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特開2022-59454押出ラミネート用易剥離性フィルム、蓋材用易剥離性フィルムおよびその包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059454
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】押出ラミネート用易剥離性フィルム、蓋材用易剥離性フィルムおよびその包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220406BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220406BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220406BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/32 Z
B32B27/30 B
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167225
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】591143951
【氏名又は名称】ジェイフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 記久子
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA12
3E086AB01
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB22
3E086BB51
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA11
3E086DA08
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK09A
4F100AK12A
4F100AK63B
4F100AK66B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EH20
4F100EH23
4F100EJ82A
4F100GB16
4F100GB18
4F100JK06
4F100JL12B
4F100JL14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蓋用包装材として用いた場合に、蓋材下層部を残して蓋材上層部を容易に剥離することができる凝集破壊タイプの易剥離性フィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも基層とシール層とを有するフィルムであって、基層は、押出ラミネート加工を施す側の層であり、凝集破壊機能を有し、フィルムの厚み方向にシール層側表面から20~50μmに位置することを特徴とする押出ラミネート用易剥離性フィルム。また、基層の剥離強度(積分平均値)が0.3~2.0N/15mm幅である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基層とシール層とを有するフィルムであって、該基層は、押出ラミネート加工を施す側の層であり、凝集破壊機能を有し、フィルムの厚み方向にシール層側表面から20~50μmに位置することを特徴とする押出ラミネート用易剥離性フィルム。
【請求項2】
前記基層の剥離強度(積分平均値)が0.3~2.0N/15mm幅である、請求項1に記載の押出ラミネート用易剥離性フィルム。
【請求項3】
前記基層が、前記基層を100質量%とした場合に、ポリエチレン系樹脂(a)50~90質量%とポリブテン樹脂(b)10~50質量%とを含む、請求項1または2に記載の押出ラミネート用易剥離性フィルム。
【請求項4】
前記基層のポリエチレン系樹脂(a)がポリエチレン樹脂にスチレンを含浸重合させた樹脂(a1)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の押出ラミネート用易剥離性フィルム。
【請求項5】
前記基層と前記シール層との間に、主成分としてポリエチレン系樹脂を含む中間層を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の押出ラミネート用易剥離性フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項の易剥離性フィルムの基層側に押出ラミネート層を形成した蓋材用易剥離性フィルム。
【請求項7】
請求項6の蓋材用易剥離性フィルムを用いてなる包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出ラミネート用易剥離性フィルム、蓋材用易剥離性フィルムおよびその包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料の包装容器として、容易に開封できる易開封性のプラスチック包装材が用いられている。易開封性を付与する一般的な方法としては、蓋材や底材のシール層とその隣接する樹脂層との層間の強度を調整することによりシール強度を制御する層間剥離タイプ、蓋材のシール層を構成する樹脂の組成を変えることで容器との密着性や粘着性を制御し、蓋材と容器との界面を剥離して開封を行う界面剥離タイプ、およびシール層を非相溶のポリマーブレンドにより凝集破壊させて開封する凝集破壊タイプが一般的である。
【0003】
中でも水分を含んだ内容物や、液体などを含んだ包装には、夾雑シール性を有する凝集破壊タイプの易開封性シーラントフィルム、すなわち、シール層に十分なシール性と凝集破壊性を兼備させた易開封性シーラントフィルムが用いられている。また、凝集破壊機能は、非相溶のポリマー同士の海島構造相界面の微細な剥離をフィルム水平方向に伝播させて発現することから、凝集破壊性シール層は、その厚みを薄くして用いられている(特許文献1、段落[0030])。言い換えると、従来の液体等を含む包装には、被着体とのシール面近傍で凝集破壊し易開封するシーラントフィルムが用いられてきた。
【0004】
カップ焼きそば包装体のような湯切り孔付きの蓋材のように、被着体の容器に対しシールした蓋材の下層部を残し、蓋材の上層部のみを開ける場合には、シール層で凝集破壊する易開封性シーラントフィルムは用いられておらず、蓋材の下層部と上層部との間にシリコーンやワックスを含む剥離層や粘着層を設けていた。
しかしながら、カップ焼きそば包装体のように、湯切り孔からお湯を出して捨てるための用途であれば、開封剥離機構にシリコーンやワックス等を用いてもよいが、蓋材上層部を剥離した後の蓋材下層部に食材が触れたり、口を付けて内容物を飲食したりする場合には、安全衛生の観点で他の開封剥離機構を備えた包装材が求められている。
【0005】
また、蓋材の下層部と上層部との易剥離のきっかけ部を簡便に形成する方法として、下層部にハーフカット加工やレーザーカット加工などの機械的加工を施す場合、該機械的加工の最小加工深度が20μm程度であるので、蓋材の下層部と上層部との間の易剥離の位置は、フィルムの厚み方向にシール層側表面から20μm以上の位置である必要がある。
【0006】
例えば、特許文献2では、最外層に凝集破壊層を設け、該最外層はポリブテン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとからなる構成のシーラントフィルムが記載されているが、その目的がイージーピール性、高密封性とともに高透明性、高像鮮明性を有するためであるため、各層の厚みや最外層の厚み方向の位置は特定されておらず、上述の機械的加工と組み合わせると、易剥離できない場合があった。
また、最外層の構成に直鎖状低密度ポリエチレン20~60重量部を必須成分として、最外層の樹脂組成の相溶性を高めることで、該層の透明性を高めているため、該フィルムに押出ラミネートし蓋材に用いると、凝集破壊性が不十分でフィルムが材破してしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-136866号公報
【特許文献2】特開2015-120249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記実情を鑑み、本発明の課題は、蓋用包装材として用いた場合に、蓋材下層部を残して蓋材上層部を容易に剥離することができる凝集破壊タイプの易剥離性フィルムを提供することに存する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討した結果、所定の層構成のフィルムにおいて、凝集破壊機能を有する層の厚み方向位置を所定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
【0010】
第1の本発明は、少なくとも基層とシール層とを有するフィルムであって、該基層は、押出ラミネート加工を施す側の層であり、凝集破壊機能を有し、フィルムの厚み方向にシール層側表面から20~50μmに位置することを特徴とする押出ラミネート用易剥離性フィルムである。
【0011】
ここで、基層が、「フィルムの厚み方向にシール層側表面から20~50μmに位置する」とは、基層のシール層側面(押出ラミネート加工を施す側とは反対の面)の位置が、シール層側表面から20~50μmの範囲内であることを意味する。
また、基層が「凝集破壊機能を有し」とは、基層内部において非相溶のポリマー同士の海島構造相界面での微細な剥離をフィルム水平方向に伝播させて発現し、その結果、巨視的にフィルムが剥離する機能を有することである。
【0012】
第1の本発明において、前記基層の剥離強度(積分平均値)が0.3~2.0N/15mm幅であることが好ましい。
【0013】
第1の本発明において、前記基層が、前記基層を100質量%とした場合に、ポリエチレン系樹脂(a)50~90質量%とポリブテン樹脂(b)10~50質量%とを含むことが好ましい。
【0014】
第1の本発明において、前記基層のポリエチレン系樹脂(a)がポリエチレン樹脂にスチレンを含浸重合させた樹脂(a1)を含むことが好ましい。
【0015】
第1の本発明において、前記基層と前記シール層との間に、主成分としてポリエチレン系樹脂を含む中間層を有することが好ましい。
【0016】
第2の本発明は、第1の本発明の易剥離性フィルムの基層側に押出ラミネート層を形成した蓋材用易剥離性フィルムである。
【0017】
第3の本発明は、第2の本発明の蓋材用易剥離性フィルムを用いてなる包装体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフィルム(以下、本フィルムと称することがある)は、蓋用包装材として用いた場合に、蓋材下層部を残して蓋材上層部を容易に剥離することができ剥離面が接着剤等ではないので、蓋材上層部を剥離した後の蓋材下層部に食材が触れたり、口を付けて内容物を飲食したりする場合に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の一例として本発明のフィルムおよび包装体について説明する。但し、本発明の範囲は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明において、易剥離性は、イージーピール性、易開封性と同義である。また、シーラントフィルムは、ヒートシールフィルム、ヒートシール性フィルムと呼称する場合がある。剥離強度は、シール強度、開封強度と同義であり、易剥離性と密封シール性の尺度となる。
数値範囲を「〇~△」で表記した場合は、〇以上△以下を意味する。
【0020】
<易開封性フィルム>
本フィルムは少なくとも基層とシール層を有するフィルムである。
(基層)
本フィルムの基層は、押出ラミネートを施す側の層であり、凝集破壊機能を有する。
基層は、凝集破壊機能を有する樹脂組成であればよく、その樹脂組成に制限はないが、良好な凝集破壊性を示す観点で、ポリエチレン系樹脂(a)とポリブテン樹脂(b)とを含むことが好ましい。
【0021】
・ポリエチレン系樹脂(a)
本フィルムの基層を構成するポリエチレン系樹脂(a)は、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のエチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。中でも、フィルム製膜時のフィッシュアイが少なく、またポリブテン樹脂(b)と非相溶で基層の凝集破壊性が良好になる点から、低密度ポリエチレンが好ましい。
【0022】
ポリエチレン系樹脂(a)がエチレン・α-オレフィン共重合体の場合、用いられるα-オレフィンとしては、炭素数3~20のα-オレフィンが好ましく、より好ましくはプロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセンなどを挙げることができ、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンがさらに好ましい。エチレンとの共重合に供される炭素数3~20のα-オレフィンは1種類でもよく、2種類以上を用いても良い。
【0023】
また、基層は、ポリエチレン系樹脂(a)として、ポリエチレンにスチレンを含浸重合させた樹脂(a1)を含んでいてもよい。基層がポリエチレンにスチレンを含浸重合させた樹脂(a1)を含む場合、スチレンがポリエチレン中に均質かつ微細に分散した相構造をとるため、低密度ポリエチレンのみを用いる場合に比べ、基層の破断点強度が小さくなって脆くなり、より良好な凝集破壊性を示す点で好ましい。
【0024】
ポリエチレン系樹脂(a)は破断点強度15MPa以下かつ破断点伸度50%以下であることが好ましい。破断点強度は12MPa以下がより好ましく、破断点伸度は40%以下がより好ましい。
【0025】
・ポリブテン樹脂(b)
本フィルムの基層に用いるポリブテン樹脂(b)としては、特に制限はなく、例えば、1-ブテンの単独重合体、1-ブテンと炭素数2~10のα-オレフィンとのランダム共重合体が挙げられ、1種または2種以上を混合して用いることができる。
ポリエチレン系樹脂(a)とより非相溶で、基層の凝集破壊性が良好になる点から、ポリブテン樹脂(b)は1-ブテン単独重合体が好ましい。
【0026】
基層のポリエチレン系樹脂(a)とポリブテン樹脂(b)の組成比は、両者の合計を100質量%とした場合に、(a):(b)は凝集破壊性の点で(50~90):(10~50)が好ましく、(80~50):(20~50)がより好ましく、(70~55):(30~45)が更に好ましい。
【0027】
(シール層)
本フィルムのシール層は、被着体表面の組成と親和性があり、液体等の内容物を収容しても十分な夾雑シール性を有する樹脂組成であればよく、被着体表面の樹脂組成と同類の樹脂組成であることが好ましい。
また、基層および後述の中間層は、好ましくはポリエチレン系樹脂を含むので、基層/シール層の2層構成の場合も、基層/中間層/シール層の3層構成の場合も、シール層と基層または中間層との親和性、層間密着性の点からシール層は、ポリエチレン系樹脂を含むことが好ましい。
【0028】
具体的には、被着体がポリプロピレン系樹脂の場合には、本フィルムのシール層にはポリプロピレン樹脂とポリエチレン系樹脂からなる樹脂組成を、被着体がポリエチレン系樹脂の場合にはシール層にはポリエチレン系樹脂を用いると好ましい。
【0029】
中でも、被着体との低温シール性の点から、ポリプロピレン系樹脂としてはシングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(c)が好ましく、ポリエチレン系樹脂としてはシングルサイト触媒を用いて製造された低密度ポリエチレン系樹脂(d)が好ましい。
【0030】
シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(c)は、分子量分布や組成分布が狭く、引張強度、衝撃強度が高く、低温シール性に優れる特徴を有する。中でも、シングルサイト触媒を用いて製造されたプロピレン-エチレンランダム共重合体が、ポリエチレン系樹脂との混和性、低温シール性の点から好ましい。シングルサイト触媒の種類は特に限定しないが、代表的な例としてメタロセン触媒が挙げられる。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂(c)の融点は135℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(c)の密度は、特に限定されないが、一般に920kg/m以下が好ましく、910kg/m以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、一般に880kg/m以上が好ましく、890kg/m以上がより好ましい。
【0032】
シングルサイト触媒を用いて製造されたポリエチレン系樹脂(d)は、分子量分布や組成分布が狭く、引張強度、衝撃強度が高く、低温シール性に優れる特徴を有する。分子量分布、つまり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、例えば、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましい。組成分布は、例えば、短鎖分岐度(SCB)40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。中でも、シングルサイト触媒を用いて製造された直線状低密度ポリエチレンがポリプロピレン系樹脂容器との熱接着性(相溶性、融着性、密着性)が安定している点で好ましい。シングルサイト触媒の種類は特に限定されないが、代表的な例としてメタロセン触媒が挙げられる。
【0033】
ポリエチレン系樹脂(d)の密度は、上限は低温シール性の点から、930kg/m以下が好ましく、925kg/m以下がより好ましい。下限は後述のヒートシール性(剥離開始強度)が強大になり過ぎない点から910kg/m以上が好ましい。
【0034】
シール層に、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(c)とシングルサイト触媒を用いて製造されたポリエチレン系樹脂(d)とを用いる場合、両者の組成比は特に制限はないが、例えば、両者の合計を100質量%とした場合に、(c):(d)は(10~90):(90~10)が好ましく、(20~80):(80~20)がより好ましい。
【0035】
(他の層)
本フィルムでは、基層とシール層との間に、1層以上の中間層を設けてもよく、その樹脂組成は特に制限はないが、基層との密着性、ハーフカット時の切れ性の点から、本フィルムは、主成分としてポリエチレン系樹脂を含む中間層を有することが好ましい。当該ポリエチレン系樹脂としては、基層のポリエチレン系樹脂(a)に例示した樹脂の中から1種類以上を選択して用いることができる。
【0036】
また、基層のシール層側とは反対側に他の層を設けることができる。当該他の層は、適宜、公知の熱可塑性樹脂を選択して用いることができ、層厚は数~100μm程度の汎用の厚みを設定できる。
【0037】
(その他の成分)
本発明のフィルムの各層は、その特性を阻害しない範囲であれば、適宜、添加剤を含有することができる。例えば、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、耐ブロッキング剤、加水分解防止剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤などを挙げることができる。これらの添加剤の添加量は特に限定されるものではなく、本発明の所望とする物性を阻害することのない範囲において適宜決定することができる。
【0038】
(厚み構成)
本フィルムでは、凝集破壊性を有する基層が、フィルムの厚み方向にシール層表面から20~50μmに位置する。つまり、基層のシール層側表面の厚み方向位置が、フィルム厚み方向にシール層側表面から20~50μmに位置している。
そのため、本フィルムがシール層と基層との2層構成の場合は、シール層の層厚は20~50μmであり、本フィルムがシール層、中間層、基層との3層構成の場合は、シール層と中間層の合計厚は20~50μmである。
凝集破壊機能を有する基層が、フィルムのシール層表面から厚み方向に20~50μmに位置すると、ハーフカットやレーザーカット等の機械的加工の深度に合致するので、更に簡便に易剥離させることができる。基層の厚み方向位置の下限値は25μm以上がより好ましく、上限値は40μm以下がより好ましい。
【0039】
基層の層厚は、凝集破壊性の点から2~15μmが好ましく、3~10μmがより好ましい。
本フィルムがシール層、中間層、基層との3層構成の場合、シール層と中間層の各層厚は、各層の樹脂組成による押出物性やフィルム物性などから適宜選択できるが、シール層は2~20μmが好ましく、5~15μmがより好ましい。中間層は5~30μmが好ましく、10~20μmがより好ましい。
【0040】
<易剥離性フィルムの製造方法>
本発明のフィルムの製造方法は、特に限定されず、公知のTダイ法やインフレーション法などにより製造することができる。また、公知のフィードブロック方式、マルチマニホールド方式、或いはそれらの組み合わせた共押出法を用いることが好ましい。
本発明のフィルムは、無延伸でもよく、一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸でもよい。
【0041】
<蓋材用易剥離性フィルム>
(押出ラミネート層)
本発明の易剥離性フィルムは、押出ラミネートに用いることができる。
本フィルムに押出ラミネートをする方法は、公知の樹脂を用いて、公知の方法により行うことができる。押出ラミネートに用いられる樹脂は、熱溶融性、熱融着性、汎用性の点から、ポリエチレン系樹脂が多用され、基層のポリエチレン系樹脂(a)に例示した樹脂の中から、押出特性の観点で1種類以上を選択して用いることができる。
押出ラミネートした樹脂層の厚みは、特に制限はなく一般に10~25μm程度であり、本フィルム用には上限20μmがより好ましい。
また、本フィルムに押出ラミネート加工する際に、本フィルムの基層側の表面にコロナ処理等の表面処理を施して押出樹脂との接着性を高めることができる。
【0042】
本フィルムにレーザーカットやハーフカット等の機械的加工を施して、蓋材上層部を剥離するきっかけ部を作製する場合、それらの最小加工深度が20μm程度であり、深度精度が±5~10μm程度である。ドライラミネートは、一般に接着剤層厚が1~10μm、汎用的には2~5μmであるので、本フィルムをドライラミネートし、機械的加工と組み合わせて用いると、接着剤層の層内で剥離してしまう可能性があり、食品内容物が接着剤に触れたり、接着剤層に口を付けたりする不安全リスクを伴う。一方、押出ラミネートは、一般に押出樹脂厚が10~25μmなので、本フィルムに押出ラミネートし、機械的加工と組み合わせて用いることにより、接着剤が食品内容物や口に触れる可能性がなくなり、本フィルムは当該用途に最適である。
【0043】
本発明の易剥離性フィルムの基層側に押出ラミネートを施したフィルムを用いて、公知の加工法で各種包装材を作製することが出来る。
特に、本フィルムの凝集破壊特性から、基層側に押出ラミネートを施した本フィルムは、蓋材用易剥離性フィルムとして有用である。蓋材用易剥離性フィルムは、押出ラミネート樹脂層表面に他のフィルム等を積層して、蓋材として用いることができる。他のフィルム等としては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム等が挙げられ、これらは無延伸フィルムでも延伸フィルムでもよい。また、これらのフィルムに蒸着、コート、印刷などを施し、ガスバリア性、帯電防止性、加飾性等の機能を付与することもできる。また、アルミ箔や紙材なども積層することができる。
【0044】
さらに、蓋材用易剥離性フィルムを蓋材に用い、公知の方法で、コップ、カップ、容器、トレー等の底材と組合せて蓋材と底材とをヒートシールし、包装体を作製することができる。包装体では、蓋材用易剥離性フィルムのシール層が底材とヒートシールされる。
【0045】
<易剥離性フィルムの特性>
本フィルムは、以下の特性を有することが好ましい。
(易剥離性(剥離強度))
本フィルムは、基層が凝集破壊して易剥離性を発揮する。特に、本フィルムの基層側に押出ラミネートして積層フィルムを作製し、シール層の表面側からハーフカット加工を行った積層フィルムを被着体とヒートシール加工して作製した包装体は、積層フィルムを被着体から剥がして開封する際に、ハーフカットによる深さ方向の切れ目をきっかけとして、基層の凝集破壊により良好な易剥離性を発現する。
【0046】
ハーフカット等の切れ目を起点に基層内で凝集破壊するし易さの指標として、剥離が軽過ぎず重過ぎない範囲の剥離強度は、剥離距離60mmの積分平均値として0.3~2.0N/15mm幅が好ましく、0.5~1.5N/15mm幅がより好ましく、0.5~1.2N/15mm幅が更に好ましい。
また、基層内で凝集破壊した剥離面は、糸引き、膜引き、毛羽立ち、樹脂千切れが生じないことが好ましい。
【0047】
(ヒートシール性(剥離開始強度))
本フィルムは、被着体とヒートシールして十分な密着性が得られることが好ましく、上述の剥離試験において、基層部で易剥離し、その際に被着体とシール層との界面が剥離しなければよい。また、包装体の収容物が水分を含む食品や飲料や汁物等の液体の場合でも、十分密封シールできる、夾雑シール性を有することが好ましい。
例えば、本フィルムのシール層面に、被着体としてホモポリプロピレン樹脂シート300μm厚を重ね、その一端をヒートシール機でシール幅5mm、シール圧0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールし、本フィルムの流れ方向に長さ50mm、流れ方向に垂直な方向に幅15mmの形状の短冊片に切り出し、JIS Z0238:1998に準拠して、ヒートシール部を中央にして本フィルムと被着体のそれぞれの端を引張試験機の掴み具に取り付け、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で、短冊片の長さ方向の剥離強度(剥離開始強度と呼称する)を測定した場合に、包装体が十分な夾雑シール性、保存密封性を有し、且つ被着体から容易に剥離する数値指標として、剥離開始強度は5.0~20.0N/15mm幅が好ましく、7.0~18.0N/15mm幅がより好ましい。
【実施例0048】
以下の実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等によって制限を受けるものではない。
下記の原材料と方法によりフィルムを作製して試験、評価を行い、結果を表1~3にまとめた。
【0049】
<原材料(基層)>
PE1;高圧重合法で製造した低密度ポリエチレン
PE2;ポリエチレンにスチレンモノマーを含浸重合させた樹脂(スチレン含有率50%)
PB1;ポリブテン-1
<原材料(中間層)>
PE3;直鎖状低密度ポリエチレン
<原材料(シール層)>
m-PP;メタロセン触媒を用いて製造したプロピレンランダム共重合体
m-LL;メタロセン触媒を用いて製造した直鎖状低密度ポリエチレン
【0050】
<実施例1~3、比較例1~2>
上記原材料を用い、表1に示した配合で各層用の各押出機にそれぞれの樹脂を供給し、空冷インフレーション共押出フィルム製膜機を用いて、「基層/中間層/シール層」の3層共押出フィルム(イ)を作製した。
また、3層共押出フィルムへの押出ラミネートを想定した模擬的なサンプルを作製するため、二軸延伸PETフィルム12μm厚の表面に低密度ポリエチレン樹脂を押し出し「押出ポリエチレン樹脂層14μm厚/PETフィルム12μm厚」の押出積層フィルム(ロ)を作製した。
次いで、3層共押出フィルム(イ)と押出積層フィルム(ロ)の流れ方向を合わせ、且つ3層共押出フィルム(イ)の基層表面と押出積層フィルム(ロ)の押出ポリエチレン樹脂層表面とが対向するように、両フィルムを重ね合わせて、温度110℃、ゲージ圧0.5MPa、速度20m/分の条件で熱ラミネートし、積層フィルム(ハ)を作製した。
【0051】
<評価方法>
下記評価を行い、結果を表2、表3に纏めた。
(1)易剥離性(剥離強度)
実施例1~3、比較例1~2で得られた積層フィルム(ハ)の流れ方向に長さ100mm、流れ方向に垂直な方向に幅15mmの形状の短冊片を切り出した。
短冊片の長さ方向の一方の端部について、押出積層フィルム(ロ)分と、3層共押出フィルム(イ)のうちの中間層とシール層の2層分を、剥がし分けて、それぞれの端を引張試験機の掴み具に取り付け、剥離角度90度(T字剥離)、剥離速度300mm/分の条件で、短冊片の長さ方向距離60mm分の剥離強度の積分平均値を測定し、3層共押出フィルム(イ)の流れ方向の基層の凝集破壊性を評価した。
【0052】
ハーフカット等の切れ目を起点に基層内で凝集破壊するし易さの指標として、剥離が軽過ぎず重過ぎない範囲の剥離強度(積分平均値)は、0.3~2.0N/15mm幅が好ましく、0.5~1.5N/15mm幅がより好ましく、0.5~1.2N/15mm幅が更に好ましいと評価した。
【0053】
また、剥離強度測定後の短冊片の剥離した表面の状態を観察した。
【0054】
(2)ヒートシール性(剥離開始強度)
実施例2、比較例2で得られた積層フィルム(ハ)のシール層面に、被着体としてホモポリプロピレン樹脂シート300μm厚を重ね、その一端をヒートシール機でシール幅5mm、シール圧0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールした。設定シール温度は、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃の6通りで試験した。
【0055】
その後、積層フィルム(ハ)の流れ方向に長さ50mm、流れ方向に垂直な方向に幅15mmの形状の短冊片に切り出し、JIS Z0238:1998に準拠して、ヒートシール部を中央にして積層フィルム(ハ)と被着体のそれぞれの端を引張試験機の掴み具に取り付け、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で、短冊片の長さ方向、即ち3層共押出フィルム(イ)の流れ方向の剥離開始強度を測定した。
【0056】
本フィルムを蓋材に用いて包装体を作製した際に、十分な夾雑シール性、保存密封性を有し、且つ蓋材と被着体をヒートシールした端部から蓋材を容易に剥離する指標として、剥離開始強度は5.0~20.0N/15mm幅が好ましく、7.0~18.0N/15mm幅がより好ましいと評価した。
【0057】
また、離開始強度測定後の短冊片について、剥離した表面の状態を観察し、下記の基準で評価した。
●:基層内で凝集破壊し剥離し、剥離面の毛羽立ちも無かった
△:部分的にシール層と被着体との間で剥離した
×:全面的にシール層と被着体との間で剥離した
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
(1)剥離強度試験結果について(表2参照)
実施例1~3は、何れも3層共押出フィルム(イ)の基層の凝集破壊による剥離が良好で、蓋材として用いハーフカット等を施した場合に、蓋材下層部を残して蓋材上層部を容易に剥離できるものと推察された。
特に、基層のポリエチレン系樹脂(a)にポリエチレン樹脂にスチレンを含浸重合させた樹脂(a1)を含む実施例1は、剥離強度が1.0N/15mm幅以下で、かつ剥離痕が一面均等であり、良好な基層内剥離の結果であった。
【0062】
一方、比較例1は、シール層と中間層の層厚が薄いため、3層共押出フィルム(イ)が切れてしまった。また、蓋材として用いハーフカットを施した場合は、シール層表面からの基層の厚み方向距離が小さいためハーフカット深度制御と適合せずに、ハーフカットが3層共押出フィルム(イ)の全層を突き抜けてしまう恐れが高いものであった。
比較例2は、蓋材として用いハーフカットを施した場合は、シール層側から施したハーフカットが基層に届かず、蓋材上層部を容易に剥離できる構成とはなっていなかった。
【0063】
(2)ヒートシール性(剥離開始強度)試験結果について(表3参照)
実施例2は、ヒートシール温度130~180℃の各温度で作製した何れの場合とも、剥離開始強度が5.0~20.0N/15mm幅であり、蓋材として用いた場合に被着体とのヒートシール端から開封する際に容易に剥がしやすいレベルのものであった。特に、ヒートシール温度150~180℃では、ハーフカット処理をしていない場合でも基層内の凝集破壊により剥離することができ、剥離面も毛羽立ちの無い良好な状態であった。
これに対して、比較例2では、シール層/中間層の厚みが厚く、これの破断に伴う基層の凝集破壊に至らず、剥離することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の易剥離性フィルムは、例えば、カップ焼きそば包装体のような湯切り孔付きの蓋材のように、被着体の容器に対しシールした蓋材の下層部を残し、蓋材の上層部のみを開ける用途に好適に用いることができる。