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特開2022-59971畦畔覆設ユニット、畦畔構造体、及び、畦畔覆設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059971
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】畦畔覆設ユニット、畦畔構造体、及び、畦畔覆設方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 13/00 20060101AFI20220407BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
E02B13/00 302
E02D17/20 103
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167907
(22)【出願日】2020-10-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】502281921
【氏名又は名称】森田 善己
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】森田 善己
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DB00
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で施工が容易でありながら、長期堅牢な法面壁部を形成可能な畦畔覆設ユニット、畦畔構造体、及び、畦畔覆設方法を提供する。
【解決手段】畦畔構造体1は、畦畔基礎部2及び畦畔覆設ユニット3を備える。畦畔基礎部2は、水田P1・P2に隣接して所定の高さで盛土あるいは切土して形成され、天部21及び天部21から水田P1・P2の方向に下り傾斜する水田側法面部22・23を有する。畦畔覆設ユニット3は、水田側法面部22に覆設されたパネル体31、天部21に設置され、パネル体31の上端位置を天部21近傍で固定した第1固定部材32、及び、水田側法面部22の裾近傍に設置され、パネル体31の下端位置を水田側法面部22の裾近傍に固定した第2固定部材33を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田に隣接して所定の高さで盛土あるいは切土して形成され、天部、及び、該天部から水田の方向に下り傾斜する水田側法面部を有する畦畔に設置され、
前記水田側法面部に覆設するパネル体と、
該パネル体の上端に配置され、同パネル体の上端位置を前記天部近傍に固定する第1固定部材と、
前記パネル体の下端に配置され、同パネル体の下端位置を前記水田側法面部の裾近傍に固定する第2固定部材と、を備える
畦畔覆設ユニット。
【請求項2】
前記パネル体は、設置状態において表面側かつ高さ方向中間となる領域に開口部が形成され、該開口部の奥側に所定広さのポケット部が設けられている
請求項1に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項3】
前記パネル体の開口部は、板厚方向に貫通して形成されており、
前記ポケット部は、正面側のみが開口した箱状のポケット部構成材を、その開口部分が前記パネル体の設置状態において表面側となるように前記パネル体の開口部に嵌め入れて設ける構造である
請求項2に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項4】
前記第1固定部材は、設置状態において下方向となる部分に設けられ、前記パネル体の上端縁が嵌合する第1受け部、及び、設置状態において下方向となる部分に設けられ、前記天部の土壌内に埋入する第1埋入部、を有する構造である
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項5】
前記第1固定部材は、上面が略平坦に形成されると共に、該上面に滑り止め部が設けられている
請求項4に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項6】
前記パネル体は、中空部が形成された押出成形セメント板である
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項7】
前記パネル体は、前記中空部が、表面側内面及び裏面側内面の間に設けた支壁により複数の空間に区画され、該各空間が前記第1固定部材側となる方向から前記第2固定部材側となる方向に向かって形成されると共に、同空間の少なくとも第2固定部材側に開口部が形成された構造であり、
前記第2固定部材が、前記開口部から突出した所定長さの杭状部材である
請求項6に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項8】
前記杭状部材は、前記パネル体の前記第2固定部材側に形成された前記開口部を介して前記中空部内に嵌着される嵌入部、該嵌入部の反対方向に所定長さで延設され、前記水田側法面部の裾近傍の土壌内に埋入する第2埋入部、及び、該第2埋入部と前記嵌入部の間に設けられ、前記パネル体の前記開口部口縁で係止可能な係止部、を有する構造である
請求項7に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項9】
前記第2埋入部は、嵌入部よりも幅広な形状であり、表面積を拡大させる加工が成されている
請求項8に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項10】
前記第2固定部材は、水田側法面部の裾近傍の土壌上面に設置される態様であり、設置状態において上方向となる部分に設けられ、前記パネル体の下端縁が嵌合する第2受け部、及び、設置状態において下方向となる部分に設けられ、前記水田側法面部の裾近傍の土壌内に埋入する第2埋入部、を有する構造である
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項11】
水田に隣接して所定の高さで盛土あるいは切土して形成され、天部、及び、該天部から水田の方向に下り傾斜する水田側法面部を有する、畦畔基礎部と、
前記水田側法面部に覆設されたパネル体、前記天部に設置され、該パネル体の上端位置を同天部近傍で固定した第1固定部材、及び、前記水田側法面部の裾近傍に設置され、前記パネル体の下端位置を同水田側法面部の裾近傍に固定した第2固定部材を有する、畦畔覆設ユニットと、を備える
畦畔構造体。
【請求項12】
水田に隣接して、天部、及び、該天部から水田の方向に下り傾斜する水田側法面部を有する所定の高さの盛土あるいは切土を形成する畦畔基礎部形成工程と、
該畦畔基礎部形成工程により形成された前記水田側法面部をパネル体で覆設する法面覆設ステップ、前記パネル体の上端位置を前記天部近傍で固定可能な第1固定部材を同天部に設置する第1固定部材設置ステップ、及び、前記パネル体の下端位置を前記水田側法面部の裾近傍で固定可能な第2固定部材を同水田側法面部に設置する第2固定部材設置ステップ、を有する、水田側法面壁部形成工程と、を備える
畦畔覆設方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦畔覆設ユニット、畦畔構造体、畦畔構造体、及び、畦畔覆設方法に関する。詳しくは、簡易な構造で施工が容易でありながら、長期堅牢な法面壁部を形成可能な畦畔覆設ユニット、畦畔構造体、及び、畦畔覆設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水田の周囲には盛土による「あぜ(以下「畦畔」)」が形成されている。畦畔は、水田の湛水の漏出防止や、区画の境界、通路等としての用途に使用されている。そして、畦畔は、水田側の法面における雑草の繁殖抑止、補強、防水等のために「畦塗り」を行うことが一般的である。
【0003】
畦塗りは、水田の周囲の土や盛土の一部を水と混練して塗布し、法面に泥壁を形成するのであるが、手間と労力を要する作業であるため、従来は近所の農家等と協同して行うことが多かった。なお、畦塗りは、田植えの前のみならず、破損した際にも行われる。しかしながら、近年、農業従事者の減少化及び高齢化が進んでおり、高齢者が単独又は少人数で、通常の農作業のほかに、畦塗り作業を繰り返し行うことは作業負担が大きい。
【0004】
このような課題を解決する一手段として、例えば、下記特許文献1に記載されているような畦畔等の保護構造が提案されている。当該畦畔等の保護構造は、柔軟性を備えたシート状のカバー部材と、所定長さの受け棒体と、上部に受け棒体の抱持部を備えた止着板とで構成し、止着板を保護対象の裾部分の土中に差し入れると共に、保護対象面を被覆したカバー部材の端部に受け棒体を添わせて、抱持部内に受け棒体を圧入し、カバー部材を挟持してなることを特徴としている。
【0005】
特許文献1記載の畦畔等の保護構造は、前述したカバー部材の採用によって、畦塗りよりも施工が容易でありながら、畦畔形状に制限を受けることが無く、しかもカバー部材の止着が線支持であって、しっかりと止められ、風に対する耐力も優れ、且つ止着板による止水機能も発揮できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-052452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、特許文献1記載の畦畔等の保護構造は、畦畔等を覆う部分が柔軟性を備えたシート状のカバー部材であるため耐久性に乏しく、例えば、作業機械の通過や接触、作業者の使用する農具や歩行(単なる畦畔通行者も含む)による接触、又は、害鳥獣(爬虫類、虫類も含む)によって、破損あるいは磨損する可能性が高い。そして、カバー部材の材料的性質から、破損箇所が拡大し、破損箇所からの浸水に起因して法面の変形崩壊が生じる可能性がある。
【0008】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、簡易な構造で施工が容易でありながら、長期堅牢な法面壁部を形成可能な畦畔覆設ユニット、畦畔構造体、及び、畦畔覆設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の畦畔覆設ユニットは、水田に隣接して所定の高さで盛土あるいは切土して形成され、天部、及び、該天部から水田の方向に下り傾斜する水田側法面部を有する畦畔に設置され、前記水田側法面部に覆設するパネル体と、該パネル体の上端に配置され、同パネル体の上端位置を前記天部近傍に固定する第1固定部材と、前記パネル体の下端に配置され、同パネル体の下端位置を前記水田側法面部の裾近傍に固定する第2固定部材と、を備える。
【0010】
ここで、パネル体は、水田側法面部の表面を覆うことができる。これにより、水田側法面部が直接的に破損あるいは崩壊することを抑止できる(法面保護)と共に、雑草の繁殖を抑えて作業負担の軽減を図ることができる。
【0011】
第1固定部材は、安定的にパネル体の上端位置を天部近傍に固定することができる。また、第2固定部材は、安定的にパネル体の下端位置を水田側法面部の裾近傍に固定することができる。つまり、第1固定部材及び第2固定部材は、協働してパネル体が水田側法面部に固定し離脱することを抑制することができる。
【0012】
なお、パネル体は、その下端を水田側法面部の裾近傍の土壌上面に位置させる態様であってもよいし、その下端を水田側法面部の裾近傍の土壌中に所定の深さで位置させる(土壌中に埋入させる)態様であってもよい
【0013】
また、パネル体が、設置状態において表面側かつ高さ方向中間となる領域に開口部が形成され、開口部の奥側に所定広さのポケット部が設けられている場合は、ポケット部の各種利用が可能となる。例えば、ポケット部は、水田側法面部の昇降をする際に足先や手を入れることで、手がかり足がかりとして利用することができる。また、ポケット部は、水位センサーの設置箇所としても使用することができる。
【0014】
また、パネル体の開口部が、板厚方向に貫通して形成されており、ポケット部は、正面側のみが開口した箱状のポケット部構成材を、その開口部分がパネル体の設置状態において表面側となるようにパネル体の開口部に嵌め入れて設ける構造である場合は、パネル体とポケット部構成材とを分けて製造し、現場で組み立てる態様とすることができる。これにより、パネル体の製造工程を簡易化することができ、製造コストの低減化を図ることができる。また、ポケット部構成材が別部材であるため、用途に合わせて適宜形状等を改変又は選択することで汎用性が向上し、多用途に対応することができる。加えて、用途別の形状であるポケット部が形成されたパネル体(全体)を製造せずに済むため、製造工場における多品種製造の必要が無く、製造コスト低減化を図ることができる。
【0015】
また、第1固定部材が、設置状態において下方向となる部分に設けられ、パネル体の上端縁が嵌合する第1受け部、及び、設置状態において下方向となる部分に設けられ、天部の土壌内に埋入する第1埋入部、を有する構造である場合は、効率良くかつ安定的にパネル体の上端位置を天部近傍に固定することができる。
【0016】
詳しくは、第1受け部は、これにパネル体の上端縁を嵌合させるだけで、第1固定部材とパネル体の上端縁の固定を成すことができる。そして、第1埋入部は、これを天部の土壌中に埋入させることで、天部に第1固定部材が安定的に支持される。天部に安定的に支持された第1固定部材は、パネル体が水田側法面部から離脱しないように、パネル体上部を保持することになる。
【0017】
また、第1固定部材が、上面が略平坦に形成されると共に、上面に滑り止め部が設けられている場合は、畦畔の天部上を歩行する者や走行する車両が、水田側法面部側へ滑落しにくようにすることができる。
【0018】
また、パネル体が、複数の中空部が形成された押出成形セメント板である場合は、耐腐食性や耐候性と共に、強度を有する法面壁部を構成することができる。そして、同パネル体は、複数の中空部を有し、無垢のセメント板と比較して軽量なため、設置場所までの運搬、設置作業の際に、作業者の負担を軽減することができる。
【0019】
また、パネル体が、中空部が、表面側内面及び裏面側内面の間に設けた支壁により複数の空間に区画され、該各空間が第1固定部材側となる方向から第2固定部材側となる方向に向かって形成されると共に、同空間の少なくとも第2固定部材側に開口部が形成された構造であり、第2固定部材が、前記開口部から突出した所定長さの杭状部材である場合は、パネル体の剛性が向上すると共に、効率良くかつ安定的にパネル体の下端位置を水田側法面部の裾近傍に固定することができる。
【0020】
詳しくは、中空部が前述の支壁によって内側から支えられているため耐圧性が向上し、表面側から又は裏面側からの押圧力により圧壊しにくいようになっている。また、中空部内の各空間が第1固定部材側となる方向から第2固定部材側となる方向に向かって形成されていることから、この空間に前述した第2固定部材(杭状部材)を設けることができる。そして、この空間は、第2固定部材側に開口しているので、開口部を通じて第2固定部材(杭状部材)を突出させることができる。
【0021】
第2固定部材(杭状部材)は、これを水田側法面部の裾近傍の土壌中に埋入させることで、水田側法面部の裾近傍に第2固定部材が安定的に支持される。水田側法面部の裾近傍に安定的に支持された第2固定部材は、パネル体が水田側法面部から離脱しないように、パネル体下部を保持することになる。また、第2固定部材は、杭状部材であることにより、水田側法面部の裾近傍の土壌中に埋入させやすく、効率良く施工することができる。
【0022】
なお、杭状部材は、パネル体と分離可能な構造あるいは一体構造のいずれであってもよく、また、その形状及び構造を特に限定するものではないが、例えば、パネル体と分離可能又は一体的な所定長さの棒体であってもよいし、後述するような、パネル体の開口部から中空部内に嵌着される嵌入部及び水田側法面部の裾近傍の土壌内に埋入する第2埋入部を有する構造であってもよい。
【0023】
また、杭状部材が、パネル体の第2固定部材側に形成された開口部を介して中空部内に嵌着される嵌入部、嵌入部の反対方向に所定長さで延設され、水田側法面部の裾近傍の土壌内に埋入する第2埋入部、及び、第2埋入部と嵌入部の間に設けられ、パネル体の開口部口縁で係止可能な係止部、を有する構造である場合は、パネル体と第2固定部材(杭状部材)とを分けて製造し、現場で組み立てる態様とすることができる。これにより、パネル体の製造工程を簡易化することができ、製造コストの低減化を図ることができる。
【0024】
詳しくは、嵌入部は、パネル体の開口部を介して中空部内に差し入れるだけで簡単に挿着することができるので、組み立て作業が容易である。そして、嵌入部が中空部内に嵌着されるので、軸方向における杭状部材の軸ブレが起きにくく、これにより、杭状部材を水田側法面部の裾近傍の土壌内に埋入させる作業がしやすく、かつ、設置後のパネル体が水田側法面部の左右方向にずれることを抑制することができる。
【0025】
第2埋入部は、これを水田側法面部の裾近傍の土壌中に埋入させることで、水田側法面部の裾近傍に第2固定部材が安定的に支持される。水田側法面部の裾近傍に安定的に支持された第2固定部材は、パネル体が水田側法面部から離脱しないように、パネル体下部を保持することになる。また、第2埋入部は、水田側法面部の裾近傍の土壌中に埋入させやすく、効率良く施工することができる。
【0026】
ところで、パネル体の中空部が長尺であると共に、第2固定部材(杭状部材)の嵌入部が短尺で係止部が無い場合、第2固定部材(杭状部材)をパネル体に取り付ける際あるいは第2固定部材(杭状部材)を土壌中に埋入させる際に、中空部の奥側に嵌入部の先端が当接しないので、第2埋入部までもが中空部に入り込み、所望する第2埋入部の突出長さが確保できない可能性がある。
【0027】
しかしながら、本発明の第2固定部材(杭状部材)は、前述の係止部を有することにより、第2固定部材(杭状部材)をパネル体に取り付ける際等において、第2埋入部が必要以上に中空部内に入らないように、パネル体の開口部口縁で係止することができる。また、係止部が前述の作用効果を奏するので、嵌入部を短尺に設計することが可能となり、杭状部材の全長を短尺化した場合、保管時及び輸送時の省スペース化を図ることができる。
【0028】
また、第2埋入部が、嵌入部よりも幅広な形状であり、表面積を拡大させる加工が成されている場合は、第2埋入部を土壌中に埋入した状態において、第2埋入部の表面と土壌との接触面積を更に拡大して摩擦力を増大させ、パネル体の固定を更に安定的なものすることができる。
【0029】
また、第2固定部材が、水田側法面部の裾近傍の土壌上面に設置される態様であり、設置状態において上方向となる部分に設けられ、パネル体の下端縁が嵌合する第2受け部、及び、設置状態において下方向となる部分に設けられ、水田側法面部の裾近傍の土壌内に埋入する第2埋入部、を有する構造である場合は、同第2固定部材を以てパネル体下端を受け、水田側法面部の裾近傍においてパネル体下部を保持することができる。
【0030】
詳しくは、第2受け部は、パネル体の下端縁を嵌合させるだけでパネル体との接合が成る構造であるため、施工が容易である。そして、第2埋入部は、これを水田側法面部の裾近傍の土壌中に埋入させることで、水田側法面部の裾近傍に第2固定部材が安定的に支持される。水田側法面部の裾近傍に安定的に支持された第2固定部材は、パネル体が水田側法面部から離脱しないように、パネル体下部を保持することになる。
【0031】
上記の目的を達成するために、本発明の畦畔構造体は、水田に隣接して所定の高さで盛土あるいは切土して形成され、天部、及び、天部から水田の方向に下り傾斜する水田側法面部を有する、畦畔基礎部と、水田側法面部に覆設されたパネル体、天部に設置され、パネル体の上端位置を同天部近傍で固定した第1固定部材、及び、水田側法面部の裾近傍に設置され、パネル体の下端位置を同水田側法面部の裾近傍に固定した第2固定部材を有する、畦畔覆設ユニットと、を備える。
【0032】
ここで、畦畔基礎部は、水田に隣接して所定の高さで盛土あるいは切土して形成されていることにより、水田とその隣接地(例えば、他の水田や畑、道路等)とを区画することができる。また、畦畔基礎部の天部は、作業者や車両の通路とすることができる。なお、畦畔基礎部の水田側法面部は、水田に作業者や車両が下りるための通路となり得る。
【0033】
畦畔覆設ユニットは、パネル体を有することによって、水田側法面部の表面を覆うことができる。これにより、水田側法面部が直接的に破損あるいは崩壊することを抑止できる(法面保護)と共に、雑草の繁殖を抑えて作業負担の軽減を図ることができる。
【0034】
畦畔覆設ユニットは、第1固定部材を有することによって、安定的にパネル体の上端位置を天部近傍に固定することができる。また、第2固定部材は、安定的にパネル体の下端位置を水田側法面部の裾近傍に固定することができる。つまり、第1固定部材及び第2固定部材は、協働してパネル体が水田側法面部に固定し離脱することを抑制することができる。
【0035】
上記の目的を達成するために、本発明の畦畔覆設方法は、水田に隣接して、天部、及び、天部から水田の方向に下り傾斜する水田側法面部を有する所定の高さの盛土あるいは切土を形成する畦畔基礎部形成工程と、畦畔基礎部形成工程により形成された水田側法面部をパネル体で覆設する法面覆設ステップ、パネル体の上端位置を天部近傍で固定可能な第1固定部材を同天部に設置する第1固定部材設置ステップ、及び、パネル体の下端位置を水田側法面部の裾近傍で固定可能な第2固定部材を同水田側法面部に設置する第2固定部材設置ステップ、を有する、水田側法面壁部形成工程と、を備える。
【0036】
ここで、畦畔基礎部形成工程は、水田に隣接して、天部、及び、天部から水田の方向に下り傾斜する水田側法面部を有する所定の高さの盛土あるいは切土を形成することができる。
【0037】
水田側法面壁部形成工程は、法面覆設ステップ、第1固定部材設置ステップ、及び、第2固定部材設置ステップを有する。なお、当該3つのステップは、その順番について特に限定するものではない。また、法面覆設ステップ及び第1固定部材設置ステップ、又は、法面覆設ステップ及び第2固定部材設置ステップをほぼ同時に行う態様であってもよい。
【0038】
法面覆設ステップによれば、畦畔基礎部の水田側法面部をパネル体で覆設することができる。これにより、水田側法面部が直接的に破損あるいは崩壊することを抑止できる(法面保護)と共に、雑草の繁殖を抑えて作業負担の軽減を図ることができる。
【0039】
第1固定部材設置ステップによれば、第1固定部材によって安定的にパネル体の上端位置を天部近傍に固定することができる。また、第2固定部材設置ステップによれば、第2固定部材によって安定的にパネル体の下端位置を水田側法面部の裾近傍に固定することができる。つまり、第1固定部材設置ステップ及び第2固定部材設置ステップによれば、第1固定部材及び第2固定部材が協働し、パネル体が水田側法面部に固定し離脱することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の畦畔覆設ユニット、畦畔構造体、及び、畦畔覆設方法によれば、簡易な構造で施工が容易でありながら、長期堅牢な法面壁部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係る畦畔覆設ユニット(第1実施形態)を設置した畦畔構造体の斜視説明図である。
図2図1の畦畔構造体の幅方向縦断面を示しており、(a)は同畦畔覆設ユニットによる畦畔覆設方法を示す分解説明図であり、(b)は同畦畔覆設ユニットが設置された畦畔構造体の幅方向断面図である。
図3図1に示す畦畔覆設ユニットの変形例(変形例1)を示しており、(a)は同畦畔覆設ユニットによる畦畔覆設方法を示す分解説明図であり、(b)は同畦畔覆設ユニットが設置された畦畔構造体の幅方向縦断面図である。
図4】本発明に係る畦畔覆設ユニットの他の実施形態(第2実施形態)を設置した畦畔構造体の幅方向縦断面であって、畦畔覆設ユニットに係るパネル体の組み立て前後を示しており、(a)は同畦畔覆設ユニットに係るパネル体及び第2固定部材の設置工程を示す説明図であり、(b)は(a)で設置されたパネル体上端位置に第1固定部材を設置する工程を示す説明図であり、(c)は同畦畔覆設ユニットが設置された畦畔構造体の幅方向縦断面図である。
図5図4に示す畦畔覆設ユニットの構成部材を示しており、(a)はパネル体の端面形状を示す平面図であり、(b)は(a)のパネル体と第2固定部材を組み合わせた状態を示す正面図であり、(c)は第2固定部材の正面、平面、底面、左側面を示す四面図である。
図6】本発明に係る畦畔覆設ユニット(第3実施形態)を設置した畦畔構造体を示しており、(a)は同畦畔覆設ユニットを設置した畦畔構造体の幅方向縦断面図であり、(b)は(a)の畦畔覆設ユニットに係るパネル体と第2固定部材(第1例)を組み合わせた状態を示す平面図であり、(c)は同第2固定部材の他の例(第2例)を組み合わせた状態を示す平面図である。
図7】本発明に係る畦畔覆設ユニット(第4実施形態)を設置した畦畔構造体の斜視説明図である。
図8図7の畦畔覆設ユニットに係るパネル体の組み立て前後を示す斜視説明図である。
図9図6に示す畦畔覆設ユニットの変形例(変形例2)を示しており、(a)は同畦畔覆設ユニットが設置された畦畔構造体の幅方向縦断面図であり、(b)は(a)の畦畔覆設ユニットに係るパネル体と第2固定部材(第1例)を組み合わせた状態を示す平面図であり、(c)は他の第2固定部材(第2例)を組み合わせた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1図9を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。なお、以下の説明は、本発明の第1実施形態、変形例1、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、変形例2の順序により行う。また、図面各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。
【0043】
〔第1実施形態〕
(畦畔構造体1)
図1図2を参照して、本発明の一実施形態(第1実施形態)である畦畔構造体1について説明する。畦畔構造体1は、水田P1と水田P2を区切るように設置され、畦畔基礎部2と畦畔覆設ユニット3を備える。各部については以下詳述する。
【0044】
(畦畔基礎部2)
畦畔基礎部2は、水田P1及びP2に隣接して所定の高さで盛土あるいは切土して形成されている。畦畔基礎部2は、盛土の場合は設置箇所に係る水田P1、P2の土壌を利用してもよく、盛土あるいは切土のいずれの場合も、横断面視で台形状になるように締め固めて形成されている。
【0045】
畦畔基礎部2は、その上面を構成し、畦畔基礎部2の長手方向に略平坦な天部21、天部21から水田P1の方向に下り傾斜して形成された水田側法面部22、及び、天部21から水田P2の方向に下り傾斜する水田側法面部23を有する。天部21の水田側法面部22側の角部分には、天部21の長手方向に沿って切り欠かれた上段部210が形成されている。
【0046】
(畦畔覆設ユニット3)
畦畔覆設ユニット3は、パネル体31、第1固定部材32及び第2固定部材33を有し、これらの組み合わせにより構成されている。パネル体31、第1固定部材32及び第2固定部材33は、コンクリート二次製品である。
【0047】
パネル体31は、水田側法面部22を覆設する部材であり、上下端面に形成された複数の開口部と連通する中空部(符号省略)が形成された押出成形セメント板である。より詳しくは、パネル体31は、中空部が、表面側内面及び裏面側内面の間に設けた支壁により複数の空間に区画されている。そして、この各空間は、第1固定部材32側となる方向から第2固定部材33側となる方向(換言すると設置時における上下方向)に向かって形成されると共に、上下端面が開口した構造である。なお、パネル体31の長辺及び短辺の寸法は、設置される水田側法面部22の広さに応じて適宜設定される。
【0048】
第1固定部材32は、天部21(より詳しくは上段部210)に設置し、パネル体31の上端位置を天部21近傍で固定する部材であり、第1受け部321、及び、第1埋入部322、を有する構造である。また、第1固定部材32は、その上面が略平坦に形成され、上面の長手方向に亘る複数条の滑り止め部323が設けられている。
【0049】
第1受け部321は、設置状態において第1固定部材32の下面となる部分に設けられてパネル体31の上端縁が嵌合する、凹条溝である。
【0050】
第1埋入部322は、天部21の土壌内に埋入する部分であり、第1受け部321と同じ面において第1受け部321近傍かつ平行に設けられた2条の凸条から成り、各凸条は所定間隔を開けて設けられている。第1埋入部322は、その突出高さが第1固定部材32下面から約40mmに設けられている。
【0051】
第2固定部材33は、水田側法面部22の裾近傍の土壌上面に設置され、パネル体31の下端位置を水田側法面部22の裾近傍に固定する部材であり、第2受け部331、及び、第2埋入部332、を有する構造である。また、第2固定部材33は、その上面が略平坦に形成され、上面の長手方向に亘る複数条の滑り止め部333が設けられている。
【0052】
第2埋入部332は、水田側法面部22の裾近傍の土壌内に埋入する部分であり、設置状態において第2固定部材33の下面となる部分に、平行に設けられた2条の凸条から成り、各凸条は所定間隔を開けて設けられている。第2埋入部332は、その突出高さは第2固定部材32下面から約40mmに設けられている。
【0053】
第2受け部331は、設置状態において第2固定部材33の上面となる部分に設けられ、パネル体31の下端縁が嵌合する凹条溝である。
【0054】
本実施形態において、第1埋入部322の突出高さは前述の通りであるが、これに限定するものではなく、例えば、30mm以上50mm以下であることが好ましい。30mm未満の場合は土壌中へ食い込みが不足して位置ずれを起こす可能性があり、一方で50mmを超えると、土壌中へ食い込みは十分であるが、埋設により大きな力を要して作業性が悪化し、破損可能性が高まるためである。また、本実施形態において、第2埋入部332の突出高さは前述の通りであるが、これに限定するものではなく、第1埋入部322と同様の理由から、30mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0055】
(作 用)
本発明の畦畔構造体1の作用について説明する。
畦畔構造体1の畦畔基礎部2は、畦畔の本質的用途である水田P1、P2の湛水の漏出防止や、水田P1とその隣接地(水田P2)の区画境界として使用することができる。なお、天部21は作業者や車両の通路としても使用することができる。また、水田側法面部31は、畦畔覆設ユニット3の設置領域とすることができる。
【0056】
パネル体31は、その形成素材及び構造に起因する耐荷重性、耐腐食性や耐候性によって、堅牢で長持ちする法面壁部を構成することができる。これにより、水田側法面部22が直接的に破損あるいは崩壊することを長期間にわたって抑止(法面保護)し、作業者の肉体的経済的な負担軽減を図ることができる。加えて、覆設部分における雑草の繁殖を抑止できるので、刈り取り等の作業負担の軽減も図ることができる。そして、パネル体31は、無垢のセメント板と比較して軽量なため、設置場所までの運搬、設置作業の際に、作業者の負担を軽減することができる。
【0057】
第1固定部材32は、パネル体31を水田側法面部22の表面に沿わせた状態で、パネル体31上端縁が第1受け部32に嵌合するよう位置合わせをし、そして、第1埋入部322が天部21の土壌中に食い込むように、上方から畦畔基礎部1の天部21へ押圧して取り付ける。
【0058】
この結果、第1固定部材32は、天部21の土壌中に埋入した第1埋入部322によって、水平方向に荷重が加わっても設置位置からずれないように安定的に固定及び支持される。詳しくは、天部21への設置状態において、第1固定部材32は、その第1受け部321とパネル体31の上端が嵌合していることにより、パネル体31が水田側法面部22から浮き上がって離脱しないように、第1受け部321によってパネル体31の上端位置を天部21近傍で安定的に保持されることになり、第1固定部材32とパネル体31の上端縁の位置固定が成される。
【0059】
また、パネル体31の上端位置が第1受け部321に嵌合する構造であることから、パネル体31の上端位置と第1固定部材32の間に隙間が空きにくいようになっており、同部分からの雨水の浸入、植物種子の侵入を抑制することができる。
【0060】
つまり、第1固定部材32は、簡単に設置できる部材でありながら、効率良くかつ安定的にパネル体31の上端位置を天部21近傍に固定することができる。併せて、天部21と水田側法面部22とが接する角となる部分は、従来崩れやすい部分であるが、第1固定部材32が同部分を覆い崩れにくく保護している。そして、滑り止め部323は、天部21上を歩行する者や走行する車両が、水田側法面部22に滑落しにくいようにしている。
【0061】
第2固定部材33は、前述した構造を以てパネル体31下端を受け、水田側法面部22の裾近傍においてパネル体31下部を保持することができる。より詳しくは、まず、第2固定部材33は、パネル体31を水田側法面部22の表面に沿わせた状態で、パネル体31下端縁が第2受け部32に嵌合するよう位置合わせをすると共に、第2埋入部332が水田側法面部22の裾部分の土壌中に食い込むように同裾部分へ押圧して取り付ける(先に第2固定部材33を設置し、パネル体31の下端位置を調整する方法であっても良い)。
【0062】
この結果、第2固定部材33は、水田側法面部22の裾部分の土壌中に埋入した第2埋入部332によって、水平方向に荷重が加わっても設置位置からずれないように安定的に固定される。詳しくは、水田側法面部22の裾部分への設置状態において、第2固定部材33は、その第2受け部331とパネル体31下端とが嵌合していることにより、パネル体31が水田側法面部22から浮き上がって離脱しないように、第2受け部331によってパネル体31の上端位置を水田側法面部22の裾部分で安定的に保持されることになり、第2固定部材33とパネル体31の下端縁の位置固定が成される。
【0063】
また、パネル体31の下端位置が第2受け部331に嵌合する構造であることから、パネル体31の下端位置と第2固定部材33の間に隙間が空きにくいようになっており、同部分からの雨水の浸入、植物種子の侵入を抑制することができる。
【0064】
つまり、第2固定部材33は、簡単に設置できる部材でありながら、効率良くかつ安定的にパネル体31の下端位置を水田側法面部22の裾部分に固定することができる。そして、滑り止め部333は、水田に下りてきた作業者が歩行しやすいようにしている。
【0065】
更にまた、第1固定部材32は第1埋入部322を、第2固定部材33は第2埋入部332を、それぞれ配置される箇所の土壌へ押圧し食い込ませて取り付けるため、第1固定部材32下面と接する地面及び埋入した第1埋入部322の周囲の土壌が押し固められて(換言すると、圧縮されて)地耐力が向上し、同様に、第2固定部材33下面と接する地面及び埋入した第2埋入部332の周囲の土壌が押し固められて(換言すると、圧縮されて)地耐力が向上する。これにより、圧縮された天面21の強度が向上し同部分の土壌が崩れにくくなることで第1固定部材32は離脱しにくくなり、圧縮された水田側法面部22の裾部分の強度が向上し同部分の土壌が崩れにくくなることで第2固定部材33は離脱しにくくなる。
【0066】
このように、畦畔構造体1において、畦畔覆設ユニット3によれば、第1固定部材32及び第2固定部材33が協働してパネル体31を水田側法面部22に安定的に固定し、同固定位置から離脱することを抑制することができるものとなっており、その施工を容易に行うことができる。
【0067】
〔畦畔覆設方法〕
本実施形態における畦畔覆設方法は、畦畔基礎部形成工程と、水田側法面壁部形成工程と、により行われる。
【0068】
畦畔基礎部形成工程では、水田P1に隣接した前述の畦畔基礎部2を形成する。
【0069】
水田側法面壁部形成工程は、法面覆設ステップ、第1固定部材設置ステップ、及び、第2固定部材設置ステップからなる。
法面覆設ステップでは、畦畔基礎部形成工程により形成された水田側法面部22を、パネル体31で覆設する。
第1固定部材設置ステップでは、パネル体31の上端位置を、第1固定部材32を以て天部21に固定設置する。
第2固定部材設置ステップでは、パネル体31の下端位置を、第2固定部材33を以て水田側法面部22の裾近傍に固定設置する。
【0070】
なお、法面覆設ステップ、第1固定部材設置ステップ及び第2固定部材設置ステップは必ずしも記載順に行う必要はなく、どのステップから作業開始してもよいが、最初に第2固定部材設置ステップ、次に法面覆設ステップ、最後に第1固定部材設置ステップ、の順番で行うことが精度良く効率的な施工が容易に達成できる。
【0071】
〔変形例1〕
図3を参照して、畦畔構造体1の変形例である畦畔構造体1aについて説明する。なお、畦畔構造体1と相違する構造及び作用効果についてのみ説明し、その他の共通する部分の説明は省略する。
【0072】
畦畔構造体1aは、畦畔基礎部2と畦畔覆設ユニット3aを備える。なお、畦畔基礎部2は第1実施形態と同様であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0073】
畦畔覆設ユニット3aは、パネル体31、第1固定部材32a及び第2固定部材33aを有し、これらの組み合わせにより構成され、これらはコンクリート二次製品である。なお、パネル体31は第1実施形態と同様であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0074】
第1固定部材32aは、第1固定部材32と同様、パネル体31の上端位置を天部21近傍で固定する部材であり、第1受け部321、第1埋入部322、滑り止め部323、中空部324及び長溝325を有する構造である。なお、第1受け部321、第1埋入部322及び滑り止め部323は、第1実施形態と同様であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0075】
第1固定部材32aは、押出成形セメント製であり、その板厚方向中間領域(換言すると、表面と裏面の間)に、複数の中空部324が形成されている。各中空部324は、左右側部端面に形成された複数の開口部(図3においては正面に表示)と連通している。第1固定部材32aは、複数の中空部324が形成されていることにより、第1実施形態に係る第1固定部材32と比較して軽量で、設置場所までの運搬、設置作業の際に、作業者の負担を更に軽減することができる。
【0076】
第1固定部材32aは、長手方向となる各側面に、長溝325が形成されている。長溝325は、第1固定部材32aの高さ方向略中間位置に形成されている。長溝325は、各側面に形成されていることにより、当該部分をいわゆる掴み代(人力による場合は指を入れる部分、機械による場合は係止爪先端が入る部分)として、第1固定部材32aを把持し持ち上げやすくしている。
【0077】
第2固定部材33aは、第2固定部材33と同様、パネル体31の下端位置を水田側法面部22の裾部分で固定する部材であり、第2受け部331、第2埋入部332、滑り止め部333、中空部334及び長溝335を有する構造である。なお、第2受け部331、第2埋入部332及び滑り止め部333は、第1実施形態と同様であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0078】
第2固定部材33aは、押出成形セメント製であり、その板厚方向中間領域(換言すると、表面と裏面の間)と、第2埋入部332の板厚方向中間領域(換言すると、第2埋入部332の表面と裏面の間)に、複数の中空部334が形成されている。各中空部334は、左右側部端面に形成された複数の開口部(図3においては正面に表示)と連通している。第2固定部材33aは、複数の中空部334が形成されていることにより、第1実施形態に係る第2固定部材33と比較して軽量で、設置場所までの運搬、設置作業の際に、作業者の負担を更に軽減することができる。
【0079】
第2固定部材33aは、長手方向となる各側面に、長溝335が形成されている。長溝335は、第2固定部材33aの高さ方向略中間位置且つ第2固定部材33aの裏面と略同じ高さに形成されている。長溝325は、各側面に形成されていることにより、当該部分をいわゆる掴み代として、第2固定部材33aを把持し持ち上げやすくしている。また、長溝325は、第2固定部材33aの裏面と略同じ高さに形成されていることにより、設置レベルの確認に利用することができる。
【0080】
〔第2実施形態〕
(畦畔構造体1b)
図4図5を参照して、本発明の他の実施形態(第2実施形態)である畦畔構造体1bについて説明する。畦畔構造体1bは、水田P1と水田P2を区切るように設置され、畦畔基礎部2と畦畔覆設ユニット3bを備える。なお、前述した第1実施形態の畦畔構造体1と同様の構造及びその作用効果については説明を省略する。
【0081】
畦畔構造体1bは、畦畔基礎部2と畦畔覆設ユニット3bを備える。なお、畦畔基礎部2は第1実施形態と同様であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0082】
畦畔覆設ユニット3bは、パネル体31、第1固定部材32及び第2固定部材33bを有し、これらの組み合わせにより構成される。なお、パネル体31及び第1固定部材32はコンクリート二次製品であり、第1実施形態と同様の構成であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0083】
第2固定部材33bは、合成樹脂製で、パネル体31下端側の開口部から突出した所定長さの杭状部材であり、第2埋入部332b、嵌入部336及び係止部337を有する構造である。第2埋入部332bは、嵌入部336の反対方向に所定長さで延設され、水田側法面部22の裾近傍の土壌内に埋入される部分である。嵌入部336は、パネル体31の第2固定部材側に形成された開口部を介して中空部内に嵌着される部分である。係止部337は、第2埋入部332bと嵌入部336の間に設けられ、パネル体31の開口部口縁で係止可能な部分である(図4(a)~(c)参照)。
【0084】
より詳しくは、第2埋入部332bは、所定幅且つ所定長さの板状の基板338の表面に3本の凸条339が、裏面に3本の凸条339が、それぞれ設けられた形状である。表裏両面の凸条339の配置は同じであり、基板338の幅方向両側縁部分に2条、両側縁の間の中央部分に1条が設けられている。各凸条339は、その先部が基板338側に向かって下り傾斜している(図5(b)及び(c)参照)。
【0085】
そして、嵌入部336は、第2埋入部332bよりも短幅且つ長さ方向に短い板状であり、その幅はパネル体31の下端側(換言すると第2固定部材側)に形成された開口部の孔径よりも僅かに幅広で、パネル体31下端の開口部への挿入時において、嵌入部336の幅方向側縁がパネル体31の中空部内壁と当接し摩擦力(又は可撓性材質に起因する復元作用による押圧力)を以て、パネル体31から離脱しないように嵌着できる構造である。
【0086】
また、係止部337は、第2埋入部332bよりも幅広且つパネル体31下端の開口部よりも径大なフランジ状部分である。係止部337は、第2固定部材33bをパネル体31下端の開口部に取り付けた状態において、嵌入部336が所定の長さで嵌入し、第2埋入部332bが突出長さを確保できるように、パネル体31の開口部口縁で係止する構造である。
【0087】
(作 用)
図5(b)に示すように、嵌入部336をパネル体31下端の開口部から中空部内に差し込んで挿着し、第2固定部材33bとパネル体31とを一体的に連結させる。連結させた第2固定部材33bとパネル体31を、第2埋入部332bを下向きにして畦畔基礎部2の水田側法面部22に沿わせて下降させ、水田側法面部22の裾部分の土壌に第2埋入部332bを刺し、パネル体31を押し込んでいく(図4(a)参照)。押し込んだパネル体31の上縁と畦畔基礎部2の天部21が略水平になったところで、第1固定部材32を上方から被せて押圧し(図4(b)参照)、畦畔覆設ユニット3bが設置された畦畔構造体1bが完成する(図4(c)参照)。
【0088】
第2固定部材33bによれば、簡易な構造でありながら、効率良く且つ安定的にパネル体31の下端位置を水田側法面部22の裾部分に固定することができる。
【0089】
詳しくは、第2固定部材33bは、パネル体31下端の開口部を通じて嵌入部336を中空部内の空間に差し込むだけで、パネル体31との連結が完了し、畦畔覆設ユニット3bにおいて杭状に突出する第2埋入部332bを有する第2固定部材33bを設けることができる。
【0090】
嵌入部336は、パネル体31下端の開口部を介して中空部内に差し入れるだけで簡単に挿着でき、組み立て作業が容易である。そして、パネル体31の中空部内に嵌着された嵌入部336は、同中空部内壁と当接し摩擦力を発揮するのでパネル体31からの離脱が抑制され、且つ、軸方向における第2埋入部332bの軸ブレが抑制される。この軸ブレ抑制により、第2埋入部332bを土壌内に埋入させる作業がしやすく、且つ、設置後のパネル体31が水田側法面部22の左右方向にずれることが抑制される。なお、嵌入部336は、前記構造であるため、短尺化しても脱落抑止及び軸ぶれ抑止に十分な機能を発揮しており、保管時及び輸送時の省スペース化、材料の減量化を図ることができる。
【0091】
パネル体31に連結した第2固定部材33bは、これを水田側法面部22の裾部分の土壌中に埋入させることで、同裾部分に第2固定部材33bが安定的に固定支持され、これにより、パネル体31下端位置が安定的に固定されて水田側法面部22からの離脱が抑制される。
【0092】
第2固定部材33bは、第2埋入部332bが前記形状の杭状部材であることにより、水田側法面部22の裾部分の土壌中に埋入させやすく効率良い施工が可能である。具体的には図4(a)に示すように、パネル体31を上方から押圧すれば、裾部分の土壌中に第2埋入部332bが埋入する。更に、第2埋入部332bの各凸条339が前述の形状(先部が基板338側に向かって下り傾斜している)であるため、土壌中に進入しやすくなっている。
【0093】
第2固定部材33bは、パネル体31に着脱可能な構造であるため、パネル体31と第2固定部材33bとを分けて製造し、現場で組み立てる態様とすることができる。これにより、パネル体31の製造工程を簡易化することができ、製造コストの低減化を図ることができる。
【0094】
第2固定部材33bをパネル体31に取り付ける際に、係止部337は、パネル体31下端の開口部口縁に当接し、それ以上の進入を止めることができる。これにより、第2埋入部332bが必要以上に中空部内に入らないようにして、第2埋入部332bの突出長さを確保することができる。
【0095】
第2埋入部332bは、前述の形状であることから、嵌入部336よりも幅広で表面積を拡大させる加工が成されたものとなっている。これにより、第2埋入部332bを土壌中に埋入した状態において、第2埋入部332bの表面と土壌との接触面積が更に拡大して摩擦力が増大し、パネル体31の固定を更に安定的なものにしている。
【0096】
本実施形態において、第2固定部材33bは合成樹脂製であるが、これに限定するものではなく、例えば、金属製等であってもよいし、合成樹脂部分と金属部分を含む複合構造等であってもよい。また、本実施形態において、第2固定部材33bは各部分が前述した形状であるが、これに限定するものではなく、一部又は全部に他の形状を採用することもできる。
【0097】
本実施形態において、嵌入部336の「短尺」とは、嵌入部336の軸方向長さが第2埋入部332bの軸方向長さよりも短いことを意味し、「短尺」の範囲は、嵌入部336の軸方向長さが第2埋入部332bの軸方向長さの15%以上80%の範囲内であることが好ましい。15%未満である場合は、脱落抑止効果及び軸ぶれ抑止効果が不足する可能性が高いため好ましくなく、一方、80%を超える場合は、脱落抑止効果及び軸ぶれ抑止効果は十分であるが、保管時及び輸送時の省スペース化、材料の減量化が十分と言い難いため好ましくない。
【0098】
〔第3実施形態〕
(畦畔構造体1c)
図6を参照して、本発明の他の実施形態(第3実施形態)である畦畔構造体1cについて説明する。畦畔構造体1cは、畦畔基礎部2cと畦畔覆設ユニット3cを備える。
【0099】
本実施形態では、先に水田側法面部22cの裾部分となる予定領域に畦畔覆設ユニット3cを設置し、その後に土を入れて水田側法面部22cが形成されている。畦畔基礎部2cは、道路Rから水田P1に続く緩斜面N上に土を盛って形成され、盛土後の上面が天面21cを、急斜面となる水田側法面部22cを構成する。つまり、畦畔構造体1cは、事後的に形成される急斜面の水田側法面部22cを畦畔覆設ユニット3cで覆う態様である。なお、前述した第1実施形態の畦畔構造体1と同様の構造及びその作用効果については説明を省略する。
【0100】
畦畔覆設ユニット3cは、パネル体31、第1固定部材32c及び第2固定部材33cを有し、これらの組み合わせにより構成される。なお、パネル体31は、第1実施形態と同様の構成であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0101】
第1固定部材32cは、コンクリート二次製品で、天部21cに設置し、パネル体31の上端位置を天部21c近傍で固定する逆U字溝形状の部材であり、第1受け部321c及び第1埋入部322cを有する構造である。また、第1固定部材32cは、その上面が略平坦に形成され、上面の長手方向に亘る複数条の滑り止め部323が設けられている。
【0102】
第1受け部321cは、設置状態においてパネル体31の上端縁が嵌合する凹条溝である。なお、第1受け部321を構成する側壁のうち設置状態において天部21c側となる部分が第1埋入部322cであり、天部21cの土壌内に埋入する部分となる。
【0103】
第2固定部材33cは、杭状部材であり、パネル体31中空部の軸方向に沿って挿入された長尺棒体により構成され、基部側がパネル体31中空部内に位置し、先部側がパネル体31下端の開口部から所定長さ突出した態様である。
【0104】
なお、第2固定部材33cは、所定長さで杭状の長尺棒体であれば、その形状は特に限定されるものではなく、例えば、図6(b)に示すLアングル棒体、あるいは、図6(c)に示す円管棒体が挙げられ、その他角管棒体等であってもよく、更に、管状体のみならず、中実棒体であってもよい。
【0105】
(作 用)
図6(a)を参照する。畦畔構造体1cは、先に水田側法面部22cの裾部分となる予定領域に畦畔覆設ユニット3cを設置する。
【0106】
より詳しくは、最初に、水田側法面部22cの裾部分となる予定領域の土壌に溝条の下孔を掘り、同下孔にパネル体31下部を差し入れる。
【0107】
その次に、パネル体31上端側開口部から第2固定部材33cを挿入し、第2固定部材33cの先部が所定深さで前述の土壌中へ食い込むように押し込む。押し込みが完了したら、少なくとも第2固定部材33cを挿入したパネル体31の中空部に凝固材を入れ、固化後の凝固材によって同中空部内において第2固定部材33cが軸ぶれしないように固定される。
【0108】
次いで、立設したパネル体31から道路Rの縁の間の領域(すなわち道路Rから水田P1に続く緩斜面N上)に土を盛り、畦畔基礎部2cを形成する。
【0109】
最後に、畦畔基礎部2cの形成後、第1固定部材32cをパネル体31上端縁に取り付ける。詳しくは、天面21cの水田P2側に現れているパネル体31の上端に被せるように第1受け部321cを嵌め、且つ、第1埋入部322cを天面21cの土壌に食い込むように押圧して取り付ける。
【0110】
なお、畦畔構造体1cは、前述の手順で施工されるが、これに限定するものではなく、例えば、先に緩斜面N上に盛土すると共に水田P1側を押し固めて水田側法面部22cと成すことで畦畔基礎部2cを形成し、その後に畦畔覆設ユニット3cを設置する手順であってもよい。後述する変形例2に示す畦畔構造体1eについても同様である。
【0111】
また、畦畔覆設ユニット3cは、前述の手順で施工されるが、これに限定するものではなく、例えば、最初に、第2固定部材33cの先部が所定深さで土壌中へ食い込むように下孔へ押し込み、その次に、パネル体31下端側開口部に第2固定部材33cの基部(設置時において上部側)が挿入されるようにして第2固定部材33cに沿ってパネル体31を下ろし、下孔にパネル体31下部を差し入れる設置する手順であってもよい。後述する変形例2に示す畦畔構造体1eについても同様である。
【0112】
畦畔構造体1cは、畦畔覆設ユニット3cの第2固定部材33cを水田側法面部22cの裾部分となる土壌中へ杭状に埋入させることで、畦畔覆設ユニット3cを水田側法面部22cの裾部分に安定的に支持させることができる。
【0113】
水田側法面部22cの裾部分で安定的に支持された第2固定部材33cは、パネル体31が水田側法面部22cから離脱しないようにパネル体31下部を保持する。また、第1固定部材32cは、天部21cで安定的に支持され、パネル体31が水田側法面部22cから離脱しないようにパネル体31上部を保持する。つまり、第1固定部材32c及び第2固定部材33cが協働し、パネル体31が水田側法面部22cから浮き上がって離脱しないように、安定的に保持される。
【0114】
また、畦畔構造体1cは、第2固定部材33cが杭状であることにより、水田側法面部22cの裾部分となる土壌中に埋入させやすく、効率良く施工することができる。なお、第2固定部材33cは比較的安価な汎用品を使用することができるので、工事費の低減化を図ることができる。
【0115】
〔第4実施形態〕
(畦畔構造体1d)
図7図8を参照して、本発明の他の実施形態(第4実施形態)である畦畔構造体1dについて説明する。畦畔構造体1dは、畦畔基礎部2と畦畔覆設ユニット3dを備える。なお、畦畔基礎部2は第1実施形態と同様であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0116】
畦畔覆設ユニット3dは、パネル体31及びパネル体31d、第1固定部材32及び第2固定部材33cを有し、これらの組み合わせにより構成されている。なお、パネル体31及び第1固定部材32は第1実施形態と、第2固定部材33cは第3実施形態と、それぞれ同様であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0117】
畦畔覆設ユニット3dでは、パネル体31及びパネル体31dを組み合わせて使用される。より詳しくは、まず1枚のパネル体31dが配置され、次に複数枚(図7では5枚)のパネル体31が配置され、再度パネル体31dが配置されており、同様の組み合わせで、畦畔覆設ユニット3dの長手方向に連続して配置される。
【0118】
パネル体31bは、設置状態において表面側且つ高さ方向略中間となる領域に開口した、所定広さのポケット部311が設けられている(図7参照)。より詳しくは、パネル体31bは、設置状態において表面側且つ高さ方向略中間となる領域に、板厚方向に貫通した開口部分312が形成され、そして、開口部分312にポケット部構成材313を嵌め入れることで、ポケット部311が設けられている(図8参照)。
【0119】
ポケット部構成材313は、正面側のみが開口し(ポケット開口部314)、所定の奥行き(パネル体31bの板厚よりもやや長い)に形成された箱状の部材であり、ポケット開口部314の口縁には外側に屈曲して成るフランジ部分が設けられている(符号省略)。同フランジ部は、パネル体31bに嵌め入れた後、開口部分312の正面側口縁部分に当接すると共に、ポケット部構成材313がそれ以上奥側に入り込まないように係止する(図8参照)。
【0120】
また、ポケット部構成材313は、開口部分312に嵌め入れた後に、ビス315によって固定されている。より詳しくは、ビス315は、その軸部がポケット部構成材313内の側壁と、同側壁と隣接するパネル体31bの中空部を仕切る隔壁とを貫通し、その先部が同隔壁に隣接する他の中空部に挿通した取付基材316に至るように挿着されている(図8参照)。
【0121】
畦畔構造体1dは、パネル体31dにポケット部311を設けたことにより、水田側法面部22を昇降する際に足先や手を入れ、手がかり足がかりとして利用することができ、別途梯子や階段を設けずに済む。加えて、ポケット部311は、水位センサーの設置箇所としても使用することができる。
【0122】
そして、パネル体31dは、前述の構造であることにより、パネル体自体とポケット部構成材313とを分けて製造し、現場等で事後的に組み立てる態様とすることができる。これにより、パネル体31bの製造工程を簡易化することができ、製造コストの低減化を図ることができる。また、ポケット部構成材313が別部材であるため、用途に合わせてポケット部構成材の形状等を適宜改変又は選択することで汎用性が向上し、多用途に対応することができる。加えて、用途別に変更された複数種のポケット部が形成されたパネル体(全体)を製造せずに済むため、製造工場における多品種製造の必要が無く、製造コスト低減化を図ることができる。
【0123】
本実施形態においては、2枚のパネル体31dの間に5枚のパネル体31が配置された態様であるが、これに限定するものではなく、例えば、間に配置されるパネル体31の枚数は適宜設定することができる。また、パネル体31dのみを配置する態様を除外するものではない。
【0124】
本実施形態においては、ポケット部構成材313はビス315によって固定される態様であるが、これに限定するものではなく、例えば、釘やボルト、接着剤等の他の固定手段を使用してもよい。
【0125】
〔変形例2〕
図9を参照して、畦畔構造体1cの変形例である畦畔構造体1eについて説明する。なお、畦畔構造体1cと相違する構造及び作用効果についてのみ説明し、その他の共通する部分の説明は省略する。
【0126】
畦畔構造体1eは、畦畔基礎部2cと畦畔覆設ユニット3eを備える。なお、畦畔基礎部2cは第3実施形態と同様であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0127】
畦畔覆設ユニット3eは、パネル体31d、第1固定部材32c及び第2固定部材33cを有し、これらの組み合わせにより構成される。なお、パネル体31dは第4実施形態と、第1固定部材32c及び第2固定部材33cは第3実施形態と、それぞれ同様であるため、その構造及び作用効果の説明は省略する。
【0128】
畦畔構造体1eは、パネル体31dにポケット部311を設けたことにより、水田側法面部22cを昇降する際に足先や手を入れ、手がかり足がかりとして利用することができ、別途梯子や階段を設けずに済む。加えて、ポケット部311は、水位センサーの設置箇所としても使用することができる。この点において、畦畔構造体1eは、畦畔構造体1cと相違し、より便利なものとなっている。
【0129】
前述の第1実施形態、変形例1、第2実施形態及び第4実施形態において、畦畔構造体は、水田側法面23に畦畔覆設ユニットを設けていない態様であるが、これに限定するものではなく、水田側法面22同様、水田側法面23にも畦畔覆設ユニットを配設する態様であってもよい。
【0130】
前述の各実施形態及び各変形例において、コンクリート二次製品であると説明した部材は、例えば、その一部又は全部を他の素材(例えば、金属材、合成樹脂材等)に置換してもよいし、コンクリート二次製品と鉄板・ゴム板・合成樹脂板等を組み合わせた複合構造等であってもよい。
【0131】
本明細書および特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。また、第一、第二等の言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
【符号の説明】
【0132】
1、1a、1b、1c、1d 畦畔構造体
2、2c 畦畔基礎部
21、21c 天部
210 上段部
22、22c 水田側法面部
23 水田側法面部
3、3a、3b、3c、3d 畦畔覆設ユニット
31、31d パネル体
311 ポケット部
312 開口部分
313 ポケット部構成部材
314 ポケット開口部
315 ビス
316 取付基材
32、32a、32c 第1固定部材
321、321c 第1受け部
322、322c 第1埋入部
323 滑り止め部
324 中空部
325 長溝
33、33a、33b、33c 第2固定部材
331 第2受け部
332、332b 第2埋入部
333 滑り止め部
334 中空部
335 長溝
336 嵌入部
337 係止部
338 基板
339 凸条
P1 水田
P2 水田
R 道路
N 緩斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2020-12-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田に隣接して所定の高さで盛土あるいは切土して形成され、天部、及び、該天部から水田の方向に下り傾斜する水田側法面部を有する畦畔に設置され、
前記水田側法面部に覆設するパネル体と、
該パネル体の上端に配置され、同パネル体の上端位置を前記天部近傍に固定する第1固定部材と、
前記パネル体の下端に配置され、同パネル体の下端位置を前記水田側法面部の裾近傍に固定する第2固定部材と、を備え
前記パネル体は、表面側内面及び裏面側内面の間に設けた支壁により複数の空間に区画された中空部が形成され、該各空間が前記第1固定部材側となる方向から前記第2固定部材側となる方向に向かって形成されると共に、同空間の少なくとも第2固定部材側に開口部が形成された構造であり、
前記第2固定部材が、前記開口部から突出した所定長さの杭状部材である
畦畔覆設ユニット。
【請求項2】
前記杭状部材は、前記パネル体の前記第2固定部材側に形成された前記開口部を介して前記中空部内に嵌着される嵌入部、該嵌入部の反対方向に所定長さで延設され、前記水田側法面部の裾近傍の土壌内に埋入する第2埋入部、及び、該第2埋入部と前記嵌入部の間に設けられ、前記パネル体の前記開口部口縁で係止可能な係止部、を有する構造である
請求項1に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項3】
前記第2埋入部は、嵌入部よりも幅広な形状であり、表面積を拡大させる加工が成されている
請求項2に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項4】
前記パネル体は、設置状態において表面側かつ高さ方向中間となる領域に開口部が形成され、該開口部の奥側に所定広さのポケット部が設けられている
請求項1~3のいずれかに記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項5】
前記パネル体の開口部は、板厚方向に貫通して形成されており、
前記ポケット部は、正面側のみが開口した箱状のポケット部構成材を、その開口部分が前記パネル体の設置状態において表面側となるように前記パネル体の開口部に嵌め入れて設ける構造である
請求項4に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項6】
前記第1固定部材は、設置状態において下方向となる部分に設けられ、前記パネル体の上端縁が嵌合する第1受け部、及び、設置状態において下方向となる部分に設けられ、前記天部の土壌内に埋入する第1埋入部、を有する構造である
請求項1~5のいずれかに記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項7】
前記第1固定部材は、上面が略平坦に形成されると共に、該上面に滑り止め部が設けられている
請求項6に記載の畦畔覆設ユニット。
【請求項8】
水田に隣接して所定の高さで盛土あるいは切土して形成され、天部、及び、該天部から水田の方向に下り傾斜する水田側法面部を有する、畦畔基礎部と、
前記水田側法面部に覆設されたパネル体、前記天部に設置され、該パネル体の上端位置を同天部近傍で固定した第1固定部材、及び、前記水田側法面部の裾近傍に設置され、前記パネル体の下端位置を同水田側法面部の裾近傍に固定した第2固定部材を有し、
前記パネル体は、表面側内面及び裏面側内面の間に設けた支壁により複数の空間に区画された中空部が形成され、該各空間が前記第1固定部材側となる方向から前記第2固定部材側となる方向に向かって形成されると共に、同空間の少なくとも第2固定部材側に開口部が形成された構造であり、
前記第2固定部材が、前記開口部から突出した所定長さの杭状部材である、畦畔覆設ユニットと、を備える
畦畔構造体。
【請求項9】
水田に隣接して、天部、及び、該天部から水田の方向に下り傾斜する水田側法面部を有する所定の高さの盛土あるいは切土を形成する畦畔基礎部形成工程と、
該畦畔基礎部形成工程により形成された前記水田側法面部をパネル体で覆設する法面覆設ステップ、前記パネル体の上端位置を前記天部近傍で固定可能な第1固定部材を同天部に設置する第1固定部材設置ステップ、及び、前記パネル体の下端位置を前記水田側法面部の裾近傍で固定可能な第2固定部材を同水田側法面部に設置する第2固定部材設置ステップ、を有する、水田側法面壁部形成工程と、を備え、
前記パネル体は、表面側内面及び裏面側内面の間に設けた支壁により複数の空間に区画された中空部が形成され、該各空間が前記第1固定部材側となる方向から前記第2固定部材側となる方向に向かって形成されると共に、同空間の少なくとも第2固定部材側に開口部が形成された構造であり、
前記第2固定部材設置ステップは、所定長さの杭状部材である前記第2固定部材を、同開口部から突出させて前記水田側法面部の裾近傍に土壌中に埋入させる
畦畔覆設方法。