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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059893
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】内視鏡を用いたシース内観察方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
G02B23/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167775
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501165628
【氏名又は名称】株式会社ティ・エス・プランニング
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 博
(72)【発明者】
【氏名】東 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智
(72)【発明者】
【氏名】平田 康夫
【テーマコード(参考)】
2H040
【Fターム(参考)】
2H040AA02
2H040AA03
2H040DA11
2H040DA54
2H040GA01
2H040GA11
(57)【要約】
【課題】PC構造物のシース内のグラウト充填状況を内視鏡を用いて観察する際に、使い勝手がよく、且つ、内視鏡が損傷することを防ぐことができる内視鏡を用いたシース内観察方法を提供する。
【解決手段】PC構造物1のシース2内のグラウト充填状況を内視鏡(ビデオスコープユニット7)を用いて観察する内視鏡を用いたシース内観察方法において、樹脂チューブ50にばね材であるスパイラル金属線(スパイラル鋼線51)が挿置された、内視鏡(ビデオスコープユニット7)のケーブル(挿入部75)を保護する保護チューブ5を、シース2に挿通してシース2内のグラウト充填状況を内視鏡(ビデオスコープユニット7)を用いて観察する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC構造物のシース内のグラウト充填状況を内視鏡を用いて観察する内視鏡を用いたシース内観察方法であって、
前記内視鏡の挿入部を保護する保護部材を前記シースに挿通して前記シース内のグラウト充填状況を前記内視鏡を用いて観察すること
を特徴とする内視鏡を用いたシース内観察方法。
【請求項2】
前記保護部材は、樹脂チューブと、前記樹脂チューブに挿嵌されたスパイラル金属線とを有し、前記シースを削孔する際に切り開かれたエッジ部から前記内視鏡を前記スパイラル金属線で保護しつつ挿抜すること
を特徴とする請求項1に記載の内視鏡を用いたシース内観察方法。
【請求項3】
前記内視鏡の前記挿入部を前記保護部材に挿通する前に、前記保護部材を予め前記シース内に挿通すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡を用いたシース内観察方法。
【請求項4】
先端がカーブした導入管に前記保護部材を挿通することにより、前記導入管の前記カーブで前記PC構造物に削孔した観察用孔から前記シース内に前記保護部材をガイドすること
を特徴とする請求項3に記載の内視鏡を用いたシース内観察方法。
【請求項5】
前記保護部材を予め前記シース内に挿通した後、エアーを前記保護部材内に吹き込むこと
を特徴とする請求項3又は4に記載の内視鏡を用いたシース内観察方法。
【請求項6】
前記保護部材は、前記内視鏡の先端部を前記シースとPC鋼材との隙間にガイドするガイド手段を有し、
前記内視鏡を前記シース内に挿入する内視鏡挿入工程では、前記ガイド手段で前記内視鏡をガイドして前記隙間に挿入すること
を特徴とする請求項1に記載の内視鏡を用いたシース内観察方法。
【請求項7】
前記保護部材は、前記シースを削孔する際に切り開かれたエッジ部を覆う部材を有し、
前記内視鏡で観察した後、前記内視鏡を前記シース内から引き抜く際には、エッジ部を覆う部材でエッジ部を覆った状態で前記内視鏡を引き抜くこと
を特徴とする請求項1に記載の内視鏡を用いたシース内観察方法。
【請求項8】
PC構造物のシース内のグラウト充填状況を内視鏡を用いて観察する際に前記内視鏡の外側に装着されて前記内視鏡を保護する内視鏡の保護部材であって、
前記内視鏡の先端部を前記シースとPC鋼材との隙間にガイドするガイド手段を有すること
を特徴とする内視鏡の保護部材。
【請求項9】
前記ガイド手段は、前記保護部材の一部を前記隙間に挿入する構成であること
を特徴とする請求項8に記載の内視鏡の保護部材。
【請求項10】
前記ガイド手段は、前記隙間に誘導する傾斜面であること
を特徴とする請求項8に記載の内視鏡の保護部材。
【請求項11】
軸中心に回転可能に構成された先端に前記内視鏡を挿通する切欠きが形成され、
前記ガイド手段は、前記切欠きを回転させて前記内視鏡の前記先端部を押し出すことで前記隙間にガイドする構成であること
を特徴とする請求項8に記載の内視鏡の保護部材。
【請求項12】
前記内視鏡を挿通可能な扁平部材を有し、
前記ガイド手段は、前記扁平部材を弱軸方向に曲げて、前記隙間にガイドする構成であること
を特徴とする請求項8に記載の内視鏡の保護部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を用いたシース内観察方法に関し、詳しくは、PC構造物のシース内のグラウト充填状況を内視鏡(ファイバースコープ又はビデオスコープ)を用いて観察する際に、内視鏡の外側に内視鏡保護チューブを予め挿通することにより内視鏡が損傷することを防ぐことができる内視鏡を用いたシース内観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポストテンション方式のPC構造物は、コンクリート構造物内に配置されたシース内にPC鋼材が挿通され、所定のコンクリート強度が発現した後、PC鋼材に緊張力(プレストレス)が付与され、防錆のためシース内にグラウトが充填されている。
【0003】
しかし、近年、このシース内のグラウト充填不良によるPC鋼材の腐食が問題となっており、シース内のグラウト未充填部分があるか否かを確認するために、様々なシース内観察方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、シース3に検査孔3aを形成し、この検査孔3a側に隣接し、プレストレストコンクリート部材1のいずれかの表面に連通する探査道5を形成し、検査孔3aを介してシース3内と探査道5を連通させた状態でプレストレストコンクリート部材1を製作した上、探査道5内に超小型カメラ10を挿入してシース3の内部を撮影するグラウト材の充填確認方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項7、明細書の段落[0018]~[0032]、図面の図1図2等参照)。
【0005】
また、PC構造物のグラウト未充填部分にグラウトを再注入する再注入工法としては、例えば、特許文献2に、グラウト加圧注入口13からグラウト加圧注入装置20によってグラウトを加圧注入する際に、挿入部31の先端に小型カメラ32を備えるとともに、挿入部31の内部に操作器出入路が形成され、先端面に操作器出入路の先端が開口されている内視鏡30を使用し、小型カメラ32を通じてグラウト未充填空洞12内を監視しつつ挿入部31の先端を排出口14より挿入し、内視鏡30の操作器出し入れ口を通じて、排気させつつグラウト注入口からグラウトを加圧注入するグラウト再充填方法が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0019]~[0036]、図面の図1図4等参照)。
【0006】
しかし、内視鏡(ファイバースコープ又はビデオスコープ)は、元々人間の身体内を覗くために開発された極めて高価でデリケートな器具であり、損傷し易いという問題があった。工業用の用途の内視鏡では、表面を金属で補強しており、挿入時の損傷においては耐性が向上されているが、狭い空間に挿入するような細径の内視鏡においては、使用方法において充分とは言えない場合もある。工業用の用途では、検査対象が剛体であることから、無理な力をかけるような状況になると、内視鏡自身にそのまま力が掛かることになり、破損等を起こす可能性がある。
【0007】
前述の特許文献1に記載のグラウト材の充填確認方法や特許文献2に記載のグラウト再充填方法で記載されたように、PC構造物のシース内を観察する場合に内視鏡を用いると、狭隘なコンクリートや鋼材の隙間に挟まれて抜けなくなるなどして、無理に引っ張ると破断するおそれも高いという問題もあった。また、内視鏡は、非常に高価なものであり、破損した場合の損害も大きなものとなるという問題もあった。
【0008】
特に、特許文献2に記載のグラウト再充填方法に内視鏡を用いる場合、シース内のグラウト充填状況が不明な上、シースに新たに削孔して開削した鋭利な部分で内視鏡を損傷するおそれが高いという問題があった。そのため、内視鏡が損傷するおそれが少なく、且つ使い勝手の良い内視鏡を用いたシース内観察方法が求められている。
【0009】
一方、特許文献3には、親スコープの処置具挿通チャンネルに挿脱自在で上記処置具挿通チャンネルの全長より長い有効長を有する外套シースと、上記外套シース内に挿脱自在で上記外套シースの全長より長い有効長を有する造影剤注入チューブと、上記外套シース内に挿脱自在で上記外套シースの全長より長い有効長を有する子スコープとを有する親子式内視鏡装置が開示されている(特許文献3の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0009]~[0039]、図面の図4等参照)。
【0010】
しかし、親スコープで胆管内等へ造影剤を注入してから、子スコープを挿入して胆管内等を観察できるようにしたものであり、シース内観察の際に使用した際に、内視鏡を損傷から保護することはできないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001-336251号公報
【特許文献2】特開2014-105527号公報
【特許文献3】特開2001-190496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、PC構造物のシース内のグラウト充填状況を内視鏡を用いて観察する際に、使い勝手がよく、且つ、内視鏡が損傷することを防ぐことができる内視鏡を用いたシース内観察方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る内視鏡を用いたシース内観察方法は、をPC構造物のシース内のグラウト充填状況を内視鏡を用いて観察する内視鏡を用いたシース内観察方法であって、内視鏡のケーブルを保護する保護部材を前記シースに挿通して前記シース内のグラウト充填状況を内視鏡を用いて観察すること特徴とする。
【0014】
請求項2に係る内視鏡を用いたシース内観察方法は、請求項1に係る内視鏡を用いたシース内観察方法において、前記保護部材は、樹脂チューブと、この樹脂チューブに挿嵌されたスパイラル金属線とを有し、前記シースを削孔する際に切り開かれたエッジ部から前記内視鏡を前記スパイラル金属線で保護しつつ挿抜することを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る内視鏡を用いたシース内観察方法は、請求項1又は2に係る内視鏡を用いたシース内観察方法において、前記内視鏡の前記ケーブルを前記保護部材に挿通する前に、前記保護部材を予め前記シース内に挿通することを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る内視鏡を用いたシース内観察方法は、請求項3に係る内視鏡を用いたシース内観察方法において、先端がカーブした導入管に前記保護部材を挿通することにより、前記導入管の前記カーブで前記PC構造物に削孔した観察用孔から前記シース内に前記保護部材をガイドすることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る内視鏡を用いたシース内観察方法は、請求項3又は4に係る内視鏡を用いたシース内観察方法において、前記保護部材を予め前記シース内に挿通した後、エアーを前記保護部材内に吹き込むことを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る内視鏡を用いたシース内観察方法は、請求項1に係る内視鏡を用いたシース内観察方法において、前記保護部材は、前記内視鏡の先端部を前記シースとPC鋼材との隙間にガイドするガイド手段を有し、前記内視鏡を前記シース内に挿入する内視鏡挿入工程では、前記ガイド手段で前記内視鏡をガイドして前記隙間に挿入することを特徴とする。
【0019】
請求項7に係る内視鏡を用いたシース内観察方法は、請求項1に係る内視鏡を用いたシース内観察方法において、前記保護部材は、前記シースを削孔する際に切り開かれたエッジ部を覆う部材を有し、前記内視鏡で観察した後、前記内視鏡を前記シース内から引き抜く際には、エッジ部を覆う部材でエッジ部を覆った状態で前記内視鏡を引き抜くことを特徴とする。
【0020】
請求項8に係る内視鏡の保護部材は、PC構造物のシース内のグラウト充填状況を内視鏡を用いて観察する際に前記内視鏡の外側に装着されて前記内視鏡を保護する内視鏡の保護部材であって、前記内視鏡の先端部を前記シースとPC鋼材との隙間にガイドするガイド手段を有することを特徴とする。
【0021】
請求項9に係る内視鏡の保護部材は、請求項8に係る内視鏡の保護部材において、前記ガイド手段は、前記保護部材の一部を前記隙間に挿入する構成であることを特徴とする。
【0022】
請求項10に係る内視鏡の保護部材は、請求項8に係る内視鏡の保護部材において、前記ガイド手段は、前記隙間に誘導する傾斜面であることを特徴とする。
【0023】
請求項11に係る内視鏡の保護部材は、請求項8に係る内視鏡の保護部材において、軸中心に回転可能に構成された先端に前記内視鏡を挿通する切欠きが形成され、前記ガイド手段は、前記切欠きを回転させて前記内視鏡の前記先端部を押し出すことで前記隙間にガイドする構成であることを特徴とする。
【0024】
請求項12に係る内視鏡の保護部材は、請求項8に係る内視鏡の保護部材において、前記内視鏡を挿通可能な扁平部材を有し、前記ガイド手段は、前記扁平部材を弱軸方向に曲げて、前記隙間にガイドする構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1~7に係る発明によれば、保護部材で内視鏡の挿入部を保護するので、PC構造物のシース内のグラウト充填状況を内視鏡を用いて観察する際に、内視鏡が損傷することを防ぐことができる。このため、内視鏡が狭隘なコンクリートや鋼材の隙間に挟まれて抜けなくなる事態や、シースに新たに削孔して開削した鋭利な部分で内視鏡を損傷するおそれを低減することができる。
【0026】
特に、請求項2に係る発明によれば、シースを削孔する際に切り開かれたエッジ部から内視鏡をスパイラル金属線で保護しつつ挿抜するので、スパイラル金属線で内視鏡を保護することができるだけでなく、保護部材のスパイラル金属線により直進性及び使い勝手が向上し、狭隘な隙間にも内視鏡を挿入してグラウト充填状況を観察することができる。
【0027】
特に、請求項3に係る発明によれば、内視鏡の挿入部を保護部材に挿通する前に、保護部材を予めシース内に挿通するので、内視鏡の挿入部を損傷するおそれがさらに低減されるだけでなく、内視鏡の挿入部を挿通する際の時間を短縮することができる。また、保護部材を挿入する際は、損傷しても安価で代替性が高いため、大胆に扱っても心配なく、内視鏡の挿入部を挿入する時間より極めて短時間で挿入することができる。
【0028】
特に、請求項4に係る発明によれば、一番挿入が困難な箇所となっている観察用孔からシース内へ曲げ入れる箇所において、導入管のカーブで保護部材をスムーズにガイドすることができる。このため、後から挿入する内視鏡のケーブルをさらに短時間で挿入することができる。
【0029】
特に、請求項5に係る発明によれば、保護部材を予めシース内に挿通した後、エアーを保護部材内に吹き込むので、エアーで水滴、ほこり、塵などを吹き飛ばして内視鏡の視界を晴らすことができる。
【0030】
特に、請求項6に係る発明によれば、ガイド手段で内視鏡をガイドして前記隙間に挿入するので、内視鏡の挿入部をさらに短時間で挿入することができる。
【0031】
特に、請求項7に係る発明によれば、内視鏡をシース内から引き抜く際には、エッジ部を覆う部材でエッジ部を覆った状態で前記内視鏡を引き抜くので、内視鏡が損傷することを防ぐことができる。
【0032】
請求項8~12に係る発明によれば、ガイド手段を有するので、内視鏡の挿入部を短時間で前記隙間に挿入することができるだけでなく、保護部材で内視鏡の挿入部を保護するので、PC構造物のシース内のグラウト充填状況を内視鏡を用いて観察する際に、内視鏡が損傷することを防ぐことができる。このため、シース内観察の作業時間を短縮することができるだけでなく、内視鏡が狭隘なコンクリートや鋼材の隙間に挟まれて抜けなくなる事態や、シースに新たに削孔して開削した鋭利な部分で内視鏡を損傷するおそれを低減することができる。
【0033】
特に、請求項9に係る発明によれば、内視鏡を挿入する際に、既に保護部材が前記隙間に挿入されているため、内視鏡のケーブルをさらに短時間で前記隙間に挿入することができる。その上、請求項9に係る発明によれば、内視鏡をシース内から引き抜く際にも、エッジ部を覆う部材でエッジ部を覆った状態で前記内視鏡を引き抜くので、内視鏡が損傷することを防ぐことができ、内視鏡の耐用年数を向上させることができる。
【0034】
特に、請求項10に係る発明によれば、内視鏡を挿入する際に、傾斜面で内視鏡の先端部を前記隙間に誘導することができ、内視鏡の挿入部を損傷することなく短時間で前記隙間に挿入することができる。
【0035】
特に、請求項11に係る発明によれば、切欠きを回転させて内視鏡の先端部を押し出すことで前記隙間にガイドするので、内視鏡の挿入部を損傷することなく短時間で前記隙間に挿入することができる。
【0036】
特に、請求項12に係る発明によれば、扁平部材を弱軸方向に曲げて、前記隙間にガイドする構成であるので、内視鏡の挿入部を損傷することなく短時間で前記隙間に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法の削孔工程を示す工程説明図である。
図2図2は、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法に用いる保護チューブを示す断面図である。
図3図3は、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法に用いる導入管を途中省略で示す側面図である。
図4図4は、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法に用いるビデオスコープユニットを模式的に示す模式図である。
図5図5は、可視光が光ファイバーの断線箇所から漏れる状態を示す写真である。
図6図6は、PC鋼棒を挿置した供試体の挿入口付近を示す写真である。
図7図7は、PC鋼棒を挿置した供試体の全景を示す写真である。
図8図8は、PC鋼棒を挿置した供試体の上端付近を示す写真である。
図9図9は、塩ビパイプを挿置した供試体の到達点付近を示す写真である。
図10図10は、変形例1に係る保護チューブを主に示す斜視図である。
図11図11は、同上の保護チューブの使用状態を示す鉛直断面図である。
図12図12は、変形例2に係る保護チューブを主に示す斜視図である。
図13図13は、変形例3に係る保護チューブを主に示す斜視図である。
図14図14は、変形例3に係る保護チューブの使用状態を示す図であり、(a)がシースや観察用孔を透視して示す透視斜視図、(b)がシースに沿って切断した状態を示す鉛直断面図である。
図15図15(a)は、変形例4に係る保護チューブを示す斜視図であり、図15(b)は、変形例4に係る保護チューブのさらに変形例に係る保護チューブを示す斜視図である。
図16図16は、変形例4に係る保護チューブの使用状態をシースや観察用孔を透視して示す透視斜視図である。
図17図17は、変形例5に係る保護チューブを示す斜視図である。
図18図18は、変形例5に係る保護チューブの構成を示す分解斜視図である。
図19図19は、変形例5に係る保護チューブの使用方法を示す模式断面図であり、(a)が挿入時を示し、(b)が撤去時を示している。
図20図20は、変形例6に係る保護チューブを示す斜視図であり、(a)がレバーで先端を引き上げる前を示し、(b)がレバーで先端を引き上げた状態を示している。
図21図21は、変形例7に係る保護部材をシースや観察用孔を透視して示す透視斜視図である。
図22図22は、変形例8に係る保護チューブをシースや観察用孔を透視して示す透視斜視図である。
図23図23は、変形例8に係る保護チューブを観察用孔に挿入した状態を観察用孔に沿って切断して示す断面図である。
図24図24は、内視鏡の差し込み方の違いによる曲率半径の違いを説明する図であり、(a)が内視鏡を鉛直上方に差し込む場合を示し、(b)が内視鏡を水平方向に傾けて上方に差し込む場合を示している。
図25図25は、変形例9に係る保護チューブを示す斜視図である。
図26図26は、変形例9に係る保護チューブを観察用孔に挿入した状態を観察用孔に沿って切断して示す断面図である。
図27図27は、変形例10に係る保護チューブを観察用孔に挿入した状態を観察用孔に沿って切断して示す断面図である。
図28図28は、変形例10に係る保護チューブを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る内視鏡を用いたシース内観察方法の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
先ず、図1図4を用いて、本発明の実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法について説明する。本実施形態では、ポストテンション方式の既設PC構造物のシースにグラウト未充填部分が存在し、その未充填部分を把握するために内視鏡を用いてシース内を観察する場合を例示して説明する。
【0040】
(グラウト未充填部の特定)
先ず、特許文献2に記載された従来の観察方法と同様に、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法では、既設のPC構造物1のシース2内にグラウト未充填部3があるか否かを非破壊検査で検査し、グラウト未充填部3を特定する(図1参照)。
【0041】
具体的には、グラウト未充填部の有無を確認する非破壊検査としては、X線透過法、電磁波レーダー法、広帯域超音波法、衝撃弾性波法、磁気探査法等を列挙することができる。これらの非破壊検査を行うことで、グラウト未充填部を特定し、観察用孔、注入孔及び排出孔を決定する。
【0042】
(削孔工程)
次に、図1に示すように、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法では、観察用孔H1、注入孔H2及び排出孔H3を削孔する削孔工程を行う。図1は、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法の削孔工程を示す工程説明図である。勿論、観察用孔H1は、注入孔H2又は排出孔H3と兼用してもよいし、調査や検査するだけの場合は、観察用孔H1のみ削孔してもよいことは云うまでもない。なお、符号4は、PC構造物1にプレストレスを付与するPC鋼材4である。
【0043】
具体的には、PC構造物1の表面からシース2のグラウト未充填部3へ向け、小径(例えば、直径5mm~25mm程度)のダイヤモンドビットやコアビットを装着した削孔機で削孔して、観察用孔H1、注入孔H2及び排出孔H3を形成する。勿論、ウォータージェットなど他の削孔手段で削孔してもよいことは云うまでもない。但し、小径のダイヤモンドビットを装着した削孔機で削孔すると、削孔機が人力で持ち運び容易な上、削孔時間も短時間で済むため好ましい。
【0044】
(保護チューブ挿入工程)
次に、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法では、内視鏡の挿入部を保護する保護部材である保護チューブを挿入する保護チューブ挿入工程を行う。
【0045】
本工程で用いる保護チューブ5は、図2に示すように、樹脂チューブ50と、その樹脂チューブ50に内嵌されたスパイラル金属線であるスパイラル鋼線51と、から構成されている。図2は、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法に用いる保護チューブを示す断面図である。
【0046】
樹脂チューブ50は、PFA(Tetrafluoroethylene perfluoroalkylvinyl ether copolyte:テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPEEK(Poly Ether Ether Ketone:ポリエーテルエーテルケトン)などの耐摩耗性の高い樹脂からなる外径1/6inch(約1.6mm)、内径1.0mm、長さ4.5mの樹脂製のチューブである。勿論、樹脂チューブの大きさは、例示した物に限定されるものではなく、適宜採用することができる。例えば、樹脂チューブ50は、外径3mm、内径2.6mm、長さ4.5mmの樹脂製チューブとすることができる。勿論、樹脂チューブは、PFAやPEEKに限られず、一定の可撓性と耐摩耗性を有する樹脂製のチューブであれば他の樹脂製とすることができる。
【0047】
即ち、樹脂チューブ50は、PFAに限られず、撓んで潰れて隙間を通過できる所定の可撓性を有するとともに、スパイラル鋼線51と合わせて復元力で元に戻って真っすぐになる所定の剛性、及び挿入を繰り返してもあまり傷の付かない耐摩耗性を有する素材であれば適宜採用することができる。
【0048】
スパイラル鋼線51は、直径0.14mmの線径の鋼線からなり、外径2.0mm、内径1.72mmの螺旋状に加工された鋼線であり、それを引き延ばして前述の内径1.0mmの樹脂チューブに内嵌されている。このスパイラル鋼線51は、ばね材として鋼線の復元力で保護チューブ全体を真っすぐに復元して挿入時の直進性を担保する機能を有している。勿論、スパイラル鋼線の大きさも、例示した物に限定されるものではなく、適宜採用することができる。例えば、スパイラル鋼線51は、直径0.2mmの線径で、外径3.0mm、内径2.6mmの螺旋状に加工され、必要に応じて、それを引き延ばして内径3.0mm以下の例えば内径2.6mmの前述の樹脂チューブ50に内嵌されるようにしてもよい。
【0049】
勿論、スパイラル鋼線51の直径は、適宜変更可能であり、ばね材としての復元力が足りず、直進性が不足している場合は、スパイラル鋼線51の直径を太くしたり、鋼材の種類を変更したりするなどして復元力を調整すればよい。また、スパイラル鋼線51は、樹脂チューブ50の外側に外嵌しても構わないし、樹脂チューブの樹脂壁内に挿通されて一体化させても構わない。要するに、スパイラル鋼線51は、樹脂チューブ50の内外問わず挿置されていればよい。それでも、スパイラル鋼線51の復元力で保護チューブ全体を真っすぐに復元して挿入時の直進性を担保することができるからである。
【0050】
また、図1に示すように、観察用孔H1は、PC構造物1の表面からなるべく最短距離で削孔する関係上、シース2に対して直交しているか又は鋭角に交差している場合が多い。このため、観察用孔H1からシース2へ保護チューブ5を挿入するときは、観察用孔H1からシース2方向へ直角又は鋭角に曲げる必要があり、可撓性のある保護チューブ5の先端をシース2の管内に導入することが最も困難な作業となる。
【0051】
よって、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法では、図3に示す導入管6を用いて、保護チューブ5の先端を導入管6の先端カーブ6aでガイドして曲げ入れ、シース2の管内に導入する。このため、保護チューブ5をスムーズにシース2の管内にガイドすることができ、短時間で保護チューブ5を所定の位置に配置することができる。図3は、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法に用いる導入管を途中省略で示す側面図である。
【0052】
導入管6は、保護チューブ5の外径(1.6mm程度)よりわずかに大きな内径からなる銅製の管であり、図3に示すように、先端になだらかに曲がる先端カーブ6aが設けられている。この先端カーブ6aは、保護チューブ5の挿入具合により、現地において曲がり具合を微調整する。勿論、導入管6は、銅管に限られず、先端カーブ6aの形状を現地において微調整可能な程度の展性のある金属製の管であればよい。但し、導入管を樹脂製として、カーブの曲率が違う複数種類の管を用意して、それらを使い分けたり、熱して現地でカーブの曲率を微調整したりしても構わない。
【0053】
(圧縮エアー吹込み工程)
次に、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法では、保護チューブ5内に圧縮エアーを吹き込んで水滴、ほこり、塵などの障害物を吹き飛ばす圧縮エアー吹込み工程を行う。
【0054】
内部の状況によるが、内視鏡挿入部75や保護チューブ5を挿入すると、いずれを挿入する場合でも、水滴(水分)、ほこり、塵などの障害物が付着して、目的位置に到達したときに視界が悪くなることが想定される。しかし、保護チューブ5は、中空なので、保護チューブ5内にエアーを圧送することで水滴、ほこり、塵などの障害物を吹き飛ばして視界を晴らすことができる。そして、保護チューブ5に内視鏡挿入部75を挿通する際には、ほこりや塵が再度付着するおそれは少ないので、視界が良好な状態で観察することが可能となる。そのため、視界が晴れるまで内視鏡挿入部75を何度も抜き差しして試みる必要がなくなり、内視鏡挿入部75を損傷するおそれがさらに低減する。
【0055】
(内視鏡挿入工程)
次に、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法では、前保護チューブ挿入工程で挿入した保護チューブ5に内視鏡の挿入部を挿入する内視鏡挿入工程を行う。
【0056】
図4は、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法に用いるビデオスコープユニット7を模式的に示す模式図である。図4に示すように、内視鏡であるビデオスコープユニット7は、内視鏡挿入部75と、内視鏡操作部70と、モニター部71と、これらを繋ぐユニバーサルケーブル72と、操作コントローラ部73など、から構成されたオリンパス社製のIPLEX TXが採用されている。また、検査箇所のサイズに応じて、適正なサイズのビデオスコープユニットを使用することが必要である。
【0057】
このビデオスコープユニット7は、撮像素子(CCDやCMOS等)を使ったビデオカメラを内視鏡挿入部75の先端側の先端部76に組み込んで撮像した画像をモニター部71でリアルタイムに画像として映し出せる内視鏡ユニットである。ここでは、隙間が3mm以下を想定して、挿入部の先端の外径が2.4mmと極めて狭隘な隙間にも挿入可能となっているものを想定して説明する。
【0058】
勿論、本発明に用いることができる内視鏡は、ビデオスコープに限られず、小径の孔からシース2内を視認可能な手段であれば特に限定されるものではない。但し、ビデオスコープユニット7は、リアルタイムに画像としてモニター部71で写し出せるので、複数人で確認でき、記録も容易であるため好ましい。
【0059】
また、本実施形態に係るビデオスコープユニット7の内視鏡操作部70は、湾曲部操作部74を有し、先端側に内視鏡挿入部75と、湾曲部77を有する先端部76とを備え、湾曲部操作部74で湾曲部77の湾曲操作が自在となっている。この先端部76は、湾曲部77と、内視鏡操作部70の内部に設置した図示しないLED照明ユニットから導光するライトガイドファイバからの光を先端から出射する照明光学ユニット78と、対物レンズ79を備えている。
【0060】
前工程で既に保護チューブ5が、観察用孔H1からシース2の管内を通じてグラウト未充填部3に至るまで配置されている。このため、本工程では、保護チューブ5内に内視鏡挿入部75及び先端部76を押し込むだけであり、しかも、保護チューブ5内には、断面円形のスパイラル鋼線51が配置されているので、極めてスムーズに内視鏡挿入部75を挿入することができる。
【0061】
なお、保護チューブ5を内視鏡挿入部75より先入れする場合を例示して説明したが、内視鏡挿入部75に保護チューブ5を外嵌した状態でシース内に挿入してもよいし、部分的に内視鏡挿入部75の先端部76を保護チューブ5より先に挿入してもよい。また、保護チューブ5を先に挿入した後、内視鏡挿入部75を挿入し、その後、内視鏡挿入部75を保護チューブ5の先端よりさらに奥に挿入し、後から保護チューブ5を奥に挿入するなど、適宜、挿入順序を変えても構わない。その場合でも、保護チューブ5により内視鏡挿入部75を損傷するおそれが低減することは明らかである。
【0062】
(シース内観察)
その後、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法では、ビデオスコープユニット7を用いて、シース2内のグラウト未充填部3の確認やシース2内のPC鋼材の劣化状況を確認する。
【0063】
以上説明した本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法によれば、樹脂チューブ50内にばね材であるスパイラル鋼線51が内嵌された保護チューブ5で先端部76及び内視鏡挿入部75を保護するので、PC構造物1のシース2内のグラウト充填状況をビデオスコープユニット7を用いて観察する際に、内視鏡挿入部75及び先端部76が損傷することを防ぐことができる。このため、狭隘なコンクリートや鋼材の隙間に挟まれて抜けなくなる事態や、シース2に新たに削孔して開削した鋭利な部分で内視鏡挿入部75を損傷するおそれを低減することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法によれば、スパイラル鋼線51により保護チューブ5の直進性及び使い勝手が向上し、狭隘な隙間にも内視鏡挿入部75を挿入してグラウト充填状況を観察することができる。
【0065】
その上、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法によれば、内視鏡挿入部75を保護チューブ5に挿通する前に、保護チューブ5を予めシース2内に挿通するので、先端部76及び内視鏡挿入部75を損傷するおそれがさらに低減されるだけでなく、内視鏡挿入部75をグラウト未充填部3まで挿通する際の時間を短縮することができる。
【0066】
それに加え、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法によれば、保護チューブ5を挿入する際は、損傷しても安価で代替性が高いため、大胆に扱っても心配なく、従来の内視鏡を用いたシース内観察方法と比べて、内視鏡挿入部75を挿入する時間より極めて短時間で挿入することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法によれば、一番挿入が困難な箇所となっている観察用孔H1からシース2内へ曲げ入れる箇所において、導入管6の先端カーブ6aで保護チューブ5をスムーズにガイドすることができる。このため、後から挿入する内視鏡挿入部75をさらに短時間で挿入することができる。
【0068】
さらに、本実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法によれば、保護チューブ5を内視鏡挿入部75の外側に設置することで、前述の圧縮エアー吹込み工程の実施が可能となり、エアーで水滴、ほこり、塵などを吹き飛ばして視界を晴らすことができる。
【0069】
<光ファイバーによる断線確認実験>
次に、本発明の効果を確認するため行った光ファイバーによる断線確認実験について説明する。本実験は、内視鏡の代わりに光ファイバーを前述の保護チューブ5に挿通し、取り扱いを雑にしても、光ファイバーに断線が起こらないか否かを目視により確認することにより行った。
【0070】
具体的には、前述の保護チューブ5をPFAから樹脂チューブ50を作成し、前述のスパイラル鋼線51を内篏して試作チューブとした。また、PC構造物のシース内の環境を模して、内径38mm長さ3100mmの太い塩ビパイプに、内径15mmの細い塩ビパイプを管軸方向が直交するように取り付けて供試体を作成した。
【0071】
そして、前述の供試体に試作チューブを挿入し、その後、横河計測株式会社製の光ファイバー測定器の光ファイバー(直径0.25mm)を試作チューブに後挿入して、雑に取り扱い、その際、光ファイバーに断線が発生するか否かで判断した。
【0072】
光ファイバーの断線の発生は、前述の光ファイバー測定器のマルチフィールドテスタを使用し、光ファイバーの先端を可視化し、断線がある場合、可視光が光ファイバーの断線箇所から漏れることを利用して確認した(図5参照)。
【0073】
(実験結果)
結果としては、雑に取り扱った場合でも光ファイバーに断線は確認されなかった。よって、保護チューブを挿入することにより、内視鏡のケーブルが損傷することも防げるものと判断した。
【0074】
<保護チューブの到達実験>
次に、前述の保護チューブ5が単独でどのくらいシース内に挿入できるかを確認するために、保護チューブの到達実験を行った。
【0075】
具体的には、PC構造物のシース内の環境を模して、内径38mm長さ0.8mの透明ビニル管に観察用孔として内径15mmの細い透明ビニル管を取り付け(図6参照)、腐食したPC鋼棒を挿置し、悪条件である鉛直上方に保護チューブ5がどのくらい到達するかをメジャーで計測して確認した(図7図8参照)。
【0076】
結果としては、保護チューブ5は、供試体の上端、即ち、鉛直上方に0.8mまで到達可能であった。
【0077】
このため、追加実験として同様の長さが1.3m以上の供試体を作成し、錆びたPC鋼材の代わりに不透明な塩ビ管を挿置し、水平方向に保護チューブ5がどのくらい到達するかを確認した。
【0078】
結果としては、図9に示すように、1.2mが限界であった。しかし、保護チューブ5にばね材とし挿入したスパイラル鋼線51をもう少し直径が太いものに変更することや、樹脂チューブ50をPFA製からPEEK製に変更することにより、保護チューブ5の復元力を上げて直進性を改善することは可能と考えられる。
【0079】
[保護チューブの変形例1]
次に、図10図11を用いて、前述の本発明の実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法に用いる保護チューブ(保護部材)について別の実施形態を挙げ、さらに詳細に説明する。図10は、変形例1に係る保護チューブ8を主に示す斜視図であり、図11は、変形例1に係る保護チューブ8の使用状態を示す鉛直断面図である。
【0080】
図10図11に示すように、変形例1に係る保護チューブ8は、前述の樹脂チューブ50と同様に、可撓性、弾力性、及び耐摩耗性を有する樹脂製のチューブである樹脂チューブ80と、この樹脂チューブ80に内嵌された、前述のスパイラル鋼線51と同様のスパイラル鋼線81を備えている。
【0081】
この樹脂チューブ80は、前述の樹脂チューブ50と相違して、内視鏡挿入部75の先端部76をシース2とPC鋼材4との隙間sにガイドするガイド手段として、シース2に差し込む際の先端が曲がった形状に癖が付けられた曲がり部80aを有している。この曲がり部80aは、曲がり部80aを真っすぐに潰して挿入しても樹脂の反発力(弾発力)で曲がり部80aが曲がった形状に立ち上がって復元されるようになっている。
【0082】
図10に示すように、この樹脂チューブ80の曲がり部80aの高さh1は、シース2へ到達するために削孔したシース2の軸方向と交差する横穴である観察用孔H1の直径φ1より大きく設定されている。図11に示すように、樹脂チューブ80の曲がり部80aが観察用孔H1からシース2に到達した際に、樹脂チューブ80の曲がり部80aが立ち上がって内視鏡挿入部75及び先端部76をシース2とPC鋼材4との間の隙間sに導入し易くするためである。
【0083】
図10に示すように、保護チューブ8の先端には、長手方向に端面から側周面に向け斜めに切り欠いた切欠き部80bが形成されている。この切欠き部80bは、図11に示すように、保護チューブ8の先端が、PC鋼材4に当接した際に、図10に示す切欠き部80bを除く内周面からの距離eが、シース2とPC鋼材4との隙間sの間隔と略同じ距離で少しだけ短くなるように設定されている。PC鋼材4の外周面は、ひっかかる部分がないため、シース2を切り裂いた観察用孔H1との境界の鋭利なエッジ部E1側を保護チューブ8で保護できれば、全体の厚さは極力薄くしたいからである。
【0084】
また、この保護チューブ8は、図10図11に示すように、前述の保護チューブ5と相違して、樹脂チューブ80に内嵌された柔軟性を有していない硬質樹脂や金属管からなる円筒状のリジットパイプ82を備えている。このリジットパイプ82の先端は、スパイラル鋼線81に連結されており、リジットパイプ82の基端は、固定治具83の口金84に固着されている。
【0085】
このため、図10に示すように、樹脂チューブ80は、固定治具83で内視鏡挿入部75に装着して固定可能となっている。つまり、変形例1に係る保護チューブ8によれば、前述のシース内観察方法ように、内視鏡挿入工程に先立って、保護チューブ挿入工程を行わなくても、内視鏡挿入部75を保護チューブ8で保護しつつ、先端部76をシース2とPC鋼材4との間の隙間sに導入することができる。
【0086】
次に、この変形例1に係る保護チューブ8の使用方法及び保護チューブ8を用いたシース内観察方法について説明する。なお、前述の内視鏡を用いたシース内観察方法と相違する点についてのみ説明し、同様に行う工程等については説明を省略する(以下、同じ)。
【0087】
先ず、シース2に交差して削孔された観察用孔H1に保護チューブ8を挿入する保護チューブ挿入工程を行う。このとき、前述のように、曲がり部80aの高さh1は、観察用孔H1の直径φ1より高くなっているので、押して曲がり部80aを真っすぐに変形させた状態で挿入する。
【0088】
その後、保護チューブ8をシース2に到達するまで押し込むと、樹脂チューブ80の先端が、観察用孔H1からシース2内の隙間sまで到達し、曲がり部80aが樹脂チューブ80の復元力で立ち上がる。このとき、切欠き部80bがPC鋼材4の外周面に丁度嵌り込み、距離eが隙間sの間隔より少しだけ短く設定されているため、シース2が切り裂さかれた鋭利なエッジ部E1内に樹脂チューブ80の内周面が位置することとなる。
【0089】
その後、図1に示すように、内視鏡挿入工程を行って、保護チューブ8内に、内視鏡挿入部75を挿入して、先端部76及び内視鏡挿入部75を保護チューブ8の先端からさらに押し出して、前述のシース内観察を行う。このとき、鋭利なエッジ部E1内に樹脂チューブ80の内周面が位置するので、内視鏡挿入部75を挿入する際及び引き抜く際に、内視鏡挿入部75がエッジ部E1に引っ掛かって損傷するおそれを低減することができる。このため、ビデオスコープユニット7の耐用年数を長くすることができる。
【0090】
なお、スパイラル鋼線81を長くすることにより、内視鏡挿入工程において、スパイラル鋼線81とともに内視鏡挿入部75を樹脂チューブ80からさらに奥に送り出すようにしてもよい。スパイラル鋼線81の復元力により、内視鏡挿入部75の挿入時の直進性を向上させることができるからである。
【0091】
[保護チューブの変形例2]
次に、図12を用いて、変形例2に係る保護チューブ9について説明する。図12は、変形例2に係る保護チューブ9を主に示す斜視図である。変形例2に係る保護チューブ9が、前述の変形例1に係る保護チューブ8と相違する点は、外管90が追加されている点だけなので、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0092】
図12に示すように、変形例2に係る保護チューブ9は、樹脂チューブ80と、この樹脂チューブ80に内嵌されたスパイラル鋼線81(図示せず)と、リジットパイプ82を備えるとともに、樹脂チューブ80に外嵌されて挿抜(進退)自在な外管90を備えている。この外管90は、リジットパイプ82と同様に、柔軟性を有していない硬質樹脂や金属管からなる円筒状の管体である。
【0093】
保護チューブ9の樹脂チューブ80も、前述の曲がり部80aが形成されている。外管90を樹脂チューブ80の外側に装着することにより、外管90の位置を樹脂チューブ80の軸方向に沿ってスライドするだけで、曲がり部80aを真っすぐに変形させることができ、保護チューブ挿入工程をより短時間にスムーズに行うことができる。
【0094】
また、外管90の位置を樹脂チューブ80の軸方向に沿ってスライドするだけで、曲がり部80aの立ち上り具合を調整することが可能となり、エッジ部E1と樹脂チューブ80の先端の位置調整が容易となる。このため、内視鏡挿入部75を挿入する際及び引き抜く際に、内視鏡挿入部75が鋭利なエッジ部E1に引っ掛かって損傷するおそれをさらに低減することができる。
【0095】
[保護チューブの変形例3]
次に、図13図14を用いて、変形例3に係る保護チューブ10について説明する。図13は、変形例3に係る保護チューブ10を主に示す斜視図である。また、図14は、変形例3に係る保護チューブ10の使用状態を示す図であり、(a)がシース2や観察用孔H1を透視して示す透視斜視図、(b)がシース2に沿って切断した状態を示す鉛直断面図である。変形例3に係る保護チューブ10が、前述の変形例1に係る保護チューブ8と相違する点は、主にガイド手段として押出しチューブ100を有している点であるので、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0096】
図13に示すように、変形例3に係る保護チューブ10は、樹脂チューブ80と、この樹脂チューブ80に内嵌されて挿抜(進退)自在な扁平部材である押出しチューブ100を備えている。この押出しチューブ100は、先端から一定長さ又は全部が押しつぶされて中空扁平な形に癖が付けられており、先端部101に切欠き部102が形成されて扁平な一辺が切り欠かれて無くなっている。
【0097】
この押出しチューブ100は、樹脂チューブ80と同様に、可撓性及び弾力性を有する樹脂製のチューブである。しかし、押出しチューブ100は、樹脂チューブ80に対して挿抜自在とするためには、いずれか一方又は両方がPFA(Tetrafluoroethylene perfluoroalkylvinyl ether copolyte)やPEEK(Poly Ether Ether Ketone)などの剥離性や摺動性の高い樹脂からなることが好ましい。
【0098】
図14に示すように、変形例3に係る保護チューブ10は、保護チューブ挿入工程において、変形例1に係る保護チューブ8と同様に保護チューブ10を挿入した後、樹脂チューブ80の先端からさらに押出しチューブ100を押し出して延伸する。
【0099】
このとき、押出しチューブ100は、扁平な形に癖が付けられているため、扁平な弱軸方向に曲がり易く、しかも、樹脂チューブ80には、曲がり部80aが形成されているため、樹脂チューブ80の先端から押出しチューブ100を押し出すとシース2とPC鋼材4との隙間sに必然的に挿入される。
【0100】
その後、内視鏡挿入工程を行うと、既に押出しチューブ100が隙間sに到達しているため、極めてスムーズに短時間で内視鏡挿入部75を目的のシース2内に挿入することができる。このため、内視鏡挿入部75が鋭利なエッジ部E1に引っ掛かって損傷するおそれを完全に払拭することができる。
【0101】
また、押出しチューブ100をPFAやPEEKなどの剥離性や摺動性の高い樹脂とすることにより、内視鏡挿入部75の挿抜がさらにスムーズに短時間で行うことができる。
【0102】
なお、図13に示すように、押出しチューブ100の先端部101は片側のみに、切欠き部102を除くチューブの肉厚が残っている。隙間sが狭く、樹脂チューブ80の両側の肉厚+押出しチューブ100の両側の肉厚+内視鏡挿入部75を確保できない場合があり得る。しかし、変形例3に係る保護チューブ10によれば、押出しチューブ100を押し出して、先端部101の片側のみを鋭利なエッジ部E1に接触する部分に位置させ、内視鏡挿入部75の挿抜を行うことができる。このため、この点でも内視鏡挿入部75の損傷を防ぐことができる。
【0103】
[保護チューブの変形例4]
次に、図15図16を用いて、変形例4に係る保護チューブ11について説明する。図15(a)は、変形例4に係る保護チューブ11を示す斜視図であり、図15(b)は、変形例4に係る保護チューブ11のさらに変形例に係る保護チューブ11’を示す斜視図である。また、図16は、変形例4に係る保護チューブ11の使用状態をシース2や観察用孔H1を透視して示す透視斜視図である。
【0104】
変形例4に係る保護チューブ11は、樹脂チューブ80と同様に可撓性及び弾力性を有する樹脂製の樹脂チューブ110と、この樹脂チューブ110に内嵌されたスパイラル鋼線81(図示せず)を備えている。
【0105】
図15(a)に示すように、樹脂チューブ110は、ガイド手段として先端に上面(中心軸から片面)を切り欠いて除去した上面除去部110aを有している。また、上面除去部110aの除去された上面の端部(先端)には、V字状に切り欠かれた凹溝110bが形成されている。但し、凹溝110bは、図示したV字状に限られず、円弧状、矩形状、に切り欠かれた凹溝であっても構わない。要するに、凹溝110bの形状は、内視鏡挿入部75のサイズに応じて、先端部76で押し開いて内視鏡挿入部75を挿通できるスペースを確保できる形状であればよい。
【0106】
図16に示すように、変形例4に係る保護チューブ11は、保護チューブ挿入工程において、観察用孔H1から樹脂チューブ110の先端がPC鋼材4に当接するまで挿通される。そして、さらに保護チューブ11を押し込むと、上面除去部110aが存在するため、樹脂チューブ110の先端が、図16に示すように、PC鋼材4に沿って折り曲げられて、上面除去部110aが立ち上がることとなる。
【0107】
その後、内視鏡挿入工程において、内視鏡挿入部75を挿通する。このとき、凹溝110bの存在により、内視鏡挿入部75および先端部76が上方に立ち上がり易いだけでなく、上面除去部110aがPC鋼材4に沿って存在するため、内視鏡挿入部75をさらに奥に挿入し易い。
【0108】
また、内視鏡挿入部75を引き抜く場合にも、スパイラル鋼線81の存在により、エッジ部E1に内視鏡挿入部75が引っ掛かって損傷するおそれを低減することができる。
【0109】
なお、図15(b)に示すように、変形例4に係る保護チューブ11は、上面除去部110aの上面に沿って切り込みとなるスリット110cを形成した樹脂チューブ110’(保護チューブ11’)として、凹溝110bのある上面部分が開いて上面除去部110aと違う挙動を示すようにしてもよい。
【0110】
このように構成することにより、保護チューブ11’は、保護チューブ挿入工程において、上面除去部110aがPC鋼材4に沿って折り曲げられるだけでなく、さらに樹脂チューブ110’を押し込むことにより、凹溝110bのある上面部分も一部PC鋼材4に沿って折り曲げられる。このため、保護チューブ11’によれば、凹溝110bのある上面部分で前述の鋭利なエッジ部E1をカバーして、挿抜の際に内視鏡挿入部75が損傷することを防ぐことができる。
【0111】
なお、保護チューブ11及び保護チューブ11’も、樹脂チューブ110,110’をPFAやPEEKなどの剥離性や摺動性の高い樹脂とすることにより、内視鏡挿入部75の挿抜をさらにスムーズに短時間で行うことができる。
【0112】
[保護チューブの変形例5]
次に、図17図19を用いて、変形例5に係る保護チューブ12について説明する。図17は、変形例5に係る保護チューブ12を示す斜視図であり、図18は、変形例5に係る保護チューブ12の構成を示す分解斜視図である。
【0113】
変形例5に係る保護チューブ12は、図17に示すように、主に、外チューブ120と、内チューブ121とを備える互いにスライド自在に構成された挿抜自在の二重管構造のチューブとなっている。また、外チューブ120には、観察用孔H1に差し込んで固定するための円錐台状の固定部材122が装着されている。
【0114】
(外チューブ)
この外チューブ120は、図18に示すように、先端部に位置した、可撓性のある柔軟性、弾力性の高い樹脂からなる柔軟部123と、後端部に位置した、柔軟性を有していない硬質樹脂等からなる円筒状のリジット部124など、から構成されている。また、リジット部124の後端部には、リング状の取っ手部125が嵌着されている。このため、取っ手部125で内チューブ121に対して相対的に進退動させること、及び保護チューブ12の観察用孔H1内での回転動が容易となっている。
【0115】
この柔軟部123には、先端に上面(中心軸から片面)を切り欠いて除去した上面除去部123aが形成されている。また、図18に示すように、この上面除去部123aの下面は、ガイド手段として設けられた、先端に行くにしたがって上方(切欠き側)に僅かにカールした曲面となっている。
【0116】
また、図18に示すように、外チューブ120のリジット部124の後端部には、固定ねじ129を挿通して、内チューブ121の外チューブ120に対する相対的なスライド移動(進退動)を自在とするための長孔124aが形成されている。
【0117】
(内チューブ)
内チューブ121も、図18に示すように、先端部に位置した、可撓性のある柔軟性の高い樹脂からなる柔軟部126と、後端部に位置した、柔軟性を有していない硬質樹脂等からなる円筒状のリジット部127など、から構成されている。また、リジット部127の後端には、円筒状の取っ手部128が接続されている。
【0118】
この柔軟部126には、先端にした面(中心軸から片面)を切り欠いて除去した下面除去部126aが形成されている。また、図18に示すように、この下面除去部126aの上面は、先端に行くにしたがって上方(切欠きと反対側)に僅かにカールした曲面となっている。
【0119】
また、図18に示すように、内チューブ121のリジット部127の後端部には、固定ねじ129を止付ける雌ねじ部127aが形成されている。長孔124aを介して固定ねじ129を内チューブ121に固定するためである。このため、長孔124aで外チューブ120の内チューブ121に対する相対的なスライド移動(進退動)を自在となっているとともに、外チューブ120と内チューブ121の相対的な回転動は拘束される。よって、保護チューブ12を観察用孔H1内で回転させても上面除去部123aと下面除去部126aの位置関係が変わることがない(図17参照)反面、相対的なスライド移動(進退動)は自在である。
【0120】
次に、図19を用いて、この変形例5に係る保護チューブ12の使用方法及び保護チューブ12を用いたシース内観察方法について説明する。図19は、変形例5に係る保護チューブ12の使用方法を示す模式断面図であり、(a)が保護チューブ12の挿入時を示し、(b)が保護チューブ12の撤去時を示している。
【0121】
変形例5に係る保護チューブ12は、保護チューブ挿入工程において、観察用孔H1から外チューブ120の先端である上面除去部123aがPC鋼材4に当接するまで挿通され、固定部材122で観察用孔H1に固定される。その後、さらに外チューブ120を前進させ、図19(a)に示すように、上面除去部123aの下面のカーブによりPC鋼材4に沿って上面除去部123aが立ち上がるまで挿入する。
【0122】
そして、内視鏡挿入工程において、内視鏡挿入部75を挿通する。このとき、上面除去部123aの存在により、内視鏡挿入部75の先端部76がPC鋼材4に沿って上方に立ち上がり易く、容易に短時間で内視鏡挿入部75をPC鋼材4とシース2との隙間sに挿入することができる。
【0123】
その後、シース内観察を行った後、内視鏡挿入部75を撤去する際には、外チューブ120を後退させ、代わりに内チューブ121を前進させる。すると、図19(b)に示すように、エッジ部E1を内チューブ121の下面除去部126aが覆うようになる。このとき、下面除去部126aの上面は、先端に行くにしたがって上方に僅かにカールした曲面となっているので、下面除去部126aがエッジ部E1を超えて隙間sに到達すると癖に従って立ち上がるため、鋭利なエッジ部E1を内チューブ121でカバーすることができる。このため、内視鏡挿入部75を引き抜く際に、内視鏡挿入部75が損傷することを確実に防ぐことができる。
【0124】
[保護チューブの変形例6]
次に、図20を用いて、変形例6に係る保護チューブ13について説明する。図20は、変形例6に係る保護チューブ13を示す斜視図であり、(a)がレバーで先端を引き上げる前を示し、(b)がレバーで先端を引き上げた状態を示している。
【0125】
変形例6に係る保護チューブ13は、図20(a)に示すように、主に、断面矩形の外管130と、この外管130内をスライド自在な可撓性を有する一枚の板材からなるスライドバー131と、を備えている。このため、保護チューブ13は、外管130に対してスライドバー131がスライド自在となっている。
【0126】
(外管)
外管130は、柔軟性を有していない硬質樹脂や金属等からなる上下方向に厚みが薄い扁平な長方形状の軸方向を長手方向とする角筒状の部材である。
【0127】
そして、外管130の後端には、後述の突起レバーを挿通する長手方向に長い長孔130aが形成されている。
【0128】
(スライドバー)
スライドバー131は、ガイド手段として設けられた扁平部材であり、可撓性を有した樹脂や金属などからなる一枚の帯状の板材又はシート材から二つ折りにされた部材である。
【0129】
このスライドバー131の先端は、板材又はシート材が二つ折りにされた部分となっており、折り曲げられた部分に、内視鏡挿入部75及び先端部76を挿通する内視鏡孔131aが形成されている。
【0130】
そして、このスライドバー131の後端部の上面には、スライドバー131をスライドさせる突起レバー131bが突設されている。
【0131】
変形例6に係る保護チューブ13は、保護チューブ挿入工程において、観察用孔H1から保護チューブ13を挿入し、スライドバー131の先端である二つ折りにされた部分がPC鋼材4に当接するまで押し込まれる。
【0132】
その後、スライドバー131の後端部の突起レバー131bを後方に引っ張って二つ折りのスライドバー131の上板をずらすことで、図20(a)に示すように、スライドバー131の先端を上方に持ち上げる。これにより、内視鏡挿入部75がPC鋼材4とシース2との隙間sに挿入し易くなり、内視鏡挿入工程を容易に短時間で完了させることができる。
【0133】
勿論、保護チューブ挿入工程と内視鏡挿入工程を同時に行って、内視鏡挿入部75及び先端部76を内視鏡孔131aに挿入した状態で保護チューブ13を観察用孔H1に挿入してもよい。
【0134】
変形例6に係る保護チューブ13によれば、内視鏡挿入部75の両側に、二つ折りのスライドバー131の上板及び下板が存在するので、内視鏡挿入部75が、周囲のエッジ部E1やPC鋼材4及びシース2と接触した擦れるおそれがなく、高価な内視鏡の内視鏡挿入部75の損耗を最小限に抑えることができる。
【0135】
[保護チューブ(保護部材)の変形例7]
次に、図21を用いて、変形例7に係る保護チューブ(保護部材)14について説明する。但し、変形例7に係る保護チューブは、チューブ状となっていないため、以下、保護部材14という。図21は、変形例7に係る保護部材14をシース2や観察用孔H1を透視して示す透視斜視図である。
【0136】
図21に示すように、保護部材14は、下板140と上板141など、から構成されている。下板140及び上板141は、硬質樹脂や金属などからなる板材であり、内視鏡挿入部75が挿通される内面(図示状態の下板140の上面、上板141の下面)は、下板140と上板141との間に内視鏡挿入部75を挟み込むように、内視鏡挿入部75の断面形状に応じた円弧状に形成されている。
【0137】
この下板140の先端には、ガイド手段として先端に行くにしたがって上方(内視鏡挿入部75側)にカールした曲面部140aが形成されている。
【0138】
また、上板141の先端には、内視鏡挿入部75の断面形状に応じた円弧状に切り欠かれた切欠き部141aが形成されている。
【0139】
変形例7に係る保護部材14の使用方法は、保護チューブ挿入工程として、観察用孔H1から下板140を挿入し、続けて、内視鏡挿入工程として、下板140の上面の円弧状の曲面形状及び曲面部140aに沿ってガイドさせつつ内視鏡挿入部75を挿入する。
【0140】
そして、保護部材14は、シース内観察を行った後、内視鏡挿入部75を撤去する際には、先ず、下板140を引き抜き、観察用孔H1から上板141を挿入し、上板141の切欠き部141aで内視鏡挿入部75のエッジ部E1側を押圧しつつ内視鏡挿入部75を撤去する。勿論、PC鋼材4とシース2の隙間sに余裕がある場合は、下板140を引き抜かず、存置したまま上板141を挿入し、上板141の切欠き部141aで押圧してもよいことは云うまでもない。
【0141】
変形例7に係る保護部材14によれば、下板140の曲面部140aでガイドさせつつ内視鏡挿入部75を挿入するので、狭隘なPC鋼材4とシース2の隙間sに容易に短時間で内視鏡挿入部75を挿入することができる。
【0142】
また、保護部材14によれば、内視鏡挿入部75を引き抜くときも、切欠き部141aで内視鏡挿入部75のエッジ部E1側を押圧しつつ引き抜くので、高価な内視鏡の内視鏡挿入部75の損耗を防ぐことができる。
【0143】
[保護チューブの変形例8]
次に、図22図23を用いて、変形例8に係る保護チューブ15について説明する。図22は、変形例8に係る保護チューブ15をシース2や観察用孔H1を透視して示す透視斜視図であり、図23は、変形例8に係る保護チューブ15を観察用孔H1に挿入した状態を観察用孔H1に沿って切断して示す断面図である。
【0144】
図22図23に示すように、保護チューブ15は、観察用孔H1に固定するための固定用管150と、この固定用管150に内嵌されて軸中心に回転可能なガイド手段である挿入用管151など、から構成されている。また、固定用管150と挿入用管151は、連結部153で回転可能に連結されている。
【0145】
固定用管150は、観察用孔H1の径より少し小さい外径からなる円筒体を基体とし、その外周からリング状のフランジ150aが突設されている。このフランジ150aは、図23に示すように、観察用孔H1の外面の縁に当接することで保護チューブ15を固定する機能を有している。
【0146】
挿入用管151は、固定用管150の内径と略同径の外径からなる管体であり、先端に軸から上半分を切り欠いた切欠き部151aが形成されている。この切欠き部151aの先端からの長さL1は、PC鋼材4とシース2との隙間sより少し長く設定されている。
【0147】
この挿入用管151の後端部には、リング状の取っ手152が固定ねじN1でねじ止め固定されている。このリング状の取っ手152には、円筒状の前端筒部152aが突設され、この前端筒部152aには、前端筒部152aを一周するリング状のリング溝152bが形成されている。
【0148】
そして、リング溝152bには、固定用管150の外からピンP1が差し込まれ、リング溝152bに当接することで、固定用管150と挿入用管151とを連結する連結部153が構成されている。
【0149】
変形例8に係る保護チューブ15は、先ず、保護チューブ挿入工程において、観察用孔H1に挿入して固定用管150のフランジ150aを観察用孔H1の外面の縁に当接するまで前進して観察用孔H1に固定用管150を固定する。
【0150】
その後、図23に示すように、挿入用管151の先端がPC鋼材4に当接するまで挿入用管151を前進させる。そして、取っ手152を切欠き部151aに応じて固定ねじN1で固定する。固定ねじN1の位置は、切欠き部151aに合わせる。
【0151】
そして、取っ手152を回すことで、固定ねじN1の位置を見ながら切欠き部151aの位置合わせを行う。このとき、切欠き部151aは、斜め上方を向くようにする。この状態で内視鏡挿入部75を切欠き部151aから挿入し、先端部76が少し出たところで挿入用管151を回転させて切欠き部151aを用いて先端部76をPC鋼材4とシース2との隙間sに押し出す。
【0152】
図24は、内視鏡の差し込み方の違いによる曲率半径の違いを説明する図であり、(a)が内視鏡を鉛直上方に差し込む場合を示し、(b)が内視鏡を水平方向に傾けて上方に差し込む場合を示している。
【0153】
図24(a)に示すように、先端部76を鉛直に持ち上げた場合の曲率をR1とすると、図24(b)に示すように、先端部76を水平方向に傾けて上方に差し込む場合の曲率はR2となる。このとき、R2>R1であり、上記のように内視鏡挿入部75を挿入することで内視鏡挿入部75にかかる負担が小さくなり、内視鏡挿入部75及び先端部76をスムーズにPC鋼材4とシース2との隙間sに挿入することができる。このため、変形例8に係る保護チューブ15によれば、狭隘なPC鋼材4とシース2の隙間sに容易に短時間で内視鏡挿入部75を挿入することができる。
【0154】
また、反対に内視鏡挿入部75を引き抜くときも、内視鏡挿入部75の位置に応じて挿入用管151を回転させて切欠き部151aの位置を調整し、抜き易くする。このため、変形例8に係る保護チューブ15によれば、内視鏡挿入部75を引き抜くときも、内視鏡挿入部75の損耗を防ぐことができる。
【0155】
[保護チューブの変形例9]
次に、図25図26を用いて、変形例9に係る保護チューブ16について説明する。図25は、変形例9に係る保護チューブ16を示す斜視図であり、図26は、変形例9に係る保護チューブ16を観察用孔H1に挿入した状態を観察用孔H1に沿って切断して示す断面図である。
【0156】
図25図26に示すように、保護チューブ16は、外チューブ160と、内チューブ161とを備える互いにスライド自在に構成された挿抜自在の二重管構造のチューブとなっている。
【0157】
(外チューブ)
外チューブ160は、図25に示すように、可撓性のある柔軟性、弾力性の高い樹脂からなるチューブであり、ガイド手段として先端が花びら状に切り開かれて拡径した拡径部160aが形成されている。
【0158】
また、外チューブ160は、軸方向に沿ってチューブの外周が直線状に切断されてスリット160bが形成されている。
【0159】
(内チューブ)
内チューブ161は、外チューブ160の内嵌される外径を有するチューブであり、可撓性、柔軟性、弾力性を特になくても構わない。また、観察用孔H1が短く、外チューブ160だけでシース2に到達する場合は、設けなくてもよい。
【0160】
変形例9に係る保護チューブ16は、図26に示すように、保護チューブ挿入工程において、外チューブ160の外径と略同径の内径を有する観察用孔H1から外チューブ160を挿入する。外チューブ160がシース2内の隙間sまで到達すると、外チューブ160の弾力性により拡径部160aが開き、シース2が観察用孔H1の削孔時に切り開かれた鋭利なエッジ部E1を覆うようになる。
【0161】
このとき、外チューブ160には、スリット160bが形成されているため、外チューブ160の外径と略同径の内径を有する観察用孔H1から外チューブ160を挿入する場合でも、拡径部160aをスムーズに観察用孔H1内を通過させることができる。
【0162】
その後、内視鏡挿入工程で内視鏡挿入部75を挿入する場合、及びシース内観察を行った後、内視鏡挿入部75を撤去する場合も、エッジ部E1を弾力性のある拡径部160aが覆っているため、内視鏡挿入部75を損傷するおそれが少ない。
【0163】
[保護チューブの変形例10]
次に、図27図28を用いて、変形例10に係る保護チューブ17について説明する。図27は、変形例10に係る保護チューブ17を観察用孔H1に挿入した状態を観察用孔H1に沿って切断して示す断面図であり、図28は、変形例10に係る保護チューブ17を示す分解斜視図である。
【0164】
図27図28に示すように、変形例10に係る保護チューブ17は、チューブ本体170と、そのチューブ本体170の先端に着脱自在に装着された先端アダプター171など、から構成されている。
【0165】
チューブ本体170は、観察用孔H1の径と略同径の円筒体からなる外管173と、この外管173内に偏芯して挿入された外管173の径より小さい径の内管174など、から構成され、外管173と内管174とが金属製の先端口金172で連結されている。
【0166】
先端アダプター171は、ガイド手段として設けられた、先端に行くにしたがってなだらかにカーブして上昇し、先端部76を誘導する傾斜面であるガイド斜面171aが形成されている。また、先端アダプター171の上面には、内視鏡挿入部75を挿通する開口171bが形成されている。そして、先端アダプター171の開口171bが設けられている面は、装着時にチューブ本体170の上端から離間距離がとられるようにセットバックした形状となっている。
【0167】
また、先端アダプター171は、内視鏡挿入部75を挿入するシース2とPC鋼材4との隙間sの大きさや内視鏡挿入部75及び先端部76の形状等に応じてガイド斜面171aの傾斜角度や開口171bの大きさが違う物を用意し、適宜交換して使用する。
【0168】
変形例10に係る保護チューブ17は、図27に示すように、保護チューブ挿入工程において、観察用孔H1から保護チューブ17を挿入し、チューブ本体170の先端に装着された先端アダプター171をPC鋼材4に当接させる。
【0169】
その後、内視鏡挿入工程で先端アダプター171の開口171bから内視鏡挿入部75をシース2とPC鋼材4との隙間sに挿通する。このとき、先端アダプター171には、前述のガイド斜面171aが形成されているので、内視鏡挿入部75及び先端部76をガイド斜面171aに沿ってガイドして隙間s内に誘導することができる。このため、変形例10に係る保護チューブ17によれば、内視鏡挿入工程における作業効率を向上させることができる。
【0170】
以上、本発明の実施形態に係る内視鏡を用いたシース内観察方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0171】
特に、シース2やPC鋼材4が鉛直方向に挿通されている場合を例示して説明したが、この場合に限られない。シース2やPC鋼材4が鉛直方向に挿通された狭い隙間に、内視鏡挿入部75を鉛直上方に挿通する場合が最も内視鏡挿入部75を隙間に挿通することが困難であるため、その場合を例示したまでである。
【符号の説明】
【0172】
1:PC構造物
2:シース
3:グラウト未充填部
4:PC鋼材
E1:エッジ部
s:隙間
5,8~17:保護チューブ(保護部材)
50,80:樹脂チューブ
51,81:スパイラル鋼線(スパイラル金属線)
6:導入管
6a:先端カーブ
7:ビデオスコープユニット(内視鏡)
70:内視鏡操作部
71:モニター部
72:ユニバーサルケーブル(ケーブル)
73:操作コントローラ部
74:湾曲部操作部
75: 内視鏡挿入部
76:先端部
77:湾曲部
78:LED照明
79:対物レンズ
80a:曲がり部
80b:切欠き部
82:リジットパイプ
83:固定治具
84:口金
90:外管
100:押出しチューブ
101:先端部
102:切欠き部
110,110’:樹脂チューブ
110a:上面除去部
110b:凹溝
110c:スリット
120:外チューブ
121:内チューブ
122:固定部材
123:柔軟部
123a:上面除去部
124:リジット部
124a:長孔
125:取っ手部
126:柔軟部
126a:下面除去部
127:リジット部
127a:雌ねじ部
128:取っ手部
129:固定ねじ
130:外管
130a:長孔
131:スライドバー
131a:内視鏡孔
131b:突起レバー
140:下板
140a:曲面部
141:上板
141a:切欠き部
150:固定用管
150a:フランジ
151:挿入用管
151a:切欠き部
152:取っ手
152a:前端筒部
152b:リング溝
153:連結部
160:外チューブ
160a:拡径部
160b:スリット
161:内チューブ
170:チューブ本体
171:先端アダプター
171a:ガイド斜面
171b:開口
172:先端口金
173:外管
174:内管
H1:観察用孔
H2:注入孔
H3:排出孔
N1:固定ねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28