(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059529
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】マイクロ波処理装置、及びマイクロ波処理方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20220406BHJP
B01J 19/18 20060101ALI20220406BHJP
H05B 6/70 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
B01J19/12 A
B01J19/18
H05B6/70 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167352
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】508067736
【氏名又は名称】マイクロ波化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】塚原 保徳
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 久夫
(72)【発明者】
【氏名】石塚 章斤
(72)【発明者】
【氏名】金城 隆平
【テーマコード(参考)】
3K090
4G075
【Fターム(参考)】
3K090AA11
3K090AA20
3K090AB20
3K090BA01
3K090CA01
3K090PA01
4G075AA13
4G075AA54
4G075BA10
4G075CA26
4G075DA02
4G075EB01
4G075EB31
4G075EC11
4G075ED02
4G075ED08
4G075FB04
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC20
(57)【要約】
【課題】容器内でのスパークの発生を低減させることができるマイクロ波処理装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波処理装置1は、マイクロ波を用いたバッチ処理の対象となる液相の内容物31を収容するための柱形状の中空部3aを有する容器3であって、中空部3aの中心軸方向が鉛直方向となるように配置された際に、中心軸から周辺に向かう方向に沿って高さが低くなる上内面3bを有する容器3と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生器5と、上内面3bから中空部3a側に突き出た部分7aを有する、マイクロ波発生器5によって発生されたマイクロ波を中空部3aに導入するための導波管7とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相内容物を収容するための柱形状の中空部を有する容器であって、前記中空部の中心軸方向が鉛直方向となるように配置された際に、少なくとも一部の領域において、前記中心軸から周辺に向かう方向に沿って高さが低くなる上内面を有する容器と、
前記上内面から前記中空部側に突き出た部分を有する、前記中空部にマイクロ波を導入するための導波管と、を備えたマイクロ波処理装置。
【請求項2】
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生器をさらに備え、
前記マイクロ波発生器によって発生されたマイクロ波が、前記導波管を介して前記中空部に導入される、請求項1記載のマイクロ波処理装置。
【請求項3】
前記容器の上内面を貫通し、前記中空部の中心軸と同軸になるように設けられた撹拌軸と、
前記撹拌軸に接続された撹拌翼と
をさらに備えた、請求項1または請求項2記載のマイクロ波処理装置。
【請求項4】
前記導波管は、当該導波管の中心軸が前記中空部の中心軸に対して角度を有するように設けられている、請求項1から請求項3のいずれか記載のマイクロ波処理装置。
【請求項5】
前記導波管の先端の開口を含む平面は、前記中空部の中心軸に対して垂直である、請求項4記載のマイクロ波処理装置。
【請求項6】
前記中空部の上内面の表面は、前記内容物に対する濡れ性がよい、請求項1から請求項5のいずれか記載のマイクロ波処理装置。
【請求項7】
前記容器には、前記容器の外方側に突出しており、一端が前記上内面において前記中空部と連通している外筒部が設けられており、
前記導波管は、一端が前記上内面から前記中空部側に突き出るように前記外筒部の内側に配置された内筒導波管を有する、請求項1から請求項6のいずれか記載のマイクロ波処理装置。
【請求項8】
前記導波管は、前記容器に設けられた開口を貫通するように設けられており、
当該開口において、前記導波管と前記容器とは溶接されている、請求項1から請求項6のいずれか記載のマイクロ波処理装置。
【請求項9】
前記導波管は、前記容器に設けられた開口を挟んで対向するように設けられた、前記容器の外側の導波管と、前記容器の内側の導波管とを有しており、
前記容器の内側の導波管は、前記容器に対して着脱可能に設けられている、請求項1から請求項6のいずれか記載のマイクロ波処理装置。
【請求項10】
液相の内容物が入れられる柱形状の中空部を有する容器であって、前記中空部の中心軸方向が鉛直方向となるように配置された容器の前記中空部に、前記内容物を流入させるステップと、
マイクロ波を、前記容器の上内面から前記中空部側に突き出た部分を有する導波管を介して前記内容物に照射するステップと
を含み、
前記上内面は、少なくとも一部の領域において、前記中心軸から周辺に向かう方向に沿って高さが低くなる、マイクロ波処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相の対象物にマイクロ波を照射するためのマイクロ波処理装置、及びマイクロ波処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液相系の反応を行う反応器において、バッチ処理を行う場合、原料及び必要な溶媒を当該反応器に投入し、温度及び圧力を設定する。そして、マイクロ波を照射することにより反応を促進し、目的物が得られる。その後、温度を下げ、必要に応じて圧力を常圧に戻し、目的物、副生物及び溶媒が回収され、必要な回数処理が繰り返される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液相系の反応においては、反応に伴い発生するガスに起因するスパークが問題となる。ガスが反応器の内壁で凝縮して生じる液滴が内壁から滴下する際に液滴と内壁との間に電位差が生じ、それに伴いスパークが発生する。特に、反応器の上内面には液滴が凝縮しやすい傾向にあり、スパークの一要因となっている。スパークは着火点となり、反応器内のガスの燃焼、ひいては爆発を引き起こすおそれがあり、安全性の観点から抑制が望まれる。
【0004】
こうしたガスに起因するスパークは、化学反応のための反応器に限らず、液相系の内容物にマイクロ波を照射する容器一般において問題となる。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液相の対象物にマイクロ波を照射するためのマイクロ波処理装置及びマイクロ波処理方法において、容器内のスパーク発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置は、液相内容物を収容するための柱形状の中空部を有する容器であって、中空部の中心軸方向が鉛直方向となるように配置された際に、少なくとも一部の領域において、中心軸から周辺に向かう方向に沿って高さが低くなる上内面を有する容器と、上内面から中空部側に突き出た部分を有する、中空部にマイクロ波を導入するための導波管と、を備えたものである。
【0007】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生器をさらに備え、マイクロ波発生器によって発生されたマイクロ波が、導波管を介して中空部に導入されてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、容器の上内面を貫通し、中空部の中心軸と同軸になるように設けられた撹拌軸と、撹拌軸に接続された撹拌翼とをさらに備えてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、導波管は、導波管の中心軸が中空部の中心軸に対して角度を有するように設けられていてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、導波管の先端の開口を含む平面は、中空部の中心軸に対して垂直であってもよい。
【0011】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、中空部の上内面の表面は、内容物に対する濡れ性がよくてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、容器には、容器の外方側に突出しており、一端が上内面において中空部と連通している外筒部が設けられており、導波管は、一端が上内面から中空部側に突き出るように外筒部の内側に配置された内筒導波管を有してもよい。
【0013】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、導波管は、容器に設けられた開口を貫通するように設けられており、開口において、導波管と容器とは溶接されていてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、導波管は、容器に設けられた開口を挟んで対向するように設けられた、容器の外側の導波管と、容器の内側の導波管とを有しており、容器の内側の導波管は、容器に対して着脱可能に設けられていてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理方法は、液相の内容物が入れられる柱形状の中空部を有する容器であって、中空部の中心軸方向が鉛直方向となるように配置された容器の中空部に、内容物を流入させるステップと、マイクロ波を、容器の上内面から中空部側に突き出た部分を有する導波管を介して内容物に照射するステップとを含み、上内面は、少なくとも一部の領域において、中心軸から周辺に向かう方向に沿って高さが低くなる、ものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、容器内のスパークの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態によるマイクロ波処理装置の構成を示す正面図
【
図2】同実施の形態によるマイクロ波処理装置を示す平面図
【
図3】同実施の形態によるマイクロ波処理装置を示す縦断面図
【
図4】同実施の形態によるマイクロ波処理装置の他の一例を示す縦断面図
【
図5】同実施の形態におけると導波管との接続状況を示す断面図
【
図6】同実施の形態における容器と導波管との接続状況の他の一例を示す断面図
【
図7】同実施の形態における容器と導波管との接続状況の他の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるマイクロ波処理装置、及びマイクロ波処理方法について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるマイクロ波処理装置が備える容器は、一例として、当該容器が有する中空部の上内面がドーム形状になっている。そして、上内面から中空部側に突き出た導波管を介してマイクロ波が容器内に導入されて液相の内容物に照射される。
【0019】
図1は、本実施の形態によるマイクロ波処理装置1の構成を示す正面図である。
図2は、マイクロ波処理装置1の平面図である。
図3は、マイクロ波処理装置1の縦断面図である。
図3では、説明の便宜上、マイクロ波発生器5、撹拌軸11などを省略している。
【0020】
マイクロ波処理装置1は、円柱形状の中空部3aを有する容器3と、マイクロ波を中空部3aに導入する導波管7とを備え、さらにマイクロ波発生器5と、撹拌軸11と、撹拌軸11に取り付けられた撹拌翼13と、撹拌軸11を回転させる駆動手段15とを必要に応じて備えることができる。なお、以下の説明では、容器3の円柱形状である中空部3aの中心軸が鉛直方向となるように配置された際の上下を、上下ということにする。また、鉛直方向とは、厳密な鉛直方向であってもよく、厳密な鉛直方向に対して、容器3の設置誤差程度の微小角度だけずれた方向を含んでもよい。
【0021】
容器3は、マイクロ波を用いたバッチ処理の対象となる液相の内容物31を収容するための円柱形状の中空部3aを有する。中空部3aは、例えば、円柱形状の部分と、その円柱形状の中心軸方向の一端または両端において、ドーム形状、半球形状などのように外方側に膨らんだ部分とを有する形状であってもよい。また、中空部3aは、中心軸を回転軸とする回転体形状であってもよい。中空部3aは、通常、マイクロ波が閉じ込められる空間である。そのため、容器3は、マイクロ波を通過しない材料によって構成されることが好適である。マイクロ波を通過しない材料は、マイクロ波反射性の材料であってもよい。マイクロ波反射性の材料は、例えば、金属であってもよい。金属は、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金などであってもよい。
【0022】
液相の内容物31は、例えば、液体であってもよく、スラリーであってもよく、その他の液相のものであってもよい。具体的には、液相の内容物31は、目的とする生成物の原料及び必要な溶媒とすることができる。内容物31に対して行われるマイクロ波を用いたバッチ処理は、特に限定されるものではないが、例えば、加熱処理、化学反応処理、殺菌処理などであってもよい。化学反応処理は特に限定されるものではないが、例えば、エステル化反応、エステル交換反応などによってバイオディーゼル燃料、糖脂肪酸エステルなどを生成する処理であってもよく、還元反応によって金属ナノ粒子を生成する処理であってもよく、その他の化学反応処理であってもよい。内容物31に対して化学反応処理が行われる場合には、容器3は反応器であってもよい。また、内容物31へのバッチ処理は、例えば、常圧、減圧下、または加圧下で行われてもよい。
【0023】
容器3は、内容物31を中空部3aに入れるための流入管21と、中空部3aから内容物31を排出するための流出管23とを有していてもよい。流入管21、流出管23には、バルブが設けられていてもよい。そして、容器3内でバッチ処理が行われている場合には、内容物31の流入及び流出が行われないようにしてもよい。流入管21、及び流出管23も、マイクロ波を通過しない材料によって構成されることが好適である。また、流入管21、流出管23を介したマイクロ波の漏洩を防止するため、流入管21、流出管23の内径、取り付け位置などが決められてもよく、流入管21の流入口、流出管23の流出口にマイクロ波の漏洩を防止するための金属製のパンチングボード、金属製の網などを配置してもよい。なお、
図1では、流入管21が内容物31の液面31aより高い位置に設けられており、流出管23が中空部3aの最も低い位置に設けられている場合について示しているが、
図1で示される位置以外に流入管21、流出管23が配置されてもよい。また、容器3は、例えば、蒸気を抜くための排気口を上内面3bなどに有していてもよい。
【0024】
容器3は、中空部3aの中心軸方向が鉛直方向となるように配置された場合に、中心から周辺に向かう方向に沿って高さが低くなる上内面3bを有する。その上内面3bは、例えば、ドーム形状であってもよく、半球面形状であってもよく、円錐面形状であってもよく、中心から周辺に向かう方向に沿って高さが低くなるその他の形状であってもよい。なお、本実施の形態では、
図1、
図3で示されるように、上内面3bがドーム形状である場合について主に説明する。上内面3bを、中心軸から周辺に向かう方向に沿って高さが低くなるようにすることによって、上内面3bで生じた液滴が上内面3bから落下せずに内壁を伝って側面に移動することが促され、液滴落下に伴うスパークが抑制される。本実施の形態では、上内面3b全体において、中心から周辺に向かう方向に沿って高さが低くなるものとして記述しているが、上内面3bの少なくとも一部の領域において、中心軸から周辺に向かう方向に沿って高さが低くなるようにすることによって、液滴落下に伴うスパークを一定程度抑制することができる。
【0025】
導波管7は、マイクロ波発生器5によって発生されたマイクロ波を中空部3aに導入する。このようにして中空部3aに導入されたマイクロ波が内容物31に照射される。中空部3aにおけるマイクロ波の照射は、マルチモードで行うことができる。導波管7は、上内面3bに突き出た部分7aを有する。その突き出た部分7aは、上内面3bから中空部3a側に突き出ている部分である。発明者らは、この突き出た部分7aを存在させることによって、中空部3aの上内面3bにおけるマイクロ波の電界集中を抑えられることを見出した。その結果として、上内面3bから落下する液滴と上内面3bとの間の電位差が低減し、液滴落下が生じたとしても、スパーク発生が抑制される。
【0026】
導波管7は、具体的には、中空導波管であってもよい。また、導波管7は、通常、断面が矩形状である矩形導波管であるが、断面が円形状である円形導波管であってもよい。本実施の形態では、導波管7が矩形導波管である場合について主に説明する。
【0027】
中空部3aの上内面3bの表面は、内容物31に対する濡れ性がよくてもよい。この場合には、例えば、容器3の上内面3bそのものが、内容物31に対する濡れ性のよい物質によって構成されていてもよく、中空部3aの上内面3bに、内容物31に対する濡れ性のよい物質のコーティングがなされていてもよい。内容物31に対する濡れ性のよい物質は、内容物31に水が含まれており、上内面3bで水が凝縮する場合には、例えば、親水性を有する酸化チタンであってもよい。また、内容物31に水が含まれており、上内面3bで水が凝縮する場合において、容器3の上内面3bにセラミックコーティングを施してもよい。また、例えば、容器3の上内面3bに対して、内容物31に対する濡れ性をよくする表面処理がなされていてもよい。その表面処理は、例えば、表面の凹凸を小さくする処理であってもよく、表面粗さを小さくする処理であってもよい。そのような表面処理の一例として、バフ掛けなどの研磨加工を挙げることができる。内容物31に対する濡れ性のよい表面は、例えば、内容物31に対する接触角が90°以下となる表面であってもよく、その接触角が80°以下となる表面であってもよく、その接触角が70°以下となる表面であってもよく、その接触角が60°以下となる表面であってもよく、その接触角が50°以下となる表面であってもよい。内容物31と上内面3bの表面との親和性が高いほど、上内面3bにおいて凝縮した内容物31の液体が液滴として落下する可能性を低減することができる。したがって、上内面3bの表面における内容物31に対する接触角はより小さい方が好適である。
【0028】
マイクロ波発生器5は、マイクロ波を発生させる。マイクロ波発生器5は、例えば、マグネトロン、クライストロン、ジャイロトロンなどを用いてマイクロ波を発生させてもよく、半導体素子を用いてマイクロ波を発生させてもよい。マイクロ波の周波数は、例えば、915MHz、2.45GHz、5.8GHz、24GHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。また、マイクロ波の強度は、図示しない制御部によって適宜、制御されてもよい。その制御は、例えば、内容物31の温度などのセンシング結果を用いたフィードバック制御であってもよい。
【0029】
導波管7の中心軸は、例えば、
図3で示されるように、中空部3aの中心軸に対して角度θを有していることが好ましい。なお、
図3において、中空部3aの中心軸を一点鎖線で示している。導波管7の中心軸が、中空部3aの中心軸に対して角度を有する場合に、導波管7の中心軸と、中空部3aの中心軸とのなす角度は、例えば、20°~70°の範囲内であってもよく、30°~60°の範囲内であってもよく、40°~50°の範囲内であってもよい。また、この角度は45°であってもよい。角度θを与えることによって、照射したマイクロ波が反射して導波管7に戻り、照射効率を低下させることを抑制することができる。
【0030】
導波管7の中心軸が、中空部3aの中心軸に対して角度を有する場合に、中空部3aの中心軸と、導波管7の中心軸を含む直線とが交わるように導波管7が設けられてもよい。なお、
図3では、導波管7の中心軸を含む直線を破線で示している。また、中空部3aの中心軸と、導波管7の中心軸を含む直線とが交わる場合には、
図3で示されるように、両者の交点41が、内容物31の液面31a上になってもよい。この場合には、液面中心にマイクロ波が照射されることになり、効率のよいマイクロ波の照射を実現することができる。なお、導波管7が、マイクロ波発生器5から中空部3aにおける先端の開口までの一部において曲がっている場合には、導波管7の中心軸を含む直線は、導波管7の先端側の中心軸を含む直線であってもよい。
【0031】
また、
図4に示すように、導波管7の中空部3a側の先端の開口を含む平面は、中空部3aの中心軸に対して垂直になっていてもよい。すなわち、導波管7の先端の開口を含む平面は、内容物31の液面31aと平行になっていてもよい。なお、
図4では、導波管7の先端の開口を含む平面、及び導波管7の中心軸を破線で示している。このように、導波管7の先端の開口を含む平面が、導波管7の中心軸に対して垂直以外の角度となるようにすることによって、導波管7の先端から出力されるマイクロ波の向きを変更することができる。
図4において、導波管7の中心軸と、導波管7の先端の開口を含む平面とのなす角度φは、例えば、20°~90°の範囲内であってもよい。通常、導波管7の先端から出力されるマイクロ波は、導波管7の先端の開口を含む平面に垂直な方向に放射されることになる。したがって、
図4で示される場合には、導波管7から放射されたマイクロ波が、図中の矢印で示されるように、概ね内容物31の液面31aに垂直な方向に進むことになり、上内面3bにおける電界集中を抑えられる。
【0032】
導波管7のいずれかの箇所には、中空部3a側からマイクロ波発生器5側に蒸気、粒子などが移動しないようにするため、マイクロ波透過性の窓が設けられてもよい。その窓は、例えば、石英、ガラス、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、セラミックなどのマイクロ波透過性材料によって構成されてもよい。また、その窓は、例えば、気密窓であってもよく、または、気密ではない窓であってもよい。
【0033】
次に、導波管7と容器3との接続構造について説明する。
図5で示されるように、導波管7は、容器3に設けられた開口3cを貫通するように設けられており、開口3cにおいて、導波管7と容器3とは溶接されていてもよい。
図5の断面図では、容器3の外周側、及び内周側(すなわち、中空部3aの上内面3b)の両方において溶接51が行われている場合について示しているが、いずれか一方のみの溶接が行われてもよい。溶接51は、導波管7の外周側を1周するように設けられることが好適である。開口3cからのマイクロ波の漏洩を防止するためである。
【0034】
また、
図6で示されるように、導波管7は、容器3に設けられた開口3cを挟んで対向するように設けられた、容器3の外側の導波管7-1と、容器3の内側の導波管7-2とを有していてもよい。そして、容器3の内側の導波管7-2は、容器3に対して着脱可能に設けられていてもよい。この場合には、導波管7-2は、例えば、上内面3bに設けられたボルト穴、または、上内面3bに接続されたフランジに、ボルトで着脱可能に装着されてもよい。
図6の断面図では、外側の導波管7-1は、容器3の外周側に溶接されている。また、容器3の上内面3bには、導波管7-1、7-2と同じ内径の孔を有するフランジ53が、溶接51によって固定されている。そして、導波管7-2のフランジ部55が、フランジ53にボルト57で固定されている。したがって、ボルト57を外すことによって、内側の導波管7-2を取り外すことができ、内側の導波管7-2を交換することができる。なお、外側の導波管7-1、開口3c、フランジ53の孔、内側の導波管7-2は、すべて同軸になっており、それらの内周面によってマイクロ波の導波路が形成されているものとする。また、開口3cの内径は、導波管7-1,7-2、及びフランジ53の内径と同じであるとする。このように、内側の導波管7-2が着脱可能になっていることによって、例えば、容器3の内容物31を多くしたり、少なくしたりする場合に、それに応じた長さの内側の導波管7-2を用いることもできる。例えば、内容物31の量が少なく、液面31aの高さが低くなる場合には、内容物31のより近くでマイクロ波を照射できるようにするため、より長い内側の導波管7-2を装着してもよい。また逆に、液面31aの高さが高くなる場合には、導波管7-2の先端が液面31aに接しないようにするため、より短い内側の導波管7-2を装着してもよい。なお、導波管7-2の先端と液面31aとが適切な距離となるようにすることによって、例えば、内容物31が導波管7-2の内部に入る可能性を低減することができる。また、内側の導波管7-2が着脱可能であるため、内容物31の高さなどに応じて、導波管7-2の先端の開口の形状を変えることもできるようになる。例えば、導波管7-2の中心軸と中空部3aの中心軸とが角度を有している場合には、液面31aが高いときに、先端の開口を含む平面が、導波管7-2の長手方向に垂直になっている導波管7-2を装着し、液面31aが低いときに、先端の開口を含む平面が、中空部3aの中心軸に垂直になっている導波管7-2を装着してもよい。
【0035】
また、
図7で示されるように、導波管7は、容器3に設けられた外筒部61の内側に配置された内筒導波管7-3を有していてもよい。
図7で示される容器3には、容器3の外方側に突出している外筒部61が設けられている。外筒部61の容器3側の一端は、上内面3bにおいて、中空部3aに連通している。また、外筒部61の中空部3aと反対側の端部には、フランジ部62が形成されている。導波管7は、一端が上内面3bから中空部3a側に突き出るように外筒部61の内側に配置された内筒導波管7-3と、内筒導波管7-3に気密窓65を介して接続される導波管7-4とを有している。なお、外筒部61の内径は、内筒導波管7-3の外径と略同じであることが好適である。内筒導波管7-3における中空部3aと反対側の端部には、フランジ部63が形成されている。そして、マイクロ波透過性材料によって構成された透過部65aを有する気密窓65を介して、外筒部61のフランジ部62、内筒導波管7-3のフランジ部63、及び導波管7-4のフランジ部64を、ボルト66及びナット67を用いて締め付けることによって、導波管7を容器3に取り付けることができる。この場合にも、内筒導波管7-3は容器3に対して着脱可能であるため、所望のマイクロ波の照射に応じた内筒導波管7-3を用いることができるようになる。なお、
図7では、一例として内筒導波管7-3と導波管7-4とが気密窓65を介して接続される場合について示しているが、気密窓65は、存在しなくてもよく、または他の箇所に設けられてもよい。また、内筒導波管7-3は、マイクロ波発生器5に直接接続されてもよい。また、外筒部61と内筒導波管7-3とは、フランジを用いる以外の方法、例えば、溶接等によって固定されてもよい。
【0036】
撹拌軸11は、容器3の上内面3bを貫通し、中空部3aの中心軸と同軸になるように設けられている。なお、マイクロ波の漏洩を防止するため、容器3の上面における撹拌軸11の貫通孔にチョーク構造などのマイクロ波の漏洩防止機構が設けられてもよい。撹拌翼13は、撹拌軸11の下端側に接続されている。なお、容器3内において内容物31を適切に撹拌できるのであれば、撹拌翼13の形状は問わない。駆動手段15は、撹拌軸11を回転させる。駆動手段15は、例えば、容器3の外部に設けられたモータ等であってもよい。駆動手段15によって撹拌軸11が回転されることによって、撹拌軸11に固定されている撹拌翼13が回転し、内容物31が撹拌されることになる。なお、
図1では、マイクロ波処理装置1が撹拌軸11、撹拌翼13、及び駆動手段15(以下、これらを撹拌手段と呼ぶことがある。)を有する場合について示しているが、内容物31を撹拌しなくてもよい場合には、マイクロ波処理装置1は、撹拌手段を有していなくてもよい。
【0037】
上述の説明では、容器3が有する中空部3aを円柱形状(round pillar shape)であるものとして記述してきたが、中空部3aの断面が正円からずれた楕円その他の環状形状である場合にも、本発明の精神は同様に適用可能である。このような断面が正円からずれた環状形状であるものの中空部3aを本明細書では「円柱状形状(round pillar-like shape)」と呼ぶ。円柱状形状の中心軸を厳密に定義できない場合、当該円柱状形状の各断面を中心点を定義可能な環状形状で近似して得られる中空部3aの中心軸のいずれかを用いて、本明細書の記載を解釈すればよい。また、中空部3aは、角柱形状(square pillar shape)としてもよく、各断面が正四角形からずれた矩形状形状である角柱状形状(square pillar-like shape)としてもよい。角柱状形状の中心軸を厳密に定義できない場合、当該角柱状形状の各断面を中心点を定義可能な矩形形状で近似して得られる中空部3aの中心軸のいずれかを用いて、本明細書の記載を解釈すればよい。より一般的に、中空部3aは、柱形状(pillar shape)としてもよい。
【0038】
なお、本実施の形態では、マイクロ波処理装置1がマイクロ波発生器5を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。マイクロ波処理装置1は、マイクロ波発生器5を有していなくてもよい。
【0039】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0040】
次に、本実施の形態によるマイクロ波処理装置1におけるバッチ処理について説明する。まず、流出管23のバルブを閉じた状態で、流入管21のバルブを開け、容器3の中空部3aに内容物31を流入させる。あらかじめ決められた量の内容物31が流入されると、流入管21のバルブを閉じる。そして、マイクロ波発生器5によってマイクロ波を発生させる。マイクロ波発生器5によって発生されたマイクロ波は、導波管7を介して中空部3aに導入され、内容物31に照射される。そのマイクロ波の照射によって内容物31が加熱され所定の処理が行われる。その処理中に一部の内容物31が蒸発して中空部3aの上内面3bで凝縮したとしても、凝縮した液体の多くは、上内面3bがドーム形状等であるため、上内面3bに沿って中空部3aの側面に流れていき、液滴として落下しにくい。また、上内面3bにおいて凝縮した液体の一部が液滴として落下することがあっても、後述するシミュレーション結果で示すように、上内面3bに突き出た部分7aを有する導波管7によってマイクロ波を照射していることによって、上内面3bの電界強度は高くなっておらず、落下する液滴と上内面3bとの間の電位差は大きくならない。その結果、落下する液滴と上内面3bとの間でのスパークの発生を抑えることができる。内容物31への処理が終了すると、マイクロ波発生器5によるマイクロ波の発生が停止される。また、流出管23のバルブが開けられ、容器3から内容物31が排出される。このようにして、一連のバッチ処理が終了となる。
【0041】
次に、比較例と実施例とのシミュレーション結果について説明する。比較例では、上内面がフラットであり、導波管が側面に接続され、中空部への導波管の突き出しのないマイクロ波処理装置に関するシミュレーションを行った。
図8Aの比較例1は、撹拌手段のないマイクロ波処理装置についてのシミュレーション結果であり、
図8Bの比較例2は、撹拌手段のあるマイクロ波処理装置についてのシミュレーション結果である。また、
図8C~
図8Fはそれぞれ実施例1~4のシミュレーション結果である。実施例1、2では、導波管7の先端の開口を含む平面が、導波管7の長手方向に垂直となっており、実施例3、4では、導波管7の先端の開口を含む平面が、中空部3aの中心軸に垂直となっている。また、実施例1、3は、撹拌手段のないマイクロ波処理装置1についてのシミュレーション結果であり、実施例2、4は、撹拌手段のあるマイクロ波処理装置1についてのシミュレーション結果である。これらのシミュレーションでは、導波管の長手方向と、中空部の中心軸とのなす角を45°とし、導波管の中心軸を含む直線と、中空部の中心軸とが交わるようにした。また、内容物は有機溶媒であるとした。
【0042】
図8A~
図8Fのシミュレーション結果において、より白い領域が電界強度の高い領域である。したがって、比較例1、2(
図8A、
図8B)では、上内面の複数の箇所において電界強度の高い領域が存在することが分かる。電界強度が高い箇所では、より短い距離しか離れていなくても、電位差がより大きくなる。したがって、比較例1、2において、中空部の上内面で凝縮した液体が液滴として落下する際には、上内面と液滴との間の電位差が大きくなり、両者間でスパークの発生する可能性が高くなる。
【0043】
一方、実施例1~4では、上内面3bにおいて、電界強度の高い領域が抑制されている。したがって、仮に上内面3bにおいて凝縮した液体が液滴として落下したとしても、上内面3bと液滴との間の電位差は、比較例1、2と比較して小さいため、両者間でスパークの発生する可能性は低くなる。また、実施例1~4では、上内面3bがドーム形状であるため、上内面3bにおいて凝縮した液体は、上内面3bに沿って中空部3aの側面側に流れることになり、上内面3bから液滴として落下する可能性も低くなる。なお、
図8E、
図8Fの実施例3、4では、導波管7の先端の下方側の電界強度が高くなっている。したがって、導波管7の先端の開口を含む平面が、中空部3aの中心軸に垂直であることによって、導波管7の開口から出力されるマイクロ波の向きを下方側に曲げることができていることが分かる。なお、
図8A、
図8C、
図8Eと、
図8B、
図8D、
図8Fとをそれぞれ比較することによって、撹拌手段の有無に起因する電界強度の変化は大きくないことが分かる。
【符号の説明】
【0044】
1 マイクロ波処理装置
3 容器
3a 中空部
3b 上内面
5 マイクロ波発生器
7 導波管
11 撹拌軸
13 撹拌翼
15 駆動手段
31 内容物
【手続補正書】
【提出日】2020-10-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波処理装置。