(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059672
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】高純度リチウム塩水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01D 7/26 20060101AFI20220407BHJP
H01M 4/36 20060101ALN20220407BHJP
H01M 4/485 20100101ALN20220407BHJP
H01M 4/525 20100101ALN20220407BHJP
H01M 4/505 20100101ALN20220407BHJP
【FI】
C01D7/26
H01M4/36 Z
H01M4/485
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167402
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】391023415
【氏名又は名称】株式会社アサカ理研
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 慶太
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】井上 博人
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA10
(57)【要約】
【課題】リン酸アルミニウムの濾別を短時間で行うことができる高純度リチウム塩水溶液の製造方法を提供する。
【解決手段】高純度リチウム塩水溶液の製造方法は、原料となる第1のリチウム塩水溶液から得られるリン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーのpHを2~3の範囲に調整し、リン酸アルミニウムの沈殿を得る工程と、リン酸アルミニウムの沈殿を濾別して除去し、第2のリチウム塩水溶液を得る工程と、第2のリチウム塩水溶液を精製し、高純度リチウム塩水溶液を得る工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩をリチウムとして0.1~70g/Lの範囲で含み、原料となる第1のリチウム塩水溶液から得られるリン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーのpHを2~3の範囲に調整し、リン酸アルミニウムの沈殿を得る工程と、
該リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーから該リン酸アルミニウムの沈殿を濾別して除去し、第2のリチウム塩水溶液を得る工程と、
前記第2のリチウム塩水溶液を精製し、高純度リチウム塩水溶液を得る工程とを備えることを特徴とする高純度リチウム塩水溶液の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の高純度リチウム塩水溶液の製造方法において、前記第1のリチウム塩水溶液に水酸化アルミニウムを除くアルミニウム塩とリン酸とを添加し、pHを8~14の範囲に調整することにより前記リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を得ることを特徴とする高純度リチウム塩水溶液の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の高純度リチウム塩水溶液の製造方法において、前記第1のリチウム塩水溶液に、前記リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーから濾別された前記リン酸アルミニウムの沈殿を添加することを特徴とする高純度リチウム塩水溶液の製造方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項記載の高純度リチウム塩水溶液の製造方法において、前記第1のリチウム塩水溶液から得られる前記リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーのpHを2~3の範囲に調整する前に、該リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーから該リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を濾別し、濾別された該リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を該第1のリチウム塩水溶液よりも少量の水に分散させて、濃縮されたリン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーを得ることを特徴とする高純度リチウム塩水溶液の製造方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項記載の高純度リチウム塩水溶液の製造方法において、前記第2のリチウム塩水溶液の精製は、該第2のリチウム塩水溶液のpHを7~10の範囲に調整し、生成するリン酸リチウム及び水酸化アルミニウムの沈殿を濾別することにより行うことを特徴とする高純度リチウム塩水溶液の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の高純度リチウム塩水溶液の製造方法において、前記第2のリチウム塩水溶液から濾別されたリン酸リチウム及び水酸化アルミニウムの沈殿を、前記第1のリチウム塩水溶液から得られるリン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物に添加することを特徴とする高純度リチウム塩水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度リチウム塩水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムはリチウムイオン二次電池等のリチウムイオン電池の原料として注目されており、その供給源としては、廃リチウム電池からリサイクルされるものの他、鉱物、塩水、海水等が知られている。前記塩水は天然の塩湖から得られ、通常、塩化リチウムの形態でリチウムを含有している。前記塩水中に含有されるリチウムの濃度は1g/L程度である。
【0003】
そこで、天然の塩湖から得られる前記塩水を露地の蒸発池に供給し、1年以上かけて自然蒸発させて濃縮し、Mg、Ca、B等の不純物を除去した後、炭酸リチウムを析出させて回収することが行われている。しかし、前記塩水を自然蒸発により濃縮する方法は、前記塩水の濃縮に長時間を要する上、天候等の自然条件の影響を受けやすく、さらには濃縮過程でリチウムが他の不純物と塩を形成して失われるという問題がある。
【0004】
一方、前記塩水から、炭酸リチウムを回収する方法として、前記塩水にリン、リン酸又はリン酸塩を添加してリン酸リチウムを生成させて濃縮する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の方法は、前記リン酸リチウムにアルミニウム塩を添加して、該リン酸リチウムと該アルミニウム塩とを含むスラリーを調製し、該スラリーのpHを3.8~4.6の範囲に調整することにより該スラリーに含まれるリン酸イオン(PO4
3-)とアルミニウムイオン(Al3+)をリン酸アルミニウム(AlPO4)として沈殿させた後、リン酸アルミニウム(AlPO4)を濾別して除去することにより、粗製リチウム塩水溶液を得るというものである。特許文献1の記載によれば、前記粗製リチウム塩水溶液はさらにpH調整、イオン交換膜を用いる処理等により、不純物を除去して精製することにより、高純度リチウム塩水溶液とすることができ、該高純度リチウム塩水溶液に炭酸ナトリウム等の炭酸塩を添加することにより炭酸リチウムを得ることができるとされている。
【0006】
また、特許文献1には、前記アルミニウム塩として、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硝酸アルミニウムの4種の化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許公開第108675323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、リン酸リチウムとアルミニウム塩とを含むスラリーのpHを調整することにより沈殿するリン酸アルミニウム(AlPO4)の濾過性に難があり、該リン酸アルミニウム(AlPO4)を濾別する操作に長時間を要するという不都合がある。
【0009】
本発明は、かかる不都合を解消して、リン酸アルミニウム(AlPO4)の濾別を短時間で行うことができる高純度リチウム塩水溶液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、リン酸アルミニウム(AlPO4)を濾別する操作を短時間で行う手段について鋭意検討した結果、特許文献1に記載の方法において、アルミニウム塩を、特許文献1には例示されていない水酸化アルミニウムとすることで、リン酸アルミニウム(AlPO4)を短時間で濾別することができることを知見した。
【0011】
そこで、かかる目的を達成するために、本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法は、リチウム塩をリチウムとして0.1~70g/Lの範囲で含み、原料となる第1のリチウム塩水溶液から得られるリン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーのpHを2~3の範囲に調整し、リン酸アルミニウムの沈殿を得る工程と、該リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーから該リン酸アルミニウムの沈殿を濾別して除去し、第2のリチウム塩水溶液を得る工程と、前記第2のリチウム塩水溶液を精製し、高純度リチウム塩水溶液を得る工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、まず、原料となる第1のリチウム塩水溶液から、リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーを得る。前記第1のリチウム塩水溶液は、リチウム塩をリチウムとして0.1~70g/Lの範囲で含む、低濃度のリチウム塩水溶液である。前記水酸化アルミニウムは、前記第1のリチウム塩水溶液から得られるリン酸リチウムを含むスラリーに、反応系の外部から添加してもよく、該第1のリチウム塩水溶液からリン酸リチウムを含むスラリーを得る際に、反応系の内部で生成するものであってもよい。
【0013】
本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、次に、前記リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーのpHを2~3の範囲に調整する。このようにすると、前記スラリーに含まれるリン酸イオンとアルミニウムイオンとからリン酸アルミニウム(AlPO4)が生成し、沈殿する。
【0014】
そこで、次に、前記スラリーから前記リン酸アルミニウムの沈殿を濾別して除去し、濾液として第2のリチウム塩水溶液を得る。本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、前記リン酸アルミニウムを、リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとを含む前記スラリーから生成させることにより、前記リン酸アルミニウムの沈殿を濾別する操作を短時間で行うことができる。
【0015】
本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、次に、前記第2のリチウム塩水溶液から不純物を除去して精製することにより、高純度リチウム塩水溶液を得ることができる。
【0016】
また、本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、前記第1のリチウム塩水溶液に水酸化アルミニウムを除くアルミニウム塩とリン酸とを添加し、pHを8~14の範囲に調整することにより、リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を得ることが好ましい。
【0017】
また、本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、前記第1のリチウム塩水溶液に、前記リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーから濾別された前記リン酸アルミニウムの沈殿を添加することが好ましい。前記リン酸アルミニウムの沈殿は、前記第1のリチウム塩水溶液に対し、アルミニウム塩及びリン酸源として作用する。従って、反応系内で得られた生成物を前記第1のリチウム塩水溶液に添加するアルミニウム塩とリン酸との一部として用いることができ、好都合である。
【0018】
また、本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、前記第1のリチウム塩水溶液から得られる前記リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーのpHを2~3の範囲に調整する前に、該リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーから該リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を濾別し、濾別された該リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を該第1のリチウム塩水溶液よりも少量の水に分散させて、濃縮されたリン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含むスラリーを得ることが好ましい。本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、前記リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を濃縮することにより、前記スラリーか前記リン酸アルミニウムの沈殿を濾別する操作をさらに短時間で行うことができる。
【0019】
また、本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法において、前記第2のリチウム塩水溶液の精製は、該第2のリチウム塩水溶液のpHを7~10の範囲に調整し、生成するリン酸リチウム及び水酸化アルミニウムの沈殿を濾別することにより行うことが好ましい。このようにすることにより、前記第2のリチウム塩水溶液に含まれる不純物としてのリン酸イオン及びアルミニウムイオンを除去することができる。
【0020】
また、本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、前記第2のリチウム塩水溶液から濾別されたリン酸リチウム及び水酸化アルミニウムの沈殿を、前記第1のリチウム塩水溶液から得られるリン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物に添加することが好ましい。前記第2のリチウム塩水溶液から濾別されたリン酸リチウム及び水酸化アルミニウムの沈殿はリン酸リチウムを含むので、該沈殿を前記第1のリチウム塩水溶液から得られるリン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物に添加することによりリチウムの回収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の高純度リチウム塩水溶液の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、まず、
図1のSTEP1で、第1のリチウム塩水溶液としての低濃度リチウム(Li)塩水溶液に、アルミニウム(Al)塩とリン酸(H
3PO
4)とを添加する。前記低濃度Li塩水溶液は、塩化リチウム等のリチウム塩を、リチウムとして0.1~70g/Lの範囲で含んでいる。このような低濃度Li塩水溶液として、例えば、天然の塩湖から得られる塩水等を用いることができる。前記低濃度Li塩水溶液に添加するAl塩は、水酸化アルミニウムを除くAl塩であればどのようなものであってもよく、例えば、塩化アルミニウムを用いることができる。
【0024】
次に、STEP2で、Al塩とH3PO4とが添加された前記低濃度Li塩水溶液のpHを8~14、好ましくは10~11の範囲に調整する。STEP2における前記pH調整は、Al塩とH3PO4とが添加された前記低濃度Li塩水溶液に、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)又はその水溶液を添加することにより行うことができる。
【0025】
このようにすると、Al塩とH3PO4とが添加された前記低濃度Li塩水溶液中で、リン酸リチウム(Li3PO4)と水酸化アルミニウム(Al(OH)3)が生成し、Li3PO4とAl(OH)3との混合物を含むスラリーを得ることができる。
【0026】
次に、STEP3で、前記スラリーのpHを2~3の範囲に調整する。STEP2における前記pH調整は、例えば、塩酸または硫酸を添加することにより行うことができる。このようにすると、Li3PO4とAl(OH)3とからリン酸アルミニウム(AlPO4)が生成し、沈殿する。
【0027】
そこで、次に、STEP4で、前記スラリーから前記AlPO4を固液分離により濾別して除去することにより、第2のリチウム塩水溶液としての濾液を得ることができる。このとき、前記AlPO4は前記スラリーから生成するので未反応のAl(OH)3を微量ながら含んでおり、この結果として前記AlPO4の濾過性が良くなり、前記濾別する操作を短時間で行うことができるものと考えられる。
【0028】
尚、本実施形態の高純度リチウム塩水溶液の製造方法では、STEP2で得られたLi3PO4とAl(OH)3との混合物を含む前記スラリーは、STEP3で前記スラリーのpHを2~3の範囲に調整する前に、固液分離によりLi3PO4とAl(OH)3とを濾別し、前記低濃度Li塩水溶液よりも少量の水に再分散させることにより濃縮してもよい。前記スラリーを濃縮することにより、STEP4で、該スラリーから前記AlPO4を前記濾別する操作をさらに短時間で行うことができる。
【0029】
STEP4で得られた前記濾液は、STEP3において塩酸を添加することにより前記pH調整を行う場合には塩化リチウム水溶液であり、STEP3において硫酸を添加することにより前記pH調整を行う場合には硫酸リチウム水溶液である。また、STEP4で分離された微量のAl(OH)3を含む前記AlPO4(AlPO4とAl(OH)3との混合物)は、STEP1に戻すことができる。
【0030】
次に、STEP5で、STEP4で得られた前記濾液のpHを7~10の範囲に調整する。STEP5における前記pH調整は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)又はその水溶液を添加することにより行うことができる。このようにすると、前記濾液に含まれる不純物としてのリン及びアルミニウムが、Li3PO4とAl(OH)3として沈殿する。
【0031】
そこで、次に、STEP6で、前記濾液からLi3PO4とAl(OH)3とを固液分離により濾別して除去することにより、前記不純物としてのリン及びアルミニウムの濃度が低減された高純度リチウム塩水溶液を得ることができる。STEP6で、濾別されたLi3PO4とAl(OH)3とはリチウムを含んでいるので、STEP2で得られたLi3PO4とAl(OH)3との混合物を含むスラリーに添加することによりリチウムの回収率を向上させることができる。
【0032】
本実施形態で得られた前記高純度リチウム塩水溶液は、STEP7で、炭酸ナトリウム等の炭酸塩を添加することにより、炭酸リチウムを得ることができる。
【0033】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例0034】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、イオン交換水1.5Lに塩化リチウム27.5gを添加し、第1のリチウム塩水溶液として、3g/Lのリチウム(Li)を含む低濃度リチウム水溶液を調製した。
【0035】
次に、
図1に示すSTEP1で、前記低濃度リチウム水溶液に、塩化アルミニウム6水和物54.8gと、85%リン酸26.2gを添加し、液温を60℃に保持して攪拌した。
【0036】
次に、
図1に示すSTEP2で、塩化アルミニウム6水和物及びリン酸を添加した前記低濃度リチウム水溶液に、48%水酸化ナトリウム水溶液111.2gを添加し、120分間反応させて、pHを10に調整した。この結果、リン酸リチウム(Li
3PO
4)と水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)との混合物を含む第1のスラリーを得た。
【0037】
次に、前記第1のスラリーを、真空ポンプを用いる減圧濾過により固液分離した。具体的には、濾紙直径95mmのブフナー漏斗(有限会社桐山製作所製)と吸引瓶とを用い、濾紙として保留粒子径0.5μmのNo.3濾紙(有限会社桐山製作所製)を用いた。濾別された沈殿物を300mLのイオン交換水で洗浄し、リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含む含水沈殿物281gを得た。前記固液分離に要した時間は3分50秒であった。
【0038】
次に、前記含水沈殿物131gに、20g/Lのリチウムを含むリチウム水溶液100mLを添加して、攪拌することにより再分散させ、リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含む濃縮された第2のスラリーを得た。前記含水沈殿物131gは、リン酸リチウム11g、水酸化アルミニウム8gを含む。なお、本実施例において、各元素の濃度はICP発光分光分析装置(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて分析した。
【0039】
次に、
図1に示すSTEP3で、前記第2のスラリーの液温を60℃に保持して、36%塩酸29.1gを添加し、1時間保持することにより、pHを2.5に調整した。この結果、リン酸アルミニウム(AlPO
4)と水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)との混合物を含む第3のスラリーを得た。
【0040】
次に、
図1に示すSTEP4で、前記第3のスラリーを、真空ポンプを用いる減圧濾過により固液分離した。具体的には、濾紙直径60mmのブフナー漏斗(有限会社桐山製作所製)と吸引瓶とを用い、濾紙として保留粒子径0.5μmのNo.3濾紙(有限会社桐山製作所製)を用いた。濾別された沈殿物を60mLのイオン交換水で洗浄し、リン酸アルミニウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含む含水沈殿物68gと、第2のリチウム塩水溶液としての濾液200mLを得た。前記第3のスラリーから前記リン酸アルミニウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含む含水沈殿物を濾別する前記固液分離に要した時間は6分5秒であった。
【0041】
前記濾液は、18g/Lのリチウムと、0.3g/Lのリン(P)と、20mg/L未満のアルミニウム(Al)とを含んでいた。
【0042】
次に、
図1に示すSTEP5で、前記濾液の液温を60℃に保持して、48%水酸化ナトリウム水溶液0.1gを添加し、pHを7.9に調整した。そして、さらに30分間攪拌することにより、リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含む沈殿を得た。
【0043】
次に、
図1に示すSTEP6で、前記沈殿を濾別することにより、17.6g/Lのリチウムを含み、リンとアルミニウムとの濃度が1mg/L未満である高純度リチウム塩水溶液を得た。
【0044】
〔実施例2〕
本実施例では、リン酸リチウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含む濃縮された第2のスラリーに、
図1に示すSTEP3で、36%塩酸17.9gを添加し、pHを4.3に調整した以外は、実施例1と全く同一にして高純度リチウム塩水溶液を得た。
【0045】
本実施例では、
図1に示すSTEP4で、前記第3のスラリーから前記リン酸アルミニウムと水酸化アルミニウムとの混合物を含む含水沈殿物を濾別する前記固液分離に要した時間は5分28秒であった。
【0046】
〔比較例1〕
本比較例では、イオン交換水112gに、リン酸三リチウム(Li3PO4)11gと、塩化アルミニウム6水和物24.6gとを添加し、さらに61%硝酸9gを添加して、リン酸リチウムと塩化アルミニウム(AlCl3)との混合物を含む第4のスラリーを得た。本比較例で得られた前記第4のスラリーは、実施例1の第2のスラリーに対応するスラリーである。
【0047】
次に、
図1に示すSTEP3で、本比較例で得られた前記第4のスラリーの液温を60℃に保持して、48%水酸化ナトリウム水溶液11.6gを添加し、1時間攪拌することにより、pHを4.3に調整した。この結果、リン酸アルミニウム(AlPO
4)を含む第5のスラリーを得た。
【0048】
次に、
図1に示すSTEP4で、前記第5のスラリーを、実施例1における第3のスラリーの場合と全く同一にして、固液分離し、リン酸アルミニウムを含む含水沈殿物90.9gと、第2のリチウム塩水溶液としての濾液200mLを得た。
【0049】
本比較例では、
図1に示すSTEP4で、前記第5のスラリーから前記リン酸アルミニウムを含む含水沈殿物を濾別する前記固液分離に要した時間は1時間24分であった。また、前記濾液は、14.5g/Lのリチウムと、30mg/Lのリンと、1mg/L未満のアルミニウムとを含んでいた。
【0050】
〔比較例2〕
本比較例では、イオン交換水95gに、リン酸三リチウム(Li3PO4)11gと、硝酸アルミニウム9水和物38.2gとを添加し、さらに61%硝酸9gを添加して、リン酸リチウムと塩化アルミニウム(AlCl3)との混合物を含む第4のスラリーを得た。
【0051】
次に、
図1に示すSTEP3で、本比較例で得られた前記第4のスラリーの液温を60℃に保持して、48%水酸化ナトリウム水溶液8.8gを添加し、1時間攪拌することにより、pHを2.5に調整した。この結果、リン酸アルミニウム(AlPO
4)を含む第5のスラリーを得た。
【0052】
次に、
図1に示すSTEP4で、前記第5のスラリーを、実施例1における第3のスラリーの場合と全く同一にして、固液分離し、リン酸アルミニウムを含む含水沈殿物68gと、第2のリチウム塩水溶液としての濾液215mLを得た。
【0053】
本比較例では、
図1に示すSTEP4で、前記第5のスラリーから前記リン酸アルミニウムを含む含水沈殿物を濾別する前記固液分離に要した時間は4時間3分であった。また、前記濾液は、16.2g/Lのリチウムと、100mg/Lのリンと、200mg/Lのアルミニウムとを含んでいた。
【0054】
以上から、リン酸アルミニウムの沈殿を得る際に水酸化アルミニウムを用いる実施例1及び実施例2の高純度リチウム塩水溶液の製造方法によれば、前記水酸化アルミニウムに代えて塩化アルミニウムを用いる比較例1、硝酸アルミニウムを用いる比較例2に対して、リン酸アルミニウムの沈殿を濾別する操作を短時間で行うことができることが明らかである。