C)参照)及び下突条部12B(図12(A)参照)が形成されている。
【0043】
前方側壁13には、図5に見られるように、該前方側壁13の後端側で該前方側壁13の側面(外面)から突出して前後方向の延びる側方突部13Aが形成されている。後述するように、側方突部13Aは相手コネクタ2の相手側壁53の内面に当接する。
【0044】
隔壁14は、図5に見られるように、コネクタ幅方向で等間隔に配列形成されており、これらの隔壁14によって前方受入空間10Dがコネクタ幅方向で分割されている。図7に見られるように、コネクタ幅方向での最外端の隔壁14は仕切壁10Cの両端と同位置にある。最外端の隔壁14及び仕切壁10Cは前方側壁13の内面に対してコネクタ幅方向での間隔をもって位置しており、この間隔を形成する空間には、平型導体C1,C2と係止可能な係止腕部15が前後方向に延びて設けられている。係止腕部15は、図6に見られるように、上側平型導体C1に係止可能な上側係止腕部15Aと、下側平型導体C2に係止可能な下側係止腕部15Bとを有している。係止腕部15は、その後端部が仕切壁10Cの外面及び前方側壁13の内面に連結されており(図7参照)、後端部から前方へ向けて延びる片持ち梁状をなし、上下方向で弾性変形可能となっている。図6に見られるように、上側係止腕部15Aは下側係止腕部15Bよりも若干長く形成されており、上側係止腕部15Aの前端部(自由端部)が下側係止腕部15Bの前端部(自由端部)よりも前方に位置している。
【0045】
上側係止腕部15Aの前端部(自由端部)には、上側平型導体C1の被係止部C1B-1,C1D-1と係止可能な上側係止突部15A-1が上方へ突出して形成されている。上側係止突部15A-1の前端面は、前後方向に対して直角な平坦な係止面をなし、この係止面で上側平型導体C1の被係止部C1B-1,C1D-1に後方から係止して、上側平型導体C1の不用意な抜けを防止している。また、上側係止突部15A-1の後端面は、前方へ向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面をなしている。ハウジング10の上側挿入空間10Fへ上側平型導体C1を後方から挿入して取り付ける際には、上側平型導体C1の前端がこの傾斜面に当接することで、上側係止腕部15Aが下方へ弾性変形し、上側平型導体C1の前方への円滑な挿入が可能となっている。
【0046】
図6に見られるように、下側係止腕部15Bの前端部(自由端部)には、下側平型導体C2の被係止部C2B-1,C2D-1と係止可能な下側係止突部15B-1が上方へ突出して形成されている。下側係止突部15B-1は既述の上側係止突部15A-1を上下反転させたような形状をなしており、上側係止突部15A-1と同様の機能を有している。
【0047】
リテーナ装着部10Bは、図3に見られるように、コネクタ幅方向に延び上下方向に対向する後方上壁16及び後方下壁17と、コネクタ幅方向での両端位置で上下方向に延びて後方上壁16と後方下壁17とを連結する一対の後方側壁18とを有している。リテーナ装着部10Bは、コネクタ幅方向で嵌合部10Aよりも大きく形成されており、後方側壁18は、コネクタ幅方向で前方側壁13よりも外側に位置している。
【0048】
後方上壁16には、コネクタ幅方向での中央寄り位置に、ロック腕部11Eの操作部11E-2の両側で、後方上壁16の上面から突出する規制壁16Aが形成されている。規制壁16Aは、コネクタ幅方向で操作部11E-2に対して当接可能に位置しており、コネクタ幅方向でのロック腕部11Eの過剰な弾性変形を規制している。後方上壁16には、コネクタ幅方向での側端寄り位置で、後方上壁16の下面から没入して前後方向に延びる後方上溝部16Bが形成されている。後方上溝部16Bは、後方へ開放されていて、リテーナ20の後述の支持壁部22の上部の後方からの進入を許容している。
【0049】
また、後方下壁17には、上下方向に見て後方上溝部16Bと同位置に、後方下溝部17Aが形成されている。後方下溝部17Aは、後方下壁17の上面から没入して前後方向に延びるとともに後方へ開放されていて、リテーナ20の後述の支持壁部22の下部の後方からの進入を許容している。
【0050】
後方側壁18には、図7に見られるように、後方側壁18の後端部の内面から該内面に沿って前方へ向けて延びる側方腕部18Aが形成されている。側方腕部18Aは前端部を自由端部とする片持ち梁状をなし、コネクタ幅方向で弾性変形可能となっている。側方腕部18Aの前端部には、コネクタ幅方向で内方へ突出する側方係止突部18A-1が形成されている。側方係止突部18A-1は、その前端面(前後方向に対して直角な平坦面)で、リテーナ20の後述の側方被係止部22Aに対して後方から係止可能となっており、リテーナ20の不用意な抜けを防止している。
【0051】
本実施形態では、図3に見られるように、前後方向での嵌合部10Aとリテーナ装着部10Bとの境界位置で、コネクタ幅方向での規制壁16Aよりも外側でハウジング10の上面から突出する防滴壁10Hが形成されている。この防滴壁10Hは、図2に見られるように、コネクタ嵌合状態にてコネクタ1の前方上壁11と相手コネクタ2の相手上壁51との間に形成される隙間を塞ぐように位置する。防滴壁10Hがこのように隙間を塞ぐことにより、コネクタ外部にて結露により発生した水滴が相手コネクタ2の内部へ浸入することを防止する。
【0052】
本実施形態では、防滴壁10Hよりも後方には、図1ないし図3に見られるように、後方に開放された後方凹部10Iが形成されている。したがって、ハウジング10を作る際、成型金型(図示せず)を後方から配置してハウジング10を成型した後、該成型金型を後方に抜くだけで防滴壁10Hを形成することができる。つまり、防滴壁10Hを形成するために複数の成型金型を用意する必要がなく、上記成型金型を簡単な形状とすることができる。
【0053】
リテーナ20は、図3に見られるように、コネクタ幅方向を長手方向とする略直方体外形をなす中実な中央板部21と、中央板部21のコネクタ幅方向での両端部に形成された支持壁部22とを有している。支持壁部22は、コネクタ幅方向にて平型導体C1,C2の側方被支持部C1E,C2Eと同位置にあり、上下方向にて平型導体C1,C2を含む範囲にわたり形成されている。支持壁部22は、リテーナ20がハウジング10に取り付けられた状態で、該支持壁部22の前端面(前後方向に対して直角な平坦面)が、平型導体C1,C2の側方被支持部C1E,C2Eに対して後方から近接して位置する。したがって、支持壁部22は平型導体C1,C2の側方被支持部C1E,C2Eを後方から支持可能となっている。
【0054】
支持壁部22の前端部には、図3に見られるように、支持壁部22の側方外面(コネクタ幅方向で外側に位置する面)から突出するともに上下方向に延びる爪状の側方被係止部22Aが形成されている。図7に見られるように、リテーナ20がハウジング10に取り付けられた状態において、側方被係止部22Aの後方にはハウジング10の側方係止突部18A-1が側方被係止部22Aに対して係止可能に位置している。つまり、本実施形態では、ハウジング10の側方係止突部18A-1がリテーナ20の側方被係止部22Aに対して後方から係止可能となっており、かつ、リテーナ20の支持壁部22が平型導体C1,C2の側方被支持部C1E,C2Eに後方から支持可能となっている。換言すると、リテーナ20は、ハウジング10と相俟って平型導体C1,C2を支持可能となっている。
【0055】
コネクタ1は、次の要領で組み立てられる。まず、平型導体C1,C2をハウジング10へ後方から取り付ける。具体的には、上側平型導体C1の前端側部分をハウジング10の上側挿入空間10Fへ後方から挿入する。上側平型導体C1の挿入過程において、上側平型導体C1の前端が上側係止腕部15Aの上側係止突部15A-1に当接し、上側係止腕部15Aを下方へ弾性変形させ、これによって、上側平型導体C1のさらなる挿入が許容される。上側平型導体C1の孔部C1B及び切欠部C1Cがそれぞれ対応する上側係止突部15A-1の位置に達すると、上側係止腕部15Aが自由状態に戻り、上側係止突部15A-1が孔部C1B及び切欠部C1Cのそれぞれに下方から進入する。その結果、被係止部C1B-1,C1D-1に対して後方から係止可能に位置し、上側平型導体C1はハウジング10によって仮保持された状態となり、上側平型導体C1の不用意な抜けが防止される。
【0056】
また、下側平型導体C2の前端側部分をハウジング10の下側挿入空間10Gへ後方から挿入する。下側平型導体C2は、上側平型導体C1について既述したのと同じ要領で、下側係止腕部15Bを上方へ弾性変形させながら挿入された後、自由状態に戻った下側係止腕部15Bの下側係止突部15B-1が、孔部C2B及び切欠部C2C内で被係止部C2B-1,C2D-1に対して後方から係止可能に位置し、下側平型導体C2はハウジング10によって仮保持された状態となり、下側平型導体C2の不用意な抜けが防止される。
【0057】
次に、リテーナ20を上側平型導体C1 と下側平型導体C2との間に位置させた後、ハウジング10の後方受入空間10Eへ後方から挿入して、リテーナ20をハウジング10に取り付ける。リテーナ20の挿入過程にて、リテーナ20の側方被係止部22Aの前端が側方腕部18Aの側方係止突部18A-1に当接し、側方腕部18Aをコネクタ幅方向で外方へ弾性変形させ、これによって、リテーナ20のさらなる挿入が許容される。側方被係止部22Aが側方係止突部18A-1の位置を通過すると、側方腕部18Aが自由状態に戻り、側方係止突部18A-1が側方被係止部22Aに対して後方から係止可能に位置し(図7参照)、リテーナ20の不用意な抜けが防止される。
【0058】
リテーナ20が取り付けられた状態にて、リテーナ20の支持壁部22の前端面は、平型導体C1,C2の側方被支持部C1E,C2Eに対して後方から近接して当接可能に位置する。この結果、支持壁部22は平型導体C1,C2の側方被支持部C1E,C2Eを後方から支持可能となり、平型導体C1,C2の不用意な抜けが防止される。また、中央板部21が上下方向での平型導体C1,C2の前端側部分同士の間で該前端側部分を上下方向で支持可能に位置することにより、上記前端側部分が前後方向に延びた姿勢が良好に維持される。このようにしてリテーナ20がハウジング10に取り付けられることにより、コネクタ1の組立てが完了する。
【0059】
コネクタ1では、二つの平型導体C1,C2が互いの内側面に接触部C1A-1,C2A-1が位置するように配され、内側面同士の間に前方受入空間10Dが形成されている。つまり、二つの平型導体C1,C2の接触部C1A-1,C2A-1同士は、上下方向、すなわち平型導体C1,C2の厚み方向で前方受入空間10Dの寸法分だけ離間しており、二つの平型導体C1,C2間の沿面距離が十分に大きく確保されている。また、コネクタ嵌合状態では、相手コネクタ2の後述の嵌入部54がコネクタ1の前方受入空間10D内に嵌入し、嵌入部54に配された後述の相手端子30,40の相手接触部32A,33A,42A,43Aが平型導体C1,C2の内側面の接触部C1A-1,C2A-1に接圧をもって接触する。したがって、相手端子30,40は二つの平型導体C1,C2の外側面側に位置することなく、その分だけ、従来のコネクタに比べて、平型導体の厚み方向でのコネクタ寸法を小さくすることができる。
【0060】
相手コネクタ2は、図8に見られるように、コネクタ1の平型導体C1,C2の複数の接触部C1A-1,C2A-1に対応してコネクタ幅方向(Y軸方向)に配列された複数の相手端子30,40と、複数の相手端子30,40を圧入保持する相手ハウジング50と、コネクタ幅方向での相手端子30,40の配列範囲外で相手ハウジング50に圧入保持される固定金具60とを有している。
【0061】
複数の相手端子30,40は、コネクタ1の上側平型導体C1に対応する一方の相手端子群とコネクタ1の下側平型導体C2に対応する他方の相手端子群とを有している。具体的には、一方の相手端子群は、上側平型導体C1に接続可能な複数の上側相手端子30を有し、他方の相手端子群は、下側平型導体C2に接続可能な複数の下側相手端子40を有している。図9に見られるように、相手端子30,40は、金属板部材をその板厚方向に打ち抜いて作られており、平坦な板面が維持された平板状をなしている。上側相手端子30と下側相手端子40は、その板厚方向がコネクタ幅方向(Y軸方向)に一致した姿勢で、コネクタ幅方向を端子配列方向として交互に配列されている。
【0062】
本実施形態では、コネクタ嵌合状態にて、上側相手端子30の後述の腕部32,33及び下側相手端子40の後述の腕部42,43がコネクタ1の前方受入空間10D内、すなわち二つの平型導体C1,C2の前端部の内側面同士間に進入するようになっている。つまり、腕部32,33,42,43が二つの平型導体C1,C2の前端部の外側面側に位置することがないので、上下方向での相手コネクタ2自体の大型化を回避できる。
【0063】
図9(A)に見られるように、上側相手端子30は、略四角平板状の上側基部31と、上側基部31の後端縁(X2側で上下方向に延びる端縁)から後方に延びる上側長腕部32及び上側短腕部33と、上側基部31の前端部の下縁から下方に延びる上側脚部34と、上側脚部34の下端から前方へ延びる上側接続部35とを有している。
【0064】
上側基部31は、前後方向での中間位置及び前端位置に、上側基部31の上縁から突出する圧入突部31Aが形成されている。上側相手端子30は、相手ハウジング50の後述の上側保持溝部50B-1Aへ前方から圧入されて圧入突部31Aが上側保持溝部50B-1Aの内面に喰い込むことにより、相手ハウジング50に保持される(図11(A)参照)。
【0065】
上側長腕部32は、上側基部31の下部の後端縁から前方へ向けて延びており、上下方向に弾性変形可能となっている。上側長腕部32の前端位置には、上側平型導体C1の上側接触部C1A-1と接圧をもって下方から接触する上側後方相手接触部32Aが、上方へ向け略三角形状に突出して形成されている。上側後方相手接触部32Aは、上下方向で上側短腕部33の後述の上側前方相手接触部33Aとほぼ同じ高さまで突出している。
【0066】
上側短腕部33は、上側長腕部32よりも上方に位置し、上側基部31の上下方向中間部の後端縁から前方へ向けて延びており、上下方向に弾性変形可能となっている。上側短腕部33の前端位置には、上側平型導体C1の上側接触部C1A-1に接圧をもって下方から接触する上側前方相手接触部33Aが、上方へ向け略三角形状に突出して形成されている。上側短腕部33は、上側長腕部32よりも若干短く形成されており、上側短腕部33の前端は、上側長腕部32の前端よりも前方(X1側)に位置している。つまり、上側短腕部33の上側前方相手接触部33Aは、上側長腕部32の上側後方相手接触部32Aよりも前方に位置している。
【0067】
図3及び図11(A)に見られるように、上側後方相手接触部32Aと上側前方相手接触部33Aとは、互いにほぼ同じ高さに位置し、前後方向で互いに隣接して位置している。また、図11(A)に見られるように、上側後方相手接触部32A及び上側前方相手接触部33Aは、相手ハウジング50の後述の嵌入部54の上面よりも突出して、後述の相手側受入空間50C内に位置しており、上側平型導体C1の上側接触部C1A-1に接触可能となっている。本実施形態では、このように上側接触部C1A-1に対して二点接触が可能となっていることで、上側接触部C1A-1との接触状態が良好に確保される。
【0068】
上側脚部34は、上側基部31の下縁から下方へ向けて直状に延びている。上側接続部35は、相手コネクタ2が回路基板P(図1参照)に実装された状態にて、回路基板P実装面に形成された対応回路部(図示せず)と同じ高さに位置し(図11(A)参照)、該対応回路部に対して半田接続可能となっている。
【0069】
図9(B)に見られるように、下側相手端子40は、上側相手端子30の上側基部31(圧入突部31Aを除く)、上側長腕部32、上側短腕部33を上下反転させるとともに、上側脚部34を短くしたような形状を成している。図9(B)では、下側相手端子40における上側相手端子30の各部に対応する部分を、上側相手端子30における符号に「10」を加えた符号を付して示している。つまり、下側相手端子40は、下側基部41、下側長腕部42、下側短腕部43、下側脚部44、下側接続部45を有しており、下側長腕部42の下側後方相手接触部42A及び下側短腕部43の下側前方相手接触部43Aで、下側平型導体C2の下側接触部C2A-1に対して接圧をもって上方から接触可能となっている(図11(B)参照)。また、下側相手端子40は、下側脚部44が上側相手端子30の上側脚部34を短くなっている分、下側基部41、下側長腕部42、下側短腕部43が上側相手端子30の上側基部31、上側長腕部32、上側短腕部33よりも下方に位置している。
【0070】
図9(B)に見られるように、下側基部41は、前後方向での中間位置及び前端位置に、下側基部41の上縁から突出する圧入突部41Aが形成されている。下側相手端子40は、相手ハウジング50の後述の下側保持溝部50B-1Bへ前方から圧入されて圧入突部41Aが下側保持溝部50B-1Bの内面に喰い込むことにより、相手ハウジング50に保持される(図11(B)参照)。
【0071】
本実施形態では、上側相手端子30と下側相手端子40とは、コネクタ幅方向に見て、上下方向で一部重複した範囲をもって位置している。したがって、上側相手端子30と下側相手端子40とが互いに上下方向範囲での空間を共有でき、上下方向での相手コネクタ2ひいてはコネクタ1の小型化が可能となる。また、本実施形態では、上側相手端子30の腕部32,33と下側相手端子40の腕部42,43とが、自由状態においても上下方向で一部重複して位置しているが、自由状態にて重複することは必須ではない。例えば、上側相手端子の腕部と下側相手端子の腕部とが自由状態においては重複せず、弾性変形状態となったときにその弾性変位範囲同士の少なくとも一部が上下方向で重複するようになっていてもよく、このような構成によっても相手コネクタひいてはコネクタの上下方向での小型化が可能となる。
【0072】
相手ハウジング50は、図8に見られるように、コネクタ幅方向(Y軸方向)を長手方向とする略直方体外形をなし、前端寄り位置から後端位置にわたる部分に、コネクタ1のハウジング10と嵌合する相手嵌合部50Aを有しているとともに、前端側部分に、相手端子30,40を圧入保持する相手端子保持部50Bを有している。
【0073】
相手嵌合部50Aは、コネクタ幅方向に延び上下方向に対向する相手嵌合壁としての相手上壁51及び相手下壁52と、コネクタ幅方向での両端位置で上下方向に延びて相手上壁51及び相手下壁52とを連結する一対の相手側壁53と、相手端子保持部50Bの後端面から相手嵌合部50Aの内部空間内を前方へ向けて延びる嵌入部54とを有している。相手上壁51、相手下壁52及び相手側壁53と嵌入部54との間で後方へ開口する環状空間は、コネクタ1の嵌合部10Aを受け入れるための相手側受入空間50Cとして形成している。
【0074】
相手上壁51は、コネクタ幅方向での四位置に、相手上壁51の下面から突出するとともに前後方向に延びる相手突壁51A~51Dが形成されている。具体的には、相手突壁51A~51Dは、図8に見られるように、第一相手突壁51A、第二相手突壁51B、第三相手突壁51C、第四相手突壁51Dを、Y1側からY2側へ順次間隔をもって有している。第一相手突壁51A及び第四相手突壁51Dはコネクタ幅方向で幅広に形成されており、第二相手突壁51B及び第三相手突壁51Cは第一相手突壁51A及び第四相手突壁51Dよりも幅狭に形成されている。また、第二相手突壁51Bは、第三相手突壁51Cよりも若干幅広に形成されている。
【0075】
第一相手突壁51Aは、コネクタ幅方向でコネクタ1の第一突壁11Aと第二突壁11Bとの間の空間に対応して位置している。第二相手突壁51Bは、コネクタ幅方向でコネクタ1の第二突壁11Bとロック腕部11Eとの間の空間に対応して位置している。第三相手突壁51Cは、コネクタ幅方向でコネクタ1のロック腕部11Eと第三突壁11Cとの間の空間に対応して位置している。第四相手突壁51Dは、コネクタ幅方向でコネクタ1の第三突壁11Cと第四突壁11Dとの間の空間に対応して位置している。これらの相手突壁51A~51Dは、コネクタ嵌合状態にて、コネクタ1におけるそれぞれ対応する空間へ前方から進入するようになっている。
【0076】
第一相手突壁51A及び第四相手突壁51Dの下面には、前後方向に延びるリブ状の上側支持突部51Eが形成されている。図10(A),(B)には、第一相手突壁51Aの上側支持突部51Eが示されており、該上側支持突部51Eは、第一相手突壁51Aの略前半部にて、コネクタ幅方向でのY2側に寄った位置で第一相手突壁51Aの下面から突出するとともに前後方向に延びて形成されている。上側支持突部51Eは、コネクタ幅方向に見たときに、前後方向で上側相手端子30の上側後方相手接触部32A及び上側前方相手接触部33Aのそれぞれの突出頂部を含む範囲に延びている(図12(B)参照)。また、上側支持突部51Eは、前後方向及びコネクタ幅方向でコネクタ1の第一突壁11Aと第二突壁11Bとの間に位置する上溝部11Fに対応して位置している。
【0077】
また、第四相手突壁51Dの上側支持突部51Eは、図示はされていないが、第一相手突壁51Aの上側支持突部51Eと同様の形状をなしており、コネクタ幅方向でのY1側に寄った位置に形成されている。第四相手突壁51Dの上側支持突部51Eは、前後方向及びコネクタ幅方向でコネクタ1の第三突壁11Cと第四突壁11Dとの間に位置する上溝部11Fに対応して位置している。
【0078】
後述するように、それぞれの上側支持突部51Eは、コネクタ嵌合状態にて、上側支持突部51Eは上溝部11Fに前方から進入し、上側支持突部51Eの突出頂面、すなわち下端面でハウジング10の前方上壁11の上面を支持するようになっている。
【0079】
また、相手上壁51の後端部には、コネクタ幅方向での中央位置、すなわち、第二相手突壁51Bと第三相手突壁51Cとの間の位置に、相手上壁51を上下方向に貫通するロック孔部51Fが形成されている。ロック孔部51Fは、後述するように、コネクタ1のロック突部11E-1と係止することでコネクタ1の抜けを防止する役割を担っている。
【0080】
相手下壁52には、相手上壁51の第一相手突壁51Aの上側支持突部51E及び第四相手突壁51Dの上側支持突部51E(図示せず)に上下方向で対向するそれぞれの位置に、上側支持突部と同形状の下側支持突部52Aが、相手下壁52の下面から突出するとともに前後方向に延びるリブ状をなして形成されている(図8参照)。
【0081】
相手側壁53には、前端寄り位置、かつ、上下方向での中間位置で、相手側壁53の内面から突出するとともに前後方向に延びるリブ状の側方支持突部53Aが形成されている。また、相手側壁53には、前方かつ下方へ開口するとともに前後方向に延びる金具保持溝部53Bが、コネクタ幅方向に対して直角な方向に拡がるスリット状をなして形成されている。
【0082】
嵌入部54は、相手端子保持部50Bの後面から前方へ向けて延びコネクタ幅方向に配列された複数の嵌入条部54Aを有している。嵌入条部54Aは、図10(B)に見られるように、前後方向に見たときに上下方向に延びる隔壁部54A-1と、隔壁部54A-1の上部にてY2側の側面から突出する上側規制突条部54A-2と、隔壁部54A-1の下部にてY1側の側面から突出する下側規制突条部54A-3とを有しており、前後方向に見たときに略クランク状をなしている。
【0083】
相手端子30,40が相手ハウジング50に保持された状態にて、上側相手端子30の上側長腕部32及び上側短腕部33は隔壁部54A-1のY1側の側面に沿って延び(図10(B)、図11(A)参照)、下側相手端子40の下側長腕部42及び下側短腕部43は隔壁部54A-1のY2側の側面に沿って延びている(図10(B)、図11(A)参照)。また、上側長腕部32及び上側短腕部33は下側規制突条部54A-3の直上の空間内に位置し、上側長腕部32の下方への過剰な弾性変位が下側規制突条部54A-3によって規制される。また、下側長腕部42及び下側短腕部43は上側規制突条部54A-2の直下の空間内に位置し、下側長腕部42の上方への過剰な弾性変位が上側規制突条部54A-2によって規制される。
【0084】
相手端子保持部50Bは、図11(A),(B)に見られるように、相手端子30,40を圧入保持するための相手端子保持溝部50B-1が前後方向で相手端子保持部50Bを貫通するスリット状に形成されている。具体的には、上側相手端子30の上側基部31を収容する上側保持溝部50B-1A(図11(A)参照)と、下側相手端子40の下側基部41を収容する下側保持溝部50B-1B(図11(A)参照)とが、コネクタ幅方向に交互に形成されている。図11(A),(B)に見られるように、上側保持溝部50B-1Aは相手端子保持部50Bの上端寄り位置に形成され、下側保持溝部50B-1Bは相手端子保持部50Bの上端寄り位置に形成されている。
【0085】
固定金具60は、金属板部材を板厚方向に屈曲して作られており、相手ハウジング50の相手側壁53に形成された金具保持溝部53Bに圧入保持される被保持部61と、回路基板の実装面にパッドとして形成された対応部P1(図1参照)に半田接続により固定される固定部62とを有している。被保持部61は、板面(板厚方向に直角な面)がコネクタ幅方向に対して直角をなしている。固定部62は、被保持部61の下端で直角に屈曲されコネクタ幅方向での外方へ向けて延びており、その下面で上記対応部に半田接続される。
【0086】
相手コネクタ2は次の要領で組み立てられる。まず、上側相手端子30の上側基部31を相手ハウジング50の上側保持溝部50B-1Aへ前方から圧入するとともに、下側相手端子40の下側基部41を相手ハウジング50の下側保持溝部50B-1Bへ前方から圧入する。次に、固定金具60の被保持部61を相手ハウジング50の金具保持溝部53Bへ後方から圧入する。この結果、固定金具60が相手ハウジング50に保持され、相手コネクタ2の組立てが完了する。相手ハウジング50への相手端子30,40及び固定金具60の取付け(圧入)の順序は上述した順序に限られず、いずれが先でもよく、また、同時であってもよい。
【0087】
コネクタ1と相手コネクタ2とは、次の要領で嵌合接続される。まず、相手コネクタ2の相手端子30,40の接続部35,45を回路基板Pの対応回路部へ半田接続するとともに、固定金具60の固定部62を回路基板Pの対応部P1へ半田接続することにより、相手コネクタを回路基板Pに実装する。
【0088】
次に、図1に見られるように、コネクタ1を相手コネクタ2の後方に位置させてから、コネクタ1を前方へ移動させて、コネクタ1の嵌合部10Aを相手コネクタ2の相手嵌合部50Aへ後方から嵌合させる。
【0089】
コネクタ嵌合過程にて、嵌合部10Aは相手側受入空間50C内に後方から進入し、ロック腕部11Eのロック突部11E-1が相手ハウジング50の相手上壁51の後端部に当接することにより下方へ弾性変形し、さらなるコネクタ1のさらなる前進が許容される。また、コネクタ嵌合過程にて、コネクタ1の突壁11A~11Dは相手コネクタ2において対応する空間内へ後方から進入するとともに、相手コネクタ2の相手突壁51A~51Dはコネクタ1において対応する空間内へ前方から進入する。この結果、突壁11A~11Dが相手突壁51A~51Dによりコネクタ幅方向でのずれの規制を受けることとなり、コネクタ1が前方へ向けて円滑に案内される。
【0090】
コネクタ1がさらに前進して、ロック突部11E-1が相手上壁51のロック孔部51Fの位置に達すると、ロック腕部11Eが自由状態に戻り、ロック突部11E-1がロック孔部51F内へ下方から進入する。その結果、図11(A)に見られるように、ロック突部11E-1がロック孔部51Fの内面に後方へ向けて係止可能となり、相手コネクタ2の不用意な抜けが防止されたロック状態となる。
【0091】
また、コネクタ嵌合過程にて、相手ハウジング50の嵌入部54の各嵌入条部54A、そして嵌入条部54Aに配された上側相手端子30の上側長腕部32、上側短腕部33及び下側相手端子40の下側長腕部42、下側短腕部43は、コネクタ1において対応する前方受入空間10D、換言すると、複数の隔壁14で隔てられたそれぞれの前方受入空間10Dへ前方から進入する。その結果、上側長腕部32及び上側短腕部33は、下方へ弾性変形した状態で、上側後方相手接触部32A及び上側前方相手接触部33Aで上側平型導体C1の上側接触部C1A-1に接圧をもって接触する(図11(A)参照)。また、下側長腕部42及び下側短腕部43は、上方へ弾性変形した状態で、下側後方相手接触部42A及び下側前方相手接触部43Aで下側平型導体C2の下側接触部C2A-1に接圧をもって接触する(図11(B)参照)。この結果、上側平型導体C1と上側相手端子30とが電気的に導通し、下側平型導体C2と下側相手端子40とが電気的に導通する。
【0092】
図11(A),(B)では、各腕部32,33,42,43は弾性変形しておらず、各相手接触部32A,33A,42A,43Aが平型導体C1,C2の接触部C1A-1,C2A-1と重複した状態で示されているが、実際には、既述したように各腕部32,33,42,43が弾性変形しており、各相手接触部32A,33A,42A,43Aがその突出頂部で平型導体C1,C2の接触部C1A-1,C2A-1に接触した状態となっている。
【0093】
また、相手ハウジング50の相手上壁51の第一相手突壁51A及び第四相手突壁51Dのそれぞれに形成された上側支持突部51Eは、それぞれに対応する上溝部11Fに前方から進入し、上側支持突部51Eの突出頂面、すなわち下端面でハウジング10の前方上壁11の上面を支持する(図11(B),(C)参照)。一方、相手ハウジング50の相手下壁52に形成された下側支持突部52Aは、対応する下溝部12Aに前方から進入し、下側支持突部52Aの突出頂面、すなわち上端面でハウジング10の前方下壁12の上面を支持する(図11(C)参照)。このように、相手上壁51及び相手下壁52はその内面(相手上壁51の下面及び相手下壁52の上面)の全域ではなく上側支持突部51E及び下側支持突部52Aのそれぞれの突出頂面で前方上壁11及び相手下壁52の外面(前方上壁11の上面及び相手下壁52の下面)を局部的に支持することとなるので、より確実な支持が可能となる。
【0094】
上側支持突部51E、下側支持突部52Aが上溝部11F、下溝部12A内に進入することにより、上側支持突部51Eと上溝部11F、下側支持突部52Aと下溝部12Aとがそれぞれ相俟って、コネクタ幅方向でのコネクタ1と相手コネクタ2との相対移動が規制され、コネクタ幅方向での両コネクタ1,2が良好に位置決めされる。
【0095】
本実施形態では、支持突部51E,52Aは、コネクタ幅方向に見たときに、平型導体C1,C2の接触部C1A-1,C2A-1と相手端子30,40の相手接触部32A,33A,42A,43Aとの接触位置を含む範囲に延びて位置している。したがって、仮にコネクタ1の前方上壁11及び前方下壁12の壁厚が小さくとも、支持突部51E,52Aの突出頂面が上記範囲で前方上壁11の上面及び前方下壁12の下面を支持して前方上壁11及び前方下壁12の弾性変形を抑制するので、上記接触位置における平型導体C1,C2の接触部C1A-1,C2A-1と相手端子30,40の相手接触部32A,33A,42A,43Aとの十分な接圧が確保される。
【0096】
本実施形態では、上側支持突部51E及び下側支持突部52Aのそれぞれの後端は、上溝部11F、下溝部12Aのそれぞれの後端よりもさらに後方の位置にまで達している。この結果、上側支持突部51Eが前方上壁11の上面に喰い込むとともに、下側支持突部52Aが前方下壁12の下面に喰い込み、これによっても、コネクタ幅方向での両コネクタ1,2の位置決めが図られている。図12(B)には、上側支持突部51Eの後端部が前方上壁11の上面に喰い込んでいる部分が、上側支持突部51Eの後端部と前方上壁11とが重複した状態で図示されている。
【0097】
また、コネクタ1の前方上壁11の上突条部11G、前方下壁12の下突条部12Bが、それぞれ相手上壁51の下面、相手下壁52の上面に喰い込み、これによってもコネクタ幅方向での両コネクタ1,2の位置決めが図られている。図12(B)には、上突条部11Gが相手上壁51の下面に喰い込んでいる部分が、上側支持突部51Eの後端部と前方上壁11とが重複した状態で図示されている。
【0098】
また、コネクタ嵌合状態にて、コネクタ1の側方突部13Aが相手コネクタ2の相手側壁53の内面に当接するとともに、相手コネクタ2の側方支持突部53Aがコネクタ1の前方側壁13の内面に当接しており、これによってもコネクタ幅方向での両コネクタ1,2の位置決めが図られている。
【0099】
本実施形態では、相手ハウジング50の支持突部51E,52Aでコネクタ1のハウジング10の前方上壁11及び前方下壁12を支持することとしたが、平型導体と相手端子との十分な接圧を確保できるのであれば、相手ハウジング50に支持突部51E,52Aを設けることは必須ではない。つまり、相手ハウジングに支持突部を設けることなく、相手ハウジングの相手上壁の下面及び相手下壁の上面でコネクタのハウジングの前方上壁の上面及び前方下壁の下面を支持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 コネクタ(平型導体付電気コネクタ)
2 相手コネクタ(相手電気コネクタ)
10 ハウジング
10A 嵌合部
10D 前方受入空間
11 前方上壁(嵌合壁)
11F 上溝部
12 前方下壁(嵌合壁)
12A 下溝部
20 リテーナ
30 上側相手端子
32A 上側後方相手接触部
33A 上側前方相手接触部
40 下側相手端子
42A 下側後方相手接触部
43A 下側前方相手接触部
50 相手ハウジング
50A 相手嵌合部
51 相手上壁(相手嵌合壁)
51E 上側支持突部
52 相手下壁(相手嵌合壁)
52A 下側支持突部
C1 上側平型導体
C1A-1 上側接触部
C2 下側平型導体
C2A-1 下側接触部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12