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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059511
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20220406BHJP
【FI】
A61M25/00 532
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167309
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沢田 知也
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA03
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC09
4C267GG01
4C267GG21
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】逆行性ガイドワイヤを適切に捕捉することができるようにする。
【解決手段】カテーテルにおいて、中空シャフト120と、中空シャフト120の先端に接続され、径方向に拡縮可能なチューブ状のメッシュ部材110と、メッシュ部材110の先端に接続された先端チップ130と、メッシュ部材110に設けられるとともに、先端が先端チップ130の基端と中空シャフト120の先端との間に位置する誘導膜160と、を備え、誘導膜160は、第1層161と、第1層161の少なくとも中空シャフト120の軸側に配置され、第1層161よりショア硬度が高い第2層162と、を備えるように構成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シャフトと、
前記中空シャフトの先端に接続され、径方向に拡縮可能なチューブ状のメッシュ部材と、
前記メッシュ部材の先端に接続された先端チップと、
前記メッシュ部材に設けられるとともに、先端が前記先端チップの基端と前記中空シャフトの先端との間に位置する誘導膜と、を備え、
前記誘導膜は、
第1層と、
前記第1層の少なくとも前記中空シャフトの軸側に配置され、前記第1層よりショア硬度が高い第2層と、を備える
カテーテル。
【請求項2】
前記第2層は、前記第1層の周囲の全面を覆っている
請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記メッシュ部材は、複数の素線を有し、
前記第1層は、前記複数の素線を被覆している
請求項1又は請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第2層は、前記第1層よりも径方向の厚さが薄い
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第2層は、前記誘導膜の前記先端側の一部に配置されている
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカテーテル。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性完全閉塞病変(CTO:Chronic total occlusion)のような血管を閉塞する閉塞物を除去して血流を改善する医療器具として、例えば、カテーテルに対して閉塞病変を挟んで反対側から閉塞病変に対してガイドワイヤを挿通させ、そのガイドワイヤをカテーテルに備えたメッシュ状の拡張部により捕捉する技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0003】
特許文献1には、拡張部の間隙の一部を覆う柔軟性がある材質の膜体を備えることにより、拡張部の内部空間に差し込まれたガイドワイヤが拡張部の外へ突出することを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-72301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術によると、閉塞病変を挟んで反対側からのガイドワイヤ(逆行性ガイドワイヤ)が膜体により拡張部の外へ突出することを抑制している。しかしながら、近年では、閉塞病変を挿通するために逆行性ガイドワイヤに対して高い荷重を加えることがあり、高い荷重が加えられた逆行性ガイドワイヤが膜体を破損させてしまい、カテーテルにより逆行性ガイドワイヤを適切に捕捉することができない虞がある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、逆行性ガイドワイヤを適切に捕捉することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、一観点に係るカテーテルは、中空シャフトと、前記中空シャフトの先端に接続され、径方向に拡縮可能なチューブ状のメッシュ部材と、前記メッシュ部材の先端に接続された先端チップと、前記メッシュ部材に設けられるとともに、先端が前記先端チップの基端と前記中空シャフトの先端との間に位置する誘導膜と、を備え、前記誘導膜は、第1層と、前記第1層の少なくとも前記中空シャフトの軸側に配置され、前記第1層よりショア硬度が高い第2層と、を備える。
【0008】
上記カテーテルにおいて、前記第2層は、前記第1層の周囲の全面を覆っていてもよい。また、上記カテーテルにおいて、前記メッシュ部材は、複数の素線を有し、前記第1層は、前記複数の素線を被覆していてもよい。また、上記カテーテルにおいて、前記第2層は、前記第1層よりも径方向の厚さが薄くてもよい。また、上記カテーテルにおいて、前記第2層は、前記誘導膜の前記先端側の一部に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、逆行性ガイドワイヤを適切に捕捉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係るカテーテルの概略正面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材が拡張した状態での概略正面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図及び断面図である。
図4図4は、第2実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図である。
図5図5は、第3実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図及び断面図である。
図6図6は、第4実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材の断面図である。
図7図7は、第5実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係るカテーテルについて図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。また、各図面に示したカテーテルの寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。
【0012】
なお、本明細書において、「ガイドワイヤ」とは、血管などの体腔内の術部に押し進められ、その術部にカテーテルを導くためや、閉塞物を穿通するために用いられる医療用のガイドワイヤを意味する。
【0013】
また、本明細書において、「先端側」とは、カテーテルの長手方向に沿った方向(カテーテルの軸方向に沿う方向)であって、メッシュ部材に対する先端チップが位置する方向を意味する。また、「基端側」とは、カテーテルの長手方向に沿った方向に沿う方向であって、先端側と反対側の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。また、「最大拡張径」とは、メッシュ部材を拡張(拡径ともいう)させた状態において、軸方向に直交するメッシュ部材の外径が最大となる部位の外径を意味する。
【0014】
また、本明細書において、「順行性ガイドワイヤ」とは、ガイドワイヤのうち、カテーテルに先立って血管中の閉塞部位などの術部に押し進められるガイドワイヤを意味し、「逆行性ガイドワイヤ」とは、ガイドワイヤのうち、例えば血管内をカテーテルの先端側からカテーテルに向かって進められるガイドワイヤを意味する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るカテーテルの概略正面図である。図1は、カテーテルにおいて、メッシュ部材が縮径している状態を示している。図2は、第1実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材が拡張した状態での概略正面図である。カテーテル1は、概略的に、メッシュ部材110と、第1中空シャフト120と、先端チップ130と、第2中空シャフト140と、コアワイヤ150と、誘導膜160と、コネクタ170とを備えている。
【0016】
メッシュ部材110は、径方向に拡縮可能なチューブ状の部材である。メッシュ部材110は、コアワイヤ150が基端側に引っ張られると、例えば、図2に示すように面外変形して径外側へ膨出することで拡張し、拡張したメッシュ部材110の開口mを介して逆行性ガイドワイヤW2をメッシュ部材110内に受け入れる。
【0017】
本実施形態では、メッシュ部材110は、複数の第1素線111と複数の第2素線112とを有しており、これら第1素線111と第2素線112とが格子状に編まれて全体としてチューブ状になるように形成されている。メッシュ部材110は、編まれた隣り合う素線間に開口mが形成されており、拡張したときの拡大した開口mを通して逆行性ガイドワイヤを受け入れる。メッシュ部材110を構成する各素線の先端部分は、先端チップ130に接合され、各素線の基端部分は、第1中空シャフト120に接合されている。なお、各素線111、112は、単線であってもよいし、複数の単線を撚り合わせた燃線であってもよい。
【0018】
メッシュ部材110の各素線111,112を構成する材料としては、金属材料または樹脂材料を採用することができる。このような金属材料としては、例えば、SUS304などのステンレス鋼、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金等が挙げられる。このような樹脂材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。これらの材料の中で、強度および可撓性を向上させる観点から金属材料であってもよい。なお、第1素線111,112は、それぞれ同一の材料で形成されていてもよく、異なる材料で形成されていてもよい。
【0019】
また、メッシュ部材110の各素線111,112を構成する材料としては、メッシュ部材110の視認性を向上させる観点から、放射線不透過性材料を含んでもよい。このような放射線不透過材料としては、例えば、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金ニッケル合金など)等が挙げられる。なお、放射線不透過性材料を、各素線111,112の表面にコートするようにしてもよい。
【0020】
第1中空シャフト120は、メッシュ部材110の基端に接続されている。本実施形態では、第1中空シャフト120は、先端がメッシュ部材110の基端に接続された中空の先端側シャフト121と、先端が先端側シャフト121の基端に接続された中空の基端側シャフト123とを有している。
【0021】
先端側シャフト121は、内部に逆行性ガイドワイヤW2およびコアワイヤ150が挿通可能なルーメン122を有している。基端側シャフト123は、内部にコアワイヤ150が挿通可能なルーメン124を有している。先端側シャフト121と基端側シャフト123との接続部125において、先端側シャフト121の基端には、基端側に向かって開口する開口部126が形成されており、開口部126を介して逆行性ガイドワイヤがカテーテル1の外部に送出される。
【0022】
先端側シャフト121と基端側シャフト123との接続部125において、基端側シャフト123の先端の内部には、コアワイヤ150の外周を覆いかつ内部にコアワイヤ150が軸方向に摺動可能な円筒状の封止部材127が配置されている。これにより、コアワイヤ150の外周と封止部材127の内周の隙間を小さくすることができ、逆行性ガイドワイヤの端部が基端側シャフト123へ迷入することを抑制することができる。この結果、第1中空シャフト120や逆行性ガイドワイヤの破損を防止することができる。
【0023】
封止部材127は、先端から基端側に向かって体積が増大し、封止部材127の先端側の端面127aが、開口部126に近づくように傾斜している。具体的には、封止部材127の端面127aがルーメン122に露出しており、逆行性ガイドワイヤが開口部126を円滑に通過するように、端面127aが開口部126に向かって傾斜するように形成されている。これにより、逆行性ガイドワイヤの端部の基端側シャフト123先端への引っかかりを防ぐことができ、逆行性ガイドワイヤを開口部126へ容易に導くことができる。この結果、第1中空シャフト120や逆行性ガイドワイヤの破損を防止することができる。
【0024】
封止部材127を構成する材料としては、コアワイヤ150が摺動可能であればよく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等の樹脂が挙げられる。
【0025】
第1中空シャフト120を構成する材料としては、第1中空シャフト120が血管内に挿通されることから、抗血栓性、可撓性および生体適合性を有していてもよく、樹脂材料、金属材料を採用することができる。先端側シャフト121としては、柔軟性が求められるため、例えばポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂材料を採用してもよい。基端側シャフト123としては、押し込み性が求められるため、例えばハイポチューブ等の金属管を採用してもよい。
【0026】
先端チップ130は、メッシュ部材110の先端に接続されている部材である。先端チップ130は、具体的には、カテーテル1が血管中を進行し易いように、先端側に向かって尖鋭状に形成されており、先端チップ130の基端に、メッシュ部材110の各素線それぞれの先端部および第2中空シャフト140の先端部が埋設されている。
【0027】
先端チップ130を構成する材料としては、カテーテル1が血管中を進行することから、柔軟性を有していてもよい。このような柔軟性と有する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマーなどの樹脂材料等が挙げられる。
【0028】
第2中空シャフト140は、先端チップ130に接続され、メッシュ部材110の内側の空間にて基端側に突出している。第2中空シャフト140の基端は、メッシュ部材110の内側の空間における第1中空シャフト120の先端と先端チップ130の基端との間に位置していると共に、第2中空シャフト140の基端が、コアワイヤ150に拘束されずにコアワイヤ150から離間可能となっている。このため、コアワイヤ150を基端側に向かって引っ張る際、図2に示すように、第2中空シャフト140がメッシュ部材110の軸方向に対して傾倒し、かつ第2中空シャフト140の基端がメッシュ部材110の内周を径外側に向かって押圧することでメッシュ部材110が拡張するのを促進する。なお、第2中空シャフト140が傾倒するがその基端がメッシュ部材110の内周に当接しない場合であっても、拡張したメッシュ部材110の内側の空間を非対称的に拡げることができ、逆行性ガイドワイヤをより受け入れ易くすることができる。
【0029】
第2中空シャフト140を構成する材料としては、第2中空シャフト140も血管内に挿通されることから、抗血栓性、可撓性および生体適合性を有していてもよい。このような材料としては、例えば、第1中空シャフト120について例示した材料と同様のもの等が挙げられるが、柔軟性の観点から樹脂材料としてもよい。
【0030】
コアワイヤ150は、先端がメッシュ部材110の先端および/または先端チップ130に接続され、基端が第1中空シャフト120の基端よりも基端側に位置するようにメッシュ部材110および第1中空シャフト120の内部を通って延びている。コアワイヤ150は、具体的には、メッシュ部材110の内部における第2中空シャフト140の外側の空間、第1中空シャフト120の内部、およびコネクタ170の通孔171を介して外部に延びている。なお、コアワイヤ150をコネクタ170の外部にて操作することで、コアワイヤ150が軸方向に進退し、メッシュ部材110が径方向に拡縮する。
【0031】
コアワイヤ150を構成する材料としては、コアワイヤ150自身の切断を防止しかつメッシュ部材110を確実に拡縮する観点から、十分な引張強度および剛性を有していてもよい。このような材料としては、例えば、SUS304などのステンレス鋼、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金などの金属材料等が挙げられる。
【0032】
コネクタ170は、オペレータがカテーテル1を把持する部材である。コネクタ170は、第1中空シャフト120の基端に接続されており、コアワイヤ150を外部に露出できるように、第1中空シャフト120のルーメン122,124と相通する通孔171と、通孔171の基端に形成された開口部172とを有している。なお、コネクタ170の形態は特に限定されず、オペレータが把持し易ければいずれの形状であってもよい。
【0033】
誘導膜160は、メッシュ部材110に配置され、誘導膜160の先端が先端チップ130の基端と第1中空シャフト120の先端との間に位置している。誘導膜160は、メッシュ部材110の開口mを通して受け入れた逆行性ガイドワイヤを第1中空シャフト120に向かって円滑に導くように作用する。本実施形態の誘導膜160は、先端が位置するメッシュ部材110の軸方向略中央部(例えば、メッシュ部材110の最大拡張径部分)から、誘導膜160の基端が位置する第1中空シャフト120の先端に亘る領域において、メッシュ部材110に形成されている。ここで、カテーテル1において、逆行性ガイドワイヤを受け入れる場合には、図2に示すようにメッシュ部材110は拡張され、誘導膜160は漏斗形状に展開される。逆行性ガイドワイヤW2は、メッシュ部材110の開口mを通してメッシュ部材110内に受け入れられ、例えば、漏斗状となった誘導膜160に接触して、第1中空シャフト120内に導かれることとなる。
【0034】
次に、誘導膜160の構成について詳細に説明する。
【0035】
図3は、第1実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図及び断面図である。図3(A)は、カテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図であり、図3(B)は、図3(A)のI-I線で切断した断面図である。
【0036】
誘導膜160は、メッシュ部材110に配置され、誘導膜160の先端が先端チップ130の基端と第1中空シャフト120の先端との間に位置している。誘導膜160は、メッシュ部材110の素線111,112を被覆している第1層161と、第1層161の周囲を覆う第2層162とを有する。
【0037】
第1層161は、伸縮性を有する材料で形成されている。第1層161を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエストラマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、またはこれらのコポリマー等の樹脂材料が挙げられる。
【0038】
第2層162は、伸縮性を有する材料で形成されており、第1層161よりも硬い(たとえば、ショア硬度が高い)。第2層162を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリエチレン、またはこれらのコポリマー等の樹脂材料が挙げられる。
【0039】
本実施形態では、第1層161は、メッシュ部材110の素線111,112を被覆している。また、第2層162は、第1層161の周囲を完全に覆うように形成されている。すなわち、第2層162は、第1層161の外周側、内周側、先端側、及び基端側の面を覆っている。このため、第1層161は、外部に暴露されない状態となるので、第1層161の材料としては、例えば、吸水しやすい樹脂を選択することもでき、材料の選択範囲を広げることができる。
【0040】
第2層162のカテーテル1の径方向の厚さは、第1層161よりも薄くなっている。例えば、硬度を高くすると、伸縮性が悪くなる場合もあるが、第2層162の厚さを薄くすることで、誘導膜160全体として必要とされる伸縮性を確保することができる。
【0041】
誘導膜160によると、逆行性ガイドワイヤを受け入れる場合には、誘導膜160の内周面にある第2層162が逆行性ガイドワイヤと接触する可能性が高い。ここで、第2層162は、第1層161よりも硬いので、逆行性ガイドワイヤが高い荷重で接触したとしても破れてしまうことを防止することができる。
【0042】
誘導膜160を形成する方法は特に限定されず、例えば、ディップ法を採用することができる。具体的には、メッシュ部材110を、第1層161の材料の樹脂を溶剤に溶かした溶液、または樹脂の溶解液に浸漬して引き上げ、乾燥(冷却)させることで、第1層161を形成する。次いで、第1層161が形成されたメッシュ部材110を、第2層162の材料の樹脂を溶剤に溶かした溶液、または受信の溶解液に浸漬して引き上げ、乾燥(冷却)することで、第1層161の周囲に第2層162を形成する。これにより、第1層161と、第2層162とを有する誘導膜160を形成することができる。また、例えば、第1層161の材料を含むフィルムと、第2層162を構成するフィルムとをメッシュ部材110の両面に配置し、ロール成形してメッシュ部材110に接着または溶着させることにより、誘導膜160を形成してもよい。
【0043】
次に、カテーテル1の使用態様について説明する。カテーテル1は、逆行性ガイドワイヤW2を受け入れるように使用される。
【0044】
まず、順行性ガイドワイヤW1(図示せず)を例えば血管内に挿入した後、血管に沿って閉塞物が存在する部位(以下、「閉塞部位」ともいう)まで押し進める。
【0045】
次に、順行性ガイドワイヤW1の先端が閉塞部位に到達した後、順行性ガイドワイヤW1の基端を第2中空シャフト140先端の通孔に挿通させ、順行性ガイドワイヤW1をガイドとしてカテーテル1の先端を血管内にて閉塞部位まで押し進める。この際、メッシュ部材110は、縮径した状態で血管に挿入され、カテーテル1の先端が閉塞部位に到達するまで縮径した状態が維持される。
【0046】
次に、カテーテル1の先端が閉塞部位に到達した後、カテーテル1に対して順行性ガイドワイヤW1を基端側に引っ張ることで順行性ガイドワイヤW1をカテーテル1から引き抜く。なお、順行性ガイドワイヤW1をカテーテル1から引き抜かなくてもよい。
【0047】
次いで、コネクタ170の外部に露出しているコアワイヤ150を基端側に向かって引っ張ることでメッシュ部材110の先端と第1中空シャフト120の先端との間隔が狭まり、結果としてメッシュ部材110が径外側に面外変形して拡張する。この際、メッシュ部材110の拡張に伴って開口mも拡張されるので、逆行性ガイドワイヤW2を受け入れやすい状態となる。また、図2に示すように第2中空シャフト140の傾倒によりメッシュ部材110の内周が径外側に向かって押圧されることで、メッシュ部材110の拡張が促進される。なお、本実施形態では、誘導膜160の先端がメッシュ部材110の軸方向略中央部に接合されているので、メッシュ部材110の拡張に追従して誘導膜160が拡張され、誘導膜160が全体として漏斗形状になる。
【0048】
次に、図2に示すように、先端側から向かって来る逆行性ガイドワイヤW2をカテーテル1に受け入れる。逆行性ガイドワイヤW2が向かってくる経路としては、例えば、閉塞部位を囲繞する血管壁内の偽腔、閉塞部位を貫通した貫通孔等が想定されるが、いずれの経路であってもよい。逆行性ガイドワイヤW2は、拡張したメッシュ部材110の開口mを通してメッシュ部材110の内側の空間に受け入れられた後、メッシュ部材110の誘導膜160に誘導されて、第1中空シャフト120の開口部120aから先端側シャフト121に挿通され、開口部126を介してカテーテル1の外部に送出される。次いで、開口部126から送出された逆行性ガイドワイヤW2は、血管内を通過した後、端部が体外に送出される。これにより、逆行性ガイドワイヤW2が閉塞部位を貫通しかつ逆行性ガイドワイヤW2の両端部が体外に露出した状態を作り出すことができる。
【0049】
このように、カテーテル1は、逆行性ガイドワイヤW2を受け入れて端部を体外に誘導することができるので、逆行性ガイドワイヤW2と組み合わせた医療器具として好適に用いることができる。
【0050】
以上のように、カテーテル1は上述した構成であるので、コアワイヤ150を基端側に向かって引っ張ることによりメッシュ部材110を拡張した際に逆行性ガイドワイヤW2に接触する可能性の高い誘導膜160の内周側が、硬い第2層162となっているので、逆行性ガイドワイヤW2が高い荷重で接触したとしても破れてしまうことを防ぐことができ、逆行性ガイドワイヤW2を適切に捕捉することができる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るカテーテル1Aについて説明する。図4は、第2実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図である。なお、第1実施形態に係るカテーテル1と同様な部分については、同一符号を付している。
【0052】
第2実施形態に係るカテーテル1Aにおいては、第1実施形態に係るカテーテル1の誘導膜160に代えて、誘導膜163を備えている。
【0053】
誘導膜163は、メッシュ部材110に配置され、誘導膜163の先端が先端チップ130の基端と第1中空シャフト120の先端との間に位置している。誘導膜163は、メッシュ部材110の素線111,112を被覆している第1層161と、第1層161の周囲の一部を覆う第2層164とを有する。
【0054】
第2層164は、第1層161の先端側の一部の範囲、例えば、第1層161の長手方向の略中心から先端側の範囲を覆うように設けられている。第2層164は、伸縮性を有する材料で形成されており、第1層161層よりも硬い(たとえば、ショア硬度が高い)。第2層164を構成する材料としては、第1実施形態に係る第2層162と同様な材料が挙げられる。
【0055】
第2層164のカテーテル1Aの径方向の厚さは、第1層161よりも薄くなっている。例えば、硬度を高くすると、伸縮性が悪くなる場合もあるが、第2層164の厚さを薄くすることで、誘導膜163全体として必要とされる伸縮性を確保することができる。
【0056】
誘導膜163においては、逆行性ガイドワイヤW2を受け入れる場合には、誘導膜163の先端側の部分の内周面にある第2層164が逆行性ガイドワイヤW2と接触する可能性が高い。ここで、第2層164は、第1層161よりも硬いので、逆行性ガイドワイヤW2が高い荷重で接触したとしても破れてしまうことを防止することができる。また、第2層164を第1層161の先端側の一部の範囲のみに設けているので、第2層164の設けられていない基端側において誘導膜163の伸縮性を高く維持することができ、メッシュ部材110の拡張を容易に行うことができる。
【0057】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るカテーテル1Bについて説明する。図5は、第3実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図及び断面図である。図5(A)は、カテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図であり、図5(B)は、図5(A)のII-II線で切断した断面図である。なお、第1実施形態に係るカテーテル1と同様な部分については、同一符号を付している。
【0058】
誘導膜260は、メッシュ部材110に配置され、誘導膜260の先端が先端チップ130の基端と第1中空シャフト120の先端との間に位置している。誘導膜260は、メッシュ部材110の素線111,112を被覆している第1層261と、第1層261の内周面、すなわち、シャフト120の軸側の面を覆う第2層262とを有する。
【0059】
第1層261は、伸縮性を有する材料で形成されている。第1層261を構成する材料としては、第1実施形態に係る第1層161と同様な材料とすることができる。
【0060】
第2層262は、伸縮性を有する材料で形成されており、第1層261層よりも硬い(たとえば、ショア硬度が高い)。第2層262を構成する材料としては、第1実施形態に係る第2層162と同様な材料とすることができる。
【0061】
第2層262のカテーテル1Bの径方向の厚さは、第1層261よりも薄くなっている。例えば、硬度を高くすると、伸縮性が悪くなる場合もあるが、第2層262の厚さを薄くすることで、誘導膜260全体として必要とされる伸縮性を確保することができる。
【0062】
誘導膜260によると、逆行性ガイドワイヤW2を受け入れる場合には、誘導膜260の内周面にある第2層262が逆行性ガイドワイヤW2と接触する可能性が高い。ここで、第2層262は、第1層261よりも硬いので、逆行性ガイドワイヤW2が高い荷重で接触したとしても破れてしまうことを防止することができる。
【0063】
また、第2層262が第1層261の外周側に形成されていないので、誘導膜260の伸縮性を高く維持することができ、メッシュ部材110の拡張を容易に行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態では、第2層262を、カテーテル1Bの軸方向における誘導膜260の全範囲に設けるようにしていたが、例えば、第2実施形態の第2層164のように、第1層261の先端側の一部の範囲、例えば、第1層261の長手方向の略中心から先端側の範囲を覆うように設けるようにしてもよい。
【0065】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係るカテーテル1Cについて説明する。第4実施形態に係るカテーテル1Cは、第3実施形態に係るカテーテル1Bとは、誘導膜における第2層の構成が異なっている。図6は、第4実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材の断面図である。図6は、カテーテル1Cに対して図5(A)のII-II線と同様な部分で切断した断面図である。なお、第3実施形態に係るカテーテル1Bと同様な部分については、同一符号を付している。
【0066】
誘導膜263は、メッシュ部材110に配置され、誘導膜263の先端が先端チップ130の基端と第1中空シャフト120の先端との間に位置している。誘導膜263は、メッシュ部材110の素線111,112を被覆している第1層261と、第1層261の内周面、すなわち、シャフト120の軸側の面を覆う第2層264とを有する。
【0067】
第2層264は、第3実施形態に係る第2層262において、カテーテル1Cの軸方向に延びる1以上のスリット265が形成されたものである。ここで、スリット265の周方向の幅は、カテーテル1Cが捕捉する対象とする逆行性ガイドワイヤW2の先端部の直径よりも短くてもよい。このようにすると、逆行性ガイドワイヤW2がスリット265を通過して第1層261に到達することを防ぐことができ、逆行性ガイドワイヤW2が高い荷重で接触したとしても第1層261を突き破ることを防止することができる。
【0068】
また、軸方向に延びるスリット265が存在することにより、誘導膜263の拡張に対する剛性を抑制することができ、誘導膜263の伸縮性を向上することができる。また、スリット265が軸方向に延びているので、スリット265に逆行性ガイドワイヤW2が接触した場合には、逆行性ガイドワイヤW2を軸方向に適切に誘導することができる。
【0069】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態に係るカテーテル1Dについて説明する。図7は、第5実施形態に係るカテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図及び断面図である。図7(A)は、カテーテルのメッシュ部材を含む一部の端面図であり、図7(B)は、図7(A)のIII-III線で切断した断面図である。なお、第1実施形態に係るカテーテル1と同様な部分については、同一符号を付している。
【0070】
誘導膜360は、メッシュ部材110に配置され、誘導膜360の先端が先端チップ130の基端と第1中空シャフト120の先端との間に位置している。誘導膜360は、メッシュ部材110の内周側に接着または溶着されている第1層361と、第1層361の内周を覆う第2層362とを有する。
【0071】
第1層361は、伸縮性を有する材料で形成されている。第1層361を構成する材料としては、第1実施形態に係る第1層161と同様な材料が挙げられる。
【0072】
第2層362は、伸縮性を有する材料で形成されており、第1層361層よりも硬い(たとえば、ショア硬度が高い)。第2層362を構成する材料としては、第1実施形態に係る第2層162と同様な材料が挙げられる。
【0073】
本実施形態では、第1層361は、メッシュ部材110の素線111,112を層内に完全に被覆していないので、第1層361のカテーテル1Bの径方向の厚さを薄くすることができ、第1層361に必要な材料を低減できるとともに、誘導膜360の剛性を低減することができ、誘導膜360の伸縮性を向上することができる。
【0074】
誘導膜360によると、逆行性ガイドワイヤW2を受け入れる場合には、誘導膜360の内周面にある第2層362が逆行性ガイドワイヤW2と接触する可能性が高い。ここで、第2層362は、第1層361よりも硬いので、逆行性ガイドワイヤW2が高い荷重で接触したとしても破れてしまうことを防止することができる。
【0075】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0076】
例えば、上述した、第4実施形態に示したスリット265と同様なスリットを、他の実施形態に示した第2層に設けるようにしてもよい。
【0077】
また、上述した第4実施形態において、第2層のみに、カテーテルの軸方向に延びるスリットを設けるようにしていたが、本発明はこれに限られず、第1層にもカテーテルの軸方向に延びるスリットを設けるようにしてもよい。
【0078】
また、上述した実施形態において、誘導膜に対して、カテーテルの径方向に延びる1以上のスリットを設けるようにしてもよい。この場合のスリットのカテーテルの軸方向の幅は、逆行性ガイドワイヤW2の先端の直径よりも短くてもよい。このようにすると、誘導膜の剛性を抑制することができ、誘導膜の伸縮性を向上することができる。
【符号の説明】
【0079】
1,1A,1B,1C,1D カテーテル
110 メッシュ部材
111,112 素線
120 第1中空シャフト
130 先端チップ
140 第2中空シャフト
150 コアワイヤ
160,163,260,263,360 誘導膜
161,261,361 第1層
162,164,262,264,362, 第2層
165 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7