(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060090
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】土嚢
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
E02B3/04 301
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168099
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】593215988
【氏名又は名称】株式会社メイコー・エンタプライズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092107
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 明廣
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118BA01
2D118BA11
2D118BA14
2D118CA07
2D118GA43
(57)【要約】
【課題】急な状況の変化による災害時に、前もって準備をすることが困難な場合、軽量で設置作業が簡単で、なおかつ水に流されず、風にも飛ばされない土嚢が求められている。
【解決手段】通水性を備える麻材で四角立方体に形成した外袋1と、外袋1内に収納される内袋2と砂鉄袋4とからなる土嚢において、前記四角立方体に形成する外袋1の上布の側部と側布上部の2ヵ所で縫製し、さらに下布の側部と側布下部の2ヵ所で縫製して開口部を2ヵ所形成した外袋の底には砂鉄袋4を2側辺はガゼット部9を設け、2側辺部に1個ずつ、2ヵ所マジック(登録商標)テープ5で着脱自在に設け、前記内袋2には、超吸水性樹脂3を中程に集まるように挿入した土嚢
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水性を備える麻材で形成した外袋と、該外袋内に収納される内袋と砂鉄袋とからなる土嚢で、前記内袋には超吸水性樹脂を挿入し、前記砂鉄袋は、前記外袋の両側に1個ずつ、計2個着脱自在に設けたことを特徴とする土嚢
【請求項2】
通水性を備える麻材で四角立方体に形成した外袋と、該外袋内に収納される内袋と砂鉄袋とからなる土嚢において、前記四角立方体に形成する外袋は、上布の側部と側布上部の2ヵ所で縫製し、さらに下布の側部と側布下部の2ヵ所で縫製して開口部を2ヵ所形成したもので、該外袋の底部には前記砂鉄袋を外袋の両側辺部に1個ずつ、2ヵ所着脱自在テープで着脱自在に設け、前記内袋には、超吸水性樹脂を中程に集まるように挿入したことを特徴とする土嚢。
【請求項3】
請求項2における土嚢において、両側布の長手方向に折り曲げ部を形成したことを特徴とする請求項2に記載の土嚢。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水膨潤性吸水性樹脂と、形状保持と洪水時、風に飛ばされたり、水に流されたりすることを防止できる作業準備を迅速に行うことができる土嚢に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、通水性を備える外袋と、該外袋内に収納された内袋とからなり、該内袋は、水溶性もしくは水分解性材料により形成されており、かつ内部に水膨潤性樹脂とともにベントナイトを収納している土嚢(例えば、特許文献1参照)が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-201709号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び
図1、
図2を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の土嚢は、透水性の袋の中に土砂を詰めるもので、重量があるため、運搬に困難を極め、さらに袋に土砂を充填する作業が必要であった。これを解決したのが前記従来の技術で、給水膨潤速度が速く、また膨潤時における内容物の漏れがなく、作業準備を迅速に行うことができる土嚢である。
しかし、膨潤後は、内袋の水膨潤性樹脂に水が吸水され、洪水の水や風に飛ばされることはないが、前もって準備をすることができるのであれば、水に流されたり、風に飛ばされることはないが、実際の災害時には、前もって準備をすることが困難な場合もあり、軽量で設置作業が簡単で、なおかつ水に流されず、風にも飛ばされない土嚢が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成できる本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りの土嚢であり、次のようなものである。
通水性を備える麻材で形成した外袋と、該外袋内に収納される内袋と砂鉄袋とからなる土嚢で、前記内袋には超吸水性樹脂を挿入し、前記砂鉄袋は、前記外袋の両側に1個ずつ、計2個着脱自在に設ける構成である。
【0006】
上記の目的を達成できる本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りの土嚢であり、次のようなものである。
通水性を備える麻材で四角立方体に形成した外袋と、該外袋内に収納される内袋と砂鉄袋とからなる土嚢において、前記四角立方体に形成する外袋は、上布の側部と側布上部の2ヵ所で縫製し、さらに下布の側部と側布下部の2ヵ所で縫製して開口部を2ヵ所形成したもので、該外袋の底部には、前記砂鉄袋を外袋の両側辺部に1個ずつ、2ヵ所着脱自在テープで着脱自在に設け、前記内袋には、超吸水性樹脂を中程に集まるように挿入するという構成である。
【0007】
上記の目的を達成できる本発明の第3発明は、請求項3に記載された通りの土嚢であり、次のようなものである。
請求項2に記載の発明に加えて、両側布の長手方向に折り曲げ部を形成した構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る土嚢は、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)砂鉄を収納した内袋が麻製の外袋の内底部に着脱自在テープ等で着脱自在に設けられているので、土嚢の水膨潤性吸水性樹脂に注水、もしくは水に浸漬することが行えない緊急時でも水に流されたり、風で飛ばされたりすることがないものである。
(2)四角立方体状に形成し、側布を折り曲げ形状にしてあるので、使用前の状態を薄くでき、水膨潤性吸水性樹脂に水が吸水され膨潤すると、折り曲げ部が張り上がり、土嚢自体の形状が安定して略同一形状になるもので、扱いがし易く、従来の土などを入れた土嚢のように同じ大きさ・形状にすえることが困難でなく、土嚢としての防水効果にも優れている。
(3)膨潤する前の本発明の土嚢は、収納スペースを取らず、さらに持ち運びが、従来の土嚢より簡易にできるため、土嚢を設置する準備が容易にでき、土嚢に注水、あるいは浸漬、または洪水による水で浸漬することで、容易に吸水樹脂が膨潤して本来の土嚢の役目を奏されるものである。
(4)収納スペースを取らないので、段ボール箱に入れて保管しておけば、超吸水性樹脂の特長である熱、紫外線で劣化することがなく、長期保管が可能になった。尚、当出願人の実験では、10~15年の長期保管の実績の確認も行った。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の土嚢の水膨潤性吸水性樹脂に水が吸水されていない状態を示す概略正断面図である。
【
図3】本発明の土嚢の水膨潤性吸水性樹脂に水が吸水された状態を示す概略正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
通水性を備える麻材で四角立方体に形成した外袋と、該外袋内に収納される内袋と砂鉄袋とからなる土嚢において、前記四角立方体に形成する外袋は、上布の側部と側布上部の2ヵ所で縫製し、さらに下布の側部と側布下部の2ヵ所で縫製して開口部を2ヵ所形成した外袋の底部には、前記砂鉄袋を外袋の両側辺部に1個ずつ、2ヵ所着脱自在テープ等で着脱自在に設け、前記内袋には、超吸水性樹脂が中程に集まるように挿入した土嚢である。
【実施例0011】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施例の土嚢を説明する。
図1は、本発明の土嚢の一実施例を示す概略平面図、
図2は本発明における土嚢の水膨潤性吸水性樹脂に水が吸水されていない状態を示す概略正断面図、
図3は本発明における土嚢の水膨潤性吸水性樹脂に水が吸水された状態を示す概略正断面図である。
【0012】
本発明の外袋である土嚢袋としては、透水性を有し、土嚢が吸水膨潤後、段積みした場合でも荷重に十分耐えられる強度を有する袋体が用いられる。外袋は、通水性の高いものが好ましい。具体的には、麻、綿などの天然繊維、塩化ビニル繊維、ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などの合成繊維により透水性を有するように形成された布帛(織布、編布、不織布)により作製されている。外袋は、透水性を有するいわゆるメッシュ状となっている。また、外袋の開口する周縁部は、繊維による縫製、接着剤もしくは熱融着などにより封止されている。また、外袋の大きさとしては、幅が30~50cm程度であり、長さが40~70cm程度であることが好ましいものである。
【0013】
内袋は、水溶性もしくは水分解性材料により形成されている。内袋を設けることにより、内袋収納物4が外袋より外部に漏出することを防止できる。そして、内袋は、0℃以上の温度の水により溶解もしくは分解されるものであることが好ましく、また、内袋を樹脂により作製する場合には熱融着による形成を考慮すると、内袋形性樹脂は、180℃以下の融点を有することが好ましい。さらに、内袋の水に対する溶解時間(分解時間)は、速いことが望ましいが、あまりに速いものでは、保存時の吸湿により溶解するおそれもあるので、水に浸漬された状態において、20~60秒程度で溶解もしくは分解するものが好適である。さらに、内袋は、外袋の外部側より操作することにより容易に破損可能なものであることが好ましい。
つまり、外袋の外側より、内袋部分をもみほぐす、殴打するなどの操作により破損できる程度の強度のものとなっていることが望ましい。
このようにすることにより、緊急の場合には、内袋を破損させることにより、より迅速な土嚢の使用準備が可能となる。また、内袋は、外袋の内面に固定されていてもよい。特に、外袋の外面より内袋の位置がわかるように固定されていることが好ましい。
このようにすることにより、上述したような外袋の外面からの行う内袋の破損操作の際、内袋の位置を容易に確認できかつ内袋も動かないため破損操作も容易である。
【0014】
内袋の形成材料としては、市販されている多くの水溶性フィルムを用いることができる。好適な水溶性フィルム形成材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウム塩、ポリビニルピロリドン、ポリ(アルキル)オキサゾリン、及びポリエチレングリコール、ポリアクリル酸およびその塩、でんぷん、ゼラチン、でんぷん系多糖類などが使用できる。
【0015】
また、内袋の形成材料としては、いわゆる水分解性紙を用いてもよい。水分解性紙は、サイズ剤未添加の、あるいは若干量のサイズ剤を添加したさらしパルプを主成分として抄かれることにより作製されたもの等がある。
【0016】
そして、内袋内には内容物が収納されている。この土嚢では、内容物は水膨潤性吸水性樹脂で、ペレット状、粉末状、顆粒状等の固形物が用いられる。
また、内容物である水膨潤性吸水性樹脂は、自重の数十倍から数百倍の水を吸収し、膨潤してゲル化する能力を有している。このため、土嚢に注水、または浸漬、あるいは洪水による流水の浸漬によって膨潤したゲル状物の内容物となり、使用可能状態の土嚢を容易に形成することができる。
【0017】
水膨潤性吸水性樹脂としては、デンプン-アクリロニトリルグラフト重合体加水分解物、デンプン-アクリル酸グラフト重合体、デンプン-スチレンスルホン酸グラフト重合体、デンプン-ビニルスルホン酸グラフト重合体、デンプン-アクリルアミドグラフト重合体などのデンプン系高吸水性樹脂、セルロース-アクリロニトリルグラフト重合体、セルロース-スチレンスルホン酸グラフト重合体、カルボキシメチルセルロースの架橋体などのセルロース系高吸水性樹脂、ヒアルロン酸、アガロースなどのその他多糖類系高吸水性樹脂などの天然高分子類、ポリビニルアルコール架橋重合体、PVA吸水ゲル凍結・解凍エラストマーなどのポリビニルアルコール系高吸水性樹脂、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸重合部分ナトリウム塩架橋物、アクリル酸塩-ビニルアルコール共重合体(具体的には、アクリル酸メチル-酢酸ビニル共重合体ケン化物)、ポリアクリロニトリル系重合体ケン化物、ヒドロキシエチルメタクリレートポリマー(HEMA)、デンプン/アクリル酸グラフト共重合体、デンプン/アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、セルロース/アクリル酸グラフト共重合体、ポリアクリルアミド及びその部分加水分解物、などのアクリル系高吸水性樹脂、無水マレイン酸系(共)重合体、ビニルピロリドン系重合体、その他の付加重合体系高吸水性樹脂などの合成高分子類などが使用できる。
【0018】
本発明の土嚢では、外袋と内袋からなる二重の構造としたことにより、外袋として強靭ではあるが目の粗い繊維を採用しても、内容物は内袋内に収納されているので、使用前に内容物が袋外に漏出することを防止する。更に、水膨潤性吸水性樹脂を内袋内に収納したことにより、土嚢製造時、すなわち外袋内に水膨潤性吸水性樹脂を収納した内袋を投入もしくは必要により固定するのみであり、水膨潤性吸水性樹脂の飛散などがなく取扱いは極めて容易である。
【0019】
外袋としては、例えば、天然麻袋を用い、内袋として、水溶紙を用いて作製した袋体を用い、この内袋内に、水膨潤性吸水性樹脂(商品名 アクアボーイ)を入れ、内容物を収納した内袋を外袋に入れ、さらに砂鉄を収納した砂鉄袋を外袋の内部底布に着脱自在テープ、例えばマジック(登録商標)テープ等で着脱自在に設け、さらに外袋の開口部の2ヵ所は、3点止めにより糸で縫製(尚、3点止め以上でも良いことは言うまでもない。)して本発明の土嚢を作成した。
【0020】
ここで、具体的な構成ついて
図1~
図3に基づいて詳細に説明する。
本発明の土嚢は、通水性を備える麻材で形成した外袋1と、該外袋1内に収納される内袋2と砂鉄袋4とからなる土嚢で、前記内袋2には超吸水性樹脂を挿入し、前記砂鉄袋4は、前記外袋1の両側に1個ずつ、計2個着脱自在に設けたものである。
さらに、
図1~
図3からも理解できるように、通水性を備える麻材で四角立方体に形成した外袋1と、該外袋1内に収納される内袋2と砂鉄袋4とからなる土嚢において、前記四角立方体に形成する外袋1は、上布6の側部と側布8上部の2ヵ所で縫製し、さらに下布7の側部と側布8下部の2ヵ所で縫製して開口部10を2ヵ所形成したもので、外袋1の底部には、前記砂鉄袋4を外袋1の両側辺部に1個ずつ、2ヵ所着脱自在テープ5で着脱自在に設け、前記内袋2には、超吸水性樹脂3を中程に集まるように挿入した土嚢も考えられるものである。
なお、外袋1内に収納された、超吸水性樹脂が挿入された内袋2と砂鉄袋4から成る土嚢の外袋1の両端に形成された開口部10は糸で3点止めされているものである。
【0021】
従来の土嚢袋は、吸水性樹脂が吸水して膨潤したり、土砂を詰めたりすると丸くなり、土嚢を横並びにしても隙間ができ、水がそこから抜ける問題があったが、本願発明の土嚢に使用される外袋1は、両端に折り曲げ部9を設けたことにより、中袋2が膨潤すると、外袋1が四角立方体状となるように内袋2の超吸水性樹脂が吸水して膨張圧で均等に広がり、両側端の折り曲げ部9が張り上がり、形状が四角立方体状に安定して略同一形状に膨張するので、大幅に止水効果を発揮できるものである。
【0022】
また、超吸水性樹脂3に、吸水がされる前の備蓄の際、コンパクトにできるように、側布8を折り曲げ部9を形成しており、折り畳みやすいようにすることが有効である。
さらに、開口部10を1ヶ所でも良いが、2ヵ所にすることで、準備段階の保存時、砂鉄袋4を外袋1の両側部、1ヵ所に取り付け易くするため2個設けられているが、この砂鉄袋4を着脱自在テープ5でセットする場合、両開口部10からそれぞれ取り付けられるので、作業が楽である。
【0023】
土嚢を使用後、例えば洪水の後には、使用した多くの土嚢の処理が必要であるが、本発明の土嚢は、外袋1はタコ糸等、綿糸で均等に3ヶ所バランス良く止めてあるので、使用後は、その綿糸を切れば中袋2が取り出せ、塩化カルシウム等を散布して膨らんだ超吸水性樹脂の脱水処理が容易であり、結果、土嚢全体の処理も従来のものより簡単に行えるものである。なお、この中袋2を取り出した後の外袋1は再利用も可能である。