(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059467
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220406BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
G01B11/00 B
G01B11/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167241
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀邊 隆介
(72)【発明者】
【氏名】安田 博
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA06
2F065AA39
2F065BB01
2F065DD04
2F065FF41
2F065GG07
2F065HH12
2F065JJ09
2F065JJ18
2F065LL30
2F065NN05
2F065NN08
2F065QQ03
2F065QQ14
2F065QQ29
2F065QQ42
2F065UU05
(57)【要約】
【課題】位置検出を精度良く行うことのできる位置検出装置を提供する。
【解決手段】この装置は、第1変調信号列によって強度変調された検出光を出射する第1発光素子と、第2変調信号列によって強度変調された検出光を出射する第2発光素子と、それら検出光が対象物で反射した反射光を受光して電気信号に変換する受光素子と、を備える。この装置は、電気信号における遮断周波数よりも低い周波数の信号成分を減衰する低域遮断部と、低域遮断部によって減衰された電気信号が入力されるとともに同電気信号に基づいて対象物の位置を検出する位置検出部とを備える。変調信号列によって強度変調される変調期間T0における最初の期間を第1期間T1とし、第1期間T1以外の期間を第2期間T2とすると、第1期間T1において設定される切替遮断周波数fcは、第2期間T2において設定される基本遮断周波数fbよりも高くなっている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる位相の変調信号列によって強度変調された検出光を出射する複数の発光部と、前記検出光が対象物で反射した反射光を受光して電気信号に変換する受光部と、前記電気信号における遮断周波数よりも低い周波数の信号成分を減衰する低域遮断部と、前記低域遮断部によって減衰された電気信号が入力されるとともに同電気信号に基づいて前記対象物の位置を検出する位置検出部と、を備える位置検出装置において、
前記低域遮断部は、前記変調信号列によって強度変調される変調期間における最初または途中の期間を第1期間とするとともに前記第1期間以外の期間を第2期間とすると、前記第1期間における前記遮断周波数である第1遮断周波数を、前記第2期間における前記遮断周波数である第2遮断周波数よりも高くするものである
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第1遮断周波数は、前記変調信号列による強度変調についての変調周波数よりも高い周波数である
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記第1期間は、前記変調期間における最初の期間が定められる
請求項1または2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第1期間は、第1期間は前記複数の発光部のうちの一部のみが発光している期間が定められる
請求項1~3のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記位置検出部は、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、前記AD変換部によって変換された前記デジタル信号を演算処理するデジタル信号処理部とを有し、
前記位置検出装置は、
前記低域遮断部と前記AD変換部との間に設けられて、ゲインを可変設定する可変ゲインアンプ部を有し、
前記AD変換部に入力される電気信号の振幅が、予め定められた所定範囲の値になるように、前記可変ゲインアンプ部のゲインを制御するものである
請求項1~4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記電気信号の振幅は、前記複数の発光部が同時に点灯しているときの電気信号と、前記複数の発光部が同時に消灯しているときの電気信号と、の差分値である
請求項5に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記可変ゲインアンプ部によるゲインの変更を、前記変調信号列が設定されていない期間において実行するものである
請求項5または6に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の位置を検出する位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物の位置を検出する位置検出装置として、光学式のものがある(例えば特許文献1)。
特許文献1に記載の位置検出装置は、対象物に対して検出光を出射する複数の発光部と、対象物体において反射した反射光を受光して電気信号に変換する受光部と、電気信号に基づいて対象物の位置を検出する位置検出部(演算装置)とを有している。この装置では、遮断周波数よりも低い周波数の成分を減衰する低域遮断部を介して、電気信号が演算装置に入力されるようになっている。
【0003】
位置検出装置による位置検出に際しては、複数の発光部が順次点灯されるとともに、それらの反射光が受光部によって検出されて演算装置に入力される。そして、それら検出した反射光の光量、詳しくは演算装置に入力される電気信号に基づいて対象物の位置が算出(検出)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、低域遮断部を構成するハイパスフィルタ回路は抵抗器やコンデンサを有しており、抵抗は所定電圧でバイアスされているため、低域遮断部にパルス列が入力されたときの出力信号は次のように推移する。すなわち低域遮断部から出力される電気信号振幅(詳しくは、そのピーク値や平均値)は、同低域遮断部へのパルス列の入力開始時において、所定のバイアス電圧からパルス列の振幅に相当する振幅まで一旦到達するが、その後において抵抗器の抵抗値Rとコンデンサの静電容量Cとによって定まる時定数に応じて徐々に振幅が小さくなり、パルス列の平均値が所定のバイアス電圧に漸近する。ここで、パルス列の信号デューティ比が50%であるとした場合、全時間領域で見たときの最大・最小ピーク間の信号振幅は、低域遮断部の入力振幅に対して約1.5倍になってしまう。
【0006】
位置検出装置による位置検出を精度良く行うためには、演算装置に入力される電気信号のSN比(信号対雑音比)を最大化する必要がある。すなわち、通常のシステムでは雑音レベルはほぼ一定であるため、演算装置に入力される電気信号振幅を、同演算装置の入力ダイナミックレンジを超えない範囲で最大化する必要がある。
【0007】
上述したように、低域遮断部を有する上記装置では、低域遮断部にパルス列が入力されたときに出力される電気信号振幅が一時的に大きくなってしまうため、そうした電気信号を後段の演算装置の入力ダイナミックレンジに収めるためには低域遮断部への入力信号の振幅を小さくせざるを得ず、信号振幅低下によるSN比(信号対雑音比)の低下を招き、演算装置の入力ダイナミックレンジを有効に使えないといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための位置検出装置は、異なる位相の変調信号列によって強度変調された検出光を出射する複数の発光部と、前記検出光が対象物で反射した反射光を受光して電気信号に変換する受光部と、前記電気信号における遮断周波数よりも低い周波数の信号成分を減衰する低域遮断部と、前記低域遮断部によって減衰された電気信号が入力されるとともに同電気信号に基づいて前記対象物の位置を検出する位置検出部と、を備える位置検出装置において、前記低域遮断部は、前記変調信号列によって強度変調される変調期間における最初または途中の期間を第1期間とするとともに前記第1期間以外の期間を第2期間とすると、前記第1期間における前記遮断周波数である第1遮断周波数を、前記第2期間における前記遮断周波数である第2遮断周波数よりも高くするものである。
【0009】
上記構成によれば、第1期間においては遮断周波数が高くなる、言い換えれば前記時定数が小さくなるため、低域遮断部への電気信号の入力開始直後において一時的に信号振幅の大きくなった電気信号を、そうした一時的な増大が解消された値に近づくように速やかに収束させることができる。
【0010】
これにより、パルス列の先頭部で位置検出部の入力ダイナミックレンジを外れるような場合であっても、第1期間内に速やかに入力ダイナミックレンジ内に入るように制御することができ、その後の第2期間においては低域遮断部から出力される電気信号振幅(詳しくは、そのピーク値や平均値)の変化が小さい状態にすることができる。そのため、位置検出部に入力される電気信号の振幅と同位置検出部の入力ダイナミックレンジとの差を小さくしたうえで同電気信号を入力ダイナミックレンジに収めることが可能になる。
【0011】
このように上記構成によれば、位置検出部の入力ダイナミックレンジを有効に活用することが可能になるため、位置検出装置における信号処理のSN比を向上させて位置検出を精度良く行うことができる。
【0012】
上記位置検出装置において、前記第1遮断周波数は、前記変調信号列による強度変調についての変調周波数よりも高い周波数であることが好ましい。
上記構成によれば、第1期間において、低域遮断部から出力される電気信号を、一時的な増大が解消された値に近づくように、より速やかに収束させることができる。
【0013】
上記位置検出装置において、前記第1期間は、前記変調期間における最初の期間が定められることが好ましい。
上記構成によれば、低域遮断部への電気信号の入力が開始された直後から、第1遮断周波数を設定して同電気信号を早期に減衰させることができる。そのため、低域遮断部への電気信号の入力開始直後において同低域遮断部から出力される電気信号が一時的に大きくなってしまう期間を短くすることができる。
【0014】
上記位置検出装置において、前記第1期間は、前記変調期間の先頭であって、複数の発光部のうちの一部のみ発光している期間に定められることが好ましい。
上記構成によれば、複数の発光部のうちの一部のみが発光している期間に、低域遮断部から出力される電気信号のバイアス電圧からのオフセットを高速に低減することにより、複数の発光部が全点灯しているときと全消灯しているときの其々で、バイアス電圧を中心にして電気信号を高低に振幅させることができ、位置検出部の入力ダイナミックレンジに効率的に入るように制御することができる。
【0015】
上記位置検出装置において、前記位置検出部は、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD(アナログデジタル)変換部と、前記AD変換部によって変換された前記デジタル信号を演算処理するデジタル信号処理部とを有し、前記位置検出装置は、前記低域遮断部と前記AD変換部との間に設けられて、ゲインを可変設定する可変ゲインアンプ部を有し、前記AD変換部に入力される電気信号の振幅が、予め定められた所定範囲の値になるように、前記可変ゲインアンプ部のゲインを制御するものであることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、可変ゲインアンプ部によるゲインの変更を通じて、AD変換部に入力される電気信号が、同AD変換部の入力ダイナミックレンジを超えることなく、かつ最大振幅で入力ダイナミックレンジに入るように調整することができる。これにより、AD変換部における量子化ノイズの影響を最小限に抑え、信号処理のSN比を向上させて位置検出装置による位置検出を精度良く行うことができる。
【0017】
上記位置検出装置において、前記電気信号の振幅は、前記複数の発光部が同時に点灯しているときの電気信号と、前記複数の発光部が同時に消灯しているときの電気信号と、の差分値である。
【0018】
上記構成によれば、ピークホールド回路などを設けずとも、同時点灯時の電気信号レベルと同時消灯時の電気信号レベルとの差から、検出の遅延することなく同電気信号の振幅を求めることができる。
【0019】
上記位置検出装置において、前記可変ゲインアンプ部によるゲインの変更は、前記変調信号列が設定されていない期間において実行するものであることが好ましい。
上記構成によれば、同一の変調信号列によって定まる変調期間においては、可変ゲインアンプ部によるゲインを変更することなく一定値に保持することにより、変調期間の途中でゲインが変化することに起因する位置検出のオフセット誤差の発生を回避することができるため、位置検出装置による位置検出を精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、位置検出装置による位置検出を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態の位置検出装置の距離検出モードを示す概略構成図。
【
図2】(a)~(c)距離検出モードでの検出態様を説明するための説明図。
【
図3】位置検出装置の傾斜角検出モードを示す概略構成図。
【
図4】(a)~(c)傾斜角検出モードでの検出態様を説明するための説明図。
【
図6】(a)~(i)検出回路における各種信号波形を示すタイミングチャート。
【
図8】(a)および(b)比較例の位置検出装置における信号波形を示すタイミングチャート。
【
図9】(a)~(c)同実施形態の位置検出装置における信号波形を示すタイミングチャート。
【
図10】(a)~(c)同実施形態の位置検出装置における信号波形を示すタイミングチャート。
【
図13】(a)~(c)比較例の位置検出装置における信号波形を示すタイミングチャート。
【
図14】(a)~(c)同実施形態の位置検出装置における信号波形を示すタイミングチャート。
【
図15】変形例における各周波数の関係を示すグラフ。
【
図16】(a)~(c)変形例における信号波形を示すタイミングチャート。
【
図17】(a)~(c)変形例における信号波形を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、位置検出装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の位置検出装置は、下層ベース部21、中層ベース部22、および上層ベース部23によって構成された3層構造のベース部を有している。
【0023】
下層ベース部21には、中層ベース部22側(
図1の上側)の面における中央に、入射光の光量を検出するための受光素子24(本実施形態では、フォトダイオード)が設けられている。この受光素子24は、下層ベース部21と上層ベース部23との間隙に配置されている。上層ベース部23には、受光素子24の受光部分に対向する位置に、ベース部の積層方向(
図1の上下方向)において貫通する貫通孔(ピンホール25)が設けられている。本実施形態の位置検出装置は、このピンホール25を介して、外部の光が受光素子24の受光部分に入射される構造になっている。本実施形態では、受光素子24が受光部に相当する。
【0024】
本実施形態の位置検出装置は、位置検出のための検出光を出射する4つの発光素子26L,26R,27L,27R(本実施形態では、いずれも発光ダイオード)を有している。
【0025】
4つの発光素子のうちの2つ(内側発光素子26L,26R)は、中層ベース部22における上層ベース部23側の面(
図1の上面)に設けられている。これら内側発光素子26L,26Rが配置された部分には上層ベース部23が配置されていない。内側発光素子26L,26Rは、中層ベース部22から離間する方向(
図1の上方)に検出光を出射する態様で配置されている。
【0026】
4つの発光素子のうちの残りの2つ(外側発光素子27L,27R)は、下層ベース部21における中層ベース部22側の面(
図1の上面)に設けられている。外側発光素子27L,27Rが配置された部分には、中層ベース部22および上層ベース部23が配置されていない。これら外側発光素子27L,27Rは、下層ベース部21から離間する方向(
図1の上方)に検出光を出射する態様で配置されている。
【0027】
本実施形態の位置検出装置では、4つの発光素子26L,26R,27L,27Rと上記受光素子24とが、平面視(
図1における上方から見た状態)で同一直線上において並ぶように配置されている。詳しくは、内側発光素子26L,26Rは、受光素子24を間に挟む位置であって、且つ、受光素子24との距離が同一になる位置にそれぞれ設けられている。また、外側発光素子27L,27Rは、受光素子24および内側発光素子26L,26Rを間に挟む位置であって、且つ、受光素子24との距離が同一になる位置にそれぞれ設けられている。外側発光素子27L,27Rは、内側発光素子26L,26Rよりも、4つの発光素子26L,26R,27L,27Rの並び方向における外側に設けられている。本実施形態の位置検出装置では、内側発光素子26L,26Rと受光素子24との距離が、外側発光素子27L,27Rと受光素子24との距離よりも近くなっている。本実施形態では、発光素子26L,26R,27L,27Rが発光部に相当する。
【0028】
本実施形態の位置検出装置では、同期検波を活用して、対象物についての位置検出が実行される。
本実施形態の位置検出装置は、発光素子を点滅させるための駆動信号として、位相が90度(具体的には、波長の1/4)ずれた2種類の変調信号列(第1変調信号列および第2変調信号列)を出力する。これら第1変調信号列および第2変調信号列は、所定の変調周波数(本実施形態では、40kHz)の矩形波である。
【0029】
本実施形態の位置検出装置による位置検出に際しては、先ず、第1発光素子LED1が第1変調信号列によって駆動されて発光するとともに、90度位相が遅れて第2発光素子LED2が第2変調信号列によって駆動されて発光する。そして、それら発光素子LED1,LED2の検出光(詳しくは、対象物OBで反射した反射光の光量)が受光素子24によって検出される。その後、受光素子24によって検出された反射光の光量に基づいて、対象物OBの位置(詳しくは、距離および傾斜角)が検出される。
【0030】
以下、位置検出装置の実行モードのうち、対象物OBの距離を検出する「距離検出モード」について説明する。
図1および
図2に示すように、距離検出モードでは、上記第1発光素子LED1として外側発光素子27L,27Rが用いられるとともに、上記第2発光素子LED2として内側発光素子26L,26Rが用いられる。具体的には、外側発光素子27L,27Rが第1変調信号列によって駆動されて発光するとともに、内側発光素子26L,26Rが第2変調信号列によって駆動されて発光する。なお距離検出モードでは、外側発光素子27L,27Rから出射される検出光の光量が、内側発光素子26L,26Rから出射される検出光の光量よりも大きくなるように設定することが好ましい。その比率は、例えば2倍程度に設定される。
【0031】
図2(a)に示すように、対象物OBの距離が近い場合には、外側発光素子27L,27Rの検出光(詳しくは、対象物OBで反射した反射光)がピンホール25に入射する角度(入射角)が大きくなり、光路長も長くなる。そのため、外側発光素子27L,27Rから出射されて受光素子24に入射される反射光の光量、すなわち受光素子24によって検出される反射光の光量VD1は小さくなる。一方、内側発光素子26L,26Rは外側発光素子27L,27Rよりも受光素子24に近い位置に設けられているため、内側発光素子26L,26Rの検出光(詳しくは、対象物OBで反射した反射光)のピンホール25への入射角は、外側発光素子27L,27Rの検出光についての入射角よりも小さくなり、光路長も短くなる。そのため、内側発光素子26L,26Rから出射されて受光素子24に入射される反射光の光量、すなわち受光素子24によって検出される反射光の光量VD2は比較的大きくなる。
【0032】
本実施形態の位置検出装置では、外側発光素子27L,27Rの検出光の光量が内側発光素子26L,26Rの検出光の光量の2倍に設定されている。とはいえ、対象物OBの距離が近い場合には、内側発光素子26L,26Rの検出光についての検出値(上記光量VD2)が、外側発光素子27L,27Rの検出光についての検出値(光量VD1)よりも大きくなる。この場合には、それら光量VD1,VD2の比RD(=VD1/VD2)が「1」未満になる。また、対象物OBの距離が近いときほど、上記比RDは小さい値になる。
【0033】
図2(b)に示すように、対象物OBの距離が遠くなって同距離が中程度になると、内側発光素子26L,26Rについての上記入射角と、外側発光素子27L,27Rについての上記入射角との差が小さくなる。これにより、内側発光素子26L,26Rの検出光についての検出値(光量VD2)と、外側発光素子27L,27Rの検出光についての検出値(光量V1)との差が小さくなる。この場合には、光量VD1,VD2の比RD(=VD1/VD2)が「1」に近づくようになる。
図2(b)に示す例では、光量VD1,VD2が等しくなっており、それら光量VD1,VD2の比RD(=VD1/VD2)が「1」になっている。
【0034】
図2(c)に示すように、対象物OBの距離がさらに遠くなると、内側発光素子26L,26Rについての上記入射角と、外側発光素子27L,27Rについての上記入射角との差が略「0」になる。これにより、上記光量VD1,VD2の関係が、外側発光素子27L,27Rから射出される検出光の光量と内側発光素子26L,26Rから射出される検出光の光量との関係に近づくようになる。すなわち、この場合には、外側発光素子27L,27Rの検出光についての検出値(光量VD1)が、内側発光素子26L,26Rの検出光についての検出値(光量VD2)の二倍に近づくようになり、光量VD1,VD2の比RD(=VD1/VD2)が「2」に近づくようになる。
図2(c)に示す例では、上記光量VD1が光量VD2の略二倍になっており、それら光量VD1,VD2の比RD(=VD1/VD2)が略「2」になっている。
【0035】
距離検出モードでは、こうした光量VD1,VD2と対象物OBの距離との関係をふまえて、対象物OBの距離DISが検出される。具体的には、光量VD1,VD2が検出されるとともに、それら光量VD1,VD2の比RD(=VD1/VD2)に基づいて対象物OBの距離が算出(検出)される。
【0036】
次に、位置検出装置の実行モードのうち、対象物OBの傾斜角を検出する「傾斜角検出モード」について説明する。
図3および
図4に示すように、傾斜角検出モードでは、一対の外側発光素子27L,27Rの一方(外側発光素子27L)が前記第1発光素子LED1として用いられるとともに、外側発光素子27L,27Rの他方(外側発光素子27R)が上記第2発光素子LED2として用いられる。具体的には、外側発光素子27Lが第1変調信号列によって駆動されて発光するとともに、90度位相が遅れて外側発光素子27Rが第2変調信号列によって駆動されて発光する。なお傾斜角検出モードでは、外側発光素子27L,27Rから出射される検出光の光量が同一に設定される。
【0037】
図4(a)に示すように、対象物OBが上記外側発光素子27L側(同図における左側)に傾斜している場合には、外側発光素子27Lと対象物OBとの距離が、外側発光素子27Rと対象物OBとの距離よりも近くなる。これにより、外側発光素子27Lから出射されて受光素子24に入射されるまでの光の経路(光路L1)が、外側発光素子27Rから出射されて受光素子24に入射されるまでの光の経路(光路L2)よりも短くなっている。
【0038】
ここで、受光素子24に入射される反射光の光量は、その光路の距離の逆二乗に比例する。そのため、そうした光路の距離が短い外側発光素子27Lについては、同外側発光素子27Lから出射された検出光が対象物OBで反射した反射光の光量、すなわち受光素子24によって検出される反射光の光量VA1が比較的大きくなる。これに対して、上記光路の距離が長い外側発光素子27Rについては、同外側発光素子27Rから出射された検出光が対象物OBで反射した反射光の光量、すなわち受光素子24によって検出される反射光の光量VA2が比較的小さくなる。
【0039】
この場合には、外側発光素子27L,27Rから出射される検出光の光量が同一に設定されているとはいえ、外側発光素子27Lの検出光についての検出値(上記光量VA1)が、外側発光素子27Rの検出光についての検出値(光量VA2)よりも大きくなる。この場合には、光量VA1,VA2の比RA(=VA1/VA2)が「1」よりも大きくなる(RA>1)。また、対象物OBの上記外側発光素子27L側への傾斜角が大きいときほど、上記比RAは大きい値になる。
【0040】
図4(b)に示すように、対象物OBが正対(傾斜角=0度)している場合には、各外側発光素子27L,27Rと対象物OBとの距離が等しくなる。そのため、外側発光素子27Lから出射されて受光素子24に入射されるまでの光の経路(光路L1)と、外側発光素子27Rから出射されて受光素子24に入射されるまでの光の経路(光路L2)とが等しくなる。この場合には、外側発光素子27Lの検出光についての検出値(上記光量VA1)と外側発光素子27Rの検出光についての検出値(光量VA2)とが等しくなり、光量VA1,VA2の比RA(=VA1/VA2)が「1」になる。
【0041】
図4(c)に示すように、対象物OBが上記外側発光素子27R側(同図における右側)に傾斜している場合には、外側発光素子27Lと対象物OBとの距離が、外側発光素子27Rと対象物OBとの距離よりも遠くなる。これにより、外側発光素子27Lから出射されて受光素子24に入射されるまでの光の経路(光路L1)が、外側発光素子27Rから出射されて受光素子24に入射されるまでの光の経路(光路L2)よりも長くなっている。
【0042】
そのため、そうした光路の距離が長い外側発光素子27Lについては、同外側発光素子27Lから出射された検出光が対象物OBで反射した反射光の光量、すなわち受光素子24によって検出される反射光の光量VA1が比較的小さくなる。これに対して、上記光路の距離が短い外側発光素子27Rについては、同外側発光素子27Rから出射された検出光が対象物OBで反射した反射光の光量、すなわち受光素子24によって検出される反射光の光量VA2が比較的大きくなる。
【0043】
この場合には、外側発光素子27L,27Rから出射される検出光の光量が同一に設定されているとはいえ、外側発光素子27Lの検出光についての検出値(上記光量VA1)が、外側発光素子27Rの検出光についての検出値(光量VA2)よりも小さくなる。この場合には、光量VA1,VA2の比RA(=VA1/VA2)が「1」よりも小さくなる(RA<1)。また、対象物OBの上記外側発光素子27R側への傾斜角が大きいときほど、上記比RAは小さい値になる。
【0044】
傾斜角検出モードでは、こうした光量VA1,VA2と対象物OBの傾斜角との関係をふまえて、対象物OBの傾斜角が検出される。具体的には、光量V1,V2が検出されるとともに、それら光量VA1,VA2の比RA(=VA1/VA2)に基づいて対象物OBの傾斜角TILが算出(検出)される。なお、上記光路L1,L2の相対関係は対象物OBと位置検出装置との距離に応じて変化するため、上記比RAも同距離に応じて変化する。そのため本実施形態の位置検出装置では、対象物OBの傾斜角TILを検出する際には、検出パラメータとして、上記比RAに加えて前記距離DISが用いられる。
【0045】
以下、発光素子26L,26R,27L,27Rから出射された検出光が対象物OBで反射した反射光の光量(詳しくは、上記光量VD1,VA1に相当する値V1や上記光量VD2,VA2に相当する値V2)を検出するための検出回路について説明する。
【0046】
図5に示すように、検出回路30は、検出光を出射するための構成として、前記発光素子26L,26R,27L,27Rと、それら発光素子26L,26R,27L,27Rを発光させるべく駆動される駆動部31と、前記第1変調信号列および第2変調信号列を生成するタイミング生成部32とを有している。
【0047】
図6に示すように、タイミング生成部32は、第1変調信号列(同図(a))および第2変調信号列(同図(b))として、所定期間にわたり出力されるデューティ比が50%の矩形波状の信号であって、位相が90度ずれた2種類の変調信号列を生成する。
【0048】
図5に示すように、これら第1変調信号列および第2変調信号列はタイミング生成部32から駆動部31に出力される。そして、駆動部31は、第1変調信号列および第2変調信号列に基づいて発光素子26L,26R,27L,27Rを選択的に駆動して発光させる。なお、前記距離検出モードでは、内側発光素子26L,26Rが第1変調信号列に基づき駆動されて発光するとともに、外側発光素子27L,27Rが第2変調信号列に基づき駆動されて発光する。また、前記傾斜角検出モードでは、外側発光素子27Lが第1変調信号列に基づき駆動されて発光するとともに、外側発光素子27Rが第2変調信号列に基づき駆動されて発光する。
【0049】
また、検出回路30は、前記反射光の光量を検出するための構成として、受光素子24側から順に、同受光素子24、IV変換部33、低域遮断部34、可変ゲインアンプ部35、AD変換部36、同期検波部37、および演算部38を有している。本実施形態では、可変ゲインアンプ部35、AD変換部36、同期検波部37、および演算部38が位置検出部に相当する。
【0050】
受光素子24は、入射された反射光の光量に応じた電流信号を出力するものである。
IV変換部33には、受光素子24から出力される電流信号が入力される。IV変換部33は、入力された電流信号を電圧信号に変換して出力する。
【0051】
低域遮断部34は、コンデンサおよび抵抗器を有するCR回路やバッファアンプによって構成されたハイパスフィルタ回路である。低域遮断部34は、IV変換部33から出力される電圧信号のDC成分をカットすることで、後段回路での信号のクリップを防止し所定のバイアス電圧を基準に動作させる目的で配置される。低域遮断部34には、IV変換部33から出力される電圧信号(IV変換信号)が入力される。低域遮断部34は、IV変換信号における遮断周波数よりも低い周波数の信号成分を減衰させるものである。なお、本実施形態では、低域遮断部34として、遮断周波数を切り替え可能な構造のものが採用されている。遮断周波数を切り替える制御については後に詳述する。本実施形態では、上記遮断周波数が、基本的には、1kHz(基本遮断周波数fb)に定められる。
【0052】
可変ゲインアンプ部35には、低域遮断部34から出力される電圧信号(低域遮断信号)が入力される。可変ゲインアンプ部35は、アンプの増幅率を可変設定するものである。本実施形態の位置検出装置では、可変ゲインアンプ部35のゲインの変更を通じて、同可変ゲインアンプ部35から出力される電圧信号(可変ゲイン信号)の振幅が適当な値に調整される。なお、可変ゲインアンプ部35によってゲインを可変設定する制御については後に詳述する。
【0053】
AD変換部36は、アナログ信号をデジタル信号に変換するものである。AD変換部36には、可変ゲインアンプ部35から出力された可変ゲイン信号が入力される。AD変換部36は、この可変ゲイン信号をデジタル信号(本実施形態では、16bit(65536段階)の値)に変換して出力する。
【0054】
なお、
図6(c)に示すように、AD変換部36から出力される信号(AD変換信号)は、第1変調信号列に基づき第1発光素子LED1から出射される検出光についての反射光の光量(前記光量VD1,VA1)に相当する値V1と、第2変調信号列に基づき第2発光素子LED2から出射される検出光についての反射光の光量(前記光量VD2,VA2)に相当する値V2とが重畳された値である。
【0055】
なお、AD変換部36の前段には、一般的に用いられるアンチエイリアスフィルタを配置することでAD変換時に発生する折り返し誤差を抑制することができる。
同期検波部37は、2位相のロックインアンプによって構成されている。
【0056】
図7に示すように、同期検波部37は、測定信号(AD変換信号)に参照信号(第1変調信号列または第2変調信号列)を乗算する乗算器39i,39qと、乗算器39i,39qから出力される信号値(第1乗算信号または第2乗算信号)を積分する積分器40i,40qとを有する。積分器40i,40qは、ローパスフィルタ回路41i,41qとサンプルホールド回路42i,42qとによって構成されている。
【0057】
同期検波部37により、第1変調信号列に基づき第1発光素子LED1から出射される検出光についての反射光の光量(前記光量VD1,VA1)に相当する値V1を算出する処理は、次のように実行される。先ず、乗算器39iによって、測定信号としてのAD変換信号(
図6(c))に参照信号としての第1変調信号列(詳しくは、
図6(d)に示す第1参照信号)が乗算される。そして、乗算器39iから出力される第1乗算信号(
図6(f))が、
図6(h)に示すように積分器40iによって積分される。そして、積分器40iによって積分された値が上記値V1として出力される。
【0058】
また同期検波部37により、第2変調信号列に基づき出射される検出光についての反射光の光量(前記光量VD2,VA2)に相当する値V2を算出する処理が、次のように実行される。先ず、乗算器39qによって、測定信号としてのAD変換信号(
図6(c))に参照信号としての第2変調信号列(詳しくは、
図6(e)に示す第2参照信号)が乗算される。そして、乗算器39qから出力される第2乗算信号(
図6(g))が、
図6(i)に示すように積分器40qによって積分される。そして、この積分器40qによって積分された値が上記値V2として出力される。
【0059】
演算部38は、上記値V1,V2に基づく演算処理を通じて対象物OBの距離DISを算出して出力するとともに、この距離DISと上記値V1,V2とに基づく演算処理を通じて対象物OBの傾斜角TILを算出して出力する。詳しくは、距離検出モードにおいては、値V1(前記光量VD1)および値V2(前記光量VD2)に基づいて、演算部38に予め記憶されている関係(例えば演算式や演算テーブル)から、対象物OBの距離DISが算出される。また、傾斜角検出モードにおいては、値V1(前記光量VA1)、値V2(前記光量VA2)、および上記距離DISに基づいて、演算部38に予め記憶されている関係(例えば演算式や演算テーブル)から、対象物OBの傾斜角TILが算出される。なお本実施形態では、同期検波部37および演算部38が、AD変換部36によって変換されたデジタル信号を演算処理するデジタル信号処理部に相当する。
【0060】
ここで、低域遮断部34を構成するハイパスフィルタ回路はCR回路を有しており、抵抗は所定電圧にバイアスされているため、低域遮断部34から出力される低域遮断信号は次のように推移する。すなわち
図8に一例を示すように、低域遮断信号(詳しくは、そのピーク値や平均値)は、IV変換された変調信号が低域遮断部34に入力されたタイミング(時刻t11)で、所定のバイアス電圧から変調信号の振幅に相当する振幅まで一旦到達するが、その後においてCR回路の時定数に応じて徐々に振幅が小さくなり、変調信号の平均値が所定のバイアス電圧に漸近する。
【0061】
パルス列の信号デューティ比が50%であるとした場合、全時間領域で見たときの最大・最小ピーク間の信号振幅は、低域遮断部の入力振幅に対して約1.5倍になってしまう。
【0062】
位置検出装置による位置検出を精度良く行うためには、AD変換部36(
図5参照)に入力される電気信号のSN比(信号対雑音比)を最大化する必要がある。通常のシステムではAD変換時の量子化ノイズはほぼ一定であるため、AD変換部36に入力される電気信号振幅を、AD変換部36の入力ダイナミックレンジを超えない範囲で最大化する必要がある。
【0063】
この点、上述のように低域遮断部34から出力される低域遮断信号の振幅が変調信号の開始時点において一時的に大きくなる装置では、同低域遮断信号(詳しくは、AD変換部36に入力される電気信号)をAD変換部36の入力ダイナミックレンジ内に収めるためには、入力信号の振幅を小さくせざるを得ず、信号振幅低下によるSN比の低下を招いて、AD変換部36の入力ダイナミックレンジを有効に使えなくなる。
【0064】
この点をふまえて、本実施形態の位置検出装置では、低域遮断部34の遮断周波数を、前記基本遮断周波数fbおよび切替遮断周波数fcのいずれかに選択的に切り替えるようにしている。なお本実施形態では、切替遮断周波数fcが第1遮断周波数に相当し、基本遮断周波数fbが第2遮断周波数に相当する。
【0065】
以下、低域遮断部34の遮断周波数を切り替えるための構成について説明する。
図9および
図10に示すように、第1変調信号列および第2変調信号列によって強度変調される期間を変調期間T0とし、変調期間T0における最初の期間を第1期間T1とし、第1期間T1以外の期間を第2期間T2とする。
【0066】
本実施形態の位置検出装置では、低域遮断部34の作動制御を通じて、第1期間T1において設定される遮断周波数(切替遮断周波数fc[本実施形態では、100kHz])が、第2期間T2において定められる遮断周波数(基本遮断周波数fb[本実施形態では、1kHz])よりも高くされる。
【0067】
第1期間T1は、詳しくは、変調期間T0が始まるタイミング(
図10の時刻t21)からIV変換信号における最初の段差部の途中(
図10の時刻t22))までの期間である。なお、この段差部は、第1変調信号列に基づき駆動される発光素子が検出光を出射している期間であり、且つ、第2変調信号列に基づき駆動される発光素子が検出光を出射していない期間である。
【0068】
図11に示すように、低域遮断部34は、コンデンサ50および抵抗器51,52によって構成されるCR回路53と、バッファアンプ54とを有しており、抵抗は所定電圧でバイアスされている。CR回路53の抵抗器は、並列接続された2つの抵抗器51,52によって構成されている。これら抵抗器51,52の一方(抵抗器52)には、同抵抗器52への通電/非通電を切り替えるスイッチ55が直列接続されている。本実施形態の位置検出装置では、このスイッチ55の操作を通じて、低域遮断部34の遮断周波数が切り替えられる。
【0069】
具体的には、スイッチ55がオフ操作されているときには、CR回路53の抵抗器が一方の抵抗器51のみによって構成される。このときのCR回路53の時定数、ひいては低域遮断部34の遮断周波数は、抵抗器51の抵抗値R1によって定まる。本実施形態では、このときの遮断周波数が、比較的低い基本遮断周波数fbになるように、抵抗器51の抵抗値R1が定められている。
【0070】
一方、スイッチ55がオン操作されると、CR回路53の抵抗器が並列接続された2つの抵抗器51,52によって構成されるようになる。このときのCR回路53の抵抗器の抵抗値は、2つの抵抗器51,52の合成抵抗(=R1×R2/(R1+R2))になるため、スイッチ55のオフ操作時におけるCR回路53の抵抗器の抵抗値(=R1)よりも小さくなる。そのため、CR回路53の時定数が小さくなり、低域遮断部34の遮断周波数が比較的高い切替遮断周波数fcになる。本実施形態では、このときの低域遮断部34の遮断周波数が、比較的高い切替遮断周波数fcになるように、抵抗器51,52の抵抗値R1,R2が定められている。
【0071】
図12に示すように、本実施形態の位置検出装置では、変調周波数f0、基本遮断周波数fb、および切替遮断周波数fcが、関係式「fb<f0<fc」を満たすように定められている。なお本実施形態において、位置検出を精度良く実行するうえでは、スイッチ55のオン操作時におけるCR回路53の時定数が、同スイッチ55のオフ操作時におけるCR回路53の時定数の1/4以下に設定されることが好ましい。
【0072】
図5に示すように、本実施形態の位置検出装置では、スイッチ55を作動させるための制御パルス信号が、タイミング生成部32から低域遮断部34に出力されるようになっている。
図9および
図10に示すように、制御パルス信号としては、第1期間T1においてはスイッチ55をオン操作する「オン信号」が出力される一方、第2期間T2においてはスイッチ55をオフ操作する「オフ信号」が出力される。本実施形態では、制御パルス信号に基づくスイッチ55の操作を通じて、低域遮断部34の遮断周波数の切り替えが実行される。
【0073】
以下、低域遮断部34の遮断周波数を切り替えることによる作用効果について説明する。
図9および
図10に示すように、低域遮断部34から出力されてAD変換部36に入力される電気信号がAD変換部36の入力ダイナミックレンジを超えるおそれのない期間(第2期間T2)では、制御パルス信号として「オフ信号」が出力されて、比較的低い基本遮断周波数fbが定められる。この基本遮断周波数fbは変調周波数f0よりも十分に低くなっている。そのため、第2期間T2においては、低域遮断部34により、第1変調信号列および第2変調信号列によって強度変調された検出光(詳しくは、その反射光)の光量に相当する信号成分についてはこれを減衰させず、周波数的な信号成分欠落による信号波形の歪みを生じることなく位置検出に必要な信号成分を通過させることができる。
【0074】
低域遮断部34から出力される電気信号のバイアス電圧からのオフセットが過渡的に大きくなる期間(第1期間T1)では、制御パルス信号として「オン信号」が出力されて、比較的高い切替遮断周波数fcが定められる。これにより、CR回路53(
図11参照)の時定数が小さくなり、変調信号の入力開始直後において一時的に信号振幅が大きくなった低域遮断信号のバイアス電圧からのオフセットを高速に低減してバイアス電圧付近まで漸近させることができ、一時的な振幅の増大が解消された値まで速やかに収束されるようになる。
【0075】
本実施形態では、切替遮断周波数fcが変調周波数f0よりも高くなっている。そのため、切替遮断周波数fcよりも低い周波数の信号成分、すなわち第1変調信号列および第2変調信号列によって強度変調された検出光(詳しくは、その反射光)の光量に相当する信号成分を含む信号変動成分を速やかに減衰させることができる。これにより、低域遮断部34から出力される低域遮断信号を、一時的な増大が解消された値に近づくように、より速やかに収束させることができる。
【0076】
本実施形態では、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、第1期間T1において上述した低域遮断信号のバイアス電圧からのオフセットの低減が略完了するように、切替遮断周波数fc(具体的には、コンデンサ50の静電容量Cや抵抗器51,52の抵抗値R1,R2)が定められている。
【0077】
本実施形態の位置検出装置では、このようにして第1期間T1で低域遮断信号のオフセットが減衰されるため、直後の第2期間T2においては低域遮断部34から出力される低域遮断信号(詳しくは、そのピーク値や平均値)のバイアス電圧からの信号振幅変化が小さい状態になる。これにより、低域遮断信号における一時的に大きくなってしまう部分を考慮して同低域遮断信号の振幅を予め小さくすることなく、AD変換部36(詳しくは、可変ゲインアンプ部35)に入力される低域遮断信号の振幅と同AD変換部36の入力ダイナミックレンジとの差を小さくしたうえで同低域遮断信号を最大振幅で入力ダイナミックレンジに収めることが可能になる。このように本実施形態の位置検出装置によれば、AD変換部36の入力ダイナミックレンジを有効に活用することが可能になり、AD変換部における量子化ノイズの影響を最小限に抑え、信号処理のSN比を向上させて位置検出装置による位置検出を精度良く行うことができる。
【0078】
本実施形態では、第1期間T1として、変調期間T0における最初の期間が定められている。そのため、低域遮断部34へのIV変換信号の入力が開始された直後から、切替遮断周波数fcを設定して、同低域遮断部34から出力される低域遮断信号を早期に減衰させることができる。そのため、低域遮断部34へのIV変換信号の入力開始直後において同低域遮断部34から出力される低域遮断信号が一時的に大きくなってしまう期間を短くすることができる。
【0079】
なお、上述のように、第1変調信号列に基づき駆動される発光素子が検出光を出射している期間であって、第2変調信号列に基づき駆動される発光素子が検出光を出射していない期間、換言すれば、複数の発光部のうちの一部のみが発光している期間に、低域遮断部から出力される電気信号のバイアス電圧からのオフセットを高速に低減することにより、複数の発光部が全点灯しているときと全消灯しているときの其々で、バイアス電圧を中心にして電気信号を高低に振幅させることができ、位置検出部の入力ダイナミックレンジに効率的に入るように制御することができる。
【0080】
本実施形態の位置検出装置では、受光素子24に入射される反射光の光量に応じて、同受光素子24から出力される電流信号やIV変換信号、低域遮断信号が変化するようになる。そのため、固定のゲインでAD変換部36による信号変換を行うようにすると、次のような不都合を招くおそれがある。すなわち、
図13に一例を示すように、受光素子24に入射される反射光の光量が小さいときには、AD変換部36の入力ダイナミックレンジに対する同AD変換部36に入力される電気信号(本例では、低域遮断信号)の振幅が小さくなる。そして、この場合には、AD変換部36の量子化ノイズの影響により信号のSN比が低下して、位置検出装置による位置検出精度の低下を招くおそれがある。
【0081】
この点をふまえて、本実施形態の位置検出装置では、低域遮断部34とAD変換部36との間に、可変ゲインアンプ部35(
図5)が設けられている。そして、AD変換部36に入力される電気信号の振幅が予め定められた所定範囲S(本実施形態では、AD変換部36の入力ダイナミックレンジの90%程度)の値になるように、可変ゲインアンプ部35のゲインが制御される。
【0082】
以下、可変ゲインアンプ部35のゲインを変更するための構成について説明する。
図5に示すように、検出回路30は、AD変換部36から出力されるAD変換信号の振幅Mを検出する振幅検出部43を有している。この振幅検出部43は、検出したAD変換信号の振幅Mを可変ゲインアンプ部35に出力する。
【0083】
振幅検出部43によるAD変換信号の振幅Mの検出は、次のように実行される。
図6に示すように、前記変調期間T0において、第1変調信号列によって駆動されて発光する発光素子および第2変調信号列によって駆動されて発光する発光素子が同時に点灯しているときのAD変換信号の信号値(MAX)は、AD変換信号の信号値のうちの最大値に相当する。また変調期間T0において、第1変調信号列によって駆動されて発光する発光素子および第2変調信号列によって駆動されて発光する発光素子が同時に消灯しているときのAD変換信号の信号値(MIN)は、AD変換信号の信号値のうちの最小値に相当する。
【0084】
この点をふまえて、振幅検出部43は、変調期間T0における最初の同時点灯時のAD変換信号の信号値(MAX)と、変調期間T0の直前期間あるいは変調期間T0における最初の同時消灯時のAD変換信号の信号値(MIN)とを検出し、それら信号値の差分値(MAX-MIN)を、AD変換信号の振幅Mとして算出(検出)して、同振幅Mを可変ゲインアンプ部35に出力する処理とを実行する。
【0085】
可変ゲインアンプ部35は、振幅検出部43により検出されたAD変換信号の振幅Mと、このとき設定されている可変ゲインアンプ部35のゲインとに基づいて、同ゲインについての制御目標値を算出する。なお本実施形態の位置検出装置では、AD変換信号の振幅MをAD変換部36のダイナミックレンジの所定範囲Sの値にすることの可能なゲイン(制御目標値)と、AD変換信号の振幅Mと、可変ゲインアンプ部35のゲインとの関係が求められて、可変ゲインアンプ部35に予め記憶されている。可変ゲインアンプ部35は、この関係をもとに制御目標値を算出する。そして、可変ゲインアンプ部35は、ゲインと上記制御目標値とを一致させるように、同ゲインを変更する。
【0086】
本実施形態では、
図14に示すように、可変ゲインアンプ部35のゲインの変更タイミング(時刻t33,t36,t39)が、第1変調信号列および第2変調信号列が設定されていない期間、すなわち変調期間T0が終了してから次の変調期間T0が開始されるまでの間に定められている。
【0087】
以下、可変ゲインアンプ部35のゲインを変更することによる作用効果について説明する。
図14に示す例では、最初の変調期間T0(時刻t31~t32)において、IV変換部33から出力されるIV変換信号の振幅が小さく、可変ゲインアンプ部35のゲインが適正値からずれて小さくなっている。そのため、可変ゲインアンプ部35から出力される可変ゲイン信号の振幅がAD変換部36の入力ダイナミックレンジに対して小さくなってしまっている。なお
図14には、理解を容易にするために、最初の変調期間T0(時刻t31~t32)におけるIV変換信号および可変ゲイン信号と、直後の変調期間T0(時刻t34~t35)におけるIV変換信号および可変ゲイン信号との差が大きい状況を例示している。本実施形態の位置検出装置では、変調期間T0が短い周期で繰り返し設定されるため、同一の対象物OBについての位置検出を継続して行っている場合には上記差は
図14に示す例と比較して小さく、連続的な変化となる。
【0088】
本実施形態の位置検出装置では、変調期間T0(時刻t31~t32)におけるAD変換信号(
図6(c)参照)の振幅Mが検出されるとともに、同振幅Mに基づいて可変ゲインアンプ部35のゲインについての制御目標値が算出される。
【0089】
そして、変調期間T0(時刻t31~t32)が終了した後のタイミングであって、且つ次の変調期間T0(時刻t34~t35)が開始される前の所定タイミング(時刻t33)において、上記制御目標値に基づき可変ゲインアンプ部35のゲインが変更される。これにより、次回の可変ゲインアンプ部35への低域遮断信号の入力に先立ち、可変ゲインアンプ部35のゲインが適正値(本例では、大きい値)に変更された状態になる。そのため、直後の変調期間T0(時刻t34~t35)において低域遮断信号が可変ゲインアンプ部35に入力されると、同可変ゲインアンプ部35から出力される信号の振幅、ひいてはAD変換部36から出力されるAD変換信号の振幅Mが、予め定められた所定範囲Sの値(または、これに近い値)になる。
【0090】
本実施形態の位置検出装置では、こうした可変ゲインアンプ部35のゲインを変更する制御が、所定周期で変調期間T0が設定される度(時刻t31~t34,t34~t37,t37~)に実行される。
【0091】
本実施形態の位置検出装置では、受光素子24に入射される反射光の光量に応じてIV変換信号や低域遮断信号が変化するとはいえ、可変ゲインアンプ部35のゲインの変更を通じて、AD変換部36に入力される可変ゲイン信号の振幅が、同AD変換部36の入力ダイナミックレンジを超えることなく、AD変換部36の入力ダイナミックレンジの90%程度の振幅(好ましくは入力ダイナミックレンジの60%~90%の振幅)で有効にAD変換されるため、AD変換部36における量子化ノイズの影響を最小限に抑え、信号処理のSN比を向上させて、位置検出装置による位置検出を精度良く行うことができる。
【0092】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)第1期間T1において設定される切替遮断周波数fcを、第2期間において設定される基本遮断周波数fbよりも高くした。これにより低域遮断部34を通過後の過渡応答により生じる振幅変化を最小限に抑えて、AD変換部36の入力ダイナミックレンジを有効に活用することが可能になるため、AD変換部36における量子化ノイズの影響を最小限に抑え、信号処理のSN比を向上させて、位置検出装置による位置検出を精度良く行うことができる。
【0093】
(2)第1期間T1において設定される切替遮断周波数fcを、変調周波数f0よりも高い周波数にした。これにより、低域遮断部34を通過後の過渡応答により生じる振幅変化をなくして、低域遮断部34から出力される低域遮断信号を、一時的な増大が解消された値に近づくように、速やかに収束させることができる。
【0094】
(3)第1期間T1として、変調期間T0における最初の期間を定めた。そのため、低域遮断部34へのIV変換信号の入力開始直後において同低域遮断部34から出力される低域遮断信号が一時的に大きくなってしまう期間を短くすることができる。
【0095】
(4)第1期間T1は複数の発光部のうちの一部のみが発光している期間とすることで、低域遮断部から出力される電気信号のバイアス電圧からのオフセットを高速に低減して、複数の発光部が全点灯しているときと全消灯しているときの其々で、バイアス電圧を中心にして電気信号を高低に振幅させることができ、位置検出部の入力ダイナミックレンジに効率的に入るように制御することができる。
【0096】
(5)AD変換部36に入力される電気信号の振幅が予め定められた所定範囲Sの値になるように、可変ゲインアンプ部35のゲインを制御するようにした。これにより、量子化ノイズの影響を小さくして、位置検出装置による位置検出を精度良く行うことができる。
【0097】
(6)第1発光素子LED1および第2発光素子LED2の同時点灯時におけるAD変換信号の信号値(MAX)と、同時消灯時におけるAD変換信号の信号値(MIN)との差分値(MAX-MIN)を、AD変換信号の振幅Mとして検出するようにした。そのため、検出の時定数を持つピークホールド回路やボトムホールド回路などを設けずとも、同時点灯時の電気信号と同時消灯時の電気信号とから、AD変換信号の振幅Mを求めることができる。また、上記振幅Mを算出する際に、変調期間T0における最初の同時点灯時のAD変換信号の信号値(MAX)と、変調期間T0における最初の同時消灯時のAD変換信号の信号値(MIN)とを検出して用いるようにした。そのためAD変換信号の出力が開始された直後の短い期間で、遅延することなく、同AD変換信号の振幅Mを検出することができる。
【0098】
(7)可変ゲインアンプ部35のゲインの変更タイミングが、変調期間T0が終了してから次の変調期間T0が開始されるまでの間に定められている。そのため、同一の変調期間T0においては、可変ゲインアンプ部35のゲインを変更することなく一定値に保持することが可能になる。これにより、変調期間T0の途中でゲインが変化することに起因する検出誤差の発生を回避することができるため、位置検出装置による位置検出を精度良く行うことができる。
【0099】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0100】
・位置検出装置は、必ずしも3層構造のベース部で構成される必要はなく、受光素子24が上層ベース部23のピンホール25の下側の裏面側に実装され、受光素子24の実装面側で受光するような1層構造の構成であって構わない。この場合、受光素子24は遮光性を有する封止材でポッティングして背面側からの迷光の影響を受けないようにすることが好ましい。
【0101】
・可変ゲインアンプ部35および振幅検出部43を省略して、低域遮断部34から出力される低域遮断信号をAD変換部36に直接入力するようにしてもよい。
・AD変換信号の振幅Mを算出する方法は任意に変更することができる。例えば、変調期間T0の途中における同時点灯時のAD変換信号の信号値(MAX)と変調期間T0の途中あるいは変調期間T0以外の同時消灯時のAD変換信号の信号値(MIN)とを検出するとともに、それら信号値の差分値をAD変換信号の振幅Mとして算出するようにしてもよい。
【0102】
・可変ゲインアンプ部35のゲインを変更するタイミングは任意に変更することができる。例えば変調期間T0における所定のタイミングで、可変ゲインアンプ部35のゲインを変更するようにしてもよい。
【0103】
・CR回路53のスイッチ55を残した状態で抵抗器52を省略してもよい。同構成によれば、スイッチ55をオン操作することによって、CR回路53の抵抗器の抵抗値を略「0」にすることができる。そのため、第1期間T1においてスイッチ55をオン操作することにより、CR回路53の時定数を小さくして、低域遮断部34の遮断周波数を高くすることができる。これにより、低域遮断部34へのIV変換信号の入力開始直後において一時的に大きくなる低域遮断信号を、そうした一時的な増大が解消された値に近づくように速やかに収束させることができる。
【0104】
・
図15に示すように、変調周波数f0、基本遮断周波数fb、および切替遮断周波数fcを、関係式「fb<fc<f0」を満たすように定めてもよい。同構成によっても、
図16および
図17に示すように、第1期間T1において、低域遮断部34の遮断周波数を切替遮断周波数fcにすることにより、低域遮断部34へのIV変換信号の入力開始直後において一時的に大きくなる低域遮断信号を、減衰速度が遅くなるものの、減衰させることができる。
【0105】
・第1期間T1は、変調期間T0の最初または途中の期間であれば、任意に変更することができる。例えばIV変換信号における最初の段差部の途中において始まるとともに終わる期間を第1期間T1として定めることができる。その他、IV変換信号における最初の段差部と3つ目の段差部とを含む期間を第1期間T1として定めることなども可能である。なお、低域遮断信号を早期に減衰させて精度の良い位置検出を行うためには、変調期間T0における最初の期間を、第1期間T1として設定することが好ましい。
【0106】
・上記実施形態にかかる位置検出装置は、同一直線上において並ぶ複数の発光素子からなる素子群を複数備える位置検出装置にも適用することができる。そうした位置検出装置としては、例えば、4つの発光素子26L,26R,27L,27Rを有する素子群を2つ備え、それら素子群における発光素子の並び方向が直交する構造の位置検出装置を挙げることができる。
【0107】
・上記実施形態にかかる位置検出装置は、発光素子を駆動するための駆動信号として、位相が90度以外の任意の角度だけずれた2種類の変調信号列(第1変調信号列および第2変調信号列)を出力する位置検出装置にも適用することができる。その他、上記実施形態にかかる位置検出装置は、第1発光素子のみが発光する状態と第2発光素子のみが発光する状態とを交互に繰り返すようになる2種類の変調信号列(第1変調信号列および第2変調信号列)を出力する位置検出装置等にも適用可能である。
【0108】
・上記実施形態にかかる位置検出装置は、対象物OBの位置および傾斜角の両方を検出可能な位置検出装置に限らず、対象物OBの位置および傾斜角の一方のみを検出可能な位置検出装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
24…受光素子
26L,26R…内側発光素子
27L,27R…外側発光素子
30…検出回路
31…駆動部
32…タイミング生成部
33…IV変換部
34…低域遮断部
35…可変ゲインアンプ部
36…AD変換部
37…同期検波部
38…演算部
43…振幅検出部
50…コンデンサ
51,52…抵抗器
53…CR回路
54…バッファアンプ
55…スイッチ