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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059576
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20220406BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20220406BHJP
   C08G 18/63 20060101ALI20220406BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20220406BHJP
【FI】
C08G18/40 009
C08G18/48 004
C08G18/63
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152529
(22)【出願日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2020167318
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】是佐 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄一郎
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DG03
4J034DQ05
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD12
4J034KE02
4J034QA01
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB15
4J034QC01
4J034RA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高反発弾性、低密度、耐湿熱老化性に優れた軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】軟質ポリウレタンフォームであって、ポリオール成分は、エチレンオキサイド単位の含有率が0%以上20%以下であるポリエーテルポリオールAと、ポリマーポリオールBと、エチレンオキサイド単位の含有率が50%以上100%以下であるポリエーテルポリオールCとを含み、前記ポリエーテルポリオールAと前記ポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対する前記ポリエーテルポリオールAと前記ポリマーポリオールBの含有比率は、ポリエーテルポリオールA/ポリマーポリオールB=50質量部以上90質量部以下/50質量部以上10質量部以下であり、前記ポリエーテルポリオールAと前記ポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対して前記ポリエーテルポリオールCを0.5質量部以上3質量部以下含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分とイソシアネート成分と発泡剤とを含むポリウレタンフォーム用組成物から得られる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール成分は、数平均分子量が4000以上8000以下であり、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合のエチレンオキサイド単位の含有率が0%以上20%以下であるポリエーテルポリオールAと、
数平均分子量が4000以上8000以下であるポリマーポリオールBと、
数平均分子量が3000以上7000以下であり、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合のエチレンオキサイド単位の含有率が50%以上100%以下であるポリエーテルポリオールCとを含み、
前記ポリエーテルポリオールAと前記ポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対する前記ポリエーテルポリオールAと前記ポリマーポリオールBの含有比率は、ポリエーテルポリオールA/ポリマーポリオールB=50質量部以上90質量部以下/50質量部以上10質量部以下であり、
前記ポリエーテルポリオールAと前記ポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対して前記ポリエーテルポリオールCを0.5質量部以上3質量部以下含み、
前記イソシアネート成分におけるイソシアネートインデックスが、90以上120以下であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
JIS K 6400-3に準拠して測定される反発弾性が、50%以上である請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
JIS K7222:2005に準拠して測定される見掛け密度が40kg/m未満である請求項1又は2に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
JIS K 6400-4:2012に準拠して測定される湿熱圧縮残留ひずみが、20%未満である請求項1~3のいずれか1項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。



















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具、家具等のクッション性材料等に用いられる軟質ポリウレタンフォームに関し、特に高い反発弾性を有する軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にベッドマットレス、クッションシート、枕、布団、ソファー等の寝具類、家具類等にはクッション性材料が用いられているが、このクッション性材料として従来から軟質ポリウレタンフォームが用いられている。軟質ポリウレタンフォームは身体との接触領域での体圧分散性に優れており、寝具類、家具類等におけるクッション性材料として好適なものである。クッション性材料としての用途を考慮すると、軟質ポリウレタンフォームには高い反発弾性が要求される。
【0003】
軟質ポリウレタンフォームの用途にもよるが、通常高い反発弾性として、60~65%の反発弾性が好ましいとされている。反発弾性を高める方法としていくつかあるが、その1つとして密度を高める方法がある。従来、密度を60~70kg/mとすることで、反発弾性を65%以上に設定するという方法が行われていた。
【0004】
軟質ポリウレタンフォームとして60~70kg/mの如き比較的高い密度のものを得るためには、使用する原料を多くする必要があり、製造コストが嵩むという問題がある。また得られたポリウレタンフォームは重量も大きくなり、持ち運びしにくくなる上、圧縮して運搬する場合に取り扱いが困難になるという実用上の問題もあった。そのため、高反発弾性でありながら、低密度で且つ必要な物性を有する軟質ポリウレタンフォームの開発が望まれている。
【0005】
低密度で且つ高反発弾性のポリウレタンフォームについては、例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-37468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1には、ポリオール成分として、分子量が6000以上の高分子量ポリオール30~80質量%と、分子量が5000以上のポリマーポリオール20~70質量%とからなるものを用い、且つ整泡剤として高反発スラブ用整泡剤を用いて製造して得られるポリウレタンスラブフォームが記載されており、このポリウレタンスラブフォームにおいて、密度は好ましくは60kg/m以下であり、反発弾性率は好ましくは65%以上であるとされている。
【0008】
密度60kg/m以下、反発弾性65%以上というポリウレタンフォームは実用面からみて有用性が高いが、低密度に起因する物性上の問題点がある。この物性上の問題点はいくつか考えられるが、重要な問題点として圧縮時の残留ひずみがある。本発明者等は、軟質ポリウレタンフォームを広い用途に適用するためには、通常の条件における圧縮残留ひずみにとどまることなく、より過酷な条件における圧縮残留ひずみを評価基準とすべきであることに着目し、乾熱老化条件のみならず、湿熱老化条件も考慮して、低密度、高反発弾性フォームにおいて新たに要求されるべき物性について検討を行った。
【0009】
その結果、密度が60kg/m以下という低密度では、湿熱圧縮残留ひずみが大きくなり、耐湿熱老化性が低下することが判明した。この耐湿熱老化性においても優れた物性を有する低密度、高反発弾性フォームを開発することにより、広範囲な用途に対応した軟質ポリウレタンフォームを提供できることを見出し、この観点から更に検討を行った。
【0010】
その結果、ポリウレタンフォーム製造原料であるポリオールとして特定のポリオールを複数種類用い、それらの組成比を特定のものとすることにより、低密度、高反発弾性フォームにおいて優れた耐湿熱老化性を示すフォームが得られるという知見が得られ、本発明はかかる知見に基づき完成されたものである。本発明は、高反発弾性でありながら、低密度であり、しかも低密度でありながら、耐湿熱老化性に優れた物性を示す軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するための手段として、
(1)ポリオール成分とイソシアネート成分と発泡剤とを含むポリウレタンフォーム用組成物から得られる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール成分は、数平均分子量が4000以上8000以下であり、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合のエチレンオキサイド単位の含有率が0%以上20%以下であるポリエーテルポリオールAと、
数平均分子量が4000以上8000以下であるポリマーポリオールBと、
数平均分子量が3000以上7000以下であり、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合のエチレンオキサイド単位の含有率が50%以上100%以下であるポリエーテルポリオールCとを含み、
前記ポリエーテルポリオールAと前記ポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対する前記ポリエーテルポリオールAと前記ポリマーポリオールBの含有比率は、ポリエーテルポリオールA/ポリマーポリオールB=50質量部以上90質量部以下/50質量部以上10質量部以下であり、
前記ポリエーテルポリオールAと前記ポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対して前記ポリエーテルポリオールCを0.5質量部以上3質量部以下含み、
前記イソシアネート成分におけるイソシアネートインデックスが、90以上120以下であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム、
(2)JIS K 6400-3に準拠して測定される反発弾性が、50%以上である前記(1)に記載の軟質ポリウレタンフォーム、
(3)JIS K7222:2005に準拠して測定される見掛け密度が40kg/m未満である前記(1)又は(2)に記載の軟質ポリウレタンフォーム、
(4)JIS K 6400-4:2012に準拠して測定される湿熱圧縮残留ひずみが、20%未満である前記(1)~(3)のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反発弾性が高く且つ低密度の軟質ポリウレタンフォームを提供することができる。また本発明によれば、低密度でありながら、耐湿熱老化性に優れた物性を有する軟質ポリウレタンフォームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明は以下に述べる実施形態に限定されるものではない。本発明実施形態における軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分とイソシアネート成分と発泡剤と各種添加剤を含むポリウレタンフォーム用組成物を用いてウレタン反応により製造されるものである。次に、ポリウレタンフォーム用組
成物の組成成分について説明する。
【0014】
(ポリオール成分)
ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールAと、ポリマーポリオールBと、ポリエーテルポリオールCとを含む。
【0015】
(ポリエーテルポリオールA)
ポリエーテルポリオールAは、数平均分子量が4000以上8000以下のものであり、なかでも数平均分子量が5500以上7500以下が好ましい。数平均分子量が4000未満では高反発弾性が得られない。また数平均分子量が8000を超えるポリエーテルポリオールAの場合は、ポリオール自体の製造が困難となる。本実施形態において用いられるポリエーテルポリオールAにおいて、ポリオール中に含有されるエチレンオキサイドの含有率は、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合のエチレンオキサイド単位の含有率(以下、エチレンオキサイド含有率という)として表すことができる。ポリエーテルポリオールAにおけるエチレンオキサイド含有率は、0%以上20%以下であり、5%以上20%以下が好ましい。エチレンオキサイド含有率が20%を超えると、ポリマーポリオールBとの含有比率によっては、独立気泡の割合が大きくなり、良好なフォームが得られない虞がある。
【0016】
(ポリマーポリオールB)
ポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオールに、アクリロニトリル、スチレン、アルキルメタクリレート等のビニル化合物を共重合させた、ポリマー微粒子が分散されたポリオールである。ポリマーポリオールBは、数平均分子量が4000以上8000以下のものであり、なかでも数平均分子量が4000以上6000以下が好ましい。数平均分子量が4000未満では高反発弾性が得られない。また数平均分子量が8000を超えるポリマーポリオールBの場合は、ポリオール自体の製造が困難となる。ポリマーポリオールBにおけるエチレンオキサイド含有率は、0%以上20%以下であることが好ましく、5%以上20%以下がより好ましい。エチレンオキサイド含有率が20%を超えると、ポリマーポリオールAとの含有比率によっては、独立気泡の割合が大きくなり、良好なフォームが得られない虞がある。
【0017】
(ポリエーテルポリオールC)
ポリエーテルポリオールCは、数平均分子量が3000以上7000以下のものであり、なかでも数平均分子量が5000以上7000以下が好ましい。数平均分子量が3000未満ではフォームの反発弾性を低下させる虞がある。また数平均分子量が7000を超えると安定した発泡が得られない虞がある。ポリエーテルポリオールCにおけるエチレンオキサイド含有率は、50%以上100%以下であり、50%以上80%以下が好ましい。エチレンオキサイド含有率が50%未満であると得られるウレタンフォームはセルが連通化し難く、反発弾性が低くなり、好ましくない。
【0018】
本実施形態におけるポリウレタンフォーム用組成物中のポリオール成分は、上記の如くポリエーテルポリオールAと、ポリマーポリオールBと、ポリエーテルポリオールCとの混合物であり、このうちポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBとの混合ポリオールが、高反発弾性であって且つ低密度の軟質ポリウレタンフォームを実現するために寄与する成分である。本実施形態において、JIS K 6400-3に準拠して測定される反発弾性が、50%以上であることが好ましい。またJIS K7222:2005に準拠して測定される見掛け密度が、40kg/m未満であることが好ましい。
【0019】
そのため、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBのそれぞれの成分のみならず、両者の混合割合が重要となる。ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールB
との合計量100質量部に対するポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBの含有比率は、ポリエーテルポリオールA/ポリマーポリオールB=50質量部以上90質量部以下/50質量部以上10質量部以下である。この含有比率とすることにより、反発弾性が高く、しかも低密度のポリウレタンフォームが得られる。また上記含有比率とすることにより、ポリウレタンフォームのベタツキが少なくなり、フォーム状態が良好となる。ポリマーポリオールBに対するポリエーテルポリオールAの含有比率が50質量部未満では、高反発弾性且つ低密度という物性を備えたポリウレタンフォームを得ることが困難となり、例えば反発弾性に関しては、反発弾性が50%以上という物性を備えることができず、クッション性が不十分なフォームとなってしまう。ポリマーポリオールBに対するポリエーテルポリオールAの含有比率が90質量部を超えると、ポリウレタンフォームにベタツキが生じ、フォーム状態が悪くなる。
【0020】
ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBの含有比率を、上記の如くポリエーテルポリオールA/ポリマーポリオールB=50質量部以上90質量部以下/50質量部以上10質量部以下とすることにより、見掛け密度が40kg/m未満であり且つ反発弾性が50%以上であるポリウレタンフォームを得ることができる。
【0021】
上記したように、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBのいずれも、数平均分子量が4000以上8000以下であり、いずれも数平均分子量の下限値は4000である。両者の内いずれか一方における数平均分子量が4000未満であると、高い反発弾性を有するポリウレタンフォームを得ることが困難となる。
【0022】
本実施形態においてポリオール成分としてのポリエーテルポリオールCは、低密度のポリウレタンフォームでありながら、耐湿熱老化性に優れた物性を備えるために寄与する成分である。ポリエーテルポリオールCは、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBとの混合ポリオールに対して所定量添加される。前記混合ポリオールに対して添加されるポリエーテルポリオールCの添加量は、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対して0.5質量部以上3質量部以下であり、この0.5質量部以上3質量部以下が、ポリエーテルポリオールCの含有量である。
【0023】
ポリエーテルポリオールCの含有量を上記の如く0.5質量部以上3質量部以下とすることにより、高い反発弾性と低密度を維持したまま、湿熱圧縮残留ひずみを小さく抑え、耐湿熱老化性に優れた物性を備えた軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。本実施形態において、JIS K 6400-4:2012に準拠して測定される湿熱圧縮残留ひずみが、20%未満であることが好ましい。ポリエーテルポリオールCの含有量を上記の如く0.5質量部以上3質量部以下の量をポリマー成分として含ませることにより、前記湿熱圧縮残留ひずみを20%未満とすることが可能である。
【0024】
ポリエーテルポリオールCの含有量が0.5質量部未満では、湿熱圧縮残留ひずみが大きくなり耐湿熱老化性に劣るものとなる。またそれが3質量部を超えると、ポリウレタンフォームが沈み、フォーム状態が悪くなる。ここでポリウレタンフォームが沈むとは、製造後一旦、フォーム形状は形成されるが、形状が保持できず崩壊することを意味する。
【0025】
本実施形態において、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBとの混合ポリオール100質量部に対して、ポリエーテルポリオールCを0.5質量部以上3質量部以下添加してポリエーテルポリオールCを含ませることにより、反発弾性が50%以上という高反発弾性で且つ見掛け密度が40kg/m未満という低密度を維持したまま、湿熱圧縮残留ひずみを20%未満という小さなひずみ量とすることができ、低密度でありながら耐湿熱老化性に優れた物性を備えた軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0026】
本実施形態において、低密度、高反発弾性を低下させない範囲で、前記ポリエーテルポリオールA、ポリマーポリオールB、ポリエーテルポリオールC以外の第4のポリオールを含有させることができる。この場合の第4のポリオールの含有量は、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対して0.5質量部以上3質量部以下が好ましい。
【0027】
(イソシアネート成分)
本実施形態において、イソシアネート成分におけるイソシアネートインデックスは、90以上120以下である。本実施形態において使用されるイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられるが、トリレンジイソシアネート(TDI)が好ましい。本実施形態において、イソシアネート成分におけるイソシアネートインデックスが90以上120以下であることにより、湿熱圧縮残留ひずみを小さくできる上、フォーム状態も良好となる。イソシアネートインデックスが90未満では、湿熱圧縮残留ひずみが大きくなり、またそれが120を超えると、独立気泡の割合が大きくなりやすく、そのため脆くなる、感触不良となる等フォーム状態が悪くなる。
【0028】
イソシアネートインデックスは、イソシアネート成分に含まれるイソシアネート基と、ポリオール成分及び発泡剤の水等に含まれる活性水素の当量比を算出することで特定することができる。
【0029】
(発泡剤)
本実施形態において発泡剤としては、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知のものを適用でき、例えば水が好適に用いられる。発泡剤の添加量は、軟質ポリウレタンフォームの用途に応じて適宜設定されるが、発泡剤として水を用いる場合、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対して2.5質量部以上3.5質量部以下が好ましい。
【0030】
本実施形態においてポリウレタンフォーム用組成物には、上記の成分以外に架橋剤、触媒、整泡剤を添加することができ、更にその他の各種の添加剤を添加することができる。
【0031】
(架橋剤)
本実施形態において架橋剤の添加量は、ウレタンフォームの崩壊や、収縮を防いでフォーム状態を良好にし且つ反発弾性を高く保つために、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対して0.5質量部以上4質量部以下が好ましい。本実施形態において用いられる架橋剤としては、グリセリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレングリコール等が挙げられる。
【0032】
(触媒)
本実施形態において用いられる触媒としては、トリエチレンジアミン(TEDA)、トリエチルアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール、イミダゾール等の3級アミン化合物等のアミン系触媒等が挙げられる。また、スタナスオクトエート等の錫化合物、ニッケルアセチルアセトネート等のニッケル化合物等の金属系触媒を用いることもできる。これら触媒としては単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。触媒の添加量は、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対して0.3質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
【0033】
(整泡剤)
整泡剤としては、ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知のものを適用でき、例
えば、シロキサン-ポリエーテルブロック共重合体等のシリコーン系整泡剤が好適に用いられる。整泡剤の添加量は、ポリウレタンフォームのセルを均一且つ安定にするために、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBとの合計量100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下が好ましい。
【0034】
(他の添加剤)
本実施形態において用いられる上記以外の他の添加剤としては、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、紫外線吸収剤等軟質ポリウレタンフォームの製造に際して一般的に使用可能な添加剤を挙げることができる。これらの添加剤の添加量は、本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜選択できる。
【0035】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、反発弾性が高く且つ低密度であり、しかも低密度でありながら、耐湿熱老化性に優れるという従来の軟質ポリウレタンフォームでは実現できなかった優れた物性を有するものであり、ベッドマットレス、クッションシート、枕、布団、ソファー等の寝具類、家具類等に好適に用いられる。
【0036】
(軟質ポリウレタンフォームの製造方法)
ポリオール、発泡剤、架橋剤、触媒、整泡剤を混合して混合物を調製し、この混合物にイソシアネートを混合して原料混合物としてのポリウレタンフォーム用組成物を調製し、この原料混合物(ポリウレタンフォーム用組成物)をベルトコンベア上に吐出する。該ベルトコンベアを移動させ、常温、大気圧下において、前記原料混合物を自然発泡させウレタン反応を生じせしめることにより、長尺ブロック状の軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0037】
次に本発明の実施例を説明する。
【実施例0038】
実施例、比較例をそれぞれ表1、表2に示す。表1、表2に示すようなポリウレタンフォーム用組成物であるポリオール、イソシアネート、架橋剤、整泡剤、発泡剤および触媒を用意した。ポリオールについては、ポリエーテルポリオールAとポリマーポリオールBとポリエーテルポリオールCとの3種類を用意した。ポリエーテルポリオールAについては、分子量とエチレンオキサイド含有率が共に異なる2種類のものを用意し(ポリエーテルポリオールA1、ポリエーテルポリオールA2)、またポリマーポリオールBについても同様に、分子量とエチレンオキサイド含有率が共に異なる2種類のものを用意した(ポリマーポリオールB1、ポリマーポリオールB2)。更にポリエーテルポリオールCについても同様に、分子量とエチレンオキサイド含有率が共に異なる2種類のものを用意した(ポリエーテルポリオールC1、ポリエーテルポリオールC2)。また、架橋剤および触媒についてもそれぞれ2種類用意した(架橋剤1、架橋剤2)、(触媒1、触媒2)。ポリウレタンフォーム用組成物は以下に示すとおりである。
【0039】
(ポリエーテルポリオールA1)
数平均分子量7000、エチレンオキサイド含有率14%、商品名:アクトコールEP-902N 三井化学SKCポリウレタン製
(ポリエーテルポリオールA2)
数平均分子量3000、エチレンオキサイド含有率0%、商品名:エクセノール3030 旭硝子製
(ポリマーポリオールB1)
数平均分子量5000、エチレンオキサイド含有率15%、商品名:アクトコールPOP-S005 三井化学SKCポリウレタン製
(ポリマーポリオールB2)
数平均分子量3000、エチレンオキサイド含有率0%、商品名:エクセノール95
1 旭硝子製
(ポリエーテルポリオールC1)
数平均分子量6000、エチレンオキサイド含有率50%、商品名:サンニックスFA-159 三洋化成工業製
(ポリエーテルポリオールC2)
数平均分子量3360、エチレンオキサイド含有率75%、商品名:アクトコールEP-505S 三井化学SKCポリウレタン製
【0040】
(イソシアネート)
トリレンジイソシアネート(TDI)、商品名:コスモネートT-80 三井化学SKCポリウレタン製
トリレンジイソシアネート(TDI)の配合量については、イソシアネートインデックスが、表1、表2に記載した数値となるように、質量部を調整した。
(架橋剤1)
グリセリン 新日本理化製
(架橋剤2)
ジエタノールアミン 三和油脂工業製
(整泡剤)
シリコーン系整泡剤、商品名:F702 信越化学工業製
(発泡剤)

(触媒1)
トリエチレンジアミン33%ジプロピレングリコール溶液、商品名:TEDA-L33 東ソー製
(触媒2)
オクチル酸スズ、商品名:ネオスタンU-28 日東化成製
【0041】
実施例1~14、比較例1~7
表1、表2に示すような配合量にてポリエーテルポリオールA、ポリマーポリオールB、ポリエーテルポリオールC、架橋剤、整泡剤、発泡剤および触媒の各成分を混合して混合物を調製した。ポリオールの組成に関して、実施例1~11および実施例13,14は、ポリエーテルポリオールA1とポリマーポリオールB1とポリエーテルポリオールC1を表1に示す配合割合にて混合したものを用い、実施例12は、ポリエーテルポリオールA1とポリマーポリオールB1とポリエーテルポリオールC2を表1に示す配合割合にて混合したものを用いた。
【0042】
また比較例1は、ポリエーテルポリオールA2とポリマーポリオールB1とポリエーテルポリオールC1を表2に示す配合割合にて混合したものを用い、比較例2は、ポリエーテルポリオールA1とポリマーポリオールB2とポリエーテルポリオールC1を表2に示す配合割合にて混合したものを用いた。比較例3および比較例5~7は、ポリエーテルポリオールA1とポリマーポリオールB1とポリエーテルポリオールC1を表2に示す配合割合にて混合したものを用いた。比較例4は、ポリエーテルポリオールA1とポリマーポリオールB1を表2に示す配合割合にて混合したものを用いた。比較例4は、ポリエーテルポリオールCを配合しない組成とした。尚、表1、表2におけるポリエーテルポリオールA、ポリマーポリオールB、ポリエーテルポリオールC、架橋剤、整泡剤、発泡剤および触媒の各成分の配合量を示す数値は、質量部を表す。
【0043】
前記各成分の混合物にイソシアネート成分を混合して原料混合物(ポリウレタンフォーム用組成物)を調製し、この原料混合物をベルトコンベア上に吐出した。該ベルトコンベアを移動させ、常温、大気圧下において、前記原料混合物を自然発泡させウレタン反応を生じせしめることにより、幅が1000mm、高さが約400mmである長尺ブロック状
の軟質ポリウレタンフォームを得た。
【0044】
実施例1~14、比較例1~7で得られた軟質ポリウレタンフォームのフォーム状態(フォームの形成状態)、密度、40%圧縮硬さ、反発弾性、湿熱圧縮残留ひずみおよび加工性について評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0045】
評価方法は以下の通りである。
(フォーム状態)
得られたブロック状の軟質ポリウレタンフォームを所定長さに切り出し、この切り出した試験片を24時間放置した後、軟質ポリウレタンフォーム裁断面を目視により観察し、フォーム状態を以下の通り評価した。
○:正常なフォームが形成され、セルの大きさが均一で整ってる。
×:独泡(独立気泡)となるため、フォームの一部が収縮して、フォームの形状が保てない。また発泡時の樹脂強度が弱く、発泡時にフォームが沈み、フォームの形状が保てない。
【0046】
(密度)
軟質ポリウレタンフォームを、スキン層を除き、縦380mm×横380mm×厚み50mmの寸法に裁断してブロック体を作製した。このブロック体を用い、JIS K 7222:2005に準拠して、軟質ポリウレタンフォームの見掛け密度(kg/m)を測定した。密度は30kg/m以上40kg/m未満が好ましい。密度が40kg/m未満であると、作業性の点から好ましく、40kg/m以上だと製造時の使用原料も多くなってコスト高となる。密度が30kg/m未満であると、へたり易くなる(湿熱圧縮残留ひずみが大きくなる)ため、好ましくない。
【0047】
(40%圧縮硬さ)
軟質ポリウレタンフォームの40%圧縮硬さ(N)は、JIS K 6400 2 A法に準拠して測定した。40%圧縮硬さは、40Nを超え、90N以下が好ましい。40%圧縮硬さが40Nを超えると、フォームをカットする際に、カット面が潰れにくく、加工性がよく、それが40N以下では、機械的強度が低下する。また、40%圧縮硬さが90Nを超えると湿熱圧縮残留ひずみが高くなる虞がある。40%圧縮硬さは、フォームの使用目的に合わせて任意に調整することができる。
【0048】
(反発弾性)
軟質ポリウレタンフォームの反発弾性(%)は、JIS K 6400‐3に準拠して測定した。反発弾性は50%以上が好ましい。反発弾性が50%未満では、目的とする十分なクッション性が得られない。反発弾性が50%以上であると、復元力が良くなるため、クッション性に優れたものとなる。
【0049】
(湿熱圧縮残留ひずみ)
軟質ポリウレタンフォームを、スキン層を除き、縦100mm×横100mm×厚み50mmの寸法に裁断してブロック体を作製した。このブロック体を用い、JIS K 6400-4:2012に準拠し、温度40℃、湿度95%の雰囲気下で、厚み方向に圧縮する比率を70%として圧縮し、この状態で22時間放置し、その後、圧縮状態を解除して室内にて15分間回復させた後、厚み方向の寸法を測定し、湿熱圧縮残留ひずみ(%)を求めた。湿熱圧縮残留ひずみは20%未満が好ましい。湿熱圧縮残留ひずみが20%未満では、圧縮に対する耐久性に優れるため、湿度の高い環境においても長期間繰返し使用できる。湿熱圧縮残留ひずみが20%以上だと、目的とする耐湿熱老化性の改善を図ることができない。より好ましくは、湿熱圧縮残留ひずみは、10%未満である。
【0050】
(加工性)
軟質ポリウレタンフォームを、スキン層を除き、縦380mm×横380mm×厚み50mmの寸法に裁断してブロック体を作製した。このブロック体をカット刃でカットし、カットした時の状態を基準としてフォームの加工性を以下の通り評価した。
○:カットすると、カット面が平滑となる。
×:カットの際、フォームを潰すようにカットがなされるため、フォームのカット面が波打つ状態となる。またフォームにベタツキがあるため、カット刃にフォームの切り屑が付着する。
【0051】
尚、比較例5および比較例7はいずれも、得られたフォームにおいてフォーム形状が保持できず、フォーム状態の悪いものであったため、密度、40%圧縮硬さ、反発弾性、湿熱圧縮残留ひずみおよび加工性については測定していない。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】