(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059623
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】耕耘方法、および、それに利用する農業機械
(51)【国際特許分類】
A01B 39/12 20060101AFI20220406BHJP
A01B 33/02 20060101ALI20220406BHJP
A01B 33/12 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
A01B39/12
A01B33/02 A
A01B33/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015692
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2019084143の分割
【原出願日】2019-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】319002337
【氏名又は名称】ねぎびとカンパニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(72)【発明者】
【氏名】清 水 寅
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地表層に物理的処理を施すことにより、除草剤などを一切必要とせずとも雑草の発生を無くすことができる上、その物理処理が、農作物などえの土寄せ作業を兼ねたものとすることができる新たな除草技術を提供する。
【解決手段】農業機械1の回転駆動部13に装着される脱着軸3を有し、脱着軸3に嵌合可能な装着筒部40、および、装着筒部40の外周壁42に対し、外周壁42周りに植設された複数本の耕耘ブレード5が遠心方向に延伸され、しかも装着筒部40の軸心方向の外がわに向けて折曲された形状とされたブレードユニット4の複数個が、脱着軸3に沿って固定された上、ブレードユニット4の互いの耕耘ブレード5の、回転軌道輪郭形状同士の少なくとも一部が、回転軌道の接線方向に投影された場合に、投影同士が互いに重なり合う配置関係とされたものとしてなる、この発明の基本をなす耕耘方法に利用する農業機械1用の耕耘アタッチメント2である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機、操縦装置、駆動輪、耕耘アタッチメント装着用の水平軸心周りの回転駆動部を有する走行型の農業機械であって、回転駆動部に対し左右一対の耕耘アタッチメントが着脱自在に組み込まれ、操縦装置の基部に、同操縦装置の向きを平面視180°反転可能とする回転機構、および、該回転機構の回転を仮固定する回転止め機構が設けられ、該回転駆動部を回転駆動する回転制御部が設けられ、該回転制御部が、駆動輪が後進する場合に作業者の操作入力で該回転駆動部を回転駆動するようギア操作可能なものとされ、当該操縦装置への操作入力を失った際に、自動的に原動機を強制的に制動、停止する装置が設けられ、該駆動輪が、耕耘アタッチメントよりも耕耘中の走行方向の前方に配され、該耕耘アタッチメントが耕耘中の走行方向の最後尾の地上接地部分となるよう配されたものとしてなる走行型の農業機械を用い、回転機構にて当該操縦装置の向きを、平面視180°反転し、作業者が操作ギアを操作して駆動輪が後進する場合に該回転制御部が回転駆動されるよう切り替え、畝裾間幅の中央を畝長方向に沿って走行させながら、該農業機械の駆動輪および作業者の足の地上接地部分が、該農業機械の耕耘アタッチメントよりも先に進み、該農業機械の駆動輪および作業者の足の地上接地部分に追従する該耕耘アタッチメントが、その耕耘範囲に作業者の足跡および駆動輪の跡を一切残さないよう、同耕耘範囲を最後に通過しながら植物に土寄せを行い、且つ、土寄せと同時に新たに露出された畝の表層を耕耘し、土壌中に通気性の間隙を有する乾燥地表層に造り換えるようにしたことを特徴とする耕耘方法。
【請求項2】
原動機、操縦装置、駆動輪、耕耘アタッチメント装着用の水平軸心周りの回転駆動部を有する走行型の農業機械であって、回転駆動部に対し左右一対の耕耘アタッチメントが着脱自在に組み込まれ、操縦装置の基部に、同操縦装置の向きを平面視180°反転可能とする回転機構、および、該回転機構の回転を仮固定する回転止め機構が設けられ、該回転駆動部を回転駆動する回転制御部が設けられ、該回転制御部が、駆動輪が後進する場合に作業者の操作入力で該回転駆動部を回転駆動するようギア操作可能なものとされ、当該操縦装置への操作入力を失った際に、自動的に原動機を強制的に制動、停止する装置が設けられ、該駆動輪が、耕耘アタッチメントよりも耕耘中の走行方向の前方に配され、該耕耘アタッチメントが耕耘中の走行方向の最後尾の地上接地部分となるよう配されたものとしてなる走行型の農業機械を用い、回転機構にて当該操縦装置の向きを、平面視180°反転し、作業者が操作ギアを操作して駆動輪が後進する場合に該回転制御部が回転駆動されるよう切り替え、畝裾間幅の中央を畝長方向に沿って走行させながら、該農業機械の駆動輪や作業者の足の地上接地部分が、該農業機械の耕耘アタッチメントよりも先に進み、該農業機械の駆動輪および作業者の足の地上接地部分に追従する該耕耘アタッチメントが、その耕耘範囲に作業者の足跡および駆動輪の跡を一切残さないよう、同耕耘範囲を最後に通過しながら植物に土寄せを行い、且つ、土寄せと同時に新たに露出された畝の表層を耕耘し、土壌中に通気性の間隙を有する乾燥地表層に造り換え、踏み締め箇所の無い通気性の間隙を有する乾燥地表層が、土壌中に有る雑草の種子の乾燥状態を維持し、雑草の発芽を抑止可能とするようにしたことを特徴とする耕耘方法。
【請求項3】
原動機、操縦装置、駆動輪、耕耘アタッチメント装着用の水平軸心周りの回転駆動部を有する走行型の農業機械であって、回転駆動部に対し左右一対の耕耘アタッチメントが着脱自在に組み込まれ、操縦装置の基部に、同操縦装置の向きを平面視180°反転可能とする回転機構、および、該回転機構の回転を仮固定する回転止め機構が設けられ、該回転駆動部を回転駆動する回転制御部が設けられ、該回転制御部が、駆動輪が後進する場合に作業者の操作入力で該回転駆動部を回転駆動するようギア操作可能なものとされ、当該操縦装置への操作入力を失った際に、自動的に原動機を強制的に制動、停止する装置が設けられ、該駆動輪が、耕耘アタッチメントよりも耕耘中の走行方向の前方に配され、該耕耘アタッチメントが耕耘中の走行方向の最後尾の地上接地部分となるよう配されたものとしてなる走行型の農業機械を用い、圃場に設定した定植線上に、定植用谷を造るよう、土を撹拌しながら左右に掻き飛ばしながら前進し、該定植用谷の左右がわに畝を造り、該定植用谷に沿って複数個の植物を定植した後、当該回転機構にて操縦装置の向きを、平面視180°反転し、作業者が操作ギアを操作して駆動輪が後進する場合に該回転制御部が回転駆動されるよう切り替え、尾輪を有するものの場合には尾輪を浮上させた状態を維持したまま、該農業機械を、畝裾間幅の中央を畝長方向に沿って走行させながら、該農業機械の駆動輪および作業者の足の地上接地部分が、該農業機械の耕耘アタッチメントよりも先に進み、該農業機械の駆動輪および作業者の足の地上接地部分に追従する該耕耘アタッチメントが、その耕耘範囲に作業者の足跡、駆動輪および尾輪の跡を一切残さないよう、同耕耘範囲を最後に通過しながら該植物に土寄せを行い、且つ、土寄せと同時に新たに露出された畝の表層を耕耘するようにしたことを特徴とする耕耘方法。
【請求項4】
原動機、操縦装置、駆動輪、耕耘アタッチメント装着用の水平軸心周りの回転駆動部を有する走行型の農業機械であって、回転駆動部に対し左右一対の耕耘アタッチメントが着脱自在に組み込まれ、操縦装置の基部に、同操縦装置の向きを平面視180°反転可能とする回転機構、および、該回転機構の回転を仮固定する回転止め機構が設けられ、該回転駆動部を回転駆動する回転制御部が設けられ、該回転制御部が、駆動輪が後進する場合に作業者の操作入力で該回転駆動部を回転駆動するようギア操作可能なものとされ、当該操縦装置への操作入力を失った際に、自動的に原動機を強制的に制動、停止する装置が設けられ、該駆動輪が、耕耘アタッチメントよりも耕耘中の走行方向の前方に配され、該耕耘アタッチメントが耕耘中の走行方向の最後尾の地上接地部分となるよう配されたものとしてなる、請求項1ないし3何れか一記載の耕耘方法に利用する農業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地表層の所望の範囲に雑草類が繁茂するのを防止する技術に関連するものであり、特に、圃場への苗の定植および土寄せの工程に伴い、雑草の発生を防止可能とする耕耘技術を提供し、また、その耕耘技術に利用する農業機械用のアタッチメント類、および、そのアタッチメント類が装着された農業機械などを製造、提供する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
圃場に繁茂する雑草は、農作業の効率を悪化させ、作物に悪影響を及ぼすなどの理由から、除草を行う必要があるものの、無農薬野菜を栽培する圃場にあっては除草剤を用いることができず、手作業や農業機械などを用いることとなるが、強く根付いた雑草は、農業機械のローターに絡み付いて効率的に除草することができなかったり、作物の根や葉を傷つけてしまう虞があるなどの理由から、多大な労力をかけて手作業によって除草しなければならない場合があったり、さらに、除草作業によって刈り払われた雑草屑の処分の負担が発生するなど、圃場を管理する上で大きな負担となっていた。
【0003】
例えば、葱の苗をビニールハウス内の圃場に定植する場合には、
図8に示すように、圃場8に、自走型の農業機械1を搬入し、該農業機械1に溝掘り用の図示しないアタッチメントを装着し、予め平坦に耕耘された圃場8(地表)に直線状に張った紐上を踏みながら歩くことによって紐を取り除いた後に残された足跡および足跡の前後に残る線状の溝跡などのような目視可能な定植線81に沿って、該溝掘り用のアタッチメントを回転させ、地下に切り込みながら進行方向に対して左右間幅VWが20cm、地下深さ20cmないし25cm程度の定植用谷82を掘り下げると共に、掘り起こした土を、該定植用谷82の長さ方向MDの左右両がわの地上に、掻き飛ばすようにして15cmないし10cm程度に盛り、該定植用谷82からの全高低差Hが35cm前後となる傾斜状の畝肩84,84を有した畝83,83を造り、定植用谷82を挟んで隣り合う畝83,83の、一方の畝裾間幅の中央から他方の畝裾間幅の中央までの畝間幅UWが約80cmないし120cmとなるように定植用谷82を造る。
【0004】
該定植用谷82には、適宜施肥などを行った後に、該定植用谷82の定植用谷幅VWの中央に沿って畝長方向MDに、複数の葱の苗9,9,……を、等間隔を隔てて植え付け、
図9に示す白抜き矢印に示すように、土寄せ用のアタッチメント2を装着した自走型の農業機械1を、畝裾間幅の中央に配し、畝長方向MDに自走しながら、畝83の頂部の地表層8に対し、回転する該土寄せ用のアタッチメント2を切り込むようにして、農業機械1の進行方向MDの左右がわに向けて地表層8の土を掻き落とし、その土寄せ土JUが、複数の葱の苗9,9,……の根元がわの白色範囲に覆土されることとなり、同様の土寄せ作業を各定植用谷82に隣接する各畝83毎に行い、複数の葱の苗9,9,……が、出荷できる大きさに生長するまでの間に、複数回に渡って同様の土寄せ作業を繰り返し、最終的に定植用谷82であった場所が畝状に土が盛られ、かつては畝83であった場所が相対的に谷状となるよう掘り下げられることとなる。
【0005】
このように土寄せの作業を行うと、
図9および
図10に示すように、自走型の農業機械1の土寄せ用のアタッチメント2によって耕耘範囲CRの土が撹拌され、その後は、該耕耘範囲CRから雑草が発生し難くなるが、しばらくすると、ビニールハウス内にも拘らず、該耕耘範囲CRから点在するように雑草WE,WE,……が発生し始めることとなり、やはり人手を掛けて除草作業を行わなければならないものであった。
【0006】
本願発明者は、ビニールハウス内の圃場8で、土寄せ作業を終えた耕耘範囲CRに雑草WE,WE,……が発生する様子を長期に亘って細部まで詳細に観察した結果、次のような現象を発見したものであり、それは、土寄せ作業を終えた耕耘範囲CRの地表層8の土の粒子間には、満遍なく通気性の間隙BGが形成され、該通気性の間隙BGを通じて外気が通過し、同
図10中に示す波線矢印のように、土壌中80の水分が自然に蒸発して乾燥地表層DSとなり、該乾燥地表層DSの土壌中80に雑草や雑草の種子または根などが存在している場合であっても、水が供給されずに乾燥されたままとなって雑草が地上に発生することはないが、自走型の農業機械1を操縦しながら該農業機械1に追従する作業者の足跡7,7,……が、耕耘範囲CRの地表層8を踏み締めてしまい、通気性の間隙BGを失わせ、毛細管現象によって土壌中80に雑草の種子や根などに水分を供給し、雑草WE,WE,……の発生を招いてしまうという現象であり、こうした雑草WE,WE,……の発生の原理を断ち切る技術が必要であるとの考えに至った。
【0007】
(従来の技術)
従前までの除草・防草技術の状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、移動農機本体から側方に向けて延設された耕運軸シャフトに連結固定されたインナパイプと、該インナパイプを覆っていると共に複数個の耕運爪が締付固定された耕運パイプと、該耕運パイプの側方端部に位置するインナパイプ上に嵌合された短管と、この短管に一体に固定されたサイドディスクと、該サイドディスクの径方向の適宜位置から移動農機本体方向に延長する除草シャフトと、サイドディスクよりも外側に位置してインナパイプと短管とを抜き差し自在に連結するリンクピンとを具備して成るローター取付装置の構成にしてあり、除草シャフトがサイドディスクと共に取外すことが可能となって農業機械軸の外周面に絡まった雑草の除去を短時間で行うことができるようにされた移動農機におけるローター取付装置や、同特許文献1(2)に見られるような、柄を有する組み立て中空き多角形刃や単体中空き多角形刃、中実多角形刃、変則多角形刃と称する、多角形の全周に刃を持つ多角形刃の何れか一つを用い、柄を持ち、それらの刃物を地表付近や浅い地中などに差し込むよう地表面に平行な、例えば水平方向に摺動往復運動を繰り返しながら、前進または後進していくことで、地中にある雑草の茎や根を切断することができるから、草の成長を著しく遅らせることができるものとされた除草器具類などが散見される。
【0008】
しかし、前者特許文献1(1)に示されているような移動農機におけるローター取付装置などは、移動農機の走行用の車輪の跡や作業者の足跡などが、除草後の地表層に残ってしまうことから、それらの圧縮跡に雑草が繁茂してしまうという欠点を残すものであり、さらに、除草シャフトの移動農機本体への取付がわとは反対がわとなる外端がわに、サイドディスクが設けられているから、移動農機本体が畝上を畝長方向に走行しながら、畝の土を、該畝間幅方向に隣接する定植用谷がわへ掻き飛ばし、定植用谷に定植された葱の苗などに土寄せするのには全く適さないものであり、また、特許文献1(2)に代表する除草器具類などは、作業者の足跡などが、除草後の地表層に残ってしまい、それらの圧縮跡から雑草が生えてしまうという虞があり、また、刃物を土壌の地表層付近に摺動往復運動させて地中の雑草の茎や根を切断することができるものとなっているが、農業機械などのローターなどによる耕耘のように、地表層の土壌を撹拌する作業や、定植された植物に土寄せするような作業を前記除草作業と同時に行うのには、多大な労力を要するものになってしまうという欠点があった。
【特許文献1】(1)特開平8-9705号公報 (2)特開2004-267206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種の移動農機におけるローター取付装置や除草器具類は、何れも移動農機の走行用の車輪の跡や作業者の足跡などが、除草後の地表層に残り、その圧縮跡に雑草が発生する虞があり、新たに雑草が繁茂してしまった場合には、再度、除草作業が必要になってしまうという欠点を有しており、さらに、何れの場合にも、畝に隣接する定植用谷への土寄せ作業と、該畝の除草および防草とを同時に実現化できる技術は、従前まで存在していないという現状に鑑み、定植した葱などに代表されるような、生長の過程で複数回にわたって土寄せ作業を繰り返すことを要する農作物の栽培に伴う、作物周囲の雑草の除草作業が、農作業の大きな負担となっており、こうした課題を解決できる新技術の開発の必要性を痛感した。
【0010】
(発明の目的)
そこで、この発明は、地表層に物理的処理を施すことにより、除草剤などを一切必要とせずに雑草の発生を無くすことができる上、その物理的処理が、農作物などへの土寄せ作業を兼ねたものとすることができる新たな除草技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な耕耘方法、および、それに利用する新規な構造の農業機械を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の耕耘方法は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、原動機、操縦装置、駆動輪、耕耘アタッチメント装着用の水平軸心周りの回転駆動部を有する走行型の農業機械であって、回転駆動部に対し左右一対の耕耘アタッチメントが着脱自在に組み込まれ、操縦装置の基部に、同操縦装置の向きを平面視180°反転可能とする回転機構、および、該回転機構の回転を仮固定する回転止め機構が設けられ、該回転駆動部を回転駆動する回転制御部が設けられ、該回転制御部が、駆動輪が後進する場合に作業者の操作入力で該回転駆動部を回転駆動するようギア操作可能なものとされ、当該操縦装置への操作入力を失った際に、自動的に原動機を強制的に制動、停止する装置が設けられ、該駆動輪が、耕耘アタッチメントよりも耕耘中の走行方向の前方に配され、該耕耘アタッチメントが耕耘中の走行方向の最後尾の地上接地部分となるよう配されたものとしてなる走行型の農業機械を用い、回転機構にて当該操縦装置の向きを、平面視180°反転し、駆動輪が後進する場合に作業者が操作ギアを操作して該回転制御部が回転駆動されるよう切り替え、裾間幅の中央を畝長方向に沿って走行させながら、該農業機械の駆動輪および作業者の足の地上接地部分が、該農業機械の耕耘アタッチメントよりも先に進み、該農業機械の駆動輪および作業者の足の地上接地部分に追従する該耕耘アタッチメントが、その耕耘範囲に作業者の足跡および駆動輪の跡を一切残さないよう、同耕耘範囲を最後に通過しながら植物に土寄せを行い、且つ、土寄せと同時に新たに露出された畝の表層を耕耘し、土壌中に通気性の間隙を有する乾燥地表層に造り換えるようにした構成を要旨とする耕耘方法である。
【0012】
この基本的な構成からなる耕耘方法は、その表現を変えて示すならば、原動機、操縦装置、駆動輪、耕耘アタッチメント装着用の水平軸心周りの回転駆動部を有する走行型の農業機械であって、回転駆動部に対し左右一対の耕耘アタッチメントが着脱自在に組み込まれ、操縦装置の基部に、同操縦装置の向きを平面視180°反転可能とする回転機構、および、該回転機構の回転を仮固定する回転止め機構が設けられ、該回転駆動部を回転駆動する回転制御部が設けられ、該回転制御部が、駆動輪が後進する場合に作業者の操作入力で該回転駆動部を回転駆動するようギア操作可能なものとされ、当該操縦装置への操作入力を失った際に、自動的に原動機を強制的に制動、停止する装置が設けられ、該駆動輪が、耕耘アタッチメントよりも耕耘中の走行方向の前方に配され、該耕耘アタッチメントが耕耘中の走行方向の最後尾の地上接地部分となるよう配されたものとしてなる走行型の農業機械を用い、回転機構にて当該操縦装置の向きを、平面視180°反転し、駆動輪が後進する場合に作業者が操作ギアを操作して該回転制御部が回転駆動されるよう切り替え、畝裾間幅の中央を畝長方向に沿って走行させながら、該農業機械の駆動輪や作業者の足の地上接地部分が、該農業機械の耕耘アタッチメントよりも先に進み、該農業機械の駆動輪および作業者の足の地上接地部分に追従する該耕耘アタッチメントが、その耕耘範囲に作業者の足跡および駆動輪の跡を一切残さないよう、同耕耘範囲を最後に通過しながら植物に土寄せを行い、且つ、土寄せと同時に新たに露出された畝の表層を耕耘し、土壌中に通気性の間隙を有する乾燥地表層に造り換え、踏み締め箇所の無い通気性の間隙を有する乾燥地表層が、土壌中に有る雑草の種子の乾燥状態を維持し、雑草の発芽を抑止可能とするようにした構成からなる耕耘方法となる。
【0013】
この発明の基本をなす耕耘方法を、より具体的に示すならば、原動機、操縦装置、駆動輪、耕耘アタッチメント装着用の水平軸心周りの回転駆動部を有する走行型の農業機械であって、回転駆動部に対し左右一対の耕耘アタッチメントが着脱自在に組み込まれ、操縦装置の基部に、同操縦装置の向きを平面視180°反転可能とする回転機構、および、該回転機構の回転を仮固定する回転止め機構が設けられ、該回転駆動部を回転駆動する回転制御部が設けられ、該回転制御部が、駆動輪が後進する場合に作業者の操作入力で該回転駆動部を回転駆動するようギア操作可能なものとされ、当該操縦装置への操作入力を失った際に、自動的に原動機を強制的に制動、停止する装置が設けられ、該駆動輪が、耕耘アタッチメントよりも耕耘中の走行方向の前方に配され、該耕耘アタッチメントが耕耘中の走行方向の最後尾の地上接地部分となるよう配されたものとしてなる走行型の農業機械を用い、圃場に設定した定植線上に、定植用谷を造るよう、土を撹拌しながら左右に掻き飛ばしながら前進し、該定植用谷の左右がわに畝を造り、該定植用谷に沿って複数個の植物を定植した後、当該回転機構にて操縦装置の向きを、平面視180°反転し、駆動輪が後進する場合に作業者が操作ギアを操作して該回転制御部が回転駆動されるよう切り替え、尾輪を有するものの場合には尾輪を浮上させた状態を維持したまま、該農業機械を、畝裾間幅の中央を畝長方向に沿って走行させながら、該農業機械の駆動輪および作業者の足の地上接地部分が、該農業機械の耕耘アタッチメントよりも先に進み、該農業機械の駆動輪および作業者の足の地上接地部分に追従する該耕耘アタッチメントが、その耕耘範囲に作業者の足跡、駆動輪および尾輪の跡を一切残さないよう、同耕耘範囲を最後に通過しながら該植物に土寄せを行い、且つ、土寄せと同時に新たに露出された畝の表層を耕耘するようにした耕耘方法となる。
【0014】
(関連する発明1)
上記した、この発明の基本をなす耕耘方法に関連し、この発明には、この発明の基本をなす耕耘方法に利用する農業機械も包含している。
即ち、原動機、操縦装置、駆動輪、耕耘アタッチメント装着用の水平軸心周りの回転駆動部を有する走行型の農業機械であって、回転駆動部に対し左右一対の耕耘アタッチメントが着脱自在に組み込まれ、操縦装置の基部に、同操縦装置の向きを平面視180°反転可能とする回転機構、および、該回転機構の回転を仮固定する回転止め機構が設けられ、該回転駆動部を回転駆動する回転制御部が設けられ、該回転制御部が、駆動輪が後進する場合に作業者の操作入力で該回転駆動部を回転駆動するようギア操作可能なものとされ、当該操縦装置への操作入力を失った際に、自動的に原動機を強制的に制動、停止する装置が設けられ、該駆動輪が、耕耘アタッチメントよりも耕耘中の走行方向の前方に配され、該耕耘アタッチメントが耕耘中の走行方向の最後尾の地上接地部分となるよう配されたものとしてなる、この発明の基本をなす耕耘方法に利用する農業機械である。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、この発明の基本をなす耕耘方法によれば、従前までの耕耘技術とは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、撹拌機具類を用いて植物の定植列間の地表層を撹拌し、該撹拌機具類や作業者などの地上接地部分が、撹拌された後の植物の定植列間の地表層を踏まないよう耕耘作業を進めるようにしたから、撹拌機具類を用いた植物の定植列間の地表層の撹拌操作により、植物の定植列間の地表層が、土壌中に通気性の間隙を有する乾燥地表層に造り換えられ、踏み締め箇所の無い通気性の間隙を有する乾燥地表層が、土壌中に有る雑草の種子の乾燥状態を維持し、雑草の発芽を抑止するようにしたことから、除草剤などの農薬類を用いることなく、耕耘作業後に雑草が生えるのを確実に防止できるものとなり、従前までであれば、耕耘作業後に繁茂する雑草を除草する作業に追われることとなるが、そうした労力を一切不要とすることができ、圃場や庭園などの管理作業の負担を大幅に軽減することができることになるという秀でた特徴が得られるものである。
【0016】
加えて、耕耘アタッチメントが装着された走行型の農業機械を、畝裾間幅の中央を畝長方向に沿って走行させながら、該畝から該畝に隣接するよう配置された定植用谷に定植された農作物などの植物に土寄せを行う過程で、該耕耘アタッチメントが耕耘範囲を最後に通過しながら該植物に土寄せを行い、且つ、土寄せと同時に新たに露出された畝の表層を耕耘するようにしたから、走行型の農業機械を用いて該植物に土寄せの作業を行うだけで、畝の表層を撹拌し、掻き飛ばされた土によって畝肩が被覆され、さらに、土寄せによって植物の周囲の定植用谷を土寄せの土が覆うものとなり、土寄せ土で覆われた畝の全体および定植用谷に至る耕耘範囲に、土壌中に通気性の間隙を有する乾燥地表層が、足跡や車輪跡などが全く無いか、または殆ど無いかの少なくとも何れか一方の状態に設けられ、水分を必要とする雑草の種子の発育を抑制し、乾燥させて雑草の発生を、より確実に阻止できるものとなる。
【0017】
さらに、この発明の農業機械用の耕耘アタッチメントによれば、農業機械の回転駆動部に対し、着脱自在に装着することができるから、定植用谷を掘り下げるのに用いられるロータリー・アタッチメントなどと迅速且つ容易に交換することができる上、当該耕耘アタッチメントは、脱着軸の軸方向に隣接状に配設されたブレードユニットの互いの耕耘ブレードの、当該脱着軸の周りの回転軌道輪郭形状同士の少なくとも一部が、該回転軌道の接線方向に投影された場合に、該投影同士が互いに重なり合う配置関係とされたものとしてなるから、耕耘アタッチメントが回転しながら通過し、耕耘された範囲の地表層には、撹拌されずに残される範囲が存在せず、必ず撹拌を受けて土壌中に通気性の間隙が設けられた乾燥地表層となり、一層確実に雑草の発生を抑止できるものとなる。
【0018】
そして、この発明の耕耘アタッチメントが装着された農業機械によると、駆動輪の前進または後進の何れの場合にも回転駆動部が回転駆動可能なものとされているから、農業機械の前進または後進の何れの場合にも耕耘可能なものとなり、前進または後進の何れの場合にも、この発明の耕耘方法を実施することが可能となり、さらに、回転駆動部に装着されたこの発明の耕耘アタッチメントが、駆動輪に追従するよう、駆動輪の進行方向の後方に耕耘アタッチメントが配されたものとすることにより、耕耘中の走行方向の最後尾に該耕耘アタッチメントが配されたものとなり、耕耘した範囲の地表層が、より確実に乾燥地表層となり、長期に亘り雑草が全く発生しないよう管理できるものになるという大きな効果を奏することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
撹拌機具類は、地表層の地表から雑草の芽が発芽し、根が生える深さ(例えば2cmないし50cm、2cm未満では、雑草の種が大気中の水分を吸収して発芽する虞があり、50cmを超えると土壌を撹拌する作業性が悪化してしまう虞がある。)までの範囲に達するよう、地中に切り込み、且つ、撹拌して耕耘可能とする機能を担い、具体的には鍬類や、ショベル、スコップ、フォーク、熊手、ツルハシ、鋤、レーキなどの手作業による園芸用の工具類とすることができる外、自走型または乗用型の農業機械や建設機械などのように原動機を搭載し、アタッチメント類が装着された機械類、または、原動機を搭載した器具類に装着されたアタッチメント類などとすることができ、例えば、耕耘アタッチメントが装着された農業機械とすることが可能であり、農業機械は、地表層を耕耘しながら走行可能であり、走行方向の最後尾または最後尾付近の少なくとも何れか一方に耕耘アタッチメントが着脱自在に装着可能であって、装着された該耕耘アタッチメントを回転駆動しながら走行可能なものとなる機能を分担し、より具体的には、後述する実施例にも示すように、原動機、操縦装置、駆動輪、耕耘アタッチメント装着用の水平軸心周りの回転駆動部を有する農業機械であって、駆動輪の前進または後進の何れの場合にも回転駆動部が回転駆動可能なものとされ、該回転駆動部に対し、農業機械用のこの発明の耕耘アタッチメントの少なくとも1個が、脱着軸を介して着脱自在に組み込まれ、該駆動輪が、耕耘アタッチメントよりも耕耘中の走行方向の前方に配され、耕耘中の走行方向の最後尾に該耕耘アタッチメントが配されたものとするのが望ましく、さらにまた、乗用型の農業用機械類や建設用機械類などとしたり、リモコン操作を受けて走行したり、全地球測位システム(Global Positioning System)などに代表されるような位置情報計測システムなどを利用し、自律的に走行したりするものとされた走行型の農業用機械類や建設用機械類などとすることが可能である。
【0020】
耕耘アタッチメントは、撹拌機具類の一形態とすることが可能であって、地表層の地表から雑草の芽が出て根が生える深さ(例えば2cmないし50cm、2cm未満では、雑草の種が大気中の水分を吸収して発芽する虞があり、50cmを超えると土壌を撹拌する作業性が悪化してしまう虞がある。)までの範囲に達するよう、地中に切り込み、且つ、撹拌して耕耘可能とする機能を担い、例えば、車輪を有して走行可能とされたフレームの回転駆動部に対して脱着自在に装着可能とされたものであって、しかもロータリー型の回転刃物を有するものとすることができ、より具体的には、走行型や乗用型などの農業用機械類や建設用機械類などの何れかに着脱自在に装着され、それら農業用機械類や建設用機械類などの何れかから供給される回転出力を受けて回転駆動されるものとするのが良く、農業用機械類や建設用機械類などの何れかの走行方向の最後部に取り付けられたものとするのが望ましいものであり、後述する実施例にも示しているが、農業機械の耕耘アタッチメント装着用の水平軸心周りの回転駆動部に対し、着脱自在に装着される脱着軸を有し、当該脱着軸に串刺し状に嵌合可能な装着孔が設けられた装着筒部、および、該装着筒部の外周壁に対し、外周壁周りに間隔を隔てて基端が植設された複数本の耕耘ブレードが、各耕耘ブレードの先端を装着筒部から遠心方向に延伸され、しかも各耕耘ブレードの中途部ないし先端の少なくとも何れか一箇所が、該装着筒部の軸心方向の外がわに向けて折曲された形状とされたブレードユニットの複数個が、当該脱着軸の基端ないし先端の範囲に沿って、該装着筒部を介して串刺し状に外装、脱着自在に固定された上、当該脱着軸の軸方向に隣接状に配設されたブレードユニットの互いの耕耘ブレードの、当該脱着軸の周りの回転軌道輪郭形状同士の少なくとも一部が、該回転軌道の接線方向に投影された場合に、該投影同士が互いに重なり合う配置関係とされたものとするのがよい。
【0021】
圃場は、植物を定植したり、地表層を撹拌したり、防草したりする対象となる機能を担い、例えば、庭園や土地、露地区画、ビニールハウス内の地表層など、特段特定されるものではなくて様々な種類、形態の土地を対象とすることができ、それら対象とする圃場を、そのまま本願発明の圃場として耕耘の対象とするのは勿論のこと、あるいは本願発明の耕耘をより効率的に適用し得るようその形態などを積極的に変更して、その対象とすることも可能である。
【0022】
定植線は、栽培する植物を定植する列を、地表に対して想定し、植物の定植作業の目標となる機能を担っており、例えば、平坦に耕耘された地表に直線状に張った紐上を踏みながら歩くことによって紐を取り除いた後に残された足跡および足跡の前後に残る線状の溝跡などのような目視可能な線状の跡とすることが可能である外、土壌中に悪影響を与えない成分であり、しかも地表と見分け易い、例えば、成分(色や形)の異なる土類や粉粒類などによって描かれた帯状線や、水を帯状に撒いて描かれた帯状線などとすることなどが可能であり、さらにまた、農業機械に設けられた照準装置類や位置情報計測システムなどによって実際には目視されない定植線を認識できるようにしたものなどとすることができる。
【0023】
植物の定植列間とは、圃場や庭園などに線状の列をなして栽培されている植物の列の間に設けられた細長い区画ということができ、例えば、作業用の通路や、日照の確保や根張りなどの栽培を促進することを目的に設定された間隔範囲などということができ、より具体的には、後述する実施例にも示すように、圃場に一定の間隔をもって平行状に設定した複数本の定植線上に、夫々定植用谷を掘り下げると、平行に配置された複数本の定植用谷の間に夫々畝が造られることとなり、それら複数本の定植用谷の夫々に植物を、列をなすよう定植し、複数本の植物の定植列が造られた場合に、それら植物の定植列間にある畝が、植物の定植列間に相当するものになるということができる。
【0024】
地上接地部分は、耕耘され、土壌中の土の粒子間に通気性の間隙が造られた地表に、鉛直下方に踏みつけられた跡を造る可能性のある部分であり、農作業を行う作業者の足であったり、耕耘に用いられる農業機械、その他の耕耘可能な機械類や工具類、機具類などの走行用の車輪類であったり、または、スタンドなどの接地部分などの様々な部分ということができる。
【0025】
植物は、栽培を目的とする農作物としての植物であり、本発明の防除の目標物である雑草とは異なる品種のものであり、例えば観葉植物や農作物などとすることができ、より具体的には、ニンジンや大根、ジャガイモなどのように生長に伴い土寄せ作業を要する植物であるということが可能であり、後述する実施例にも示しているとおり、葱または葱の苗とすることができる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面は、この発明の耕耘方法、および、それに利用する農業機械の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【
図1】農業機械の回転駆動部に装着された耕耘アタッチメントの一例を示す背面図である。
【
図2】耕耘アタッチメントの一例を示す斜視図である。
【
図3】農業機械の回転駆動部に装着された耕耘アタッチメントの他の例を示す背面図である。
【
図4】定植用谷への土寄せ工程を断面化して示す正面図である。
【
図5】定植用谷への土寄せ工程を示す平面図である。
【
図6】この発明の走行型の農業機械を示す側面図である。
【
図7】この発明の走行型の農業機械の改良例を示す側面図である。
【
図8】従来までの定植用谷への土寄せ工程を断面化して示す正面図である。
【
図9】従来までの定植用谷への土寄せ工程を示す平面図である。
【
図10】耕耘後の地表の踏み跡から雑草が繁茂する様子を示す断面図である。
【実施例0027】
図1および
図2に示す事例は、農業機械1の回転駆動部13に対して装着される脱着軸3を有し、当該脱着軸3に嵌合可能な装着筒部40、および、該装着筒部40の外周壁42に対し、外周壁42周りに植設された複数本の耕耘ブレード5,5,5が遠心方向に延伸され、しかも該装着筒部40の軸心方向の外がわに向けて折曲された形状とされたブレードユニット4,4,4の複数個が、当該脱着軸3に沿って固定された上、ブレードユニット4,4,4の互いの耕耘ブレード5,5,5の、回転軌道輪郭形状同士の少なくとも一部が、該回転軌道の接線方向に投影された場合に、該投影同士が互いに重なり合う配置関係とされたものとしてなる、この発明の基本をなす耕耘方法に利用する農業機械1用の耕耘アタッチメントにおける代表的な一実施例を示すものである。
【0028】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の農業機械1用の耕耘アタッチメント2は、15cmないし40cmの長さとされた六角パイプ形状であって、その軸心方向に沿って互いに間隔を隔てた複数個の固定孔30,30,……が、六面の中の何れか対峙する二面間に、該軸心方向に直交する方向に貫通するよう穿設され、農業機械1の耕耘アタッチメント2装着用の水平軸心周りの回転駆動部13に対し、基端31が着脱自在に装着されるものとされた脱着軸3を有し、当該脱着軸3に串刺し状に嵌合可能な六角形の装着孔41が設けられた六角形短筒状のものとされ、該六角形筒状の六面の内の対峙する二面間に、該装着孔41の軸心方向に直交する向きの固定孔43,43が貫通された装着筒部40、および、該装着筒部40の外周壁42に対し、外周壁42周りに間隔を隔てて基端50が植設された複数本の耕耘ブレード5,5,……が、各耕耘ブレード5,5,……の先端52を装着筒部40から遠心方向に延伸され、しかも各耕耘ブレード5,5,……の中途部51ないし先端52の少なくとも何れか一箇所が、該装着筒部40の軸心両端方向の何れか一方の外がわに向けて折曲された形状とされたブレードユニット4の、2ないし3個4,4が、当該脱着軸3の基端31ないし先端32の範囲に沿って、該装着筒部40を介して串刺し状に外装され、脱着軸3の固定孔30,30に装着筒部40の固定孔43,43が対応されるよう配置された上、仮固定ピン44が貫通状に装着され、Rクリップ45で抜け止めされ、脱着自在に固定されたものとなり、当該脱着軸3の軸方向に隣接状に配設されたブレードユニット4,4,4の互いの耕耘ブレード5,5,……の、当該脱着軸3の周りの回転軌道輪郭形状が、該回転軌道の接線方向に投影された場合に、該投影同士の少なくとも一部が互いに重なり合う配置関係とされ、より具体的には、
図1および
図3に示すように、一個のブレードユニット4に装着された耕耘ブレード5,5,……の全幅寸法BWの一部が、該一個のブレードユニット4に隣接配置された他の一個のブレードユニット4に装着された耕耘ブレード5,5,……の全幅寸法BWの一部と重なり合うよう配置されたものとなっている。
【0029】
農業機械1は、例えば、
図6または
図7に示してあるように、一輪または二輪の駆動輪12を有する、ヤンマー株式会社製YK-SK(一輪管理機)とすることができ、原動機10、操縦装置11、駆動輪12、耕耘アタッチメント2装着用の水平軸心周りの回転駆動部13、尾輪14および該回転駆動部13の左右上部にロータリーカバー15,15が設けられた農業機械1であって、
図1ないし
図4に示すように、農業機械1の耕耘アタッチメント2装着用の水平軸心周りの回転駆動部13の左右に対し、左右対象形状となるよう左右一対の耕耘アタッチメント2,2の脱着軸3,3の各基端31,31が、互いに水平同心上に配置するよう着脱自在に装着され、その耕耘アタッチメント2,2の装着全幅AWが、畝83の肩上間幅MWと同等、ないし、畝裾間幅FWと同等に設定されたか、または、畝裾間幅FWよりも短く設定されたかの何れか一方とされている。
【0030】
より具体的には、
図1に示すように、耕耘アタッチメント2は、一本の脱着軸3に対し、二個のブレードユニット4,4が装着されたものとすることができ、さらに、
図3に示すように、耕耘アタッチメント2が、一本の脱着軸3に対し、三個ないしそれ以上のブレードユニット4,4,……が装着されたものとすることが可能であり、何れの場合にも、前述と同様に、耕耘アタッチメント2,2の装着全幅AWが、畝83の肩上間幅MWと同等、ないし、畝裾間幅FWと同等に設定されたか、または、畝裾間幅FWよりも短く設定されたかの何れか一方とされている。
【0031】
そして、
図1ないし
図3に示しているとおり、この発明の耕耘アタッチメント2は、例えば、
図6または
図7に示すように、地上に自立して歩行する図示しない作業者が、操縦装置11であるハンドル11を把持し、運転操作を行う形態の走行型の農業機械1に対して着脱自在に組み込むことが可能なものであり、
図6に示す、該農業機械1は、該農業機械1の本体1に設けられた原動機10、該原動機10によって駆動され、外周囲に金属製の複数の突起P,P,……が突出された一輪の駆動輪12、また、左右水平方向に軸心を向けられた一対の耕耘アタッチメント2,2が、着脱自在に装着され、該原動機10からの駆動力を一対の耕耘アタッチメント2,2に伝達する回転駆動部13,13が設けられたものであり、該駆動輪12の前進または後進の何れの場合にも回転駆動部13,13が、作業者のギア操作などによって回転駆動するよう制御可能な回転制御部16が設けられ、耕耘(または土寄せ)作業を行う場合には、作業者が、当該農業機械1の操縦装置11であるハンドル11を把持し、運転操作すると、該駆動輪12が、同
図6中の白抜き矢印方向に自走し、作業者は、後ろ向きに後退するよう歩を進め、当該農業機械1は、同
図6中の白抜き矢印方向に自走しながら、一対の耕耘アタッチメント2,2を回転駆動するものとなり、作業者が、操縦装置11であるハンドル11を操作し、一対の耕耘アタッチメント2,2を地表層8に切り込むよう操作すると、耕耘(または土寄せ)作業が行われるものとなっている。
【0032】
また、
図7に示す農業機械1は、
図6に示した農業機械1の操縦装置11の基部に、回転機構RT、および、該回転機構RTの回転を仮固定する回転止め機構SRが設けられたものとされ、操縦装置11であるハンドル11の向きを、
図6中に示すものとは平面視180°反転された状態に仮固定可能なものとされており、
図7中の白抜き矢印方向に走行しながら、一対の耕耘アタッチメント2,2を回転駆動するものとなっている。
さらに、例えば、該農業機械1は、操縦装置11であるハンドル11が、前述のような引き操作するハンドル11に代えて、U字形、H形、T字形などの平面形状とされ、リヤカー用のハンドルのように作業者が、進行方向の前方に押して操作可能なものとすることが可能であり、また、作業者による操縦装置11への操作入力(グリップ力やアクセル入力など)を失った際に、自動的に原動機10を停止し、または、駆動輪12および回転駆動部13(耕耘アタッチメント2,2)の回転駆動を自動的且つ強制的に制動、停止する装置が設けられたものとすることができる。
【0033】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の農業機械1用の耕耘アタッチメント2は、
図1および
図2、または
図3の何れか一方に示したような形状、寸法に設定されたものとされているから、
図6または
図7の何れか一方と、
図4および
図5とに示すように、走行型の農業機械1の回転駆動部13の左右がわに対し、一対の耕耘アタッチメント2,2が、農業機械1の走行方向に直交する水平な一直線上に、各脱着軸3の先端32,32が左右外がわに向けられるよう配され、各脱着軸3の基端31,31が組み込まれたものとされる。
【0034】
図4および
図5に示すように、この発明の耕耘アタッチメント2,2が組み込まれた農業機械1を用いて、圃場8の定植用谷82の定植用谷幅VWの中央に、畝長方向MDに等間隔を隔てて定植された複数の植物9としての葱の苗9,9,……に土寄せ作業を行う場合には、
図5中の白抜き矢印MDに示すように、農業機械1を操作する図示しない作業者が、該農業機械1に先だって歩行し、農業機械1が、作業者に追随するように耕耘作業を進めることとなり、従って作業者の足跡7,7,……は、耕耘アタッチメント2,2によって撹拌され、消失することとなり、撹拌および土寄せされた耕耘範囲CRは、土壌中80に通気性の間隙BGを有する乾燥地表層DSとなり、
図6の農業機械1を用い、同
図6中の白抜き矢印方向MDに自走しながら、耕耘(または土寄せ)作業を行うと、農業機械1の駆動輪12の突起P,P,……が接地したごく狭い点在状の箇所のみに車輪跡が残り、それ以外の範囲は、乾燥地表層DSとなり、雑草が極めて発生し難い状態となる。
【0035】
そして、
図7に示す農業機械1を用いた場合には、
図6に示した前記農業機械1と同様に、農業機械1に先だって歩行する作業者の足跡7,7,……が、
図5に示すように、後に続く耕耘アタッチメント2,2によって撹拌され、消失することとなり、さらに、耕耘アタッチメント2,2よりも同
図7中の白抜き矢印MDに示す進行方向の前方に、駆動輪12が配され、耕耘アタッチメント2,2に先だって走行するものとなっているから車輪跡(轍)が残らず、しかも、作業者による操縦装置11の操作により、農業機械1の尾輪14を浮上させた状態を維持したまま耕耘(または土寄せ)作業を行うと、耕耘(または土寄せ)作業を行った後の耕耘範囲CRには、作業者の足跡や車輪跡(轍)が一切残らず、土寄せ土JUによって覆われた耕耘範囲CRの全体が、土壌中80に通気性の間隙BGを有する乾燥地表層DSとなり、雑草の発生をより確実に抑止するものとなる。
【0036】
また、
図1ないし
図5に示すように、耕耘アタッチメント2は、各ブレードユニット4,4,……の耕耘ブレード5,5,……の全幅寸法BW,BW,……の範囲で地表層8を撹拌するものとなるが、左右の耕耘アタッチメント2,2の装着全幅AW内には、回転駆動部13が配され、該回転駆動部13の直下は地表層8に切り込むことができないが、回転駆動部13の直下に対応することとなる地表層8にも、左右の耕耘アタッチメント2,2の各耕耘ブレード5,5,……によって撹拌された土が被覆されることとなるから、耕耘アタッチメント2,2の装着全幅AWの全体にわたって通気性の間隙BGを有する乾燥地表層DSが造られることなり、さらに、耕耘アタッチメント2,2の装着全幅AWの外がわの畝肩84,84および畝83の左右がわとなる定植用谷82,82の定植線81,81付近までの範囲が、通気性の間隙BGを有する乾燥地表層DSによって覆われることとなり、雑草の発生を確実に防止できるものとなる。
【0037】
(結 び)
叙述の如く、この発明の耕耘方法、および、それに利用する農業機械は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの耕耘技術に比較して地表層からの雑草の発生をより確実に抑止できるものとなり、除草剤を一切必要とせずに、除草作業を不要とすることができるから、労働負担および人件費の大幅な削減を達成し、遥かに経済的なものとすることができる上、従来型の農業機械用の僅かな改良と、新規な耕耘アタッチメントの装着によって、格段に効率的に除草・防草できるようになるから、圃場の除草作業の負担が大きい農作物の栽培業界や、農業用および園芸用の機械業界などにおいても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。