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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059572
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】黒色石英ガラス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20220406BHJP
【FI】
C03B20/00 F
C03B20/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146783
(22)【出願日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2020166634
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390005083
【氏名又は名称】東ソ-・エスジ-エム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】国吉 実
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 学
【テーマコード(参考)】
4G014
【Fターム(参考)】
4G014AH00
(57)【要約】
【課題】遮光性に優れ、使用工程において汚染発生のおそれがなく、大型化しても色の均一性が十分であり、大型インゴットが作成可能な黒色石英ガラス、この黒色石英ガラスを、大型のインゴットであっても、優れた生産性で製造できる方法、上記黒色石英ガラスを用いて作製した製品を提供する。
【解決手段】Siを0.5~10質量%およびSiOを0.1~5質量%含有し、残部がSiO2であり、波長350nm~750nmにおけるSCE反射率が10%以下である黒色石英ガラス。(1)ヒュームドシリカ、または(2)ヒュームドシリカと合成シリカ粉末の混合粉末、または(3)ヒュームドシリカと合成シリカ粉末および球状シリカの混合粉末に0.5~10質量%のSi粉末および0.1~5質量%のSiO粉末を混合圧密して得た粉末を加圧成型し、加圧成型品を大気中で加熱して、ヒュームドシリカを焼結させること含む、黒色石英ガラスの製造方法。上記黒色石英ガラスを用いた黒色石英ガラス部材を含む製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siを0.5~10質量%およびSiOを0.1~5質量%含有し、残部がSiO2であるガラス(以下、石英ガラスと呼ぶ)であって、波長350nm~750nmにおけるSCE反射率が10%以下である、黒色石英ガラス。
【請求項2】
***表示系の明度L*が30以下、彩度a*の絶対値が3.5以下およびb*の絶対値が4以下である、請求項1に記載の黒色石英ガラス。
【請求項3】
Si元素以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下である、請求項1または2に記載の黒色石英ガラス。
【請求項4】
以下の(a)~(f)のいずれか1つ以上の物性を満足する、請求項1~3のいずれか1項に記載の黒色石英ガラス。
(a)密度が2.15/cm3以上2.3g/cm3以下である、
(b)温度500℃における比熱が1090J/kg・K以上、1130J/kg・K以下である、
(c)温度500℃における熱拡散率が7×10-72/s以上、8×10-72/s以下である、
(d)温度500℃における熱伝導率が、1.5W/mK以上、2.1W/mK以下である、
(e)30℃から600℃の範囲における熱膨張率が2×10-7/℃以上、12×10-7/℃以下である、
(f)波長200nm~3000nmにおける光透過率が厚さ1mmで0.5%以下である。
【請求項5】
石英ガラス中に含まれるSiの少なくとも一部が粒子状であり、粒子状物の径がD50で5~10μm、D10が1μm以上、D95が30μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の黒色石英ガラス。
【請求項6】
石英ガラス中に含まれるSiOの少なくとも一部が粒子状であり、粒子状物の径がD50で5~15μm、D10で1μm以上、D90で35μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の黒色石英ガラス。
【請求項7】
(a)SiO2の部分は、ヒュームドシリカの焼結体であるか、(b)SiO2の部分は、ヒュームドシリカが30~60質量%で、残部が粒径でD50が60~100μm、D10が40μm以上、D95が180μm以下である合成シリカ粉末の焼結体であるか、または(c)SiO2の部分は、ヒュームドシリカが30~60質量%、D50が5~15μm、D10が1μm以上、D95が70μm以下の球状シリカが5~25質量%で、残部が粒径でD50が60~100μm、D10が40μm以上、D95が180μm以下である合成シリカ粉末の焼結体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の黒色石英ガラス。
【請求項8】
(1)ヒュームドシリカに0.5~10質量%のSi粉末および0.1~5質量%のSiO粉末を混合圧密して得た粉末を加圧成型し、加圧成型品を大気中にて最高温度1200~1300℃で加熱して、ヒュームドシリカを焼結させて請求項1~6のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスまたは請求項7の(a)の黒色石英ガラスを得ることを含む、または
(2)ヒュームドシリカが30~60質量%で、残部が粒径でD50が60~100μm、D10が40μm以上、D95が180μm以下である合成シリカ粉末に、0.5~10質量%のSi粉末および0.1~5質量%のSiO粉末を混合圧密して得た粉末を加圧成型し、加圧成型品を大気中にて最高温度1250~1320℃で加熱して、焼結させて請求項1~6のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスまたは請求項7の(b)の黒色石英ガラスを得ることを含む、または
(3)ヒュームドシリカが30~60質量%、D50が5~15μm、D10が1μm以上、D95が70μm以下の球状シリカが5~25質量%で、残部が粒径でD50が60~100μm、D10が40μm以上、D95が180μm以下である合成シリカ粉末に、0.5~10質量%のSi粉末および0.1~5質量%のSiO粉末を混合圧密して得た粉末を加圧成型し、加圧成型品を大気中にて最高温度1250~1320℃で加熱して、焼結させて請求項1~6のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスまたは請求項7の(c)の黒色石英ガラスを得ることを含む、黒色石英ガラスの製造方法。
【請求項9】
ヒュームドシリカは、タップ嵩密度が0.03~0.08g/cm3、BET比表面積が50~100m2/g、OH基濃度が0.5~1.0質量%、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下のいずれか少なくとも1つを満足する、請求項8に記載の黒色石英ガラスの製造方法。
【請求項10】
Si粉末は、粒子径D50が5~10μm、D10が1μm以上、D95が30μm以下であり、且つSiO粉末は、粒子径D50が3~15μm、D10が1μm以上、D90が35μm以下である、請求項8または9に記載の黒色石英ガラスの製造方法。
【請求項11】
混合圧密は、混合圧密して得た粉末のタップ嵩密度が、ヒュームドシリカのタップ嵩密度の5~20倍となるように実施する、請求項8~10のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスの製造方法。
【請求項12】
大気中での加熱焼結の時間が0.5~5時間である、請求項8~11のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスの製造方法。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスを用いた黒色石英ガラス部材を含む製品。
【請求項14】
黒色石英ガラス部材が、光学部品、遮光部材または赤外線熱吸収/蓄熱部材である請求項13に記載の製品。
【請求項15】
光学部品が、分光セル、プロジェクターのリフレクター、または光ファイバーのコネクターであり、遮光部材が、半導体製造装置または赤外線加熱装置の遮光部材である、請求項14に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色石英ガラスと、その製造方法に関するものである。より詳しくは、本発明は、光学分析用の石英ガラスセル、半導体製造装置や赤外線加熱装置の遮光部材、赤外線熱吸収/蓄熱部材等に使用することができる黒色石英ガラスと、その黒色石英ガラスを効率よく得る製造方法に関するものである。さらには、本発明は、本発明の黒色石英ガラス製の製品に関する。
【背景技術】
【0002】
石英ガラスは、その紫外域から赤外域にわたる良好な光透過性や低熱膨張性、耐薬品性を生かして照明機器、光学機器部品、半導体工業用部材、理化学機器等の様々な用途に用いられている。その中で、石英ガラスに微量の遷移金属酸化物を添加した黒色ガラスは局所的な遮光が必要な部位に用いられ、透明石英ガラスと熱圧着等により接合するなどして、光学分析用の石英ガラスセル等、光学機器部品に利用されている。しかしながら近年、部品の微細化/薄型化が進んでおり従来の黒色ガラスでは遮光性が不足する場合が生じており、より遮光性が高く、透明石英ガラスと容易に接合できる黒色石英ガラスが求められている。
【0003】
また石英ガラスは高耐熱性、化学的高純度等の特長も有し、半導体製造用の治具などにも多く用いられている。しかしながら近年、半導体製造プロセスの熱処理工程において、加熱ロスが問題となっており、赤外光を用いた加熱プロセスにおいて、加熱対象物以外の赤外線照射からの遮蔽部材や加熱対象物への効率的な加熱の為の赤外線熱吸収/蓄熱部材が必要になっている。このことから、赤外線を効果的に遮蔽し、赤外線熱吸収/蓄熱性に優れ、かつ大型部材の製造が可能で、しかも工程汚染の原因となる金属不純物を含有しない黒色石英ガラスの開発が求められている。
【0004】
従来、シリカを主成分とする黒色ガラスとして以下のようなものが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1では、石英ガラス粉末と五塩化ニオブを混合し、五塩化ニオブを五酸化ニオブに変換した後に1800℃以上に加熱して還元溶融することによる黒色石英ガラスの製造方法が提案されている。
【0006】
特許文献2では、シリカ多孔質ガラスに炭素源となりうる揮発性有機珪素化合物を気相反応させた後、1200℃以上2000℃以下の温度で加熱焼成して有機珪素化合物由来の炭素を含有する黒色石英ガラスを製造することが提案されている。
【0007】
特許文献3では、溶融石英ガラスを粉末化したヒューズドシリカ粉末とケイ素含有粉末を湿式混合した後、鋳込み法で成形して乾燥し、得られた成形体をケイ素の溶融温度未満の焼結温度、1350~1435℃、で加熱することにより、元素形態のSiの領域が埋め込まれたヒューズドシリカのマトリックスを有する複合材料としての黒色石英ガラスを製造することが提案されている。
【0008】
特許文献4 には、ガラス焼結体のマトリックス中に体積割合で0.1%~30%の着色粒子としてカーボンを分散させた着色ガラス焼結体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-94864号公報(特許請求の範囲他)
【特許文献2】特開2013-1628号公報(特許請求の範囲他)
【特許文献3】特開2020-73440号公報(特許請求の範囲他)
【特許文献4】特開2003-146676号公報(特許請求の範囲他)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1に記載の黒色石英ガラスは大型化した際に色の均一性が十分でない場合があり、製造に1800℃以上の温度が必要であり、炉の材質やヒーターに高級材をする必要があると同時に、加熱に多大なエネルギーを必要とし、生産性に課題があった。また含有するニオブ化合物が使用される工程において汚染を引き起こすおそれがあることから半導体製造分野に適用することは困難が伴った。
【0011】
特許文献2に記載の黒色石英ガラスも色の均一性に課題があり、大型化が困難であった。製造に際しても非酸化性雰囲気が必要で炉の構造が複雑化し、操作が煩雑になり生産性に課題があった。大型化に関しても炉の構造上困難であった。また含有する炭素がパーティクルとして使用する工程において発生し汚染を引き起こすおそれがあることから半導体製造分野に適用することは困難が伴った。
【0012】
特許文献3に記載の種の黒色石英ガラスも大型化した際に色の均一性が十分でない場合があった。更に、鋳込み成形の制限から大型化に関して課題があった。又、鋳込み成形・乾燥の操作が煩雑で製造に長時間を要する上に、焼結で1350℃以上の温度での加熱を必要とする為、炉の材質やヒーターに高級材をする必要があると同時に、加熱に多大なエネルギーを必要とし、生産性に課題があった。
【0013】
特許文献4に記載の種の黒色石英ガラスも大型化した際に色の均一性が十分でない場合があり、更に、大型化した場合、成形体を焼結する際の破損リスクが大きくなり、大型の黒色石英ガラスが得られないという課題があった。加えてカーボンがパーティクルとして使用する工程において発生し汚染を引き起こすおそれがあることから半導体製造分野に適
用することは困難が伴った。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、優れた遮光性を有し、使用される工程において汚染を引き起こすおそれがなく、大型化した際に色の均一性が十分であり、大型のインゴットが作成可能な黒色石英ガラスを提供することである。
【0015】
本発明の別の課題は、上記課題を解決する黒色石英ガラスを、大型のインゴットであっても、優れた生産性で製造できる方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる課題は、前記黒色石英ガラスを用いて作製した分光セルなどの光学部品、半導体製造装置用の遮光性部材や赤外線熱吸収/蓄熱部材などの黒色石英ガラス製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、実質的にSiとO以外の金属不純物を含有せず、使用される工程において汚染を引き起こすおそれがない黒色石英ガラスが、石英ガラス中にSiとSiOの微粒子を特定の濃度で分散させてなる系において得られること、さらには、この黒色石英ガラスが、優れた遮光性を有し、大型化した際に色の均一性が十分であり、かつ生産性良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明は以下の通りである。
[1]
Siを0.5~10質量%およびSiOを0.1~5質量%含有し、残部がSiO2であるガラス(以下、石英ガラスと呼ぶ)であって、波長350nm~750nmにおけるSCE反射率が10%以下である、黒色石英ガラス。
[2]
***表示系の明度L*が30以下、彩度a*の絶対値が3.5以下およびb*の絶対値が4以下である、[1]に記載の黒色石英ガラス。
[3]
Si元素以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下である、[1]または[2]に記載の黒色石英ガラス。
[4]
以下の(a)~(f)のいずれか1つ以上の物性を満足する、[1]~[3]のいずれか1項に記載の黒色石英ガラス。
(a)密度が2.15/cm3以上2.3g/cm3以下である、
(b)温度500℃における比熱が1090J/kg・K以上、1130J/kg・K以下である、
(c)温度500℃における熱拡散率が7×10-72/s以上、8×10-72/s以下である、
(d)温度500℃における熱伝導率が、1.5W/mK以上、2.1W/mK以下である、
(e)30℃から600℃の範囲における熱膨張率が2×10-7/℃以上、12×10-7/℃以下である、
(f)波長200nm~3000nmにおける光透過率が厚さ1mmで0.5%以下である。
[5]
石英ガラス中に含まれるSiの少なくとも一部が粒子状であり、粒子状物の径がD50で5~10μm、D10が1μm以上、D95が30μm以下である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の黒色石英ガラス。
[6]
石英ガラス中に含まれるSiOの少なくとも一部が粒子状であり、粒子状物の径がD50で5~15μm、D10で1μm以上、D90で35μm以下である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の黒色石英ガラス。
[7]
(a)SiO2の部分は、ヒュームドシリカの焼結体であるか、
(b)SiO2の部分は、ヒュームドシリカが30~60質量%で、残部が粒径でD50が60~100μm、D10が40μm以上、D95が180μm以下である合成シリカ粉末の焼結体であるか、または
(c)SiO2の部分は、ヒュームドシリカが30~60質量%、D50が5~15μm、D10が1μm以上、D95が70μm以下の球状シリカが5~25質量%で、残部が粒径でD50が60~100μm、D10が40μm以上、D95が180μm以下である合成シリカ粉末の焼結体である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の黒色石英ガラス。
[8]
ヒュームドシリカに0.5~10質量%のSi粉末および0.1~5質量%のSiO粉末を混合圧密して得た粉末を加圧成型し、加圧成型品を大気中にて最高温度1200~1300℃で加熱して、ヒュームドシリカを焼結させて[1]~[6]のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスまたは[7]の(a)の黒色石英ガラスを得ることを含む、または、
(2)ヒュームドシリカが30~60質量%で、残部が粒径でD50が60~100μm、D10が40μm以上、D95が180μm以下である合成シリカ粉末に、0.5~10質量%のSi粉末および0.1~5質量%のSiO粉末を混合圧密して得た粉末を加圧成型し、加圧成型品を大気中にて最高温度1250~1320℃で加熱して、焼結させて[1]~[6]のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスまたは[7]の(b)の黒色石英ガラスを得ることを含む、または、
(3)ヒュームドシリカが30~60質量%、D50が5~15μm、D10が1μm以上、D95が70μm以下の球状シリカが5~25質量%で、残部が粒径でD50が60~100μm、D10が40μm以上、D95が180μm以下である合成シリカ粉末に0.5~10質量%のSi粉末および0.1~5質量%のSiO粉末を混合圧密して得た粉末を加圧成型し、加圧成型品を大気中にて最高温度1250~1320℃で加熱して、焼結させて[1]~[6]のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスまたは[7]の(c)の黒色石英ガラスを得ることを含む、黒色石英ガラスの製造方法。
[9]
ヒュームドシリカは、タップ嵩密度が0.03~0.08g/cm3、BET比表面積が50~100m2/g、OH基濃度が0.5~1.0質量%、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下のいずれか少なくとも1つを満足する、[8]に記載の黒色石英ガラスの製造方法。
[10]
Si粉末は、粒子径D50が5~10μm、D10が1μm以上、D95が30μm以下であり、且つSiO粉末は、粒子径D50が3~15μm、D10が1μm以上、D90が35μm以下である、[8]または[9]に記載の黒色石英ガラスの製造方法。
[11]
混合圧密は、混合圧密して得た粉末のタップ嵩密度が、ヒュームドシリカのタップ嵩密度の5~20倍となるように実施する、[8]~[10]のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスの製造方法。
[12]
大気中での加熱焼結時間が0.5~5時間である、[8]~[11]のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスの製造方法。
[13]
[1]~[7]のいずれか1項に記載の黒色石英ガラスを用いた黒色石英ガラス部材を含む製品。
[14]
黒色石英ガラス部材が、光学部品、遮光部材または赤外線熱吸収/蓄熱部材である[13]に記載の製品。
[15]
光学部品が、分光セル、プロジェクターのリフレクター、または光ファイバーのコネクターであり、遮光部材が、半導体製造装置または赤外線加熱装置の遮光部材である、[14]に記載の製品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた遮光性を有し、大型化した際に色の均一性が十分であり、生産性良く得られ、かつ使用される工程において汚染を引き起こすおそれがない黒色石英ガラスが提供される。さらに本発明によれば、上記黒色石英ガラスを比較的低温での加熱工程を用い、生産性よく製造できる方法が提供される。加えて、本発明の黒色石英ガラスは、遮光性に優れるため、光学分析用の石英ガラスセル、半導体製造装置や赤外線加熱装置の遮光部材、赤外線熱吸収/蓄熱部材に好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<黒色石英ガラス>
本発明の黒色石英ガラスについて説明する。
本発明の黒色石英ガラスは、0.5~10質量%のSiおよび、0.1~5質量%のSiOを含有し、残部がSiO2である石英ガラスである。Siの少なくとも一部は、複数のSi原子からなる単体であり、Siの少なくとも一部は単体であるSiからなる粒子状物として石英ガラス中で存在する。SiOは、一酸化ケイ素であり、SiOの少なくとも一部はSiOからなる粒子状物として石英ガラス中で存在する。
【0021】
Siが0.5%質量より少なく、SiOが0.1質量%より少ないと明度L*が大きくなり好ましくない、SCE反射率も大きくなり好ましくない。Siが10質量%を超え、およびSiOが5質量%を超えると調製の際に原料の焼結が阻害され、焼結体である本発明の石英ガラスの機械強度の低下の原因となる。Siは、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%の範囲である。SiOは好ましくは0.2~2質量%、より好ましくは0.3~2質量%の範囲であり、残部はSiO2である。
【0022】
本発明の黒色石英ガラスは波長350nm~750nmにおけるSCE反射率が10%以下である。波長350nm~750nmにおけるSCE反射率は、JIS Z 8722に準拠して測定される。SCE反射率が10%以下であることで優れた遮光性を示す。SCE反射率は遮光性に優れるという観点からは低いことが好ましく、好ましくは9%以下であり、より好ましくは8%以下である。SCE反射率の下限値には特に制限はないが、1%であることができる。
【0023】
本発明の黒色石英ガラスは、L***表示系の明度L*が30以下であることが好ましい。明度L*が30以下であることで、色むらが発生しないばかりか、光の透過、迷光、散乱を発生させない十分な黒系色を呈することができる。また、本発明の黒色石英ガラスはL***表示系の彩度a*の絶対値が3.5以下およびb*の絶対値が4以下であることが好ましい。明度L*、彩度a*およびb*が上記範囲であることで、本発明の黒色石英ガラスの色調がより黒色になり、低いSCE反射率を有する黒色石英ガラスとなる。明度L*は、好ましくは28以下であり、彩度a*の絶対値が2.8以下およびb*の絶対値が3.7以下であることが、色調がより黒色になり好ましい。
【0024】
本発明の黒色石英ガラスは、Si元素以外の金属不純物の含量は各々1ppm以下であることが好ましい。Si元素以外の金属不純物の含量が1ppmより多くなると半導体の製造等において行程汚染を引き起こすおそれがある。又、光学分析用等の分野においては蛍光発生等で精度に悪影響を引き起こすおそれがある。Si元素以外の金属不純物の含量は、例えば、原子吸光分析等の方法で分析することができる。
【0025】
本発明の黒色石英ガラスは、密度が2.15~2.3g/cm3の範囲である。密度は透明石英ガラスにSiおよびSiOを添加した理論密度とほぼ一致する。密度は好ましくは2.17~2.27g/cm3の範囲であり、より好ましくは2.18~2.25g/cm3の範囲である。
【0026】
本発明の黒色石英ガラスは、温度500℃における比熱が、1090J/kg・K以上、1130J/kg・K以下であることができる。温度500℃での比熱は、示差走査熱量法(DSC法)により測定できる。比熱は、好ましくは、1095J/kg・K以上、1120J/kg・K以下の範囲であり、より好ましくは1100J/kg・K以上、1114J/kg・K以下の範囲である。
【0027】
本発明の黒色石英ガラスは、温度500℃における熱拡散率が、7×10-72/s以上、8×10-72/s以下であることができる。温度500℃での熱拡散率は、フラッシュ法によりJIS R 1611に準拠して測定できる。熱拡散率は、好ましくは、7.2×10-72/s以上、7.9×10-72/s以下の範囲であり、より好ましくは7.4×10-72/s以上、7.6×10-72/s以下の範囲である。
【0028】
本発明の黒色石英ガラスは、温度500℃における熱伝導率が、1.5W/mK以上、2.1W/mK以下であることができる。温度500℃での熱伝導率は焼結体の密度と比熱と熱拡散率を乗算することで計算できる。熱伝導率は、好ましくは、1.6W/mK以上、2.0W/mK以下の範囲であり、より好ましくは1.7W/mK以上、1.9W/mK以下の範囲である。
【0029】
本発明の黒色石英ガラスは、温度30℃~600℃における熱膨張率が2×10-7/℃以上、12×10-7/℃以下であることができる。温度30℃~600℃における熱膨張率は熱機械分析法(TMA法)により測定できる。熱膨張率は好ましくは、4×10-7/℃以上、11×10-7/℃以下の範囲であり、より好ましくは6×10-7/℃以上、10×10-7/℃以下の範囲である。
【0030】
本発明の黒色石英ガラスは、波長200nm~3000nmにおける光透過率が厚さ1mmで0.5%以下であることができる。波長200nm~3000nmにおける光透過率は、分光光度計で測定される。光透過率が0.5%以下であることで優れた遮光性を示す。光透過率は遮光性に優れるという観点からは低いことが好ましく、好ましくは0.4%以下であり、より好ましくは0.3%以下である。光透過率の下限値には特に制限はないが、0.01%であることができる。
【0031】
本発明の黒色石英ガラスにSiは粒子状物として含有され、Si粒子状物の粒子径は、例えば、D50で5~10μm、D10が1μm以上、D95が30μm以下である。本発明の黒色石英ガラスにSiOは粒子状物として含有され、SiO粒子状物の粒子径は、例えば、D50で3~15μm、D10で1μm以上、D90で35μm以下である。Si粒子状物の粒子径がD50で5μm以上であり、SiO粒子状物の粒子径がD50で3μm以上であることで、彩度a*およびb*の絶対値が小さくなり、色調がより黒色になり好ましい。Si粒子状物の粒子径がD50で10μm以下であり、SiO粒子状物の粒子径がD50で15μm以下であることで、明度L*およびSCE反射率が所定の値以下になり、優れた遮光性を有する黒色石英ガラスとなり、かつ黒色石英ガラス調製の際に原料シリカの焼結が容易であり、機械強度に優れた焼結体である黒色石英ガラスが得られる傾向がある。Si粒子状物の粒子径がD10で1μm以上であり、SiO粒子状物の粒子径がD10で1μm以上であれば、彩度a*およびb*の絶対値が小さくなる傾向があり好ましい。Si粒子状物の粒子径がD50で10μm以下であり、SiO粒子状物の粒子径がD50で15μm以下であれば、黒色石英ガラス調製の際に原料シリカの焼結が良好に進行し、機械強度に優れた焼結体である黒色石英ガラスが得られる傾向がある。
【0032】
本発明の黒色石英ガラスは、後述のように、ヒュームドシリカを焼結材として用いて製造される。ヒュームドシリカは四塩化珪素ガス等を気相中で燃焼させて得られる微粉末のシリカである。ヒュームドシリカは粒子径が10~30nmと小さい為、一般に嵩密度が非常に低く、造粒や成形に不向きであり、通常は、焼結により得られる焼結体の密度は小さく、石英ガラスとして満足できるものではない。しかしながら、本発明においては、Si粒子状物とSiO粒子状物を特定の濃度で分散させた(1)ヒュームドシリカ、または(2)ヒュームドシリカと合成シリカ粉末の混合粉末、または(3)ヒュームドシリカと合成シリカ粉末および球状シリカの混合粉末を焼結することで、驚くべきことに、石英ガラスにSiおよびSiOを添加した理論密度とほぼ一致する密度の石英ガラスが得られた。しかも得られた石英ガラスは、SCE反射率が10%以下の黒色石英ガラスであった。後述するように、原料に用いるヒュームドシリカは、タップ嵩密度0.03~0.08g/cm3、BET比表面積50~100m2/g、OH基濃度0.5~1.0質量%、及び/またはSi元素以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下であるヒュームドシリカであることが、石英ガラスにSiおよびSiOを添加した理論密度とほぼ一致する密度の石英ガラスが得られること、さらには、SCE反射率などの特性も満足する黒色石英ガラスを大型のインゴットであっても製造できるという観点から好ましい。
【0033】
<黒色石英ガラスの製造方法>
本発明の黒色石英ガラスの製造方法について説明する。
本発明の黒色石英ガラスの製造方法は、(1)ヒュームドシリカ、または(2)ヒュームドシリカと合成シリカ粉末の混合粉末、または(3)ヒュームドシリカと合成シリカ粉末および球状シリカの混合粉末に0.5~10質量%のSi粉末および0.1~5質量%のSiO粉末を混合圧密して得た粉末を加圧成型し、加圧成型品を大気中にて加熱して、ヒュームドシリカを焼結させること含む。この加熱の最高温度は、(1)の場合、1200~1300℃の範囲、(2)及び(3)の場合、1250℃~1320℃の範囲である。この製造方法により、上記本発明の黒色石英ガラスを得ることができる。
【0034】
合成シリカ粉末は、化学的に精製されたシリコンアルコキシドを加水分解、乾燥、粉砕、焼成してえられる高純度な粉末状のシリカである。球状シリカ粉末は四塩化珪素ガス等を気相中で反応させて得られる高純度合成溶融球状シリカである。ヒュームドシリカに合成シリカ粉末または合成シリカ粉末および球状シリカを添加することで、焼結体の組織をより均一にすることができ、最高温度までの加熱時間を短縮することができる。
【0035】
本発明の製造方法においては、(1)ヒュームドシリカ、または(2)ヒュームドシリカと合成シリカ粉末、または(3)ヒュームドシリカと合成シリカ粉末および球状シリカ粉末に所定量のSi粉末およびSiO粉末を共存させ、Si粒子およびSiO粒子を実質的に凝集の無い状態で、乾燥粉末の状態の(1)ヒュームドシリカ、または(2)ヒュームドシリカと合成シリカ粉末、または(3)ヒュームドシリカと合成シリカ粉末および球状シリカ粉末に均一に混合する。この混合では、混合と同時に圧密が進行して加圧成型用粉末を得ることができる。本明細書では、混合と同時に進行する圧密の操作を混合圧密(mixing and consolidation)と定義する。
【0036】
混合圧密して加圧成型用粉末を得るには、粒子径がD50で5~10μm、D10が1μm以上、D95が30μm以下であるSi粉末を0.5~10質量%と、粒子径がD50で3~15μm、D10で1μm以上、D90で35μm以下であるSiO粉末を0.1~5質量%の割合で用いることが好ましい。加えて、混合圧密して加圧成型用粉末を得るには、タップ嵩密度0.03~0.08g/cm3、BET比表面積50~100m2/g、OH基濃度0.5~1.0質量%、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下であるヒュームドシリカ、粒子径がD50で60~100μm、D10が40μm以上、D95が180μm以下である合成シリカ粉末、粒子径がD50で5~15μm、D10が1μm以上、D95が70μm以下の球状シリカを用いることが好ましい。これらのヒュームドシリカ、合成シリカ粉末、球状シリカを用いることは、石英ガラスにSiおよびSiOを添加した理論密度とほぼ一致する密度の石英ガラスが得られるという観点からも好ましい。
【0037】
さらに、粒子径がD50で60~100μm、D10が40μm以上、D95が180μm以下である合成シリカ粉末、及び粒子径がD50で5~15μm、D10が1μm以上、D95が70μm以下の球状シリカを用いることは、焼結体の組織をより均一にすること、及び焼結の際の最高温度までの加熱時間を短縮することができるという観点からも好ましい。更に原料シリカがヒュームドシリカと合成シリカ粉末である場合、ヒュームドシリカが30~60質量%で、残部が合成シリカ粉末であることが焼結体の組織をより均一にすること、及び焼結の際の最高温度までの加熱時間を短縮するという観点から好ましい。加えて、原料シリカがヒュームドシリカと合成シリカ粉末および球状シリカ粉末である場合、ヒュームドシリカが30~60質量%、球状シリカが5~25質量%で、残部が合成シリカ粉末であることが焼結体の組織をより均一にすること、及び焼結の際の最高温度までの加熱時間を短縮するという観点から好ましい。
【0038】
一般にヒュームドシリカは焼結に不向きである。しかし、このようにして混合圧密して得られた加圧成型用粉末を、加圧成型して大気中にて最高温度1200~1320℃で加熱することで、得られる焼結体の密度がほぼ理論密度に達することが可能となり、優れたSCE反射率などの特性を有する黒色石英ガラスが得られる。
【0039】
混合圧密は、圧密して得た粉末のタップ嵩密度が、ヒュームドシリカのタップ嵩密度の5~20倍となるように実施することが好ましい。加圧成型用粉末のタップ嵩密度がヒュームドシリカのタップ嵩密度の5倍以上であることで焼結体の密度が大きくなる傾向がある。加圧成型用粉末のタップ嵩密度がヒュームドシリカのタップ嵩密度の20倍以下であれば、成形体の強度が低下することもない。加圧成型用粉末のタップ嵩密度は、好ましくは、ヒュームドシリカのタップ嵩密度の6~15倍、より好ましくは7~10倍の範囲である。混合圧密は、攪拌型混合機、ボールミル、ロッキングミキサー、クロスミキサー、V型混合機などの一般的な混合装置を用いて実施できる。
【0040】
混合圧密粉末は所望の形状に成形することができる。成形方法としては、セラミックスの成形に通常用いられる金型プレス成形、冷間静水圧プレス法、等の乾式法を用いることができる。プレス圧力は、例えば、10~300MPaが適当である。10MPa以上であれば成形体が崩れることはなく成形時の歩留りも維持できる。300MP以下であれば、大規模な設備を必要とすることなく、生産性良好で、かつ生産コストを抑えることができ望ましい。
【0041】
原料シリカがヒュームドシリカである場合の焼結は大気中にて最高焼結温度を1200~1300℃、好ましくは1240~1260℃で行う。更に好ましくは1240~1250℃で行う。焼結温度が1300℃を超えると明度L*が大きくなり、SCE反射率も大きくなる傾向がある。焼結温度が1200℃未満では密度、曲げ強度が良好な焼結体が得られない傾向がある。
【0042】
原料シリカがヒュームドシリカと合成シリカ粉末である場合の焼結は大気中にて最高焼結温度を1250~1320℃、好ましくは1280~1310℃で行う。更に好ましくは1290~1300℃で行う。焼結温度が1320℃を超えると明度L*が大きくなり、SCE反射率も大きくなる傾向がある。焼結温度が1250℃未満では密度、曲げ強度が良好な焼結体が得られない傾向がある。
【0043】
原料シリカがヒュームドシリカと合成シリカ粉末および球状シリカ粉末である場合の焼結は大気中にて最高焼結温度を1250~1320℃、好ましくは1280~1310℃で行う。更に好ましくは1290~1300℃で行う。焼結温度が1320℃を超えると明度L*が大きくなり、SCE反射率も大きくなる傾向がある。焼結温度が1250℃未満では密度、曲げ強度が良好な焼結体が得られない傾向がある。
【0044】
何れの加熱及び焼結の工程においても、大気炉での最高温度での焼結時間は、例えば、0.5~5時間の範囲とすることができる。但し、焼結体の物性等を考慮して適宜調整できる。焼結時間が短いと低いと密度、曲げ強度が低下する傾向がある。焼結時間が長過ぎると生産性の低下や生産コストの増大をもたらす。
【0045】
上述の工程を経て、得られる黒色石英ガラスのインゴットを、石英部材を製造する際に使用されるバンドソー、ワイヤーソー、コアドリル等の加工機により加工し黒色石英ガラスの製品を得ることができる。
【0046】
このようにして得られた黒色石英ガラスは、色むらがなく、光の透過、迷光、散乱を発生させない十分な黒系色を呈しており、光学分野全般において有用である。また、極めて高い光遮蔽性能を有するのみならず、透明石英ガラスとの接合が可能であるため、石英ガラス製の光学分析用セルを作製するのに好適である。
【0047】
本発明は、上記本発明の黒色石英ガラスを用いた黒色石英ガラス部材を含む製品を包含する。本発明の黒色石英ガラスは、高温で寸法精度を要求される環境下で使用される時に熱膨張率が石英ガラスと同等に小さく、他の熱特性も石英ガラスと同等である。そのため、本発明の黒色石英ガラス部材は、例えば、光学部品、遮光部材または赤外線熱吸収/蓄熱部材として有用である。光学部品は、例えば、分光セル、プロジェクターのリフレクター、または光ファイバーのコネクターであり、遮光部材は、例えば、半導体製造装置または赤外線加熱装置の遮光部材である。但し、これらの部材に限定する意図ではない。
【0048】
本発明の黒色石英ガラスは金属不純物を含有せず、半導体製造に用いる熱処理装置の部材に特に好適である。例えば、ウェハー熱処理装置において、加熱用の赤外線を透過させる面以外の部分を本発明の黒色石英ガラスで構成することにより炉外に放射される熱を効率的に遮蔽し、エネルギー効率の向上と炉内温度分布の均一化が可能となる。
【実施例0049】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0050】
試料特性は以下のように測定した。
(1)焼結体の密度は、アルキメデス法により測定した。
(2)SCE反射率は、試料を厚さ7mmに加工し、分光測色計を用いてJIS Z 8722に準拠して測定した。360~740nmの波長域で最も高い数値を記載した。
(3)L***表示系の明度L*および彩度a*、b*は、分光測色計を用いてJIS Z 8722に準拠して測定した。
(4)比熱は、試料をφ6×1mmtに加工し、温度500℃で、示差走査熱量法(DSC法)により測定した。
(5)熱拡散率は、試料をφ10×1mmtに加工し、温度500℃で、フラッシュ法によりJISR1611に準拠して測定した。
(6)熱伝導率は、温度500℃の条件に於いて、次式により計算した。
熱伝導率=比熱×熱拡散率×焼結体の密度
(7)熱膨張率は、試料を3×4×20mmLに加工し、30~600℃の条件で、熱機械分析法(TMA法)により測定した。
(8)光透過率は、試料を厚さ1mmに加工し、分光光度計を用いて200~3000nmの範囲で測定した。
【0051】
(実施例1)
タップ嵩密度0.06g/cm3、BET比表面積85m2/g、OH基濃度0.7質量%、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下のヒュームドシリカに、粒子径がD50で7μm、D10が4μm、D95が11μmであるSi粉末を2.0質量%と、粒子径がD50で10μm、D10で5μm、D90で20μmであるSiO粉末を0.5質量%の割合で添加し、溶媒を用いずボールミルで混合圧密した。得られた、タップ嵩密度0.45g/cm3の加圧成型用粉末を90Mpaにてプレス成形し、1250℃にて3時間大気中で焼結を行った。
【0052】
得られた黒色石英ガラスは、密度は、2.20g/cm3、SCE反射率は5.3%以下、L***表示系の明度L*は20.6、彩度a*は1.9、b*は-0.6であり、温度500における比熱は1103J/kg・Kであり、温度500℃における熱拡散率は、7.5×10-72/sであり、温度500℃における熱伝導率は1.82W/mKであり、温度30~600℃における熱膨張率は9.4×10-7/℃であり、光透過率は200~3000nmの範囲で0.12%以下であった。得られた黒色石英ガラスは、色むらなく、光の透過、迷光、散乱を発生させない十分な黒系色を呈しており、目視で均一であることが確認され、美観上も優れていた。
【0053】
(実施例2)
タップ嵩密度0.06g/cm3、BET比表面積85m2/g、OH基濃度0.7質量%、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下のヒュームドシリカに、粒子径がD50で8μm、D10が3μm、D95が20μmであるSi粉末を1.0質量%と、粒子径がD50で10μm、D10で5μm、D90で20μmであるSiO粉末を1.0質量%の割合で添加し、溶媒を用いずボールミルで混合圧密した。得られた、タップ嵩密度0.45g/cm3の加圧成型用粉末を90Mpaにてプレス成形し、1250℃にて3時間大気中で焼結を行った。
【0054】
得られた黒色石英ガラスは、密度は、2.19g/cm3、SCE反射率は7.6%以下、L***表示系の明度L*は25.2、彩度a*は2.6、b*は3.3であり、温度500における比熱は1108J/kg・Kであり、温度500℃における熱拡散率は、7.5×10-72/sであり、温度500℃における熱伝導率は1.83W/mKであり、温度30~600℃における熱膨張率は8.3×10-7/℃であり、光透過率は200~3000nmの範囲で0.17%以下であった。得られた黒色石英ガラスは、色むらなく、光の透過、迷光、散乱を発生させない十分な黒系色を呈しており、目視で均一であることが確認され、美観上も優れていた。
【0055】
(実施例3)
タップ嵩密度0.06g/cm3、BET比表面積85m2/g、OH基濃度0.7質量%、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下のヒュームドシリカが50質量%、粒子径でD50が80μm、D10が48μm、D95が160μmであり、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下である合成シリカ粉末が50質量%のシリカ混合粉末に、粒子径がD50で6μm、D10が4μm、D95が10μmであるSi粉末を2.0質量%と、粒子径がD50で10μm、D10で5μm、D90で20μmであるSiO粉末を0.5質量%の割合で添加し、溶媒を用いずボールミルで混合圧密した。得られた、タップ嵩密度0.60g/cm3の加圧成型用粉末を90Mpaにてプレス成形し、1300℃にて3時間大気中で焼結を行った。
【0056】
得られた黒色石英ガラスの密度は、2.20g/cm3、SCE反射率は5.3%以下、L***表示系の明度L*は18.2、彩度a*は3.2、b*は2.1であり、温度500における比熱は1105J/kg・Kであり、温度500℃における熱拡散率は、7.5×10-72/sであり、温度500℃における熱伝導率は1.81W/mKであり、温度30~600℃における熱膨張率は9.0×10-7/℃であり、光透過率は200~3000nmの範囲で0.14%以下であった。得られた黒色石英ガラスは、色むらなく、光の透過、迷光、散乱を発生させない十分な黒系色を呈しており、目視で均一であることが確認され、美観上も優れていた。
【0057】
(実施例4)
タップ嵩密度0.06g/cm3、BET比表面積85m2/g、OH基濃度0.7質量%、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下のヒュームドシリカが40質量%、粒子径でD50が80μm、D10が48μm、D95が160μmであり、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下である合成シリカ粉末が42質量%、粒子径でD50が11μm、D10が3μm、D95が52μmであり、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下である球状シリカが18質量%のシリカ混合粉末に、粒子径がD50で6μm、D10が3μm、D95が13μmであるSi粉末を1.0質量%と、粒子径がD50で5μm、D10で2μm、D90で9μmであるSiO粉末を0.5質量%の割合で添加し、溶媒を用いずボールミルで混合圧密した。得られた、タップ嵩密度0.79g/cm3の加圧成型用粉末を90Mpaにてプレス成形し、1300℃にて3時間大気中で焼結を行った。
【0058】
得られた黒色石英ガラスの密度は、2.20g/cm3、SCE反射率は5.2%以下、L***表示系の明度L*は19.0、彩度a*は2.2、b*は3.6であり、温度500における比熱は1112J/kg・Kであり、温度500℃における熱拡散率は、7.5×10-72/sであり、温度500℃における熱伝導率は1.83W/mKであり、温度30~600℃における熱膨張率は7.6×10-7/℃であり、光透過率は200~3000nmの範囲で0.22%以下であった。得られた黒色石英ガラスは、色むらなく、光の透過、迷光、散乱を発生させない十分な黒系色を呈しており、目視で均一であることが確認され、美観上も優れていた。
【0059】
(比較例1)
タップ嵩密度0.06g/cm3、BET比表面積85m2/g、OH基濃度0.7質量%、Si以外の金属不純物の含量が各々1ppm以下のヒュームドシリカに、粒子径がD50で7μm、D10が4μm、D95が11μmであるSi粉末を0.5質量%の割合で添加し、溶媒を用いずボールミルで混合圧密した。加圧成型用粉末を90Mpaにてプレス成形し、1250℃にて3時間大気中で焼結を行った。
【0060】
得られた黒色石英ガラスの密度は、2.09g/cm3と小さく、SCE反射率は13.0%以下と大きく、L***表示系の明度L*も36.2と大きく、彩度a*は1.1、b*は-1.7であった。色むらがあり、光の透過、迷光、散乱の防止には不十分であった。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、黒色石英ガラスに関する分野に有用である。本発明によれば、遮光性に優れた大型の黒色石英ガラスインゴットを経済的で効率よく提供することができる。本発明の黒色石英ガラスは、光学分析用の石英ガラスセル、半導体製造装置や赤外線加熱装置の遮光部材、赤外線熱吸収/蓄熱部材に好適に用いることができる。