(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059884
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/15 20160101AFI20220407BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20220407BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20220407BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20220407BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20220407BHJP
B60W 20/14 20160101ALI20220407BHJP
H02K 9/193 20060101ALI20220407BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20220407BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220407BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20220407BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220407BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20220407BHJP
【FI】
B60W20/15
B60K6/52 ZHV
B60K6/48
B60W10/02 900
B60W10/30 900
B60W20/14
H02K9/193
B60L7/14
B60L15/20 K
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167763
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】弓削 勝忠
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕也
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
5H609
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB11
3D202BB19
3D202BB37
3D202BB58
3D202BB64
3D202BB65
3D202CC04
3D202CC52
3D202CC55
3D202CC83
3D202DD01
3D202DD24
3D202DD26
3D202DD29
3D202DD45
3D202FF02
3D202FF14
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
5H125CA02
5H125CB02
5H125CD06
5H125EE05
5H125EE52
5H125FF22
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP07
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609RR01
(57)【要約】
【課題】運転状態に応じて電動機を適切に冷却して、減速運転に移行した際の電力の回生に対応できるようにする。
【解決手段】第1駆動軸28に駆動力を伝達するエンジン12と、第2駆動軸18に駆動力を伝達する電動機13と、電動機13と第2駆動軸18との間に配置されるクラッチ14と、電動機13の温度の情報を取得する温度情報取得手段15と、電動機13の温度が所定値以上となったときクラッチ14を切断状態とし、車両10が減速状態になったときクラッチ14を接続状態とするクラッチ制御手段51と、電動機13を冷却する冷却手段40と、冷却手段40による電動機13への冷却性能を第1状態と第1状態よりも冷却性能が低い第2状態との間で調整する冷却制御手段52と、を備え、冷却制御手段52は、クラッチ14の切断中に冷却性能を第1状態よりも制限された冷却制限状態とし、冷却制限状態を、電動機13の温度が高いほど第1状態に近くなるように制御するハイブリッド車両とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動軸に駆動力を伝達するエンジンと、
第2駆動軸に駆動力を伝達する電動機と、
前記電動機と前記第2駆動軸との間に配置されるクラッチと、
前記電動機の温度の情報を取得する温度情報取得手段と、
前記電動機の温度が所定値以上となったときクラッチを切断状態とし、車両が減速状態になったときクラッチを接続状態とするクラッチ制御手段と、
前記電動機を冷却する冷却手段と、
前記冷却手段による前記電動機への冷却性能を第1状態と前記第1状態よりも冷却性能が低い第2状態との間で調整する冷却制御手段と、
を備え、
前記冷却制御手段は、前記クラッチの切断中に前記冷却性能を前記第1状態よりも制限された冷却制限状態とし、前記冷却制限状態を、前記電動機の温度が高いほど前記第1状態に近くなるように制御するハイブリッド車両。
【請求項2】
前記電動機に電力を供給するバッテリを備え、
前記冷却制御手段は、前記バッテリの電力の残容量が高いほど前記冷却制限状態が前記第1状態に近くなるように制御する請求項1のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記電動機の作動を制御する電動機制御手段を備え、
前記電動機制御手段は、前記クラッチの切断中に前記電動機の温度が高いほど前記電動機の回転数を高くなるように制御する請求項1又は2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記冷却手段は、前記電動機の回転側の部材を冷却する第1冷却路と、前記電動機の固定側の部材を冷却する第2冷却路と、前記第1冷却路と前記第2冷却路に供給される冷媒の比率を調整する冷媒供給調整手段と、を備える請求項1~3の何れか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記冷却手段は、前記所定値を含む第1温度域では、前記第1冷却路及び前記第2冷却路に冷媒を供給して前記電動機を回転させ、
前記第1温度域の下限よりも低い温度域に設定された第2温度域では、前記第1冷却路に冷媒を供給するとともに前記第2冷却路を遮断して前記電動機を回転させ、
前記第2温度域の下限より低い温度域に設定された第3温度域では、前記第1冷却路を遮断するとともに前記第2冷却路に冷媒を供給して前記電動機を停止する請求項4に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両のように電動機(モータ)の駆動力によって走行する車両では、電動機と車輪との間にクラッチを配置し、そのクラッチを接続することによって、電動機の回転力を車輪に伝達して車両を駆動するとともに、運転状態によっては車輪の回転力を電動機に伝達して回生エネルギを回収している。そして、車速が電動機の最高回転数に到達したり、電動機の温度が所定の上限温度に到達したりしたときは、クラッチを遮断することによって、電動機に過度の負荷が作用するのを防止している。
【0003】
この種の電動機では、その性能を常に発揮できる状態とするために、運転状態に応じて適切な冷却を行う必要がある。例えば、特許文献1では、ステータとロータのいずれか一方にコイルが、他方に永久磁石が設けられた電動機の冷却装置として、冷媒を電動機のコイル側へ通じる第1の分岐通路と、永久磁石側に通じる第2の分岐通路とに選択的に供給できるようにしている。そして、電動機の総発熱量に基づいてポンプからの冷媒の吐出量を制御するとともに、コイル側及び永久磁石側の各発熱量に基づいて冷媒の流量配分制御を行っている。また、特許文献2では、ポンプからステータに冷却媒体を供給する第1流路、ポンプからロータに冷媒を供給する第2流路、及び、第1流路の冷却媒体の流量と第2流路の冷媒の流量を調整する弁を備え、ステータの冷却状態とロータの冷却状態を弁によって制御するようにしている。
【0004】
また、特許文献3には、ステータを冷却するステータ側冷却通路と、ロータを冷却するロータ側冷却通路と、冷媒を任意の流量比でステータ側冷却通路とロータ側冷却通路に配分する配分手段とを備えた冷却装置が記載されている。配分手段は、ロータの回転速度に応じてステータ側冷却通路とロータ側冷却通路との流量比を変更し、さらに、ロータの回転速度の上昇に応じてロータ側冷却通路への流量比を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-110705号公報
【特許文献2】国際公開WO2017/072874号
【特許文献3】特開2003-102147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1~3では、いずれも電動機を冷却する冷媒の通路を、ロータを含むシャフト側の冷却路と、ステータ側の冷却路の2系統としている。シャフト側の冷却路は、電動機のシャフトの回転が停止している時は局所的な冷却になる傾向があるが、シャフトが回転していれば電動機全体に冷媒を散布できるという利点がある。このため、シャフトの回転時にシャフト側の冷却路を用いれば、電動機全体を均一に近い形で冷却することが可能である。これに対して、ステータ側の冷却路は、固定のステータ上部から内部へオイルを吐出することで、電動機を冷却する構造である。このため、ステータ側の冷却路のみを用いた状態では、局所的な冷却にとどまる傾向がある。
【0007】
ところで、この種のハイブリッド車両において、現状の制御では、車両が停車、又は、電動機と駆動輪との間のクラッチが切り離されている状態では、電動機の冷却にステータ側の冷却路のみを用いることで電力の消費を抑えている。すなわち、この状態では、電動機の冷却性能は比較的低い状態である。
【0008】
ここで、仮に、クラッチ切断状態の車両が減速運転に移行した場合、電動機を用いて即座に回生電力の回収を開始したいという要請がある。しかし、電動機の温度が閾値よりも高い状態にあるとクラッチは強制的に切り離し状態となり、温度が下がるまで回生を行うことができないという問題がある。このため、回生の開始までの間、減速のエネルギを無駄にしてしまうことになる。
【0009】
そこで、この発明の課題は、運転状態に応じて電動機を適切に冷却して、減速運転に移行した際の電力の回生に対応できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、第1駆動軸に駆動力を伝達するエンジンと、第2駆動軸に駆動力を伝達する電動機と、前記電動機と前記第2駆動軸との間に配置されるクラッチと、前記電動機の温度の情報を取得する温度情報取得手段と、前記電動機の温度が所定値以上となったときクラッチを切断状態とし、車両が減速状態になったときクラッチを接続状態とするクラッチ制御手段と、前記電動機を冷却する冷却手段と、前記冷却手段による前記電動機への冷却性能を第1状態と前記第1状態よりも冷却性能が低い第2状態との間で調整する冷却制御手段と、を備え、前記冷却制御手段は、前記クラッチの切断中に前記冷却性能を前記第1状態よりも制限された冷却制限状態とし、前記冷却制限状態を、前記電動機の温度が高いほど前記第1状態に近くなるように制御するハイブリッド車両を採用した。
【0011】
ここで、前記電動機に電力を供給するバッテリを備え、前記冷却制御手段は、前記バッテリの電力の残容量が高いほど前記冷却制限状態が前記第1状態に近くなるように制御する構成を採用することができる。
【0012】
これらの各態様において、前記電動機の作動を制御する電動機制御手段を備え、前記電動機制御手段は、前記クラッチの切断中に前記電動機の温度が高いほど前記電動機の回転数を高くなるように制御する構成を採用することができる。
【0013】
また、これらの各態様において、前記冷却手段は、前記電動機の回転側の部材を冷却する第1冷却路と、前記電動機の固定側の部材を冷却する第2冷却路と、前記第1冷却路と前記第2冷却路に供給される冷媒の比率を調整する冷媒供給調整手段と、を備える構成を採用することができる。
【0014】
このとき、前記冷却手段は、前記所定値を含む第1温度域では、前記第1冷却路及び前記第2冷却路に冷媒を供給して前記電動機を回転させ、前記第1温度域の下限よりも低い温度域に設定された第2温度域では、前記第1冷却路に冷媒を供給するとともに前記第2冷却路を遮断して前記電動機を回転させ、前記第2温度域の下限より低い温度域に設定された第3温度域では、前記第1冷却路を遮断するとともに前記第2冷却路に冷媒を供給して前記電動機を停止する構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、運転状態に応じて電動機を適切に冷却して、減速運転に移行した際の電力の回生に対応できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明に係るハイブリッド車両の一例を示す模式図である。
【
図2】電動機の温度とクラッチの制御を示すグラフ図である。
【
図7】この発明の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る車両制御装置が搭載されたハイブリッド車両10(以下、単に車両10と称する。)を示している。車両10は、前方の車輪(前輪)11aをエンジン12による駆動力で駆動し、後方の車輪(後輪)11bを電動機13(以下、主モータ13という。)のアシスト力で駆動可能とした、4輪駆動のマイルドハイブリッド車である。この車両10に搭載された車両制御装置は、主モータ13による回生エネルギの回収を効率良く行うためのものであって、主モータ13、クラッチ14(以下、主クラッチ14という。)、主モータ13の温度情報を取得する温度情報取得手段15、車速センサ16、電子制御ユニット50等を主要な構成要素としている。この実施形態では、温度情報取得手段15として温度センサ15を採用しているが、センサ以外の他の形態からなる温度情報の取得手段、温度情報の推定手段等を採用してもよい。
【0018】
主モータ13は、後輪11bに通じる第2駆動軸(以下、後輪側車軸と称する)18に駆動力を伝達するように、その後輪側車軸18に併設されている。この主モータ13で、力行時に後輪11bに回転力を与えて、エンジン12による駆動力をアシストする。このアシスト力は、主クラッチ14及び後輪側ディファレンシャル19を介して、後輪側車軸18に伝達される。また、この主モータ13によって、制動時に後輪11bの回転力から回生エネルギ(以下、回生電力という。)を回収する。この主モータ13は、伝達ロスの少ないギアを介して後輪側車軸18に直結されているため、高い回生効率を得ることができる。
【0019】
主クラッチ14は、電動機13と後輪側車軸18との間に配置される。主クラッチ14は、後輪側ディファレンシャル19と後輪側車軸18を介して、主モータ13と後輪11bとの間で回転力の伝達が可能な接続状態と、この伝達が遮断された遮断状態との間で切り替える機能を有している。主クラッチ14は、通常は接続状態となっている。後輪側ディファレンシャル19は、左右後輪11bの回転抵抗に対応して、主モータ13からの駆動アシスト力を左右後輪11bに振り分ける機能を有している。
【0020】
主クラッチ14を接続状態とすると、力行時に主モータ13から後輪11bに駆動アシスト力が伝達され、また、制動時に後輪11bの回転力が主モータ13に伝達されて、この主モータ13によって回生電力が回収される。この回生電力は、車両10に搭載されたバッテリ20に充電される。主クラッチ14を遮断状態とすると、主モータ13と後輪11bが切り離された状態となるため、制動時において主モータ13によって回生電力を回収することはできない。
【0021】
バッテリ20には、その充電量を検知する充電量センサ21が設けられている。この充電量センサ21によって検知されたバッテリ20の残容量(残充電量)の情報は、電子制御ユニット50に送られる。
【0022】
温度センサ15は、主モータ13のケーシング13c等に取り付けられており、そのケーシング13c、又は、ケーシング13cのすぐ内側にあるステータ13bの温度を主モータ13の温度の代表値として採用している。ただし、温度センサ15として、主モータ13の他の部分、例えば、主モータ13の近傍を流れる潤滑オイルの温度等のように、他の温度を主モータ13の温度の代表値として取得することもできる。温度センサ15によって検知された主モータ13の温度情報は電子制御ユニット50に送られる。
【0023】
車速センサ16は、車軸等に設けられて車両10の速度を検知する機能を備えている。車速センサ16によって検知された車速情報は、同じく制電子制御ユニット50に送られる。
図1に示す車速センサ16の位置は例示であって、その取り付け位置を適宜変更することもできる。
【0024】
エンジン12の駆動力は、トルクコンバータ24、連続可変トランスミッション(Continuously Variable Transmission)25、副クラッチ26、及び、前輪側ディファレンシャル27を介して、前輪11aに通じる第1駆動軸(以下、前輪側車軸と称する)28に伝達される。トルクコンバータ24は、エンジン12の駆動力を連続可変トランスミッション25に伝達する機能を有する。副クラッチ26は、エンジン12と前輪11aとの間で駆動力の伝達が可能な接続状態と、この伝達が遮断された切断状態との間で切り替える機能を有している。前輪側ディファレンシャル27は、左右の前輪11aの回転抵抗に対応して、エンジン12からの駆動力を左右前輪11aに振り分ける機能を有している。
【0025】
また、エンジン12には、副電動機(以下、副モータという)29が併設されている。この副モータ29は、ベルト30によってエンジン12のクランクシャフト31に接続されており、主にエンジン12の始動に利用され、また、副クラッチ26を接続状態とすることによって制動時に回生電力を回収することも可能である。副モータ29は、エンジン12の作動中は、通常はクランクシャフト31によって連れ回される。
【0026】
主モータ13は、固定側の部材と回転側の部材のいずれか一方にコイルが、他方に永久磁石が設けられて、回転側の部材に設けられた出力軸が駆動力によって軸回り回転する電動機の機能を発揮するものである。また、出力軸に車軸側からの回転が入力されることによって回生電力を生じさせ、その回生電力をバッテリ20に充電する発電機の機能を発揮するものである。エンジン12に併設した副モータ29に加え、主モータ13においても電力の回生を行うことで、減速エネルギを回生電力として最大限に回収できるようになる。この実施形態の主モータ13の構成は、
図3に示すように、ケーシング13c内に挿通された出力軸としてのシャフト13aと、そのシャフト13aとともに軸回りに回転するロータ13d、ロータ13dの外周に設けられたステータ13b等を備えている。シャフト13a及びロータ13dは回転側の部材であり、ケーシング13c及びステータ13bは固定側の部材である。
【0027】
主モータ13には、冷却手段40が備えられている。冷却手段40は、主モータ13の各部部品を冷却することで、その温度上昇を抑える又は温度を低下させる機能を有している。冷却手段40は、
図1及び
図3に示すように、主モータ13を構成する各部部材を冷却するために、冷却媒体(以下、冷媒という)を通過させる冷却路42を有している。冷媒には流体、特に、水や油等の液体を用いるのが一般的である。冷却路42には、ポンプ
41によって冷媒が供給される。ポンプ41は、バッテリ20からの電力により駆動される。
【0028】
冷却路42は、冷媒を送り出すポンプ41から主モータ13までの間に、ロータ13d及びシャフト13a等で構成される回転側の部材に設けられる第1冷却路42aと、ケーシング13c及びステータ13b等で構成される固定側の部材に設けられる第2冷却路42bの2系統を有している。また、冷却路42は、主モータ13からポンプ41までの間に戻り路42cを有している。第1冷却路42aは、シャフト13aの軸端に開口してその軸の内部を軸方向に伸びる軸方向通路42dと、その軸方向通路42dから半径方向に分岐してシャフト13aの周面に開口する半径方向通路42eとを有している。また、第1冷却路42aは、適宜ロータ13d側にも適宜の冷媒用の通路を有していてもよい。冷媒は、軸方向通路42d及び半径方向通路42eを通ってシャフト13aを冷却するとともに、シャフト13aの周面の開口から外径方向に吐出され、ロータ13dを冷却する。このため、主モータ13の出力軸が回転していれば、冷媒が広く分散して主モータ13全体を効率よく冷却することができる。第2冷却路42bは、ステータ13bの上部において、ケーシング13cに設けた貫通孔42fを通じてケーシング13c内に通じている。このため、冷媒は、ステータ13bの上部からケーシング13c内に流下して、主にステータ13bを冷却する。
【0029】
第1冷却路42aと第2冷却路42bとの分岐点には、冷媒供給調整手段43が設けられているので、第1冷却路42aと第2冷却路42bに供給される冷媒の比率を調整することができる。例えば、第1冷却路42aと第2冷却路42bに供給される冷媒の流量の比率を、0:100、25:75、50:50、75:25、100:0といったように任意の数値に設定することができる。この実施形態では、冷媒供給調整手段43として三方弁を採用しているが、分岐点よりも下流側の第1冷却路42a、及び、分岐点よりも下流側の第2冷却路42bのそれぞれに弁体の開度を調整できる流量調整弁を設けてもよい。
【0030】
なお、詳細は図示していないが、副モータ29も主モータ13と同様な構成とでき、また、冷却手段についても主モータ13と同様に、冷却路に冷媒を流通させる構成のものを備えることができる。
【0031】
車両10には、ドライバが操作するブレーキペダル22とアクセルペダル32が備えられている。ブレーキペダル22には、ドライバによるブレーキペダル22の踏み込み力を検知するブレーキセンサ23が設けられている。また、アクセルペダル32には、ドライバによるアクセルペダル32の踏み込み量を検知するアクセルポジションセンサ33が設けられている。ブレーキセンサ23によって検知されたブレーキ情報、及び、アクセルポジションセンサ33によって検知されたアクセル情報は、電子制御ユニット50に送られる
【0032】
電子制御ユニット50は、主クラッチ14及び副クラッチ26の接続及び切断の制御を行うクラッチ制御手段51と、冷却手段40を制御する冷却制御手段52、主モータ13及び副モータ29を制御する電動機制御手段53、及び、エンジン12その他この車両10の制御全般を行う制御手段54を備えている。
【0033】
主クラッチ14に関し、クラッチ制御手段51は、電動機13の温度が予め設定された閾値(第1温度閾値)以上となった場合にその主クラッチ14を接続状態から切断状態に切り替える。また、電動機13の温度が予め設定された閾値(第2温度閾値)を下回った場合にその主クラッチ14を切断状態から接続状態に切り替える。第1温度閾値及び第2温度閾値は、運転条件に関わらず一律に定めてもよいが、これをその時点での車速に応じて変化するように設定することも可能である。また、主クラッチ14が短時間で入断を繰り返すハンチングを回避できるならば、第1温度閾値及び第2温度閾値を同一の温度に設定することも可能である。
図2は、その第1温度閾値及び第2温度閾値に基づく主クラッチ14の入断の制御を示している。図中の区間Xが、主モータ13の温度に基づいて、主クラッチ14が切断されている期間である。また、クラッチ制御手段51は、車両10が減速状態になったときは、回生電力を取得するために主クラッチ14を接続状態にする。なお、電力の回生は、副モータ29でも行うことが可能である。
【0034】
電動機制御手段53は、クラッチ制御手段51による主クラッチ14及び副クラッチ26の動作と協働して、主モータ13及び副モータ29の出力を制御する。また、電力の回生を行う場合は、その取得した回生電力をバッテリ20に供給して充電する制御も行う。冷却制御手段52は、冷却手段40による主モータ13の冷却性能を、所定の冷却性能を発揮する第1状態と、その第1状態よりも冷却性能が低い第2状態との間で調整する。なお、副モータ29が冷却手段を備えている場合は、冷却制御手段52は、副モータ29の冷却性能も調整することができる。
【0035】
この発明の制御の例を、
図4~
図7を用いて説明する。
図4中の左側に示すように、ドライバの加速要求によって車速が上昇すると、これに伴って主モータ13の温度も上昇する。この主モータ13の温度(図中の「電動機の温度」)が、第1温度閾値a以上となった場合に、主クラッチ14は切断状態に切り替えられる。第1温度閾値aは、
図2に示したように、主モータ13の温度がそれ以上となった場合に主クラッチ14を接続状態から切断状態に切り替える温度である。ここで、主モータ13の駆動は停止し、その後の回転数(図中の「電動機の回転数」)は、惰性で空転する回転数(図中の「空回し回転数」)で推移する。主モータ13の駆動が停止し、主モータ13の温度は低下する。
【0036】
ここでは、温度の高い方から順に、第1温度閾値a(例えばa=120℃)、第2温度閾値b(例えばb=110℃)、第3温度閾値c(例えばc=105℃)、第4温度閾値d(例えばd=100℃)を規定しており、第1温度閾値a以上を温度域A、第2温度閾値b以上で第1温度閾値a未満を温度域B、第3温度閾値c以上で第2温度閾値b未満を温度域C、第4温度閾値d以上で第3温度閾値c未満を温度域Dと規定している。すなわち、温度域Bは温度域Aの下限よりも低い温度域に設定され、温度域Cは温度域Bの下限よりも低い温度域に設定され、温度域Dは温度域Cの下限よりも低い温度域に設定され、温度域Eは温度域Dの下限よりも低い温度域に設定されている。
【0037】
ここで、主クラッチ14の切断とともに、冷却条件1の下で冷却手段40による冷却が開始する。冷却条件1は、
図5の図表(マップ)の最上段に示す温度域A、B(温度域A、Bは
図4も参照)での冷却手法である。冷却条件1では、第1冷却路吐出フラグ1が立っていることから、第2冷却路42bに加えて第1冷却路42aによる冷却が併用され、冷却性能が高められる。主モータ13のシャフト13aが空転していることから冷媒が広範囲に飛散し、効率的な冷却が可能である。
【0038】
ここで、第1冷却路42aと第2冷却路42bの両方に冷媒が供給される状態を、冷却性能の第1状態と規定する。実施形態では、この第1状態が最も冷却性能が高い状態に位置付けている。ただし、第1冷却路42aと第2冷却路42bに供給される冷媒の流量の比率によってその冷却性能は増減するが、どのような比率の時に最も効率的な冷却性能を発揮するかは、主モータ13の形式や仕様、冷却手段40の構成によって異なる。また、第1冷却路42aと第2冷却路42bに供給される冷媒の流量の比率を、100:0、50:50、0:100と限定的にしか調整できない冷媒供給調整手段43を採用している場合もある。このため、ここでは、少なくとも第1冷却路42aと第2冷却路42bの両方に冷媒を供給した場合を、冷却性能が最も高い第1状態と規定した。なお、第1状態が、冷却手段40が有する性能の中で冷却性能が最も高い状態であることに限定するものではない。
【0039】
主モータ13のシャフト13aが空転しつつ、主モータ13の温度が低下して第2温度閾値bを下回ると、主モータ13の温度は温度域C(
図4参照)に入る。主モータ13の温度が、第2温度閾値bを下回った場合に、主クラッチ14は切断状態から接続状態に切り替えられる。第2温度閾値bは、
図2に示したように、主モータ13の温度がそれを下回った主クラッチ14を切断状態から接続状態に切り替える温度である。ここで、主クラッチ14は切断状態のままで、主モータ13の駆動が開始する。主モータ13の回転数は、車速に対応した回転数に維持されるように制御される。これを、以下、車速追従制御という。車速追従制御の下では、冷却手段40による冷却が冷却条件2に移行する。冷却条件2は、
図5の2段目に示す温度域Cでの冷却手法である。冷却条件2では、第1冷却路吐出フラグ1と電動機回転フラグ1が立っており、第2冷却路吐出フラグは0であることから、第1冷却路42aのみによる冷却が行われ、主モータ13のシャフト13aが車速に追従する回転数で駆動力によって回転する。冷却条件2は、2系統の冷却路42のうち第1冷却路42aのみを用いるものであり、第1冷却路42aと第2冷却路42bの両方を用いた第1状態よりも冷却性能が制限された冷却制限状態である。
【0040】
なお、車速追従制御は、クラッチ切断状態の車両が減速運転に移行した場合、主モータ13を用いて即座に回生電力の回収を開始できるように、クラッチ切断状態で主クラッチ14を挟んで両側の回転数を互いに近づける制御である。車速追従制御を行うと、主モータ13が駆動力で回転することから、主モータ13の温度は上昇しやすい状況であるが、上記の冷却条件2の冷却によって、主モータ13の温度は、第1温度閾値aよりも低い状態に維持されるので、減速運転に移行した際の電力の回生に備えることができる。
図4中の右端に示すように減速運転に移行すると、クラッチ接続状態となって電力の回生が開始される。冷却手段40による主モータ13への冷却は、主モータ13の温度が第3温度閾値cを超えるまで停止することができる。
【0041】
すなわち、この制御では、
図5に示すように、クラッチ切断状態において冷却手段40は、例えば、第2温度閾値b以上の所定値を含む第1温度域(温度域A,Bに相当)では冷却条件1を採用し、第1冷却路42a及び第2冷却路42bの両方に冷媒を供給して主モータ13を回転させている。このとき、実施形態では主モータ13の回転は空転であるが、これを駆動で回転させてもよい。また、第1温度域(温度域A,Bに相当)の下限よりも低い温度域に設定された第2温度域(温度域Cに相当)では冷却条件2を採用し、第1冷却路42aに冷媒を供給するとともに第2冷却路42bを遮断して冷媒の供給を停止し、主モータ13を回転させている。このとき、実施形態では主モータ13の回転は駆動による回転であるが、これを空転で回転させてもよい。さらに、第2温度域(温度域Cに相当)の下限より低い温度域に設定された第3温度域(温度域Dに相当)では冷却条件3を採用し、第1冷却路42aと第2冷却路42bの両方に冷媒を供給して、主モータ13の回転を停止している。また、第3温度域(温度域Dに相当)の下限より低い温度域に設定された第4温度域(温度域Eに相当)では冷却条件4を採用し、第1冷却路42aを遮断して冷媒の供給を停止するとともに第2冷却路42bに冷媒を供給して、主モータ13の回転を停止している。
【0042】
冷却条件2,3,4は、いずれも4つの冷却条件の中で冷却性能が最も高い第1状態、すなわち冷却条件1よりも、冷却性能が制限された冷却制限状態である。また、ポンプ41を停止して冷媒の供給を全て停止し、主モータ13の回転を停止させた状態が、冷却手段40による冷却性能の最小状態である。すなわち、この制御では、冷却制御手段52は、主クラッチ14の切断中に冷却性能を第1状態よりも制限された冷却制限状態とし、その冷却制限状態を、主モータ13の温度が高いほど第1状態に近くなるように制御することで、減速状態への移行時に電力の回生に即座に対応できるようにしている。
【0043】
他の制御例として、例えば、冷却制御手段52は、冷却手段40による冷却性能が、バッテリ20の電力の残容量が高いほど冷却制限状態が第1状態に近くなるように制御する手法を採用することができる。
【0044】
図6は、バッテリ20の電力の残容量に基づいた3つの図表(マップ)を示している。上段は電力の残容量が高い高残容量時の冷却マップを、下段は電力の残容量が低い低残容量時の冷却マップを、中段は電力の残容量がその中間の中残容量時の冷却マップをそれぞれ示している。高残容量時は、例えば、電力の残容量が第1所定容量p以上と規定でき、低残容量時は、例えば、電力の残容量が第2所定容量r(p>r)未満と規定できる。このとき、中残容量時は、電力の残容量が所定容量r以上、所定容量p未満と規定できる。第1所定容量pは、例えば、満充電容量の75%、第2所定容量rは、例えば、満充電容量の25%等とすることができる。ここで、中残容量時の冷却マップは、バッテリ20の電力の残容量に基づかない制御の例である
図5と同じものを採用している。
【0045】
図6の3つのマップを比較すると、第1冷却路42aの活用に関し、高残容量時は、冷却条件1~4の全てにおいて、第1冷却路42aに冷媒を供給しているのに対し、中残容量時は、冷却条件1~3においてのみ第1冷却路42aに冷媒を供給し、低残容量時は、冷却条件1~2においてのみ第1冷却路42aに冷媒を供給するようにして、電量の残容量が小さくなるにつれて、第1冷却路42aを活用する運転条件を縮小している。これは、電力の残容量が少ないほど、第1冷却路42aの活用機会を限定することで、バッテリ20に残る電力を温存することを目的としている。
【0046】
また、
図6の3つのマップを比較すると、第2冷却路42bの活用に関し、高残容量時は、冷却条件3においてのみ第2冷却路42bに冷媒を供給しない設定としているのに対し、中残容量時は、冷却条件2においてのみ第2冷却路42bに冷媒を供給しない設定とし、低残容量時は、冷却条件1と4においてのみ第2冷却路42bに冷媒を供給しない設定としている。すなわち、電量の残容量が小さくなるにつれて、第2冷却路42bを活用する運転条件を縮小して、バッテリ20に残る電力を温存することを目的としている。ただし、高残容量時において、冷却条件3と冷却条件4との比較では、より高い温度域を対象とする冷却条件3では主モータ13の回転を第2冷却路42bの活用よりも優先し、冷却条件3よりも低い温度域を対象とする冷却条件4では、主モータ13の回転に代えて第2冷却路42bの活用を採用している。また、中残容量時において、冷却条件2と冷却条件3との比較では、より高い温度域を対象とする冷却条件2では主モータ13の回転を第2冷却路42bの活用よりも優先し、冷却条件2よりも低い温度域を対象とする冷却条件3では、主モータ13の回転に代えて第2冷却路42bの活用を採用している。さらに、低残容量時において、冷却条件1と冷却条件2との比較では、より高い温度域を対象とする冷却条件1では主モータ13の回転を第2冷却路42bの活用よりも優先し、冷却条件1よりも低い温度域を対象とする冷却条件2では、主モータ13の回転に代えて第2冷却路42bの活用を採用している。また、冷却条件4では、第2冷却路42bの活用を停止している。実施形態では、バッテリ20の残容量に応じて3つの冷却マップを設定したが、この冷却マップの数は自由に設定できる。例えば、バッテリ20の残容量に応じて2つの冷却マップを設定してもよいし、4つ以上の冷却マップを設定してもよい。
【0047】
上記の各態様からなる制御において、電動機制御手段53が、主クラッチ14の切断中に、主モータ13の温度が高いほど、その主モータ13の回転数を高くなるようにする制御を付加することができる。このように主モータ13の温度が高いほど主モータ13の回転数を高くする制御を付加することで、主モータ13の温度が高いほど冷媒の飛散範囲が広くなり、主モータ13の温度が高い時ほどその冷却性能を高めることができる。
【0048】
この制御のフローチャートを
図7に示す。ステップS1で制御を開始し、ステップS2で主モータ13(以下、フローチャートでは電動機と記載)の温度の情報を取得する。ステップS3で、電動機の温度が、第1温度閾値a以上であれば、主クラッチ14(以下、フローチャートではクラッチと記載)が切断される。電動機の温度が、第1温度閾値a未満であれば、前行程に戻って処理が繰り返される。ステップS4でクラッチが切断され、ステップS5で再度、電動機の温度が取得される。ステップS6でクラッチの切断が継続していなければ、ステップS2に戻って処理が繰り返される。ステップS6でクラッチの切断が継続していれば、ステップS7で電動機の温度が判別される。ここで、電動機の温度が第2温度閾値b以上であれば、ステップS8に移行してバッテリの残容量の情報が取得される。続くステップS9では、バッテリ20の残容量に応じて冷却マップが選択される。ステップS10では、その選択された冷却マップにおいて、電動機の温度に応じた冷却条件(この場合は冷却条件1が該当)にて、電動機の冷却が開始される。その後、ステップS5に戻って処理を繰り返す。一方、ステップS7で電動機の温度が第2温度閾値b未満であれば、ステップS21に移行する。
【0049】
ステップS21では、再度電動機の温度が判別される。ここで、電動機の温度が第3温度閾値c以上であれば、ステップS22に移行してバッテリの残容量の情報が取得される。続くステップS23では、バッテリの残容量に応じて冷却マップが選択される。ステップS24では、その選択された冷却マップにおいて、電動機の温度に応じた冷却条件(この場合は冷却条件2が該当)にて、電動機の冷却が開始される。その後、ステップS25でその時点での運転状態が減速走行かどうかが判別される。減速状態の判別は、例えば、車速センサ16からの速度の情報によって行うことができ、あるいは、ブレーキペダル22やアクセルペダル32の操作量に基づいて電子制御ユニット50が減速状態であることを推定することも可能である。運転状態が減速走行でなければ、ステップS21に戻って処理を繰り返す。運転状態が減速走行であれば、ステップS26へ移行してクラッチが接続される。クラッチの接続により電力の回生が開始して、ステップS27で制御の処理が終了する。一方、ステップS21で電動機の温度が第3温度閾値c未満であれば、ステップS31に移行する。
【0050】
ステップS31では、再度電動機の温度が判別される。ここで、電動機の温度が第4温度閾値d以上であれば、ステップS32に移行してバッテリの残容量の情報が取得される。続くステップS33では、バッテリ20の残容量に応じて冷却マップが選択される。ステップS34では、その選択された冷却マップにおいて、電動機の温度に応じた冷却条件(この場合は冷却条件3が該当)にて、電動機の冷却が開始される。その後、ステップS35でその時点での運転状態が減速走行かどうかが判別される。運転状態が減速走行でなければ、ステップS31に戻って処理を繰り返す。運転状態が減速走行であれば、ステップS36へ移行してクラッチが接続される。クラッチの接続により電力の回生が開始して、ステップS37で制御の処理が終了する。一方、ステップS31で電動機の温度が第3温度閾値c未満であれば、ステップS42に移行する。
【0051】
ステップS42では、バッテリの残容量の情報が取得される。続くステップS43では、バッテリ20の残容量に応じて冷却マップが選択される。ステップS44では、その選択された冷却マップにおいて、電動機の温度に応じた冷却条件(この場合は冷却条件4が該当)にて、電動機の冷却が開始される。その後、ステップS45でその時点での運転状態が減速走行かどうかが判別される。運転状態が減速走行でなければ、前段に戻ってステップS45の処理を繰り返す。運転状態が減速走行であれば、ステップS46へ移行してクラッチが接続される。クラッチの接続により電力の回生が開始して、ステップS47で制御の処理が終了する。
【0052】
上記の実施形態では、冷媒が供給される冷却路42を2系統として、その2系統の冷却路42を切り替えることで冷却手段40の冷却性能を可変とする構成としたが、これ以外にも、例えば、冷却路42の系統の数に関わりなく、冷媒を送り出すポンプ41の出力を増減させることで冷却手段40の冷却性能を可変としてもよい。
【0053】
上記の実施形態で説明したハイブリッド車両10及びその制御装置の構成、制御マップ、制御フローのフローチャート等は、いずれもこの発明を説明するための単なる例示に過ぎず、主モータ13による回生エネルギの回収を効率良く行う、というこの発明の課題を解決し得る限りにおいて、上記の構成要素、制御マップ、制御フロー等に適宜変更を加えることができる。また、上記においては、車軸直結式型の主モータ13を後輪11b側のみに設けた車両10に基づいてこの発明を説明したが、主モータ13がエンジン12を設けた側とは別の車軸に設けられていれば、例えば、主モータ13が前輪11a側及び後輪11b側の両方に設けられた車両10や、主モータ13を前輪11a側のみに設けた車両10に対しても、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 ハイブリッド車両(車両)
11a 前輪(車輪)
11b 後輪(車輪)
12 エンジン
13 電動機(主モータ)
14 クラッチ(主クラッチ)
15 温度情報取得手段(温度センサ)
16 車速センサ
18 後輪側車軸(第2駆動軸)
19 後輪側ディファレンシャル
20 バッテリ
21 充電量センサ
22 ブレーキペダル
23 ブレーキセンサ
24 トルクコンバータ
25 連続可変トランスミッション
26 副クラッチ
27 前輪側ディファレンシャル
28 前輪側車軸(第1駆動軸)
29 副電動機(副モータ)
30 ベルト
31 クランクシャフト
32 アクセルペダル
33 アクセルポジションセンサ
40 冷却手段
41 ポンプ
42 冷却路
42a 第1冷却路
42b 第2冷却路
42c 戻り路
43 冷媒供給調整手段
50 電子制御ユニット
51 クラッチ制御手段
52 冷却制御手段
53 電動機制御手段
54 制御手段