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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059547
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】メンタル改善支援装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/70 20180101AFI20220406BHJP
【FI】
G16H20/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020175655
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】520496235
【氏名又は名称】株式会社World Life Mapping
(74)【代理人】
【識別番号】100217629
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰洋
(72)【発明者】
【氏名】下田 彬
(72)【発明者】
【氏名】ガニエ マーク智也
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】対象者の気付いていないものを含めた悩みの原因を特定し、最適なアドバイスを提供する。
【解決手段】対象者に質問、または計測を行い、その回答や結果から、対象者の過去から現在に至るまでの体験といった実情モデルを構築し、そこから悩みの原因といった精神状態モデルを構築、それに合わせてアドバイスパッケージを提示し、質問への回答やアドバイスパッケージへの満足度効果度といったフィードバックから、モデル構築及びアドバイスパッケージ特定を最適化するメンタル改善支援装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去から現在に至る対象者の体験である実情モデル要素情報や、人間の感情や考え方に影響を与える思考方法の偏向性といった悩み原因を現実的で柔軟に変化させて認知の歪みを修正し悩みを解決解消、または幸福度を向上するためのアドバイスパッケージ情報が、当該悩み,悩み原因を含む精神状態モデル要素または実情モデル要素ごとに分類され、もしくはそれらを重み情報付きの属性として持ちつつ蓄積された情報蓄積部と、
対象者から得られる本人の実情を確認するための質問群に対する回答結果、または本人の実情を確認するための計測を行った結果を分析し実情モデルを構築する実情モデル構築部と、
前記実情モデル構築部による分析結果及び実情モデルに基づいて、当該対象者の現在の悩みやその悩みや実情モデルから推定された悩み原因といった精神状態モデル要素からなる精神状態モデルを構築する精神状態モデル構築部と、
前記精神状態モデル構築部により構築された前記精神状態モデルに基づいて、前記精神状態モデル要素及び、前記実情モデル構築部で得られた実情モデルの構成要素である前記実情モデル要素と、前記情報蓄積部に蓄積されているアドバイスパッケージの属性である前記精神状態モデル要素並びに、前記実情モデル要素との適合度(マッチング)に基づく評価スコアを算出し、それに基づいてスコアの高いものから対象者に提示するアドバイスパッケージを複数選出するアドバイスパッケージ特定部と、
前記アドバイスパッケージ特定部において選出されたアドバイスパッケージをその前記評価スコアの高い順に前記対象者に提示する情報提示部と
を備えることを特徴とするメンタル改善支援装置。
【請求項2】
前記情報提示部により提示した前記アドバイスパッケージ情報のうち、前記対象者にとって精神状態のプラス回復(悩み解消or満足度)につながるアドバイスパッケージ情報に関連付けて、当該プラス回復の度合いに応じて重み係数を調整した信頼度パラメータを生成する信頼フィードバック生成部を備え、
前記アドバイスパッケージ特定部は、前記パラメータ生成部により生成された前記信頼度パラメータに基づいて、前記精神状態モデル要素及び実情モデル要素に対応する前記評価スコアまたは評価スコア算出時の各要素に対応する属性の重み情報を変更し、
前記情報提示部は、前記悩み及び悩み原因並びに前記実情モデル要素と当該精神状態モデル要素及び実情モデル要素に対応する前記信頼度パラメータが関連付けられた前記アドバイスパッケージ情報を更新して前記情報蓄積部に記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項3】
前記実情モデル構築部において、実情モデル構築を行う際に必要だが、まだ得られていない情報を取得するために、質問をし回答を得るまたは計測をし結果を得、それら回答または結果により対象者に当てはまる実情モデル要素を特定し、対象者の実情モデルに追加または書き換える
前記精神状態モデル構築部において、精神状態モデル構築を行う際に必要だが、まだ得られていない実情モデル要素を取得するために、質問をし回答を得るまたは計測をし結果を得、それら回答または結果により対象者に当てはまる実情モデル要素を特定し、対象者の実情モデルに追加または書き換える
前記アドバイスパッケージ特定部において、アドバイスパッケージ特定を行う際に必要だが、まだ得られていない実情モデル要素及び精神状態モデル要素を取得するために、質問をし回答を得るまたは計測をし結果を得、それら回答または結果により対象者に当てはまる実情モデル要素及び精神状態モデル要素を特定し、対象者の実情モデル、精神状態モデルに追加または書き換える
ある実情モデル要素、精神モデル要素、アドバイスパッケージを確定するために、前記実情モデル構築部、精神状態モデル構築部、アドバイスパッケージ特定部にて、質問をし回答を得るまたは計測をし結果を得、それら回答または結果により、当該実情モデル要素、精神モデル要素、アドバイスパッケージを確定させる
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項4】
前記実情モデル構築部において、構築された実情モデルは現実世界モデル及び精神構造モデルからなる
実情モデル要素のうち、現実世界モデルに属するものは現実世界モデル要素であり、精神構造モデルに属するものは精神構造モデル要素である
現実世界モデル要素は生活環境、周囲環境、人生経験、人間関係、仕事状況、生理情報といったものからなり、
精神構造モデル要素は人間の精神構造、特有の思考方法や偏向性といったものからなる
現実世界モデル要素及び精神構造モデル要素は、現実世界モデル要素情報及び精神構造モデル要素情報として、前記情報蓄積部に蓄積されている
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項5】
前記精神状態モデル構築部において、構築された精神状態モデルは精神状態モデル要素からなり、精神状態モデル要素は悩み及び悩み原因からなる
悩みは人間関係における悩み、仕事における悩み、恋愛における悩みといったものからなり、
悩み原因はある悩みを持たせる原因となった、思考方法の偏りや現実世界の組み合わせといったものからなる。
悩み及び悩み原因は、悩み情報及び悩み原因情報として、前記情報蓄積部に蓄積されている
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項6】
前記実情モデル構築部及び情報蓄積部において、
質問における回答及び計測における結果により、それら回答及び結果そのものが対象者の実情モデル要素として対象者の実情モデルを構築する場合があり
実情モデル要素情報は、特定の質問の回答及び計測結果を重み情報付きの属性として持ち、
質問における回答及び計測における結果と実情モデル要素の属性である特定の回答及び計測結果との適合度(マッチング)に基づく評価スコアを算出し、それに基づいて実情モデル要素を特定し、対象者の実情モデルに追加または書き換える場合がある
この時、ある実情モデル要素を特定するために必要な、その実情モデル要素の属性である質問または計測の回答または結果を得るために、質問及び計測を行い、それら結果により、前記評価スコアが変化し、よりある実情モデル要素のスコアが他に比べて高くなり実情モデル要素の特定が進む場合がある
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項7】
前記精神構造モデル構築部及び情報蓄積部において、
悩み情報は、特定の実情モデル要素を重み情報付きの属性として持ち、
対象者の実情モデルを構成する実情モデル要素と悩みの属性である当該実情モデル要素との適合度(マッチング)に基づく評価スコアを算出し、それに基づいてスコアの高いものから悩みを特定し、対象者の悩みに追加または書き換える
この時、ある悩みを特定するために必要な、その悩みの属性である実情モデル要素を得るために、質問及び計測を行い、それら結果により、前記評価スコアが変化し、よりある悩みのスコアが他に比べて高くなり悩みの特定が進む場合がある
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項8】
前記精神構造モデル構築部及び情報蓄積部において、
悩み原因情報は、特定の悩み及び実情モデル要素を重み情報付きの属性として持ち、
対象者の悩み及び実情モデルを構成する実情モデル要素と、悩み原因の属性である当該悩み及び実情モデル要素との適合度(マッチング)に基づく評価スコアを算出し、それに基づいてスコアの高いものから悩み原因を特定し、対象者の悩み原因に追加または書き換える
この時、ある悩み原因を特定するために必要な、その悩み原因の属性である悩み及び実情モデル要素を得るために、質問及び計測を行い、それら結果により、前記評価スコアが変化し、よりある悩みのスコアが他に比べて高くなり悩み原因の特定が進む
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項9】
前記アドバイスパッケージ特定部及び情報蓄積部において、
あるアドバイスパッケージを特定するために必要な、そのアドバイスパッケージの属性である精神構造モデル要素及び実情モデル要素を得るために、質問及び計測を行い、それら結果により、前記評価スコアが変化し、よりあるアドバイスパッケージのスコアが他に比べて高くなりアドバイスパッケージの特定が進む
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項10】
前記実情モデル構築部、前記精神構造モデル構築部、前記アドバイスパッケージ特定部において
ある質問または計測において、回答または結果が得られた時、その回答または結果に応じて、
その質問または計測の関連する、ある実情モデル要素情報、精神構造モデル要素情報、アドバイスパッケージ情報の属性の重み情報が変化する
または、その質問または計測の関連する、ある実情モデル要素情報、精神構造モデル要素情報、アドバイスパッケージ情報が特定される
または、その質問または計測の関連する、ある実情モデル要素情報、精神構造モデル要素情報、アドバイスパッケージ情報そのものが書き換えられる
ことによって機械学習される
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項11】
前記実情モデル構築部、前記精神構造モデル構築部、前記アドバイスパッケージ特定部、前記信頼フィードバック生成部において
信頼フィードバック生成部において生成された信頼度パラメータに応じて、
その質問または計測の関連する、ある実情モデル要素情報、精神構造モデル要素情報、アドバイスパッケージ情報の属性の重み情報が変化する
または、その質問または計測の関連する、ある実情モデル要素情報、精神構造モデル要素情報、アドバイスパッケージ情報が特定される
または、その質問または計測の関連する、ある実情モデル要素情報、精神構造モデル要素情報、アドバイスパッケージ情報そのものが書き換えられる
ことによって機械学習される
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項12】
請求項1に記載のメンタル改善装置は、
ユーザー個人毎にアカウントを持ち、それらは統一サーバーにおいて管理されている
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項13】
前記実情モデル構築部、前記精神構造モデル構築部、前記アドバイスパッケージ特定部、前記信頼フィードバック生成部において、
請求項2、10、11記載の機械学習は
ユーザー個人のアカウント内でのみ機械学習がなされる場合と
全ユーザーのアカウントにおいて共通して機械学習がなされる場合と
あるユーザーにおける機械学習が、そのユーザーに近い実情モデル、精神状態モデルを持つ他ユーザー群のアカウントに反映される場合とがある
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項14】
前記実情モデル構築部、前記精神構造モデル構築部、前記アドバイスパッケージ特定部、前記信頼フィードバック生成部において、
あるユーザーの実情モデル要素、精神状態モデル要素と別ユーザーの実情モデル要素、精神状態モデル要素との適合度(マッチング)に基づく評価スコアを算出し
それをユーザー間類似度として保持する。
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項15】
前記実情モデル構築部、前記精神構造モデル構築部、前記アドバイスパッケージ特定部、前記信頼フィードバック生成部において、
あるユーザーと別のあるユーザーのユーザー間類似度が一定値以上に高い場合、
あるユーザーにおける機械学習が、別のそのユーザーのアカウントに反映される
場合がある
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項16】
前記実情モデル構築部、前記精神構造モデル構築部、前記アドバイスパッケージ特定部、前記信頼フィードバック生成部、前記情報蓄積部において、
質問とそれへの回答、計測と結果により、実情モデル要素や精神構造モデル要素が特定されていくが、その時情報蓄積部には、それら要素が特定された絶対時間情報や特定された時の本支援装置使用回数が蓄積される。
蓄積された絶対時間及び使用回数とある時刻での絶対時間や使用回数の比較によって、一部の実情モデル要素や精神状態モデル要素は変化したり消滅したりする。
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項17】
前記精神状態モデル構築部において、
質問とそれへの回答、計測とその結果を複数得ることで、実情モデル要素または精神状態モデル要素を多数得ていく、
それらを多数得れば得るほど、特定の精神状態モデル要素の評価値は他の精神状態モデル要素に比べ上がっていく。
それと合わせて、精神状態モデル要素は、木構造のカテゴリ属性情報を持つことがあり、木構造のカテゴリ属性情報は、より広いカテゴリから、より詳細なカテゴリとなるように構築されている。
カテゴリ属性は、特定の質問に回答を得ることで、より詳細なカテゴリへと絞られていく。
カテゴリがより詳細なカテゴリへ絞られると、特定の精神状態モデル要素の評価値は他の精神状態モデル要素に比べ更に上がっていく。
精神状態モデル要素の評価値、並びにあるカテゴリ以下の精神状態モデル要素の評価値により算出された数値が一定値を超えた時、その精神状態モデル要素に対象が直面しているかの真偽を問うまたは特定のカテゴリに対象が直面している精神状態モデル要素が入っていることを確定させる質問である確定質問、を提示することがある。
ある精神状態モデル要素に対象が直面しているかの真偽を問う質問において、真を選んだ場合、精神状態モデル要素が特定されたとなる。
偽が選ばれた場合、その特定の精神状態モデル要素の評価値が下げられ、更に質問をし、回答を得ることで、その特定の精神状態モデル要素以外の一部の精神状態モデル要素の評価値が更に上がる。
カテゴリの木構造は、そこを辿る形で質問と回答を得ることを繰り返すことで、特定の精神状態モデル要素に必ず行き着く構造を持つ場合もある。
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項18】
前記精神状態モデル構築部において、
木構造のカテゴリ属性を質問に回答得ることで、詳細なカテゴリへと絞られる時、
質問に対する回答の選択肢はそれぞれ1段階詳細なカテゴリとなっている場合がある。
その時、1段階詳細なカテゴリが複数質問に対する選択肢として提示されるが、
その提示順番は、それぞれの選択肢に該当する詳細なカテゴリ以下に存在する精神状態モデル要素の推定値の平均もしくは合計、その他計算式によって得られるカテゴリ推定値によって決められる。
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項19】
前記精神状態モデル構築部において、
木構造のカテゴリを辿る質問において、確定質問を行うかどうかは、その質問に関連するカテゴリ推定値または精神状態モデル要素の推定値が一定の確定質問値を超えたかどうかで決定される。
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【請求項20】
前記精神状態モデル構築部において、
確定質問値は、対象者の信用懐疑スコアによって決められる。
対象者の信用懐疑スコアは、対象者の精神構造モデルの特定の実情モデル要素、本装置の使用回数、確定質問の偽の回数、真の回数に特定の重みがつけられ、四則演算されることで決定されるスコアである。
また、確定質問値を超えた確定質問が複数あった場合は、より木構造で詳細な方に属する確定質問が優先的に提示される、または各確定質問は信用懐疑スコアに関する属性を持っており、その属性に応じてどの確定質問が提示されるかが決定される。
ことを特徴とする請求項1に記載のメンタル改善支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンタル改善支援装置、メンタル改善支援システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には認知の歪みと気分に焦点を当てて、共通するキーワードを抽出して分析し、その結果をフィードバックして、次のアドバイスを行うのがカウンセラーである。この一連の作業をアルゴリズム化してアプリ化することにより自動化する。認知の歪みという質的データの共通キーワードを分類して、その数値変化をフィードバックすることでカウンセリングする。また、目的別の実施項目を推奨するとともに、数値で結果が現れ、効果が出やすいためモチベーションが向上し継続性が向上して認知行動療法を支援するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-146705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のシステムは認知の歪みと気分に焦点を当てて、キーワードを分析し、その結果をフィードバックして、次のアドバイスを行うのがカウンセリングとある。しかしこれは、心理カウンセラーのカウンセリングの中の一部である認知行動療法の部分に限定される。対象者の認知の歪みや気分だけでなく、その対象者の過去や人間関係、生活環境、ホルモンバランスや交感神経副交感神経といった生理状況にも、対象者の精神状態の悪化の原因がある。対象者の認知の歪みの修正も対象者の精神状態の改善に有効だが、対象者の状況によっては、具体的な行動指針のアドバイスや生活習慣のアドバイスをする、対象者の将来を予測し伝えてあげるといった他行為が、認知行動療法のアプローチよりも適していることもある。心理カウンセラーの行えることだけでなく、キャリアカウンセラー、生活習慣カウンセラー、仕事習慣カウンセラー等の人間であれば分業されていることを、統合し、対象者の精神状態悪化の原因を多面的に分析し、多面的に特定、そしてそれに合わせて、認知行動療法、行動指針の提示、他者の事例の提示などの手法から、最適なものを選択し、実行する必要がある。
また、学説や既存の人間のカウンセラーのノウハウから分かる既知の因果をシステムに落とした場合、学説や人間のカウンセラーが間違っていた場合、本目的を達成できない。故に独自の因果をシステムにおいて作り上げていく必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、対象者を取り巻く外環境や外的要因と対象者の思考傾向、精神構造といった多様な因子を取り込み、そこから対象者の実態を把握するためにモデルを作成、そのモデルに合わせて、アドバイスパッケージを実行する。
多様な情報因子を取り込み、それをメンタル状態悪化の原因特定に用い、そこに合わせてアドバイスパッケージを提示するまでの、データ処理、生成手法と工夫が本発明の特徴的な手段と言える。
また、そのモデル作成、そしてそれに合わせたアドバイスパッケージ実行において、機械学習をはさみ、最適化を行う。
また、モデル作成、アドバイスパッケージ実行に至るまでの質問提示や計測において対象者のストレスを軽減し、対象者に信用、信頼してもらうべく、対象者の精神構造モデルに合わせて、質問提示方法や計測方法を最適化する。
【発明の効果】
【0006】
認知の歪みや気分といった限られた対象者の情報だけでなく、多面的な対象者の情報から、メンタル状態悪化の原因を探ることにより、認知の歪み以外の原因も特定でき、認知行動療法だけでない様々な手法からメンタル状態改善の策を実行できる。
また、機械学習によるメンタル状態悪化の原因特定の最適化により、現状の学説や人間のカウンセラーのノウハウにて分かっていなかった因果を見つけ、上記目標のために利用できる。
対象者の精神状態から、本システムの対象者への働きかけも変更させるため、
対象者の本システムへの信頼が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】質問をし、回答を得て、実情モデルを構築する流れの図である。
図2】アドバイス提示までのフローの図である。
図3】実情モデル構築、精神状態モデル構築、アドバイスパッケージのフローの図である。
図4】悩み原因特定に至る評価スコア算出の図である。
図5】追加質問により、必要な実情モデル要素を取得する図である。
図6】追加質問により、必要な実情モデル要素を取得し、悩み原因特定を進める図である。
図7】確定質問の提示例の図である。
図8】選択質問の提示例の図である。
図9】木構造分類された悩み、悩み原因の特定フローの図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実情モデル構築の流れ>
図1に記載されているように、質問回答及び計測結果に応じて、実情モデル要素情報群から実情モデル要素が特定され、それが対象者の実情モデルに蓄積される。
実情モデルは、対象者の性格傾向、思考の偏向性、生きる理由となっている事柄等からなる精神構造モデル及び生活環境、周囲環境、人生経験、人間関係、仕事状況、生理情報などからなる現実世界モデルを含む。
【0009】
<対象者の悩み原因特定及びそれに対するアドバイスパッケージ情報の提示>
情報蓄積部に蓄積されている悩み情報群、悩み原因情報群、及びアドバイスパッケージ情報群には、対象者の実情モデル要素との適合度、悩み、悩み原因に基づく評価スコア(評価スコア)を算出するための重み係数が含まれる。評価スコアは、例えば対象者の実情モデル及び精神状態モデルと、悩み情報群及び悩み原因情報群及びアドバイスパッケージ情報群の重み係数との間の重み付き和により算出される。その例が図4に記載されている。
【0010】
これにより、対象者の実情モデルをもとに、対象者の抱えている悩み及びその悩み原因と対応する悩み情報群及び悩み原因情報群、並びに対象者の実情モデルに即した内容のアドバイスパッケージ情報群を前記評価スコアの高いものから推定することができる。
【0011】
前記評価スコアが高い悩み情報群、悩み原因情報群及びアドバイスパッケージ情報群から、対象者の抱えている悩み及びその悩み原因と対応する悩み情報群及び悩み原因情報群、並びに対象者の実情モデル要素に即した内容のアドバイスパッケージ情報群の候補を絞り込むまたは特定するために、対象者に対して質問の提示を行い、それに対する対象者の回答情報を取得する。
【0012】
対象者に対して提示する質問は、例えば対応する悩み情報群及び悩み原因情報群を絞り込むために選択肢を提示する質問(選択質問)や、推定された悩み情報が対象者の悩みと合致するかを確認する質問(確定質問)を含み、例えばそれぞれ情報提示部より図7、8に記載されているように提示される。
【0013】
また、対象者の悩みに対応する悩み情報群の特定の際には、対象者が言語化できないような潜在意識における悩みの原因を特定する質問を提示する場合がある。
【0014】
上記処理により、対象者の抱える悩み及び潜在意識に対応する悩み情報及び悩み原因情報を特定し、その悩み情報及び悩み原因情報に対応するように絞り込まれたアドバイスパッケージ情報群から、前記評価スコアの高いアドバイスパッケージ情報を選択し、情報提示部より対象者に提示するステップを実行する。この様が図3に記載されている。
【0015】
<フィードバック>
前記質問の提示とそれに対する対象者の回答、及び提示したアドバイスパッケージ情報に対する対象者のフィードバックデータをもとに、対象者の実情モデル及び精神状態モデルの推定、提示すべきアドバイスパッケージ情報の推定をする各推定器や、その内容に対するフィードバックを行う。
【0016】
これにより、例えば対象者の悩みの推定及び悩みの原因推定が適切に行われているか、あるいは対象者に適切なアドバイスパッケージ情報を提示できているかを評価することができ、その評価情報をもとに各推定器の精度を向上、およびアドバイスパッケージ情報の内容の向上をすることができる。
【0017】
フィードバックは、各推定器のパラメータ(例えば重み係数)を、対象者のフィードバックデータより所定の更新式を用いて自動的に補正する場合(学習)と、対象者のフィードバックデータより本システムの構成要素(例えばアドバイスパッケージ情報の内容)を手動で書き換える場合(ブラッシュアップ)を含む。
【0018】
また、フィードバックは、対象者のフィードバックデータのみが反映される場合(個人フィードバック)と、対象者のフィードバックを含む、本システムの全ての利用者のフィードバックデータが反映される場合(他者共通フィードバック)を含む。
【0019】
<まだ得られていない情報の取得のためのQ&A>
本システムは、例えば対象者の悩みの特定、悩み原因の特定、提示すべきアドバイスパッケージ情報の特定をするとき、その特定において不足している対象者の実情モデル要素を抽出するための質問群を提示する。質問群に対する対象者の回答情報から、前記実情モデル及び精神状態モデルの更新を行う。
【0020】
ここで、「特定において不足している」とは、例えば対象者の悩み原因の特定の際に、情報蓄積部における悩み原因情報群と対象者の実情モデル要素及び精神状態モデル要素との間の適合度に基づく評価スコア(評価スコア)が、ある悩み原因情報についてのみ高い状態でなく、対象者の悩み原因に対応する悩み原因情報がそれであると確定できない場合を含む。
【0021】
対象者の実情モデル及び精神状態モデルの更新がされるたびに、情報蓄積部内の悩み情報、悩み原因情報、及びアドバイスパッケージ情報と対象者の悩み、悩み原因との間の評価スコアの算出において、例えば重み付き和のある項の値が変化し、結果として、それぞれの評価スコアが更新される。この様が図5に記載されている。
【0022】
これによって、質問群の提示に対する対象者の回答情報及び計測で得られた情報から、対象者の実情を逐次反映させながら対象者の悩み特定、悩み原因特定及び提示するアドバイスパッケージ情報の特定を進めることができ、対象者が本システムを利用するほど、対象者の実情が情報として蓄積され、より対象者の実情に即したアドバイスパッケージ情報の特定、あるいはより正確に対象者の悩みの推定、悩み原因の推定をすることができる。この様が図6に記載されている。
【0023】
また、この時対象者に対して提示する質問は、例えば対象者のある悩みを特定するときに、対応する悩み情報の候補から、最も悩み情報の特定につながる実情モデル要素を抽出する内容のものを選択する。「最も悩み情報の特定につながる実情モデル要素」とは例えば、対象者の実情モデルに含まれない実情モデル要素Aについて、悩み情報の候補の評価スコアがAにより大きく差がつくことがわかっているとき、この実情モデル要素Aが「最も悩み情報の特定につながる実情モデル要素」となる。
【0024】
これにより、対象者の悩み特定、及び悩み原因特定、及び提示すべきアドバイスパッケージ情報の特定にかかる時間及び手順の短縮をすることができる。
【0025】
<悩み情報群・アドバイスパッケージ情報群の絞り込み過程>
対象者に提示するアドバイスパッケージ情報の選択をするとき、まずは対象者の悩みを特定し(悩み特定ステップ)、その悩みの原因を特定する(悩み原因特定ステップ)。その後、その悩みの原因、及び対象者の実情モデル要素に即したアドバイスパッケージ情報を選択する(アドバイスパッケージ情報特定ステップ)。図2及び図3にこの過程が記載されている。
【0026】
対象者の抱える悩み及び悩みの原因、並びに情報蓄積部内の悩み情報及び悩み原因情報は一定の抽象度毎に階層構造を持ったカテゴリ(悩みカテゴリ)に分類される(図9に記載)。悩み特定ステップ、及び悩み原因特定ステップにおいて、抽象度の高い悩みカテゴリから、質問の提示とそれに対する対象者の回答をもとに、徐々に抽象度の低い具体的な悩みカテゴリへの分類を繰り返し、対象者の抱える悩み及び悩みの原因の候補を絞り込み、特定していく。
【0027】
悩み特定ステップ、及び悩み原因特定ステップにおいて、対象者に提示される質問は、対象者の抱える悩みのカテゴリをさらに一段階具体化したときの分類先を決定するための質問と選択肢を提示する選択質問と、対象者の実情モデル要素及び精神状態モデル要素から推定される対象者の悩みカテゴリについて、その推定が合っているかを確定させる確定質問を含む。
【0028】
選択質問は、例えばあるカテゴリの子カテゴリのリストを提示し、対象者が自分の悩みと合致すると思うものを1つ以上選択させるものを含む。
【0029】
確定質問は、前記評価スコアの高い悩み情報群及び悩み原因情報群から推定される対象者の悩み及び悩み原因のカテゴリが存在する場合、その推定が合っているかを確定するための質問と選択肢を提示する(例、「あなたの悩みは○○ですか?」 はい/いいえ)。
【0030】
悩み情報候補の評価スコアが高いことから、ある抽象度の悩みカテゴリへの分類及び分類候補が十分な確度で推定できるときは、その推定が合っているかどうかを確定する確定質問を提示する場合がある。
【0031】
確定質問に対して、対象者が、推定が正しいと回答した場合は絞り込みを実行する。推定が間違っていると回答した場合は、改めて候補の絞り込みを行うために前記選択質問を提示するか、再び別の確定質問の提示を行っても良い。
【0032】
確定質問の提示による悩み情報群の推定が正しい場合、本システムが対象者の実情を理解している、あるいは対象者の悩みを解消してくれると対象者に思わせることができ、結果として対象者のシステムに対する信用・信頼を大きく向上させることができる。
【0033】
各悩み情報には、それに対応したアドバイスパッケージ情報群が紐付けられている。上記処理により対象者の悩みに対応した悩み情報を特定したあと、それに対応したアドバイスパッケージ情報群のなかから、評価スコアの高いアドバイスパッケージ情報を選択し、対象者に提示する。
【0034】
確定質問により例えば抽象度の高い悩みカテゴリと、抽象度の低い悩みカテゴリへの分類及び分類候補が十分に推定できるときは、より抽象度の低い悩みカテゴリへの分類の推定を確定させる確定質問を優先的に対象者に提示するとよい。
【0035】
対象者の抱える悩みについて、より具体的な推定を言い当てることにより対象者の信頼度スコアを大きく向上させることができる。
【0036】
選択質問の、ある選択肢について、選択された場合の絞り込み先となる悩み情報群候補の評価スコアが低いことから、対象者の選択する可能性が低いと推定されたときは非表示にする場合がある。また、反対に対象者の選択する可能性が高いと推定された選択肢から降順に並べて提示する場合がある。また、選択質問において対象者の回答する可能性が高い選択肢がただひとつ存在し、他の選択肢を選択する可能性が低いと推定されたときは、自動的に絞り込みを行い、選択質問の提示を省略する場合がある。
【0037】
これら操作によって、対象者に対して必要以上に選択肢を提示することが回避されるとともに、対象者が自身の回答を複数の選択肢から探す手間を減らすことができるため、本システム使用時の対象者のストレスを軽減することができる。
【0038】
<信用値・懐疑値の推定及び学習について>
対象者の本システムに対する信頼を推定するために対象者の信用値・懐疑値の指標を導入する。
上記質問の提示を行う際にこれら指標を参照し、どのように質問を提示するかの判断材料とする。
【0039】
例えば、対象者の信用値が低い、あるいは懐疑値が高い場合には、前記確定質問を提示する頻度を抑え、反対に対象者の信用値が高い、あるいは懐疑値が低い場合には前記確定質問を提示する頻度を上げる、または抽象度の高い悩みカテゴリへ分類するための確定質問を提示するようにする場合がある。
【0040】
これにより、対象者のシステムの信用を維持または向上させつつ、質問や計測を行うことができる。
【0041】
対象者の信用値・懐疑値は上記質問の提示に対する対象者の回答をもとに増減する。このとき、信用値・懐疑値の増減量は対象者の精神構造モデル要素によって異なり、対象者の精神構造モデルが更新されるたびに、この変動量も更新される。さらに、対象者の本システムの使用回数及び使用時間に応じてこの変動量が変化させる場合がある。
【0042】
信用値・懐疑値の増減量は、例えば対象者の精神傾向情報の分類により決定されてもよい。
【0043】
これにより、対象者の精神傾向及び本システム利用時間に応じて推定される信頼度パラメータの変動を監視し、対象者のシステムに対する信用を低下させず、向上させるように本システムの振る舞いを変化させることができる。
【0044】
<その他>
実情モデル要素の一部である精神構造要素には例えばBIG5やAQと呼ばれる性格診断や自閉症スペクトラム指数の算出によって、性格傾向を質問回答から取得することがある。
【0045】
精神構造要素には対象者の生きる理由となっている、生きる軸なども含まれる。
【0046】
現実世界要素には、その日の気温などが含まれ、それによって、対象者の交感神経副交感神経の働きを特定し、実情モデルを構築することがある。
【0047】
悩み原因とは、例えば上の立場の人の指示には必ず従わなければいけないといった考え方の偏向性やその原因となった幼少期の原体験が含まれる。
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図9