(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059848
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】大気環境測定方法、無線センサシステム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/08 20060101AFI20220407BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220407BHJP
B64C 13/20 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
G01W1/08 C
B64C39/02
B64C13/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167707
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】木口 倫
(72)【発明者】
【氏名】永吉 武志
(72)【発明者】
【氏名】千葉 崇
(72)【発明者】
【氏名】井上 誠
(72)【発明者】
【氏名】間所 洋和
(57)【要約】
【課題】センサによる測定結果の空間分布を様々な領域において高い時間分解能で得る。
【解決手段】複数のドローンは、子機ドローンD1と親機ドローンD0に大別され、
図1の構成においては、親機ドローンD0は1機のみであり、他のドローン5機は子機ドローンD0とされる。子機ドローンD1、親機ドローンD0には空気中のPM
2.5等を測定する環境センサが搭載され、これらの3次元空間における位置は、基地局100からの指令によって操作されると共に、子機ドローンD1、親機ドローンD0によるPM
2.5等の測定結果は基地局100に伝わる。基地局100と直接通信を行うのは親機ドローンD0のみであり、子機ドローンD1は親機ドローンD0と通信を行う。1機の親機ドローンD0は各子機ドローンD1と基地局100とを接続するための、移動可能なアクセスポイントとして機能する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気における環境特性を測定する大気環境測定方法であって、
複数の子機、及び親機をそれぞれ個別に搭載する複数の無人飛行体を測定対象となる領域の中で飛行させ、
複数の前記子機に、各々が前記環境特性を測定した測定結果を近距離無線通信を用いた第1通信経路によって前記親機に送信させ、
前記親機に、前記子機から前記第1通信経路を介して受信した前記測定結果を、前記第1通信経路とは異なる無線通信を用いた第2通信経路を介して、基地局に対して前記測定結果を送信させ、
前記環境特性の前記領域内の分布を前記基地局で認識することを特徴とする大気環境測定方法。
【請求項2】
前記親機に前記環境特性を測定させ、測定結果を前記第2通信経路を介して前記基地局に送信させることを特徴とする請求項1に記載の大気環境測定方法。
【請求項3】
前記第1通信経路においてWi-Fi(登録商標)が用いられ、前記第2通信経路において携帯電話回線が用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境測定方法。
【請求項4】
前記環境特性は、大気中の微小粒子状物質濃度であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の大気環境測定方法。
【請求項5】
前記子機と前記親機とは前記第1通信経路を介した双方向通信を、前記親機と前記基地局とは前記第2通信経路を介した双方向通信を、それぞれ行い、
前記親機を搭載する前記無人飛行体は、前記第2通信経路及び前記親機を介して、
前記子機を搭載する前記無人飛行体は、前記第2通信経路、前記親機、及び前記第1通信経路を介して、
それぞれ前記基地局によって無線により制御されることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の大気環境測定方法。
【請求項6】
領域内の複数の測定点におけるセンサによる測定結果を無線通信を用いて基地局で認識する無線センサシステムであって、
前記センサと、近距離無線通信を用いた第1通信経路によって無線通信を行う子機側第1通信部と、を具備し、複数の前記測定点にそれぞれ配置される複数の子機と、
前記第1通信経路によって複数の前記子機と無線通信を行う親機側第1通信部と、前記第1通信経路とは異なる第2通信経路によって前記基地局と無線通信を行う第2通信部と、を具備し、前記領域内に配置される親機と、
が用いられ、
前記基地局は、複数の前記子機における前記測定結果を、当該測定結果を前記第1通信経路を介して入手した前記親機から、前記第2通信経路を介して入手することを特徴とする無線センサシステム。
【請求項7】
前記親機も前記センサを具備し、前記第2通信部は当該センサの測定結果を前記第2通信経路を介して前記基地局に送信することを特徴とする請求項6に記載の無線センサシステム。
【請求項8】
前記第1通信経路において、Wi-Fi(登録商標)が用いられ、前記第2通信経路において、携帯電話回線が用いられることを特徴とする請求項6又は7に記載の無線センサシステム。
【請求項9】
前記親機は、前記親機側第1通信部及び前記第2通信部に電力を供給する親機側電源を具備し、
前記子機は、前記子機側第1通信部に電力を供給し前記親機側電源よりも低容量とされた子機側電源を具備することを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載の無線センサシステム。
【請求項10】
前記センサは、大気中の微小粒子状物質濃度を測定することを特徴とする請求項6から請求項9までのいずれか1項に記載の無線センサシステム。
【請求項11】
複数の前記子機、前記親機の各々は個別の無人飛行体に搭載されたことを特徴とする請求項6から請求項10までのいずれか1項に記載の無線センサシステム。
【請求項12】
前記子機側第1通信部、前記親機側第1通信部、及び前記第2通信部は、それぞれ双方向通信を行い、
前記親機を搭載する前記無人飛行体は、前記第2通信経路及び前記親機を介して、
前記子機を搭載する前記無人飛行体は、前記第2通信経路、前記親機、前記第1通信経路、及び前記子機を介して、
それぞれ前記基地局によって無線により制御されることを特徴とする請求項6から請求項11までのいずれか1項に記載の無線センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気の状態を複数の箇所で測定する大気環境測定方法、この測定に使用できる無線センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
大気環境の評価において測定する対象として、例えば粉塵に対応したPM2.5(直径2.5μm以下の微小粒子状物質)濃度がある。この測定は、地上における様々な箇所のみならず、上空においても同様に様々な箇所でも行われる。このためには、このような測定を行うセンサ(環境センサ)を搭載した有人の航空機や無人飛行体(ドローン)が用いられる。この場合、特許文献1に記載されるように、アクチュエータによって取り込まれた空気中のPM2.5等を測定する環境センサが用いられる。
【0003】
また、大気環境の評価のためには、この環境センサによる測定結果を一定の範囲にわたる3次元分布として得ることが必要な場合もあり、かつこの測定結果を例えば1時間以内の短い時間間隔(例えば数秒間隔)で得ることが必要な場合もある。このため、特許文献2には、上記のような環境センサを塔載した複数のドローンの隊列を制御して、大気環境の測定を行う技術が記載されている。この場合においては、各ドローンは自動飛行するように設定され、自身の位置を認識することによって、3次元空間中における所望の形態の隊列を一定時間維持してホバリングするように設定され、その間に測定が行われる。この隊列のパターンとしては、様々な形態のものを設定することができ、これに応じてこの隊列が形成される空間領域中の測定結果の分布が測定される。
【0004】
この場合においては、各ドローンにおいて、上記の環境センサの他に、気象条件(気温、湿度、気圧、風向等)を測定するためのセンサも搭載され、これらの測定結果を記憶する記憶装置も搭載される。各ドローンは自動自律制御により飛行するため、GPS信号等を用いて認識された自身の位置情報や、この飛行のために必要なデータも、この記憶装置に記憶される。各ドローンにおける上記の環境センサによる測定結果は、上記の気象条件や位置情報等と共に、地上に送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-027778号公報
【特許文献2】特開2019-196047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような大気環境の評価として、例えば野焼き(野外での焼却作業)によって発生した微小粒子状物質(例えばPM2.5)の評価がある。この場合においては、予め定められた地点ではなく、風向きや状況に応じた様々な地点(場所、高度)においてこの測定を行う、すなわちPM2.5の空間分布を測定することによって、例えばこの浮遊粒子の発生箇所を推定することができる。この際、風速(大気の流れの速度)が大きい場合には、発生箇所の位置精度を高くするためには、測定の時間分解能が高い(時間間隔が短い)ことが要求され、例えば数秒間隔でこの測定を行う必要がある場合もある。
【0007】
特許文献2に記載の技術においては、多数のドローンが同時に制御されて隊列が形成された上で測定が行われるため、このような状況に応じて臨機応変に、かつ短い時間間隔で測定を行う用途には適さなかった。また、このようにドローンを制御した場合、消費電力が大きくなるため、飛行時間(測定可能時間)も短くなった。
【0008】
このため、センサによる測定結果(例えばPM2.5等の環境特性)の空間分布を様々な領域において高い時間分解能で得ることができる技術が求められた。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の大気環境測定方法は、大気における環境特性を測定する大気環境測定方法であって、複数の子機、及び親機をそれぞれ個別に搭載する複数の無人飛行体を測定対象となる領域の中で飛行させ、複数の前記子機に、各々が前記環境特性を測定した測定結果を近距離無線通信を用いた第1通信経路によって前記親機に送信させ、前記親機に、前記子機から前記第1通信経路を介して受信した前記測定結果を、前記第1通信経路とは異なる無線通信を用いた第2通信経路を介して、基地局に対して前記測定結果を送信させ、前記環境特性の前記領域内の分布を前記基地局で認識することを特徴とする。
本発明の大気環境測定方法は、前記親機に前記環境特性を測定させ、測定結果を前記第2通信経路を介して前記基地局に送信させることを特徴とする。
本発明の大気環境測定方法は、前記第1通信経路においてWi-Fi(登録商標)が用いられ、前記第2通信経路において携帯電話回線が用いられることを特徴とする。
本発明の大気環境測定方法において、前記環境特性は、大気中の微小粒子状物質濃度であることを特徴とする。
本発明の大気環境測定方法は、前記子機と前記親機とは前記第1通信経路を介した双方向通信を、前記親機と前記基地局とは前記第2通信経路を介した双方向通信を、それぞれ行い、前記親機を搭載する前記無人飛行体は、前記第2通信経路及び前記親機を介して、前記子機を搭載する前記無人飛行体は、前記第2通信経路、前記親機、及び前記第1通信経路を介して、それぞれ前記基地局によって無線により制御されることを特徴とする。
本発明の無線センサシステムは、領域内の複数の測定点におけるセンサによる測定結果を無線通信を用いて基地局で認識する無線センサシステムであって、前記センサと、近距離無線通信を用いた第1通信経路によって無線通信を行う子機側第1通信部と、を具備し、複数の前記測定点にそれぞれ配置される複数の子機と、前記第1通信経路によって複数の前記子機と無線通信を行う親機側第1通信部と、前記第1通信経路とは異なる第2通信経路によって前記基地局と無線通信を行う第2通信部と、を具備し、前記領域内に配置される親機と、が用いられ、前記基地局は、複数の前記子機における前記測定結果を、当該測定結果を前記第1通信経路を介して入手した前記親機から、前記第2通信経路を介して入手することを特徴とする。
本発明の無線センサシステムにおいて、前記親機も前記センサを具備し、前記第2通信部は当該センサの測定結果を前記第2通信経路を介して前記基地局に送信することを特徴とする。
本発明の無線センサシステムにおいて、前記第1通信経路において、Wi-Fi(登録商標)が用いられ、前記第2通信経路において、携帯電話回線が用いられることを特徴とする。
本発明の無線センサシステムにおいて、前記親機は、前記親機側第1通信部及び前記第2通信部に電力を供給する親機側電源を具備し、前記子機は、前記子機側第1通信部に電力を供給し前記親機側電源よりも低容量とされた子機側電源を具備することを特徴とする。
本発明の無線センサシステムにおいて、前記センサは、大気中の微小粒子状物質濃度を測定することを特徴とする。
本発明の無線センサシステムにおいて、複数の前記子機、前記親機の各々は個別の無人飛行体に搭載されたことを特徴とする。
本発明の無線センサシステムにおいて、前記子機側第1通信部、前記親機側第1通信部、及び前記第2通信部は、それぞれ双方向通信を行い、前記親機を搭載する前記無人飛行体は、前記第2通信経路及び前記親機を介して、前記子機を搭載する前記無人飛行体は、前記第2通信経路、前記親機、前記第1通信経路、及び前記子機を介して、それぞれ前記基地局によって無線により制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のように構成されているので、センサによる測定結果の空間分布を様々な領域において高い時間分解能で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る大気環境測定方法において用いられるドローンと基地局の関係の第1の例を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る大気環境測定方法において用いられるドローンと基地局の関係の第2の例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る無線センサシステムにおいて用いられる子機の構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る無線センサシステムにおいて用いられる親機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る大気環境測定方法について説明する。この大気環境測定方法においては、特許文献2に記載の技術と同様に、測定の対象となる3次元領域内を飛行する複数のドローン(無人飛行体)と、これに搭載された環境センサが用いられる。
【0014】
図1は、この大気環境測定方法において用いられるドローンと地上の1点に固定された単一の基地局100等の関係を示す。ここで、複数のドローンは、子機ドローン(子機)D1と親機ドローン(親機)D0に大別され、
図1の構成においては、親機ドローンD0は1機のみであり、他のドローン5機は子機ドローンD1とされる。
図1の構成要素間においては無線通信が可能とされる。子機ドローンD1、親機ドローンD0には空気中のPM
2.5等を測定する環境センサが搭載され、これらの3次元空間における位置は、基地局100からの指令によって操作されると共に、子機ドローンD1、親機ドローンD0によるPM
2.5等の測定結果は基地局100に伝わる。基地局100は以下に説明される動作が行える限りにおいて、地上に固定されていてもよく、車両等に搭載されて移動可能とされていてもよい。基地局100はネットワークNと有線又は無線によって接続され、このネットワークNにはサーバ200も接続されるため、基地局100は遠隔した場所に設置されたサーバ200とネットワークNを介して接続される。これによって、サーバ200においてはPM
2.5等の空間分布を認識する、あるいはその時間変化を認識することができる。基地局100はこのような解析やデータの保存をネットワークNに接続された他のシステムやクラウドサービスによって行わせることもできる。なお、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、子機ドローンD1、親機ドローンD0は特許文献2に記載の技術と同様に自動飛行型である必要はない。
【0015】
ここで、基地局100と直接通信を行うのは親機ドローンD0のみであり、子機ドローンD1は親機ドローンD0と通信を行う。また、子機ドローンD1と親機ドローンD0との間の通信には近距離無線通信(無線LAN)による第1通信経路P1が用いられ、具体的には、IEEE802.11に準拠したWi-Fi(登録商標)が用いられる。これに対して、親機ドローンD0と基地局100の間の通信にはこれよりも通信距離が長い、携帯電話等の移動体通信システムにおいて用いられる通信方式による第2通信経路P2が用いられる。このため、
図1において1機の親機ドローンD0は各子機ドローンD1と基地局100とを接続するための、移動可能なアクセスポイントとして機能する。子機ドローンD1に搭載される機器、親機ドローンD0に搭載される機器の構成については後述する。
【0016】
例えば、Wi-Fiにおける通信距離は最大で数百m程度であるために、子機ドローンD1が第1通信経路P1によって基地局100と通信をする場合には、複数の子機ドローンD1が隊列を構成した場合には、地上にある基地局100との間の距離が大きいために通信が不可能となる子機ドローンD1が発生する。あるいは、子機ドローンD1の隊列の形態がこの通信距離によって制限され、ある時点で測定される測定結果の分布に制限が加わる。これに対して、
図1の構成においては、親機ドローンD0を全ての子機ドローンD1と第1通信経路P1によって通信可能な範囲内として同時に飛行させれば、基地局100は親機ドローンD0と第2通信経路P2を介して通信することによって、間接的に子機ドローンD1と通信が可能となる。このため、特許文献2に記載の技術と同様に、基地局100は測定結果の3次元空間分布を得ることができる。
【0017】
一方、近距離無線通信による第1通信経路P1のみに対応する子機ドローンD1における消費電力は小さいのに対して、これよりも高い電波出力が用いられる第2通信経路P2に対応する親機ドローンD0における消費電力は大きい。このため、電源となる蓄電池等が大型になり、親機ドローンD0自身もこれに対応して大型かつ高価となる。また、このような大型の親機ドローンD0は、小型の子機ドローンD1と比べると俊敏な飛行が困難となる。このため、仮に子機ドローンD1及び第1通信経路P1を用いずに複数の親機ドローンD0のみで上記と同様の隊列を構成した場合、親機ドローンD0を迅速に配置することは困難であり、例えばPM2.5等の空間分布の時間変化を測定する際には、親機ドローンD0の位置制御によってこの測定の時間分解能が制限される。
【0018】
しかしながら、
図1の構成においては、測定される空間分布の大部分は子機ドローンD1によって得られ、実質的には親機ドローンD0の位置は、全ての子機ドローンD1と通信可能である距離にあればよい。このため上記のドローン群をある隊列から他の隊列に変化させる際に、親機ドローンD0のみは必要最低限の距離だけ移動させ、他の子機ドローンD1をこれに応じて他の測定点を構成するように移動させることができる。このため、高い時間分解能で基地局100は測定結果の3次元空間分布を得ることができる。なお、親機ドローンD0には環境センサを搭載せずに、このような移動可能なアクセスポイントとしての機能のみを親機ドローンD0に付与してもよい。
【0019】
また、基地局100は前記の通り無線通信(第3通信経路P3)によってネットワークNと接続される。第3通信経路P3を介した通信は、基地局100とネットワークNとを通信可能とする限りにおいて、前記の第1通信経路P1を介した通信(Wi-Fi)や第2通信経路P2を介した通信(携帯電話回線を用いた通信)と同一であってもよい。この場合、これらは、基地局100とネットワークNとの間の距離(接続状況)や、後述するような子機、親機における電源の選択と同様に基地局100における消費電力の状況に応じて適宜選択される。あるいは、これらとは異なる専用の回線を用いてもよい。第3通信経路P3を有線の通信としてもよいが、測定に伴い基地局100も地上で移動可能とすることが好ましく、この場合には、無線通信とすることが特に好ましい。
【0020】
また、前記の機能を実現するためには、第1通信経路P1として子機ドローンD1から親機ドローンD0側に向けての通信のみ、第2通信経路P2として親機ドローンD0から基地局100側に向けての通信のみ、ができればよい。しかしながら、これらの間の通信を双方向で可能とすれば、基地局100側から親機ドローンD0、子機ドローンD1の制御も同一の通信経路によって行うことができる。この場合には、子機ドローンD1、親機ドローンD0側の環境センサの設定の制御を基地局100が行うことができる。あるいは、子機ドローンD1、親機ドローンD0の飛行の制御を基地局100が行うこともできる。
【0021】
また、親機ドローンD0を複数用いてもよい。
図2は、この場合の構成を
図1と同様に示す。この場合には親機ドローンD01、D02が用いられ、親機ドローンD01は子機ドローンD11~D14と、親機ドローンD02は子機ドローンD15~D18と、それぞれ第1通信経路P1によって通信する。親機ドローンD01、D02はそれぞれ地上局100と第2通信経路P2で通信する。これによって、地上局100は、全てのドローン(測定点)における測定結果を認識することができ、かつ、全てのドローンに対する指令を発することができる。このように、複数の親機ドローンを同時に用いることによって、特に広い範囲にわたる領域内の測定結果を得ることができる。
【0022】
この場合においては、例えば親機ドローンD01と親機ドローンD02が第2通信経路P2で通信し、親機ドローンD01、親機ドローンD02のうちの一方のみと地上局100とを通信させてもよい。
【0023】
また、
図2においては親機ドローンD01は子機ドローンD11~D14と、親機ドローンD02は子機ドローンD15~D18と、それぞれ第1通信経路P1によって通信するものとしたが、隊列の形態に応じて、親機ドローンD01あるいは親機ドローンD02と通信する子機ドローンを変更させてもよい。子機ドローンの各々に識別番号が付与され、親機ドローンD01、D02がこれを認識することによって、現在自身と通信可能である子機ドローンを適切に認識することができる。逆に、親機ドローンと子機ドローンの対応関係を固定してもよい。
【0024】
このため、このように親機ドローンを複数用いることによって、隊列(測定点の空間配置)の自由度を更に高めることができる。なお、子機ドローン同士が第1通信経路P1を介して双方向通信可能としてもよい。この場合には、子機ドローンを親機ドローンとの間の中継のために用いることが可能となり、これによって実質的に子機ドローンと親機ドローンとの間の通信可能な範囲を広げることができ、更に隊列の自由度を高めることができる。
【0025】
以下に、上記の環境測定方法を実現する無線センサシステムについて説明する。この無線センサシステムは、前記の子機ドローンD1に搭載された子機10と、前記の親機ドローンD0に搭載された親機20と、基地局100で構成される。
図3、
図4は、子機10、親機20の構成をそれぞれ示すブロック図である。ここで、ドローンの飛行の制御のための構成要素は周知のものであるために、その記載は除外され、大気環境の測定に関する構成要素のみが記載されている
【0026】
図3、
図4において、測定対象となるのは大気のPM
2.5であるため、PM
2.5を検知する環境センサ11が共に設けられる。この環境センサ11は、試料(吸引された大気)に対して搭載されたLEDが発した光を照射し、その散乱光の強度を測定することによって、PM
2.5濃度(単位μg/cm
3)を認識し、電気的に出力信号として発する。環境センサ11としては、このようにPM
2.5濃度の測定値を電気的に出力することができるものであれば、他の方式のものを用いることもできる。
【0027】
また、ドローン自身の位置をGPS信号を受信することによって認識する位置認識部12も子機10、親機20に搭載される。これにより、環境センサ11による測定結果が得られた点の位置情報を認識することができる。
【0028】
また、子機10(
図3)においては、前記の第1通信経路P1(Wi-Fi )を介した双方向通信を行う第1通信部(子機側第1通信部)13が設けられる。第1通信部13によって親機20に対して環境センサ11の測定結果が送信される。この測定結果は、例えば記憶部14に一次的に記憶され、その後に送信される。これらの構成要素全体を制御して上記の動作を行わせる制御部15が設けられる。制御部15は、定められた時刻において得られた前記の測定結果を親機20に向けて送信する、あるいは第1通信部13が親機20側から要求を受けた場合に環境センサ11に測定を行わせてその測定結果を親機20に向けて送信する、等の動作を行わせることもできる。
【0029】
また、制御部15は、第1通信部13を用いて、親機20を介して基地局100から入手したドローンの制御のための指令も認識することができ、これによってこの子機10が搭載されたドローンの制御を行うことができる。この際、この制御のために、制御部15はその制御のための信号をドローン側へ送信する、あるいは制御のために必要となるドローン側からの信号も受信することができる。上記の構成要素の全てに電力を供給するための蓄電池である電源(子機側電源)16も搭載され、この電源16は、ドローンの飛行のための機構(モータ等)にも電力を供給することができる。なお、前記のように、第1通信部13によって子機10同士の間で通信が可能とされていてもよい。
【0030】
親機20(
図4)においても、前記の第1通信部13と同様の機能をもつ第1通信部(親機側第1通信部)21が設けられ、第1通信部21によって、子機10から環境センサ11の測定結果を受信することができる。また、前記の第2通信経路P2を介した双方向通信を行う第2通信部22も設けられる。第2通信部22によって親機20と基地局100との間の通信が行われ、子機10における環境センサ11の測定結果、及び自身の環境センサ11の測定結果が基地局100に送信される。これらの測定結果を例えば記憶部23に一次的に記憶させることもできる。これらの構成要素全体を制御して上記の動作を行わせる制御部25が設けられ、制御部25は、定められた時刻において得られた前記の測定結果を基地局100に向けて送信する、あるいは第2通信部24が基地局100側から要求を受けた場合に測定結果を基地局100に向けて送信する、等の動作を行わせることもできる。
【0031】
また、制御部25は、第2通信部22を用いて基地局100から入手した全てのドローンの制御のための指令も認識することができ、これによってこの親機20が搭載されたドローンの制御を行うことができ、子機20が搭載されたドローンの制御のための指令を子機10側に第1通信部21によって送信することができる。親機20における上記の構成要素の全てに電力を供給するための蓄電池である電源(親機側電源)25も搭載され、この電源25は、親機20を搭載するドローンの飛行のための機構(モータ等)にも電力を供給することができる。
【0032】
なお、子機10、親機20において、環境センサ11の他にこの測定において補助的に用いる他のセンサを搭載してもよい。例えば環境センサが前記のようにPM2.5を測定する場合には、風向、気温、気圧、湿度等の気象条件を測定するセンサをこのように補助的に用いることができる。これらの測定結果は、前記の環境センサ11の測定結果と同じ流れで基地局100に送信される。また、子機10、親機20の位置が基地局100で独自に認識可能であれば、位置認識部12は不要である。
【0033】
上記の構成において、通信距離が長く、使用する電波強度の高い第2通信部22の消費電力は第1通信部21の消費電力よりも大きい。このため、親機20は子機10よりも大型、かつ消費電力が大きい。また、こうした大型の親機20を搭載するドローンも、子機10を搭載するドローンよりも大型となる。このため、電源25の容量は電源16の容量よりも大きく、電源25は大型となる。すなわち、
図1における親機ドローンD0は子機ドローンD1と比べて大型で重くなる。
【0034】
しかしながら、逆に、上記のように子機10側において第1通信経路P0を介した通信のみを行わせることによって、子機10やこれに用いられる電源16を小型軽量とすることができる。すなわち、
図1において大型となる親機ドローンD0を1機あるいは少数のみ設け、他を全て小型軽量の子機ドローンD1とすることができる。すなわち、上記の子機10、親機20を用いて
図1、2の構成を容易に実現できる。
【0035】
上記の例では、センサ(環境センサ11)はPM2.5濃度の測定を行うものとしたが、他の物理量を測定するセンサを用いた場合においても、同様のシステム(無線センサシステム)を用いることができる。このような物理量として、目的に応じて、例えば、大気中の微小粒子状物質の評価指標となるものとして、上記のPM2.5の他にPM1.0やPM10を測定してもよい。また、大気中の粉塵(エアロゾル)、ガス状物質(CO、CO2濃度、NH3、CH4、H2、C2H5OH、C3H8、C4H10、揮発性有機化合物等)、放射性物質等の濃度等を測定してもよい。あるいは、これらの測定を適宜組み合わせて同時に行ってもよい。こうした場合でも、このシステムを用いることによって、特に3次元空間内の一領域における様々な測定を効率的に行うことができる。また、上記の例では基地局100は地上に固定されるものとしたが、基地局100の位置は任意である。
【0036】
また、1機の親機が同時に通信可能な子機の数の上限は、第1通信部13,21の通信方式、性能により定まり、例えば前記のようなWi-Fiを用いた場合には、15機以上とすることができる。ただし、
図2のように親機20を複数用いることによって、使用可能な子機の数をより多くすることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 子機
11 環境センサ
12 位置認識部
13 第1通信部(子機側第1通信部)
14、23 記憶部
15、24 制御部
16 電源(子機側電源)
20 親機
21 第1通信部(親機側第1通信部)
22 第2通信部
25 電源(親機側電源)
100 基地局
200 サーバ
D0、D01、D02 親機ドローン
D1、D11~D18 子機ドローン
N ネットワーク
P1 第1通信経路
P2 第2通信経路
P3 第3通信経路