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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059833
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】電子機器及び冷却モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/427 20060101AFI20220407BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
H01L23/46 A
H05K7/20 H
H05K7/20 R
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167682
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA02
5E322AB01
5E322BA01
5E322BB03
5E322DB08
5E322FA01
5E322FA04
5F136BA04
5F136BC04
5F136CC14
5F136CC20
5F136CC24
5F136DA42
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA04
(57)【要約】
【課題】薄く軽量でありながらも高い冷却性能を得ることができる冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールを提供する。
【解決手段】電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備える。冷却モジュールは、2枚の金属プレートの間に形成した密閉空間に作動流体を封入したプレート型のベーパーチャンバと、金属パイプの内部に形成した密閉空間に作動流体を封入したヒートパイプと、冷却フィンを介して前記ヒートパイプと接続された送風ファンと、を有する。発熱体は、前記ベーパーチャンバの第1面に対して熱的に接続されている。ヒートパイプは、端部が前記ベーパーチャンバの外縁から張り出した状態で、前記ベーパーチャンバの第2面に対して熱的に接続されている。送風ファンは、前記ヒートパイプの前記端部と接続され、前記ベーパーチャンバの側部に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
2枚の金属プレートの間に形成した密閉空間に作動流体を封入したプレート型のベーパーチャンバと、
金属パイプの内部に形成した密閉空間に作動流体を封入したヒートパイプと、
冷却フィンを介して前記ヒートパイプと接続された送風ファンと、
を有し、
前記発熱体は、前記ベーパーチャンバの第1面に対して熱的に接続され、
前記ヒートパイプは、端部が前記ベーパーチャンバの外縁から張り出した状態で、前記ベーパーチャンバの第2面に対して熱的に接続され、
前記送風ファンは、前記ヒートパイプの前記端部と接続され、前記ベーパーチャンバの側部に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記冷却モジュールは、さらに、前記ベーパーチャンバの前記第1面に固定され、少なくとも前記ベーパーチャンバの外縁を縁取るように設けられたフレーム部材を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記ベーパーチャンバの板厚は、前記ヒートパイプの板厚よりも小さい
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電子機器であって、
前記発熱体として、CPUと、GPUとを有し、
前記フレーム部材は、少なくとも前記CPUの周囲及び前記GPUの周囲をそれぞれ囲むように設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器であって、
さらに、前記発熱体の周囲に設けられた電子部品を備え、
前記電子部品は、前記ベーパーチャンバの前記第1面に対して熱的に接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記ベーパーチャンバと前記ヒートパイプの板厚の合計値は、前記送風ファンの板厚よりも小さい
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記送風ファンとして、第1ファンと、第2ファンとを有し、
前記第1ファンは、前記ベーパーチャンバの外縁の一側方に張り出した位置にある前記ヒートパイプの第1端部と接続され、
前記第2ファンは、前記ベーパーチャンバの外縁の他側方に張り出した位置にある前記ヒートパイプの第2端部と接続され、
前記ベーパーチャンバは、前記第1ファンと前記第2ファンの間に挟まれるように配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
電子機器に搭載された発熱体の吸熱に用いる冷却モジュールであって、
2枚の金属プレートの間に形成した密閉空間に作動流体を封入したプレート型のベーパーチャンバと、
金属パイプの内部に形成した密閉空間に作動流体を封入したヒートパイプと、
冷却フィンを介して前記ヒートパイプと接続された送風ファンと、
を備え、
前記ベーパーチャンバは、前記発熱体が熱的に接続される吸熱部を第1面に有し、
前記ヒートパイプは、端部が前記ベーパーチャンバの外縁から張り出した状態で、前記ベーパーチャンバの第2面に対して熱的に接続され、
前記送風ファンは、前記ヒートパイプの前記端部と接続され、前記ベーパーチャンバの側部に配置されている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項9】
請求項8に記載の冷却モジュールであって、
前記冷却モジュールは、さらに、前記ベーパーチャンバの前記第1面に固定され、少なくとも前記ベーパーチャンバの外縁を縁取るように設けられたフレーム部材を有する
ことを特徴とする冷却モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PC(ノートブック型パーソナルコンピュータ)のような電子機器は、CPU等の発熱体を搭載している。このような電子機器は、筐体内に冷却モジュールを搭載し、発熱体が発生する熱を吸熱し、外部に放熱する。例えば特許文献1には、発熱体としてCPUとGPUとを搭載した電子機器において、CPUとGPUとにそれぞれヒートパイプを接続した構成が開示されている。また特許文献2には、CPUに対してプレート型のベーパーチャンバを接続した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-42588号公報
【特許文献2】特開2019-32134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1、2の構成のように、ヒートパイプやベーパーチャンバを単体で用いた冷却モジュールは、CPUやGPUの発熱量が大幅に増大する高負荷動作(ターボ動作)時に十分な冷却性能が得られない可能性がある。他方、単に冷却モジュールを大型化し、或いは単に冷却モジュールを複合的な構成としただけでは、電子機器の筐体の薄型化や軽量化を妨げることになる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、薄く軽量でありながらも高い冷却性能を得ることができる冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、2枚の金属プレートの間に形成した密閉空間に作動流体を封入したプレート型のベーパーチャンバと、金属パイプの内部に形成した密閉空間に作動流体を封入したヒートパイプと、冷却フィンを介して前記ヒートパイプと接続された送風ファンと、を有し、前記発熱体は、前記ベーパーチャンバの第1面に対して熱的に接続され、前記ヒートパイプは、端部が前記ベーパーチャンバの外縁から張り出した状態で、前記ベーパーチャンバの第2面に対して熱的に接続され、前記送風ファンは、前記ヒートパイプの前記端部と接続され、前記ベーパーチャンバの側部に配置されている。
【0007】
本発明の第2態様に係る冷却モジュールは、電子機器に搭載された発熱体の吸熱に用いる冷却モジュールであって、2枚の金属プレートの間に形成した密閉空間に作動流体を封入したプレート型のベーパーチャンバと、金属パイプの内部に形成した密閉空間に作動流体を封入したヒートパイプと、冷却フィンを介して前記ヒートパイプと接続された送風ファンと、を備え、前記ベーパーチャンバは、前記発熱体が熱的に接続される吸熱部を第1面に有し、前記ヒートパイプは、端部が前記ベーパーチャンバの外縁から張り出した状態で、前記ベーパーチャンバの第2面に対して熱的に接続され、前記送風ファンは、前記ヒートパイプの前記端部と接続され、前記ベーパーチャンバの側部に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、薄く軽量でありながらも高い冷却性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
図2図2は、冷却モジュールを上方から見た斜視図である。
図3図3は、冷却モジュールを下方から見た斜視図である。
図4図4は、図2中のIV-IV線に沿う模式的な断面図である。
図5図5は、図2中のV-V線に沿う模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器及び冷却モジュールについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。図1に示すように、電子機器10は、ディスプレイ筐体12と筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、タブレット型PC、携帯電話、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
ディスプレイ筐体12は、筐体14よりも薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体12には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各構成要素について、図1に示すようにディスプレイ筐体12を所定角度に開いてディスプレイ18を視認する状態を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、厚み方向を上下、と呼んで説明する。
【0014】
筐体14は、扁平な箱体である。筐体14は、その後端部にヒンジ16が連結されている。筐体14は、上面及び四周側面を形成する上カバー材14aと、下面を形成する下カバー材14bとで構成されている。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。筐体14の内部には、本実施形態に係る冷却モジュール22が搭載されている。
【0015】
図2は、冷却モジュール22を上方から見た斜視図である。図3は、冷却モジュール22を下方から見た斜視図である。図4は、図2中のIV-IV線に沿う模式的な断面図である。図5は、図2中のV-V線に沿う模式的な断面図である。図4では、送風ファン34,35等の図示を省略している。
【0016】
図4及び図5に示すように、冷却モジュール22は、筐体14内のマザーボード24に実装された発熱体(CPU26及びGPU27)が発生する熱を吸熱及び拡散し、さらに筐体14外へと放熱する冷却装置である。マザーボード24は、CPU26、GPU27及び電子部品42等の各種半導体チップが実装されたプリント基板である。CPU(Central Processing Unit)26及びGPU(Graphics Processing Unit)27は、筐体14内で最大級の発熱体である。
【0017】
図2及び図3に示すように、冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ30と、フレーム部材31と、2本のヒートパイプ32,33と、2個の送風ファン34,35と、ヒートスプレッダ36と、を備える。
【0018】
図2図5に示すように、ベーパーチャンバ30は、略矩形状に形成された薄いプレート型の熱拡散装置である。ベーパーチャンバ30は、左右の送風ファン34,35間に配置され、CPU26及びGPU27と積層された状態で設置される。ベーパーチャンバ30は、CPU26及びGPU27からの熱を吸熱、拡散して放熱し、さらに熱の一部をヒートパイプ32,33に伝達する。
【0019】
図4に示すように、ベーパーチャンバ30は、2枚の金属プレート30a,30bの間に中空の密閉空間30cを形成し、この密閉空間30cに作動流体を封入した構成である。金属プレート30a,30bは、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属によって形成されたプレートである。金属プレート30aはベーパーチャンバ30の上板である。金属プレート30bは、ベーパーチャンバ30の下板である。金属プレート30a,30bは、互いの外周縁部が溶接で接合されることで、内側に密閉空間30cが形成されている。図5では、ベーパーチャンバ30の内部構造の図示を省略している。
【0020】
ベーパーチャンバ30は、密閉空間30c内で作動流体が相変化を生じながら流通し、これにより効率よく熱を輸送する。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。密閉空間30c内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設されている。ウイックは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等で形成される。
【0021】
ベーパーチャンバ30は、上側の金属プレート30aの外面(第1面30d)にCPU26及びGPU27が熱的に接続される。つまりベーパーチャンバ30は、第1面30dにCPU26及びGPU27が接続される吸熱部を有する。CPU26は、第1面30dに対して受熱板38を介して接続される。GPU27は、第1面30dに対して受熱板39を介して接続される。受熱板38,39は、アルミニウムや銅のような熱伝導率が高い金属によって形成された小形のプレートである。本実施形態では、CPU26の板厚がGPU27の板厚よりも小さい。そこで、CPU26とGPU27のベーパーチャンバ30に対する高さを揃えるため、受熱板39よりも受熱板38の板厚を大きくしている。また、受熱板38とCPU26との間、及び受熱板39とGPU27との間には、それぞれ密着部材40が設け、互いの密着性を高めている。密着部材40は、例えば高い熱伝導率を持ったグリースや粘着剤等である。受熱板38,39は、省略してもよく、この場合はベーパーチャンバ30の第1面30dの一部をドーム状等に膨出させて代替するとよい。
【0022】
図2図4及び図5に示すように、本実施形態のベーパーチャンバ30の第1面30dには、CPU26やGPU27以外の電子部品42がサーマルラバー43a,43bを介して熱的に接続される。電子部品42は、CPU26やGPU27に次ぐ発熱体であり、例えばDC/DCコンバータやVRAM(Video RAM)である。サーマルラバー43a,43bは、シリコーンゴム等の熱伝導率が高いゴムシートである。例えば図2中の4個のサーマルラバー43aは、DC/DCコンバータ用である。例えば図2中の2個のサーマルラバー43bは、VRAM用である。
【0023】
本実施形態のベーパーチャンバ30は、例えば1.2mm程度の板厚で形成された薄型構造である。このため、ベーパーチャンバ30は、後述するヒートスプレッダ36のような銅プレートと比べて、大幅に薄く且つ軽量に形成しながら高い熱輸送量が得られる。換言すれば、ヒートスプレッダ36のような単なる金属プレートは、ある程度の厚みと大きさを確保しないと十分な熱輸送量を得ることが難しい。反対に、ベーパーチャンバ30は、作動流体の相変化による潜熱を利用できるため、薄く且つ軽量でありながらも高い熱輸送量が得られる。つまり同一の熱輸送量であれば、ベーパーチャンバ30は金属プレートに比べて大幅な薄型化及び軽量化が可能である。
【0024】
図2図5に示すように、フレーム部材31は、上記のように極めて薄く形成されたベーパーチャンバ30の変形を抑えるための補強材である。フレーム部材31は、ベーパーチャンバ30の筐体14への固定用のブラケットでもある。フレーム部材31は、ステンレス等で形成された金属フレームである。フレーム部材31は、ベーパーチャンバ30の第1面30dに溶接等で固定される。フレーム部材31は、外フレーム31aと、内フレーム31bとを有し、枠状或いは格子状を成している。
【0025】
図2に示すように、外フレーム31aは、ベーパーチャンバ30の外縁を縁取るように設けられた帯状のプレートである。内フレーム31bは、外フレーム31aの内周側に梁状に設けられた帯状のプレートである。フレーム部材31は、このように枠状或いは格子状に形成されることで軽量化と高い剛性とが両立され、ベーパーチャンバ30を補強することができる。フレーム部材31は、ベーパーチャンバ30の外縁を完全に囲まなくてもよく、また例えば4本の直線棒を矩形状等に並べて形成してもよい。
【0026】
フレーム部材31の各所には、複数の取付部31cが形成されている。取付部31cは、フレーム部材31に形成された円形或いは切欠き状の穴である。取付部31cは、ベーパーチャンバ30に形成された円形或いは切欠き状の穴と重ねて配置される。フレーム部材31は、取付部31cを通したビス46を介してベーパーチャンバ30と共に筐体14(例えば上カバー材14a)に締結される。
【0027】
すなわち、ベーパーチャンバ30は極めて薄いため、ビス46で締結すると変形や破損を生じる可能性がある。この点、本実施形態のベーパーチャンバ30は、フレーム部材31を介して筐体14に締結されるため、変形や破損が抑制され、安定した取り付けが可能である。例えばベーパーチャンバ30をある程度厚肉化でき、十分な剛性が担保できる場合等では、フレーム部材31は省略してもよい。
【0028】
本実施形態のフレーム部材31は、取付部31cがCPU26(受熱板38)やGPU27(受熱板39)を囲むように配置されている。図2に示す構成例では、受熱板38の周囲に3つの取付部31cが三角形状に配置され、受熱板39の周囲も3つの取付部31cが三角形状に配置されている。これによりビス46の締付力により、フレーム部材31を介してベーパーチャンバ30を受熱板38,39に均等に且つ十分な押圧力で押し付けることができる。その結果、CPU26やGPU27からベーパーチャンバ30への伝熱ロスを低減できる。
【0029】
フレーム部材31の板厚は、ベーパーチャンバ30に対して十分な剛性を付与できればよく、ベーパーチャンバ30の板厚と同一でもよいし、大きくても小さくてもよい。但し、図4に示すように、フレーム部材31は、ベーパーチャンバ30の第1面30dとマザーボード24との間に配置されるため、その板厚は少なくとも第1面30dとマザーボード24との間の隙間よりも小さい必要がある。
【0030】
図2図5に示すように、ヒートパイプ32,33は、パイプ状の熱輸送装置である。ヒートパイプ32,33は、互いに近接又は当接した状態で並列され、ベーパーチャンバ30の下側の金属プレート30bの外面(第2面30e)に溶接等で固定される。ヒートパイプ32、33は、平面視で略ブーメラン形状を成している。ヒートパイプ32,33は、CPU26及びGPU27からの熱をベーパーチャンバ30を介して吸熱し、送風ファン34,35へと輸送する。
【0031】
ヒートパイプ32,33は、互いに並列して湾曲しているため、互いの全長等は多少異なるが、それ以外は同一構造である。すなわち、ヒートパイプ32,33は、それぞれ金属パイプ48aの内部に形成された密閉空間48bに作動流体を封入した構成である。金属パイプ48aは、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属によって形成された扁平なパイプである。金属パイプ48aの両端部は、溶接等で接合されて閉塞されている。
【0032】
ヒートパイプ32,33は、密閉空間48b内で作動流体が相変化を生じながら流通し、これにより効率よく熱を輸送する。作動流体の種類や密閉空間48b内に設けられるウイックの構造等は、上記したベーパーチャンバ30のものと同一又は同様でもよいし、異なるものでもよい。図5では、ヒートパイプ32,33の内部構造の図示を省略している。
【0033】
ヒートパイプ32,33は、長手方向の中央部及びその周辺部がベーパーチャンバ30の第2面30eに固定され、左右の端部がベーパーチャンバ30の外縁から突き出している。中央部32a,33aは、CPU26及びGPU27と重なる位置に配置されている(図5参照)。左側の端部(第1端部32b,33b)は、ベーパーチャンバ30の左縁部から外側に張り出している。右側の端部(第2端部32c,33c)は、ベーパーチャンバ30の右縁部から外側に張り出している。
【0034】
第1端部32b,33bは、送風ファン34の後端部に設けられた冷却フィン34aと溶接等で固定される。第2端部32c,33cは、送風ファン35の後端部に設けられた冷却フィン35aと溶接等で固定される。冷却フィン34a,35aは、例えばアルミニウム等で形成され、多数の薄板を剣山状に並べたブロックであり、送風ファン34,35の排気口に面して設けられている。
【0035】
本実施形態のヒートパイプ32,33は、例えば1.4mm程度の板厚で形成されている。つまりヒートパイプ32,33は、ベーパーチャンバ30よりも厚肉である。すなわち、ヒートパイプ32,33は、中央部32a,33aでベーパーチャンバ30から受け取ったCPU26やGPU27の熱を効率よく端部32b,32c,33b,33cまで長距離輸送する必要がある。一方、ベーパーチャンバ30は、CPU26やGPU27の熱を効率よく周囲に拡散できればよい。このため、本実施形態では、ヒートパイプ32,33の板厚をベーパーチャンバ30よりも厚くし、より効率のよい熱輸送を実現している。ヒートパイプ32,33はベーパーチャンバ30よりも薄く形成されてもよい。すなわちヒートパイプ32,33やベーパーチャンバ30の厚み、大きさ及び形状等は、筐体14の設計や仕様、CPU26、GPU27若しくは電子部品42等の各コンポーネントの発熱量、又は送風ファン34,35の性能等によって当然に異なる。例えば、筐体14の表面温度がある程度高くなってもよいが、送風ファン34,35のノイズを小さくしたい場合を想定する。この場合は、ベーパーチャンバ30を厚く大きくしてベーパーチャンバ30自体や筐体表面からの放熱を促進することが好ましい。この際、ヒートパイプ32,33は、送風ファン34,35の性能に応じた最低限の大きさや厚みにすればよく、ベーパーチャンバ30よりも薄く形成されることもある。
【0036】
図2及び図3に示すように、送風ファン34,35は、ヒートパイプ32,33が輸送した熱を冷却フィン34a,35aを介して筐体14外へと放熱するものである。送風ファン34,35の排気口(冷却フィン34a,35a)は、筐体14の外壁に形成された排気口に面して配置される(図1参照)。
【0037】
送風ファン34はベーパーチャンバ30の左側部に配置され、送風ファン35はベーパーチャンバ30の右側部に配置されている。送風ファン34,35は、互いの間にベーパーチャンバ30を挟むように配置されている。ベーパーチャンバ30の板厚(本実施形態ではフレーム部材31の板厚も含む)とヒートパイプ32,33の板厚の合計値は、送風ファン34,35の板厚よりも薄い。このため冷却モジュール22は、最大の厚みが左右の送風ファン34,35の板厚となり、その間のベーパーチャンバ30が配置された部分は薄くCPU26やGPU27の厚みを吸収できるため、筐体14の薄型化を妨げない。
【0038】
図2及び図3に示すように、ヒートスプレッダ36は、ベーパーチャンバ30の吸熱対象であるCPU26、GPU27、及び電子部品42以外の電子部品の熱を吸熱し、拡散するためのものである。ヒートスプレッダ36は、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属で形成されたプレートである。ヒートスプレッダ36は、例えばベーパーチャンバ30の左前縁部に溶接等で固定されている。
【0039】
ヒートスプレッダ36の吸熱対象となる電子部品は、例えば通信モジュールやSSD(Solid State Drive)等を例示できる。図2中の参照符号50は、これら電子部品とヒートスプレッダ36との間に介在する受熱部であり、例えばヒートスプレッダ36を膨出させてドーム状に形成されている。ヒートスプレッダ36は省略してもよいし、ベーパーチャンバ30等と別体に構成してもよい。
【0040】
次に、冷却モジュール22の作用を説明する。図4及び図5中に1点鎖線で示す矢印は、発熱体(CPU26、GPU27、電子部品42)で発生した熱の移動を模式的に示したものである。
【0041】
図4及び図5に示すように、CPU26及びGPU27が発生した熱は、受熱板38,39からベーパーチャンバ30へと伝達される。ベーパーチャンバ30は、この熱で密閉空間30c内の作動流体が蒸発して拡散移動し、第1面30d及び第2面30eを通して放熱・凝縮し、再びCPU26及びGPU27に対する吸熱部まで戻る相変化を繰り返して熱輸送を行う。CPU26及びGPU27からの熱の一部は、ベーパーチャンバ30からヒートパイプ32,33へと伝達される。ヒートパイプ32,33は、この熱で密閉空間48b内の作動流体が蒸発して各端部32b,32c,33b,33cに向かって移動し、冷却フィン34a,35aで放熱・凝縮し、再び中央部32a,33aまで戻る相変化を繰り返して熱輸送を行う。
【0042】
従って、冷却モジュール22は、CPU26やGPU27の発熱量が大幅に増大する高負荷動作(ターボ動作)時であっても、CPU26及びGPU27の熱を最初にベーパーチャンバ30が受ける構成となっている。このため、高負荷運転時の大きな発熱をベーパーチャンバ30で迅速に且つ広範囲を拡散することができる。この際、ベーパーチャンバ30が受けた熱の一部は、ヒートパイプ32,33を介して送風ファン34,35まで輸送され、筐体14外へと排出される。このため、表面積の大きなベーパーチャンバ30から筐体14内への放熱量が過剰になり、筐体14の下面(下カバー材14b)が広範囲に高温となってUX(user experience)を損なうことが抑制される。特に、冷却モジュール22は、大きな面で放熱するベーパーチャンバ30と下カバー材14bとの間にヒートパイプ32,33が配設されている。このためベーパーチャンバ30が放熱した熱が下カバー材14bに直接的に伝達され、ここに高温部を生じることをより確実に抑制できる。
【0043】
しかも冷却モジュール22は、表面が幅狭なヒートパイプ32,33ではなく、第1面30dが広い面積を持つベーパーチャンバ30がCPU26やGPU27と面する位置にある。このため、冷却モジュール22は、CPU26等に対する設置自由度が高く、筐体14内での配置も容易である。
【0044】
そして、ベーパーチャンバ30及びヒートパイプ32,33は、CPU26やGPU27の全ての熱をそれぞれが受ける必要がない。このため、ベーパーチャンバ30やヒートパイプ32,33は、いわゆるドライアウト状態となり、熱輸送量が大幅に低下する事態を回避できる。その結果、冷却モジュール22は、CPU26やGPU27の動作状態に関わらず、常に高い冷却性能を維持できる。
【0045】
また、冷却モジュール22は、CPU26及びGPU27の熱をベーパーチャンバ30が最初に受ける構成であるため、高負荷運転時の大きな発熱をベーパーチャンバ30で迅速に拡散できる。このため、ベーパーチャンバ30の代わりに、仮に単なる金属プレート等を用いた場合に比べて、冷却モジュール22の薄型化及び軽量化が促進される。
【0046】
しかも冷却モジュール22は、薄いベーパーチャンバ30を枠状或いは格子状のフレーム部材31で補強している。これにより冷却モジュール22は、重量増を最小限に抑えつつ、ベーパーチャンバ30の変形を抑制でき、筐体14へのより安定した固定も可能としている。この際、フレーム部材31は、CPU26やGPU27と同様にベーパーチャンバ30の第1面30dに固定される。このため、フレーム部材31の板厚は、実質的にCPU26やGPU27の板厚に吸収され(図4参照)、冷却モジュール22の実質的な板厚が増大しない。
【0047】
しかも冷却モジュール22は、ヒートパイプ32,33と接続される送風ファン34,35がベーパーチャンバ30の側部に配置され、ベーパーチャンバ30とオーバーラップしていない。このため、冷却モジュール22は、CPU26やGPU27と重なる部分(ベーパーチャンバ30及びヒートパイプ32,33)の板厚が最小限に抑えられ、筐体の薄型化を阻害しない。
【0048】
冷却モジュール22は、ヒートパイプ32,33がCPU26及びGPU27と重なる位置を通過している。このため、最大級の発熱体であるCPU26及びGPU27の熱をヒートパイプ32,33によって円滑に筐体14外へと放熱できる。一方、冷却モジュール22は、CPU26やGPU27よりも発熱量の小さな電子部品42についても、ベーパーチャンバ30に当てることで高い放熱効果を得られる。特に、ベーパーチャンバ30の代わりに、仮に単なる金属プレート等を用いた構成を想定すると、この構成では、高負荷運転時にはCPU26やGPU27の周囲の金属プレートが高温となり、その周囲の電子部品42の放熱が阻害され得る。この点、本実施形態の冷却モジュール22は、金属プレートに比べて極めて大きな熱輸送量を有するベーパーチャンバ30を用いているため、高負荷運転時であっても電子部品42の放熱を促進することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 電子機器
14 筐体
22 冷却モジュール
26 CPU
27 GPU
30 ベーパーチャンバ
31 フレーム部材
32,33 ヒートパイプ
34,35 送風ファン
42 電子部品
図1
図2
図3
図4
図5