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特開2022-59586光学顕微鏡法を用いた染色された網状赤血球の成熟度分類
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  • 特開-光学顕微鏡法を用いた染色された網状赤血球の成熟度分類 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059586
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】光学顕微鏡法を用いた染色された網状赤血球の成熟度分類
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20220406BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20220406BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
G01N33/49 A
G01N33/48 M
G01N33/48 P
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021160333
(22)【出願日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】20199526
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.JAVASCRIPT
3.SWIFT
(71)【出願人】
【識別番号】516308401
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アン-カトリン・ライヘェンヴァルナー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・リヒター
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA03
2G045BA14
2G045BB25
2G045CA04
2G045CA25
2G045FA16
2G045FA26
2G045FB12
2G045JA03
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QR41
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】光学顕微鏡法を用いて、染色された網状赤血球を成熟度分類すること。
【解決手段】本発明は、全血試料からの網状赤血球を成熟度分類する方法であって、試料を超生体凝集染色試薬または蛍光凝集色素で染色する工程;染色された試料に光ビームを照明して、網状赤血球を検出する工程;各網状赤血球の(i)全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ);および(ii)網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)のパラメータを決定する工程;ならびにΛおよびΓについて決定された値に従って網状赤血球を4つの主要な成熟度クラスのうちの1つに成熟度分類する工程を含む、前記方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血試料からの網状赤血球を成熟度分類する方法であって
(a)該試料を超生体凝集染色試薬または蛍光凝集色素で染色する工程;
(b)染色された試料に、光検出装置、好ましくは顕微鏡で好ましくは200nm~780nmの波長範囲の光ビームを照明して、網状赤血球を検出する工程;
(c)各網状赤血球の、(i)全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ);および(ii)網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)のパラメータを決定する工程;ならびに
(d)ΛおよびΓについて決定された値に従って網状赤血球を4つの主要な成熟度クラスのうちの1つに成熟度分類する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
最終工程として、網状赤血球を列挙する工程を含み、前記列挙は、好ましくはクラス毎および試料毎である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記染色は、NMB(新メチレンブルー)、ブリリアントクレシルブルー、クリスタルバイオレット、メチルバイオレットおよびナイルブルーから選択される超生体凝集染色試薬で行われ、前記染色は、場合により、好ましくはナイトロジェンマスタード、cis-ジアミンジクロロ白金(II)もしくは誘導体、またはクロロエチルニトロソ尿素(CENU)による核酸を化学的に架橋する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記染色は、アクリジンオレンジ、オーラミンO、D-メチルオキサカルボシアニド、エチジンブロマイド、ピロニンY、チオフラビン-Tおよびチアゾールオレンジから選択される蛍光凝集色素で行われ、前記染色は、場合により、好ましくはナイトロジェンマスタード、cis-ジアミンジクロロ白金(II)もしくは誘導体、またはクロロエチルニトロソ尿素(CENU)による核酸を化学的に架橋する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)は、撮像モジュール、好ましくはモルフォロジーセグメンテーション演算を実行するように設計される撮像モジュールを含む装置で実行される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、工程(e)として、各染色された網状赤血球を、専門家により独立に分類された網状赤血球の画像レポジトリとモルフォロジー比較する工程をさらに含み、好ましくはモルフォロジー分類が工程(d)の分類と異なる網状赤血球がタグ付けされる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記モルフォロジー比較は、染色された網状赤血球の画像を、網状赤血球の前記画像レポジトリの画像でトレーニングされた機械学習ベースの方法に適用することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
成熟度分類は、Λ/Γの比に従って網状赤血球をクラス1、2、3または4に割り当てることを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
約>2.5のΛ/Γ値はクラス1を示し、約1~約2.5のΛ/Γ値はクラス2を示し、約0.35~約1のΛ/Γ値はクラス3を示し、約<0.35のΛ/Γ値はクラス4を示す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
全血試料から取得した1つまたはそれ以上の画像から網状赤血球を成熟度分類するコンピュータ実装方法であって、画像内で、各網状赤血球の、(i)全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ);および(ii)網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)のパラメータを決定する工程;ならびにΛおよびΓの値に従って該網状赤血球を4つの主要なクラスに成熟度分類する工程を含み、好ましくは該網状赤血球を列挙する工程をさらに含む、前記方法。
【請求項11】
対象の健康状態および/または処置に対する対象の反応を監視および決定するインビトロ方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を、前記対象から得た1つまたはそれ以上の全血試料で行うことを含む、前記方法。
【請求項12】
初期試料を、2、3、4、5、6、7日またはそれ以上の期間後に対象から採取した第2またはそれ以降の試料と比較した場合、クラス2、3または4、好ましくはクラス3または4、より好ましくはクラス4の網状赤血球数の増加は、低網状赤血球症において対象の健康の改善および/もしくは処置に対する陽性応答を示し、または高網状赤血球症において対象の健康の悪化、および/もしくは処置に対する陰性応答を示す、請求項11に記載のインビトロ方法。
【請求項13】
請求項1~9、11または12のいずれか1項に記載の方法を実行する手段を含む装置。
【請求項14】
請求項10に記載の方法を実行する手段を含む、データ処理装置。
【請求項15】
プログラムがコンピュータにより実行されると、請求項6、7または10のいずれか1項に記載の方法を該コンピュータに実行させる指示を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全血試料からの網状赤血球を成熟度分類する方法であって、試料を超生体凝集染色試薬または蛍光凝集色素で染色する工程;染色された試料に光ビームを照明して、網状赤血球を検出する工程;各網状赤血球の、(i)全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ);および(ii)網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)のパラメータを決定する工程;ならびにΛおよびΓについて決定された値に従って網状赤血球を4つの主要な成熟度クラスのうちの1つに成熟度分類する工程を含む、前記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤血球生成の監視は、例えば鉄欠乏性貧血または化学療法からの回復において患者の健康状態および様々な処置に対する応答を決定するのに不可欠である。赤血球生成の過程で、後期赤芽球が脱核すると、発達した細胞は、その後、フィラメント状のRNAネットワークである網状体を含む網状赤血球と呼ばれる。末梢血から得られる網状赤血球は、簡単に入手可能であり、細胞数および成熟度を決定することにより赤血球(RBC)の再生速度を示す(非特許文献1)。網状赤血球を検出する2つの主な方法である網状体の蛍光凝集染色または超生体染色が、一般に用いられる。染色方法はいずれも、細いフィラメント状のRNA鎖をネットワーク様フィラメントに凝集させ、これを顕微鏡で観察できる。
【0003】
自動血液学的分析器は、光学顕微鏡で手動で計数した細胞と比較して、網状赤血球のパラメータをより精密に、正確かつ再現性よく決定するが、各分析器は様々な試薬を使用し、これらはRNAおよび他の細胞成分への結合に対して様々な感受性を示す。したがって、様々な染色方法で、網状赤血球の成熟度を決定するための普遍的分類は存在しない(非特許文献2)。分類を統一する手法は、蛍光方法の未成熟網状赤血球画分(IRF)を決定することにより行われた。IRFは、網状赤血球の全体数と比較した未成熟な網状赤血球数の割合である(非特許文献3)。しかし、各クラスについてコンセンサスが見出されず、IRFも分析器によって異なる(非特許文献4)。別の分類手法は1930年代のLudwig Heilmeyerの研究に基づき、これは高密度の網状体を有する未成熟網状赤血球(クラス1)、広範であるが緩い網状ネットワークを有する網状赤血球(クラス2)、点在する網状体のネットワークを有する網状赤血球(クラス3)および点在する網状体の顆粒を有する成熟網状赤血球(クラス4)を含む4つの成熟度クラスを定義する(非特許文献4)。
【0004】
様々な自動血液学的分析器間の差異により、光学顕微鏡での手動計数は依然として、網状赤血球成熟度クラスの診断的決定の絶対的基準である。また、光学顕微鏡に光学的に類似した、全血球計数の全パラメータを決定する装置に対する関心が高まっている。
【0005】
したがって、手動、特に自動顕微鏡分析、ならびに導き出される診断的検出とつながりがあり得る、染色された網状赤血球を分析するための標準的な計量法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Pivaら、2015、Clinics in Laboratory Medicine、35、133~163
【非特許文献2】Van Den Bosscheら、2002、Clin. Chem. Lab. Med.、40(1)、69~73
【非特許文献3】Heimpelら、2010、Med. Klin.、105、538~543
【非特許文献4】Rileyら、2001、J. Clin. Labor. Anal.、15、267~294
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの必要性に対処し、全血試料からの網状赤血球を成熟度分類する方法であって、(a)試料を超生体凝集染色試薬または蛍光凝集色素で染色する工程;(b)染色された試料に、光検出装置、好ましくは顕微鏡で好ましくは200nm~780nmの波長範囲の光ビームを照明して、網状赤血球を検出する工程;(c)各網状赤血球の、(i)全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ);および(ii)網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)のパラメータを決定する工程;ならびに(d)ΛおよびΓについて決定された値に従って網状赤血球を4つの主要な成熟度クラスのうちの1つに成熟度分類する工程を含む、前記方法を提供する。方法は、有利には、使用したプラットフォームまたは装置と主として無関係である標準的な計量法に従って網状赤血球を分類することを可能にし、したがってほとんどの実務者が熟知している、十分に確立されたハイルマイヤーの分類スキームに従って、網状赤血球の均一な割り当てを可能にする。本発明による新しい方法論はさらに、処置後または疾患経過中の網状赤血球数の時間依存的変化に基づく、改善された診断読み取りを可能にする。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、方法は、最終工程として、網状赤血球を列挙する工程をさらに含む。前記列挙が、クラス毎および試料毎であることが特に好ましい。
【0009】
さらに好ましい実施形態において、染色は、NMB(新メチレンブルー)、ブリリアントクレシルブルー、クリスタルバイオレット、メチルバイオレットおよびナイルブルーから選択される超生体凝集染色試薬で行われる。さらに別の好ましい実施形態において、染色は、アクリジンオレンジ、オーラミンO、D-メチルオキサカルボシアニド、エチジンブロマイド、ピロニンY、チオフラビン-Tおよびチアゾールオレンジから選択される蛍光凝集色素で行われる。
【0010】
染色は、場合により、好ましくはナイトロジェンマスタード、cis-ジアミンジクロロ白金(II)もしくは誘導体、またはクロロエチルニトロソ尿素(CENU)により核酸を化学的に架橋する工程をさらに含み得る。
【0011】
別の実施形態において、上に言及した工程(c)は、撮像モジュールを含む装置で行われる。撮像モジュールは、モルフォロジーセグメンテーション演算を実行するように設計されることが好ましい。
【0012】
さらなる実施形態は、上に定義した方法であって、工程(e)として、各染色された網状赤血球を、専門家により独立に分類された網状赤血球の画像レポジトリとモルフォロジー比較する工程をさらに含む、前記方法に関する。分類により、モルフォロジー分類が工程(d)の分類と異なる網状赤血球がタグ付けされることが好ましい。
【0013】
好ましい実施形態において、前記モルフォロジー比較は、染色された網状赤血球の画像を、網状赤血球の前記画像レポジトリの画像でトレーニングされた機械学習ベースの方法に適用することを含む。
【0014】
本発明による方法の一実施形態において、成熟度分類は、Λ/Γの比に従って網状赤血球をクラス1、2、3または4に割り当てることを含む。好ましい実施形態において、約>2.5のΛ/Γ値はクラス1を示し、約1~約2.5のΛ/Γ値はクラス2を示し、約0.35~約1のΛ/Γ値はクラス3を示し、約<0.35のΛ/Γ値はクラス4を示す。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、全血試料から取得した1つまたはそれ以上の画像から網状赤血球を成熟度分類するコンピュータ実装方法であって、画像内で、各網状赤血球の、(i)全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ);および(ii)網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)のパラメータを決定する工程;ならびにΛおよびΓの値に従って網状赤血球を4つの主要なクラスに成熟度分類する工程を含む、前記コンピュータ実装方法に関する。方法は好ましくは網状赤血球を列挙する工程をさらに含む。
【0016】
別の態様において、本発明は、対象の健康状態および/または処置に対する対象の反応を監視および決定するインビトロ方法であって、上に定義した網状赤血球を成熟度分類する方法を、前記対象から得た1つまたはそれ以上の全血試料で行うことを含む、前記方法に関する。
【0017】
対象の健康状態および/または処置に対する対象の反応を監視および決定する前記インビトロ方法の好ましい実施形態において、初期試料を、2、3、4、5、6、7日またはそれ以上の期間後に対象から採取した第2またはそれ以降の試料と比較した場合、クラス2、3または4、好ましくはクラス3または4、より好ましくはクラス4の網状赤血球数の増加は、低網状赤血球症において対象の健康の改善および/もしくは処置に対する陽性応答を示し、または高網状赤血球症において対象の健康の悪化、および/もしくは処置に対する陰性応答を示す。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、上に定義した網状赤血球を成熟度分類する方法、または上に定義した対象の健康状態および/もしくは処置に対する対象の反応を監視および決定するインビトロ方法を行う手段を含む装置に関する。
【0019】
別の態様において、本発明は、上に定義した1つまたはそれ以上の画像から網状赤血球を成熟度分類するコンピュータ実装方法を実行する手段を含む、データ処理装置に関する。
【0020】
最後の態様において、本発明は、プログラムがコンピュータにより実行されると、上に定義したモルフォロジー比較工程を含む網状赤血球を成熟度分類する方法、または本明細書で定義されるコンピュータ実装方法をコンピュータに実行させる指示を含むコンピュータプログラムに関する。
【0021】
上に言及した特徴およびまだ説明されていない以下の特徴は、示された各組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせでまたは単独で使用できることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に従って明視野透過モードで記録された網状赤血球の定量的成熟度分類を示すグラフである。分類は、全細胞面積と比較した細胞内の染色された網状体面積の割合(Λ)に基づき、且つ全RNAフラグメントの面積に対するその周辺部の割合(Γ)に基づく。ハイルマイヤーにより提案された網状赤血球の4つのクラスが示されている。クラス1(閉じた円(1))は、最も未成熟なクラスで、例示的な細胞が(2)に示されている。クラス2(点のある開いた円(3))は、網状赤血球の2番目に若いグループに対応し(例示的な細胞が(4)に示されている)、例示的な細胞(6)のクラス3(開いた円(5))が続き、クラス4(点線の円(7);例示的な細胞(8))は最も成熟したグループである。
図2】染色された網状赤血球の別個のRGB(R:赤(10)、G:緑(11)、B:青(12))8ビット画像に分けられた明視野透過色(9)画像の一例である。細胞のサイズは、赤チャンネルに対して大津閾値を使用して決定される。網状体の面積の決定については、細胞壁がもっぱら青チャンネルに出現するので、青チャンネルから緑チャンネルを減算することにより、染色されたRNAのマスクを生成する。さらにImageJの自動閾値を、生成した画像に適用することで、染色された網状体のマスクが得られる(13)。
図3図1に示す本発明の明視野透過モードで記録された網状赤血球の定量的成熟度分類の異なる描写図である。この図において、Λ/Γ比は、細胞数(14)と比較して示されている。図は、ハイルマイヤーのスキームに従ってクラス1(閉じた円(1))、クラス2(点のある開いた円(3))、クラス3(開いた円(5))およびクラス4(点線の円(7))を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は特定の実施形態に関して記載されるが、この記載は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0024】
本発明の例示的な実施形態を詳細に記載する前に、本発明を理解するために重要な定義が示される。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「1つの(aおよびan)」は、文脈が別段明確に示さない限り、各複数形も含む。
【0026】
本発明の文脈において、用語「約」は、当業者が問題の特徴の技術的効果を依然として保証すると理解する精度の間隔を示す。用語は、典型的には、±25%の示された数値からの偏差を示す。特定の実施形態において、用語は±15%、±10%、±5%、±3%、±2%、±1%または±0.5%の示された数値からの偏差も示し得る。
【0027】
用語「含む(comprising)」は限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の目的のために、用語「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(essentially consisting of)」は、用語「を含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると解釈される。以下、ある群が、少なくとも特定の数の実施形態を含むことが定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を包含することも意味する。
【0028】
さらに、記載または特許請求の範囲における用語「(i)」、「(ii)」、「(iii)」もしくは「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」または「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、同様の要素を区別するために用いられ、必ずしも連続する順序または時間順を記載するために用いられるわけではない。
【0029】
このように用いられる用語が、適当な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態が、本明細書に記載または例示される以外の他の順序で動作可能であることを理解されるべきである。用語が方法、手順または使用の工程に関する場合、別段示されない限り、工程間の時間または時間間隔の一貫性は存在しない、すなわち工程を同時に行ってもよく、またはこのような工程の間に秒、分、時間、日、週などの時間間隔が存在してもよい。
【0030】
本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルなどは変更できるため、本発明は、これらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態のみを記載するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することは意図されないことも理解されるべきである。
【0031】
図面は、概略図であると考えるべきであり、図面に例示された要素が、必ずしも縮尺で示されるわけではない。むしろ様々な要素は、その機能および一般的な目的が当業者に明らかになるように示されている。
【0032】
別段定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術および科学用語は、当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0033】
上に示したように、本発明は、一態様において、全血試料からの網状赤血球を成熟度分類する方法であって、(a)試料を超生体凝集染色試薬または蛍光凝集色素で染色する工程;(b)染色された試料に、光検出装置、好ましくは顕微鏡で好ましくは200nm~780nmの波長範囲の光ビームを照明して、網状赤血球を検出する工程;(c)各網状赤血球の、(i)全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ);および(ii)網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)のパラメータを決定する工程;ならびに(d)ΛおよびΓについて決定された値に従って網状赤血球を4つの主要な成熟度クラスのうちの1つに成熟度分類する工程を含む、前記方法に関する。
【0034】
本明細書で用いられる用語「全血試料」は、当業者に公知の好適な方法により対象から得られる、哺乳動物、好ましくはヒトの血液試料に関する。本発明の文脈で用いられる試料は、好ましくは臨床的に許容される様式、より好ましくは核酸、特にRNAが保存される方法で採取されるべきである。「全血」は、本質的に赤血球および前駆細胞、白血病および前駆細胞、ならびに血漿中に懸濁した血小板を含む。ある特定の実施形態において、試料は、プールできる。
【0035】
本発明は、好ましくは、非プール試料の使用を想定する。本発明の特定の実施形態において、全血試料の内容物を特定の処理工程にかけてもよい。例えば、試料を希釈または濃縮してもよい。さらに、核酸安定化または劣化防止剤を添加してもよい。特に好ましい実施形態において、EDTAのような抗凝固剤の使用が想定される。さらに特定の実施形態において、全血試料を、染色前に初期細胞選別または細胞分離工程にかけてもよい。このような工程により、(網状赤血球のような前駆細胞を含む)赤血球が濃縮および/もしくは精製されるか、または網状赤血球が濃縮および/または精製されることが想定される。
【0036】
本発明による方法は、第1の工程として、上に定義した全血試料による「染色」の工程を想定する。この工程は、網状体の面積および周辺部を示すことが可能な任意の好適な染色剤で行うことができる。したがって、染色剤は、核酸構造、特にRNA構造を細胞と共に少なくとも部分的に安定化させること、および好ましくは光を照明したとき、これらの構造を好適な光学条件下で示すことが可能である。本明細書で用いられる用語「網状体」は、核酸、特にRNA、典型的にはリボソームRNAの網目様ネットワークを指し、これは染色条件下で視認可能になる。網状体は、網状赤血球を他の血液細胞と区別する特異的構造体である。本明細書で用いられる「網状赤血球」は、細胞核を有さない未成熟赤血球に関する。赤血球生成中、網状赤血球は、骨髄で発達および成熟し、次いで血流中を約1日循環した後、成熟した赤血球に発達する。健康な対象において、血液中の網状赤血球の割合は、典型的には成人で約0.5%~2.5%、および乳児で約2%~6%である。全血試料中の網状赤血球数は、近時の赤血球生成事象を表すため、典型的には骨髄活性の指標として用いられる。
【0037】
網状体に核酸形態が存在し、これは網状赤血球を成熟赤血球および他の細胞と区別することを可能にするため、染色は、凝集効果をもたらし、光学的検出手順において好適な対比を可能にする染色剤で好ましくは行われる。このような染色手法は、本発明の好ましい実施形態において、凝集染色試薬に基づく。
【0038】
本明細書で用いられる用語「凝集染色試薬」は、細胞内の核酸を含む構造体、特にリボソームに結合し、これらを凝集させると推測される染色剤を指す。本発明は、好ましい実施形態において、この機能または能力を有するすべての好適な凝集染色試薬の使用を想定する。
【0039】
好ましい一連の実施形態において、凝集染色試薬は超生体凝集染色剤である。「超生体」色素は、生物から除去された生細胞の染色のために典型的には用いられる。超生体凝集染色剤の好ましい例としてはNMB(新メチレンブルー)、ブリリアントクレシルブルー、クリスタルバイオレット、メチルバイオレットおよびナイルブルーが挙げられる。任意の好適な誘導体またはその機能的等価物の使用がさらに想定される。アズールBまたはその任意の好適な誘導体の使用も想定される。本発明は、まだ開発されていない可能性があり、且つ上記の機能を満たす超生体凝集染色試薬の使用をさらに想定する。NMB(新メチレンブルー)の使用が特に好ましい。さらなる情報は、例えば、Samuel M. Rapoport、2019、The reticulocyte、第1版、CRC Pressのような好適な文献供給源から得ることができる。
【0040】
さらに好ましい一連の実施形態において、凝集染色試薬は、蛍光凝集染色剤である。このような色素はまた、核酸を含む構造体、特にリボソームと相互作用し、好適な励起光に曝露されると、蛍光効果を発揮する。このような染色試薬の例としてはアクリジンオレンジ、オーラミンO、D-メチルオキサカルボシアニド、エチジンブロマイド、ピロニンY、チオフラビン-Tおよびチアゾールオレンジが挙げられる。任意の好適な誘導体またはその機能的等価物の使用がさらに想定される。本発明は、まだ開発されていない可能性があり、且つ上記の機能を満たす蛍光凝集染色試薬の使用をさらに想定する。さらなる情報は、例えば、Samuel M. Rapoport、2019、The reticulocyte、第1版、CRC Pressのような好適な文献供給源から得ることができる。
【0041】
染色を、当業者に公知の好適な手順に従って行ってもよい。特定の実施形態において、染色は、染色試薬の製造者により示唆される手順に従って行われる。例えば、典型的な染色手順は、染色試薬を例えば約1%の濃度で本明細書で定義される全血試料の混合物、および場合により緩衝液、例えばPBSに添加することを包含し得る。その後、混合物は一定の期間、例えば1分間、2分間などインキュベートされる。インキュベーション時間は、用いられる色素に適合させ得る。例えば、蛍光色素を用いる染色手法については、インキュベーション時間を、好ましくは製造者の指示に従って数分延長してもよい。
【0042】
後続の分析のために、染色された試料を、任意の好適な形態で提供してもよい。例えば、試料を、例えば染色直後に液体または溶液中で分析してもよい。あるいは、試料を、分析までしばらく収納してもよい。このような収納のために、染色された試料を、例えば、カバースライドでカバーしてもよく、または水性もしくは非水性封入剤で封入してもよい。封入剤が用いられる場合、特に試料を長期間収納する必要がある場合、試料を場合によりカバーガラスでカバーしてもよい。この手法は、典型的には、試料の安定な収納および実質的に恒久収納を可能にする。好適な水性封入剤の例としてはアクアテックス、ゼラチン、グリセリン、KaiserのグリセリンゼラチンおよびソルビトールF液E420が挙げられる。非水性封入剤の好適な例としてはDPX、entellan迅速封入剤、M-Glas液体カバーガラスおよびネオマウント無水封入剤が挙げられる。さらなる実施形態において、細胞は、任意の好適な固定方法および試薬で固定してもよい。例えば、グルタルアルデヒドが使用できる。
【0043】
さらなる情報は、臨床検査標準協会の文書H44-A2「Methods for Reticulocyte Counting (Automated Blood Cell Counters, Flow Cytometry, and Supravital Dyes);承認指針第2版」または任意のさらなる版のような好適な文献供給源から得ることができる。
【0044】
染色し、場合により収納した後、混合物を、後続の分析工程のために好適な担体上に配置してもよく、in situ分析してもよく、または分析装置に移送させてもよい。あるいは、染色を、後続の分析が行われる同じ分析装置で行ってもよい。
【0045】
非常に特定の実施形態において、本発明による染色手順を、別個の核酸の架橋と同時に行ってもよく、またはこれに先行してもよい。このような架橋は、例えば、当業者に公知の任意の好適な架橋試薬で行うことができる。このような試薬の例としてはナイトロジェンマスタード、すなわち、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、メルファランまたはベンダムスチンのような可変R基を有するビス-(2-エチルクロロ)アミンコア構造を持つアルキル化剤が挙げられる。さらなる例としてはシス-ジアミンジクロロ白金(II)、すなわち、シスプラチンが挙げられ、これは鎖内または鎖間架橋を形成することが可能である。シスプラチンの変異体または誘導体がさらに想定される。別の例としては、クロロエチルニトロソ尿素(CENU)、特にカルムスチン(BCNU)がある。ソラレンまたはマイトマイシンCのようなさらなる架橋剤も想定される。架橋工程の使用後に染色工程が続いてもよく、または同時に行ってもよい。さらなる実施形態において、架橋試薬の使用はまた、非凝集色素、例えば非凝集超生体色素または非蛍光凝集色素による染色と組み合わせることもできる。
【0046】
染色工程後、染色された試料を照明する。照明は、光検出装置の光ビームで行われる。200nm~780nmの範囲の光が用いられることが想定される。光の波長は、1つまたはそれ以上の因子、例えば色素の性質およびその励起波長、光検出装置の形態およびその機能的スペクトルに適合させ得る。本明細書で用いられる用語「光検出装置」は、試料、特に網状赤血球のような試料中の細胞から反射される光を検出および可視化することが可能な任意の光学システムに関する。光検出システムは、好ましい実施形態において、細胞を可視化および/または蛍光的に特徴付けることが可能な顕微鏡または顕微鏡システムである。これは光源を含んでいてもよく、または光源に連結してもよく、光源は、視覚的検出のためのレーザまたは光源のいずれかであり得る。レーザは、特に、蛍光染色試薬、好ましくは本明細書で言及される蛍光染色試薬を刺激できるレーザであり得る。したがって、顕微鏡システムは、蛍光顕微鏡法を可能にするシステムであり得る。顕微鏡システムは、試料、例えば分析される細胞から、一種の視覚反射および/または刺激に対する蛍光反応を受け得る。顕微鏡は、例えば、レンズとして設計できる焦点光学素子、および/またはダイヤフラムのような、当業者に公知の素子をさらに含み得る。顕微鏡システムは、評価モジュール、画像捕捉モジュール、AIモジュールもしくは神経回路網、コンピュータシステム、コンピュータネットワークもしくはインターフェース、データベース、画像レポジトリまたは実験室もしくは病院のシステムにさらに連結してもよい。特定の実施形態において、顕微鏡システムは、特に蛍光色素が用いられる場合、フローサイトメータまたはフローサイトメトリ機能を含むシステムを含んでいてもよく、または本質的にこれらに基づき構築してもよい。本発明により想定されるフローサイトメトリシステムの例としては、Siemens ADVIA 2120i、Sysmex XNシリーズ、Sysmex XEシリーズ、Abbott Diagnositics Cell-DYN SapphireおよびBeckman Coulter HmXが挙げられる。Siemens ADVIA2120iシステムの使用が特に好ましい。これらのシステムは、さらなる実施形態において、他のシステム、他のシステムの構成要素もしくはユニット、または個々の追加の構成要素もしくはユニットと組み合わせることができる。
【0047】
網状赤血球内の染色された試料を照明すると、網状体または網状ネットワーク構造体が検出可能になる。この構造体は、網状赤血球の発達状態に依存して様々な形態、面積サイズ、周辺部および様々な光学密度を有し得る。典型的には、網状赤血球は、以下の4つのクラス(ハイルマイヤー)に従って分類できる:クラス1=高密度の網状体を有する未成熟網状赤血球、クラス2=広範であるが緩い網状ネットワークを有する網状赤血球、クラス3=点在する網状体のネットワークを有する網状赤血球およびクラス4=点在する網状体の顆粒を有する成熟網状赤血球。ハイルマイヤーによるクラス1~4の例を図1に示す。
【0048】
本発明の方法のさらなる中心的工程において、各網状赤血球のパラメータが決定され、これはクラス、従って網状赤血球の発達状態の計量的で偏りのない決定を可能にする。これらのパラメータは、全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ)および網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)である。
【0049】
全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ)は、以下のように決定でき、
【数1】
式中、Ar,iは、すべての個々の染色された核酸領域の面積、すなわち1つの網状赤血球内の網状体または網状ネットワークの個々の部分すべての面積であり、Acは、面積Ar,iが測定され、且つ割合Γが測定された全網状赤血球の面積である。
【0050】
網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)は、以下のように決定でき、
【数2】
式中、Ur,iはすべての個々の染色された核酸領域の周辺部、すなわち1つの網状赤血球内の網状体または網状ネットワークの個々の部分すべての周辺部であり、Ar,iは、Ur,iが測定され、且つ割合Λが決定された、網状赤血球内のすべての個々の染色された核酸領域の面積、すなわち網状体または網状ネットワークの個々の部分すべての面積である。
【0051】
相応に得られた値は、後続の比較または評価プロセスのために、例えばコンピュータシステム、評価モジュールおよび/またはデータベースなどに保存される。
【0052】
典型的には、約200nmより小さい網状体部分または網状ネットワーク部分は、特に本明細書に記載される顕微鏡技術を使用した場合、本発明の文脈において検出できない可能性がある。したがって、網状体面積の検出可能限界は、約0.15μmに設定できる。
【0053】
後続の工程において、網状赤血球は、1~4の主要な成熟度クラスに成熟度分類される。この分類は、上に定義したΛおよびΓについて決定された値に従って行われる。
【0054】
有利には、すべての核酸フラグメント、特にRNAフラグメントの周辺部Urを計算し、網状体面積Arで除算すると、上に定義したクラス1~4への網状赤血球の分類の精度を有意に高めることができる。さらに、すなわち成熟度分類のための数式内での周辺部の使用は、有利には、より小さい網状体面積を有する粒子が多い細胞と比較した、より大きい網状体面積を有する粒子が少ない細胞間での区別を可能にする。したがって、この新規な手法は、ハイルマイヤーによるモルフォロジー的知見を自動化可能なアルゴリズムに翻訳し、非常に正確な網状赤血球の成熟度分類を可能にする、好適な計量法を初めて提供する。したがって、本発明は、定量的分析手法を提供するが、モルフォロジー手法は定性的であり、したがって、強い主観的偏りを伝達し、したがってその比較可能性を低下させる。
【0055】
特に好ましい実施形態において、網状赤血球の成熟度分類は、Λ/Γ値の使用に基づく。この比は、両方の割合の値を組み合わせて、図3から得られる特有の値への好適な翻訳を可能にする。したがって、成熟度分類は、Λ/Γの比に従って、網状赤血球をハイルマイヤーのクラス1、2、3または4に割り当てることを含む。
【0056】
Λ/Γ比は異なる値を有し得、これは、用いられる光検出システム、用いられる染色プロトコル、被験細胞の質および年齢、可能性のある前処理工程などのようないくつかの因子に影響される。このような差異は、当業者に公知の好適な校正手法により補正できる。校正は、例えば、所定の数の網状赤血球、様々な光検出システムでの分析のための標準的な染色条件などの使用を含み得る。特定の実施形態において、市販の校正液を、校正および参照のために使用してもよい。相応に想定される校正液の例としてはStreck,Inc.により製造されるCal-Chex、Cal-Chex A PlusまたはRetic-Chexなどがある。
【0057】
より好ましい実施形態において、Λ/Γ比は、以下の値に従って網状赤血球を分類するために使用できる:
【0058】
約>2.5のΛ/Γ比はクラス1の網状赤血球、すなわち高密度の網状体を有する未成熟網状赤血球を示す。したがって、約2.5の値は、クラス1と約2.5未満のΛ/Γ比を示すクラス2の間の境界値を構成する。
【0059】
約1~約2.5のΛ/Γ値はクラス2の網状赤血球、すなわち広範であるが緩い網状ネットワークを有する網状赤血球を示す。したがって、約1の値は、クラス2と約1未満のΛ/Γ比を示すクラス3の間の境界値を構成する。
【0060】
約0.35~約1のΛ/Γ値はクラス3の網状赤血球、すなわち点在する網状体のネットワークを有する網状赤血球を示す。したがって、約0.35の値は、クラス3と約0.35未満のΛ/Γ比を示すクラス4の間の境界値を構成する。
【0061】
約<0.35のΛ/Γ値はクラス4の網状赤血球、すなわち点在する網状体の顆粒を有する成熟網状赤血球を示す。
【0062】
示された境界値は、例えば異なる分析機器の光学測定の許容誤差により、染色差により、または異なるプログラムもしくはアルゴリズムなどに基づく網状体もしくは細胞のセグメンテーションにおける差により、±25%の許容係数、好ましくは±15%、±10%の許容係数、より好ましくは±5%、±3%、±2%、±1%または±0.5%の許容係数でわずかに変動してもよい。
【0063】
本発明は、クラス1と2;2と3;3と4の間の境界クラスの提供をさらに想定する。これらの境界は、クラス1もしくは2;2もしくは3;または3もしくは4への分類が、例えば言及された境界値に対応するΛ/Γ値により不可能または不明瞭である網状赤血球を含み得る。境界クラスを、上に提供したクラス定義への上に言及した許容係数の適用に基づきさらに確立してもよい。クラス1~4との境界クラスの再結合を、網状赤血球の染色および検出における光学的および化学的差異を考慮して、例えば校正または比較実験および計算の後に、好適な校正係数を用いて行うことができることがさらに想定される。さらなる情報は、Samuel M. Rapoport、2019、The reticulocyte、第1版、CRC Pressのような好適な文献供給源から得ることができる。
【0064】
本発明は、網状赤血球を列挙する工程を含む方法にさらに関する。本明細書で用いられる用語「列挙する」は、定義された面積、体積、時間または他の好適な単位毎に、好ましくは定義された体積、例えば試料体積毎に網状赤血球数を計数し合計することを意味する。特定の実施形態において、列挙を、本明細書で定義される網状赤血球のクラス毎に行ってもよい。例えば、試料のクラス1、2、3および/または4の網状赤血球をすべて計数してもよい。さらなる特定の実施形態において、列挙は、試料中の非網状赤血球、好ましくは赤血球の計数をさらに含み得る。対応する数を、例えば同じ対象、同じ対象の異なる試料、データベースからの基準値、本明細書で言及される校正基準、テキストまたは他の文献供給源からの基準値、独立に決定された健康または病気の対象からの基準値などの網状赤血球数、クラス1、2、3もしくは4の網状赤血球数および/または以前の計数結果とさらに比較してもよい。さらなる詳細を提供する好適なオンラインソースの一例を、https://apps.who.int/iris/handle/10665/61756(前回の来訪日2020年9月28日)にさらに見出すことができる。
【0065】
さらに特定の好ましい実施形態において、本発明は、上に定義した方法であって、工程(c)、すなわち各網状赤血球の、(i)全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ);および(ii)網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)のパラメータの決定が、撮像モジュールを含む装置で実行される、前記方法を想定する。
【0066】
本明細書で使用する用語「撮像モジュール」は、画像処理手順を実行することが可能なユニットを指す。したがって、本発明は、本明細書に記載される試料中に存在する網状赤血球または他の細胞成分の、好ましくは本明細書に記載される試料中に存在する染色された網状赤血球の画像を取得することを想定する。この画像取得は、前処理または縮尺作業をさらに含み得る。
【0067】
さらに、本発明は、具体的には、前記取得された画像の画像処理を想定する。本明細書で用いられる用語「画像処理」は、画像をデジタル形式に変換し、それに対する演算を行って、画像を向上させるか、および/または有用もしくは所望の情報を抽出する一般的方法に関する。画像処理の出力は、変更された画像または該画像と関連する特性もしくは値であり得る。
【0068】
本発明による撮像モジュールは、いくつかの実施形態において、他のモジュール、プログラム、データベース、画像レポジトリまたはネットワークなどと一緒に画像処理が可能なように設計される。
【0069】
画像処理は以下の作業、機能または手順のうちの1つまたはそれ以上を含み得る:明度またはコントラスト調整を含む画像強調;画像細分化およびピラミッド表現を含むウェーブレットおよび多重解像度処理;画像を保存するのに必要な収納または画像を伝送するための帯域幅を低減する技術を含む圧縮作業;細胞または細胞成分の形状、面積情報または周辺部情報の表示または記述に必要な画像構成要素の抽出を含むモルフォロジー処理;セグメンテーション、すなわち画像の構成部分または物体への画像の分割;セグメンテーション工程で得られたデータの表示;記述、すなわちあるクラスの物体と別のものとの区別を可能にする定量データの提供を含む、セグメンテーションされたデータからの属性の抽出;物体の認識、すなわち、その記述に基づく物体へのラベルの割り当てを含む。これらの作業、機能または手順は、好ましくは、例えば好適なコンピュータプログラムまたはAIモジュールの使用に基づき、自動またはプログラム化方式で実行できる。撮像モジュールが、モルフォロジーセグメンテーション演算、すなわち、画像構成要素の抽出、および構成部分もしくは物体、例えば網状体構造、網状ネットワーク構造体、細胞周辺部、細胞面積、網状体面積、網状体周辺部、網状体内での染色強度、網状体内の染色強度の差などへのその分割を実行するように設計されることが特に好ましい。
【0070】
本発明のさらに好ましい実施形態において、上記の方法は、追加の工程として、専門家により独立に分類された網状赤血球の画像レポジトリとの各染色された網状赤血球のモルフォロジー比較を含む工程(e)を含む。本明細書で用いられる用語「モルフォロジー比較」は、細胞に、特に試料中に存在する網状赤血球、またはより好ましくは細胞内部分、例えば網状体もしくは網状ネットワークに関連した構造、形状、形態、サイズ、パターンの存在、光学/視覚表示、コントラスト、色または染色密度などの特徴のうちの1つまたはそれ以上に対するマッチングおよび対比作業に関する。比較は、専門家によりハイルマイヤーに従ってクラス1~4に以前にまたは代替的に分類され、画像レポジトリに分類情報と共に収納された画像またはデータによる、画像、好ましくは本明細書に記載される撮像モジュールで処理された画像のマッチングおよび対比を含む。これらの収納された画像は、本発明の方法に従って得られた網状赤血球の画像で実行した画像処理と類似のまたは同一の画像処理をさらに経てもよい。
【0071】
前記モルフォロジー比較は、染色された網状赤血球の画像を機械学習ベースの方法に適用することを含むことが特に好ましい。本発明の文脈内で用いられる「機械学習」の概念は、典型的には:最初に、トレーニングフェーズ;および次に、予測フェーズの2段階手法に依存する。トレーニングフェーズにおいて、機械学習モデル(MLM)の1つまたはそれ以上のパラメータの値は、トレーニング技術およびトレーニングデータを用いて設定される。予測フェーズにおいて、トレーニングされたMLMは、測定データに基づき動作する。MLMの例示的なパラメータとしては:畳み込みニューラルネットワーク(CNN)のような人工ニューラルネットワーク(ANN)の所与の層におけるニューロンの重量;分類器カーネルのカーネル値などが挙げられる。
【0072】
MLMの構築は、パラメータの値を決定するトレーニングフェーズを含み得る。トレーニングを、網状赤血球の画像レポジトリの画像で実行することが特に好ましい。上に言及したように、前記レポジトリの画像は、有利には、専門家により独立に分類されている。専門家は、例えば組織学者または血液学者であってよい。専門家は、さらなる実施形態において、主観的分類を調整または一致させる専門家グループであってもよい。対応する結果、すなわち、クラス1、2、3または4への網状赤血球画像のラベリングは、その後、例えば画像と一緒に画像レポジトリに収納される。この情報は検索でき、トレーニングセットとしてのMLMによる使用も可能である。
【0073】
MLMの構築は、一般に、1つまたはそれ以上のハイパーパラメータの値を決定することも含み得る。典型的にはMLMの1つまたはそれ以上のハイパーパラメータの値が設定され、トレーニングフェーズでは変更されない。したがって、ハイパーパラメータの値は、外側ループの繰り返しで変更できる;一方で、MLMのパラメータの値は、内側ループの繰り返しで変更できる。時々、1つまたはそれ以上のハイパーパラメータの複数の値を試験またはさらには最適化できるように、複数のトレーニングフェーズが存在する場合もある。ほとんどのMLMの性能および精度は、ハイパーパラメータの値に強く依存する。
【0074】
例示的なハイパーパラメータとしては:畳み込みニューラルネットワークにおける層数;分類器カーネルのカーネルサイズ;ANNの入力ニューロン;ANNの出力ニューロン;層毎のニューロンの数;学習速度などが挙げられる。
【0075】
様々なタイプおよび種類のMLMが本発明の文脈で使用できる。例えば、新規性検出器MLM/異常検出器MLM、または分類器MLM、例えば2値分類器が使用できる。例えば、ディープラーニング(DL)MLMが使用できる:ここでは、DL MLMにより検出された特徴が予め定義できるのではなく、トレーニング中に学習できるモデルの各パラメータの値により設定できる。
【0076】
MLMを構築するために、いくつかの技術が使用できる。例えば、トレーニングのタイプは、MLMのタイプによって異なり得る。さらに、使用したトレーニングのタイプは、様々な実装において異なり得る。例えば、1つまたはそれ以上のエラー信号に対して定義される最適化機能を使用する繰り返し最適化を使用してもよい。
【0077】
次いで、上記の各染色された網状赤血球のモルフォロジー比較演算の結果を、上に定義した本発明によるΛおよびΓ計量手法に従って分類結果と比較する。両方の分類手法が一致する場合、特定のタグ付け、警告または所見は不要である。整合性は、特定の実施形態において、「モルフォロジーにより確認された計量分類」などとして収納できる。ΛおよびΓ計量手法とモルフォロジー手法の結果が不整合である場合、差異が検出された網状赤血球の画像(例えばライブ画像または収納された画像)に、タグを付ける。このタグ付けはさらに、得られた結果をさらに分析するようオペレータに警告またはメッセージをもたらし得る。あるいは、計量とモルフォロジー分析の両方の再実行を開始して、結果を確認してもよい。タグ付けは、測定差に従って内部分類することをさらに含み得る。例えば、計量手法により定義されたハイルマイヤークラスが、モルフォロジー手法により定義されたクラスと1異なる、例えば計量により定義されたクラス=2、モルフォロジーにより定義されたクラス=1、またはその逆などである場合、内部値1(=差の程度)がタグに付けられる。計量手法により定義されたハイルマイヤークラスが、モルフォロジー手法により定義されたクラスと1超、例えば2異なる、例えば計量により定義されたクラス=3、モルフォロジーにより定義されたクラス=1、またはその逆などである場合、内部値2(=差の程度)がタグに付けられる。設備、光学装置、画像レポジトリなどのチェックも含み得る、さらなる分析および/または制御演算を、差の程度に従って実行してもよい。
【0078】
差の程度が1である分類を分岐するために、本発明は、特定のグループの実施形態において、計量により得られた結果の選択を想定する。差の程度が2である分類を分岐するために、本発明は、特定のグループの実施形態において、計量によりおよびモルフォロジーにより定義されたクラス間にある分類の選択を想定する。分類を分岐するために、本発明はさらに、異なる結果を含む試料のタグ付け、および例えば血液塗抹に基づく異なる分析もしくは調製方法による同じ対象の試料、またはさらなる例えば並列な試料の別個の分析を想定する。
【0079】
さらなる態様において、本発明は、上に定義した全血試料から取得した1つまたはそれ以上の画像から網状赤血球を成熟度分類するコンピュータ実装方法に関する。方法は、画像内で、各網状赤血球の、(i)全細胞面積(Ac)に対する網状体面積(Ar)の割合(Λ);および(ii)網状体面積(Ar)に対する網状体の周辺部(Ur)の割合(Γ)のパラメータを決定する工程;ならびにΛおよびΓの値に従って4つの主要なクラスに網状赤血球を成熟度分類する工程を含む。方法はさらに、いくつかの実施形態において、好ましくは本明細書で上に定義した網状赤血球を列挙する工程を含む。方法は、本明細書で上に定義した画像取得および画像処理工程を含む。特定の実施形態において、本明細書で定義される網状赤血球の画像レポジトリとの画像のモルフォロジー比較も実装および実行できる。方法は、例えばクラウドベース、インターネットベース、イントラネットベースの任意の好適な収納もしくはコンピュータプラットフォームに実装してもよく、またはローカルコンピュータもしくは携帯電話上などに存在してもよい。
【0080】
さらなる態様において、本発明は、上に定義したコンピュータ実装方法を実行する手段を含むデータ処理装置に関する。装置は、本明細書で上に言及した本発明のコンピュータ実装方法の任意の1つまたはそれ以上の工程を実行する手段を含む。したがって、本明細書に記載されるコンピュータ実装方法のいずれかは、工程を実行するように構成できる1つまたはそれ以上のプロセッサを含むコンピュータシステムですべてまたは部分的に実行できる。したがって、本実施形態の一部は、潜在的に各工程または各工程群を実行する異なる構成要素と共に、本明細書に記載のコンピュータ実装方法のいずれかの工程を実行するように構成されたコンピュータシステムを対象とする。方法の対応する工程はさらに、同時または異なる順番で実行できる。さらに、これらの工程の一部を、他の方法の他の工程の一部と共に使用してもよい。また、工程のすべてまたは一部は任意であってよい。さらに、方法のいずれかの工程のいずれかを、これらの工程を実行するためのモジュール、回路または他の手段で実行してもよい。
【0081】
プログラムがコンピュータにより実行されると、本明細書で定義される本発明のコンピュータ実装方法のいずれか、または本明細書で言及される本発明の方法の任意の1つもしくはそれ以上のコンピュータ化可能な工程をコンピュータに実行させる指示を含むコンピュータプログラムも想定される。
【0082】
上に定義したコンピュータプログラム製品を含むコンピュータ可読記憶媒体の提供も想定される。コンピュータ可読記憶媒体は、サーバ要素に連結してもよく、クラウド構造に存在してもよく、またはインターネットまたはイントラネットを介して1つもしくはそれ以上のデータベース構造もしくは顧客データベースなどに連結してもよい。
【0083】
本明細書に記載されるソフトウェア部品またはコンピュータプログラムもしくは機能のいずれかは、例えば従来の技術またはオブジェクト指向技術を用いて、例えばJava、Python、Javascript、VB.Net、C++、C#、C、Swift、Rust、Objective-C、Ruby、PHPまたはPerlのような任意の好適なコンピュータ言語を用いてプロセッサにより実行されるソフトウェアコードとして実装できる。ソフトウェアコードは、一連の指示または命令として、収納および/または伝送のためにコンピュータ可読媒体に収納でき、好適な媒体としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードドライブのような磁性媒体、コンパクトディスク(CD)またはDVD(デジタル多用途ディスク)のような光学媒体、フラッシュメモリなどが挙げられる。コンピュータ可読媒体は、このような収納または伝送装置の任意の組み合わせであってよい。このようなプログラムはまた、コード化されて、インターネットを含む様々なプロトコルに従う有線、光学および/または無線ネットワークによる伝送に適合されるキャリア信号を用いて伝送できる。そのようなものとして、本発明によるコンピュータ可読媒体は、このようなプログラムでコード化されたデータ信号を用いて作製できる。プログラムコードでコード化されたコンピュータ可読媒体を、互換性のある装置と共に梱包してもよく、または個別に他の装置(例えばインターネットからのダウンロードを介して)と別個に提供してもよい。任意のこのようなコンピュータ可読媒体は、単一のコンピュータプログラム製品(例えばハードドライブ、CDまたはコンピュータシステム全体)にまたは該製品内に常駐させてもよく、且つシステムもしくはネットワーク内の異なるコンピュータプログラム製品にまたは該製品内に存在してもよい。コンピュータシステムは、本明細書で言及される結果のいずれかをユーザーに提供するモニタ、プリンタまたは他の好適なディスプレイを含み得る。
【0084】
さらなる態様において、本発明は、対象の健康状態および/または処置に対する対象の反応を監視および決定するインビトロ方法に関する。この方法は、本明細書で定義される対象の全血試料から網状赤血球を成熟度分類する方法を行うことを含む。方法は、本明細書で定義される試料全体に対しておよび/またはクラス毎に網状赤血球を列挙する工程を含む。試料中の網状赤血球の分類を行い、場合により列挙した後、得られた結果と1つまたはそれ以上の基準値または数との比較を行ってもよい。例えば、試料体積毎または試料体積毎のクラス毎の網状赤血球の得られた数を、正常または健康な対象から得られた数と比較してもよい。さらに、これらを、特定の疾患、例えば赤血球生成、血液細胞周期または全般的な血液細胞の数に影響を与える疾患、例えば貧血または骨髄障害と診断された対象から得られた数と比較してもよい。さらなる実施形態において、数をデータベース、テキスト、文献供給源、病院文書などからの基準数と比較してもよい。
【0085】
本明細書で使用する用語「健康状態」は、例えば健康な個人と比較した、対象の疾患の存在または不在を指す。特定の実施形態において、用語は、医学的状態または疾患状態の悪化または改善のような健康の発達傾向にさらに関し得る。
【0086】
特定の実施形態において、対象の健康状態を監視または決定する方法は、健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を下回る、試料中の網状赤血球の全体数を結果として提供し得るか、または同じクラス1の健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を下回る、クラス1の網状赤血球数を結果として提供するが、他のクラスは、被験および参照試料中、同様の数字を示し;または同じクラス2の健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を下回る、クラス2の網状赤血球数を結果として提供するが、他のクラスは、被験および参照試料中、同様の数字を示し;または同じクラス3の健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を下回る、クラス3の網状赤血球数を結果として提供するが、他のクラスは、被験および参照試料中、同様の数字を示し;または同じクラス4の健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を下回る、クラス4の網状赤血球数を結果として提供するが、他のクラスは、被験および参照試料中、同様の数字を示し;または対応するクラスの健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を下回る、クラス1および2、クラス2および3、クラス3および4、クラス1、2および3またはクラス2、3および4の網状赤血球数を結果として提供するが、他のクラスは、被験および参照試料中、同様の数を示す。これらの結果は、例えば薬物、腫瘍、放射線療法もしくは感染症による骨髄不全;肝硬変;低い鉄レベル、もしくは低いビタミンB12もしくは葉酸レベルにより生じ得る貧血;または慢性腎疾患を示すと解釈できる。これらの疾患は、本発明の文脈内で「低網状赤血球症」と理解される。
【0087】
特定の実施形態において、対象の健康状態を監視または決定する方法は、健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を上回る、試料中の網状赤血球の全体数を結果として提供し得るか、または同じクラス1の健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を上回る、クラス1の網状赤血球数を結果として提供し得るが、他のクラスは、被験および参照試料中、同様の数字を示し;または同じクラス2の健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を上回る、クラス2の網状赤血球数を結果として提供するが、他のクラスは、被験および参照試料中、同様の数字を示し;または同じクラス3の健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を上回る、クラス3の網状赤血球数を結果として提供するが、他のクラスは、被験および参照試料中、同様の数字を示し;または同じクラス4の健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を上回る、クラス4の網状赤血球数を結果として提供するが、他のクラスは、被験および参照試料中、同様の数字を示し;または対応するクラスの健康な対象の参照試料中の網状赤血球数を上回る、クラス1および2、クラス2および3、クラス3および4、クラス1、2および3またはクラス2、3および4の網状赤血球数を結果として提供するが、他の分類は、被験および参照試料中、同様の数を示す。これらの結果は、通常より早く破壊された赤血球が原因であり得る貧血(すなわち、溶血性貧血);出血;胎児もしくは新生児の血液障害(胎児赤芽球症);またはエリスロポエチンの産生の増加による腎疾患を示すと解釈できる。これらの疾患は、本発明の文脈内で「高網状赤血球症」と理解される。
【0088】
本明細書で使用する用語「処置に対する反応」は、赤血球生成に影響を与え得るか、または同じ障害で診断される上に言及した疾患もしくはさらに他の疾患のいずれかと関係があり得る疾患の処置に対する対象の陽性または陰性応答を指す。
【0089】
対象の健康状態および/または処置に対する対象の反応を監視および決定するのに想定される方法は、特定の実施形態において、対象から採取した1超の試料で本発明の方法を行うことを含む。例えば、試料を最初の時点で採取してもよく、その後さらなる試料を一定期間後に採取してもよい。期間は、当業者に好適であるとみなされる任意の期間であり得る。期間は、対象の疾患もしくは処置、その入院状況、対象の健康状態または診断に関連する任意の他の因子により決定できる。特定の実施形態において、さらなる試料は2、3、4、5、6、7日またはそれ以上の期間後に対象から採取される。10日、14日、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月またはそれ以上も想定される。
【0090】
対象から異なる時点で採取された試料による列挙および分類手順の比較は、網状赤血球の同様の数および/もしくはクラス分布、全般的にもしくは1つもしくはそれ以上のクラス内の網状赤血球数の増加、または全般的にもしくは1つもしくはそれ以上のクラス内の網状赤血球数の減少を結果として提供し得る。次いで、対応する結果は、診断的結論に帰するのに使用できる。
【0091】
例えば、最初におよびその後採取された試料を比較した場合、全般的にまたはクラス2、3もしくは4の網状赤血球数の増加は、例えば薬物、腫瘍、放射線療法もしくは感染症による骨髄不全;肝硬変;低い鉄レベル、もしくは低いビタミンB12もしくは葉酸レベルにより生じ得る貧血;または慢性腎疾患のような低網状赤血球症の場合の対象の健康の改善および/または処置に対する陽性応答を示す。
【0092】
同様に、最初におよびその後採取された試料を比較した場合、全般的にまたはクラス2、3もしくは4の網状赤血球数の増加は、溶血性貧血;出血;胎児もしくは新生児の血液障害(胎児赤芽球症);またはエリスロポエチンの産生の増加による腎疾患のような高網状赤血球症の場合の対象の健康の悪化および/または処置に対する陰性応答を示す。
【0093】
さらなる実施形態において、最初におよびその後採取された試料を比較した場合、全般的にまたはクラス2、3もしくは4の網状赤血球数の減少は、溶血性貧血;出血;胎児もしくは新生児の血液障害(胎児赤芽球症);またはエリスロポエチンの産生の増加による腎疾患のような高網状赤血球症の場合の対象の健康の改善および/または処置に対する陽性応答を示す。
【0094】
別の実施形態において、最初におよびその後採取された試料を比較した場合、全般的にまたはクラス2、3もしくは4の網状赤血球数の減少は、例えば薬物、腫瘍、放射線療法もしくは感染症による骨髄不全;肝硬変;低い鉄レベル、もしくは低いビタミンB12もしくは葉酸レベルにより生じ得る貧血;または慢性腎疾患のような低網状赤血球症の場合の対象の健康の悪化および/または処置に対する陰性応答を示す。さらなる詳細は、例えばhttps://www.statpearls.com/kb/viewarticle/28438(前回の来訪日2020年9月28日)のような好適な文献またはインターネット供給源から得ることができる。
【0095】
さらなる態様において、本発明は、本発明による方法を実行する手段を含む装置に関する。装置は、したがって、本明細書で上に定義した染色作業を実行することが可能なモジュールを含み得る。染色モジュールは、細胞調製、細胞分取、細胞精製、化学処理、染色、洗浄などのための要素、および場合により収納機能を含み得る。このモジュールは、例えば、ロボット主体または機能からなり得る。装置は、染色された試料を照明することが可能なモジュールをさらに含み得る。このモジュールは、顕微鏡または顕微鏡システムの形態を有し得、レンズとして設計できる集束光学素子、および/またはダイヤフラムを含み得る。特定の実施形態において、顕微鏡システムは、特に蛍光色素を使用する場合、フローサイトメータまたはフローサイトメトリ機能を含むシステムをさらに含んでいてもよく、または本質的にこれらに基づき構築してもよい。顕微鏡モジュールは、網状赤血球内で、本明細書に記載されるパラメータΛおよびΓを決定することが可能な評価モジュールにさらに連結してもよい。この評価モジュールは、例えば、実装してもよく、または本明細書で上に定義した撮像モジュール、すなわち本明細書に記載される試料中に存在する網状赤血球または他の細胞成分の、好ましくは本明細書に記載される試料中に存在する染色された網状赤血球の取得された画像で画像処理手順を実行することが可能なユニットに連結してもよい。網状赤血球のパラメータΛおよびΓの測定値をハイルマイヤーによるクラス1~4に帰属させることが可能な成熟度分類モジュールの存在も想定される。このモジュールは、例えばコンピュータベースのモジュールまたはAIモジュールもしくは神経回路網、コンピュータシステム、コンピュータネットワークもしくはインターフェースであってよく、場合によりデータベース、画像レポジトリまたは実験室もしくは病院のシステムに連結してもよい。
【実施例0096】
網状赤血球の検出
網状赤血球の検出のための材料および方法
試料。末梢血をインフォームドコンセントおよびEthikkommission der Universitat Erlangenの申請316_14Bにより承認された手順により健康な提供者から採取した。各試料からの血液を4.7mlのEDTA被覆チューブに採取した。すべての試料を採取から6時間以内に処理した。
【0097】
未成熟赤血球の決定を、細胞質RNAを網状体様ネットワークに沈殿させる超生体色素を使用することにより実現した。網状赤血球を塩基性新メチレンブルー(NMB、c=0.5%、Sigma-Aldrich)色素で処理した。色素液を全血に1分間添加した。血液塗抹を作製して、光学顕微鏡下でこのフィラメント状のネットワークを可視化させた。
【0098】
光学配置。DMi8 Leica倒立顕微鏡に組み込まれたカメラ(Apex 3-CMOSプリズムベースのRGBカメラ、JAI)と、40倍対物(HP PL APO 40×/0.95 CORR PH2、Leica)により透過モードで明視野画像を記録することにより、網状赤血球の同定を実現した。
【0099】
統計分析。ImageJを使用して、画像を分析した。カラー画像をRGB-グレースケール画像に変換することにより、染色された網状体のセグメンテーションを達成した。自動閾値アルゴリズムを緑チャンネルで適用して、網状体の面積および周辺部を決定した。
【0100】
以下の図面(図1図2図3)は例示の目的で提供される。したがって、図面が限定的であると解釈されるべきではないことが理解される。当業者は、本明細書に記載された原理のさらなる変更を明確に想定できる。
図1
図2
図3
【外国語明細書】