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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059615
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】乗物用シート及びその組付方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20220406BHJP
   B68G 7/052 20060101ALI20220406BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20220406BHJP
   A47C 27/15 20060101ALI20220406BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
B60N2/90
B68G7/052 A
A47C31/02 B
A47C27/15 B
F16B2/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007313
(22)【出願日】2022-01-20
(62)【分割の表示】P 2021540504の分割
【原出願日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2020038508
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020038510
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 和也
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健太
(72)【発明者】
【氏名】大隈 敬
(57)【要約】
【課題】
本発明は、空気流通路を有するパッドと、表皮材と、表皮係止クリップとを備え、表皮係止クリップの抜けを防止できる乗物用シートを提供することを目的とする。
【解決手段】
乗物用シート51は、空気流通路55を有するパッド52と、表皮材33と、パッド52に埋め込まれて表皮材33の所定の線状部分34を吊り込む表皮係止クリップ35とを備える。パッド52は、表皮係止クリップ35を埋め込む本体部材56と、本体部材56上に配置される中間層部材57と、中間層部材57上に配置される表層部材58とを含む。本体部材56が、線状部分34に沿って延在して表層部材58の表面と略同一面を画定するように膨出する線状膨出部59を含み、表皮材33が表層部材58から線状膨出部59を超えて延出する部分に於いて表皮係止クリップ35に吊り込まれている。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流通路を有するパッドと、前記パッドにおける厚さ方向の表側を覆う表皮材と、前記パッドに埋め込まれて前記表皮材の所定の線状部分を吊り込む表皮係止クリップとを備える乗物用シートであって、
前記パッドは、
前記表皮係止クリップを埋め込む本体部材と、
前記本体部材上に配置され、前記空気流通路の一部を画定する中間層部材と、
前記中間層部材上に配置され、前記空気流通路の前記一部を前記表側から画定する表層部材と
を含み、
前記本体部材が、前記線状部分に沿って延在して前記表層部材の表面と略同一面を画定するように膨出する線状膨出部を含み、前記表皮材が前記表層部材から前記線状膨出部を超えて延出する部分に於いて前記表皮係止クリップに吊り込まれていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記線状膨出部の前記表皮材が吊り込まれている側とは反対側に、前記線状膨出部に沿って延在する線状棚面が設けられることにより、前記線状膨出部の前記線状棚面よりも基端側に位置する第1側面及び前記線状膨出部の前記線状棚面よりも遊端側に位置する第2側面が画定され、
前記中間層部材が、その端縁が前記第1側面に略衝当するように配置され、前記表層部材が、その端縁が前記第2側面に略衝当するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記表皮係止クリップに於ける前記本体部材に埋設された部分が、前記第2側面の延長面よりも前記線状部分側に位置することを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記表皮係止クリップは、前記本体部材に埋め込まれた基板と、前記基板から前記厚さ方向の前記表側に延出して前記線状部分に係合する係止片とを含み、
前記係止片の延出端は、前記パッドに埋め込まれておらず、前記表層部材の底面よりも前記厚さ方向の前記表側に位置することを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
空気流通路を有するパッドと、前記パッドにおける厚さ方向の表側を覆う表皮材と、前記パッドに埋め込まれて前記表皮材の所定の線状部分を吊り込む表皮係止クリップとを備える乗物用シートに於ける、前記パッド、前記表皮材及び前記表皮係止クリップの組付方法であって、
前記表皮係止クリップが埋め込まれた前記パッドを成形するステップと、
前記パッドを所定の位置に設置するステップと、
前記表皮係止クリップに前記表皮材の前記線状部分を係止させるステップと
を備え、
前記パッドは、
前記表皮係止クリップを埋め込む本体部材と、
前記本体部材上に配置され、前記空気流通路の一部を画定する中間層部材と、
前記中間層部材上に配置され、前記空気流通路の前記一部を前記表側から画定する表層部材と
を含み、
前記本体部材が、前記線状部分に沿って延在して前記表層部材の表面と略同一面を画定するように膨出する線状膨出部を含み、前記表皮材が前記表層部材から前記線状膨出部を超えて延出する部分に於いて前記表皮係止クリップに吊り込まれている、組付方法。
【請求項6】
前記成形するステップは、前記線状膨出部の前記表皮材が吊り込まれている側とは反対側に、前記線状膨出部に沿って延在する線状棚面を設けることにより、前記線状膨出部の前記線状棚面よりも基端側に位置する第1側面及び前記線状膨出部の前記線状棚面よりも遊端側に位置する第2側面を画定することを含み、
前記設置するステップは、前記中間層部材を、その端縁が前記第1側面に略衝当するように配置することと、前記表層部材を、その端縁が前記第2側面に略衝当するように配置することとを含む、請求項5に記載の組付方法。
【請求項7】
前記成形するステップは、前記表皮係止クリップに於ける前記本体部材に埋設された部分が、前記第2側面の延長面よりも前記線状部分側に位置するように行われる、請求項6に記載の組付方法。
【請求項8】
前記表皮係止クリップは、前記本体部材に埋め込まれた基板と、前記基板から前記厚さ方向の前記表側に延出して前記線状部分に係合する係止片とを含み、
前記成形するステップは、前記係止片の延出端が、前記パッドに埋め込まれず、前記表層部材の底面よりも前記厚さ方向の前記表側に位置するようになされる、請求項5~7の何れか一項に記載の組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気流通路を有するパッドと、パッドにおける厚さ方向の表側を覆う表皮材と、パッドに埋め込まれて表皮材の所定の線状部分を吊り込む表皮係止クリップとを備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物用シートのシートクッション及びシートバックにおける着座面には、外観形状を維持するために線状の凹みが設けられることがある(図1参照)。表皮材はこの線状の凹みに吊り込まれて表皮係止クリップによってパッドに固定される。例えば特許文献1及び2には、パッドに埋設される基板と、基板に立設されて表皮材を係止する1対の係止部とを備える表皮係止クリップが記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、パッド内に設けられた空気流通路を介してシートの表面から空気を送出又は吸引するエアーベンチレーションシステム(AVS)を備えた乗物用シートが記載されている。パッドは、空気流通路を形成するために複数の部材を積み重ねることによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6228562号公報
【特許文献2】特許第6339802号公報
【特許文献3】特開2019-206340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッドは、発泡ウレタン等の発泡樹脂によって構成され、表皮係止クリップは、パッドを発泡する際にパッド内に埋め込まれる。空気流通路を有するパッドの表層部分は比較的薄いパッド部材によって構成される。表皮係止クリップは、パッドに於ける薄い部分に埋め込まれると、表皮材を引っ張った際に荷重に耐えられずパッドから抜けてしまうおそれがある。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明は、空気流通路を有するパッドと、表皮材と、表皮係止クリップとを備え、表皮係止クリップの抜けを防止できる乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある実施形態は、空気流通路(55)を有するパッド(52)と、前記パッド(52)における厚さ方向の表側を覆う表皮材(33)と、前記パッド(52)に埋め込まれて前記表皮材(33)の所定の線状部分(34)を吊り込む表皮係止クリップ(35)とを備える乗物用シート(51)であって、前記パッド(52)は、前記表皮係止クリップ(33)を埋め込む本体部材(56)と、前記本体部材(56)上に配置され、前記空気流通路(55)の一部(55b)を画定する中間層部材(57)と、前記中間層部材(57)上に配置され、前記空気流通路(55)の前記一部(55b)を前記表側から画定する表層部材(58)とを含み、前記本体部材(56)が、前記線状部分(34)に沿って延在して前記表層部材(58)の表面と略同一面を画定するように膨出する線状膨出部(59)を含み、前記表皮材(33)が前記表層部材(58)から前記線状膨出部(59)を超えて延出する部分に於いて前記表皮係止クリップ(35)に吊り込まれていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、本体部材が、線状部分に沿って延在して表層部材の表面と略同一面を画定するように膨出する線状膨出部を含み、表皮材が表層部材から線状膨出部を超えて延出する部分に於いて表皮係止クリップに吊り込まれていることにより、パッドに於ける表皮係止クリップを埋め込む部分が厚くなるため、表皮係止クリップの抜けが防止された乗物用シートを提供することができる。
【0009】
本発明のある実施形態によれば、上記構成に於いて、前記線状膨出部(59)の前記表皮材(33)が吊り込まれている側とは反対側に、前記線状膨出部(59)に沿って延在する線状棚面(61)が設けられることにより、前記線状膨出部(59)の前記線状棚面(61)よりも基端側に位置する第1側面(62)及び前記線状膨出部(59)の前記線状棚面(61)よりも遊端側に位置する第2側面(63)が画定され、前記中間層部材(57)が、その端縁が前記第1側面(62)に略衝当するように配置され、前記表層部材(58)が、その端縁が前記第2側面(63)に略衝当するように配置されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、線状膨出部に線状棚面、第1側面及び第2側面が設けられ、中間層部材が、その端縁が第1側面に略衝当するように配置され、表層部材が、その端縁が第2側面に略衝当するように配置されることにより、表皮係止クリップの抜けが防止されるとともに、中間層部材及び表層部材の位置決めが容易になる。
【0011】
本発明のある実施形態によれば、上記構成に於いて、前記表皮係止クリップ(35)に於ける前記本体部材(56)に埋設された部分が、前記第2側面(63)の延長面よりも前記線状部分(34)側に位置することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、表皮係止クリップに於ける本体部材に埋設された部分が、第2側面の延長面よりも線状部分側に位置することにより、パッドによる表記係止クリップの保持が強固になる。
【0013】
本発明のある実施形態によれば、上記構成の何れかに於いて、前記表皮係止クリップ(35)は、前記本体部材(56)に埋め込まれた基板(40)と、前記基板(40)から前記厚さ方向の前記表側に延出して前記線状部分(34)に係合する係止片(12)とを含み、前記係止片(12)の延出端は、前記パッド(52)に埋め込まれておらず、前記表層部材(58)の底面よりも前記厚さ方向の前記表側に位置することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、表皮係止クリップの係止片の延出端は、パッドに埋め込まれておらず、表層部材の底面よりも厚さ方向の表側に位置することにより、パッドの表面から表皮係止クリップの係合片までの距離が比較的短くなり、線状部材の表皮係止クリップへの取り付けが容易になる。
【0015】
シートを構成する部品のレイアウトによっては、表皮係止クリップを小型化すること、特に基板の幅を狭くすることが求められる。このような場合でも表皮係止クリップをパッドに対し、強固に支持させることが望まれている。本発明のある実施形態は、パッドに強固に支持された表皮係止クリップを提供することを目的とする。
【0016】
本発明のある実施形態は、パッド(5)に所定の幅及び深さをもって所定方向に延在するように設けられた溝(8)内にて、前記パッド(5)に埋設され、前記パッド(5)の少なくとも一部を覆う表皮材(6)に設けられた被係止部(6c)を固定するための表皮係止クリップ(10)であって、前記所定方向及び前記溝(8)の幅方向に沿って延在して少なくとも前記幅方向の端部において前記パッド(5)に埋設されるべき基板(11)と、前記被係止部(6c)を係止するべく、前記幅方向に互いに対向するように前記基板(11)に立設され、互いに対向する側に係止爪(18)を備えた1対の係止片(12)と、前記係止片(12)の少なくとも一方の前記幅方向における外側において前記基板(11)に対向する張出部(21)を含む張出片(13)とを備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、基板の幅方向の両端部だけでなく、張出部がパッドに埋設されるため、表皮係止クリップがパッドに強固に支持される。
【0018】
本発明のある実施形態は、上記構成において、前記張出片(13)が、前記基板に立設された立設部(20)を含み、前記張出部(21)は、前記立設部(20)の遊端側から前記基板(11)の前記幅方向の外向きに延出することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、1対の係止片間にパッドが入り込まないように、かつ、基板、立設部及び張出部に囲まれた部分にパッドが充填されるようにパッドを成形することが容易になる。
【0020】
本発明のある実施形態は、上記構成において、前記立設部(20)が、前記所定方向に間隔をおいて前記基板(11)から延出する少なくとも1対の柱状体(20a)を含み、前記柱状体(20a)間が開口(23)をなすことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、開口にパッドが入り込むため、表皮係止クリップがパッドに強固に支持される。
【0022】
本発明のある実施形態は、上記構成において、前記張出片(13)は、前記所定方向における前記張出部(21)の中間部と前記基板(11)とに連結する補強リブ(22)を更に含むことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、補強リブによって張出部が補強されるとともに、補強リブがパッド内に埋設されるため、表皮係止クリップがパッドに強固に支持される。
【0024】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記張出部(21)は、前記基板(11)の前記幅方向の端部の対向面に平行な対向面を有することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、張出部と基板の幅方向の端部との間にパッドが入り込むため、表皮係止クリップがパッドに強固に支持される。また、張出部と基板の幅方向の端部と互いの対向面が平行であるため、表皮係止クリップを形成するための金型を抜き出しやすく、金型の複雑化を抑制できる。
【0026】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記基板(11)の前記幅方向の前記端部に、隣接する部分に対して前記溝(8)の深さ方向にずれた段違い部分(16)が設けられていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、段違い部分にパッドが入り込むことによって表皮係止クリップがパッドに強固に支持され、段違い部分の段差を形成するための形状によって表皮係止クリップの剛性が向上する。
【0028】
また、従来の表皮係止クリップでは、表皮材における被係止部が表皮係止クリップの係止部に係合した状態において線状の凹みの深さ方向に遊びがあり、被係止部が表皮係止クリップ内で揺動するおそれがあった。仮に、遊びをなくすように設計変更すると、被係止部を押し込む作業が作業員にとって難しくなるおそれがあった。このような問題に鑑み、本発明のある実施形態は、表皮材の被係止部を表皮係止クリップに取り付けやすく、表皮材の被係止部が表皮係止クリップから抜けることを抑制できる表皮係止クリップを提供することを目的とする。
【0029】
本発明のある実施形態は、パッド(5)に所定の幅及び深さをもって所定方向に延在するように設けられた溝(8)内にて、前記パッド(5)に埋設され、前記パッド(5)の少なくとも一部を覆う表皮材(6)に設けられた被係止部(6c)を固定するための表皮係止クリップ(10)であって、前記所定方向及び前記溝の幅方向に沿って延在して少なくとも前記幅方向の端部において前記パッド(5)に埋設されるべき基板(11)と、前記被係止部(6c)を係止するべく、前記幅方向に互いに対向するように前記基板(11)に立設された壁体(17)及び前記壁体(17)の遊端に設けられた係止爪(18)を備えた1対の係止片(12)とを備え、前記幅方向における前記両壁体(17)間にて、前記係止片(12)に係止された前記被係止部(6c)を、前記基板(11)から離反する向きに付勢する付勢部(14)が設けられていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、被係止部を押し込むと付勢部が変形するため被係止部を表皮係止クリップに取り付けやすく、また、表皮係止クリップが被係止部を係止した状態において、被係止部は、係止爪と付勢部とによって挟持されるため、表皮係止クリップ内で揺動せず、表皮係止クリップから抜け難い。
【0031】
本発明のある実施形態は、上記構成において、1対の前記係止爪(18)は、前記所定方向において互いにずれて配置され、一方の前記係止片(12)の前記係止爪(18)と他方の前記係止片(12)の前記壁体(17)との間の前記幅方向の離間距離は、前記被係止部(6c)の前記幅よりも小さく、前記係止片(12)は、前記離間距離が前記被係止部(6c)の前記幅以上になるように弾性変形可能であることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、表皮係止クリップが被係止部を係止した状態においては、係止片は被係止部を係止でき、係止爪が互いに所定方向にずれて配置されているため、作業員が被係止部をこじることにより、容易に1対の係止片の上端部を被係止部の幅よりも大きくすることができ、被係止部を表皮係止クリップから取り外すことができる。
【0033】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記表皮係止クリップ(10)は樹脂を素材とし、前記付勢部(14)は、前記基板(11)に片持ち支持された1対の板ばねを含むことを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、基板と一体に付勢部を成形することができる。
【0035】
本発明のある実施形態は、上記構成において、1対の前記板ばねは、前記所定方向において前記係止爪の外側に設けられ、前記幅方向において互いにずれて配置されたことを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、表皮係止クリップの形成時に金型を抜き取る方向を確保でき、金型の複雑化を抑制することができる。
【0037】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記係止片(12)の各々は、前記壁体(17)の遊端部から前記幅方向の外側に延出するガイド部(19)を含み、前記係止爪(18)及び前記ガイド部(19)の前記深さの方向の上面は、互いに滑らかに連続して、前記幅方向の内側に向かうにつれて下方に向かうように傾斜していることを特徴とする。
【0038】
この構成によれば、被係止部を表皮係止クリップに係止させるために、被係止部を係止片の上部に押し付ける際、被係止部の位置が幅方向にずれていても、ガイド部が被係止部を1対の係止片間にガイドし、被係止部を1対の係止片の上部間に挿入することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のある実施形態によれば、本体部材が、線状部分に沿って延在して表層部材の表面と略同一面を画定するように膨出する線状膨出部を含み、表皮材が表層部材から線状膨出部を超えて延出する部分に於いて表皮係止クリップに吊り込まれていることにより、パッドに於ける表皮係止クリップを埋め込む部分が厚くなるため、表皮係止クリップの抜けが防止された乗物用シートを提供することができる。
【0040】
本発明のある実施形態によれば、線状膨出部に線状棚面、第1側面及び第2側面が設けられ、中間層部材が、その端縁が第1側面に略衝当するように配置され、表層部材が、その端縁が第2側面に略衝当するように配置されることにより、表皮係止クリップの抜けが防止されるとともに、中間層部材及び表層部材の位置決めが容易になる。
【0041】
本発明のある実施形態によれば、表皮係止クリップに於ける本体部材に埋設された部分が、第2側面の延長面よりも線状部分側に位置することにより、パッドによる表記係止クリップの保持が強固になる。
【0042】
本発明のある実施形態によれば、表皮係止クリップの係止片の延出端は、パッドに埋め込まれておらず、表層部材の底面よりも厚さ方向の表側に位置することにより、パッドの表面から表皮係止クリップの係合片までの距離が比較的短くなり、線状部材の表皮係止クリップへの取り付けが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】第1実施形態に係る表皮係止クリップが適用される車両用シートの斜視図
図2】第1実施形態に係る表皮係止クリップのパッドに取り付けられた状態を示す正面図
図3】第1実施形態に係る表皮係止クリップの斜視図
図4】第1実施形態に係る表皮係止クリップの斜視図
図5】第1実施形態に係る表皮係止クリップの平面図
図6】第1実施形態に係る表皮係止クリップ側面図
図7】第1実施形態に係る表皮係止クリップが被係止部材を係止した状態を示す斜視図
図8】第1実施形態に係る表皮係止クリップと被係止部材とを示す正面図(A:被係止部を押し込んだ状態、B:被係止部を係止した状態)
図9】第2実施形態に係る車両用シートの吊り込み部を示す断面図(溝の延在方向に直交する断面)
図10】第2実施形態に係る車両用シートのシートバックを模式的に示す正面図
図11】第3実施形態に係るパッドを示す分解斜視図
図12】第3実施形態に係るパッドを示す平面図
図13】第3実施形態に係る車両用シートの吊り込み部を示す断面図(図12のA-A線に相当する断面)
図14】第4実施形態に係るパッドの一部を示す斜視図
図15】第4実施形態に係る車両用シートの吊り込み部を示す断面図(溝の延在方向に直交する断面)
図16】第4実施形態に係る車両用シートの吊り込み部を示す断面図(図15のB-B断面)
図17】第4実施形態の変形例に係る車両用シートの吊り込み部を示す断面図
図18】第4実施形態の突部の形状の変形例に係るパッドの溝を示す断面図(溝の延在方向に直交する断面)
図19】第4実施形態の突部の配置の変形例に係るパッド及び線状部分を示す断面図(パッドの厚さ方向に直交する断面)
図20】第4実施形態の変形例に係るパッド及びヒーター部材を示す平面図
図21】第4実施形態の表紙係止クリップの向きに関する変形例に係るパッド及び表皮係止クリップを示す平面図。
図22】第4実施形態の表紙係止クリップの向きに関する他の変形例に係るパッド及び表皮係止クリップを示す一部断面側面図。
図23】第4実施形態の表紙係止クリップの向きに関する他の変形例に係るパッド及び表皮係止クリップを示す一部断面側面図。
図24】第4実施形態の表紙係止クリップの向きに関する他の変形例に係るパッド及び表皮係止クリップを示す一部断面側面図。
図25】第5実施形態に係る車両用シートのシートバックの側部を示す横断面図
図26】第5実施形態の表皮係止材とパッドとの係合手段の変形例を示す吊り込み部の断面図
図27】第6実施形態に係る車両用シートの吊り込み部を示す断面図(溝の幅方向に直交する断面)
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0045】
図1は、本発明の実施形態が適用される車両用シート1の斜視図である。車両用シート1は、車体に支持されるシートクッション2と、シートクッション2に連結されたシートバック3と、シートバック3に連結されたヘッドレスト4とを備える。シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4の各々は、発泡ウレタン等の発泡樹脂からなるパッド5(図2参照)と、パッド5の着座面側を覆う表皮材6とを備える。シートクッション2及びシートバック3の着座面側の表面には、表皮材6がパッド5内に吊り込まれることによって線状に凹んだ複数の吊り込み部7が縦方向及び横方向に形成されている。
【0046】
図2は、実施形態に係る表皮係止クリップ10(以下、「クリップ10」と記す)がパッド5に埋め込まれた状態を示す。パッド5における吊り込み部7に対応する部位には、溝8が設けられている。溝8は、所定の幅及び深さをもって所定方向に延在し、深さ方向における底の反対側が開口している。以下、特に説明しない限り、「上」及び「下」の向きは、車両の上下ではなく、溝8の深さ方向における開口側及び底側を指す。表皮材6(図1参照)は、パッド5を覆う本体部6aと、上端部において本体部6aに連結し、溝8の延在方向に沿って延在する布状の表皮連結部6bと、表皮連結部6bの下端に連結し、溝8の延在方向に沿って延在し、表皮連結部6bに対して溝8の幅方向に膨出する棒状又は紐状の部材であって、クリップ10に係止される被係止部6cとを備える。被係止部6cは、その延在方向に直交する断面において、概ね矩形をなし、上辺がV字状に凹み、1対の側片が下方に向かうにつれて互いに近づくようにわずかに傾斜している。被係止部6cは、断面視で被係止部6cのV字状の上辺の中央において、表皮連結部6bに連結している。表皮連結部6b及び被係止部6cは、樹脂を素材とし、押し出し成形によって一体に成形される。
【0047】
図3図6は、クリップ10を示す。図2図6に示すように、クリップ10は、幅方向の両端部においてパッド5に埋設される基板11と、基板11の上面に立設されて被係止部6cを係止する1対の係止片12と、幅方向における1対の係止片12の外側において基板11の上面に立設された1対の張出片13と、基板11に支持されて被係止部6cを上方に付勢する1対の付勢部14とを備える。クリップ10は、延在方向の中心及び幅方向の中心を通る上下方向の軸線に対して180°(360°/2)回転すると回転前後の形状が重なる対称形(2回対称形)をなす。クリップ10は、樹脂を素材とする射出成形品であることが好ましい。
【0048】
基板11は、溝8の延在方向及び幅方向に、それぞれ長手方向及び幅方向を有する板状の部分である。以下、特に説明しない限り、「所定方向」は、溝8の延在方向及び基板11の長手方向に一致する方向を指し、「幅方向」は、溝8及び基板11の幅方向に一致する方向を指す。基板11の幅方向の両端部には、上下に貫通する複数の貫通孔15が設けられている。また、基板11の幅方向の両端部には、それぞれ、上方に平行移動するように凹んだ段違い部分16が形成されている。
【0049】
1対の係止片12は、溝8内に配置され得るように構成される。1対の係止片12の各々は、基板11に立設された壁体17と、壁体17の遊端部から幅方向の内側に延出して被係止部6cを係止する係止爪18と、壁体17の遊端部から幅方向の外側に延出するガイド部19とを含む。
【0050】
壁体17は、幅方向に略直交するように配置された板状の部分である。壁体17は、所定方向の中央部に配置され、壁体17の所定方向の長さは、基板11の所定方向の長さの約1/4~1/2であることが好ましく、更に好ましくは約1/3である。
【0051】
係止爪18は、幅方向の内側に向かうにつれて下方に傾斜するとともに、上下方向の厚さが薄くなっている。係止爪18は、1対の係止片12の各々に1つずつ設けられているため対をなし、1対の係止爪18は、互いに所定方向にずれた位置に配置される。係止爪18は、壁体17の所定方向の中心から壁体17の所定方向の一方の端部まで延在することが好ましい。1対の係止爪18間の最短距離が拡がるように、平面視において、係止爪18の所定方向の中央側の側縁は、傾斜するように切り欠かれていることが好ましく、その傾斜角度は幅方向に対して45°であることが好ましい。1対の係止片12の一方に設けられた係止爪18と1対の係止片12の他方に設けられた壁体17との間の幅方向の離間距離は、被係止部6cの幅よりも小さいが、1対の係止片12は、この離間距離が被係止部6cの幅以上になるように弾性変形可能である。互いに所定方向にずれて配置された1対の係止爪18間の最短距離は、上記の離間距離と同様であるか、または、弾性変形前の状態において被係止部6cの幅以上である。係止爪18から基板11までの上下方向の離間距離は、被係止部6cの上下方向の高さよりも大きく、好ましくは1.5倍以上である。
【0052】
ガイド部19は、幅方向の外側に向かうにつれて上方に傾斜する。1対の係止片12の各々において、幅方向においてガイド部19の少なくとも一部が係止爪18の少なくとも一部に整合するように配置され、ガイド部19の上面と係止爪18の上面とは互いに滑らかに連続している。ガイド部19は、壁体17の所定方向の中央に配置され、その長さは、壁体17の所定方向の長さの1/4以上であることが好ましく、更に好ましくは約1/2であり、また、壁体17の長さと一致してもよい。
【0053】
1対の張出片13は、パッド5内に埋め込まれ得るように配置される。1対の張出片13は、クリップ10の幅方向の中央を通り幅方向に直交する面に対して互いに鏡像対称形をなす。1対の張出片13の各々は、基板11の上面に立設された立設部20と、立設部20の遊端側から幅方向の外向きに延出して基板11の幅方向の端部の上面に対向する張出部21と、張出部21の所定方向の中間部と基板11の幅方向の端部とを互いに連結する補強リブ22とを含む。
【0054】
立設部20は、張出部21の所定方向に間隔をおいて基板11から延出して、張出部21の所定方向の両端部に連結する1対の柱状体20aを含む。1対の柱状体20aは概ね上下方向に延在する。1対の柱状体20a、基板11及び張出部21は、幅方向に貫通する第1開口23を画定する。基板11における1対の柱状体20a間の部分には、上下に貫通する第2開口24が形成されている。第2開口24は第1開口23に連通している。
【0055】
1対の張出片13の各々において、張出部21は、基板11の幅方向の端部の上面に平行に対向する下面を有する平板部21aと、所定方向における平板部21aの両端部から上方に延出する1対の突片21bとを含む。平板部21aの幅方向の外端は、基板11の幅方向の外端と上下に整合する位置まで張り出している。正面視において、突片21bの上縁は、円弧状をなし、柱状体20aの幅方向の内側の側縁に滑らかに連結している。1対の突片21bの互いに対向する内面には凹部21cが設けられている。
【0056】
補強リブ22は、概ね上下方向に延在し、所定方向における張出部21の中央に連結することが好ましい。補強リブ22は、第2開口24が設けられているため、幅方向において柱状体20aに対して外側にずれて配置される。補強リブ22の上端は、平板部21aの幅方向の内端から外端まで延在し、補強リブ22の下端は、基板11の幅方向の端部における第1開口23を画成する縁から基板11の幅方向の外端まで延在する。正面視において、補強リブ22の幅方向の外側の側縁は円弧状に凹んでおり、幅方向の内側の側縁は上下方向に沿って直線状に形成されている。
【0057】
1対の付勢部14は、基板11に片持ち支持された板ばねによって構成される。1対の付勢部14は、被係止部6cを上方に向けて付勢できるように、幅方向において1対の係止片12の内側に配置される。1対の付勢部14は、所定方向において1対の係止片12の外側に配置されるが、内側に配置されるように変更してもよい。1対の付勢部14は幅方向において互いにずれた位置に配置されることが好ましい。付勢部14の弾性変形時に付勢部14を収容するため、基板11における1対の付勢部14の下方に位置する部分は、上下に貫通する第3開口25が形成されていることが好ましい。1対の付勢部14と係止爪18とが被係止部6cを上下方向に挟持できるように、弾性変形していない状態の付勢部14から係止爪18までの上下方向の離間距離は、被係止部6cの上下方向の高さよりも小さい。また、付勢部14は、付勢部14から係止爪18までの上下方向の離間距離が被係止部6cの上下方向の高さよりも大きくなるように、弾性変形可能である。なお、付勢部14は、基板11ではなく壁体17に支持されてもよく、板ばね以外のばね、例えば圧縮コイルばねであってもよい。
【0058】
第1開口23及び第2開口24が設けられていること、張出部21の下面と基板11の幅方向の端部の上面とが互いに平行であること、並びに、1対の付勢部14が幅方向において互いにずれた位置に配置されていることによって、クリップ10を形成するための金型において、金型を抜き取る方向を確保でき、金型の複雑化が抑制できる。段違い部分16における段差を生じさせる形状は、クリップ10の剛性を高めている。被係止部6cが、比較的単純な形状であるため、安価に押し出し成形することができる。
【0059】
クリップ10のパッド5への取付状態について説明する。クリップ10は、パッド5の成形時に所定の位置に配置されることによりパッド5に固定される。基板11の幅方向の端部と張出片13の張出部21との間にパッド5が入り込むため、クリップ10がパッド5に強固に支持される。張出部21と基板11の幅方向の端部とを互いに連結する補強リブ22は、張出部21を補強するとともに、パッド5に埋まっているためクリップ10のパッド5に対する位置を安定させ、クリップ10のパッド5による支持を強固にする。また、貫通孔15、段違い部分16、凹部21c、第1開口23及び第2開口24にパッド5が入り込んでいることも、クリップ10のパッド5に対する位置を安定させ、クリップ10のパッド5による支持を強固にする。
【0060】
図7及び図8は、クリップ10と被係止部6cとを示す(表皮連結部6bの図示は省略している)。図7及び図8を参照して被係止部6cのクリップ10への取り付け及び取り外しについて説明する。
【0061】
作業員は、被係止部6cをクリップ10に取り付けるため、被係止部6cを1対の係止片12の上面に押し付ける。この時、被係止部6cは、幅方向にずれた状態で1対の係止片12の上面に押し付けられても、幅方向の内側に向かうにつれて下方に傾斜したガイド部19によって、幅方向の中央、すなわち、1対の係止片12間に向かうようにガイドされる。被係止部6cが係止片12の傾斜した上面を摺動することにより、1対の係止片12の上部が互いに幅方向に離間するように弾性変形する。一方の係止片12に設けられた係止爪18と他方の係止片12の壁体17の幅方向の離間距離が被係止部6cの幅以上になると、被係止部6cが係止爪18の下方に移動でき、被係止部6cが係止爪18を通過すると、1対の係止片12が弾性変形前の位置に戻る。
【0062】
作業員は、1対の付勢部14を弾性変形させることにより、係止爪18よりも所定の長さだけ下方に被係止部6cを押し付けることができる(図8(A))。このため、作業員がこのように被係止部6cを下方まで押し下げることにより、容易に被係止部6cを係止爪18よりも下方に移動させることができ、被係止部6cの係止爪18への取付が容易になる。
【0063】
作業員が被係止部6cから手を放すと、被係止部6cは、1対の付勢部14によって上方に付勢されて1対の係止爪18に押し付けられる(図8(B))。被係止部6cは、1対の付勢部14及び1対の係止爪18の4点でクリップ10に支持されるため、被係止部6cの上下への移動が規制されるとともに、所定方向を軸線とする被係止部6cの回転が防止される。このように、被係止部6cは、遊びなくクリップ10に係止されるため、クリップ10から抜け難くなる。
【0064】
被係止部6cをクリップ10から取り外すときは、図7において矢印で示すように、所定方向における係止片12の中心付近を通る上下方向の軸線回りに被係止部6cを回転させるようにこじり、1対の係止片12の上部の互いの間隔が拡がるように1対の係止片12を弾性変形させる。一方の係止片12に設けられた係止爪18と他方の係止片12の壁体17との互いの離間距離が被係止部6cの幅以上になると、被係止部6cをクリップ10から取り外すことができる。1対の係止爪18が所定方向に互いにずれて配置されているため、1対の係止片12の上部の間に比較的容易に被係止部6cを取り外せる隙間を作り出すことができる。また、1対の係止爪18の各々における所定方向の中央側の端部が平面視で傾斜しているため、1対の係止爪18間の最短距離も大きくなり、被係止部6cを取り外すことが容易になる。
【0065】
図9及び図10は、第2実施形態に係る車両用シート31を示す。車両用シート31は、パッド32と、パッド32における厚さ方向の表側を覆う表皮材33と、パッド32に埋め込まれて表皮材33の所定の線状部分34を吊り込む表皮係止クリップ35(以下、「クリップ35」と記す)とを備える。車両用シート31のシートバック36の着座面側(表側)の表面には、表皮材33がパッド32内に吊り込まれることによって線状に凹んだ複数の吊り込み部37が形成されている。本実施形態では、車両用シート31のシートバック36に適用されたパッド32、表皮材33及びクリップ35を例に説明するが、同様の構成がシートクッション2(図1参照)に適用されてもよい。
【0066】
パッド32は、発泡ウレタン等の発泡樹脂によって構成され、吊り込み部37に対応する位置に表側に開口した溝38を有する。クリップ35は、部分的に、溝38の底部及びその近傍に埋設されている。表皮材33は、パッド32を覆う本体部33aと、本体部33aに連結して、溝38の延在方向に延在する線状部分34とを含む。線状部分34は、第1実施形態の表皮連結部6b(図2参照)に相当する表皮連結部33bと、第1実施形態の被係止部6c(図2参照)に相当する被係止部33cとを含む。表皮連結部33b及び被係止部33cは、樹脂を素材とし、押し出し成形によって一体に成形され、パッド32よりも硬質である。被係止部33cがクリップ35に係止されることにより、線状部分34は溝38に吊り込まれる。
【0067】
複数のクリップ35が、線状に延在する溝38に互いに離間して配置される。線状に延在する吊り込み部37が交差する交差部39には、クリップ35が配置されることが好ましい。クリップ35は、基板40と、基板40から表側に延出して溝38の幅方向に互いに対向する1対の係止片12と、基板40の幅方向の両端部から表側に延出する1対の張出片41とを含む。係止片12は、第1実施形態のクリップ10の係止片12(図3参照)と同様の構造を有する。すなわち、1対の係止片12の各々は、基板40に立設された壁体17と、壁体17の遊端部から幅方向の内側に延出して被係止部6cを係止する係止爪18と、壁体17の遊端部から幅方向の外側に延出するガイド部19とを含む。1対の張出片41の各々は、係止片12よりも低く、その遊端部は、基板40の幅方向の両端部よりも幅方向の外側に延出している。
【0068】
パッド32はクリップ35の基板40及び張出片41を埋め込んでいる。1対の係止片12の遊端部の間は、被係止部33cを受容するためパッド32が充填されていない。溝38の底部近傍の側面は、係止爪18又はガイド部19の本体部33a側の表面に連結するように、底に向かうにつれて幅方向の内側に向かう傾斜面42を含む。傾斜面42は、係止爪18及びガイド部19の本体部33a側の表面の全体を覆うのではなく、その表面の幅方向の内側部分が露出するように、その表面の中間部分に連結していることが好ましく、露出した表面は、傾斜面42の延長面に対して本体部33a側に膨出していることが更に好ましい。また、露出した表面を視認しやすくするために、クリップ35は、パッド32とは異なる色を有することが好ましい。例えば、パッド32が白色又は薄い黄色である場合、クリップ35は青色とすることが好ましい。
【0069】
第2実施形態に係る車両用シート31の作用効果について説明する。溝38の傾斜面42が係止片12に於ける係止爪18及びガイド部19の表皮材33側の表面に連結しているため、被係止部33cは取り付け時に1対の係止片12間に入るようにガイドされ、被係止部33cが1対の係止片12の幅方向の外側に誤って入り込むことが防止される。係止爪18及びガイド部19の表皮材33側の表面の一部が、パッド32から露出しているため、作業員は、被係止部33cをクリップ35に組み付けるときに、クリップ35を容易に視認することができる。更に、その表面の露出した部分が本体部33a側に膨出していることや、クリップ35の色がパッド32と異なることにより、クリップ35の視認性が更に向上する。線状に延在する吊り込み部37の交差部39にクリップ35を配置することにより、交差部39の表皮材33のデザインずれが抑制され、車両用シート31の表面のデザインの再現性の低下が抑制される。
【0070】
図11及び図12は、第3実施形態に係るパッド52を示し、図13は、第3実施形態に係る車両用シート51の吊り込み部53を示す。第2実施形態と共通する構成については、共通の符号を付し、説明を省略する。第3実施形態に係る車両用シート51は、パッド52と、パッド52における厚さ方向の表側を覆う表皮材33と、パッド52に埋め込まれて表皮材33の所定の線状部分34を吊り込むクリップ35とを備える。本実施形態では、車両用シート51のシートクッション54に適用されたパッド52、表皮材33及びクリップ35を例に説明するが、同様の構成がシートバック3(図1参照)に適用されてもよい。
【0071】
車両用シート51は、エアーベンチレーションシステム(AVS)を備える。すなわち、パッド52内には空気流通路55が設けられており、車両用シート51の下部に設けられた送風機(図示せず)が、空気流通路55を介して車両用シート51の表面に対して空気を送出又は吸引する。
【0072】
パッド52は、クリップ35を埋め込む本体部材56と、本体部材56上に配置された中間層部材57と、中間層部材57上に配置された表層部材58とを含む。空気流通路55は、本体部材56内に上下に延在し、本体部材56の上面に開口する第1区間55aと、第1区間55aに連通するように本体部材56の上面に沿って延在し、本体部材56の上面によって底面が画定され、中間層部材57によって側面が画定され、表層部材58によって上面が画定される第2区間55bと、第2区間55bに連通し、表層部材58を上下に貫通する複数の開口部からなる第3区間54cとを含む。中間層部材57及び表層部材58は、空気流通路55の第2区間55b及び第3区間55cを形成するため、本体部材56とは別体として形成された部材であり、本体部材56に比べて薄い。本体部材56、中間層部材57及び表層部材58は、発泡ウレタン等の発泡樹脂によって構成される。クリップ35は、本体部材56の発泡形成時に、本体部材56内に埋設される。
【0073】
本体部材56は、表皮材33の線状部分34に沿って延在する1対の線状膨出部59を含む。線状膨出部59は、本体部材56に於ける中間層部材57が載置された部分よりも表側(上方)に膨出している。本体部材56は、1対の線状膨出部59の間に溝60を有する。クリップ35は溝60の底部近傍に埋設され、係止片12が溝60の底部から突出し、基板40及び張出片41がパッド内に埋設される。線状膨出部59の膨出端面は、表層部材58の表面と略同一面を画定する。表皮材33は、表層部材58から1つの線状膨出部59を超えて延出する部分に於いてクリップ35に吊り込まれ、被係止部33cがクリップ35に係止されている。
【0074】
線状膨出部59は、溝60とは反対側に、表側(上方)を向いて線状膨出部59の延在方向に沿って延在する線状棚面61を有する。線状棚面61が設けられたことにより、線状膨出部59には、線状棚面61よりも基端側に位置して線状膨出部59の延在方向に沿って延在する第1側面62と、線状棚面61よりも遊端側に位置して線状膨出部59の延在方向に沿って延在する第2側面63とが画定される。第1側面62の厚さ方向の長さは、中間層部材57の厚さに略等しく、第2側面63の厚さ方向の長さは、表層部材58の厚さに略等しい。中間層部材57は、その端縁が第1側面62に略衝当する(当接又は近接する)ように配置される。表層部材58は、その端部が線状棚面61に載置され、その端縁が第2側面63に略衝当するように配置される。
【0075】
クリップ35に於ける前記本体部材に埋設された部分(係止片12の基端部、基板40及び張出片41)は、第2側面63の延長面よりも線状部分34側に位置することが好ましい。また、係止片12の延出端は、パッド52に埋め込まれておらず、表層部材58の底面(線状棚面61に載置される面)よりも厚さ方向の表側に位置することが好ましい。張出片41は、線状棚面61よりも裏側(下方)に配置されることが好ましい。クリップ35は、空気流通路55に近接する部分を避けて配置されることが好ましい。
【0076】
第3実施形態に係る車両用シート51の作用効果について説明する。中間層部材57及び表層部材58を使用することにより、空気流通路55の形状の設計の自由度が高くなる。本体部材56に於けるクリップ35を埋設する部分が、線状膨出部59を含むため、中間層部材57及び表層部材58に比べて厚くなる。このため、クリップ35を中間層部材57又は表層部材58に埋設する場合に比べてパッド52によるクリップ35の支持力が強くなり、被係止部33cからの荷重によってクリップ35がパッド52から抜けることが防止される。線状棚面61、第1側面62及び第2側面63が設けられていることによって、作業員は、本体部材56に中間層部材57及び表層部材58を容易に取り付けることができる。クリップ35が第2側面63の延長面よりも線状部分34側に位置して、線状膨出部59における比較的厚い部分にクリップ35の幅方向の端部が埋設されるため、本体部材56によるクリップ35の支持力が高まる。係止片12の延出端が、パッド52に埋め込まれておらず、かつ、表層部材58の底面よりも厚さ方向の表側に位置することにより、線状膨出部59の厚さが過度に厚くなることを抑制できる。
【0077】
図14は、第4実施形態に係るパッド72を示し、図15及び図16は、第4実施形態に係る車両用シート71の吊り込み部73を示す。上記実施形態と共通する構成については、共通の符号を付し、説明を省略する。第4実施形態に係る車両用シート71は、パッド72と、パッド72における厚さ方向の表側を覆う表皮材33と、パッド72に埋め込まれて表皮材33の所定の線状部分34を吊り込む表皮係止クリップ74(以下、「クリップ74」と記す)とを備える。
【0078】
パッド72は、発泡ウレタン等の発泡樹脂によって構成され、吊り込み部73に対応する位置に表側に開口した溝75を有する。表皮材33の線状部分34は、パッド72よりも硬質である。クリップ74は、パッド72内に埋設される基板76と、基板76からパッド72の厚さ方向の表側に延出して、溝75の底部から溝75内に突出する1対の係止片77とを含む。表皮材33の被係止部33cが1対の係止片77に係止されることにより、吊り込み部73が形成される。なお、図17に示すように、パッド72は、突出面において表皮材33の本体部33aの裏面に当接するパッド凸部82と、パッド凸部82間に設けられた溝75の底部に設けられた厚肉部83とを含み、クリップ35が厚肉部83に埋設されるように構成してもよい。この場合、厚肉部83はパッド凸部82に連結していることが好ましい。厚肉部83を設けることによりパッド72の重量が増加するが、パッド凸部82から補強用に設けられた厚肉部83でクリップ35が保持されるため、パッド72によるクリップ35の保持力が向上する。すなわち、線状部分34が上方に引き抜かれるような抜去荷重に対して、クリップ35がパッド72内にとどまろうとする力が向上する。
【0079】
図14~17に示すように、パッド72は、溝75の側面から溝75の幅方向に突出する突部78を含む。突部78は、溝75の延在方向から見て略矩形をなす。突部78は、溝75の深さ方向の中間位置に設けられることが好ましく、深さ方向に於いて表皮連結部33bが配置される範囲内に設けられることが更に好ましい。突部78は、表皮材33の線状部分34の延在方向の両端部の近傍に設けられる。突部78は、線状部分34をその延在方向の外側から係止可能なように、その突出長さを大きくしてもよい。突部78は、パッド72の本体と一体成形されてもよく、パッド72の本体とは別体の部材によって構成されてもよい。突部78がパッド72の本体とは別体である場合、突部78は、接着剤等によりパッド72の本体に取り付けてもよく、パッド72の本体の成形時にインサート成形することによりパッド72の本体に取り付けてもよく、また、突部78は、パッド72の本体よりも固いことが好ましい。
【0080】
突部78は、線状部分34をクリップ74に取り付ける際の目印となる。突部78は、溝75の側面から突出しているため、溝75の底部から突出している場合に比べて視認しやすい。突部78が線状部分34をその延在方向の外側から係止可能に構成した場合は、溝75の延在方向への線状部分34のずれを防止できる。
【0081】
図18は、突部78の形状の変形例を示す。突部78は、溝75の延在方向から見て、突出面が丸みを帯びていてもよく(図18A)、溝75の深さ方向において溝75の開口部まで延在してもよく(図18B~D)、溝75の延在方向から見て、突出面が溝75の底部に向かうにしたがって突出幅を減らすように傾斜していてもよく(図18C)、突出面が溝75の底部に向かうにしたがって突出幅を増やすように傾斜していてもよい(図18D)。
【0082】
図19は、突部78の配置の変形例を示す。突部78は、表皮材33の表皮連結部33bの主面に当接するように配置され、その延在方向の両端部だけでなく、中間部にも配置される。複数の突部78は、溝75の一方の側面から突出するものと、他方の側面から突出するものとを含み、一方の側面から突出するものと他方の側面から突出するものとが交互に配置されることが好ましい。この変形例では、突部78と表皮連結部33bとの間の摩擦力によって、溝75の延在方向への線状部分34のずれが防止される。
【0083】
図20は、第4実施形態に係る車両用シート71にシートヒーターを適用した場合のパッド72とヒーター部材79とを示す。ヒーター部材79は、布形状をなし、布形状の表面に沿って電熱線80を含む。ヒーター部材79は、パッド72の表側の表面に接着剤等によって取り付けられる。パッド72の厚さ方向から見て、クリップ74及び突部78は、ヒーター部材79に対してずれて配置される。
【0084】
パッド72を発泡形成する際に使用される金型(図示せず)は、傾斜した下キャビティ面と、傾斜方向と直交するように直線状に延在する突条とを含み、クリップ74は、突条よりも傾斜方向の上側の上キャビティ面に取り付けられる。パッド72の発泡樹脂原料は、突条で区切られた領域に分割して注入され、発泡硬化によってその体積が増加する。発泡した樹脂が他の部分に比べて遅れて到達した部分は、ボイド等の欠陥が生じやすいが、発泡樹脂原料が分割して注入されるため、発泡した樹脂の到達時間差が小さくなり、ボイド等の欠陥が生じにくくなる。従って、クリップ74の周囲にもボイド等の欠陥が生じ難く、パッド72によるクリップ74の固定が強固になる。
【0085】
金型に突条があるため、パッド72は、突条に補完的な形状の凹部81を有する。ヒーター部材79とパッド72との互いの接着を阻害しないように、凹部81は、パッド72の厚さ方向から見て、ヒーター部材79に対してずれて配置される。
【0086】
図21図24は、第4実施形態に係る車両用シート71のクリップ10の形状及び向きに関する変形例を示す。なお、これらの変形例では、クリップ74に代えて第1実施形態のクリップ10を使用しているが、クリップ35,74を使用してもよい。
【0087】
図21は、溝75を開口部側から見た図である。複数のクリップ10は、クリップ10の長手方向の軸が溝75の幅(左右)方向に左右交互に傾くように配置されている。このため、クリップ10に係合した線状部分34は折れ曲がり、線状部分34とクリップ10との互いに摩擦力が増大して線状部分34の延在方向への変位が抑制される。
【0088】
図22は、線状部分34及びクリップ10の側面図であり、溝75は断面で示されている。複数のクリップ10は、クリップ10の長手方向の軸がパッド72の厚さ方向に交互に反対向きに傾くように配置される。このため、クリップ10に係合した線状部分34は折れ曲がり、線状部分34とクリップ10との互いの摩擦力が増大して線状部分34の延在方向への変位が抑制される。
【0089】
図23及び図24は、溝75の延在方向に直交する断面図である。なお、この変形例では、クリップ74に代えて第2及び第3実施形態のクリップ35を使用しているが、クリップ10,74を使用してもよい。クリップ35は、厚さ方向(シートクッション2(図1参照)に配置されたクリップ35では上下方向)の軸が溝75の幅方向に傾くように配置されている。このため、線状部分34が溝75の側面又は突部78に接触しやすくなり、両者間の摩擦力によって線状部分34の延在方向へのずれが抑制される。
【0090】
図25は、第5実施形態に係る車両用シート91のシートバック92の側部の横断面を示す。上記実施形態と共通する構成については、共通の符号を付し、説明を省略する。シートバック92は、フレーム99と、フレーム99に支持されたパッド93と、シートバック92の側部においてパッド93の表側を覆う表皮材33と、パッド93に埋め込まれて表皮材33の所定の線状部分34を吊り込むクリップ35と、シートバック92の側部の内部に設けられたエアバッグ94とを備える。パッド93は、吊り込み部37に相当する位置に溝38を有する。
【0091】
エアバッグ94が膨張すると、その圧力によってシートバック92の側部に設けられた開裂部95が開き、エアバッグ94がシートバック92の外部に展開する。開裂部95では、2枚の表皮材33が開裂可能に互いに連結している。エアバッグ94が膨張する際、開裂部95を開裂させるように表皮材33に引張力が作用するため、クリップ35は、表皮材33の被係止部33cを介してパッド93から抜ける方向に力を受ける。開裂部95が開裂する前にクリップ35がパッド93から抜けてしまうと、表皮材33に作用する引張力が弱まって開裂部95にうまく力が伝わらずにエアバッグ94の展開不良が生じる可能性がある。このような展開不良を防ぐため、従来、様々な工夫がなされてきた。本実施形態では、比較的簡易な構成で、このような展開不良を防げる車両用シート91を提供することを目的とする。
【0092】
エアバッグ94は、シートバック92の左右の側部の一方に設けられ、他方には設けられていない。そこで、エアバッグ94の膨張時にその荷重を受けるクリップ35の基板40は、エアバッグ94が設けられていない側の側部に配置されたクリップ74の基板40に比べて、大きく、好ましくは、溝38の延在方向の長さに於いて長く、厚さに於いて厚い。このため、クリップ35は、エアバッグ94の展開時の荷重を受けてもパッド93による支持力が大きく、パッド93から抜けない。
【0093】
図26は、第5実施形態の変形例に係る車両用シート91の溝38の周囲の横断面図であり、クリップ74に代えて、Cリング96が用いられている。Cリング96は、被係止部33cと、パッド93内に溝38の延在方向に沿って配置されたワイヤー等の線状の部材97とに係合している。表皮連結部33bにおける被係止部33cに隣接する部分にはCリング96を通すための孔98が設けられている。表皮連結部33bと本体部33aとの連結は、上記の実施形態と同様の構成でもよいが、図26に示すように、表皮連結部33bが、その延在方向に直交する断面でY字形状をなし、Y字形状の2か所の端部で本体部33aに連結してもよい。被係止部33cは、上記の実施形態と同様の構成でもよいが、横断面の形状が図26に示す矩形や円形のように上記の実施形態の形状よりも単純な形状でよい。パッド93及び線状の部材97によるCリング96の保持力は、パッド93によるクリップ74の保持力よりも大きいため、Cリング96はエアバッグ94の展開時の荷重を受けてもパッド93から抜けない。
【0094】
図27は、第6実施形態に係る車両用シート101の吊り込み部102を示す。車両用シート101は、パッド32と、パッド32における厚さ方向の表側を覆う表皮材33と、パッド32に埋め込まれて表皮材33の所定の線状部分34を吊り込むクリップ10と、表皮材33の本体部33a、表皮連結部33b又は被係止部33cから延出する布形状の第1面ファスナー103と、パッド32の溝38の底部に固定されて第1面ファスナー103に係合する第2面ファスナー104とを備える。
【0095】
複数のクリップ10が溝38の底部に互いに離間して配置され、互いに隣り合うクリップ35間に第2面ファスナー104が配置される。表皮連結部33bのクリップ35に対応する位置には目印105が設けられている。
【0096】
表皮材33を吊り込むための手段として、クリップ10を用いず、第1及び第2面ファスナー103,104のみを用いると、表皮材33の位置が溝38の延在方向にずれやすい。表皮材33を吊り込むための手段として、クリップ10と第1及び第2面ファスナー103,104とを併用することにより、表皮材33の位置ずれが抑制できる。また、表皮材33を吊り込むための手段として、クリップ10と第1及び第2面ファスナー103,104とを併用すると、クリップ10のみを用いた場合に比べて、クリップ10の個数を減らすことができ、車両用シート101を軽量化できる。また、作業員が、目印105とクリップ10とが重なるように線状部分34を溝38に挿入することにより、表皮材33の位置ずれを抑制できる。
【0097】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本発明は、車両用シートだけでなく、車両以外の乗り物用シートに適用できる。段違い部は、下方に凹むように変更してもよい。第1実施形態の張出片は、係止片の壁体が立設部を兼ね、張出部が係止片の壁体から幅方向の外側に延出するように変更してもよい。第3実施形態の線状膨出部は、溝に対して片側にのみ設けられ、反対側のパッドは、中間層部材及び表層部材を含まず、本体部材の略全体が線状膨出部と略同じ厚さを有してもよい。第1実施形態の表皮係止クリップを第2~第6実施形態の車両用シートに適用してもよく、第2、3、5及び第6実施形態の表皮係止クリップを第4実施形態の車両用シートに適用してもよく、第4実施形態の表皮係止クリップを第2、3、5及び第6実施形態の車両用シートに適用してもよい。本出願のパリ条約に基づく優先権主張の基礎出願の全内容及び本出願中で引用された従来技術の全内容は、それに言及したことをもって本願明細書の一部とする。
【符号の説明】
【0098】
1,31,51,71,91,101:車両用シート
5,32,52,72,93:パッド
6,33:表皮材
34:線状部分
10,35,74:表皮係止クリップ
11,40,76:基板
12,77:係止片
37,57,73,102:吊り込み部
55:空気流通路
56:本体部材
57:中間層部材
58:表層部材
59:線状膨出部
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