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  • 特開-溶解型マイクロニードル製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059984
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】溶解型マイクロニードル製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/22 20060101AFI20220407BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 8/72 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220407BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
A61K47/22
A61K47/30
A61K47/10
A61K47/36
A61K8/02
A61K8/49
A61K8/72
A61K8/73
A61M37/00 530
A61M37/00 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167933
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智佳
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸次
(72)【発明者】
【氏名】森山 昌明
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C267
【Fターム(参考)】
4C076BB31
4C076DD38
4C076DD60
4C076EE01
4C076EE37
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD332
4C267AA72
4C267FF10
4C267GG16
(57)【要約】
【課題】成型性、痛み、溶解性、はり・弾力において総合的に優れた、ナイアシン及び水溶性高分子を含有する溶解型マイクロニードル製剤を提供すること。
【解決手段】ナイアシン及び水溶性高分子を含有する溶解型マイクロニードル製剤である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイアシン及び水溶性高分子を含有する溶解型マイクロニードル製剤。
【請求項2】
さらに、多価アルコールを含有する請求項1に記載の溶解型マイクロニードル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナイアシン及び水溶性高分子を含有する溶解型マイクロニードル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美容作用や薬理作用を有する成分を皮下で発揮させるために、美容成分や薬効成分を含む外用剤が利用されている。このような外用剤としては、液状、クリーム状、パック状などが知られており、これらを局所に塗布又は貼付することで、美容成分や薬効成分が経皮吸収され、期待される美容作用や薬理作用が皮下で発揮される。
【0003】
しかしながら、このような塗布又貼付される態様の外用剤では、使用中、美容成分や薬効成分が経皮吸収される前に、発汗、洗浄、その他の外的圧力や蒸発などによって消失したり、脱落するという欠点があった。また、これらの外用剤では、皮膚のバリア機能によって、美容成分や薬効成分が十分に経皮吸収されず、期待される美容作用や薬理作用が発揮できないという欠点があった。とりわけ、美容成分や薬効成分が高分子化合物である場合、経皮吸収され難く、美容作用や薬理作用を発揮させることが困難であった。
【0004】
また、乾燥肌、しわ、たるみ、はり、弾力の低下、くすみなどの皮膚の症状は、皮膚の美観を損なう要因となるため、美容を気にする女性にとって悩みの種となっている。そのため、これら皮膚症状の改善を目的として、これまでに様々な皮膚の保湿剤や、しわ、たるみ、はり、弾力又はくすみの改善剤が開発されてきた。たとえば、しわ、たるみ、はり、弾力の改善剤として、近年、ボツリヌス毒素を注射する方法やコラーゲンを注入する方法が注目されている。ボツリヌス毒素の注射やコラーゲンの注入は、局所に塗布又は貼付される外用剤よりも、美容成分や薬効成分を皮下で発揮させるための方法として、針を使用する注射を利用することが可能である。しかしながら、ボツリヌス毒素の注射やコラーゲンの注入では痛みを生じるため、利用者に苦痛を与えるものであった。また、注射は、痛みを引き起こしたり、出血を起こしたり、使用回数の増加に伴って針による傷が残ったり腫れるという欠点があった。さらに、注射は、医師などの専門家によって実施される必要があることが多く、利用者で適宜使用することが困難であった。
【0005】
近年、マイクロニードルと呼ばれる微細な針状突起による美容成分や薬効成分の経皮注入が注目されている。マイクロニードルによる経皮注入は、美容成分や薬効成分などを含有するマイクロニードルを皮膚に貼着させることで、マイクロニードルを角質や真皮など皮膚の比較的浅い層に穿刺させ、皮下でマイクロニードルを溶解させて美容成分や薬効成分を経皮吸収させることができる。また、マイクロニードルによる経皮注入は、通常の注射に比べて痛みが低減され、さらに、専門家によって実施される必要がないため、利用者が適宜使用することができる。
【0006】
マイクロニードルは、皮膚の症状や疾患に応じて最適な設計をすることが求められ、外用剤として使用されるマイクロニードル製剤には、皮膚の角質や真皮に穿刺した際に折れないことが求められる。一方で、マイクロニードルは、皮膚の角質や真皮に穿刺された局所において痛みや出血、腫れを引き起こさないための柔軟性を備えることも求められる。したがって、マイクロニードル製剤は皮膚の角質や真皮への穿刺に耐え得る強度と、痛みなどを感じさせない柔軟性を両立させることが必要である。
【0007】
また、外用剤として使用されるマイクロニードル製剤には、皮膚の角質や真皮に穿刺した後に、皮下での溶解性又は生分解性を有することが求められる。
【0008】
しかし、このような強度と柔軟性を両立させ、溶解性も兼ね揃えるマイクロニードル製剤を成型することは困難であるため、これまで、マイクロニードル製剤の構成成分については限られたものしか報告されていない。強度と柔軟性、溶解性を兼ね揃えたマイクロニードル製剤としては、たとえば、マルトースとデキストランの混合物を主原料としたマイクロニードル(特許文献1)、水溶性高分子と、グルコース、フルクトース、シュクロース、ラクトース、トレハロースからなる群から選ばれた1種若しくは複数種の糖類との混合物を主原料としたマイクロニードル(特許文献2)が挙げられる。しかしながら、特許文献1に記載のマイクロニードルは、マルトースと生理活性物質とを混合した後に、マルトースの融点以上に加熱してニードルの形状に成型する必要があり、熱安定性に劣る生理活性物質を使用することは困難である。また、特許文献2の発明では、マイクロニードルの溶解速度の促進が図れているものの、マイクロニードルを穿刺した際の痛みや違和感について考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-152180号公報
【特許文献2】特開2013-189432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来にない新しいマイクロニードル製剤を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、上記事情に鑑み、強度と柔軟性、溶解性を兼ね揃えた成型性を有する溶解型マイクロニードル製剤を提供することを目的とする。また、本発明は、上記事情に鑑み、溶解性に優れた溶解型マイクロニードル製剤を提供することを目的とする。また、本発明は、上記事情に鑑み、皮膚の保湿や、しわ、たるみ、はり、弾力又はくすみを改善する美容作用の優れた溶解型マイクロニードル製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、ナイアシン及び水溶性高分子を含有することで、水溶性高分子のみを使用した場合に比べて、成型性に優れ、強度と柔軟性、溶解性を兼ね揃え、美容作用に優れた溶解型マイクロニードル製剤が製造できること、穿刺時及び穿刺後の痛みが低減された溶解型マイクロニードル製剤が製造できることを見出した。また、ナイアシン、水溶性高分子に加えて多価アルコールを含有することで、成型性、溶解性、美容作用がさらに優れると共に、刺時及び穿刺後の痛みがさらに低減された溶解型マイクロニードル製剤が製造できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]ナイアシン及び水溶性高分子を含有する溶解型マイクロニードル製剤。
[2]ナイアシンアミド及び水溶性高分子を含有する溶解型マイクロニードル製剤。
[3]ナイアシン及び平均分子量が1万以上のヒアルロン酸又はその塩を含有する溶解型マイクロニードル製剤。
[4]ナイアシン、水溶性高分子及び多価アルコールを含有する溶解型マイクロニードル製剤。
[5]ナイアシン、水溶性高分子、並びに、グリセリン又は1,3-ブチレングリコールより選ばれる少なくとも1種の多価アルコールを含有する溶解型マイクロニードル製剤。
[6]ナイアシン及び水溶性高分子を含有する溶解型マイクロニードル製剤であって、水溶性高分子に対してナイアシンを100:0.1~500の割合で配合されることを特徴とする溶解型マイクロニードル製剤。
[7]ナイアシン、水溶性高分子及び多価アルコールを含有する溶解型マイクロニードル製剤であって、水溶性高分子に対して多価アルコールを100:0.1~500の割合で配合されることを特徴とする溶解型マイクロニードル製剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤によれば、皮膚の角質や真皮に穿刺した際に折れない強度と、痛みを引き起こさないための柔軟性、溶解性を兼ね揃えることで、貼着時及び貼着中の違和感を低減できる。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤によれば、皮膚の保湿や、しわ、たるみ、はり、弾力又はくすみを改善する優れた美容作用を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例3乃至9の溶解性及びはり・弾力の評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、ナイアシン及び水溶性高分子を含有することを特徴とする。
【0016】
以下、本発明の組成物について、その好ましい実施形態に基づいて説明する。
【0017】
<溶解型マイクロニードル製剤>
本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、基板と、基板上に配置された複数のマイクロニードルを備える。本発明の溶解型マイクロニードル製剤を構成するマイクロニードルは、ナイアシン及び水溶性高分子を基剤として含有する。
【0018】
本発明の溶解型マイクロニードルの製剤は、1又は2以上のマイクロニードルが基板の表面に形成された構造を有している。
【0019】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤の基板は、その表面にマイクロニードルを形成し、据え置き、及び、保持し得るシート状の態様であれば特に制限されない。当該基板は、マイクロニードルと同じ組成のシートであってもよく、またマイクロニードルとは異なる組成(たとえば、マイクロニードルの組成に他の成分を配合したものや、マイクロニードルを構成する成分を含有しない組成)のシートであってもよい。マイクロニードルとは異なる組成の場合、使用される成分としては、たとえば、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アルミニウムなどから形成されるシートが挙げられる。製造の効率及び簡便性の観点から、マイクロニードルの基板は、マイクロニードルと同じ組成のシートで構成されていることが望ましい。マイクロニードルと同じ組成とすることにより、基板とマイクロニードルとを一体成型することができる。
【0020】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤の基板の厚みは、その表面にマイクロニードルを形成し、据え置き、及び、保持することができれば特に制限されないが、マイクロニードルを皮膚へ穿刺するための支持体になり得る程度の厚みを有するため、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。
【0021】
溶解型マイクロニードル製剤の基板の形状は、適用部位に応じて適宜設定することができ、例えば、円形、楕円形、雫形、三日月形、三角形、四角形、その他の多角形などが挙げられる。基板の大きさも適用部位に応じて適宜設定することができ、例えば円形又は楕円形の場合、直径(長径)は1mm以上100mm以下が好ましく、1mm以上80mm以下がより好ましく、1mm以上50mm以下がさらに好ましい。また、多角形の場合、最も長い一辺(長辺)は1mm以上100mm以下が好ましく、1mm以上80mm以下がより好ましく、1mm以上50mm以下がさらに好ましい。また、溶解型マイクロニードル製剤の基板の大きさを面積で表すと、5mm以上4000mm以下が好ましく、8mm以上3000mm以下がより好ましく、10mm以上2000mm以下がさらに好ましい。
【0022】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤におけるマイクロニードルの数は、その数が多いほど、期待する美容作用や薬理作用を発揮することができるため、基板上に複数形成されていることが望ましい。マイクロニードルの数は、20本以上が好ましく、50本以上がより好ましく、100本以上がさらに好ましい。
【0023】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤の基板の表面の単位面積当たりのマイクロニードルの数は、1つのマイクロニードルとそれに近接するマイクロニードルとの先端部との距離に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、皮膚の角質や真皮への穿刺に耐え得る強度を持たせるため、基板の表面1cm当たり、30~500本が好ましく、40~400本がより好ましく、50~300本がさらに好ましい。
【0024】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードル同士の距離は、適宜設定すればよく、特に制限されないが、角層や真皮に美容成分や薬効成分を送達させて美容作用を発揮させるため、また、皮膚の角質や真皮への穿刺に耐え得る強度を持たせるため、1つのマイクロニードルとそれに近接するマイクロニードルの先端部との距離は、50~3000μmが好ましく、70~2500μmがより好ましく、100~2000μmがさらに好ましい。
【0025】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの形状は、その形状が針状であれば特に制限されないが、皮膚の角質や真皮への穿刺に耐え得る強度と、痛みなどを感じさせない柔軟性を両立させるため、また、マイクロニードルが皮下で溶解しやすくするため、たとえば、円錐状、円錐台状、棒状、柱状やコニーデ状が挙げられる。マイクロニードルは、先端と、基板の表面に接する底面が同一の直径であってもよく、直径が底面から先端の方向に先細りしていてもよい。マイクロニードルの先端径は、皮膚の角質や真皮への穿刺に耐え得る強度と、痛みなどを感じさせない柔軟性を両立させるため、3~200μmが好ましく、4~150μmがより好ましく、5~100μmがさらに好ましい。本発明の溶解型マイクロニードル製剤の基板の表面に接するマイクロニードルの底面の直径は、角層や真皮に美容成分や薬効成分を送達させて美容作用を発揮させるため、また、皮膚の角質や真皮への穿刺に耐え得る強度を持たせるため、50~500μmが好ましく、70~450μmがより好ましく、100μm~400μmがさらに好ましい。
【0026】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの高さ(長さ)は、適宜設定すればよく、特に制限されないが、角層や真皮に美容成分や薬効成分を送達させて美容作用を発揮させるため、また、皮膚の角質や真皮への穿刺に耐え得る強度と、痛みなどを感じさせない柔軟性を両立させるため、基板の接地面から先端までの高さは40~2000μmが好ましく、50~1500μmがより好ましく、100~1000μmがさらに好ましい。
【0027】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造することができる。たとえば、本発明の溶解型マイクロニードル製剤の製造方法として、たとえば、マイクロニードル製剤の形状が穿設された鋳型に、マイクロニードルを構成する成分を溶解した水溶液を、マイクロニードル部分と基板部分を形成できるように流延し、室温下又は加熱して水分を蒸発して乾燥した後に、形成されたマイクロニードルアレイを鋳型から剥離する方法がある。この方法では、マイクロニードルと基板が同組成からなるマイクロニードルアレイが製造される。また、上述とは異なる製造方法として、マイクロニードルの形状が穿設された鋳型に、マイクロニードルを構成する成分を溶解した水溶液を流延し、室温下又は加熱して水分を蒸発して乾燥し、次いで、これに基板を積層して、上記で形成されたマイクロニードルの底面部と基板とを結合または接着させた後に、基板とともにマイクロニードルを鋳型から剥離する方法がある。この方法では、マイクロニードルと基板が異なる組成からなるマイクロニードルアレイを製造することができる。
【0028】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、マイクロニードルを皮膚の角層及び/又は真皮に穿刺するように、皮膚に貼着して使用される。具体的には、本発明の溶解型マイクロニードル製剤を、マイクロニードルが皮膚の角層及び/又は真皮に穿刺するように皮膚に貼付し、放置する。こうすることで、マイクロニードル中の美容成分や薬効成分が皮下などの体温と水分によって溶解し、溶出され、美容成分や薬効成分による美容作用や薬理作用が奏される。
【0029】
このように、本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、皮下の角層及び/又は真皮に美容成分や薬効成分を送達させることができるため、局所に塗布又は貼付される外用剤よりも、美容作用や薬効作用をより高く発揮することができ、化粧料として有用である。
【0030】
<ナイアシン>
ナイアシンは、ニコチン酸と、ニコチン酸の誘導体であるナイアシンの総称であり、ビタミB3とも呼ばれ、糖質、脂質、タンパク質の代謝に不可欠な成分である。本発明のナイアシン又はその誘導体としては、特に限定されるものではなく、ニコチン酸、ニコチン酸の誘導体のいずれを用いてもよいが、優れた成型性及び溶解性、並びに、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、ニコチン酸の誘導体を用いることが好ましく、ナイアシンアミド(ニコチン酸アミド)を用いることが特に好ましい。本発明のナイアシンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明で用いるナイアシンは、たとえば、天然物から抽出したものも使用することができるし、公知の方法によって合成したものを使用することもできる。
【0031】
ナイアシンアミドは、ニコチン酸の誘導体の1種で、ニコチン酸のアミド化合物であり、ニコチン酸アミド、ニコチンアミド、ピリジン-3-カルボン酸とも呼ばれる。ナイアシンアミドには、尋常性ざ瘡、美白効果などを有することが知られている。
【0032】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥前の組成、すなわち、マイクロニードルの成型前の組成において、ナイアシンの配合量の上限値は特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、0.0001重量%以上が好ましく、0.0005重量%以上がより好ましく、0.001重量%以上がさらに好ましく、0.005重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型前の組成において、水溶性高分子の配合量の下限値は特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに一層好ましく、1重量%以下が最も好ましい。
【0033】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥後の組成、すなわち、マイクロニードルの成型後の組成において、ナイアシンの配合量の上限値は特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましく、1重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型後の組成において、水溶性高分子の配合量の下限値は特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、95重量%以下が好ましく、75重量%以下がより好ましく、55重量%以下がさらに一層好ましく、40重量%以下が最も好ましい。
【0034】
<水溶性高分子>
水溶性高分子とは、たとえば単糖のような低分子化合物が5個以上結合した構成を有し、水に溶ける性質をもつ分子である。水溶性高分子を構成する低分子化合物は1種類であっても2種以上であっても良い。本発明で用いる水溶性高分子は、マイクロニードル製剤や化粧料で使用される成分であれば特に限定されないが、たとえば、ヒアルロン酸、でんぷん、セルロースガム等のセルロース誘導体、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン及びデキストリンなどが挙げられる。セルロース誘導体としては、セルロースガム(カルボキシメチルセルロース)の他、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。これらの中でも、優れた成型性及び溶解性、並びに、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、ヒアルロン酸、キサンタンガム、カラギーナン、デキストリンを用いることが好ましく、ヒアルロン酸を用いることがさらに好ましい。本発明の水溶性高分子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
<ヒアルロン酸>
本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、水溶性高分子としてヒアルロン酸を用いることが好ましい。ヒアルロン酸は、グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンが結合したムコ多糖である。本発明のヒアルロン酸としては、特に限定されるものではなく、ヒアルロン酸、アセチルヒアルロン酸、ヒアルロン酸若しくはアセチルヒアルロン酸の誘導体、又はこれらの塩のいずれを用いてもよく、加水分解ヒアルロン酸又はその塩を用いてもよい。これらの中でも、優れた成型性及び溶解性、並びに、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸又は加水分解ヒアルロン酸ナトリウムを用いることが好ましく、ヒアルロン酸ナトリウム又はアセチルヒアルロン酸ナトリウムを用いることがより好ましく、ヒアルロン酸ナトリウムを用いることがさらに好ましい。本発明のヒアルロン酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本発明における加水分解ヒアルロン酸とは、平均分子量が1000以上1万以下のヒアルロン酸のことを意味する。
【0036】
本発明で用いるヒアルロン酸の分子量は、繰り返し単位の数や、種類によって様々であり、特に限定されるものではなく、重量平均分子量において数百~数百万のヒアルロン酸を用いてもよく、平均分子量が1000以上1万以下の加水分解ヒアルロン酸を用いてもよい。これらの中でも、優れた成型性及び溶解性、並びに、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、平均分子量が5万以上のものを用いることが好ましく、平均分子量が10万以上のものを用いることがより好ましく、平均分子量が100万以上のものを用いることがさらに好ましい。
【0037】
本発明で用いるヒアルロン酸は、市販のものを使用することもできるし、動物組織から抽出したものや微生物の培養による発酵法で生産されたものなどを使用することもできる。動物組織から抽出したものといては、たとえば、鶏冠から抽出したものが挙げられる。鶏冠は古くから食用に供されている点から、マイクロニードルに添加しても安全性の面で問題がないため、ヒアルロン酸として鶏冠抽出物を使用してもよい。
【0038】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥前の組成、すなわち、マイクロニードルの成型前の組成において、水溶性高分子の配合量の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性及び溶解性、並びに、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、0.001重量%以上が好ましく、0.005重量%以上がより好ましく、0.01重量%以上がさらに好ましく、0.05重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型前の組成において、水溶性高分子の配合量の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性及び溶解性、並びに、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに一層好ましく、5重量%以下が最も好ましい。
【0039】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥後の組成、すなわち、マイクロニードルの成型後の組成において、水溶性高分子の配合量の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性及び溶解性、並びに、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、30重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型後の組成において、水溶性高分子の配合量の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性及び溶解性、並びに、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、99重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに一層好ましく、85重量%以下が最も好ましい。
【0040】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥前の組成、すなわち、マイクロニードルの成型前の組成において、水溶性高分子に対するナイアシンの配合比率の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、水溶性高分子100重量%に対して、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%がさらに好ましく、0.5重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型前の組成において、水溶性高分子に対するナイアシンの配合比率の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、水溶性高分子100重量%に対して、300重量%以下が好ましく、200重量%以下がより好ましく、100重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下が最も好ましい。
【0041】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥後の組成、すなわち、マイクロニードルの成型後の組成において、水溶性高分子に対するナイアシンの配合比率の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、水溶性高分子100重量%に対して、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%がさらに好ましく、0.5重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型後の組成において、水溶性高分子に対するナイアシンの配合比率の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、水溶性高分子100重量%に対して、300重量%以下が好ましく、200重量%以下がより好ましく、100重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下が最も好ましい。
【0042】
<多価アルコール>
本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、多価アルコールを配合することが好ましい。本発明で用いる多価アルコールは、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するものであり、水溶性高分子以外のものをいう。マイクロニードル製剤や化粧料で使用される成分であれば特に限定されないが、たとえば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、エリトリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール、ポリグリセリン誘導体、スクロース、トレハロースなどの糖類などがあげられる。これらの中でも、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、マルチトール、マンニトール、ソルビトールを用いることが好ましく、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオールを用いることがより好ましく、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、を用いることがさらに好ましい。本発明の多価アルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥前の組成、すなわち、マイクロニードルの成型前の組成において、基剤の全量における多価アルコールの配合量の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、0.0001重量%以上が好ましく、0.0005重量%以上がより好ましく、0.001重量%以上がさらに好ましく、0.005重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型前の組成において、基剤の全量における多価アルコールの配合量の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、50重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに一層好ましく、1重量%以下が最も好ましい。
【0044】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥後の組成、すなわち、マイクロニードルの成型後の組成において、基剤の全量における多価アルコールの配合量の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましく、0.5重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型後の組成において、基剤の全量における多価アルコールの配合量の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、マイクロニードルの基剤の全量に対して、60重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、40重量%以下がさらに一層好ましく、25重量%以下が最も好ましい。
【0045】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥前の組成、すなわち、マイクロニードルの成型前の組成において、水溶性高分子に対する多価アルコールの配合比率の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、水溶性高分子100重量%に対して、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%がさらに好ましく、0.5重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型前の組成において、水溶性高分子に対する多価アルコールの配合比率の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、水溶性高分子100重量%に対して、300重量%以下が好ましく、200重量%以下がより好ましく、100重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下が最も好ましい。
【0046】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥後、すなわち、成型後の組成において、水溶性高分子に対する多価アルコールの配合比率の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、水溶性高分子100重量%に対して、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%がさらに好ましく、0.5重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型後の組成において、水溶性高分子に対する多価アルコールの配合比率の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、水溶性高分子100重量%に対して、水溶性高分子100重量%に対して、300重量%以下が好ましく、200重量%以下がより好ましく、100重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下が最も好ましい。
【0047】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、皮膚の保湿や、しわ、たるみ、はり、弾力又はくすみを改善に有用であり、化粧品、医薬部外品、外用医薬品などの皮膚外用剤に好適に利用され得る。
【0048】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、必要に応じて、本発明の成分以外の他の成分を添加することができる。本発明の成分以外の他の成分としては、たとえば、その他の有効成分、防腐剤、pH調整剤、油脂、香料、着色剤、酸化防止剤、防菌防かび剤、アルコール、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤、無機塩、滑沢剤、溶剤、精製水などの、通常、皮膚外用剤に使用される成分の一種以上を使用することができる。本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、優れた成型性、溶解性の点で、精製水を添加することが好ましい。
【0049】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥前の組成、すなわち、マイクロニードルの成型前の組成において、基剤の全量におけるナイアシン及び水溶性高分子の合計量の配合比率の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、基剤の全量を100重量%とした場合、0.0001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、0.01重量%がさらに好ましく、0.05重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型前の組成において、基剤の全量におけるナイアシン及び水溶性高分子の合計量の配合比率の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、基剤の全量を100重量%とした場合、95重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましく、5重量%以下が最も好ましい。
【0050】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥後の組成、すなわち、マイクロニードルの成型後の組成において、基剤の全量におけるナイアシン及び水溶性高分子の合計量の配合比率の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、基剤の全量を100重量%とした場合、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%がさらに好ましく、30重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型後の組成において、基剤の全量におけるナイアシン及び水溶性高分子の合計量の配合比率の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、基剤の全量を100重量%とした場合、99重量%以下が好ましく、97重量%以下がより好ましく、95重量%以下がさらに好ましく、90重量%以下が最も好ましい。
【0051】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥前の組成、すなわち、マイクロニードルの成型前の組成において、基剤の全量におけるナイアシン、水溶性高分子及び多価アルコールの合計量の配合比率の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、基剤の全量を100重量%とした場合、0.0001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、0.01重量%がさらに好ましく、0.07重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型前の組成において、基剤の全量におけるナイアシン、水溶性高分子及び多価アルコールの合計量の配合比率の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、基剤の全量を100重量%とした場合、99.9重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましく、5重量%以下が最も好ましい。
【0052】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルを成形する過程の乾燥後の組成、すなわち、マイクロニードルの成型後の組成において、基剤の全量におけるナイアシン、水溶性高分子及び多価アルコールの合計量の配合比率の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、基剤の全量を100重量%とした場合、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%がさらに好ましく、40重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型後の組成において、基剤の全量におけるナイアシン及び水溶性高分子の合計量の配合比率の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、基剤の全量を100重量%とした場合、99.9重量%以下が好ましく、99重量%以下がより好ましく、95重量%以下がさらに好ましく、92.5重量%以下が最も好ましい。
【0053】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤が精製水を含有する場合、マイクロニードルを成形する過程の乾燥前の組成、すなわち、マイクロニードルの成型前の組成において、ナイアシン及び水溶性高分子の合計量に対する精製水の配合比率は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、ナイアシン及び水溶性高分子の合計量に対して、ナイアシン及び水溶性高分子の合計量を1とした場合、1:0.1~100000が好ましく、1:1~10000がより好ましく、1:10~10000がさらに好ましく、1:50~1000が最も好ましい。
【0054】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤が精製水を含有する場合、マイクロニードルを成形する過程の乾燥後の組成、すなわち、マイクロニードルの成型後の組成において、ナイアシン及び水溶性高分子の合計量に対する精製水の配合比率は、特に制限されないが、優れた成型性、穿刺時及び穿刺後の痛みの低減、優れた溶解性、及び、皮膚のはりや弾力の改善などに優れる点で、ナイアシン及び水溶性高分子の合計量に対して、ナイアシン及び水溶性高分子の合計量を1とした場合、1:0.0001~30が好ましく、1:0.001~20がより好ましく、1:0.01~10がさらに好ましく、1:0.05~5が最も好ましい。
【0055】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤が精製水を含有する場合、マイクロニードルを成形する過程の乾燥前の組成、すなわち、マイクロニードルの成型前の組成において、基剤の全量における精製水の配合比率の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、溶解性の点で、基剤の全量を100重量%とした場合、30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、95重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型前の組成において、基剤の全量における精製水の配合比率の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、溶解性の点で基剤の全量を100重量%とした場合、99.9重量%以下が好ましく、99.5重量%以下がより好ましく、99重量%以下が最も好ましい。
【0056】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤が精製水を含有する場合、マイクロニードルを成形する過程の乾燥後の組成、すなわち、マイクロニードルの成型後の組成において、基剤の全量における精製水の配合比率の上限値は、特に制限されないが、優れた成型性、溶解性の点で、基剤の全量を100重量%とした場合、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましく、7.5重量%以上が最も好ましい。また、本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルの成型後の組成において、基剤の全量における精製水の配合比率の下限値は、特に制限されないが、優れた成型性、溶解性の点で基剤の全量を100重量%とした場合、70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、50重量%以下が最も好ましい。
【0057】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤のマイクロニードルは、本発明の成分を含有するものであればよく、たとえば、本発明の成分を含有するコーディング層を形成させた針状突起であってもよく、本発明の成分を内包させた針状突起であってよい。
【0058】
以下、本発明の溶解型マイクロニードル製剤に含有される、本発明の成分以外の他の成分について、その代表的なものを更に説明する。
【0059】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤に含有される有効成分としては、特に限定されることなく、化粧品、医薬部外品、外用医薬品などに用いられる薬剤や植物等を目的に応じ使用することができる。代表的なものとして、例えば、グリチルリチン酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、グリチルレチン酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン、パンテノール、アラントイン等の抗炎症剤、アスコルビン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、システイン及びその誘導体並びにその塩、グラブリジン、グラブレン、リクイリチン、イソリクイリチン、プラセンタ、ハイドロキノン及びその誘導体、レゾルシン及びその誘導体、グルタチオン等の美白剤、イオウ、チアントロール等の抗脂漏剤、サリチル酸、オウバク抽出物等の殺菌剤、トコフェロール及びその誘導体、甘草、アロエ、茶葉等の植物成分、エストラジオール等のホルモン等が挙げられる。なお、植物成分を使用する場合は、その全草、葉(葉身、葉柄等)、果実(成熟、未熟等)、種子、花(花弁、子房等)、茎、根茎、根、塊根等を、そのまま、切断、破砕、粉砕、搾取、抽出して用いるか、又はこれら処理されたものを乾燥若しくは粉末化して用いることができる。
【0060】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、皮膚の保湿や、しわ、たるみ、はり、弾力又はくすみを改善するものであり、美容作用を有するため、肌質改善、肌の若返り、肌の引き締め、肌を整える、肌のキメを整える、皮膚をすこやかに保つ、肌をひきしめる、皮膚にうるおいを与える、皮膚の水分,油分を補い保つ、皮膚の柔軟性を保つ、皮膚を保護する、皮膚の乾燥を防ぐ、肌を柔らげる、肌にはりを与える、肌にツヤを与える、肌を滑らかにする、乾燥による小ジワを目立たなくすることを目的とした、化粧品、医薬部外品、薬品等の医薬品のいずれにも好適に使用することができる。
【0061】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、製品の包装などに、本発明の成分(ナイアシン及び水溶性高分子)が皮膚の保湿や、しわ、たるみ、はり、弾力又はくすみを改善などの美容の有効成分として表示されているものに限られない。たとえば、有効成分を特定していないものであってもよく、本発明の成分以外の特定の素材を有効成分として表示したものであってもよい。
【0062】
本発明の溶解型マイクロニードル製剤は、後述する実施例で示されたはり又は弾力の改善効果を奏することにより、肌のはり改善用組成物、肌の弾力改善用組成物、美容組成物として優れたものとなり得る。
【実施例0063】
以下、実施例を挙げて本発明の溶解型マイクロニードル製剤を更に詳細に説明する。しかし、本発明の技術的範囲は、かかる実施例に限定されない。以下、特に断らない場合、「%」は重量%を表す。
【0064】
<試験例1 成型性の評価>
水溶性高分子として、平均分子量120万~220万のヒアルロン酸ナトリウムを用いた。
ナイアシンとして、ナイアシンアミドを用いた。
多価アルコールとして、濃グリセリンを用いた。
【0065】
乾燥前の組成が表1の組成となるように、平均分子量120~220万のヒアルロン酸ナトリウムを精製水に膨潤溶解して、溶液を調製した。比較例2乃至4については、ナイアシンアミド及び/又は濃グリセリンをさらに加え、溶液を調製した。溶液を型に流し込み、25℃で24時間、自然乾燥した。自然乾燥後、乾燥後の組成を確認した。その後、粘着テープを貼り付け、成型物を型から剥離するのを試み、剥離の可否を以下の評価基準で評価した。
【0066】
・成型性の評価基準
完全に剥離可能:○
一部剥離不可能:△
剥離不可能:×
【0067】
結果を表1に示す。また、乾燥前後の組成を表2乃至5に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
表1に示す結果から明らかな通り、ヒアルロン酸ナトリウムを含有した場合(比較例1)、並びに、ナイアシンアミド及びヒアルロン酸ナトリウムを含有した場合(実施例1)、型から完全に剥離することができ、溶解型マイクロニードル製剤を成型することができた。一方、ヒアルロン酸ナトリウム及び濃グリセリンを含有した場合(比較例2)、型から剥離することができず、溶解型マイクロニードル製剤を成型することができなかった。また、ヒアルロン酸ナトリウム及び濃グリセリンを含有した場合(比較例2)には剥離することができなかったにも関わらず、ヒアルロン酸ナトリウムと濃グリセリンに、さらに、ナイアシンアミドを含有した場合(実施例2)、型から完全に剥離することができ、溶解型マイクロニードル製剤を成型することができた。すなわち、ナイアシンアミド及びアルロン酸ナトリウムを含有した場合、成型性に優れたものであることが分かる。また、ヒアルロン酸と濃グリセリンにナイアシンアミドを含有した場合、成型性が良くなり、溶解型マイクロニードル製剤を成型できるようになることが分かる。したがって、ナイアシンアミド、水溶性高分子及び多価アルコールを含有することにより、溶解型マイクロニードル製剤を得ることができる。
【0074】
<試験例2 溶解性及びはり・弾力の評価>
水溶性高分子として、平均分子量120万~220万のヒアルロン酸ナトリウムを用いた。
水溶性高分子として、平均分子量10万のアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを用いた。
ナイアシンとして、ナイアシンアミドを用いた。
多価アルコールとして、濃グリセリンを用いた。
多価アルコールとして、1,3-ブチレングリコールを用いた。
【0075】
乾燥前の組成が表6の組成となるように、表6記載のヒアルロン酸を精製水に膨潤溶解して、溶液を調製した。比較例2及び実施例3乃至については、ナイアシンアミド及び/又は表6記載の多価アルコールをさらに加え、溶液を調製した。溶液を型に流し込み、25℃で24時間、自然乾燥した。自然乾燥後、乾燥後の組成を確認した。その後、粘着テープを貼り付け、成型物を型から剥離し、溶解型マイクロニードル製剤を得た。得られた溶解型マイクロニードル製剤を男女3人の目の下に1時間貼着し、穿刺時及び穿刺後の、溶解性及びはり・弾力を以下の評価基準で点数を付けて、評価した。
【0076】
・溶解性の評価基準
マイクロニードルの溶解時間が15分未満:3
マイクロニードルの溶解時間が15分以上30分未満:2
マイクロニードルの溶解時間が30分以上60分未満:1
マイクロニードルの溶解時間が60分以上:0
【0077】
・はり・弾力の評価基準
貼着から1時間経過時のはり・弾力が、貼着前と比べて、顕著に良好になった:3
貼着から1時間経過時のはり・弾力が、貼着前と比べて、良好になった:2
貼着から1時間経過時のはり・弾力が、貼着前と比べて、やや良好になった:1
貼着から1時間経過時のはり・弾力が、貼着前と比べて、変わらなかった:0
【0078】
男女3人それぞれが付けた点数の平均点を算出し、以下の基準で試験品を◎、○、△、×で評価した。
・試験品の評価基準
平均点が2.5以上:◎
平均点が1.5以上2.5未満:○
平均点が0.5以上1.5未満:△
平均点が0.5未満:×
【0079】
結果を図1及び表6に示す。また、乾燥前後の組成を表2及び7乃至14に示す。
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
【表9】
【0084】
【表10】
【0085】
【表11】
【0086】
【表12】
【0087】
【表13】
【0088】
【表14】
【0089】
図1及び表6に示す結果から明らかな通り、ナイアシンアミドを含有しない場合(比較例1)、溶解性、はり・弾力のいずれも悪く、総合的に優れた製剤ではなかったが、ナイアシンアミド、及び、ヒアルロン酸ナトリウム又はアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを含有した場合(実施例3乃至9)、溶解性又ははり・弾力において優れており、総合的に優れた溶解型マイクロニードル製剤であることが分かる。また、ナイアシンアミド、ヒアルロン酸ナトリウム又はアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムに加えて、濃グリセリン又は1,3-ブチレングリコールを含有した場合、さらに、溶解性又ははり・弾力において優れており、総合的に極めて優れた溶解型マイクロニードル製剤であることが分かる。そのうえ、実施例5、7乃至9は比較例に比べて痛みの低減に優れていた。
【0090】
以下、発明の溶解型マイクロニードル製剤の種々の態様の処方例を挙げる。しかし、本発明の技術的範囲は、かかる処方例に限定されない。以下、特に断らない場合、「%」は重量%を表す。
【0091】
<処方例1及び2>
【0092】
【表15】
【0093】
乾燥前の組成が表15に記載される組成となるように、水溶性高分子、ナイアシン、多価アルコールを精製水に溶解して溶液を調製した。溶液を型に流し込み、25℃で24時間、自然乾燥したところ、成型性が良好なマイクロニードル製剤を得ることができた。得られたマイクロニードル製剤は、痛みの低減に優れ、また、溶解性、はり・弾力に優れるものである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の組成物は、いわゆる化粧品、医薬部外品、医薬品として用いることができることから、産業上有用である。
図1