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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059992
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】鉄筋曲げ機
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/024 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
B21D7/024 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167946
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000223056
【氏名又は名称】東陽建設工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門馬 功祐
(72)【発明者】
【氏名】勝又 寛
(72)【発明者】
【氏名】小柳 貴司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 正徳
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA09
4E063BC05
4E063CA03
4E063MA10
(57)【要約】
【課題】被加工鉄筋の位置決めから曲げ加工完了までを自動にでき生産性の高い鉄筋曲げ機を提供する。
【解決手段】被加工鉄筋の曲げ加工を行うための支点部7と、支点部7の周りを回動し被加工鉄筋に曲げ力を付与する力点部10と、被加工鉄筋の径方向の一端側に力点部が回動する回動面に平行な加工基準面を形成する基準面部5と、力点部を加工基準面と直交する方向に進退駆動する力点部進退駆動部20と、を備え、力点部は、被加工鉄筋に曲げ力を付与する作用外面11よりも端部側に、作用外面よりも回動面に沿う方向に張り出す鍔部12を有しており、力点部進退駆動部20は、鍔部12と基準面部5との間に位置する被加工鉄筋を、鍔部12にて基準面部5側へ移動させ、鍔部にて前記被加工鉄筋を位置規制する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工鉄筋の曲げ加工を行うための支点部と、
前記支点部の周りを回動し前記被加工鉄筋に曲げ力を付与する力点部と、
前記被加工鉄筋の径方向の一端側に前記力点部が前記回動する回動面に平行な加工基準面を形成する基準面部と、
前記力点部を前記加工基準面と直交する方向に進退駆動する力点部進退駆動部と、
を備え、
前記力点部は、前記被加工鉄筋に曲げ力を付与する作用外面よりも端部側に、前記作用外面よりも前記回動面に沿う方向に張り出す鍔部を有しており、
前記力点部進退駆動部は、前記鍔部と前記基準面部との間に位置する前記被加工鉄筋を、前記鍔部にて前記基準面部側へ移動させ、前記鍔部にて前記被加工鉄筋を位置規制する、
鉄筋曲げ機。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄筋曲げ機であって、
前記力点部は、前記被加工鉄筋を前記基準面部側へ移動させる際、
前記被加工鉄筋と前記作用外面が接触する直前の状態で、前記基準面部側に移動する、
鉄筋曲げ機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鉄筋曲げ機であって、
前記力点部進退駆動部は、前記被加工鉄筋を位置規制する際、前記力点部が前記基準面部から離れる方向の力に対して弾性を付与する、
鉄筋曲げ機。
【請求項4】
請求項3に記載の鉄筋曲げ機であって、
前記力点部進退駆動部は、流体シリンダを含む、
鉄筋曲げ機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の鉄筋曲げ機であって、
前記鍔部は、前記作用外面に対して前記回動面に沿って相対回転可能に構成されている、
鉄筋曲げ機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の鉄筋曲げ機であって、
前記鍔部は、少なくとも前記被加工鉄筋と接触する面が樹脂にて構成されている、
鉄筋曲げ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋曲げ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋に曲げ加工を施す装置としては、種々のものが提案されているが、例えば、特許文献1、特許文献2がある。
特許文献1においては、鉄筋の曲りを修正するための方法及び装置が開示されている。この方法及び装置においては、平板状のワープトップ上に所定ラインに沿って供給されるワーク(鉄筋)に対し、ワーク上に配置された切断部材や曲げ加工部材を用いて所定の矯正加工を施す技術が開示されている。
特許文献2においては、曲げ加工の際に、鉄筋が不測の捩れの発生を防止する鉄筋加工装置である。この鉄筋加工装置では、曲げ加工基盤を設け、この曲げ加工基盤に対して対面する平板状の覆い板を設け、曲げ加工基盤と覆い板とで位置規制しながら鉄筋の曲げ加工を実施する。これにより、鉄筋曲げ加工における捩れを低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2019/012569号
【特許文献2】特開2010-5661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2の開示においては、特に、記載はされていないが、この種の鉄筋加工技術においては、人手に頼る部分が多く残されているのが現状である。例えば、特許文献2に開示されている鉄筋の曲げ加工を行う装置においては、捩れを抑えある程度の改善が図られているが、まだ改善の余地があった。特に、複数本の鉄筋(以下、「被加工鉄筋」という)を同時に曲げ加工する場合には、課題が残されていた。
【0005】
この課題は、複数本の被加工鉄筋を曲げる加工において、曲げ加工されている動作過程で、被加工鉄筋の一端を手で持つような作業が必要とされている。これは、曲げ加工途中において複数本の被加工鉄筋同士の位置並びに挙動を、作業者が手でもって微妙な修正をしながら、被加工鉄筋の曲げ加工品の品質を維持するようにしていた。しかしながら、このような方法では、作業者の負担が大きく、また作業効率が上がらず生産性を高めることができないという問題であった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉄筋曲げ加工に際して、被加工鉄筋の位置決めから曲げ加工完了までを自動にでき生産性の高い鉄筋曲げ機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は下記手段により達成することができる。すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕
被加工鉄筋の曲げ加工を行うための支点部と、
前記支点部の周りを回動し前記被加工鉄筋に曲げ力を付与する力点部と、
前記被加工鉄筋の径方向の一端側に前記力点部が前記回動する回動面に平行な加工基準面を形成する基準面部と、
前記力点部を前記加工基準面と直交する方向に進退駆動する力点部進退駆動部と、
を備え、
前記力点部は、前記被加工鉄筋に曲げ力を付与する作用外面よりも端部側に、前記作用外面よりも前記回動面に沿う方向に張り出す鍔部を有しており、
前記力点部進退駆動部は、前記鍔部と前記基準面部との間に位置する前記被加工鉄筋を、前記鍔部にて前記基準面部側へ移動させ、前記鍔部にて前記被加工鉄筋を位置規制する、鉄筋曲げ機。
【0008】
〔2〕
〔1〕に記載の鉄筋曲げ機であって、
前記力点部は、前記被加工鉄筋を前記基準面部側へ移動させる際、
前記被加工鉄筋と前記作用外面が接触する直前の状態で、前記基準面部側に移動する、鉄筋曲げ機。
【0009】
〔3〕
〔1〕又は〔2〕に記載の鉄筋曲げ機であって、
前記力点部進退駆動部は、前記被加工鉄筋を位置規制する際、前記力点部が前記基準面部から離れる方向の力に対して弾性を付与する、鉄筋曲げ機。
【0010】
〔4〕
〔3〕に記載の鉄筋曲げ機であって、
前記力点部進退駆動部は、流体シリンダを含む、鉄筋曲げ機。
【0011】
〔5〕
〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載の鉄筋曲げ機であって、
前記鍔部は、前記作用外面に対して前記回動面に沿って相対回転可能に構成されている、鉄筋曲げ機。
【0012】
〔6〕
〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載の鉄筋曲げ機であって、
前記鍔部は、少なくとも前記被加工鉄筋と接触する面が樹脂にて構成されている、鉄筋曲げ機。
【発明の効果】
【0013】
〔1〕の鉄筋曲げ機によれば、力点部が鍔部を有していることで、力点部が曲げ加工を開始する前に、鍔部を利用して鉄筋を、曲げ加工が正確に行える基準面部側へ自動的に移動させることができる。また、曲げ加工の動作に際しては、鍔部と基準面部によって鉄筋の径方向の位置を規制することができる。この結果、鉄筋の曲げ動作中の挙動を安定させることができ、ひねりが抑えられた良好な曲げ加工品を提供することができる。
【0014】
〔2〕の鉄筋曲げ機によれば、力点部は、鍔部と基準面部との間に被加工鉄筋を挟む位置へ移動する際に、鉄筋表面に接触する直前の状態で、力点部を基準面部側に移動させる。これによって、力点部は、被加工鉄筋に対し位置規制方向とは交差する方向の不要な接触(加圧)を避けることができ、被加工鉄筋を、その挙動が安定した状態で位置決めできる。この結果、鉄筋曲げ加工を良好に行うことができる。
【0015】
〔3〕の鉄筋曲げ機によれば、被加工鉄筋の曲げ加工時の位置規制において、力点部が基準面部から離れる方向の力に弾性を有するので、被加工鉄筋が鍔部に当る状態が生じた際には、被加工鉄筋の挙動を無理やり押さえず弾性力持って柔軟に接触することができる。この結果、被加工鉄筋の不測の挙動に対応して柔軟に対応でき、ひねりの発生を抑えた高品質の曲げ加工品を提供することができる。また、鍔部による位置規制は、被加工鉄筋の外面を無理やり押さえ付ける位置規制ではないので、鍔部と被加工鉄筋との必要以上のこすれが回避され、曲げ加工精度が良好になる。
【0016】
〔4〕の鉄筋曲げ機によれば、力点部進退駆動部は、流体シリンダによって力点部が支持できるので、力点部の進退移動の駆動力と共に弾性を兼ね備えたシンプルな構成とすることができる。
【0017】
〔5〕の鉄筋曲げ機によれば、鍔部が作用外面に対して回動面の方向に沿って相対回転可能に構成されているので、曲げ加工に際して、被加工鉄筋の外面が鍔部に当接した場合でも、被加工鉄筋との擦れを低減する方向に回転することができ、曲げ加工品の傷つけを防止することができる。
【0018】
〔6〕の鉄筋曲げ機によれば、被加工鉄筋を位置規制する面が樹脂にて構成されていることで、曲げ加工に際して、被加工鉄筋の側面が鍔部に当接した場合でも、被加工鉄筋との擦れによる曲げ加工品の傷つけを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態の鉄筋曲げ機の斜視図である。
図2図1に示す鉄筋曲げ機における要部拡大正面図である。
図3図2に示す鉄筋曲げ機において、被加工鉄筋が挿入された状態を示す要部拡大側面図である。
図4図1に示す鉄筋曲げ機における力点部進退駆動部を示す要部側面図である。
図5図1に示す鉄筋曲げ機において、力点部が被加工鉄筋に接近した状態を示す要部拡大側面図である。
図6図1に示す鉄筋曲げ機において、力点部が基準面部側に移動した状態を示す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態の鉄筋曲げ機について、図1図6を参照して説明する。なお、以下の記載において、上下とは、鉄筋曲げ機を設置した状態での上下を云い、正面側とは、鉄筋曲げ機を正面から見て手前側或いは前側を云い、その反対側を後方側或いは奥側と云う。また、左側、右側或いは左右とは、鉄筋曲げ機を正面側から見た場合の左右を云うものとする。
【0021】
図1に示す鉄筋曲げ機1は、被加工鉄筋30(図2参照)を曲げ加工するものである。この鉄筋曲げ機1は、例えば、前加工において所定の長さに被加工鉄筋30を切断する鉄筋切断機(不図示)と共に設置された一連の鉄筋加工設備の一部として設けられている。例えば、鉄筋加工設備としては、図1に示す鉄筋曲げ機1に対して、鉄筋切断機が接近して併設され、また、鉄筋曲げ機1に対して、切断された被加工鉄筋30を把持して正面側から供給する供給装置(不図示)を備えている。
【0022】
鉄筋曲げ機1は、図1及び図2に示すように、被加工鉄筋30の曲げ加工を行うための支点部7と、支点部7の周りを回動可能に設けられた力点部10と、被加工鉄筋30の径方向の一端側(奥側)において曲げ加工に際して加工基準面となる基準面部5と、曲げ機本体1b内には、力点部10を支持して力点部10を加工基準面と直交する方向に進退駆動する力点部進退駆動部20(図4参照)と、を備えている。
【0023】
なお、力点部10とは支点部7を挟んで反対側(左側)には、被加工鉄筋30を曲げ加工する際に、被加工鉄筋30の他端側(図中において左側)を位置規制する端部保持部6が設けられている。この端部保持部6は、例えば、上下に所定の間隔を開けて正面側に突出する上下一対の突出部6a,6bにて構成されている。
【0024】
基準面部5は、被加工鉄筋30を曲げ加工をする際に、被加工鉄筋30の奥側の位置を規制する平板状の比較的広い板状部材にて構成されている。基準面部5は、例えば図示の如く、鉄筋曲げ機1の正面側を略覆う構成となっている。したがって、被加工鉄筋30は、力点部10によって曲げられる過程において、回転移動する一端側(図中において右側)が基準面部5に沿うように移動する。
【0025】
支点部7は、支点支持部4に設けられている。この支点支持部4は、基準面部5よりも若干奥側において力点部10の回転中心領域まで張り出した構成となっている。すなわち、支点支持部4は、その奥側に配置されて基準面部5に対して窪み部9を形成するように位置する回動ベース部3の前面側に張り出している。
【0026】
支点部7は、力点部10の回転中心に接近した位置において、上下に一対の支点部材7a及び支点部材7bが支点支持部4から正面側に突出している。
支点部材7a,7bの外周面は、それぞれ、力点部10の回動領域に対面する位置に円弧状に構成された支点軸領域7af,7bfが設けられており、被加工鉄筋30の曲り形状が規定される。
また、支点部材7a,7bの外周面には、それぞれ、支点軸領域7af,7bfを基準として力点部10から離れる位置に、規制領域7ar,7brが設けられている。これらの規制領域7ar,7brは、所定の間隔で配置されており、曲げ加工に際して、被加工鉄筋30の径方向の位置を規制する。
【0027】
また、下側の支点部材7bには、この支点部材7bよりも手前側に張り出した棒状の鉄筋受部8が設けられている。この鉄筋受部8は、支点部材7bの高さと同じ高さ(図3参照)、すなわち、被加工鉄筋30を支持する面が面一になるように設けられている。この鉄筋受部8は、被加工鉄筋30を曲げ加工部にセットするときのガイド機能を有する。要するに、例えば、供給装置が被加工鉄筋30を把持してセットする際に、被加工鉄筋30の挿入時のガイド機能を有しており、被加工鉄筋30を支点部7に導入し易くできる。
【0028】
力点部10は、その全体形状としては円柱形状であり回動ベース部3(回動駆動部)に設けられている。したがって、力点部10は、回動ベース部3が回転することによって、支点部7を中心にして所定方向に回動して、被加工鉄筋30の曲げ加工を行うことが出来る。力点部10は、その正面側(先端側)には、他の部分よりも力点部10の回動面方向に沿って突出した鍔部12を備えている(図3参照)。力点部10において、鍔部12よりも小径に構成された部分は、被加工鉄筋30を曲げる際に鉄筋外面と接して曲げ力を付与する作用外面11である。この作用外面11を構成する円筒部分は、回動ベース部3に設けられた支持軸20f(図4参照)に対して回転可能に取り付けられている。支持軸20fは、基準面部5に対して垂直方向に延出された軸であり、後述する力点部進退駆動部20の一部として設けられている。
【0029】
回動ベース部3は、力点部10が基準面部5よりも内側に移動可能なように、前掲のごとく、基準面部5から後方に後退した窪み部9を構成している。この窪み部9は、鉄筋曲げ機1を稼動させない場合等において、力点部10が装置の外方に突出しない収納状態にでき、力点部10の保護ができる。
【0030】
力点部10の被加工鉄筋30を位置規制するときの移動は、二段階の工程で行われる。すなわち、回動ベース部3によって回動駆動されて作用外面11が被加工鉄筋30に接近する第一段階と、力点部進退駆動部20によって鍔部12が被加工鉄筋30を基準面部5側に位置規制する第二段階と、がある。これは、被加工鉄筋30を基準面部5側へ移動させる際には、力点部10は、被加工鉄筋30と作用外面11の下端部11dが接触する直前の状態で一旦停止し(図5参照)、その後、下端部11dが鉄筋外面に接していない状態のまま基準面部5側に被加工鉄筋30を移動する(図6参照)。
【0031】
作用外面11は、鍔部12側に向かってその径が大きくなるように僅かな傾斜構造を有している。これにより、複数の被加工鉄筋30を同時に曲げ加工するときに、均一な曲げ加工ができる。要するに、力点部10は、基準面部5側から正面側に向かった片支持構造であるので、曲げ加工に際して力点部10の先端側(鍔部12側)が僅かではあるが反り返るよう撓むことを前提としており、これをキャンセリングする構造である。
【0032】
図3に示すように、鍔部12において、基準面部5に対面する側の側面12wは、合成樹脂を備えている。すなわち、被加工鉄筋30と接触する面が合成樹脂にて構成されていることで、被加工鉄筋30に対してソフトな接触が可能である。なお、側面12wを構成する合成樹脂は、例えば、図示の如く所定の厚みを有する円環状のものを設置する構成、或いは鍔部12の側面12wから連続するように所定の幅12uで鍔部12の外周面を覆うような構成であっても良い。
【0033】
また、鍔部12は、作用外面11に対して相対回転可能(回動面に沿って回転可能)に構成されている。すなわち、鍔部12は、軸12fに対して、作用外面11とは独立して回転可能に設けられている。
【0034】
力点部進退駆動部20は、前掲のように力点部10を基準面部5と直交する方向に進退駆動する部分である。図4に示すように、力点部進退駆動部20は、エアシリンダ等の流体シリンダ20a、力点部10を支持する支持軸20f、エア供給系(不図示)並びに駆動制御系(不図示)等を備えている。
【0035】
力点部進退駆動部20は、基準面部5に対して、力点部10を、最も前進した第1位置A(正面側に突出)と、最も後退した第2位置B(窪み部9内に引っ込んだ位置)と、の間において進退移動自在にしている。したがって、力点部進退駆動部20の駆動により、鍔部12が、例えば第1位置Aから第2位置Bの方向へ動いて第3位置Cまで移動することで、被加工鉄筋30を、鍔部12にて基準面部5側へ移動させることができる。なお、第3位置Cへの移動によって被加工鉄筋30を位置規制するが、この第3位置Cは、被加工鉄筋30のセット本数や鉄筋径等により変化するものであり、適宜設定することができる。
【0036】
力点部進退駆動部20は、被加工鉄筋30を位置規制する際、力点部10が基準面部5から離れる方向の力に対して弾性を付与する。これは、支持軸20fが流体シリンダ20aのピストンロッドと直結されていることで、ピストン内のエアの伸縮により弾性力が付与される。また、より積極的に弾性力を利用する場合には、ピストン表裏両側からの流体圧差を利用して動作するエアシリンダを用いることができる。この場合、ピストン表裏両側におけるエア圧力差を調整することで、所定方向の弾性力を変えることができる。このようにすることで、エア圧力の調整によって弾性力(所定位置に停止している維持力)の調節が可能である。
【0037】
以下、鉄筋曲げ機1の動作について、図2及び図3並びに図5及び図6を参照して説明する。
先ず、被加工鉄筋30が、鉄筋曲げ機1の正面側から、例えば2本セットされる。この場合、図2及び図3に示すように、この状態では、被加工鉄筋30は、支点部7上に置かれた状態でセットされている。このとき、力点部10は、被加工鉄筋30から上方に離れた待機位置にある。このとき、力点部10は、基準面部5に対する位置が最も離れた第1位置A(図4参照)に位置となっている。また、セットされた被加工鉄筋30同士は、その径方向において、適当な間隔が開いている状態で正確な位置決めがされていない。
【0038】
その後、回動ベース部3が駆動されて力点部10が時計回りの方向に回動するが、この回動は、図2及び図5に示すように、力点部10が被加工鉄筋30に接触する直前の位置(図2に示すY1の位置)で停止する。この第一段階の移動では、力点部10の作用外面11が被加工鉄筋30に接触しない位置で且つ鍔部12が被加工鉄筋30よりも正面側、すなわち、鍔部12が被加工鉄筋30を基準面部5との間に挟む位置となっている。このように、作用外面11が鉄筋外面に接触せずに停止することで、力点部10の移動慣性により被加工鉄筋30に対して不要な衝突・衝撃・振動が加わらない。
【0039】
その後、図6に示すように、力点部10は、力点部進退駆動部20の駆動によって基準面部5側に移動する。この移動によって、被加工鉄筋30は基準面部5と鍔部12との間に挟まれるようにして、曲げ加工位置に正確に位置決めされる。
この状態で、回動ベース部3が時計回りの方向に再度駆動される。これによって、力点部10は、作用外面11が被加工鉄筋30に接し、被加工鉄筋30に曲げ力を付与した状態で回動(図2に示すY2の状態)して曲げ加工が行われる。ここで、作用外面11が被加工鉄筋30に接触する際は、作用外面11が鉄筋外面に接近した状態からの接触となる。
【0040】
このように、本実施形態においては、力点部10が鍔部12を有していることで、鍔部12によって、曲げ加工が正確に行える基準面部5側へ被加工鉄筋30を自動的に移動させることができる。また、曲げ加工の動作に際しては、鍔部12と基準面部5によって被加工鉄筋30の径方向の位置を規制することができる。この結果、被加工鉄筋30の曲げ動作中の挙動を安定させることができ、ひねり(曲げ加工された被加工鉄筋30に生じる力点部10の回動面とは交差する方向にずれる曲り)が抑えられた安定した曲げ加工品を提供できる。
【0041】
また、本実施形態においては、力点部10は、鍔部12と基準面部5との間に被加工鉄筋30を挟む位置へ移動する際に、被加工鉄筋30に接触する直前の状態で、力点部10を基準面部5側に移動させることで、被加工鉄筋30に対して移動方向とは交差する方向の不要な接触(加圧)を避けることができる。これにより、被加工鉄筋30の挙動を安定させることができる。この結果、鉄筋曲げ加工を良好に行うことができる。
【0042】
本実施形態においては、被加工鉄筋30の曲げ加工時の位置規制において、力点部10が基準面部5から離れる方向の力に弾性を有するので、被加工鉄筋30が鍔部12に当る状態が生じた際には、被加工鉄筋30の挙動を無理やり押さえ込むことなく弾性力持って柔軟に接触することができる。この結果、被加工鉄筋30の不測の挙動に対応して柔軟に対応でき、ひねりの発生を抑えた高品質の曲げ加工品を提供することができる。また、鍔部12による位置規制は、被加工鉄筋30の外面を無理やり押さえ付ける位置規制ではないので、鉄筋曲げ加工精度が良好になる。
【0043】
また、本実施形態においては、力点部進退駆動部20は、流体シリンダ20aによって力点部10が支持されるので、力点部10の進退移動の駆動力と弾性を兼ね備えたシンプルな構成とすることができる。
【0044】
また、本実施形態のように、鍔部12が作用外面11に対して回動面の方向に沿って相対回転可能に構成されているので、曲げ加工に際して、被加工鉄筋30の側面が鍔部12に当接した場合でも、被加工鉄筋30との擦れを低減する方向に回転することができ、曲げ加工品の傷つけを防止することができる。
【0045】
また、本実施形態のように、被加工鉄筋30を位置規制する面が樹脂にて構成されていることで、曲げ加工に際して、被加工鉄筋30の側面が鍔部12に当接した場合でも、被加工鉄筋30との擦れによる曲げ加工品の傷つけを防止することができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明の範疇において適宜変更することができる。例えば、上記実施形態においては、力点部10が下方に向かって回動(図1において時計回りの方向の回動)する場合について説明したが、これに限るものではなく、これとは反対に、反時計回りに回動して、被加工鉄筋30を上方に向かって曲げ加工をする場合もある。
【0047】
また、上記実施形態においては、支点部7を構成する支点部材7a,7bに規制領域7ar,7brを設ける構成としたが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、支点部7には規制領域7ar,7brを設けずに、別途、所定の間隔で配置された規制領域を有する規制部を配置する構成であっても良い。
【0048】
また、上記実施形態においては、鍔部12は、被加工鉄筋30と接触する面が合成樹脂にて構成されたが、その全体を合成樹脂にて覆う構成でも良く、また、必ずしも合成樹脂を設けない構成であっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 鉄筋曲げ機
5 基準面部
7 支点部
7a,7b 支点部材
7af,7bf 支点軸領域
7ar,7br 規制領域
10 力点部
11 作用外面
12 鍔部
20 力点部進退駆動部
20a 流体シリンダ
30 被加工鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6