IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特開-車両用灯具 図1
  • 特開-車両用灯具 図2
  • 特開-車両用灯具 図3
  • 特開-車両用灯具 図4
  • 特開-車両用灯具 図5
  • 特開-車両用灯具 図6
  • 特開-車両用灯具 図7
  • 特開-車両用灯具 図8
  • 特開-車両用灯具 図9
  • 特開-車両用灯具 図10
  • 特開-車両用灯具 図11
  • 特開-車両用灯具 図12
  • 特開-車両用灯具 図13
  • 特開-車両用灯具 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060067
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/20 20180101AFI20220407BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20220407BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20220407BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220407BHJP
   F21Y 113/13 20160101ALN20220407BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/14
F21W103:60
F21Y115:10
F21Y113:13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168059
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】相磯 良明
(57)【要約】
【課題】描画用配光パターンを形成するためのプロジェクタ型の車両用灯具において、周囲に対する注意喚起を効果的に行い得る構成とする。
【解決手段】光源ユニット20と投影レンズ30との間に遮光部材40を配置し、その遮光形状に沿った描画用配光パターンを形成する構成とする。その際、遮光部材40として、複数の開口部40cが投影レンズ30の光軸Axに関して周方向に間隔をおいて形成された構成とする。また、光源ユニット20として、複数の開口部40cの各々の灯具後方側に複数の発光素子22の各々が配置された状態で、その各々が選択的に点灯し得る構成とする。そして、複数の発光素子22の同時点灯により、灯具前方路面に略円環状の配置で複数の配光パターンを形成して描画を行い、また、その一部の順次点灯により、灯具前方路面に配光パターンを略円弧状のラインに沿って移動させてアニメーションのような描画を行うようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源ユニットからの光を、投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、描画用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記光源ユニットと上記投影レンズとの間に、上記光源ユニットから上記投影レンズへ向かう光の一部を遮光するための遮光部材が配置されており、
上記遮光部材は、複数の開口部が上記投影レンズの光軸に関して周方向に間隔をおいて形成された構成となっており、
上記光源ユニットは、上記複数の開口部の各々の灯具後方側に複数の発光素子の各々が配置された状態で、上記複数の発光素子の各々が選択的に点灯し得るように構成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記複数の発光素子は、少なくとも2つの発光素子が互いに異なる発光色で点灯し得るように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記複数の開口部は、上記光軸と直交する平面に対して傾斜した傾斜面に沿って配置されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記遮光部材は、上記光軸を中心にして回転し得るように構成されており、
上記複数の開口部は、上記光軸を中心とする同一円周上に等間隔で配置されている、ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記光源ユニットは、上記複数の発光素子が上記光軸を中心にして回転し得るように構成されている、ことを特徴とする請求項4記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、灯具前方路面等に描画用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具の構成として、光源ユニットからの光を、投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成されたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具からの照射光により、描画用配光パターン(すなわち灯具前方路面等に文字や記号等の描画を行うための配光パターン)を形成し得るように構成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-189198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにして描画用配光パターンを形成することにより、夜間の車両走行時等に周囲に対して自車の意思表示を行うことでき、これにより他の車両や歩行者等に注意喚起を促すことが可能となるが、その際、周囲に対する注意喚起を効果的に行い得る灯具構成とすることが望まれる。
【0006】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、光源ユニットからの光を、投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、描画用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、周囲に対する注意喚起を効果的に行うことができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、描画用配光パターンを形成するための具体的な構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0008】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
光源ユニットからの光を、投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、描画用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記光源ユニットと上記投影レンズとの間に、上記光源ユニットから上記投影レンズへ向かう光の一部を遮光するための遮光部材が配置されており、
上記遮光部材は、複数の開口部が上記投影レンズの光軸に関して周方向に間隔をおいて形成された構成となっており、
上記光源ユニットは、上記複数の開口部の各々の灯具後方側に複数の発光素子の各々が配置された状態で、上記複数の発光素子の各々が選択的に点灯し得るように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0009】
上記「描画用配光パターン」が形成される対象は、典型的には灯具前方路面であるが、それ以外にも灯具前方に配置された壁面や灯具前方へ向けて延びる壁面等が採用可能である。
【0010】
上記「遮光部材」は、複数の開口部が投影レンズの光軸に関して周方向に間隔をおいて形成された構成となっていれば、複数の開口部の具体的な配置や各開口部の具体的な開口形状等は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
本願発明に係る車両用灯具は、光源ユニットからの光を、投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射する構成となっているが、光源ユニットと投影レンズとの間には遮光部材が配置されているので、この遮光部材によって光源ユニットから投影レンズへ向かう光の一部を遮光することにより、その遮光形状に沿った描画用配光パターンを形成することができる。
【0012】
その際、遮光部材は、複数の開口部が投影レンズの光軸に関して周方向に間隔をおいて形成された構成となっており、また、光源ユニットは、複数の開口部の各々の灯具後方側に複数の発光素子の各々が配置された状態で、複数の発光素子の各々が選択的に点灯し得る構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0013】
すなわち、複数の発光素子を同時に点灯させることにより、灯具前方路面等に略円弧状の配置で複数の文字や記号等の描画を行うことができ、また、複数の発光素子のうちの一部を順次点灯させることにより、灯具前方路面等に文字や記号等を略円弧状のライン上においてアニメーションのような描画を行うことができ、これにより周囲に対する注意喚起機能を高めることができる。
【0014】
このように本願発明によれば、光源ユニットからの光を、投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することにより、描画用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、周囲に対する注意喚起を効果的に行うことができる。
【0015】
上記構成において、さらに、複数の発光素子として、少なくとも2つの発光素子が互いに異なる発光色で点灯し得るように構成されたものとすれば、描画用配光パターンをカラフルに形成することができる。
【0016】
上記構成において、さらに、複数の開口部として、投影レンズの光軸と直交する平面に対して傾斜した傾斜面に沿って配置された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0017】
すなわち、灯具前方路面に描画用配光パターンを形成する際には、車両用灯具からの照射光は斜め下向きの光となる。このため、投影レンズの光軸の上方側に位置する開口部の反転投影像として形成される描画用配光パターンは、下方側に位置する開口部の反転投影像として形成される描画用配光パターンよりも、灯具前方路面の近距離領域に形成されることとなる。
【0018】
そこで、複数の開口部として、投影レンズの光軸と直交する平面に対して傾斜した傾斜面に沿って配置された構成とすることにより、描画用配光パターンの形成位置にかかわらず、これらをボケの少ない配光パターンとして形成することができる。
【0019】
また、このような構成を採用することにより、灯具前方へ向けて延びる壁面等に描画用配光パターンを形成する際にも、描画用配光パターンをボケの少ない配光パターンとして形成することができる。
【0020】
その際、上記「傾斜面」は、平面であってもよいし曲面であってもよい。
【0021】
上記構成において、さらに、遮光部材として、投影レンズの光軸を中心にして回転し得る構成とした上で、複数の開口部が光軸を中心とする同一円周上に等間隔で配置された構成とすれば、遮光部材の回転によって、描画用配光パターンを構成する複数の文字や記号等の配置を変化させることができ、これにより周囲に対する注意喚起機能を高めることができる。
【0022】
このよう構成を採用した上で、光源ユニットとして、複数の発光素子が投影レンズの光軸を中心にして回転し得る構成とすれば、複数の開口部と複数の発光素子との組合せを変化させることによって、描画用配光パターンを構成する複数の文字や記号等の明るさや色を変化させることができ、これにより周囲に対する注意喚起機能をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
図2図1のII-II線断面図
図3図1のIII-III線断面図
図4】上記車両用灯具を車両に装着した状態で示す側面図
図5】上記車両用灯具からの照射光により形成される描画用配光パターンを透視的に示す図
図6】上記描画用配光パターンの一部が選択的に形成される様子を一例として示す図
図7】上記実施形態の第1変形例を示す、図1と同様の図
図8】上記第1変形例の作用を示す、図5と同様の図
図9】上記第1変形例の作用を示す、図6と同様の図
図10】上記実施形態の第2変形例を示す、図1と同様の図
図11】上記実施形態の第3変形例を示す、図2と同様の図
図12】上記第3変形例の作用を示す、図4と同様の図
図13】上記実施形態の第4変形例を示す、図1と同様の図
図14】上記第4変形例の作用を示す、図5と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。また、図2は、図1のII-II線断面図であり、図3は、図1のIII-III線断面図である。さらに、図4は、車両用灯具10を車両100に装着した状態で示す側面図である。
【0026】
これらの図において、Xで示す方向が「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。これら以外の図においても同様である。
【0027】
図4に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両100の前端部に設けられる描画用ランプであって、その灯具前方が車両前方に対して斜め下向きになるように配置された状態で車両100に装着されている。そして、この車両用灯具10からの照射光によって、車両前方路面2に描画用配光パターンPA(これについては後述する)を形成するようになっている。
【0028】
図1~3に示すように、車両用灯具10は、プロジェクタ型の灯具ユニットであって、光源ユニット20からの光を、投影レンズ30を介して灯具前方へ向けて照射するように構成されている。なお、図1~3においては、灯具前後方向が水平方向に延びるように配置した状態で車両用灯具10を示している。
【0029】
投影レンズ30は、灯具前後方向に延びる光軸Axを有しており、その前面が凸曲面状に形成された平凸非球面レンズとして構成されている。この投影レンズ30は、その外周縁部においてベース部材50のレンズ支持部50Aに支持されている。
【0030】
光源ユニット20と投影レンズ30との間には、光源ユニット20から投影レンズ30へ向かう光の一部を遮光するための遮光部材40が配置されている。
【0031】
この遮光部材40は、投影レンズ30の光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる平板状部材で構成されており、12個の開口部40cが光軸Axに関して周方向に間隔をおいて形成された構成となっている。
【0032】
その際、12個の開口部40cは、光軸Axを中心とする同一円周上に等間隔をおいて配置されており、いずれも同一形状に形成されている。具体的には、各開口部40cは、径方向に関しては一定幅で周方向に円弧状に延びる略矩形状の開口形状で、遮光部材40を灯具前後方向に貫通するように形成されており、その内周面にはアルミ蒸着等の鏡面処理が施されている。
【0033】
光源ユニット20は、12個の発光素子22とこれらを搭載する基板24とを備えており、その基板24においてベース部材50の光源支持部50Bに支持されている。
【0034】
12個の発光素子22は、いずれも緑色に発光する発光ダイオードで構成されており、その発光面を灯具前方へ向けた状態で、光軸Axを中心とする同一円周上に等間隔をおいて配置されている。
【0035】
光源ユニット20は、12個の発光素子22の各々が車両走行状況等に応じて選択的に点灯し得る構成となっている。これを実現するため、各発光素子22は図示しない電子制御ユニットに接続されており、この電子制御ユニットによって自車の走行状況に応じてその点消灯制御が行われるようになっている。
【0036】
ベース部材50は、その光源支持部50Bが光軸Axと直交する鉛直面に沿って平板状に延びるように形成されている。また、ベース部材50は、そのレンズ支持部50Aの下半部と光源支持部50Bとの間において灯具前後方向に延びるように形成された連結部50Cを備えている。
【0037】
遮光部材40は、ベース部材50の連結部50Cに対して位置決めされた状態で支持されている。その際、遮光部材40は、その前面40aが灯具前後方向に関して投影レンズ30の後側焦点Fと一致する位置に配置されている。
【0038】
ベース部材50は、金属製部材で構成されており、光源ユニット20で発生する熱を放散させるヒートシンクとして機能するようになっている。
【0039】
光源ユニット20を構成する12個の発光素子22は、12個の開口部40cの各々の灯具後方側に位置するように配置されている。具体的には、各発光素子22は、遮光部材40の後面40bの灯具後方近傍において各開口部40cの開口中心に位置するように配置されている。
【0040】
車両用灯具10においては、各発光素子22から出射した光の大半が遮光部材40の各開口部40cに入射した後、その一部が直射光として各開口部40cの前端位置に到達し、残りが各開口部40cの内周面で鏡面反射した後その前端位置に到達するようになっている。そして、各開口部40cから出射して投影レンズ30に入射した光によって、各開口部40cの前端位置の開口形状が投影レンズ30による反転投影像として灯具前方の照射対象面に形成されるようになっている。
【0041】
その際、各開口部40cは、光軸Axから径方向に一定程度離れた位置に形成されているので、投影レンズ30から灯具前方へ向けて出射する光は、投影レンズ30の像面湾曲の影響により、平行光に対して僅かに収束する光となる。
【0042】
なお、図2、3において2点鎖線で示す曲線Cが、投影レンズ30の像面湾曲を示す曲線である。
【0043】
したがって、図4に示すように、車両100に装着された車両用灯具10から斜め下前方へ向けて照射された光は、僅かに収束する光として車両前方路面2に到達することとなり、平行光として車両前方路面2に到達する場合に比して、その収束分だけ車両前方路面2に形成される反転投影像の鮮明度が高いものとなる。
【0044】
図5は、本実施形態に係る車両用灯具10からの照射光により車両前方路面2に形成される描画用配光パターンPAを透視的に示す図である。
【0045】
この路面描画用配光パターンPAは、図示しない他の車両用灯具からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンPLと共に(あるいは独立して)形成されるようになっている。
【0046】
図5においては、12個の発光素子22がすべて点灯した状態で形成される描画用配光パターンPAを示している。
【0047】
描画用配光パターンPAについて説明する前に、ロービーム用配光パターンPLについて説明する。
【0048】
ロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁にカットオフラインCL1、CL2を有している。
【0049】
カットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V-V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V-V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0050】
ロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV-V線との交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。
【0051】
描画用配光パターンPAは、周囲への注意喚起を促すための図形等を描画する配光パターンであって、車両前方路面2においてロービーム用配光パターンPLの手前側の位置に形成されるようになっている。
【0052】
図5に示す描画用配光パターンPAは、12個の円弧状の配光パターンPaが同一円周上に等間隔をおいて形成された間欠的円環状の配光パターンとして形成されている。
【0053】
12個の円弧状の配光パターンPaは、遮光部材40における12個の開口部40cの前端位置の開口形状の反転投影像として形成されている。
【0054】
その際、12個の発光素子22は、いずれも緑色に発光する発光ダイオードで構成されているので、描画用配光パターンPAも緑色の配光パターンとして形成されている。
【0055】
夜間の車両走行時に、このような間欠的円環状の描画用配光パターンPAを形成することにより、例えば車両前方の交差点に自車が近づいていることを周囲に報知して注意喚起を促すようになっている。
【0056】
図6は、描画用配光パターンPAを構成する12個の配光パターンPaの一部が選択的に形成される様子を一例として示す図である。
【0057】
図6においては、図1に示す12個の発光素子22が反時計回り方向(灯具正面視では時計回り方向)に1個ずつ順次点灯することにより、描画用配光パターンPAを構成する12個の配光パターンPaが反時計回り方向に1個ずつ順次形成される様子を示している。
【0058】
このように配光パターンPaの形成位置が周方向に移動する描画用配光パターンPAを形成することにより、例えば車両前方の交差点に自車が近づいていることを分かりやすく周囲に報知して注意喚起機能を高めることが可能となる。
【0059】
なお、12個の配光パターンPaを時計回り方向に1個ずつ順次形成するようにした場合においても同様である。
【0060】
次に本実施形態の作用について説明する。
【0061】
本実施形態に係る車両用灯具10は、光源ユニット20からの光を、投影レンズ30を介して灯具前方へ向けて照射する構成となっているが、光源ユニット20と投影レンズ30との間には遮光部材40が配置されているので、この遮光部材40によって光源ユニット20から投影レンズ30へ向かう光の一部を遮光することにより、その遮光形状に沿った描画用配光パターンPAを形成することができる。
【0062】
その際、遮光部材40は、12個の開口部40cが投影レンズ30の光軸Axに関して周方向に間隔をおいて形成された構成となっており、また、光源ユニット20は、12個の開口部40cの各々の灯具後方側に12個の発光素子22の各々が配置された状態で、12個の発光素子22の各々が選択的に点灯し得る構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0063】
すなわち、12個の発光素子22を同時に点灯させることにより、灯具前方路面2に略円環状の配置で12個の配光パターンPaを描画用配光パターンPAとして形成することができ、また、12個の発光素子22のうちの一部を順次点灯させることにより、灯具前方路面2に描画用配光パターンPAを構成する配光パターンPaを略円弧状のラインに沿って移動させてアニメーションのような描画を行うことができ、これにより周囲に対する注意喚起機能を高めることができる。
【0064】
このように本実施形態によれば、光源ユニット20からの光を、投影レンズ30を介して灯具前方へ向けて照射することにより、描画用配光パターンPAを形成するように構成された車両用灯具10において、周囲に対する注意喚起を効果的に行うことができる。
【0065】
上記実施形態においては、12個の発光素子22がいずれも緑色に発光する発光ダイオードで構成されているものとして説明したが、緑色以外にも例えば青色や白色等の発光色を有する構成とすることも可能であり、その際、12個の発光素子22のうちの一部が緑色以外の発光色を有する構成とすることも可能である。
【0066】
上記実施形態においては、12個の開口部40cが円環状に配置された構成とすることにより描画用配光パターンPAとして12個の配光パターンPaが略円環状の配置で形成され得る構成となっているが、複数の開口部40cが一定の中心角の範囲内で円弧状に配置された構成とすることにより描画用配光パターンPAとして複数の配光パターンPaが略円弧状の配置で形成され得る構成とすることも可能である。
【0067】
上記実施形態においては、車両用灯具10からの照射光によって車両前方路面2に描画用配光パターンPAを形成するものとして説明したが、灯具前方に配置された壁面や灯具前方へ向けて延びる壁面等に描画用配光パターンPAを形成する構成とすることも可能である。
【0068】
上記実施形態においては、車両用灯具10が車両100の前端部に設けられているものとして説明したが、車両100の後端部や側面部等に設けられる構成とすることも可能である。
【0069】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0070】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0071】
図7は、本変形例に係る車両用灯具110を示す、図1と同様の図である。
【0072】
本変形例の基本的な構成は、上記実施形態の場合と同様であるが、光源ユニット120および遮光部材140の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0073】
すなわち、本変形例の光源ユニット120も、12個の発光素子122A、122Bが光軸Axを中心とする同一円周上に等間隔をおいて配置された状態で基板124に搭載された構成となっているが、6個の発光素子122Aは緑色に発光する発光ダイオードで構成されており、残り6個の発光素子122Bは青色に発光する発光ダイオードで構成されている。その際、12個の発光素子122A、122Bは、6個の発光素子122Aと6個の発光素子122Bとが左右対称の位置関係で周方向に交互に配置されている。
【0074】
また、本変形例の遮光部材140も、12個の開口部140c1、140c2が、光軸Axを中心とする同一円周上に等間隔をおいて配置された構成となっているが、6個の開口部140c1は反時計回り方向(灯具正面視では時計回り方向)を向いた矢印形の開口形状で形成されており、残り6個の開口部140c2は時計回り方向を向いた矢印形の開口形状で形成されている。その際、12個の開口部140c1、140c2は、開口部140c1と開口部140c2とが周方向に交互に配置された状態で12個の発光素子122A、122Bと対応する位置に形成されている。なお本変形例においても、各開口部140c1、140c2は、遮光部材140を灯具前後方向に貫通するように形成されており、その内周面にはアルミ蒸着等の鏡面処理が施されている。
【0075】
図8は、本実施形態に係る車両用灯具110からの照射光により車両前方路面2に形成される描画用配光パターンPBを透視的に示す図である。
【0076】
図8に示す描画用配光パターンPBは、12個の矢印形の配光パターンPb1、Pb2が同一円周上に等間隔をおいて交互に向き合うように形成された間欠的円環状の配光パターンとして形成されている。
【0077】
12個の配光パターンPb1、Pb2のうち、6個の配光パターンPb1は、6個の開口部140c1の前端位置の開口形状の反転投影像として形成されており、6個の配光パターンPb2は、6個の開口部140c2の前端位置の開口形状の反転投影像として形成されている。
【0078】
その際、6個の開口部140c1に対応する位置に配置された6個の発光素子122Aは緑色に発光する発光ダイオードで構成されているので、6個の配光パターンPb1は緑色の配光パターンとして形成されている。また、6個の開口部140c2に対応する位置に配置された6個の発光素子122Bは青色に発光する発光ダイオードで構成されているので、6個の配光パターンPb2は青色の配光パターンとして形成されている。
【0079】
夜間の車両走行時に、このように互いに逆方向を向いた矢印形の12個の配光パターンPb1、Pb2が、異なる色で交互に配置された間欠的円環状の描画用配光パターンPBを形成することにより周囲への注意喚起を高めることができる。
【0080】
図9は、描画用配光パターンPBを構成する12個の配光パターンPb1、Pb2の一部が選択的に形成される様子を一例として示す図である。
【0081】
図9においては、図7に示す6個の発光素子122Aが反時計回り方向(灯具正面視では時計回り方向)に1個ずつ順次点灯することにより、描画用配光パターンPBを構成する6個の配光パターンPb1が反時計回り方向に1個ずつ順次形成される様子を示している。
【0082】
このように矢印形の配光パターンPb1の形成位置が矢印が示す周方向に移動する描画用配光パターンPBを形成することにより、周囲への注意喚起をより一層高めることができる。
【0083】
なお、6個の発光素子122Bを時計回り方向に1個ずつ順次点灯させて、6個の配光パターンPb2を1個ずつ時計回り方向に順次形成するようにした場合においても同様である。
【0084】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0085】
図10は、本変形例に係る車両用灯具210を示す、図1と同様の図である。
【0086】
本変形例の基本的な構成は、上記実施形態の場合と同様であるが、光源ユニット220および遮光部材240の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0087】
すなわち、本変形例の光源ユニット220は、8個の発光素子222が光軸Axに関して周方向に等間隔をおいて配置された状態で基板224に搭載された構成となっている。その際、8個の発光素子222は、光軸Axを中心とする正方形の各角部と各辺の中点に配置されている。8個の発光素子222は、いずれも緑色に発光する発光ダイオードで構成されており、その各々が選択的に点灯し得るようになっている。
【0088】
また、本変形例の遮光部材240は、8個の開口部240c1~240c8が、8個の発光素子222と対応する位置に形成された構成となっている。その際、光軸Axの真上に位置する240c1は、上向き直線状の矢印形状で形成されており、その右側(灯具正面視では左側)に位置する240c2は、右向きL字状の矢印形状で形成されており、光軸Axの右側の真横に位置する240c3は右向き直線状の矢印形状で形成されている。また、開口部240c4、240c5は、開口部240c2、240c1と上下対称の矢印形状で形成されており、開口部240c6、240c7、240c8は、開口部240c4、240c3、240c2と左右対称の矢印形状で形成されている。
【0089】
なお本変形例においても、各開口部240c1~240c8は、遮光部材240を灯具前後方向に貫通するように形成されており、その内周面にはアルミ蒸着等の鏡面処理が施されている。
【0090】
本変形例の構成を採用することにより、次のような作用効果を得ることができる。
【0091】
すなわち、本変形例に係る車両用灯具210においては、各発光素子222から出射した後、各開口部240c1~240c8を介して投影レンズ30に入射した光によって、各開口部240c1~240c8の前端位置の開口形状の反転投影像として互いに異なる形状の配光パターンを車両前方路面2に形成することができ、これにより周囲への注意喚起を高めることができる。
【0092】
なお本変形例において、8個の発光素子222の一部または全部が緑色以外の光で発光する構成とすることも可能である。
【0093】
次に、上記実施形態の第3変形例について説明する。
【0094】
図11は、本変形例に係る車両用灯具310を示す、図2と同様の図である。
【0095】
本変形例の基本的な構成は、上記実施形態の場合と同様であるが、遮光部材340の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0096】
すなわち、本変形例の遮光部材340は、その前面340aが光軸Axと直交する鉛直面に対して後傾した傾斜面に沿って延びるように形成された構成となっている。その際、遮光部材340の前面340aは、上記実施形態の遮光部材40の前面40aよりも灯具後方側において(すなわち投影レンズ30の後側焦点Fよりも灯具後方側において)、凹曲線状の鉛直断面形状で左右方向に延びる凹シリンドリカル曲面で構成されている。
【0097】
なお、本変形例の遮光部材340においても、上記実施形態の場合と同様の開口形状を有する12個の開口部340cが光軸Axを中心とする同一円周上に等間隔をおいて配置されており、その内周面にはアルミ蒸着等の鏡面処理が施されている。また、本変形例の遮光部材340も、その後面340bは光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びるように形成されている。
【0098】
本変形例に係る車両用灯具310においても、遮光部材340の各開口部340cの前端位置の開口形状が投影レンズ30による反転投影像として灯具前方の照射対象面(すなわち車両前方路面2)に形成されるようになっている。
【0099】
その際、遮光部材340の前面340aは、光軸Axと直交する鉛直面に対して後傾した傾斜面に沿って延びているので、各開口部340cの前端位置は、上方側に位置するものほど、投影レンズ30の像面湾曲を示す曲線Cからの後方変位量が大きくなっている。したがって、本変形例において投影レンズ30から灯具前方へ向けて出射する光は、上記実施形態の場合よりも収束度合いが大きくなっており、かつ、上方側に位置する開口部340cからの出射光ほど収束度合いが大きくなっている。
【0100】
図12は、本実施形態に係る車両用灯具310を車両100に装着した状態で示す、図4と同様の図である。
【0101】
図12に示すように、車両100に装着された車両用灯具10から斜め下前方へ向けて照射された光は、平行光に対して僅かに収束する光として車両前方路面2に到達するが、その収束度合いは上記実施形態の場合よりも大きくかつ上方側に位置する開口部340cからの出射光ほど大きくなっているので、車両前方路面2への到達距離が異なっていても各開口部340cの開口形状が反転投影像として車両前方路面2に結像し、これにより描画用配光パターンPDを構成する各配光パターンPdが鮮明に形成される。
【0102】
本変形例の構成を採用することにより、次のような作用効果を得ることができる。
【0103】
すなわち、車両用灯具310を車両100に装着した状態で描画用配光パターンPDを形成する際には、車両用灯具310からの照射光は斜め下向きの光となる。このため、投影レンズ30の光軸Axの上方側に位置する開口部340cの反転投影像として形成される配光パターンPdは、下方側に位置する開口部340cの反転投影像として形成される配光パターンPdよりも、車両前方路面2の近距離領域に形成されることとなる。
【0104】
そこで、本変形例の遮光部材340のように、12個の開口部340cとして、投影レンズ30の光軸Axと直交する鉛直面に対して後傾した傾斜面に沿って配置された構成とすることにより、配光パターンPdの形成位置にかかわらず、これらをボケの少ない配光パターンとして形成することができる。
【0105】
その際、本変形例においては、遮光部材340の前面340aが凹曲線状の鉛直断面形状を有する凹シリンドリカル曲面で構成されているので、各配光パターンPdをより鮮明に形成することができる。
【0106】
次に、上記実施形態の第4変形例について説明する。
【0107】
図13は、本変形例に係る車両用灯具410を示す、図1と同様の図である。
【0108】
本変形例の基本的な構成は、上記実施形態の場合と同様であるが、光源ユニット420および遮光部材440の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0109】
すなわち、本変形例の光源ユニット420も、12個の発光素子422が投影レンズ30の光軸Axを中心とする同一円周上に等間隔をおいて配置された状態で基板424に搭載された構成となっているが、12個の発光素子422は互いに異なる発光色を有する発光ダイオードで構成されている。その上で、本変形例の光源ユニット420は、ベース部材450に支持されたアクチュエータ460の駆動により光軸Axを中心にして回転し得るように構成されている。
【0110】
また、本変形例の遮光部材440も、12個の開口部440cが投影レンズ30の光軸Axを中心とする同一円周上に等間隔をおいて配置された構成となっており、かつ、各開口部440cは同一の開口形状を有している。ただし、各開口部440cは、細長い矩形状の開口形状で形成されており、かつ、互いに隣接する開口部440c相互間においてその向きが徐々に変化するように形成されている。その上で、本変形例の遮光部材440は、ベース部材450に支持されたアクチュエータ470の駆動により光軸Axを中心にして回転し得るように構成されている。
【0111】
なお、各アクチュエータ460、470は、ステッピングモータ等で構成されており、図示しない電子制御ユニットによって自車の走行状況に応じてその駆動制御が行われるようになっている。
【0112】
図14は、本実施形態に係る車両用灯具410からの照射光により車両前方路面2に形成される描画用配光パターンPEを透視的に示す図である。
【0113】
図14に示す描画用配光パターンPEは、12個の細長矩形状の配光パターンPeが同一円周上に等間隔をおいて形成された間欠的円環状の配光パターンとして形成されている。
【0114】
その際、12個の配光パターンPeは、各配光パターンPe毎にその色が異なっており、また、その形成位置によって細長矩形状の外形形状の向きが異なったものとなっている。
【0115】
その上で、本変形例に係る車両用灯具410においては、アクチュエータ460を駆動して光源ユニット420を回転させることにより、12個の配光パターンPeの色を変化させ得るようになっており、かつ、アクチュエータ470を駆動して遮光部材440を回転させることにより、描画用配光パターンPEとして12個の配光パターンPeの向きを変化させ得るようになっている。
【0116】
本変形例の構成を採用することにより、次のような作用効果を得ることができる。
【0117】
すなわち、本変形例の遮光部材440は、投影レンズ30の光軸Axを中心にして回転し得る構成となっており、かつ、12個の開口部440cが光軸Axを中心とする同一円周上に等間隔で配置されているので、遮光部材440の回転によって、描画用配光パターンPEを構成する12個の配光パターンPeの配置を変化させることができ、これにより周囲に対する注意喚起機能を高めることができる。
【0118】
しかも、本変形例の光源ユニット420は、12個の発光素子422が投影レンズ30の光軸Axを中心にして回転し得る構成となっているので、12個の開口部440cと12個の発光素子422との組合せを変化させることによって、描画用配光パターンPEを構成する12個の配光パターンPeの明るさや色を変化させることができ、これにより周囲に対する注意喚起機能をさらに高めることができる。
【0119】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0120】
また本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0121】
2 車両前方路面
10、110、210、310、410 車両用灯具
20、120、220、420 光源ユニット
22、122A、122B、222、422 発光素子
24、124、224、424 基板
30 投影レンズ
40、140、240、340、440 遮光部材
40a、340a 前面
40b、340b 後面
40c、140c1、140c2、240c1、240c2、240c3、240c4、240c5、240c6、240c7、240c8、340c、440c 開口部
50、450 ベース部材
50A レンズ支持部
50B 光源支持部
50C 連結部
100 車両
460、470 アクチュエータ
Ax 光軸
C 曲線
CL1 下段カットオフライン
CL2 上段カットオフライン
E エルボ点
F 後側焦点
PA、PB、PD、PE 描画用配光パターン
Pa、Pb1、Pb2、Pd、Pe 配光パターン
PL ロービーム用配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14