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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059876
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造システム及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
H02K15/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167748
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】石塚 照雄
(72)【発明者】
【氏名】井阪 智大
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS06
5H615SS07
5H615SS16
5H615SS57
(57)【要約】
【課題】電磁鋼板の厚さ寸法のバラツキによる影響を低減して積層鉄心の品質を高めると共に、製造ラインの稼働率を高める。
【解決手段】積層鉄心の製造システムは、所定形状の電磁鋼板から鉄心片を打ち抜き、前記鉄心片を複数枚積層して鉄心ブロック11を形成する積層装置2と、前記積層装置により形成された前記鉄心ブロックの質量を測定する質量測定器3と、前記質量測定器により測定された前記鉄心ブロックの質量を閾値と比較して積層枚数の補正の必要有無を判定する補正判定部5aと、前記補正判定部の判定結果を出力する判定結果出力部5bと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の電磁鋼板から鉄心片を打ち抜き、前記鉄心片を複数枚積層して鉄心ブロックを形成する積層装置と、
前記積層装置により形成された前記鉄心ブロックの質量を測定する質量測定器と、
前記質量測定器により測定された前記鉄心ブロックの質量を閾値と比較して積層枚数の補正の必要有無を判定する補正判定部と、
前記補正判定部の判定結果を出力する判定結果出力部と、を備える積層鉄心の製造システム。
【請求項2】
前記質量測定器は、前記積層装置から排出された直後の前記鉄心ブロックの質量を測定する請求項1に記載した積層鉄心の製造システム。
【請求項3】
前記補正判定部は、前記鉄心ブロックの複数個分の合計質量を前記閾値と比較する請求項1又は2に記載した積層鉄心の製造システム。
【請求項4】
前記補正判定部は、前記鉄心ブロックの複数個分の合計質量を上限値や下限値と比較し、前記合計質量が前記上限値を超えておらず、且つ前記合計質量が前記下限値に達している場合に、積層枚数の補正の必要無を判定する請求項3に記載した積層鉄心の製造システム。
【請求項5】
前記補正判定部は、前記合計質量が前記上限値を超えている場合、又は前記合計質量が前記下限値に達していない場合に、積層枚数の補正の必要有を判定する請求項4に記載した積層鉄心の製造システム。
【請求項6】
前記補正判定部により積層枚数の補正の必要有が判定された場合に、補正値を算出する補正値算出部と、
前記補正値算出部により算出された補正値に基づいて積層枚数の補正を前記積層装置に指示する補正指示部と、を備える請求項1から5の何れか一項に記載した積層鉄心の製造システム。
【請求項7】
前記補正値算出部により算出された補正値を記録する補正値記録部を備える請求項6に記載した積層鉄心の製造システム。
【請求項8】
所定形状の電磁鋼板から鉄心片を打ち抜き、前記鉄心片を複数枚積層して鉄心ブロックを形成する積層工程と、
前記積層工程により形成した前記鉄心ブロックの質量を測定する質量測定工程と、
前記質量測定工程により測定した前記鉄心ブロックの質量を閾値と比較して積層枚数の補正の必要有無を判定する補正判定工程と、
前記補正判定工程の判定結果を出力する判定結果出力工程と、を実行する積層鉄心の製造方法。
【請求項9】
前記質量測定工程では、前記積層装置から排出された直後の前記鉄心ブロックの質量を測定する請求項8に記載した積層鉄心の製造方法。
【請求項10】
前記補正判定工程により積層枚数の補正の必要有を判定した場合に、補正値を算出する補正値算出工程と、
前記補正値算出工程により算出した補正値に基づいて積層枚数の補正を前記積層装置に指示する補正指示工程と、を実行する請求項8又は9に記載した積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、積層鉄心の製造システム及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用モータや発電機等の鉄心には、電磁鋼板を積層した積層鉄心が用いられることが多い。近年、ハイブリッド車や電気自動車の普及等によりモータ出力の更なる高効率化が要求されており、積層鉄心の厚さ寸法にも高い寸法精度が要求されるようになっている。積層鉄心は、電磁鋼板の薄板をロール状に巻いて構成されたフープ材を材料とし、フープ材から鉄心片を打ち抜き、その打ち抜いた鉄心片を複数枚積層して鉄心ブロックを形成し、その形成した鉄心ブロックを複数個接合することで形成される。
【0003】
フープ材として供給される電磁鋼板は、その巻かれている位置等により厚さ寸法にバラツキがある。そのため、鉄心片の積層枚数が同一であっても積層鉄心の厚さ寸法が管理値範囲から外れてしまう場合がある。積層鉄心の厚さ寸法が管理値範囲から外れた場合には、鉄心片の積層枚数を補正する必要があるが、その時点では既に多くの鉄心ブロックがプレス機から排出されているので、歩留まりが悪化するだけでなく、確認や修正等を行うために製造ラインの稼働を一旦停止する必要があり、製造ラインの稼働率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-115756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した事情から、出願人は、特願2019-89029号を出願し、積層鉄心の厚さ寸法の測定値の実績から傾向を予測する制御方法を提案した。しかしながら、その制御方法では、材料の交換直後では傾向を予測不可能であるという新たな問題や、材料によっては予測傾向から外れるという新たな問題を生じる。
【0006】
そこで、電磁鋼板の厚さ寸法のバラツキによる影響を低減して積層鉄心の品質を高めると共に、製造ラインの稼働率を高めることができる積層鉄心の製造システム及び製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の積層鉄心の製造システムは、所定形状の電磁鋼板から鉄心片を打ち抜き、前記鉄心片を複数枚積層して鉄心ブロックを形成する積層装置と、前記積層装置により形成された前記鉄心ブロックの質量を測定する質量測定器と、前記質量測定器により測定された前記鉄心ブロックの質量を閾値と比較して積層枚数の補正の必要有無を判定する補正判定部と、前記補正判定部の判定結果を出力する判定結果出力部と、を備える。
【0008】
実施形態の積層鉄心の製造方法は、所定形状の電磁鋼板から鉄心片を打ち抜き、前記鉄心片を複数枚積層して鉄心ブロックを形成する積層工程と、前記積層工程により形成した前記鉄心ブロックの質量を測定する質量測定工程と、前記質量測定工程により測定した前記鉄心ブロックの質量を閾値と比較して積層枚数の補正の必要有無を判定する補正判定工程と、前記補正判定工程の判定結果を出力する判定結果出力工程と、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による積層鉄心の製造システムの構成を概略的に示す機能ブロック図
図2】鉄心ブロックの製造手順を示す図
図3】積層装置の構成を概略的に示す図
図4】積層鉄心を製造する処理の流れを示す図(その1)
図5】積層鉄心を製造する処理の流れを示す図(その2)
図6】変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態の積層鉄心の製造システム(以下、単に製造システムと称する)は、例えば車載用モータや発電機等に用いられる積層鉄心を製造するシステムである。積層鉄心は、電磁鋼板の薄板をロール状に巻いて構成されたフープ材を材料とし、フープ材から鉄心片を打ち抜き、その打ち抜いた鉄心片を複数枚積層して鉄心ブロックを形成し、その形成した鉄心ブロックを複数個接合することで形成される。積層鉄心は、例えば鉄心片を100枚積層して1個の鉄心ブロックを形成し、その形成した鉄心ブロックを3個接合することで、300枚の鉄心片により形成される。
【0011】
図1に示すように、製造システム1は、積層装置2と、質量測定器3と、後工程プログラマブルロジックコントローラ(以下、PLC(Programmable Logic Controller)と称する)4と、PC端末5と、ステータ加圧装置6と、寸法測定器7とを備える。積層装置2、ステータ加圧装置6及び寸法測定器7には、例えばベルトコンベア等からなる搬送ライン8が接続されている。積層装置2から排出された鉄心ブロック11aが搬送ライン8により搬送されてステータ加圧装置6及び寸法測定器7に順次供給されることで、積層鉄心を製造する製造ラインが構成される。本実施形態では、ステータ用の固定子積層鉄心を製造する製造ラインを例示するが、ロータ用の回転子積層鉄心を製造する製造ラインに適用することもできる。
【0012】
積層装置2は、後工程PLC4とデータ通信可能に有線接続されており、後工程PLC4から制御指示されることで動作が制御される。質量測定器3は、後工程PLC4及びPC端末5とデータ通信可能に有線接続されており、後工程PLC4から制御指示されることで動作が制御されると共に、後述する鉄心ブロックの質量を測定した測定結果をPC端末5に送信する。後工程PLC4とPC端末5は、データ通信可能に有線接続されており、データを送受信する。本実施形態では、これらの機器が有線接続されている構成を例示しているが、これらの機器が無線接続されている構成でも良い。即ち、有線接続及び無線接続の何れでデータを送受信する構成でも良い。
【0013】
製造システム1において、積層装置2では積層工程が実行される。質量測定器3では質量測定工程が実行される。PC端末5では補正判定工程、判定結果出力工程、補正値算出工程が実行される。後工程PLC4では補正指示工程が実行される。即ち、製造システム1は、積層工程、質量測定工程、補正判定工程、判定結果出力工程、補正値算出工程、補正指示工程を順次実行する。又、詳細な説明は省略するが、製造システム1は、上記した各工程に加え、ステータ加圧工程、寸法測定工程、外見検査工程、梱包工程等を順次実行し、積層鉄心を製造して出荷する。
【0014】
図2に示すように、積層装置2は、薄板帯状の電磁鋼板9からステータ用の鉄心片10aとロータ用の鉄心片10bとを同時に打ち抜き、その打ち抜いたステータ用の鉄心片10aとロータ用の鉄心片10bとをそれぞれ複数枚積層してステータ用の鉄心ブロック11aとロータ用の鉄心ブロック11bとを形成する。即ち、積層工程は、薄板帯状の電磁鋼板9から鉄心片10a,10bを打ち抜き、その打ち抜いた鉄心片10a,10bを複数枚積層して鉄心ブロック11a,11bを形成する工程である。本実施形態では、1枚の電磁鋼板9の厚さ寸法は例えば0.30mm±0.01mmに設定されている。この場合、例えば図2のd1,d2で示すように、1枚の電磁鋼板9内においても公差の範囲内で厚さ寸法が異なる箇所が存在する。尚、±0.01mmは厚さ寸法に対する寸法誤差であり、鉄心ブロック11a,11bの厚さ寸法y1,y2に要求される精度に応じて適宜設定される。又、本実施形態では、ステータ用の鉄心片10aとロータ用の鉄心片10bとを同時に打ち抜く場合を例示しているが、ステータ用の鉄心片10aとロータ用の鉄心片10bとを別々に打ち抜いても良い。これ以降は、ステータ用の鉄心片10aを複数枚積層して鉄心ブロック11aを形成する場合について説明する。
【0015】
図3に示すように、積層装置2は、アンコイラ12と、レベラ13と、材料接合機14と、プレス機15とを備える。アンコイラ12にはフープ材16が取り付けられる。アンコイラ12は、フープ材16から電磁鋼板9を引き出してレベラ13に供給する。レベラ13は、アンコイラ12から電磁鋼板9が供給されると、その供給された電磁鋼板9を上下方向からローラで挟み込んで外力を加えて電磁鋼板9を塑性変形させ、電磁鋼板9から巻き癖を除去して材料接合機14に供給する。
【0016】
材料接合機14は、フープ材16を追加する際に、プレス機15に現在供給している残りの電磁鋼板9の終端部分と、新たに追加されたフープ材16から供給された電磁鋼板9の始端部分とを溶接し、電磁鋼板9を途切れさせることなくプレス機15に供給する。プレス機15は、材料接合機14から電磁鋼板9が供給されると、その供給された電磁鋼板9から鉄心片10aを打ち抜き、その打ち抜いた鉄心片10aを型内で複数枚積層して鉄心ブロック11aを形成する。プレス機15は、鉄心ブロック11aを形成すると、その形成した鉄心ブロック11aを搬送ライン8上に排出する。プレス機15から排出された鉄心ブロック11aは、搬送ライン8によりステータ加圧装置6に供給される前に質量測定器3の直上に搬送される。
【0017】
質量測定器3は、その直上が測定位置となっており、プレス機15から搬送ライン8上に排出された鉄心ブロック11aが測定位置まで搬送されると、その測定位置まで搬送された鉄心ブロック11aの質量を測定する。即ち、質量測定工程は、積層装置2により形成された鉄心ブロック11aの質量を測定する工程である。ここで、鉄心ブロック11aの厚さ寸法と質量とはほぼ比例する性質があるので、質量測定器3において測定した鉄心ブロック11aの質量は厚さ寸法に換算することが可能である。質量測定器3は、鉄心ブロック11aの質量を測定すると、測定完了信号を後工程PLC4に送信する。尚、質量測定器3により質量が測定された鉄心ブロック11aは、搬送ライン8により搬送されて測定位置から外れて前進するが、ステータ加圧装置6に供給されずに、接合対象の他の2個の鉄心ブロック11aが揃うまでステータ加圧装置6の手前位置で待機する。
【0018】
後工程PLC4は、質量測定器3から送信された測定完了信号を受信すると、質量取得指示及び段数情報をPC端末5に送信する。段数情報は、質量測定器3により質量が測定された鉄心ブロック11aが何段目であるかを示す情報である。即ち、本実施形態では、鉄心ブロック11aを3個接合するので、鉄心ブロック11aが1段目、2段目、3段目の何れであるかを示す情報である。PC端末5は、後工程PLC4から送信された質量取得指示及び段数情報を受信すると、測定結果要求を質量測定器3に送信する。質量測定器3は、PC端末5から送信された測定結果要求を受信すると、鉄心ブロック11aの質量を測定した測定結果をPC端末5に送信する。
【0019】
PC端末5は、質量測定器3から送信された測定結果を受信すると、接合対象の3個の鉄心ブロック11aの測定結果を取得完了したか否か判定する。即ち、PC端末5は、後工程PLC4送信された段数情報に基づいて1段目の鉄心ブロック11aの測定結果、2段目の鉄心ブロック11aの測定結果、3段目の鉄心ブロック11aの測定結果を取得したか否かを判定し、接合対象の3個の鉄心ブロック11aの測定結果を取得完了したか否かを判定する。
【0020】
PC端末5は、接合対象の3個の鉄心ブロック11aの測定結果を取得完了したと判定すると、それぞれの鉄心ブロック11aの測定結果を合算し、接合対象の3個の鉄心ブロック11aの合計質量を算出する。この場合、上記したように鉄心ブロック11aの厚さ寸法と質量とはほぼ比例する性質があるので、接合対象の3個の鉄心ブロック11aの合計質量は、これ以降に3個の鉄心ブロック11aが接合されて形成される積層鉄心の厚さ寸法にほぼ比例する。
【0021】
PC端末5は、このようにして算出した3個の鉄心ブロック11aの合計質量を閾値と比較して積層枚数の補正の必要有無を判定する補正判定部5aと、その補正判定部5aの判定結果を出力する判定結果出力部5bと、補正判定部5aにより積層枚数の補正の必要有が判定された場合に、補正値を算出する補正値算出部5cとを備える。即ち、補正判定工程は、質量測定工程により測定した鉄心ブロック11aの質量を閾値と比較して積層枚数の補正の必要有無を判定する工程である。判定結果出力工程は、補正判定工程の判定結果を出力する工程である。補正値算出工程は、補正判定工程により積層枚数の補正の必要有を判定した場合に、補正値を算出する工程である。
【0022】
補正判定部5aは、3個の鉄心ブロック11aの合計質量を予め設定されている上限値や下限値と比較して積層枚数の補正の必要有無を判定する。補正判定部5aは、3個の鉄心ブロック11aの合計質量が上限値を超えておらず、且つ下限値に達していれば、積層枚数の補正の必要無を判定する。即ち、補正判定部5aは、これ以降に3個の鉄心ブロック11aが接合されて形成される積層鉄心17の厚さ寸法が管理値範囲に収まると判定し、3個の鉄心ブロック11aを合格と判定する。
【0023】
判定結果出力部5bは、3個の鉄心ブロック11aが合格であると補正判定部5aにより判定されると、合格である旨を示す報知を図示しないディスプレイやスピーカ等により行う。即ち、作業者は、合格である旨を示す報知が行われることで、3個の鉄心ブロック11aが合格であることを認識する。合格と判定された3個の鉄心ブロック11aは、例えば作業者により搬送ライン8上から除外されずにステータ加圧装置6に供給される。即ち、鉄心ブロック11aは接合対象の3個単位で合否が判定され、合格と判定された3個の鉄心ブロック11aが纏めてステータ加圧装置6に供給される。
【0024】
ステータ加圧装置6は、合格と判定された3個の鉄心ブロック11aが供給されると、その供給された3個の鉄心ブロック11aに対して溶接や加圧加工を行い、3個の鉄心ブロック11aを接合して積層鉄心17を形成する。ステータ加圧装置6は、積層鉄心17を形成すると、その形成した積層鉄心17を寸法測定器7に供給する。
【0025】
寸法測定器7は、ステータ加圧装置6から積層鉄心17が供給されると、その供給された積層鉄心17の厚さ寸法を例えばレーザ距離計等を用いて測定する。寸法測定器7により測定された積層鉄心17の厚さ寸法は、前段の工程において積層鉄心17を構成する3個の鉄心ブロック11aの合計質量が上限値を超えておらず、且つ下限値に達していると判定されているので、管理値範囲から外れることなく管理値範囲に収まっている可能性が極めて高い。これ以降、積層鉄心17は、外見検査や梱包等を順次経由して出荷される。尚、ステータ加圧装置6及び寸法測定器7は、PLCから制御指示されることで動作が制御される。ステータ加圧装置6及び寸法測定器7の動作を制御するPLCは、前述した後工程PLC4であっても良いし、後工程PLC4とは別のPLCであっても良い。
【0026】
一方、補正判定部5aは、3個の鉄心ブロック11aの合計質量が上限値を超えている、又は下限値に達していなければ、積層枚数の補正の必要有を判定する。即ち、補正判定部5aは、これ以降に3個の鉄心ブロック11aが接合されて形成される積層鉄心17の厚さ寸法が管理値範囲から外れると判定し、3個の鉄心ブロック11aを不合格と判定する。
【0027】
判定結果出力部5bは、3個の鉄心ブロック11aが不合格であると補正判定部5aにより判定されると、不合格である旨を示す報知を図示しないディスプレイやスピーカ等により行う。この場合、判定結果出力部5bは、単純に不合格である旨を示す報知を行うだけでなく、3個の鉄心ブロック11aの合計質量が上限値を超えているか下限値に達していないか、即ち、積層枚数がどの程度過多であるか過少であるかを識別可能な報知を行う。作業者は、不合格である旨を示す報知が行われることで、3個の鉄心ブロック11aが不合格であることを認識し、積層枚数がどの程度過多であるか過少であるかを認識する。即ち、不合格と判定された3個の鉄心ブロック11aは、例えば作業者により搬送ライン8上から除去される。この場合、不合格と判定された3個の鉄心ブロック11aは、作業者により搬送ライン8上から手動で除外されても良いし、3個の鉄心ブロック11aを搬送ライン8上から除外する除外装置を設け、その除外装置をPC端末5と連携させることで搬送ライン8上から自動で除外されても良い。
【0028】
搬送ライン8上から除外された3個の鉄心ブロック11a、即ち、不合格と判定された3個の鉄心ブロック11aは、作業者により積層枚数が補正される。3個の鉄心ブロック11aの合計質量が上限値を超えていれば、積層枚数を減らすように補正される。一方、3個の鉄心ブロック11aの合計質量が下限値に達していなければ、積層枚数を増やすように補正される。この場合、3個の鉄心ブロック11aのうち一部、即ち、1個又は2個の鉄心ブロック11aの積層枚数が補正されても良いし、3個の鉄心ブロック11aのうち全体、即ち、3個の鉄心ブロック11aの積層枚数が補正されても良い。
不合格と判定された3個の鉄心ブロック11aは、このようにして積層枚数が補正された後、作業者により搬送ライン8上の質量測定器3の手前位置に順次再投入されることで、補正後の質量が再度測定される。
【0029】
尚、以上は、作業者により積層枚数が手動で補正される場合を説明したが、積層装置2において積層枚数が自動で補正されることも可能である。この場合、補正値算出部5cは、積層枚数の補正の必要有が補正判定部5aにより判定されると、鉄心片10の1枚の質量と上限値や下限値との差に基づいて補正値を算出する。補正値算出部5cは、補正値を算出すると、その算出した補正値を後工程PLC4に送信する。即ち、補正値算出部5cは、3個の鉄心ブロック11aの合計質量が上限値を超えていれば、上限値を超えている分、即ち、積層枚数の過多分を示す補正値を後工程PLC4に送信する。一方、補正値算出部5cは、3個の鉄心ブロック11aの合計質量が下限値に達していなければ、下限値に達していない分、即ち、積層枚数の過少分を示す補正値を後工程PLC4に送信する。
【0030】
後工程PLC4は、補正値を記録する補正値記録部4aと、補正値に基づいて積層枚数の補正を積層装置2に指示する補正指示部4bとを備える。即ち、補正値記録工程は、補正値を記録する工程である。補正指示工程は、補正値に基づいて積層枚数の補正を積層装置2に指示する工程である。補正値記録部4aは、PC端末5から送信された補正値を受信すると、その受信した補正値を記録する。補正指示部4bは、補正値を積層装置2に送信することで、補正値に基づいて積層枚数の補正を積層装置2に指示する。
【0031】
積層装置2は、後工程PLC4から送信された補正値を受信すると、その受信した補正値に基づいて積層枚数を補正する。即ち、積層装置2は、積層枚数の過多分を示す補正値を受信すれば、現在の積層枚数から減らす枚数を補正値に基づいて計算し、その計算した積層枚数にしたがって鉄心片10aを積層するように補正する。一方、積層装置2は、積層枚数の過少分を示す補正値を受信すれば、現在の積層枚数から増やす枚数を補正値に基づいて計算し、その計算した積層枚数にしたがって鉄心片10aを積層するように補正する。これ以降、積層装置2は、このようにして補正した積層枚数にしたがって鉄心片10aを積層して形成した鉄心ブロック11aを排出する。
【0032】
次に、上記した構成の作用について図4及び図5を参照して説明する。尚、ここでは、積層装置2において積層枚数が自動で補正される場合について説明する。積層装置2は、鉄心ブロックを形成する(A1)。質量測定器3は、積層装置2から搬送ライン8上に排出された鉄心ブロック11aが測定位置まで搬送されると、その測定位置まで搬送された鉄心ブロック11aの質量を測定し(C1)、測定完了信号を後工程PLC4に送信する(C2)。
【0033】
後工程PLC4は、質量測定器3から送信された測定完了信号を受信すると(B1)、質量取得指示及び段数情報をPC端末5に送信する(B2)。PC端末5は、後工程PLC4から送信された質量取得指示及び段数情報を受信すると(D1)、測定結果要求を質量測定器3に送信する(D2)。質量測定器3は、PC端末5から送信された測定結果要求を受信すると(C3)、鉄心ブロック11aの質量を測定した測定結果をPC端末5に送信する(C4)。
【0034】
PC端末5は、質量測定器3から送信された測定結果を受信すると(D3)、接合対象の3個の鉄心ブロック11aの測定結果を取得完了したか否かを判定する(D4)。PC端末5は、その受信した測定結果が1段目又は2段目の鉄心ブロック11aの測定結果であれば、接合対象の3個の鉄心ブロック11aの測定結果を取得完了していないと判定し(D4:NO)、その受信した1段目又は2段目の鉄心ブロック11aの測定結果を一時的に記憶し、ステップD1に戻り、後工程PLC4から送信される質量取得指示及び段数情報の受信を待機する。
【0035】
一方、PC端末5は、その受信した測定結果が3段目の鉄心ブロック11aの測定結果であれば、接合対象の3個の鉄心ブロック11aの測定結果を取得完了したと判定し(D4:YES)、これよりも先に記憶した1段目及び2段目の鉄心ブロック11aの測定結果と、3段目の鉄心ブロック11aの測定結果とを合算し、接合対象の1段目から3段目までの3個の鉄心ブロック11aの合計質量を算出する(D5)。
【0036】
PC端末5は、3個の鉄心ブロック11aの合計質量を算出すると、その算出した合計質量を上限値と比較し(D6)、合計質量が上限値を超えていないと判定すると(D6:NO)、その算出した合計質量を下限値と比較し(D7)、合計質量が下限値に達していると判定すると(D7:NO)、積層枚数の補正の必要無を判定する。即ち、PC端末5は、これ以降に1段目から3段目までの3個の鉄心ブロック11aが接合されて形成される積層鉄心17の厚さ寸法が管理値範囲に収まると判定し、3個の鉄心ブロック11aを合格と判定し、合格である旨を示す報知を図示しないディスプレイやスピーカ等により行う。合格と判定された3個の鉄心ブロック11aは、例えば作業者により搬送ライン8上から除外されずにステータ加圧装置6に供給される。
【0037】
一方、PC端末5は、合計質量が上限値を超えていると判定すると(D6:YES)、又は合計質量が下限値に達していないと判定すると(D7:YES)、積層枚数の補正の必要有を判定する。即ち、PC端末5は、これ以降に1段目から3段目までの3個の鉄心ブロック11aが接合されて形成される積層鉄心17の厚さ寸法が管理値範囲から外れると判定し、3個の鉄心ブロック11aを不合格と判定し、不合格である旨を示す報知を図示しないディスプレイやスピーカ等により行う。不合格と判定された3個の鉄心ブロック11aは、例えば作業者により搬送ライン8上から除去される。
【0038】
PC端末5は、積層枚数の補正の必要有を判定すると、鉄心片10aの1枚の質量と上限値や下限値との差に基づいて補正値を算出し(D8)、その算出した補正値を後工程PLC4に送信する(D9)。
【0039】
後工程PLC4は、PC端末5から送信された補正値を受信すると(C3)、その受信した補正値を記録し(C4)、その記録した補正値を積層装置2に送信する(C5)。積層装置2は、後工程PLC4から送信された補正値を受信すると(A2)、その受信した補正値に基づいて積層枚数を補正する(A3)。即ち、積層装置2は、積層枚数の過多分を示す補正値を受信した場合には、現在の積層枚数から減らす枚数を補正値に基づいて計算し、その計算した積層枚数にしたがって鉄心片10aを積層するように補正する。一方、積層装置2は、積層枚数の過少分を示す補正値を受信した場合には、現在の積層枚数から増やす枚数を補正値に基づいて計算し、その計算した積層枚数にしたがって鉄心片10aを積層するように補正する。
【0040】
以上に説明した実施形態によれば、以下に示す作用効果を得ることができる。
積層鉄心の製造システム1において、鉄心ブロック11aの質量を質量測定器3により測定し、その測定した鉄心ブロック11aの合計質量を閾値と比較して積層枚数の補正の必要有無を判定し、その判定結果を出力するようにした。積層鉄心17の厚さ寸法が質量にほぼ比例することを利用し、積層鉄心17を形成する前の全ての鉄心ブロック11aの質量を搬送中に測定し、3個の鉄心ブロック11aの合計質量を管理値範囲と比較することで、積層枚数の補正の必要有無を判定することができる。そして、積層枚数の補正の必要無を判定し、3個の鉄心ブロック11aの合計質量が管理値範囲に収まっていれば、質量の測定対象となった3個の鉄心ブロック11aを製造ラインの次の工程に進ませることができる。一方、積層枚数の補正の必要有を判定し、3個の鉄心ブロック11aの合計質量が管理値範囲から外れていれば、質量の測定対象となった3個の鉄心ブロック11aを製造ラインの次の工程に進ませずに製造ラインから除去することで、製造ラインの稼働を一旦停止することなく継続することができる。これにより、電磁鋼板9の厚さ寸法のバラツキによる影響を低減して積層鉄心17の品質を高めると共に、製造ラインの稼働率を高めることができる。
【0041】
又、積層装置2から排出された直後の鉄心ブロック11aの質量を質量測定器3により測定するようにした。積層枚数の補正の必要有無を即座に判定することができ、積層枚数の補正の必要有を判定した鉄心ブロック11aの積層枚数を即座に補正することができる。
【0042】
又、鉄心ブロック11aの合計質量を上限値と比較することで、鉄心ブロック11aの積層枚数が過多である場合に適切に対応することができ、過多となっている積層枚数を減らすように適切に補正することができる。又、鉄心ブロック11aの合計質量を下限値と比較することで、鉄心ブロック11aの積層枚数が過少である場合に適切に対応することができ、過少となっている積層枚数を増やすように適切に補正することができる。
【0043】
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0044】
鉄心片10aを100枚積層して1個の鉄心ブロック11aを形成し、その形成した鉄心ブロック11aを3個接合して積層鉄心17を形成する構成を例示したが、鉄心片10aの積層枚数や鉄心ブロック11aの接合個数は任意である。
【0045】
上記した実施形態では、鉄心ブロック11aを3個接合して積層鉄心17を形成する場合に、接合対象の3個単位で鉄心ブロック11aの合否を判定する、即ち、接合対象の個数分の単位で鉄心ブロック11aの合否を判定する構成を例示したが、図6に示すように、接合対象の最終段目の鉄心ブロック11aの合否を判定しても良い。鉄心ブロック11aを3個接合して積層鉄心17を形成する場合であれば、1段目や2段目の鉄心ブロック11aの質量を測定後に合否を判定せず、3段目の鉄心ブロック11aの質量を測定後に、3個の鉄心ブロック11aの合計質量を算出して閾値と比較し、3個の鉄心ブロック11aの合計質量が上限値を超えている、又は下限値に達していなければ、3段目の鉄心ブロック11aを不合格と判定しても良い。即ち、積層装置2において鉄心ブロック11a毎に鉄心片10aの積層枚数を柔軟に調整可能であれば、最終段目の鉄心ブロック11aについてのみ鉄心片10aの積層枚数を調整可能となるので、接合対象の最終段目の鉄心ブロック11aの合否を判定する運用が可能となる。
【0046】
この場合、合否の判定対象でない1段目や2段目の鉄心ブロック11aは、搬送ライン8上から除去されず、次にプレス機15から排出される鉄心ブロック11aの質量の測定を待機し、次にプレス機15から排出される鉄心ブロック11aを接合対象として3個の鉄心ブロック11aの合計質量を算出し、その算出した合計質量の合否判定を待機する。即ち、3段目の鉄心ブロック11aを不合格と判定する都度、次にプレス機15から排出される鉄心ブロック11aを3段目の鉄心ブロック11aとして待機し、3段目の鉄心ブロック11aを合格と判定するまで上記した処理を繰り返す。
【符号の説明】
【0047】
図面中、1は積層鉄心の製造システム、2は積層装置、3は質量測定器、5aは補正判定部、5bは判定結果出力部、5cは補正値算出部、4aは補正値記録部、4bは補正指示部である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6