(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059660
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】反射型光電容積脈波センサー及び生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20220407BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167377
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 周作
(72)【発明者】
【氏名】中林 亮
(72)【発明者】
【氏名】安藤 広介
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA08
4C017AA09
4C017AA12
4C017AB02
4C017AC28
4C017BB12
4C017BC11
4C017FF05
4C017FF15
4C017FF17
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM01
4C038KX01
4C038KY01
4C038KY10
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、計測部位の皮膚の厚さ等に応じた最適な設計を行うことで、装着感及び測定精度を両立させることができる反射型光電容積脈波センサー及び生体情報測定装置を提供することである。
【解決手段】本発明の反射型光電容積脈波センサーは、面状の発光素子及び受光素子を備えた反射型光電容積脈波センサーであって、前記発光素子と前記受光素子とが、上下方向において、互いに対向していず、前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離をh(mm)とし、体の皮膚(表皮+真皮)の厚さをt(mm)とし、かつ、当該厚さが0.1~4mmの範囲内であるとしたとき、少なくとも一組の前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離h(mm)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1):(t×0.7)
2≦h≦(t×1.3)
2
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状の発光素子及び受光素子を備えた反射型光電容積脈波センサーであって、
前記発光素子と前記受光素子とが、上下方向において、互いに対向していず、
前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離をh(mm)とし、
人体の皮膚(表皮+真皮)の厚さをt(mm)とし、かつ、当該厚さが0.1~4mmの範囲内であるとしたとき、
少なくとも一組の前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離h(mm)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする反射型光電容積脈波センサー。
式(1):(t×0.7)2≦h≦(t×1.3)2
【請求項2】
前記発光素子と前記受光素子との間の前記最短距離が、2~25mmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【請求項3】
前記発光素子が、有機EL素子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【請求項4】
前記受光素子が、有機フォトダイオードであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【請求項5】
前記発光素子を複数備え、各発光素子が前記受光素子の中心点を中心として大略同心円上に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【請求項6】
前記発光素子を複数備え、複数の前記発光素子のうち、少なくとも2つが同一波長の光を放射し、
複数の前記発光素子を個別に発光し得ることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【請求項7】
複数の前記発光素子のうち、前記受光素子に近い位置に配置された発光素子と、当該発光素子よりも遠い位置に配置された発光素子からそれぞれ発せられた光に基づいて取得した情報・データを加工することを特徴とする請求項6に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【請求項8】
前記受光素子を複数備え、各受光素子が前記発光素子の中心点を中心として大略同心円上に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【請求項9】
複数の前記受光素子のうち、前記発光素子に近い位置に配置された受光素子と、当該受光素子よりも遠い位置に配置された受光素子からそれぞれ受光した光に基づいて取得した情報・データを加工することを特徴とする請求項8に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【請求項10】
前記発光素子と前記受光素子との間の前記最短距離が、複数種類存在し、
センシングに適した前記最短距離を有する前記発光素子と前記受光素子とを選択することを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサーを備えたことを特徴とする生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型光電容積脈波センサー及びそれを備えた生体情報測定装置に関し、特に、計測部位の皮膚の厚さ等に応じた最適な設計を行うことで、装着感及び測定精度を両立させることができる反射型光電容積脈波センサー等に関する。
【背景技術】
【0002】
病院に行かずに健康状態をチェックしたり、医療を受けるサービスが活発に検討されており、非侵襲でバイタルデータ(生体情報)の取得が可能な光電容積脈波記録法(Photoplethysmography:略称「PPG」)が注目されている。PPGは、従来パルスオキシメーターとして広く利用されており、最近では活動量計に採用され脈拍を常時記録するシステムに利用されている。
前者のパルスオキシメーターは、赤色光と赤外光の吸光度の差を脈波を用いて計測するため、脈波の検出に高い精度が必要とされているが、後者の活動量計は、比較的精度が低くてもよく、位置ずれの影響が小さく利便性に優れるため緑色が使用されている(非特許文献1参照。)。
【0003】
なお、本明細書において、「バイタルデータ」とは、例えば脈波、心拍数、心電、血中酸素濃度、呼吸数、及び血圧等である任意の生体情報をいう。
【0004】
近年の健康意識の高まりにより、ウェアラブルデバイスで常時バイタルデータを取得し、予防や疾病アラートにつなげる動きが活発化している。これらの実現には精度と装着感の両立が必要だが、医療用データとしては脈拍だけでなく、脈波についても高精度で取得することが求められるが、現時点では、従来型の(コンベンショナルな)パルスオキシメーターで採用されている指先に挟む透過式によるシステムが主である。
【0005】
しかしながら、この透過方式の場合、指先や指の付け根といった末端部に装着することが必須であり、常時計測には不向きである。
一方、活動量計は、緑光を用いた反射型が主流であり、主にリスト(手の甲側)に装着するが、この部位では精度の高い脈波を検出することは困難である。脈拍のみであれば高い精度は必要としない。
【0006】
生体内部まで光を入射させるためには、赤色より長波の光が必要になる。また、生体の深部の動脈(脈波を発生させるのは動脈)、特に真皮内にある細動脈を検知することが好ましい。
【0007】
反射型の場合、光源とセンサーが同一面上にあるため、光がセンサーに到達するためには、生体内を散乱し、後方(光の出射方向に対して反対側)に返ってくる光のみが検出対象になる。この時、確実に細動脈を通ってきた光を検出するためには、光源とセンサーをある程度離す必要がある。
しかしながら、個体差や、計測する部位によって、皮膚の厚さが異なり、さらには装着のために許されるサイズも異なるため、計測部位ごとに最適設計を行う必要があるという問題があった。
【0008】
また、反射型の場合、同一面上に光源とセンサーが配置されていることが好ましく、先行例として特許文献1に記載の技術が開示されている。これは、有機EL素子と有機PDを組み合わせたもので、密着性向上、装着感向上には適したものである。また、光源とセンサーの距離に関しては、非特許文献2の技術が開示されており、距離を離すことで感度が高まるという記載がある。
しかしながら、どの程度の距離が好ましいかについては言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0156651号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】前田祐佳等;反射形光電脈波計の位置依存性 -異なる計測光,部位における近傍2点間の信号出力の比較-;ライフサポート;Vol.23 No.3, 2011、124-129
【非特許文献2】光学(Japanese Journal of Optics) 発光国:日本,発行年:2001年10月10日,30巻,10号,644~650ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、計測部位の皮膚の厚さ等に応じた最適な設計を行うことで、装着感及び測定精度を両立させることができる反射型光電容積脈波センサー及び生体情報測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、発光素子と受光素子との間の距離と、皮膚の厚さとの関係を特定範囲に規定することにより、装着感及び測定精度を両立させることができる反射型光電容積脈波センサー等を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0013】
1.面状の発光素子及び受光素子を備えた反射型光電容積脈波センサーであって、
前記発光素子と前記受光素子とが、上下方向において、互いに対向していず、
前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離をh(mm)とし、
人体の皮膚(表皮+真皮)の厚さをt(mm)とし、かつ、当該厚さが0.1~4mmの範囲内であるとしたとき、
少なくとも一組の前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離h(mm)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする反射型光電容積脈波センサー。
式(1):(t×0.7)2≦h≦(t×1.3)2
【0014】
2.前記発光素子と前記受光素子との間の前記最短距離が、2~25mmの範囲内であることを特徴とする第1項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【0015】
3.前記発光素子が、有機EL素子であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【0016】
4.前記受光素子が、有機フォトダイオードであることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【0017】
5.前記発光素子を複数備え、各発光素子が前記受光素子の中心点を中心として大略同心円上に配置されていることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【0018】
6.前記発光素子を複数備え、複数の前記発光素子のうち、少なくとも2つが同一波長の光を放射し、
複数の前記発光素子を個別に発光し得ることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【0019】
7.複数の前記発光素子のうち、前記受光素子に近い位置に配置された発光素子と、当該発光素子よりも遠い位置に配置された発光素子からそれぞれ発せられた光に基づいて取得した情報・データを加工することを特徴とする第6項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【0020】
8.前記受光素子を複数備え、各受光素子が前記発光素子の中心点を中心として大略同心円上に配置されていることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【0021】
9.複数の前記受光素子のうち、前記発光素子に近い位置に配置された受光素子と、当該受光素子よりも遠い位置に配置された受光素子からそれぞれ受光した光に基づいて取得した情報・データを加工することを特徴とする第8項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【0022】
10.前記発光素子と前記受光素子との間の前記最短距離が、複数種類存在し、
センシングに適した前記最短距離を有する前記発光素子と前記受光素子とを選択することを特徴とする第1項から第9項までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサー。
【0023】
11.第1項から第10項までのいずれか一項に記載の反射型光電容積脈波センサーを備えたことを特徴とする生体情報測定装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明の上記手段により、装着感及び測定精度を両立させることができる反射型光電容積脈波センサー及び生体情報測定装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように知見に基づいて本発明に係る課題を解決できたと考えている。
【0025】
光を強い散乱体である生体組織に照射すると、照射された光は照射点から散乱体内で半球状に広がって伝播していくが、検出された光の伝播経路はバナナ状となることが学術的研究により知られている。
【0026】
本発明では、上記のような現象を想定して、種々の試行錯誤的実験・検討をすることにより、人体の皮膚(表皮+真皮)の厚さを0.1~4mmの範囲内であるとし、かつ、前記発光素子と前記受光素子とが、上下方向において互いに対向していない、すなわち両素子が重らないように配置したとき、前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離が、前記式(1)を満たす範囲内であるように反射型光電容積脈波センサーを設計したとき、測定ばらつきを抑制でき、装着感及び測定精度を両立させることができることを見いだした。
【0027】
その結果、測定箇所を拡張することができ、かつ、常時モニタリングや測定箇所の自由度アップにつなげることができた。
また、反射型にすることで、測定箇所を拡張することができ、かつ装着時の違和感が少ないものが実現できる。
したがって、本発明は、反射型光電容積脈波センサーにおける測定感度の向上及び測定ばらつき抑制に貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】反射型光電容積脈波センサーにおける発光素子及び受光素子の間の最短距離と、皮膚の厚さとの関係を説明するための模式図
【
図2】第1の実施形態に係る反射型光電容積脈波センサーを構成する発光素子及び受光素子等の配置を説明するための模式図
【
図7】第2の実施形態に係る反射型光電容積脈波センサーを構成する発光素子及び受光素子等の配置を説明するための模式図
【
図9】反射型光電容積脈波センサーのその他の例を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の反射型光電容積脈波センサーは、面状の発光素子及び受光素子を備えた反射型光電容積脈波センサーであって、前記発光素子と前記受光素子とが、上下方向において、互いに対向していず、前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離をh(mm)とし、
人体の皮膚(表皮+真皮)の厚さをt(mm)とし、かつ、当該厚さが0.1~4mmの範囲内であるとしたとき、少なくとも一組の前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離h(mm)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1):(t×0.7)2≦h≦(t×1.3)2
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0030】
本発明の実施態様としては、前記発光素子と前記受光素子との間の前記最短距離が、2~25mmの範囲内であることが、測定精度向上の点で好ましい。
【0031】
前記発光素子が、有機EL素子であることが、フレキシブルで装着感が良好で、かつ波長ばらつきや輝度ばらつきを低減できる点で好ましい。
前記受光素子が、有機フォトダイオードであることが、上記と同様の点で好ましい。
【0032】
前記発光素子を複数備え、各発光素子が前記受光素子の中心点を中心として大略同心円上に配置されていることが、位置ずれに対するロバストを向上させることができる。特に、発光素子として有機EL素子を用いた場合には、点光源であるLEDを用いる場合に比べて、面光源になることで面積当たりの光量を減らすことができるため低温火傷しにくい。
【0033】
前記発光素子を複数備え、複数の前記発光素子のうち、少なくとも2つが同一波長の光を放射し、複数の前記発光素子を個別に発光し得ることが、複数の発光素子から発せられた光に基づいてデータ加工することができ、その結果、ノイズを差し引いた有効データを算出することができ、測定精度向上の点で好ましい。
【0034】
複数の前記発光素子のうち、前記受光素子に近い位置に配置された発光素子と、当該発光素子よりも遠い位置に配置された発光素子からそれぞれ発せられた光に基づいて取得した情報・データを加工するこが、ノイズを差し引いた有効データを算出することができ、測定精度向上の点で好ましい。
【0035】
前記受光素子を複数備え、各受光素子が前記発光素子の中心点を中心として大略同心円上に配置されていることが、位置ずれに対するロバストを向上させることができる。
【0036】
複数の前記受光素子のうち、前記発光素子に近い位置に配置された受光素子と、当該受光素子よりも遠い位置に配置された受光素子からそれぞれ受光した光に基づいて取得した情報・データを加工することが、ノイズを差し引いた有効データを算出することができ、測定精度向上の点で好ましい。
【0037】
前記発光素子と前記受光素子との間の前記最短距離が、複数種類存在し、センシングに適した前記最短距離を有する前記発光素子と前記受光素子とを選択することが、ノイズを差し引いた有効データを算出することができ、測定精度向上の点で好ましい。
【0038】
上記反射型光電容積脈波センサーは、各種生体情報測定装置に好適に用いることができる。
【0039】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0040】
1.[本発明の反射型光電容積脈波センサーの概要]
本発明の反射型光電容積脈波センサーは、面状の発光素子及び受光素子を備えた反射型光電容積脈波センサーであって、前記発光素子と前記受光素子とが、上下方向において、互いに対向していず、前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離をh(mm)とし、
人体の皮膚(表皮+真皮)の厚さをt(mm)とし、かつ、当該厚さが0.1~4mmの範囲内であるとしたとき、少なくとも一組の前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離h(mm)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1):(t×0.7)2≦h≦(t×1.3)2
【0041】
また、前記発光素子と前記受光素子との間の前記最短距離が、2~25mmの範囲内であることが、測定精度向上の点で好ましく、特に、デバイスのサイズを鑑みると、前記最短距離の上限値は17.5mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが最も好ましい。
【0042】
<反射型光電容積脈波センサーの機能>
本発明の反射型光電容積脈波センサーは、光源としての発光ダイオード等の発光素子により、生体組織の被測定部に光を照射して、光検出センサーとしてのフォトダイオード等の受光素子により、生体組織の被測定部で反射した光を検出し、この検出した信号に基づいて、生体組織の容積脈波等の変化を測定するものである。
【0043】
例えば、発光素子から出射された光は、表皮を透過してその奥の血管に到達する。血管に到達した光は当該血管を流れる血液により吸収、反射され、又は血液を透過する。
このうち、血管組織、血液によって散乱された光は、受光素子に入射する。このため、受光素子は、入射光量に応じた光電流を出力する。ここで、血管は、心拍と同じ周期で膨張・収縮を繰り返している。したがって、血管の膨張・収縮の周期と同じ周期で光の反射量が増減するので、受光素子から出力される光電流の変化は、血管の容積変化を示すことになる。
【0044】
また、本発明の反射型光電容積脈波センサーは、動脈血の酸素飽和度を検出するセンサーとしても適用可能である。血液中のヘモグロビンは、酸素との結合の有無により赤色光と赤外光の吸光度が異なる。そこで、赤色光を発光・受光する素子、赤外光を発光・受光する素子、などのように発光波長及び受光波長を異ならせた素子組を複数組用意する一方、これらの反射光を測定・解析することによって酸素飽和度を検出することができる。
なお、血管としては、動脈である。
【0045】
なお、「容積脈波」とは、拍動による血管内の圧力変化が容積の変化を生じさせた時の波形であり血管の変化を直接的に把握することができるものである。
また、「光電容積脈波」とは、容積脈波を検出するために血液の光の透過又は反射を利用して検出した波形である。
【0046】
<酸素飽和度の算出法>
一般的に、血液中の酸素飽和度を計測するためには、前記反射型光電容積脈波センサー(パルスオキシメーター)が使用される。パルスオキシメーターは、指に赤色~近赤外の波長域に含まれる2つの波長の光を照射し、その透過率や反射率を測定する。
具体的には、血中ヘモグロビン(Hb)は、酸素化ヘモグロビン(O2Hb)、還元ヘモグロビン(HHb)、メトヘモグロビン(MetHb)、一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)の4種類の状態で存在する。MetHb及びCOHbは、メトヘモグロビン血症や一酸化炭素中毒で増加する異常ヘモグロビンである。そのため、酸素飽和度は、通常、O2HbとO2Hb+HHbとの比によって決定される。ヘモグロビン(Hb)に赤色光を透過させた場合、HHbの赤色光の吸光度はO2Hbの赤色光の吸光度より著しく大きく、赤色光の波長によって大きく変化する。また、ヘモグロビン(Hb)に近赤外光を透過させた場合、HHbの近赤外光の吸光度はO2Hbの近赤外光の吸光度よりよりわずかに低い。そのため、ヘモグロビンの赤色光の吸光度と近赤外光の吸光度との比率R(赤色光の吸光度/近赤外光の吸光度)は、血液中のO2HbとO2Hb+HHbとの比である酸素飽和度によって変化する。
【0047】
また、指、手首、腕の甲、胸部、腹部などの計測部位には、動脈血、静脈血、組織、骨が存在し、これらは赤色光の吸光度と近赤外光の吸光度に影響を及ぼす。そして、その中で、血管容積脈波の容積変化が寄与する部分は、動脈血である。脈波部分の吸光度をAC、動脈血非拍動部分、静脈血、組織、骨での吸光度をDCとし、例えば、波長660nmの赤色光の吸光度のAC成分をAC660、DC成分をDC660とし、例えば、波長940nmの近赤外光の吸光度のAC成分をAC940、DC成分をDC940とすると、赤色光の吸光度と近赤外光の吸光度との比率R(赤色光の吸光度/近赤外光の吸光度)は以下の(I)式で表される。
【数1】
【0048】
上記の(I)式で算出されるR値と、あらかじめ実証的に得たR値と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)との関係を示すキャリブレーショーンカーブとに基づいて、血中酸素飽和度を求めることができる。
【0049】
また、通常、指、手首(例えば、尺骨側、橈骨側)、腕の甲、胸部及び胸部などに赤色光及び近赤外光を照射して吸光度を計測すると、吸光度の経時変化は、脈波を反映する波形として計測される。そのため、吸光度のAC成分は、吸光度の経時変化の最大値と最小値との差を算出することにより特定でき、吸光度のDC成分は、吸光度の経時変化の平均値を算出することにより特定することができる。後述する実施例では、このようにして算出した値を「AC/DC」と表記する。
【0050】
<発光素子及び受光素子の間の距離>
本発明に係る発光素子と受光素子とは、上下方向において、互いに対向していず、前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離をh(mm)とし、人体の皮膚(表皮+真皮)の厚さをt(mm)とし、かつ、当該厚さが0.1~4mmの範囲内であるとしたとき、少なくとも一組の前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離h(mm)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1):(t×0.7)2≦h≦(t×1.3)2
【0051】
なお、上記式(1)は、前記発光素子と前記受光素子との間の最短距離が、「前記皮膚の厚さの数値の±30%の2乗の範囲内」の長さであることを意味している。また、上記式(1)において、hとtは数値のみを表す。
【0052】
「発光素子と受光素子とは、(上下方向において、)互いに対向していず」とは、発光素子と受光素子とが、上下方向において互いに対向して重なるようには配置されていず、平面方向において並置されていることをいう。
【0053】
図1は、発光素子及び受光素子の間の最短距離と、皮膚の厚さとの関係を説明するための模式図である。
本発明において、「人体の皮膚の厚さ」とは、人体の表皮の厚さと真皮の厚さの総厚さをいい、当該皮膚の厚さは0.1~4mmの範囲内とする。
また、本発明において、「発光素子と受光素子との間の最短距離」とは、
図1に示すように、側断面視において、受光素子70の発光素子80側の側縁部から、発光素子80の受光素子70側の側縁部までの最短距離h(mm)をいう。
【0054】
図1では、一つの受光素子70に対して、複数の発光素子80,90,90Bが設けられている場合を例に挙げており、受光素子70と発光素子80との間の最短距離h(mm)が、前記式(1)を満たす範囲内となっている。
なお、受光素子70と発光素子90との間の最短距離や、受光素子70と発光素子90Bとの間の最短距離については、前記式(1)を満たす範囲内とはなっていないとする。
そのため、後述するが、本発明で規定する前記最短距離の範囲を満たしていない発光素子90,90Bから発せられた光に基づいて得られた生体情報(バイタルデータ)は、ノイズを含んでおり、前記最短距離の範囲を満たす発光素子80から発せられた光に基づいて得られたバイタルデータから、前記ノイズを含んだバイタルデータを差し引くことで有効なバイタルデータが算出することができる。
【0055】
1.1[発光素子及び受光素子の配置]
本発明に係る発光素子及び受光素子の配置は、前記条件を満たす限り、限定されるものではないが、好ましい配置例について以下に説明する。
以下に説明する第1の実施形態は、複数の発光素子が、受光素子の中心点を中心として大略同心円上に配置されている場合であり、第2の実施形態は、複数の受光素子が、発光素子の中心点を中心として大略同心円上に配置されている場合である。
【0056】
ここで、「大略同心円上」とは、受光素子の中心点から各発光素子の中心点までの距離(半径)の差が10%以内、好ましくは5%以内、さらに好ましくは3%以内であることをいい、同一も含む。
「受光素子の中心点」とは、受光素子を平面視したときの受光素子の形状における幾何学的中心をいう。また、「発光素子の中心点」とは、発光素子を平面視したときの受光素子の形状における幾何学的中心をいう。
なお、「平面視」とは、反射型光電容積脈波センサーを基板41の上面に対し法線方向から視ることをいう。
【0057】
<第1の実施形態>
図2は、反射型光電容積脈波センサーを構成する発光素子及び受光素子等の配置を説明するための模式図であり、
図2(a)は平面図、
図2(b)は各部材を分解した平面図、
図2(c)はA-A′矢視断面図、及び
図2(d)はB-B′矢視断面図である。
図2に示すように、検出部14は、透光性基板41上に、光透過性の第1電極(陽極)50及び第2電極(陰極)60の複数の引き出し電極部63a、63b、63c及び63dが形成されている。
【0058】
前記透光性基板41としては、全光線透過率が70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上の基板を用いることが好ましい。全光線透過率は、JIS K 7375:2008「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」にしたがって測定することができる。また、不透明な基板(光反射性基板)としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
【0059】
図2(b)において、前記第1電極50は、透光性基板41の中央に形成された第1中央電極部51と、当該第1中央電極部51を中心として、左側と右側に、同心円上に配置された第1周方向電極部52と52とを備えている。
第1周方向電極部52及び52は、平面視円弧状をなし、第1周方向電極部52及び52同士が互いに連続しないように非断続的に形成されている。
また、第1中央電極部51は、前記引き出し電極部63b側に延出して形成されている。さらに、二つの第1周方向電極部52及び52も、引き出し電極部63c側に延出して形成されている。
【0060】
前記引き出し電極部63a、63b、63c及び63dは、透光性基板41上に形成され、当該透光性基板41の側縁部へ引き出すための配線とされている。
【0061】
前記第1電極50のうち第1中央電極部51上には、当該第1中央電極部51を被覆するように受光素子70が形成されている。受光素子70は、平面視円形状をなしている。
前記受光素子70としては、平面上の有機薄膜太陽電池(OPV)又は有機フォトダイオード(OPD)を用いることが好ましく、特に有機フォトダイオードを用いることが、フレキシブルで装着感が良好で、かつ波長ばらつきや輝度ばらつきを低減できる点で好ましい。これら有機薄膜太陽電池及び有機フォトダイオードの詳細については後述する。
【0062】
また、前記第1電極50のうち左右二つの第1周方向電極部52及び52上には、当該第1周方向電極部52及び52を被覆するように発光素子80及び80がそれぞれ形成されている。各発光素子80及び80は、第1周方向電極部52及び52に沿って平面視円弧状なし、発光素子80及び80同士が互いに連続しないように非断続的に形成されている。
このようにして、第1周方向電極部52及び52上に形成された2つの発光素子80及び80は、受光素子70の中心点を中心として同心円上に配置されている。
【0063】
また、発光素子80の平面視における最短横幅Hは、5mm程度であることが好ましい。
ここで、発光素子80の平面視における「最短横幅H」とは、前記発光素子80が平面視円弧状の場合には、円弧状の外周面と内周面とにそれぞれ接線を引き、当該接線間に直交する線の長さをいう。なお、後述する
図6に示すように、発光素子81及び82が平面視円形状の場合には、その円の直径をいう。
【0064】
ここで、少なくとも一組の発光素子80と受光素子70との間の最短距離h(mm)が、前記式(1)を満たす。発光素子80と受光素子70との間の「最短距離h」とは、前記したとおり、
図1に示す側断面視において、受光素子70の発光素子80側の側縁部から、発光素子80の受光素子70側の側縁部までの最短距離hをいう。
図2においては、受光素子70が平面視円形状であり、発光素子80が平面視円弧状であるので、受光素子70の外周面と、発光素子80の内周面との間の最短距離hとなる。なお、後述する
図6に示すように、発光素子80が平面視円形状の場合には、受光素子70の外周面と、発光素子81及び82の外周面との間の最短距離となる。
【0065】
前記発光素子80としては、発光ダイオード(LED)又は有機EL素子(OLED)を用いることが好ましく、特に有機EL素子を用いることが、波長ばらつきや輝度ばらつきを低減できる点で好ましい。
また、2つの発光素子80及び80は、いずれも同一波長の光を発するものを使用することが好ましい。
【0066】
そして、前記受光素子70及び発光素子80及び80上には、さらに第2電極60が形成されている。
前記第2電極(陰極)60は、前記第1電極50の第1中央電極部51に対応する位置に形成された第2中央電極部61と、当該第2中央電極部61の周囲で前記第1周方向電極部52及び52に対応する位置に形成された平面視円弧状で非断続的に囲む2つの第2周方向電極部62及び62とを備えている。
第2中央電極部61には、引き出し電極部63aが接続されており、当該引き出し電極部63aは透光性基板41上で第2周方向電極部62及び62の間を介して、一方の第2周方向電極部62の周囲を回りこんで透光性基板41の側縁部側へ延出して形成されている。
また、二つの第2周方向電極部62及び62の各端部においても、前記引き出し電極部63d及び63dが接続されている。当該引き出し電極部63d及び63dは、透光性基板41の側縁部側に延出して形成されている。
【0067】
このようにして、透光性基板41上に形成された第1電極50、引き出し電極部63a~63d、受光素子70、発光素子80及び第2電極60は、当該第2電極60上にさらに透光性基板42が設けられ、2つの透光性基板41及び42間が封止材43によって封止されている。
【0068】
(配置等変形例1)
図3は、
図2の発光素子及び受光素子の配置の変形例を示す図であり、反射型光電容積脈波センサーを構成する発光素子及び受光素子等の配置を説明するための平面図である。
図3に示す変形例1では、
図2に示す発光素子をさらに増やした場合である。すなわち、
図2に示す受光素子70と発光素子(以下、「第2発光素子」ともいう。)80との間に、さらに第1発光素子90が配置され、発光素子90及び80が2重で配置された構造となっている。
【0069】
複数の発光素子90及び80のうち、受光素子70に近い位置に配置された第1発光素子90は、
図2に示す第2発光素子80と同様にして、第1電極50のうち二つの第1周方向電極部52及び52上に、当該第1周方向電極部52及び52を被覆するようにそれぞれ形成されている。各第1発光素子90及び90は、第1周方向電極部52及び52に沿って平面視円弧状をなし、第1発光素子90及び90同士が互いに連続しないように非断続的に形成されている。
【0070】
ここで、複数の発光素子90及び80のうち、受光素子70に遠い位置に配置された第2発光素子80は、当該第2発光素子80と受光素子70との間の最短距離hが、前記した式(1)を満たす範囲内となっている。なお、受光素子70と第1発光素子90との間の最短距離については、前記式(1)を満たす範囲内とはなっていないとする。
【0071】
また、第1発光素子90の平面視における最短横幅は、5mm程度であることが好ましい。
ここで、第1発光素子90の前記最短横幅は、第1発光素子90が平面視円弧状の場合には、円弧状の外周面と内周面とにそれぞれ接線を引き、当該接線間に直交する線の長さをいう。なお、発光素子が平面視円形状の場合には、その円の直径をいう。
さらに、第1発光素子90は、第2発光素子80と受光素子70との間の距離hの中間点に配置されることが、作製しやすい点で好ましい。なお、
図3では、図面の関係上、前記中間点には配置されていない。
【0072】
このように複数の第1及び第2発光素子90及び80のうち、第1発光素子90及び90は、それぞれ同一波長の光を発し、第2発光素子80及び80もそれぞれ同一波長の光を発することが好ましく、また、第1及び第2発光素子90及び80は互いに異なる波長の光を発することが好ましい。さらに、これら複数の第1及び第2発光素子90及び80は、個別で点灯するように制御されていることが好ましい。
【0073】
また、複数の前記発光素子90及び80のうち、受光素子70に近い位置に配置された第1発光素子90から発せられた光に基づいて取得したバイタルデータ(生体情報)を元に、第1発光素子90よりも遠い位置に配置された第2発光素子80から発せられた光に基づいて取得したバイタルデータを、後述する情報処理装置3でデータ加工することが好ましい。
ここで、第2発光素子80から発せられた光は、皮膚の深部にある動脈に照射されて、当該動脈で反射した光が受光素子70に受光される。そのため、皮膚の浅い部分を透過するため、当該受光素子70で取得したバイタルデータはノイズを含んだデータとなる。
【0074】
一方、受光素子70に近い位置に配置された第1発光素子90から発せられた光に基づいて取得したバイタルデータは、動脈に照射されずに、皮膚の浅い部分にある毛細血管に照射されたノイズを含んだデータである。そのため、このノイズを含んだデータ(第1発光素子90から発せられた光に基づいて取得したバイタルデータ)を、前記第2発光素子80から発せられた光に基づいて取得したバイタルデータから差し引いてデータ加工することによって、ノイズを差し引いた有効データを算出することができる。
【0075】
また、
図2では、引き出し電極部63a,63b,63c,63dが透光性基板40の一方の側縁部にのみ引き出す配置としたが、
図3に示す変形例1では、引き出し電極部63a、63b、63c及び63dが透光性基板40の互いに対向する両側側縁部に引き出す配置となっている。
【0076】
(配置等変形例2)
図4は、
図2の変形例であり、反射型光電容積脈波センサーを構成する発光素子及び受光素子等の配置を説明するための平面図である。
図4に示す変形例2では、
図2に示す発光素子80の平面視における最短横幅(
図4の符号H)を厚くした場合であり、その他の構成は同様であるため、同様の構成部分については同様の符号を付してその説明は省略する。
【0077】
(配置等変形例3)
図5は、
図2の変形例であり、反射型光電容積脈波センサーを構成する発光素子及び受光素子等の配置を説明するための平面図である。
図5に示す変形例3では、発光波長の異なる2種類の第2発光素子81及び82を用い、これら2種類の複数の第2発光素子81及び82が受光素子70を中心として同心円上に、交互に配置されている。各第2発光素子81及び82は平面視円弧状をなしている。
【0078】
また、複数の第2発光素子81及び82と、受光素子70との間に、さらに、第1発光素子91及び92が複数配置されている。これら複数の第1発光素子91及び92は、それぞれ第2発光素子81及び82と同様に発光波長の異なる2種類の光を発する。各第1発光素子91及び92も平面視円弧状をなしている。
さらに、これら複数の第1及び第2発光素子91、92、81及び82は、個別で発光(点灯)するように制御されていることが好ましい。
ここで、複数の第1及び第2発光素子91、92、81及び82のうち、受光素子70に遠い位置に配置された第2発光素子81及び82は、当該第2発光素子81及び82と受光素子70との間の最短距離hが、前記した式(1)を満たす範囲内となっている。なお、受光素子70と第1発光素子91及び92との間の最短距離については、前記式(1)を満たす範囲内とはなっていないとする。
また、複数の前記発光素子91、92、81及び82のうち、受光素子70に近い位置に配置された第1発光素子91及び92から発せられた光に基づいて取得したバイタルデータ(生体情報)を基に、第1発光素子91及び92よりも遠い位置に配置された第2発光素子81及び82から発せられた光に基づいて取得したバイタルデータ(生体情報)を、情報処理装置3でデータ加工することが好ましい。
【0079】
(配置等変形例4)
図6は、
図2の変形例であり、反射型光電容積脈波センサーを構成する発光素子及び受光素子等の配置を説明するための平面図である。
図6に示す変形例4では、発光波長の異なる2種類の第2発光素子81及び82を用い、これら2種類の第2発光素子81及び82が受光素子70を中心として同心円上に、交互に配置されている。第2発光素子81及び82は、
図5に示す平面視円弧状とは異なり、平面視円形状をなしている。
また、第2発光素子81及び82は、当該第2発光素子81及び82と受光素子70との間の最短距離hが、それぞれ前記した式(1)を満たす範囲内となっている。
また、これら複数の第2発光素子81及び82は、個別で発光(点灯)するように制御されていることが好ましい。
【0080】
なお、
図5及び
図6では、発光素子81、82、91、92及び受光素子70のみ図示したが、
図2と同様に、2枚の透光性基板41、42、第1電極50、引き出し電極部93a、93b、93c、93d、第2電極60及び封止材43等を備えている。
【0081】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、前記したとおり、発光素子を中心として同心円上に複数の受光素子が配置されている場合であり、その他の構成は第1の実施形態と同様である。
図7は、反射型光電容積脈波センサーを構成する発光素子及び受光素子等の配置を説明するための模式図であり、
図7(a)は平面図、
図7(b)は各部材を分解した平面図、
図7(c)はC-C′矢視断面図、
図7(d)はD-D′矢視断面図である。
図7に示すように、検出部14は、透光性基板41上に、光透過性の第1電極(陽極)50及び第2電極(陰極)60の複数の引き出し電極部63a、63b、63c及び63dが形成されている。
【0082】
前記第1電極50は、透光性基板41の中央に形成された第1中央電極部51と、当該第1中央電極部51を中心として、同心円上に配置された第1周方向電極部52及び52とを備えている。
第1周方向電極部52及び52は、平面視円弧状をなし、第1周方向電極部52及び52同士が互いに連続しないように非断続的に形成されている。
また、第1中央電極部51は、前記引き出し電極部63b側に延出して形成されている。さらに、2つの第1周方向電極部52及び52も、引き出し電極部63c側に延出して形成されている。
【0083】
前記引き出し電極部63a、3b、63c及び63dは、透光性基板41上に形成され、当該透光性基板41の側縁部へ引き出すための配線とされている。
【0084】
前記第1電極50のうち第1中央電極部51上には、当該第1中央電極部51を被覆するように発光素子80が形成されている。発光素子80は、平面視円形状をなしている。
【0085】
また、前記第1電極50のうち2つの第1周方向電極部52及び52上には、当該第1周方向電極部52及び52を被覆するように受光素子70及び70がそれぞれ形成されている。各受光素子70及び70は、第1周方向電極部52及び52に沿って平面視円弧状をなし、受光素子70及び70同士が互いに連続しないように非断続的に形成されている。
このようにして、第1周方向電極部52及び52上に形成された2つの受光素子70,70は、発光素子80を中心として同心円上に配置されている。
【0086】
また、
図7では、受光素子70の平面視における最短横幅Wが、当該受光素子70と発光素子80との間の最短距離hよりも大きくなっているが、好ましくは、受光素子70の最短横幅Wが、当受光素子70と発光素子80との間の最短距離hと同じであることが、測定精度向上の点で好ましい。
ここで、受光素子70の平面視における最短横幅Wは、
図2で説明した発光素子80の最短横幅Hと同様に、前記受光素子70が平面視円弧状の場合には、円弧状の外周面と内周面とにそれぞれ接線を引き、当該接線間に直交する線の長さをいう。なお、受光素子が平面視円形状の場合には、その円の直径をいう。
【0087】
そして、前記受光素子70、発光素子80及び80上には、さらに第2電極60が形成されている。
前記第2電極(陰極)60は、前記第1電極50の第1中央電極部51に対応する位置に形成された第2中央電極部61と、当該第2中央電極部61の周囲で前記第1周方向電極部52,52に対応する位置に形成された平面視円弧状で非断続的に囲む2つの第2周方向電極部62,62とを備えている。
第2中央電極部61には、引き出し電極部63aが接続されており、当該引き出し電極部63aは透光性基板41上で第2周方向電極部62及び62の間を介して、一方の第2周方向電極部62の周囲を回りこんで透光性基板41の側縁部側へ延出して形成されている。
また、2つの第2周方向電極部62及び62の各端部においても、前記引き出し電極部63d、63dが接続されている。当該引き出し電極部63d及び3dは、透光性基板41の側縁部側に延出して形成されている。
【0088】
このようにして、透光性基板41上に形成された第1電極50、引き出し電極部63a~63d、受光素子70、発光素子80及び第2電極60は、当該第2電極60上にさらに透光性基板42が設けられ、2つの透光性基板41及び42間が封止材43によって封止されている。
【0089】
(配置等変形例5)
図8は、
図7の変形例であり、反射型光電容積脈波センサーを構成する発光素子及び受光素子等の配置を説明するための平面図である。
図8に示す変形例5では、
図7に示す受光素子をさらに増やした場合である。すなわち、
図7に示す発光素子80と受光素子(以下、「第2発光素子」ともいう。)70との間に、さらに第1受光素子90Aが配置され、受光素子70,90Aが2重で配置された構造となっている。なお、
図8では、
図3に示す受光素子と発光素子とが逆に配置された場合であり、その他は同様の構成のためその説明を省略する。
【0090】
複数の受光素子70及び90Aのうち、発光素子80に近い位置に配置された第1受光素子90Aで受光した光に基づいて取得したバイタルデータ(生体情報)を元に、第1受光素子90Aよりも遠い位置に配置された第2受光素子70で受光した光に基づいて取得したバイタルデータ(生体情報)を、後述する情報処理装置3でデータ加工することが好ましい。
【0091】
その他、第2の実施形態では、前記した変形例2~変形例4においても、受光素子と発光素子とを逆にした配置(すなわち、発光素子を中心として同心円上に受光素子が配置された構成)を適用することができる。
【0092】
なお、本発明の反射型光電容積脈波センサーにおいて、発光素子と受光素子との間の前記最短距離が、複数種類存在し、センシングに適した前記最短距離を有する発光素子と受光素子とを選択するように構成してもよい。
すなわち、発光素子及び受光素子の両方又はいずれかが複数存在し、発光素子と受光素子の間の前記最短距離のバリエーションが複数種類存在するデバイスを用いて、センシングに最も適した前記最短距離のものを抽出するための機構を備えることが好ましい。
【0093】
例えば、
図9(a)に示すように、1つの受光素子170を中心として同心円上に発光素子180を複数配置し、前記最短距離のバリエーションが複数種類存在するデバイスや、
図9(b)に示すように、複数の受光素子170と複数の発光素子180をマトリクス状に配置したデバイスが挙げられる。そして、各画素が個別に駆動できるように構成する。
また、センシングに最も適しているか否かの判別については、
図9(c)に示すように、受光素子から得られたバイタルデータの波形において、変曲点(図中、矢印部分)を明確に確認することができるか否かによって行う。例えば、ノイズが大きいと変曲点が埋もれてしまうことから、より正確な波形を得るためには、振幅(高さ)を大きくする必要があり、PPGの原理に則り容積変化が大きい箇所を捉えることが有効である。
【0094】
1.2[反射型光電容積脈波センサーの全体構成例]
反射型光電容積脈波センサーの全体的構成としては、種々の形態・態様を採り得る。
例えば、基本的全体構成としては、発振器の信号に基づいて、生体の容積脈波の周波数よりも高い周波数により点滅駆動され発光する発光素子と、当該発光素子から発光された光及び外光が測定対象の生体組織により反射した光を受光し、受光光量に対応した信号レベルを有する信号を生成する受光素子と、当該受光素子が生成した信号から、前記外光による信号成分を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された信号成分を、前記受光素子が生成した信号から減算することにより、前記受光素子が生成した信号中の外光等に起因するノイズ信号を低減する低減手段と、前記低減手段により外光等に起因するノイズ信号成分が低減された後の信号に基づいて、測定対象の生体の容積脈波を表す信号を生成する手段とを備えた構成であることが好ましい。
【0095】
1.3[反射型光電容積脈波センサーの構成要素]
反射型光電容積脈波センサーの各種構成要素のうち、主要な要素である、発光素子及び受光素子について詳細に説明する。
【0096】
<発光素子>
本発明において、発光素子は、生体組織に照射する光の光源として用いる。
発光素子としては、有機発光ダイオード(OLED)も無機系の発光ダイオード(LED)も使用でき、特に限定されるものではないが、本発明に係る発光素子としては、面状の有機層で構成される発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(organic electroluminescent diode:「OLED」、「有機EL素子」及び「有機フォトダイオード」ともいう。)を用いることが、フレキシブルで装着感が良好で、かつ波長ばらつきや輝度ばらつきを低減できる点で好ましい。
特に、赤色発光する有機EL素子上に、有機EL素子の可視光を近赤外光(IR)に変換する波長変換フィルターを配置した構成であることが好ましい。
また、面状の発光素子として、LEDと導光板を用いてもよい。ディスプレイ用バックライトでは、LEDを導光板のエッジに配置し、導光板のサイドエッジから光を入射する方式が取られている。
さらに、面とみなせる程度の解像度でマイクロLEDを用いてもよい。LED直情の輝度が局所的に高くなることを緩和するために、散乱層を設けることがより好ましい。
【0097】
(有機EL素子)
本発明に好適な有機EL素子としては、例えば、フレキシブルな樹脂基板上に陽極及び陰極を有し、発光層を含む有機機能層群が対向する位置にある陽極及び陰極に挟持されている構成を挙げることができる。さらに、目的に応じて、封止部材やガスバリアー層、光取出し層等の各機能層を適宜組み合わせて構成して良い。
【0098】
本発明に係る有機EL素子における代表的な構成例について、以下に列挙するが、本発明に適用可能な有機EL素子の構成としては、これらに例示する構成に限定されるものではない。
【0099】
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
【0100】
有機EL素子は、外部から電場が印加され、陽極から正孔が正孔輸送層へ注入され、陰極から電子が電子輸送層に注入される。 注入されたキャリアが、分子間をホッピング移動する。 発光層で正孔と電子は再結合し、電気的に中性な励起子を生成する。 励起子は、発光量子効率に従って光を発して輻射失活する。 有機層中で発生した光が、光取り出し面から空気中へ取り出される。
【0101】
本発明に適用可能な有機EL素子を構成する具体的な各構成層の詳細やその製造方法については、特に限定はなく、公知の構成材料や製造方法を適用することができる。例えば、特開2013-089608号公報、特開2014-120334号公報、特開2015-201508号公報、国際公開第2018/51617号等に記載されている内容を参照することができる。
【0102】
(波長変換フィルター)
本発明に係る有機EL素子は、有機EL素子の可視光を近赤外光に変換する波長変換フィルターが設けられていることが好ましい。
【0103】
本発明に係る波長変換フィルターにおいては、波長変換能を有する発光体(例えば、発光色素等)を含有することが好ましい。本発明に係る波長変換フィルターは、波長変換能を有する発光色素を含有していれば、特に形態や製造方法などは制限されず、目的用途に応じて適宜決定される。
【0104】
本発明に係る波長変換フィルターは、近赤光領域を含む可視光領域(380~780nm)、好ましくは近赤光領域を含む緑~赤色領域(495~750nm)、特に好ましくは赤色領域(600~700nm)の範囲内の光を発光する有機EL素子からの光を吸収して、近赤外光、例えば、700nmを超え、1500nm以下の領域で発光する、さらには、850nm付近に発光極大を有する近赤外光に変換する機能を有することが好ましい。
【0105】
波長変換フィルターと有機EL素子とは、それぞれを別途製造して、両者を貼合して作製する方法であっても、有機EL素上に直接、波長変換フィルターを塗設して積層させてもよい。また、必要に応じて、波長変換されずに放射されてきた光を除外するためのカットフィルターを積層又は含んでもよい。
【0106】
本発明に係る波長変換フィルターの厚さは、小型化、かつフレキシブル性を維持する観点からは、0.01~1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1~500μmの範囲内であり、さらには10~300μmの範囲内であることが好ましい。
【0107】
本発明に係る波長変換フィルターは、必要に応じて発光色素の他に、着色剤や光安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、難燃剤、無機添加剤、透明化剤、紫外線吸収剤、充填剤、光散乱性粒子といった周知の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0108】
<受光素子>
本発明に係る受光素子は、発光素子から生体組織に照射された光のうち、前記生体組織によって反射された光を検出し、電気に変換するセンサーとして機能する。
受光素子としては、平面状の有機フォトダイオード(organic photo diode:OPD)又は有機薄膜太陽電池(organic photovoltaics:OPV)を用いることが好ましく、特にOPDを用いることが、フレキシブルで装着感が良好で、かつ波長ばらつきや輝度ばらつきを低減できる点で好ましい。
【0109】
(1)有機フォトダイオード
本発明に係る受光素子としは、従来公知の有機フォトダイオード(OPD)を用いることができる。
例えば、有機機フォトダイオードは、光透過性の樹脂、ガラス等の基板上にスパッタリング法や抵抗加熱蒸着法等により形成されたITO(Indium-Tin Oxide)等の透明な導電性膜からなる陽極と、陽極上に電子供与性層と電子受容性層をそれぞれ抵抗加熱蒸着法等によって成膜してなる構成の光電変換層、更にその上部に同じく抵抗加熱蒸着法等により形成された金属からなる陰極とを基本的構成要素としている。
【0110】
このような構成を有する有機フォトダイオードに、光照射を行うと光電変換領域にて光吸収が起こり、励起子が形成される。続いて、キャリアが分離され電子は電子受容性層を通して陰極へ、正孔は電子供与性層を通して陽極へと移動する。これにより両電極間には起電力が発生し、外部回路をつなげることで電気信号を取り出すことが可能となる。
【0111】
光電変換層は、単一層又は複数層からなることができる。光電変換層は、例えば、真性層(intrinsic layer、I層)、p型層/I層、I層/n型層、p型層/I層/n型層、p型層/n型層などの様々な組み合わせを有することができる。
【0112】
例えば、米国特許第2017/0156651公報の
図13Dに記載の構造を有するものを使用することができる。また、有機フォトダイオードに用いられる各種有機材料等については、特表2017-532546号公報及び特開2006-261172号公報等が参考となる。
【0113】
(2)有機薄膜太陽電池
本発明に係る受光素子としては、従来公知の種々の形態の有機薄膜太陽電池(OPV)を用いることもできる。
例えば、基板の一方面上に、透明電極である陽極、正孔輸送層、バルクヘテロジャンクション層の光電変換層、電子輸送層及び陰極が順次積層されている基本的構成を有するバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子を用いることができる。
なお、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、又は平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0114】
なお、光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。
p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。
ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与又は受容するものではなく、光反応によって、電子を供与又は受容するものである。
【0115】
また、さらなる太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成(バルクヘテロジャンクション層を複数有する構成)であってもよい。
【0116】
p型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
【0117】
2.[生体情報測定装置]
本発明の反射型光電容積脈波センサーは、目的に応じて種々の形態の生体情報測定装置に適用できる。
以下において、適用例について説明する。
【0118】
(適用例1)
図10は、手首に巻き付け可能な反射型光電容積脈波センサーを用いた生体情報測定装置の斜視図である。
生体情報測定装置1は、腕時計のように患者の手首に対して装着される本体部10を有する。具体的には、本体部10はベルト20を備え、ベルト20により患者の手首に装着可能である。また、ベルト20の内側には、後述する発光素子80及び受光素子70等を備えた検出部14が配置され、当該検出部14と本体部10とが電気的に接続されている。
【0119】
前記発光素子80からは常時一定の量の光が出力されて生体内部に照射されており、血液中を流れる酸素と結合するヘモグロビンの量で反射される光の量が変化する。受光素子70は、その反射光の受光量に依存した信号を本体部に出力し、患者の血液中の酸素濃度を測定することができる。
【0120】
本体部10は扁平状に形成され、その周面や表面に、操作部12及び表示部15が設けられている。また、その内部に、制御部11や記録部13等に相当する機能を果たす電気回路等(
図11参照。)が収納されている。
【0121】
操作部12は、例えば、電源スイッチ12a、タイミングスイッチ(操作スイッチ)12b等を備えて構成されている。
【0122】
(適用例2)
図11は、生体情報測定装置1の機能構成例を示した図である。
図11に示すように、生体情報測定装置1は、制御部11、操作部12、記録部13、検出部14、表示部15、無線通信部16、加速度検知部17、電力供給部18等を備えて構成されている。
【0123】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成される。制御部11のCPUは、記録部13に記録されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
また、制御部11は、時計機能部を有しており、この時計機能部からバイタルデータの測定日時の日付及び時刻を得ることもできる。
【0124】
操作部12は、操作者の指示を検知する検知部であって、各種スイッチ、各種機能ボタン等を備えており、これらの操作信号を制御部11に出力する。
【0125】
記録部13は、半導体の不揮発性メモリー等で構成されている。記録部13には、本実施の形態における生体情報測定装置1を機能させるのに必要なシステムプログラムや各種プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等が記録されている。
例えば、記録部13は、測定開始から測定終了までの間、測定しているバイタルデータを連続的に記録する。なお、測定開始から測定終了までの間、一定時間ごとにバイタルデータが記録されることとしても良い。
【0126】
検出部14は、本発明の反射型光電容積脈波センサーを適用して患者のバイタルデータを取得するデータ取得部であって、前記したように、発光素子及び受光素子等を備え、手首等の生体部位に装着可能に構成されている。
検出部14は、測定制御部14aによって発光素子駆動回路14bを制御し、検出部14に備えられた発光素子によって赤色光と赤外光を生体部位に向けて発光し、検出部14に備えられた受光素子により受光した生体部位の反射光のアナログ信号を、アナログ・フロント・エンド回路14cによってノイズ除去や信号増幅を行い、ADコンバーター14dに入力するための電圧信号に整えた後、ADコンバーター14dによってデジタルデータに変換する。
【0127】
ADコンバーター14dによってデジタルデータに変換した後、このデジタルデータをもとに制御部11でSpO2や脈拍数等のバイタルデータを算出する。算出されたバイタルデータは、記録部13に記録される。
【0128】
表示部15は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成され、例えばドットマトリックス方式により表示を行うものであり、制御部11から入力される表示信号の指示に従って表示を行う。
【0129】
無線通信部16は、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)等の無線通信により情報処理装置3とデータ送受信を行うための無線インターフェースを有する。
【0130】
加速度検知部17は、加速度の変化に基づいて患者の動きを検知する。
具体的に、加速度検知部17は、患者の体動などにより自身に加わる加速度に応じた加速度信号を生成し、制御部11に出力する。
【0131】
電力供給部18は、生体情報測定装置1の各部が動作に要する電力を当該各部へ供給する。電力供給部18は、図示しないバッテリーから出力される電力を各部の動作電圧で供給する。
【0132】
(生体情報処理装置の構成)
情報処理装置3は、生体情報測定装置1から送信されたバイタルデータの解析を行うことの可能な装置である。情報処理装置3としては、例えば、スマートフォンやタブレット、PC(Personal Computer)等が適用可能であるが、特に限定されない。
【0133】
図12に、情報処理装置3の機能構成例を示す。
図12に示すように、情報処理装置3は、例えば、制御部31、操作部32、記録部33、表示部34、通信部35等を備えて構成されている。
【0134】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、記録部33に記録されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行する。
【0135】
具体的には、制御部31は、生体情報測定装置1において、受光素子70を中心として同心円上に、受光素子70からの距離が異なる位置に、それぞれ第1及び第2発光素子90、80(91、92、81及び82)が配置されている場合(例えば
図3、
図5の配置の場合)には、生体情報測定装置1から出力されたバイタルデータのうち、第2発光素子80(81、82)から発せられる光に基づいて得られたバイタルデータについて、第1発光素子90(91及び92)から発せられる光に基づいて得られたバイタルデータを差し引いて、ノイズを除去した有効なバイタルデータを算出する処理を行う。
【0136】
また、発光素子80を中心として同心円上に、発光素子80からの距離が異なる位置に、それぞれ第1及び第2受光素子70,90Aが配置されている場合(例えば、
図8の配置の場合)には、生体情報測定装置1から出力されたバイタルデータのうち、第2受光素子70で受光した光に基づいて得られたバイタルデータについて、第1受光素子90Aで受光した光に基づいて得られたバイタルデータを差し引いて、ノイズを除去した有効なバイタルデータを算出する処理を行う。
【0137】
操作部32は、各種スイッチ、各種機能ボタン及びタッチパネル等を備えており、これらの操作信号を制御部31に出力する。
【0138】
記録部33は、半導体の不揮発性メモリー等で構成されている。記録部33には、システムプログラムや各種プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等が記録されている。
【0139】
例えば、記録部33には、生体情報測定装置1から出力されたバイタルデータが記録されている。
具体的には、生体情報測定装置1において、受光素子70を中心として同心円上に、受光素子70からの距離が異なる位置に、それぞれ第1及び第2発光素子90,80(91,92,81,82)が配置されている場合(例えば
図3、
図5の配置の場合)には、第1発光素子90(91,92)に基づくバイタルデータや、第2発光素子80(81,82)に基づくバイタルデータ、また、第2発光素子80(81,82)から発せられる光に基づいて得られたバイタルデータから第1発光素子90(91,92)から発せられる光に基づいて得られたバイタルデータを差し引いた有効なバイタルデータなどが記録される。
【0140】
さらに、発光素子80を中心として同心円上に、発光素子80からの距離が異なる位置に、それぞれ第1及び第2受光素子70,90Aが配置されている場合(例えば、
図8の配置の場合)には、第1受光素子90Aで受光した光に基づいて得られたバイタルデータや、第2受光素子70で受光した光に基づいて得られたバイタルデータ、また、第2受光素子70で受光した光に基づいて得られたたバイタルデータについて、第1受光素子90Aで受光した光に基づいて得られたたバイタルデータを差し引いた有効なバイタルデータなどが記録される。
【0141】
表示部34は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、制御部31から入力される表示信号の指示に従って各種画面を表示する。
【0142】
通信部35は、例えば、BluetoothやWi-Fi等の無線通信により生体情報測定装置1とデータ送受信を行うためのインターフェースを有する。通信部35は、USB等の有線インターフェースを有してもよい。
【実施例0143】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
発光素子と、受光素子との間の最短距離h(mm)をそれぞれ変更した反射型光電容積脈波センサー1~11を設計し、各センサーについて腕の甲側、手首尺骨側、手首橈骨側、腹部及び胸部に装着して、後述するAC/DCの値を計測した。
【0145】
具体的には、受光素子として、「KPD30S(京都セミナコンダクター社製)」を使用した。発光素子としては、60×80mmのOLEDパネル(ピーク波長630nm)の上に波長変換フィルムを貼りつけ、790nmのピーク波長を得たデバイス上に、リング部以外の光がカットされるよう、マスクしたリング状光源を得て、このリング状光源を用いた。
前記リング状光源の中心に前記受光素子を配置、固定し、前記受光素子とリング状光源の最短距離hが、下記表I及び表IIに示すとおりとなるようにリング径を調整し、
図2に示すような構造の反射型光電容積脈波センサー1~11を得た。リング状光源の幅は2mmとし、光量は25~100mA/m
2の間で調整し、各距離に応じて好ましい条件を用いた。また、光量に応じてセンサーの感度を調整した。
サンプリング周波数500Hzにて、60秒間計測し、オフラインにて解析した。サンプリングについては、アナログ・フロント・エンド(AFE)「AFE4403EVM(テキサスインスツルメンツ社製)」を使用し、取得した。AC/DCの算出は後述するとおりであり、腕の甲側、手首尺骨側、手首橈骨側、腹部及び胸部について各10回計測した平均値として算出した。
回路側については、バンドパスフィルタ及びローパスフィルタを使用した。データ処理については、移動平均及び周波数領域法を利用した。
【0146】
また、装着した腕の甲側の人体の皮膚(表皮+真皮)の厚さtは、4(mm)、手首尺骨側の人体の皮膚の厚さtは、3.5(mm)、手首橈骨側の人体の皮膚の厚さtは、3(mm)、腹部の人体の皮膚の厚さtは、2.5mm、胸部の人体の厚さtは、2(mm)とした。
【0147】
<AC/DCについて>
前記した「<酸素飽和度の算出法>」で説明したとおり、吸光度のAC成分として、吸光度の経時変化の最大値と最小値との差を算出することにより特定し、吸光度のDC成分として、吸光度の経時変化の平均値を算出することにより特定した。そして、(吸光度のAC成分)/(吸光度のDC成分)により、AC/DCの値を算出し、下記表I及び表IIに示した。
【0148】
本発明においては、前記AC/DCの値は、0.20%の範囲内であることが実用上好ましく、特に0.30%以上であることが好ましいとした。また、デバイスのサイズを鑑みると、0.80%以下であることが実用上好ましいとした。
【0149】
【0150】
【0151】
上記結果に示されるように、前記最短距離hを大きくすることで、AC/DCの値が増大することが確認できる。ただし、前記最短距離hを大きくしすぎると、光量の減衰影響が大きく、消費電力が増加することに加え、信号強度自体が低下しノイズ影響を受けやすくなる。
したがって、前記式(1)を満たす本発明の反射型光電容積脈波センサーは、比較例の反射型光電容積脈波センサーに比べて、光量の減衰影響が低減され、消費電力も増加せず、また信号強度自体も低下することなくノイズ影響を受けにくい。よって、測定精度に優れることが認められる。