(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059421
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】施工方法及びそれに用いられる運搬用架台
(51)【国際特許分類】
F16L 57/00 20060101AFI20220406BHJP
F24F 1/32 20110101ALN20220406BHJP
【FI】
F16L57/00 Z
F24F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167161
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】中 悟史
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BB02
(57)【要約】
【課題】建築物の屋上に冷媒配管を設置する際に屋上で行う作業を軽減し、屋上での作業を効率的に行えるようにする。
【解決手段】建築物の屋上に空調用の冷媒配管を設置する施工方法は、工場において冷媒配管用ダクトを形成する第1工程と、冷媒配管用ダクトの内側の収容空間に冷媒配管用ダクトの長さ及び形状に適合するように加工した複数の冷媒配管を配置する第2工程と、複数の保持部が上下方向に配置された架台を準備し、複数の保持部のそれぞれに冷媒配管用ダクトを配置する第3工程と、架台を輸送車両の荷台に積み込み、建築現場へ搬送する第4工程と、建築現場において架台をクレーンで釣り上げて建築物の屋上へ搬送する第5工程と、建築物の屋上において冷媒配管用ダクトを所定位置に設置し、複数の冷媒配管用ダクトのそれぞれに収容されている複数の冷媒配管を連結する第6工程と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋上に空調用の冷媒配管を設置する施工方法であって、
工場において、互いに平行な一対の脚部の上部が相互に連結された支持部材の上面側に所定間隔を隔てて一対の側壁部材を対向配置することによって所定長さ及び所定形状の冷媒配管用ダクトを形成する第1工程と、
前記工場において、前記冷媒配管用ダクトの前記一対の側壁部材に挟まれた収容空間内に、前記冷媒配管用ダクトの長さ及び形状に適合するように加工した複数の冷媒配管を配置する第2工程と、
前記支持部材の下面を保持する複数の保持部が上下方向に所定間隔を隔てて配置された架台を準備し、前記複数の保持部のそれぞれに対して前記収容空間内に前記複数の冷媒配管が配置された前記冷媒配管用ダクトを配置し、複数の前記冷媒配管用ダクトが前記架台によって保持された状態とする第3工程と、
前記複数の冷媒配管用ダクトを保持する前記架台を輸送車両の荷台に積み込み、前記工場から前記建築物の建築現場へと搬送する第4工程と、
前記建築現場において、前記架台をクレーンで釣り上げて前記冷媒配管用ダクトを前記建築物の屋上へ搬送する第5工程と、
前記建築物の屋上において、前記複数の冷媒配管用ダクトのそれぞれを所定位置に設置し、前記複数の冷媒配管用ダクトのそれぞれに収容されている複数の冷媒配管を連結する第6工程と、
を有することを特徴とする施工方法。
【請求項2】
前記第2工程は、前記収容空間内に前記複数の冷媒配管を配置した後、前記一対の側壁部材の上部開口を覆う天蓋を取り付ける工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の施工方法。
【請求項3】
前記架台は、前記複数の保持部のそれぞれを分離可能であり、
前記第5工程は、前記クレーンにより前記複数の保持部のそれぞれを上段から順に釣り上げていくことで前記複数の冷媒配管用ダクトを1つずつ順に前記建築物の屋上へ搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載の施工方法。
【請求項4】
前記第1工程において形成される前記冷媒配管用ダクトは折曲部を有し、
前記第2工程は、前記冷媒配管用ダクトの折曲部に適合するように前記冷媒配管を折曲加工する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の施工方法。
【請求項5】
前記第2工程は、前記冷媒配管用ダクトの長さに応じて複数の冷媒配管を接続する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の施工方法。
【請求項6】
互いに平行な一対の脚部の上部が相互に連結された支持部材の上面側に所定間隔を隔てて立設する一対の側壁部材を有し、前記一対の側壁部材に挟まれた収容空間内に予め複数の冷媒配管が配置された冷媒配管用ダクトを運搬するための運搬用架台であって、
前記支持部材の下面を保持する複数の保持部を有し、各保持部によって前記冷媒配管用ダクトを保持することにより、複数の前記冷媒配管用ダクトを同時に運搬可能であり、
前記複数の保持部は、上下方向に所定間隔を隔てて配置され、前記複数の冷媒配管用ダクトを互いに干渉させることなく保持することを特徴とする運搬用架台。
【請求項7】
平面視矩形状の頂点に配置される複数の支柱と、
前記複数の支柱を相互に連結する連結部材と、
を更に有し、
前記複数の保持部は、前記支柱の上下方向に所定間隔を隔てた位置に着脱可能であることを特徴とする請求項6に記載の運搬用架台。
【請求項8】
前記連結部材は、前記複数の支柱に対して着脱可能であることを特徴とする請求項7に記載の運搬用架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋上に空調用の冷媒配管を設置する施工方法及びそれに用いられる運搬用架台に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上には空気調和システムの室外機が設置されることが多い。建築現場では、屋上に室外機を設置することに伴い、その室外機から各フロアの熱交換ユニットへ冷媒を循環させるための複数の冷媒配管が敷設される。
【0003】
従来、建築物の屋上に冷媒配管を敷設するために、冷媒配管用ダクトが用いられている(例えば、特許文献1,2)。特許文献1の冷媒配管用ダクトは、互いに平行な一対の脚部の上部が横板部によって相互に連結された支持部材を有し、その支持部材の横板部の上面側に、所定間隔を隔てて一対の側壁部材を対向配置することによって形成される。この冷媒配管用ダクトは、一対の側壁部材の内側の収容空間内に複数の冷媒配管が配置される。これら複数の冷媒配管は、一対の側壁部材の下部を横断する支持部材の横板部によって支持され、一対の側壁部材の内側に保持される。そして冷媒配管用ダクトは、収容空間内に複数の冷媒配管が配置された後、一対の側壁部材の上部開口を塞ぐように天蓋が取り付けられる。天蓋は、収容空間内に雨水などが入り込むことを防止するためのものである。このような冷媒配管用ダクトは、支持部材が冷媒配管を屋上の躯体面(床面)から持ち上げた状態で支持するため、躯体面を雨水などが流れても冷媒配管が浸水しないように保護できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-11706号公報
【特許文献2】特開2013-164140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような冷媒配管用ダクトの従来の施工方法では、まず支持部材の脚部が建築物の屋上の躯体面(床面)にアンカーなどを用いて固定され、その後、支持部材の横板部の上面側に一対の側壁部材が取り付けられる。つまり、はじめに冷媒配管用ダクトを建築物の屋上に設置する作業が行われるのである。冷媒配管用ダクトは、屋上スペースにおいて室外機から直線状に配置されることは少なく、屋上に設置される各種の障害物を避けるように折れ曲がりながら配置されるのが通常である。そして屋上に冷媒配管用ダクトが設置された後、一対の側壁部材の内側の収容空間内に、冷媒を各フロアに導くための冷媒配管が配置される。
【0006】
冷媒配管は、所定長さの直管形状として作業現場である建築物の屋上に搬入される。そのため、作業者は、それら直管形状の冷媒配管に対して1本ずつ必要に応じて曲げ加工を施しながら、一対の側壁部材の内側に整列させた状態で配置していく必要があり、効率的な作業を行うことができない。また、複数の冷媒配管を接続する際には、熟練した作業者が1本ずつロウ付け作業を行っていく必要があり、冷媒配管用ダクトの設置長さが長くなるほど、施工に長時間を要する。
【0007】
一方、大規模ビルディングなどの新築現場では、竣工予定に合わせて屋上スペースに冷媒配管を設置するための工数が定められている。通常、その工数は、それ程余裕がある訳ではなく、作業遅延が生じると責任問題が発生することから、作業者にかかる負担が大きくなっている。
【0008】
上記のような事情に鑑み、近年では、屋上スペースに冷媒配管を設置するための作業効率の向上が期待されており、特に建築物の屋上で行う作業の軽減が求められている。
【0009】
そこで本発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたものであり、建築物の屋上に冷媒配管を設置する際に屋上で行う作業を軽減し、効率的に作業を行えるようにした施工方法及びそれに用いられる運搬用架台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、建築物の屋上に空調用の冷媒配管を設置する施工方法であって、工場において、互いに平行な一対の脚部の上部が相互に連結された支持部材の上面側に所定間隔を隔てて一対の側壁部材を対向配置することによって所定長さ及び所定形状の冷媒配管用ダクトを形成する第1工程と、前記工場において、前記冷媒配管用ダクトの前記一対の側壁部材に挟まれた収容空間内に、前記冷媒配管用ダクトの長さ及び形状に適合するように加工した複数の冷媒配管を配置する第2工程と、前記支持部材の下面を保持する複数の保持部が上下方向に所定間隔を隔てて配置された架台を準備し、前記複数の保持部のそれぞれに対して前記収容空間内に前記複数の冷媒配管が配置された前記冷媒配管用ダクトを配置し、複数の前記冷媒配管用ダクトが前記架台によって保持された状態とする第3工程と、前記複数の冷媒配管用ダクトを保持する前記架台を輸送車両の荷台に積み込み、前記工場から前記建築物の建築現場へと搬送する第4工程と、前記建築現場において、前記架台をクレーンで釣り上げて前記冷媒配管用ダクトを前記建築物の屋上へ搬送する第5工程と、前記建築物の屋上において、前記複数の冷媒配管用ダクトのそれぞれを所定位置に設置し、前記複数の冷媒配管用ダクトのそれぞれに収容されている複数の冷媒配管を連結する第6工程と、を有することを特徴としている。
【0011】
第2に、本発明は、上記第1の施工方法において、前記第2工程は、前記収容空間内に前記複数の冷媒配管を配置した後、前記一対の側壁部材の上部開口を覆う天蓋を取り付ける工程を含むことを特徴としている。
【0012】
第3に、本発明は、上記第1又は第2の施工方法において、前記架台は、前記複数の保持部のそれぞれを分離可能であり、前記第5工程は、前記クレーンにより前記複数の保持部のそれぞれを上段から順に釣り上げていくことで前記複数の冷媒配管用ダクトを1つずつ順に前記建築物の屋上へ搬送することを特徴としている。
【0013】
第4に、本発明は、上記第1乃至第3のいずれかの施工方法において、前記第1工程において形成される前記冷媒配管用ダクトは折曲部を有し、前記第2工程は、前記冷媒配管用ダクトの折曲部に適合するように前記冷媒配管を折曲加工する工程を含むことを特徴としている。
【0014】
第5に、本発明は、上記第1乃至第4のいずれかの施工方法において 前記第2工程は、前記冷媒配管用ダクトの長さに応じて複数の冷媒配管を接続する工程を含むことを特徴としている。
【0015】
第6に、本発明は、互いに平行な一対の脚部の上部が相互に連結された支持部材の上面側に所定間隔を隔てて立設する一対の側壁部材を有し、前記一対の側壁部材に挟まれた収容空間内に予め複数の冷媒配管が配置された冷媒配管用ダクトを運搬するための運搬用架台であって、前記支持部材の下面を保持する複数の保持部を有し、各保持部によって前記冷媒配管用ダクトを保持することにより、複数の前記冷媒配管用ダクトを同時に運搬可能であり、前記複数の保持部は、上下方向に所定間隔を隔てて配置され、前記複数の冷媒配管用ダクトを互いに干渉させることなく保持することを特徴とする構成である。
【0016】
第7に、本発明は、上記第6の構成を有する運搬用架台において、平面視矩形状の頂点に配置される複数の支柱と、前記複数の支柱を相互に連結する連結部材と、を更に有し、前記複数の保持部は、前記支柱の上下方向に所定間隔を隔てた位置に着脱可能であることを特徴とする構成である。
【0017】
第8に、本発明は、上記第7の構成を有する運搬用架台において、前記連結部材は、前記複数の支柱に対して着脱可能であることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建築物の屋上に冷媒配管を設置する際に屋上で行う作業を軽減することが可能であり、屋上での作業を効率的に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】建築物の屋上に設置される冷媒配管の施工状態の一例を示す図である。
【
図2】建築物の屋上に空調用の冷媒配管を設置する施工方法の各工程を示す図である。
【
図3】第1工程において形成される冷媒配管用ダクトを示す図である。
【
図4】一対の側壁部材が支持部材に取り付けられた状態の冷媒配管用ダクトの正面図である。
【
図5】第2工程において冷媒配管が配置された冷媒配管用ダクトを示す図である。
【
図6】折曲部を有する冷媒配管用ダクトを示す図である。
【
図7】2つの冷媒配管を接続する接続工程の例を示す図である。
【
図9】架台に対して複数の冷媒配管用ダクトを配置した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、建築物の屋上に設置される冷媒配管20の施工状態の一例を示す図である。
図1に示すように、冷媒配管20は、建築物の屋上において、冷媒配管用ダクト10で保持された状態に設置される。冷媒配管用ダクト10は、一対の脚部11を有し、それら一対の脚部11の上部を相互に連結された概略コ字状の支持部材13と、その支持部材13に取り付けられる一対の側壁部材14,15と、一対の側壁部材14,15の上部に装着される天蓋17とを備えて構成される。支持部材13は、建築物の屋上の躯体面(床面)に対して一対の脚部がアンカーなどによって固定され、複数の冷媒配管20を躯体面の上方所定高さ位置で支持する。一対の側壁部材14,15は、支持部材13によって支持される複数の冷媒配管20の側方を覆うためのカバーである。また、天蓋17は一対の側壁部材14,15の上部開口を塞ぎ、複数の冷媒配管20が配置された収容空間内に雨水等が侵入すること防ぐためのカバーである。このような構成を有する冷媒配管用ダクト10は、建築物の屋上に設置される空気調和システムの室外機から各フロアへと通じる開口部までの区間に設置され、冷媒配管20が直射日光や風雨に晒されることを防止する。
【0022】
屋上に設置される冷媒配管用ダクト10は、室外機から各フロアへと通じる開口部までの区間において直線状に設置されることは少なく、またその設置長も様々である。そのため、冷媒配管用ダクト10は、
図1に示すように複数のダクト10a、10b、10c、10d,10eを連結させることにより、折曲部19が設けられたり、或いは、設置長が調整されたりする。
図1に示す例では、ダクト10a,10c,10eが直線状に冷媒配管20を配管するダクトとなっており、ダクト10b,10dが冷媒配管20の経路を90度折り曲げるダクトとなっている。
【0023】
冷媒配管用ダクト10の内側に配置される冷媒配管20は、上記のような冷媒配管用ダクト10の形状に沿うように折曲加工が施されると共に、冷媒配管用ダクト10の長さに適合するように複数の冷媒配管20が相互に連結される接続加工が施される。ただし、このような加工作業を従来のように建築物の屋上で行うようにすると、作業効率が悪い。そこで、本実施形態では、建築物の屋上で行う作業を最小限に抑えるようにする。
【0024】
図2は、本実施形態において建築物の屋上に空調用の冷媒配管20を設置する施工方法の各工程を示す図である。本実施形態における施工方法は、第1工程ST1から第6工程ST6までの6つの工程を有している。以下に、これら各工程の詳細について説明する。
【0025】
第1工程ST1は、建築物の建築現場ではなく、工場において、互いに平行な一対の脚部11の上部が相互に連結された支持部材13の上面側に所定間隔を隔てて一対の側壁部材14,15を対向配置することによって所定長さ及び所定形状の冷媒配管用ダクト10を形成する工程である。
【0026】
図3は、第1工程ST1において形成される冷媒配管用ダクト10を示す図である。第1工程ST1では、
図3(a)に示すように、工場において支持部材13に一対の側壁部材14,15を取り付ける作業が行われる。支持部材13は、一対の脚部11,11の上部が略水平の連結部12によって連結された概略コ字状の金属製部材である。例えば、支持部材13は、厚さ2mm程度のステンレス鋼板や亜鉛メッキ銅板などの金属板を折曲加工することにより形成される。一対の側壁部材14,15は、厚さ1~2mm程度の亜鉛メッキ銅板などの金属板を折曲加工することにより形成される。一対の側壁部材14,15は、略水平な連結部12に上面側に所定間隔を隔てた状態で互いに対向するように配置され、ビスなどを用いて連結部12に取り付けられる。
【0027】
図4は、一対の側壁部材14,15が支持部材13に取り付けられた状態の冷媒配管用ダクト10の正面図である。第1工程ST1では、
図4に示すように支持部材13の連結部12に対して一対の側壁部材14,15が取り付けられる。つまり、一対の側壁部材14,15は、支持部材13の連結部12の両端近傍位置で互いに対向するように立設した状態に取り付けられる。尚、
図4に示すように、支持部材13の一対の脚部11の間隔は、W1である。このように支持部材13の連結部12に対して一対の側壁部材14,15が取り付けられると、一対の側壁部材14,15の間には、冷媒配管20を収容するための収容空間16が形成される。
【0028】
次に、第2工程ST2は、工場において、冷媒配管用ダクト10の一対の側壁部材14,15に挟まれた収容空間16内に、冷媒配管用ダクト10の長さ及び形状に適合するように加工した複数の冷媒配管20を配置する工程である。
【0029】
図5は、第2工程ST2において冷媒配管20が配置された冷媒配管用ダクト10を示す図である。第2工程ST2では、
図5(a)に示すように、工場において冷媒配管用ダクト10の収容空間16に対して複数の冷媒配管20が配置される。これら複数の冷媒配管20は、
図5(b)に示すように、一対の側壁部材14,15の下方を横断する支持部材13の連結部12によって支持される。収容空間16内に配置される冷媒配管20の本数は、建築物の規模によって様々である。例えば、建築物の規模が大きくなる程、収容空間16内に配置される冷媒配管20の本数が増加するため、冷媒配管20を配置する作業時間が長くなる。そのため、工場における第1工程ST1で冷媒配管用ダクト10を工場で形成した後、第2工程ST2で冷媒配管20を冷媒配管用ダクト10の内側の収容空間16へ予め配置することにより、建築現場で行う作業を軽減することができるという利点がある。
【0030】
また、第2工程ST2では、例えば直線状のダクト10aと、折れ曲がったダクト10bとを相互に接続し、折曲部19を有する冷媒配管用ダクト10を形成し、その冷媒配管用ダクト10に対して複数の冷媒配管20を配置することが好ましい。
図6は、折曲部19を有する冷媒配管用ダクト10を示す図である。折曲部19を有する冷媒配管用ダクト10に対して冷媒配管20を配置するときには、冷媒配管20を折曲部19の角度に応じて冷媒配管20を折曲させることが必要となる。そのため、第2工程ST2は、冷媒配管用ダクト10の折曲部19に適合するように冷媒配管20を折曲加工する工程を含む。冷媒配管20を冷媒配管用ダクト10の折曲角度に応じて曲げる作業にはある程度の熟練した技能を必要とする。したがって、冷媒配管20に対する折曲加工を予め工場で行い、折曲部19を有する冷媒配管用ダクト10の内側に配置しておくことで、建築現場で行う作業を軽減することができる。
【0031】
また、第2工程ST2は、冷媒配管用ダクト10の長さに応じて、複数の冷媒配管20を直列状に接続する接続工程を含む。
図7は、2つの冷媒配管20a,20bを接続する接続工程の例を示す図である。
図7(a)に示すように、冷媒配管20a,20bは、銅管などで形成される金属管21a,21bと、金属管21a,21bの外周面を覆う断熱材22a,22bとを有している。また、断熱材22a,22bは、例えば発泡ポリエチレンなどによって形成される柔軟性を有する部材である。これら2つの冷媒配管20a,20bを接続するとき、互いの金属管21a,21bがロウ付けなどの接続手法によって接続される。このとき、継ぎ手などを用いて2つの金属管21a,21bを接続するようにしても良い。2つの金属管21a,21bが接続されると、
図7(b)に示すように、その接続部20cに対して発泡ポリエチレンなどによって形成される断熱部材23が巻き付けられる。この断熱部材23により、接続部20cの断熱性能を確保することができる。このように2つの冷媒配管20a,20bを相互に接続する作業にはある程度の熟練した技能を必要とする。そのため、冷媒配管用ダクト10の内側に冷媒配管20を配置するとき、必要に応じて、2つの冷媒配管20a,20bを予め工場で接続しておくことにより、建築現場で行う作業を軽減することができる。
【0032】
さらに、第2工程ST2は、必要に応じて、複数の冷媒配管20を冷媒配管用ダクト10の内側に配置した後、冷媒配管用ダクト10に天蓋17を取り付ける工程を含むものであっても良い。ただし、工場において作成した複数の冷媒配管用ダクト10を建築現場で接続する際に、天蓋17が邪魔になることが想定される。そのため、天蓋17は、仮止め状態で冷媒配管用ダクト10に取り付けるようにしても良い。また、天蓋17は、建築現場で取り付けることとし、工場で行う第2工程ST2では、冷媒配管用ダクト10に天蓋17を取り付けないようにしても良い。
【0033】
このように第2工程ST2が行われると、工場において複数の冷媒配管20が配置された冷媒配管用ダクト10が形成される。尚、第2工程ST2の終了段階で形成される冷媒配管用ダクト10の長さは、冷媒配管用ダクト10を輸送車両に積み込むことができる程度の長さにしておくことが好ましい。そのため、建築物の屋上に設置される冷媒配管用ダクト10は、第2工程ST2の終了時点において所定長さ以下の複数の冷媒配管用ダクト10として形成される。
【0034】
次に、第3工程ST3は、工場において、複数の冷媒配管用ダクト10を保持する架台30を準備し、その架台30に対して複数の冷媒配管用ダクト10を配置する工程である。
【0035】
図8は、架台30の一構成例を示す図である。この架台30は、所定長さ以下に分断された状態の複数の冷媒配管用ダクト10を互いに干渉しないように保持する架台であり、複数の冷媒配管用ダクト10を工場から建築現場へ運搬するために用いられる運搬用架台である。
図8に示すように、架台30は、平面視矩形を成す四隅の位置に設けられ、互いに平行な状態で立設する4本の支柱31と、それら4本の支柱31の下端部に設けられる車輪32と、4本の支柱31の下部を相互に連結する連結部材33と、4本の支柱31のそれぞれ異なる高さ位置に着脱可能な複数の保持部36とを有する。各支柱31には、高さ方向に所定間隔を隔てて保持部36を装着する複数の装着部35が設けられており、それら装着部35に対して保持部36を装着することができる。例えば、複数の装着部35の間隔は、冷媒配管用ダクト10の高さ寸法よりも若干大きい間隔に設定される。本実施形態の架台30は、1本の支柱31の3箇所に装着部35を設けており、それらの装着部35に対して3つの保持部36を装着可能である。尚、本実施形態における支柱31は円筒状の金属製パイプによって構成されるが、これに限られるものではない。
【0036】
このような架台30は、例えばX方向に短く、Y方向に長い、平面視長方形状の架台である。架台30のY方向の長さは、例えば工場において形成する冷媒配管用ダクト10の長さに応じて設計すれば良い。尚、連結部材33の長さを変更することにより、架台30のサイズは任意に調整可能である。
【0037】
連結部材33は、その両端部にクランプ部34を有している。クランプ部34は、支柱31に対して連結部材33を着脱するためのものである。つまり、連結部材33は、支柱31に対して着脱可能に構成される。連結部材33を支柱31から取り外すと、架台30は、4本の支柱31を分解した状態で持ち運ぶことができる。
【0038】
保持部36は、冷媒配管用ダクト10の下面を保持する保持部材37と、その保持部材37の両端側に設けられる装着桿38と、その装着桿38の両端に設けられる挿入片39とを有する。保持部材37は、例えば
図8に示すように金属枠の内側に金属メッシュを配置した構成である。ただし、これに限られるものではなく、保持部材37は、互い平行な2本の金属棒で構成したものであっても構わない。保持部材37のY方向の長さは、架台30のY方向の長さに適合する長さを有している。また、保持部材37のX方向の幅W2は、冷媒配管用ダクト10の一対の脚部11,11の間隔W1(
図4参照)よりも小さくなるように形成される。このような保持部36は、装着桿38の両端に設けられる挿入片39を各支柱31に設けられた装着部35に対して上から差し込むことにより、支柱31に取り付けられる。尚、挿入片39を装着部35に差し込んだ状態で挿入片39が装着部35から抜けないように、支柱31及び挿入片39のいずれか一方に対して抜け止め機構を設けたものであっても構わない。本実施形態では、支柱31の上下方向3箇所の位置に設けられた各装着部35に対して挿入片39を差し込むことにより、3つの保持部36を架台30に設置することができる。尚、本実施形態の架台30は、上下方向に所定間隔を隔てて配置される3つの装着部35に対して3つの保持部36を装着可能な例を示しているが、架台30に装着される保持部36の数はこれに限られるものではない。すなわち、架台30は、2以上の複数の保持部36を装着可能なものであれば良い。
【0039】
図9は、架台30に対して複数の冷媒配管用ダクト10を配置した例を示す図である。
図9に示すように架台30は、複数の保持部36のそれぞれで冷媒配管用ダクト10の下面を保持する。すなわち、保持部36の幅W2が支持部材13の一対の脚部11,11の間隔W1よりも小さいため、保持部36は、一対の脚部11,11の間に配置され、支持部材13の連結部12の下面を保持する。また、複数の保持部36は、複数の冷媒配管用ダクト10を互いに干渉させることなく、上下方向に所定間隔を隔てて複数の冷媒配管用ダクト10を保持する。
【0040】
このように架台30は、複数の保持部36のそれぞれで複数の冷媒配管用ダクト10を上下方向に積載することで、複数の冷媒配管用ダクト10のそれぞれを損傷させることなく保持することができる。すなわち、上述のように冷媒配管用ダクト10の一対の側壁部材14,15は、厚さが1~2mm程度と薄く、側壁面に対して外力が作用すると簡単に凹みが生じて損傷する。また、支持部材13の一対の脚部11,11についても折曲加工でリブなどを形成して一応の補強が成されているものの、母材の厚さが1~2mm程度と薄く、一対の脚部11,11に対して横方向から外力が作用すると簡単に折れ曲がって損傷する。そのため、本実施形態の架台30は、保持部36が支持部材13の連結部12の下面を保持することにより、側壁部材14,15や一対の脚部11,11に対して外力が作用しない状態で冷媒配管用ダクト10を保持することが可能であり、冷媒配管用ダクト10の運搬中に側壁部材14,15や一対の脚部11,11が損傷してしまうことを防止する。
【0041】
また、架台30の下部には車輪32が設けられているため、
図9に示すように複数の冷媒配管用ダクト10が積載された状態であっても、作業車は、簡単に架台30を移動させることができる。尚、架台30は、車輪32の転動を禁止する車輪ロック機構を備えたものであることが好ましい。
【0042】
次に、第4工程ST4は、複数の冷媒配管用ダクト10を保持する架台30を輸送車両の荷台に積み込み、建築現場へと搬送する工程である。例えば、複数の冷媒配管用ダクト10を保持する架台30を輸送車両に積み込む際には、クレーンなどを用いる。そして輸送車両に架台30を積み込むと、車輪32をロックし、架台30を荷台に固定する。
図10は、第4工程ST4における架台30の状態を示す図である。
図10に示すように、架台30は、輸送車両50に積載された状態で工場から建築現場へと搬送される。建築現場では、建築物60が建造されており、建築物60の屋上にはクレーン61が設置されている。輸送車両50が建築現場に到着すると、第5工程ST5へと進む。尚、第5工程ST5以降は、建築現場で行われる工程である。
【0043】
第5工程ST5は、建築現場において、架台30をクレーン61で釣り上げて冷媒配管用ダクト10を建築物60の屋上へ搬送する工程である。クレーン61は、複数の冷媒配管用ダクト10を保持する架台30を一体的に釣り上げ、複数の冷媒配管用ダクト10を1回の釣り上げ動作で屋上に搬送するようにしても良い。ただし、これに限らず、クレーン61は、保持部36によって保持される冷媒配管用ダクト10を架台30の上段側から順に1つずつ釣り上げて屋上に搬送するようにしても良い。冷媒配管用ダクト10を1つずつ釣り上げる場合には、支柱31及び挿入片39のいずれか一方に設けられる抜け止め機構を解除しておくことにより、クレーン61が保持部36と冷媒配管用ダクト10とを持ち上げれば、挿入片39が装着部35から引き抜かれ、そのまま釣り上げることができる。そのため、作業効率に優れている。
【0044】
その後、建築物60の屋上において、複数の冷媒配管用ダクト10をそれぞれの設置位置に仮配置する作業が行われる。この仮配置の作業では、上記と同様、クレーン61を用いた作業を行うようにしても良い。建築物の屋上に複数の冷媒配管用ダクト10が仮配置されると、第6工程ST6へと進む。
【0045】
第6工程ST6は、建築物60の屋上において、仮配置された複数の冷媒配管用ダクト10のそれぞれを予め定められている適切な位置に設置しつつ、複数の冷媒配管用ダクト10のそれぞれに収容されている複数の冷媒配管20を相互に連結していく工程である。屋上に仮配置される冷媒配管用ダクト10の内側には、既に複数の冷媒配管20が配置されている。そのため、作業者は、建築物60の屋上では冷媒配管20を1つずつ冷媒配管用ダクト10の内側に配置していく作業を行う必要がなく、互いに隣接する冷媒配管用ダクト10に配置された冷媒配管20どうしを相互に連結する作業を行うだけで良い。また、作業者は、冷媒配管20を工場で予め折り曲げて冷媒配管用ダクト10に配置しておくことにより、建築物60の屋上で冷媒配管20を折り曲げる作業を行う必要もない。そのため、本実施形態の施工方法は、従来の施工方法に比較すると、建築物60の屋上で行うべき作業を著しく軽減することができる。また、第6工程ST6では、必要に応じて一対の側壁部材14,15の上部に天蓋17を取り付けて固定する作業が行われる。そして、本実施形態では、最後にアンカーなどを用いて冷媒配管用ダクト10の脚部11を屋上の躯体面(床面)に固定すればよい。その結果、建築物60の屋上に、例えば
図1に示したように、内側に複数の冷媒配管20が配置された冷媒配管用ダクト10の設置が完了する。
【0046】
このように本実施形態の施工方法では、工場で冷媒配管用ダクト10に複数の冷媒配管20を配置しておき、複数の冷媒配管20が内部に配置された冷媒配管用ダクト10を建築物60の屋上に搬入することで建築物60の屋上で行うべき作業を軽減することができる。特に本実施形態の施工方法では、直管形状の冷媒配管20に対する曲げ加工や、複数の冷媒配管20を接続するロウ付け作業などの一部を予め工場で行っておくことにより、従来は建築物60の屋上で行っていたそれらの作業を軽減することができる。そのため、屋上に冷媒配管20を設置する作業を効率的に行うことが可能であり、作業遅延を生じさせることがない。寧ろ本実施形態の施工方法は、建築現場における工期短縮を図ることができる施工方法である。
【0047】
また、本実施形態において使用する架台30は、複数の冷媒配管用ダクト10を保持した状態で、それら複数の冷媒配管用ダクト10を工場から建築現場へ同時に搬送することができる。そのため、搬送効率に優れており、搬送コストを抑えることができる。それ故、本実施形態の施工方法は、施工コストを上昇させることなく、建築現場における工期を短縮することができるという点で優れている。
【0048】
また、架台30は、建築物60の屋上に搬入した後、各部材を分解することにより、作業者が建築物60のエレベータなどを使って屋上から降ろすことが可能である。つまり、架台30を屋上から搬出する際にはクレーン61を用いる必要がないため、効率的に架台30を搬出することができるという利点もある。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0050】
例えば上記実施形態において、架台30は、縦方向に一列の状態で複数の冷媒配管用ダクト10を保持する場合を例示した。しかし、架台30は、縦方向だけでなく、更に横方向にも複数の保持部36を備える構成とし、より多くの冷媒配管用ダクト10を同時に搬送できる構成としても良い。
【符号の説明】
【0051】
ST1…第1工程、ST2…第2工程、ST3…第3工程、ST4…第4工程、ST5…第5工程、ST6…第6工程、10…冷媒配管用ダクト、11…脚部、13…支持部材、14,15…側壁部材、16…収容空間、20…冷媒配管、30…架台(運搬用架台)、31…支柱、33…連結部材、36…保持部、60…建築物、61…クレーン。