(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059532
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】テープ貼り付け機
(51)【国際特許分類】
E01C 23/02 20060101AFI20220406BHJP
E01C 11/06 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
E01C23/02
E01C11/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167357
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000233653
【氏名又は名称】ニチレキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】特許業務法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 知弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕司
【テーマコード(参考)】
2D051
2D053
【Fターム(参考)】
2D051AA01
2D051AC04
2D053AA27
2D053AB09
(57)【要約】
【課題】 テープ状の舗装用材料を段差部の入り隅を挟んだ底面及び側面の双方に貼着することを可能にするテープ貼り付け機を提供することを課題とする。
【解決手段】 舗装用材料ロールを支持するロール支持軸と案内ローラとを有するロール支持体と、前記ロール支持体を支持する支持機構と、前記上部走行輪の接地面よりは低く、前記下部走行輪の接地面よりは高い位置に配置されている案内輪と、垂直な押圧面を有する抑え部材とを有し、前記案内輪と前記抑え部材とを、前記上部走行輪を想定される段差部の上面に接地させ、前記下部走行輪を想定される段差部の底面に接地させたとき、前記案内輪と前記抑え部材の前記押圧面とが、想定される段差部の側面と接触する位置に配置してなるテープ貼り付け機を提供することによって上記課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面が相対的に高い位置にある1又は2以上の上部走行輪と、接地面が相対的に低い位置にある1又は2以上の下部走行輪と、
前記上部走行輪と前記下部走行輪とを、走行方向と直交する方向に間隔をあけて連結する連結部材と、
舗装用材料ロールの片側側面が当接するロール支持面と、舗装用材料ロールの中心間隙に挿入されるロール支持軸と、前記ロール支持軸と平行で、前記舗装用材料ロールから繰り出される舗装用材料を案内する案内ローラとを有するロール支持体と、
前記ロール支持面を前記上部走行輪の側に向けて、前記ロール支持体を支持する支持機構と、
垂直な回転軸の回りに回転する案内輪であって、前記上部走行輪の接地面よりは低く、前記下部走行輪の接地面よりは高い位置に配置されている案内輪と、
垂直な押圧面を有する抑え部材とを有し、
前記案内輪と前記抑え部材とを、前記ロール支持体の前記ロール支持面と前記上部走行輪との間であって、前記上部走行輪を想定される段差部の上面に接地させ、前記下部走行輪を想定される段差部の底面に接地させたとき、前記案内輪と、前記抑え部材の前記押圧面とが、想定される段差部の側面と接触する位置に配置してなるテープ貼り付け機。
【請求項2】
前記下部走行輪が、前記連結部材に対し、上下方向の位置を変更可能に取り付けられている請求項1記載のテープ貼り付け機。
【請求項3】
前記支持機構が、前記ロール支持体を、高さ方向位置、水平方向位置、及び/又は、垂直面に対する角度を変更可能に支持する支持機構である請求項1又は2記載のテープ貼り付け機。
【請求項4】
前記抑え部材の前記垂直な押圧面が、前記案内輪から遠ざかるにつれて、上下方向の長さを増す形状部分を有している請求項1~3のいずれかに記載のテープ貼り付け機。
【請求項5】
前記抑え部材の前記垂直な押圧面が、その下端部に、前記上部走行輪とは反対側に向かって鈍角で折れ曲がる斜め押圧面を有している請求項1~4のいずれかに記載のテープ貼り付け機。
【請求項6】
前記抑え部材を、走行方向前後方向位置、上下方向位置、及び/又は水平面に対する角度を変更可能に支持する抑え部材支持機構を有している請求項1~5のずれかに記載のテープ貼り付け機。
【請求項7】
前記テープ貼り付け機を前記案内輪を先頭側にして段差部に沿って走行させたとき、前記案内輪よりも先に段差部の凹凸と接触する位置に配置され、前記案内輪から遠ざかる先端部に行くに連れて滑らかに前記下部走行輪側にカーブする平面形状を有する緩衝部材を備えている請求項1~6のいずれかに記載のテープ貼り付け機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回されたテープ状の舗装用材料を断面L字型の施工面に貼り付けるテープ貼り付け機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アスファルト舗装のジョイント部や舗装端部からの雨水の浸入を防止するために、テープ状に成型された成型目地材が用いられており、斯かる成型目地材を舗装端部などの垂直面に貼り付ける装置も、例えば特許文献1、2にみられるとおり、種々提案されている。
【0003】
しかし、これら従来の貼付機が対象とする成型目地材は、断面形状がほぼ一定のテープ状の目地材であり、これを雨水の浸入防止のために例えばアスファルト舗装のジョイント部や、舗装端部と縁石との継ぎ目部などにおける垂直面に貼り付けようとしても、ジョイント部の垂直断面には通常凹凸やダストがあるため、一旦は貼り付くものの、すぐに上端部からよれてしまい、ジョイント部に確実に密着させるのが難しいという欠点があった。
【0004】
このような欠点を解決するために、本出願人は、想定される折り曲げ線に沿った折り曲げ用の凹みを片面又は両面に有するテープ状に成型された成型目地材を開発し、特許文献3に開示した。この成型目地材は、折り曲げ用の凹みを有しているので、容易にL字型に折り曲げて、例えば切削オーバーレイ工法などによる補修工事に際して生じる断面L字型の切削端面における水平面と立ち上がり面の双方に貼り付け密着させることができ、ジョイント部からの雨水の浸透を効果的に防止することができる非常に優れた成型目地材である。
【0005】
しかし、上記のL字型に折り曲げることができる成型目地材は、断面L字型の切削端面における入り隅を挟んだ水平面と立ち上がり面の双方に貼り付けるものであるので、上記特許文献1、2に開示されたような専ら垂直面だけに貼り付けることを想定した貼付装置を用いて貼り付けることができない。
【0006】
この不都合を解消すべく、本出願人は、舗装用材料のロールを回転可能に保持する舗装用材料保持部と、水平から傾いた押圧貼着輪とを備えた舗装用材料押圧貼着装置を開発し、特許文献4に開示した。この特許文献4に開示した装置によれば、ロールからの舗装用材料の繰り出しと、断面L字型の切削端面の水平面と垂直な立ち上がり面の双方に、テープ状の舗装用材料を押し当てて、押圧、貼着することができる。これにより、作業者は立ったままの姿勢で成型目地材等の舗装用材料の貼着作業を行うことが可能となり、作業者への負担の大いなる軽減が実現された。
【0007】
しかしながら、本出願人が独自に得たその後の知見によれば、上記特許文献4に開示された装置においては、施工区間が長くなると、ややもすると、テープ状の舗装用材料が、当初のセッティング位置から、断面L字型の切削端面の上方又は下方にずれてくることがあり、その都度、テープ状の舗装用材料のセッティング位置を修正しなければならないという問題点があることが判明した。この点で、特許文献4に開示された装置は、未だ改良の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-17907号公報
【特許文献2】実用新案登録第3062202号公報
【特許文献3】実用新案登録第3189337号公報
【特許文献4】特許第6605273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みて為されたもので、成型目地材などのテープ状の舗装用材料を、位置ずれ少なく、段差部の入り隅を挟んだ底面及び側面の双方に貼着することを可能にする舗装用のテープ状材料の貼り付け機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、鋭意研究と試行錯誤を重ねた結果、本発明者らは、ロールから繰り出したテープ状の舗装用材料を、最初から段差部の断面L字型の施工面にきっちりと貼り付けるのではなく、まずは、主としてテープ状の舗装用材料の長手方向に沿った上方側部だけを、施工面である段差部の上部角部近辺に貼り付けるようにすると、長い施工区間であっても、位置ずれ少なく、テープ状の舗装用材料を連続的に貼り付けることができることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、接地面が相対的に高い位置にある1又は2以上の上部走行輪と、接地面が相対的に低い位置にある1又は2以上の下部走行輪と、前記上部走行輪と前記下部走行輪とを、走行方向と直交する方向に間隔をあけて連結する連結部材と、
舗装用材料ロールの片側側面が当接するロール支持面と、舗装用材料ロールの中心間隙に挿入されるロール支持軸と、前記ロール支持軸と平行で、前記舗装用材料ロールから繰り出される舗装用材料を案内する案内ローラとを有するロール支持体と、前記ロール支持面を前記上部走行輪の側に向けて、前記ロール支持体を支持する支持機構と、
垂直な回転軸の回りに回転する案内輪であって、前記上部走行輪の接地面よりは低く、前記下部走行輪の接地面よりは高い位置に配置されている案内輪と、
垂直な押圧面を有する抑え部材とを有し、
前記案内輪と前記抑え部材とを、前記ロール支持体の前記ロール支持面と前記上部走行輪との間であって、前記上部走行輪を想定される段差部上面に接地させ、前記下部走行輪を想定される段差部の底面に接地させたとき、前記案内輪と、前記抑え部材の前記押圧面とが、想定される段差部の側面と接触する位置に配置してなる、テープ貼り付け機を提供することによって上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るテープ貼り付け機によれば、テープ貼り付け機を施工対象箇所である段差部に沿って走行させるだけで、段差部の入り隅を挟んだ底面と側面の双方をカバーする位置に、テープ状の舗装用材料を、位置ずれ少なく、連続して、貼り付けることができる。また、本発明に係るテープ貼り付け機は、適宜の操作棒を介して作業者が立ったままの姿勢で移動させることができるので、作業者に屈んだ状態での過酷な作業を強いることなく、効率良く作業を行うことができるという利点が得られる。また、立ったままで作業ができるので、周囲の状況にも注意が行き届き、安全性も高まるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のテープ貼り付け機の一例を示す正面図である。
【
図2】本発明のテープ貼り付け機の一例を示す平面図である。
【
図3】本発明のテープ貼り付け機の一例を示す右側面図である。
【
図4】ロール支持体の支持機構の動作を説明する正面図である。
【
図5】ロール支持体の支持機構の動作を説明する正面図である。
【
図6】ロール支持体の支持機構の動作を説明する正面図である。
【
図8】抑え部材のとの近傍の部分拡大右側面とその部分断面図である。
【
図9】テープ貼り付け作業を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示されるものに限られないことは勿論である。
【0015】
図1は本発明に係るテープ貼り付け機の一例を示す正面図、
図2は平面図、
図3は右側面図である。
図1~
図3において、1はテープ貼り付け機であり、2a、2bは上部走行輪、3a、3bは下部走行輪である。
【0016】
Raは、上部走行輪2a、2bの接地面、Rcは下部走行輪3a、3bの接地面であり、
図1に示すとおり、上部走行輪2a、2bの接地面Raは、下部走行輪3a、3bの接地面Rcよりも相対的に高い位置にあり、下部走行輪3a、3bの接地面Rcは、上部走行輪2a、2bの接地面Raよりも、相対的に低い位置にある。実際の使用時には、接地面Raが段差部の上面Daに、接地面Rcが段差部の底面Dcに相当することになる。
【0017】
L2は、上部走行輪2a、2bの走行方向であり、L3は、下部走行輪3a、3bの走行方向である。
図2の平面図に示すとおり、上部走行輪2a、2bの走行方向L2と、下部走行輪3a、3bの走行方向L3とは平行である。上部走行輪2aと下部走行輪3a、上部走行輪2bと下部走行輪3bとは、それぞれ連結部材4a、4bによって連結されているので、上部走行輪2a、2bと、下部走行輪3a、3bとは、互いに平行な走行方向L2、L3に対して直交する方向に間隔をあけて、連結部材4a、4bによって連結されているということになる。4cは、連結部材4aと4bとを上部走行輪2a、2bの側で連結する、前後方向連結部材である。なお、Dbは段差部の側面である。
【0018】
図2に示すとおり、下部走行輪3a、3bは、その走行方向が上部走行輪2a、2b側に角度αだけ内側を向いた走行方向L3’となるように配置されていても良い。下部走行輪3a、3bが、角度αだけ内側を向いた走行方向L3’となるように配置されている場合には、テープ貼り付け機1を施工対象面となる段差部に沿って走行させるとき、テープ貼り付け機1が上部走行輪2a、2bの側に向かって、つまり、段差部の側面Dbに向かって接近する方向に進行するので、段差部底面や上面並びに側面に凹凸があったりした場合でも、テープ貼り付け機1が段差部側面Dbから大きく離れることがなく、テープ状の舗装用材料の貼り付けをより確実に行うことができるという利点が得られる。なお角度αは、それ程大きな角度である必要はなく、1度以上5度以下、2度以上4度以下とするのが好ましい。
【0019】
また、図示の例では、上部走行輪2a、2b及び下部走行輪3a、3bは、いずれも2個ずつ設けられているが、それぞれ1個であっても良く、3個以上であっても良い。ただし、上部走行輪と下部走行輪とが、共に1個である場合には、テープ貼り付け機1の走行が不安定になる恐れがあるので、上部走行輪又は下部走行輪のいずれか一方は2個以上設けられているのが望ましい。
【0020】
5a、5bは、それぞれ連結部材4a、4bの上側に取り付けられている上部係止部材、6a、6bは、それぞれ連結部材4a、4bの下側に取り付けられている下部係止部材である。hは、上部係止部材5a、5b及び下部係止部材6a、6bのそれぞれに形成されている係止用の長孔である。
【0021】
7はロール支持体であり、8は、舗装用材料ロールの中心間隙に挿入され、舗装用材料ロールを支持するロール支持軸、9は、前記舗装用材料ロールから繰り出される舗装用材料を案内する案内ローラである。ロール支持体7の上面7fは、舗装用材料ロールの中心間隙内にロール支持軸8を挿入して舗装用材料ロールをロール支持体7に担持させたとき、舗装用材料ロールの片側側面と当接し、舗装用材料ロールを支持するロール支持面である。本例において、ロール支持軸8と案内ローラ9とは、いずれもロール支持面7fに対して垂直で、ロール支持面7fの同じ側に突出しており、互いに平行である。なお、案内ローラ9は、ロール支持面7fに対して垂直な軸の回りに回転自在に支持されている。
【0022】
7sa、7sbは、ロール支持体7の側面を構成する側板であり、側板7sa及び7sbには、それぞれ係止用の長孔hが設けられている。Vは、上部係止部材5a、5b、下部係止部材6a、6bに設けられている長孔hと、ロール支持体7の側板7sa、7sbに設けられている長孔hとを貫通して、側板7sa、7sbに取り付けられているナット(図示せず)と螺合し、ロール支持体7を、上部係止部材5a、5b、及び下部係止部材6a、6bに対して係止し、一時固定するボルトである。上部係止部材5a、5b、下部係止部材6a、6b、それらに形成されている長孔h、ボルトV、及び図示しないナットが、ロール支持面7fを上部走行輪2a、2bの側に向けて、ロール支持体7を支持する支持機構を構成している。
【0023】
図1及び
図2に示す10は案内輪である。案内輪10の回転軸axは垂直であり、その取り付け高さは、上部走行輪2a、2bの接地面Raよりは低く、下部走行輪3a、3bの接地面Rcよりは高い位置に選ばれている。10cは、案内輪10の取り付け部材であり、その上端は連結部材4aに連結されている。案内輪10は、テープ貼り付け機1を施工面である段差部に沿って走行させるとき、段差部の側面Dbと接触し、テープ貼り付け機1を段差部側面Dbに沿って案内する案内輪として機能するものである。
【0024】
図1、
図2に示すとおり、案内輪10は、ロール支持体7のロール支持面7fと上部走行輪2a、2bとの間であって、上部走行輪2a、2bを想定される段差部の上面Daに接地させ、下部走行輪3a、3bを想定される段差部の底面Dcに接地させたとき、案内輪10が、想定される段差部の側面Dbと接触する位置に配置されている。なお、案内輪10は、テープ貼り付け機1の走行方向前方側(上部走行輪2a側)に設けるのが良く、走行方向前方側に設けられるのであれば、その個数は1個に限られず、2個以上であっても良い。
【0025】
図1、
図2に示す11は緩衝部材である。緩衝部材11は、テープ貼り付け機1を案内輪10を先頭側にして、施工箇所である段差部に沿って走行させたとき、案内輪10よりも先に段差部側面Dbの凹凸と接触する位置(案内輪10よりも、
図2に矢印で示す走行方向先頭側)に配置されており、案内輪10よりも先に段差部側面Dbの凹凸と接触し、その衝撃を緩和するために設けられている。このため、緩衝部材11は、
図2の平面図に示すとおり、案内輪10側の根元部が幅広で、案内輪10とほぼ同じ水平方向の幅(走行方向と直交する方向の幅)を有し、案内輪10から遠ざかる先端部、すなわち、走行方向前方の先端部に行くに連れて滑らかに下部走行輪3a側にカーブして幅狭となる平面形状を有している。11cは、緩衝部材11の取り付け部材であり、その根元部は案内輪10の取り付け部材10cに連結されている。
【0026】
図2の平面図において、12は抑え部材である。抑え部材12は、連結部材4a、4bを連結する前後方向連結部材4cに、スペーサSを介して取り付けられている。抑え部材12は、垂直な押圧面12sを有しており、テープ貼り付け機1を施工面である段差部に沿って走行させたとき、押圧面12sが、案内輪10とともに、段差部の側面Dbと接触する位置に配置されている。押圧面12sは、その一部又は全部が、高さ方向において、上部走行輪2a、2bの接地面Raと、案内輪10との間に延在しているのが好ましい。
【0027】
ただし、押圧面12sは、一部が上部走行輪2a、2bの接地面Raよりも上方に突出していても良く、逆に、その上端が上部走行輪2a、2bの接地面Raよりも低い位置にあっても良い。同様に、押圧面12sは、一部が案内輪10の高さ方向位置よりも下方に位置していても良く、また、その下端が案内輪10よりも高い位置にあっても良い。
【0028】
13a、13bは、それぞれ下部走行輪3a、3bの支持部材であり、支持部材13a、13bには、それぞれ係止用の長孔hが設けられている。14a、14bは、それぞれ連結部材4a、4bに取り付けられている係止板である。ボルトVを係止板14a、14bに設けられている挿入孔を通して支持部材13a、13bに設けられている長孔hの適宜の位置に挿入し、図示しないナットと螺合させることによって、支持部材13a、13bに取り付けられている下部走行輪3a、3bを、連結部材4a、4bに対して係止し、一時固定することができる。また、ボルトVとナットとの螺合を緩めて、支持部材13a、13bに設けられている長孔hへのボルトVの挿入位置を適宜変更し、再度ナットと螺合させることで、支持部材13a、13bの係止板14a、14bに対する上下方向の位置を適宜変更し、連結部材4a、4bに対する下部走行輪3a、3bの上下方向位置を適宜変更することができる。
【0029】
このように、下部走行輪3a、3bは連結部材4a、4bに対して上下方向位置を変更可能に取り付けられており、施工対象とする段差部の高さが変わった場合でも、それに合わせて、上部走行輪2a、2bの接地面Raと、下部走行輪3a、3bの接地面Rcとの相対的な高さの差を調整し、連結部材4a、4bを水平状態に保つことができるので極めて便利である。
【0030】
図4~
図6は、ロール支持体7の支持機構の動作の説明図である。
図4は、
図1に示した状態から、上部係止部材5a、5b及び下部係止部材6a、6bとロール支持体7とを一時固定しているボルトVとナットの螺合を緩めて、ロール支持体7を下部走行輪3a、3bの方向に水平に移動させた状態を示している。
図5は、同様にボルトVとナットとの螺合を緩めて、
図1に示した状態から、ロール支持体7を斜め上方に移動させた状態を示している。
図6は、同様にボルトVとナットとの螺合を緩めて、
図1に示した状態から、ロール支持体7の垂直面に対する角度を変えた状態を示している。なお、
図5には、下部走行輪3aの高さ方向位置を変えた状態も併せて示してある。
【0031】
このように、ロール支持体7の支持機構を構成している上部係止部材5a、5b及び下部係止部材6a、6bとロール支持体7の側板7sa、7sbとは、それぞれに設けられた長孔hにボルトVを挿入し、ナットと螺合させて互いを係止、一時固定しているだけなので、ボルトとナットの螺合を緩めることによって、互いに設けられている長孔hに沿って相対的に移動可能であり、高さ方向位置、水平方向位置、及びロール支持面7fの垂直面に対する角度位置を変更することが可能である。
【0032】
本発明に係るテープ貼り付け機1が、このような支持機構を備えている場合には、テープ状の舗装用材料を貼り付ける段差部の段差の高さや、貼り付けるテープ状の舗装材料の幅が変化しても、それに合わせて、ロール支持面7fの角度、ロール支持面7fと段差部側面Dbとの距離、ロール支持面7fの下端と段差部底面Dcとの距離、さらには案内ロール9の位置などを、テープの貼り付けに最適な値に調節することができるという利点が得られる。そして、先に述べた下部走行輪3a、3bを連結部材4a、4bに対して相対的に上下方向に移動させる機構と併せることで、段差の高さの異なる様々な現場にも、より一層スムースに対応できるという優れた利点が得られる。なお、案内ローラ9は、その下面が段差部の上部角部(段差上面Daと段差側面Dbとが出会う稜線部分)と接する位置に調整するのが望ましい。
【0033】
また、上部係止部材5a、5b、下部係止部材6a、6b、及びロール支持体7の側板7sa、7sbのそれぞれに設けられている長孔hに沿って、段差部の高さ及び/又は使用するテープ状の舗装用材料の幅に対応して、それぞれ最適位置を示す適宜の目盛り若しくは印を付しておく場合には、その都度、ロール支持面7fの角度や位置を調節する必要がなく、上部係止部材5a、5b及び/又は下部係止部材6a、6bに付されている目盛り若しくは印で示された位置に、ロール支持体7の側板7sa及び7sbに付されている目盛り若しくは印を合わせるだけで、簡単に最適位置へと移動させることができるという利点が得られる。
【0034】
なお、施工対象として想定される段差部の段差の高さがそれほど変化しない場合には、前記支持機構は、高さ方向位置、水平方向位置、及びロール支持面7fの垂直面に対する角度位置の全てを変更可能にロール支持体7を支持する必要はなく、それらの内のいずれか1つ又は2つを可変にロール支持体7を支持する機構であっても良い。また、施工対象とする段差部の段差の高さに応じて、予めロール支持体7の高さ方向位置、水平方向位置、及びロール支持面7fの垂直面に対する角度、さらには上部走行輪2a、2bの接地面Raと下部走行輪3a、3bの接地面Rcとの相対的な高さの差がセットされたテープ貼り付け機1を複数台用意しておいて、施工現場の状況に合わせて、適宜選択使用するようにしても良い。
【0035】
図7は、
図2の平面図に示した抑え部材12とその周辺部分だけを取り出し、拡大して示す部分拡大平面図である。
図7において、12sは垂直な押圧面、12bは斜め押圧面、12cは取り付け部材である。Dbは段差部の側面であり、前述したとおり、使用時、本発明のテープ貼り付け機1は、抑え部材12の垂直な押圧面12sが、段差部側面と当接する位置にセットされ、段差部に沿って走行する。
図7に示すとおり、抑え部材12は、垂直な押圧面12sと斜め下方を向いた斜め押圧面12bとを有している。
【0036】
図8(a)は
図7の右側面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のX-X’断面図である。
図8(a)に見られるとおり、抑え部材12の取り付け部材12cには、縦方向に取り付け用の長孔hが設けられている。一方、スペーサSには、複数の取り付け孔Shが形成されている。ボルトVを、取り付け部材12cの長孔hを通して、取り付け孔Shに挿入して、取り付け孔Shに設けられているネジ部材と螺合させることによって、抑え部材12をスペーサSに対して取り付けることができる。
【0037】
長孔hには縦方向に長さがあり、また、スペーサSには、走行方向前後に沿って複数の取り付け孔Shが設けられているので、抑え部材12のスペーサSに対する走行方向前後方向位置、上下方向位置、及びボルトVの回りの回転角度、すなわち、水平面に対する角度を適宜変更することができる。長孔hを有する取り付け部材12c、複数の取り付け孔Shを有するスペーサS、及びボルトVと図示しないネジ部材とが、抑え部材12を、走行方向前後方向位置、上下方向位置、及び/又は水平面に対する角度を変更可能に支持する抑え部材支持機構を構成している。また、ボルトVの取り付け孔Sh内への螺合深さを変えることによって、抑え部材12の走行方向と直交する水平方向位置を調整することも可能である。さらには、複数の取り付け孔Shに代えて、長孔hと同様の長孔をスペーサSに設けてもよい。その場合には、ボルトVを、取り付け部材12cの長孔hを通して、スペーサSに設けられている長孔に挿入して、長孔裏側に位置するネジ部材と螺合させることによって、抑え部材12のスペーサSに対する取り付け位置を、走行方向前後方向に連続的に変化させることが可能となるので便利である。
【0038】
このような抑え部材12の支持機構が設けられている場合には、抑え部材12の位置や角度を調整して、テープ状の舗装用材料の貼り付けをより確実に連続して行うことができるという利点が得られる。
【0039】
図8(b)の断面図に見られるとおり、抑え部材12は、垂直な押圧面12sに加えて、斜め下方を向いた斜め押圧面12bを有している。垂直な押圧面12sは、自身と段差部の側面Dbとの間にテープ状の舗装用材料を挟み込み、側面Dbに対して押圧することで、テープ状の舗装用材料の幅方向上部を段差部の側面Dbに貼り付けるのに有効に機能する。一方、斜め下方を向いた斜め押圧面12bは、垂直な押圧面12sと側面Dbとの間に挟み込まれなかったテープ状の舗装用材料の幅方向の下方部分を、側面Dbに押し付けることなく緩く規制して、斜め下方を向くように案内することで、貼り付け途上にあるテープ状の舗装用材料に無用な力が加わるのを防止し、貼り付けが安定して行われることに寄与するものである。
【0040】
垂直な押圧面12sと斜め押圧面12bとの間の角度βは、斜め押圧面12bによるテープ状の舗装用材料の規制が緩やかとなるように鈍角とするのが好ましく、110度以上160度以下がより好ましく、130度以上140度以下がさらに好ましい。
【0041】
また、テープ状の舗装用材料の幅方向の上部を、ゆっくりと段差部の側面Dbに押し付け、貼り付けるため、垂直な押圧面12sの上下方向の長さは、押圧部材12の先端部(走行方向先端部)において短く、徐々に長くなるのが好ましい。また、押圧面12sの先端部は、段差部の側面Dbとの間にテープ状の舗装用材料を挟み込み易くするために、下部走行輪3a、3bの方向にややカーブした水平断面形状を有しているのが良い。
【0042】
一方、斜め押圧面12bの幅方向の長さは、垂直な押圧面12sとは逆に、押圧部材12の先端部(走行方向先端部)において長く、徐々に短くなるのが好ましい。また、その先端部は、直ちに最大幅となるのではなく、緩いカーブを描いて最大幅となった後、徐々に短くなっていくのが良い。
【0043】
さらに、垂直な押圧面12s及び斜め押圧面12bの先端部は、テープ状の舗装用材料と最初に接する部分であるので、滑らかな形状であるのが好ましい。特に、テープ状の舗装用材料が片面に剥離紙を有する場合でも、その剥離紙と当接して剥離紙を損傷することがないように、先端部のエッジ部分を滑らかに加工しておくのが望ましい。
【0044】
なお、以上の説明では、テープ貼り付け機1は、走行方向前方に向かって右側に上部走行輪2a、2bが位置し、左側に下部走行輪3a、3bが位置しているが、この配置は逆であっても良い。その場合、他の部材の位置関係や向きもそれに合わせて変更されることは勿論である。
【0045】
以下、本発明に係るテープ貼り付け機の動作について説明する。
【0046】
図9は、本発明に係るテープ貼り付け機1にテープ状の舗装用材料のロールをセットした状態を示す平面図である。テープ貼り付け機1は、上部走行輪2a、2bを施工対象である段差部の上面Daに接地させ、下部走行輪3a、3bを段差部の底面Dcに接地させた状態にある。15は、ロール支持体7に取り付けられている操作棒受、16は、その先端を操作棒受の内部に挿入してテープ貼り付け機1を走行させる操作棒である。操作棒受15は、先に説明したテープ貼り付け機1においても装備されているものであるが、便宜上、図示や説明を省略したものである。
【0047】
Rは、舗装用材料をロール状に巻回したロールであり、ロールRは、その中心間隙にロール支持軸8を挿入し、下側片面をロール支持面7fに当接させた状態で、ロール支持体7に支持されている。
【0048】
ロールRに巻回されているテープ状の舗装用材料は、ロールRから繰り出され、案内ローラ9の下側をくぐって、抑え部材12の垂直な押圧面12sと段差部の側面Dbとの間に挟み込まれ、その先端が抑え部材12の走行方向後端よりも後方に達している。Tは、テープ状に成形されている舗装用材料であり、Hは、舗装用材料Tの片面を覆っている剥離紙である。
【0049】
この状態で、作業者は、操作棒16を操作棒受15に挿入し、操作棒16に力を加えて、図中矢印で示す走行方向にテープ貼り付け機1を走行させればよい。テープ貼り付け機1の走行に伴ってロールRから次々と繰り出されるテープ状の舗装用材料Tは、案内ローラ9の下をくぐるときに、案内ローラ9の下面と段差部の上部角部との間に挟み込まれ、その幅方向の上端部を段差部側面Dbの上部に押圧、貼着される。そして、この状態で、次には、抑え部材12の垂直な押圧面12sと側面Dbとの間に挟み込まれ、確実に段差部の側面Dbに貼着されることになる。同時に、テープ状の舗装用材料の幅方向の下方部分は、斜め押圧面12bによって、緩やかに下方へと押し下げられ、抑え部材12の部分を通過した段階で、自重によってゆっくりと段差部の底面Dc上に落ち着くことになる。
【0050】
テープ状の舗装用材料Tの剥離紙H部分は、抑え部材12の垂直な押圧面12s及び斜め押圧面12bと接触するが、垂直な押圧面12s及び斜め押圧面12bの先端部は滑らかに仕上げられているので、剥離紙Hが接触によって損傷を受けたり、破れたりする恐れがない。
【0051】
また、段差部の側面Dbと接触する案内輪10の走行方向前方には、緩衝部材11が設けられているので、側面Dbに凹凸がある場合でも、凹凸は、緩衝部材11の滑らかにカーブしている先端部と接触し、衝撃が緩和された後で、案内輪10と接触することになる。したがって、側面Dbに存在する凹凸によって、案内輪10が跳ね、テープ貼り付け機1全体が側面Dbから離れる方向に飛ばされたりすることがない。
【0052】
さらに、下部走行輪3a、3bの進行方向L3’が、上部走行輪2a、2bの走行方向L2と厳密に平行ではなく、角度αだけ、上部走行輪2a、2bの方向を向くように下部走行輪3a、3bが配置されているので、テープ貼り付け機1を走行させると、テープ貼り付け機1には、常に、上部走行輪2a、2bの側に、換言すれば、段差部の側面Dbの方向に向かう力が加わり、テープ貼り付け機1を安定して段差部に沿って走行させることができる。
【0053】
以上のようにして、テープ状の舗装用材料Tを段差部の入り隅を挟んだ側面Dbと底面Dcとをカバーする位置に張り付けた後、剥離紙Hを剥がせば良い。
【0054】
本発明に係るテープ貼り付け機1によれば、施工対象である段差部に沿って、テープ貼り付け機1を走行させるという、極めて簡単な作業によって、テープ状の舗装用材料を段差部の入り隅を挟んだ側面と底面とをカバーする位置に、連続的、かつ確実に貼り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るテープ貼り付け機によれば、テープ状の舗装用材料を効率良く、かつ、作業者が腰を屈めることなく段差部の入り隅を挟んだ底面及び側面からなる断面L字型の施工面に押圧、貼着することができる。本発明は、舗装現場での作業の効率化並びに労力の軽減化に資すること多大であり、その産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0056】
1 テープ貼り付け機
2a、2b 上部走行輪
3a、3b 下部走行輪
4a、4b 連結部材
5a、5b 上部係止部材
6a、6b 下部係止部材
7 ロール支持体
7f ロール支持面
8 ロール支持軸
9 案内ローラ
10 案内輪
11 緩衝部材
12 抑え部材
15 操作棒受
16、23 操作棒
Da 段差部上面
Db 段差部側面
Dc 段差部底面
h 長孔
H 剥離紙
Ra 上部走行輪の接地面
Rc 下部走行輪の接地面
R 舗装用材料のロール
T 舗装用材料
V ボルト